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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】開繊機構
(51)【国際特許分類】
   D02J 1/18 20060101AFI20231107BHJP
【FI】
D02J1/18 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019198818
(22)【出願日】2019-10-31
(65)【公開番号】P2021070888
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】粟野 利宏
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0083350(KR,A)
【文献】特開2008-246782(JP,A)
【文献】特開平5-247716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02G 1/00 - 3/48
D02J 1/00 - 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維束を開繊する開繊機構であって、
前記繊維束の開繊作用を行なうための複数本の開繊バーを備え、
各々の前記開繊バーは、
前記開繊バーを回動可能に保持する回動軸と、
第1開繊ロールと、
前記回動軸を挟んで前記第1開繊ロールと点対称に配置された第2開繊ロールと
前記第1開繊ロールと前記第2開繊ロールのうち、待機中の開繊ロールの表面を清掃する清掃部と
を備え、
前記第1開繊ロールと前記第2開繊ロールとを交代させて前記繊維束の開繊を行うことを特徴とする開繊機構。
【請求項2】
複数本の前記開繊バーは、該開繊機構において上下に配置され、
前記繊維束は、開繊される際に上下の前記開繊バーの間を蛇行しながら進行することを特徴とする請求項1記載の開繊機構。
【請求項3】
前記第1開繊ロールおよび前記第2開繊ロールのうち、開繊中の開繊ロールに所定量の汚れが蓄積されたか否かの判定を行う判定部と、
前記判定部によ所定量の汚れが蓄積されていると判定された場合に、前記回動軸を回動させて前記第1開繊ロールと前記第2開繊ロールとを交代させる回動部
を備え、
前記清掃部は、所定量の汚れが蓄積されている待機中の前記開繊ロールの表面を清掃すことを特徴とする請求項1または2記載の開繊機構。
【請求項4】
開繊中の前記開繊ロールを撮像するカメラを備え、
前記判定部は、前記カメラによって撮像された映像に基づいて前記開繊ロールに所定量の汚れが蓄積されたか否かの判定を行うことを特徴とする請求項3記載の開繊機構。
【請求項5】
前記清掃部として、待機中の前記開繊ロールに蓄積された所定量の汚れを吸引するノズルを備えたことを特徴とする請求項4記載の開繊機構。
【請求項6】
待機中の前記開繊ロールを回動させるロール回動部と、
前記清掃部として、前記開繊ロールの表面に近接するブレードとを備え、
前記ブレードにより、前記ロール回動部によって回動する前記開繊ロールの所定量の汚れを掻き落すことを特徴とする請求項4記載の開繊機構。
【請求項7】
所定量の汚れが蓄積された待機中の前記開繊ロールの表面に薬液を滴下塗布する薬液滴下塗布部をさらに備えることを特徴とする請求項6記載の開繊機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、長繊維強化樹脂を製造する装置において、繊維束を開繊する際に用いられる開繊機構に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維で強化された樹脂として、長繊維強化熱可塑性樹脂が知られている。この長繊維強化熱可塑性樹脂は、繊維と熱可塑性樹脂から成る複合材料であり、熱可塑性樹脂の特性と繊維の強度や耐熱性が複合化され、さまざまな構造部材、耐熱部材に使用されている。
【0003】
従来より、かかる長繊維強化熱可塑性樹脂を製造する際には、繊維束を溶融された熱可塑性樹脂に含浸させて連続繊維強化ストランドを作成することが行われている。ここで、連続繊維強化ストランドに熱可塑性樹脂を十分に含浸させるために、繊維束は開繊バーによって予め開繊されてから熱可塑性樹脂に含浸される。
【0004】
この開繊工程においては、繊維束の含浸性を高めるために開繊バーで繊維束に張力を加えて開繊を行うのが一般的である。かかる方法としては、たとえば、図6に示すように、開繊バー101を上下にずらして配置し、繊維束102を蛇行させることにより張力を加える方法などが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-246782号公報
【文献】特開平5-247716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、かかる開繊工程においては、繊維束102に負担が掛かるため、繊維破断が生じるおそれがある。繊維破断が生じた場合、切断された繊維が毛羽103になり、含浸ダイに毛羽103が侵入し、含浸ダイの排出口で毛羽詰まりが惹起され、連続繊維強化ストランドの破断に繋がる可能性がある。
【0007】
また、繊維束102に塗布されている材質が開繊バー101の表面に付着し、繊維束102と開繊バー101との間の摩擦力が増大し、毛羽103の発生が促進されるおそれもある。
【0008】
このため、このような問題を抑制する手段としては、開繊バーの上部に吸引部を備えた製造装置(例えば、特許文献1参照)、毛羽を吹き飛ばすためのノズルを形成した開繊機構(例えば、特許文献2参照)、および開繊バーの表面を掃除するための装置を設置した開繊機構などが存在する。
【0009】
しかしながら、長繊維強化樹脂を製造する装置の運転を長時間続けると、運転中に毛羽や表面の汚れが少しずつ開繊バーの表面に蓄積されるため、これらの汚れを全て取り除くことは困難なものになる。すなわち、時間の経過とともに開繊バーが清浄ではなくなっていき、毛羽の発生が起こりやすくなるという問題があった。
【0010】
本発明の目的は、汚れ難く確実に毛羽を除去することができる開繊機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の開繊機構は、
繊維束を開繊する開繊機構であって、
前記繊維束の開繊作用を行なうための複数本の開繊バーを備え、
各々の前記開繊バーは、
前記開繊バーを回動可能に保持する回動軸と、
第1開繊ロールと、
前記回動軸を挟んで前記第1開繊ロールと点対称に配置された第2開繊ロールと
前記第1開繊ロールと前記第2開繊ロールのうち、待機中の開繊ロールの表面を清掃する清掃部と
を備え、
前記第1開繊ロールと前記第2開繊ロールとを交代させて前記繊維束の開繊を行うことを特徴とする。
【0012】
これにより、それぞれの開繊バーが回動軸を挟んで点対称に配置された一対の開繊ロールを備えるため、開繊を行う開繊ロールを交代させ、待機中の開繊ロールの清掃を行うことができる。このため、繊維束との接触を気にすることなく容易に開繊ロールの汚れを取り除くことができ、汚れ難く確実に毛羽を除去することができる。
【0013】
また、本発明の開繊機構は、
複数本の前記開繊バーは、該開繊機構において上下に配置され、
前記繊維束は、開繊される際に上下の前記開繊バーの間を蛇行しながら進行することを特徴とする。
すなわち、本発明は、複数本の開繊バーが繊維束の進行方向に沿って上下にジグザグに配置されたタイプの開繊機構において好適に適用される。
【0014】
また、本発明の開繊機構は、
前記第1開繊ロールおよび前記第2開繊ロールのうち、開繊中の開繊ロールに所定量の汚れが蓄積されたか否かの判定を行う判定部と、
前記判定部によ所定量の汚れが蓄積されていると判定された場合に、前記回動軸を回動させて前記第1開繊ロールと前記第2開繊ロールとを交代させる回動部
を備え、
前記清掃部は、所定量の汚れが蓄積されている待機中の前記開繊ロールの表面を清掃すことを特徴とする。
【0015】
このように、所定量の汚れが蓄積されたか否かの判定を行う判定部を備えれば、目視で判定する場合のように汚れの蓄積を見逃すリスクも少なく、汚れの蓄積の有無を的確に判定することができる。
【0016】
また、本発明の開繊機構は、
開繊中の前記開繊ロールを撮像するカメラを備え、
前記判定部は、前記カメラによって撮像された映像に基づいて前記開繊ロールに所定量の汚れが蓄積されたか否かの判定を行うことを特徴とする。
このように、カメラを用いることにより、開繊ロールに所定量の汚れが蓄積されたか否かを効率的に判定することができる。
【0017】
また、本発明の開繊機構は、
前記清掃部として、待機中の前記開繊ロールに蓄積された所定量の汚れを吸引するノズルを備えたことを特徴とする。
すなわち、開繊ロールの近傍にノズルを配置することにより、人手を介してその都度汚れを吸引するよりも効率的に汚れを清掃することができる。
【0018】
また、本発明の開繊機構は、
待機中の前記開繊ロールを回動させるロール回動部と、
前記清掃部として、前記開繊ロールの表面に近接するブレードと
を備え、
前記ブレードにより、前記ロール回動部によって回動する前記開繊ロールの所定量の汚れを掻き落すことを特徴とする。
これにより、開繊ロールにこびりついた汚れも的確に除去することができる。
【0019】
また、本発明の開繊機構は、
所定量の汚れが蓄積された待機中の前記開繊ロールの表面に薬液を滴下塗布する薬液滴下塗布部をさらに備えることを特徴とする。
これにより、開繊ロールの表面に付着した汚れが溶解され、ブレードによる汚れの除去を効率よく行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、汚れ難く確実に毛羽を除去できる開繊機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施の形態に係る開繊機構を用いた長繊維強化熱可塑性樹脂製造装置の概略図である。
図2】実施の形態に係る開繊機構において上下に配置された一対の開繊バーを示す図である。
図3】実施の形態に係る開繊機構が備える制御装置の構成を示すブロック図である。
図4】実施の形態に係る開繊機構において第1開繊ロールと第2開繊ロールを入れ替える状況を説明する図である。
図5】他の実施の形態に係る開繊機構において上下に配置された一対の開繊バーを示す図である。
図6】従来の開繊機構において上下に配置された開繊バーを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図1は、実施の形態に係る開繊機構を備えた長繊維強化熱可塑性樹脂製造装置の概略図である。図1に示すように、長繊維強化熱可塑性樹脂製造装置2は、繰出機4、開繊機構5、押出機8、含浸ダイ10、賦形ダイ12、水槽14、フォーミングロール16、引取機18、カッター部20を備えている。
【0023】
ここで、繰出機4には、繊維束32が巻回された複数の炭素繊維ロービング4aが収納されている。また、繰出機4は、炭素繊維ロービング4aから繊維束32を繰り出すための繰出ロール4bを備えている。なお、繊維束32には、たとえば、ガラス繊維、炭素繊維などが用いられる。
【0024】
開繊機構5は、繊維束32を開繊するための機構であり、繰出ロール4bから繰り出された繊維束32を開繊する開繊工程において開繊作用を実行する複数本の開繊バー6が繊維束32の進行方向に沿って上下にジグザグに配置されている。また、開繊機構5には、開繊バー6の回動や吸引等の制御を行う制御装置58が備えられている。なお、開繊バー6の構造、作用や制御装置58の構造等については、後に詳しく説明する。
【0025】
押出機8は、溶融した熱可塑性樹脂を含浸ダイ10に供給する装置であり、含浸ダイ10は、開繊された繊維束32に溶融した熱可塑性樹脂を含浸する含浸工程を実行する装置である。かかる含浸工程において連続繊維強化ストランド34が作成される。なお、熱可塑性樹脂には、たとえば、ポリプロピレン、ポリアミドなどが用いられる。
【0026】
賦形ダイ12は、連続繊維強化ストランド34の径を絞るための装置であり、含浸ダイ10の連続繊維強化ストランド34が排出される側に取り付けられている。ここで、賦形ダイ12は、含浸ダイ10から離れた位置に配置すると熱可塑性樹脂が冷却されて固化し連続繊維強化ストランド34の賦形がしづらくなるため、少なくとも含浸ダイ10のごく近傍に配置される必要がある。
【0027】
水槽14は、賦形ダイ12で径が絞られた連続繊維強化ストランド34を水などの液体に浸し、冷却を行うための装置である。
フォーミングロール16は、水槽14で冷却された連続繊維強化ストランド34の外径形状を成形するためのロールバーである。
【0028】
引取機18は、連続繊維強化ストランド34を引き取る引取工程を実行するためのロールである。
カッター部20は、引取機18で引き取った連続繊維強化ストランド34を所定の長さにカッティングするための装置である。このカッター部20で連続繊維強化ストランド34をカットすることにより、長繊維強化熱可塑性樹脂38が製造される。
【0029】
次に、本発明において長繊維強化熱可塑性樹脂製造装置2の要部を構成する開繊機構5について説明する。図2は実施の形態に係る開繊機構5において上下に配置された一対の開繊バー6を示す図である。図2に示すように、各々の開繊バー6は、開繊ロール42、回動軸46、および連結部材48を備えており、それぞれの開繊ロール42には、一対の第1開繊ロール42aと第2開繊ロール42bが含まれている。
【0030】
ここで、第1開繊ロール42aと第2開繊ロール42bは、それぞれ開繊時に繊維束32と摺接し回転するロールバーであり、それぞれ回動軸46を挟んで点対称に配置されている。また、回動軸46は開繊バー6を回動可能に保持している。連結部材48は、長手方向中央に回動軸46を備え、両端部の第1開繊ロール42aと第2開繊ロール42bを連結している。
そして、回動軸46を回動させることにより第1開繊ロール42aと第2開繊ロール42bは、それぞれ交代して繊維束32の開繊を行うことが可能である。
【0031】
また、それぞれの第2開繊ロール42bの近傍には、第2開繊ロール42b(待機中の開繊ロール42)の表面に付着しているほこりや毛羽などの汚れを吸引するノズル52が配置されている。ここで、ノズル52は、第2開繊ロール42b(待機中の開繊ロール42)と平行に配置された中空棒状の部品であり、清掃部として機能する。このノズル52の第2開繊ロール42bの位置する側には、長手方向に延びる溝52aが形成されている。
【0032】
図3は、実施の形態に係る開繊機構5の制御装置58の構成を示すブロック図である。図3に示すように、制御装置58は、各部を統括的に制御する制御部60を備えている。制御部60には、回動軸46を回動させる回動部62、待機中の開繊ロール42の汚れを監視するカメラ64、ノズル52に吸引力を発生させる吸引部66、待機中の開繊ロール42を回転させるロール回動部67、汚れを溶解するための薬液を注入する薬液注入部68が接続されている。なお、カメラ64は、たとえば、開繊機構5の上方など、開繊機構5の近傍に取り付けられ、開繊機構5に含まれる開繊ロール42を監視する。
【0033】
次に、実施の形態に係る開繊機構5の作用について説明する。まず、開繊工程において、繊維束32が開繊機構5に差し掛かると、繊維束32は各開繊バー6間を蛇行しながら進行し、開繊されて徐々に幅を広げながら含浸ダイ10に向かって進行する。ここで、制御部60は、カメラ64による開繊ロール42の撮像を開始し、撮像された映像を用いて所定量の汚れが蓄積された開繊中の開繊ロール42(ここでは第1開繊ロール42a)があるか否かを判定する。そして、所定量の汚れが蓄積された開繊中の開繊ロール42がある場合、回動軸46を回動させ、該当する開繊中の開繊ロール42を待機中の開繊ロール42(ここでは第2開繊ロール42b)と交代させて清掃を行う。すなわち、第1開繊ロール42aと第2開繊ロール42bを入れ替えて、第1開繊ロール42aの清掃を行う。
【0034】
具体的には、図4(a)のように、第1開繊ロール42aに繊維束32を摺接させて開繊を実行していたとする。ここで、制御部60は、撮像された映像から第1開繊ロール42aに所定量の汚れが蓄積さていることを判定した場合、回動軸46を回動させる。なお、撮像された映像から所定量の汚れが蓄積されたか否かについては、たとえば、所定の画像解析等の既存技術を用いて判定する。
【0035】
制御部60は、まず、図4(b)のように、第1開繊ロール42aと第2開繊ロール42bの双方を繊維束32に接触させた状態を経て、図4(c)のように、さらに90°回動軸46を回動させて第2開繊ロール42bのみを繊維束32に接触させた状態を経過させる。そして、図4(d)のように、さらに回動軸46を回動させ、図4(a)における第1開繊ロール42aと第2開繊ロール42bを完全に交代させた状態に移行させる。
【0036】
次に、制御部60は、吸引部66を駆動し、ノズル52を介して第1開繊ロール42aの表面に付着した汚れを吸引する。このように、汚れが蓄積した開繊中の第1開繊ロール42aを汚れが蓄積していない待機中の第2開繊ロール42bと交代させ、汚れが蓄積した第1開繊ロール42aが繊維束32に接触していない状態を作り出すことにより、第1開繊ロール42aを汚れの清掃のみに専念させることが可能となる。
【0037】
ここで、第1開繊ロール42aと第2開繊ロール42bを完全に交代させた後さらに時間が経過し、制御部60が、カメラ64で撮像された映像により、第2開繊ロール42bに所定量の汚れが蓄積さていることを判定したとする。この場合、制御部60は、第2開繊ロール42bを第1開繊ロール42aと交代させて再び第1開繊ロール42aによる繊維束32の開繊を実施すると共に(図4(a)参照)、ノズル52を介して吸引部66による第2開繊ロール42bの清掃を実施する。以後、開繊ロール42の交代と清掃を繰り返す。
【0038】
この実施の形態に係る開繊機構5によれば、それぞれの開繊バー6が回動軸46を挟んで点対称に配置された一対の開繊ロール42を備えるため、開繊を行う開繊ロール42を交代させ、待機中の開繊ロール42の清掃を行うことにより、繊維束32との接触を気にすることなく容易に開繊ロール42の汚れを取り除くことができる。これにより、汚れ難く確実に毛羽を除去できる開繊機構を提供することができる。
【0039】
また、待機中の開繊ロール42を清掃するため、清掃中に取り除いたほこりや毛羽などの汚れが誤って繊維束32に付着する事態を抑制することができる。
なお、上述の実施の形態においては、カメラ64で汚れを監視し、ノズル52で汚れを吸引して開繊ロール42の清掃を行っているが、他の手段を用いて清掃を行ってもよい。たとえば、図5に示すように、待機中の開繊ロール42(第2開繊ロール42b)の表面の近傍に、表面に付着している汚れを掻き落すブレード54を清掃部として配置してもよい。ここで、ブレード54は、待機中の開繊ロール42と平行に配置された平棒状の部品であり、尖った先端を待機中の開繊ロール42の表面に近接させている。
【0040】
ここで、制御部60は、第1開繊ロール42aに所定量の汚れが蓄積すると、第1開繊ロール42aと第2開繊ロール42bを入れ替える。そして、ロール回動部67により、汚れが蓄積している待機中の第1開繊ロール42aを回動させることにより、ブレード54で第1開繊ロール42a(図4(d)参照)の表面に付着している汚れを掻き落してもよい。これにより、開繊ロール42にこびりついた汚れも的確に除去することができる。
【0041】
ここで、図5に示すように、さらに待機中の開繊ロール42(第2開繊ロール42b)の表面の近傍に、待機中の開繊ロール42の表面に滴下塗布する薬液滴下塗布部56を配置してもよい。薬液滴下塗布部56は、待機中の開繊ロール42の直上に配置された中空棒状の部品であり、待機中の開繊ロール42に薬液を滴下する図示しない孔が長手方向に複数形成されている。
【0042】
この場合、制御部60は、ブレード54で第1開繊ロール42a(図4(d)参照)の汚れが掻き落された後に薬液注入部68から薬液を抽出し、薬液滴下塗布部56から第1開繊ロール42aの表面に薬液を滴下塗布する。これにより、第1開繊ロール42aの表面に付着した汚れが溶解され、ブレード54による汚れの除去を効率よく行うことができる。また、待機中の開繊ロール42に薬液を滴下塗布するため、繊維束32に薬液の一部が付着する危険性を低減することができる。なお、薬液には、たとえば有機溶剤、もしくは界面活性剤などが用いられる。また、余分な溶液は、ブレード54で掻き落して図示しない回収部により回収する。
【0043】
また、上述の実施の形態において、カメラ64による監視に代えて他の検知手段を経由して汚れを判定してもよい。たとえば、長繊維強化熱可塑性樹脂製造装置2の運転開始から所定時間が経過した場合、制御部60は、第1開繊ロール42aの表面に所定量の汚れが蓄積したと判定し、第1開繊ロール42aと第2開繊ロール42bを交代させてもよい。
【0044】
また、上述の実施の形態において、どうしても開繊ロール42の汚れが除去し切れないが、長繊維強化熱可塑性樹脂の生産を継続したい場合は、待機中の開繊ロール42を新しい開繊ロール42と交換してもよい。
また、上述の実施の形態において、ノズル52には、溝52aに代えて長手方向に複数の孔を形成し、この孔から汚れを吸引してもよい。
【0045】
また、上述の実施の形態においては、開繊ロール42の交代、清掃を制御装置58を用いて自動制御にて行っているが、もちろん手作業でこれらの作業を行っても構わない。たとえば、回動部62によらずに手作業で回動軸46を街道させて開繊ロール42を交代させてもよく、カメラ64によらず、目視で所定量の汚れを検査してもよい。また、手作業で開繊ロール42の汚れを清掃してもよい。具体的には、ロール回動部67によらずに手作業で開繊ロール42を回動させ、手持ちのブレードを開繊ロール42に当てて開繊ロール42の表面に付着している汚れを掻き落してもよい。この際、溶液が満たされたバスを開繊ロール42の表面に接触させ、溶液を塗布してもよい。
【0046】
また、上述の実施の形態において、開繊中の開繊ロール42は複数存在するが(図1参照)、所定量の汚れの判定は、それぞれの開繊中の開繊ロール42につき個別に行うことができる。すなわち、必ずしもすべての開繊中の開繊ロール42を同時に回動させて同時に待機中の開繊ロール42と交代させる必要はない。
【符号の説明】
【0047】
2 長繊維強化熱可塑性樹脂製造装置
4 繰出機
4a 炭素繊維ロービング
4b 繰出ロール
5 開繊機構
6 開繊バー
8 押出機
10 含浸ダイ
12 賦形ダイ
14 水槽
16 フォーミングロール
18 引取機
20 カッター部
32 繊維束
34 連続繊維強化ストランド
38 長繊維強化熱可塑性樹脂
42 開繊ロール
42a 第1開繊ロール
42b 第2開繊ロール
46 回動軸
48 連結部材
52 ノズル
52a 溝
54 ブレード
56 薬液滴下塗布部
58 制御装置
60 制御部
62 回動部
64 カメラ
66 吸引部
67 ロール回動部
68 薬液注入部
101 開繊バー
102 繊維束
103 毛羽
図1
図2
図3
図4
図5
図6