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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】基板保持装置、基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20231107BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/304 643A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019231680
(22)【出願日】2019-12-23
(65)【公開番号】P2021100067
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】中井 仁司
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-050014(JP,A)
【文献】特開2017-069263(JP,A)
【文献】特開2016-046360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板保持装置であって、
複数のチャックと、
チャックベースと、
第1機構と、
第2機構と
を備え、
前記複数のチャックの各々が、前記基板の把持に用いられる把持部を有し、
前記チャックベースは、
前記複数のチャックを搭載し、
前記把持部を露出させる主面を有し、
前記把持部に把持される前記基板の回転に用いられ、
前記第1機構は、
前記複数のチャックを駆動して、第1位置と第2位置との間で、前記複数のチャックを移動させる第1駆動部と、
可動の第1駆動磁石と、
前記第1駆動部に固定され、前記第1駆動磁石の移動に従って移動して前記第1駆動部を動作させる第1従動磁石と
を有し、
前記第1位置における前記把持部の前記主面に対する高さは、前記第2位置における前記把持部の前記主面に対する高さよりも高く、
前記第2機構は、
前記複数のチャックを駆動して、前記把持部が前記基板の把持を可能とする第1姿勢と、前記把持を解除する第2姿勢との間で、前記複数のチャックを遷移させる第2駆動部と、
可動の第2駆動磁石と、
前記第2駆動部に固定され、前記第2駆動磁石の移動に従って移動して前記第2駆動部を動作させる第2従動磁石と
有し、
前記把持部は、
前記基板が把持されるときに前記基板の周縁を把持する凹面
を含み、
前記主面の法線方向に平行な軸を中心とした前記複数のチャックの回転が、前記凹面の開口する方向を移動させ、
前記第2駆動部は、前記法線方向における前記第2従動磁石の移動を前記複数のチャックの前記回転に変換し、
前記第2駆動磁石の前記法線方向における移動が、前記第2従動磁石を前記法線方向において移動させる、基板保持装置。
【請求項2】
基板を保持する基板保持装置であって、
複数のチャックと、
チャックベースと、
第1機構と、
第2機構と
を備え、
前記複数のチャックの各々が、前記基板の把持に用いられる把持部を有し、
前記チャックベースは、
前記複数のチャックを搭載し、
前記把持部を露出させる主面を有し、
前記把持部に把持される前記基板の回転に用いられ、
前記第1機構は、
前記複数のチャックを駆動して、第1位置と第2位置との間で、前記複数のチャックを移動させる第1駆動部と、
可動の第1駆動磁石と、
前記第1駆動部に固定され、前記第1駆動磁石の移動に従って移動して前記第1駆動部を動作させる第1従動磁石と
を有し、
前記第1位置における前記把持部の前記主面に対する高さは、前記第2位置における前記把持部の前記主面に対する高さよりも高く、
前記第2機構は、
前記複数のチャックを駆動して、前記把持部が前記基板の把持を可能とする第1姿勢と、前記把持を解除する第2姿勢との間で、前記複数のチャックを遷移させる第2駆動部と、
可動の第2駆動磁石と、
前記第2駆動部に固定され、前記第2駆動磁石の移動に従って移動して前記第2駆動部を動作させる第2従動磁石と
を有し、
前記複数のチャックは第1チャックと第2チャックとを含み、
前記チャックベースによって前記基板が回転し、かつ前記第1チャックおよび前記第2チャックのいずれもが前記第1位置にある場合もしくは前記第1チャックおよび前記第2チャックのいずれもが前記第2位置にある場合において:
前記第1チャックが前記第2姿勢をとるときには前記第2チャックは前記第2姿勢をとらずに前記第1姿勢をとり;
前記第2チャックが前記第2姿勢をとるときには前記第1チャックは前記第2姿勢をとらずに前記第1姿勢をとり;
前記第1チャックおよび前記第2チャックのいずれもが前記第1姿勢をとり得る、基板保持装置。
【請求項3】
前記把持部は、
前記基板が把持されるときに前記基板の周縁を把持する凹面
を含み、
前記主面の法線方向に平行な軸を中心とした前記複数のチャックの回転が、前記凹面の開口する方向を移動させ、
前記第2駆動部は、前記法線方向における前記第2従動磁石の移動を前記複数のチャックの前記回転に変換し、
前記第2駆動磁石の前記法線方向における移動が、前記第2従動磁石を前記法線方向において移動させる、請求項2に記載の基板保持装置。
【請求項4】
前記法線方向における前記第1駆動磁石の移動が、前記第1従動磁石を前記法線方向に移動させ、
前記複数のチャックが前記第1姿勢をとるときに前記第2駆動磁石と前記第2従動磁石との間に働く磁力の大きさよりも、前記複数のチャックが前記第2姿勢をとるときにおける前記磁力の大きさが大きく、
前記複数のチャックが前記第1姿勢をとる場合において、前記複数のチャックが前記第1位置にあるときの前記磁力の大きさよりも、前記複数のチャックが前記第2位置にあるときの前記磁力の大きさが大きい、請求項1または請求項3に記載の基板保持装置。
【請求項5】
前記複数のチャックが前記第2姿勢をとる場合において、前記複数のチャックが前記第1位置にあるときの前記磁力の大きさよりも、前記複数のチャックが前記第2位置にあるときの前記磁力の大きさが大きい、請求項4に記載の基板保持装置。
【請求項6】
前記複数のチャックが前記第2姿勢から前記第1姿勢へと遷移するときの前記複数のチャックの前記回転は、前記基板が前記把持部に把持されることによって制限される、請求項1または請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の基板保持装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一に記載の基板保持装置において行なわれる基板処理方法であって、
前記基板は第1面と、前記第1面よりも前記チャックベースに近い第2面とを有し、
前記第1位置において前記把持部に把持された前記第1面および前記第2面の少なくとも一方に対して処理液の供給を行う第1工程と、
前記第1工程と共に、あるいは前記第1工程が終了してから、前記第2面に対するガスの供給を行なう第2工程と
を備え、
前記第2工程において、前記基板は前記把持部に把持されながら前記チャックベースによって回転しつつ、前記複数のチャックが前記第1位置から前記第2位置へ移動する、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は基板を保持する技術と、基板を処理する技術とに関する。保持の対象となる基板には、例えば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板が含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置の製造工程では、基板を一枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置(以下「枚葉型処理装置」と称す)や、複数枚の基板を一括して処理するバッチ式の基板処理装置が用いられる。一般的な枚葉型処理装置では、処理室内において1枚の基板が水平に保持され、処理の内容に応じて基板の回転や、基板への処理液(薬液やリンス液)の供給が行われる。
【0003】
枚葉型処理装置は、例えば回転軸を中心として回転するスピンベース上に、回転方向に沿って複数のチャックを備えている場合がある。当該チャックはその形状がピン状であることから「チャックピン」と称されることもある。またチャックを備えたスピンベースは「チャックベース」と称されることもある。
【0004】
このような枚葉型処理装置では、チャックが基板の周縁を上下方向から挟む(以下「把持」するとも称す)状態で上記回転や処理液の供給が行われる。また把持されずにその下面がチャックベースの上方で支持される(以下「載置」されるとも称す)状態で、基板がチャックベースから取り外される。あるいは基板は把持に先だってチャックベースへと載置される。なお、以下では「保持」を「載置」および「把持」のいずれをも含む概念として採用する。
【0005】
例えば、下記の特許文献1~6では、チャックベース上に設けられた複数のチャックピンを用いて基板が保持される技術が例示される。
【0006】
特許文献1では、カム板を介して、磁力によりチャックピンを回転させることにより、基板の把持およびその解除を行う技術が紹介される。
【0007】
特許文献2では、スピンチャックと称される構成要素が、ウエハを保持した状態で回転および昇降する技術が紹介される。
【0008】
特許文献3では、磁力によりチャックピンを昇降させる技術が紹介される。
【0009】
特許文献4では、磁力によりチャックピンを回転させることにより、基板の把持およびその解除を行う技術が紹介される。
【0010】
特許文献5では、チャックベースを昇降させる技術が紹介される。
【0011】
特許文献6では、チャックピンを支持する機構を昇降可能とする筒状の凹部が、チャックベースの周縁に設けられてチャックベースと共に回転する技術が紹介される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2016-25186号公報
【文献】特開2005-183709号公報
【文献】特開2018-50013号公報
【文献】特開2010-130018号公報
【文献】特許第5172884号公報
【文献】特開2019-46985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
基板がチャックベースへ載置されたり、載置された基板がチャックベースから取り外されたりする工程(以下、当該工程を基板の「受け渡し」と称する)際、チャックベースを昇降させることは、当該昇降を実現する機構が大型化する観点では望ましくない。かかる観点からは特許文献3で紹介される技術のように、チャックピンを昇降させることが望ましい。
【0014】
しかしながら、特許文献3ではチャックピンによる基板の把持およびその解除を駆動する構成要素は、スプラッシュガードに固定されている。よってチャックピンの昇降に応じてスプラッシュガードをも昇降させる必要がある。
【0015】
本発明は、チャックの昇降と、チャックによる基板の把持およびその解除を容易に行う技術を提供することを目的の一つとする。また、基板に対する処理工程において、基板を回転させながらチャックベースと基板との距離を変更する技術を提供することも目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するための第1態様は、基板を保持する基板保持装置であって、複数のチャックと、チャックベースと、第1機構と、第2機構とを備える。前記複数のチャックの各々が、前記基板の把持に用いられる把持部を有する。前記チャックベースは、前記複数のチャックを搭載し、前記把持部を露出させる主面を有し、前記把持部に把持される前記基板の回転に用いられる。
【0017】
前記第1機構は、前記複数のチャックを駆動して、第1位置と第2位置との間で、前記複数のチャックを移動させる第1駆動部と、可動の第1駆動磁石と、前記第1駆動部に固定され、前記第1駆動磁石の移動に従って移動して前記第1駆動部を動作させる第1従動磁石とを有する。前記第1位置における前記把持部の前記主面に対する高さは、前記第2位置における前記把持部の前記主面に対する高さよりも高い。
【0018】
前記第2機構は、前記複数のチャックを駆動して、前記把持部が前記基板の把持を可能とする第1姿勢と、前記把持を解除する第2姿勢との間で、前記複数のチャックを遷移させる第2駆動部と、可動の第2駆動磁石と、前記第2駆動部に固定され、前記第2駆動磁石の移動に従って移動して前記第2駆動部を動作させる第2従動磁石とを有する。
前記把持部は、前記基板が把持されるときに前記基板の周縁を把持する凹面を含む。前記主面の法線方向に平行な軸を中心とした前記複数のチャックの回転が、前記凹面の開口する方向を移動させる。前記第2駆動部は、前記法線方向における前記第2従動磁石の移動を前記複数のチャックの前記回転に変換する。前記第2駆動磁石の前記法線方向における移動が、前記第2従動磁石を前記法線方向において移動させる。
【0019】
上記の課題を解決するための第2の態様は、基板を保持する基板保持装置であって、複数のチャックと、チャックベースと、第1機構と、第2機構とを備える。前記複数のチャックの各々が、前記基板の把持に用いられる把持部を有する。前記チャックベースは、前記複数のチャックを搭載し、前記把持部を露出させる主面を有し、前記把持部に把持される前記基板の回転に用いられる。
前記第1機構は、前記複数のチャックを駆動して、第1位置と第2位置との間で、前記複数のチャックを移動させる第1駆動部と、可動の第1駆動磁石と、前記第1駆動部に固定され、前記第1駆動磁石の移動に従って移動して前記第1駆動部を動作させる第1従動磁石とを有する。前記第1位置における前記把持部の前記主面に対する高さは、前記第2位置における前記把持部の前記主面に対する高さよりも高い。
前記第2機構は、前記複数のチャックを駆動して、前記把持部が前記基板の把持を可能とする第1姿勢と、前記把持を解除する第2姿勢との間で、前記複数のチャックを遷移させる第2駆動部と、可動の第2駆動磁石と、前記第2駆動部に固定され、前記第2駆動磁石の移動に従って移動して前記第2駆動部を動作させる第2従動磁石とを有する。
前記複数のチャックは第1チャックと第2チャックとを含む。前記チャックベースによって前記基板が回転し、かつ前記第1チャックおよび前記第2チャックのいずれもが前記第1位置にある場合もしくは前記第1チャックおよび前記第2チャックのいずれもが前記第2位置にある場合において:前記第1チャックが前記第2姿勢をとるときには前記第2チャックは前記第2姿勢をとらずに前記第1姿勢をとり;前記第2チャックが前記第2姿勢をとるときには前記第1チャックは前記第2姿勢をとらずに前記第1姿勢をとり;前記第1チャックおよび前記第2チャックのいずれもが前記第1姿勢をとり得る。
【0020】
第3の態様は第2の態様であって、前記把持部は、前記基板が把持されるときに前記基板の周縁を把持する凹面を含む。前記主面の法線方向に平行な軸を中心とした前記複数のチャックの回転が、前記凹面の開口する方向を移動させる。前記第2駆動部は、前記法線方向における前記第2従動磁石の移動を前記複数のチャックの前記回転に変換する。前記第2駆動磁石の前記法線方向における移動が、前記第2従動磁石を前記法線方向において移動させる。
【0021】
第4の態様は第1の態様または第3の態様であって、前記法線方向における前記第1駆動磁石の移動が、前記第1従動磁石を前記法線方向に移動させる。前記複数のチャックが前記第1姿勢をとるときに前記第2駆動磁石と前記第2従動磁石との間に働く磁力の大きさよりも、前記複数のチャックが前記第2姿勢をとるときにおける前記磁力の大きさが大きい。前記複数のチャックが前記第1姿勢をとる場合において、前記複数のチャックが前記第1位置にあるときの前記磁力の大きさよりも、前記複数のチャックが前記第2位置にあるときの前記磁力の大きさが大きい。
【0022】
第5の態様は第4の態様であって、前記複数のチャックが前記第2姿勢をとる場合において、前記複数のチャックが前記第1位置にあるときの前記磁力の大きさよりも、前記複数のチャックが前記第2位置にあるときの前記磁力の大きさが大きい。
【0023】
第6の態様は第1の態様または第3の態様から第5の態様のいずれかであって、前記複数のチャックが前記第2姿勢から前記第1姿勢へと遷移するときの前記複数のチャックの前記回転は、前記基板が前記把持部に把持されることによって制限される。
【0024】
第7の態様は、第1の態様から第6の態様のいずれかにおいて行なわれる基板処理方法である。前記基板は第1面と、前記第1面よりも前記チャックベースに近い第2面とを有する。当該基板処理方法は、前記第1位置において前記把持部に把持された前記第1面および前記第2面の少なくとも一方に対して処理液の供給を行う第1工程と、前記第1工程と共に、あるいは前記第1工程が終了してから、前記第2面に対するガスの供給を行なう第2工程とを備える。前記第2工程において、前記基板は前記把持部に把持されながら前記チャックベースによって回転しつつ、前記複数のチャックが前記第1位置から前記第2位置へ移動する。
【発明の効果】
【0026】
第1の態様によると、チャックの昇降と、チャックによる基板の把持およびその解除とが容易に行われる。基板の把持とその解除とが容易に行われる。
【0027】
第2の態様によると、チャックの昇降と、チャックによる基板の把持およびその解除とが容易に行われる。回転する基板を把持するチャックが交代される。
【0028】
第3の態様によると、基板の把持とその解除とが容易に行われる。
【0029】
第4の態様によると、チャックが第1位置にあってもチャックが第2姿勢をとることができる。
【0030】
第5の態様によると、チャックが第2位置にあってもチャックが第2姿勢をとることができる。
【0031】
第6の態様によると、基板の落下が検出される。
【0032】
第7の態様によると、基板を回転させながらもチャックベースと基板との距離が変更される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】基板処理システムの構成の概略を例示する平面図である。
図2】一つの基板処理装置の構成の概略を例示する全体図である。
図3】スピンチャックの一部を示す断面図である。
図4】チャックの上面図である。
図5】スピンチャックの一部を示す断面図である。
図6】チャックおよび基板を部分的に示す断面図である。
図7】チャックの上面図である。
図8】把持部と基板の周縁の位置との位置関係を示す上面図である。
図9】環および第1駆動磁石、第2駆動磁石を部分的に示す上面図である。
図10】カム板、軸、昇降板、第2従動磁石の位置関係を示す側面図である。
図11】カム板、軸、昇降板、第2従動磁石の位置関係を示す側面図である。
図12】スピンチャックの一部を示す断面図である。
図13】本実施の形態における基板処理工程を例示するフローチャートである。
図14図13で示されたフローチャートの一部の動作を例示する断面図である。
図15図13で示されたフローチャートの一部の動作を例示する断面図である。
図16】スピンチャックの一部を示す断面図である。
図17】環および第1駆動磁石、第2駆動磁石を部分的に示す上面図である。
図18】チャックベースの上面図である。
図19】チャックの上面図である。
図20】カム板、軸、昇降板、第2従動磁石の位置関係を示す側面図である。
図21】基板の持ち替えを行うステップの具体的な動作を例示するフローチャートである。
図22】スピンチャックの一部を示す断面図である。
図23】チャックを示す上面図である。
図24】把持部と基板の周縁の位置との位置関係を示す上面図である。
図25】カム板、軸、昇降板、第2従動磁石の位置関係を示す側面図である。
図26】スピンチャックの一部を示す断面図である。
図27】スピンチャックの一部を示す断面図である。
図28】基板が把持されているか否かを検出する構成を例示する断面図である。
図29】基板が落下したことを検出する動作を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態が説明される。なお、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。
【0036】
なお、本実施の形態において「基板の保持」とは基板の位置、特に上下方向における位置を保つことを指し、「基板の載置」とは基板の下面を支持してチャックベースの上方において保持することを指し、「基板の把持」とは基板の周縁を上下方向から挟んで保持することを指す。当該実施の形態では基板の載置および把持のいずれも、チャックによって行われる。
【0037】
特に基板の周縁がチャックによって把持されている状態を「把持状態」と称し、基板の周縁がチャックによって把持されることなく基板が単にチャックピン上に載置される状態を「載置状態」と称する。また、把持状態および載置状態を問わず、基板が保持される状態を「保持状態」と称す。
【0038】
[基板処理システムの構成]
図1は基板処理システム700の構成の概略を例示する平面図である。本実施の形態において発明の理解を容易にするために、方向Zが導入される。典型的には方向Zは鉛直上向きの方向である。
【0039】
基板処理システム700は、基板処理装置710を備える。図1においては基板処理装置710は四つの組71に設けられ、組71の各々において3個ずつの基板処理装置710が設けられる場合が示される。
【0040】
基板処理装置710は基板Wに対して処理液を用いた処理を行う枚葉型処理装置である。基板Wは例えば半導体ウエハであり、円板状である。処理液は薬液およびリンス液を含む概念である。
【0041】
薬液の例として、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(例えばクエン酸、蓚酸)、有機アルカリ(例えば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)、界面活性剤、および腐食防止剤のうちの少なくとも一つを含む液体が挙げられる。
【0042】
リンス液の例として、純水(脱イオン水)、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、IPA(イソプロピルアルコール)、および塩酸水が挙げられる。
【0043】
基板処理システム700は流体キャビネット702、流体ボックス703、ロードポート706と、センターロボット708と、インデクサーロボット709とを更に備える。
【0044】
いずれのロードポート706も基板Wを複数枚で収容可能である。例えば基板Wはロードポート706において積層されて収容される。
【0045】
センターロボット708とロードポート706との間において、基板Wはインデクサーロボット709によって搬送される。
【0046】
インデクサーロボット709と基板処理装置710との間において、基板Wはセンターロボット708によって搬送される。
【0047】
流体キャビネット702には上述の処理液と、基板Wを処理する際に採用されるガスとが収容される。流体ボックス703は流体キャビネット702から処理液およびガスを基板処理装置710に供給する。図1においては流体ボックス703が組71毎に設けられる場合が例示される。
【0048】
基板処理装置710の動作、センターロボット708の動作およびインデクサーロボット709の動作は、制御装置73によって制御される。図1においては制御装置73が基板処理システム700に備えられる場合が例示される。
【0049】
制御装置73は例えば制御部731および記憶部732を含む。制御部731はマイクロコンピュータで実現することができる。記憶部732はコンピュータプログラムを記憶する。制御部731は記憶部732が記憶するコンピュータプログラムを実行する。
【0050】
記憶部732は更にレシピデータを記憶する。レシピデータは複数のレシピを示す情報を含む。レシピの各々は基板Wの搬送および基板Wに対する処理のそれぞれについての内容および手順を規定する。
【0051】
記憶部732は主記憶装置と補助記憶装置とを含む。主記憶装置および補助記憶装置は、例えば半導体メモリーで実現される。補助記憶装置は他の記憶装置、例えばハードディスクドライブで実現されてもよいし、リムーバブルメディアで実現されてもよい。
【0052】
[基板処理装置の構成]
図2は一つの基板処理装置710の構成の概略を例示する全体図である。制御装置73は基板処理装置710に備えられた装置の動作やバルブの開閉を制御する。
【0053】
基板処理装置710は、チャンバー74と、FFU(ファンフィルターユニット)79と、排気ダクト72とを備える。
【0054】
チャンバー74はスピンチャック75と、処理液供給機構76と、カップ77と、隔壁78とを備える。隔壁78は箱形であって内部空間を有し、スピンチャック75と、処理液供給機構76と、カップ77とは当該内部空間に納められる。
【0055】
FFU79は送風ユニットであって隔壁78の上方に位置する。FFU79はチャンバー74の上方からチャンバー74内にクリーンエアー(フィルターによってろ過された空気)を送る。
【0056】
スピンチャック75はチャンバー74内で一枚の基板Wを水平な姿勢で保持する基板保持装置として機能する。スピンチャック75は鉛直な(ここでは方向Zと平行な)線である基板回転軸Qを中心として基板Wを回転させる。基板回転軸Qは例えば基板Wの中心を通る。
【0057】
処理液供給機構76はスピンチャック75に保持された基板Wの上側の表面(以下「第1面」と称す)W1に処理液を供給する。カップ77は筒状であって、基板回転軸Qを中心としてスピンチャック75を取り囲む。
【0058】
排気ダクト72はカップ77の底部に接続され、チャンバー74内の気体を排出する。排出された気体は、基板処理装置710が設置される工場に設けられた排気設備(図示省略)に向けて案内される。
【0059】
FFU79および排気ダクト72によって、チャンバー74内を下方に流れるダウンフロー(下降流)が形成される。例えば基板Wの処理は、チャンバー74内にダウンフローが形成されている状態で行われる。
【0060】
スピンチャック75は、チャックベース711と、複数のチャックピン712と、チャック開閉機構713と、スピンモータ714とを含む。
【0061】
例えばチャックベース711は円板状であって、水平な姿勢で回転可能に保持される。チャックベース711の上方に露出する面(以下「主面」と称す)には、複数のチャックピン712が設けられる。例えばチャックピン712のいずれもが、主面の外周の部位において上方に突出して設けられる。
【0062】
チャック開閉機構713は複数のチャックピン712を開閉させる。チャックピン712の「開閉」の「閉」は、把持状態を得ることができる姿勢(以下「第1姿勢CL」とも称す)をチャックピン712がとることを指す。チャックピン712の「開閉」の「開」は、載置状態を得ることができる姿勢(以下「第2姿勢OP」とも称す)をチャックピン712がとることを指す。第2姿勢OPから第1姿勢CLへチャックピン712が遷移することで、第2姿勢OPをとっていたチャックピン712が閉じられる。第1姿勢CLから第2姿勢OPへチャックピン712が遷移することで、第1姿勢CLをとっていたチャックピン712が開かれる。
【0063】
チャックピン712の幾つかが第1姿勢CLをとり、他の幾つかが第2姿勢OPをとることもある(後の<基板Wの“持ち替え“>において説明される)。基板Wが把持されることなくチャックピン712が第1姿勢CLをとる場合も想定される(後の<基板Wの脱落の検知>において説明される)。
【0064】
スピンモータ714はチャックベース711ひいてはチャックピン712を基板回転軸Qを中心として、例えば方向Zに沿って見て時計回りの方向RDrに回転させる。
【0065】
チャックベース711の外径は、基板Wの直径よりも大きい。チャックベース711の中心線は、基板回転軸Q上に位置する。複数のチャックピン712は、周方向(基板回転軸Qを中心とする円周方向)に間隔を空けて位置される。チャックピン712のいずれも、基板Wの把持、あるいは載置に利用できる。
【0066】
チャックピン712は、基板Wを把持もしくは載置することによって、基板Wをチャックベース711から上側に離間させて保持する機能を有する。基板Wの下側の表面(以下「第2面」と称す)W2とチャックベース711の主面とが上下方向に離れた状態で、基板Wが方向Zを法線方向として、ここでは水平に保持される。第2面W2は第1面W1よりもチャックベース711に近い。法線方向である方向Zは、地球上では鉛直上向きの方向である。
【0067】
基板Wが把持状態にあるときにスピンモータ714がチャックベース711を回転させることにより、基板Wはチャックベース711およびチャックピン712と共に基板回転軸Qを中心として回転する。
【0068】
処理液供給機構76は、薬液ノズル734と、薬液配管735と、薬液バルブ736とを含む。薬液ノズル734は第1面W1に向けて薬液を吐出する上面ノズルとして機能する。薬液配管735は薬液ノズル734に接続される。薬液バルブ736は薬液配管735の途中に設けられる。薬液配管735には薬液バルブ736を介して流体ボックス703(図1参照)から薬液が供給される。
【0069】
薬液バルブ736が開かれると、薬液配管735から薬液ノズル734に供給された薬液が、薬液ノズル734から下方に吐出される。かかる吐出によって、第1面W1へ薬液が供給される。薬液バルブ736が閉じられると、薬液ノズル734からの薬液の吐出が停止される。
【0070】
基板処理装置710は薬液ノズル移動装置737を含む。薬液ノズル移動装置737は薬液ノズル734を移動させる。
【0071】
薬液ノズル移動装置737は、薬液ノズル734から吐出された薬液が第1面W1に着液する処理位置と、薬液ノズル734がスピンチャック75の周囲に退避した退避位置との間で薬液ノズル734を移動させる。
【0072】
薬液ノズル移動装置737は、薬液ノズル734を移動させることにより、薬液の着液位置を第1面W1内で移動させる。薬液ノズル734は、第1面W1に対する薬液の着液位置が中央部と周縁との間で移動しながら薬液を吐出する、スキャンノズルとして機能する。
【0073】
処理液供給機構76は、リンス液ノズル738と、リンス液配管739と、リンス液バルブ740とを含む。リンス液ノズル738は、第1面W1に向けてリンス液を吐出する上面ノズルとして機能する。リンス液配管739はリンス液ノズル738に接続される。リンス液バルブ740はリンス液配管739の途中に設けられる。リンス液配管739にはリンス液バルブ740を介して流体ボックス703(図1)からリンス液が供給される。
【0074】
リンス液バルブ740が開かれると、リンス液配管739からリンス液ノズル738に供給されたリンス液が、リンス液ノズル738から下方に吐出される。かかる吐出によって、第1面W1へリンス液が供給される。リンス液バルブ740が閉じられると、リンス液ノズル738からのリンス液の吐出が停止される。
【0075】
基板処理装置710はリンス液ノズル移動装置741を含む。リンス液ノズル移動装置741はリンス液ノズル738を移動させる。
【0076】
リンス液ノズル移動装置741は、リンス液ノズル738から吐出されたリンス液が第1面W1に着液する処理位置と、リンス液ノズル738がスピンチャック75の周囲に退避した退避位置との間でリンス液ノズル738を移動させる。
【0077】
リンス液ノズル移動装置741は、リンス液ノズル738を移動させることにより、リンス液の着液位置を第1面W1内で移動させる。リンス液ノズル738は、第1面W1に対するリンス液の着液位置が中央部と周縁との間で移動しながらリンス液を吐出する、スキャンノズルとして機能する。
【0078】
基板処理装置710は流体供給機構742を含む。流体供給機構742は処理液およびガスを第2面W2へ供給する機能を有する。
【0079】
流体供給機構742には薬液配管743、リンス液配管745、ガス配管781が接続され、それぞれから薬液、リンス液、ガスが供給される。当該ガスの例としては例えば不活性ガスあるいは窒素ガスが挙げられる。
【0080】
薬液配管743の途中には薬液バルブ744が設けられる。薬液配管743には薬液バルブ744を介して流体ボックス703(図1参照)から薬液が供給される。
【0081】
薬液バルブ744が開かれると、薬液配管743から流体供給機構742に供給された薬液が、第2面W2に向けて供給される。かかる供給によって、第2面W2へ薬液が供給される。薬液バルブ744が閉じられると、流体供給機構742からの薬液の供給が停止される。
【0082】
リンス液配管745の途中にはリンス液バルブ746が設けられる。リンス液配管745にはリンス液バルブ746を介して流体ボックス703(図1参照)からリンス液が供給される。
【0083】
リンス液バルブ746が開かれると、リンス液配管745から流体供給機構742に供給されたリンス液が、第2面W2に向けて供給される。かかる供給によって、第2面W2へリンス液が供給される。リンス液バルブ746が閉じられると、流体供給機構742からのリンス液の供給が停止される。
【0084】
ガス配管781の途中にはガスバルブ782が設けられる。ガス配管781にはガスバルブ782を介して流体ボックス703(図1参照)からガスが供給される。
【0085】
ガスバルブ782が開かれると、ガス配管781から流体供給機構742に供給されたガスが、第2面W2に向けて供給される。かかる供給によって、第2面W2へガスが供給される。ガスバルブ782が閉じられると、流体供給機構742からのガスの供給が停止される。
【0086】
カップ77は、保持状態にある基板Wよりも外方(基板回転軸Qから離れる方向)に位置する。カップ77は、外壁747と、複数の処理液カップと、複数のガードと、ガード昇降装置755とを含む。
【0087】
外壁747は筒状であってスピンチャック75を取り囲む。複数の処理液カップは第1処理液カップ748、第2処理液カップ749、第3処理液カップ750を含む。第1処理液カップ748、第2処理液カップ749、第3処理液カップ750は、いずれもスピンチャック75と外壁747との間でスピンチャック75を囲む。
【0088】
第1処理液カップ748は第2処理液カップ749よりもスピンチャック75に近く位置する。第2処理液カップ749は、第1処理液カップ748よりも外方に位置する。第3処理液カップ750は、第2処理液カップ749よりも外方に位置する。
【0089】
複数のガードは基板Wの周囲に飛散した処理液を受け止める。複数のガードはスピンチャック75と外壁747との間でスピンチャック75を取り囲む。複数のガードは第1ガード751、第2ガード752、第3ガード753、第4ガード754を含む。
【0090】
第1ガード751、第2ガード752、第3ガード753、第4ガード754はガード昇降装置755の制御により駆動され、独立して任意に昇降する。かかる昇降により、使用された処理液は、例えばその種類に応じて、第1処理液カップ748、第2処理液カップ749、第3処理液カップ750に導かれる。ガード昇降装置755は第1ガード751、第2ガード752、第3ガード753、第4ガード754を、互いに独立して昇降させる。第3処理液カップ750は第2ガード752と共に昇降する。第3処理液カップ750は例えば第2ガード752と一体である。
【0091】
第1処理液カップ748、第2処理液カップ749、第3処理液カップ750のいずれもが、上向きに開いた環状の溝を形成する。第1処理液カップ748、第2処理液カップ749、第3処理液カップ750に導かれた処理液は、これらの溝を通じて図示されない回収装置または廃液装置に送られる。
【0092】
第1ガード751、第2ガード752、第3ガード753、第4ガード754のいずれもが、傾斜部756と案内部757とを含む。傾斜部756は円筒状であり外方に向かうにつれて上方から下方に向かう。案内部757は円筒状であり傾斜部756の下端から下方に延びる。四つの傾斜部756は上下に重なって位置する。四つの案内部757は、同軸的に位置する。
【0093】
第1ガード751、第2ガード752、第3ガード753、第4ガード754の上端部は、それぞれの傾斜部756の上端部で構成される。これらの上端部は基板Wおよびチャックベース711よりも大きな直径を有する。
【0094】
第1ガード751の案内部757は第1処理液カップ748内に、第2ガード752の案内部757は第2処理液カップ749内に、第3ガード753の案内部757は第3処理液カップ750内に、それぞれ出入り可能である。
【0095】
ガード昇降装置755が第1ガード751、第2ガード752、第3ガード753、第4ガード754の少なくとも一つを昇降させることにより、カップ77の展開および折り畳みが可能である。
【0096】
ガード昇降装置755は、第1ガード751の上端が基板Wより上方に位置する上位置と、第1ガード751の上端が基板Wより下方に位置する下位置との間で第1ガード751を昇降させ、上位置と下位置との間の任意の位置で第1ガード751を保持する機能を有する。ガード昇降装置755は、第2ガード752、第3ガード753、第4ガード754を同様に昇降させ、保持する機能を有する。
【0097】
基板Wへの処理液の供給および基板Wの乾燥は、複数のガードが、基板Wの周縁面に対向している状態で行われる。例えば第3ガード753を基板Wの周縁面に対向させる場合には、第1ガード751および第2ガード752が下位置に配置され、第3ガード753および第4ガード754が上位置に配置される。また、最も外側の第4ガード754を基板Wの周縁面に対向させる場合には、第4ガード754が上位置に配置され、第1ガード751、第2ガード752、第3ガード753が下位置に配置される。
【0098】
<スピンチャック75>
次に、スピンチャック75において採用される構成の詳細が説明される。図3は基板回転軸Qを含み、スピンチャック75の一部について方向Zに平行な断面を示す断面図である。
【0099】
チャックベース11はチャックベース711に採用される。固定ベース15はチャックベース11の下方に位置するが、図示の煩雑を避けるため、その占める位置のみが鎖線で示される。同様に、図示の煩雑を避けるため、チャックベース11を回転させるスピンモータ714も図示を省略した。
【0100】
チャック12は以下の例示では柱状であってチャックピン712に採用される。チャック12は必ずしもピン状である必要はない。
【0101】
チャック12はチャックベース11の外周側かつ主面111側において、チャックベース11を貫通する。主面111はチャックベース11の方向Z側の面であり、主面111の法線方向は方向Zに平行である。
【0102】
チャック12がチャックベース11を貫通する部位には軸受112が設けられる。軸受112はチャック12の方向Zに沿った移動(方向Zに沿った移動を「昇降」とも表現する)を可能とし、方向Zに平行なチャック回転軸Jを中心としたチャック12の回転を可能とする。軸受112はチャック12の方向Zに非平行な移動を抑制する。
【0103】
ここではチャック開閉機構713に相当する構成として、回転板30、カム板31、軸33、昇降板34、磁石35、回転シャフト36が例示される。回転板30はチャック12の下方に取り付けられる。回転シャフト36は回転板30を介してチャック12と同軸に取り付けられる。回転シャフト36は軸受37を介して昇降板22に取り付けられる。軸受37は、回転シャフト36がチャック回転軸Jを中心として回転可能に回転シャフト36を支持する。
【0104】
カム板31は昇降板34の上面に固定される。磁石35は昇降板34の下面に固定される。
【0105】
チャック12、回転板30、回転シャフト36の自重によって回転シャフト36は昇降板22を押し下げる。昇降板22は後述する磁力によって方向Zに沿って押し上げられる。よってチャック12は昇降板22の昇降に伴って昇降する。
【0106】
軸受112はチャック12の方向Zに非平行な移動を抑制するので、昇降板22が方向Zに非平行に移動することも間接的に抑制される。
【0107】
チャック12はその方向Z側に載置面122を有する。チャック12は載置面122よりも方向Z側に、更に把持部121を有する。載置面122は基板Wの載置に用いられ、把持部121は基板Wの把持に用いられる。
【0108】
チャック12は、主面111に対する把持部121の高さが互いに異なる第1位置Hおよび第2位置Lに位置することができる。チャック12は第1位置Hと第2位置Lとの間で移動(昇降)する。第2位置Lは第1位置Hよりも低い。具体的には、第1位置Hにおいて把持部121と主面111とを隔てる距離よりも、第2位置Lにおいて把持部121と主面111とを隔てる距離の方が短い。ただし、第1位置Hおよび第2位置Lのいずれにおいても、把持部121および載置面122は主面111から方向Zへ向けて露出する。図3はチャック12が第1位置Hにある場合を例示する。
【0109】
受け渡し工程はチャック12が第1位置Hにあるときに行われる。基板Wに対する処理液を用いた処理や、ガスを用いた処理は、第1位置Hおよび第2位置Lのいずれにおいても可能である。
【0110】
軸受37、回転シャフト36は、回転板30ひいてはチャック12がチャック回転軸Jを中心として回転する機能を有する、もしくは当該機能を補助する。
【0111】
回転板30には軸33が設けられる。例えば軸33は方向Zに対して垂直な方向に設けられる。図3では軸33は基板回転軸Qに対して外側に向けて突出する態様が例示される。
【0112】
カム板31の後述される機能によって軸33はチャック回転軸Jを中心として回転し、これに伴って回転板30がチャック回転軸Jを中心として回転する。回転板30がチャック回転軸Jを中心として回転することによってチャック12のチャック回転軸Jを中心とする回転(以下「チャック自転」と称する)が得られる。
【0113】
<チャック12の開閉>
以下、チャック自転によってチャック12が開閉、つまり第1姿勢CLと第2姿勢OPとの間を遷移することを説明する。
【0114】
図3は基板Wが載置面122に載置されている状態を示す。このとき、チャック12は第2姿勢OPをとっている。
【0115】
図4は方向Zとは反対の方向に沿って見たチャック12の上面図である。図4ではチャック12が第2姿勢OPをとっている状態が例示される。図4においては後の説明に用いるために、回転板30、軸33、及びカム板31の一部も併記した。
【0116】
チャック12が方向Dr2にチャック自転することにより第2姿勢OPから第1姿勢CLへと遷移する。チャック12が方向Dr1にチャック自転することにより第1姿勢CLから第2姿勢OPへと遷移する。
【0117】
図5は基板回転軸Qを含み、スピンチャック75の一部について方向Zに平行な断面を示す断面図である。図5はチャック12が第1位置Hにあって基板Wが把持部121に把持されている状態を示す。このとき、チャック12は第1姿勢CLをとっている。
【0118】
図6は基板Wが把持部121に把持された状態におけるチャック12および基板Wを部分的に示す断面図である。当該断面は方向Zに平行である。
【0119】
把持部121は凹面121aを有する。凹面121aに基板Wの周縁が嵌まることにより、基板Wは凹面121aによって上下から挟まれて、把持部121に把持される。
【0120】
例えば把持部121が合成樹脂を含む材料で形成されることは、基板Wの周縁が把持されるときに基板Wが割れにくい観点で望ましい。
【0121】
図7は方向Zとは反対の方向に沿って見たチャック12の上面図である。図7ではチャック12が第1姿勢CLをとっている状態が例示される。図7においては後の説明に用いるために、回転板30、軸33、及びカム板31の一部も併記した。
【0122】
図8は把持部121と基板Wの周縁の位置W0との位置関係を示す上面図である。把持部121は、チャック12が第1姿勢CLをとるときの位置が実線で、チャック12が第2姿勢OPをとるときの位置が鎖線で、それぞれ示される。
【0123】
図3および図5は、いずれもチャック12が第1位置Hにある状態を示す。チャック12が第1位置Hにあって第2姿勢OPをとるとき(図3参照)に基板Wが載置面122へ載置される(スピンチャック75への基板Wの受け渡し)。基板Wが載置面122に載置された後にチャック自転によって凹面121aが基板Wの周縁を方向Zに沿って案内し、把持部121が基板Wを把持する(図5参照)。
【0124】
あるいはチャック12が第1位置Hにあって第1姿勢CLをとっている状態から、チャック自転によって凹面121aが基板Wの周縁を方向Zと反対方向に沿って案内し、基板Wが載置面122に載置される。その後に基板Wは載置面122から除かれる(スピンチャック75からの基板Wの取り外し)。
【0125】
以上のことから、次の説明が可能である。スピンチャック75は、基板Wを保持する基板保持装置であって、チャックベース11と、複数のチャック12とを備える。チャックベース11はチャック12を搭載する。チャック12の各々が、基板Wの把持に用いられる把持部121を有する。チャックベース11の主面111は把持部121を露出させる。基板Wは把持部121に把持される。把持部121に把持された基板Wの回転にチャックベース11が用いられる。
【0126】
なお、上述の通り、チャック12がとる第1姿勢CLと第2姿勢OPとは、把持部121においてその凹面121aが向く方向が異なることで区別される。よって以下ではチャック12が第1姿勢CLと第2姿勢OPとをとることを、把持部121が第1姿勢CLをとる、あるいは第2姿勢OPをとる、と表現することもある。
【0127】
<チャック自転をもたらす機構>
図3および図5を参照して、固定ベース15には第1駆動磁石201、第2駆動磁石501が収納される。第1駆動磁石201は環20に対して方向Z側に、第2駆動磁石501は環50に対して方向Z側に、それぞれ固定される。
【0128】
図9は方向Zとは反対の方向に沿って見た、環20,50および第1駆動磁石201、第2駆動磁石501を部分的に示す上面図である。ここでは第1駆動磁石201、第2駆動磁石501が環状を呈する場合が例示される。第1駆動磁石201、第2駆動磁石501のいずれか一方、もしくはいずれもが、環状に配列された複数の磁石を用いて実現されてもよい。
【0129】
環20,50は方向Zに非平行な方向への移動が抑制されつつ昇降可能である。環20,50の昇降は第1駆動磁石201、第2駆動磁石501の昇降をもたらす。このような昇降を行なうための機構は、例えば特許文献1,4から公知であるので、その説明及び図示を省略する。
【0130】
磁石35は第2駆動磁石501との間に磁力が働く。より具体的には磁石35と第2駆動磁石501との間には斥力が働く。第2駆動磁石501の昇降は磁石35の昇降から影響を受けず、磁石35は第2駆動磁石501の昇降によって昇降する。よって以下では磁石35を第2従動磁石35とも称する。
【0131】
図10および図11は、いずれもカム板31、軸33、昇降板34、第2従動磁石35の位置関係を示す。図10および図11は、いずれもチャックベース11の外周側から基板回転軸Qへ向かう方向に沿って見た側面図である。
【0132】
図10は、図3および図4と同様、チャック12が第2姿勢OPをとる場合を示す。図11は、図5および図7と同様、チャック12が第1姿勢CLをとる場合を示す。
【0133】
カム板31には孔32が開けられている。孔32には軸33が嵌まる。図3図5図10図11では孔32がカム板31を貫通する場合が例示される。孔32は軸33が嵌まれば、貫通しなくてもよい。
【0134】
図3および図5においては軸33が周囲に伴う軸受38も図示されるが、図10および図11では軸受38は軸33に含めて考えられ、図示が省略される。
【0135】
孔32は方向Zおよび方向RDrのいずれに対しても傾斜する方向に長い。図3図4図5図7においては、軸33の孔32における位置を見やすくするために、カム板31は孔32の長手方向に沿った断面が描かれる。
【0136】
環50が方向Zに沿って移動(上昇)することにより、第2駆動磁石501が上昇する。第2駆動磁石501との間に働く磁力による斥力により、第2駆動磁石501の上昇が第2従動磁石35の上昇をもたらす。第2従動磁石35の上昇は、昇降板34を上昇させる。昇降板34の上昇はカム板31を上昇させる。
【0137】
カム板31の上昇は孔32を上昇させる。チャック12、回転板30、および回転シャフト36の自重によって軸33の上昇は抑制される。他方、軸33のチャック回転軸Jを中心とした回転が可能であるので、孔32の上昇は軸33および回転板30の回転、ひいてはチャック12のチャック自転をもたらす。具体的には孔32の上昇によって軸33は孔32に対して相対的に下降し、かかる相対的な下降によって孔32は軸33を方向Dr1に向けて案内する。軸33が方向Dr1に回転することにより、チャック12は方向Dr1へチャック自転する。
【0138】
以上のようにして、第2駆動磁石501が上昇することにより、方向Dr1へのチャック自転がもたらされ、ひいてはチャック12が第2姿勢OPをとる(図8の鎖線で示された把持部121も参照)。
【0139】
環50が方向Zと反対の方向へ移動(下降)することにより、第2駆動磁石501が下降する。第2駆動磁石501の下降により、第2従動磁石35は、第2駆動磁石501との間に働く磁力による斥力をうけつつ、カム板31、昇降板34、第2従動磁石35の自重によって下降する。
【0140】
第2従動磁石35の下降は、昇降板34、カム板31を下降させる。チャック12、回転板30、および回転シャフト36は第1駆動磁石201と第1従動磁石202との間に働く斥力(後に<チャック12の昇降をもたらす機構>において説明される)によって軸33の下降は抑制される。他方、軸33のチャック回転軸Jを中心とした回転が可能であるので、孔32の下降は軸33および回転板30の回転、ひいてはチャック12のチャック自転をもたらす。具体的には孔32の下降によって軸33は孔32に対して相対的に上昇し、かかる相対的な上昇によって孔32は軸33を方向Dr2に向けて案内する。軸33が方向Dr2に回転することにより、チャック12は方向Dr2へチャック自転する。
【0141】
以上のようにして、第2駆動磁石501が下降することにより、方向Dr2へのチャック自転がもたらされ、ひいてはチャック12が第1姿勢CLをとる(図8の実線で示された把持部121も参照)。
【0142】
軸33は孔32に嵌まるので、軸33の移動範囲は孔32の方向Z側の端(以下「上端」とも称す)と孔32の方向Zとは反対側の端との間に制限される。軸33は孔32によって案内されてチャック回転軸Jを中心として回転する。よって軸33が回転可能な範囲、ひいてはチャック12がチャック自転で回転可能な範囲は、孔32が開けられたカム板31と軸33との位置関係で決定される。
【0143】
このようなカム板31の昇降によるチャック自転には、例えば特許文献1に開示された技術が適用されてもよい。あるいはカム板が用いられずに、例えば特許文献4に開示されたように磁石の斥力と引力とを用いてチャック自転が得られてもよい。また孔32を昇降させる観点からは昇降板34が省略されてもよい。
【0144】
上述のような第2駆動磁石501の昇降は、制御装置73の制御のもと、不図示の機構によって実現される。
【0145】
なお、チャック自転は当該範囲の全てに亘って行われるとは限らない。基板Wが把持部121に把持される場合には、チャック自転が孔32による軸33の回転の抑止ではなく、基板Wによって止められ得るからである。
【0146】
つまりチャック12が第1姿勢CLをとる場合であっても、基板Wを把持するときよりも把持しないときの方が方向Dr2へ多く回転する場合がある。チャック12の第1姿勢CLが基板Wを把持するか否かに依存することについて、後の<基板Wの脱落の検知>で説明される。
【0147】
<チャック12の昇降をもたらす機構>
第1駆動磁石201はチャックベース11に収納された磁石202との間で磁力を働かせる。より具体的には磁石202と第1駆動磁石201との間には斥力が働く。第1駆動磁石201の昇降は磁石202の昇降から影響を受けず、磁石202は第1駆動磁石201の昇降によって昇降する。よって以下では磁石202を第1従動磁石202とも称する。第1従動磁石202は昇降板22の下面に固定される。
【0148】
環20が上昇することにより、第1駆動磁石201が上昇する。第1駆動磁石201との間に働く磁力に由来する斥力により、第1駆動磁石201の上昇が第1従動磁石202の上昇をもたらす。第1従動磁石202の上昇は、昇降板22を上昇させる。昇降板22の上昇はチャック12を上昇させる。このような第1駆動磁石201の上昇により、チャック12が上昇し、チャック12は第1位置Hへ移動する。
【0149】
環20が下降することにより、第1駆動磁石201が下降する。第1駆動磁石201の下降により、第1従動磁石202は、第1駆動磁石201との間に働く磁力に由来する斥力をうけつつ、チャック12、回転板30、および回転シャフト36の自重によって下降する。
【0150】
第1従動磁石202の下降は、昇降板22を下降させる。昇降板22の下降はチャック12を下降させる。このような第1駆動磁石201の下降より、チャック12が下降し、チャック12は第2位置Lへ移動する。
【0151】
このようなチャック12の昇降には、例えば特許文献3に開示された技術が適用されてもよい。
【0152】
チャック12、回転板30、および回転シャフト36の自重によって軸33の上昇は抑制される。また第1駆動磁石201と第1従動磁石202との間に働く斥力は当該自重を支える程度に大きいので、軸33の下降も抑制される。よって軸33、ひいては回転板30の回転は、チャック12の昇降には影響を与えない。
【0153】
回転板30の昇降は方向Zに沿い、回転板30の回転は方向Zに平行なチャック回転軸Jを中心とする。よってチャック12の昇降は回転板30の回転、ひいてはチャック自転には影響を与えない。
【0154】
図12は基板回転軸Qを含み、スピンチャック75の一部について方向Zに平行な断面を示す断面図である。図12は、チャック12が第2位置Lにあって第1姿勢CLをとる場合を例示する。図5と比較して図12においては、第1駆動磁石201が下降した状態(主面111から遠ざかった位置にある)が示される。
【0155】
通常、チャック12が第2位置Lにあるときには基板Wを把持した状態が採用されるので、チャック12の全てが第2姿勢OPをとることはない。但し、後に、<基板Wの“持ち替え”>で説明されるように、チャック12の幾つかが第1姿勢CLをとることを前提として、他の幾つかが第2姿勢OPをとる場合もある。
【0156】
上述のような第1駆動磁石201の昇降は、制御装置73の制御のもと、不図示の機構によって実現される。
【0157】
以上のことから、次の説明が可能である。スピンチャック75は第1機構と第2機構とを備える。第1機構は、第1駆動部と、第1駆動磁石201と、第1従動磁石202とを有する。第2機構は、第2駆動部と、第2駆動磁石501と、第2従動磁石35とを有する。
【0158】
第1駆動部は、チャック12を駆動して、第1位置Hと第2位置Lとの間でチャック12を移動させる。第1位置Hにおける把持部121の主面111に対する高さは、第2位置Lにおける当該高さよりも高い。第1駆動部は、昇降板22、回転シャフト36、回転板30によって実現される。
【0159】
第1駆動磁石201は可動であり、特に昇降可能である。第1従動磁石202は第1駆動部に固定される。第1従動磁石202は例えば昇降板22に固定され、第1駆動磁石201と対向する。第1従動磁石202は第1駆動磁石201の移動に従って移動する。典型的には第1従動磁石202は第1駆動磁石201の昇降に従って昇降する。第1従動磁石202は、第1駆動部を動作させる機能を担う。
【0160】
第2駆動部は、チャック12を駆動して、第1姿勢CLと第2姿勢OPとの間でチャック12を遷移させる。第1姿勢CLにおいては把持部121が基板Wの把持を可能とする。第2姿勢OPにおいては把持が解除される。第2駆動部は、昇降板34、カム板31、軸33、回転板30、回転シャフト36によって実現される。
【0161】
第2駆動磁石501は可動であり、特に昇降可能である。第2従動磁石35は第2駆動部に固定される。第2従動磁石35は例えば昇降板34に固定され、第2駆動磁石501と対向する。第2従動磁石35は第2駆動磁石501の移動に従って移動する。典型的には第2従動磁石35は第2駆動磁石501の昇降に従って昇降する。第2従動磁石35は、第2駆動部を動作させる機能を担う。
【0162】
回転板30、回転シャフト36は第1駆動部の機能を実現する構成要素でもあり、第2駆動部の機能を実現する構成要素でもある。これらは昇降することによってチャック12を第1位置Hと第2位置Lとの間で移動させ、回転することによってチャック12を第1姿勢CLと第2姿勢OPとの間で遷移させるからである。
【0163】
また、次の説明が可能である。把持部121は凹面121aを含む。凹面121aは、基板Wが把持されるときに基板Wの周縁を把持する。チャック自転が凹面121aの開口する方向を移動させる。チャック自転は、チャック回転軸Jを中心とした方向Dr1,Dr2への、チャック12の回転である。チャック回転軸Jは、チャックベース11(より具体的にはその主面111)の法線方向である方向Zに平行である。
【0164】
第2駆動磁石501の方向Zにおける移動(ここでは昇降)が、第2従動磁石35を方向Zにおいて移動させる。第2駆動部は、方向Zにおける第2従動磁石35の移動をチャック自転に変換する。
【0165】
このような構造を備えるスピンチャック75は、チャック12の昇降と、チャック12による基板Wの把持およびその解除を容易に行う。
【0166】
<磁力の大きさの関係>
チャック12の上昇は、回転板30をも上昇させるので、軸33を介してカム板31ひいては第2従動磁石35をも上昇させる。よってチャック12が第1位置Hにあってもチャック12が第2姿勢OPをとることができるには、下記の関係があることがのぞましい。
【0167】
便宜上、第2駆動磁石501と第2従動磁石35との間に働く磁力について、チャック12が第1位置Hにあって第2姿勢OPをとるときの斥力f1、チャック12が第2位置Lにあって第2姿勢OPをとるときの斥力f2、チャック12が第1位置Hにあって第1姿勢CLをとるときの斥力f3、チャック12が第2位置Lにあって第1姿勢CLをとるときの斥力f4、を導入して説明する。
【0168】
チャック12が第1位置Hおよび第2位置Lのいずれにあるかに拘わらず、チャック12が第2姿勢OPをとるときには、チャック12が第1姿勢CLをとるときと比較して、カム板31が軸33に対して相対的に上方に位置する。よって斥力f1,f2は斥力f3,f4よりも大きい。具体的には図3図5との比較で理解されるように、第2駆動磁石501が上昇して主面111へ近づくことで、斥力f1は斥力f3よりも大きい。
【0169】
チャック12が第1姿勢CLをとるときには、チャック12が第1位置Hにあるときの斥力f3よりも、第2位置Lにあるときの斥力f4の方が大きい。軸33はチャック12の昇降に伴って昇降するので、第2駆動磁石501は昇降しなくてもチャック12が第2位置Lにあるとき(図12参照)の斥力f4は、チャック12が第1位置Hにあるとき(図5参照)の斥力f3よりも大きい。
【0170】
なお、幾つかのチャック12は、第1位置Hにあるときのみならず第2位置Lにあるときにも第2姿勢OPをとる場合も想定される(後述する<基板Wの”持ち替え”>参照)。この場合も同様に考えて、斥力f1よりも斥力f2の方が大きい。
【0171】
<基板処理の流れ>
図13は本実施の形態における基板処理工程、具体的にはチャックベース11に保持された基板Wが処理される工程を例示するフローチャートである。かかるフローチャートは制御装置73の制御のもとで実行される。
【0172】
第1姿勢CLと第2姿勢OPとは把持部121の凹面121aが開口する向きによって区別できるので、図13においては「把持部121は第1姿勢CL」あるいは「把持部121は第2姿勢OP」と記載される。
【0173】
ステップS101においてチャック12が第1位置Hにおいて第2姿勢OPをとる。ステップS101が実行された後、ステップS102において基板Wが載置面122へ載置される。具体的にはセンターロボット708によって基板Wが載置面122へ載置される。ステップS102が実行された直後の状態が図3に示される。
【0174】
ステップS102が実行された後、ステップS103において、チャック12が第1位置Hに維持されたまま、第1姿勢CLをとる。これにより基板Wは把持部121に把持される。ステップS103が実行された直後の状態が図5に示される。
【0175】
ステップS103が実行された後、ステップS104において基板Wが回転し始める。具体的には基板Wが把持された状態で、チャックベース11が基板回転軸Qを中心として方向RDrに回転する。
【0176】
ステップS104が実行された後、ステップS105においてチャック12が第1姿勢CLを維持したまま、第2位置Lへ移動する。具体的には基板Wが把持されかつ回転した状態で、チャック12が第2位置Lへ移動する。ステップS105が実行されている状態が図12に対応する(但しチャックベース11が回転していることは明示されない)。
【0177】
ステップS105が実行された後、ステップS106においてチャック12が第1姿勢CLを維持したまま、第1位置Hへ移動する。具体的には基板Wが把持されかつ回転した状態で、チャック12が第1位置Hへ移動する。
【0178】
ステップS106が実行された後、ステップS107において基板Wの回転が停止される。具体的には基板Wが把持された状態で、チャックベース11の回転が停止する。ステップS107が実行された直後の状態が図5に示される。
【0179】
ステップS107が実行された後、ステップS108において、チャック12が第1位置Hに維持されたまま、第2姿勢OPをとる。これにより基板Wは載置面122に載置される。ステップS108が実行された直後の状態が図3に示される。
【0180】
ステップS108が実行された後、基板Wが載置面122から取り外される。具体的にはセンターロボット708によって基板Wが載置面122から取り外される。
【0181】
図13において処理液を使用する工程はステップS120によって表される。ステップS120はステップS103の実行後のいずれかのタイミングで開始し、その後、ステップS107の実行前のいずれかのタイミングで終了する。
【0182】
図13において、基板Wに対してガスを供給する工程はステップS110によって表される。ステップS110はステップS102の実行後のいずれかのタイミングで開始し、その後、ステップS109の実行前のいずれかのタイミングで終了する。
【0183】
図13において、ステップS2が併記される。ステップS2は、主面111の上方で基板Wが保持されたまま、基板Wを把持するチャック12が交代される工程である。当該工程は便宜的に基板Wの「持ち替え」と仮称される。ステップS2はステップS102の実行後のいずれかのタイミングで開始し、その後、ステップS108の実行前のいずれかのタイミングで終了する。
【0184】
<処理液の使用とガスの供給>
図14図13で示されたフローチャートの一部、具体的には、ステップS110,S120の動作を例示する断面図である。当該断面は図5に対応し、図14は主面111およびその近傍を拡大して示す。
【0185】
図14はステップS104の実行後、ステップS105が実行される前に、ステップS110,S120のいずれもが実行されている状態を例示する。
【0186】
流体供給機構42は、流体供給機構742として機能する。本実施の形態では流体供給機構42は回転しない。方向Zに沿って延在して主面111側に開口する流体供給用の管421が流体供給機構42に開いている。管421は薬液配管743、リンス液配管745、ガス配管781(図2参照)に連通する。
【0187】
図14では、第1位置Hにあるチャック12によって基板Wが把持されており、薬液ノズル734から薬液F1が第1面W1に供給され、管421から流体F2が供給される場合が例示される。薬液F1に替えてリンス液が第1面W1に供給されてもよい。流体F2は、薬液、リンス液、ガスのいずれであってもよい。第1位置Hにあるチャック12によって基板Wが把持されている状態で、流体F2の供給を行わなくてもよい。
【0188】
図15図13で示されたフローチャートの一部、具体的には、ステップS120の動作を例示する断面図である。当該断面は図12に対応し、図15は主面111およびその近傍を拡大して示す。
【0189】
図15はステップS104の実行後、ステップS120が実行されて終了し、その後に処理液が使用されずに基板Wが回転したまま、ステップS105が実行されてステップS106が実行される前にステップS110が実行されている状態を例示する。
【0190】
第2位置Lにあるチャック12によって把持された基板Wに対し、その第2面W2へ例えば流体F2としてガスが供給される。チャック12が第2位置Lにあって第2面W2と管421とを隔てる距離が、チャック12が第1位置Hにあって第2面W2と管421とを隔てる距離よりも短い状況で、ガスが第2面W2へ供給されることは、少なくとも下記の二点において有利である。その第1は、主面111と第2面W2との間でガスに乱流が発生しにくい点である。その第2は、ガスの風速を大きくし易く、第1面W1からの処理液の回り込みを排除しやすい点である。
【0191】
チャック12が第2位置Lにあって第2面W2と主面111とを隔てる距離が、チャック12が第1位置Hにあって第2面W2と主面111とを隔てる距離よりも短い状況で、処理液を第1面W1へ供給することは、少なくとも下記の二点において不利である。その第1は第2面W2と主面111との両方に処理液が付着しやすい点である。その第2は主面111に不純物や汚れが付着したとき、第2面W2が汚染されやすい点である。
【0192】
このような有利な二点と不利な二点とを考慮すれば、把持された基板Wに対して薬液を使用し、ガスを供給する工程の望ましい態様は、次の様に例示される。(a1)チャック12が第1位置Hにある状態で第1面W1に対する処理液の供給が開始され、停止される。(a2)その後、チャック12が第2位置Lにある状態で、第2面W2へガスが供給される。
【0193】
工程(a1),(a2)の間で基板Wの回転が停止すると、工程(a1)で第1面W1を覆う処理液が、部分的に第1面W1に存在しなくなる可能性が高まる。このような処理液の部分的な不存在は、いわゆるウォーターマークの発生を招来しやすい。よってウォーターマークの発生を抑制する観点から、上記工程(a1),(a2)の間で基板Wは回転が維持されることは更に有利である。本実施の形態ではステップS104の実行後、ステップS107が実行されるまでは基板Wの回転は維持されているので、基板Wが回転したままで工程(a1),(a2)を実行することができる。
【0194】
なお、本実施の形態では工程(a1)において第2面W2へ流体F2が供給されることは排除されない(図14参照)。この場合において流体F2が処理液であるかガスであるかは不問である。
【0195】
例えば、工程(a1)に対応して図14に示される流体F2は処理液であり、工程(a2)に対応して図15に示される流体F2がガスであってもよい。この場合第2面W2には管421から、基板Wが主面111に対して高く把持されている状態で処理液が供給され、基板Wが主面111に対して低く把持されている状態でガスが供給される。当該ガスは第2面W2に供給された処理液の乾燥に資する。
【0196】
例えば、工程(a1)に対応して図14に示される流体F2と、工程(a2)に対応して図15に示される流体F2とのいずれもがガスであってもよい。
【0197】
あるいはチャンバー74はスピンチャック75と、処理液供給機構76と共に第1面W1へガスを供給する機構を備えてもよい。この場合、工程(a1)に替えて、次の工程を採用することができる。(b1)チャック12が第1位置Hにある状態で、第1面W1に対するガスの供給と第2面W2に対する処理液の供給が開始され、停止される。この場合、工程(a2)において第2面W2へ供給されるガスは、工程(b1)において第2面W2へ供給された処理液の乾燥に資する。
【0198】
以上のことから、下記の説明が可能である。基板Wの第2面W2は、第1面W1よりもチャックベース11、より具体的には主面111に近い。チャック12が第1位置Hにあって基板Wが把持部121に把持されているとき、第1工程では第1面W1および第2面W2の少なくとも一方に対して処理液の供給が行われる。第2工程では、第1工程と共に、あるいは第1工程が終了してから、第2面W2に対するガスの供給が行なわれる。
【0199】
第2工程において、基板Wは把持部121に把持されながらチャックベース11によって回転しつつ、チャック12によって把持部121が第1位置Hから第2位置Lへ移動する。あるいは基板Wは把持部121に把持されながらチャックベース11によって回転しつつ、チャック12の移動によって基板Wがチャックベース11へ近づく。
【0200】
このように、基板Wに対する処理工程において、基板Wを回転させながらもチャックベース11と基板Wとの距離が変更される。
【0201】
<基板Wの“持ち替え”>
図16は基板回転軸Qを含み、スピンチャック75の一部について方向Zに平行な断面を示す断面図である。基板Wの持ち替えを可能とするチャック12は、チャック12Aとチャック12Bとを含む。以下、チャック12としてチャック12Aとチャック12Bとの複数、典型的には3個のチャック12Aと3個のチャック12Bとが設けられる場合が例示される。
【0202】
チャック12Aは図3図15の説明において用いられたチャック12と同じ構成を有する。
【0203】
チャック12Bもチャック12Aと同様の把持部121および載置面122を有し、基板Wを載置したり、把持したりする。具体的にはチャック12Bはチャック12Aと同じ第1機構を有し、異なる第2機構を有する。
【0204】
チャック12Bもチャック12Aと同様の第1従動磁石202、昇降板22、回転シャフト36、回転板30を有する。
【0205】
チャック12Bの第2機構は第2駆動部と、第2駆動磁石601と、第2従動磁石65とを有する。第2駆動部は、チャック12Bを駆動して、第1姿勢CLと第2姿勢OPとの間でチャック12Bを遷移させる。
【0206】
第2駆動部は、昇降板64、カム板61、軸63、回転板30、回転シャフト36によって実現される。
【0207】
第2駆動磁石601は可動であり、特に昇降可能である。第2駆動磁石601は環60に対して方向Z側に固定される。第2駆動磁石601は環状に配列された複数の磁石を用いて実現されてもよい。
【0208】
環60は方向Zに非平行な方向への移動が抑制されつつ昇降可能である。環60の昇降は第2駆動磁石601の昇降をもたらす。このような昇降を行なうための機構は、例えば特許文献1,4から公知であるので、その説明及び図示を省略する。
【0209】
第2従動磁石65が第2駆動部に固定される。第2従動磁石65は例えば昇降板64に固定され、第2駆動磁石601と対向する。第2従動磁石65は第2駆動磁石601の移動に従って移動する。典型的には第2従動磁石65は第2駆動磁石601の昇降に従って昇降する。第2従動磁石65は、第2駆動部を動作させる機能を担う。
【0210】
昇降板64、カム板61、軸63は、それぞれチャック12Aの昇降板34、カム板31、軸33と同様に構成される。カム板61には孔62が開けられている。孔62には軸33が嵌まる。孔62は方向Zおよび方向RDrのいずれに対しても傾斜する方向に長い。図16においては、軸63の孔62における位置を見やすくするために、カム板61は孔62の長手方向に沿った断面が描かれる。
【0211】
チャック12Aと同様に、チャック12Bにおいても、第2駆動磁石601の昇降によって第2従動磁石65、昇降板64、カム板61が昇降し、軸63ひいては回転シャフト36がチャック回転軸Jを中心として回転する。
【0212】
第2駆動磁石501,601は独立に昇降する。環50,60の動作が干渉することを避けるため、環50および第2駆動磁石501、第2従動磁石35、カム板31、昇降板34、軸33は回転シャフト36よりもチャックベース11の外周側に設けられ、環60および第2駆動磁石601、第2従動磁石65、カム板61、昇降板64、軸63は回転シャフト36よりもチャックベース11の内周側に設けられる。
【0213】
図17は方向Zとは反対の方向に沿って見た、環20,50,60および第1駆動磁石201、第2駆動磁石501,601を部分的に示す上面図である。ここでは第1駆動磁石201、第2駆動磁石501,601が環状を呈する場合が例示される。
【0214】
図18は方向Zとは反対の方向に沿って見た、チャックベース11の上面図である。それぞれ3個のチャック12A,12Bが環状に等間隔に配置される場合が例示される。環20,50,60も併記されるが、これらはチャックベース11よりも下方で固定ベース15に収納されるので隠れ線たる破線で表現される。
【0215】
図19は方向Zとは反対の方向に沿って見たチャック12Bの上面図である。図19ではチャック12Bが第1姿勢CLをとっている状態が例示される。図19において回転板30、軸63、及びカム板61の一部も併記した。図19においては、軸63の孔62における位置を見やすくするために、カム板61は孔62の長手方向に沿った断面が描かれる。
【0216】
図20はカム板61、軸63、昇降板64、第2従動磁石65の位置関係を示す。図20は基板回転軸Qからチャックベース11の外周側へ向かう方向に沿って見た側面図である。図20はチャック12Bが第1姿勢CLをとる場合を示す。
【0217】
図16および図19においては軸63が周囲に伴う軸受68も図示されるが、図20では軸受68は軸63に含めて考えられ、図示が省略される。
【0218】
図21は基板Wの持ち替えを行うステップS2(図13参照)の具体的な動作を例示するフローチャートである。
【0219】
ステップS201において、チャック12Aの把持部121が第2姿勢OPをとり、チャック12Bの把持部121が第1姿勢CLをとる。これにより基板Wはチャック12Aには把持されず、チャック12Bに把持される。図16はステップS201が実行された直後の状態を示す。
【0220】
基板Wは、3個のチャック12Bによって把持されるので、チャック12Aの載置面122とは接触しない。
【0221】
例えばステップS102が実行された後、ステップS103が実行される前には、ステップS101において把持部121が第2姿勢OPをとっていたので、チャック12A,12Bのいずれの把持部121も第2姿勢OPをとっている。ステップS103が実行される前にステップS2が開始するときには、ステップS201が実行されることにより、チャック12Aのチャック自転は行われず、チャック12Bのチャック自転が行われる。
【0222】
ステップS103あるいはステップS104が実行された後にステップS2が開始するときには、ステップS201が実行されることにより、チャック12Bのチャック自転は行われず、チャック12Aのチャック自転が行われる。
【0223】
ステップS201の実行後、ステップS202においてチャック12Aの把持部121が第1姿勢CLをとり、チャック12Bの把持部121も第1姿勢CLをとる。よってチャック12A,12Bのいずれによっても基板Wが把持される。ステップS202が実行されることにより、チャック12Bのチャック自転は行われず、チャック12Aのチャック自転が行われる。
【0224】
ステップS202の実行後、ステップS203においてチャック12Aの把持部121が第1姿勢CLをとり、チャック12Bの把持部121が第2姿勢OPをとる。これにより基板Wはチャック12Bには把持されず、チャック12Aに把持される。ステップS203が実行されることにより、チャック12Aのチャック自転は行われず、チャック12Bのチャック自転が行われる。基板Wは3個のチャック12Aによって把持されるので、チャック12Bの載置面122とは接触しない。ステップS203の実行によってステップS2は終了する。
【0225】
ステップS201およびステップS203の実行により、基板Wがチャック12Bによって把持された状態から、基板Wがチャック12Aによって把持された状態へ遷移する。このようにしてステップS2において基板Wの持ち替えが実行される。
【0226】
基板Wの持ち替えは、基板Wに対して供給された処理液が乾燥する観点で有利である。チャック12Bによって把持された状態で基板Wが回転して乾燥されるとき、チャック12Bの把持部121と基板Wとの間およびその近傍においては、処理液が乾燥しにくい傾向がある。そこで、基板Wを把持するチャック12をチャック12Bからチャック12Aへ変更することにより、基板Wのうち、チャック12Bの把持部121によって把持されていた部位およびその近傍における処理液の乾燥が助長される。
【0227】
よってステップS2が実行される好ましいタイミングの一つとして、ステップS120の終了後(つまり処理液を用いた工程が終了してから)、ステップS107の実行前(つまり基板Wの回転が維持されている状態)であることが挙げられる。
【0228】
そして基板Wの回転が維持しているときにステップS2が実行されること、および基板Wが回転しているときには基板Wは把持されることに鑑みれば、ステップS201とステップS203との間でステップS202が実行されることは好適である。
【0229】
チャック12A,12Bのいずれもが第2位置Lにある場合において、基板Wの持ち替えを行うことも可能である。図22は、基板回転軸Qを含み、スピンチャック75の一部について方向Zに平行な断面を示す断面図である。図22は、チャック12A,12Bがいずれも第2位置Lにあって、チャック12Aの把持が解除され、チャック12Bによって基板Wが把持される状態を示す。
【0230】
以上のことから、次の説明が可能である。チャックベース11によって基板Wが回転し、かつチャック12A,12Bのいずれもが第1位置Hにある場合もしくはチャック12A,12Bのいずれもが第2位置Lにある場合において:チャック12Aが第2姿勢OPをとるときにはチャック12Bは第2姿勢OPをとらずに第1姿勢CLをとり(S201);チャック12Bが第2姿勢OPをとるときにはチャック12Aは第2姿勢OPをとらずに第1姿勢CLをとり(S203);チャック12A,12Bのいずれもが第1姿勢CLをとり得る(S202)。
【0231】
ステップS201,S203においてチャック12A,12Bを互いに入れ替えた工程を採用することも可能である。
【0232】
チャック12A,12Bのいずれに対しても、第1位置Hおよび第2位置Lをとらせるための機構が同一であり、第1姿勢CLおよび第2姿勢OPをとらせるための機構が類似する。よってチャック12A,12Bのいずれをもチャック12と把握して、上記<磁力の大きさの関係>と同様に次の説明が可能である。斥力f1,f2は斥力f3,f4よりも大きい。斥力f1は斥力f3よりも大きい。斥力f3よりも斥力f4の方が大きい。斥力f4は、斥力f3よりも大きい。斥力f1よりも斥力f2の方が大きい。つまりf2>f1>f4>f3の関係があることが望ましい。
【0233】
環50,60の動作が干渉することを避けるため、環60および第2駆動磁石601、第2従動磁石65、カム板61、昇降板64、軸63は、環50および第2駆動磁石501、第2従動磁石35、カム板31、昇降板34、軸33よりもチャックベース11の外周側に設けられてもよい。
【0234】
<基板Wの脱落の検知>
チャック12は、第2姿勢OPから第1姿勢CLへ遷移するとき、チャック自転して把持部121が方向Dr1へと回転する。基板Wが把持部121に把持される場合にはチャック自転が基板Wによって止められる場合もある。以下では、チャック自転が基板Wによって止められることを基板Wによる「係止」と称する。
【0235】
チャック12が第1姿勢CLをとるときの把持部121の向きは、基板Wによる係止若しくは軸33が孔32の上端に到達することで制限される。以下、チャック12が第1姿勢CLをとって基板Wが把持されているときには軸33が孔32の上端に到達しない場合を想定する。図5図7および図11はかかる場合を例示しており、軸33と孔32の上端との間は空いている。基板Wが把持されずにチャック12が第1姿勢CLをとるときには、チャック自転は軸33が孔32の上端に到達して止まる。
【0236】
図23は、基板Wによる係止がない場合に、第1姿勢CLをとるチャック12を示す上面図である。図23においても図7と同様に、回転板30、軸33、及びカム板31の一部も併記し、カム板31は孔32の方向に沿った断面が描かれる。チャック12が第1姿勢CLをとるときに、基板Wが把持されていなければ基板Wによる係止がなく、軸33が孔32の上端に到達する。
【0237】
図24は把持部121と基板Wの周縁の位置W0との位置関係を示す上面図である。図24において鎖線は基板Wを把持するときの把持部121および位置W0を示し、図8において実線で示された状態を示し、図7に対応する。図24において実線は基板Wを把持しないときの把持部121を示し、図23に対応する。
【0238】
図25はカム板31、軸33、昇降板34、第2従動磁石35の位置関係を示す側面図である。図25において鎖線は基板Wを把持するときの軸33を示し、図11において実線で示された状態を示し、図7に対応する。図25において実線は基板Wを把持しないときの軸33を示し、図23に対応する。
【0239】
図24に示されるように、把持部121が基板Wを把持するか否かにより、チャック12がとる第1姿勢CLは相違する。具体的には、基板Wが把持されるときにはチャック回転の方向Dr2へ回転角度が小さい。このような回転角度の相違は、図25から理解されるように、昇降板34と軸33との相対的な位置関係の相違を招来する。
【0240】
軸33の昇降は、軸33のチャック回転軸Jを中心とした回転の影響を受けない。よってチャック12が第1姿勢CLをとる場合、基板Wが把持されているときの昇降板34の位置は、基板Wが把持されていないときの昇降板34の位置よりも方向Z側にある。
【0241】
従って、昇降板34の方向Zに沿った位置を検出することにより、チャック12が第1姿勢CLをとる場合に、基板Wが把持されているか否かを検出することができる。例えば基板Wを把持していたチャック12から基板Wが落下したことが検出される。
【0242】
以上のことから次の説明が可能である。チャック12が第2姿勢OPから第1姿勢CLへと遷移するときのチャック自転は、基板Wが把持部121に把持されることによって制限される。そして昇降板34の位置を検出することで、第1姿勢CLをとるチャック12に基板Wが把持されているか否かが検出できる。第2従動磁石35が昇降板34に固定されていることに鑑みれば、昇降板34の位置の検出は、間接的に第2従動磁石35の位置を検出する。
【0243】
このような基板Wの把持の有無は、チャック12が第1位置Hにあるか第2位置Lにあるかに拘わらずに検出できる。図26および図27は、基板回転軸Qを含み、スピンチャック75の一部について方向Zに平行な断面を示す断面図である。図26は、チャック12が第1位置Hにあって第1姿勢CLをとり、基板Wが把持されていない場合を例示する。図27は、チャック12が第2位置Lにあって第1姿勢CLをとり、基板Wが把持されていない場合を例示する。
【0244】
図28は基板Wが把持されているか否かを検出する構成を例示する断面図である。図28は昇降板34、第2駆動磁石501およびそれらの近傍を示す。チャックベース11の固定ベース15側の一部は透光性の窓11aになっている。固定ベース15のチャックベース11側の一部は透光性の窓15aになっている。
【0245】
固定ベース15には自身から昇降板34までの距離を測定する測距装置81が設けられる。測距装置81は光L1を昇降板34の領域34aに照射し、領域34aが光L1を反射して発生した光L2を受光する。
【0246】
領域34aは昇降板34のうち第2従動磁石35が設けられていない領域であり、窓11a,15aと共に測距装置81と方向Zに沿って並ぶ。光L1は測距装置81から窓15a,11aをこの順に透過し、領域34aで反射して光L2が発生し、光L2は窓11a,15aをこの順に透過し、測距装置81で受光される。
【0247】
光を測定対象に照射し、当該測定対象によって反射された光を受光し、当該測定対象までの距離を測定する技術は公知であり、測距装置81は公知の技術で構成されるので、詳細な説明は省略される。当該距離の測定は制御装置73のもとで行われる。
【0248】
上述の様に昇降板34は孔32を昇降させる観点からは省略できるが、第2従動磁石35の位置を検出する観点からは設けられることが望ましい。
【0249】
図29は基板Wが落下したことを検出する動作(図29および以下において「基板落下検出」と表現)を例示するフローチャートである。かかるフローチャートは制御装置73によって実行される。
【0250】
ステップS301において、チャック12が第1姿勢CLをとるか、第2姿勢OPをとるかが判断される。かかる判断は図13に示された基板処理工程において実行されるステップに依存する。上述の様に基板処理工程は制御装置73の制御のもとで実行されるので、ステップS301における判断を制御装置73が実行できる。
【0251】
ステップS301においてチャック12が第2姿勢OPにあると判断された場合、ステップS301が再び実行される。基板Wが落下したことは、基板Wが把持されているべき状況において基板Wが把持されていないと判断されることによって、検出されるからである。
【0252】
図13に示されたフローチャートのステップS103が実行された後、ステップS108が実行される前に、基板落下検出が実行されるとき、ステップS301は省略されてもよい。ステップS103の実行によってチャック12は第1姿勢CLをとるからである。
【0253】
ステップS301においてチャック12が第1姿勢CLにあると判断された場合、ステップS302が実行される。ステップS302においては、測定距離の差分が取得される。ここで「測定距離」とは、測距装置81によって測定された測距装置81から昇降板34までの距離である。測定距離は逐次に制御装置73に了知され、その値の時間的変動が、測定距離の差分として制御装置73に取得される。
【0254】
測定距離の差分は、昇降板34の変動を、ひいてはカム板31、孔32、第2従動磁石35の変動を示す。
【0255】
ステップS302の実行後、ステップS303において差分と閾値とが比較される。差分が閾値よりも大きいことは、昇降板34が閾値よりも大きく変動したことを示す。チャック12が第1姿勢CLをとるときには通常は基板Wが把持されていることに鑑みれば、昇降板34が閾値よりも大きく変動したことは、基板Wが落下したことを示す指標となる。
【0256】
よってステップS303において差分が閾値よりも大きいと判断されたとき(図29において「Y」と表記)、ステップ304において基板Wは落下していると判断される。ステップS303において差分が閾値以下であると判断されたとき(図29において「N」と表記)、ステップ305において基板Wは(落下せず)正常に把持されていると判断される。
【0257】
ステップS304,S305のいずれかの実行により基板落下検出のフローチャートは終了する。但し、基板Wが落下したときには、基板Wに対する処理を中止することが好ましい。この観点から、ステップS304が実行された場合、チャックベース11の回転、処理液およびガスの供給の停止を行うことが好ましい。
【0258】
上記閾値には、チャック12が第1位置Hにあるか第2位置Lにあるかに拘わらずに同じ値が採用されてよい。チャック12の昇降は回転板30の回転、ひいてはチャック自転には影響を与えないからである。
【0259】
チャック12A,12Bにおいても同様にして、基板Wが把持されているか否かを検出することができる。
【0260】
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記実施形態および各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。
【符号の説明】
【0261】
11 チャックベース
12,12A,12B チャック
22,34,64 昇降板
30 回転板
31,61 カム板
33,63 軸
35,65 第2従動磁石
36 回転シャフト
111 主面
121 把持部
121a 凹面
201 第1駆動磁石
202 第1従動磁石
501,601 第2駆動磁石
CL 第1姿勢
Dr1,Dr2,RDr,Z 方向
F1 薬液
F2 流体
f1,f2,f3,f4 斥力
H 第1位置
J チャック回転軸
L 第2位置
OP 第2姿勢
Q 基板回転軸
W 基板
W0 位置
W1 第1面
W2 第2面
図1
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