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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】充電回路及び電気機器
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20231107BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
H02J7/00 A
H02J1/00 307G
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019218144
(22)【出願日】2019-12-02
(65)【公開番号】P2021090249
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】國屋 美敬
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-287171(JP,A)
【文献】特開2002-84665(JP,A)
【文献】特開2012-70546(JP,A)
【文献】特開2012-60736(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0012554(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 1/00-1/16
7/00-7/12
7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池を充電するための電力が入力される入力部と、
前記入力部から前記二次電池に至る電力線に接続されて当該入力部からの電力で駆動するとともに、前記二次電池への充電電流を制御する充電制御部と、
前記電力線の前記充電制御部よりも前記入力部側に設けられ、前記入力部とゲート端子との電位差が設定値以上の状態でオンする主スイッチング素子と、
前記入力部へ電力が入力されてから所定時間は前記電位差を前記設定値以上に維持し、前記所定時間の経過後は前記電位差を設定値未満に維持する機能を有する時定数回路と、
前記電力線の前記主スイッチング素子よりも前記二次電池側に接続されて前記入力部からの電力で駆動するとともに、前記主スイッチング素子を制御する制御部と、
前記二次電池の満充電状態を検出する満充電検出部と、
を備え、
前記制御部は、前記入力部に電力が入力されてから前記所定時間内に駆動して前記時定数回路の機能を停止させることによって前記主スイッチング素子をオン状態に維持し、前記満充電検出部が満充電を検出すると前記時定数回路の機能を復帰させて前記所定時間経過後に前記主スイッチング素子をオフする
ことを特徴とする充電回路。
【請求項2】
前記時定数回路は、前記主スイッチング素子よりも前記入力部側の電力線と、前記ゲートからグランドへ繋がる配線と、を接続する接続線に設けられた抵抗と、前記配線と前記接続線との接続点とグランドとを接続する接続線に設けられたコンデンサと、を備え、
前記制御部は、前記コンデンサと並列に設けられた制御スイッチング素子を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の充電回路。
【請求項3】
請求項1または2に記載の充電回路と、
前記二次電池により駆動される負荷と、
を備えた電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、充電回路及び電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、二次電池を電源として駆動する電気機器が多くの分野で使用されている。この種の電気機器の充電回路は、充電完了後に充電電流を停止するが、停止後も充電制御部等でいわゆる待機電力が発生している。
【0003】
このような待機電力を削減するものとして、満充電を検出した場合、充電回路に入力される電源回路を停止させる充電装置が知られている(特許文献1)。しかし、この特許文献1記載の充電装置では、特許文献1にも記載されているように、停止した電源回路を復帰させるには充電装置のコンセントを一度抜いたうえで再度差し込む必要がある。すなわち、充電するたびに充電装置のコンセントを接続し直さなければならず、充電のための操作性が良好ではない。このため、充電のための操作性を損なわずに、充電制御部の待機電力を低減させることが望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、充電のための操作性を損なわずに、充電制御部の待機電力を低減させることが可能な充電回路及び電気機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の充電回路は、二次電池を充電するための電力が入力される入力部と、前記入力部から前記二次電池に至る電力線に接続されて当該入力部からの電力で駆動するとともに、前記二次電池への充電電流を制御する充電制御部と、前記電力線の前記充電制御部よりも前記入力部側に設けられ、前記入力部とゲート端子との電位差が設定値以上の状態でオンする主スイッチング素子と、前記入力部へ電力が入力されてから所定時間は前記電位差を前記設定値以上に維持し、前記所定時間の経過後は前記電位差を設定値未満に維持する機能を有する時定数回路と、前記電力線の前記主スイッチング素子よりも前記二次電池側に接続されて前記入力部からの電力で駆動するとともに、前記主スイッチング素子を制御する制御部と、前記二次電池の満充電状態を検出する満充電検出部と、を備え、前記制御部は、前記入力部に電力が入力されてから前記所定時間内に駆動して前記時定数回路の機能を停止させることによって前記主スイッチング素子をオン状態に維持し、前記満充電検出部が満充電を検出すると前記時定数回路の機能を復帰させて前記所定時間経過後に前記主スイッチング素子をオフするものである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態の充電器とプリンタとの関係を示す図である。
図2図2は、実施形態のプリンタが備える充電回路の図である。
図3図3は、実施形態の充電回路における動作チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の充電回路およびこの充電回路を備えた電気機器をプリンタを一例にして、図面に基づいて説明する。図1において、1はプリンタ、2は充電器、3はAC商用電源である。
【0008】
プリンタ1は、携帯型のサーマルプリンタであり、印字を行うサーマルヘッドや印字媒体を搬送する搬送機構などを備えたプリンタ部4(負荷)と、プリンタ部4の電源となる二次電池5と、二次電池5を充電するための充電回路6とを備える。充電器2は、プリンタ1を着脱自在に保持し、二次電池5を充電する。充電器2は、AC商用交流電源3に接続され、交流電源を直流電源に変換するAC/DCコンバータ2Aを備える。
【0009】
図2は、二次電池5を充電するための充電回路6を示す図である。充電回路6は、充電器2から電力が入力される入力部7と、二次電池5への充電電流を制御する充電制御部10と、二次電池5が満充電状態であるときに充電制御部10の消費電力を低減する低電力制御部20とを備える。
【0010】
充電制御部10は、入力部7に接続される電力線8に設けられた第1FET11と、二次電池5の両端に接続される電池電圧検出部12と、電源回路13から電力の供給を受けて動作する充電IC(Integrated Circuit)14と、同様に電源回路13から電力の供給を受けて動作するCPU(Central Processing Unit)15とを備える。
【0011】
第1FET11は、ドレインが入力部7側の電力線8に、ソースが二次電池5側の電力線8にそれぞれ接続され、ゲートは充電IC14に接続される。第1FET11は、二次電池5への充電電流を一定範囲とする、いわゆる定電流制御によって二次電池5が充電されるように、充電IC14の出力でオン・オフ制御される。電池電圧検出部12は、二次電池5の電池電圧を検出するもので、CPU15とともに二次電池5の満充電状態を検出する満充電検出部として機能する。二次電池5の満充電状態とは、二次電池5が予め定められた設定電圧であることであり、上記設定電圧は適宜設定される。
【0012】
電源回路13は、電力線8に接続され、入力部7からの電力を受けて充電IC14とCPU15の駆動電源を生成する。充電IC14は、電池電圧検出部12およびCPU15からの出力が入力されて、第1FET11のゲートに信号を出力する。充電IC14は、充電中に、第1FET11のゲートへの信号を制御して、二次電池5に流れる充電電流を定電流とする。また、充電IC14は、充電開始時に、CPU15からの信号に基づいて、第1FET11をオンさせる。さらに、充電IC14は、充電完了時に、電池電圧検出部12からの出力に基づいて、第1FET11をオフさせる。CPU15は、プリンタ1が使用される際に二次電池5から電力を受けてプリンタ部4の制御を行う。また、CPU15は以下に詳述する低電力制御部20の一部も構成する。
【0013】
次に、低電力制御部20について説明する。低電力制御部20は、第2FET21、時定数回路22、制御部23、及び電源検出部24を備える。第2FET21は、入力部7から充電制御部10への電力の供給を切替える主スイッチング素子である。第2FET21は、ドレインが入力部7側の電力線8に、ソースが二次電池5側の電力線8にそれぞれ接続され、ゲートは時定数回路22の中間点Aに接続される。
【0014】
時定数回路22は、入力部7へ電力が入力されてから所定時間は第2FET21のドレイン-ゲート間の電位差を設定値以上に維持する。時定数回路22は、抵抗25、26とコンデンサ27とを備える。
【0015】
抵抗25は、入力部7と第2FET21との間の電力線8と、第2FET21のゲートとグランドとの中間点Aとを接続する接続線28に設けられる。抵抗26は、中間点Aとグランドとを接続する接続線29に設けられる。コンデンサ27は、中間点Aとグランドを接続する接続線30に設けられ、抵抗26と並列接続される。
【0016】
制御部23は、電源検出部24が、入力部7へ電力が入力されていない状態から入力された状態への変化を検出すると、オンされた第2FET21のオン状態を維持し、電池電圧検出部12等によって二次電池5の満充電状態が検出されると、第2FET21をオフする。制御部23は、CPU15、電圧出力回路31、抵抗32、33、及びデジタルトランジスタ34を備える。
【0017】
CPU15は、電圧出力回路31に接続され、この電圧出力回路31の出力を制御する。電圧出力回路31は、接続線35に互いに直列接続された抵抗32、33を介してグランドに接続される。デジタルトランジスタ34は、コンデンサ27、抵抗26に並列接続される。デジタルトランジスタ34のゲートは、接続線35における抵抗32、33の中間点Bに接続される。
【0018】
電源検出部24は、入力部7へ電力が入力されていない状態から入力された状態への変化を検出する。電源検出部24は、CPU15と、抵抗36、37とを備える。抵抗36、37は、電力線8とグランドを接続する接続線38に互いに直列接続されている。抵抗36、37の中間点Cは、CPU15に接続されている。
【0019】
次に、充電回路6の動作について、図3を参照して説明する。二次電池5の充電を行う場合、使用者は、プリンタ1を充電器2にセットする(S1)。これにより、入力部7が充電器2の出力部(図示せず)に接続される。すると、入力部7に電力が入力されて第2FET21がオンする(S2)。具体的には、充電器2で降圧された例えば19ボルトの電圧が入力部7-グランド間に印加され、第2FET21のドレイン-ゲート間に設定値以上の電位差が生じて第2FET21がオンする。
【0020】
入力部7に電力が入力されると、時定数回路22に電流が流れ、コンデンサ27の充電が開始する。コンデンサ27の充電中は、中間点Aの電位が低く、第2FET21のドレイン-ゲート間の電位差は設定値以上に維持されているので、第2FET21はオン状態を維持する。CPU15は、コンデンサ27の充電中に起動して、電圧出力回路31および充電IC14に対して、それぞれ信号を出力する(S3)。
【0021】
CPU15の信号によって電圧出力回路31が起動すると、抵抗32、33に電流が流れ、中間点Bの電位が上がる。すると、デジタルトランジスタ34のベース-エミッタ間に電位差が生じてデジタルトランジスタ34がオンする。並行して、CPU15からの信号を受けた充電IC14は、第1FET11を定電流制御することで、二次電池5の充電を行う(S4)。CPU15は、二次電池5の充電中は電圧出力回路31を起動させてデジタルトランジスタ34をオン状態に保つ。このため、抵抗26、コンデンサ27への電流がバイパスされて中間点Aの電位が低い状態が維持されることから、第2FET21は、オン状態を保ち、二次電池5の充電がなされる。すなわち、デジタルトランジスタ34がオンされることで、コンデンサ27が充電され始めてから所定時間後にコンデンサ27の両端電圧を設定された電圧値にするという時定数回路22の機能を停止させる。
【0022】
二次電池5の充電中、満充電検出部が二次電池5の満充電を検知する(S5)と、CPU15は、電圧出力回路31への出力を停止する。すなわち、CPU15は、電池電圧検出部12からの入力を受けて二次電池5が満充電状態になったと判断すると、電圧出力回路31への出力を停止する。その結果、抵抗32と抵抗33との中間点Bの電位が下がって、デジタルトランジスタ34のベース-エミッタ間に電位差がなくなりデジタルトランジスタ34がオフする。また、この時、充電IC14はFET1をオフする(S6)。
【0023】
すると、時定数回路22の機能が復帰し、コンデンサ27の充電が開始されて(S7)時定数回路22の中間点Aの電位が上昇する。時定数回路22で設定された所定時間経過すると、第2FET21のドレイン-ゲート間の電圧差が設定値未満となり、第2FET21はオフする(S8)。これによって、充電制御部10の電源が遮断される。したがって、この充電回路6は、二次電池5の充電完了後にプリンタ1が充電器2にセットされたままの状態であっても、充電制御部10による待機電力が発生することを防止できる。
【0024】
二次電池5の充電完了後、使用者がプリンタ1を充電器2から取り外す(S9)と、コンデンサ27が放電し(S10)、充電回路6は、プリンタ1がセットされる(S1)前の初期状態となる。具体的には、プリンタ1が充電器2から取り外されると、入力部7への入力がなくなり、それまでコンデンサ27にチャージされていた電荷は、抵抗26を介して放電される。なお、次にプリンタ1の二次電池5を充電するときには、上述したS1~S10の動作が繰り返される。
【0025】
以上説明したとおり、本実施形態の充電回路6によれば、二次電池5が満充電状態となって充電が完了した後、充電制御部10への電力を遮断する。このため、二次電池5の充電完了後にプリンタ1が充電器2にセットされたままの状態であっても、充電制御部10による消費電力のなくすことができる。
【0026】
また、本実施形態の充電回路6は、電源検出部24が入力部7へ電力が入力されていない状態から入力された状態への変化を検出すると、第2FET21のオン状態を維持する。このため、プリンタ1を充電器2にセットすると、第2FET21をオン状態に維持して二次電池5の充電を行うことができる。したがって、充電制御部10の消費電力をなくすために充電完了後に第2FET21をオフしているにも拘わらず、再び二次電池5を充電する際にはプリンタ1を充電器2にセットするだけで、第2FET21をオン状態として二次電池5の充電を行うことができる。このため、二次電池5を充電するための操作性を良好にすることができる。
【0027】
本実施形態の充電回路6の特徴の1つは、上述した充電制御部10の消費電力をなくし、かつ、操作性を損なわないための手段として、時定数回路22とCPU15との組み合わせで第2FET21を制御するようにしたことである。具体的には、充電中はCPU15の出力により第2FET21をオン状態に維持し、充電完了後は時定数回路22により第2FET21をオフ状態に維持する。この構成によって、第2FET21は、入力部7に電力が入力されるとオン状態となるが、二次電池5の充電完了後は、制御部23は電力が供給されずに駆動していないにも拘わらず、時定数回路22で第2FET21をオフ状態に維持することができる。
【0028】
また、二次電池5の充電完了後に第2FET21をオフに維持するために別途CPU等を設けていないので、充電回路6全体として消費電力を低減することができる。なお、二次電池5の充電完了後に時定数回路22で若干の電力を消費するが、これはCPU15等による待機電力に比して極めて小さく、充電回路6全体としての消費電力を充分に低減することができる。また、本実施形態の充電回路6はプリンタ1に設けられているので、プリンタ部4の各種制御を行うCPU15を充電回路6の制御部としても利用でき、プリンタ1の制御部の構成を簡素化できる。
【0029】
なお、本実施形態においては、充電回路6を電気機器であるプリンタ1に設けたが、充電器2に設けることも可能である。また、本実施形態においては、電気機器としてプリンタ1を例に説明したがこれに限定されない。電気機器は例えばスマートフォン、ヘッドフォンなど二次電池を使用するものであればよい。
【0030】
上記実施形態は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0031】
1 プリンタ(電気機器)
4 プリンタ部(負荷)
6 充電回路
7 入力部
10 充電制御部
12 電池電圧検出部(満充電検出部)
21 第2FET(主スイッチング素子)
22 時定数回路
23 制御部
24 電源検出部
【0032】
【文献】特開2005-224016号公報
図1
図2
図3