(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】時計、時計制御プログラム及び時計制御方法
(51)【国際特許分類】
G04C 3/14 20060101AFI20231107BHJP
【FI】
G04C3/14 T
G04C3/14 Q
(21)【出願番号】P 2019223555
(22)【出願日】2019-12-11
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】502366745
【氏名又は名称】セイコーウオッチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】清水 洋
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-090062(JP,A)
【文献】特開2015-135347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04C 3/14
G04C 10/00,10/04
G04G 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
文字盤上で回転可能な範囲が360度である第1指針と、文字盤上で回転可能な範囲が360度未満である第2指針とを含む指針を回転させる動力源に電気エネルギーを供給する電池の電圧を示す電圧データを取得する電圧データ取得部と、
第一回転方向及び前記第一回転方向と反対であり、前記指針を前記第一回転方向に回転させる場合よりも大きな電気エネルギーを前記動力源に消費させる第二回転方向の両方に前記動力源が前記指針を回転させ得る高電圧範囲及び前記第一回転方向に限り前記動力源が前記指針を回転させ得る低電圧範囲のいずれに前記電圧データにより示される電圧が含まれるかを判定する電圧判定部と、
前記電圧データにより示される電圧が前記高電圧範囲に含まれると判定された場合と、前記電圧データにより示される電圧が前記低電圧範囲に含まれると判定された場合とで、前記指針を回転させる方向及び前記指針を回転させる角速度の少なくとも一方を異ならせるよう前記動力源を制御する
ものであって、前記電圧データにより示される電圧が前記低電圧範囲に含まれると判定された場合、前記第2指針を、前記高電圧範囲に含まれると判定された場合の表示位置
よりもさらに前記第一回転方向の位置に回転させるよう前記動力源を制御する動力源制御部と、
を備える時計。
【請求項2】
前記
第2指針は、
前記第1指針が示している時刻の都市を示す機能を有し、文字盤上で回転可能な範囲が360度未満であ
る
請求項
1に記載の時計。
【請求項3】
前記第2指針は、前記高電圧範囲に含まれると判定された場合の表示位置のうち、前記第2指針を最も前記第一回転方向に回転させた表示位置が、前記第2指針が回転可能な範囲よりも前記第二回転方向側である
請求項1または請求項2に記載の時計。
【請求項4】
時計に搭載された制御回路に、
文字盤上で回転可能な範囲が360度である第1指針と、文字盤上で回転可能な範囲が360度未満である第2指針とを含む指針を回転させる動力源に電気エネルギーを供給する電池の電圧を示す電圧データを取得する電圧データ取得機能と、
第一回転方向及び前記第一回転方向と反対であり、前記指針を前記第一回転方向に回転させる場合よりも大きな電気エネルギーを前記動力源に消費させる第二回転方向の両方に前記動力源が前記指針を回転させ得る高電圧範囲及び前記第一回転方向に限り前記動力源が前記指針を回転させ得る低電圧範囲のいずれに前記電圧データにより示される電圧が含まれるかを判定する電圧判定機能と、
前記電圧データにより示される電圧が前記高電圧範囲に含まれると判定された場合と、前記電圧データにより示される電圧が前記低電圧範囲に含まれると判定された場合とで、前記指針を回転させる方向及び前記指針を回転させる角速度の少なくとも一方を異ならせるよう前記動力源を制御する
機能であって、前記電圧データにより示される電圧が前記低電圧範囲に含まれると判定された場合、前記第2指針を、前記高電圧範囲に含まれると判定された場合の表示位置よりもさらに前記第一回転方向の位置に回転させるよう前記動力源を制御する動力源制御機能と、
を実現させる時計制御プログラム。
【請求項5】
文字盤上で回転可能な範囲が360度である第1指針と、文字盤上で回転可能な範囲が360度未満である第2指針とを含む指針を回転させる動力源に電気エネルギーを供給する電池の電圧を示す電圧データを取得する電圧データ取得ステップと、
第一回転方向及び前記第一回転方向と反対であり、前記指針を前記第一回転方向に回転させる場合よりも大きな電気エネルギーを前記動力源に消費させる第二回転方向の両方に前記動力源が前記指針を回転させ得る高電圧範囲及び前記第一回転方向に限り前記動力源が前記指針を回転させ得る低電圧範囲のいずれに前記電圧データにより示される電圧が含まれるかを判定する電圧判定ステップと、
前記電圧データにより示される電圧が前記高電圧範囲に含まれると判定された場合と、前記電圧データにより示される電圧が前記低電圧範囲に含まれると判定された場合とで、前記指針を回転させる方向及び前記指針を回転させる角速度の少なくとも一方を異ならせるよう前記動力源を制御する
ステップであって、前記電圧データにより示される電圧が前記低電圧範囲に含まれると判定された場合、前記第2指針を、前記高電圧範囲に含まれると判定された場合の表示位置よりもさらに前記第一回転方向の位置に回転させるよう前記動力源を制御する動力源制御ステップと、
を含む時計制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計、時計制御プログラム及び時計制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在では、時針、分針及び秒針により時刻を表示する機能に加え、時針、分針、秒針及びこれら三つの指針と異なる指針の少なくとも一つにより時刻を表示する機能以外の付加的な機能を有する時計が広く流通している。このような付加的な機能を有する時計としては、例えば、特許文献1に開示されている電子時計が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
特許文献1に開示されている電子時計は、二次電池と、この二次電池の電圧を検出する電池電圧検出手段と、曜日を指示する指針と、操作手段とを備える。また、この指針は、電池電圧検出手段で検出した二次電池の電圧に基づく電池残量を指示可能に構成され、操作手段が操作された場合に、電池残量を指示する。
【0005】
しかし、一般的に、時刻を表示する機能以外の機能は、時刻を表示する機能よりも電池に高い電圧を要求する。このため、上述した電子時計は、電池残量を指示する指針を時計周り方向及び反時計周り方向のいずれにも回転させ得る状態を維持するために必要な電圧の下限を二次電池の電圧が下回ることが無いように制御される必要がある。ところが、上述した電子時計は、このように制御された場合、二次電池が発生させる電気エネルギーを余らせてしまうことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、電池が発生させる電気エネルギーを有効に活用することができる時計、時計制御プログラム及び時計制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る時計は、文字盤上で回転可能な範囲が360度である第1指針と、文字盤上で回転可能な範囲が360度未満である第2指針とを含む指針を回転させる動力源に電気エネルギーを供給する電池の電圧を示す電圧データを取得する電圧データ取得部と、
第一回転方向及び前記第一回転方向と反対であり、前記指針を前記第一回転方向に回転させる場合よりも大きな電気エネルギーを前記動力源に消費させる第二回転方向の両方に前記動力源が前記指針を回転させ得る高電圧範囲及び前記第一回転方向に限り前記動力源が前記指針を回転させ得る低電圧範囲のいずれに前記電圧データにより示される電圧が含まれるかを判定する電圧判定部と、
前記電圧データにより示される電圧が前記高電圧範囲に含まれると判定された場合と、前記電圧データにより示される電圧が前記低電圧範囲に含まれると判定された場合とで、前記指針を回転させる方向及び前記指針を回転させる角速度の少なくとも一方を異ならせるよう前記動力源を制御するものであって、前記電圧データにより示される電圧が前記低電圧範囲に含まれると判定された場合、前記第2指針を、前記高電圧範囲に含まれると判定された場合の表示位置よりもさらに前記第一回転方向の位置に回転させるよう前記動力源を制御する動力源制御部と、を備える。
【0010】
また、本発明の一態様に係る時計において、前記第2指針は、前記第1指針が示している時刻の都市を示す機能を有し、文字盤上で回転可能な範囲が360度未満である。
また、本発明の一態様に係る時計において、前記第2指針は、前記高電圧範囲に含まれると判定された場合の表示位置のうち、前記第2指針を最も前記第一回転方向に回転させた表示位置が、前記第2指針が回転可能な範囲よりも前記第二回転方向側である。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る時計制御プログラムは、時計に搭載された制御回路に、文字盤上で回転可能な範囲が360度である第1指針と、文字盤上で回転可能な範囲が360度未満である第2指針とを含む指針を回転させる動力源に電気エネルギーを供給する電池の電圧を示す電圧データを取得する電圧データ取得機能と、第一回転方向及び前記第一回転方向と反対であり、前記指針を前記第一回転方向に回転させる場合よりも大きな電気エネルギーを前記動力源に消費させる第二回転方向の両方に前記動力源が前記指針を回転させ得る高電圧範囲及び前記第一回転方向に限り前記動力源が前記指針を回転させ得る低電圧範囲のいずれに前記電圧データにより示される電圧が含まれるかを判定する電圧判定機能と、前記電圧データにより示される電圧が前記高電圧範囲に含まれると判定された場合と、前記電圧データにより示される電圧が前記低電圧範囲に含まれると判定された場合とで、前記指針を回転させる方向及び前記指針を回転させる角速度の少なくとも一方を異ならせるよう前記動力源を制御する機能であって、前記電圧データにより示される電圧が前記低電圧範囲に含まれると判定された場合、前記第2指針を、前記高電圧範囲に含まれると判定された場合の表示位置よりもさらに前記第一回転方向の位置に回転させるよう前記動力源を制御する動力源制御機能と、を実現させる。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る時計制御方法は、文字盤上で回転可能な範囲が360度である第1指針と、文字盤上で回転可能な範囲が360度未満である第2指針とを含む指針を回転させる動力源に電気エネルギーを供給する電池の電圧を示す電圧データを取得する電圧データ取得ステップと、第一回転方向及び前記第一回転方向と反対であり、前記指針を前記第一回転方向に回転させる場合よりも大きな電気エネルギーを前記動力源に消費させる第二回転方向の両方に前記動力源が前記指針を回転させ得る高電圧範囲及び前記第一回転方向に限り前記動力源が前記指針を回転させ得る低電圧範囲のいずれに前記電圧データにより示される電圧が含まれるかを判定する電圧判定ステップと、前記電圧データにより示される電圧が前記高電圧範囲に含まれると判定された場合と、前記電圧データにより示される電圧が前記低電圧範囲に含まれると判定された場合とで、前記指針を回転させる方向及び前記指針を回転させる角速度の少なくとも一方を異ならせるよう前記動力源を制御するステップであって、前記電圧データにより示される電圧が前記低電圧範囲に含まれると判定された場合、前記第2指針を、前記高電圧範囲に含まれると判定された場合の表示位置よりもさらに前記第一回転方向の位置に回転させるよう前記動力源を制御する動力源制御ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電池が発生させる電気エネルギーを有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係る時計の構成の一例を示す図である。
【
図2】実施形態に係る動力源駆動回路及び動力源の例を示す図である。
【
図3】実施形態に係る時計が指針を第一回転方向に回転させるために出力される駆動信号の例を示す図である。
【
図4】実施形態に係る時計が指針を第二回転方向に回転させるために出力される駆動信号の例を示す図である。
【
図5】実施形態に係る時計が備えるボタン及び指針の例を示す図である。
【
図6】実施形態に係る時計が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1から
図5を参照しながら、実施形態に係る時計の一例について説明する。
【0017】
図1は、実施形態に係る時計の構成の一例を示す図である。
図1に示すように、時計1は、発振回路11と、分周回路12と、入力回路13と、制御回路14と、駆動信号発生回路15と、電池16と、動力源駆動回路17と、動力源18と、指針19とを備える。
【0018】
発振回路11は、所定の周波数を有する信号を発生させて分周回路12に送信する。分周回路12は、発振回路11から受信した信号を分周して計時の基準となる時計信号を発生させて制御回路14に送信する。入力回路13は、ユーザが時計1を操作することにより生成された信号を受信して制御回路14に送信する。このような信号は、例えば、ユーザが
図1に示したボタン13A、ボタン13B又はボタン13Cを押下したり、一定時間以上押下し続けたりすることにより生成される。また、ユーザは、例えば、エンドユーザである。
【0019】
制御回路14は、分周回路12から受信した時計信号等に基づいて、時計1の各部に制御信号を送信し、時計1の各部の動作を制御する。また、制御回路14は、電圧データ取得回路141と、電圧判定回路142と、動力源制御回路143とを備える。電圧データ取得回路141、電圧判定回路142及び動力源制御回路143各々の詳細については、後述する。
【0020】
駆動信号発生回路15は、制御回路14から受信した制御信号に基づいて、動力源駆動回路17に駆動信号を送信する。この駆動信号は、例えば、ハイレベルのゲート信号又はローレベルのゲート信号を含む櫛歯状の電圧パルス、矩形の電圧パルスである。また、駆動信号発生回路15は、ハイレベルのゲート信号とローレベルのゲート信号の比率を調整することにより、駆動信号のデューティ比を調整することができる。
【0021】
電池16は、例えば、酸化銀電池、アルカリボタン電池、リチウム電池であり、駆動信号発生回路15が駆動信号を生成するために必要な電気エネルギーを駆動信号発生回路15に供給する。なお、電池16は、駆動信号発生回路15だけではなく、発振回路11、分周回路12、入力回路13及び制御回路14の少なくとも一つに電気エネルギーを供給してもよい。
【0022】
図2は、実施形態に係る動力源駆動回路及び動力源の例を示す図である。
図2に示すように、動力源駆動回路17は、トランジスタTP1と、トランジスタTP2と、トランジスタTP3と、トランジスタTP4と、トランジスタTN1と、トランジスタTN2と、検出抵抗Rs1と、検出抵抗Rs2と、端子ОUT1と、端子ОUT2とを備える。
【0023】
トランジスタTP1、トランジスタTP2、トランジスタTP3及びトランジスタTP4は、PチャネルのMОSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)であり、ハイレベルのゲート信号を受信するとオンになり、ローレベルのゲート信号を受信するとオフになる。また、トランジスタTN1及びトランジスタTN2は、NチャネルのMОSFETであり、ハイレベルのゲート信号を受信するとオフになり、ローレベルのゲート信号を受信するとオンになる。なお、ハイレベルの電位は、動力源駆動回路17の電源電圧であるVDDと等しい電位である。また、ローレベルの電位は、0V又は基準電圧であるVSSと等しい電位である。
【0024】
トランジスタTP1、トランジスタTP2、トランジスタTP3及びトランジスタTP4のドレインは、互いに電気的に接続されており、動力源駆動回路17の電源電圧であるVDDが供給される。トランジスタTP3のソースは、検出抵抗Rs1の一端に電気的に接続されている。また、トランジスタTP1のソース、トランジスタTN1のソース及び検出抵抗Rs1の他端は、端子ОUT1に電気的に接続されている。トランジスタTP4のソースは、検出抵抗Rs2の一端に電気的に接続されている。また、トランジスタTP4のソース、トランジスタTN2のソース及び検出抵抗Rs2の他端は、端子ОUT2に電気的に接続されている。トランジスタTN1及びトランジスタTN2のソースは、互いに電気的に接続されており、0V又は基準電圧であるVSSが供給される。なお、検出抵抗Rs1及び検出抵抗Rs2は、後述するロータ22の回転状態の検出に使用される。
【0025】
動力源18は、シングルコイルのステッピングモータ2を少なくとも一つ含む。ステッピングモータ2は、例えば、後述する時針191H、分針191M及び時刻を表示する機能以外の機能を有する表示針192の少なくとも一つを文字盤D上で第一回転方向又は第二回転方向に回転させる。ここで言う第一回転方向は、時計周り方向である。一方、ここで言う第二回転方向は、第一回転方向と反対の回転方向である反時計周り方向であり、時針191H、分針191M及び時刻を表示する機能以外の機能を有する表示針192の少なくとも一つを第一回転方向に回転させる場合よりも大きな電気エネルギーを動力源18に消費させる。以下の説明では、
図2に示したステッピングモータ2が表示針192を回転させる場合を例に挙げて説明するが、時針191H、分針191M等を回転させる場合も同様である。
【0026】
また、
図2に示すように、ステッピングモータ2は、いずれもステータ21と、ロータ22と、ロータ収納用貫通孔23と、内ノッチ24と、内ノッチ25と、外ノッチ26と、外ノッチ27と、磁心28と、コイル29とを備える。
【0027】
ステータ21は、U字状に湾曲しており、磁性材料で作製されている部材である。ロータ22は、円柱状に形成されており、ステータ21に形成されたロータ収納用貫通孔23に対して回転可能な状態で挿入されている。また、ロータ22は、着磁されているため、N極及びS極を有する。ロータ22は、正転方向に回転することにより輪列を介して表示針192を上述した第一回転方向に回転させ、逆転方向に回転することにより輪列を介して表示針192を上述した第二回転方向に回転させる。
【0028】
内ノッチ24及び内ノッチ25は、ロータ収納用貫通孔23の壁面に形成された切り欠きであり、磁気的ポテンシャルの最大点を形成している。これにより、内ノッチ24及び内ノッチ25は、ステータ21に対するロータ22の停止位置を決定している。すなわち、例えば、
図2に示すように、ロータ22は、コイル29が励磁されていない場合、磁極軸が内ノッチ24と内ノッチ25とを結ぶ線分と直交する位置で静止する。
【0029】
外ノッチ26及び外ノッチ27は、それぞれ湾曲しているステータ21の内側及び外側に形成されている切り欠きであり、ロータ収納用貫通孔23との間に過飽和部を形成している。過飽和部は、ロータ22の磁束により磁気飽和せず、コイル29が励磁されたときに磁気飽和して磁気抵抗が大きくなる部分である。
【0030】
磁心28は、磁性材料で作製されている棒状の部材であり、ステータ210の両端と接合されている。コイル29は、磁心28に巻き付けられており、端子ОUT1に一端が接続されており、端子ОUT2に他端が接続されている。
【0031】
次に、実施形態に係る時計1が表示針192を第一回転方向に回転させる場合及び表示針192を第二回転方向に回転させる場合の一例について説明する。
【0032】
動力源駆動回路17は、ロータ22の磁極軸が内ノッチ24と内ノッチ25とを結ぶ線分と直交した状態で静止している場合において、駆動信号発生回路15からハイレベルのゲート信号又はローレベルのゲート信号を受信する。トランジスタTP1、トランジスタTP2、トランジスタTP3、トランジスタTP4は、ハイレベルのゲート信号が印加された場合、オフになり、ローレベルのゲート信号が印加された場合、オンになる。トランジスタTN1及びトランジスタTN2は、ハイレベルのゲート信号が印加された場合、オンになり、ローレベルのゲート信号が印加された場合、オフになる。
【0033】
図3は、実施形態に係る時計が指針を第一回転方向に回転させるために出力される駆動信号の例を示す図である。駆動信号発生回路15は、ロータ22がθ
0方向にN極を向けた状態において表示針192を第一回転方向に回転させる場合、
図3に示すように、端子OUT2に櫛歯状の電圧パルスP2を発生させる。電圧パルスP2の長さは、1秒よりも短い。
【0034】
端子OUT2に櫛歯状の電圧パルスP2が発生した場合、VDD、トランジスタTP1、端子ОUT1、コイル29、端子ОUT2、トランジスタTN2、VSSの経路で駆動電流が流れ、コイル29に
図2に示した磁束Φ
Cが発生する。ロータ22のN極及びS極が磁束Φ
Cによりステータ21に発生したN極及びS極それぞれと反発することにより、ロータ22は、θ
0方向にN極を向けた状態から外ノッチ27の手前にN極を向けた状態まで正転方向に回転して停止する。
【0035】
そして、ロータ22は、外ノッチ27の手前にN極を向けた状態から逆転方向に回転し、正転方向及び逆転方向への回転を繰り返し、最終的にθ1方向にN極を向けた状態で停止する。このロータ22の挙動は、内ノッチ24及び内ノッチ25が形成している磁気的ポテンシャルにより引き起こされている。
【0036】
また、ロータ22がθ1方向にN極を向けた状態から第一回転方向に180度回転させる場合、駆動信号発生回路15は、電圧パルスP2と同様の電圧パルスを端子OUT1に発生させる。
【0037】
図4は、実施形態に係る時計が指針を第二回転方向に回転させるために出力される駆動信号の例を示す図である。駆動信号発生回路15は、ロータ22がθ
0方向にN極を向けた状態において表示針192を第二回転方向に回転させる場合、
図4に示すように、端子OUT2に櫛歯状の電圧パルスP11を発生させ、端子OUT1に櫛歯状の電圧パルスP12を発生させ、端子OUT2に櫛歯状の電圧パルスP13を発生させる。電圧パルスP12の長さは、例えば、電圧パルスP11の長さの二倍である。電圧パルスP13の長さは、例えば、電圧パルスP11の長さの四倍である。また、電圧パルスP11、電圧パルスP12及び電圧パルスP13の長さの合計は、1秒よりも短い。
【0038】
端子OUT2に櫛歯状の電圧パルスP11が発生した場合、VDD、トランジスタTP1、端子ОUT1、コイル29、端子ОUT2、トランジスタTN2、VSSの経路で駆動電流が流れ、コイル29に
図2に示した磁束Φ
Cが発生する。ロータ22のN極及びS極が磁束Φ
Cによりステータ21に発生したN極及びS極それぞれと反発することにより、ロータ22は、θ
0方向にN極を向けた状態から内ノッチ25と外ノッチ26との間にN極を向けた状態まで正転方向に回転して停止する。
【0039】
端子OUT1に櫛歯状の電圧パルスP12が発生した場合、VDD、トランジスタTP2、端子ОUT2、コイル29、端子ОUT1、トランジスタTN1、VSSの経路で駆動電流が流れ、コイル29に
図2に示した磁束Φ
Cと反対方向の磁束が発生する。当該磁束によりステータ21に発生したN極及びS極は、それぞれロータ22のN極及びS極と反発する。また、ロータ22が内ノッチ25と外ノッチ26との間にN極を向けた状態は、内ノッチ25が形成している磁気的ポテンシャルの最大点付近に位置している状態に等しい。したがって、ロータ22は、内ノッチ25と外ノッチ26との間にN極を向けた状態から内ノッチ24付近にN極を向けた状態まで逆転方向に回転する。
【0040】
端子OUT2に櫛歯状の電圧パルスP13が発生した場合、VDD、トランジスタTP1、端子ОUT1、コイル29、端子ОUT2、トランジスタTN2、VSSの経路で駆動電流が流れ、コイル29に
図2に示した磁束Φ
Cが発生する。磁束Φ
Cによりステータ21に発生したN極及びS極は、それぞれロータ22のN極及びS極と反発する。また、ロータ22が内ノッチ24付近にN極を向けた状態は、内ノッチ24が形成している磁気的ポテンシャルの最大点付近に位置している状態に等しい。したがって、ロータ22は、内ノッチ24付近にN極を向けた状態から内ノッチ25の手前にN極を向けた状態まで逆転方向に回転して停止する。
【0041】
そして、ロータ22は、内ノッチ25の手前にN極を向けた状態から外ノッチ27の手前にN極を向けた状態まで正転方向に回転して停止し、逆転方向及び正転方向への回転を繰り返し、最終的にθ1方向にN極を向けた状態で停止する。このロータ22の挙動は、内ノッチ24及び内ノッチ25が形成している磁気的ポテンシャルにより引き起こされている。
【0042】
また、ロータ22がθ1方向にN極を向けた状態から第一回転方向に180度回転させる場合、駆動信号発生回路15は、電圧パルスP11と同様の電圧パルスを端子OUT1に発生させ、電圧パルスP12と同様の電圧パルスを端子OUT2に発生させ、電圧パルスP13と同様の電圧パルスを端子OUT1に発生させる。
【0043】
図5は、実施形態に係る時計が備えるボタン及び指針の一例を示す図である。
図5に示すように、時計1は、文字盤Dと、ボタン13Aと、ボタン13Bと、ボタン13Cと、時針191Hと、分針191Mと、軸191Xと、表示針192と、軸192Xとを備える。
【0044】
時針191H、分針191M及び表示針192は、いずれも上述した指針19に含まれる。時針191H及び分針191Mは、軸191Xに取り付けられている。また、軸191Xは、秒針が取り付けられていてもよい。一方、表示針192は、軸191Xと文字盤D上における位置が異なる軸192Xに取り付けられている。
【0045】
表示針192は、時刻を表示する機能以外の機能を有する。このような機能としては、例えば、
図5に示すように、時針191H及び分針191Mが現在表示している時刻がパリ(Paris)、香港(Hong Kong)、東京(Tokyo)、ニューヨーク(New York)及びロンドン(London)のいずれの都市の時刻であるかを表示する機能が挙げられる。パリ、香港、東京、ニューヨーク及びロンドンは、それぞれ
図5に示した文字盤D上に「P」、「H」、「T」、「N」及び「L」で表示されている。
【0046】
表示針192は、文字盤Dのうち最も広い面を基準とした高さが指針19よりも低い位置又は高い位置で第一回転方向及び第二回転方向に回転する。ただし、表示針192は、軸191Xと軸192Xとの間の距離よりも長い。したがって、表示針192は、軸191Xが存在する高さで回転する場合、文字盤D上で軸191Xにぶつかるため、文字盤D上で回転可能な範囲が360度未満となる。なお、表示針192は、軸191Xが存在する高さで回転する場合又は軸191Xと軸192Xとの間の距離よりも短い場合、他に障害となる物体が存在しない限り、文字盤D上で回転可能な範囲が360度となる。
【0047】
次に、
図1に示した電圧データ取得回路141、電圧判定回路142及び動力源制御部143について説明する。
【0048】
電圧データ取得回路141は、指針19を回転させる動力源18に電気エネルギーを供給する電池16の電圧を示す電圧データを取得する。電圧データは、電池16の電圧を任意の測定手段により測定することにより生成され、時計1に搭載されている記憶媒体に記憶されてもよい。電圧データ取得回路141は、任意の測定手段により生成された電圧データを直接取得してもよいし、時計1に搭載されている記憶媒体から電圧データを取得してもよい。
【0049】
電圧判定回路142は、第一回転方向及び第二回転方向の両方に動力源18が指針19を回転させ得る高電圧範囲及び第一回転方向に限り動力源18が指針19を回転させ得る低電圧範囲のいずれに電圧データにより示される電圧が含まれるかを判定する。
【0050】
高電圧範囲は、電池16の電圧が高いため、電池16が発生させる電気エネルギーを利用して動力源18が指針19を第一回転方向及び第二回転方向の両方に回転させることが可能な電池16の電圧の範囲である。動力源制御回路143は、電池16の電圧が高電圧範囲に含まれる場合、例えば、第二回転方向に運針される針を利用する機能、他の針と同時に運針される針を利用する機能、時刻を表示する際の指針19の角速度よりも速い角速度で運針される針を利用する機能を実現させ得る。
【0051】
低電圧範囲は、電池16の電圧が低いため、電池16が発生させる電気エネルギーを利用して動力源18が指針19を第一回転方向に限り回転させることが可能な電池16の電圧の範囲である。動力源制御回路143は、電池16の電圧が低電圧範囲に含まれる場合、時針191H、分針191M及び図示しない秒針の少なくとも一つを使用して時刻を表示する機能に限り実現させ得る。
【0052】
高電圧範囲と低電圧範囲の境界は、例えば、時計1が有するす少なくとも一部の機能を動力源18が正常に実現させ得る範囲と、高電圧範囲で正常に実現され得る機能の少なくとも一部を動力源18が正常に実現され得ない範囲との境界となる。
【0053】
動力源制御部143は、電圧データにより示される電圧が高電圧範囲に含まれると判定された場合と、電圧データにより示される電圧が低電圧範囲に含まれると判定された場合とで、指針19を回転させる方向及び指針19を回転させる角速度の少なくとも一方を異ならせるよう駆動信号発生回路15及び動力源駆動回路17を介して動力源18を制御する。
【0054】
例えば、動力源制御部143は、電圧データにより示される電圧が低電圧範囲に含まれると判定された場合、時刻を表示する場合と異なる態様で指針19を第一回転方向に回転させるよう動力源18を制御する。より具体的には、動力源制御部143は、電圧データにより示される電圧が低電圧範囲に含まれると判定された場合、
図5に示した「P」、「H」、「T」、「N」及び「L」を指し示している表示針192を9時の方向を指し示すまで第一回転方向に回転させる。時計1は、このようにして電池16の電圧が低電圧範囲に含まれていることをユーザに報知する。
【0055】
このような動作は、表示針192が回転可能な範囲が360度未満である場合、電池16の電圧が低電圧範囲に含まれていることを示す表示針192の位置である9時の位置が
図5に示した「P」等のいずれの位置を基準としても第一回転方向に回転させた方が短い時間で到達する場所に位置しているために可能となる。
【0056】
逆に、このような動作は、表示針192が回転可能な範囲が360度である場合、電池16の電圧が低電圧範囲に含まれていることを示す表示針192の位置である9時の位置と
図5に示した「P」等の位置との相対的な位置関係に関係無く、表示針192を第一回転方向に回転させるだけで実現可能である。
【0057】
一方、動力源制御部143は、電圧データにより示される電圧が高電圧範囲に含まれると判定された場合、動力源18の動作に特に制限を加えず、時針191H、分針191M、図示しない秒針及び表示針192を通常通りに回転させる。
【0058】
次に、
図6を参照しながら実施形態に係る時計の動作の一例を説明する。
図6は、実施形態に係る時計が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0059】
ステップS10において、電圧データ取得回路141は、指針19を回転させる動力源18に電気エネルギーを供給する電池16の電圧を示す電圧データを取得する。
【0060】
ステップS20において、電圧判定回路142は、ステップS10で取得された電圧データにより示される電圧が低電圧範囲に含まれるか否かを判定する。電圧判定回路142は、ステップS10で取得された電圧データにより示される電圧が低電圧範囲に含まれると判定した場合(ステップS20:YES)、処理をステップS30に進める。一方、電圧判定回路142は、ステップS10で取得された電圧データにより示される電圧が低電圧範囲に含まれないと判定した場合(ステップS20:YES)、すなわち電圧データにより示される電圧が高電圧範囲に含まれると判定した場合(ステップS20:NO)、処理を終了させる。
【0061】
ステップS30において、動力源制御部143は、時刻を表示する場合と異なる態様で指針19を第一回転方向に回転させるよう動力源18を制御する。
【0062】
以上、実施形態に係る時計1について説明した。時計1は、電圧データにより示される電池16の電圧が高電圧範囲に含まれる場合と、当該電圧が低電圧範囲に含まれる場合とで、指針19を回転させる方向及び指針19を回転させる角速度の少なくとも一方を異ならせるよう動力源18を制御する。これにより、時計1は、高電圧範囲と低電圧範囲のとの境界を低くして、少なくとも一部の機能を動力源18が正常に実現させ得る範囲を拡大し、電池が発生させる電気エネルギーを有効に活用することを可能にすることができる。
【0063】
なお、上述した実施形態では、第一回転方向が時計周り方向であり、第二回転方向が反時計周り方向である場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、第一回転方向が反時計周り方向であり、第二回転方向が時計周り方向であってもよい。ただし、この場合においても、第二回転方向は、時針191H、分針191M及び時刻を表示する機能以外の機能を有する表示針192の少なくとも一つを第一回転方向に回転させる場合よりも大きな電気エネルギーを動力源18に消費させる。
【0064】
また、上述した実施形態では、電圧データにより示される電圧が低電圧範囲に含まれると判定された場合、動力源制御部143が時刻を表示する場合と異なる態様で指針を第一回転方向に回転させるよう動力源18を制御するものとしたが、これに限定されない。
【0065】
例えば、動力源制御部143は、電圧データにより示される電圧が低電圧範囲に含まれると判定され、かつ、指針19が時針191H、分針191M、図示しない秒針及び表示針192のうち少なくとも二つを含んでいる場合、時刻を表示する場合と異なる態様で指針19のうちの一本のみを回転させるよう動力源18を制御してもよい。具体的には、動力源制御部143は、このような場合、図示しない秒針を2秒分ずつ第一回転方向に回転させてもよい。また、動力制御部143は、このような場合に表示針192を回転させる場合、表示針192が時刻を表示する機能を有しないため、表示針192を任意の態様で回転させ得る。時計1は、このようにして電池16の電圧が低電圧範囲に含まれていることをユーザに報知する。このような動作であっても、時計1は、上述した効果と同様の効果を奏する。
【0066】
或いは、動力源制御部143は、電圧データにより示される電圧が低電圧範囲に含まれると判定され、かつ、指針19が時針191H、分針191M及び図示しない秒針の少なくとも一つである場合、時刻を表示する場合と異なる態様、かつ、時刻を表示する場合と等しい角速度で指針を回転させるよう動力源を制御してもよい。時計1は、このようにして電池16の電圧が低電圧範囲に含まれていることをユーザに報知する。このような動作であっても、時計1は、上述した効果と同様の効果を奏する。
【0067】
また、上述した時計1が備える機能の全部又は一部は、プログラムとしてコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録され、このプログラムがコンピュータシステムにより実行されてもよい。コンピュータシステムは、周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、例えば、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM(Read Only Memory)、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置、インターネット等のネットワーク上のサーバ等が備える揮発性メモリ(Random Access Memory:RAM)である。なお、揮発性メモリは、一定時間プログラムを保持する記録媒体の一例である。
【0068】
また、上述したプログラムは、伝送媒体、例えば、インターネット等のネットワーク、電話回線等の通信回線により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。
【0069】
また、上記プログラムは、上述した機能の全部又は一部を実現するプログラムであってもよい。なお、上述した機能の一部を実現するプログラムは、上述した機能をコンピュータシステムに予め記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるプログラム、いわゆる差分プログラムであってもよい。
【0070】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明したが、具体的な構成が上述した実施形態に限られるわけではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0071】
1…時計、11…発振回路、12…分周回路、13…入力回路、13A,13B,13C…ボタン、14…制御回路、141…電圧データ取得回路、142…電圧判定回路、143…動力源制御回路、15…駆動信号発生回路、16…電池、17…動力源駆動回路、18…動力源、19…指針、191M…分針、191H…時針、191X…軸、192…表示針、192X…軸、2…ステッピングモータ、21…ステータ、22…ロータ、23…ロータ収納用貫通孔、24,25…内ノッチ、26,27…外ノッチ、28…磁心、29…コイル、D…文字盤、OUT1,OUT2…端子、Rs1,Rs2…検出抵抗、TN1,TN2,TP1,TP2,TP3,TP4…トランジスタ