(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】無線給電システム及び無線給電システムの制御方法及びそのプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/40 20160101AFI20231107BHJP
H02J 50/90 20160101ALI20231107BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20231107BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20231107BHJP
B60L 9/00 20190101ALI20231107BHJP
B60L 5/00 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
H02J50/40
H02J50/90
H02J50/10
B60M7/00 X
B60L9/00
B60L5/00 B
(21)【出願番号】P 2019203432
(22)【出願日】2019-11-08
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【氏名又は名称】江口 基
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 賀博
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-284696(JP,A)
【文献】特開2019-126259(JP,A)
【文献】特開2015-073380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/40
H02J 50/90
H02J 50/10
B60M 7/00
B60L 9/00
B60L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電コイルを有する送電装置と、
受電コイルを有する受電装置と、
前記受電コイルの移動に伴って生じる前記受電コイルの相互インダクタンスの変化を測定する測定手段と、
前記送電装置の送電を制御する制御手段と、
を備え、
前記受電装置は、連続して配置された複数の前記送電装置と対向する位置に移動可能に設けられ、
前記制御手段は、前記相互インダクタンスの変化に基づいて、前記送電装置からの送電を制御し、
前記測定手段は、前記送電装置のそれぞれの前記相互インダクタンスの変化を測定する測定手段であり、
前記制御手段は、隣接する前記送電装置の前記相互インダクタンスの変化が予め定められた同一値帯にある場合に、前記送電装置の送電を開始又は停止することを特徴とする、
無線給電システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記相互インダクタンスの変化量が予め定められた開始閾値以上の場合に前記送電装置からの送電を開始し、前記相互インダクタンスの変化量が予め定められた停止閾値以下の場合に前記送電装置からの送電を停止することを特徴とする、
請求項1に記載の無線給電システム。
【請求項3】
前記受電装置は、複数の前記受電コイルと平行な位置に設けられたレールに沿って移動し、
前記受電装置が移動する際、前記受電コイルの中心が前記送電コイルの中心の直上を通過することを特徴とする、
請求項1又は2に記載の無線給電システム。
【請求項4】
前記送電コイルの外側直径の長さは、前記受電コイルの外側直径の長さの1.0倍以上
1.5倍以下であることを特徴とする、
請求項1から3のいずれか1項に記載の無線給電システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の無線給電システムを制御する制御方法であって、
前記相互インダクタンスの変化に基づいて、前記送電装置からの送電を制御する送電ステップと、
を含むことを特徴とする、
無線給電システムの制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の無線給電システムの制御方法の各ステップを1又は2以上のコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線給電システム及び無線給電システムの制御方法及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給電効率の低下を抑制できる移動車両給電システムが知られている。例えば、特許文献1では、給電エリア内に位置する移動車両に対して非接触給電を行う移動車両給電システムであって、移動車両に設けられた受電コイルと、給電エリア内において互いに異なる位置に配設された複数の給電コイル等と、給電エリア内における受電コイルの位置を検出する位置検出手段及び該位置検出手段の検出結果に基づいて、複数の給電コイル等のうち、受電コイルに対応する位置に配設された給電コイルを選択し、該選択した給電コイルから非接触給電を行わせる制御手段を具備する制御装置が記載されている。この移動車両給電システムでは、給電エリア内に複数の給電手段を用意し、給電エリア内における移動車両に設けられた受電手段の位置を検出して、複数の給電手段のうち、非接触給電に関して最適な位置に配設されている給電手段を選択して給電を行うことで、給電効率の低下を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の移動車両給電システムでは、複数の給電手段から最適な給電手段を選択することで電力に対する給電効率の低下を防止することができたとしても、最適な給電手段を選択することにより、時間あたりの給電効率は低下することになるという課題がある。また、給電手段と無線通信を行うことで給電を行う給電手段を選択するため、無線通信のために電力が必要であり、給電効率が低下することになるという課題がある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、給電速度が速く、かつ、消費電力の少ない給電効率の高い無線給電システムを提供することを主目的とする。また、給電効率の高い無線給電システムの制御方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の目的の少なくとも一つを達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の無線給電システムは、
送電コイルを有する送電装置と、
受電コイルを有する受電装置と、
前記受電コイルの移動に伴って生じる前記受電コイルの相互インダクタンスの変化を測定する測定手段と、
前記送電装置の送電を制御する制御手段と、
を備え、
前記受電装置は、連続して配置された複数の前記送電装置と対向する位置に移動可能に設けられ、
前記制御手段は、前記相互インダクタンスの変化に基づいて、前記送電装置からの送電を制御することを特徴とする、
ものである。
【0008】
この無線給電システムは、連続して配置された複数の送電装置と、複数の送電装置と対向する位置に移動可能に設けられた受電装置と、受電コイルの移動に伴って生じる相互インダクタンスの変化を測定する測定手段と、送電装置の送電を制御する制御手段と、を備え、測定手段が測定した相互インダクタンスの変化に基づいて、送電装置からの送電を制御する。受電装置が移動する際、受電コイルの形状は変化しないため、相互インダクタンスの変化は受電装置と送電装置との相対的な位置関係の変化を表すことになるため、相互インダクタンスの変化を測定することで、受電装置の位置に応じて送電装置からの送電を制御することができる。このため、受電装置が送電装置から一定の範囲内にある場合に送電することにより、高い送電効率を得ることができる。付言すると、受電装置と対向する位置に位置しない送電装置が送電を行わないことにより、不必要な電磁波の発生を抑制し、例えば、人体に近い場所で使用した場合であっても、電磁波の人体暴露を抑制することができる。また、全ての送電装置から送電する場合と比較して、使用電力を低減し、送電効率を高めることができる。同時に、受電装置の近くに位置する送電装置から送電することにより、例えば、いずれか一つの送電装置から送電する場合と比較して、受電装置に送電する総電量を増大させ、高速で、高い送電効率が得られる。
【0009】
本発明の無線給電システムにおいて、前記制御手段は、前記相互インダクタンスの変化量が予め定められた開始閾値以上の場合に前記送電装置からの送電を開始し、前記相互インダクタンスの変化量が予め定められた停止閾値以下の場合に前記送電装置からの送電を停止することを特徴としてもよい。相互インダクタンスの変化は、送電コイルと受電コイルとの相対位置が近づくにつれて大きく表れるため、相互インダクタンスの変化量が予め定められた開始閾値以上の場合に送電を開始することにより、受電装置が送電装置から一定の範囲内に位置する場合に送電を行うことになる。こうすることにより、受電装置と送電装置との距離が近い場合にのみ送電することになるため、高い送電効率が得られる。一方、相互インダクタンスの変化量が予め定められた停止閾値以下の場合に送電を停止することにより、受電装置と送電装置との距離が遠い場合には送電を停止することになるため、送電装置から受電装置への送電効率が低い場合に送電を停止することで、高い送電効率を得ることができる。なお、ここで「開始閾値」及び「停止閾値」とは、予め定められた値を意味する。
【0010】
本発明の無線給電システムにおいて、前記測定手段は、前記送電装置のそれぞれの前記相互インダクタンスの変化を測定する測定手段であり、前記制御手段は、隣接する前記送電装置の前記相互インダクタンスの変化が予め定められた同一値帯にある場合に、前記送電装置の送電を開始又は停止することを特徴としてもよい。隣接する送電装置のそれぞれの相互インダクタンスの変化量が同程度(同一値帯)である場合には、受電装置と隣接する二つの送電装置との相対位置が同様である場合が想定されるため、相互インダクタンスの変化量が同一値帯である場合に送電装置の送電を開始又は停止することにより、隣接する二つの送電装置の中間位置に受電装置が位置する際に、送電装置の送電を開始又は停止することになる。このため、受電装置が送電装置と隣接する送電装置の中間位置に位置する際に送電の開始又は停止することで、いずれか一方の送電装置又は常に両方送電装置から送電する場合と比較して、高い送電効率を得ることができる。なお、ここで、「同一値帯」とは、予め定められた値及びこの値近傍の値を意味する。
【0011】
本発明の無線給電システムにおいて、前記受電装置は、複数の前記受電コイルと平行な位置に設けられたレールに沿って移動し、前記受電装置が移動する際、前記受電コイルの中心が前記送電コイルの中心の直上を通過することを特徴としてもよい。こうすることにより、受電装置がレールに沿って移動する際、受電コイルの中心が送電コイルの中心の直上を通過することになるため、受電コイルが最も送電効率の高い位置を通過することになるため、高い送電効率が得られる。
【0012】
本発明の無線給電システムにおいて、前記送電コイルの外側直径の長さは、前記受電コイルの外側直径の長さの1.0倍以上1.5倍以下であることを特徴としてもよい。こうすることにより、1又は隣接する二つの送電コイルと対向する位置に常に受電コイルが位置することになるため、隣接する二つの送電コイルからの送電を制御することで、受電コイルへの送電を制御することができる。付言すると、3以上の送電コイルの送電を制御する必要がないため、送電コイルを制御する労力を低減することができる。
【0013】
本発明の無線給電システムの制御方法は、
送電コイルを有する送電装置と、受電コイルを有する受電装置と、前記受電コイルの移動に伴って生じる前記受電コイルの相互インダクタンスの変化を測定する測定手段と、前記送電装置の送電を制御する制御手段と、を備え、前記受電装置が連続して配置された複数の前記送電装置と対向する位置に移動可能に設けられた無線給電システムを制御する制御方法であって、
前記相互インダクタンスの変化に基づいて、前記送電装置からの送電を制御する送電ステップと、
を含むことを特徴とする、
ものである。
【0014】
この無線給電システムは、連続して配置された複数の送電装置と、複数の送電装置と対向する位置に移動可能に設けられた受電装置と、受電コイルの移動に伴って生じる相互インダクタンスの変化を測定する測定手段と、送電装置の送電を制御する制御手段と、を備え、測定手段が測定した相互インダクタンスの変化に基づいて、送電装置からの送電を制御する。受電装置が移動する際、受電コイルの形状は変化しないため、相互インダクタンスの変化は受電装置と送電装置との相対的な位置関係の変化を表すことになるため、相互インダクタンスの変化を測定することで、受電装置の位置に応じて送電装置からの送電を制御することができる。このため、受電装置が送電装置から一定の範囲内にある場合に送電することにより、高い送電効率を得ることができる。付言すると、受電装置と対向する位置に位置しない送電装置が送電を行わないことにより、不必要な電磁波の発生を抑制し、例えば、人体に近い場所で使用した場合であっても、電磁波の人体暴露を抑制することができる。また、全ての送電装置から送電する場合と比較して、使用電力を低減し、送電効率を高めることができる。同時に、受電装置の近くに位置する送電装置から送電することにより、例えば、いずれか一つの送電装置から送電する場合と比較して、受電装置に送電する総電量を増大させ、高速で、高い送電効率が得られる。
【0015】
本発明のプログラムは、無線給電システムの制御方法の各ステップを1又は2以上のコンピュータに実行させるためのプログラムである。このプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体(例えば、ハードディスク、ROM、CD、DVD、フラッシュメモリなど)に記録されていても良いし、伝送媒体(インターネットや有線/無線LANなどの通信網)を介してあるコンピュータから別のコンピュータへ送信されても良いし、その他どのような形で授受されても良い。また、無線給電システムの制御方法の各ステップを実行する装置で実行されるものであっても、プログラムが実行される装置と処理が行われる装置とが異なっていてもよい。いずれの場合であっても、このプログラムを1つのコンピュータに実行させるか又は複数のコンピュータに各ステップを分担して実行させれば、上述した無線給電システムの制御方法と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、無線給電システム20の構成の概略を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、無線給電システム20の電気的な接続を説明するためのブロック図である。
【
図3】
図3は、送電制御処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態の一例として、無線給電システム20について詳しく説明する。以下に説明する実施の形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。なお、各図において対応する構成要素には同一又は類似の符号を付す。また、以下の説明において、
図1に示すように、受電装置30が移動する方向を一方側方向及び他方側方向と呼ぶ。また、無線給電システム20の制御方法の一例を示すことで、本発明の無線給電システムの制御方法及びそのプログラムの一例も明らかにする。
【0018】
本発明の実施の形態の一例である無線給電システム20は、
図1に示すように、レール22に沿って移動可能に設けられた受電装置30と、レール22と対向する位置に連続して設けられた複数の送電装置40(送電装置40a、送電装置40b、送電装置40c及び送電装置40d)と、それぞれの送電装置における受電装置30の移動に伴う相互インダクタンスの変化を測定する測定センサ44(測定センサ44a、測定センサ44b、測定センサ44c及び測定センサ44d,本発明の測定手段に相当,
図2参照)と、複数の送電装置40の送電を制御する制御ユニット50(
図2参照)と、を備えている。この無線給電システム20は、レール22に沿って移動する受電装置30に送電装置40から送電し、受電装置30に無線給電する。このとき、測定センサ44によって測定された受電装置30の移動に伴う相互インダクタンスの変化量に基づいて送電装置40からの送電を制御する。相互インダクタンスの変化は、送電装置40に設けられた送電コイル42と受電装置30に設けられた受電コイル32との距離に応じて変化するため、誘導起電力の値に基づいて送電装置40からの送電を制御することで、送電コイル42と受電コイル32との距離に応じて送電を制御することができるため、送電効率を高めることができる。
【0019】
具体的には、相互インダクタンスの変化量は、受電コイル32の形状等が変化しない場合、送電コイル42と受電コイル32との相対距離が近づくほど大きくなるため、相互インダクタンスの変化量が一定の値以上の場合とは、受電装置30がその送電装置40から一定の範囲内に位置することを意味する。このため、相互インダクタンスの変化量に基づいて送電を制御することで、送電装置40と受電装置30との距離に基づいて送電を制御することができるため、送電効率を高めることができる。
【0020】
また、無線給電システム20が正常に機能している場合には、相互インダクタンスは、受電装置30の動きによってのみ変化するため、受電装置30の動きに依存しない相互インダクタンスの変化が測定センサ44によって測定された場合には、何らかの異常が発生していることになる。このため、受電装置30の動きを相互インダクタンスの変化で推定することにより、無線給電システム20の異常の有無についても判定することができる。
【0021】
受電装置30は、中央部に受電コイル32が設けられた箱状の装置であり、受電装置30がレール22に沿って移動する際、受電コイル32の中心が送電コイル42の中心の直上を通過する位置であって、図示しないローラの駆動によりレール22に沿って移動可能に設けられている。こうすることにより、受電装置30がレール22に沿って移動する際、受電コイル32の中心が送電コイル42の中心の直上を通過して移動することになるため、送電コイル42から受電コイル32に送電する送電効率を高めることができる。
【0022】
送電装置40は、
図1に示すように、中央部に送電コイル42が設けられた箱状の装置であり、複数の送電装置40が、一方側方向から他方側方向に連続して設けられている。このとき、複数の送電装置40に設けられた送電コイル42の中心が一方側から他方側に一直線上に配置されており、この仮想線とレール22とは、互いに平行な位置関係にある。こうすることにより、レール22に沿って受電装置30が移動した際、送電コイル42と受電コイル32との間の距離が一定に保たれるため、送電装置40から送電する際、送電量を安定させることができる。また、複数の送電装置40は、それぞれ制御ユニット50と電気的に接続されており、制御ユニット50からの制御信号に基づいて、送電が制御される。
【0023】
また、このとき、送電コイル42の外側直径は、受電コイル32の外側直径より長く形成されている。こうすることにより、受電装置30の移動に伴って移動する受電コイル32に送電する際、送電効率を高めることができる。具体的には、送電コイル42の外側直径は、受電コイル32の外側直径よりも1.0から1.5倍の長さとすることが好ましい。こうすることで、高い送電効率が得られる。
【0024】
測定センサ44は、本発明の測定手段に相当し、相互インダクタンスの変化量を測定する公知の電流計、電圧計又は回路である。この測定センサ44は、
図2に示すように、それぞれの送電装置40に設けられており、制御ユニット50と電気的に接続されている。この測定センサ44は、受電装置30が移動する際の相互インダクタンスの変化を測定し、測定値を制御ユニット50に送信する。この相互インダクタンスの変化量は送電装置40と受電装置30との位置関係により変化するため、相互インダクタンスの変化量により、受電装置30の位置を推定することができる。
【0025】
制御ユニット50は、
図2に示すように、CPU51を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、送電装置40からの送電を制御する各種制御プログラム等が記憶されたROM52と、測定センサ44から送信された相互インダクタンスの変化量の値等を一時的に記憶するRAM53と、各種情報を記憶する記憶手段54と、測定センサ44や受電装置30、送電装置40、記憶手段54等との間の各種信号の送受信を行うインタフェース55(以下、「I/F55」と言う。)がそれぞれバス56を介して電気的に接続されている。この制御ユニット50は、本発明の制御手段に相当し、送電装置40の送電を制御する。
【0026】
次に、送電装置40から送電する際の送電制御方法について、制御ユニット50によって実行される送電制御処理ルーチンを一例に説明する。この送電制御処理ルーチンは、無線給電システム20に電力が供給され、測定センサ44で測定された相互インダクタンスの変化量が入力値として入力された際に、それぞれの送電装置40に対して繰り返し実行されるため、ここでは、送電装置40aで行われる処理を一例として説明する。なお、ここで
図3は、送電制御処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【0027】
CPU51によってROM52に記憶された送電制御処理ルーチンが読み出され、実行されると、CPU51は、測定センサ44aから送信された入力値が、記憶手段54に予め記憶された開始閾値以上であるか否かを判定し(ステップS110)、開始閾値以上であると判定した場合には、送電装置40aの送電を開始し(ステップS120)、本ルーチンを終了する。こうすることで、測定センサ44aから送信された入力値が所定の閾値以上の場合、すなわち、受電装置30が送電装置40aから一定の距離の範囲内に位置する場合に、送電装置40aから送電することができる。こうすることにより、受電装置30が近づいてから送電を開始することができるため、常に送電装置40aが送電している場合と比較して、送電効率を高めることができる。
【0028】
一方、ステップS110において、入力された値が開始閾値未満であるとCPU51が判定した場合には、入力閾値が停止閾値以下であるか否かを判定し(ステップS130)、停止閾値より大きいと判断した場合には、本ルーチンを終了する。このような場合は、送電装置40aから受電装置30に効率よく送電できているため、送電を継続するためである。
【0029】
一方、ステップS130において、入力された値が停止閾値以下であると判定した場合には、送電装置40への送電を停止し(ステップS140)、本ルーチンを終了する。このような場合は、送電装置40aと受電装置30とが離れ過ぎているため、送電装置40aからの送電を停止することで、効率の低い送電を停止し、全体の送電効率を高めることができる。なお、このような場合には、受電装置30は送電装置40aに隣接する送電装置40bの近くに位置することになるため、送電装置40bから送電されることになる。
【0030】
以上詳述した実施の形態によれば、送電装置40に対向する位置に設けられたレール22に沿って受電装置30が移動する際、測定センサ44が測定した相互インダクタンスの変化量に基づいて送電装置40の送電を制御する。このとき、相互インダクタンスの変化量は送電コイル42と受電コイル32との距離に応じて定まるため、相互インダクタンスの変化量に基づいて送電を制御することで、送電装置40と受電装置30との距離によって送電を制御することができ、複数の送電装置40のうち、受電装置30に近い位置の送電装置40から送電することで、送電効率を高めることができる。
【0031】
また、複数の送電装置40の中から、受電装置30による誘導起電力の値が開始閾値以上であると判定し、かつ停止閾値より大きいと判定した場合に、送電装置40から送電することで、複数の送電装置40のうちのひとつから一定の範囲内に受電装置30がある場合に送電を開始することができるため、受電装置30に対して遠距離の送電を行うことがなくなり、送電効率を高めることができる。
【0032】
更に、送電装置40がレール22に沿って移動する際、複数の送電コイル42の中心の直上を受電コイル32の中心が通過するため、送電コイル42の中心と受電コイル32の中心位置が直上でない場合と比較して、高い送電効率を得ることができる。
【0033】
更にまた、送電コイル42の外側直径の長さは、受電コイル32の外側直径の長さよりも1.0倍以上1.5倍以下の長さに形成されるため、送電コイル42の外側直径の長さよりも受電コイル32の外側直径の長さが長い場合と比較して、高い送電効率を得ることができる。
【0034】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0035】
例えば、上述した実施の形態では、それぞれの送電装置40における入力値が開始閾値以上の場合に送電装置40の送電を開始し、停止閾値以下の場合に送電を停止するものとしたが、隣接する送電装置40(例えば、送電装置40aと送電装置40b)における誘導起電力の値を比較し、値が所定の同一値帯に位置する場合に、送電を開始又は停止してもよい。このように、隣接する送電装置40(送電コイル42)における誘導起電力の値が同一値帯に位置する場合には、受電装置30が隣接する送電装置40の両方から略等距離に位置することが想定されるため、受電装置30が誘導起電力の値が同一値帯に位置する際に送電を開始又は停止することで、高い送電効率を得ることができる。
【0036】
上述した実施の形態では、それぞれの送電装置40にそれぞれ測定センサ44を設けるものとしたが、複数の誘導起電力を測定できる形であれば、この形に限定されるものではなく、測定センサ44は一つであってもよい。また、測定センサ44は、それぞれの送電コイル42の誘導起電力を順次測定するものとし、必ずしも全ての送電コイル42における誘導起電力を同時に測定するものでなくともよい。いずれの場合であっても、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【0037】
上述した実施の形態では、送電装置40は、送電装置40a、送電装置40b、送電装置40c及び送電装置40dを含むものとしたが、送電装置40の個数はこれに限定されるものではなく、2以上であれば良い。こうすることにより、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
上述した実施の形態で示すように、無線給電分野、特に移動する受電回路に無線給電する手段として利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
20…無線給電システム、22…レール、30…受電装置、32…受電コイル、40…送電装置、40a…送電装置、40b…送電装置、40c…送電装置、40d…送電装置、42…送電コイル、44…測定センサ、44a…測定センサ、44b…測定センサ、44c…測定センサ、44d…測定センサ、50…制御ユニット、51…CPU、52…ROM、53…RAM、54…記憶手段、55…インタフェース、56…バス。