(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】生分解性シアノアクリレートを含む方法および組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 22/32 20060101AFI20231107BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20231107BHJP
A61L 31/04 20060101ALN20231107BHJP
A61L 31/14 20060101ALN20231107BHJP
A61L 24/06 20060101ALN20231107BHJP
A61L 24/00 20060101ALN20231107BHJP
【FI】
C08F22/32 ZBP
C08L101/16
A61L31/04 110
A61L31/14 500
A61L24/06
A61L24/00 260
(21)【出願番号】P 2019542727
(86)(22)【出願日】2018-02-08
(86)【国際出願番号】 US2018017484
(87)【国際公開番号】W WO2018148453
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2021-01-25
(32)【優先日】2017-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517071885
【氏名又は名称】フェマシス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】リー-セプシック、 キャシー
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0163610(US,A1)
【文献】特開2002-322220(JP,A)
【文献】特開平07-252455(JP,A)
【文献】特表2002-503522(JP,A)
【文献】特公昭49-016102(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 22/32
C08L 101/16
A61L 31/04
A61L 31/14
A61L 24/06
A61L 24/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)
メトキシイソプロピルシアノアクリレート及びメトキシプロピルシアノアクリレートからなるシアノアクリレート成分であって、80wt%以上であるシアノアクリレート成分と、
b)500ppmから1500ppmまでの範囲内の安定剤成分と、
c)4000ppmから7000ppmまでの範囲内の重合禁止剤成分と
を含み、
前記安定剤成分は、アルキルスルフィド、アルキルスルフェート、アルキルスルホニル、アルキルスルホン、アルキルスルホキシド、亜硫酸アルキル、スルトン、二酸化硫黄、三酸化硫黄、スルホン酸、ラクトン、三フッ化ホウ素、酢酸、3-スルホレン、もしくはメルカプタン、またはそれらの組合せであり、
前記重合禁止剤成分は、ブチルヒドロキシアニソール(BHA);ヒドロキノン;カテコール;ヒドロキノンモノメチルエーテルおよびヒンダードフェノール;4-エトキシフェノール;ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT);2,6-ジ-tert-ブチルブチルフェノール;4-メトキシフェノール(MP);3-メトキシフェノール;2-tert-ブチル-4-メトキシフェノール;もしくは2,2-メチレン-ビス-(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、またはそれらの組合せである、
生分解性シアノアクリレート組成物。
【請求項2】
前記安定剤成分が、二酸化硫黄または三酸化硫黄を含む、請求項
1に記載の生分解性シアノアクリレート組成物。
【請求項3】
前記重合禁止剤成分が、BHAまたはBHTを含む、請求項
1または2に記載の生分解性シアノアクリレート組成物。
【請求項4】
硫化水素、炭酸、トリアセチルメタン、酢酸、安息香酸、ジニトロフェノール、ギ酸、亜硝酸、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、クロロ酢酸、リン酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリニトロフェノール、トリフルオロ酢酸、硫酸、過塩素酸、トルエンスルホン酸もしくはフルオロスルホン酸、またはそれらの組合せをさらに含む、請求項1から
3のいずれか一項に記載の生分解性シアノアクリレート組成物。
【請求項5】
可塑剤、生体適合剤、増粘剤、医薬、架橋剤、染料もしくは顔料、保存料、抗菌剤、または重合開始剤もしくは促進剤をさらに含む、請求項1から
4のいずれか一項に記載の生分解性シアノアクリレート組成物。
【請求項6】
無菌である、請求項1から
5のいずれか一項に記載の生分解性シアノアクリレート組成物。
【請求項7】
医療機器のコンポーネントである容器内に含有される、請求項1から
6のいずれか一項に記載の生分解性シアノアクリレート組成物。
【請求項8】
前記シアノアクリレート成分が、90wt%以上である、請求項1から
7のいずれか一項に記載の生分解性シアノアクリレート組成物。
【請求項9】
前記シアノアクリレート成分が、98wt%以上である、請求項
8に記載の生分解性シアノアクリレート組成物。
【請求項10】
体内の導管を閉塞するための、請求項1から
9のいずれか一項に記載の生分解性シアノアクリレート組成物。
【請求項11】
請求項1から
10のいずれか一項に記載の生分解性シアノアクリレート組成物を含む、キット。
【請求項12】
前記生分解性シアノアクリレート組成物が、無菌である、請求項
11に記載のキット。
【請求項13】
対象における1つまたは複数の導管を閉塞させる方法における使用のための無菌生分解性シアノアクリレート組成物であって、
前記無菌生分解性シアノアクリレート組成物が、請求項1から
10のいずれか一項に記載の生分解性シアノアクリレート組成物であり、
前記方法が、前記無菌生分解性シアノアクリレート組成物を、閉塞部位またはその付近に投与するステップと、前記生分解性シアノアクリレート組成物が重合し、前記導管において一時的な重合閉塞を提供し、時間とともに、前記一時的な重合閉塞が分解され、細胞閉塞が前記部位において形成されるように、前記組成物を前記部位に維持するステップとを含む、
無菌生分解性シアノアクリレート組成物。
【請求項14】
請求項1から
10のいずれか一項に記載の生分解性シアノアクリレート組成物を含有する容器を含む、医療機器のコンポーネント。
【請求項15】
前記容器、前記生分解性シアノアクリレート組成物、または両方が、無菌である、請求項
14に記載のコンポーネント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
【0002】
本願は、2017年2月9日に出願された米国仮特許出願第62/456,916号の出願日の優先権および利益を主張し、これは、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
技術分野
【0004】
本開示は、医療および獣医学的使用のための、シアノアクリレートを含む方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0005】
背景技術
【0006】
医療および研究分野において、シアノアクリレートは、組織接着剤として使用されてきた。当技術分野において知られるシアノアクリレートは、概して、意図された使用のために製剤化され、添加剤を含んでよい。シアノアクリレートは、下記の式:
【化1】
【0007】
[式中、Rは、アルキル基、または分子のエステル成分を形成する他の好適な置換基である]によって表すことができる。そのようなシアノアクリレートは、米国特許第3,527,224号、同第3,591,676号、同第3,667,472号、同第3,995,641号、同第4,035,334号および同第4,650,826号において開示されており、そのような化合物を作製することは当技術分野において公知である。典型的には、生体組織で使用される場合、R置換基は、最も多くの場合、低級アルキル(すなわち、C1からC8)であり、対応するアルキルシアノアクリレートエステルは、室温で液体である。低級アルキルシアノアクリレートエステルは、亀裂により、長期的な保全性を欠く、脆性ポリマーを形成する傾向があることが周知である。
【0008】
一般的なシアノアクリレート組成物は、創縫合における外科縫合糸およびステープラー
の針の補助剤として、ならびに裂傷、擦過傷、熱傷、口内炎、褥瘡および他の表面の創傷等の表面の創傷を覆うおよび保護するために使用するためのものを含む。これらの局所的医療用途は、シアノアクリレートに、組織学的応答を最小化しながら、水疱形成を阻害しフィルムの保護バリアを皮膚に提供するためのポリマー層を形成することを要求する。最も一般的に使用される局所的シアノアクリレート組成物は、組織学的応答を最小化しながら重合速度を阻害しないように、低レベルの二酸化硫黄を組み込むオクチル、ブチルまたはブレンドからなる。成分の適合性の課題および組成物の接着性の弱化にもかかわらず柔軟性を増大させるために、可塑剤等の他の成分が組成物に添加される。
【0009】
必要とされるのは、組織反応を開始し、導管内で閉塞を形成させる組成物である。
【発明の概要】
【0010】
発明の概要
【0011】
本開示は、導管の閉塞のため等、医療および獣医学的使用のための少なくともシアノアクリレートを含む組成物を含む。特に、本開示は、ヒトおよび他の動物における導管の閉塞のためのシアノアクリレート組成物を含む。導管は、体内の管または血管等の導管であってよい。ある特定の使用において、開示されているシアノアクリレート組成物は、導管の少なくとも一部分で重合され、体内にある間に時間とともに分解し、故に、重合された材料(polymerized material)が分解されると、組織の内方成長または瘢痕化が閉塞を維持する、1つのシアノアクリレートまたは2つ以上のシアノアクリレートを含む。
【0012】
導管の閉塞を実現するために、本明細書において開示されている組成物は、シアノアクリレート異性体のブレンドまたは混和物を含んでよい。ある態様において、組成物はさらに、二酸化硫黄等の安定剤を大量に含んでよく、本明細書において開示されている生分解性組成物は、持続的な閉塞につながる組織応答を引き起こすという所望の反応を生じさせる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
【0014】
本明細書において開示されているのは、ヒトまたは動物等の対象における導管を閉塞させる等の医療および獣医学的方法において使用するための、シアノアクリレートを含む方法および生分解性組成物である。
【0015】
本明細書において開示されているのは、3つの成分;1)シアノアクリレート成分と、2)安定剤成分と、3)重合禁止剤成分とを含む、生分解性シアノアクリレート組成物である。ある態様において、組成物は、a)少なくとも約80wt%(重量パーセント)以上のシアノアクリレート成分と、b)約500ppmから約1,500ppmまでの安定剤成分と、c)約4,000ppmから約7,000ppmまでの重合禁止剤成分とを含んでよく、ここで、シアノアクリレート成分は、1つまたは複数のシアノアクリレートを含んでよい。そのような生分解性シアノアクリレート組成物は、無菌組成物であってよい。本明細書において開示されている組成物は、液体組成物として製剤化されること、ならびに、液体組成物が標的部位に提供された後、液体組成物に重合が起き、液体製剤中における成分の反応の結果である固体材料を形成することが理解される。さらに、開示されている組成物は生分解性(吸収性または再吸収性組成物としても知られる)であるため、固体材料は、時間とともにその崩壊生成物に転換される。本明細書の開示において、液体製剤が意図されている場合、重合された材料が意図されている場合、および崩壊生成物が意図されている場合が、当業者には明確であろう。
【0016】
本明細書において開示されているのは、3つの成分;1)シアノアクリレート成分と、2)安定剤成分と、3)重合禁止剤成分とから本質的になる、生分解性シアノアクリレート組成物である。ある態様において、組成物は、a)約90重量パーセント以上のシアノアクリレート成分と、b)約500ppmから約1,500ppmまでの安定剤成分と、c)約4,000ppmから約7,000ppmまでの重合禁止剤成分とから本質的になってよく、ここで、シアノアクリレート成分は、1つまたは複数のシアノアクリレートを含んでよい。そのような生分解性シアノアクリレート組成物は、無菌組成物であってよい。
【0017】
ある態様において、生分解性シアノアクリレート組成物は、a)約80.0wt%、80.5wt%、81wt%、81.5wt%、82wt%、82.5wt%、83wt%、83.5wt%、84wt%、84.5wt%、86wt%、86.5wt%、87wt%、87.5wt%、88wt%、88.5wt%、89wt%、89.5wt%、90wt%、90.5wt%、91wt%、91.5wt%、92wt%、92,5wt%、93wt%、93.5wt%、94wt%、94.5wt%、96wt%、96.5wt%、97wt%、97.5wt%、98wt%、98.5wt%、99wt%、99.5wt%、99.9wt%の、または80から99.9wt%、80から95wt%、80から81wt%、80から82wt%、80から85wt%、84から86wt%、85から87wt%、86から88wt%、87から89wt%、88から90wt%、90から92wt%、91から93wt%、90.5から92.5wt%、91から93wt%、92から94wt%、93から95wt%、95.5から97.5wt%、94から96wt%、95から98wt%、96から99wt%、90から97wt%、90から95wt%および90から99.9wt%の範囲内のシアノアクリレート成分と、b)約500ppmから約550ppm、500ppmから約600ppm、約500ppmから約650ppm、約500ppmから約700ppm、約500ppmから約750ppm、約500ppmから約800ppm、約500ppmから約850ppm、約500ppmから約900ppm、約500ppmから約950ppm、約500ppmから約1000ppm、約500ppmから約1100ppm、約500ppmから約1200ppm、約500ppmから約1300ppm、約500ppmから約1400ppm、または約500ppmから約1500ppmの安定剤成分と、c)約4,000ppmから約4,500ppm、4,000ppmから約5,000ppm、約4,000ppmから約5,500ppm、約4,000ppmから約6,000ppm、約4,000ppmから約6,500ppm、約4,000ppmから約6,500ppm、または約4,000ppmから約7,000ppmの重合禁止剤成分とを含むことができる。
【0018】
ある態様において、生分解性シアノアクリレート組成物は、a)約80.0wt%、80.5wt%、81wt%、81.5wt%、82wt%、82.5wt%、83wt%、83.5wt%、84wt%、84.5wt%、86wt%、86.5wt%、87wt%、87.5wt%、88wt%、88.5wt%、89wt%、89.5wt%、90wt%、90.5wt%、91wt%、91.5wt%、92wt%、92.5wt%、93wt%、93.5wt%、94wt%、94.5wt%、96wt%、96.5wt%、97wt%、97.5wt%、98wt%、98.5wt%、99wt%、99.5wt%、99.9wt%の、または80から99.9wt%、80から95wt%、80から81wt%、80から82wt%、80から85wt%、84から86wt%、85から87wt%、86から88wt%、87から89wt%、88から90wt%、90から92wt%、91から93wt%、90.5から92.5wt%、91から93wt%、92から94wt%、93から95wt%、95.5から97.5wt%、94から96wt%、95から98wt%、96から99wt%、90から97wt%、90から95wt%および90から99.9wt%の範囲内のシアノアクリレート成分と、b)約1400ppmから約1500ppm、約1300ppmから約1500ppm、約1200ppmから約1500ppm、約1100ppmから約1500ppm、約1000ppmから約1500ppm、約900ppmから約1500ppm、約800ppmから約1500ppm、約700ppmから約1500ppm、または約600ppmから約1500ppmの安定剤成分と、c)約4,000ppmから約4,500ppm、4,000ppmから約5,000ppm、約4,000ppmから約5,500ppm、約4,000ppmから約6,000ppm、約4,000ppmから約6,500ppm、約4,000ppmから約6,500ppm、または約4,000ppmから約7,000ppmの重合禁止剤成分とを含むことができる。
【0019】
ある態様において、生分解性シアノアクリレート組成物は、a)約80.0wt%、80.5wt%、81wt%、81.5wt%、82wt%、82,5wt%、83wt%、83.5wt%、84wt%、84.5wt%、86wt%、86.5wt%、87wt%、87.5wt%、88wt%、88.5wt%、89wt%、89.5wt%、90wt%、90.5wt%、91wt%、91.5wt%、92wt%、92.5wt%、93wt%、93.5wt%、94wt%、94.5wt%、96wt%、96.5wt%、97wt%、97.5wt%、98wt%、98.5wt%、99wt%、99.5wt%の、または80から99.5wt%、80から95wt%、80から81wt%、80から82wt%、80から85wt%、84から86wt%、85から87wt%、86から88wt%、87から89wt%、88から90wt%、90から92wt%、91から93wt%、90.5から92.5wt%、91から93wt%、92から94wt%、93から95wt%、95.5から97.5wt%、94から96wt%、95から98wt%、96から99wt%、90から97wt%、90から95wt%および90から99.9wt%の範囲内のシアノアクリレート成分と、b)約500ppmから約550ppm、500ppmから約600ppm、約500ppmから約650ppm、約500ppmから約700ppm、約500ppmから約750ppm、約500ppmから約800ppm、約500ppmから約850ppm、約500ppmから約900ppm、約500ppmから約950ppm、約500ppmから約1000ppm、約500ppmから約1100ppm、約500ppmから約1200ppm、約500ppmから約1300ppm、約500ppmから約1400ppm、または約500ppmから約1500ppmの安定剤成分と、c)約4,500ppmから約7,000ppm、約5,000ppmから約7,000ppm、または約6,500ppmから約7,000ppmの重合禁止剤成分とを含むことができる。
【0020】
ある態様において、生分解性シアノアクリレート組成物は、a)約80.0wt%、80.5wt%、81wt%、81.5wt%、82wt%、82.5wt%、83wt%、83.5wt%、84wt%、84.5wt%、86wt%、86.5wt%、87wt%、87.5wt%、88wt%、88.5wt%、89wt%、89.5wt%、90wt%、90.5wt%、91wt%、91.5wt%、92wt%、92.5wt%、93wt%、93.5wt%、94wt%、94.5wt%、96wt%、96.5wt%、97wt%、97.5wt%、98wt%、98.5wt%、99wt%、99.5wt%、99.9wt%の、または80から99.9wt%、80から95wt%、80から81wt%、80から82wt%、80から85wt%、84から86wt%、85から87wt%、86から88wt%、87から89wt%、88から90wt%、90から92wt%、91から93wt%、90.5から92.5wt%、91から93wt%、92から94wt%、93から95wt%、95.5から97.5wt%、94から96wt%、95から98wt%、96から99wt%、90から97wt%、90から95wt%および90から99.9wt%の範囲内のシアノアクリレート成分と、b)約1400ppmから約1500ppm、約1300ppmから約1500ppm、約1200ppmから約1500ppm、約1100ppmから約1500ppm、約1000ppmから約1500ppm、約900ppmから約1500ppm、約800ppmから約1500ppm、約700ppmから約1500ppm、または約600ppmから約1500ppmの安定剤成分と、c)約4,500ppmから約7,000ppm、約5,000ppmから約7,000ppm、または約6,500ppmから約7,000ppmの重合禁止剤成分とを含むことができる。
【0021】
ある態様において、生分解性シアノアクリレート組成物は、a)約80.0wt%、80.5wt%、81wt%、81.5wt%、82wt%、82.5wt%、83wt%、83.5wt%、84wt%、84.5wt%、86wt%、86.5wt%、87wt%、87.5wt%、88wt%、88.5wt%、89wt%、89.5wt%、90wt%、90.5wt%、91wt%、91.5wt%、92wt%、92.5wt%、93wt%、93.5wt%、94wt%、94.5wt%、96wt%、96.5wt%、97wt%、97.5wt%、98wt%、98.5wt%、99wt%、99.5wt%、99.9wt%の、または80から99.9wt%、80から95wt%、80から81wt%、80から82wt%、80から85wt%、84から86wt%、85から87wt%、86から88wt%、87から89wt%、88から90wt%、90から92wt%、91から93wt%、90.5から92.5wt%、91から93wt%、92から94wt%、93から95wt%、95.5から97.5wt%、94から96wt%、95から98wt%、96から99wt%、90から97wt%、90から95wt%および90から99.9wt%の範囲内のシアノアクリレート成分と、b)約500ppm、525ppm、550ppm、575ppm、600ppm、625ppm、650ppm、675ppm、700ppm、725ppm、750ppm、775ppm、800ppm、825ppm、850ppm、875ppm、900ppm、925ppm、950ppm、975ppm、1,000ppm、1,025ppm、1,050ppm、1,075ppm、1,100ppm、1,125ppm、1,150ppm、1,175ppm、1,200ppm、1,225ppm、1,250ppm、1,275ppm、1,300ppm、1,325ppm、1,350ppm、1,375ppm、1,400ppm、1,425ppm、1,450ppm、1,475ppm、または1,500ppmの安定剤成分と、c)約4,000ppm、4,250ppm、4,500ppm、4,750ppm、5,000ppm、5,250ppm、5,500ppm、5,750ppm、6,000ppm、6,250ppm、6,500ppm、6,750ppm、または7,000ppmの重合禁止剤成分とを含むことができる。
【0022】
開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、本明細書において、交換可能に、シアノアクリレート組成物または閉塞性組成物と称される場合がある。
【0023】
開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、少なくともこれらの開示されている成分と、シアノアクリレート成分と、重合禁止剤と、安定剤とを、組合せて含んでよく、これらは、シアノアクリレート組成物自体の所望の特徴、組成物の送達、または組成物の硬化(重合)後に形成される材料に影響する。異なるシアノアクリレートモノマーまたはそれぞれの異なる量は、下記の目的のために、数ある中でも、電荷形態学を調節する;分子量または粘度を含むがこれらに限定されないシアノアクリレート組成物の物理的特性を改変する;シアノアクリレート組成物と、ある特定の添加剤ならびにポリマー、プラスチックおよび金属等の他の材料との相互作用を改変する;適用された組成物に対する組織反応または応答を改変する;重合速度または重合熱を含むがこれらに限定されない組成物の接着特性を調整する;分解パーセント、分解速度および分解中のホルムアルデヒド生成を含む結果として生じた組成物の分解プロフィールを調整する;結合強度、可撓性、粒度および粘着性を含むがこれらに限定されない適用された硬化組成物の物理的特性を改変するために、生分解性シアノアクリレート組成物に含まれてよい。
【0024】
ある態様において、生分解性シアノアクリレート成分は、1または複数の種類のシアノアクリレートモノマー、例えば、一般式:
【化2】
【0025】
[式中、R
1は、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビル基である]
の2-シアノアクリル酸のモノマーエステル、
式:
【化3】
【0026】
[式中、R
2は、2~4個の炭素原子を有する1,2-アルキレン基であり、R
3は、2~12個の炭素原子を有するアルキレン基であり、R
4は、1~6個の炭素原子を有するアルキル基である]
を有する基、
または、式:
【化4】
【0027】
【0028】
または-[C(CH3)2]n-を有し、ここで、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14の値を持つ整数であり、R6は、有機部分である]
を有する基を含む。
【0029】
種々の態様において、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビル基は、1~16個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル基;アシルオキシ基、ハロアルキル基、アルコキシ基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基またはハロアルキル基で置換されている直鎖または分枝鎖C1~C6アルキル基;2から16個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルケニル基;2から12個の炭素原子シクロアルキル基を有する直鎖または分枝鎖アルキニル基;アリールアルキル基;アルキルアリール基;およびアリール基であることができる。さらなる態様において、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビル基は、C1~C6アルコキシ基で場合により置換されていてもよい、1から10個の炭素原子を有するアルキル基;C1~C6アルコキシ基で場合により置換されていてもよい、2から10個の炭素原子を有するアルケニル基;C1~C6アルコキシ基で場合により置換されていてもよい、シクロヘキシル基;またはC1~C6アルコキシ基で場合により置換されていてもよい、フェニル基であることができる。
【0030】
ある態様において、R1は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、ペンチル、ネオ-ペンチル、ヘキシル、n-オクチル、2-オクチル、メトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシイソプロピル、メトキシブチル、メトキシイソブチル、アリル、メタリル、クロチル、プロパルギル、シクロヘキシル、ベンジル、フェニル、クレシル、2-クロロブチル、トリフルオロエチル、2-メトキシエチル、3-メトキシブチル、2-エトキシエチル、および2-プロポキシエチルから選択される。
【0031】
有機部分R6は、置換されているまたは非置換であることができ、直鎖、分枝状または環式の、飽和、不飽和または芳香族であることができる。さらなる態様において、そのような有機部分は、C1~C8アルキル部分、C2~C8アルケニル部分、C2~C8アルキニル部分、C3~C12脂環式部分、フェニルおよび置換フェニル等のアリール部分、ならびにベンジル、メチルベンジルおよびフェニルエチル等のアリールアルキル部分を含む。他の有機部分は、ハロ(例えば、クロロ-、フルオロ-およびブロモ-置換炭化水素)およびオキシ-(例えば、アルコキシ置換炭化水素)置換炭化水素部分等の置換炭化水素部分を含む。またさらなる態様において、R6は、1から約8個の炭素原子を有するアルキル、アルケニルまたはアルキニル部分、およびそれらのハロ-置換誘導体であることができる。まださらなる態様において、R6は、4から8個の炭素原子のアルキル部分であることができる。
【0032】
種々の態様において、R1は、1~10個の炭素原子を有するアルキル基または式-AOR7を有する基[式中、Aは、2~8個の炭素原子を有する二価の直鎖または分枝鎖アルキレンまたはオキシアルキレン部分であり、R7は、1~8個の炭素原子を有する直鎖または分枝状アルキル部分である]である。さらなる態様において、シアノアクリレート成分は、2-オクチルシアノアクリレート、ドデシルシアノアクリレート、2-エチルヘキシルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート、メチルシアノアクリレート、3-メトキシブチルシアノアクリレート、2-ブトキシエチルシアノアクリレート、2-イソプロポキシエチルシアノアクリレートもしくは1-メトキシ-2-プロピルシアノアクリレート、メチルシアノアクリレート、エチルシアノアクリレート、プロピルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート、ペンチルシアノアクリレート、ヘキシルシアノアクリレート、セプチルシアノアクリレート、オクチルノニルシアノアクリレート、デシル2-シアノアクリレート、アリルシアノアクリレート、メトキシエチルシアノアクリレート、メトキシイソプロピルシアノアクリレート、メトキシプロピルシアノアクリレート、メトキシブチルシアノアクリレートもしくはメトキシペンチルシアノアクリレート、またはそれらの組合せである。シアノアクリレート成分は、2つ以上のメトキシシアノアクリレートモノマーを含んでよい。
【0033】
本明細書において開示されているシアノアクリレートモノマーは、当技術分野において公知の方法によって調製することができる。例えば、米国特許第2,721,858号、同第3,254,111号、同第3,995,641号および同第4,364,876号を参照されたく、そのそれぞれは、例えば、シアノアクリレート合成について、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本開示において使用するためのシアノアクリレートモノマーは、アルキル、シクロアルキル、ハロゲン化、アルケニルまたはアルコキシアルキル2-シアノアクリレートを含むがこれらに限定されない脂肪族2-シアノアクリレートエステルを含む。アルキル基は、1~16個の炭素原子、2~8個の炭素原子または1~4個の炭素原子を有してよい。好適なエステルは、シアノアクリル酸等の、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、イソブチル、n-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、2-エチルヘキシル、シクロヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、2-オクチル、2-メトキシエチル、メトキシプロピル、2-エトキシエチルおよび2-メトキシイソプロピルエステルを含む。医療またはインビボ用途において使用するために、利用されるモノマーは、高純度のものである。
【0034】
例えば、シアノアクリレート成分は、シアノアクリレート成分のa)約80.0wt%、80.5wt%、81wt%、81.5wt%、82wt%、82.5wt%、83wt%、83.5wt%、84wt%、84.5wt%、86wt%、86.5wt%、87wt%、87.5wt%、88wt%、88.5wt%、89wt%、89.5wt%、90wt%、90.5wt%、91wt%、91.5wt%、92wt%、92.5wt%、93wt%、93.5wt%、94wt%、94.5wt%、96wt%、96.5wt%、97wt%、97.5wt%、98wt%、98.5wt%、99wt%、99.5wt%の、または80から99.5wt%、80から95wt%、80から81wt%、80から82wt%、80から85wt%、84から86wt%、85から87wt%、86から88wt%、87から89wt%、88から90wt%、90から92wt%、91から93wt%、90.5から92.5wt%、91から93wt%、92から94wt%、93から95wt%、95.5から97.5wt%、94から96wt%、95から98wt%、96から99wt%、90から97wt%、90から95wt%および90から99.9wt%の範囲内を構成してよく、組成物の最大約100wt%および80wt%から100wt%の間のすべての範囲を構成してよい。
【0035】
ある態様において、シアノアクリレート成分は、本明細書において開示されているwt%および/または範囲内の2つ以上のシアノアクリレートモノマーのブレンドまたは混和物を含む。例えば、1つのシアノアクリレートモノマーがメチルシアノアクリレートであり、第2のシアノアクリレートモノマーがエチルシアノアクリレートである場合、メチルシアノアクリレートモノマーおよびエチルシアノアクリレートモノマーのブレンドまたは混和物は、本明細書において開示されているもの等のシアノアクリレート成分を形成し得る。ある態様において、シアノアクリレート成分は、本明細書において開示されているwt%および/または範囲内の単一のシアノアクリレートモノマーを含む。例えば、1つのシアノアクリレートモノマーがメチルシアノアクリレートである場合、メチルシアノアクリレートモノマーは、本明細書において開示されているもの等のシアノアクリレート成分を形成する。
【0036】
ある態様において、シアノアクリレート組成物の安定剤成分は、アニオン安定剤である。安定剤成分の例は、下記:アルキルスルフィド、アルキルスルフェート、アルキルスルホニル、アルキルスルホン、アルキルスルホキシド、亜硫酸アルキル(alkyl sulfites)、スルトン(例えば、a-クロロ-a-ヒドロキシ-o-トルエンスルホン酸-y-スルトン)、二酸化硫黄、三酸化硫黄、スルホン酸、ラクトン、三フッ化ホウ素、酢酸等の有機酸、3-スルホレン、メルカプタン等、およびそれらの混合物を含むがこれらに限定されない。ある特定の用途において、安定剤成分は、二酸化硫黄、三酸化硫黄もしくはスルホン酸の1つもしくは複数、またはそれらの組合せである。
【0037】
ある態様において、シアノアクリレート組成物は、硫化水素、炭酸、トリアセチルメタン、酢酸、乳酸、安息香酸、ジニトロフェノール、ギ酸、亜硝酸、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、クロロ酢酸、リン酸(オルト、メタ、またはパラ-リン酸を含む)、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリニトロフェノール(ピクリン酸)、トリフルオロ酢酸、硫酸、過塩素酸、トルエンスルホン酸、フルオロスルホン酸等、およびそれらの混合物等の酸性安定化剤を含むことができ、シアノアクリレート組成物に含まれることができる。
【0038】
生分解性シアノアクリレート組成物は、アニオン安定剤および酸性安定剤等、1または複数の種類の安定化剤を有してよい。
【0039】
安定剤成分は、約500から約1,500パーツ・パー・ミリオンの安定剤成分の濃度で存在することができる。ある態様において、安定剤成分は、約500ppmから約550ppm、500ppmから約600ppm、約500ppmから約650ppm、約500ppmから約700ppm、約500ppmから約750ppm、約500ppmから約800ppm、約500ppmから約850ppm、約500ppmから約900ppm、約500ppmから約950ppm、約500ppmから約1000ppm、約500ppmから約1100ppm、約500ppmから約1200ppm、約500ppmから約1300ppm、約500ppmから約1400ppm、または約500ppmから約1500ppmの量で存在する。ある態様において、安定剤成分は、約1400ppmから約1500ppm、約1300ppmから約1500ppm、約1200ppmから約1500ppm、約1100ppmから約1500ppm、約1000ppmから約1500ppm、約900ppmから約1500ppm、約800ppmから約1500ppm、約700ppmから約1500ppm、または約600ppmから約1500ppmの量で存在する。ある態様において、安定剤成分は、約500ppmより大きい、約550ppmより大きい、または約600ppmより大きい量で存在する。安定剤成分は、約500ppm、525ppm、550ppm、575ppm、600ppm、625ppm、650ppm、675ppm、700ppm、725ppm、750ppm、775ppm、800ppm、825ppm、850ppm、875ppm、900ppm、925ppm、950ppm、975ppm、1,000ppm、1,025ppm、1,050ppm、1,075ppm、1,100ppm、1,125ppm、1,150ppm、1,175ppm、1,200ppm、1,225ppm、1,250ppm、1,275ppm、1,300ppm、1,325ppm、1,350ppm、1,375ppm、1,400ppm、1,425ppm、1,450ppm、1,475ppm、または1,500ppmの量で存在することができる。
【0040】
ある態様において、シアノアクリレート組成物の重合禁止剤成分は、フリーラジカル安定剤である。重合禁止剤成分として使用するのに好適な作用物質は、ブチルヒドロキシアニソール(butylated hydoxy anisole)(BHA);NMP(n-メチル-ピロリドン)、ヒドロキノン;カテコール;ヒドロキノンモノメチルエーテルおよびブチルヒドロキシアニソール等のヒンダードフェノール;4-エトキシフェノール;ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT、2,6-ジ-tert-ブチルブチルフェノール)、4-メトキシフェノール(MP);3-メトキシフェノール;2-tert-ブチル-4-メトキシフェノール;ならびに2,2-メチレン-ビス-(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)等、およびそれらの混合物を含む。ある特定の用途において、重合禁止剤成分は、BHAまたはBHTである。
【0041】
重合禁止剤成分は、約4,000ppmから約7,000ppmまでの量で存在することができる。ある態様において、重合禁止剤成分は、約4,000ppmから約4,500ppm、4,000ppmから約5,000ppm、約4,000ppmから約5,500ppm、約4,000ppmから約6,000ppm、約4,000ppmから約6,500ppm、約4,000ppmから約6,500ppm、または約4,000ppmから約7,000ppmの量で存在する。ある態様において、重合禁止剤成分は、約4,500ppmから約7,000ppm、約5,000ppmから約7,000ppm、または約6,500ppmから約7,000ppmの量で存在する。ある態様において、重合禁止剤成分は、約4,000ppmより大きい、約4,500ppmより大きい、または約5,000ppmより大きい量で存在する。重合禁止剤成分は、約4,000ppm、4,250ppm、4,500ppm、4,750ppm、5,000ppm、5,250ppm、5,500ppm、5,750ppm、6,000ppm、6,250ppm、6,500ppm、6,750ppm、または7,000ppmの量で存在することができる。
【0042】
本開示によって企図される生分解性シアノアクリレート組成物は、粘度、色、X線不透明度およびその他を含む所望の特性を付与するために必要な添加剤を含んでよい。例えば、本開示の組成物は、送達された重合された材料に柔軟性を付与する少なくとも1つの可塑剤を含んでよい。可塑剤は、好ましくは、水分をわずかしかまたは全く含有せず、組成物の重合に有意に影響しないべきである。好適な可塑剤は、当技術分野において公知であり、米国特許第2,784,127号および同第4,444,933号において開示されているものを含み、それらの開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。好適な可塑剤の例は、クエン酸トリブチル(TBC)、クエン酸アセチルトリブチル(ATBC)、セバシン酸ジメチル、リン酸トリエチル、トリ(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリ(p-クレシル)ホスフェート、グリセリルトリアセテート、グリセリルトリブチレート、セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)、アジピン酸ジオクチル(DICA)、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸、トリオクチルトリメリテート、グルタル酸ジオクチル(DICG)、フタル酸ジオクチル、クエン酸アセチルトリ-n-ブチル等、およびそれらの混合物を含むがこれらに限定されない。ある態様において、好適な可塑剤は、ポリエチレングリコール(PEG)エステルおよびキャップ付きPEGエステルまたはエーテル、グルタル酸ポリエステルおよびアジピン酸ポリエステル等のポリマー性可塑剤を含んでよい。ある態様において、可塑剤は、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジオクチル、トリアルキルアシルシトレート、ジ-およびポリ-ヒドロキシ分枝状脂肪族化合物の安息香酸エステル、トリ(p-クレシル)ホスフェート、それらの組合せ等であることができる。ある態様において、可塑剤は、各アルキル基中に1から10個までの炭素原子を独立して有するアシルトリアルキルシトレートであることができる。例えば、アシルトリアルキルアシルシトレートは、トリメチルO-アセチルシトレート、トリエチルO-アセチルシトレート、トリ-n-プロピルO-アセチルシトレート、トリ-n-ブチルO-アセチルシトレート、トリ-n-ペンチルO-アセチルシトレート、トリ-n-ヘキシルO-アセチルシトレート、トリ-メチルO-プロピオニルシトレート、トリ-エチルO-プロピオニルシトレート、トリ-n-プロピルO-プロピオニルシトレート、トリ-n-ブチルO-プロピオニルシトレート、トリ-n-ペンチルO-プロピオニルシトレート、トリ-n-ヘキシルO-プロピオニルシトレート、トリ-メチルO-ブチリルシトレート、トリ-エチルO-ブチリルシトレート、トリ-n-プロピルO-ブチリルシトレート、トリ-n-ブチルO-ブチリルシトレート、トリ-n-ペンチルO-ブチリルシトレート、トリ-n-ヘキシルO-ブチリルシトレート等であることができる。ある態様において、可塑剤は、トリ-n-ブチルO-アセチルシトレートであることができる。ある態様において、クエン酸トリブチル、アジピン酸ジイソデシルおよびクエン酸アセチルトリブチルは、存在する場合、液状接着剤組成物の最大30重量パーセント(30%)の量である。使用される量は、当業者により、公知の技術を使用して、必要以上の実験をすることなく決定することができる。
【0043】
本開示の組成物は、分解中の活性ホルムアルデヒド濃度レベルを低減させる際に有効な少なくとも1つの生体適合剤を含んでよい(インビボ分解に供する組成物について、そのような化合物を、「ホルムアルデヒド濃度低減剤」と称する)。本開示において有用なホルムアルデヒドスカベンジャー化合物の例は、下記:亜硫酸塩、重亜硫酸塩、亜硫酸アンモニウム塩、アミン、アミド、イミド、ニトリル、カルバメート、アルコール;メルカプタン、タンパク質、環式ケトン等の活性メチレン化合物およびb-ジカルボニル基を有する化合物、ある特定のヘテロ環式環化合物等、およびそれらの混合物を含むがこれらに限定されない。ホルムアルデヒドスカベンジャーとして有用な重亜硫酸塩および亜硫酸塩は、アルカリ金属塩およびアンモニウム塩を含む。有用なアミンの例は、アニリン、ベンジジン、アミノピリミジン、トルエン-ジアミン、トリエチレンジアミン、ジフェニルアミン、ジアミノジフェニルアミン、ヒドラジン、ヒドラジド等の脂肪族および芳香族アミン、ならびにそれらの混合物を含む。好適なタンパク質は、コラーゲン、ゼラチン、カゼイン、大豆タンパク質、植物性タンパク質、ケラチン、膠等、およびそれらの混合物を含む。好適なアミドは、尿素、シアナミド、アクリルアミド、ベンズアミドおよびアセトアミドを含む。好適なアルコールは、フェノール、1,4-ブタンジオール、d-ソルビトールおよびポリビニルアルコールを含む。b-ジカルボニル基を有する好適な化合物の例は、マロン酸、アセチルアセトン、エチルアセトン、アセテート、マロンアミド、マロン酸ジエチル、または別のマロン酸エステル等、およびそれらの混合物を含む。
【0044】
本開示の生分解性シアノアクリレート組成物は、特定用途のための医療および獣医学的実用性を改善するために、増粘剤、医薬等の1つまたは複数のアジュバント物質を含有してよい。
【0045】
好適な増粘剤は、例えば、ポリシアノアクリレート、ポリ乳酸、ポリ-1,4-ジオキサ-2-オン、ポリオキサレート、ポリグリコール酸、乳酸-グリコール酸コポリマー、ポリカプロラクトン、乳酸-カプロラクトンコポリマー、ポリ-3-ヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアルキルアクリレート、アルキルアクリレートおよび酢酸ビニルのコポリマー、ポリアルキルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、およびアルキルメタクリレートのコポリマー、ブタジエン等、ならびにそれらの混合物を含む。アルキルメタクリレートおよびアクリレートの例は、ポリ(2-エチルヘキシルメタクリレート)およびポリ(2-エチルヘキシルアクリレート)、またポリ(ブチルメタクリレート)およびポリ(ブチルアクリレート)、またポリ(ブチルメタクリレート-コ-メチルアクリレート)等の種々のアクリレートおよびメタクリレートモノマーのコポリマー等、ならびにそれらの混合物である。ある態様において、増粘剤は、米国特許出願シリアル番号第12/214,791号において開示されているシアノアクリレートの部分ポリマーおよび米国特許出願シリアル番号第12/214,794号において開示されているポリオキシアルキレンのトリブロックコポリマーを含むことができる。多くの用途において、増粘剤は、室温で、シアノアクリレートモノマー組成物中において混和性であることが望ましい。
【0046】
ある態様において、生分解性シアノアクリレート組成物は、増粘剤ありまたはなしで、液体組成物が意図される適用部位を越える流れを停止させるまたは滴ることを実質的に防止するような粘度を有する。例えば、本明細書において開示されている組成物は、100cP未満、50cP未満、30cP未満、20cP未満、15cP未満の粘度、または約10cpsから約20cPまで、約10cPから約30cPまで、もしくは約20cPから約30cPまで、約10cPから約40cPまで、約20cPから約40cPまでの範囲内の粘度を有してよい。粘度計、ならびにコーンおよびプレート等、粘度を測定するための標準および機器が公知である。生分解性シアノアクリレート組成物は、予め混合されて無菌で提供されるため、初期の生分解性シアノアクリレート組成物は、滅菌後の生分解性シアノアクリレート組成物またはその使用可能期間中および/もしくは貯蔵寿命の終わり付近の生分解性シアノアクリレート組成物よりも低い粘度を有してよい。例えば、初期の混合滅菌済み生分解性シアノアクリレート組成物は、19cP以下、または18cP以下、または17cP以下、16cP以下、または15cP以下である粘度を有してよいのに対し、その使用可能な貯蔵寿命中しばらく経過後の混合滅菌済み生分解性シアノアクリレート組成物は、30cP以下、または29cP以下、または28cP以下、27cP以下、または26cP以下、25cP以下、24cP以下、23cP以下、22cP以下、21cP以下、20cP以下である粘度を有してよい。
【0047】
多くの公知のシアノアクリレート組成物は、使用の瞬間まで分離しておかなくてはならない成分を有する。例えば、重合が混合の時点で起こり、組成物の適用は重合が急速に完了する前に起こらなくてはならないことから、多くの接着剤は、2つの成分を混合し、次いで直ちに使用することを必要とする。これは、提供される容器内における重合を防止するために、成分用のアンプルまたは別個の容器の提供を必要とする。
【0048】
これらのシアノアクリレート組成物とは異なり、本明細書において開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、生分解性シアノアクリレート組成物が1つの容器で提供されるような混合状態で提供され、ここで、シアノアクリレート成分は、安定化成分および重合禁止剤成分等の他の成分とともに、1つの容器で提供され、生分解性シアノアクリレート組成物を標的部位に提供する前に使用者によって実施する必要がある重合を開始するための混合はない。シアノアクリレート成分は、その中に1つまたは複数のシアノアクリレートモノマーを含んでよい。開示されている組成物のこの混合条件は、重合を開始するために使用時に直ちに混合されなくてはならないシアノアクリレート組成物とは対照的に、本明細書において「予め混合された」と称されてもよい。理解できるように、使用者が生分解性シアノアクリレート組成物にソノルーセント粒子等の成分を添加したいならば、該粒子を生分解性シアノアクリレート組成物中に混合してよいが、この混合は、シアノアクリレートモノマーの重合を開始するために実施されるのではない。
【0049】
ある態様において、本明細書において開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、本明細書において開示されている容器等の容器内に組成物を提供することによって、液体状態で提供されてよい。本明細書において言及される場合、開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、例えば、2つのシアノアクリレートモノマーを混和することによって製剤化され、組成物は、未重合状態で、運送および使用までの保管中、液体のままである。生分解性シアノアクリレート組成物は、体腔または表面等の水分含有環境への適用まで、液体状態のままである。開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、延長された、組成物が使用のための基準および標準を満たす貯蔵寿命を有する。例えば、本明細書において開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、0.5年以上の、0.6年以上、0.7年以上の、0.8年以上の、0.9年以上の、1.0年以上、または1.2年以上、または1.5年以上の貯蔵寿命を有してよい。例えば、本明細書において開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、0.5年、0.7年、0.9年、1.0年、1.2年、または1.5年の貯蔵寿命を有してよい。生分解性シアノアクリレート組成物は、ヘルスケア規則が組成物の提供を許可するよりも長い期間にわたって適切に機能し得る。形成された生分解性シアノアクリレート組成物の粘着強度を改善するために、当技術分野において公知の架橋剤を添加してよい。米国特許第3,940,362号を参照し、これは、ここでの参照により本明細書に組み込まれる。
【0050】
ある特定の用途のために、生分解性シアノアクリレート組成物は、少量の染料または顔料等の着色剤をさらに含有してよい。好適な染料は、アントラセンの誘導体および他の複合体構造、具体的には、限定されないが、1-ヒドロキシ-4-[4-メチルフェニルアミノ]-9,10アントラセンジオン(D&C violet No.2);9-(oカルボキシフェニル)-6-ヒドロキシ-2,4,5,7-テトラヨード-3H-キサンテン-3-オン-、ジナトリウム塩、一水和物(FD&C Red No.3);6-ヒドロキシ-5-[(4-スルホフェニル)アキソ]-2-ナフタレン-スルホン酸のジナトリウム塩(FD&C Yellow No.6);2-(1,3ジヒドロ-3-オキソ-5-スルホ-2H-インドール-2-イリデン)-2,3-ジヒドロ-3オキソ-1H-インダ-オール-5スルホン酸ジナトリウム塩(FD&C Blue No.2);および1,4-ビス(4-メチルアニリノ)アントラセン-9,10-ジオン(D&C Green No.6)を含む。ある態様において、染料は、D&C Violet No.2、FD&C Blue No.2、およびD&C Green No.6である。
【0051】
ある態様において、生分解性シアノアクリレート組成物は、超音波検査、蛍光透視法またはX線技術によって閉塞をモニターすることができるように、ソノルーセントまたは放射線不透過性化合物または粒子を含んでよい。
【0052】
ある態様において、生分解性シアノアクリレート組成物は、アルキルパラベンおよびその塩、エチルパラベン、メチルパラベン、メチルパラベンナトリウム、プロピルパラベンナトリウム、プロピルパラベン、ブチルパラベン等の追加の安定化または保存剤をさらに含むことができる。他の好適な保存料は、ヒドロキノン、ピロカテコール、レゾルシノール、4-n-ヘキシルレゾルシノール、安息香酸、ベンジルアルコール、クロロブタノール、デヒドロ酢酸、o-フェニルフェノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸、チメロサール、チモール、クレゾール、ホウ酸フェニル水銀および硝酸フェニル水銀等のフェニル水銀化合物を含む。
【0053】
ある態様において、生分解性シアノアクリレート組成物は、有効量の抗菌剤をさらに含むことができる。好適な抗菌剤は、クロルヘキシジンおよびその塩等の抗菌剤、典型的な抗生物質、ビニルピロリドンおよび酢酸ビニルのコポリマー、防腐剤、ポビドンヨード等のヨウ素含有ポリマー、ビグアニジン化合物、5-クロロ-2-(2,4-ジクロロフェノキシ)フェノール等のフェノール化合物、アクリジン化合物、塩化ベンザルコニウム等の第四級アンモニウム化合物、セチルプリドスポアおよびゼフィラン、ポリイソシアネートで架橋されたビニルピロリドンおよび酢酸ビニルのコポリマー、硝酸銀等の重金属塩、ならびにグルタルアルデヒド等のアルデヒド化合物を含む。
【0054】
ある特定の用途のために、生分解性シアノアクリレート組成物は、熱、光、または作用部位への送達時における他の修正によって活性化される、重合開始剤または促進剤を追加で含有してよい。そのような開始剤および促進剤は、当技術分野において公知である。米国特許第6,143,805号を参照し、これは、ここでの参照により本明細書に組み込まれる。例えば、重合促進剤は、カリックスアレーンおよびオキサカリックスアレーン、シラクラウン、クラウンエーテル、シクロデキストリンおよびその誘導体、ポリエーテル、脂肪族アルコール、種々の脂肪族カルボン酸エステル、過酸化ベンゾイル、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ブチルアミン、イソプロピルアミン、トリブチルアミン、Ν,Ν,-ジメチルアニリン、Ν,Ν-ジエチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチル-m-トルイジン、N,N-ジメチル-o-トルイジン、ジメチルベンジルアミン、ピリジン、ピコリン、ビニルピリジン、エタノールアミン、プロパノールアミンおよびエチレンジアミン等であるアミン化合物、アルキルアンモニウム塩、アミド結合アンモニウム塩、エステル結合アンモニウム塩、エーテル結合アンモニウム塩およびアルキルイミダゾリニウム塩等の第四級アンモニウム塩、シクロ硫黄化合物および誘導体、ならびにポリアルキレンオキシドおよび誘導体から選択されてよい。
【0055】
ある態様において、促進剤としてのクラウンエーテルが、シアノアクリレート組成物中に含まれてよい。クラウンエーテルの例は、15-クラウン-5、18-クラウン-6、ジベンゾ-18-クラウン-6、トリベンゾ-18-クラウン-6、ジシクロヘキシル-18-クラウン-6、ベンゾ-15-クラウン5、ジベンゾ-24-クラウン-8、ジベンゾ-30-クラウン-10、asym-ジベンゾ-22-クラウン-6、ジメチルシラ-11クラウン-4、ジメチルシラ-14-クラウン-5、ジメチルシラ-17-クラウン-6、ジベンゾ-14-クラウン-4、ジシクロヘキシル-24-クラウン-8、asym-ジベンゾ-22-クラウン-6、シクロヘキシル-12-クラウン-4、1,2-デカリル-15-クラウン-5、1,2-ナフト-15-クラウン-5、3,4,5-ナフチル-16-クラウン-5、1,2-メチル-ベンゾ-18-クラウン-6、1,2-メチルベンゾ-5,6-メチルベンゾ-18-クラウン-6、1,2-t-ブチル-18-クラウン-6、1,2-ビニルベンゾ-15-クラウン-5、1,2-ビニルベンゾ-18-クラウン-6、1,2-t-ブチル-シクロヘキシル-18-クラウン-6、および1,2-ベンゾ-1,4-ベンゾ-5-oxygen-20-クラウン-7を含むがこれらに限定されない。
【0056】
ある態様において、シアノアクリレート組成物に添加される重合促進剤の量は、約10ppm~6000ppmの量である。例えば、重合促進剤は、液状接着剤組成物の、約40ppm~5000ppm、より好ましくは約60ppm~4000ppmの量で存在することができる。使用される重合促進剤の量は、当業者により、公知の技術を使用して、必要以上の実験をすることなく決定することができる。
【0057】
特定の理論に束縛されることは望まないが、開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、例えば、卵管等の体の導管の上皮層および卵管筋層(筋肉層)両方への2層の導管において、細胞および/または組織反応を誘発すると思われる。これらの体層を持つ重合されたシアノアクリレート組成物の化学的および物理的接触によって誘発される細胞および/または組織反応は、数週間から数か月間の持続期間にわたって起こり得る。時間とともに組織に対するその長時間の反応の機能を実施しながら、生分解性シアノアクリレート組成物は、徐々に分解する。特定の理論に束縛されることは望まないが、分解プロセスは、固化(重合された)組成物および上皮層の界面で始まると考えられる。時間とともに、上皮層における重合された組成物の化学結合は、水分および粘膜の分泌細胞によって産生された分泌物に継続的に曝露されることになる。曝露は、重合組された成物の段階的な破壊および除去につながる。重合された組成物の分解および排除に伴い、導管の、曝露されて反応している筋肉層、例えば導管の反対側にあるものは、互いに直接接触し、加熱した際に、一緒にアニールして持続的な閉塞を形成し、導管を封鎖する。重合されたシアノアクリレートは、導管の初期閉塞を形成し、シアノアクリレート組成物は分解し、導管から出るが、影響された組織が持続的な閉塞を形成する。
【0058】
特定の理論に束縛されることは望まないが、本明細書において開示されているシアノアクリレート組成物は、主としてエステル加水分解によって分解されると思われる。例えば、メトキシプロピルシアノアクリレートは、鎖切断分解経路により分解するシアノアクリレートよりも親水性のシアノアクリレートであることが、ShalabyおよびShalaby(第5章、Cyanoacrylate-based Systems as Tissue Adhesives.Absorbable and Biodegradable Polymers、2004、CRC Press LLC)によって見出された。メトキシプロピルシアノアクリレートは、それらのエステル基の加水分解下、ホルムアルデヒドの形成なしに、水溶性副産物を生成する。メトキシプロピルシアノアクリレートの重合は、鎖ペンダントエステル基の加水分解および水溶性で排泄可能な副産物の形成に基づく。一部の副産物はアルコールであり、検出可能なアセテート生成がない、および/または、非常に低レベルのホルムアルデヒドがある。
【0059】
生分解性シアノアクリレート組成物は、プラスチック、アルミニウムまたはガラスで作製されている容器を含むがこれらに限定されない容器に入れられ、その中で保管されてよい。容器の例は、ポーチ、バイアル、組成物をその中に保持する容器上のスワブまたはアプリケーターチップ等のアプリケーター、アンプル、シリンジ、ピペット、ならびにシアノアクリレート組成物を送達することができる医療機器のコンポーネントを含むがこれらに限定されない。
【0060】
本開示の物品は、本明細書において開示されている生分解性シアノアクリレート組成物を含有する容器を含む。例えば、物品(本明細書において開示されている生分解性シアノアクリレート組成物を含有する容器)は、医療機器のコンポーネントであってよい。そのような医療機器容器コンポーネントは、その中に含有されるシアノアクリレート組成物も滅菌されるように、滅菌されてよい。本開示のシアノアクリレート組成物は、未重合状態である特定の時間にわたって含有されていることができ、粘膜等の体表面に適用されると、シアノアクリレートモノマーの重合が進む。
【0061】
そのような物品、開示されている生分解性シアノアクリレート組成物の容器は、医療機器を加えたキット内で提供されてよい。本開示のキットは、開示されている生分解性シアノアクリレート組成物を含有する物品および医療機器、例えば、生分解性シアノアクリレート組成物を送達することができる医療機器を含む。場合により、物品には、乾燥剤が付随してもよい。乾燥剤は、その容器内に提供されてよい。例えば、乾燥剤は、シリカゲルまたは生分解性シアノアクリレート組成物のために少なくとも貯蔵寿命期間にわたって水分を吸収することができる他の公知の乾燥剤であってよい。シリカゲルは、ケイ酸ナトリウムから合成的に作製された二酸化ケイ素の粒状、ガラス質、多孔質形態である。シリカゲルのほとんどの用途は、乾燥されることを必要とし、この場合には、これはシリカキセロゲルと呼ばれる。実用的な目的のために、シリカゲルは、多くの場合、シリカキセロゲルと交換可能である。分子篩は、生分解性シアノアクリレート組成物の容器に提供される乾燥剤様材料の別の例である。
【0062】
乾燥剤は、任意の好適な容器内で提供されてよい。例えば、乾燥剤は、高い湿潤強度を有し、気体および臭気の両方に透過性であるポリエチレン繊維のシートから作製されたポーチ内で提供されてよい。例は、DuPont製のTyvek(登録商標)であり、適切な乾燥剤は、例えば、Sigma-Aldrich、St.Louis、MO63,178、USAから市販されている。例えば、ポーチは、1グラムの乾燥剤を含有してよく、これは、最小でその重量の25%または0.25gを吸着し得る。
【0063】
ある態様において、本明細書において開示されている生分解性シアノアクリレート組成物の容器は、ポリマー性材料を含む容器を含む。例えば、そのような容器は、ポリプロピレン(PP)異相ブロックコポリマーから作製されているか、または少なくともそれで裏打ちされていてよい。そのような材料は、Borealis、Wagramer Strasse 17~19、1220 Vienna、Austriaから入手可能である。開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、プランジャーおよび場合によりシリンジ本体の他端を封鎖するためのキャップを有する、シリンジ本体と同様のポリプロピレンまたはポリプロピレンコポリマー円筒状容器内で提供されてよい。プランジャーは、または生分解性シアノアクリレート組成物と接触するであろう少なくとも一部分は、生分解性シアノアクリレート組成物と接着せず、生分解性シアノアクリレート組成物に重合を開始または分解させない材料で作製されていてよい。例えば、プランジャーおよび/またはその接触部分は、プラスチック、例えばPTFEから作製されていてよい。容器の反対端(例えば、シリンジ出口)のキャップクロージャーは、生分解性シアノアクリレート組成物と接着せず、生分解性シアノアクリレート組成物に重合を開始または分解させない材料で作製されていてよい。例えば、キャップクロージャーおよび/またはその接触部分は、プラスチック、例えばHDPEから作製されていてよい。
【0064】
実施形態において、組成物を同梱している容器は、種々の材料の単層または多層構築物のものであることができる。ある態様において、生分解性シアノアクリレート組成物と接触している最内層は、ポリマーまたはコポリマーで構成される。容器の単層または多層構築物は、液状接着剤組成物の保管および送達に好適な任意の材料の任意の組合せであってよい。例として、好適な材料は、ポリマー、コポリマー、熱可塑性ポリマー、プラスチック、ニトリルポリマーおよびコポリマー、ならびにホイル等の金属を含む。
【0065】
好適な熱可塑性ポリマーは、ポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)を含むがこれらに限定されないポリオレフィン、ならびにポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルを含む。高密度ポリエチレン(HDPE)、高密度架橋ポリエチレン(HDXLPE)、架橋ポリエチレン(XLPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)および超低密度ポリエチレン(VLDPE)、高分子量ポリエチレン(HMWPE)、超低分子量ポリエチレン(ULMWPE)および超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を含む、あらゆるクラスのポリエチレンが好適である。本明細書において開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、好適な容器内で提供されてよく、ここで、好適なとは、生分解性シアノアクリレート組成物を水分含有環境に提供する前に、生分解性シアノアクリレート組成物に重合させないまたはそれを可能にしない容器を意味する。
【0066】
生分解性シアノアクリレート組成物は、その好適な容器内に入れられる。特定の理論に束縛されることは望まないが、シアノアクリレート組成物は、生体において使用するために安全および有効となる滅菌条件を経験する必要がないという点で自己滅菌性であると、ある程度は思われる。本開示は、滅菌条件を経験したまたはしていない生分解性シアノアクリレート組成物を企図している。ヘルスケア規則のために、概して、本明細書において開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、滅菌条件を経験した後に提供される。例えば、好適な容器に入れられた後、次いで、生分解性シアノアクリレート組成物を含有する容器が滅菌される。
【0067】
ある態様において、生分解性シアノアクリレート組成物は、本明細書においてシアノアクリレート(1つまたは複数)と称される、1つのシアノアクリレート化合物もしくはモノマーまたはシアノアクリレート化合物もしくはモノマーのブレンドもしくは混和物を含むシアノアクリレート成分を含む。例えば、シアノアクリレート成分は、1つのシアノアクリレート、または1つを超えるシアノアクリレートをシアノアクリレートのブレンドまたは混和物中に含んでよい。本開示のシアノアクリレート成分は、短い側基、速い重合および速い分解を有するメチル-2-シアノアクリレートと比較して、ならびに、長い側基、遅い重合および非常に遅い分解を有する2-オクチルシアノアクリレートおよびブチルラクトイルシアノアクリレートのブレンドと比較して、長い側基、比較的遅い重合および遅い分解を有する、1つまたは複数のシアノアクリレートを含んでよい。
【0068】
ある態様において、生分解性シアノアクリレート組成物は、30wt%(±5%)の2-ブトキシエチルシアノアクリレートおよび70wt%(±5%)のペンチルシアノアクリレートからなるシアノアクリレート成分と、約500ppmから約700ppmまでの量のラクトンからなる安定化成分と、約4000ppmから6000ppmまでの量のジニトロフェノールからなる重合禁止剤成分とからなる。
【0069】
ある態様において、生分解性シアノアクリレート組成物は、60wt%(±5%)のノニルシアノアクリレートおよび40wt%(±5%)の2-オクチルシアノアクリレートからなるシアノアクリレート成分と、約400ppmから約800ppmまでの量の炭酸からなる安定化成分と、約4000ppmから6000ppmまでの量のヒドロキノンからなる重合禁止剤成分とからなる。
【0070】
ある態様において、生分解性シアノアクリレート組成物は、50wt%(±5%)のn-ブチル-2-シアノアクリレートおよび50wt%(±5%)のセプチルシアノアクリレートからなるシアノアクリレート成分と、約400ppmから約800ppmまでの量の二酸化硫黄からなる安定化成分と、約4000ppmから6000ppmまでの量のブチルヒドロキシアニソールからなる重合禁止剤成分とからなる。
【0071】
ある態様において、生分解性シアノアクリレート組成物は、50wt%(±5%)のメトキシ-n-プロピルシアノアクリレートおよび50wt%(±5%)のメトキシ-イソ-プロピルシアノアクリレートからなるシアノアクリレート成分と、約500ppmから約700ppmまでの量の二酸化硫黄からなる安定化成分と、約4000ppmから6000ppmまでの量のブチルヒドロキシアニソールからなる重合禁止剤成分とからなる。
【0072】
ある態様において、生分解性シアノアクリレート組成物は、30wt%(±5%)のメトキシ-n-プロピルシアノアクリレートおよび70wt%(±5%)のメトキシ-イソ-プロピルシアノアクリレートからなるシアノアクリレート成分と、約600ppmから約700ppmまでの量の二酸化硫黄からなる安定化成分と、約5000ppmから6000ppmまでの量のブチルヒドロキシアニソールからなる重合禁止剤成分とからなる。
【0073】
ある態様において、生分解性シアノアクリレート組成物は、70wt%(±5%)のメトキシ-n-プロピルシアノアクリレートおよび30wt%(±5%)のメトキシ-イソ-プロピルシアノアクリレートからなるシアノアクリレート成分と、約500ppmから約700ppmまでの量の二酸化硫黄からなる安定化成分と、約4000ppmから6000ppmまでの量のブチルヒドロキシアニソールからなる重合禁止剤成分とからなる。
【0074】
ある態様において、生分解性シアノアクリレート組成物は、40wt%(±5%)の2-イソプロポキシエチルシアノアクリレートおよび60wt%(±5%)のペンチルシアノアクリレートからなるシアノアクリレート成分と、約600ppmから約700ppmまでの量の酢酸からなる安定化成分と、約5000ppmから7000ppmまでの量のブチルヒドロキシアニソールからなる重合禁止剤成分とからなる。
【0075】
ある態様において、生分解性シアノアクリレート組成物は、95wt%より大きいまたは99wt%より大きいメトキシプロピルシアノアクリレートからなるシアノアクリレート成分と、約500ppmから約700ppmまでの量の二酸化硫黄からなる安定化成分と、約4000ppmから7000ppmまでの量のブチルヒドロキシアニソールからなる重合禁止剤成分とを含む。
【0076】
ある態様において、生分解性シアノアクリレート組成物は、95wt%より大きいまたは99wt%より大きいメトキシプロピルシアノアクリレートを含むシアノアクリレート成分と、約500ppmから約700ppmまでの量の二酸化硫黄を含む安定化成分と、約4000ppmから7000ppmまでの量のブチルヒドロキシアニソールを含む重合禁止剤成分とを含む。
【0077】
ある態様において、生分解性シアノアクリレート組成物は、95wt%より大きいまたは99wt%より大きいメトキシプロピルシアノアクリレートからなるシアノアクリレート成分と、約500ppmから約700ppmまでの量の二酸化硫黄からなる安定化成分と、約4000ppmから7000ppmまでの量のブチルヒドロキシアニソールからなる重合禁止剤成分とからなる。
【0078】
ある態様において、生分解性シアノアクリレート組成物は、95wt%より大きいまたは99wt%より大きいメトキシイソプロピルシアノアクリレートからなるシアノアクリレート成分と、約500ppmから約700ppmまでの量の二酸化硫黄からなる安定化成分と、約4000ppmから7000ppmまでの量のブチルヒドロキシアニソールからなる重合禁止剤成分とを含む。
【0079】
ある態様において、生分解性シアノアクリレート組成物は、95wt%より大きいまたは99wt%より大きいメトキシイソプロピルシアノアクリレートを含むシアノアクリレート成分と、約500ppmから約700ppmまでの量の二酸化硫黄からなる安定化成分と、約4000ppmから7000ppmまでの量のブチルヒドロキシアニソール(BHA)からなる重合禁止剤成分とを含む。
【0080】
ある態様において、生分解性シアノアクリレート組成物は、95wt%より大きいまたは99wt%より大きいメトキシイソプロピルシアノアクリレートからなるシアノアクリレート成分と、約500ppmから約700ppmまでの量の二酸化硫黄からなる安定化成分と、約4000ppmから7000ppmまでの量のブチルヒドロキシアニソールからなる重合禁止剤成分とからなる。
【0081】
ある態様において、生分解性シアノアクリレート組成物は、70wt%(±5%)のメトキシプロピルシアノアクリレートおよび30wt%(±5%)のメトキシイソプロピルシアノアクリレートからなるシアノアクリレート成分と、約500ppmから約700ppmまでの量の二酸化硫黄からなる安定化成分と、約4000ppmから7000ppmまでの量のブチルヒドロキシアニソールからなる重合禁止剤成分とからなる。
【0082】
ある態様において、生分解性シアノアクリレート組成物は、少なくとも70wt%(±5%)のメトキシプロピルシアノアクリレートおよび少なくとも30wt%(±5%)のメトキシイソプロピルシアノアクリレートを含むシアノアクリレート成分と、約500ppmから約700ppmまでの量の二酸化硫黄からなる安定化成分と、約4000ppmから7000ppmまでの量のブチルヒドロキシアニソールからなる重合禁止剤成分とを含む。
【0083】
ある態様において、生分解性シアノアクリレート組成物は、30wt%(±5%)のメトキシプロピルシアノアクリレートおよび70wt%(±5%)のメトキシイソプロピルシアノアクリレートからなるシアノアクリレート成分と、約500ppmから約700ppmまでの量の二酸化硫黄からなる安定化成分と、約4000ppmから7000ppmまでの量のブチルヒドロキシアニソールからなる重合禁止剤成分とからなる。
【0084】
ある態様において、生分解性シアノアクリレート組成物は、少なくとも30wt%(±5%)のメトキシプロピルシアノアクリレートおよび少なくとも70wt%(±5%)のメトキシイソプロピルシアノアクリレートを含むシアノアクリレート成分と、約500ppmから約700ppmまでの量の二酸化硫黄からなる安定化成分と、約4000ppmから7000ppmまでの量のブチルヒドロキシアニソールからなる重合禁止剤成分とを含む。
【0085】
ある態様において、生分解性シアノアクリレート組成物は、50wt%(±5%)のメトキシプロピルシアノアクリレートおよび50wt%(±5%)のメトキシイソプロピルシアノアクリレートからなるシアノアクリレート成分と、約500ppmから約700ppmまでの量の二酸化硫黄からなる安定化成分と、約4000ppmから7000ppmまでの量のブチルヒドロキシアニソールからなる重合禁止剤成分とからなる。
【0086】
ある態様において、生分解性シアノアクリレート組成物は、少なくとも50wt%(±5%)のメトキシプロピルシアノアクリレートおよび少なくとも50wt%(±5%)のメトキシイソプロピルシアノアクリレートを含むシアノアクリレート成分と、約500ppmから約700ppmまでの量の二酸化硫黄からなる安定化成分と、約4000ppmから7000ppmまでの量のブチルヒドロキシアニソールからなる重合禁止剤成分とを含む。
【0087】
ある態様において、生分解性シアノアクリレート組成物は、60wt%(±5%)の2-イソプロポキシエチルシアノアクリレートおよび40wt%(±5%)のペンチルシアノアクリレートからなるシアノアクリレート成分と、約600ppmから約700ppmまでの量の酢酸からなる安定化成分と、約5000ppmから7000ppmまでの量のカテコールからなる重合禁止剤成分とからなる。
【0088】
ある態様において、生分解性シアノアクリレート組成物は、50wt%(±5%)の2-イソプロポキシエチルシアノアクリレートおよび50wt%(±5%)のペンチルシアノアクリレートからなるシアノアクリレート成分と、約600ppmから約700ppmまでの量の酢酸からなる安定化成分と、約5000ppmから7000ppmまでの量のカテコールからなる重合禁止剤成分とからなる。
【0089】
本明細書において開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、機能的特徴によって定義することができる。ヒトおよび動物における導管閉塞の方法に好適な生分解性シアノアクリレート組成物は、1つまたはすべての生体適合性特徴付け試験(例えば、ISO標準によって測定される)に合格し、細胞毒性試験(例えば、ISO 10993-5:2009によって測定される)に不合格となる、組成物を含む。本開示の生分解性シアノアクリレート組成物は、シアノアクリレート成分と、安定化成分と、重合禁止剤成分とを含み、感作(例えば、ISO 10993-10:2010によって測定される)、刺激(例えば、ISO 10993-10:2010によって測定される)、膣刺激(例えば、ISO 10993-10:2010によって測定される)、発熱性(例えば、ISO 10993-11:2010によって測定される)、全身性急性毒性(例えば、ISO 10993-11:2010によって測定される)、全身性亜慢性毒性(例えば、ISO 10993-11:2010によって測定される)、遺伝毒性(例えば、ISO 10993-3:2003によって測定される)、げっ歯類血液小核アッセイ(例えば、ISO 10993-3:2003によって測定される)およびマウスリンパ腫変異誘発(例えば、ISO 10993-3:2003によって測定される)について2つ以上の生体適合性試験に合格し、細胞毒性試験(例えば、ISO 10993-5:2009によって測定される)に不合格となる。ヒトまたは動物治療に使用される組成物は、使用しても安全であるとみなされるこれらの記載した生体適合性試験に合格しなくてはならず、故に、ある態様において、開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、これらの試験のそれぞれ(感作、刺激、膣刺激、発熱性、全身性急性毒性、全身性亜慢性毒性、遺伝毒性、げっ歯類血液小核アッセイおよびマウスリンパ腫変異誘発)に合格し、細胞毒性試験に不合格となる。
【0090】
例えば導管閉塞のための本明細書において開示されている組成物は、シアノアクリレート成分と、安定剤成分と、重合禁止剤成分とを含み、細胞毒性試験(例えば、ISO 10993-5:2009によって測定される)に不合格となり、遺伝毒性についての生体適合性試験(例えば、ISO 10993-3:2003によって測定される)に合格する。導管閉塞のための組成物は、シアノアクリレート成分と、安定剤成分と、重合禁止剤成分とを含み、細胞毒性試験(例えば、ISO 10993-5:2009によって測定される)に不合格となり、例えば、少なくとも遺伝毒性についての生体適合性試験(例えば、ISO 10993-3:2003によって測定される)に合格する。
【0091】
ある態様において、本明細書において開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、例えば、公知のシアノアクリレート組成物、Histoacrylと比較して、低い重合熱を有する。Aesculap AG、Am AESCULAP-Platz、D-78532 Tuttlingen/Donau、AT等の商業供給業者から入手可能なHistoacrylは、ブチルシアノアクリレートを含むシアノアクリレート組成物である。例において、体の導管を模倣するためにブタ皮ポーチを使用して、ブタ皮への生分解性シアノアクリレート組成物の投与後に見られた温度の増大(ここでは重合熱)は、1℃未満(すなわち、およそ0.7℃)であったのに対し、Histoacrylの温度の増大(ここでは重合熱)は、6.7℃であった。ある態様において、例えば導管閉塞のための本明細書において開示されている組成物は、シアノアクリレート成分と、安定剤成分と、重合禁止剤成分とを含み、6℃未満の、5℃未満の、4℃未満の、3℃未満の、2℃未満の、1℃未満の、または約0.5℃から約6℃までの範囲およびその間のすべての範囲内の、低い重合熱温度を有する。ある態様において、例えば導管閉塞のための本明細書において開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、シアノアクリレート成分と、安定剤成分と、重合禁止剤成分とを含み、0.5℃から1.0℃までの範囲内の低い重合熱温度を有する。重合熱は、例えばASTM D3418-12elに基づく示差走査熱量測定によって測定されてよい。
【0092】
ある態様において、例えば導管閉塞のための本明細書において開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、シアノアクリレート成分と、安定剤成分と、重合禁止剤成分とを含み、これは、急速なインビトロ硬化時間または凝結時間を有するが、有害な熱を放出しない。硬化時間または凝結時間は、組成物の少なくとも一部分の重合速度を指す。例えば、本明細書において開示されている生分解性シアノアクリレート組成物をブタ卵管中で試験し、投与された生分解性シアノアクリレート組成物の完全硬化は、2分で見られた。ある態様において、本明細書において開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、投与された組成物の少なくとも一部分において、10秒以上の、15秒以上の、20秒以上の、30秒以上の、40秒以上の、50秒以上の、60秒以上の、70秒以上の、80秒以上の、90秒以上の、100秒以上の、110秒以上の、または120秒以上の硬化時間を有する。ある態様において、本明細書において開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、2分以下の、110秒未満の、100秒未満の、90秒未満の、80秒未満の、70秒未満の、60秒未満の、50秒未満の、40秒未満の、30秒未満の、25秒未満の、20秒未満の、15秒未満の、または10秒未満の硬化時間を有する。ある態様において、本明細書において開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、10秒から120秒の間の硬化時間(または凝結時間(setting time))を有する。
【0093】
ある態様において、本明細書において開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、重合した場合、可撓である。可撓性は、自由曲げ試験によって評定されてよく、ここで、組成物は、ロッドに重合され、ロッドは、180°曲げられる。損傷または変化の程度を、ロッドの破砕、表面状態および亀裂によって記録する。実験では、開示されている生分解性シアノアクリレート組成物の重合ロッドをHistoacryl Blue(ブチルシアノアクリレート)の重合ロッドと比較し、開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、損傷も有意な変化もなく180度曲げられたのに対し、Histoacryl Blueロッドは、180度の曲げに到達する前に、粉々に砕けた。ある態様において、本明細書において開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、重合後、この試験による測定で、可撓である。
【0094】
ある態様において、例えば導管閉塞のための本明細書において開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、シアノアクリレート成分と、安定剤成分と、重合禁止剤成分とを含み、これは、少なくとも遺伝毒性についての生体適合性試験には合格し、細胞毒性についての生体適合性試験には不合格となり、0.5℃から1.0℃までの範囲内の低い重合熱温度を有し、30cP以下の粘度、10秒から30秒の間の硬化または凝結時間を有し、可撓であり、0.5年より大きい貯蔵寿命であり、場合により、組成物は滅菌されてよい。
【0095】
本開示の生分解性シアノアクリレート組成物は、医療および獣医学的用途において使用するために好適である。そのような用途のための生分解性シアノアクリレート組成物は、好ましくは、無菌である。故に、本開示は、本明細書において記述されている無菌生分解性シアノアクリレート組成物を含む。本明細書において開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、一般的な技術によって滅菌されてよい。シアノアクリレート接着剤組成物の滅菌は、化学的、物理的および照射方法を含むがこれらに限定されない方法によって遂行される。化学的方法の例は、エチレンオキシドへの曝露を含むがこれに限定されない。照射方法の例は、ガンマ線照射、電子線照射およびマイクロ波照射を含むがこれらに限定されない。好ましい滅菌方法は、化学的滅菌および電子線滅菌である。例えば、開示されている生分解性シアノアクリレート組成物を含有する好適な容器は、10~20kGy線量の電子線加工によって滅菌されてよい。そのような滅菌方法は、当技術分野において公知であり、例えば、ISO 11137-2によって教示される。概して、本開示の方法は、少なくともシアノアクリレート成分と、安定剤成分と、重合禁止剤成分とを含む、生分解性シアノアクリレート組成物を、体表または体内の部位に、例えば、導管を閉塞させるために導管またはその付近に、提供するおよび/または投与するもしくは塗布するステップを含む。ある態様において、本明細書において開示されているのは、導管、例えば、哺乳動物の生殖管の閉塞のための例示的な組成物である。そのような組成物は、ヒトまたは他の動物の他の生理学的システムおよび生物学的部位において、そのような部位が自然にそこにあるのかまたは例えば外科的手段によって作成されたものであるのかにかかわらず使用することができ、そのような使用は、本開示によって企図されている。
【0096】
本開示の一態様は、哺乳類の雌のための避妊の方法であって、生分解性シアノアクリレート組成物を、標的部位に、例えば、子宮の副角側面から各卵管に投与し、ここで、生分解性シアノアクリレート組成物は、各卵管において閉塞を作成することができる、方法を含む。
【0097】
体管の閉塞を必要とする1つの領域は、卵管の閉塞による受胎能の制御である。雌において不妊症を自然発生させる主な原因は、卵巣から子宮への卵管の閉鎖であることが、当技術分野において周知である。この自然条件を有する雌は、通常、それが存在することに気付くことさえなく、不妊であること以外にはいかなる有害な副作用も被らない。
【0098】
自然発生の卵管閉塞の観察に基づき、外部介入による卵管閉塞の作成は、雌の避妊を引き起こす有効な手段である。1980年代初頭において、メチルシアノアクリレートのシアノアクリレート組成物は、卵管を閉塞させることによる雌の避妊に利用された。この高反応性のシアノアクリレートを安定させるために、高レベルの酸が利用された。この組成物は、メチルシアノアクリレート材料の取り扱いの難しさ、許容できるものよりも低い有効率およびメチルシアノアクリレート材料の複数の用途を使用する必要性により、決して商業的に実現可能にはならなかった。
【0099】
卵管において閉塞を作成するために閉塞組成物を利用することは、それぞれその全体が本明細書に組み込まれる、8,048,086、8,048,101、8,052,669、8,316,853、8,316,854、8,336,552、8,324,193、8,695,606、9,034,053、8,726,906、9,220,880およびそれらに対する優先権を主張する出願において記述されているもの等、子宮内カテーテルを経由して非外科的に送達され得るならば、理想的であろう。永久避妊を実現するための非外科的選択肢は限定され、卵管内に堆積して長期閉塞を作成する永久インプラントを伴う。キナクリンの使用は、卵管上皮の瘢痕化を作成し卵管閉鎖を引き起こすように十分に確立されているが、導管に含有不可能であり、腹膜腔への流出を可能にするという点で、有意な限定を有する。
【0100】
例えば、ある態様において、方法は、カテーテルまたは1つもしくは複数のカテーテルを含む送達システムを使用して、子宮腔副角へおよび卵管に向けられて、液体生分解性シアノアクリレート組成物を送達するステップを含む。有効量の本明細書において開示されている生分解性シアノアクリレート組成物が送達され、約0.3から1.0mLまでの液体シアノアクリレート組成物を含んでよい、または0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0mLが送達されてよい。より大きいまたは小さい量を送達してよいが、方法は、卵管全体を満たすことではなく、例えば管の間質(壁内)部分に最小限に送達することおよび卵管の近位部分において閉塞を形成することを企図している。生分解性シアノアクリレート組成物は、子宮腔および卵管内の組織および流体との接触時に重合する(凝固する)。生分解性シアノアクリレート組成物は、重合されたシアノアクリレート組成物の化学結合および物理的接触により、主として角膜領域の上皮内層および内腔周囲に接着すると思われる。生分解性シアノアクリレート組成物は、上皮の起伏のある構造内の空間を占有する。
【0101】
生分解性シアノアクリレート組成物は、重合プロセスの最中および後に標的エリアに実質的に閉じ込められると思われる。これは、部分的には、シアノアクリレート組成物を、制御された(例えば、緩徐)方式でおよび離散体積で送達することによるものであり得る。当業者ならば、重合性組成物をいかにして送達するかを理解するであろう。
【0102】
開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、卵管の上皮内層においておよび卵管筋層(筋肉層)に対しての両方で細胞および/または組織炎症型反応を誘発すると思われる。細胞および/または組織反応は、卵管内層周囲との化学的および物理的接触によって誘発され、数週間にわたって持続し得る。長時間の細胞および/または組織反応は、とりわけ卵管内膜よりもゆっくりと再生する卵管筋層において、より短い細胞傷害持続期間にわたって起こり得る典型的な再生治癒作用を防止する。短期間の炎症を修復する典型的な線維素溶解なしに、反応組織は機能組織を治癒させず、代わりに、非機能性瘢痕組織の形成が行われる。重合された生分解性シアノアクリレート組成物が数週間かけて組織に長時間の反応を提供している間、生分解性シアノアクリレート組成物は、徐々に分解している。時間とともに、重合された生分解性シアノアクリレート組成物の表面結合は、粘膜の水分および分泌細胞によって産生された分泌物に継続的に曝露されることになると考えられる。この曝露は、生分解性シアノアクリレート組成物の徐々の崩壊および除去につながる。生分解性シアノアクリレート組成物が卵管のあるエリアから除去されると、内腔閉塞および瘢痕化によって閉塞が起こる。重合された生分解性シアノアクリレート組成物が分解するにつれて、離脱する重合された材料の分解生成物および/または固体片は、卵管液によっておよび子宮前繊毛拍動によって子宮腔の方向へ、次いで、膣外へ移動することになると予測される。
【0103】
子宮内カテーテルを経由して非外科的に送達される生分解性シアノアクリレート組成物による卵管の閉塞成功を提供するために、下記が望ましい:
【0104】
滅菌の前および後に保管される際ならびに送達中に液体形態のままである生分解性シアノアクリレート組成物、したがって、生分解性シアノアクリレート組成物は、安定に製剤化されてよく、時期尚早の重合を起こさないでよい;
【0105】
生分解性シアノアクリレート組成物は、卵管等の標的部位にまたはその中に向けられた子宮内カテーテルを経由して移動し、それによって送達されるために好適な粘度のものであってよい;
【0106】
卵管等の標的部位に送達されると、生分解性シアノアクリレート組成物は、標的部位、例えば卵管からの動きを防止するために、迅速に、例えば数秒以内に、重合し得る;
【0107】
得られた硬化ポリマー(重合された生分解性シアノアクリレート組成物材料)は、局所反応を引き出し得、一方、ポリマーは、分解、破壊および/または解体し始める;
【0108】
得られた硬化ポリマー(重合された生分解性シアノアクリレート材料)は、耐久性を欠く場合があり、時間とともに導管から脱落することは、シアノアクリレート組成物に対する導管の応答およびその治癒反応による耐久性のある閉塞を可能にする;
【0109】
生分解性シアノアクリレート組成物が投与され、得られた硬化組成物は、非毒性であり、閉塞組成物が提供される対象に生体適合性であるが、精子等の他の細胞には有害であり得る。
【0110】
生分解性シアノアクリレート組成物は、自然にソノルーセントであってもよいし、あるいは、材料または空気もしくはガスの微小気泡等の気泡の導入によってソノルーセンシーが強化されるように修正されてもよい。これらの微小気泡は、組成物内に存在してよく、または組成物が固体形態に重合する際に存在してよい。
【0111】
本明細書において開示されている方法は、生分解性シアノアクリレート組成物を閉塞部
位またはその付近に投与するステップと、シアノアクリレート組成物に、その部位においてインサイチュで重合させるステップとを含む。方法は、閉塞部位を視察するステップをさらに含んでよい。方法は、部位の閉塞が起こったことを試験するステップをさらに含んでよい。シアノアクリレート組成物を1つまたは複数の哺乳類の卵管に送達するための送達方法は、米国特許第8,048,086号、同第8,048,101号、同第8,052,669号、同第8,316,853号、同第8,316,854号、同第8,336,552号、同第8,324,193号、同第8,695,606号、同第9,034,053号、同第8,726,906号、同第9,220,880号、およびそれらに対する優先権を主張する出願において教示されており、そのそれぞれは、その全体が本明細書に組み込まれる。卵管を評価するための方法は、当技術分野において公知であり、米国特許第9,554,826号および/またはUSSN13/292,990を含んでよく、そのそれぞれは、その全体が本明細書に組み込まれる。2つのカテーテルが生分解性シアノアクリレート組成物の送達に使用される方法において、同じ生分解性シアノアクリレート組成物の2つの容器、例えば2つのシリンジが提供され得る。
【0112】
包装および滅菌
【0113】
本明細書において開示されている組成物および方法では、生分解性シアノアクリレート組成物は、無菌のままで提供され得る。滅菌技術が包装された組成物に対して行われる場合、滅菌時に、滅菌された組成物を無菌のままで運送できることが望ましいであろう。シアノアクリレートエステルを含有する組成物は、多くの場合、組織または流体との接触時に瞬時に始まって、多くの場合、急速に重合する。
【0114】
生分解性シアノアクリレート組成物は、生分解性シアノアクリレート組成物と反応せず、時期尚早の重合、すなわち、組成物が標的部位に提供される前の重合を引き起こさない、容器内で提供されてよい。好適な材料の容器の例は、本明細書において開示されている。
【0115】
キット
【0116】
本開示は、容器内に含有される本明細書において開示されている生分解性シアノアクリレート組成物、および場合により乾燥剤をさらに含む、キットを含む。キットは、その使用説明書をさらに含んでよい。本明細書において開示されている組成物は、生分解性シアノアクリレート組成物を送達するための医療機器を加えたキット内で提供されてよい。そのようなキットは、医療機器および生分解性シアノアクリレート組成物の使用指示書も含む。キットは、場合により乾燥剤をさらに含でよい、好適な容器内の生分解性シアノアクリレート組成物と、生分解性シアノアクリレート組成物を送達するための医療機器と、組成物および医療機器の使用説明書とを含んでよい。
【0117】
本明細書において開示されているのは、生分解性シアノアクリレート組成物を含む、組成物、方法、物品、キットおよび医療機器である。開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、a)少なくとも1つのシアノアクリレートを含むシアノアクリレート成分であって、80wt%以上であるシアノアクリレート成分と、b)500ppmから1500ppmまでの範囲内の安定剤成分と、c)4000から7000ppmまでの範囲内の重合禁止剤成分とを含む。開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、シアノアクリレート成分が、少なくとも2つのシアノアクリレートモノマーを含む、生分解性シアノアクリレート組成物を含んでよい。
【0118】
開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、シアノアクリレートモノマーが、メチルシアノアクリレート、エチルシアノアクリレート、プロピルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート、ペンチルシアノアクリレート、ヘキシルシアノアクリレート、セプチルシアノアクリレート、オクチルノニルシアノアクリレート、デシル2-シアノアクリレート、アリルシアノアクリレート、メトキシエチルシアノアクリレート、メトキシイソプロピルシアノアクリレート、メトキシプロピルシアノアクリレート、メトキシブチルシアノアクリレート、メトキシペンチルシアノアクリレート、またはそれらの組合せである、生分解性シアノアクリレート組成物を含んでよい。
【0119】
開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、安定剤成分が、アルキルスルフィド、アルキルスルフェート、アルキルスルホニル、アルキルスルホン、アルキルスルホキシド、亜硫酸アルキル、スルトン、二酸化硫黄、三酸化硫黄、スルホン酸、ラクトン、三フッ化ホウ素、酢酸、もしくは3-スルホレン、メルカプタン、またはそれらの組合せを含む、生分解性シアノアクリレート組成物を含んでよい。開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、安定剤成分が、二酸化硫黄または三酸化硫黄を含む、生分解性シアノアクリレート組成物を含んでよい。
【0120】
開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、重合禁止剤成分が、ブチルヒドロキシアニソール(BHA);ヒドロキノン;カテコール;ヒドロキノンモノメチルエーテルおよびブチルヒドロキシアニソール等のヒンダードフェノール;4-エトキシフェノール;ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT、2,6-ジ-tert-ブチルブチルフェノール)、4-メトキシフェノール(MP);3-メトキシフェノール;2-tert-ブチル-4-メトキシフェノール;もしくは2,2-メチレン-ビス-(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、またはそれらの組合せを含む、生分解性シアノアクリレート組成物を含んでよい。開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、重合禁止剤成分が、BHAまたはBHTを含む、生分解性シアノアクリレート組成物を含んでよい。
【0121】
開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、硫化水素、炭酸、トリアセチルメタン、酢酸、安息香酸、ジニトロフェノール、ギ酸、亜硝酸、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、クロロ酢酸、リン酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリニトロフェノール、トリフルオロ酢酸、硫酸、過塩素酸、トルエンスルホン酸もしくはフルオロスルホン酸、またはそれらの組合せを含んでよい。
【0122】
開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、可塑剤、生体適合剤、増粘剤、医薬、架橋剤、染料もしくは顔料、保存料、抗菌剤、または重合開始剤もしくは促進剤を含んでよい。開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、無菌である、生分解性シアノアクリレート組成物を含んでよい。
【0123】
開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、医療機器のコンポーネントである容器内に含有される、生分解性シアノアクリレート組成物を含んでよい。
【0124】
本明細書において開示されている生分解性シアノアクリレート組成物の1つまたは複数を含む、キットが開示される。キットは、無菌である生分解性シアノアクリレート組成物を含んでよく、これは、組成物が、本明細書において開示されている手順および方法によって滅菌されたことを意味する。
【0125】
開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、a)少なくとも1つのシアノアクリレートを含むシアノアクリレート成分であって、90wt%以上であるシアノアクリレート成分と、b)500ppmから1500ppmまでの範囲内の安定剤成分と、c)4000から7000ppmまでの範囲内の重合禁止剤成分とを含む。
【0126】
開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、a)少なくとも1つのシアノアクリレートを含むシアノアクリレート成分であって、90wt%以上であるシアノアクリレート成分と、b)500ppmから1500ppmまでの範囲内の安定剤成分と、c)4000から7000ppmまでの範囲内の重合禁止剤成分とを含み、ここで、組成物は、ISO試験条件下で、ニュートラルレッド(Neutral Red)細胞毒性試験(ISO 10993-5:2009によって測定される)に不合格となり、少なくとも遺伝毒性についての生体適合性試験(ISO 10993-3:2003によって測定される)に合格する。開示されている生分解性シアノアクリレート組成物は、細胞毒性試験に不合格となり、感作(ISO 10993-10:2010によって測定される)、刺激(ISO 10993-10:2010によって測定される)、膣刺激(ISO 10993-10:2010によって測定される)、発熱性(ISO 10993-11:2010によって測定される)、全身性急性毒性(ISO 10993-11:2010によって測定される)、全身性亜慢性毒性(ISO 10993-11:2010によって測定される)、遺伝毒性(ISO 10993-3:2003によって測定される)、げっ歯類血液小核アッセイ(ISO 10993-3:2003によって測定される)およびマウスリンパ腫変異誘発(ISO 10993-3:2003によって測定される)についての生体適合性試験のそれぞれに合格する、生分解性シアノアクリレート組成物を含んでよい。
【0127】
対象において1つまたは複数の導管を閉塞するための開示されている方法は、開示されている無菌生分解性シアノアクリレート組成物を閉塞部位またはその付近に投与するステップと、生分解性シアノアクリレート組成物が重合し、導管において一時的な重合閉塞を提供し、時間とともに、重合された材料が分解され、細胞閉塞が部位において形成されるように、組成物を部位に維持するステップとを含む。
【0128】
医療機器のコンポーネントは、開示されている生分解性シアノアクリレート組成物を含有する容器を含んでよい。コンポーネントは、容器、生分解性シアノアクリレート組成物、または両方が、無菌である、コンポーネントを含んでよい。
【0129】
定義
【0130】
本明細書において使用される場合、用語「導管」は、天然か合成かにかかわらず、生物システムにおいてガス、流体または固体を運搬する、任意の管、ダクトまたは通路を指すものとする。
【0131】
本明細書において使用される場合、「閉塞させる」は、導管を経由するガス、流体または固体の輸送を、部分的にまたは完全に閉鎖することを指す。用語「閉塞」は、本明細書において使用される場合、導管内の閉鎖を指し、ここで、そのような閉鎖は、導管を経由するガス、流体または固体の輸送の部分的な制限または完全な中断をもたらす。本明細書において使用される場合、「閉塞開始材料」および「生分解性シアノアクリレート組成物」は、交換可能に使用され、その中で閉塞を達成することによって導管を閉塞させることができる組成物を指す。本明細書において使用される場合、閉塞開始材料は、導管内に入れられたまたは挿入された初期組成物(例えば、生分解性シアノアクリレート組成物)が、初期閉塞を形成し、曝露により、材料は、その導管の組織との相互作用を経由して、流体または固体等の導管を以前は通過した材料が、閉塞エリアにおいてはもはや導管を通過できないように、導管を封鎖するまたは閉塞させるように誘発するまたはそうさせることを意味する。導管内で形成される閉塞は、閉塞開始材料の成分を含んでもよいし、または含まなくてもよい。例えば、閉塞開始材料は生分解されているため、閉塞は、対象の細胞または細胞材料のみを含んでよい。最初に、閉塞開始材料の導管への提供後、部位における閉塞は、生分解性シアノアクリレート組成物を含んでよく、生分解性シアノアクリレート組成物が分解するにつれて、閉塞部位に残っている閉塞開始材料/シアノアクリレート組成物は少なくなる。該用語の意味は、文中でのその使用から決定され得る。シアノアクリレート組成物、生分解性シアノアクリレート組成物、閉塞組成物、シアノアクリレート材料、閉塞開始材料、閉塞開始組成物および閉塞材料が使用される用語である。
【0132】
本明細書において交換可能に着手する。初期段階において、液体生分解性シアノアクリレート組成物の送達後、閉塞は、重合された生分解性シアノアクリレート組成物によって主として形成されてよい。時間とともに、重合された生分解性シアノアクリレート組成物が崩壊するまたは送達部位から除去されるにつれて、細胞反応ならびに部位の細胞による瘢痕組織または治癒転帰によって、閉塞が形成される。
【0133】
本開示の生分解性シアノアクリレート組成物は、液体、半固体、ゲル、固体およびそれらの組合せである材料を含んでよい。シアノアクリレート材料は、導管の所望の部位においてインサイチュで硬化する組成物を含んでよい。生分解性シアノアクリレート組成物は、インサイチュで重合する材料をさらに含んでよく、ここで、重合は、導管の部位においてまたは部位への配置前のいずれかで開始されてよい。
【0134】
本明細書において使用される場合、有機化合物を含む化合物についての命名法は、一般名、IUPAC、IUBMB、または命名法のためのCAS勧告を使用して与えられ得る。1つまたは複数の立体化学的特色が存在する場合、立体化学についてのカーン・インゴルド・プレローグ則を用いて、立体化学優先順位、EIZ規格等を指定することができる。当業者ならば、名称が与えられたら、命名規則を使用する化合物構造の体系的還元によって、またはCHEMDRAW(商標)(Cambridgesoft Corporation、U.S.A.)等の市販のソフトウェアによってのいずれかで、化合物の構造を容易に解明することができる。
【0135】
本明細書および添付の請求項において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明確に他の意味に解すべき場合を除き、複数の指示対象を含む。故に、例えば、「官能基」、「アルキル」または「残基」への言及は、2つ以上のそのような官能基、アルキルまたは残基等の混合物を含む。
【0136】
本明細書および結びの請求項における、組成物中の特定の要素または成分の重量部への言及は、重量部が表現されている組成物または物品中のその要素または成分と任意の他の要素または成分との間の重量関係を表示する。故に、2重量部の成分Xおよび5重量部の成分Yを含有する化合物において、XおよびYは、2:5の重量比で存在し、追加成分が化合物に含有されるか否かにかかわらず、そのような比で存在する。
【0137】
成分の重量パーセント(wt.%)は、具体的に矛盾する記載がない限り、その成分が含まれる製剤または組成物の総重量に基づく。
【0138】
本明細書において使用される場合、ある化合物がモノマーまたは化合物と称される際、これは、1つの分子または1つの化合物として解釈されないことが理解される。例えば、2つのシアノアクリレートモノマーは、2つの異なるシアノアクリレートモノマーを指し、2つの分子を指さない。
【0139】
本明細書において使用される場合、用語「任意選択の(optional)」または「場合により(optionally)」は、その後に記述されている事象または状況が起こっても起こらなくてもよいこと、ならびに該記述が、前記事象または状況が起こる事例および起こらない事例を含むことを意味する。
【0140】
本明細書において使用される場合、用語「約」、「およその」および「約~において」は、問題の量または値が、指定される厳密値または請求項において列挙されているまたは本明細書において教示されているものと同等の結果または効果を提供する値であることができることを意味する。すなわち、量、サイズ、製剤、パラメーター、ならびに他の分量および特徴は厳密ではなく厳密である必要がないが、およそのおよび/またはより大きいもしくはより小さいものであってよく、所望により、公差を反映すること、換算係数、四捨五入、測定誤差等、および同等の結果または効果が取得されるような当業者に公知の他の要因であってよいことが理解される。一部の状況において、同等の結果または効果を提供する値を合理的に決定することができない。そのような場合には、概して、本明細書において使用される場合、「約」および「約~において」は、別段の指示も推論もない限り、示されている公称値±10%変動を意味することが理解される。概して、量、サイズ、製剤、パラメーターまたは他の分量もしくは特徴は、そのように明示的に記載されているか否かにかかわらず、「約」、「およその」または「約~において」である。「約」、「およその」または「約~において」が定量値の前に使用される場合、パラメーターは、別段具体的に記載されているのでない限り、具体的な定量値自体も含むことが理解される。
【0141】
本明細書において使用される場合、「硬化する」は、導管内の所望の部位における配置または挿入後のシアノアクリレート材料の、物理的、化学的、または物理的および化学的特性の変化を意味し、ポリマー性材料について概して理解されているように、「硬化する」は、組成物が液体から固体または半固体へ転換することを意味する。
【0142】
本明細書において使用される場合、用語「対象」は、哺乳動物、魚類、鳥類、爬虫類または両生類等の脊椎動物であることができる。故に、本明細書において開示されている方法の対象は、ヒト、非ヒト霊長類、ウマ、ブタ、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ネコ、モルモットまたはげっ歯類であることができる。該用語は、特定の年齢または性別を表示しない。故に、成体および新生児対象ならびに胎児は、雄雌を問わず、網羅されるように意図されている。ある態様において、哺乳類対象は、ヒトである。患者は、疾患または障害に罹患している対象を指す。用語「患者」は、ヒトおよび獣医対象を含む。開示されている方法の一部の態様において、対象は、シアノアクリレート組成物の投与の前に導管を閉塞させることを含む治療を必要とすると診断されている。一部の態様において、対象は、投与するステップの前に、シアノアクリレート組成物の投与を必要とすると診断されている。
【0143】
本明細書において使用される場合、用語「投与すること」および「投与」は、開示されているシアノアクリレート組成物を対象に提供する任意の方法を指す。
【0144】
本明細書において使用される場合、用語「を含む(comprises)」、「を含む(comprising)」、「を含む(includes)」、「を含む(including)」、「を含有する」、「を特徴とする」、「を有する(has)」、「を有する(having)」またはそれらの任意の他の変化形は、非排他的な包含を網羅するように意図されている。例えば、要素の一覧を含むプロセス、方法、物品または装置は、それらの要素のみに必ずしも限定されず、明示的に記載されていない、またはそのようなプロセス、方法、物品もしくは装置に固有の、他の要素を含んでよい。
【0145】
移行句「からなる」は、請求項において定められていない任意の要素、ステップまたは原料を除外し、通常それに関連する不純物を除き、列挙されているもの以外の材料の包含に請求項を閉鎖する。語句「からなる」が、プリアンブルの直後に続くのではなく請求項本体の節において出現する場合、これは、その節に明記されている要素のみを限定し、他の要素は総じて請求項から除外されない。
【0146】
移行句「から本質的になる」は、請求項の範囲を、定められている材料またはステップならびに特許請求されている発明の基本的かつ新規の特徴に著しく影響しないものに限定する。「から本質的になる」請求項は、「からなる」形式で書かれている閉鎖請求項と、「を含む」形式で起草されている完全開放請求項との間の妥協点を占有する。そのような添加剤に適切なレベルの本明細書において定義される任意選択(optional)の添加剤および微量不純物は、用語「から本質的になる」によって組成物から除外されない。
【0147】
組成物、プロセス、構造、または組成物、プロセスもしくは構造の一部分が、本明細書において「を含む」等のオープンエンドな用語を使用して記述されている場合、別段の記載がない限り、該記述は、組成物、プロセス、構造、または組成物、プロセスもしくは構造の一部分の要素「から本質的になる」または「からなる」、実施形態も含む。
【0148】
冠詞「a」および「an」は、本明細書において記述されている組成物、プロセスまたは構造の種々の要素および成分と関連付けて用いられてよい。これは、便宜上にすぎず、組成物、プロセスまたは構造の一般的な意味を与えるためである。そのような記述は、「1つまたは少なくとも1つ」の要素または成分を含む。その上、本明細書において使用される場合、単数形の冠詞は、複数が除外されることが具体的な文脈から明らかでない限り、複数の要素または成分の記述も含む。
【0149】
用語「約」は、量、サイズ、製剤、パラメーター、ならびに他の分量および特徴が、厳密ではなく厳密である必要がないが、およそのおよび/またはより大きいもしくはより小さいものであってよく、所望により、公差を反映すること、換算係数、四捨五入、測定誤差等、および当業者に公知の他の要因であってよいことを意味する。概して、量、サイズ、製剤、パラメーターまたは他の分量もしくは特徴は、そのように明示的に記載されているか否かにかかわらず、「約」または「およその」である。
【0150】
用語「または」は、本明細書において使用される場合、包括的である、すなわち、語句「AまたはB」は、「A、B、またはAおよびBの両方」を意味する。より具体的には、条件「AまたはB」は、下記のいずれか1つによって満足される:Aが真であり(または存在し)、かつBが偽である(または存在しない);Aが偽であり(または存在せず)、かつBが真である(または存在する);またはAおよびBの両方が真である(または存在する)。排他的な「または」は、本明細書においては、例えば、「AまたはBのいずれか」および「AまたはBの一方」等の用語によって指定される。
【0151】
加えて、本明細書において明記されている範囲は、明示的に別段の記載がない限り、それらのエンドポイントを含む。さらに、量、濃度、または他の値もしくはパラメーターが、範囲、1つもしくは複数の好ましい範囲または好ましい上限値および好ましい下限値の一覧として与えられる場合、これは、任意の範囲上限または好ましい値および任意の範囲下限または好ましい値の任意の対から形成されるすべての範囲を、そのような対が別個に開示されているか否かにかかわらず、具体的に開示するものとして理解されるべきである。本発明の範囲は、範囲を定義する場合に列挙されている具体的な値に限定されない。
【0152】
材料、方法または機械が、本明細書において、用語「当業者に公知の」、「慣例的な」または同義語もしくは語句とともに記述される場合、本願出願時に慣例的である材料、方法および機械を意味する用語は、この記述によって包括される。現在は慣例的ではないが、同様の目的に好適であるとして当技術分野において認識されるであろう材料、方法および機械も、包括される。
【0153】
別段の記載がない限り、すべてのパーセンテージ、部、比および類似の量は、重量で定義される。
【0154】
本明細書において含まれるすべての特許、特許出願および参考文献は、参照によりその全体が具体的に組み込まれる。
【0155】
当然ながら、前述は、本開示の好ましい実施形態のみに関すること、ならびに、本開示
において明記されている通りの開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、多数の修正
または改変がその中で為され得ることを理解すべきである。
<付記>
項1
a)少なくとも1つのシアノアクリレートを含むシアノアクリレート成分であって、80wt%以上であるシアノアクリレート成分と、
b)500ppmから1500ppmまでの範囲内の安定剤成分と、
c)4000から7000ppmまでの範囲内の重合禁止剤成分と
を含む、生分解性シアノアクリレート組成物。
項2
シアノアクリレート成分が、少なくとも2つのシアノアクリレートモノマーを含む、項1に記載の生分解性シアノアクリレート組成物。
項3
シアノアクリレートモノマーが、メチルシアノアクリレート、エチルシアノアクリレート、プロピルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート、ペンチルシアノアクリレート、ヘキシルシアノアクリレート、セプチルシアノアクリレート、オクチルノニルシアノアクリレート、デシル2-シアノアクリレート、アリルシアノアクリレート、メトキシエチルシアノアクリレート、メトキシイソプロピルシアノアクリレート、メトキシプロピルシアノアクリレート、メトキシブチルシアノアクリレート、メトキシペンチルシアノアクリレート、またはそれらの組合せである、項1または2に記載の生分解性シアノアクリレート組成物。
項4
安定剤成分が、アルキルスルフィド、アルキルスルフェート、アルキルスルホニル、アルキルスルホン、アルキルスルホキシド、亜硫酸アルキル、スルトン、二酸化硫黄、三酸化硫黄、スルホン酸、ラクトン、三フッ化ホウ素、酢酸、もしくは3-スルホレン、メルカプタン、またはそれらの組合せを含む、項1から3のいずれか一項に記載の生分解性シアノアクリレート組成物。
項5
安定剤成分が、二酸化硫黄または三酸化硫黄を含む、項4に記載の生分解性シアノアクリレート組成物。
項6
重合禁止剤成分が、ブチルヒドロキシアニソール(BHA);ヒドロキノン;カテコール;ヒドロキノンモノメチルエーテルおよびブチルヒドロキシアニソール等のヒンダードフェノール;4-エトキシフェノール;ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT、2,6-ジ-tert-ブチルブチルフェノール)、4-メトキシフェノール(MP);3-メトキシフェノール;2-tert-ブチル-4-メトキシフェノール;もしくは2,2-メチレン-ビス-(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、またはそれらの組合せを含む、項1から5のいずれか一項に記載の生分解性シアノアクリレート組成物。
項7
重合禁止剤成分が、BHAまたはBHTを含む、項6に記載の生分解性シアノアクリレート組成物。
項8
硫化水素、炭酸、トリアセチルメタン、酢酸、安息香酸、ジニトロフェノール、ギ酸、亜硝酸、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、クロロ酢酸、リン酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリニトロフェノール、トリフルオロ酢酸、硫酸、過塩素酸、トルエンスルホン酸もしくはフルオロスルホン酸、またはそれらの組合せをさらに含む、項1から7のいずれか一項に記載の生分解性シアノアクリレート組成物。
項9
可塑剤、生体適合剤、増粘剤、医薬、架橋剤、染料もしくは顔料、保存料、抗菌剤、または重合開始剤もしくは促進剤をさらに含む、項1から8のいずれか一項に記載の生分解性シアノアクリレート組成物。
項10
無菌である、項1から9のいずれかに記載の生分解性シアノアクリレート組成物。
項11
医療機器のコンポーネントである容器内に含有される、項1から10のいずれか一項に記載の生分解性シアノアクリレート組成物。
項12
項1から11のいずれかに記載の生分解性シアノアクリレート組成物を含む、キット。
項13
生分解性シアノアクリレート組成物が、無菌である、項12に記載のキット。
項14
a)少なくとも1つのシアノアクリレートを含むシアノアクリレート成分であって、90wt%以上であるシアノアクリレート成分と、
b)500ppmから1500ppmまでの範囲内の安定剤成分と、
c)4000から7000ppmまでの範囲内の重合禁止剤成分と
を含む、生分解性シアノアクリレート組成物。
項15
a)少なくとも1つのシアノアクリレートを含むシアノアクリレート成分であって、90wt%以上であるシアノアクリレート成分と、
b)500ppmから1500ppmまでの範囲内の安定剤成分と、
c)4000から7000ppmまでの範囲内の重合禁止剤成分と
を含み、
ニュートラルレッド細胞毒性試験(ISO 10993-5:2009によって測定される)に不合格となり、少なくとも遺伝毒性(ISO 10993-3:2003によって測定される)についてのものを含む1つまたは複数の生体適合性試験に合格する、
生分解性シアノアクリレート組成物。
項16
シアノアクリレート成分が、少なくとも2つのシアノアクリレートモノマーを含む、項15に記載の生分解性シアノアクリレート組成物。
項17
シアノアクリレートモノマーが、メチルシアノアクリレート、エチルシアノアクリレート、プロピルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート、ペンチルシアノアクリレート、ヘキシルシアノアクリレート、セプチルシアノアクリレート、オクチルノニルシアノアクリレート、デシル2-シアノアクリレート、アリルシアノアクリレート、メトキシエチルシアノアクリレート、メトキシイソプロピルシアノアクリレート、メトキシプロピルシアノアクリレート、メトキシブチルシアノアクリレート、メトキシペンチルシアノアクリレート、またはそれらの組合せである、項15または16に記載の生分解性シアノアクリレート組成物。
項18
安定剤成分が、アルキルスルフィド、アルキルスルフェート、アルキルスルホニル、アルキルスルホン、アルキルスルホキシド、亜硫酸アルキル、スルトン、二酸化硫黄、三酸化硫黄、スルホン酸、ラクトン、三フッ化ホウ素、酢酸、もしくは3-スルホレン、メルカプタン、またはそれらの組合せを含む、項15から17のいずれか一項に記載の生分解性シアノアクリレート組成物。
項19
安定剤成分が、二酸化硫黄または三酸化硫黄を含む、項18に記載の生分解性シアノアクリレート組成物。
項20
重合禁止剤成分が、ブチルヒドロキシアニソール(BHA);ヒドロキノン;カテコール;ヒドロキノンモノメチルエーテルおよびブチルヒドロキシアニソール等のヒンダードフェノール;4-エトキシフェノール;ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT、2,6-ジ-tert-ブチルブチルフェノール)、4-メトキシフェノール(MP);3-メトキシフェノール;2-tert-ブチル-4-メトキシフェノール;もしくは2,2-メチレン-ビス-(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、またはそれらの組合せを含む、項15から19のいずれか一項に記載の生分解性シアノアクリレート組成物。
項21
重合禁止剤成分が、BHAまたはBHTを含む、項20に記載の生分解性シアノアクリレート組成物。
項22
硫化水素、炭酸、トリアセチルメタン、酢酸、安息香酸、ジニトロフェノール、ギ酸、亜硝酸、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、クロロ酢酸、リン酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリニトロフェノール、トリフルオロ酢酸、硫酸、過塩素酸、トルエンスルホン酸もしくはフルオロスルホン酸、またはそれらの組合せをさらに含む、項15から21のいずれか一項に記載の生分解性シアノアクリレート組成物。
項23
可塑剤、生体適合剤、増粘剤、医薬、架橋剤、染料もしくは顔料、保存料、抗菌剤、または重合開始剤もしくは促進剤をさらに含む、項15から22のいずれか一項に記載の生分解性シアノアクリレート組成物。
項24
無菌である、項15から23のいずれかに記載の生分解性シアノアクリレート組成物。
項25
医療機器のコンポーネントである容器内に含有される、項15から24のいずれか一項に記載の生分解性シアノアクリレート組成物。
項26
項15から25のいずれかに記載の生分解性シアノアクリレート組成物を含む、キット。
項27
生分解性シアノアクリレート組成物が、無菌である、項26に記載のキット。
項28
対象における1つまたは複数の導管を閉塞させる方法であって、項1から26のいずれか一項に記載の無菌生分解性シアノアクリレート組成物を、閉塞部位またはその付近に投与するステップと、前記生分解性シアノアクリレート組成物が重合し、前記導管において一時的な重合閉塞を提供し、時間とともに、重合された材料が分解され、細胞閉塞が前記部位において形成されるように、前記組成物を前記部位に維持するステップとを含む、方法。
項29
項1から25のいずれか一項に記載の生分解性シアノアクリレート組成物を含有する容器を含む、医療機器のコンポーネント。
項30
容器、生分解性シアノアクリレート組成物、または両方が、無菌である、項29に記載のコンポーネント。
【0156】
本開示は、本明細書に含有される例によってさらに例証され、これらは、その範囲に対し決して限定を課すものとして解釈されるべきではない。それどころか、本開示の趣旨および/または添付の請求項の範囲から逸脱することなく、本明細書における記述を読了した後に当業者に提案してよい種々の他の実施形態、修正およびその同等物に頼らなくてはならない場合があることを明確に理解すべきである。
【実施例】
【0157】
実施例
【0158】
実施例1 ウサギ卵管移植研究における52週間の生分解性シアノアクリレート組成物
【0159】
研究は、本明細書において開示されている生分解性シアノアクリレート組成物の外科的送達を伴うものであった。生分解性シアノアクリレート組成物は、例えば、すべての成分、シアノアクリレート成分を形成するための0.42gのメトキシプロピルシアノアクリレート(MPCA)および0.18gのメトキシイソプロピルシアノアクリレート(MIPCA)、安定剤成分、0.0004gのSO2に0.003gのBHA(ブチルヒドロキシアニソール)を加えたもの、重合禁止剤を予め混合して、生分解性シアノアクリレート組成物を形成することによって作製した。十分な量の生分解性シアノアクリレート組成物を作製し、改良したPICC-NATEカテーテルを使用してスクリーニングしたウサギ卵管へ送達して、ヒトにおける使用を模倣し、インビボ卵管においてインサイチュ重合を試験した。卵管における生分解性シアノアクリレート組成物の存在およびその分解の過程にわたる動物への効果を評定した。研究のエンドポイントは、シアノアクリレート組成物によって作成された卵管閉塞の程度および性質を評価すること、シアノアクリレート組成物の存在および分解中における局所組織反応を時間とともに評価することによってシアノアクリレート組成物の安全性を評定すること、試験物品の分解プロフィールを時間とともに特徴付けること、ならびに限られた全身毒性データを提供することであった。
【0160】
37匹のニュージーランドホワイト雌ウサギに、生分解性シアノアクリレート組成物を首尾よく投薬した。4匹を、処置から数日以内に安楽死させた。7匹の偽処置動物および27匹の処置動物は、病理分析を受けた。時点は、2および4週間、3か月、6か月および12か月であった。
【0161】
全身毒性作用はなかった。局所細胞反応以外に、有害な局所組織作用はなかった。完全な卵管閉塞は、3および6か月で卵管の60%において存在した。シアノアクリレート材料は、3~6か月でほとんど分解し、12か月では残留している材料はほぼなかった。研究は、シアノアクリレート組成物が卵管において異物応答を引き出し、これが、瘢痕組織をもたらして卵管を閉鎖することを実証した。ウサギの卵管への投与は、全身毒性のいかなる兆候も生成することが観察されず、主として28日時点に限定されて、炎症、壊死および治癒応答を含む局所治療関連作用を生成した。これらの変化は、強度を減少させることが大部分で観察され、90日および180日時点においては観察されなかった。
【0162】
実施例2 細胞毒性についての試験ISO 10993-5
【0163】
実施例1において使用された重合された生分解性シアノアクリレート組成物の試験物品の抽出物(試験物品)への曝露に応答した、哺乳類細胞培養(マウス線維芽細胞L929)の潜在的な生物学的反応性を決定した。試験物品は、10%ウシ胎児血清を加えた最小必須培地(MEM)(完全MEMと称される)中、37±1℃で24±2時間にわたって抽出した。陰性および陽性対照を同様に調製した。96ウェルプレート中で成長させたL929細胞の維持培地を、試験物品の100%(未希釈)抽出物および6連の対照物品で置きかえ、細胞を37±1℃で24から26時間にわたってインキュベートした。抽出物への曝露後の細胞の生存を、バイタル染料、Neutral Red(NR)を取り込むそれらの能力を介して測定した。この染料を、生存細胞に能動的に組み込まれる細胞に添加した。生存細胞の数は、抽出後に光度測定によって決定された色強度と相関している。曝露時間後、細胞をPBS(リン酸緩衝食塩液)で洗浄し、無菌Neutral Red培地(Phenol RedなしのMEM中50マイクログラム/mL)を各試験ウェルに添加し、細胞を、インキュベーター内、37±1℃で3±0.2時間にわたってインキュベートした。次いで、細胞をPBSで洗浄し、150マイクロリットルのエタノール/酢酸溶液を各ウェルに添加して、NRを抽出した。次いで、各ウェルの光学密度(OD)を測定した。
【0164】
陰性対照はHDPE(陰性対照プラスチック)であり、陽性対照は天然ゴムであった。未処置対照、添加されていないプラスチックまたは材料も使用した。
【0165】
100%(未希釈)試験物品抽出物に曝露された細胞の生存パーセンテージは、17%であった。陰性および陽性対照物品に曝露された細胞の生存パーセンテージは、それぞれ70%より大きいおよび低いものであり、アッセイの妥当性を確認した。プロトコールの基準およびISO 10993-5ガイドラインに基づき、試験物品は、試験の要件を満たさず、細胞毒性効果を有するとみなされる。
【0166】
インビトロ細胞毒性研究は、重合された生分解性シアノアクリレート組成物からの浸出液が、細胞生存において著しい減少を生成することを実証した。この細胞毒性には、筋肉において観察された局所移植部位反応性が付随していたが、皮下組織においてはそうではなく、ポリマーの抽出物は、ウサギの膣への皮内注射または塗布後、刺激性ではなかった。局所移植部位反応性は、FDA承認組織接着剤であるHistoacryl(ブチルシアノアクリレート)対照インプラントによって生成された反応と比較した場合、事実上わずかであった。観察された局所刺激および細胞毒性は、ポリマーに組み込まれたシアノアクリレートに起因する可能性が高い。
【0167】
実施例3 子宮摘出術前検査
【0168】
ヒト対象における生分解性シアノアクリレート組成物の移植は、ヒト実験のためのすべての適切なプロトコール下で実施した。生分解性シアノアクリレート組成物を、本明細書において開示されている機器を使用して少なくとも卵管の副角に提供することによって、子宮摘出術手順を受けることになっているヒト女性を前処置した。下記の生分解性シアノアクリレート組成物を使用した。
【0169】
生分解性シアノアクリレート組成物100wt%のMCPA(シアノアクリレート成分)、BHA5000ppm(重合禁止剤成分)および2260SO2(安定剤成分)。
【0170】
生分解性シアノアクリレート組成物50wt%のMCPAおよび50wt%のMIPCA(シアノアクリレート成分)、BHA5000ppm(重合禁止剤成分)ならびに2260SO2(安定剤成分)。
【0171】
生分解性シアノアクリレート組成物70wt%のMCPAおよび30wt%のMIPCA(シアノアクリレート成分)、BHA5000ppm(重合禁止剤成分)ならびに2260SO2(安定剤成分)。
【0172】
両側卵管切除術による腹式子宮全摘出術手順を、生分解性シアノアクリレート組成物の投与28日または29日後のいずれかに実施し、卵管を顕微鏡的におよび病理組織学的に調べた。一部の対象は、重合された組成物の存在を示し、他は、局所炎症および治癒応答を示し、閉塞した卵管による完全な治癒応答が見られた。卵管において見られた生分解性シアノアクリレート組成物に対する応答は、材料が若干から存在しない、わずかから著しい炎症細胞パターン、および炎症治癒反応による内腔閉塞にまで及んだ。材料が存在する場合、炎症反応性細胞も存在していた。1人の患者の卵管は、長さ2mmの70~90%狭窄、続いて、間質セグメントにおいて100%閉塞された長さ2mmを示し、50~80%狭窄していた長さ2mmを有する峡部セグメントに移行し、長さ18mmの完全な内腔閉塞、100%に進行する。完全内腔閉塞が3つの卵管において示され、他の2つは、50~90%閉塞を示した。炎症応答は、概して、重合された組成物の存在と相関していた。