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特許7379158薬剤収容容器、閉鎖部材、薬剤収容容器の製造方法、および微生物夾雑物検査方法、ならびに緩衝液調製用固形剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】薬剤収容容器、閉鎖部材、薬剤収容容器の製造方法、および微生物夾雑物検査方法、ならびに緩衝液調製用固形剤
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/05 20060101AFI20231107BHJP
【FI】
A61J1/05 351Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019548138
(86)(22)【出願日】2018-10-01
(86)【国際出願番号】 JP2018036736
(87)【国際公開番号】W WO2019073846
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2017197188
(32)【優先日】2017-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000195524
【氏名又は名称】生化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正直
(72)【発明者】
【氏名】石井 睦
(72)【発明者】
【氏名】小田 俊男
(72)【発明者】
【氏名】水村 光
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-529291(JP,A)
【文献】国際公開第2013/026995(WO,A1)
【文献】特開平07-239332(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0041498(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0138793(US,A1)
【文献】国際公開第1993/014990(WO,A1)
【文献】米国特許第03070094(US,A)
【文献】国際公開第2000/024645(WO,A1)
【文献】特表2001-514029(JP,A)
【文献】特表2011-530377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/05
A61J 1/14
A61J 1/20
A61J 3/00
B65D 39/00
B65D 47/00
B65D 51/00
B65B 7/00
B65B 29/00
B65B 55/00
B65B 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に開口部を有する容器本体と、
前記容器本体の前記開口部を閉鎖する閉鎖部材と、を有し、
前記閉鎖部材により前記開口部が閉鎖された前記容器本体内には、薬剤および助剤が分離して存在する、薬剤収容容器であって、
前記薬剤または前記助剤が、前記閉鎖部材に脱離可能に保持されており、
(i)前記閉鎖部材が、前記容器本体の前記開口部の内側に挿入された凸部を有し、前記閉鎖部材が有する2以上の当該凸部により、前記薬剤または助剤を含む固形剤が挟持されている、または
(ii)前記閉鎖部材が、前記容器本体の前記開口部に内嵌する栓部を有し、前記栓部が、挿嵌方向と交差する面上に凹部を有し、当該凹部に前記薬剤または助剤を含む固形剤が嵌め込まれている、薬剤収容容器。
【請求項2】
前記薬剤が医薬であることを特徴とする、請求項1に記載の薬剤収容容器。
【請求項3】
前記助剤が、助剤成分として溶解補助剤、等張化剤および無痛化剤から選択される少なくとも1種以上を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の薬剤収容容器。
【請求項4】
前記薬剤がリムルス試薬であることを特徴とする請求項1に記載の薬剤収容容器。
【請求項5】
前記助剤が、助剤成分として緩衝剤を含むことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の薬剤収容容器。
【請求項6】
前記助剤は、所定の水性溶媒と混合したときのpHが中性となる量の前記緩衝剤を含むことを特徴とする請求項5に記載の薬剤収容容器。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれかの請求項に記載の薬剤収容容器の製造方法であって、
前記容器本体の前記開口部から前記薬剤を導入する導入工程と、
前記閉鎖部材に前記助剤を保持させた状態で、前記閉鎖部材が前記助剤を保持する面を前記容器本体の前記開口部側にして、前記容器本体を閉鎖する閉鎖工程と、を有すること、または、
前記容器本体の前記開口部から前記助剤を導入する導入工程と、
前記閉鎖部材に前記薬剤を保持させた状態で、前記閉鎖部材が前記薬剤を保持する面を前記容器本体の前記開口部側にして、前記容器本体を閉鎖する閉鎖工程と、を有すること
を特徴とする薬剤収容容器の製造方法。
【請求項8】
請求項1から請求項6までのいずれかの請求項に記載の薬剤収容容器の製造方法であって、
前記容器本体の前記開口部から液状の前記薬剤を導入する導入工程と、
前記閉鎖部材に前記助剤を保持させた状態で、前記閉鎖部材が前記助剤を保持する面を前記容器本体の前記開口部側にして、前記容器本体を閉鎖する閉鎖工程と、
前記容器本体内の前記液状の薬剤を凍結乾燥して固化する乾燥工程と、を有すること、または、
前記容器本体の前記開口部から液状の前記助剤を導入する導入工程と、
前記閉鎖部材に前記薬剤を保持させた状態で、前記閉鎖部材が前記薬剤を保持する面を前記容器本体の前記開口部側にして、前記容器本体を閉鎖する閉鎖工程と、
前記容器本体内の前記液状の助剤を凍結乾燥して固化する乾燥工程と、を有すること
を特徴とする薬剤収容容器の製造方法。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の薬剤収容容器の製造方法であって、
前記容器本体の前記開口部から液状の前記薬剤を導入する導入工程と、
前記閉鎖部材の前記栓部に前記助剤を保持させた状態で、前記閉鎖部材の前記栓部を前記容器本体の前記開口部に仮嵌めして、前記容器本体を閉鎖する閉鎖工程と、
仮嵌合状態で前記容器本体内の前記液状の薬剤を凍結乾燥して固化する乾燥工程と、を有すること、または、
前記容器本体の前記開口部から液状の前記助剤を導入する導入工程と、
前記閉鎖部材の前記栓部に前記薬剤を保持させた状態で、前記閉鎖部材の前記栓部を前記容器本体の前記開口部に仮嵌めして、前記容器本体を閉鎖する閉鎖工程と、
仮嵌合状態で前記容器本体内の前記液状の助剤を凍結乾燥して固化する乾燥工程と、を有すること
を特徴とする薬剤収容容器の製造方法。
【請求項10】
前記閉鎖部材の前記栓部は、挿嵌方向と交差する面上に前記凹部を有し、
前記栓部の前記凹部は、前記閉鎖工程にて前記容器本体の前記開口部に仮嵌めしたときに、一部が前記容器本体の前記開口部から露出可能な深さを有し、
前記薬剤または前記助剤が前記栓部の前記凹部に保持されていることを特徴とする請求項9に記載の薬剤収容容器の製造方法。
【請求項11】
請求項1から請求項6までのいずれかの請求項に記載の薬剤収容容器を用いて微生物夾雑物を検査する微生物夾雑物検査方法であって、
前記薬剤収容容器の前記容器本体内に被検体を導入し、前記薬剤および前記助剤ならびに前記被検体を含む微生物夾雑物の測定に供する試料を調製する調製工程と、
前記試料中の前記微生物夾雑物を検出する検出工程と、
を有することを特徴とする微生物夾雑物検査方法。
【請求項12】
前記微生物夾雑物がエンドトキシンまたは(1→3)-β-D-グルカンであることを特徴とする請求項11に記載の微生物夾雑物検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薬剤および助剤を含む混合溶液の調製に用いる薬剤収容容器に関する。また、本開示は、上記薬剤収容容器に用いられる閉鎖部材、上記薬剤収容容器の製造方法、および上記薬剤収容容器を用いる微生物夾雑物検査方法、ならびに緩衝液調製用固形剤に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物夾雑物の検査に用いる試薬溶液(以下、微生物夾雑物検査用試薬溶液、または単に試薬溶液とする。)や医薬(例えば、注射製剤の生物学的製剤等)の調製においては、一態様において、例えば、固体状または液状の薬剤(固体薬剤または薬剤溶液)が予め所望量封入された容器に対し、所定量の液状の助剤(助剤溶液)を導入して上記薬剤を溶解しまたは希釈して混合溶液を調製する操作が行われる。この操作は、具体的には、上記混合溶液を用途に適したpHとするため、または上記固体薬剤の溶解を補助するために、緩衝剤や溶解補助剤等の助剤を含む溶液を導入する操作である。また、微生物夾雑物検査の一態様においては、調製した上記混合溶液を試薬溶液として用い、上記試薬溶液に微生物夾雑物の検査に供する被検体を導入する操作が続けて行われる。
【0003】
医薬や食品の衛生管理やヒトを含む動物の診断においては、微生物汚染の程度を測定するために微生物夾雑物の検査が行われる場合がある。上記検査を行うための手段としては、リムルス試験が普及している。リムルス試験は、エンドトキシンや(1→3)-β-D-グルカンを測定対象として微生物汚染の程度を測定する技術であり、カブトガニが有するプロテアーゼ前駆体(C因子、B因子、G因子、プロクロッティングエンザイム)がこれらの微生物夾雑物により逐次活性化される性質を利用した微生物夾雑物の測定方法である。リムルス試験は、カブトガニの血球抽出物(リムルス・アメボサイト・ライセート(LAL)、以下「ライセート試薬」という。)等の上記プロテアーゼ前駆体の全てまたは一部を含む試薬(以下「リムルス試薬」という。)を用いて行われている。
【0004】
上記混合溶液の調製方法について、エンドトキシン検査を例に挙げて以下説明する。エンドトキシン検査に用いられる試薬溶液は、例えば、凍結乾燥したリムルス試薬が封入されている容器(バイアル)を開封する作業、緩衝剤等を含む助剤溶液を必要量秤量して上記容器の内部に導入する作業、乾熱滅菌アルミ箔で上記容器に蓋をする作業、および上記容器を試験管ミキサーで撹拌してリムルス試薬を溶解する作業を経て調製される。
エンドトキシン検査においては、例えば、その後、上記試薬溶液に被検体を導入する作業、乾熱滅菌アルミキャップで上記容器に蓋をする作業、および上記容器を試験管ミキサーで撹拌して上記試薬溶液中のリムルス試薬と被検体とを混合する作業を経て、エンドトキシンの測定に供する試料が調製される(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】「エンドスペシー(登録商標)ES-24Sセット 添付文書」、生化学工業株式会社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
微生物夾雑物の検査方法の一態様においては、リムルス試薬を含む試薬溶液の調製、および微生物夾雑物の測定に供する試料(以下、単に「測定用試料」という場合がある。)の調製のために、複数の作業を行う必要があり、煩雑で手間がかかる。故に、上記態様の検査方法は、必要時に微生物夾雑物の検査を直ちに行うには不向きであると一部の当業者に認識されており、作業工程の削減が求められている。また、例えば、上記態様において、助剤溶液(緩衝液)と取り違えて測定用キットに同梱の蒸留水を導入する誤操作をした場合、リムルス試薬に含まれるプロテアーゼ前駆体が微生物夾雑物によって十分に活性化されず、偽陰性の誤判定を行う問題が生じ得る。上記の観点からも、上記検査の態様には解決すべき課題が存在する。
【0007】
混合溶液の調製において上記助剤溶液の調製作業は、煩雑で手間がかかる作業である。また、薬剤の種類に応じて複数の助剤溶液を用意する必要があるため、その保管管理に手間がかかるのみならず、上記混合溶液の調製時に助剤溶液の取り違え等の問題も生じ得る。故に、必要時にすぐに上記混合溶液の調製および使用ができない、助剤溶液の取り違えにより調製された上記混合溶液が所望の効果を示さない、等の問題が生じ得る。予め濃度等が調整され、アンプル管等に封入された調製済みの助剤溶液も製品化されているが、それを用いる場合であっても、保管管理の手間、助剤溶液の取り違え等の課題は依然残存する。特に、ヒトを含む動物の治療に用いられる注射製剤は、調製作業を誤ると所望の薬効を示さないだけでなく、身体へ害が及ぶ虞がある。これらの観点からも、より簡便で確実な混合溶液の調製方法が求められる。
【0008】
助剤溶液の調製作業および保管管理を省略するために、例えば、薬剤および助剤を含む混合溶液の凍結乾燥物を予め容器本体に封入しておく方法も考えられる。上記の方法によれば、上記容器本体内に所定量の水性溶媒を導入する操作のみで、所望の混合溶液を得ることができるからである。しかし、上記の方法は、薬剤および助剤の組合せによって、薬剤の保存安定性が低下する場合があること、昇華性の高い成分を含む助剤を用いる場合に、薬剤との凍結乾燥物を得ることが困難であること、等の問題があり、適切な方法とは言い難い。例えば、リムルス試薬および緩衝剤の混合溶液を凍結乾燥する場合、製造工程において混入する可能性のある極めて微量の微生物夾雑物によって、微生物夾雑物検査を行う前に上記プロテアーゼ前駆体の活性化が進行する結果、被検体の測定時に偽陽性の誤判定を行う問題が生じ得る。
【0009】
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、助剤溶液の調製および保管管理を不要とし、薬剤の保存安定性の低下を抑え、薬剤および助剤を含む混合溶液の調製を簡便かつ確実に行うための手段を提供する。また、本開示は、微生物夾雑物の検査を簡便かつ確実に行うための手段を提供する。さらに、本開示は、上記混合溶液やそれを用いた試料のpH調整を容易に行うための手段を提供する。
すなわち本開示は、薬剤および助剤を含む混合溶液の調製を簡便かつ確実に行うことが可能な薬剤収容容器、上記薬剤収容容器に用いられ、薬剤または助剤を含む固形剤を脱離可能に保持する閉鎖部材、上記薬剤収容容器の製造方法、および上記薬剤収容容器を用いる微生物夾雑物検査方法、ならびに緩衝液調製用固形剤を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
<1>薬剤収容容器
本開示の1実施態様は、一端に開口部を有する容器本体と、上記容器本体の上記開口部を閉鎖する閉鎖部材と、を有し、上記閉鎖部材により上記開口部が閉鎖された上記容器本体内には、薬剤および助剤が分離して存在することを特徴とする薬剤収容容器(以下、本発明の薬剤収容容器という場合がある。)を提供する。
【0011】
本発明の薬剤収容容器によれば、閉鎖部材により開口部が閉鎖された容器本体内(すなわち、閉鎖空間内)には、薬剤と助剤とが分離して存在しており、両物質を水や水溶液等の水性溶媒の共存下で混合することで、上記薬剤および上記助剤が溶解され又は希釈されて混合溶液を調製することが可能となる。このため、薬剤および助剤を含む混合溶液を調製する際の、助剤溶液の調製および保管管理に係る手間を省略することができる。また、助剤溶液の容器本体への導入作業を省略することができるため、助剤溶液の取り違えによる事故を防ぐことができる。よって、本発明の薬剤収容容器によれば、薬剤および助剤を含む混合溶液を一度の混合作業で簡便かつ確実に用時調製することができる。また、本発明の薬剤収容容器は、混合溶液の調製前では、閉鎖空間内に薬剤と助剤とが分離して存在していることから、助剤の存在により薬剤の保存安定性が低下することを防ぐことができる。
【0012】
上記発明においては、上記薬剤は特に限定されない。上記薬剤は、例えば、薬理活性物質の原薬やこれを含む製剤等の医薬であってよく、中でも上記薬剤がタンパク質またはタンパク質製剤であることが好ましい。また、上記発明においては、上記助剤は特に限定されない。上記助剤は、例えば、ヒトを含む動物への投与に適した医薬組成物とするために原薬に添加される物質であってよく、中でも上記助剤が、助剤成分として溶解補助剤、等張化剤および無痛化剤から選択される少なくとも1種以上を含む助剤であることが好ましい。薬剤および助剤を上記の組成とすることで、本発明の薬剤収容容器を用いて、生物学的製剤等の医薬を簡便かつ確実に調製することができるからである。
また、上記発明においては、上記助剤が、助剤成分として緩衝剤を含む助剤であることが好ましい。助剤成分として緩衝剤を含むことで、生物学的製剤等の医薬のpH調整が可能となるからである。
【0013】
上記発明においては、例えば、上記薬剤がリムルス試薬であることが好ましい。また、上記助剤が、助剤成分として緩衝剤を含む助剤であることが好ましい。薬剤および助剤を上記の組成とすることで、本発明の薬剤収容容器を用いて、微生物夾雑物検査用の試薬溶液を調製することができるからである。また、上記試薬溶液の調製後または薬剤および助剤を含む混合溶液の調製と同時に、本発明の薬剤収容容器に直接、被検体を導入する操作のみによって、薬剤および助剤、ならびに被検体を含む測定用試料の調製を、同一の閉鎖空間内で簡便かつ確実に行うことができるからである。
【0014】
上記発明においては、上記助剤が、助剤成分として緩衝剤を含むことが好ましい。上記の場合、上記助剤が、所定の水性溶媒と混合したときのpHが中性となる量の上記緩衝剤を含むことが好ましい。薬剤および助剤の一度の混合作業により、得られる混合溶液のpHを中性とすることができるため、別途のpH調整作業が不要となり、混合溶液を調製後すぐに使用可能となるからである。
【0015】
上記発明においては、上記薬剤または上記助剤が、上記閉鎖部材に脱離可能に保持されていることが好ましい。このとき、上記薬剤または上記助剤のうち上記閉鎖部材に保持されていない他方の物質は、上記容器本体内の内壁または底面上に、上記閉鎖部材と接触することなく存在していてよい。上記薬剤および上記助剤を閉鎖空間内に分離して存在させることが容易となり、閉鎖部材に保持された上記薬剤または上記助剤を脱離することで、混合溶液の調製を簡便に行うことができるからである。
【0016】
上記発明においては、上記薬剤または上記助剤の剤形が固形剤であることが好ましい。なかでも、上記閉鎖部材に保持されている上記薬剤または上記助剤の剤形が固形剤であることが好ましい。剤形を固形剤とすることで、上記薬剤または上記助剤を上記閉鎖部材へ保持させることおよび上記閉鎖部材から脱離させることが容易となるからである。
【0017】
上記発明においては、上記閉鎖部材が、上記容器本体の上記開口部に内嵌する栓部を有し、上記薬剤または上記助剤が、上記栓部に保持されていることが好ましい。上記栓部が上記容器本体の上記開口部に内嵌することにより、上記薬剤および上記助剤を密閉状態で保管可能となるからである。
【0018】
また、上記発明の場合、上記閉鎖部材の上記栓部は、挿嵌方向と交差する面に凹部を有し、上記薬剤または上記助剤が、上記凹部に保持されていることが好ましい。上記薬剤または上記助剤が、上記栓部の上記凹部に保持されていることにより、上記薬剤または上記助剤を確実に保持することができるからである。
【0019】
<2>閉鎖部材
本開示の1実施態様は、上述の薬剤収容容器に用いられる閉鎖部材であって、上記薬剤または上記助剤を含む上記固形剤を脱離可能に保持することを特徴とする閉鎖部材(以下、本発明の閉鎖部材という場合がある。)を提供する。
【0020】
本発明の閉鎖部材によれば、上述の薬剤収容容器に本発明の閉鎖部材を用いたときに、容器本体内に事前混合が禁忌または好ましくない他の物質が存在する場合であっても、混合溶液の調製前の段階では、個々に分離して存在させることができる。また、上記閉鎖部材は、上記固形剤を脱離可能に保持しているため、上記固形剤を脱離させ、必要に応じて水性溶媒を導入することで、上記本体容器内に存在する別の物質との混合溶液を用時調製することが可能となり、例えば、水性溶媒中での保存安定性が悪い薬剤や助剤を含む混合溶液を簡便に調製することができる。
【0021】
<3>薬剤収容容器の製造方法
本開示の1実施態様は、上述の薬剤収容容器の製造方法であって、上記容器本体の上記開口部から上記薬剤を導入する導入工程と、上記閉鎖部材に上記助剤を保持させた状態で、上記閉鎖部材が上記助剤を保持する面を上記容器本体の上記開口部側にして、上記容器本体を閉鎖する閉鎖工程と、を有すること、または、上記容器本体の上記開口部から上記助剤を導入する導入工程と、上記閉鎖部材に上記薬剤を保持させた状態で、上記閉鎖部材が上記薬剤を保持する面を上記容器本体の上記開口部側にして、上記容器本体を閉鎖する閉鎖工程と、を有することを特徴とする薬剤収容容器の製造方法(以下、本発明の薬剤収容容器の製造方法の第1態様という場合がある。)を提供する。
【0022】
本発明の薬剤収容容器の製造方法の第1態様によれば、上記閉鎖部材で上記容器本体の上記開口部を閉鎖した上記容器本体内(閉鎖空間内)に、薬剤および助剤が分離して存在する薬剤収容容器を容易に得ることができる。
【0023】
また、本開示の1実施態様は、上述の薬剤収容容器の製造方法であって、上記容器本体の上記開口部から液状の上記薬剤を導入する導入工程と、上記閉鎖部材に上記助剤を保持させた状態で、上記閉鎖部材が上記助剤を保持する面を上記容器本体の上記開口部側にして、上記容器本体を閉鎖する閉鎖工程と、上記容器本体内の上記液状の薬剤を凍結乾燥して固化する乾燥工程と、を有すること、または、上記容器本体の上記開口部から液状の上記助剤を導入する導入工程と、上記閉鎖部材に上記薬剤を保持させた状態で、上記閉鎖部材が上記薬剤を保持する面を上記容器本体の上記開口部側にして、上記容器本体を閉鎖する閉鎖工程と、上記容器本体内の上記液状の助剤を凍結乾燥して固化する乾燥工程と、を有することを特徴とする薬剤収容容器の製造方法(以下、本発明の薬剤収容容器の製造方法の第2態様という場合がある。)を提供する。
【0024】
本発明の薬剤収容容器の製造方法の第2態様によれば、上記薬剤または上記助剤が保持された上記閉鎖部材で上記容器本体の上記開口部を閉鎖した状態で、上記容器本体内の上記液状の助剤または薬剤を凍結乾燥することで、上記助剤および上記薬剤の混合を確実に防ぐことができる。これにより、薬剤および助剤が分離して存在する薬剤収容容器を容易に得ることができる。また、上記方法により凍結乾燥を行うことで、混合溶液を調製する前の薬剤の保存安定性の低下を防ぐことができる。
【0025】
また、本開示の1実施態様は、上述の薬剤収容容器の製造方法であって、上記容器本体の上記開口部から液状の上記薬剤を導入する導入工程と、上記閉鎖部材の上記栓部に上記助剤を保持させた状態で、上記閉鎖部材の上記栓部を上記容器本体の上記開口部に仮嵌めして、上記容器本体を閉鎖する閉鎖工程と、仮嵌合状態で上記容器本体内の上記液状の薬剤を凍結乾燥して固化する乾燥工程と、を有すること、または、上記容器本体の上記開口部から液状の上記助剤を導入する導入工程と、上記閉鎖部材の上記栓部に上記薬剤を保持させた状態で、上記閉鎖部材の上記栓部を上記容器本体の上記開口部に仮嵌めして、上記容器本体を閉鎖する閉鎖工程と、仮嵌合状態で上記容器本体内の上記液状の助剤を凍結乾燥して固化する乾燥工程と、を有することを特徴とする薬剤収容容器の製造方法(以下、本発明の薬剤収容容器の製造方法の第3態様という場合がある。)を提供する。
【0026】
本発明の薬剤収容容器の製造方法の第3態様によれば、上記薬剤または上記助剤が上記閉鎖部材の上記栓部に保持されており、上記栓部を上記容器本体の上記開口部に仮嵌めした状態で、上記容器本体内の上記液状の助剤または薬剤を凍結乾燥することで、上記助剤および上記薬剤の混合を確実に防ぐことができる。これにより、薬剤および助剤が分離して存在する薬剤収容容器を容易に得ることができる。また、上記方法により凍結乾燥を行うことで、混合溶液を調製する前の薬剤の保存安定性の低下を防ぐことができる。さらに乾燥工程において上記容器本体の上記開口部が上記栓部により仮嵌めされているため、仮嵌合位置の隙間から上記容器本体内の空気が容易に脱気可能となり、凍結乾燥を効率よく行うことができ、併せて外部からの不純物の混入を防ぐことができる。
【0027】
上記発明の場合、上記閉鎖部材の上記栓部は、挿嵌方向と交差する面上に上記凹部を有し、上記栓部の上記凹部は、上記閉鎖工程にて上記容器本体の上記開口部に仮嵌めしたときに、一部が上記容器本体の上記開口部から露出可能な深さを有し、上記薬剤または上記助剤が上記栓部の上記凹部に保持されていることが好ましい。上記栓部の上記凹部の一部が上記容器本体の上記開口部から露出することにより、上記乾燥工程において上記凹部の上記露出部が上記容器本体内の空気の脱気路として機能し、凍結乾燥をさらに効率的に行うことができるからである。
【0028】
<4>微生物夾雑物検査方法
本開示の1実施態様は、上述した薬剤収容容器を用いて微生物夾雑物を検査する微生物夾雑物検査方法であって、上記薬剤収容容器の上記容器本体内に被検体を導入し、上記薬剤および上記助剤ならびに上記被検体を含む微生物夾雑物の測定に供する試料(測定用試料)を調製する調製工程と、上記試料中の上記微生物夾雑物を検出する検出工程と、を有することを特徴とする微生物夾雑物検査方法(以下、本発明の微生物夾雑物検査方法という場合がある。)を提供する。
【0029】
本発明の微生物夾雑物検査方法によれば、上述した薬剤収容容器の容器本体内に被検体を導入することにより、上記容器本体内で薬剤、助剤および被検体を含む測定用試料を一括調製することができる。すなわち、本発明によれば、助剤溶液の調製および秤量をする工程、薬剤入りの容器本体へ上記助剤溶液を導入して試薬溶液を調製する工程等を必要とせずに、上記測定用試料を一度の工程で容易に調製することができる。そして、上記測定用試料の調製を行った薬剤収容容器を用いて微生物夾雑物の検出を行うことができる。このように、本発明の微生物夾雑物検査方法によれば、測定用試料の調製を容易に行うことができ、測定用試料に含まれる被検体中の微生物夾雑物の有無やその量の測定を簡便かつ確実に行うことができ、微生物汚染の程度を簡便に測定することができる。
【0030】
上記発明において微生物夾雑物とは、微生物に由来する成分(核酸、タンパク質、脂質、糖質等の炭水化物等)であって、上記薬剤および上記助剤の構成成分ならびに被検体そのもの以外の成分(夾雑物)を意味する。上記発明においては、上記微生物夾雑物がエンドトキシンまたは(1→3)-β-D-グルカンであることが好ましい。
【0031】
<5>緩衝液調製用固形剤
本開示の1実施態様は、緩衝剤および成形剤を少なくとも含む緩衝液調製用固形剤であって、所定の水性溶媒と混合したときのpHが中性となる量の上記緩衝剤を含む固形剤であることを特徴とする緩衝液調製用固形剤(以下、本発明の緩衝液調製用固形剤という場合がある。)を提供する。
【0032】
本発明の緩衝液調製用固形剤によれば、所定の水性溶媒と混合することでpHが中性となることから、所定のpHを示す緩衝液を容易に調整することができる。また、薬剤および助剤を含む混合溶液、ならびに上記混合溶液を用いた試料の調製の際に、本発明の緩衝液調製用固形剤を用いることで、混合溶液や試料のpHの調整を容易に行うことができる。
【0033】
上記発明においては、上記固形剤が、微生物夾雑物を実質的に含まないことが好ましい。本発明の緩衝液調製用固形剤をそのままヒトを含む動物への投与を目的とした混合溶液の調製や微生物夾雑物検査用の測定用試料の調製のために用いることが可能だからである。
【発明の効果】
【0034】
本開示によれば、助剤溶液の調製を不要とし、薬剤の保存安定性の低下を抑え、薬剤および助剤を含む混合溶液の調製を簡便かつ確実に行うための手段を提供することができる。また、上記手段を用いることで、簡便かつ確実な評価を可能とする微生物夾雑物の検査方法を提供することができる。さらに、混合溶液や上記混合溶液を用いた試料のpHの調整を容易に行うことが可能な緩衝液調製用固形剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本開示の1実施態様の薬剤収容容器の一例を示す概略断面図である。
図2】本開示の1実施態様の閉鎖部材の一例を示す概略斜視図および平面図である。
図3】本開示の1実施態様の薬剤収容容器の他の例を示す概略断面図である。
図4】本開示の1実施態様の閉鎖部材の他の例および薬剤または助剤の保持態様の一例を示す概略断面図である。
図5】本開示の1実施態様の閉鎖部材の他の例および薬剤または助剤の保持態様の一例を示す概略断面図である。
図6】本開示の1実施態様の閉鎖部材の他の例を示す概略断面図である。
図7】本開示の1実施態様の閉鎖部材の他の例を示す概略平面図である。
図8】本開示の1実施態様の閉鎖部材の他の例および薬剤または助剤の保持態様の一例を示す概略断面図である。
図9】本開示の1実施態様の薬剤収容容器への水性溶媒の導入方法を説明する模式図である。
図10】本開示の1実施態様の閉鎖部材の他の例を示す概略斜視図である。
図11】本開示の1実施態様の薬剤収容容器の使用方法の一例を示す模式図である。
図12】本開示の1実施態様の薬剤収容容器の製造方法の一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本開示の1実施態様の薬剤収容容器、閉鎖部材、薬剤収容容器の製造方法、および微生物夾雑物の検査方法、ならびに緩衝液調製用固形剤について、それぞれ詳細に説明する。
【0037】
I.薬剤収容容器
本発明の薬剤収容容器は、一端に開口部を有する容器本体と、上記容器本体の上記開口部を閉鎖する閉鎖部材と、を有し、上記閉鎖部材により上記開口部が閉鎖された上記容器本体内には、薬剤および助剤が分離して存在することを特徴とする。
【0038】
本発明の薬剤収容容器について、図を参照して説明する。図1(a)、(b)は、本発明の薬剤収容容器の一例を示す概略断面図であり、図1(a)は、閉鎖部材2により開口部を閉鎖する前、図1(b)は、閉鎖部材2により開口部を閉鎖した後を示す。また、図2(a)は、図1(a)、(b)に示す薬剤収容容器における閉鎖部材の概略斜視図であり、図2(b)は図2(a)の栓部側から見た概略平面図である。図1(a)、(b)で示す薬剤収容容器10は、一端に開口部Oを有する容器本体1と、上記開口部Oを閉鎖する閉鎖部材2と、を有する。図1(a)中の矢印Yは、閉鎖部材2を開口部Oに嵌合するときの挿嵌方向Yを示している。図1(b)で示すように、上記閉鎖部材2により上記開口部Oが閉鎖された上記容器本体1内(閉鎖空間内)には、薬剤11および助剤12が分離して存在している。
【0039】
また、図1、2に示す例では、閉鎖部材2に助剤12が保持されている。具体的には、閉鎖部材2が、天板部2aおよび天板部2aの容器本体1側の面に開口部Oに内嵌する栓部2bを有し、助剤12を含む固形剤(錠剤)が栓部2bに保持されている。より詳しくは、図2(a)、(b)で示すように、栓部2bには、挿嵌方向Yと交差する面上に凹部Pが形成されており、助剤12が凹部Pに挟まれて保持されている。図1、2で例示する閉鎖部材2は、栓部2bが容器本体1の開口部Oに内嵌して密閉可能な密閉部材である。
【0040】
図3は、本発明の薬剤収容容器の他の例を示す概略斜視図であり、本発明の薬剤収容容器10の容器本体1が、両端に開口部Oを有するシリンジである例を示している。図3に示す例では、容器本体1の両端の開口部Oは、それぞれ異なる閉鎖部材2で閉鎖されている。上記閉鎖部材2は、全体が開口部Oに内嵌する栓部2bとなっている。また、閉鎖部材2により開口部Oが閉鎖された容器本体1内には、薬剤11および助剤12が分離して存在する。図3に示す例では、薬剤11、助剤12は異なる閉鎖部材2にそれぞれ保持されている。
【0041】
本発明の薬剤収容容器によれば、閉鎖部材により開口部が閉鎖された容器本体内(すなわち、閉鎖空間内)には、薬剤と助剤とが分離して存在しており、両物質を水や水溶液等の水性溶媒の共存下で混合することで、上記薬剤および上記助剤が溶解または希釈されて混合溶液を調製することが可能となる。このため、薬剤および助剤を含む混合溶液を調製する際の、助剤溶液の調製および保管管理に係る手間を省略することができる。また、助剤溶液の容器本体への導入作業を省略することができるため、助剤溶液の取り違えによる事故を防ぐことができる。よって、本発明の薬剤収容容器によれば、薬剤および助剤を含む混合溶液を一度の混合作業で簡便かつ確実に用時調製することができる。
また、本発明の薬剤収容容器は、混合溶液の調製前では、閉鎖空間内に薬剤と助剤とが分離して存在していることから、助剤の存在により薬剤の保存安定性が低下することを防ぐことができる。
【0042】
以下、本発明の薬剤収容容器について構成ごとに説明する。
【0043】
A.薬剤および助剤
本発明の薬剤収容容器において薬剤および助剤は、上記閉鎖部材により上記開口部が閉鎖された上記容器本体内(閉鎖空間内)に分離して存在する。
【0044】
薬剤および助剤が、閉鎖空間内に「分離して存在する」とは、薬剤と助剤とが混在しておらず、それぞれが独立して存在することをいう。
【0045】
上記薬剤または上記助剤は、上記閉鎖部材に脱離可能に保持されていることが好ましく、上記助剤が上記閉鎖部材に脱離可能に保持されていることがより好ましい。上記薬剤および上記助剤のうち、一方を上記閉鎖部材に保持し、他方を上記容器本体内に存在させることで、上記薬剤および上記助剤を上記閉鎖空間内に分離して存在させることが容易となり、助剤の存在による上記薬剤の保存安定性の低下を防ぐことができるからである。また、混合溶液の調製の際に、上記閉鎖部材に保持された物質を脱離することで、混合溶液の調製を簡便に行うことができるからである。上記助剤が上記閉鎖部材に脱離可能に保持されているとき、上記薬剤は上記容器本体に存在していればよく、上記容器本体に保持されていてもよい。
なお、「脱離可能」について、並びに閉鎖空間内において薬剤および助剤が分離して存在する具体的な態様については、後で詳細に説明する。
【0046】
上記薬剤および上記助剤は、調製する混合溶液に応じて適宜選択して組み合わせることができる。例えば、生物学的製剤等の医薬を調製する場合、上記薬剤および上記助剤は、特に制限されないが、上記薬剤は、薬理活性物質の原薬やこれを含む製剤等の医薬であってよく、中でも上記薬剤がタンパク質またはタンパク質製剤であることが好ましい。このとき、上記助剤は、ヒトを含む動物への投与に適した医薬組成物とするために原薬に添加される物質であってよく、中でも上記助剤が、助剤成分として溶解補助剤、等張化剤および無痛化剤から選択される少なくとも1種以上を含む助剤である、もしくは、助剤成分として緩衝剤を含む助剤であることが好ましい。本発明の薬剤収容容器を用いて、生物学的製剤等の医薬を簡便かつ確実に調製することができるからである。
【0047】
また、微生物夾雑物検査用の試薬溶液または測定用試料を調製する場合は、上記薬剤が、リムルス試薬であることが好ましく、上記助剤が、助剤成分として緩衝剤を含む助剤であることが好ましい。本発明の薬剤収容容器を用いて、上記試薬溶液または測定用試料を簡便かつ確実に調製することができるからである。また、上記試薬溶液の調製後または薬剤および助剤を含む混合溶液の調製と同時に、本発明の薬剤収容容器に直接、被検体を導入する操作のみによって、測定用試料の調製を同一の閉鎖空間内で簡便かつ確実に行うことができるからである。
【0048】
以下、薬剤および助剤について説明する。
【0049】
1.薬剤
薬剤は、本発明の薬剤収容容器を用いて調製される混合溶液の主機能を示す物質であり、少なくとも1種の有効成分を含んでいる。
【0050】
上記薬剤に含まれる上記有効成分の種類は特に制限されず、例えば、上記薬剤を含む混合溶液の使用態様に応じて適宜選択することができる。上記薬剤に含まれる上記有効成分は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。また、上記薬剤に含まれる上記有効成分の量は、特に制限されず、例えば、上記薬剤を含む混合溶液の使用態様に応じて、適宜設定することができる。
【0051】
上記薬剤としては、例えば、有効成分の原薬、または上記有効成分を含有する製剤を用いることができる。本発明において有効成分とは、例えば、ヒトを含む動物の体内で薬理活性を有する成分、微生物夾雑物等の他の物質と接触したときに当該他の物質もしくは当該有効成分自体に物理的もしくは化学的な変化が生じる成分等をいう。また、ここにいう物理的もしくは化学的な変化には、結合、転移、転位、付加、脱離、分解、切断、酸化、還元、標識、発色、発光等が含まれる。
【0052】
本発明における上記薬剤としては、ヒトを含む動物の病気の診断、治療、処置、予防等のために用いられる医薬、臨床検査を含む検査、試験、研究等のために用いられる試薬等が挙げられる。
【0053】
(1)医薬
上記医薬としては、例えば、薬理活性物質の原薬が挙げられる。上記薬理活性物質の原薬としては、例えば、タンパク質が挙げられる。また、上記医薬としては、例えば、有効成分として薬理活性物質を含む製剤が挙げられる。上記薬理活性物質を含む製剤としては、例えば、タンパク質を有効成分とするタンパク質製剤が挙げられる。上記タンパク質製剤は、公知のものと同様とすることができ、例えば、コラーゲン、血清アルブミン、フィブリノーゲン、各種ホルモン、エリスロポエチン、インターフェロン、インターロイキン等が挙げられる。また、上記薬理活性物質の原薬として、ワクチン、抗体医薬品(サイトカイン/腫瘍抗原/各種受容体等に対するモノクローナル抗体)のなかで液状保管が難しいもので凍結乾燥保存するものが挙げられる。
【0054】
(2)試薬
上記試薬としては、例えば、リムルス試薬が挙げられる。上記リムルス試薬は、カブトガニの血球抽出物(ライセート試薬)そのものであってもよく、上記血球抽出物を適宜分画および/または精製等して取得されたものであってもよい。また、上記リムルス試薬は、例えば、カブトガニの血球を原料とし、常法に従って取得されたものであってもよい。
【0055】
上記カブトガニの種類は特に制限されず、例えば、カブトガニ目(Xiphosura)に属する任意のカブトガニであってよい。上記カブトガニとしては、カブトガニ科(Limulidae)に属するカブトガニが例示される。上記カブトガニは、カブトガニ属(Tachypleus)、アメリカカブトガニ属(Limulus)、またはカルシノスコルピウス属(Carcinoscorpius)に属するカブトガニであることが好ましい。上記カブトガニとしては、具体的には、タキプレウス・トリデンタツス(Tachypleus tridentatus)、タキプレウス・ギガス(Tachypleus gigas)、リムルス・ポリフェムス(Limulus polyphemus)、カルシノスコルピウス・ロツンディカウダ(Carcinoscorpius rotundicauda)が例示される。
【0056】
上記リムルス試薬は、例えば、カブトガニの凝固カスケード反応(以下、単に「カスケード反応」という。)に関与するプロテアーゼ前駆体である各因子(C因子、B因子、G因子、プロクロッティングエンザイム。以下、個別にまたは総称して「リムルス因子」という。)のうち、リムルス試験の測定対象物質とする微生物夾雑物と反応するリムルス因子を含む1種類以上のリムルス因子を含有している試薬が挙げられる。上記リムルス試薬は、例えば、任意のリムルス因子のみを含むように人為的に再構成されたリムルス試薬(以下「再構成リムルス試薬」という。)であってもよい。ここにいう「微生物夾雑物との反応」は、微生物夾雑物と接触したリムルス因子の前駆体が活性化され、プロテアーゼ活性を有するように変化する反応を意味する。
【0057】
上記再構成リムルス試薬は、例えば、微生物夾雑物としてエンドトキシンを測定対象物質とする場合、リムルス因子としてC因子を少なくとも含んでいればよく、他のリムルス因子(B因子、G因子、プロクロッティングエンザイム)は含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。また、上記再構成リムルス試薬は、例えば、微生物夾雑物として(1→3)-β-D-グルカンを測定対象物質とする場合、リムルス因子としてG因子を少なくとも含んでいればよく、他のリムルス因子(C因子、B因子、プロクロッティングエンザイム)は、含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
【0058】
微生物夾雑物としてエンドトキシンを測定対象物質とする場合、上記再構成リムルス試薬は、リムルス因子としてC因子を含んでいることが好ましく、C因子の他にB因子を含んでいることがより好ましく、C因子の他にB因子とプロクロッティングエンザイムを含んでいることがさらに好ましい。また、微生物夾雑物としてエンドトキシンを測定対象物質とする場合、上記再構成リムルス試薬は、G因子を含んでいないことが好ましい。
【0059】
微生物夾雑物として(1→3)-β-D-グルカンを測定対象物質とする場合、上記再構成リムルス試薬は、リムルス因子としてG因子を含んでいることが好ましく、G因子の他にプロクロッティングエンザイムを含んでいることがより好ましい。また、微生物夾雑物として(1→3)-β-D-グルカンを測定対象物質とする場合、上記再構成リムルス試薬は、C因子を含んでいないことが好ましく、C因子およびB因子を含んでいないことがより好ましい。
【0060】
上記再構成リムルス試薬は、例えば、リムルス試薬から任意のリムルス因子を除去するように精製や分取を行うことにより調製することができる。また、例えば、リムルス試薬から単離した1種類のリムルス因子を上記再構成リムルス試薬としてもよいし、2種類以上の単離したリムルス因子を混合したものを上記再構成リムルス試薬としてもよい。
【0061】
上記再構成リムルス試薬の調製は、公知の手法を適宜組合せて行うことができ、例えば、「Nakamura T, Horiuchi T, Morita T, Iwanaga S. J Biochem. 1986 Mar; 99(3): 847-57.」に開示される方法を参照して行うことができる。
【0062】
上記再構成リムルス試薬に含まれるリムルス因子は、カブトガニから得られる天然のリムルス因子であってもよく、遺伝子組換え技術により得られる組換えのリムルス因子であってもよい。
【0063】
上記天然のリムルス因子は、例えば、上記のとおり、カブトガニの血球抽出物から取得することができる。また、上記組換えのリムルス因子は、例えば、リムルス因子をコードする核酸を用いて形質転換した宿主細胞に上記リムルス因子を発現させることで取得することができる。上記宿主細胞の種類は特に制限されないが、例えば、哺乳類細胞や昆虫細胞であってよい。上記宿主細胞は、哺乳類細胞であることが好適である。塩(イオン)の存在による反応阻害を受けにくい再構成リムルス試薬を提供することができるからである(国際公開第2014/92079号)。上記哺乳類細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣由来細胞株(CHO細胞)やヒト胎児腎細胞由来細胞株(HEK細胞)が挙げられる。上記HEK細胞としては、HEK293細胞が挙げられる。
【0064】
上記宿主細胞による上記組換えリムルス因子の発現は、常法に従って行うことができ、例えば、国際公開第2014/92079号公報に開示される方法を参照して行うことができる。上記リムルス因子のアミノ酸配列やそれをコードする遺伝子の塩基配列は、公知のデータベースから取得できる。公知のデータベースとしては、例えば、National Center for Biotechnology Information(NCBI)が提供するデータベースが挙げられる。発現された上記組換えリムルス因子は、例えば、上記宿主細胞を培養して得る培養液をそのまま上記リムルス因子として用いてもよいし、必要に応じて所望の程度に精製したものを上記リムルス因子として用いてもよい。
【0065】
上記再構成リムルス試薬に含まれる上記リムルス因子は、全てのリムルス因子が天然のリムルス因子であってもよく、全てのリムルス因子が組換えリムルス因子であってもよく、天然のリムルス因子と組換えリムルス因子が適宜組合されたものであってもよい。また、上記再構成リムルス試薬は、例えば、リムルス試薬そのもの、あるいはリムルス試薬を適宜分画および/または精製等したものと、天然および/または組換えのリムルス因子が適宜組合されたものであってもよい。
【0066】
以上説明したリムルス試薬は、市販のリムルス試薬であってよい。上記市販のリムルス試薬としては、例えば、パイロスマート(生化学工業株式会社)、エンドスペシー(生化学工業株式会社)、パイロクロム(アソシエーツオブケープコッドインク)、パイロテル-T(アソシエーツオブケープコッドインク)、パイロテル シングルテスト(アソシエーツオブケープコッドインク)、リムルス ES-II シングルテスト(和光純薬工業株式会社)、カイネティック-QCL(ロンザウォーカーズヴィルインク)、エンドクロム-K(チャールズリバーラボラトリーズインク)等がある。これらは本発明における薬剤として用いることができる。
【0067】
(3)その他
上記薬剤は、上述した医薬または試薬の有効成分単体で構成されていてもよく、上記有効成分および他の成分を含む組成物で構成されていてもよい。
例えば、上記リムルス試薬は、有効成分である上記リムルス因子のみで構成される試薬であってもよく、上記リムルス因子およびそれ以外の他の成分を含む試薬であってもよい。上記他の成分としては、例えば、上記リムルス因子を発現する上記宿主細胞または上記カブトガニが有する上記リムルス因子以外の成分(具体的には、核酸、タンパク質、脂質、糖質等の炭水化物等)が挙げられる。また、上記リムルス試薬は、上記他の成分として、リムルス試験において用いられる検出用基質を含んでいてもよい。検出用基質については後述する。
【0068】
上記薬剤に含まれる上記有効成分の質量濃度(w/w%)は、例えば、0.01w/w%以上、0.1w/w%以上、1w/w%以上、10w/w%以上、25w/w%以上、50w/w%以上、75w/w%以上、90w/w%以上、95w/w%以上、99w/w%以上、または100w/w%であってよい。また、上記薬剤に含まれる上記有効成分の質量濃度(w/w%)は、例えば、99.9w/w%以下、99w/w%以下、95w/w%以下、90w/w%以下、75w/w%以下、50w/w%以下、25w/w%以下、10w/w%以下、または1w/w%以下であってよい。
なお、「w/w%」は、「所定の材料(成分)(g)/全体量(g)」で算出される割合と同義である。以下同様とする。
【0069】
2.助剤
助剤は、上記薬剤を含む混合溶液中で、薬剤による機能とは別の他の機能を付与する助剤成分を1種類以上含む物質である。
【0070】
上記助剤に含まれる上記助剤成分の種類は特に制限されず、上記助剤を含む混合溶液の使用態様、使用する上記薬剤の種類等に応じて適宜選択することができる。上記助剤に含まれる上記助剤成分は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。また、上記助剤に含まれる上記助剤成分の量は、特に制限されず、例えば、上記助剤を含む混合溶液の使用態様に応じて、適宜設定することができる。
【0071】
上記薬剤が医薬である場合、上記助剤は、ヒトを含む動物への投与に適した医薬組成物とするために原薬に添加される助剤成分を含むことが好ましく、上記助剤成分として溶解補助剤、等張化剤および無痛化剤から選択される少なくとも1種以上を含むことが好ましい。溶解補助剤、等張化剤および無痛化剤については、公知の生物学的製剤に用いられる材料と同様とすることができる。
また、上記の場合、上記助剤は、上記助剤成分として、緩衝剤、希釈剤、利尿剤、抗生物質、栄養剤、酸化防止剤等を含んでいてもよい。中でも、上記助剤は、上記助剤成分として緩衝剤を含むことが好ましい。本発明の薬剤収容容器を用いて得られる生物学的製剤等の医薬のpH調整が可能となるからである。上記緩衝剤の種類および上記助剤中の上記緩衝剤の含有量については、後述する。
【0072】
上記薬剤が試薬である場合、上記助剤は、上記助剤成分として緩衝剤を含むことが好ましい。上記試薬溶液または測定用試料のpH調整が可能となるからである。また、上記助剤は、上記助剤成分の他にリムルス試験において用いられる検出用基質等を含んでいてもよい。検出用基質については後述する。
【0073】
ここで、上記緩衝剤としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、アスコルビン酸、マレイン酸、グルコン酸、リン酸、ホウ酸、グリシンおよびグルタミン酸等のアミノ酸、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)、2-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]エタンスルホン酸(HEPES)、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸(TES)、2-ヒドロキシ-3-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]プロパンスルホン酸,一水和物(HEPPSO)、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン(Tricine)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン(Bicine)、イミダゾール、リン酸塩等が例示される。
【0074】
上記助剤中の上記緩衝剤の含有量は、調製する混合溶液の種類や量に応じて適宜設定することができる。中でも上記助剤は、所定の水性溶媒と混合したときのpHが中性となる量の上記緩衝剤を含むことが好ましい。上記薬剤および上記助剤の一度の混合作業により、得られる混合溶液のpHを中性とすることができるため、別途のpH調整作業が不要となり、混合溶液を調製後すぐに使用可能となるからである。例えば、生物学的製剤等の医薬を調製する場合は、上記医薬を、ヒトを含む動物への投与に適したpHとすることができる。また、例えば、微生物夾雑物検査用の試薬溶液または測定用試料を調製する場合は、プロテアーゼ前駆体(リムルス因子)が微生物夾雑物により活性化される反応やカスケード反応を好ましく進行させるのに適したpHとすることができる。
【0075】
ここで、上記助剤中の上記緩衝剤の含有量は、上記薬剤や上記水性溶媒の種類や量に応じ、これらの物質が有する緩衝能等を考慮してpHが中性となる量であってよい。
【0076】
上記薬剤および上記助剤と混合する上記水性溶媒は、特に制限されない。ここで、水性溶媒とは、水との混和が可能な溶媒を意味する。上記「水性溶媒」としては、例えば、注射用水等の水、水とその他の成分とを含む水溶液、液状の被検体等が挙げられる。また、上記「その他の成分」としては、例えば塩化ナトリウム等の無機成分、界面活性剤等の有機成分が例示される。上記「液状の被検体」としては、例えばリムルス試験に供される被検体が挙げられ、具体的には、注射用水、注射剤、ヒトを含む動物に由来する試料等が例示される。上記「動物に由来する試料」としては、血液、血清、血漿等が例示される。上記「動物に由来する試料」としては、動物の体と直接または間接的に接触させた液体を回収して得られる試料(透析液等)も例示される。
【0077】
上記水性溶媒は有機溶媒を含んでいてもよく、実質的に含んでいなくてもよく、一切含んでいなくてもよい。ここにいう「有機溶媒を実質的に含まない」とは、含まれていても混合溶液中の薬剤の機能を失わずに目的の効果を奏することができる程度の量しか含まれていないことを意味し、体積濃度(v/v%)として、例えば、0v/v%超20v/v%以下の範囲内、0v/v%超10v/v%以下の範囲内、0v/v%超5v/v%以下の範囲内、0v/v%超2v/v%以下の範囲内、または0v/v%超1v/v%以下の範囲内であってよい。
【0078】
上記助剤と混合する上記水性溶媒の量は、特に制限されない。上記助剤と混合する上記水性溶媒の量は、助剤と混合したときに希釈不要でpHが中性となる量とすることができ、例えば0.1mL以上または0.2mL以上であってよい。また、上記助剤と混合する上記水性溶媒の量は、例えば、1L以下、100mL以下、10mL以下、1mL以下、または0.5mL以下であってよい。よって、上記助剤と混合する上記水性溶媒の量の範囲としては、0.1mL~1Lの範囲内、0.1mL~100mLの範囲内、0.1mL~10mLの範囲内、0.1mL~1mLの範囲内、0.2mL~1mLの範囲内、0.2mL~0.5mLの範囲内等が例示される。上記薬剤がリムルス試薬である場合は、上記助剤と混合する上記水性溶媒の量の範囲は、例えば0.1mL~1mLの範囲内であることが好ましく、0.2mL~0.5mLの範囲内であることがより好ましい。
【0079】
上記においてpHが中性であるとは、室温(24~26℃)において測定した時のpHが中性であることを意味する。例えば25℃において中性であるpHは、例えば、6以上、6.2以上、6.4以上、6.6以上、または6.8以上であってよい。また、中性であるpHは、例えば、8以下、7.9以下、7.8以下、7.6以下、または7.4以下であってよい。すなわち、中性であるpHの範囲としては、6~8の範囲内、6.4~8の範囲内、6.8~8の範囲内、6.8~7.9の範囲内、6.4~7.8の範囲内、6.8~7.8の範囲内、6.4~7.4の範囲内、6.8~7.4の範囲内等が例示される。上記薬剤がリムルス試薬である場合は、上記助剤成分として上記緩衝剤を含む上記助剤を上記所定の水性溶媒と混合したときのpHが6.8~7.9の範囲内であることが好ましい。上記pHは上記薬剤および上記助剤ならびに上記所定の水性溶媒を混合し、上記薬剤および上記助剤が溶解されたときに示すpHを意味する。
【0080】
上記助剤中の上記緩衝剤の含有量は、上記薬剤および上記助剤ならびに上記所定の水性溶媒を混合したときの上記緩衝剤のモル濃度(以下「緩衝剤の終濃度」という。)で規定することも可能である。「助剤を所定の水性溶媒と混合したときのpHが中性となる」量は、上記助剤を上記薬剤および上記所定の水性溶媒と混合したときの上記緩衝剤の終濃度が所定の範囲内となる量であってよい。具体的には、上記緩衝剤の終濃度は、例えば、1mM以上、5mM以上、10mM以上、または20mM以上であってよい。上記緩衝剤の終濃度は、例えば、1M以下、500mM以下、250mM以下、または100mM以下であってよい。よって、上記緩衝剤の終濃度の範囲としては、1mM~1Mの範囲内、1mM~500mMの範囲内、1mM~250mMの範囲内、1mM~100mMの範囲内、5mM~500mMの範囲内、5mM~250mMの範囲内、5mM~100mMの範囲内、10mM~500mMの範囲内、10mM~250mMの範囲内、10mM~100mMの範囲内、20mM~250mMの範囲内、20mM~100mMの範囲内等が例示される。上記薬剤がリムルス試薬である場合は、上記緩衝剤の終濃度は20mM~100mMの範囲内であることが好ましい。なお、mM=mmol/Lである。
【0081】
3.その他の成分
上記薬剤および上記助剤には、他の成分が含まれていてもよい。以下、他の成分について説明する。
【0082】
(1)検出用基質
上記薬剤および上記助剤の少なくとも一方は、検出用基質(以下、単に「基質」という。)を含んでいてもよい。上記基質は、リムルス試験において用いられる成分である。上記基質は、活性化したリムルス因子の有無やその量、カスケード反応の進行の測定等のために用いることが可能な物質である限り特に制限されず、例えばタンパク質、ポリペプチド、ペプチドおよびそれらの誘導体が例示される。上記基質は、天然のタンパク質等であってもよく、組換えのタンパク質等であってもよく、化学的に合成されたタンパク質等であってもよい。
【0083】
上記基質は、カスケード反応の最終産物であるクロッティングエンザイムを検出するための基質であってもよく、カスケード反応の途中段階に存在する活性化されたリムルス因子(具体的には、C因子、B因子またはG因子)を検出するための基質であってもよい。
【0084】
上記基質としては、カスケード反応の最終産物であるクロッティングエンザイムの基質であるコアギュローゲンが例示される。例えば、天然のコアギュローゲンは、カブトガニの血球抽出物から調製することができる。また、例えば、組換えのコアギュローゲンは、例えば「宮田ら、蛋白質 核酸 酵素 別冊 No.29; P30-43; 1986」に記載の方法を参照して調製することができる。
【0085】
上記基質は、ペプチドの誘導体(以下「ペプチド基質」という。)であることが好ましい。製造コストが比較的安価であることに加え、検出感度が優れているからである。上記ペプチド基質としては、一般式Y-X-Z(式中、Xはペプチド、Yは保護基、Zは標識物質を表す。)で示されるペプチドの誘導体が例示される。上記ペプチド基質において、保護基(Y)はペプチド(X)のN末端のアミノ酸残基のα-アミノ基を介して、標識物質(Z)はペプチド(X)のC末端のアミノ酸残基のカルボキシ基を介して、それぞれ結合している。上記ペプチド基質において各構成要素(X、YおよびZ)の具体的態様は、活性化されたリムルス因子によってX-Z間の結合が切断され、標識物質(Z)を遊離する性質を有している限り特に制限されない。上記ペプチド基質においてX-Z間の結合は、アミド結合であることが好ましい。また、上記一般式において、保護基(Y)は存在しなくてもよく、上記ペプチド基質としては一般式X-Z(式中、Xはペプチド、Zは標識物質を表す。)で示されるペプチドの誘導体も例示される。
【0086】
上記保護基(Y)は特に制限されず、ペプチドに適用可能な公知の保護基を用いることができる。そのような保護基としては、ベンジルオキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、ベンジル基、ベンゾイル基、アセチル基等が例示される。
【0087】
上記ペプチド(X)は、活性化されたリムルス因子に認識される配列を有するペプチドである限り、特に制限されない。上記ペプチド(X)としては、Asp-Pro-Arg(DPR)、Val-Pro-Arg(VPR)、Leu-Thr-Arg(LTR)、Met-Thr-Arg(MTR)、Leu-Gly-Arg(LGR)、Ile-Glu-Gly-Arg(IEGR)(配列番号1)、Glu-Gly-Arg(EGR)等が例示される。
【0088】
上記標識物質(Z)は特に制限されず、ペプチドに適用可能な公知の標識物質を用いることができる。そのような標識物質は、紫外線や可視光によって検出される物質であってもよく、蛍光色素であってもよく、電気化学測定により検出される物質であってもよい。上記標識物質(Z)としては、パラニトロアニリン(pNA)、7-メトキシクマリン-4-酢酸(MCA)、2,4-ジニトロアニリン(DNP)、ダンシル(Dansyl)系色素、ローダミン(Rhodamine)系色素、シアニン(Cyanine)系色素、フェニレンジアミン(PDA)およびその誘導体等が例示される。
【0089】
上記基質としては、検出対象とする上記リムルス因子の種類に応じて好適なものを適宜選択して用いることができる。例えば、基質特異性の点からは、LGRまたはIEGRのペプチド配列を含む基質をクロッティングエンザイムの測定に、LTRまたはMTRのペプチド配列を含む基質を活性型B因子の測定に、VPRまたはDPRのペプチド配列を含む基質を活性型C因子の測定に、EGRのペプチド配列を含む基質を活性型G因子の測定に、それぞれ好適に用いることができる。
【0090】
上記薬剤および上記助剤は、微生物夾雑物を実質的に含まないことが好ましい。上記薬剤および上記助剤を混合して得られる混合溶液を、そのままヒトを含む動物へ投与することや、微生物夾雑物検査用の測定用試料の調製ために用いることが可能となるからである。
ここで、「微生物夾雑物を実質的に含まない」とは、上記薬剤および上記助剤から検出される微生物夾雑物の量が、定量限界値未満または検出限界値未満であることを意味する。
【0091】
(2)その他
上記薬剤および上記助剤は、一般に薬剤や助剤に含まれる公知の材料が含まれていてもよい。例えば、上記薬剤および上記助剤が、後述する凍結乾燥物である場合、凍結乾燥前に上記薬剤または上記助剤を溶解していた水性溶媒に含まれる塩化ナトリウム等の無機成分、界面活性剤等の有機成分等が含まれていてもよい。
【0092】
4.剤形
上記薬剤および上記助剤の形状は、特に制限されず、固体状であってもよく、液状(液体)であってもよく、液状(液体)を凍結させた状態であってもよい。以後の説明において、上記液状の薬剤を薬剤溶液といい、上記固体状の薬剤を固体薬剤という場合がある。また、上記液状の助剤を助剤溶液といい、上記固体状の助剤を固体助剤という場合がある。
【0093】
上記薬剤溶液または上記助剤溶液としては、例えば、上記薬剤または上記助剤を上記水性溶媒に混合した(溶解した)混合液が挙げられる。水性溶媒については、上述の通りである。上記混合液は、上述したpHや緩衝剤のモル濃度を示すことが可能となるように、適宜調製される。
【0094】
一方、上記固体薬剤または上記固体助剤としては、例えば、上記薬剤または上記助剤の凍結乾燥物、上述した混合液の凍結乾燥物、上記薬剤または上記助剤を含む固形剤が挙げられる。中でも上記薬剤または上記助剤を含む上記固形剤は、剤形を安定化することができるため好ましい。上記固形剤としては、例えば、上記薬剤または上記助剤と成形剤とを含む固形剤、上記薬剤または助剤を公知のカプセルに充填またはカプセル被膜で被包成型したカプセル剤等が挙げられる。
【0095】
上記薬剤または上記助剤と上記成形剤とを含む上記固形剤としては、例えば、上記薬剤または上記助剤と上記成形剤との混合物を錠剤、散剤等の所望の剤形に成形した成形物単体の他、上記薬剤もしくは上記助剤または上記成形物を公知のカプセルに充填またはカプセル被膜で被包成型したカプセル剤も含むことができる。上記固形剤の剤形としては、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤等が例示され、中でも、錠剤、丸剤、カプセル剤が好ましく、特に錠剤であることが好ましい。なお、ここでいう「成形剤」は、薬剤または助剤と直接混合される物質であり、「カプセル剤」のカプセルに含まれる成形剤等、薬剤または助剤と混合されないものは含まないものとする。
【0096】
上記固形剤が成形剤を含む場合、上記固形剤1単位(1粒)の中に上記薬剤または上記助剤と成形剤とが分散して存在する。上記固形剤に含まれる上記助剤が2種以上の上記助剤成分を含む場合、上記固形剤は、1単位(1粒)の中に2種以上の上記助剤成分と成形剤とを分散して含むものとすることができる。
【0097】
上記成形剤は、固形剤の製造に通常用いられる公知の材料を使用することができる。上記成形剤としては、例えば、賦形剤、結合剤等が挙げられる。具体的には、結晶セルロース等のセルロース;デンプン;デキストリン;デキストラン;マンニトール、エリスリトール、キシリトール、マルトース、マルチトール、ソルビトール等の糖アルコール;乳糖、白糖、トレハロース、ブドウ糖等の糖類;リン酸カルシウムやリン酸ナトリウム等のリン酸塩類;塩化ナトリウム;炭酸カルシウム;カオリン;ケイ酸等が例示できる。これらの材料は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。
【0098】
上記固形剤が成形剤を含む場合、上記固形剤に含まれる上記成形剤の含有量は、上記薬剤や上記助剤を所望の剤形に成形することが可能な量であればよく、上記固形剤の剤形、上記固形剤中の上記薬剤または上記助剤の含有量等に応じて適宜設定することができる。中でも、上記成形剤の含有量は、上記固形剤の剤形を錠剤とすることが可能な量であることが好ましい。上記固形剤中の上記成形剤の含有量は、質量濃度(w/w%)として、例えば、1w/w%以上、5w/w%以上、10w/w%以上、25w/w%以上、または50w/w%以上とすることができる。また、上記成形剤の含有量は、質量濃度(w/w%)として、例えば、99.9w/w%以下、99w/w%以下、95w/w%以下、90w/w%以下、80w/w%以下、70w/w%以下、または60w/w%以下とすることができる。
【0099】
上記薬剤および上記助剤は、少なくとも一方が固体状であることが好ましく、上記薬剤および上記助剤の両方が固体状であることがより好ましい。閉鎖空間内において上記薬剤および上記助剤を分離して存在させることが容易となるからである。
【0100】
上記薬剤が固体薬剤である場合、上記固体薬剤は、水性溶媒を実質的に含まないことが好ましい。水性溶媒を含む場合に比して、上記薬剤の有効成分を安定的に保存することが可能だからである。「水性溶媒を実質的に含まない」とは、上記固体薬剤における水分含量(w/w%)が、例えば、20w/w%~0w/w%の範囲内、好ましくは10w/w%~0w/w%の範囲内、さらに好ましくは5w/w%~0w/w%の範囲内、より好ましくは2w/w%~0w/w%の範囲内、特に好ましくは1w/w%~0w/w%の範囲内であることを意味する。
【0101】
上記薬剤が固体薬剤である場合、上記固体薬剤は、凍結乾燥物であってもよく、固形剤であってもよいが、上記薬剤が上記閉鎖部材に保持される場合は、上記固体薬剤は固形剤であることが好ましい。上記閉鎖部材への保持が容易となるからである。一方、上記薬剤が上記容器本体内(上記閉鎖部材以外)に存在する場合は、上記固体薬剤は凍結乾燥物であることが好ましい。薬剤の失活を防ぐことができるからである。
【0102】
同様に、上記助剤が固体助剤である場合、上記固体助剤は、凍結乾燥物であってもよく、固形剤であってもよいが、上記助剤が上記閉鎖部材に保持される場合は、上記固体助剤は固形剤であることが好ましい。上記閉鎖部材への保持が容易となるからである。一方、上記助剤が上記容器本体内(上記閉鎖部材以外)に存在する場合は、上記固体助剤は、固形剤であっても凍結乾燥物であってもよい
【0103】
上記助剤が助剤成分として緩衝剤を含む固体助剤である場合、上記固体助剤が含む緩衝剤の量は、所定の水性溶媒と混合したときの上記緩衝剤のモル濃度が、上述した「2.助剤」の項の中で説明した範囲内となる量であることが好ましい。固形剤中の緩衝剤の含有量としては、質量濃度(w/w%)で0.01w/w%以上、0.05w/w%以上、0.1w/w%以上、1w/w%以上とすることができる。また、上記含有量は質量濃度(w/w%)で、50w/w%以下、20w/w%以下、10w/w%以下、5w/w%以下、1w/w%以下とすることができる。
【0104】
B.閉鎖部材
本発明における閉鎖部材は、上記容器本体の上記開口部を閉鎖する部材である。ここで、「容器本体の開口部を閉鎖する」とは、容器本体の開口部を閉ざし、閉鎖部材により容器本体の開口部からの他の材料(固体)の混入を阻止することをいう。容器本体の開口部を閉鎖した状態において、閉鎖部材は、容器本体を密閉していてもよく、密閉していなくてもよいが、密閉していることが好ましい。「密閉」とは、容器本体内の薬剤および助剤の漏出がなく、かつ気体の透過が実質的にないことをいう。
【0105】
上記閉鎖部材は、容器本体と連結して一体であってもよく、容器本体と分離した別体であってもよい。
【0106】
上記閉鎖部材としては、容器本体の開口部を閉鎖可能であれば特に限定されず、容器本体の種類や開口部の形態に応じて適宜選択することができる。上記閉鎖部材としては、例えば、蓋、鍋蓋、キャップ、栓、これらの複合体等が挙げられる。キャップとしては、スクリューキャップ、ヒンジキャップ等が挙げられる。また、栓としては、差し込み式栓、かぶせ式栓等が挙げられる。
【0107】
上記閉鎖部材は、上記容器本体の上記開口部を閉鎖可能な形状であれば特に制限されず、例えば、閉鎖部材の開口部側が平面であってもよく、図4(a)~(e)で例示するように、天板部2aと、天板部2aの閉鎖部材1側の面の開口部Oと平面視上重なる位置にある凸部Tと、を有することができる。上記閉鎖部材で容器本体の開口部を閉鎖した際に、凸部は、開口部内に挿入されて容器本体内に位置し、凸部表面において固形剤を保持する(図4(a))、もしくは、凸部と容器本体の内壁との間で固形剤を保持する(図4(b))ことができるからである。図4(c)で例示するように、閉鎖部材2が2以上の凸部Tを有する場合、上記2以上の凸部Tで固形剤を挟持してもよい。また、図4(d)で例示するように、凸部Tは、開口部へ挿入する方向と交差する方向に突出する突出部2dを有していてもよい。固形剤が穴あき錠剤であれば、固形剤の穴に突出部を通して固形剤をひっかけて保持することができるからである。さらに、図4(e)で例示するように、凸部Tは、側面または挿嵌方向と交差する面上に、凹部Pを有していてもよい。凹部において固形剤を保持することができるからである。
【0108】
また、上記閉鎖部材は、図5で例示するように、天板部2aと、天板部2aの閉鎖部材1側の面の開口部Oと平面視上重なる位置にある凹部Pと、を有していてもよい。凹部に固形剤を保持可能となるからである。上記凹部は、上記容器本体の上記開口部の開口中心軸と交差する面上に存在することが好ましい。
【0109】
上記閉鎖部材は、容器本体の開口部に嵌合可能であることが好ましい。上記閉鎖部材が上記容器本体の上記開口部に内嵌または外嵌することにより、上記薬剤および上記助剤を密閉状態で保管可能となるからである。閉鎖部材の中でも容器本体の開口部と嵌合可能な閉鎖部材を、特に密閉部材と称する場合がある。上記閉鎖部材が、容器本体の開口部に嵌合可能であるとは、上記閉鎖部材が容器本体の開口部に内嵌可能であってもよく、外嵌可能であってもよい。
【0110】
容器本体の開口部に内嵌可能な閉鎖部材としては、例えば、上記容器本体の上記開口部に内嵌する栓部を有するものが挙げられる。また、容器本体の開口部に外嵌可能な閉鎖部材としては、例えば、天板部と、上記天板部の閉鎖部材1側の面に形成され、容器本体の開口部の開口周縁と嵌合するリブを有するもの、天板部と上記天板部の周縁から垂下し、上記開口部に外嵌する筒状周壁部とを有するもの等が挙げられる。
【0111】
中でも、上記閉鎖部材は、上記容器本体の上記開口部に内嵌する栓部を有することが好ましい。図1(a)、(b)および図2(a)、(b)における閉鎖部材2は、上記容器本体1の上記開口部Oに内嵌する栓部(図1図2中の2b)を有する。
【0112】
上記閉鎖部材が栓部を有する場合は、図2(a)、(b)に示すように、閉鎖部材2は、天板部2aおよび天板部2aの閉鎖部材2側の面上の栓部2bを有していてもよく、図3で示すように、閉鎖部材2全体が栓部2bであってもよい。
【0113】
上記栓部の平面視形状は、上記容器本体の上記開口部に内嵌可能な形状であれば特に限定されず、例えば、円形、四角形等とすることができる。図2では、平面視形状が円形である栓部を示している。また、上記栓部の挿嵌方向の縦断面形状は、特に限定されず、例えば、三角形状、四角形状、テーパー形状等が挙げられる。また、栓部の先端は、尖った形状であってもよく、平坦な形状であってもよく、曲面を有する形状であってもよい。
【0114】
上記栓部の高さ(挿嵌方向における垂直長さ)は、上記容器本体の上記開口部に内嵌し、密閉可能となるように適宜設計される。中でも、上記開口部に内嵌するときに仮嵌めが可能となる仮栓部分を有する高さであることが好ましい。
【0115】
上記栓部は、薬剤または助剤を含む固形剤を嵌める凹部を有することができる。凹部Pの位置は特に限定されず、例えば、図6で例示するように、栓部2bの側面に有することができる。この場合、上記凹部に固形剤を嵌めて、栓部と容器本体の内壁との間で固形剤を保持することができる。また、上記栓部は、図2(a)、(b)で示すように、挿嵌方向Yと交差する面上に凹部Pを有することができる。上記栓部が、挿嵌方向と交差する面上に凹部を有する場合、凹部は、上記挿嵌方向が凹部の深さ方向となるように形成されている。上記栓部が上記の構造を有することで、例えば、薬剤または助剤を含む固形剤を上記凹部に嵌めて保持することができる。
【0116】
上記凹部は、上記固形剤の保持が可能な形状を有することが好ましい。上記栓部が挿嵌方向Yと交差する面上に凹部Pを有する場合、上記凹部の平面視形状としては、特に限定されないが、例えば、ライン状(図7(a))、円形状(図7(b))、三角形、四角形等の多角形(図7(c)、(d))、等が挙げられる。
【0117】
上記栓部が、挿嵌方向と交差する面に凹部を有する場合、上記凹部は、上記栓部を上記容器本体の上記開口部に仮嵌めしたときに、一部が上記容器本体の上記開口部から露出可能な深さを有することが好ましい。このとき、上記凹部の一部が上記栓部の側面を貫通していることがより好ましい。本発明の薬剤収容容器の製造過程において、上記容器本体の上記開口部を上記閉鎖部材で仮嵌めした状態で、上記容器本体内(閉鎖空間内)に上記閉鎖部材が保持する上記固形剤と分離して存在する液状物を凍結乾燥する際に、上記凹部が上記容器本体内の空気の脱気路として機能することができ、これにより、液状物を高効率で凍結乾燥することができるからである。
【0118】
上記栓部の側面を貫通する凹部の形状としては、例えば、図7(a)で示すように、凹部の平面視形状がライン状であり、ライン状の凹部の長手方向の両端が栓部の側面を貫通する形状、図7(d)で示すように、凹部の平面視形状が四角形であり、上記四角形状の凹部の四隅が栓部の側面を貫通する形状等が挙げられる。
【0119】
上記栓部は、図8(a)で例示するように、挿嵌方向Yと交差する面上にさらに1以上の凸部Tを有することができる。2以上の凸部Tを有する場合、上記2以上の凸部Tで固形剤を挟持することができる。また、上記凸部は、栓部とは反対側の末端に、挿嵌方向と交差する方向に突出する突出部tを有していてもよい。固形剤が穴あき錠剤であれば、図8(a)で例示するように、固形剤12の穴に突出部tを通してひっかけて保持することができる。図8(b)は、上記閉鎖部材2が、栓部2bの挿嵌方向Yと交差する面上に2つの凸部Tを有し、一方の凸部Tはさらに突出部tを有し、2つの凸部Tで固形剤12を保持する例を示している。
【0120】
上記閉鎖部材の材質は、容器本体の開口部を閉鎖可能な材質であれば特に限定されず、閉鎖部材の形状、容器本体の開口部の形状等に応じて適宜選択することができる。上記閉鎖部材の材質としては、例えば、アルミニウムなどの金属、樹脂、ゴム等が挙げられる。また、上記閉鎖部材が栓部を有する場合、上記栓部の材質としては、樹脂、ゴム等の弾性体が好ましい。容器本体の開口部との内嵌状態を保つことができ、閉鎖空間内の気密性を高めることができるからである。
【0121】
上記閉鎖部材は加工された素材の状態でそのまま使用されてもよく、コーティング等の処理をされた状態で使用されてもよい。固形剤の閉鎖部材への保持や脱離をより確実にすることができるからである。
【0122】
上記閉鎖部材は、その材質にもよるが、注射針などの中空針が貫通可能であることが好ましい。閉鎖部材を開閉せずに、注射器等を用いて容器本体内へ水性溶媒を導入することが可能となり、閉鎖部材の開閉による容器本体内への不純物の混入を防ぐことができるからである。また、上記閉鎖部材に固形剤が脱離可能に保持されている場合、中でも上記固形剤が物理的に脱離可能に保持されている場合、水性溶媒導入の際に閉鎖部材を貫通した中空針により、上記閉鎖部材に保持された固形剤を押圧して上記閉鎖部材から脱離させることができるからである。
【0123】
上記閉鎖部材が上記栓部を有する場合、上記栓部が備える凹部と平面視上重なる位置で中空針を貫通させることで、例えば図9で示すように、水性溶媒の導入の際に栓部2bの凹部Pに保持された助剤12(図9では助剤12を含む固形剤)を押圧して、凹部Pから助剤12を脱離することができ、容器本体1内に分離して存在する薬剤(図示せず)と共に、水性溶媒に効率よく混合することができる。
【0124】
上記閉鎖部材は、一部に中空針が貫通可能な領域(穿刺領域)を有していてもよい。閉鎖部材が中空針を貫通しにくい材質であっても、上記穿刺領域にて中空針の貫通が可能であるため、閉鎖部材を開閉せずに水性溶媒の導入が可能となるからである。また、上記閉鎖部材に固形剤が脱離可能に保持されている場合、中でも上記固形剤が物理的に脱離可能に保持されている場合、水性溶媒導入の際に上記穿刺領域を貫通した中空針により、閉鎖部材に保持された固形剤を押圧して上記閉鎖部材から脱離させることができるからである。穿刺領域を有する閉鎖部材としては、例えば、図10で示すように、ゴムや樹脂等で形成された穿刺領域2cと、穿刺領域2cを囲み、金属で形成されたケーシング部2dとを有する構造が挙げられる。
【0125】
上記閉鎖部材が栓部を有する場合は、上記栓部が備える凹部と平面視上重なる位置に、上記穿刺領域を有することが好ましい。水性溶媒導入の際に上記穿刺領域を貫通した中空針により、上記凹部に保持された固形剤を押圧して上記閉鎖部材から脱離させることができるからである。
【0126】
C.容器本体
本発明における容器本体は、一端に開口部を有する。
【0127】
上記容器本体は、少なくとも1つの開口部を有する形状であれば特に限定されず、2以上の開口部を有する形状であってもよい。また、上記容器本体は、少なくとも一端に開口部を有する形状であれば特に限定されず、例えば、上記一端の開口部(第1の開口部)と異なる位置に他の開口部(第2の開口部)を有する形状であってもよい。
【0128】
上記容器本体の具体的な形状としては、例えば筒状、カップ状、袋状等が挙げられる。このような形状を有する上記容器本体としては、具体的には、バイアル、シリンジ、輸液バッグ等が挙げられる。
【0129】
上記容器本体が2以上の開口部を有する場合は、各開口部が閉鎖部材により閉鎖される。上記容器本体が2以上の開口部を有する場合、上記開口部を閉鎖する複数の閉鎖部材のうち、1または2以上の閉鎖部材に薬剤または助剤が保持されていればよい。上記容器本体が2以上の閉鎖部材を有する場合、2以上の閉鎖部材のそれぞれに同じ薬剤または助剤が保持されていてもよく、閉鎖部材ごとに異なる薬剤または助剤が保持されていてもよい。また、上記容器本体が2以上の閉鎖部材を有する場合、2以上の閉鎖部材のそれぞれは同じ形態であってもよいし、異なる形態であってもよい。
【0130】
上記容器本体の材質は、特に限定されず、例えば、金属、樹脂、ガラスを挙げることができるが、中でも高ガスバリア性の観点からガラスが好ましい。
【0131】
上記容器本体は透明、半透明、不透明のいずれであってもよいが、容器本体の内容物を視認しやすいことから、透明または半透明であることが好ましい。
【0132】
上記容器本体は、内部が加圧されていてもよく、減圧されていてもよい。加圧や減圧の程度は、上記容器本体に存在する薬剤や助剤の種類や量、上記容器本体の使用目的等に応じて適宜調整することができる。また、上記容器本体は、容器本体内の気体が空気であってもよいが、窒素に置換されていてもよい。容器本体内の薬剤や助剤の劣化を防ぐことができるからである。
【0133】
D.その他
本発明の薬剤収容容器においては、上記閉鎖部材により上記容器本体の上記開口部が閉鎖されてなる閉鎖空間内において、薬剤および助剤が分離して存在する。本発明の薬剤収容容器においては、上記閉鎖部材により上記容器本体が密閉された容器本体内(すなわち密閉空間内)に、薬剤および助剤が封入されていることが好ましい。なお、「密閉」については、既に説明した通りである。
【0134】
薬剤および助剤が分離して存在する態様としては、特に限定されないが、例えば上記薬剤と上記助剤とが、別々に容器本体に保持されている態様、上記薬剤または上記助剤の一方が、上記閉鎖部材に脱離可能に保持されている態様、等が挙げられる。上記薬剤と上記助剤とが、別々に容器本体に保持されている態様としては、例えば、上記薬剤または上記助剤のうち一方が、上記容器本体内の壁面に保持されており、他方が上記容器本体内の壁面の別の位置に保持されていてもよく、壁面に保持されていなくてもよい。また、上記薬剤または上記助剤の一方が、上記閉鎖部材に脱離可能に保持されている態様としては、例えば、上記薬剤または上記助剤のうち一方が、上記閉鎖部材に脱離可能に保持されており、他方が上記閉鎖部材以外の上記容器本体内に存在している態様とすることができる。「脱離可能」については、後述する。
【0135】
上記薬剤および上記助剤のうち、閉鎖部材または容器本体内の壁面に保持されていない他方の物質は、液状(液体)で存在していてもよく、固体状で存在していてもよく、液状(液体)を凍結させた状態で存在していてもよい。上記他方の物質は、長期保管の観点からは閉鎖空間内に水分が存在しないことが好ましく、固体状が好ましい。また、容器本体を冷凍状態で保管する態様として用いる場合は、上記他方の物質は、液状で存在していてもよく、固体状で存在していてもよい。固体状の上記他方の物質は、容器本体内の所望の位置において保持されていてもよく、保持されていなくてもよい。
【0136】
中でも、上記薬剤または上記助剤が、上記閉鎖部材に脱離可能に保持されている態様が好ましい。このような態様とすることで、上記薬剤および上記助剤を閉鎖空間内に分離して存在させることが容易となり、閉鎖部材に保持された上記薬剤または上記助剤を脱離することで、混合溶液の調製を簡便に行うことができるからである。
【0137】
ここで、「脱離可能」であるとは、閉鎖部材に保持された物質が、力を受ける等により物理的に脱離可能であってもよく、閉鎖部材に保持された物質が、他の物質との接触により溶解等の反応が生じることで化学的に脱離可能であってもよい。物理的に脱離可能であるとは、例えば、注射針等の中空針を閉鎖部材に貫通させ、中空針の押力により錠剤等の物質が脱離可能となる場合、薬剤収容容器を遠心し若しくは手首のスナップをきかせて薬剤収容容器を振ることで、錠剤等の物質が脱離可能となる場合等が挙げられる。また、化学的に脱離可能であるとは、例えば、薬剤収容容器を転倒撹拌し若しくは上下に振ることで、容器本体内の水性溶媒と接触して溶解等の反応が生じる結果、錠剤等の物質が脱離可能となる場合等が挙げられる。
【0138】
上記閉鎖部材に脱離可能に保持されている上記薬剤または上記助剤は、固体状であることが好ましく、中でも、固形剤であることが好ましい。固形剤を用いることで、上記薬剤または上記助剤を上記閉鎖部材へ保持させることおよび上記閉鎖部材から脱離させることが容易となるからである。このとき、上記固形剤は、剤形が錠剤であることがより好ましい。なお、上記薬剤および上記助剤のうち、上記助剤が上記閉鎖部材に保持されていることがより好ましい。
【0139】
上記薬剤または上記助剤は、上記容器本体の上記開口部を上記閉鎖部材で閉鎖したときに、上記閉鎖部材の面のうち、上記開口部側に位置する面上に保持されていてもよい。閉鎖部材において薬剤または助剤を保持する態様は、閉鎖部材からの脱離が可能な態様であれば特に限定されず、薬剤または助剤の剤形、閉鎖部材の形状に応じて適宜選択することができる。
【0140】
閉鎖部材により開口部が閉鎖された薬剤収容容器における薬剤または助剤の保持態様としては、例えば、上記閉鎖部材が、一態様において、上記容器本体の上記開口部の内側に挿入された凸部を有し、上記薬剤または上記助剤が上記閉鎖部材の上記凸部に保持されていてもよい。また、上記閉鎖部材が、一態様において、上記容器本体内(閉鎖空間内)に凹部を有し、上記薬剤または上記助剤が上記閉鎖部材の上記凹部に保持されていてもよい。
【0141】
凸部または凹部での薬剤または助剤の具体的な保持態様として、特に限定されないが、例えば、粘着性のある物質を介して閉鎖部材の凸部または凹部の面に貼り付ける態様、上記閉鎖部材が有する2以上の凸部により薬剤または助剤を含む固形剤を挟持する態様、上記閉鎖部材が有する凹部に薬剤または助剤を含む固形剤を嵌め込む態様等が挙げられる。このとき、上記薬剤または上記助剤は、上記容器本体の上記開口部の中心軸と交差する面上に存在することが好ましい。
【0142】
上記凸部がさらに突出部を有する場合は、図4(d)で例示したように、例えば突出部tに助剤12の穴あき錠剤を保持することができる。また、図8(b)で例示したように、例えば一方の凸部Tの突出部tと他方の凸部Tとの間で、助剤12の固形剤を挟持することができる。
また、上記閉鎖部材が、上記凸部に上記凹部を有し、上記薬剤または上記助剤が上記凹部に保持されていてもよい。上記閉鎖部材において、上記固形剤を保持させた状態を容易に保つことができるからである。上記閉鎖部材の上記凹部は、上記閉鎖部材で上記容器本体を閉鎖したときに、上記容器本体の上記開口部の中心軸と交差する面上に存在することが好ましい。
【0143】
また、上記閉鎖部材が、上記容器本体の上記開口部に内嵌する栓部を有する場合、閉鎖部材により開口部が閉鎖された薬剤収容容器における薬剤または助剤の保持態様としては、閉鎖部材からの脱離が可能な態様であれば特に限定されず、例えば、上記薬剤または上記助剤が、上記閉鎖部材の上記栓部の挿嵌方向と交差する面上に保持されていてもよく、上記栓部の側面に保持されていてもよい。このとき、上記薬剤または上記助剤は、上記栓部の挿嵌方向と交差する面上または側面に有する凹部に嵌め込まれて保持されていてもよい。中でも、上記閉鎖部材の栓部が、挿嵌方向と交差する面上に凹部を有し、上記薬剤または上記助剤が、栓部の上記凹部に脱離可能に保持されていることが好ましい。閉鎖部材からの脱離が容易となるからである。
【0144】
薬剤および助剤が分離して存在する態様として好ましい態様としては、上記閉鎖部材が、上記容器本体の上記開口部に内嵌する栓部を有し、上記栓部が、挿嵌方向と交差する面上に凹部を有し、上記薬剤の凍結乾燥物が容器本体内の内壁または底面上に存在し、上記助剤を含む固形剤(固体助剤)が、上記栓部の上記凹部に脱離可能に保持されている態様が挙げられる。上記態様は、薬剤および助剤の混合や上記薬剤の失活を防ぎ、更に、上記助剤を含む固形剤(固体助剤)の脱離が容易となる点で好ましい。
【0145】
E.混合溶液
本発明により得られる混合溶液は、薬剤および助剤ならびに容器本体に導入する水性溶媒の種類に応じて、例えば、微生物夾雑物検査用試薬溶液(試薬溶液)、測定用試料または生物学的製剤等の医薬等とすることができる。
【0146】
本発明により得られる混合溶液は、容器本体内(閉鎖空間内)において上記薬剤および上記助剤を水性溶媒中で共存させる操作を行うことにより調製することができる。ここで「共存」とは、対象物同士が接触し得る状態にあることを意味する。上記薬剤および上記助剤を水性溶媒中で共存させる方法は、特に制限されないが、例えば、薬剤溶液を用いる場合は、閉鎖部材に保持した固体助剤を脱離して容器本体内の薬剤溶液中に添加する操作を行う方法が挙げられる。また、固体薬剤および固体助剤を用いる場合は、固体薬剤および固体助剤と混合する水性溶媒を容器本体の開口部から直接または閉鎖部材を介して間接的に導入する操作を行う方法が挙げられる。上記水性溶媒については、「A.薬剤および助剤 2.助剤」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0147】
また、本発明により得られる混合溶液は、薬剤および助剤を混合して調製した試薬溶液に更に被検体を導入して、薬剤および助剤ならびに被検体を含む測定用試料とすることもできる。
【0148】
F.用途および使用方法
本発明の薬剤収容容器は、薬剤および助剤を含む混合溶液の調製に用いることができる。本発明の薬剤収容容器の用途および使用方法について説明する。
【0149】
1.微生物夾雑物検査用途
本発明の薬剤収容容器は、微生物夾雑物検査用試薬溶液(試薬溶液)や測定用試料の調製に用いることができる。本発明の薬剤収容容器は、例えば、試薬溶液を調製後、上記試薬溶液が入った薬剤収容容器内に被検体を導入することで、測定用試料を調製することができる。また、本発明の薬剤収容容器は、例えば、薬剤収容容器内に被検体のみを導入することで、試薬溶液を調製する作業を行わずに、測定用試料を直接調製することもできる。上記測定用試料を用いて微生物夾雑物の検査を実施することができる。すなわち、本発明の薬剤収容容器は、微生物夾雑物検査用容器としても用いることができる。
【0150】
図11は、本発明の薬剤収容容器の使用方法の一例を示す模式図であり、微生物夾雑物検査用試薬溶液の調製およびそれを用いた微生物夾雑物の検査方法の例を示している。まず、図11(a)で示すように、本発明の薬剤収容容器10の容器本体1内に水性溶媒13を導入する。図11(a)では、注射針等の中空針31を閉鎖部材2に貫通させ、中空針31から水性溶媒13を容器本体1内へ導入している。容器本体1内の薬剤11および助剤12を水性溶媒13と混合して混合溶液(試薬溶液)20を調製する。薬剤11、助剤12および水性溶媒13の混合の際には、振とう、攪拌装置等による撹拌を行うことが好ましい。
【0151】
次に、図11(b)で示すように、薬剤収容容器10の容器本体1内に、被検体21を導入して混合溶液(試薬溶液)20と混合し、薬剤および助剤ならびに被検体を含む測定用試料を調製する。被検体中の微生物夾雑物の量は、例えば、光学的検出器を用いて、濁度もしくは発色基による発色または蛍光基による蛍光を測定して算出することができる。具体的には、例えば、活性化したリムルス因子による切断によってコアギュローゲンから生成するコアギュリンまたは検出用基質から遊離する発色基の量を吸光度または透過率で測定したり、検出用基質から遊離する蛍光基の量を蛍光度で測定したりすることで、微生物夾雑物の有無を判定し、または微生物夾雑物の量を算出することができる。
【0152】
図11で示す例では、薬剤11および助剤12を含む試薬溶液を調製後、被検体を導入して測定用試料を調製しているが、水性溶媒13を導入せずに、液状の被検体を導入することで、試薬溶液の調製を介さずに測定用試料を直接調製することも可能である。液状の被検体のみの導入によって測定用試料の調製が完了する上記態様は、本発明における微生物夾雑物検査用途の好適な態様として用いることができる。微生物夾雑物の測定を簡便かつ確実に行うことができるからである。
【0153】
2.医薬調製用途
本発明の薬剤収容容器は、生物学的製剤等の医薬の調製に用いることができる。また、本発明の薬剤収容容器は、例えば、生物学的製剤等の医薬の調製後、上記薬剤収容容器の一端にノズルや注射針を装着することで、上記薬剤収容容器を浣腸等の注入器や注射器としても用いることができる。上記薬剤収容容器を注射器として用いる場合、他端にプランジャーロット等を装着して用いることが好ましい。
【0154】
3.その他
本発明の薬剤収容容器は、用途に応じて単体で提供されてもよく、これを含むキットとして提供されてもよい。上記キットは、その用途に応じて他の物品を構成品として有することができる。例えば、用途が微生物夾雑物検査用途であれば、上記キットは本発明の薬剤収容容器の他に蒸留水、注射針、シリンジ、微生物夾雑物の標準品(スタンダード)、製品情報を記載した添付文書等を構成品として有していてもよい。
【0155】
II.閉鎖部材
本発明の閉鎖部材は、上述の薬剤収容容器に用いられる閉鎖部材であって、上記薬剤または上記助剤を含む上記固形剤を脱離可能に保持することを特徴とする。
【0156】
本発明の閉鎖部材によれば、上述の薬剤収容容器に本発明の閉鎖部材を用いたときに、容器本体内に事前混合が禁忌または好ましくない他の物質が存在する場合であっても、混合溶液の調製前の段階では、容器本体内に個々に分離して存在させることができる。また、上記閉鎖部材は、上記固形剤を脱離可能に保持しているため、上記固形剤を脱離させ、必要に応じて水性溶媒を導入することで、上記本体容器内に存在する別の物質との混合溶液を用時調製することが可能となり、水性溶媒中での保存安定性が悪い薬剤や助剤を含む混合溶液を簡便に調製することができる。
【0157】
本発明の閉鎖部材は、例えば、上述の「I.薬剤収容容器 B.閉鎖部材」の項で説明した構造を有することができる。本発明の閉鎖部材は、一端に開口部を有する容器本体の上記開口部を閉鎖するための部材として用いられる。本発明においては、例えば、固形剤が閉鎖部材に脱離可能に保持されている。本発明の閉鎖部材の詳細については、上述の「I.薬剤収容容器 B.閉鎖部材」の項で説明したため、ここでの説明は省略する。
【0158】
本発明において、上記固形剤は、薬剤または助剤を含む。薬剤および助剤の詳細、ならびに上記固形剤の剤形については、上述の「I.薬剤収容容器 A.薬剤および助剤」の項で説明したためここでの説明は省略する。
【0159】
また、上記固形剤は、助剤成分として緩衝剤を含む固体助剤であって、所定の水性溶媒と混合したときのpHが中性となる量の上記緩衝剤を含む固形剤であることが好ましい。その理由、具体的なpHの範囲、緩衝剤の量等、上記固形剤における緩衝剤の詳細については、上述の「I.薬剤収容容器 A.薬剤および助剤」の項で説明したためここでの説明は省略する。
【0160】
本発明における固形剤の保持態様については、上述の「I.薬剤収容容器 D.その他」の項で説明したためここでの説明は省略する。
【0161】
III.薬剤収容容器の製造方法
本発明の薬剤収容容器の製造方法は、上述の薬剤収容容器を製造する方法であり、以下の3態様を挙げることができる。本発明の薬剤収容容器の製造方法について、態様ごとに説明する。
【0162】
A.第1の態様
本態様の薬剤収容容器の製造方法は、以下に示す第1例および第2例に大別される。
本態様の薬剤収容容器の製造方法の第1例は、上記容器本体の上記開口部から上記薬剤を導入する導入工程と、上記閉鎖部材に上記助剤を保持させた状態で、上記閉鎖部材が上記助剤を保持する面を上記容器本体の上記開口部側にして、上記容器本体を閉鎖する閉鎖工程と、を有することを特徴とする。
また、本態様の薬剤収容容器の製造方法の第2例は、上記容器本体の上記開口部から上記助剤を導入する導入工程と、上記閉鎖部材に上記薬剤を保持させた状態で、上記閉鎖部材が上記薬剤を保持する面を上記容器本体の上記開口部側にして、上記容器本体を閉鎖する閉鎖工程と、を有することを特徴とする。
【0163】
本発明の薬剤収容容器の製造方法の第1態様によれば、上記閉鎖部材で上記容器本体の上記開口部を閉鎖した容器本体内(閉鎖空間内)に、薬剤および助剤が分離して存在する薬剤収容容器を容易に得ることができる。
【0164】
以下、本態様の薬剤収容容器の製造方法の各工程について説明する。
【0165】
1.導入工程
本態様における導入工程は、上記容器本体の上記開口部から上記薬剤を導入する(第1例)、または、上記容器本体の上記開口部から上記助剤を導入する(第2例)工程である。
【0166】
本工程において用いる容器本体については、「I.薬剤収容容器 C.容器本体」の項で説明したため、ここでの説明を省略する。
【0167】
本工程において上記容器本体に導入する上記薬剤または上記助剤は、固体状であってもよく液状であってもよい。本工程の第1例において薬剤は、固体薬剤であることが好ましく、中でも凍結乾燥物であることが好ましい。また、本工程の第2例において助剤は、固体助剤であってもよく助剤溶液であってもよいが、固体助剤であることが好ましい。その理由については既に述べた通りである。
本工程において用いる薬剤、助剤、およびその剤形等の詳細については、「I.薬剤収容容器」の項で説明したため、ここでの説明を省略する。
【0168】
本工程において、薬剤または助剤を容器本体に導入する方法は、特に限定されず、薬剤または助剤の剤形等の諸条件に応じて適宜選択することができる。例えば、薬剤溶液または助剤溶液であれば、注射器等を用いた注入方式等が挙げられる。また、例えば、固体薬剤または固体助剤であれば、投入方式等が挙げられる。
【0169】
2.閉鎖工程
本態様における閉鎖工程は、上記閉鎖部材に上記助剤を保持させた状態で、上記閉鎖部材が上記助剤を保持する面を上記容器本体の上記開口部側にして、上記容器本体を閉鎖する(第1例)、または、上記閉鎖部材に上記薬剤を保持させた状態で、上記閉鎖部材が上記薬剤を保持する面を上記容器本体の上記開口部側にして、上記容器本体を閉鎖する(第2例)工程である。
【0170】
本工程において用いる閉鎖部材については、「I.薬剤収容容器 B.閉鎖部材」の項で説明したため、ここでの説明を省略する。
【0171】
閉鎖部材に保持される助剤または薬剤は、上記容器本体内に導入された薬剤または助剤と分離して存在可能な形状であればよく、固体状であることが好ましく、薬剤または助剤を含む固形剤であることがより好ましく、薬剤または助剤と成形剤とを含む固形剤であることがさらに好ましく、助剤および成形剤を含む錠剤であることが特に好ましい。その理由および助剤または薬剤の閉鎖部材への具体的な保持方法については、「I.薬剤収容容器」の項で説明したため、ここでの説明を省略する。
本工程において用いる薬剤、助剤、薬剤または助剤を含む固形剤については、「I.薬剤収容容器」の項で説明したため、ここでの説明を省略する。
【0172】
本工程においては、上記閉鎖部材によって上記容器本体の上記開口部が閉鎖されればよく、上記閉鎖部材の形状に応じて上記容器本体が密閉されてもよい。
【0173】
3.その他の工程
本態様においては、上記導入工程および上記閉鎖工程に加え、さらに他の工程を有していてもよい。例えば、本態様においては、上記閉鎖工程の後に、上記容器本体を密閉する密閉工程をさらに有していてもよい。上記密封工程により、薬剤収容容器の気密性を高めることができ、容器本体内に不純物等が混入することを防ぐことができるからである。上記密封工程は、例えば、上記容器本体の上記開口部と上記閉鎖部材とが接触する部位をシーリングして、上記容器本体を密閉する工程であってよい。
【0174】
B.第2の態様
本態様の薬剤収容容器の製造方法は、以下に示す第1例および第2例に大別される。
本態様の薬剤収容容器の製造方法の第1例は、上記容器本体の上記開口部から液状の上記薬剤を導入する導入工程と、上記閉鎖部材に上記助剤を保持させた状態で、上記閉鎖部材が上記助剤を保持する面を上記容器本体の上記開口部側にして、上記容器本体を閉鎖する閉鎖工程と、上記容器本体内の上記液状の薬剤を凍結乾燥して固化する乾燥工程と、を有することを特徴とする。
また、本態様の薬剤収容容器の製造方法の第2例は、上記容器本体の上記開口部から液状の上記助剤を導入する導入工程と、上記閉鎖部材に上記薬剤を保持させた状態で、上記閉鎖部材が上記薬剤を保持する面を上記容器本体の上記開口部側にして、上記容器本体を閉鎖する閉鎖工程と、上記容器本体内の上記液状の助剤を凍結乾燥して固化する乾燥工程と、を有することを特徴とする。
【0175】
本発明の薬剤収容容器の製造方法の第2態様によれば、薬剤または助剤が保持された閉鎖部材で容器本体の開口部を閉鎖した状態で、容器本体内の液状の助剤または薬剤を凍結乾燥して固化することで、助剤および薬剤の混合を確実に防ぐことができる。これにより、薬剤および助剤が分離して存在する薬剤収容容器を容易に得ることができる。また、上記方法により凍結乾燥を行うことで、混合溶液を調製する前の薬剤の保存安定性の低下を防ぐことができる。
【0176】
以下、本態様の薬剤収容容器の製造方法の各工程について説明する。
【0177】
1.導入工程
本態様における導入工程は、上記容器本体の上記開口部から液状の上記薬剤を導入する(第1例)、または、上記容器本体の上記開口部から液状の上記助剤を導入する(第2例)工程である。
本工程の詳細については、薬剤が薬剤溶液であるまたは助剤が助剤溶液であることを除いて、上述の「A.第1の態様」における導入工程と同様とすることができる。
【0178】
2.閉鎖工程
本態様における閉鎖工程は、上記閉鎖部材に上記助剤を保持させた状態で、上記閉鎖部材が上記助剤を保持する面を上記容器本体の上記開口部側にして、上記容器本体を閉鎖する(第1例)、または、上記閉鎖部材に上記薬剤を保持させた状態で、上記閉鎖部材が上記薬剤を保持する面を上記容器本体の上記開口部側にして、上記容器本体を閉鎖する(第2例)工程である。
【0179】
本工程の詳細については、上述の「A.第1の態様」における閉鎖工程と同様とすることができる。なお、本態様においては、後述する乾燥工程において容器本体内から脱気すること要するため、上記閉鎖部材によって上記容器本体が密閉されていないことが好ましい。
【0180】
3.乾燥工程
本態様における乾燥工程は、上記容器本体内の上記液状の薬剤を凍結乾燥して固化する(第1例)、または、上記容器本体内の上記液状の助剤を凍結乾燥して固化する(第2例)工程である。
【0181】
本工程において、上記容器本体内の薬剤溶液または助剤溶液を凍結乾燥する方法は特に限定されず、一般的な凍結乾燥方法と同様とすることができる。例えば、液体窒素等で容器本体内の薬剤溶液または助剤溶液を凍結させた後、凍結乾燥機にて、非加熱、減圧下で水性溶媒を気化して除去することで薬剤または助剤を乾燥固化することができる。
凍結乾燥条件等は、薬剤溶液または助剤溶液に含まれる水性溶媒を十分に気化可能な条件であればよく、水性溶媒の種類に応じて適宜設定することができる。
【0182】
4.その他の工程
本態様においては、上記導入工程、上記閉鎖工程および上記乾燥工程に加え、さらに他の工程を有していてもよい。例えば、本態様においては、上記乾燥工程の後に、上記容器本体を密閉する密閉工程をさらに有していてもよい。上記密封工程の詳細は、上述の「A.第1の態様 4.その他の工程」の項で説明した詳細と同様とすることができる。
【0183】
C.第3の態様
本態様の薬剤収容容器の製造方法は、以下に示す第1例および第2例に大別される。
本態様の薬剤収容容器の製造方法の第1例は、上記容器本体の上記開口部から液状の上記薬剤を導入する導入工程と、上記閉鎖部材の上記栓部に上記助剤を保持させた状態で、上記閉鎖部材の上記栓部を上記容器本体の上記開口部に仮嵌めして、上記容器本体を閉鎖する閉鎖工程と、仮嵌合状態で上記容器本体内の上記液状の薬剤を凍結乾燥して固化する乾燥工程と、を有することを特徴とする。
また、本態様の薬剤収容容器の製造方法の第2例は、上記容器本体の上記開口部から液状の上記助剤を導入する導入工程と、上記閉鎖部材の上記栓部に上記薬剤を保持させた状態で、上記閉鎖部材の上記栓部を上記容器本体の上記開口部に仮嵌めして、上記容器本体を閉鎖する閉鎖工程と、仮嵌合状態で上記容器本体内の上記液状の助剤を凍結乾燥して固化する乾燥工程と、を有することを特徴とする。
【0184】
図12は、本態様の薬剤収容容器の製造方法の一例を示す工程図であり、第1例を具体的に例示するものである。まず、容器本体1の開口部Oから薬剤溶液11aを導入する(図12(a)、導入工程)。次に、閉鎖部材2の栓部2bに助剤12を含む固形剤を保持した状態で、閉鎖部材2の栓部2bを容器本体1の開口部Oに仮嵌めして、容器本体1を閉鎖する(図12(b)左図、閉鎖工程)。続いて、仮嵌合状態で容器本体1内の薬剤溶液11aを凍結乾燥して固化する(図12(b)右図、乾燥工程)。その後、閉鎖部材2の栓部2bを容器本体1の開口部Oに挿嵌して容器本体1を密閉する(図12(c)、密閉工程)。図1に例示する薬剤収容容器10は、例えば、図12(a)~(c)に示した以上の操作を経て得られる。図12において説明しない符号については、図1図11において説明した符号と同様である。
【0185】
本発明の薬剤収容容器の製造方法の第3態様によれば、薬剤または助剤が閉鎖部材の栓部に保持されており、上記栓部で容器本体の開口部を仮嵌めした状態で、容器本体内の液状の助剤または薬剤を凍結乾燥して固化することで、助剤および薬剤の混合を確実に防ぐことができる。これにより、薬剤および助剤が分離して存在する薬剤収容容器を容易に得ることができる。また、上記方法により凍結乾燥を行うことで、混合溶液を調製する前の薬剤の保存安定性の低下を防ぐことができる。さらに乾燥工程において容器本体の開口部が栓部により仮嵌めされているため、仮嵌合位置の隙間から容器本体内の空気が容易に脱気可能となり、凍結乾燥を効率よく行うことができ、併せて外部からの不純物の混入を防ぐことができる。
【0186】
以下、本態様の薬剤収容容器の製造方法の各工程について説明する。
【0187】
1.導入工程
本態様における導入工程は、上記容器本体の上記開口部から液状の上記薬剤を導入する(第1例)、または、上記容器本体の上記開口部から液状の上記助剤を導入する(第2例)工程である。
本工程の詳細については、上述の「B.第2の態様」における導入工程と同様とすることができる。
【0188】
2.閉鎖工程
本態様における閉鎖工程は、上記閉鎖部材の上記栓部に上記助剤を保持させた状態で、上記閉鎖部材の上記栓部を上記容器本体の上記開口部に仮嵌めして、上記容器本体を閉鎖する(第1例)、または、上記閉鎖部材の上記栓部に上記薬剤を保持させた状態で、上記閉鎖部材の上記栓部を上記容器本体の上記開口部に仮嵌めして、上記容器本体を閉鎖する(第2例)工程である。
【0189】
本工程において、「上記閉鎖部材の上記栓部を上記容器本体の上記開口部に仮嵌め」するとは、上記栓部の一部が上記容器本体の上記開口部を塞いでいるが、容器本体内は密閉されておらず、容器本体内への空気の出入りが可能であることをいう。
【0190】
本工程の詳細については、上述の「B.第2の態様」における閉鎖工程と同様とすることができる。
【0191】
本工程に用いられる上記閉鎖部材は、上記容器本体の上記開口部に内嵌する上記栓部を有する。上記栓部は、挿嵌方向と交差する面上に上記凹部を有することが好ましく、中でも、上記凹部が、上記乾燥工程にて上記容器本体の上記開口部に仮嵌めしたときに、一部が上記容器本体の上記開口部から露出可能な深さを有することが好ましい。後述する乾燥工程において上記閉鎖部材による仮嵌合状態で上記容器本体内の薬剤溶液または助剤溶液を凍結乾燥する際に、上記閉鎖部材の栓部が有する上記凹部の一部が上記容器本体の上記開口部から露出することにより、上記容器本体内からの空気の脱気路として機能し、凍結乾燥をさらに効率的に行うことができるからである。
このとき、閉鎖部材への上記薬剤または上記助剤の保持方法としては、特に限定されないが、中でも、上記薬剤または上記助剤が上記栓部の上記凹部に保持されていることが好ましい。
【0192】
上記閉鎖部材の詳細、およびに栓部を有する閉鎖部材への上記薬剤または上記助剤の保持方法については、「I.薬剤収容容器」の項で説明したため、ここでの説明は省略する。
【0193】
3.乾燥工程
本態様における乾燥工程は、仮嵌合状態で上記容器本体内の上記液状の薬剤を凍結乾燥して固化する(第1例)、または、仮嵌合状態で上記容器本体内の上記液状の助剤を凍結乾燥して固化する(第2例)工程である。
本工程の詳細については、上述の「B.第2の態様」における乾燥工程と同様とすることができる。
【0194】
4.その他の工程
本態様においては、上記導入工程、上記閉鎖工程および上記乾燥工程に加え、さらに他の工程を有していてもよい。例えば、本態様においては、上記乾燥工程の後に、上記容器本体を密閉する密閉工程をさらに有していてもよい。上記密封工程により、薬剤収容容器の気密性を高めることができ、容器本体内に不純物等が混入することを防ぐことができるからである。上記密封工程は、例えば、上記閉鎖部材の上記栓部を上記容器本体の上記開口部に挿嵌して上記容器本体を密閉する工程であってよい。
【0195】
IV.微生物夾雑物検査方法
本発明の微生物夾雑物検査方法は、上述した薬剤収容容器を用いて微生物夾雑物を検査する微生物夾雑物検査方法であって、上記薬剤収容容器の上記容器本体内に被検体を導入し、上記薬剤および上記助剤ならびに上記被検体を含む微生物夾雑物の測定に供する試料(測定用試料)を調製する調製工程と、上記試料中の上記微生物夾雑物を検出する検出工程と、を有することを特徴とする。
【0196】
本発明の微生物夾雑物検査方法によれば、上述した薬剤収容容器の容器本体内に被検体を導入することにより、上記容器本体内で薬剤、助剤および被検体を含む測定用試料を一括調製することができる。すなわち、本発明によれば、助剤溶液の調製および秤量をする工程、薬剤入りの容器本体へ上記助剤溶液を導入して試薬溶液を調製する工程等を必要とせずに、上記測定用試料を一度の工程で容易に調製することができる。そして、上記測定用試料の調製を行った薬剤収容容器を用いて微生物夾雑物の検出を行うことができる。
このように、本発明の微生物夾雑物検査方法は、測定用試料の調製が容易であり、測定用試料に含まれる被検体中の微生物夾雑物の有無やその量の測定を簡便かつ確実に行うことができ、微生物汚染の程度を簡便かつ確実に測定することができる。
【0197】
本発明による効果について、さらに詳しく説明する。通常、微生物夾雑物の検出に際し、調製工程においては、薬剤が封入された容器本体内に必要量秤量した緩衝液を導入して撹拌し、試薬溶液(混合溶液)を調製する作業と、上記容器本体内の試薬溶液に上記被検体を導入して撹拌し、微生物夾雑物を検出する検出工程に供する測定用試料を調製する作業と、を少なくとも要する。このように、従来法では調製工程が煩雑化してしまうという課題があった。これに対し、本発明では、密閉空間内に上記薬剤および上記助剤が予め分離して存在する上記薬剤収容容器を用いるため、上記薬剤収容容器内に被検体を導入する作業のみによって、上記薬剤収容容器内で薬剤および助剤ならびに被検体を含む測定用試料を一括調製することができ、調製工程を簡略化できる。
【0198】
以下、本発明の微生物夾雑物検査方法における各工程について説明する。
【0199】
A.調製工程
本発明における調製工程は、上記薬剤収容容器の上記容器本体内に被検体を導入し、測定用試料を調製する工程である。
【0200】
本工程において用いられる薬剤収容容器の詳細については、上述の「I.薬剤収容容器」の項で説明したため、ここでの説明は省略する。
本工程において用いられる薬剤収容容器は、上記閉鎖部材に固体助剤が脱離可能に保持されており、上記固体助剤が、被検体と混合したときのpHが中性となる量の緩衝剤を助剤成分として含む固体助剤であることが好ましい。その理由および具体的態様については、上述の「I.薬剤収容容器」の項で説明したため、ここでの説明は省略する。
【0201】
本工程における被検体の種類や導入量は、上記被検体中の微生物夾雑物の検出が可能である限り特に限定されず、適宜設定することができる。
【0202】
上記調製工程において上記被検体は、上記薬剤収容容器の上記容器本体の上記開口部から、直接または閉鎖部材を介して間接的に上記容器本体内に導入される。上記薬剤収容容器の上記容器本体内に上記被検体を導入する方法としては、例えば、上記薬剤収容容器から閉鎖部材を外して上記容器本体の上記開口部から直接上記被検体を導入する方法、上記容器本体の上記開口部を閉鎖する上記閉鎖部材に中空針を貫通させ、上記中空針を介して上記容器本体の上記開口部から上記閉鎖部材を外すことなく間接的に上記被検体を導入する方法、等が挙げられる。閉鎖部材に固形剤が保持されている場合であれば、上記容器本体の上記開口部を閉鎖する上記閉鎖部材に中空針を貫通させ、上記中空針を介して上記被検体を導入する方法が好ましい。上記閉鎖部材に中空針を貫通させるのと同時に、上記固形剤を上記閉鎖部材から脱離させることができるからである。
【0203】
本工程においては、薬剤収容容器内において、導入した被検体、ならびに薬剤および助剤が混合され、測定用試料が調製される。
【0204】
本工程は、水性溶媒の存在下で行われることが好ましい。薬剤、助剤および被検体を水性溶媒に溶解して混合することができるからである。上記薬剤および上記助剤のうち少なくとも一方が液状であれば、被検体は固体状であってもよく、水性溶媒に混合させた液状であってもよい。一方、薬剤および助剤が固体状であれば、被検体は被検体溶液(液状の被検体)であることが好ましい。被検体溶液中の水性溶媒により、薬剤および助剤を溶解し、両者と混合可能となるからである。上記水性溶媒については、上述の「I.薬剤収容容器 A.薬剤および助剤」の項で説明したため、ここでの説明は省略する。
【0205】
本工程においては、上記容器本体内で薬剤、助剤および被検体が均一に混合されるように、被検体の導入後には、試験管ミキサー、振とう装置、攪拌装置等による撹拌を行うことが好ましい。
【0206】
B.検出工程
本発明における検出工程は、上記被検体中の上記微生物夾雑物を検出する工程である。本工程は、具体的には、上記調製工程で調製した上記測定用試料に含まれる上記微生物夾雑物を上記検体中の上記微生物夾雑物として検出する工程である。
【0207】
上記微生物夾雑物は、微生物に由来する物質である限り特に制限されないが、エンドトキシンまたは(1→3)-β-D-グルカンであることが好ましい。リムルス試薬を用いた検出が可能だからである。
【0208】
被検体中の微生物夾雑物の検出する方法は特に限定されず、微生物夾雑物の種類に応じた方法を用いることができる。薬剤としてリムルス試薬を用いる場合、検出方法としては、例えば、比濁法、比色法、蛍光法等の光学的測定方法、電気化学的測定方法、ゲル化法が挙げられる。これらの各種検出方法の詳細については、公知のリムルス試験における各種検出方法と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0209】
微生物夾雑物の光学的測定方法に用いられる光学検出器としては、光学的測定方法の種類等に応じて適宜選択することができ、具体的には分光光度計、ルミノメーター等の蛍光測定器等を挙げることができる。微生物夾雑物の電気化学的測定方法としては、アンペロメトリー法やボルタンメトリー法が挙げられる。微生物夾雑物の検出をゲル化法で行う場合は、ゲル形成の有無を目視により確認することで、微生物夾雑物の有無を判定することができる。
【0210】
V.緩衝液調製用固形剤
本発明の緩衝液調製用固形剤(以下、本発明の固形剤とする場合がある。)は、緩衝剤および成形剤を少なくとも含む緩衝液調製用固形剤であって、所定の水性溶媒と混合したときのpHが中性となる量の上記緩衝剤を含む固形剤であることを特徴とする。
【0211】
本発明の固形剤によれば、所定の水性溶媒と混合することでpHが中性となることから、所定のpHを示す緩衝液を容易に調製することができる。また、薬剤および助剤を含む混合溶液、ならびに上記混合溶液を用いた試料の調製の際に、本発明の固形剤を用いることで、混合溶液や試料のpHの調整を容易に行うことができる。
【0212】
具体的には、微生物夾雑物の検査に用いる測定用試料を調製する際に、本発明の固形剤を所定の水性溶媒と混合することで、希釈不要でpHが中性の緩衝液が得られる。上記緩衝液を助剤溶液として液状または固体状のリムルス試薬(薬剤)と混合することで、pHが中性の測定用試料を得ることができる。また、リムルス試薬および本発明の固形剤を水性溶媒に一括混合することで、緩衝液の調製不要で、pHが中性の測定用試料を得ることができる。
【0213】
本発明の固形剤は、所定の水性溶媒と混合したときのpHが中性となる量の上記緩衝剤を含む。
中性であるpHの具体的な範囲については、「I.薬剤収容容器」の項で説明した内容と同様であるため、記載を省略する。
【0214】
本発明の固形剤中の上記緩衝剤の含有量としては、質量濃度(w/w%)で0.01w/w%以上、0.05w/w%以上、0.1w/w%以上、1w/w%以上とすることができる。また、上記含有量は質量濃度(w/w%)で、50w/w%以下、20w/w%以下、10w/w%以下、5w/w%以下、1w/w%以下とすることができる。
なお、固形剤中の上記緩衝剤の含有量を示す質量濃度(w/w%)は、固形剤全体の質量(g)に対する緩衝剤の質量(g)の割合(%)である。
【0215】
本発明の固形剤中の上記成形剤の含有量は、質量濃度(w/w%)として、例えば、1w/w%以上、5w/w%以上、10w/w%以上、25w/w%以上、または50w/w%以上とすることができる。また、上記成形剤の含有量は、質量濃度(w/w%)として、例えば、99.9w/w%以下、99w/w%以下、95w/w%以下、90w/w%以下、80w/w%以下、70w/w%以下、または60w/w%以下とすることができる。なお、固形剤中の上記成形剤の含有量を示す質量濃度(w/w%)は、固形剤全体の質量(g)に対する成形剤の質量(g)の割合(%)である。
【0216】
本発明の固形剤を所定の水性溶媒と混合して得られる緩衝液中の、上記緩衝剤の終濃度としては、例えば、1mM以上、5mM以上、10mM以上、または20mM以上であってよい。上記緩衝剤の終濃度は、例えば、1M以下、500mM以下、250mM以下、または100mM以下であってよい。よって、上記緩衝剤の終濃度の範囲としては、1mM~1Mの範囲内、1mM~500mMの範囲内、1mM~250mMの範囲内、1mM~100mMの範囲内、5mM~500mMの範囲内、5mM~250mMの範囲内、5mM~100mMの範囲内、10mM~500mMの範囲内、10mM~250mMの範囲内、10mM~100mMの範囲内、20mM~250mMの範囲内、20mM~100mMの範囲内等が例示される。
【0217】
本発明における緩衝剤、成形剤、および水性溶媒の詳細については、「I.薬剤収容容器」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0218】
本発明の固形剤は、微生物夾雑物を実質的に含まないことが好ましい。本発明の固形剤を、そのままヒトを含む動物への投与を目的とした混合溶液の調製や微生物夾雑物の測定用試料の調製のために用いることが可能だからである。「微生物夾雑物を実質的に含まない」とは、本発明の固形剤を所定の水性溶媒と混合して得られる緩衝液から検出される微生物夾雑物(エンドトキシン、(1→3)-β-D-グルカン)の量が定量限界値未満または検出限界値未満であることを意味する。
【0219】
本発明の固形剤は、緩衝剤および成形剤を少なくとも含み、上記緩衝剤が、本発明の固形剤を所定の水性溶媒と混合したときのpHが中性となる量含まれていればよく、他の任意の成分を含むことができる。任意の成分としては、例えば、上述した「I.薬剤収容容器 A.薬剤および助剤」の項で説明した薬剤や助剤の材料等が挙げられる。
【0220】
具体的には、本発明の固形剤が、所定量の緩衝剤および成形剤を含み、さらに溶解補助剤、等張化剤および無痛化剤から選択される少なくとも1種以上を更に含む場合、本発明の固形剤を所定の水性溶媒と混合することで、希釈不要でpHが中性の緩衝液が得られる。上記緩衝液を助剤溶液として液状または固体状のタンパク質製剤(薬剤)と混合することで、pHが中性の生物学的製剤を得ることができる。また、タンパク質製剤および本発明の固形剤を直接水性溶媒に一括混合することで、緩衝液の調製不要で、pHが中性の生物学的製剤を得ることができる。
【0221】
本発明の固形剤の剤形は、特に制限されず、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤等が挙げられる。中でも、錠剤、丸剤、カプセル剤が好ましく、特に錠剤であることが好ましい。錠剤は固形剤として高い強度を有しており、上述した本発明の閉鎖部材に保持させ、且つ保持状態を保つことが容易だからである。本発明の固形剤が、緩衝剤および成形剤を少なくとも含む緩衝液調製用錠剤であれば、錠剤1錠を所定の水性溶媒と混合したときのpHが中性となる量の上記緩衝剤を含む。
【0222】
本発明の固形剤は、一般的な固形剤の製造方法を用いて製造することができる。例えば、エンドトキシンフリー(注射剤グレード)マンニトールに0.2w/w%微粉末PBSを無菌操作で2軸混練し、造粒装置で顆粒を作製し、打錠して製造することができる。より細かいPBS粉末には、事前にジェットミルで微細粒化して同等に加えて同様に製造することができる。更に均一に造粒する方法としては、エンドトキシンフリーの注射水にPBSを溶解し、スプレー乾燥式の混練・造粒装置でマンニトールへ微分散した顆粒を製造する等の方法を用いることができる。剤形が錠剤であれば、直接打錠法、顆粒圧縮法等を用いることができる。
【0223】
本発明の固形剤は、緩衝液を調製する際に希釈不要でpHを中性に調整することが可能である。本発明の固形剤を用いた緩衝液の調製に要する水性溶媒の量としては、固形剤と混合したときに希釈不要でpHが中性となる量とすることができ、上記固形剤に含まれる緩衝剤の量にもよるが、例えば、0.1mL以上または0.2mL以上であってよい。また、上記固形剤と混合する上記水性溶媒の量は、例えば、1L以下、100mL以下、10mL以下、1mL以下、または0.5mL以下であってよい。よって、上記固形剤と混合する上記水性溶媒の量の範囲としては、0.1mL~1Lの範囲内、0.1mL~100mLの範囲内、0.1mL~10mLの範囲内、0.1mL~1mLの範囲内、0.2mL~1mLの範囲内、0.2mL~0.5mLの範囲内等が例示される。例えば、ライセート試薬の場合であれば、0.1mL~10mLの範囲内とすることができ、0.2mL~1mLの範囲内であることが好ましい。
【0224】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
また、本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0225】
1 … 容器本体
2 … 密閉部材
2b … 栓部
10 … 薬剤収容容器
11 … 固形タンパク質製剤
12 … 固体助剤
13 … 水性溶媒
20 … 混合溶液
21 … 被検体
O … 開口部
P … 凹部
図1
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図3
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