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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/416 20060101AFI20231107BHJP
   G01N 27/409 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
G01N27/416 331
G01N27/409 100
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019204527
(22)【出願日】2019-11-12
(65)【公開番号】P2021076514
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】新妻 匠太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 悠介
(72)【発明者】
【氏名】平川 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】青田 隼実
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-039986(JP,A)
【文献】特開2002-131269(JP,A)
【文献】米国特許第05490412(US,A)
【文献】特開2004-053425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/416
G01N 27/409
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ素子と、
弾性絶縁部材と、
前記弾性絶縁部材に挿入される複数のリード線と、
前記センサ素子と電気的に接続される第1の端部と、前記複数のリード線のいずれかと電気的に接続される第2の端部と、をそれぞれ有する、複数の金属端子と、
前記複数の金属端子のいずれかが挿通される貫通孔をそれぞれ有する複数のセラミック挿通部を有し、各貫通孔は対応する各セラミック挿通部よりも小さな直径を有し、前記複数のセラミック挿通部の少なくともいずれかの高さが、前記複数のセラミック挿通部の他の1つの高さと異なる、セラミックハウジングと、
を備え
前記セラミックハウジングが、端面を有し、前記複数のセラミック挿通部が前記端面上に配置され、
前記複数のセラミック挿通部の少なくともいずれかの上面が、前記端面から前記弾性絶縁部材に向かって突出し、
前記複数のセラミック挿通部の少なくともいずれかの上面が、前記端面から前記弾性絶縁部材に対して凹んでいガスセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載のガスセンサにおいて、
前記複数のセラミック挿通部が、隣接し、高さの異なる第1、第2のセラミック挿通部を有する、ガスセンサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガスセンサにおいて、
前記複数のセラミック挿通部の少なくともいずれかが、前記端面と同一の高さを有する、ガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスの濃度を測定するガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、リーク電流の発生を抑制し、ガス検出の精度を高く維持することができるガスセンサを提供することを課題としている。
【0003】
当該課題を解決するため、特許文献1のガスセンサは、バネ用インシュレータ4における、複数の接続端子51と対向する対向端面401には、接点バネ3の数と同じ数の挿通孔用凸部42が突出して形成されている。バネ用インシュレータ4には、挿通孔用凸部42の端面424と保持穴41の端面413とに開口して、複数の接点バネ3をそれぞれ挿通させる複数の挿通孔43が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-105661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載のガスセンサでは、センサ素子に電気的に接続される金属端子(接点バネ3)が、インシュレータ4の挿通孔43を通って、弾性絶縁部材(ブッシュ53)のリード線52に電気的に接続される。
【0006】
ここで、ガスセンサへの振動の印加等により、金属端子が振動することがある。この場合、特に道路環境が良くない場合やオフロード走行等、長期間あるいは過大な振動により、挿通孔43壁面が削られて、その内径が広がることで、金属端子が曲がり、その間で短絡する可能性がある。
【0007】
本発明は、上述した課題に鑑みなされたものであり、金属端子間の短絡の低減を図ったガスセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によるガスセンサは、センサ素子、弾性絶縁部材、複数のリード線、複数の金属端子、セラミックハウジングを有する。複数のリード線は、弾性絶縁部材に挿入される。複数の金属端子はそれぞれ、センサ素子と電気的に接続される第1の端部と、複数のリード線のいずれかと電気的に接続される第2の端部と、を有する。セラミックハウジングは、複数の金属端子のいずれかが挿通される貫通孔をそれぞれ有する複数の挿通部を有し、複数の挿通部の少なくともいずれかの高さが、他の挿通部の高さと異なる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、金属端子間の短絡を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係るガスセンサを示す断面図である。
図2】センサ素子の構成の一例を概略的に示した断面模式図である。
図3】実施形態に係るセラミックハウジングを示す模式斜視図である。
図4A】変形例に係るセラミックハウジングを示す斜視図である。
図4B】変形例に係るセラミックハウジングを示す斜視図である。
図4C】変形例に係るセラミックハウジングを示す斜視図である。
図5図5A図5Bは、比較例に係るセラミックハウジングを示す斜視図である。
図6図6A図6Bは、比較例について、振動印加前後の状態を示す模式的断面図である。
図7図7A図7Bは、実施例1について、振動印加前後の状態を示す模式的断面図である。
図8】実施例、比較例について、試験結果を表す表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るガスセンサについて、好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。
【0012】
本実施形態に係るガスセンサ10は、図1に示すように、センサ素子12を備える。センサ素子12は長尺な直方体形状をしており、このセンサ素子12の長手方向(図2の左右方向)を前後方向とし、センサ素子12の厚み方向(図2の上下方向)を上下方向とする。また、センサ素子12の幅方向(前後方向及び上下方向に垂直な方向)を左右方向とする。
【0013】
図1に示すように、ガスセンサ10は、センサ素子12と、センサ素子12の前端側を保護する保護カバー14と、セラミックハウジング16を含むセンサ組立体18とを備えている。セラミックハウジング16は、センサ素子12の後端部を保持し、センサ素子12と電気的に接続する金属端子17が装着されることで、コネクタ19として機能する。
【0014】
このガスセンサ10は、図示するように、例えば車両の排ガス管等の配管20に取り付けられて、被測定ガスとしての排気ガスに含まれるNOxやO2等の特定ガスの濃度を測定するために用いられる。
【0015】
保護カバー14は、センサ素子12の前端を覆う有底筒状の内側保護カバー14aと、この内側保護カバー14aを覆う有底筒状の外側保護カバー14bとを備えている。内側保護カバー14a及び外側保護カバー14bには、被測定ガスを保護カバー14内に流通させるための複数の孔が形成されている。内側保護カバー14aで囲まれた空間としてセンサ素子室22が形成されており、センサ素子12の前端はこのセンサ素子室22内に配置されている。
【0016】
センサ組立体18は、センサ素子12を封入固定する素子封止体30と、素子封止体30に取り付けられたナット32と、外筒34と、センサ素子12の後端の表面(上下面)に形成された図示しない電極に接触してこれらと電気的に接続されたコネクタ19と、を備えている。
【0017】
素子封止体30は、筒状の主体金具40と、主体金具40と同軸に溶接固定された筒状の内筒42と、主体金具40及び内筒42の内側の貫通孔内に封入されたセラミックスサポータ44a~44c、圧粉体46a、46b、メタルリング48と、を備えている。センサ素子12は素子封止体30の中心軸上に位置しており、素子封止体30を前後方向に貫通している。内筒42には、圧粉体46bを内筒42の中心軸方向に押圧するための縮径部42aと、メタルリング48を介してセラミックスサポータ44a~44c、圧粉体46a、46bを前方に押圧するための縮径部42bとが形成されている。縮径部42a、42bからの押圧力により、圧粉体46a、46bが主体金具40及び内筒42とセンサ素子12との間で圧縮されることで、圧粉体46a、46bが保護カバー14内のセンサ素子室22と外筒34内の空間50との間を封止すると共に、センサ素子12を固定している。
【0018】
ナット32は、主体金具40と同軸に固定されており、外周面に雄ネジ部が形成されている。ナット32の雄ネジ部は、配管20に溶接され内周面に雌ネジ部が設けられた固定用部材52内に挿入されている。これにより、ガスセンサ10のうちセンサ素子12の前端や保護カバー14の部分が配管20内に突出した状態で、ガスセンサ10が配管20に固定されている。
【0019】
外筒34は、内筒42、センサ素子12、コネクタ19の周囲を覆っており、コネクタ19の金属端子17に接続された複数のリード線54が後端から外部に引き出されている。このリード線54は、コネクタ19の金属端子17を介してセンサ素子12の各電極(後述)と導通している。外筒34とリード線54との隙間はグロメット等で構成された弾性絶縁部材56によって封止されている。外筒34内の空間50は基準ガス(本実施形態では大気)で満たされている。センサ素子12の後端はこの空間50内に配置されている。
【0020】
一方、センサ素子12は、図2に示すように、それぞれがジルコニア(ZrO2)等の酸素イオン伝導性固体電解質層からなる第1基板層60と、第2基板層62と、第3基板層64と、第1固体電解質層66と、スペーサ層68と、第2固体電解質層70の6つの層が、図面視で下側からこの順に積層された積層体を有する素子である。また、これら6つの層を形成する固体電解質は緻密な気密のものである。センサ素子12は、例えば、各層に対応するセラミックスグリーンシートに所定の加工及び回路パターンの印刷等を行った後にそれらを積層し、さらに、焼成して一体化させることによって製造される。
【0021】
センサ素子12の一端(図2の左側)であって、第2固体電解質層70の下面と第1固体電解質層66の上面との間には、ガス導入口80と、第1拡散律速部82と、緩衝空間84と、第2拡散律速部86と、第1内部空所88と、第3拡散律速部90と、第2内部空所92と、第4拡散律速部94と、第3内部空所96とが、この順に連通する態様にて隣接形成されてなる。
【0022】
ガス導入口80と、緩衝空間84と、第1内部空所88と、第2内部空所92と、第3内部空所96とは、スペーサ層68をくり抜いた態様にて設けられた上部を第2固体電解質層70の下面で、下部を第1固体電解質層66の上面で、側部をスペーサ層68の側面で区画されたセンサ素子12内部の空間である。
【0023】
第1拡散律速部82と、第2拡散律速部86と、第3拡散律速部90とはいずれも、2本の横長の(図面に垂直な方向に開口が長手方向を有する)スリットとして設けられる。また、第4拡散律速部94は、第2固体電解質層70の下面との隙間として形成された1本の横長の(図面に垂直な方向に開口が長手方向を有する)スリットとして設けられる。なお、ガス導入口80から第3内部空所96に至る部位を被測定ガス流通部とも称する。
【0024】
また、被測定ガス流通部よりも一端側から遠い位置には、第3基板層64の上面と、スペーサ層68の下面との間であって、側部を第1固体電解質層66の側面で区画される位置に基準ガス導入空間98が設けられている。基準ガス導入空間98には、NOx濃度の測定を行う際の基準ガスとして、例えば大気(図1の空間50内の雰囲気)が導入される。
【0025】
大気導入層100は、多孔質アルミナ等のセラミックスからなり、基準ガス導入空間98に露出している層である。この大気導入層100には基準ガス導入空間98を通じて基準ガスが導入されるようになっている。また、大気導入層100は、基準電極102を被覆するように形成されている。この大気導入層100は、基準ガス導入空間98内の基準ガスに対して所定の拡散抵抗を付与しつつ、これを基準電極102に導入する。なお、大気導入層100は、基準電極102よりもセンサ素子12の後端側(図2の右側)でのみ基準ガス導入空間98に露出するように形成されている。換言すると、基準ガス導入空間98は、基準電極102の直上までは形成されていない。但し、基準電極102が基準ガス導入空間98の図2における真下に形成されていてもよい。
【0026】
基準電極102は、第3基板層64の上面と第1固体電解質層66とに挟まれる態様にて形成される電極であり、上述のように、その周囲には、基準ガス導入空間98につながる大気導入層100が設けられている。なお、基準電極102は、第3基板層64の上面に直に形成されており、第3基板層64の上面に接する部分以外が大気導入層100に覆われている。また、後述するように、基準電極102を用いて第1内部空所88内、第2内部空所92内、第3内部空所96内の酸素濃度(酸素分圧)を測定することが可能となっている。基準電極102は、多孔質サーメット電極(例えば、PtとZrO2とのサーメット電極)として形成される。
【0027】
被測定ガス流通部において、ガス導入口80は、外部空間に対して開口してなる部位であり、該ガス導入口を通じて外部空間からセンサ素子12内に被測定ガスが取り込まれるようになっている。第1拡散律速部82は、ガス導入口80から取り込まれた被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する部位である。緩衝空間84は、第1拡散律速部82より導入された被測定ガスを第2拡散律速部86へと導くために設けられた空間である。第2拡散律速部86は、緩衝空間84から第1内部空所88に導入される被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する部位である。被測定ガスが、センサ素子12の外部から第1内部空所88内まで導入されるにあたって、外部空間における被測定ガスの圧力変動(被測定ガスが自動車の排気ガスの場合であれば排気圧の脈動)によってガス導入口80からセンサ素子12内部に急激に取り込まれた被測定ガスは、直接第1内部空所88へ導入されるのではなく、第1拡散律速部82、緩衝空間84、第2拡散律速部86を通じて被測定ガスの濃度変動が打ち消された後、第1内部空所88へ導入されるようになっている。これによって、第1内部空所88へ導入される被測定ガスの濃度変動はほとんど無視できる程度のものとなる。第1内部空所88は、第2拡散律速部86を通じて導入された被測定ガス中の酸素分圧を調整するための空間として設けられている。係る酸素分圧は、後述する主ポンプセル110が作動することによって調整される。
【0028】
主ポンプセル110は、第1内部空所88の内面に設けられた内側ポンプ電極112と、第2固体電解質層70の上面のうち、内側ポンプ電極112と対応する領域に外部空間(図1のセンサ素子室22)に露出する態様にて設けられた外側ポンプ電極114と、これらの電極に挟まれた第2固体電解質層70とによって構成されてなる電気化学的ポンプセルである。
【0029】
内側ポンプ電極112は、第1内部空所88を区画する上下の固体電解質層(第2固体電解質層70及び第1固体電解質層66)、及び、側壁を与えるスペーサ層68にまたがって形成されている。具体的には、第1内部空所88の天井面を与える第2固体電解質層70の下面には内側ポンプ電極112の天井電極部112aが形成され、また、第1内部空所88の底面を与える第1固体電解質層66の上面には底部電極部112bが直に形成され、そして、これら天井電極部112aと底部電極部112bとを接続するように、側部電極部(図示省略)が第1内部空所88の両側壁部を構成するスペーサ層68の側壁面(内面)に形成されて、該側部電極部の配設部位においてトンネル形態とされた構造として配設されている。
【0030】
内側ポンプ電極112と外側ポンプ電極114とは、多孔質サーメット電極(例えば、Auを1%含むPtとZrO2とのサーメット電極)として形成される。なお、被測定ガスに接触する内側ポンプ電極112は、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を弱めた材料を用いて形成される。
【0031】
主ポンプセル110においては、内側ポンプ電極112と外側ポンプ電極114との間に所望のポンプ電圧Vp0を印加して、内側ポンプ電極112と外側ポンプ電極114との間に正方向あるいは負方向にポンプ電流Ip0を流すことにより、第1内部空所88内の酸素を外部空間に汲み出し、あるいは、外部空間の酸素を第1内部空所88に汲み入れることが可能となっている。
【0032】
また、第1内部空所88における雰囲気中の酸素濃度(酸素分圧)を検出するために、内側ポンプ電極112と、第2固体電解質層70と、スペーサ層68と、第1固体電解質層66と、基準電極102によって、電気化学的なセンサセル、すなわち、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル120が構成されている。
【0033】
主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル120における起電力V0を測定することで、第1内部空所88内の酸素濃度(酸素分圧)がわかるようになっている。さらに、起電力V0が一定となるように可変電源122のポンプ電圧Vp0をフィードバック制御することでポンプ電流Ip0が制御されている。これによって、第1内部空所88内の酸素濃度は所定の一定値に保つことができる。
【0034】
第3拡散律速部90は、第1内部空所88で主ポンプセル110の動作により酸素濃度(酸素分圧)が制御された被測定ガスに所定の拡散抵抗を付与して、該被測定ガスを第2内部空所92に導く部位である。
【0035】
第2内部空所92は、予め第1内部空所88において酸素濃度(酸素分圧)が調整された後、第3拡散律速部90を通じて導入された被測定ガスに対して、さらに補助ポンプセル124による酸素分圧の調整を行うための空間として設けられている。これにより、第2内部空所92内の酸素濃度を高精度に一定に保つことができるため、このガスセンサ10においては精度の高いNOx濃度測定が可能となる。
【0036】
上記補助ポンプセル124は、第2内部空所92の内面に設けられた補助ポンプ電極126と、外側ポンプ電極114(外側ポンプ電極114に限られるものではなく、センサ素子12の外側の適当な電極であれば足りる)と、第2固体電解質層70とによって構成される、補助的な電気化学的ポンプセルである。
【0037】
この補助ポンプ電極126は、上記第1内部空所88内に設けられた内側ポンプ電極112と同様なトンネル形態とされた構造において、第2内部空所92内に配設されている。つまり、第2内部空所92の天井面を与える第2固体電解質層70に対して天井電極部126aが形成され、また、第2内部空所92の底面を与える第1固体電解質層66の上面には、底部電極部126bが直に形成され、そして、それらの天井電極部126aと底部電極部126bとを連結する側部電極部(図示省略)が、第2内部空所92の側壁を与えるスペーサ層68の両壁面にそれぞれ形成されたトンネル形態の構造となっている。なお、補助ポンプ電極126についても、内側ポンプ電極112と同様に、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を弱めた材料を用いて形成される。
【0038】
補助ポンプセル124においては、補助ポンプ電極126と外側ポンプ電極114との間に所望の電圧Vp1を印加することにより、第2内部空所92内の雰囲気中の酸素を外部空間に汲み出し、あるいは、外部空間から第2内部空所92内に汲み入れることが可能となっている。
【0039】
また、第2内部空所92内における雰囲気中の酸素分圧を制御するために、補助ポンプ電極126と、基準電極102と、第2固体電解質層70と、スペーサ層68と、第1固体電解質層66とによって電気化学的なセンサセル、すなわち、補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル130が構成されている。
【0040】
なお、この補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル130にて検出される起電力V1に基づいて電圧制御される可変電源132にて、補助ポンプセル124がポンピングを行う。これにより第2内部空所92内の雰囲気中の酸素分圧は、NOxの測定に実質的に影響がない低い分圧にまで制御されるようになっている。
【0041】
また、これと共に、そのポンプ電流Ip1が、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル120の起電力V0の制御に用いられるようになっている。具体的には、ポンプ電流Ip1は、制御信号として主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル120に入力され、その起電力V0が制御されることにより、第3拡散律速部90から第2内部空所92内に導入される被測定ガス中の酸素分圧の勾配が常に一定となるように制御されている。NOxセンサとして使用する際は、主ポンプセル110と補助ポンプセル124との働きによって、第2内部空所92内での酸素濃度は約0.001ppm程度の一定の値に保たれる。
【0042】
第4拡散律速部94は、第2内部空所92で補助ポンプセル124の動作により酸素濃度(酸素分圧)が制御された被測定ガスに所定の拡散抵抗を付与して、該被測定ガスを第3内部空所96に導く部位である。第4拡散律速部94は、第3内部空所96に流入するNOxの量を制限する役割を担う。
【0043】
第3内部空所96は、予め第2内部空所92において酸素濃度(酸素分圧)が調整された後、第4拡散律速部94を通じて導入された被測定ガスに対して、被測定ガス中の窒素酸化物(NOx)濃度の測定に係る処理を行うための空間として設けられている。NOx濃度の測定は、主として、第3内部空所96において、測定用ポンプセル140の動作により行われる。
【0044】
測定用ポンプセル140は、第3内部空所96内において、被測定ガス中のNOx濃度の測定を行う。測定用ポンプセル140は、第3内部空所96に面する第1固体電解質層66の上面に直に設けられた測定電極134と、外側ポンプ電極114と、第2固体電解質層70と、スペーサ層68と、第1固体電解質層66とによって構成された電気化学的ポンプセルである。測定電極134は、多孔質サーメット電極である。測定電極134は、第3内部空所96内の雰囲気中に存在するNOxを還元するNOx還元触媒としても機能する。
【0045】
測定用ポンプセル140においては、測定電極134の周囲の雰囲気中における窒素酸化物の分解によって生じた酸素を汲み出して、その発生量をポンプ電流Ip2として検出することができる。
【0046】
また、測定電極134の周囲の酸素分圧を検出するために、第1固体電解質層66と、測定電極134と、基準電極102とによって電気化学的なセンサセル、すなわち、測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル142が構成されている。測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル142にて検出された起電力V2に基づいて可変電源144が制御される。
【0047】
第2内部空所92内に導かれた被測定ガスは、酸素分圧が制御された状況下で第4拡散律速部94を通じて第3内部空所96の測定電極134に到達することとなる。測定電極134の周囲の被測定ガス中の窒素酸化物は還元されて(2NO→N2+O2)酸素を発生する。そして、この発生した酸素は測定用ポンプセル140によってポンピングされることとなるが、その際、測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル142にて検出された起電力V2が一定となるように可変電源144の電圧Vp2が制御される。測定電極134の周囲において発生する酸素の量は、被測定ガス中の窒素酸化物の濃度に比例するものであるから、測定用ポンプセル140におけるポンプ電流Ip2を用いて被測定ガス中の窒素酸化物濃度が算出されることとなる。
【0048】
また、第2固体電解質層70と、スペーサ層68と、第1固体電解質層66と、第3基板層64と、外側ポンプ電極114と、基準電極102とから電気化学的なセンサセル146が構成されており、このセンサセル146によって得られる起電力Vrefによりセンサ外部の被測定ガス中の酸素分圧を検出可能となっている。
【0049】
さらに、第2固体電解質層70と、スペーサ層68と、第1固体電解質層66と、第3基板層64と、外側ポンプ電極114と、基準電極102とから電気化学的な基準ガス調整ポンプセル150が構成されている。この基準ガス調整ポンプセル150は、外側ポンプ電極114と基準電極102との間に接続された可変電源152が印加する電圧Vp3により制御電流Ip3が流れることで、ポンピングを行う。これにより、基準ガス調整ポンプセル150は、外側ポンプ電極114の周囲の空間(図1のセンサ素子室22)から基準電極102の周囲の空間(大気導入層100)に酸素の汲み入れを行う。可変電源152の電圧Vp3は、制御電流Ip3が所定の値(一定値の直流電流)となるような直流電圧として、予め定められている。
【0050】
このような構成を有するガスセンサ10においては、主ポンプセル110と補助ポンプセル124とを作動させることによって酸素分圧が常に一定の低い値(NOxの測定に実質的に影響がない値)に保たれた被測定ガスが測定用ポンプセル140に与えられる。従って、被測定ガス中のNOxの濃度に略比例して、NOxの還元によって発生する酸素が測定用ポンプセル140より汲み出されることによって流れるポンプ電流Ip2に基づいて、被測定ガス中のNOx濃度を知ることができるようになっている。
【0051】
さらに、センサ素子12は、固体電解質の酸素イオン伝導性を高めるために、センサ素子12を加熱して保温する温度調整の役割を担うヒータ部160を備えている。ヒータ部160は、ヒータコネクタ電極162と、ヒータ164と、スルーホール166と、ヒータ絶縁層168と、圧力放散孔170と、リード線172とを備えている。
【0052】
ヒータコネクタ電極162は、第1基板層60の下面に接する態様にて形成されてなる電極である。ヒータコネクタ電極162を外部電源と接続することによって、外部からヒータ部160へ給電することができるようになっている。
【0053】
ヒータ164は、第2基板層62と第3基板層64とに上下から挟まれた態様にて形成される電気抵抗体である。ヒータ164は、リード線172及びスルーホール166を介してヒータコネクタ電極162と接続されており、該ヒータコネクタ電極162を通して外部より給電されることにより発熱し、センサ素子12を形成する固体電解質の加熱と保温を行う。
【0054】
また、ヒータ164は、第1内部空所88から第3内部空所96の全域に渡って埋設されており、センサ素子12全体を上記固体電解質が活性化する温度に調整することが可能となっている。
【0055】
ヒータ絶縁層168は、ヒータ164の上下面に、アルミナ等の絶縁体によって形成された多孔質アルミナからなる絶縁層である。ヒータ絶縁層168は、第2基板層62とヒータ164との間の電気的絶縁性、及び、第3基板層64とヒータ164との間の電気的絶縁性を得る目的で形成されている。
【0056】
圧力放散孔170は、第3基板層64を貫通し、基準ガス導入空間98に連通するように設けられてなる部位であり、ヒータ絶縁層168内の温度上昇に伴う内圧上昇を緩和する目的で形成されてなる。
【0057】
なお、図2に示した可変電源122、144、132、152等は、実際にはセンサ素子12内に形成された図示しないリード線や図1のコネクタ19及びリード線54を介して、各電極と接続されている。
【0058】
そして、本実施形態は、センサ素子12の後端部から露出する接続端子200には、後方に延びる金属端子17が電気的に接続されている。センサ素子12の後端部の周囲にセラミックハウジング16が設置され、上述した接続端子200とセラミックハウジング16との間に金属端子17がはめ込まれることで、センサ素子12の接続端子200と金属端子17とが圧着して電気的に接続される。すなわち、セラミックハウジング16は、センサ素子12と電気的に接続する金属端子17が装着され、センサ素子12の後端部を保持する。
【0059】
金属端子17の後部は、セラミックハウジング16の後方に延び、弾性絶縁部材56内に挿入されたリード線54と電気的に接続される。弾性絶縁部材56には、センサ素子12の軸方向に複数の貫通孔202が形成されている。この貫通孔202を通してリード線54が挿入されて、センサ素子12から延びる金属端子17とリード線54とが半田204によって電気的に接続される。
【0060】
より詳細には、金属端子17は、センサ接続部17a、貫通孔通過部17b、たわみ部17c、及びリード線接続部17dに区分できる。センサ接続部17aは、略直線状の部位と円弧状との部位を有し、接点バネとして機能する。円弧状の部位がセンサ素子12の接続端子200に弾性的に接触する。貫通孔通過部17bは、セラミックハウジング16の後述の貫通孔16dを通過(挿通)する。たわみ部17cは、略円弧形状のたわみを有し、接続端子200(センサ素子12)とリード線54とを金属端子17で接続した際に、金属端子17に過大なストレスがかからないようゆとりを持たせる。リード線接続部17dは、リード線54(半田204)と電気的に接続される。
【0061】
以下、図1図3を用いて説明する。図3は、実施形態に係るセラミックハウジング16を拡大して表す斜視図である。セラミックハウジング16は、セラミックで構成され、円筒部16a、円板部16b、挿通部16c、及び貫通孔16dを有する。円筒部16aは、略円筒形状を有し、その空間内にセンサ素子12の後端部、接続端子200、金属端子17のセンサ接続部17aを保持する。円板部16bは、略円板形状を有し、その端面16e(セラミックハウジング16の後端面)に挿通部16cが配置される。なお、端面16eは、略平面とすることができる。挿通部16cは、金属端子17を挿通する部位である。挿通部16cは、貫通孔16dを有し、この貫通孔16d内に金属端子17が挿通される。貫通孔16dは、円板部16b及び挿通部16cを貫通し、金属端子17、特に貫通孔通過部17bが挿通される。
【0062】
ここでは、6本の金属端子17に対応して6つの挿通部16cが配置され、そのそれぞれが1の貫通孔16dを有する。より具体的には、円板部16bの周に沿って、3つの挿通部16cの組G1、G2が配置される。組G1、G2内の挿通部16cは円板部16bの周に沿って略等間隔で順に配置される。組G1、G2間(例えば、組G1の端の挿通部16cと、この挿通部16cに最も近い、組G2の端の挿通部16cとの間隔)は、組G1、G2内での挿通部16cの間隔より離れている。
【0063】
この挿通部16cは、円板部16bの上面から突出し(高さを有し)、台座として機能する。この高さは、全ての挿通部16cにおいて、同一ではない。例えば、組G1、G2の真ん中の挿通部16cの高さh1は、その両脇(両端)の挿通部16cの高さh0と異なる。後述のように、全ての挿通部16cの高さが同一でないことで、金属端子17、特に、貫通孔通過部17bのダメージ(折れ曲がり)が低減される。
【0064】
ここでは、組G1、G2内それぞれで、高さの異なる挿通部16cが隣接している。このことが、このダメージの低減により有効に機能する。後述のように、隣接する挿通部16cの存在がこのダメージに影響を与えると考えられる。
【0065】
一方、組G1、G2間では、高さの異なる挿通部16cが隣接してはいない(組G1の端の挿通部16cは、これと最も近い、組G2の端の挿通部16cと、同じ高さh0を有する)。すなわち、組G1、G2間では、高さの異なる挿通部16cが隣接していなくてもよい。組G1、G2間での挿通部16cの間隔は、組G1、G2内での挿通部16cの間隔より大きい。このため、組G1、G2間の挿通部16cの存在が貫通孔通過部17bのダメージに与える影響は小さいと考えられる。
【0066】
挿通部16cの高さの差Δh(=|h1-h0|)は、例えば、0.3~10.0mmである。高さの差Δhがこの範囲のときに、貫通孔通過部17bへのダメージを低減できる。ここでは、高さh1は、高さh0より小さいものとしているが、高さh0より大きくしてもよい。
【0067】
なお、複数の挿通部16c(ここでは、台座)がそれぞれ離間して円板部16bの上面に配置されているが、変形例として、複数の挿通部16cが互いに接続されていてもよい。このとき、高さの異なる挿通部16cが接続されていてもよい。すなわち、挿通部16cが高さの異なる個所を有し、そのそれぞれに貫通孔16dが配置されてもよい。
【0068】
また、挿通部16cの組の数やそれぞれの組内の挿通部16cの個数は、適宜に設定できる。例えば、1組中の挿通部16cの個数を2つ、4つ以上とできる。また組の数を3つ、4つ以上、あるいは1つとしてもよい。
【0069】
図4A図4Cは、挿通部16cの変形例を表す斜視図である。図4Aでは、組G1、G2それぞれの真ん中の挿通部16cの端面が円板部16bの上面と同一平面に配置される(この挿通部16cの高さh1=0)。このとき、高さの差Δhは、h0である。図4Bでは、組G1、G2の真ん中の挿通部16cの端面が円板部16bの上面より高さh2だけ低くなっている(凹んでいる)。このとき、高さの差Δhは、h0+h2である。このように、挿通部16cの端面は、円板部16bの上面から突出していなくてもよい。また、図4Cでは、組G1、G2内のみではなく、組G1、G2全体において、高さh0、h1の挿通部16cが交互に配置される。これらいずれの場合でも、高さの差Δhは、例えば、0.3~10.0mmである。
【0070】
図5A図5Bは、挿通部16cの比較例を表す斜視図である。図5Aでは、全ての挿通部16cの高さh0が同一である。図5Bでは、全ての挿通部16cの端面が円板部16bの上面と同一面となっている。
【実施例
【0071】
ここで、実施例と比較例について、振動を印加したときの金属端子17へのダメージを確認した実験例を示す。
【0072】
[実施例]
実施例1~11、比較例1~4について、試験を実施し、評価を行った。
これら実施例、比較例は、図3図4A、または図4Bの構造を有するセラミックハウジング16を備え、金属端子17の本数は6本である。
具体的には、実施例1~4、比較例1、2は図3、実施例5~7、比較例3は図4A、実施例8~11、比較例4は図4Bの構造とした。実質的には、比較例1、2は図5A、比較例3、4は図5Bの構造を有するが、高さh1、h2を表すため、便宜的に実施形態の図を用いた。
【0073】
高さh0については、実施例1~11、比較例1~4それぞれで、5.0、5.0、5.0、8.0、3.0、9.0、0.3、3.0、3.0、3.0、5.0、5.0、3.0、0.08、0.06[mm]とした。
【0074】
高さh1については、実施例1~7それぞれで、3.0、1.0、4.6、0.2、0.0、0.0、0.0、比較例1~3それぞれで、5.0、2.95、0.0[mm]とした。高さh2については、実施例8~11、比較例4それぞれで、2.0、5.0、0.2、4.0、0.02[mm]とした。
【0075】
この結果、高さの差Δh(=h0-h1、またはh0+h2)は、実施例1~11、比較例1~4それぞれで、2.0、4.0、0.4、7.8、3.0、9.0、0.3、5.0、8.0、3.2、9.0、0.0、0.05、0.08、0.08[mm]となった。
【0076】
[評価方法]
振動試験後における金属端子17の電気的接続状態を評価した。具体的には、次の(1)、(2)の測定を行った。
(1)試験後での金属端子17間の短絡の有無
(2)試験前後での貫通孔16dの間隔の比R(=D1/D0)
ここで、D0:試験前の貫通孔16dの間隔、D1:試験後の貫通孔16dの間隔
【0077】
後述のように、振動によって、セラミックハウジング16の貫通孔16dの内壁が摩耗し、内壁の径が大きくなることで、金属端子17が近接し、短絡する可能性がある。このため、短絡の有無のみならず、短絡に先立つ貫通孔16dの径の広がり(隣接する貫通孔16d間の間隔の減少)をも評価した。
【0078】
評価基準A、Bは、次のようにした。
A:(1)金属端子17間に短絡がなく、かつ(2)比Rが1/10より大きい
B:(1)金属端子17間に短絡があるか、または(2)比Rが1/10以下
【0079】
[実験方法]
チャンバーにガスセンサを取り付け、下記振動条件下で試験を実施した。
周波数: 250Hz
加速度: 50G
試験時間: 500時間
ガス温度: 室温
【0080】
図8の表に示すように、試験の結果、実施例1~11は、評価Aであったが、比較例1~4は評価Bであった。すなわち、高さの差Δhが大きいもの(Δhが0.3以上)、高さの差Δhが小さいもの(Δhが0.08以下)で、評価が分かれた。
【0081】
図6A図7Bは、実施例、比較例で比較実験の相違が生じることを表すための模式的断面図である。図6A図6Bはそれぞれ、振動を印加する前後での比較例に係るセラミックハウジング16近傍の状態を表す模式的断面図である。図7A図7Bはそれぞれ、振動を印加する前後での実施例1に係るセラミックハウジング16近傍の状態を表す模式的断面図である。図6A、図7Aに示すように、比較例、実施例1は、隣接する挿通部16cの高さが同一、及び相違する点が異なる。
【0082】
ガスセンサに振動を印加したとき、弾性絶縁部材56に印加される振動の振幅A1は比較的大きいが、セラミックハウジング16に印加される振動の振幅A2は比較的小さい。セラミックハウジング16が固定端、弾性絶縁部材56側が自由端として、ガスセンサが振動することから、弾性絶縁部材56側(自由端側)での振幅が大きくなる。
【0083】
この振幅の相違に起因して、セラミックハウジング16の挿通部16c及び円板部16bの貫通孔16dの内壁は、弾性絶縁部材56側がより摩耗し、その径が大きくなる。その結果、貫通孔16dは、略円錐台を上下逆にしたようなしりすぼみの形状となる(図6B図7B参照)。
【0084】
このとき、図6Bに示すように、比較例では、いずれの挿通部16cでも比較的均一に摩耗が進む。これに対して、図7Bに示すように、実施例1では挿通部16cの高さの相違に起因して、高さの大きい挿通部16cでの摩耗が制限される。この結果、比較例では弾性絶縁部材56側の貫通孔通過部17bが折れ曲がり、短絡し易いのに対して、実施例1では弾性絶縁部材56側の貫通孔通過部17bの折れ曲がりが制限され、短絡し難くなる。
【0085】
この高さに起因する貫通孔16d内壁の摩耗の相違は、次のように説明できる。図6A及び図6Bに示すように、比較例では、金属端子17のうち、隣接する貫通孔通過部17bの後部17eはいずれも、セラミックハウジング16(挿通部16c)に接触している。このため、隣接する貫通孔通過部17bの後部17eの振動が、挿通部16cの摩耗に相乗的に寄与すると考えられる。一方、実施例1では、高さの低い側の挿通部16cの後部17eは、セラミックハウジング16に接触していない。このため、高さの低い側の挿通部16cの後部17eでの振動は、高さの高い側の挿通部16cの摩耗に寄与しないと考えられる。このように、貫通孔16dの高さの相違が、隣接する金属端子17のセラミックハウジング16(挿通部16c)への接触状態の相違を生じる。これが、セラミックハウジング16、特に、その弾性絶縁部材56側での摩耗の相違を生じたと考えることができる。
【0086】
[本実施形態から得られる発明]
上記実施形態から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0087】
[1] 本実施形態に係るガスセンサ10は、センサ素子12、弾性絶縁部材56、複数のリード線54、複数の金属端子17、セラミックハウジング16を有する。複数のリード線54は、弾性絶縁部材56に挿入される。複数の金属端子17はそれぞれ、センサ素子12と電気的に接続される第1の端部(センサ接続部17a)と、複数のリード線54のいずれかと電気的に接続される第2の端部(リード線接続部17d)と、を有する。セラミックハウジング16は、複数の金属端子17のいずれかが挿通される貫通孔16dをそれぞれ有する複数の挿通部16cを有し、複数の挿通部16cの少なくともいずれかの高さが、他の挿通部16cの高さと異なる。
【0088】
これにより、ガスセンサ10に振動を印加したときの挿通部16c(貫通孔16d)の摩耗を抑制し、金属端子17が折れ曲がり、接触することによる短絡を低減できる。
【0089】
[2] 本実施形態において、複数の挿通部16cが、隣接し、高さの異なる第1、第2の挿通部16cを有する。高さの異なる挿通部16cが隣接することで、より効果的に、挿通部16c(貫通孔16d)の摩耗、ひいては、金属端子17の短絡を抑制できる。
【0090】
[3] 本実施形態において、セラミックハウジング16が、端面16eを有し、複数の挿通部16cが端面16e上に配置される。これにより、端面16e上に複数の挿通部16cを容易に設けることができる。
【0091】
[4] 本実施形態において、複数の挿通部16cの少なくともいずれかが、端面16eと略同一の高さ、突出、あるいは凹ませることができる。すなわち、複数の挿通部16cの少なくともいずれかが、端面16eに対して、略同一の高さ、突出、あるいは凹むのいずれであっても、他の挿通部16cの高さと異なっていればよい。
【0092】
[5] 本実施形態において、複数の挿通部16cの少なくともいずれかの高さh1と、他の挿通部16cの高さh0との差Δh(=|h1-h0|)が、0.3~10.0mmである。
【0093】
上述した実施形態では、センサ素子12は被測定ガス中のNOx濃度を検出するものとしたが、被測定ガス中の特定ガスの濃度を検出するものであれば、これに限られない。例えば、被測定ガス中の酸素濃度を検出するものとしてもよい。
【0094】
なお、本発明の実施に当たっては、本発明の思想を損なわない範囲で自動車用部品としての信頼性向上のための諸手段が付加されてもよい。
【符号の説明】
【0095】
10…ガスセンサ 12…センサ素子
16…セラミックハウジング 16a…円筒部
16b…円板部 16c…挿通部
16d…貫通孔 16e…端面
17…金属端子 17a…センサ接続部
17b…貫通孔通過部 17c…たわみ部
17d…リード線接続部 18…センサ組立体
54…リード線 56…弾性絶縁部材
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8