(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B62K 25/08 20060101AFI20231107BHJP
B62K 5/08 20060101ALI20231107BHJP
B62K 5/10 20130101ALI20231107BHJP
【FI】
B62K25/08 Z
B62K5/08
B62K5/10
(21)【出願番号】P 2019236731
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】中島 健志
(72)【発明者】
【氏名】石井 宏志
(72)【発明者】
【氏名】岩本 太郎
(72)【発明者】
【氏名】長坂 和哉
(72)【発明者】
【氏名】稲場 太一
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/086351(WO,A1)
【文献】特開2019-018843(JP,A)
【文献】特開2019-156316(JP,A)
【文献】特開2012-006539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 25/08
B62K 5/00 - 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
車幅方向の第1側に位置している第1前輪と、
車幅方向の第1側の反対側である第2側に位置している第2前輪と、
前記第1前輪と前記第2前輪を連結し、前記第1前輪及び前記第2前輪の両方とともに上下に振動する第1機構と、
車幅方向の中央と重なるように位置しており、前記車体と前記第1機構を連結し、路面から前記第1前輪又は前記第2前輪を介して前記車体に伝達される振動を軽減するサスペンションと、
を備え、
前記サスペンションは、複数の筒状サスペンションを備え、
筒状サスペンションは、筒体と、前記筒体に挿入されており当該筒体に対してスライド可能なスライド体と、前記スライド体をスライドさせることで伸縮するスプリングと、を備えるとともに、前記スプリングが前記筒体と同軸に位置しており、
複数の前記筒体が互いに連結されるとともに、複数の前記スライド体が互いに連結されることを特徴とする車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両であって、
前記サスペンションは、前記筒状サスペンションとしての、第1筒状サスペンション、第2筒状サスペンション、及び第3筒状サスペンションを少なくとも備え、
前記第1筒状サスペンションと前記第2筒状サスペンションの並列方向と、前記第1筒状サスペンションと前記第3筒状サスペンションの並列方向と、が異なることを特徴とする車両。
【請求項3】
請求項
2に記載の車両であって、
前記サスペンションの少なくとも一部は、前記第1前輪又は前記第2前輪の軸心よりも前方に位置しており、
側面視において、前記サスペンションの少なくとも一部は、前記第1前輪又は前記第2前輪と重なるように位置しており、
最も前方の第1列に位置している前記筒状サスペンションの数は、前記第1列の後方の第2列に位置している前記筒状サスペンションの数よりも少ないことを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、2つの前輪を備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、2つの前輪と、1つの後輪と、を備える三輪の車両を開示する。この車両は、前輪から車体に伝達される振動を軽減するサスペンションを備える。サスペンションは、左右の前輪の近傍に個別に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の車両には左右の前輪に個別にサスペンションが設けられているため、サスペンションの取付構造が複雑になり易い。また、前輪の近傍にサスペンションが配置される場合、前輪の近傍のスペースが狭くなり易い。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、2つの前輪を備える車両において、サスペンションの取付構造が簡素化でき、かつ、前輪の近傍のスペースを確保できる構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の観点によれば、以下の構成の車両が提供される。即ち、この車両は、車体と、第1前輪と、第2前輪と、第1機構と、サスペンションと、を備える。前記第1前輪は、車幅方向の第1側に位置している。前記第2前輪は、車幅方向の第1側の反対側である第2側に位置している。前記第1機構は、前記第1前輪と前記第2前輪を連結し、前記第1前輪及び前記第2前輪の両方とともに上下に振動する。前記サスペンションは、車幅方向の中央と重なるように位置しており、前記車体と前記第1機構を連結し、路面から前記第1前輪又は前記第2前輪を介して前記車体に伝達される振動を軽減する。
【0008】
これにより、第1前輪と第2前輪に個別にサスペンションを取り付ける構成と比較して、構造を簡素化できる。また、前輪とサスペンションの間に第1機構を介することで、サスペンションを車幅方向の中央と重なる位置に配置でき、これによって、前輪の近くのスペースを確保できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、サスペンションの取付構造が簡素化でき、かつ、前輪の近傍のスペースを確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態のリーン型車両の側面図。
【
図4】サスペンションとパンタグラフ機構とリーンベースの周囲の拡大斜視図。
【
図7】前輪の可動範囲とサスペンションの位置関係を示す図。
【
図8】第2実施形態のリーン型車両の前部の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明では、リーン型車両1に乗車した運転者から見た方向で、リーン型車両1の左右方向を定義する。従って、リーン型車両1が直立している状態では、前後方向は車長方向に一致し、左右方向は車幅方向に一致する。また、上下方向(鉛直方向)は高さ方向に一致する。
【0012】
以下の説明では、AがBに取り付けられる(支持される)と記載した場合は、AがBに直接取り付けられる(支持される)構成だけでなく、別の部材を介して取り付けられる(支持される)構成も含むものとする。また、Aが車幅方向中央と重なるとは、例えば平面視又は正面視においてリーン型車両の車幅方向中央を通る仮想線がAと重なることである。また、前部とは、前後方向に2分割又は3分割した場合の最も前側の部分である(後部等についても同様)。また、部材の位置について説明するときは、リーン型車両1が直立している状態、舵角が中立である状態、かつ、自重以外の荷重が掛かっていない状態における位置を示すものとする。
【0013】
初めに、
図1と
図2を参照して、リーン型車両1の概要について説明する。
【0014】
リーン型車両1は、車体2と、左前輪(第1前輪)31Lと、右前輪(第2前輪)31Rと、後輪9と、を備える。車体2は、リーン型車両1の骨格となる車体フレーム3を含んでいる。車体フレーム3は、複数のフレーム要素がボルト又は溶接等で連結された構成である。
【0015】
左前輪31Lは、車幅方向中央に対して左側(第1側)に配置されている。左前輪31Lは、車幅方向中央に対して右側(第2側)に配置されている。左前輪31L及び右前輪31Rは、車体フレーム3に取り付けられる。左前輪31L及び右前輪31Rの詳細な取付方法については後述する。
【0016】
後輪9は、車幅方向中央に配置されている。車体フレーム3の後部には、車体フレーム3に対して上下に搖動可能なスイングアーム4が取り付けられている。後輪9は、スイングアーム4に取り付けられている。
【0017】
車体フレーム3には、エンジン5が取り付けられている。エンジン5は、リーン型車両1を走行させるための駆動源である。エンジン5が発生させた動力は、ドライブチェーン6を介して後輪9に伝達される。これにより、リーン型車両1を走行させることができる。エンジン5に代えて又は加えて他の駆動源、例えば走行用の電動モータが設けられていてもよい。あるいは、エンジン5に代えて、走行用の動力を運転者が付与するためのペダル等が設けられていてもよい。
【0018】
車体フレーム3には、バーハンドル型のステアリングハンドル7が取り付けられている。運転者がステアリングハンドル7に回転操舵力を加えることで、この回転操舵力が後述の機構及び操舵ロッド26を介して左前輪31L及び右前輪31Rに伝達される。その結果、リーン型車両1の進行方向を変化させることができる。以下では、リーン型車両1の進行方向が変化することをリーン型車両1が旋回すると称することがある。また、リーン型車両1は、後述のリーン機構により、旋回時において、路面に対して旋回中心側に傾斜する(リーンする)。なお、ステアリングハンドル7は、バーハンドル型に限られず、ステアリングホイールであってもよい。
【0019】
ステアリングハンドル7の後方には、運転者が着座するためのシート8が配置されている。車体2の左側面と右側面にはそれぞれ図略のステップが配置されている。運転者は、シート8に跨って、左右のステップに足を載せる。このように、リーン型車両1は、運転者がシート8に跨って着座する種類の車両(鞍乗型車両)である。
【0020】
次に、
図2及び
図3を参照して、リーン型車両1が備える前側のサスペンション10について説明する。
【0021】
サスペンション10は、車体2と、左前輪31L及び右前輪31Rと、を連結している。サスペンション10は、路面の凹凸等による左前輪31L及び右前輪31Rの振動が車体2に直接伝達しないように、車体2に伝達される振動を軽減する。また、以下の説明では、サスペンション10を境界として、左前輪31L及び右前輪31R側(振動する側)に取り付けられている部材を「振動側の部材」と称する。サスペンション10を境界として、車体2側(制振されている側)に取り付けられている部材を「制振側の部材」と称する。
【0022】
サスペンション10は、第1筒状サスペンション11と、第2筒状サスペンション12と、第3筒状サスペンション13と、を備える。以下では、第1筒状サスペンション11、第2筒状サスペンション12、及び第3筒状サスペンション13をまとめて「筒状サスペンション11,12,13」と称する。筒状サスペンション11,12,13は、それぞれ同じ構成である。筒状サスペンション11,12,13は、自動二輪車に一般的に採用されるフロントフォークと同じ構成である。なお、サスペンション10は、フロントフォーク型に限られない。
【0023】
筒状サスペンション11,12,13は、それぞれ、筒体10aと、スライド体10bと、スプリング10cと、を備える。
【0024】
筒体(アウターチューブ)10aは、細長い筒状の部材である。筒体10aには、スライド体(インナーチューブ)10bが挿入されている。スライド体10bは、径が筒体10aよりも小さい細長い筒状の部材である。スライド体10bは、筒体10aに対して、長手方向に沿って相対移動可能である。スライド体10bの内部にはスプリング10cが挿入されている。筒体10aとスライド体10bは、スプリング10cを介して接続されている。この構成により、スライド体10bから筒体10aに伝達される振動を軽減できる。サスペンション10の内部にはオイルが封入されており、筒体10aに対してスライド体10bを移動させることでオイルが移動する。このオイルの移動が抵抗力(減衰力)となり、振動を短時間で減衰することができる。
【0025】
本実施形態では、筒体10aがスライド体10bよりも上側に位置しており、上述の「制振側の部材」は基本的には筒体10aと一体的に振動する。スライド体10bは、筒体10aよりも下側に位置している。上述の「振動側の部材」は、基本的にはスライド体10bと一体的に振動する。なお、筒体10aとスライド体10bの上下の位置を反転させてもよい。
【0026】
筒状サスペンション11,12,13のそれぞれのスライド体10bは、一体的にスライドする構成である。具体的には、サスペンション10は、上連結部材14と、下連結部材15と、を備える。
【0027】
上連結部材14は、筒状サスペンション11,12,13のそれぞれの筒体10aを連結する。これにより、筒状サスペンション11,12,13のそれぞれの筒体10aが相対移動できないため、それぞれの筒体10aを一体化できる。また、筒状サスペンション11,12,13の筒体10aの少なくとも1つは、車体フレーム3の前部に位置する前フレーム3aに取り付けられている。
【0028】
下連結部材15は、筒状サスペンション11,12,13のそれぞれのスライド体10bを連結する。これにより、筒状サスペンション11,12,13のそれぞれのスライド体10bが相対移動できないため、それぞれのスライド体10bを一体的にスライドさせることができる。また、筒状サスペンション11,12,13のスライド体10bの少なくとも1つは、下連結ベース16に取り付けられている。下連結ベース16には、後述の機構を介して、左前輪31L及び右前輪31Rが取り付けられている。
【0029】
次に、
図1及び
図2を参照して、前輪の概要について説明する。
【0030】
左前輪31Lと右前輪31Rは、車幅方向中央を基準として左右対称である。そのため、以下では、左前輪31Lのみを説明し、右前輪31R(右ホイール32R、右タイヤ33R)及び右ブレーキ34R等に関する説明を省略する。
【0031】
左前輪31Lは、左ホイール32Lと、左タイヤ33Lと、を備える。また、左ホイール32Lの車幅方向外側には、左ブレーキ(前輪ブレーキ機構)34Lが取り付けられている。左ブレーキ34Lは、左ホイール32Lに取り付けられたブレーキディスク34aをブレーキキャリパー34bで挟むことで、左前輪31Lを制動する。なお、左ブレーキ34Lは、左ホイール32Lの車幅方向内側に取り付けられていてもよい。
【0032】
左ホイール32Lは、ハブ32aと、スポーク32bと、リム32cと、を備える。ハブ32aには、車軸が挿入されるハブ孔が形成されている。スポーク32bは、ハブ32aから放射状に外側に延びる形状である。リム32cは、スポーク32bの径方向外側に接続されており、左タイヤ33Lが取り付けられる。
【0033】
左ホイール32Lには、左ナックル部材としての左アーム45が取り付けられている。上述の操舵ロッド26の車幅方向外側の端部は左アーム45に回転可能に取り付けられている。操舵ロッド26は、左アーム45を介して、操舵力を左前輪31Lに伝達する。なお、左アーム45は、後述のリーン機構の一部としても構成されている。つまり、本実施形態の左アーム45は、実舵角を変更するためのナックル部材と、リーン型車両1をリーンさせるための部材と、を共通化したものである。
【0034】
次に、
図2から
図5を参照して、運転者が加えた回転操舵力を伝達する機構について説明する。
【0035】
ステアリングハンドル7の下方には、リアブラケット21が設けられている。ステアリングハンドル7とリアブラケット21は、例えば固定具で連結されている。ステアリングハンドル7及びリアブラケット21は、操舵回転軸線7a(上下方向に略平行な線)を回転中心として一定的に回転可能である。また、この操舵回転軸線7aを中心としたステアリングハンドル7の回転角度を操舵角と称することがある。
【0036】
リアブラケット21には伝達アーム(回転伝達部)22の後端が回転可能に取り付けられている。伝達アーム22は、リアブラケット21と、第1操舵部23と、を接続する。伝達アーム22は、ステアリングハンドル7に加えられた回転操舵力を第1操舵部23に伝達する。
【0037】
第1操舵部23は、リアブラケット21及びステアリングハンドル7の前方に位置している。また、第1操舵部23は、車幅方向中央に重なるように位置している。第1操舵部23は、前フレーム3aに対して回転可能に取り付けられている。
【0038】
第1操舵部23は、フロントブラケット23aと、パンタグラフ取付部23bと、を備える。フロントブラケット23aとパンタグラフ取付部23bは、例えば固定具で連結されている。フロントブラケット23aとパンタグラフ取付部23bは、第1回転軸線23c(上下方向に略平行な線)を回転中心として一定的に回転可能である。
【0039】
フロントブラケット23aには伝達アーム22の前端が取り付けられている。この構成により、ステアリングハンドル7及びリアブラケット21の回転に伴って、第1操舵部23を回転させることができる。また、本実施形態では、伝達アーム22が車幅方向の第1側のみに設けられているが、伝達アーム22が車幅方向の両方に設けられていてもよい。
【0040】
パンタグラフ取付部23bは、第1回転軸線23cに沿って延びる細長状のアームが左右一対で配置されている。このアームは、前フレーム3aに対して間隔を空けて、前フレーム3aを車幅方向で挟むように位置している。これにより、前フレーム3aと干渉することなくパンタグラフ取付部23bは回転できる。また、パンタグラフ取付部23bは、前フレーム3aの下方において、左右のアームが連結されており、車幅方向の中央と重なる部分を含んでいる。この部分には、パンタグラフ機構(変形伝達部)24が取り付けられている。
【0041】
パンタグラフ機構24は、車幅方向中央に重なるように位置している。パンタグラフ機構24は、第1リンク部24aと、第2リンク部24bと、を備える。第1リンク部24aは、第1操舵部23(具体的にはパンタグラフ取付部23b)に、車幅方向を回転中心として回転可能に取り付けられている。第2リンク部24bは、後述の第2操舵部25に、車幅方向を回転中心として回転可能に取り付けられている。また、第2操舵部25は、「振動側の部材」である。第1リンク部24aと第2リンク部24bは、車幅方向を回転中心として回転可能に互いに連結されている。
【0042】
以上の構成により、第1操舵部23と第2操舵部25の相対距離が変化した場合であっても、第1操舵部23と第2操舵部25が連結された状態を維持することができる。従って、路面の凹凸等によりサスペンション10が伸縮した場合であっても、回転操舵力が伝達可能な状態を維持できる。
【0043】
ここで、パンタグラフ機構24の前方にはサスペンション10が近接して配置されている。従って、パンタグラフ機構24の動作時に、第1リンク部24a又は第2リンク部24bがサスペンション10に衝突しないようにする必要がある。この点、本実施形態では、第1リンク部24aと第2リンク部24bの連結点は、第1回転軸線23cよりも後方に位置している。つまり、パンタグラフ機構24は、第1操舵部23と第2操舵部25の相対距離が短くなっても、後方に(即ち、サスペンション10とは反対側に)突出する構成である。そのため、パンタグラフ機構24とサスペンション10を近づけても、衝突の問題は発生しない。
【0044】
第1リンク部24aは1つの部材から構成されていてもよいし、車幅方向に並べて配置された2つの部材から構成されていてもよい(第2リンク部24bも同様)。本実施形態のパンタグラフ機構24は、2つのリンク部で構成されているが、3つ以上のリンク部で構成されていてもよい。また、リンク部は、動力を伝達可能であればよく、板状、ロッド状、又はブロック状であってもよい。また、パンタグラフに代えて、他の機構(例えば第1部材に対して第2部材がスライドする機構)であってもよい。
【0045】
第2操舵部25は、車幅方向中央に重なるように位置している。第2操舵部25は、パンタグラフ機構24を介して伝達された回転操舵力を操舵ロッド26に伝達する。第2操舵部25は、サスペンション取付部25aと、ロッド取付部25bと、を備える。
【0046】
サスペンション取付部25aは、パンタグラフ機構24(詳細には第2リンク部24b)に取り付けられている。サスペンション取付部25aは、更に、下連結ベース16に取り付けられている。第2操舵部25は操舵に応じて回転するが、下連結ベース16は操舵に応じて回転しない。そのため、第2操舵部25は、下連結ベース16に対して相対回転可能に取り付けられている。
【0047】
サスペンション取付部25aと下連結ベース16は、側面視で交差するように配置されている。具体的には、
図4に示すように、サスペンション取付部25aは、矩形の枠状の枠部材251を備える。枠部材251の中央の空間には、下連結ベース16の一部が位置しており、適宜の位置で枠部材251が下連結ベース16に回転可能に取り付けられている。なお、下連結ベース16とサスペンション取付部25aはともに車幅方向中央に重なるように位置しているので、両者の位置の干渉を防止する必要がある。この点、本実施形態では、下連結ベース16が枠部材251を通過する構成とすることで、両者の干渉が防止されている。
【0048】
ロッド取付部25bは、サスペンション取付部25aの下部に取り付けられている。ロッド取付部25bは、略L字状であり、サスペンション取付部25aから前方に延びる部分と、下方に延びる部分と、を含んでいる。この構成により、サスペンション取付部25aの下方に空間を形成できる。この空間には、後述のリーン機構42の一部が配置される。
【0049】
サスペンション取付部25aとロッド取付部25bは、固定具等で連結されており、一体的に回転可能である。つまり、第2操舵部25は、
図2に示す第2回転軸線25c(上下方向に略平行な線)を回転中心として一定的に回転可能である。
【0050】
操舵ロッド26は、ロッド取付部25bに対して回転可能に取り付けられている。操舵ロッド26の長手方向は車幅方向に一致している。操舵ロッド26の左端は、左前輪31L(詳細には左前輪31Lのうち車軸よりも前方)に取り付けられている。操舵ロッド26の右端は、右前輪31R(詳細には右前輪31Rのうち車軸よりも前方)に取り付けられている。運転者が加えた回転操舵力によってロッド取付部25bが第2回転軸線25cを中心に回転することで、操舵ロッド26が左右の何れかに移動する。その結果、実舵角が変化する。実舵角とは、左前輪31L及び右前輪31Rの向き(詳細には略上下方向を回転中心とした回転角度)である。以上のようにして、運転者の操作に応じてリーン型車両1の進行方向を変化させることができる。
【0051】
本実施形態では、第1回転軸線23cと第2回転軸線25cは、一致している。これにより、操舵角(ステアリングハンドル7側の回転角度)と、実舵角(左前輪31L及び右前輪31R側の回転角度)と、の差が全く又は殆ど生じなくなる。そのため、操舵に関する運転者の操作性を高くすることができる。
【0052】
また、第1回転軸線23cと上下方向がなす角度のうち小さい方の角度がキャスター角である。キャスター角は、リーン型車両1の走行性又は操作性に影響する。そのため、リーン型車両1の用途又は目的に応じたキャスター角が採用される。本実施形態のリーン型車両1は、比較的小さいキャスター角が採用されている。ここで、本実施形態では、左前輪31L及び右前輪31Rと、ステアリングハンドル7と、が前後方向で比較的離れているため、キャスター角が大きくなり易い。しかし、第1操舵部23を介して回転操舵力を伝達することで、左前輪31L及び右前輪31Rと、ステアリングハンドル7と、の位置を変更せずに、キャスター角を小さくすることができる。なお、第1操舵部23を省略してもよい。
【0053】
また、操舵ロッド26は、トー角を調整するための機構を有する。トー角とは、操舵角が中立の状態において、平面視で、前後方向に対して左前輪31L及び右前輪31Rがなす角である。例えばトーインとは、平面視で、左前輪31L及び右前輪31Rの前端同士の距離が、後端同士の距離よりも短い状態である。トーアウトとは、平面視で、左前輪31L及び右前輪31Rの前端同士の距離が、後端同士の距離よりも長い状態である。
【0054】
図5に示すように、操舵ロッド26は、ネジ軸26aと、調整ナット26bと、を備える。調整ナット26bは、ネジ軸26aに取り付けられている。また、調整ナット26bをネジ軸26aに対して回転させて軸方向に移動させることで、操舵ロッド26の長さを変化させることができる。操舵ロッド26は、車軸よりも前方に位置しているため、操舵ロッド26の長さを短くすることでトーインとなり、操舵ロッド26の長さを長くすることでトーアウトとなる。リーン型車両1のトー角を正確に0度に調整するために、操舵ロッド26の長さを変更することもできる。
【0055】
特に、本実施形態の操舵ロッド26は、車幅方向中央に対して左側と右側の両方に、調整機構(ネジ軸26a及び調整ナット26b)が設けられている。そのため、左前輪31L及び右前輪31Rのトー角を個別に調整することができる。
【0056】
次に、
図5及び
図6を参照して、リーン機構42について説明する。
【0057】
また、リーン機構42の説明において、回転可能に取り付けられているとは、前後方向を回転中心として、相対回転可能に取り付けられていることを意味する。
【0058】
下連結ベース16の後部には、下連結ベース16から下側に延びるリーンベース41が取り付けられている。リーンベース41は、リーン機構42を支持するとともに、リーン機構42を車体2側(車体フレーム3側)に連結するための部材である。リーンベース41は、車幅方向中央と重なるように位置している。
【0059】
リーンベース41及びリーン機構42は、下連結ベース16に取り付けられているので、「振動側の部材」である。また、リーンベース41及びリーン機構42は、比較的低い位置(側面視で一部又は全体が左前輪31Lと重なる位置)に配置されている。これにより、重量物を低い位置に配置できるので、リーン型車両1を安定させることができる。
【0060】
リーンベース41は、上取付部41aと、下取付部41cと、を備える。上取付部41a及び下取付部41cは、前側(前後方向の一側、以下同じ)の面に形成されている。上取付部41aは、下取付部41cよりも上方かつ後方に位置している。上取付部41aには、前方に突出する上突出筒41bが形成されている。下取付部41cには、前方に突出する下突出筒41dが形成されている。なお、後述の第2実施形態で示すように、リーンベース41の構成は第1実施形態とは異なっていてもよい。
【0061】
リーン機構42は、上アーム43と、下アーム44と、左アーム(第1アーム)45と、右アーム(第2アーム)46と、を備える。上アーム43は、下アーム44よりも上方に位置している。上アーム43の左端、及び、下アーム44の左端には、左アーム45がそれぞれ回転可能に連結されている。上アーム43の右端、及び、下アーム44の右端には、右アーム46がそれぞれ回転可能に連結されている。リーン機構42は、車幅方向中央と重なるように位置しており、左アーム45と右アーム46は車幅方向中央を基準として左右対称である。
【0062】
上アーム43の左端には二股状の取付部がそれぞれ形成されている。上アーム43は、二股状の取付部で左アーム45の上部を前後方向で挟み込むようにして、左アーム45に取り付けられる。これにより、左前輪31Lを適切に傾斜させることができる。上アーム43の右端、下アーム44の左端及び右端についても、同様に二股状の取付部が形成されている。
【0063】
上アーム43の長手方向の中央には、上支点部43aが形成されている。上支点部43aは、軸方向が前後方向となる筒状の部分である。上支点部43aは上取付部41aに回転可能に取り付けられている。また、上支点部43aの前端には、連結リンク48が回転可能に取り付けられている。連結リンク48は、上支点部43aの前端に加え、上突出筒41bの前端にも回転可能に取り付けられている。これにより、リーンベース41と連結リンク48で上アーム43を前後方向で挟み込むように支持できるので、片持ちの場合と比較して上アーム43を安定的に支持できる。なお、上突出筒41bと連結リンク48は省略してもよい。
【0064】
下アーム44は、上アーム43と同様に取り付けられている。具体的には、下アーム44の長手方向の中央には、下支点部44aが形成されている。下支点部44aは、軸方向が前後方向となる筒状の部分である。下支点部44aは下取付部41cに回転可能に取り付けられている。また、下支点部44aの前端には、リーンブラケット49が回転可能に取り付けられている。リーンブラケット49は、下支点部44aの前端に加え、下突出筒41dの前端にも回転可能に取り付けられている。これにより、リーンベース41とリーンブラケット49で下アーム44を前後方向で挟み込むように支持できるので、片持ちの場合と比較して下アーム44を安定的に支持できる。
【0065】
また、本実施形態のリーンブラケット49は、下アーム44だけでなく、リーンに関する別の機構(例えばリーンブレーキ機構50の一部)をリーンベース41に取り付ける機能も有している。リーンブレーキ機構50は、リーン動作を制動するための機構である。なお、リーンブラケット49は、下アーム44のみを取り付けるための部材(連結リンク48と同様の部材)であってもよい。
【0066】
また、上突出筒41b及び下突出筒41dは、何れも、上アーム43より下方であって、下アーム44よりも上方に位置している。これにより、例えば上突出筒41bが上取付部41aよりも上方にある構成等と比較して、リーン機構42の上下方向のサイズを小さくすることができる。
【0067】
左アーム45は、左ホイール32Lに回転可能に取り付けられている。具体的には、左アーム45は、左ホイール32Lのハブ32aに取り付けられている。左アーム45は、左ホイール32Lと一体的に動くように、左ホイール32Lに固定されている。同様に、右アーム46は、右ホイール32Rのハブ32aに固定されている。
【0068】
4つのアームは平行リンクを構成している。従って、
図6に示すように、リーン動作時においても、上アーム43と下アーム44は平行を維持する。また、上アーム43は、上支点部43aを回転中心として、リーンベース41に対して相対回転する。同様に、下アーム44は、下支点部44aを回転中心として、リーンベース41に対して相対回転する。このように、リーン機構42は、リーンベース41に対して相対回転する。
【0069】
また、4つのアームは平行リンクなので、リーン動作時においても、左アーム45と右アーム46は平行を維持する。従って、左前輪31Lと右前輪31Rを同じリーン角度で傾斜させることができる。リーン角度とは、リーン型車両1の車高方向と、路面に垂直な方向と、がなす角である。
【0070】
また、リーンベース41は、上アーム43の長手方向の中央(上支点部43a)と、下アーム44の長手方向中央(下支点部44a)と、を連結している。従って、リーンベース41は、左前輪31L及び右前輪31Rと同じリーン角度で傾斜する。言い換えれば、車体2も左前輪31L及び右前輪31Rと同じリーン角度で傾斜する。また、後輪9は車体2と一体的にリーンする。以上のようにして、リーン型車両1はリーン可能に構成されている。
【0071】
次に、
図7を参照して、筒状サスペンション11,12,13のレイアウトについて説明する。
【0072】
筒状サスペンション11,12,13は、左前輪31L及び右前輪31Rの軸心(車軸位置、ハブ孔位置)よりも前方の空間に位置している。筒状サスペンション11,12,13は、左前輪31L及び右前輪31Rの実舵角を変化させても、左前輪31L及び右前輪31Rに衝突しないように配置する必要がある。
【0073】
図7には、実舵角が左右の最大角度のときの左前輪31L及び右前輪31Rが鎖線で示されている。実舵角の最大角度について簡単に説明する。ステアリングハンドル7を回転させると、ステアリングハンドル7又はそれと一体的に回転する部材が、別の部材に接触して、それ以上ステアリングハンドル7を回転させることができなくなる。この状態における左前輪31L及び右前輪31Rの実舵角が「実舵角の最大角度」である。
【0074】
従って、
図7に示すように、筒状サスペンション11,12,13を配置可能な空間は、前方に近づくに連れて車幅方向のサイズが小さくなる。
【0075】
そのため、本実施形態の筒状サスペンション11,12,13は、以下のように並べられている。即ち、前端である第1列目に第1筒状サスペンション11が位置している。第1筒状サスペンション11は車幅方向中央と重なるように位置している。1列目の後方の2列目には、第2筒状サスペンション12及び第3筒状サスペンション13が位置している。第2筒状サスペンション12と第3筒状サスペンション13は、車幅方向中央を基準として左右対称である。
【0076】
これにより、左前輪31L及び右前輪31Rと干渉しない位置に効率良く筒状サスペンション11,12,13を位置させることができる。
【0077】
なお、左前輪31L及び右前輪31Rと干渉しないのであれば、本実施形態とは異なるレイアウトであってもよい。例えば、1列目に2つの筒状サスペンションを位置させ、2列目に1つの筒状サスペンションを位置させるレイアウトであってもよい。
【0078】
また、仮に筒状サスペンション11,12,13を一列に並べた場合、ある特定の方向に掛かった力には強い耐性を有するが、それ以外の方向に掛かった力には弱い耐性を有することになり易い。そのため、筒状サスペンション11,12,13は、一列に並べないことが好ましい。例えば、第1筒状サスペンション11と第2筒状サスペンション12の並列方向と、第1筒状サスペンション11と第3筒状サスペンション13の並列方向と、を異ならせることで、筒状サスペンション11,12,13は、一列に並ばない。
【0079】
なお、十分な強度が確保できるのであれば、筒状サスペンションが一列に並んでよい。また、筒状サスペンションの数が2つである場合は、必然的に筒状サスペンションが一列に並ぶことになる。なお、筒状サスペンションの数は4つ以上であってもよい。
【0080】
次に、サスペンション10とリーン機構42の関係について説明する。
【0081】
上述したように、左前輪31L及び右前輪31Rは、第1機構に相当するリーン機構42に取り付けられている。また、リーン機構42は、リーンベース41を介して、サスペンション10の下連結ベース16に取り付けられている。従って、本実施形態のサスペンション10は、緩衝機構が左右で独立していない。つまり、サスペンション10は、左前輪31L及び右前輪31Rから伝達される振動をまとめて緩衝する。
【0082】
緩衝機構が左右で独立している場合、例えば左右の前輪にそれぞれ筒状サスペンション(フロントフォーク)が取り付けられる。この場合、リーン型車両の前部における車幅方向のサイズが大きくなる可能性が高い。また、筒状サスペンションの取付方法によっては、構成が複雑になったり重量が大きくなったりする可能性がある。
【0083】
この点、本実施形態では緩衝機構が左右で独立していないので、サスペンション10を車幅方向中央のみに配置できる。従って、リーン型車両1の前部における車幅方向のサイズが小さくなる。また、構成が簡単になったり重量が小さくなる可能性がある。また、一般的に、緩衝機構が左右で独立していない構成では、例えば左前輪だけが大きな石を踏んだ場合に、左前輪だけでなく右前輪も路面から離れることが懸念される。しかし、本実施形態では左前輪31L及び右前輪31Rがリーン機構42に連結されているので、このような状況においても、右前輪31Rが路面に接触した状態を維持できる。
【0084】
なお、本実施形態では、左前輪31L及び右前輪31Rがリーン機構42によって連結され、リーン機構42がサスペンション10に取り付けられている。この構成に代えて、左前輪31L及び右前輪31Rがリーン機構42以外の部材によって連結されて、その部材がサスペンション10に取り付けられていてもよい。
【0085】
また、緩衝機構で左右で独立していない構成はフロントフォーク式のサスペンション以外にも適用できる。例えば、スプリング10cが内蔵式ではなく、スプリング10cが筒体10a及びスライド体10bの外側に位置していてもよい。この場合においても、筒体10a及びスライド体10bの相対移動(スライド)に応じてスプリング10cが伸縮するように、スプリング10cが適宜の機構に連結されている。なお、緩衝時にスライド体10bがスライドする構成のサスペンションに代えて、緩衝時にアームが上下する(上下に回転する)構成のサスペンションを用いてもよい。
【0086】
次に、
図8及び
図9を参照して、第2実施形態のリーン型車両1について説明する。
【0087】
第2実施形態の説明では、主として第1実施形態と相違する構成について説明する。また、第2実施形態の説明では、第1実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略又は簡略化する場合がある。
【0088】
第1実施形態のサスペンション10は、3本の筒状サスペンション11,12,13を備える。これに対し、第2実施形態のサスペンション10は、2本の筒状サスペンション11,12を備える。第1筒状サスペンション11と第2筒状サスペンション12は車幅方向に並ぶように位置している。
【0089】
第1実施形態では、ステアリングハンドル7の回転操舵力は第1操舵部23を介してパンタグラフ機構24に伝達される。これに対し、第2実施形態では、ステアリングハンドル7の回転操舵力は、パンタグラフ機構24に直接伝達される。従って、ステアリングハンドル7と同軸で回転する部材にパンタグラフ機構24が取り付けられる。
【0090】
そのため、ステアリングハンドル7と第2操舵部25との回転軸線が同軸ではない。これに伴って、操舵角(ステアリングハンドル7側の回転角度)と、実舵角(左前輪31L及び右前輪31R側の回転角度)と、の差が僅かに生じる。ただし、第1操舵部23を省略することで構成を簡素化できる。なお、操舵角と実舵角の差は、例えばパンタグラフ機構24の弾性変形等によって吸収される。特に、第2実施形態の第2リンク部24bはロッド状であり変形し易い。なお、第2リンク部24bには長さを調整する機構が設けられていてもよい。
【0091】
また、第2実施形態では、下連結ベース16が第2操舵部25と交差しておらず、下連結ベース16の真下にリーンベース41が位置している。また、上アーム43及び下アーム44は、リーンベース41よりも後方側に位置している。それに伴い、操舵ロッド26及びリーンブレーキ機構50についても、リーンベース41よりも後方側に位置している。このように、リーン及び操舵に関する部材をリーンベース41の一側(第1実施形態では前側、第2実施形態では後側)にすることで、リーン及び操舵に関する部材を集約して配置できる。
【0092】
また、
図9に示すように、上アーム43及び下アーム44の取付構造についても、第1実施形態とは異なる。第1実施形態では、リーンベース41の上取付部41aと下取付部41cは、前後方向の位置が異なっていた。これに対し、第2実施形態では、上取付部41aと下取付部41cの前後方向の位置は同じである。そのため、上アーム43及び下アーム44は、前後方向の位置が同じである。
【0093】
また、第1実施形態では、リーンベース41には、上突出筒41bと下突出筒41dが形成されていたが、第2実施形態では、この両方の機能を有する中突出筒41eが形成されている。従って、リーンブラケット49は、上支点部43a、中突出筒41e、下支点部44a、及びリーンブレーキ機構50をまとめてリーンベース41に取り付ける。
【0094】
以上に説明したように、上記実施形態のリーン型車両1は、車体2と、左前輪31Lと、右前輪31Rと、リーン機構42と、サスペンション10と、を備える。左前輪31Lは、車幅方向の第1側(左側)に位置している。右前輪31Rは、車幅方向の第1側の反対側である第2側(右側)に位置している。リーン機構42は、左前輪31Lと右前輪31Rを連結し、左前輪31L及び右前輪31Rの両方とともに上下に振動する。サスペンション10は、車幅方向の中央と重なるように位置しており、車体2とリーン機構42を連結し、路面から左前輪31L又は右前輪31Rを介して車体2に伝達される振動を軽減する。
【0095】
これにより、左前輪31Lと右前輪31Rに個別にサスペンション10を取り付ける構成と比較して、構造を簡素化できる。また、左前輪31L及び右前輪31Rとサスペンション10との間にリーン機構42を介することで、サスペンション10を車幅方向の中央と重なる位置に配置でき、これによって、前輪の近くのスペースを確保できる。
【0096】
また、上記実施形態のリーン型車両1において、サスペンション10は、筒体10aと、スライド体10bと、スプリング10cと、を備える。スライド体10bは、筒体10aに挿入されており、筒体10aに対してスライド可能である。スプリング10cは、スライド体10bをスライドさせることで伸縮する。
【0097】
これにより、筒体10a及びスライド体10bは細長い形状なので、筒体10a及びスライド体10bの軸回りのスペースを大きくすることができる。
【0098】
また、上記実施形態のリーン型車両1において、サスペンション10は、複数の筒状サスペンション11,12,13を備える。筒状サスペンション11,12,13は、1組の筒体10a、スライド体10b、スプリング10cで構成されるとともに、スプリング10cが筒体10aと同軸に位置している。複数の筒体10aが互いに連結されるとともに、複数のスライド体10bが互いに連結される。
【0099】
スプリング10cが筒体10aと同軸に位置していることでサスペンション10がコンパクトになるので、サスペンション10の周囲のスペースを更に大きくすることができる。また、筒体10a等を複数備えて互いに連結することで、複数のスライド体10bを一体的にスライドさせたり、スライド体10bと筒体10aの相対回転を防止したりすることができる。
【0100】
また、上記実施形態のリーン型車両1において、サスペンション10は、筒状サスペンションとしての、第1筒状サスペンション11、第2筒状サスペンション12、及び第3筒状サスペンション13を少なくとも備える。第1筒状サスペンション11と第2筒状サスペンション12の並列方向と、第1筒状サスペンション11と第3筒状サスペンション13の並列方向と、が異なる。
【0101】
これにより、筒状サスペンション11,12,13を一列に並べる構成と比較して、様々な方向の強度を高くすることができる。
【0102】
また、上記実施形態のリーン型車両1において、サスペンション10の少なくとも一部は、左前輪31L又は右前輪31Rの軸心よりも前方に位置している。側面視において、サスペンション10の少なくとも一部は、左前輪31L又は右前輪31Rと重なるように位置している。最も前方の第1列に位置している筒状サスペンションの数(第1実施形態では1つ)は、第1列の後方の第2列に位置している筒状サスペンションの数(第1実施形態では2つ)よりも少ない。
【0103】
これにより、左前輪31L及び右前輪31Rの実舵角を変化させた状況で干渉を防止するためのスペース(前細りのスペース)を有効に活用して、筒状サスペンション11,12,13を配置することができる。
【0104】
また、上記実施形態のリーン型車両1において、第1機構は、車体2が前後方向を回転中心として傾斜した際に左前輪31L及び右前輪31Rを前後方向を回転中心として傾斜させるリーン機構42である。
【0105】
リーン機構42が、リーン動作のための機能だけでなく、左前輪31Lと右前輪31Rをサスペンション10に連結するための機能を有するため、部品点数を削減できる。また、左前輪31L及び右前輪31Rの近くに確保されたスペースを活用してリーン機構42を配置できる。
【0106】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0107】
上述した第1実施形態と第2実施形態の特徴を適宜組み合わせてもよい。例えば、第2実施形態の筒状サスペンションの本数又はリーン機構42等を第1実施形態に適用することができる。他の特徴についても同様である。
【0108】
上述した様々な機構において、部品の形状、部品のレイアウト、部品の取付構造、動力の伝達構造等は一例であり、異なる構成であってもよい。例えば、左アーム45と操舵力を伝達する部品を共通とせずに、別々の部品とすることができる。
【0109】
上記実施形態では、2つの前輪及び1つの後輪を有するリーン型車両1に本発明を適用する例を説明したが、車輪数はこれに限られず、後輪が2つであってもよい。また、リーン型車両1に乗車可能な人の数も1又は2に限られず、3以上であってもよい。また、リーン型車両以外にも本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0110】
1 リーン型車両(車両)
2 車体
7 ステアリングハンドル
10 サスペンション
23 第1操舵部
24 パンタグラフ機構
25 第2操舵部
31L 左前輪(第1前輪)
31R 右前輪(第2前輪)
32L 左ホイール
32R 右ホイール
42 リーン機構(第1機構)
50 リーンブレーキ機構