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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】シート定着構造
(51)【国際特許分類】
   E04H 15/20 20060101AFI20231107BHJP
   E04H 15/64 20060101ALI20231107BHJP
   E04B 1/32 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
E04H15/20 B
E04H15/64
E04B1/32 102A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019205359
(22)【出願日】2019-11-13
(65)【公開番号】P2021075959
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】591219393
【氏名又は名称】株式会社梓設計
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000204192
【氏名又は名称】太陽工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】永廣 正邦
(72)【発明者】
【氏名】川野 久雄
(72)【発明者】
【氏名】武市 章平
(72)【発明者】
【氏名】島村 高平
(72)【発明者】
【氏名】坂口 裕美
(72)【発明者】
【氏名】柴田 宜伸
(72)【発明者】
【氏名】野口 明裕
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-257307(JP,A)
【文献】特開2008-266962(JP,A)
【文献】特開2012-172374(JP,A)
【文献】特開2017-106182(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0007536(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 15/00-15/64
E04B 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート部材と、
固定体に固定されるように構成された固定部材と、
前記固定部材との間に前記シート部材の縁部を挟み込むように配置される押さえ部材と、
前記押え部材の上面を覆う保護フィルムと、
前記保護フィルム及び前記押さえ部材を前記固定部材に固定するボルトと、を備え、
前記保護フィルムは、フッ素樹脂によって形成されている、
シート定着構造。
【請求項2】
前記押え部材の上面は、外側に向かって下方に傾斜しており、
前記保護フィルムは、前記押え部材の上面に沿うように前記押え部材の上面に取り付けられている、
請求項1に記載のシート定着構造。
【請求項3】
前記ボルトは、ゴム部材に取り付けられており、
前記ゴム部材は、前記ボルトの頭部を覆っている、
請求項1に記載のシート定着構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート部材を用いてエアドームやテント等の膜構造建築物等を組み立てるときに、その建築物においてシートを定着させるシート定着構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、膜構造建築物等の組み立て等においてシート部材を定着させるときに建築物等の所定の位置に配置された固定部材にシート部材の縁部を係止させるシート定着構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のシート定着構造は、複数の膜体を有するシート部材と、前記シート部材を定着させる固定体に固定される固定部材と、前記固定部材との間に前記シート部材を挟み込む押さえ部材と、を備える。複数の膜体は、その周縁部を積層した状態で互いに固着されている。このように構成されるシート部材は、各膜体間に空気等の気体が充填されて膨らんでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-172374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のシート定着構造では、押え部材に雪が付着しやすいので、押え部材の上に大量の雪が積もりやすい。押え部材の上に大量の雪が積もってくると、シート部材の押え部材に隣接する部分にも大量の雪が及び、気体が充填されたシート部材の形が崩れたり、大量の雪がシート部材から落下したりしやすくなるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記の課題に基づいてなされたものであり、その目的は、雪が付着しにくいシート定着構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るシート定着装置は、シート部材と、固定体に固定されるように構成された固定部材と、前記固定部材との間に前記シート部材の縁部を挟み込むように配置される押さえ部材と、前記押え部材の上面を覆う保護フィルムと、前記保護フィルム及び前記押さえ部材を前記固定部材に固定するボルトと、を備える。前記保護フィルムは、フッ素樹脂によって形成されている。
【0008】
この構成によれば、保護フィルムは、フッ素樹脂によって形成されているので、摩擦係数が低く、高い滑り性を有する。そのため、保護フィルムの上に積もった雪が保護フィルムに付着しにくくなるので、大量の雪が保護フィルムの上に積もることが抑制される。その結果、シート部材の押え部材に隣接する部分に大量の雪が及ぶことが抑制されるので、シート部材の形が崩れたり、大量の雪がシート部材から落下したりすることが抑制される。
【0009】
上記構成において、前記押え部材の上面は、外側に向かって下方に傾斜していてもよい。前記保護フィルムは、前記押え部材の上面に沿うように前記押え部材の上面に取り付けられていてもよい。
【0010】
この構成によれば、保護フィルムは、押え部材の上面に沿うように押え部材の上面に取り付けられているので、保護フィルムの上面は外側に向かって下方に傾斜している。そのため、保護フィルムの上に積もった雪は、保護フィルムの上面を外側に向かって重力によって滑りやすくなるので、大量の雪が保護フィルムの上に積もることがさらに抑制される。
前記ボルトは、ゴム部材に取り付けられており、前記ゴム部材は、前記ボルトの頭部を覆っていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、雪が付着しにくいシート定着構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係るシート定着構造を適用した構造物を模式的に示した図である。
図2】シート部材の配置状態を説明するための図である。
図3】前記シート定着構造を示す縦断面図である。
図4】前記シート定着構造を示す分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係るシート定着構造について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態のシート定着構造を適用した構造物の一例を模式的に表す正面図である。
【0014】
本実施形態に係るシート定着構造は、構造物の支持部材10にシート部材30を定着させるための構造であり、シート部材30と、このシート部材30が固定される固定部材220を支持部材10に定着させるためのシート定着装置20とを備えている。
【0015】
構造物は、所定の間隔をおいて並ぶ複数(本実施形態の例では3つ)の支持部材(固定体)10を有する。支持部材10は、当該支持部材10の並ぶ方向と直交し且つ水平に延びる水平板10aと、この水平板10aを支持するために当該水平板10aの下側に当該水平板10aの延びる方向に所定間隔で並ぶ支柱10b、10b、…とを有する。この水平板10aの上にシート定着装置20が配置され、このシート定着装置20によって両側のシート部材30、30が支持部材10に定着させられる。
【0016】
各シート部材30は、図1、2に示されるように、構造物の屋根又は外壁を構成するためのパーツである複数の膜体32a、32b、34aを備える。各シート部材30は、膜体32aと膜体32bとから構成されるシート本体32と、シート本体32に結合される膜体34aから構成される接続部34と、を有する。シート本体32は、シート定着装置20の外側(図1においては支持部材10の間)に主として存在するものであり、シート本体部36bと固着部36aとを有する。具体的に、このシート本体32では、これら複数の膜体32a、32bの周縁部が積層された状態で互いに固着されることによって固着部36aが形成されている。また、シート本体32における固着部36aよりも内側の部位がシート本体部36bを構成する。このシート本体部36bでは、各膜体32a、32b同士が互いに固着されていない状態(離間した又は離間可能な状態)で積層方向に配置されている。各膜体間(例えば膜体32a、32b間)は気密状態となっている。このシート本体32は、積層された膜体32a、32b間に流体(本実施形態では空気)が充填されており、これによって中央部がシート部材30の厚み方向に膨出した形状を有する。
【0017】
接続部34は、シート本体32の周縁部に接続される部位であり、シート定着装置20の内部に存在する。接続部34の一端34bは、シート本体32を構成する膜体32a、32bの端部と重ね合わされると共に固着されている。即ち、シート部材30は、シート本体32の膜体32a、32bと接続部34の膜体34aとが固着された固着部36aを有している。本実施形態では、シート部材30が3つの膜体32a、32b、34aを有
し、そのうちの2つの膜体32a、32bがシート本体32を構成し、1つの膜体34aが接続部34を構成している。尚、固着部36aでは、熱溶着や接着剤による接着、強度の必要ないところでは両面テープによる貼着によって膜体32a、32b、34a同士が固着されている。
【0018】
膜体32a、32b、34aは、芯材となる繊維織物を有さない厚みの薄い樹脂製の部材によって構成される。例えば、具体的に、膜体32a、32b、34aは、フッ素樹脂やポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂等の合成樹脂によって形成されている。すなわち、膜体32a、32b、34aは、シート本体32に空気が充填されたときに生ずる張力に耐えられる強度を有している。尚、膜体32a、32b、34aは、芯材となる繊維織物を有さない樹脂製の部材に限定されず、繊維織物(繊維織布や編物等)によって形成された芯材の少なくとも片方の面に上記合成樹脂を被覆した部材によって構成されてもよい。本実施形態の膜体32a、32b、34aは、例えば、フッ素樹脂により形成され、フッ素樹脂として、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)が使用され、大きさが例えば4×4mの正方形で、厚さが例えば50~500μmである。
【0019】
このようなシート部材30の端縁は、係止部材210に保持される被保持部33を構成する。この被保持部33は、シート本体32において当該被保持部33と隣接する部位と比べて、厚さ寸法(図2における上下方向の寸法)が大きくなるように構成される。具体的に、本実施形態の被保持部33は、シート本体32を構成するために積層されている膜体32a、32bのうちのいずれかの膜体(図2に示す例では、下側の膜体32a)の端部を、長尺状の芯材38を内包するように折り返すことによって形成されている。この膜体32aの折り返された部位の先端は、固着部36aにおいて他の膜体32b、34aと共に積層された状態で固着されている。
【0020】
一方のシート部材30の接続部34は、他方のシート部材30の接続部34と接続されている。即ち、一方のシート部材30の接続部34は、他方のシート部材30の接続部34に向かって延びている。一方のシート部材30の接続部34の一端34bは、前記のように固着部36aでシート本体32の膜体32a、32bと固着され、他端34cは、他方のシート部材30の接続部34の他端34cと重ねられる。本実施形態では、接続部34の他端34c、34c同士は、両面テープ39によって固着されているが、これに限定されない。
【0021】
図3は、本実施形態のシート定着構造を示す縦断面図であり、図4は、その分解図である。
【0022】
本実施形態のシート定着構造におけるシート定着装置20は、シート部材30の端縁(被保持部33)を保持する係止部材210と、支持部材10に固定される固定部材220と、この固定部材220に取り付けられる押さえ部材230と、押え部材230の上面23aを覆う保護フィルム240と、を備える。
【0023】
係止部材210は、シート部材30の被保持部33に沿って延び、この被保持部33を挿入可能な本体部211と、この本体部211から突出する被係止片212と、を有し、固定部材220と押さえ部材230との間に形成される空間(係止部材収容空間)S1に配設される。
【0024】
本体部211は、当該本体部211に挿入された被保持部33から延出するシート部材30を挿通させる切欠き部213と、この切欠き部213と被係止片212との間に設けられる支持面部214とを有する。
【0025】
切欠き部213は、本体部211の内側の空間(被保持部収容空間)S2と本体部211の外側の空間とを連通させる部位である。切欠き部213は、本体部211において、長さ方向の全体に亘って形成される。この切欠き部213におけるシート部材30の通過する部位の間隔は、被保持部33の芯材38の径よりも小さい。
【0026】
支持面部214の外面214aは、外側に向かって膨出する湾曲形状を有する。詳しくは、支持面部214の外面214aは、本体部211の長手方向と直交する断面が外側に向かって膨出する円弧となる湾曲状の面である。
【0027】
被係止片212は、本体部211において、切欠き部213と被保持部収容空間S2を挟んで反対側に設けられる。この被係止片212は、係止部材収容空間S1内で支持面部214が固定部材220の受け面222に沿うように係止部材210が回動されることにより、固定部材220の係止部224によって係止される。本実施形態の被係止片212は、本体部211の長さ方向の全体に亘って形成されている。
【0028】
尚、係止部材210は、シート部材30の被保持部33を被保持部収容空間S2に挿入することができれば、上記構成に限られない。係止部材210は、例えば、固定部材220に一体的に結合されていてもよい。
【0029】
固定部材220は、一方向(シート部材30の被保持部33に沿う方向)に延びる形状を有する。この固定部材220は、前記一方向と直交する断面において、両サイドの肉厚の部位220a、220aと、中央の突設部位220bと、肉厚の部位220a及び突設部位220bの間に設けられる取付凹部221、221と、を備える。
【0030】
突設部位220bには、固定部材220に押さえ部材230を固定するためのボルトB2が螺入される雌ねじ穴部220cが設けられる。
【0031】
肉厚の部位220aには、固定部材220を支持部材10(水平板10a)に固定するためのボルトB1を受けるボルト受け部220dが設けられる。肉厚の部位220aの支持部材10と反対側の端部には、傾斜したシート受け面225が形成されている。このシート受け面225は、固定部材220の幅方向において、取付凹部221の外側に形成されている。そして、シート受け面225は、固定部材220の幅方向において、固着部36aの幅よりも大きな幅を有する。これにより、シート受け面225は、シート部材30における固着部36aを含む所定範囲を押さえ部材230との間に挟みこむことができる。また、シート受け面225は、外側に向かって支持部材10から離れる方向(例えば、図3においては、外側に向かって高くなる方向)に傾斜している。本実施形態の固定部材220は、このシート受け面225上に当該シート受け面225に沿って配置される防水部材226を有する。この防水部材226の表面(固定部材220と反対側の面)は、シート受け面225と略平行である。そして、係止部材210に挿入された被保持部33から延出するシート部材30がこの防水部材226上に配置される。このとき、シート部材30の固着部36aは、固定部材220の幅方向において、防水部材226の外側端部よりも内側に位置する。本実施形態の防水部材226は、ゴムにより形成されている。
【0032】
取付凹部221は、シート部材30の被保持部33に沿って延び、係止部材210が挿入される部位である。この取付凹部221は、押さえ部材230との間に空間(係止部材収容空間)S1を形成する。取付凹部221は、係止部材収容空間S1に面する受け面222を有し、この受け面222は、シート受け面225の内端からほぼ垂直に延びる面227と連続するように形成されている。このほぼ垂直に延びる面227は、上側が固定部材220の幅方向外側(隣接するシート受け面225側)に向ってわずかに傾斜している。
【0033】
受け面222は、シート部材30の張力Tによって作用する支持面部214からの力を受ける面であり、凹湾曲形状を有する。具体的に、受け面222は、係止部材210の支持面部214の外面214aと対応する湾曲形状を有し、係止部材収容空間S1内に配置された(即ち、取付凹部221内に挿入された)係止部材210の支持面部214における外面214aと面接触している。そのため、支持面部214を受け面222に沿って回動させることができ、これにより、係止部材210を固定部材220における固定位置で回動させることができる。
【0034】
また、取付凹部221は、係止部材210を挟んで受け面222と反対側に設けられ且つ係止部材収容空間S1に面する側面(突設部位220bの側面)223を有する。この側面223からは、係止部材210の本体部211に向かって係止部224が突出している。この係止部224は、前記のように被係止片212を係止させるための部位である。具体的に、係止部224は、係止部材収容空間S1内に配置された係止部材210を支持面部214が受け面222に沿うように回動させることにより被係止片212が当接する当接面224aを有する。この当接面224aは、例えば図3に示す姿勢で固定部材220を支持部材10に固定した場合、固定部材220の側面223から下を向いた状態で水平若しくは先端側が斜め下に向かって延びている。
【0035】
このような取付凹部221内に係止部材210を挿入することにより、固定部材220に係止部材210が固定される。具体的に、支持面部214の外面214aが受け面222と面接触し、且つ、被係止片212が係止部224に係止された(当接した)状態で固定部材220の取付凹部221内に係止部材210を配置することにより、係止部材210が固定部材220に固定される。
【0036】
以上のように構成される固定部材220は、支持部材10の水平板10aに対してボルトB1によって固定されている。
【0037】
押さえ部材230は、固定部材220との間にシート部材30を挟み込む。本実施形態の押さえ部材230は、固定部材220に沿って延びる板状の部材である。この押え部材230の上面230aは、押え部材230の幅方向の外側に向かって下方に傾斜するように形成されている。この押さえ部材230の裏面(固定部材220側の面)231の幅方向の両側には、固定部材220のシート受け面225と対応する傾斜面であるシート押圧面232が形成されている。この押さえ部材230のシート押圧面232と固定部材220のシート受け面225との間に係止部材210から延出するシート部材30が配置される。換言すると、シート押圧面232によって被保持部33から延出するシート部材30がシート受け面225に向けて押圧される。本実施形態では、係止部材210及びシート部材30が配置された状態の固定部材220の上(押さえ部材230側)に防水カバー233が配置された状態で、押さえ部材230が固定部材220との間にシート部材30を挟み込んでいる。これにより、係止部材210から延出するシート部材30は、防水部材226と防水カバー233とによって挟持される。この防水カバー233は、防水部材226と同様にゴムによって形成されている。そのため、防水カバー23は、防水部材226との間にシート部材30と密着した状態で当該シート部材30を挟み込むことによって、シート本体32に沿って雨水等が流れてきてもシート定着装置20内への雨水等の浸入を防ぐことができる。これにより、シート部材30が定着された構造物内への前記雨水等の浸が防がれる。
【0038】
シート部材30の固着部36aは、押さえ部材230(固定部材220)の幅方向において、シート押圧面232及び防水カバー233の外側端部よりも内側に位置する。また、この押さえ部材230との間にシート部材30を挟み込む固定部材220においても、シート部材30の固着部36aが固定部材220の外側端部よりも内側に位置している。このため、固定部材220と押さえ部材230とによって、係止部材収容空間S1内に収容された係止部材210から延出するシート部材30において、固着部36aとその前後の部分とが挟み込まれた状態となる。本実施形態におけるシート部材30においては、固着部36aは、シート部材30が張力Tによって延びたときに固定部材220及び押さえ部材230の間から外側(固定部材22の幅方向の外側)に出ないような位置に形成されている。例えば、本実施形態では、固定部材220の幅方向において、固着部36aの外側端部が固定部材220及び押さえ部材230の外側の端部よりも内側に10mm程度入った位置である。尚、本実施形態では、前記幅方向において、押さえ部材230のシート押圧面232の端部よりも固定部材220の防水部材226の端部の方が前記幅方向において外側に突出している(図3参照)。
【0039】
保護フィルム240は、フッ素樹脂によって形成されている。フッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)が使用される。尚、保護フィルム240には、膜体32a、32b、34aほどの張力はかからないため、膜体32a、32b、34aよりも低い強度であってもよい。保護フィルム240は、固定部材220の延びる方向に長い略矩形状に形成され、押え部材230の上面230aを覆うことができる大きさに構成されている。本実施形態では、2枚の保護フィルム240、240によって押え部材230の上面230aの全体を覆っているが、押え部材230の上面230aを覆うことができれば、保護フィルム240は何枚用いられてもよい。
【0040】
2枚の保護フィルム240は、一方の保護フィルム240の縁部240aと他方の保護フィルム240の縁部240aとが、押え部材230の上面230aの中央部分において積層された状態で、押さえ部材230の上面230aに沿うように配置されている。これにより、保護フィルム240の上面は、押え部材230の幅方向の外側に向かって下方に傾斜している。そして、ゴム部材250に取り付けられたボルトB2が、2枚の保護フィルム240の縁部240a、240aと押さえ部材230とを介して突設部位220bの雌ねじ穴部220cに螺入している。これにより、押さえ部材230が固定部材220に取り付けられるとともに、保護フィルム240が押え部材230の上面230aに取り付けられている。さらに、2枚の保護フィルム240における積層された縁部240aとは反対側の縁部240bがそれぞれ膜体32bに溶着されている。ゴム部材250は、内部に埋め込まれた金属製の板材260を備えている。これにより、ゴム部材250の強度を確保している。尚、本実施形態では、押さえ部材230の上面230aにおいて下方に凹む凹部230aaにゴム部材250が嵌り込んでいるが、凹部230aaとゴム部材250は省略されてもよい。
【0041】
次に、以上のようなシート定着構造を用いた支持部材10へのシート部材30の定着作業について説明する。
【0042】
まず、工場などにおいて、保護フィルム240の縁部240bを膜体32bに予め溶着しておく。
【0043】
次に、支持部材10の水平板10a上に固定部材220を取り付ける。そして、シート部材30の被保持部33を係止部材210の被保持部収容空間S2内に挿入して、係止部材210にシート部材30を保持させる。次いで、係止部材210を固定部材220の係止部材収容空間S1に挿入する。次に、シート部材30の張力Tを利用して係止部材210を回転させながら、被係止片212を係止部224の当接面224aに当接させるとともに、支持面部214の外面214aを固定部材220の受け面222に沿うように当接させる(図3、4参照)。これにより、係止部材210が固定部材220に固定される。
【0044】
次に、防水カバー233と押さえ部材230とを固定部材220の上に順に被せる。
【0045】
この状態で、2枚の保護フィルム240、240の縁部240a、240aを積層して、押さえ部材230の上面230aを保護フィルム240で覆う。最後に、2枚の保護フィルム240、240の縁部240a、240aと押さえ部材230と防水カバー233とを介してボルトB2を雌ねじ穴部220cに螺入する(図3図4参照)。これにより、押え部材230と防水カバー233とが固定部材220に取り付けられるとともに、保護フィルム240が押え部材230の上面230aに取り付けられる。
【0046】
以上のようにして、シート部材30が支持部材10に定着させられる。そして、このシート部材30のシート本体32を構成する膜体32a、32b間に空気を充填してシート部材30を膨らませ膜体に張力を導入する。
【0047】
上記シート定着構造によれば、保護フィルム240は、フッ素樹脂によって形成されているので、摩擦係数が低く、高い滑り性を有する。そのため、保護フィルム240の上に積もった雪が保護フィルム240に付着しにくく、大量の雪が保護フィルム240の上に積もりにくい。その結果、シート部材30の押え部材230に隣接する部分に大量の雪が及ぶことが抑制されるので、空気が充填されたシート部材30の形が崩れたり、大量の雪がシート部材30から落下したりすることが抑制される。
【0048】
上記シート定着構造によれば、保護フィルム240は、押え部材230の上面230aに沿うように押え部材230の上面230aに取り付けられているので、保護フィルム240の上面は、押え部材230の幅方向の外側に向かって下方に傾斜している。そのため、保護フィルム240の上に積もった雪は、保護フィルム240の上面を外側に向かって重力によって滑りやすいので、大量の雪が保護フィルム240の上に積もることが抑制される。
【符号の説明】
【0049】
30 シート部材
36a 縁部
220 固定部材
230 押え部材
230a 上面
240 保護フィルム
図1
図2
図3
図4