(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】湿度センサデバイスの較正
(51)【国際特許分類】
G01N 27/22 20060101AFI20231107BHJP
G01N 27/04 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
G01N27/22 A
G01N27/04 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019202834
(22)【出願日】2019-11-08
【審査請求日】2022-08-23
(32)【優先日】2018-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517220508
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ センサーズ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【氏名又は名称】山下 聖子
(74)【代理人】
【識別番号】100121533
【氏名又は名称】佐々木 まどか
(72)【発明者】
【氏名】ベズ,ドゥニ
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0253912(US,A1)
【文献】特開2016-057144(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103091366(CN,A)
【文献】特表2001-507799(JP,A)
【文献】特開2010-237128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00 - G01N 27/10
G01N 27/14 - G01N 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿度センサデバイスを較正する方法であって、
a)前記湿度センサデバイスにより、第1の較正オフセットを用いて環境の第1の温度における第1の露点および第1の相対湿度を判定するステップと、
b)続いて、前記湿度センサデバイスを加熱して、前記環境を前記第1の温度よりも高い第2の温度に加熱するステップと、
c)続いて、前記湿度センサデバイスにより、前記第2の温度における第2の露点を判定するステップと、
d)続いて、前記判定された第2の露点が前記判定された第1の露点より所定の差を超えて異なるか否かを判定するステップと、
e)続いて、前記判定された第2の露点が前記判定された第1の露点より前記所定の差を超えて異なると判定された場合に、前記湿度センサデバイスの前記第1の較正オフセットを所定の値だけ変化させて、第2の較正オフセットを取得するステップと、
を含
み、
前記第1の較正オフセットと前記第2の較正オフセットとは、前記湿度センサデバイスにより判定された相対湿度に関連し、
1)前記第2の露点が前記判定された第1の露点よりも低いと判定された場合、前記第1の較正オフセットを前記所定の値だけ増加させ、
2)前記第2の露点が前記判定された第1の露点よりも高いと判定された場合、前記第1の較正オフセットを前記所定の値だけ減少させるとともに、
連続して実行される、
f)前記所定の値だけ増加させた前記第1の較正オフセットまたは前記所定の値だけ減少させた前記第1の較正オフセットに基づいて、前記第1の露点の新しい値を判定するステップと、
g)続いて、前記湿度センサデバイスにより、第3の温度における第3の露点を判定するステップと、
h)続いて、前記判定された第3の露点が前記第1の露点の前記判定された新しい値より所定の差を超えて異なるか否かを判定するステップと、
i)続いて、前記判定された第3の露点が前記第1の露点の前記判定された新しい値より前記所定の差を超えて異なると判定された場合に、前記湿度センサデバイスの前記較正オフセットを前記所定の値だけ変化させるステップと、をさらに含む、
方法。
【請求項2】
前記所定の値は、前記第1の較正オフセットのある所定の割合である、
請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
ステップg)で判定された、前記判定されたそれぞれの露点が、ステップf)で判定された、前記第1の露点の前記判定されたそれぞれの新しい値と前記所定の差以下で異なるようになるまで、前記ステップf)~i)を繰り返すステップをさらに含む、
請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記第3の温度は前記第2の温度と、前記第2の温度の10%未満だけ異なる、
請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記所定の差は0.05℃~0.5℃の範囲である、
請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも前記ステップa)~e)は、所定の期間で、自動的に実行される、
請求項1から
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の露点、前記判定された第1の相対湿度、および前記第1の温度を、前記湿度センサデバイスのメモリに記憶するステップをさらに含む、
請求項1から
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記湿度センサデバイスの前記加熱は、前記湿度センサデバイスの処理手段による自己発熱である、
請求項1から
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップa)~e)またはa)~i)は周期的に、実行される、
請求項1から
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から
9のいずれか一項に記載の方法の前記ステップを実行するための、コンピュータにより実行可能な命令を有する1つまたは複数のコンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラム製品。
【請求項11】
請求項
10に記載のコンピュータプログラム製品を記憶するためのメモリと、請求項
10に記載のコンピュータプログラム製品を実行するように構成されている処理手段とを備える湿度センサデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿度センサデバイスに関し、詳細には、相対湿度を測定し、環境における露点を判定するように構成されている湿度センサデバイスの較正に関する。
【背景技術】
【0002】
適切な材料の抵抗変化および静電容量変化に基づいて、いくつかの技術により湿度を測定することができる。例えば、静電容量を測定することにより相対湿度(所与の温度における水の飽和蒸気圧に対する水蒸気の分圧の割合)を判定するための半導体ベースのシステムでは、コンデンサ誘電体として機能するポリマー材料の可逆的水吸収特性に基づいて、湿度を測定することができる。
【0003】
従来の容量相対湿度センサデバイスは、一般に、半導体基板と対の電極とを備え、電極は半導体基板の表面に形成され、特定の距離を挟んで互いに対向している。感湿性誘電体膜が、電極間に配置され、半導体基板の表面に形成される。膜の静電容量は湿度に応じて変化する。センサは、周囲湿度の変動に応じて対の電極間の静電容量の変化を検出することにより、湿度を検出する。静電容量感知型の湿度感知要素は、通常、非感湿性の非導電性構造を備え、適切な電極要素がこの構造に取り付けられまたは配置されると共に、誘電性の高感湿性材料の層または被覆が、電極を覆い、周囲大気から水を吸収して短時間で平衡を実現することができるように位置決めされる。
【0004】
集積相対湿度センサデバイスの応答のオフセットおよび勾配を特定の値に設定して、センサの所望の値の精度を達成することができる。適切な調整回路により、コンデンサ要素の蓄積電荷を読み出すことができる。この回路は、誘電体層の電荷の蓄積に応答して検出され、静電容量、したがって相対湿度の測定値を表すことのできる、発振器の直流電圧または振動周波数の変化を出力する。相対湿度および検出された温度に基づいて、絶対湿度および露点を判定することができる。したがって、例えば、車両のフロントガラスの露点を湿度センサデバイスにより判定することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
感知コンデンサにより相対湿度を測定するには、感知コンデンサの変化する物理的特性を相対湿度に換算して解釈するために、測定回路の較正、特に、オフセットの調節が必要である。例えば、飽和食塩水または不飽和食塩水を利用する、正確な較正のための気候室(climatic chambers)が知られている。しかしながら、長期の整定時間および試験台との複雑な通信が必要である。較正のためにかなりの時間、したがって費用がかかる。
【0006】
さらに、感知コンデンサおよび測定回路を、例えばCMOS技術の文脈における集積回路チップにおいて実現し、製造時に較正することができる。多くのICチップを有するウェーハを一度に製造することができるが、製造されるICチップを含む実際の電子デバイスは、後で、しばしば異なる設備において組み立てられ、較正される。このため、組立時に各電子デバイスを個々に較正することは、時間と労力を消費する。
【0007】
以上のことから、本発明の基礎となる課題は、相対湿度センサデバイス手段を較正するための効率的かつ確実な手順を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、請求項1に記載の(相対)湿度センサデバイスを較正する方法を提供することにより、上記の問題に対処する。
方法は、連続して(記載の順序で)実行される、以下のa)からe)のステップを含む。
すなわち、
a)湿度センサデバイスにより、第1の較正オフセットを用いて環境の第1の温度における第1の露点および第1の相対湿度を判定するステップと、
b)特に自己発熱により湿度センサデバイスを加熱して、環境を(局所的に)第1の温度よりも高い第2の温度に加熱するステップと、
c)湿度センサデバイスにより、第2の温度における第2の露点を判定するステップと、
d)判定された第2の露点が判定された第1の露点より所定の差(公差)を超えて異なるか否かを判定するステップと、
e)判定された第2の露点が判定された第1の露点より所定の差を超えて異なると判定された場合に、湿度センサデバイスの第1の較正オフセットを所定の値(例えば、第1の較正オフセットのある所定の割合)だけ変化させて、第2の較正オフセットを取得するステップとを含む。
【0009】
方法は、湿度センサデバイスの加熱、特に、湿度センサデバイスの自己発熱を利用する。当技術分野において、自己発熱(動作により生じる熱)は、適切な較正によって克服しなければならない重大な問題であると考えられている。これに反して、本発明によれば、自己発熱の現象を較正プロセスに使用することができる。自己発熱は、湿度センサデバイスの処理手段、例えば、マイクロコントローラによって生じさせることができる。しかしながら、開示された手順は、(それに加えて、または代替として)湿度センサデバイスを何らかの形で外部加熱しても有効であることに留意されたい。
【0010】
開示された手順は、安定した環境/閉じた空気容積(closed air volume)において、温度上昇により相対湿度が低下して露点(温度)が一定に維持されることを利用する。露点の一定値からのずれは、何らかの較正外れ(de-calibration)または較正エラーによって生じる。したがって、センサの制御加熱後に判定された露点と、その加熱前に最初に判定された露点との判定された差に基づいて、較正オフセットを調節することにより、自己較正(自動較正)を非常に確実かつ費用および時間を節約する方法で達成することができる。較正オフセットは、湿度センサデバイスにより検出される相対湿度に関連する(以下の詳細な説明も参照)。正確なオフセットにより、例えば、測定された電圧を、環境に存在する実際の相対湿度に正確に換算することができる。
【0011】
特に、実施形態によれば、第2の露点が判定された第1の露点よりも低いと判定された場合、第1の較正オフセットを所定の値だけ増加させ、第2の露点が判定された第1の露点よりも高いと判定された場合、第1の較正オフセットを所定の値だけ減少させる。
【0012】
本発明の湿度センサデバイスを較正する方法は、連続して実行される、以下のf)からi)のステップをさらに含む。
すなわち、
f)変化させた較正オフセットに基づいて、第1の露点の新しい値を判定するステップと、
g)続いて、湿度センサデバイスにより、第3の温度における第3の露点を判定するステップと、
h)続いて、判定された第3の露点が第1の露点の判定された新しい値より所定の差を超えて異なるか否かを判定するステップと、
i)続いて、判定された第3の露点が第1の露点の判定された新しい値より所定の差を超えて異なると判定された場合に、湿度センサデバイスの較正オフセットを所定の値だけ変化させるステップとをさらに含む。
【0013】
所定の差に到達しなくなるまで、ステップf)~i)を繰り返し実行することができる。(それぞれ第3の温度、第4の温度、第5の温度などにおいて判定された)それぞれ判定された新しい(第3、第4、第5などの)露点が、第1の露点のそれぞれ判定された新しい値と所定の差以下で異なるようになるまで、ステップf)~i)を繰り返すことができる。したがって、繰返し手順により正確な較正を達成することができる。
【0014】
ステップa)~e)またはステップa)~i)(所定の差に到達しなくなるまで繰り返すことを含む)を周期的に、例えば、数時間または数分の期間で実行して、サービス時間中に湿度センサデバイスの自動再較正を達成することができる。
【0015】
特定の実施形態によれば、第3の温度は第2の温度と、第2の温度の10%未満だけ異なり、かつ/または判定された第2の露点と判定された第1の露点との所定の差、および判定された第3の露点と第1の露点の判定された新しい値との所定の差は0.05℃~0.5℃の範囲である。例えば、0.1℃の所定の差(公差)を適切に選択することができる。
【0016】
本発明の方法の少なくともステップa)~e)を、所定の期間で、特に1時間に10~2回、自動的に実行することができる。ステップa)~i)を、所定の期間で自動的に実行することができ、判定された露点の差が所定の差を超えなくなるまたは所定の差に一致するまで、繰り返すことができる。
【0017】
さらなる実施形態によれば、第1の露点、判定された第1の相対湿度、および第1の温度を、特に湿度センサデバイスのメモリに記憶して、較正手順に使用することができる。
【0018】
さらに、前述した実施形態のうちの1つによる方法のステップを実行するための、コンピュータにより実行可能な命令を有する1つまたは複数のコンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラム製品が提供される。さらに、そのコンピュータプログラム製品を記憶するためのメモリと、そのコンピュータプログラム製品を実行するように構成されている処理手段とを備える(相対)湿度センサデバイスが提供される。湿度センサデバイスを、自動車の適用において使用するように、例えば、自動車のフロントガラスの相対湿度および/または露点を検出するように構成することができる。
【0019】
図面を参照しながら、本発明のさらなる特徴および利点について説明する。説明において、本発明の好ましい実施形態を示す添付図面を参照する。そのような実施形態は、本発明の完全な範囲を示すものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】閉じた環境における温度に対する露点の依存性を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態による較正プロセスを示すフローチャートである。
【
図3】本発明の特定の実施形態による較正プロセスを示す別のフローチャートである。
【
図4】既に初期較正されエージングされた相対湿度センサデバイスの自動再較正プロセスを示す別のフローチャートである。
【
図5】本発明の実施形態による湿度センサデバイスの基本部品を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、湿度センサデバイスの加熱に基づいて(相対)湿度センサデバイスを(自己)較正する方法を提供する。加熱は、湿度センサデバイスの動作中に、例えば、回路、処理手段、マイクロコントローラなどのうちの少なくとも1つの自己発熱によって生じる、湿度センサデバイスの自己発熱であってよい。閉じた環境(例えば、カノニカル集合とみなされる)において、湿度センサデバイスの加熱により、(少なくとも測定位置で局所的に)環境の温度が上昇する。湿度センサデバイスの処理手段によりデータ処理が行われる。
【0022】
図1は、閉じた環境における温度および相対湿度に対する露点の依存性を示す。直線(一定の勾配を有する)が異なる相対湿度値についてプロットされている。露点τは、以下の式(数1)によって与えられる。ここで、Tおよびφは温度および相対湿度、すなわち蒸気の分圧と飽和蒸気圧との割合、K2およびK3はマグヌス式の定数、すなわち、-45℃~60℃の範囲の温度についてK3=243.12℃およびK2=17.62℃である。
【0023】
【0024】
閉じた環境において、温度の上昇により相対湿度が低下して、露点が(少なくとも略)一定に維持される。したがって、湿度センサデバイスの何らかの加熱により、測定された相対湿度に基づいて判定された露点が変動すると、湿度センサデバイスは正確に較正されない。言い換えると、相対湿度較正オフセット(測定された電圧の値を、例えば、相対湿度値に関連させる)の調節が誤っていると、判定される露点は、変動する温度において一定ではなくなる(したがって、相対湿度のレベルの変動をもたらす)。
【0025】
湿度センサデバイスの製造後、調整回路を較正する必要がある。抵抗または容量湿度センサデバイスの場合、湿度センサデバイスを動作させる環境において湿度の変化に伴って抵抗または容量が変化する。例えば、容量湿度センサデバイスにおいて、ある電圧または充電時間が出力され、これを適切なオフセットにより正確な相対湿度に換算する必要がある。以下で、
図2を参照しながら、本発明の実施形態による適切なオフセットを判定するための較正手順について説明する。
【0026】
始動段階で、湿度センサデバイスにより、測定された相対湿度についての初期較正オフセットに基づいて、露点τ1および相対湿度値φ1を判定する(ステップ10)。湿度センサデバイスは、所与の温度T1の閉じた空気容積において、ある第1の較正オフセットを用いて動作する。判定されたすべての値(湿度センサデバイスによっても検出可能な温度T1を含む)を、例えば、湿度センサデバイスのメモリに記憶することができる。
【0027】
次に、湿度センサデバイスを、何らかの外部手段、湿度センサデバイスに設けられたヒータにより、または湿度センサデバイスの動作によって生じる湿度センサデバイスの自己発熱により加熱する(ステップ11)。例えば、湿度センサデバイスの何らかの回路、特に何らかのデータ処理手段の動作により、自己発熱を生じさせることができる。
【0028】
ある期間の加熱後および/または湿度センサデバイス、したがって湿度センサデバイスの局所環境のある特定の温度に到達した後、湿度センサデバイスにより、第2の温度T2の第2の時間について露点τ2を判定する(ステップ12)。温度T2において判定された第2の露点τ2を、先に温度T1において判定された第1の露点τ1と比較する(ステップ13)。
【0029】
比較ステップ13により、判定された第2の露点τ2が判定された第1の露点τ1を所定の(公差)範囲Δτより超える、τ2>τ1+Δτであることを示す場合、オフセット値が大きすぎる、すなわち、相対湿度が過大評価されていると判定する。したがって、測定された相対湿度についての第1の較正オフセットをある所定の値ΔO、例えば、第1の較正オフセットの一部、例えば、第1の較正オフセットの0.05~0.2%だけ減少させる(ステップ14a)。
【0030】
他方、比較ステップ13により、判定された第2の露点τ2が判定された第1の露点τ1を所定の範囲Δτより下回る、τ2<τ1-Δτであることを示す場合、オフセット値が小さすぎる、すなわち、相対湿度が過小評価されていると判定する。したがって、第1の較正オフセットをある所定の値ΔO、例えば、第1の較正オフセットの一部、例えば、第1の較正オフセットの0.05~0.2%だけ増加させる(ステップ14b)。
【0031】
続いて、先に使用した較正オフセットとはΔOだけ異なる、測定された相対湿度についての新しい較正オフセットを用いて、第1の露点の新しい値を計算する。続いて、所定の範囲Δτ内の露点の一定値が判定されるまで、
図2に示す手順を繰り返すことができる。所定の範囲Δτ内の露点の一定値が判定された後、湿度センサは十分に較正される。
【0032】
図3は、本発明の較正手順の別の具体的な例を示す。時間t
0において、温度T
0の閉じた環境で較正される湿度センサデバイスにより露点τ
0を判定する(ステップ20)。露点τ
0の判定は、測定された相対湿度についての初期較正オフセットO
0に基づく。温度T
0は、例えば、T
0=24.7℃であってよい。露点τ
0は、測定された相対湿度φ
0から判定される。例えば、τ
0=11.9℃およびφ
0=44.8%である。
【0033】
ある時間t1の後、測定された相対湿度φ1から露点τ1を判定する(ステップ21)。期間t1-t0中、湿度センサデバイスの自己発熱により、局所環境の温度が温度T1>T0に上昇する。例えば、T1=27.7℃、τ1=12.8℃、およびφ1=39.6%になる。この例では、判定された露点τ1は、τ0に対して、ある公差Δτ、例えばΔτ=0.1℃より上昇している。したがって、測定された相対湿度が高すぎる、すなわち、較正オフセットO0が大きすぎる。したがって、較正オフセットを所定量ΔOだけ減少させて、測定された相対湿度についての新しい較正オフセットO1、例えば、所定量ΔOが0.1%となるように選択された場合、O1=O0-0.1%を取得する(ステップ22)。
【0034】
新しい較正オフセットO1を用いて、最初に判定された露点を再判定して(ステップ23)、初期露点の補正値τ0
c=f(O1)を取得する。続いて、新しい較正オフセットO1を用いて、露点の新しい値τ2を時間t2において判定する(ステップ24)。期間t2-t1中、湿度センサデバイスの自己発熱が進行し、局所環境の温度がT2>T1>T0、例えばT2=28.1℃に上昇する。
【0035】
露点の新しい値τ2を初期露点の補正値τ0
cと比較し、これらの値が所定の公差Δτ内で同一であれば、測定された相対湿度についての新しい較正オフセットO1が所望の正確な較正オフセットであると判定し(ステップ26)、較正プロセスを終了する(ステップ27)。他方、τ2>τ0
c+Δτであれば、較正オフセットをさらにO2=O1-0.1%に補正する。最初に判定された露点を再判定して、補正されたオフセットO2:τ0
c=f(O2)を用いて初期露点の補正値を取得する。再び、時間t3>t2の後に露点の新しい値を判定し、露点の判定されたそれぞれの新しい値が初期露点のそれぞれの補正された新しい値より所定の公差Δτを超えて異ならなくなるまで、前述した手順を再び繰り返す。繰返しプロセスの終了時に、湿度センサは十分に較正される。
【0036】
図2および
図3を参照して前述した手順は、原則として、製造された湿度センサデバイスの初期較正の問題またはエージングの問題に適用することができる。したがって、湿度センサデバイスのエージング中、自動再較正を行って、既に初期に較正された湿度センサデバイスの正確な動作をサービス時間にわたって維持することができる。現場較正は、実験室条件下で行われた第1の較正後に微調整を行うのに有用となり得る。例えば、現場で設置された、例えば、自動車に設置された湿度センサデバイスの始動動作時に、自動再較正を行うことができる。自動再較正を定期的に開始することもできる。例えば、10分の期間に、処理負荷を増加させながら自己発熱を使用して、1秒以内にそれぞれ10回の測定を行うことができる。
【0037】
図4は、本発明の例による自動再較正プロセスを示す。湿度センサデバイスの動作をステップ30で開始する。例えば、数時間または数十分の期間で動作を周期的に開始することができる。動作開始直後に、湿度センサデバイスにより、相対湿度φ
0の測定に基づく相対湿度の初期較正オフセットO
0を用いて露点τ
0を判定し、湿度センサデバイスのメモリに記憶する(ステップ31)。
【0038】
湿度センサデバイスの所定期間の自己発熱の後、露点の新しい値τ1を判定し(ステップ32)、湿度センサデバイスの処理手段により、新しい値τ1と初期値τ0との差を判定する(ステップ33)。差の絶対値が較正エラーの所定の公差Δτを超えるか否かを判定する(ステップ34)。所定の公差Δτを超えない場合、較正の調節は不要であり、手順を終了する(ステップ35)。所定の公差Δτを超える場合、相対湿度の初期較正オフセットO0(例えば、湿度センサデバイスの製造後、現場における第1の動作前に行われる初期較正プロセスにより設定される)を調節する必要がある(ステップ36)。この場合、τ1>τ0であれば、初期オフセットO0を所定量ΔOだけ減少させ、τ1<τ0であれば、初期オフセットO0を所定量ΔOだけ増加させて、補正オフセットO1を取得する。
【0039】
次に、調節したオフセットO1を用いて露点の初期値を再判定して(ステップ37)、補正初期露点τ0
cを取得する。さらなる測定/判定ステップ(ステップ38)において、ある所定期間後に露点τ2を判定し、新しく判定された露点τ2と補正初期露点τ0
cとの差を判定する。再び、差の絶対値が所定の公差Δτを超える場合、実際の較正オフセットO1を所定量ΔOだけ調節し(差の符号に応じて増加または減少させ)、新しく補正されたオフセットO2を用いて補正初期露点τ0
cを再判定する。新しく判定された露点が実際に補正された初期露点より所定の公差を超えて異ならなくなるようにオフセットが調節されるまで、この手順を再び繰り返すことができる(例えば、100msごとの測定により)。繰返しプロセスが完了すると、湿度センサは十分に再較正される。
【0040】
エージングの問題に対処するために、較正勾配を調節することも可能であることに留意されたい。例えば、相対湿度センサは、相対湿度50%については十分に較正されるが、相対湿度30%では誤較正されることがある。相対湿度30%でオフセットを補正する代わりに、相対湿度30%および50%で正確な較正をもたらす勾配を計算することができる。勾配の調節は、ある線形関数または非線形関数に基づくことができる。0%~100%の全範囲にわたって勾配を調節することにより、正確な再較正が行われる。
【0041】
図2~
図4を参照して前述した手順により、センサの第1の動作前の初期状態およびサービス時間中の両方において湿度センサデバイスを較正する、非常に効率的かつ確実で時間の節約になる方法が可能になる。
図5のブロック図は、前述した手順を実施する湿度センサデバイス100の構成を示す。湿度センサデバイス100は、感知コンデンサ112を含み、かつ相対湿度を測定するように構成されている湿度感知手段110を備える。
【0042】
感知コンデンサ112は2つの平行な金属板を備え、各金属板は、コンデンサ誘電体として機能するポリイミド誘電体層を含む被覆膜を有する。ポリイミド誘電体層により湿気が吸収されると、コンデンサの誘電率が変化する。このようにして、一定の基準静電容量(例えば、基準コンデンサにより設定される)を知ることにより、感知コンデンサ112の静電容量の変化を測定することによって相対湿度を計算することができる。これは、静電容量が周囲条件の湿度に伴って変化するからである。
【0043】
湿度感知手段110は、アナログ-デジタルコンバータ120に接続されて、制御論理130にデジタルデータストリームを提供する。制御論理130は、処理手段132、例えばマイクロコントローラと、メモリ134とを備える。較正データおよび較正手順に使用するデータをメモリ134に記憶することができる。さらに、メモリ134は、前述した実施形態による較正手順を実行するためのプログラム製品を記憶する。
【0044】
制御論理130は、データライン151、152を介したデータ出力のためのインターフェース140に接続される。インターフェース140は、例えば、信号ラインSDA、SCLを有するI
2Cインターフェースであってよい。
図5に示す部品の少なくとも一部を、単一のマイクロチップまたはプリント回路基板に形成することができる。
【0045】
前述の実施形態のすべては限定するものではなく、本発明の特徴および利点を示す例として機能する。前述の特徴の一部またはすべてを様々な方法で組み合わせることもできることを理解されたい。