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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】捕獲装置
(51)【国際特許分類】
   F41B 7/04 20060101AFI20231107BHJP
   F41B 15/10 20060101ALI20231107BHJP
   F42B 12/68 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
F41B7/04 B
F41B15/10
F42B12/68
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019192909
(22)【出願日】2019-10-23
(65)【公開番号】P2021067402
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】520320022
【氏名又は名称】津田 訓範
(74)【代理人】
【識別番号】110001782
【氏名又は名称】弁理士法人ライトハウス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 訓範
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-509462(JP,A)
【文献】特開2006-125816(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0025376(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第110207543(CN,A)
【文献】米国特許第8857305(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F41B 7/00 - 7/04
F41B 15/00 - 15/10
F42B 6/00
F42B 12/00
F42B 12/68
F42B 30/00
F42B 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーにより対象物を捕縛する捕獲装置であって、
カートリッジを着脱可能に保持する筐体と、
カートリッジに収納された、両端部に錘を有するワイヤーを発射させる発射部と
を備え、
両端部の錘がカートリッジの左右のそれぞれに収納され、
発射部が、左右の錘のそれぞれに対応する圧縮ばねの伸縮により、発射方向の後方から、それぞれの錘に衝撃を与えることにより、衝撃を与えた方向に沿ってワイヤーを発射させる、捕獲装置。
【請求項2】
捕獲装置は、拳銃型であり、
発射部が、圧縮ばねと、圧縮ばねに負荷をかける負荷用レバーと、前記負荷を解除するトリガとを含む、請求項1に記載の捕獲装置。
【請求項3】
発射部が、圧縮ばねを複数備え、
負荷用レバーは、複数の圧縮ばねに負荷をかける、請求項2に記載の捕獲装置。
【請求項4】
カートリッジがロック機構を備え、
該ロック機構によりカートリッジが筐体に一時的に固定して保持される、請求項1~3のいずれかに記載の捕獲装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携行することが可能なワイヤー式の捕獲装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、拘束を要する対象(例えば、逃走中の犯人)を的確に捕獲する装置が検討されている。特許文献1には、警察官が携行する警棒を二重管構造とし、ロープやネットを収納した収納管を装着させた警棒が提案されている。収納管は発射手段と一体に形成されたカートリッジであることが記載されている。
【0003】
特許文献2には、銃型の携帯型発射装置からネットを発射することにより、対象を拘束するシステムが提案されている。この携帯型発射装置は、ネットの発射に放出弾薬を使用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-6022号公報
【文献】特表2000-513089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1に記載の警棒では、収納管であるカートリッジが比較的長いので、予備のカートリッジを携行することが現実的ではなく、一度発射し、捕縛に失敗した場合、連続的に再度発射することが困難である。また、特許文献2に記載のシステムでは、ネットの発射に放出弾薬を使用するので、法規制の観点から使用する国や地域が限定される。
【0006】
本発明は、使用地域等の制限がなく、捕獲対象に直接接触せずに、安全に捕獲することが可能な捕獲装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の[1]~[4]のいずれかにより、上記課題を解決するものである。
[1]ワイヤーにより対象物を捕縛する捕獲装置であって、カートリッジを着脱可能に保持する筐体と、カートリッジに収納された、両端部に錘を有するワイヤーを発射させる発射部とを備え、発射部が、圧縮ばねの伸縮により、ワイヤーを発射させる、捕獲装置;
[2]捕獲装置は、拳銃型であり、発射部が、圧縮ばねと、圧縮ばねに負荷をかける負荷用レバーと、前記負荷を解除するトリガとを含む、[1]に記載の捕獲装置;
[3]発射部が、圧縮ばねを複数備え、負荷用レバーは、複数の圧縮ばねに負荷をかける、[2]に記載の捕獲装置;
[4]カートリッジがロック機構を備え、該ロック機構によりカートリッジが筐体に一時的に固定して保持される、[1]~[3]のいずれかに記載の捕獲装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、圧縮ばねを利用してワイヤーを発射できることで、捕獲対象に直接接触することなく、安全に捕獲することが可能な捕獲装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、捕獲装置の外観の概略図である。
図2】本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、捕獲装置の概略図である。
図3】本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、カートリッジの概略図である。
図4】本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、捕獲装置の発射部の発射機構について説明する概略図である。
図5】本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、捕獲装置の発射操作について説明する概略図である。
図6】本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、捕獲装置の概略図である。
図7】本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、カバーを備えた捕獲装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。以下、効果に関する記載は、本発明の実施の形態の効果の一側面であり、ここに記載するものに限定されない。
【0011】
(捕獲装置およびカートリッジ)
本発明の捕獲装置は、ワイヤーにより対象物を捕縛する際に用いる捕獲装置である。図1は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、捕獲装置の外観の概略図である。また、図2は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、捕獲装置の概略図であって、図1に示す捕獲装置の上面図である。
【0012】
捕獲装置1は、カートリッジを着脱可能に保持する筐体2と、カートリッジを出し入れする入出口3と、ワイヤーを発射させる発射部4とを備える。捕獲装置1の形状は、片手で掌握することが可能であることが好ましい。図1は、グリップ5のある拳銃型の捕獲装置を一例として示す。捕獲装置1は、操作時の安定性を確保するために、筐体のグリップ側に装置支え6を備えてもよい。
【0013】
捕獲装置1は、携行できるものであって、片手で掌握することができるように、軽量であることが好ましい。そのため、捕獲装置筐体は、ステンレス、アルミニウム、チタン、アルミニウム合金、チタン合金などの金属材料や、ポリカーボネートなどの樹脂材料から形成したものであることが好ましい。
【0014】
捕獲装置1のカートリッジ7を出し入れする入出口3は、ワイヤーの発射口としても機能する。入出口3の形状は特に限定されず、カートリッジの形状に合わせて適宜設計することができる。図1では、入出口3を形成する筐体2の左右の壁面のそれぞれに勘合溝3a、3bが形成されており、該勘合溝3a、3bに勘合するように、カートリッジ7が挿入される。使用後のカートリッジ7は、該勘合溝3a、3bに沿って入出口3から取り外される。
【0015】
図3に、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、カートリッジを示す図である。図3(a)は、カートリッジの上面図である。図3(b)は、カートリッジの高さ方向の中央を含み、且つ、高さ方向に垂直な面における断面図である。図3(c)は、カートリッジの側面図である。
【0016】
図3(a)に示すように、カートリッジ7は上面視をした場合に、錨状の形状を有している。錨のアンカーヘッド(錨冠)に相当する部分に、ワイヤー14を収納するためのワイヤー収納部8を有しており、錨のアーム(爪)に相当する部分に、錘12、13を収納するための錘収納部9、10を備える。ワイヤー収納部8と錘収納部9、10とは一体に形成されている。
【0017】
また、錨のシャンク(錨柄)に相当する部分に保持部11を備えている。図3(c)に示すように、保持部11は、上下それぞれに1つずつ設けられている。図3(c)に示すように、保持部11は、凸状に形成されたロック機構15を備える。上側の保持部11aのロック機構15aは上側に突出するように形成されており、下側の保持部11bのロック機構15bは下側に突出するように形成されている。ロック機構15a、15bは、捕獲装置の筐体2に設けられたカートリッジ用のロック孔16に嵌合される。
【0018】
ここで、カートリッジ7において、錨のアンカーヘッド(錨冠)に相当する側を前方とし、錨のシャンクのアンカーヘッドと反対方向にある端部側を後方と定義する。カートリッジ7の側面のうち前方の側面7a、並びに、錘収納部9、10の後方の側面7b及び側面7cは、衝撃を加えることにより貫通が可能なものである。カートリッジ7の本体は、例えば、プラスチック等の素材により形成されるが、カートリッジ7を使用する前に、収納された錘12、13及びワイヤー14がカートリッジ7内から離脱しないように、側面7a~7cは、例えばアルミ箔等で形成されている。
【0019】
カートリッジ7が捕獲装置1に装着された状態で、圧縮された圧縮ばねが復元されると、圧縮ばねが側面7b、7cを貫通し、錘12、13に衝撃を与える。錘12、13は、この衝撃により、側面7aを貫通し、ワイヤー14を伴ってカートリッジ7から発射される。
【0020】
なお、錘12、13の形状は、直方体状や円柱状などの縦長状の形状を有することが好ましい。錘12、13の長手方向の長さは、錘収納部9、10の幅方向よりも長いものであることが好ましい。錘12、13の長手方向の長さが、錘収納部9、10の幅方向よりも長いものであることで、錘12、13が側面7aから発射された場合に、錘12、13の長手方向と発射方向が一致することになるため、錘12、13の空気抵抗を小さくすることができる。錘12、13は、カートリッジ7に収納できるように、縦0.3~1cm、横0.3~1cm、高さ1~4cmまたは、直径3mm~10mm、長さ10mm~40mmのサイズとすることが好ましい。
【0021】
ワイヤー14は、ポリアミドイミド繊維、ポリイミド繊維、超高分子量ポリエチレンなどの繊維製のものを使用することができる。ワイヤー14の全長は、対象を捕縛するのに十分な長さであって、例えば、2m~3mである。
【0022】
ワイヤー14の両端部の錘12、13の素材としては、金属や樹脂などを採用することができる。各錘の重量は、錘に使用する素材によって、適宜選択することができる。
【0023】
ワイヤー収納部8は、錘収納部9、10に収納した錘12、13が、錘収納部9、10から離脱しないように、ワイヤー収納部8にワイヤー14が十分に充填された状態となるような容積を有するものであることが好ましい。錘収納部9、10から錘12、13が離脱すると、錘12、13及びワイヤー14の飛翔距離が十分でなくなる場合がある。
【0024】
図3(d)に、カートリッジを保持した捕獲装置の上面概略図を示す。カートリッジ7は、図3(d)に示すように、カートリッジ7を出し入れする入出口3から挿入されて、筐体に設けられたロック孔16にロック機構15が嵌合されることで、筐体2に装着することができる。カートリッジ7は、保持部11を高さ方向の上下から力を加えることにより(図3(c)の矢印の位置から矢印の方向に沿って力を加えることにより)、ロック機構15をロック孔16から脱離させ、捕獲装置1の筐体2から取り外すことができる。なお、保持部11は、指で上下から押圧することで、その形状が変化し、押圧した力を開放することで、その形状が元に復元するものであることが必要であり、例えば、弾性を有するプラスチックであることが好ましい。
【0025】
捕獲装置1において、カートリッジ7の錘収納部9、10は、捕獲装置1の圧縮ばね17、18の前方に配置される。このような構造により、発射部4の圧縮ばねによる復元力を錘が直接受けることができる。
【0026】
本発明の捕獲装置1の発射部4は、圧縮ばねの伸縮によりワイヤーを発射させる。発射部4は、圧縮ばね17、18と、圧縮ばねに負荷をかける負荷用レバー19と、負荷を解除するトリガ20とを含む。
【0027】
圧縮ばね17、18は、いわゆるコイルばねであることが好ましい。図2に示すように、錘を打ち出す復元力を得られる点から、圧縮ばねは複数備えられることが好ましい。なお、全ての図面において、圧縮ばねは簡略化のために長方形状で示している。
【0028】
負荷用レバー19は、伸縮部21を備える。また、負荷用レバー19は、筐体2の軸22を中心に回転可能な構造である。このような構成とすることで、後述のように圧縮ばねに負荷をかけることができる。
【0029】
(捕獲装置の手順)
以下、捕獲装置1の操作手順の一例を説明する。図4は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、捕獲装置の発射部の発射機構について説明する概略図である。図4(a)~図4(e)においては、負荷用レバーの操作に伴う圧縮ばねの変位がわかるように、圧縮ばね部分を透視図として示している。
【0030】
図4(a)に示す位置にある負荷用レバー19を、捕獲装置1のカートリッジ入出口3側に倒し、図4(b)に示す垂直位置となるように移動させる。ここでは、圧縮ばね17、18は、自然長の状態である。次に、図4(c)に示すように、負荷用レバー19の伸縮部21を垂直方向に伸ばす。
【0031】
さらに、伸縮部21を伸ばした状態の負荷用レバー19を、軸22を中心に上方向に回転させ(図中の矢印)、図4(d)に示すように、垂直上方向まで移動させる。この操作により、圧縮ばね17、18は負荷をかけられた状態の発射可能位置まで圧縮される。また、圧縮ばねは、フック(図示しない)により発射可能位置で保持され、負荷をかけられた状態のままとなる。
【0032】
続いて、負荷用レバー19を回転させて、図4(c)に示す垂直下方向に戻し、伸縮部21を図4(b)に示す位置まで縮めた後、負荷用レバー19をグリップ5側に引いて、図4(e)に示す元の位置に戻す(以下において、待機状態ということがある)。
【0033】
次に、本発明の捕獲装置の待機状態からワイヤーを発射させる操作について、図5を参照して説明する。図5は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、捕獲装置の発射操作について説明する概略図である。
【0034】
圧縮ばね17、18を待機状態とした後、ワイヤー14と錘12、13を収納したカートリッジ7を筐体2の入出口3より挿入する。挿入したカートリッジ7は、ロック機構15により筐体に保持させる。カートリッジ7をセットした捕獲装置を捕縛対象に向け(図5(a)では不図示)、トリガ20を筐体入出口3と反対側に引く。トリガ20を引くと、圧縮ばね17、18を発射可能位置で保持していたフックが解除され、圧縮ばねが自然長に戻る。
【0035】
このときの圧縮ばね17、18の復元力により、図5(a)に示すように、カートリッジ内の錘12、13が押し出され、それに伴いワイヤー14も入出口3から発射される。発射されたワイヤー14は、図5(b)に示すように、錘12、13が対象方向前方となり、カートリッジ内で折りたたまれていたワイヤーが引き延ばされて飛翔する。錘12、13及びワイヤーは、錘間の間隔を徐々に広げながら飛翔する。捕縛対象23が2つの錘12、13の間に入り、ワイヤー14が対象に接触すると、図5(c)のようにワイヤー14が対象に絡みつき、対象23を捕縛することができる。
【0036】
ワイヤー14が発射された後、捕獲装置1に保持されたカートリッジ7は空の状態となる。空のカートリッジ7は、上述のようにロック機構を解除し捕獲装置筐体から取り外す。その後、捕獲装置1を再度待機状態とし、ワイヤーと錘が収納されたカートリッジ7を保持させる。このような一連の操作により、短時間で連続的にワイヤーを発射させることが可能となる。
【0037】
(捕獲装置のその他構成)
本発明の捕獲装置には、安全を期すために、安全装置を備えることが好ましい。図6は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、捕獲装置の概略図である。安全装置は、例えば、図6に示すようなレバー式であって、安全装置レバー24を上げるとトリガ20を引くことができない状態となる。ワイヤー14を発射させるとき、即ちトリガ20を引く場合は、安全装置レバー24を下げる。このような構成により、携行中の誤射を防ぐことが可能となる。
【0038】
また、本発明の捕獲装置1には、携行の際にベルトなどに固定して移動することができるように、図6に示すようなベルト用フック25を備えても良い。また、図7(a)及び(b)に示すように、カートリッジの出し入れ、負荷用レバーやトリガの操作を妨げない範囲で、捕獲装置をカバー26により保護することもできる。
【0039】
本発明の捕獲装置は、ワイヤーの発射に圧縮ばねの復元力を利用する構造とすることで、炸薬等の使用が不要であるので、日本国内において使用することができる。また、本発明の捕獲装置は、人に対しての使用のみならず、畑などを荒らす小動物を確保するためにも適用できる可能性がある。
【符号の説明】
【0040】
1 捕獲装置
2 筐体
3 入出口
4 発射部
5 グリップ
6 装置支え
7 カートリッジ
8 ワイヤー収納部
9、10 錘収納部
11 保持部
12、13 錘
14 ワイヤー
15 ロック機構
16 ロック孔
17、18 圧縮ばね
19 負荷用レバー
20 トリガ
21 伸縮部
22 軸
23 対象
24 安全装置レバー
25 ベルト用フック
26 カバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7