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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】組電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20231107BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20231107BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20231107BHJP
   H01M 50/284 20210101ALI20231107BHJP
   H01M 50/342 20210101ALI20231107BHJP
【FI】
H01M10/48 301
H01M50/204 401D
H01M50/209
H01M50/284
H01M50/342 101
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019223612
(22)【出願日】2019-12-11
(65)【公開番号】P2021093309
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【弁理士】
【氏名又は名称】原 拓実
(74)【代理人】
【識別番号】100200218
【弁理士】
【氏名又は名称】沼尾 吉照
(72)【発明者】
【氏名】近藤 敦美
(72)【発明者】
【氏名】黒田 和人
(72)【発明者】
【氏名】萩原 敬三
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅秋
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-056035(JP,A)
【文献】特開2005-317454(JP,A)
【文献】特開2005-080373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/42-10/48
H01M50/20-50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルが収容されるケース筐体と、
前記電池セルの温度を測定する温度センサが設けられた監視基板と、
前記監視基板に対して圧縮された状態で前記ケース筐体内に設けられ、前記電池セルと
前記温度センサとを熱結合させる結合材と、
を有する組電池。
【請求項2】
前記結合材は、前記温度センサと前記電池セルとの距離が短縮する方向に圧縮されてい
る、
請求項1記載の組電池。
【請求項3】
前記結合材は、前記電池セルと前記ケース筐体の蓋体との間に、前記監視基板を介在さ
せた状態で前記蓋体によって圧縮された状態で固定されている、
請求項1又は請求項2記載の組電池。
【請求項4】
前記結合材は、前記電池セルと前記監視基板との間に、前記温度センサを介在させた状
態で前記監視基板によって圧縮された状態で固定されている、
請求項1又は請求項2記載の組電池。
【請求項5】
前記結合材は、可撓性のある樹脂材料である、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の組電池。
【請求項6】
前記電池セルは、前記電池セルの内部の電解液を放出する手段である開放弁を有し、
前記結合材は、前記開放弁の位置を避けて配置される、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の組電池。
【請求項7】
前記監視基板には貫通孔を有し、
前記結合材は、紫外線硬化樹脂で形成されており、前記貫通孔を貫通した状態で硬化さ
れることにより前記貫通孔に対して移動を抑制する突起部が形成されている、
請求項1、請求項2、又は請求項4乃至請求項6のいずれか1項記載の組電池。
【請求項8】
前記監視基板には貫通孔を有し、
前記結合材は、前記貫通孔に挿通した状態で固定されることにより前記貫通孔に対して
移動を抑制する固定具をさらに有する、
請求項1、請求項2、又は請求項4乃至請求項6のいずれか1項記載の組電池。
【請求項9】
前記結合材は、前記監視基板に吸着する吸盤形状を有する、
請求項1、請求項2、又は請求項4乃至請求項6のいずれか1項記載の組電池。
【請求項10】
前記結合材は、前記監視基板から前記電池セルにかけて蛇腹形状を有する、
請求項9記載の組電池。
【請求項11】
前記結合材は、可撓性を有する弾性体で形成されている、
請求項9又は請求項10記載の組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池をはじめとする二次電池は、複数個の電池がケース内に収納され組
電池として使用される。この組電池は、リチウムイオン電池の電流、電圧及び温度等を逐
次モニタしている。これらをモニタすることにより、リチウムイオン電池の状態を監視す
る。また、得られた電流、電圧及び温度情報に基づき充放電可能性やSOC(State
of Charge:充電率)等を算出し、組電池の充放電運用を行う。このような二
次電池は、電池セルの温度履歴、充放電パターン及び保存条件によって劣化速度が変わる
ため、特に電圧及び温度を精度よく検知する構造あるいは技術が求められている。
【0003】
また、組電池は高圧用途の場合に、高圧回路である電池セルを有する主回路と、温度セ
ンサであるサーミスタ、電圧センサ等含む低圧回路とを有する。これら高圧回路と低圧回
路との間の絶縁は沿面、空間距離を開けるなどの処置を行わなければならない。
【0004】
高圧回路と低圧回路とを物理的に距離を離してしまうと、低圧回路の一部である温度セ
ンサと電池セルの表面との距離が大きくなり、電池表面の温度と温度センサによる測定温
度とが乖離したものとなり、電池セルの表面温度を高精度に検出することが困難となる。
【0005】
また、電池セル自体の表面に絶縁物を介して温度センサを強固に密着固定することも考
えられるが、電池セルをリサイクル・リユースする際に組電池の解体を妨げる、という弊
害が出る。
【0006】
さらに、二次電池と回路基盤に固定した温度センサとの間に熱結合材を充填することに
より、二次電池と温度センサとを熱結合する技術も知られている。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-317454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、二次電池と温度センサとの間に熱結合材を充填したのみでは、熱結合材
の熱伝導率は小さく、二次電池が発熱してからその温度が温度センサに伝達するまでに時
間が掛かり、電池表面の温度測定に時間遅れが生じるとともに測定精度も低下してしまう
という問題がある。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、高圧用途の電池セルに適用可能な、精度の高い温度
検出機能を備える組電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、実施形態に係る組電池は、複数の電池セルが収容されるケ
ース筐体と、前記電池セルの温度を測定する温度センサが設けられた監視基板と、前記監
視基板に対して圧縮された状態で前記ケース本体内に設けられ、前記電池セルと前記温度
センサとを熱結合させる結合材と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態に係る組電池全体の内部構成の概略を示す分解斜視図。
図2】第1の実施形態に係る組電池全体の内部構成の概略を示す断面図。
図3】第1の実施形態に係る組電池の内部構成を示す拡大断面図。
図4】第1の実施形態に係る組電池の結合材の状態を示す図。
図5】第1の実施形態に係る組電池の電池セル周辺の温度を示す図。
図6】第2の実施形態に係る組電池の内部構成を示す断面図。
図7】第2の実施形態に係る組電池の変形例を示す図。
図8】第2の実施形態に係る組電池の別の変形例を示す図。
図9】第3の実施形態に係る組電池の内部構成を示す図。
図10】第4の実施形態に係る組電池の内部構成を示す図。
図11】第5の実施形態に係る組電池の内部構成を示す図。
図12】第6の実施形態に係る組電池の内部構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明を実施するための実施形態について説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る組電池1を、図1乃至図5を用いて説明する。
【0014】
図1は、第1の実施形態に係る組電池1の内部構成の概略を示す分解斜視図である。
【0015】
図2は、第1の実施形態に係る組電池1の内部構成の概略を示す断面図である。
【0016】
図3は、第1の実施形態に係る組電池1の内部構成を示す拡大断面図である。
【0017】
図1図2及び図3に示すように、組電池1は、ケース筐体12と、正極端子14と負
極端子15とを有する電池セル16と、電池セル16に設けられた開放弁17と、バスバ
ー18と、監視基板13と、ボルト10と、ワッシャー11と、ナット19と、セパレー
タ9と、温度センサ22と、結合材21Aとを備える。
【0018】
ケース筐体12は、ケース本体12Aと、蓋体12Bとを有する。ケース本体12Aに
は、複数の電池セル16が収容される。鉄道用途や車載用途や産業用途等の組電池は、例
えば図1に示すようにケース筐体12の中に2個以上の電池セル16が収容される。
【0019】
電池セル16は、正極端子14と負極端子15とを備える。電池セル16は、ケース筐
体12に接着剤、コンパウンド及びギャップフィラー等の密着固定及び接着機能を持つ材
料を介して接着及び固定される。
【0020】
また、電池セル16は、開放弁17を有する。開放弁17は、万が一過充電等の理由に
より電池セル16内で電解液が沸騰し霧状となった電解液により、内圧が上がった場合に
霧状の電解液を放出する機能を有する。
【0021】
バスバー18は、電池セル16の正極端子14及び負極端子15を電気的に接続する機
能を有する。バスバー18は、正極端子14及び負極端子15に溶接などの手段で接合さ
れているものとする。バスバー18の形状並びに正極端子14及び負極端子15との接続
の組み合わせなどにより、所望の直列及び並列数を組電池1内で構成する。
【0022】
監視基板13は、電池セル16の電圧を検知する電圧センサや温度を検知する温度セン
サ22等の電子部品を電子的に導通させる機能を有する。監視基板13の表面上には、銅
箔を用いて形成する回路パターンが形成される。電池セル16の主回路配線等も監視基板
13上を介して接続されることもある。監視基板13は、別名CMU(セルモニタリング
ユニット、Cell Monitoring Unit)とよばれる。監視基板13は、
複数のボルト10及びワッシャー11並びにナット19によって、バスバー18に固定さ
れる。
【0023】
組電池1は複数個直並列接続して、ある別の装置内に収納されることもある。その場合
、主回路側すなわち電池セル16の正極端子14及び負極端子15にはときに750V、
1500V等の高電圧が印加されることがある。したがって、組電池1の内部構造は、電
池セル16の高電圧が印加される正極端子14、負極端子15及びバスバー18等が配置
される高圧側と、監視基板13の低圧回路部とは絶縁距離又は沿面距離を設ける。あるい
はCTI(Comparative tracking index;比較トラッキング
指数)が高い材料によって形成されたセパレータ9等を設けることにより、低圧回路と高
圧回路とが物理的に離隔されている。
【0024】
温度センサ22は、電池セル16の温度を測定する手段である。温度センサ22は、監
視基板13上に設けられる。温度センサ22は例えばサーミスタや、熱電対等の公知の温
度センサでもよい。
【0025】
結合材21Aは、監視基板13に対して圧縮された状態で、ケース本体12A内に設け
られ、電池セル16と温度センサ22とを熱結合させる機能を有する。
【0026】
図3に示すように、結合材21Aは電池セル16と監視基板3との間と、監視基板13
と蓋体12Bとの間に圧縮された状態で取り付けられ、電池セル16及び温度センサ22
に対して密着させる。
【0027】
例えば、図3に示すように、結合材21Aは電池セル16と蓋体12Bとの間に、監視
基板13を介在させた状態で蓋体12Bによって圧縮された状態で固定してもよい。この
とき、電池セル16の開放弁17を結合材によって塞ぐと、電池セル16の内圧が上がっ
たときに霧状の電解液の放出ができなくなることから、結合材21Aは開放弁17の位置
を避けた位置に設けられる。
【0028】
なお、図3における矢印は、結合材21Aに加えられる圧縮力の向きである。
【0029】
このとき、結合材21Aは温度センサ22に対して温度センサ22と電池セル16との
距離が短縮する方向に圧縮される。
【0030】
また、結合材21Aは、蓋体12Bと監視基板13との間に空隙がなくなるような厚み
で形成しておく。
【0031】
それにより、温度センサ22を含めた監視基板13を介在した状態で蓋体12Bと監視
基板13とが圧縮密着し、蓋体12Bと監視基板13との間の空隙を埋めることが可能と
なる。
【0032】
結合材21Aは、熱伝導率が既知の圧縮変形する柔軟な樹脂でもよい。また、結合材2
1Aは可撓性のある樹脂材料であってもよい。
【0033】
また、結合材21Aは、シリコーン等の絶縁性を有し、熱伝導率が大きい(例えば1[
W/m・K]以上)材料を使用することが望ましい。
【0034】
結合材21Aは、例えば、CTI値が高く硬度を表すAsker Cが数十程度、絶縁
破壊電圧が5[kV/mm]以上、燃焼性UL94規格である難燃性樹脂クラスがV-0
以上の樹脂であることが望ましい。
【0035】
また、本実施形態では圧縮力をかけたまま結合材21Aが保持固定されるため、結合材
21はクリープがすくない材料としてシリコーン等で実現されることが望ましい。
【0036】
このように、監視基板13に対して圧縮された状態で電池セル16と温度センサ22と
を熱結合させる圧縮変形する結合材21Aを設けているので、温度センサ22と電池セル
16の温度が近づくので、正確な温度検出が可能になる。また、電池セル22の温度が変
化してから温度センサ22で検知されるまでの時間である時定数も短くなる。従って、電
池セル16の表面温度の変化に応じて精度よく温度検出が可能になるものである。
【0037】
次に、結合材21Aの状態について説明する。
【0038】
図4は、第1の実施形態に係る組電池1の結合材21Aの状態を示す図である。
【0039】
なお、図4(b)における矢印は、結合材21Aに加えられる圧縮力の向きである。
【0040】
図4(a)は圧縮力が加えられていない状態の結合材21Aを示す図である。図4(b
)は矢印の方向に圧縮力が加えられている状態の結合材21Aを示す図である。
【0041】
本実施形態では、結合材21Aを例えば、約30パーセント変形する程度圧縮させる。
または、圧縮の手段として用いるねじ等が締付トルク167[N・cm]となる程度の力
で圧縮させる。
【0042】
結合材21Aは、圧縮すると、圧縮された方向への熱伝導率が増加する。また結合材2
1Aは、圧縮した場合に概ね圧縮の方向の熱伝導率が増加する。熱は熱伝導率が大きい場
所を早く、多く伝導する。ゆえに、結合材21Aを圧縮して電池セル16の表面と監視基
板13との間に密着させると、熱伝導率が大きい電池セル16の表面及び空気8よりも熱
伝導率の大きい監視基板13に熱が伝導する。
【0043】
熱伝導率は例えば、監視基板13は約0.1~0.3[W/m・K]、電池セル16の
表面(アルミ製)は約137[W/m・K]、空気8は約0.0257[W/m・K]、
結合材21Aは約1~5[W/m・K]である。
【0044】
本実施形態では、電池セル16や監視基板13にある熱はその周囲に伝導するが、熱伝
導率の小さい空気8へは伝導しにくいため、結合材21Aへ熱伝導し易くなり、更に結合
材21Aは圧縮している方向に熱流束[W/m]が増加するという原理を利用している
。熱伝導率が大きい方へ熱が伝わりやすいため、電池セル16から出た熱の多くが結合材
21Aを介して監視基板13の裏側へ伝わるため、監視基板13の裏にある温度センサ2
2で取得される温度が電池セル16の表面温度に近づく。
【0045】
さらに、図4記載のように、電池セル16の表面及び監視基板13の表面には微細な凹
凸が存在する。電池セル16と監視基板13との間に結合材21Aを介在させて矢印方向
に加圧すると、結合材21Aは伸縮可能な材料であるので、電池セル16の表面及び監視
基板13の表面の微細な凹凸を埋めることとなる。その結果、電池セル16の表面と結合
材21Aとの間、及び監視基板13と結合材21Aとの間には空気が減り、接触熱抵抗が
低下し、熱伝導性能が向上する。
【0046】
次に、電池セル16周辺の温度分布について説明する。
【0047】
図5は、第1の実施形態に係る組電池1の電池セル16周辺の温度を示す図である。
【0048】
図5(a)に示すように、電池セル16の温度計測点を結合材21A上部X、結合材2
1A底部Y(すなわち、電池セル16の上面)、電池セル16の側面中央部Z、電池セル
16の表面底部Wとする。
【0049】
例えば、X、Y、Z及びWの時間に対する温度変化は図5(b)のようになる。電池セ
ル16の側面中央部Zの温度を取得したい場合に、結合材21A上部Xの温度を取得すれ
ば、精度の高い計測値を得ることができる。
【0050】
本実施形態によって、監視基板13上に設置された温度センサ22と、バスバー18及
び電池セル16の温度を近づけることが可能となる。
【0051】
また、電池セル16の表面温度の変化に応じて精度よく電池セル16表面の温度に近い
温度を温度センサ22にて検出することが可能となる。
【0052】
また、本実施形態により、たとえ組電池1に外部からの振動が加えられたとしても結合
材21Aが圧縮変形することにより組電池1内部の監視基板13等の破損を防止すること
も可能となる。
【0053】
また、第1の実施形態により、電池セル16をリサイクル・リユースする際に結合材2
1Aを簡単に取り外すことができ、組電池の解体を容易にすることが可能な組電池を提供
できる。
【0054】
また、第1の実施形態により、高圧用途の電池セルに適用可能な温度検出機能を備える
組電池を提供できる。
【0055】
なお、本実施形態では、温度検出を行う温度センサ22および結合材21Aは電池セル
16が有する開放弁17の位置、すなわち霧状の電解液放出方向を避ける位置となるよう
配置されてもよい。
【0056】
また、図3では、監視基板13の両面の空隙を埋めるよう配置しているが、バスバー1
8からの熱が温度センサ22に伝わらないようにバスバー18部は空隙があるままとし、
ボルト10、ワッシャー11、蓋体12B、温度センサ22及びナット19付近の空隙だ
けを埋めるよう結合材21Aを固定する構成としてもよい。
【0057】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、結合材21Bを監視基板13によって圧縮するものである。
【0058】
第2の実施形態に係る組電池2を、図6乃至図8を用いて説明する。
【0059】
なお、組電池2の、第1の実施形態の組電池1と同様の機能を有する構成は、同一の符
号を付して説明を省略する。
【0060】
図6は、第2の実施形態に係る組電池2の内部構成を示す断面図である。なお、図6
おける矢印は、結合材21Bに加えられる圧縮力の向きである。
【0061】
第1の実施形態に係る組電池1と第2の実施形態に係る組電池2との違いは、温度セン
サ22の配置される位置である。
【0062】
第2の実施形態に係る組電池2は、温度センサ22が監視基板13の電池セル16側に
配置される。一般的に基板は両面に回路パターンをエッチングして配置することが可能な
ので、温度センサ22を電池セル16側に配置することもまた可能である。
【0063】
本実施形態は、温度センサ22と電池セル16表面とが対向する位置に配置されること
が特徴である。
【0064】
温度センサ22は、電池セル16が有する開放弁17から万が一霧状の電解液が放出さ
れたとき、その霧状の電解液によって直撃しない位置に配置される。
【0065】
結合材21Bは、電池セル16と監視基板13との間に温度センサ22を介在させた状
態で、監視基板13によって圧縮された状態で固定される。
【0066】
結合材21Bは、結合材21Aに用いられるシリコーン等の熱伝導率が明らかな圧縮変
形する柔軟な樹脂でもよい。また、結合材21Bは絶縁樹脂であってもよい。絶縁樹脂及
び圧縮変形する柔軟な樹脂とは、たとえばCTI値が高く熱伝導率は1[W/m・K]以
上、硬度を表すAsker Cが数十程度、絶縁破壊電圧が5[kV/mm]以上、燃焼
性UL94規格である難燃性樹脂クラスがV-0以上の樹脂である。
【0067】
電池セル16の表面と監視基板13の間を圧縮された結合材21Bによって埋めること
により、温度センサ22と電池セル16の表面との間に固体伝熱経路が形成される。
【0068】
本実施形態の構造により、結合材21Bは温度センサ22近傍にのみ介在させたので、
結合材21Bの材料コストを削減することができ、簡易な構造にすることが可能となる。
【0069】
図7は、第2の実施形態に係る組電池2の変形例を示す図である。なお、図7における
矢印は、結合材21Bに加えられる圧縮力の向きである。
【0070】
図7(a)は、第2の実施形態に係る組電池2の変形例の正面図である。図7(b)は
、第2の実施形態に係る組電池2の変形例の側面図である。
【0071】
図7に示すように、監視基板13の位置は電池セル16の正極端子14側に対して直立
した位置であってもよい。このとき、結合材21Bを押圧し圧縮する押圧板7を監視基板
13に有する構成であってもよい。図7では、監視基板13に設けられた押圧板7によっ
て結合材21Bを電池セル16側に押圧圧縮した状態で、監視基板13をボルト10及び
ナット19でバスバー18に固定している。もしくは、その他の部材(ケース本体12A
や蓋体12B等)によって結合材21Bが押圧圧縮される構造であってもよい。
【0072】
図8は、第2の実施形態に係る組電池2の別の変形例を示す図である。なお、図8にお
ける矢印は、結合材21Bに加えられる圧縮力の向きである。
【0073】
図8に示すように、監視基板13の位置は電池セル16の側面に並列した位置であって
もよい。
【0074】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、結合材21Cは監視基板13に対して移動を抑制する突起部31が
形成されているものである。
【0075】
第3の実施形態に係る組電池3を、図9を用いて説明する。
【0076】
なお、組電池3の、第1の実施形態並びに第2の実施形態の組電池と同様の機能を有す
る構成は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0077】
図9は、第3の実施形態に係る組電池3の内部構成を示す図である。なお、図9におけ
る矢印は、結合材21Cに加えられる圧縮力の向きである。
【0078】
図9に示すように、監視基板13は貫通孔25を有する。また、結合材21Cは紫外線
硬化樹脂で形成されている。
【0079】
結合材21Cは、貫通孔25を貫通した状態で紫外線が照射されて硬化されることによ
り貫通孔25に対して移動を抑制する突起部31が形成されている。
【0080】
貫通孔25の周囲に、監視基板13の表と裏の間の回路配線として機能する金属箔(ラ
ンド)26を有していてもよい。温度センサ22が監視基板13の電池セル16側にある
場合、電池セル16と逆側の回路と温度センサ22の接続をする際に金属箔(ランド)2
6を使用する。
【0081】
結合材21Cは、監視基板13と電池セル16の表面の間を熱結合させる伝熱部材とし
て機能する。
【0082】
結合材21Cは、紫外線照射によって硬度が向上して硬化する特徴を持つ樹脂材料で成
形される。
【0083】
結合材21Cは、円筒形または直方体の圧縮変形可能な部分と、貫通孔25を貫通した
状態で監視基板13に係止されるように、テーパー状の突起部31を備える。
【0084】
テーパー状の突起部31は、監視基板13の電池セル16側から貫通し引っかかった状
態で保持される特徴を持つ。結合材21Cは、監視基板13と電池セル16表面の間に介
在して保持された状態で、突起部31の頂点部30から紫外線を照射して硬化させる。
【0085】
これにより、貫通孔25と結合材21Cとがより強固に固定保持される。
【0086】
本実施形態は、温度センサ22が電池セル16の表面と固体伝熱経路を持つことによっ
て、温度センサ22と電池セル16の表面温度が近づき精度良い温度検出を実現すること
が可能になる。
【0087】
また、本実施形態は、監視基板13の貫通孔25と結合材21Cとが強固に固定保持さ
れるため、結合材21Cが組電池3の内部で移動することを防止するが可能となる。
【0088】
なお、結合材21Cを圧縮状態にするために、図示しないボルト及びナットを用いて、
監視基板13をバスバー18に固定するようにしても良い。
【0089】
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、結合材21Dは監視基板13に固定具23により固定されるもので
ある。
【0090】
第4の実施形態に係る組電池4を、図10を用いて説明する。
【0091】
なお、組電池4の、第1~3の実施形態の組電池と同様の機能を有する構成は、同一の
符号を付して説明を省略する。
【0092】
図10は、第4の実施形態に係る組電池4の内部構成を示す図である。なお、図10
おける矢印は、結合材21Dに加えられる圧縮力の向きである。
【0093】
図10に示すように、監視基板13は貫通孔25を有し、結合材21Dは貫通孔25に
挿通した状態で固定されることにより貫通孔25に対して移動を抑制する固定具23を有
する。
【0094】
第3の実施形態と同様に、貫通孔25の周囲に、金属箔(ランド)26を有していても
よい。
【0095】
図10に示すように、監視基板13と電池セル16表面の間を熱結合する結合材21D
とその固定を、固定具23を用いて実現する。
【0096】
結合材21Dはあらかじめ固定具23が挿通するよう穴が形成されていて、穴に入り込
むように固定具23が挿通している。
【0097】
監視基板13と電池セル16の間にまず変形圧縮可能な結合材21Dを挟み、監視基板
13の電池セル16側に温度センサ22がある。
【0098】
監視基板13の電池セル16と反対側から、貫通孔25を介して固定具23を挿通して
力を与えると、固定具23の先端が開き結合材21Dに入り込んで刺さり、固定保持され
る。
【0099】
結合材21Dは熱伝導率が大きく、絶縁性を有する樹脂材料であればよい。例えばシリ
コーン等が挙げられるが、本実施形態では特にシリコーンに限定しない。
【0100】
本実施形態により、監視基板13と電池セル16間の密着固定を実現し、温度センサ2
2と電池セル16間に固体伝熱経路を形成し、電池セル16の表面温度と監視基板13上
の温度センサ22の検出温度とが近づくことを可能とする。
【0101】
また、本実施形態は、監視基板13の貫通孔25と結合材21Dとが強固に固定保持さ
れるため、結合材21Dが組電池4の内部で移動することを防止するが可能となる。
【0102】
なお、結合材21Dを圧縮状態にするために、図示しないボルト及びナットを用いて、
監視基板13をバスバー18に固定するようにしても良い。
【0103】
(第5の実施形態)
第5の実施形態は、結合材21Eは監視基板13に吸着する吸盤形状を有するものであ
る。
【0104】
第5の実施形態に係る結合材21Eを、図11を用いて説明する。
【0105】
なお、組電池5の、第1~4の実施形態の組電池と同様の機能を有する構成は、同一の
符号を付して説明を省略する。
【0106】
図11は、第5の実施形態に係る組電池5の内部構成を示す図である。なお、図11
おける矢印は、結合材21Eに加えられる圧縮力の向きである。
【0107】
図11(b)に示すように、結合材21Eは、平面状のものに押し付けられ変形する吸
盤形状となっている吸盤部32を有する。吸盤部32は、図11(b)に示すような円形
状の皿のような形状となっている。吸盤部32は、吸着時に、吸着される平面状のものと
円形状の皿の内部との間の空気が脱気され、密着する構造となっている。
【0108】
結合材21Eは、監視基板13と電池セル16表面とを熱結合させる伝熱部材として機
能する。
【0109】
結合材21Eは、熱伝導率が高く、絶縁性及び可撓性を有する弾性体で形成されること
が望ましい。例えば、シリコーンやフッ素ゴム等である。
【0110】
吸盤部32は、本実施形態では図11(a)に示すように、監視基板13側に設けてい
るが、電池セル16側と監視基板13側との両方に設けてもよい。
【0111】
結合材21Eは、電池セル16と監視基板13の間の距離よりもあらかじめやや大きく
成形し、押しつぶされた時に密着する構成が望ましい。
【0112】
本実施形態により、監視基板13と電池セル16との間の密着固定を実現し、温度セン
サ22と電池セル16との間に固体伝熱経路を形成し、電池セル16表面温度と監視基板
13上の温度センサ22の検出温度が近づくことを実現する。
【0113】
また本実施形態により、可撓性を有するゴム等で形成可能なため、樹脂等で形成するよ
りも製造コストを削減することができる。
【0114】
なお、結合材21Eを圧縮状態にするために、図示しないボルト及びナットを用いて、
監視基板13をバスバー18に固定するようにしても良い。
【0115】
(第6の実施形態)
第6の実施形態は、結合材21Fは監視基板13から電池セル16にかけて蛇腹形状を
有するものである。
【0116】
第6の実施形態に係る組電池6を、図12を用いて説明する。
【0117】
なお、組電池6の、第1~5の実施形態の組電池と同様の機能を有する構成は、同一の
符号を付して説明を省略する。
【0118】
図12は、第6の実施形態に係る組電池6の内部構成を示す図である。なお、図12
おける矢印は、結合材21Fに加えられる圧縮力の向きである。
【0119】
結合材21Fは、電池セル16表面と監視基板13との間を熱結合する伝熱部材である
【0120】
結合材21Fは、熱伝導率が大きく、絶縁性及び可撓性を有する弾性体で形成されるこ
とが望ましい。例えば、シリコーンやフッ素ゴム等である。
【0121】
結合材21Fは、蛇腹形状を有する。結合材21Fの蛇腹形状は、ばねのように伸縮自
在な構造である。本実施形態では、蛇腹33の個数は限定しておらず、成形可能な範囲で
1個以上とする。また、結合材21Fは、樹脂等で充填され中空でない構造である。
【0122】
電池セル16と監視基板13との間の距離よりもあらかじめ結合材21Fをやや長めに
成形し、電池セル16と監視基板13との間に挟み、両側から圧縮してつぶすことで電池
セル16と監視基板13との間の密着固定を実現する。それにより、電池セル16と温度
センサ22との間に固体伝熱経路を形成する。
【0123】
本実施形態により、電池セル16と監視基板13との間の密着固定を実現し、電池セル
16と温度センサ22との間に固体伝熱経路を形成し、電池セル16表面温度と監視基板
13上の温度センサ22の検出温度が近づくことを実現する。
【0124】
なお、結合材21Fを圧縮状態にするために、図示しないボルト及びナットを用いて、
監視基板13をバスバー18に固定するようにしても良い。
【0125】
また本実施形態により、可撓性を有するゴム等で形成可能なため、樹脂等で形成するよ
りも製造コストを削減することができる。
【0126】
また本実施形態により、耐振動性、耐久性が高く、鉄道用途や車載用途産業用途等に適
用可能な組電池を提供できる。
【0127】
このように、第1の実施形態乃至第6の実施形態によれば、高圧用途の電池セルに適用
可能な、精度の高い温度検出機能を備える組電池を提供できる。
【0128】
また、第1の実施形態乃至第6の実施形態によれば、耐振動性、耐久性が高く、鉄道用
途や車載用途産業用途等に適用可能な組電池を提供できる。
【0129】
また、第1の実施形態乃至第6の実施形態によれば、電池セルをリサイクル・リユース
する際に結合材を簡単に取り外すことができ、組電池の解体を容易にすることが可能な組
電池を提供できる。
【0130】
本実施形態では、角柱型の電池セルを例にした組電池を説明したが、比較的剛体構造で
ある円筒型の電池セルや扁平型の電池セルであれば同様の実施は可能である。
【0131】
本実施形態では、組電池の構成単位として組電池1~6を例に説明したが、より直並列
の多いパックや装置でも本発明は適用できる。
【0132】
本実施形態では温度センサ22と電池セル16の空隙を埋めながら絶縁と熱伝導性をそ
なえる構造を提案しているので、バスバー18と正極端子14及び負極端子15との接続
方法は特に限定しない。
【0133】
また、本実施形態ではバスバー18と正極端子14及び負極端子15とを溶接により接
合しているが、接合方法は溶接による接合に限定しない。
【0134】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したも
のであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その
他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の
省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や
要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる
【符号の説明】
【0135】
1、2、3、4、5、6・・・組電池
7・・・押圧板
8・・・空気
9・・・セパレータ
10・・・ボルト
11・・・ワッシャー
12・・・ケース筐体
12A・・・ケース本体
12B・・・蓋体
13・・・監視基板
14・・・正極端子
15・・・負極端子
16・・・電池セル
17・・・開放弁
18・・・バスバー
19・・・ナット
21、21A、21B、21C、21D、21E、21F・・・結合材
22・・・温度センサ
23・・・固定具
25・・・貫通孔
26・・・金属箔(ランド)
30・・・頂点部
31・・・突起部
32・・・吸盤部
33・・・蛇腹
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12