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特許7379075画像処理装置、画像処理方法及び画像処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法及び画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/407 20060101AFI20231107BHJP
   H04N 1/04 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
H04N1/407
H04N1/12 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019191055
(22)【出願日】2019-10-18
(65)【公開番号】P2021068945
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000136136
【氏名又は名称】株式会社PFU
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 憲吾
(72)【発明者】
【氏名】松本 寛史
【審査官】橋爪 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-058356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
H04N 1/04- 1/207
H04N 1/40- 1/409
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部分と、前記第一部分に対して凸な形状をとる第二部分との双方を含むエンボス加工が為された読取対象媒体の画像である第一画像と、階調値の補正に用いられる所定の第一補正係数の算出の基準となった基準媒体の画像である第二画像とを含む読取画像であって、前記凸な形状に合わせて移動するイメージセンサによって読み取られた前記読取画像において、前記イメージセンサの副走査方向で前記第二画像の階調値が変動するか否かを判定する判定部と、
前記判定部によって前記第二画像の前記階調値が変動すると判定されたときに、前記第一補正係数を補正した第二補正係数を取得する取得部と、
前記第二補正係数を用いて前記読取画像の階調値を補正する補正部と、
を具備する画像処理装置。
【請求項2】
前記補正部は、前記判定部によって前記第二画像の前記階調値が変動すると判定されたときに、前記副走査方向において、前記階調値の変動量が閾値以上である領域の階調値を前記第二補正係数で補正する一方で、前記変動量が閾値未満である領域の階調値を前記第一補正係数で補正する、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記第二画像の変動後の前記階調値に対する、前記第二画像の変動前の前記階調値の割合に応じて前記第一補正係数を補正することにより前記第二補正係数を取得する、
請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
第一部分と、前記第一部分に対して凸な形状をとる第二部分との双方を含むエンボス加工が為された読取対象媒体の画像である第一画像と、階調値の補正に用いられる所定の第一補正係数の算出の基準となった基準媒体の画像である第二画像とを含む読取画像であって、前記凸な形状に合わせて移動するイメージセンサによって読み取られた前記読取画像において、前記イメージセンサの副走査方向で前記第二画像の階調値が変動するか否かを判定し、
前記第二画像の前記階調値が変動すると判定したときに、前記第一補正係数を補正した第二補正係数を取得し、
前記第二補正係数を用いて前記読取画像の階調値を補正する、
画像処理方法。
【請求項5】
第一部分と、前記第一部分に対して凸な形状をとる第二部分との双方を含むエンボス加工が為された読取対象媒体の画像である第一画像と、階調値の補正に用いられる所定の第一補正係数の算出の基準となった基準媒体の画像である第二画像とを含む読取画像であって、前記凸な形状に合わせて移動するイメージセンサによって読み取られた前記読取画像において、前記イメージセンサの副走査方向で前記第二画像の階調値が変動するか否かを判定し、
前記第二画像の前記階調値が変動すると判定したときに、前記第一補正係数を補正した第二補正係数を取得し、
前記第二補正係数を用いて前記読取画像の階調値を補正する、
処理をプロセッサに実行させるために画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像処理装置、画像処理方法及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばスキャナ装置やコピー機等の画像読取装置には、CIS(Contact Image Sensor)を使用したものがある。また、画像読取装置の読取の対象となる媒体(以下では「読取対象媒体」と呼ぶことがある)の一つとして、例えばクレジットカード等のエンボス加工されたプラスチックカード(以下では「エンボスカード」と呼ぶことがある)が挙げられる。クレジットカードでは、例えば、カード番号、有効期限及び氏名等がクレジットカードの表面に対して凸な形状にエンボス加工されている。このように、読取対象媒体がエンボスカードである場合には、読取対象媒体において画像の読取の対象となる面(以下では「読取対象面」と呼ぶことがある)には、平面な部分(以下では「平面部分」と呼ぶことがある)と、平面部分に対して凸な形状をとる部分(以下では「凸部分」と呼ぶことがある)とが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平04-190487号公報
【文献】特開平10-143632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
CISは読取対象面に密着して画像を読み取るため、読取対象媒体がエンボスカードである場合には、CISは読取対象面の凸な形状に合わせて上下に移動し、CISの移動に合わせてCISと平面部分との間の距離が変化する。すなわち、CISが平面部分に密着した状態にあるときよりも、CISが凸部分に密着した状態にあるときの方が、CISと平面部分との間の距離が大きくなる。このため、CISの主走査方向において平面部分と凸部分とが混在していると、CISによって読み取られた画像に、凸部分に比べて平面部分が暗いという不自然な明るさの明暗が生じてしまい、画像の見栄えが悪くなる。
【0005】
そこで、本開示では、画像の見栄えを向上できる技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の態様では、スキャナ装置は、判定部と、取得部と、補正部とを有する。前記判定部は、第一部分と、前記第一部分に対して凸な形状をとる第二部分とを含む読取対象媒体の画像である第一画像と、階調値の補正に用いられる所定の第一補正係数の算出の基準となった基準媒体の画像である第二画像とを含む読取画像であって、前記凸な形状に合わせて移動するイメージセンサによって読み取られた前記読取画像において、前記イメージセンサの副走査方向で前記第二画像の階調値が変動するか否かを判定する。前記取得部は、前記判定部によって前記第二画像の前記階調値が変動すると判定されたときに、前記第一補正係数を補正した第二補正係数を取得する。前記補正部は、前記第二補正係数を用いて前記読取画像の階調値を補正する。
【発明の効果】
【0007】
開示の態様によれば、画像の見栄えを向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の実施例1のスキャナ装置の構成例を示す図である。
図2図2は、本開示の実施例1のイメージセンサの構成例を示す図である。
図3図3は、本開示の実施例1の画像処理装置の構成例を示す図である。
図4図4は、本開示の実施例1の読取対象媒体の一例を示す図である。
図5図5は、本開示の実施例1のスキャナ装置の動作例の説明に供する図である。
図6図6は、本開示の実施例1のスキャナ装置の動作例の説明に供する図である。
図7図7は、本開示の実施例1のスキャナ装置の動作例の説明に供する図である。
図8図8は、本開示の実施例1のスキャナ装置の動作例の説明に供する図である。
図9図9は、本開示の実施例1のスキャナ装置の動作例の説明に供する図である。
図10図10は、本開示の実施例1のスキャナ装置の動作例の説明に供する図である。
図11図11は、本開示の実施例1のスキャナ装置の動作例の説明に供する図である。
図12図12は、本開示の実施例1のスキャナ装置の動作例の説明に供する図である。
図13図13は、本開示の実施例1のスキャナ装置の動作例の説明に供する図である。
図14図14は、本開示の実施例1のスキャナ装置の動作例の説明に供する図である。
図15図15は、本開示の実施例1のスキャナ装置の動作例の説明に供する図である。
図16図16は、本開示の実施例1のスキャナ装置の動作例の説明に供する図である。
図17図17は、本開示の実施例1の画像処理装置における処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施例により本開示の画像処理装置、画像処理方法及び画像処理プログラムが限定されるものではない。また、以下の実施例において同一の構成には同一の符号を付す。
【0010】
[実施例1]
<スキャナ装置の構成>
図1は、本開示の実施例1のスキャナ装置の構成例を示す図である。図1に示すスキャナ装置1は、読取対象媒体の画像を読み取る画像読取装置の一例である。
【0011】
図1において、スキャナ装置1は、上部筐体71と、下部筐体72と、給送トレイ50と、搬送路PAと、ピックローラ61と、搬送ローラ62-1,62-2,63-1,63-2と、透過型光センサ82と、イメージセンサ20と、スプリング30と、白色基準板40と、制御部81と、画像処理装置10とを有する。ピックローラ61、搬送ローラ62-1,62-2,63-1,63-2は、制御部81の制御の下でモータ(図示せず)によって駆動される。
【0012】
透過型光センサ82は、投光器82Tと、受光器82Rとを有する。投光器82Tと受光器82Rとは搬送路PAを挟んで互いに対向して配置され、投光器82Tから投射された光が受光器82Rにより受光される。投光器82Tが投射する光の投光量は、制御部81からの制御の下で一定に保たれる。また、制御部81は、受光器82Rにおける受光量(以下では「受光器受光量」と呼ぶことがある)が閾値TH1以上であるときは、受光器受光量がハイレベルにあると判定し、受光器受光量が閾値TH1未満であるときは、受光器受光量がハイレベルより小さいローレベルにあると判定する。
【0013】
イメージセンサ20は、搬送路PAにおける読取対象媒体の搬送方向(つまり、+X方向)において透過型光センサ82よりも下流に配置される。換言すれば、イメージセンサ20は、搬送路PAにおける読取対象媒体の進行方向(つまり、+X方向)において透過型光センサ82よりも前方に配置される。また、イメージセンサ20は、スプリング30を介して上部筐体71に取り付けられており、搬送路PAを搬送される読取対象媒体の厚さに合わせて上下に(つまり、Z方向に)移動可能である。イメージセンサ20の一例として、CISが挙げられる。
【0014】
搬送路PAは、スキャナ装置1の右側面に形成された挿入口IPと、スキャナ装置1の左側面に形成された排出口DPとを有する。給送トレイ50に載置された読取対象媒体が挿入口IPから搬送路PAへ挿入され、挿入口IPから挿入された読取対象媒体は搬送路PAを搬送されながらイメージセンサ20によって画像を読み取られ、イメージセンサ20での読取後の読取対象媒体が排出口DPから排出される。
【0015】
<イメージセンサの構成>
図2は、本開示の実施例1のイメージセンサの構成例を示す図である。図2において、イメージセンサ20は、光源21と、撮像素子22とを有する。光源21は、照射範囲IRで白色光を照射する。撮像素子22は、Y方向に一列に並んだ複数の受光素子から形成される。また、撮像素子22は、光軸OAを有し、白色基準板40の上面または読取対象面からの反射光を受光する。
【0016】
<読取対象媒体の搬送>
スキャナ装置1が有する「スキャン開始ボタン」(図示せず)がオペレータによって押下されると、制御部81は、ピックローラ61、搬送ローラ62-1,62-2,63-1,63-2の回転を開始させる。制御部81は、ピックローラ61及び搬送ローラ62-1,63-1を右回り(つまり、時計回り)に回転させる一方で、搬送ローラ62-2,63-2を左回り(つまり、反時計回り)に回転させる。制御部81がピックローラ61を回転させることにより、給送トレイ50に載置された読取対象媒体がピックローラ61によって搬送路PA内に取り込まれる。
【0017】
ピックローラ61により搬送路PAを搬送される読取対象媒体の先端が搬送ローラ62-1と搬送ローラ62-2との間に達すると、読取対象媒体は搬送ローラ62-1,62-2によって搬送路PAを+X方向へ搬送される。
【0018】
搬送ローラ62-1,62-2によって搬送路PAを+X方向へ搬送中の読取対象媒体の先端(以下では「媒体先端」と呼ぶことがある)が透過型光センサ82の光線位置まで達すると、投光器82Tから投射された光が読取対象媒体によって遮られるため、受光器受光量がハイレベルからローレベルに減少する。制御部81は、受光器受光量がハイレベルからローレベルに減少した時点(つまり、透過型光センサ82が媒体先端を検出した時点)で、イメージセンサ20をオンにする。イメージセンサ20がオンにされることで、光源21が点灯するとともに、撮像素子22での受光が開始される。そして、搬送路PAでの読取対象媒体の+X方向への搬送に伴って、読取対象面の画像が1ラインずつイメージセンサ20によって読み取られ、イメージセンサ20によって読み取られた読取対象媒体の画像(以下では「読取画像」と呼ぶことがある)がイメージセンサ20から画像処理装置10へ出力される。
【0019】
さらに搬送路PAでの読取対象媒体の+X方向への搬送に伴って、媒体先端が搬送ローラ63-1と搬送ローラ63-2との間に達すると、読取対象媒体は搬送ローラ63-1,63-2によって搬送路PAをさらに+X方向へ搬送される。よって、読取が為された後の読取対象媒体は、排出口DPからスキャナ装置1の左側方に排出される。
【0020】
また、搬送路PAを+X方向へ搬送中の読取対象媒体の後端(以下では「媒体後端」と呼ぶことがある)が透過型光センサ82の光線位置を過ぎると、投光器82Tから投射された光が読取対象媒体によって遮られなくなるため、受光器受光量がローレベルからハイレベルに増加する。制御部81は、受光器受光量がローレベルからハイレベルに増加した時点(つまり、透過型光センサ82が媒体後端を検出した時点)から所定の時間Δtrが経過後にイメージセンサ20をオフにする。イメージセンサ20がオフにされることで、光源21が消灯するとともに、撮像素子22での受光が終了する。所定の時間Δtrは、排出口DPからの読取対象媒体の排出が完了するのに必要な十分な長さの時間に予め設定されている。
【0021】
<画像処理装置の構成>
図3は、本開示の実施例1の画像処理装置の構成例を示す図である。図3において、画像処理装置10は、記憶部11と、変動判定部12と、補正係数取得部13と、階調値補正部14とを有する。記憶部11には、イメージセンサ20から出力される読取画像が記憶される。変動判定部12、補正係数取得部13及び階調値補正部14の処理については後述する。
【0022】
制御部81、変動判定部12、補正係数取得部13及び階調値補正部14は、ハードウェアとして、例えばプロセッサにより実現される。また、記憶部11は、ハードウェアとして、例えばメモリにより実現される。プロセッサの一例として、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等が挙げられる。また、メモリの一例として、SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)等のRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等が挙げられる。
【0023】
<読取対象媒体の一例>
図4は、本開示の実施例1の読取対象媒体の一例を示す図である。スキャナ装置1に挿入される読取対象媒体の一例として、図4に示すようなエンボスカードECが挙げられる。エンボスカードECの上面が読取対象面となり、読取対象面には、平面部分PPと凸部分CPとが存在し、イメージセンサ20の主走査方向(つまり、Y方向)において平面部分PPと凸部分CPとが混在している領域MAがある。エンボスカードECは、読取対象面に平面部分と凸部分とが存在する読取対象媒体の一例である。
【0024】
<スキャナ装置の動作>
図5図16は、本開示の実施例1のスキャナ装置の動作例の説明に供する図である。
【0025】
まず、図5図9を用いて、エンボスカードECの搬送に伴うイメージセンサ20の上下移動について説明する。
【0026】
図5に示すように、平面部分PP1,PP2と、凸部分CPとを有するエンボスカードECの先端がイメージセンサ20の取付位置に到達するまでは、イメージセンサ20と白色基準板40との間の距離ISは「l1」となる。
【0027】
次いで、+X方向に搬送されるエンボスカードECがイメージセンサ20の取付位置に到達後、平面部分PP1がイメージセンサ20に接しているときは、図6に示すように、イメージセンサ20が図5の状態よりも上に(つまり、+Z方向に)移動するため、距離ISは、平面部分PP1の高さh1だけ増加して「l1+h1」となる。
【0028】
次いで、さらに+X方向にエンボスカードECが搬送され、凸部分CPがイメージセンサ20に接しているときは、図7に示すように、イメージセンサ20が図6の状態よりもさらに上に移動するため、距離ISは、凸部分CPの高さh2だけさらに増加して「l1+h1+h2」となる。
【0029】
次いで、さらに+X方向にエンボスカードECが搬送され、平面部分PP2がイメージセンサ20に接しているときは、図8に示すように、イメージセンサ20が図7の状態よりも下に(つまり、-Z方向に)移動するため、距離ISは、凸部分CPの高さh2だけ減少して「l1+h1」となる。
【0030】
次いで、さらに+X方向にエンボスカードECが搬送され、エンボスカードECの後端がイメージセンサ20の取付位置を過ぎると、図9に示すように、イメージセンサ20が図8の状態よりもさらに下に移動するため、距離ISは、平面部分PP2の高さh1だけ減少して「l1」となる。
【0031】
また、図10に示すように、搬送路PAの幅は、給送トレイ50に設けられたガイドや搬送路PAに設けられたガイド等により、撮像素子22の主走査方向における幅Wよりも狭く規制されている。例えば、搬送路PAの幅は、撮像素子22の主走査方向における幅Wに対して、撮像素子22の両端から所定の幅SA,SBだけ狭いものになる。よって、撮像素子22の主走査方向では幅SA,SBの領域に読取対象媒体が存在することはない。このため、幅SA,SBの領域では、撮像素子22の副走査方向(つまり、イメージセンサ20の副走査方向)において、読取対象媒体の画像が読み取られることはなく、常に白色基準板40の画像だけが読み取られる。以下では、白色基準板40の画像を「白色基準板画像」と呼び、白色基準板画像の階調値を「白色基準板階調値」と呼ぶことがあるある。
【0032】
例えば、図11に示すように、読取画像RIにおいて、撮像素子22の主走査方向における全画素数が5616画素である場合、幅SA,SBの領域にそれぞれ相当する両端の各510画素は、副走査方向において常に白色基準板画像のみの画素となる。
【0033】
また例えば、図11に示すように、1~8000ラインの画像で形成される読取画像RIにおいて、1445~6555ラインの画像にエンボスカードECの画像(以下では「カード画像」と呼ぶことがある)が含まれる。また、1445~6555ラインのカード画像のうち、1445~4239ラインの画像は平面部分PP1の画像に相当し、4240~6265ラインの画像は凸部分CPの画像に相当し、6266~6555ラインの画像は平面部分PP2の画像に相当する。また、上記の図5図9に示すように、副走査方向でのエンボスカードECの搬送に伴ってイメージセンサ20が上下に移動するため、副走査方向において、距離ISが変化する。また、光源21から照射される白色光の光量は一定であるため、距離ISが大きくなるほど、撮像素子22によって受光される反射光の光量は小さくなる。
【0034】
すなわち、図11における1~1444ラインの画像は図5に示す状態で取得され、図11における1445~4239ラインの画像は図6に示す状態で取得され、図11における4240~6265ラインの画像は図7に示す状態で取得される。また、図11における6266~6555ラインの画像は図8に示す状態で取得され、図11における6556~8000ラインの画像は図9に示す状態で取得される。
【0035】
よって、副走査方向において、幅SA,SBの領域にそれぞれ相当する両端の各510画素の階調値(つまり、白色基準板階調値)の変化は例えば図12に示すようになる。
【0036】
例えば、図12に示すように、1~1444ライン、及び、6556~8000ラインの白色基準板階調値を「基準階調値SG」とした場合、1445~4239ライン、及び、6266~6555ラインの白色基準板階調値G1は、高さh1に相当する変動量ΔG1だけ基準階調値SGより小さな値になる。また、4240~6265ラインの白色基準板階調値G2は、高さh1+h2に相当する変動量ΔG2だけ基準階調値SGより小さな値になる。
【0037】
そこで、変動判定部12は、記憶部11に記憶されている読取画像RIにおいて、イメージセンサ20の副走査方向で白色基準板階調値が変動するか否かを判定する。例えば、変動判定部12は、図11に示す上方または下方の何れかの510画素のうちの中心10画素の階調値の平均値を判定対象の白色基準板階調値(以下では「判定対象階調値」と呼ぶことがある)として取得する。また例えば、変動判定部12は、図11に示す1~8000ラインのうち、1ライン目の判定対象階調値を基準階調値SGとして取得する。そして、変動判定部12は、基準階調値SGに対する判定対象階調値の変動量(以下では「階調値変動量」と呼ぶことがある)を副走査方向において1ラインずつ1~8000の各ライン毎に測定し、階調値変動量が閾値THA以上であるラインを補正係数の補正対象のライン(以下では「補正対象ライン」と呼ぶことがある)として検出し、検出した補正対象ラインを補正係数取得部13及び階調値補正部14へ通知する。また、変動判定部12は、1~8000ラインの中に補正対象ラインが1つでも検出された場合には、副走査方向で白色基準板階調値が変動すると判定する一方で、1~8000ラインの中に補正対象ラインが1つも検出されない場合には、副走査方向で白色基準板階調値が変動しないと判定し、判定結果を補正係数取得部13及び階調値補正部14へ通知する。
【0038】
ここで、階調値変動量の閾値THAは、図12に示す階調値変動量ΔG1より大きく、かつ、図12に示す階調値変動量ΔG2より小さな値に予め設定される。よって、図12に示すような基準階調値SG及び判定対象階調値G1,G2が変動判定部12によって測定された場合、図13に示すように、1~8000ラインのうち、凸部分CPに相当する4240~6265ラインが変動判定部12によって補正対象ラインとして検出される。
【0039】
補正係数取得部13は、変動判定部12によって白色基準板階調値が変動すると判定されたときに、所定の補正係数αと、基準階調値SGと、補正対象ラインの判定対象階調値G2とに基づいて、補正対象ラインの1ラインずつ式(1)に示す計算を行うことにより、補正対象ライン毎に補正係数βを取得する。そして、補正係数取得部13は、取得した補正係数βを各補正対象ラインに対応付けて階調値補正部14へ出力する。一方で、補正係数取得部13は、変動判定部12によって白色基準板階調値が変動しない判定されたときは、式(1)の計算を行わずに補正係数βを取得しない。式(1)において、基準階調値SGは白色基準板画像の変動前の階調値(以下では「変動前階調値」と呼ぶことがある)に相当し、判定対象階調値G2は白色基準板画像の変動後の階調値(以下では「変動後階調値」と呼ぶことがある)に相当する。よって、式(1)において、「SG/G2」は、変動後階調値に対する変動前階調値の割合(以下では「階調値変動割合」と呼ぶことがある)に相当する。つまり、補正係数取得部13は、階調値変動割合に応じて補正係数αを補正することにより補正係数βを取得する。
β=α×(SG/G2) …(1)
【0040】
階調値補正部14は、変動判定部12によって白色基準板階調値が変動すると判定されたときは、図13に示すように、記憶部11に記憶されている読取画像RIの1~8000ラインのうち、補正対象ラインである4240~6265ラインの各ラインの全画素の階調値に、4240~6265ラインの各ラインに対応する補正係数βを乗算することにより、補正対象ラインの階調値を補正する。また、階調値補正部14は、読取画像RIの1~8000ラインのうち、補正対象ライン以外のライン(以下では「非補正対象ライン」と呼ぶことがある)である1~4239ライン及び6266~8000ラインの全画素の階調値に補正係数αを乗算することにより、非補正対象ラインの階調値を補正する。補正対象ラインは階調値変動量が閾値THA以上であるラインであるのに対し、非補正対象ラインは階調値変動量が閾値THA未満であるラインである。
【0041】
一方で、変動判定部12によって白色基準板階調値が変動しないと判定されたときは、階調値補正部14は、読取画像RIの1~8000ラインの全画素の階調値に補正係数αを乗算して階調値を補正する。
【0042】
ここで、所定の補正係数αは、光源21の主走査方向における輝度分布の影響や、撮像素子22を形成する各受光素子の主走査方向におけるばらつきの影響を低減するために、階調値の補正に用いられる係数である。このような階調値の補正は、一般にシェーディング補正と呼ばれる。また、補正係数αは、距離ISが上記の図5に示す「l1」となっている状態で、白色基準板40を基準にして予め算出された比率係数に基づいて算出された補正係数である。白色基準板40は、階調値の補正に用いられる所定の補正係数αの算出の基準となった基準媒体の一例である。読取対象面に凸部分が存在せず平面部分しか存在しない場合には、読取画像の各画素の階調値に補正係数αが乗算されることにより、光源21の主走査方向における輝度分布や、撮像素子22を形成する各受光素子の主走査方向におけるばらつきに拘わらず、読取画像は濃度ムラのない画像に補正される。補正係数αは、例えば図14に示すように、主走査方向において各画素毎に予め設定されている。
【0043】
しかし、エンボスカードECの搬送に伴って上記の図6及び図7のようにイメージセンサ20が上方向(つまり、+Z方向)に移動して距離ISが増加すると、上記の図5に示す状態で白色基準板40を基準にして予め算出された補正係数αは、上記の図6及び図7に示す状態では、シェーディング補正に適正な補正係数(以下では「適正補正係数」と呼ぶことがある)よりも小さな値になってしまう。特に距離ISが大きくなる図7に示す状態では、補正係数αは適正補正係数から大きく乖離してしまう。よって、読取対象媒体がエンボスカードECである場合に、補正係数αを読取画像の全ラインの画素に一律に適用すると、図15に示すように、補正係数αのみを用いて階調値を補正した後のカード画像RIAでは、凸部分の画像CPIの背景が縞模様のように暗くなってしまい、不自然な明るさの明暗が生じる。
【0044】
そこで、変動判定部12によって白色基準板階調値が変動すると判定されたときは、補正係数取得部13は、上記の式(1)に従って、図14に示すように補正係数αよりも主走査方向で一律に値が大きい補正係数βを算出し、階調値補正部14は、補正係数βを用いて補正対象ラインの画素の階調値を補正する。このように、補正対象ラインの画素の階調値が補正係数αよりも値が大きい補正係数βを用いて補正されることにより、図16に示すように、補正係数βを凸部分に用いて階調値を補正した後のカード画像RIBでは、凸部分の画像CPIにおける不自然な明るさの明暗が軽減され、画像の見栄えが向上する。
【0045】
<画像処理装置の処理>
図17は、本開示の実施例1の画像処理装置における処理手順の一例を示すフローチャートである。図17に示すフローチャートは、読取画像が記憶部11に記憶されたときに開始される。
【0046】
ステップST101では、変動判定部12が、ラインカウンタLを0(ゼロ)にリセットする。
【0047】
次いで、ステップST103では、変動判定部12が、ラインカウンタLをインクリメントする。
【0048】
次いで、ステップST105では、変動判定部12が、ラインカウンタLによって示されるLライン目における階調値変動量が閾値THA以上であるか否かを判定する。階調値変動量が閾値THA以上である場合は(ステップST105:Yes)、処理はステップST107へ進み、階調値変動量が閾値THA未満である場合は(ステップST105:No)、ステップST107の処理が行われることなく処理はステップST109へ進む。
【0049】
ステップST107では、変動判定部12が、ラインカウンタLの値を補正対象ラインとして記録する。
【0050】
ステップST109では、変動判定部12が、ラインカウンタLの値が最大ライン数MLに達したか否かを判定する。例えば、上記のように読取画像RIが1~8000ラインの画像によって形成される場合、最大ライン数MLは予め「8000」に設定されている。ラインカウンタLの値が最大ライン数MLに達していない場合は(ステップST109:No)、処理はステップST103に戻り、ステップST103~ST109の処理が繰り返される。一方で、ラインカウンタLの値が最大ライン数MLに達した場合は(ステップST109:Yes)、処理はステップST111へ進む。
【0051】
ステップST111では、変動判定部12が、ステップST103~ST109の処理を行った結果、1~MLラインの中に補正対象ラインが存在するか否かを判定する。補正対象ラインが存在する場合は(ステップST111:Yes)、処理はステップST113へ進み、補正対象ラインが存在しない場合は(ステップST111:No)、ステップST113の処理が行われることなく処理はステップST115へ進む。
【0052】
ステップST113では、補正係数取得部13が、上記の式(1)に従って、補正係数αを補正した補正係数βを取得する。
【0053】
ステップST113の処理を経て処理がステップST115に進んだ場合は、ステップST115において、階調値補正部14が、1~MLラインの全ラインのうち、補正対象ラインの画素の階調値を補正係数βを用いて補正するとともに、非補正対象ラインの画素の階調値を補正係数αを用いて補正する。
【0054】
一方で、ステップST113の処理を経ることなく処理がステップST111からステップST115に直接進んだ場合は、ステップST115において、階調値補正部14が、1~MLラインの全ラインの画素の階調値を補正係数αを用いて補正する。
【0055】
以上、実施例1について説明した。
【0056】
[実施例2]
画像処理装置10での上記説明における各処理の全部または一部は、各処理に対応するプログラムを画像処理装置10が有するプロセッサに実行させることによって実現しても良い。例えば、上記説明における各処理に対応するプログラムが記憶部11に記憶され、プログラムがプロセッサによって記憶部11から読み出されて実行されても良い。また、プログラムは、任意のネットワークを介して画像処理装置10に接続されたプログラムサーバに記憶され、そのプログラムサーバから画像処理装置10にダウンロードされて実行されたり、画像処理装置10が読み取り可能な記録媒体に記憶され、その記録媒体から読み出されて実行されても良い。画像処理装置10が読み取り可能な記録媒体には、例えば、メモリカード、USBメモリ、SDカード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD、及び、Blu-ray(登録商標)ディスク等の可搬の記憶媒体が含まれる。また、プログラムは、任意の言語や任意の記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードやバイナリコード等の形式を問わない。また、プログラムは必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールや複数のライブラリとして分散構成されるものや、OSに代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものも含む。
【0057】
画像処理装置10の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、画像処理装置10の全部または一部を、各種の付加等に応じて、または、機能負荷に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0058】
実施例1では、画像処理装置10がスキャナ装置に搭載される場合を一例に挙げて説明した。しかし、画像処理装置10を搭載可能な画像読取装置はスキャナ装置に限定されず、画像処理装置10はコピー機等、スキャナ装置以外の画像読取装置にも搭載可能である。また、画像処理装置10は、画像読取装置に搭載されず、パーソナルコンピュータ等のコンピュータ装置のように、画像読取装置とは別の装置として存在しても良い。
【0059】
以上、実施例2について説明した。
【0060】
以上のように、本開示の画像処理装置(実施例1の画像処理装置10)は、判定部(実施例1の変動判定部12)と、取得部(実施例1の補正係数取得部13)と、補正部(実施例1の階調値補正部14)とを有する。読取画像は、第一部分(実施例1の平面部分)と、第一部分に対して凸な形状をとる第二部分(実施例1の凸部分)とを含む読取対象媒体(実施例1のエンボスカードEC)の画像である第一画像と、階調値の補正に用いられる所定の第一補正係数(実施例1の補正係数α)の算出の基準となった基準媒体(実施例1の白色基準板40)の画像である第二画像とを含む。また、読取画像は、凸な形状に合わせて移動するイメージセンサ(実施例1のイメージセンサ20)によって読み取られたものである。判定部は、読取画像において、イメージセンサの副走査方向で第二画像の階調値が変動するか否かを判定する。取得部は、判定部によって第二画像の階調値が変動すると判定されたときに、第一補正係数を補正した第二補正係数(実施例1の補正係数β)を取得する。補正部は、第二補正係数を用いて読取画像の階調値を補正する。
【0061】
こうすることで、第二補正係数を用いて補正した後の読取画像では第一画像における不自然な明るさの明暗が軽減されるため、読取画像の見栄えが向上する。また、第一画像において第一部分と第二部分との間の明暗の差を小さくすることができるため、第一画像を圧縮する際の圧縮率を上げることができる。
【0062】
また、本開示の画像処理装置において、補正部は、判定部によって第二画像の階調値が変動すると判定されたときに、副走査方向において、第二画像の階調値の変動量が閾値以上である領域(実施例1の4240~6265ラインの領域)を第二補正係数で補正する一方で、第二画像の階調値の変動量が閾値未満である領域(実施例1の1~4239ラインの領域、及び、実施例1の6266~8000ラインの領域)を第一補正係数で補正する。
【0063】
こうすることで、階調値の変動量がそれぞれ異なる各領域の階調値を、各領域に最適な補正係数で補正することができる。
【0064】
また、本開示のスキャナ装置において、取得部は、第二画像の変動後の階調値に対する、第二画像の変動前の階調値の割合(実施例1の式(1)における「SG/G2」)に応じて第一補正係数を補正することにより第二補正係数を取得する。
【0065】
こうすることで、第二画像の階調値の変動量に応じた最適な第二補正係数を取得することができる。
【符号の説明】
【0066】
10 画像処理装置
11 記憶部
12 変動判定部
13 補正係数取得部
14 階調値補正部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17