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特許7379160CRISPR-Cpf1を使用する誘導性で調整可能な多重ヒト遺伝子制御
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】CRISPR-Cpf1を使用する誘導性で調整可能な多重ヒト遺伝子制御
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20231107BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20231107BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20231107BHJP
   C07K 14/33 20060101ALI20231107BHJP
   C07K 14/435 20060101ALI20231107BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20231107BHJP
   C12N 15/38 20060101ALI20231107BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20231107BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20231107BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231107BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20231107BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231107BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20231107BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20231107BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K19/00 ZNA
C07K14/47
C07K14/33
C07K14/435
C12N15/12
C12N15/38
C12N15/31
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N5/071
C12N15/09 110
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019556605
(86)(22)【出願日】2018-04-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 US2018028898
(87)【国際公開番号】W WO2018195540
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-04-13
(31)【優先権主張番号】62/488,585
(32)【優先日】2017-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】タク,ユ ギョン
(72)【発明者】
【氏名】クレインスティバー,ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ジェイ.キース
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/205711(WO,A1)
【文献】Nat. Methods,2015年,Vol. 12, No. 4,p. 326-328
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00 - 15/90
C07K 1/00 - 19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1より多い第1の条件付き二量化ドメインに融合された触媒的に不活性なヌクレアーゼデッドラクノスピラ科細菌(Lachnospiraceae bacterium)ND2006 タンパク質Cpf1(dLbCpf1)を、任意選択の介在リンカーと共に含む、第1の融合タンパク質、および(b)二量化剤の存在下で、前記第1の融合タンパク質において前記第1の条件付き二量化ドメインで二量化する第2の条件付き二量化ドメインに融合された少なくとも1つの転写活性化ドメインを、前記転写活性化ドメインおよび/または前記第2の条件付き二量化ドメインのそれぞれの間の任意選択の介在リンカーと共に含む、第2の融合タンパク質を含む、組成物であって、前記第1および第2の条件付き二量化ドメインが、DmrAまたはDmrCである、組成物。
【請求項2】
前記第1の融合タンパク質が、2つ、3つまたは4つの第1の条件付き二量化ドメインに融合された触媒的に不活性なヌクレアーゼデッドラクノスピラ科細菌(Lachnospiraceae bacterium)ND2006 タンパク質Cpf1(dLbCpf1)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(i)請求項1(a)に記載の融合タンパク質における前記第1の条件付き二量化ドメインがDmrAであり、請求項1(b)に記載の融合タンパク質の前記第2の条件付き二量化ドメインがDmrCであるか、または(ii)請求項1(a)に記載の融合タンパク質における前記第1の条件付き二量化ドメインがDmrCであり、請求項1(b)に記載の融合タンパク質の前記第2の条件付き二量化ドメインがDmrAである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記転写活性化ドメインが、VP64、Rta、NF-κB p65、またはVPRである、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1(a)に記載の第1の融合タンパク質をコードする第1の核酸、および請求項1(b)に記載の第2の融合タンパク質をコードする第2の核酸を含むキットであって、二量化剤の存在下で、前記第1の条件付き二量化ドメインが、前記第2の条件付き二量化ドメインと二量化する、キット。
【請求項6】
(i)請求項1(a)に記載の融合タンパク質における第1の条件付き二量化ドメインがDmrAであり、請求項1(b)に記載の融合タンパク質における前記第2の条件付き二量化ドメインがDmrCであるか、または(ii)請求項1(a)に記載の融合タンパク質における第1の条件付き二量化ドメインがDmrCであり、請求項1(b)に記載の融合タンパク質における前記第2の条件付き二量化ドメインがDmrAである、請求項5に記載のキット。
【請求項7】
請求項1(a)に記載の第1の融合タンパク質、および請求項1(b)に記載の第2の融合タンパク質を発現する細胞であって、二量化剤の存在下で、前記第1の条件付き二量化ドメインが、前記第2の条件付き二量化ドメインと二量化する、細胞。
【請求項8】
(i)請求項1(a)に記載の第1の融合タンパク質における前記第1の条件付き二量化ドメインがDmrAであり、請求項1(b)に記載の融合タンパク質における前記第2の条件付き二量化ドメインがDmrCであるか、または(ii)請求項1(a)に記載の融合タンパク質における前記第1の条件付き二量化ドメインがDmrCであり、請求項1(b)に記載の融合タンパク質における前記第2の条件付き二量化ドメインがDmrAである、請求項7に記載の細胞。
【請求項9】
細胞における標的遺伝子または複数の標的遺伝子の発現を増加させる方法であって、
(i)請求項1に記載の組成物;および
(ii)標的遺伝子の制御領域に前記第1の融合タンパク質を方向付ける少なくとも一つのcrRNA、または前記標的遺伝子の1つの制御領域に融合タンパク質をそれぞれ方向付ける複数のcrRNAをコードする少なくとも一つの核
細胞を接触させる、またはそれらを細胞中で発現させることを含む、方法(但し、in vivoの方法を除く)。
【請求項10】
細胞における複数の標的遺伝子の発現を増加させる方法における使用のための請求項1に記載の組成物であって、前記方法が、
(i)請求項1に記載の組成物;および
(ii)前記標的遺伝子の1つの制御領域に融合タンパク質をそれぞれ方向付ける複数のcrRNAをコードする少なくとも1つの核酸
と細胞を接触させる、またはそれらを細胞中で発現させることを含む、組成物。
【請求項11】
前記細胞が哺乳動物細胞である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記哺乳動物細胞がヒト細胞である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記制御領域がプロモーター領域である、請求項10に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2017年4月21日に出願された米国特許出願第62/488,585号の優先権を主張する。上述の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府支援の研究または開発
本発明は、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって付与された助成金番号GM107427およびGM118158の下で政府支援によりなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
技術分野
本明細書において、薬物誘導性の調整可能で多重化可能なCpf1ベースの活性化因子、およびそれらの使用方法が記載される。
【背景技術】
【0004】
RNAガイド型CRISPRヌクレアーゼは、標的DNA塩基配列を認識するための再プログラミング性のそれらの容易さにより生物学および治療学の両方を革新した。広く使用されているストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)由来のCas9(SpCas9)は、NGG型のプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)も存在することを条件として、関連する相補ガイドRNA(gRNA)を含む特異的DNA配列を標的とすることができる。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、少なくとも一部において、構成的に活性で化学的に誘導可能なdCpf1ベースの転写活性化因子プラットフォームの開発、および多重Cpf1 gRNA発現を使用してヒト細胞において内因性遺伝子の相乗的活性化または組合せ活性化を達成する方法を含む、それらの使用方法に基づいている。
【0006】
したがって、本明細書では、少なくとも1つの活性化ドメイン(例えば1、2、3または4つ以上の活性化ドメイン)に融合された、触媒的に不活性な(すなわち、DNAエンドヌクレアーゼ活性に対して触媒的に不活性な)ラクノスピラ科細菌(Lachnospiraceae bacterium)ND2006由来のプレボテラ属およびフランシセラ属由来のクラスター化された規則的な配置の短い回文配列リピート(Cpf1:Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats from Prevotella and Francisella 1)のタンパク質Cpf1(dLbCpf1)を含む融合タンパク質であって、好ましくは、活性化ドメインが合成VPR活性化因子(すなわち、VP16の4つのコピー、ヒトNF-KB p65活性化ドメイン、およびエプスタイン・バーウイルスRトランス活性化因子(Rta)を含む)である、融合タンパク質が提供される。他の活性化ドメインは、VP64、Rta、NF-κB p65、およびp300を、Cpf1および/または各活性化ドメイン間の任意選択の介在リンカーと共に含む。
【0007】
さらに、本明細書では、条件付き二量化ドメイン(conditional dimerization domain)に融合された触媒的に不活性なラクノスピラ科細菌(Lachnospiraceae bacterium)ND2006 Cpf1(dLbCpf1)を、Cpf1および/または各活性化ドメイン間の任意選択の介在リンカーと共に含む融合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態において、条件付き二量化ドメインは、DmrAまたはDmrCである。これらの融合タンパク質は、二量化剤の存在下で、請求項2に記載の融合タンパク質において条件付き二量化で二量化する第2の条件付き二量化ドメインに融合された少なくとも1つの活性化ドメイン(例えば1、2、3または4つ以上の活性化ドメイン)を、活性化ドメインおよび/または第2の二量化ドメインの各間の任意選択の介在リンカーと共に含む第2の融合タンパク質をも含む組成物またはキットで提供することができる。いくつかの実施形態において、請求項2に記載の融合タンパク質における条件付き二量化はDmrAであり、第2の条件付き二量化ドメインはDmrCであるか、または(ii)請求項2に記載の融合タンパク質における条件付き二量化はDmrCであり、第2の条件付き二量化ドメインはDmrAである。いくつかの実施形態において、活性化ドメインは、VP64、Rta、NF-κB p65、VPRまたはp300である。
【0008】
また、融合タンパク質、および/または本明細書に記載の融合タンパク質をコードする核酸を、任意選択で二量化剤と共に含むキットが提供される。
【0009】
また本明細書では、本明細書に記載の融合タンパク質をコードする核酸、核酸を含むベクター、ならびに核酸および/またはベクターを含み任意選択で融合タンパク質を発現する細胞が提供される。
【0010】
さらに、細胞における標的遺伝子の発現を増加させる方法であって、
(i)少なくとも1つの活性化ドメイン(例えば1、2、3、4つ以上の活性化ドメイン)に融合された触媒的に不活性なラクノスピラ科細菌(Lachnospiraceae bacterium)ND2006タンパク質Cpf1(dLbCpf1)を含む融合タンパク質、および標的遺伝子の制御領域、例えばプロモーター領域に融合タンパク質を方向付ける少なくとも1つのcrRNA;および/または
(ii)条件付き二量化ドメインに融合された触媒的に不活性なラクノスピラ科細菌(Lachnospiraceae bacterium)ND2006 Cpf1(dLbCpf1)を、Cpf1および/または各活性化ドメイン間の任意選択の介在リンカーと共に含む第1の融合タンパク質、ならびに二量化剤の存在下で、第1の融合タンパク質において条件付き二量化で二量化する第2の条件付き二量化ドメインに融合された活性化ドメインを(活性化ドメインと第2の二量化ドメイン間の任意選択の介在リンカーと共に)含む第2の融合タンパク質、ならびに標的遺伝子の制御領域、例えばプロモーター領域に融合タンパク質を方向付ける少なくとも1つのcrRNA
のうちの1つまたは複数と細胞を接触させる、またはそれらを細胞中で発現させることを含む、方法を提供する。
【0011】
また、細胞における複数の標的遺伝子(例えば2、3または4つ以上)の発現を増加させる方法であって、
(i)少なくとも1つの活性化ドメイン(例えば1、2、3、4つ以上の活性化ドメイン)に融合された触媒的に不活性なラクノスピラ科細菌(Lachnospiraceae bacterium)ND2006タンパク質Cpf1(dLbCpf1)を含む融合タンパク質、および標的遺伝子の1つの制御領域、例えばプロモーター領域に融合タンパク質を方向付ける複数のcrRNAをコードする少なくとも1つの核酸;および/または
(ii)条件付き二量化ドメインに融合された触媒的に不活性なラクノスピラ科細菌(Lachnospiraceae bacterium)ND2006 Cpf1(dLbCpf1)を、Cpf1および/または各活性化ドメイン間の任意選択の介在リンカーと共に含む第1の融合タンパク質、ならびに二量化剤の存在下で、第1の融合タンパク質において条件付き二量化で二量化する第2の条件付き二量化ドメインに融合された活性化ドメインを含む第2の融合タンパク質、ならびに標的遺伝子のうちの1つの制御領域、例えばプロモーター領域に融合タンパク質をそれぞれ方向付ける複数のcrRNAをコードする少なくとも1つの核酸
のうちの1つまたは複数と細胞を接触させる、またはそれらを細胞中で発現させることを含む、方法を提供する。
【0012】
いくつかの実施形態において、細胞は哺乳動物細胞、例えばヒト細胞である。
【0013】
特に定義されない限り、本明細書において使用されているすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本発明で使用するための方法および材料は本明細書に記載されている。当技術分野で公知の他の適切な方法および材料も使用することができる。材料、方法、および例は単に説明しているだけであり、限定することを意図したものではない。本明細書で言及されているすべての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリ-、および他の参考文献は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。矛盾する場合には、定義を含む本明細書が優先される。
【0014】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および図面、ならびに特許請求の範囲から明白であろう。
【0015】
特許ファイルまたは出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を含む本特許または特許出願公報のコピーは、請求および手数料の支払いによって官庁により提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1-1】図1A~1Eは、個々のcrRNAをdLbCpf1ベースの活性化因子と共に使用する標的ヒト内因性遺伝子の制御を示す図である。 (A)ダイレクトdLbCpf1-VPRおよびdLbCpf-p65活性化因子融合タンパク質を示す概略図である。(B)ヒトHEK293細胞の3つの内因性ヒト遺伝子(HBB、ARおよびNPY1R)で単一crRNAを使用したdLbCpf1-p65またはdLbCpf1-VPRの活性を示す図である。示した遺伝子プロモーターの相対的活性化は、RT-qPCRによって測定した。3つの別個のcrRNAは、各遺伝子の転写開始部位から1kb上流のプロモーター配列内で標的化された。相対的mRNA発現は、crRNAが発現されない対照試料との比較によって計算される。(C)ヒトCD5およびCD22プロモーターを標的とした各種crRNAの分析を示す図である。32個のcrRNA(各遺伝子に対し16個)は、各遺伝子のTSSの1kb上流または500bp下流のプロモーター配列内に位置した部位を標的とするように設計された。反復配列は標的とされなかった。72時間トランスフェクションした後、細胞をCD5またはCD22タンパク質に対して蛍光標識抗体で染色し、蛍光陽性細胞をフローサイトメトリーにより定量した。エラーバーは、3つの生物学的複製物に対するs.e.mを示す。黒丸は、crRNAが発現しなかった対照と比較した場合に有意に異なる試料を示す(スチューデントt検定、等分散を仮定する両側検定、p<0.05)。(D)薬物誘導性の2部から構成されるdLbCpf1ベースの活性化因子融合タンパク質を示す概略図である。dLbCpf1は1~4つのDmrAドメインに融合され、VPRまたはp65はDmrCドメインに融合される。DmrAおよびDmrCはA/Cヘテロ二量化薬(赤色菱形)の存在下でのみ相互作用するので、2部から構成される活性化因子は薬物の存在下でのみ再構成される。(E)ヒトHEK293細胞の3つの内因性ヒト遺伝子(HBB、AR、およびNPY1R)で単一crRNAを使用した薬物誘導性の2部から構成されるdLbCpf1ベースの活性化因子の活性を示す図である。示した遺伝子プロモーターの相対的活性化は、RT-qPCRによって測定した。各プロモーターで使用されたcrRNAは、上記(B)で最も高い活性を示したものであった。(B)および(E)で示したデータは、3つの生物学的に独立した複製を表し、エラーバーは3つの技術的な複製の標準偏差(SD)を示す。
図1-2】図1-1と同様である。
図1-3】図1-1と同様である。
図1-4】図1-1と同様である。
図2-1】図2A~2Iは、dLbCpf1ベースの活性化因子による内因性ヒト遺伝子の多重および相乗的な制御を示す図である。 (A)単一転写産物にコードされている複数のgRNAを発現するように設計された発現カセットの概略図を示す図である。矢印は、dLbCpf1のRNase活性によってプロセシングされる切断部位を示す。(B)単一細胞内の異なる内因性遺伝子プロモーターをそれぞれ標的とする3つのcrRNAの多重発現を示す概略図である。(C)多重転写産物から発現された、または個々の転写産物から発現されたcrRNAをdLbCpf1-VPRダイレクト融合体(左図)、dLbCpf1-DmrA(×4)およびDmrC-VPR融合体(中央図)、ならびにdLbCpf1-DmrA(×4)およびDmrC-p65融合体(右図)と共に使用した3つの内因性ヒト遺伝子の同時活性化を示す図である。転写産物はHEK293細胞においてRT-qPCRを使用して測定し、crRNAが発現していない対照試料と比較して相対的mRNA発現を計算した。(D)ヒトU20S細胞における異なるdLbCpf1ベースの活性化因子によるMST crRNAの活性を示す図である。グラフは、dLbCpf1-VPRダイレクト融合体、dLbCpf1 DmrA(×4)およびDmrC-p65融合体、ならびにdLbCpf1-DmrA(×4)およびDmrC-VPR融合体と、多重単一転写産物(MST)から発現された、または単一crRNAをコードする転写産物から発現されたcrRNAとによる3つの内因性ヒト遺伝子の活性化を示す。RNA発現はRT-qPCRによって測定し、示した相対的発現はcrRNAが発現されない対照試料との比較によって計算した。(E)同じ細胞において同じ内因性遺伝子プロモーターをそれぞれ標的とした3つのcrRNAの多重発現を示す概略図である。(F)多重転写産物から発現された、または個々の転写産物から発現された3つのcrRNAのセットを伴ったダイレクトdLbCpf1-p65融合体またはdLbCpf1-VPR融合体のHBB、ARまたはNPY1R内在性遺伝子プロモーターに対する活性を示す図である。転写産物はHEK293細胞においてRT-qPCRを使用して測定し、crRNAが発現していない対照試料と比較して相対的mRNA発現を計算した。(G)多重転写産物から発現された、または個々の転写産物から発現された3つのcrRNAのセットを伴ったdLbCpf1-DmrA(×4)およびDmrC-VPRの融合体またはdLbCpf1-DmrA(×4)およびDmrC-p65の融合体のHBB、ARまたはNPY1R内因性遺伝子プロモーターに対する活性を示す図である。転写産物はHEK293細胞においてRT-qPCRを使用して測定し、crRNAが発現していない対照試料と比較して相対的mRNA発現を計算した。(C)、(D)、(F)、および(G)に示すデータは3つの生物学的に独立した複製を表し、エラーバーは3つの技術的複製の標準偏差(SD)を示す。hU6、ヒトU6ポリメラーゼIIIプロモーター;DR;直列反復配列。(H)A/Cヘテロ二量化薬で制御されたdLbCpf1ベースの活性化因子の誘導性および可逆性を示す図である。活性化因子誘導の動態を測定するため、HEK293細胞に、dLbCpf1-DmrA(×4)、DmrC-p65、およびヒトHBBプロモーターまたはARプロモーターを標的とするMST crRNAを発現するプラスミドをトランスフェクトした。トランスフェクションの34時間後、これらの細胞を2つの培養物に分けた:1つはA/Cヘテロ二量化剤(500uM)を含有する培地(上、黒色)、もう1つはA/Cヘテロ二量化剤を含まない培地(下、灰色)。細胞を様々な時点で回収し、相対的mRNA発現レベルをRT-qPCRにより陰性対照と比較して測定した。(I)可逆性の動態を測定するため、HEK293細胞を(H)と同様にトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、A/Cヘテロ二量化剤(500uM)を培地に加えた。10時間後、これらの細胞を2つの培養物に分けた:1つはA/Cヘテロ二量化剤(500uM)を含有する培地(上、青色)、もう1つはA/Cヘテロ二量化剤を含まない培地(下、紫色)。細胞を様々な時点で回収し、相対的mRNA発現レベルをRT-qPCRにより陰性対照と比較して測定した。エラーバーは、3つの生物学的複製物のs.e.mを表す。
図2-2】図2-1と同様である。
図2-3】図2-1と同様である。
図2-4】図2-1と同様である。
図2-5】図2-1と同様である。
図2-6】図2-1と同様である。
図2-7】図2-1と同様である。
図2-8】図2-1と同様である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な説明
効率的活性化は単一プロモーターに動員される複数の制御ドメインを必要としていたが、SpCas9ヌクレアーゼの触媒的に不活性な形態(「デッド」SpCas9またはdSpCas9)は、転写活性化因子ドメインまたはリプレッサードメインと融合されて、哺乳動物細胞におけるライブラリースクリーニングの遺伝子発現を個々にまたはゲノムワイドに変えた1~4。また、低分子誘導性および光誘導性両方のdCas9ベースの遺伝子制御融合体も記載されており、追加の重要な能力をこのプラットフォームに提供する6~10。最近記載されたCRISPR-Cpf1ヌクレアーゼは、長さの短いgRNA、代替のTリッチPAM配列を標的とする能力、およびCpf1ヌクレアーゼそれ自体による単一転写産物からの複数のガイドRNAのプロセッシングを含む、SpCas9の能力を超える重要な追加能力を付与する11。しかし、本発明者らが知る限りでは、「デッド」Cpf1ベースの遺伝子制御因子は、現在まで、細菌12および植物(シロイヌナズナ(Arabidopsis))13における遺伝子発現を抑制するのに使用されているのみであり、哺乳動物細胞において、または標的遺伝子を活性化するために作用することは明らかにされていない。本明細書では、本発明者らは、構成的に活性であり、化学的に誘導可能なdCpf1ベースの転写活性化因子プラットフォームについて記載し、その多重Cpf1 gRNA発現を利用して、ヒト細胞における内因性遺伝子の相乗的活性化または組合せ活性化を達成できることを示す。
【0018】
本発明者らの知る限りでは、ここで報告された結果は、RNAガイド型Cpf1ベースの融合体を使用して、任意の細胞型で内因性遺伝子発現を活性化することできるという最初の実証、およびヒト細胞におけるCpf1由来遺伝子制御タンパク質の最初の使用を提供する。SpCas9と比較したLbCpf1の直下PAM認識特異性(TTTN対NGG)は、RNAガイド型活性化因子タンパク質に関する新しい範囲の標的化可能な配列を切り開く。SpCas9と比較した場合に報告されたLbCpf1のゲノムワイドな特異性が高いことを考えると14、15、dLbCpf1活性化因子は、dSpCas9活性化因子に匹敵する特異性を有している可能性があり、これはRNA-seqによりオフターゲット遺伝子活性化の事象を、たとえあったとしても、ほとんど引き起こさないことが示された。
【0019】
また本研究は、複数の方法において遺伝子制御の調節に使用することができる薬物誘導性のdLbCpf1活性化因子を確立した。これらの活性化因子は、対の融合タンパク質である、条件付き二量化ドメインに融合された触媒的に不活性なラクノスピラ科細菌(Lachnospiraceae bacterium)ND2006 Cpf1(dLbCpf1)を、Cpf1および/または各活性化ドメインの間の任意選択の介在リンカーと共に含む第1の融合タンパク質、および第2の融合タンパク質を含み、第2の融合タンパク質は、二量化剤の存在下で、第1の融合タンパク質中の条件付き二量化で二量化する第2の条件付き二量化ドメインに融合された活性化ドメインを、活性化ドメインと第2の二量化ドメインとの間の任意選択の介在リンカーと共に含む。これらの活性化因子の2部から構成される性質によって、細胞透過性のA/C二量化薬でそれらの活性をオンまたはオフにすることができ、これは、実験系に有用な機能を提供する。さらに、所望する活性化のレベルはdLbCpf1に融合されたDmrA二量化ドメインの数を増やすことにより調整することができ、おそらくこれが、所定のプロモーターへのDmrC活性化因子融合体の動員数をますます増加させる。DmrC融合において使用される活性化ドメインの変更は、観察された活性化の程度に影響を及ぼした。幾分驚いたことに、SpCas9ベースの活性化因子の以前の結果とは対照的に、p65ドメイン(個々のcrRNAsを有する)は、合成VPR活性化因子(6つの強力な活性化ドメインを含有する)よりも、試験した3つの遺伝子プロモーターを一貫してより活性化した。標的プロモーターに方向付けられた複数のcrRNAで、p65ドメインは、相乗作用が確認された2つの遺伝子に、より強力な活性化をもたらした。合成VPRではなく天然に存在するp65活性化ドメインを使用する能力は、非常に強力な活性化因子によって引き起こされる望ましくない副作用(例えば、スケルチング(squelching))を回避するので有利である16、17。遺伝子活性化のその有用性以上に、この薬物誘導性の多重dCpf1ベースのプラットフォームを使用して、目的の任意の内因性ゲノム遺伝子座への他の異種タンパク質または機能ドメインの標的動員が可能となる。
【0020】
本研究はまた、Cpf1プラットフォームの重要な利点である、単一転写産物上で複数のcrRNAをよりシンプルにコードする能力を利用して、同じ単一細胞内で内因性ヒト遺伝子の多重活性化を実現できることを実証した。dSpCas9遺伝子制御タンパク質を使用する多重制御は、gRNAが個別のプロモーターから発現される場合18にはプロモーター間の実質的な組換えのため、または複数のgRNAが単一転写産物から発現される場合には19~25、追加のアクセサリーRNA配列、プロモーターもしくはトランス作用因子が必要なため、困難である。対照的に、Cpf1により使用されるより短い約40nt長のcrRNAは、単一オリゴヌクレオチド上で2つまたは3つのcrRNAを容易にコードすることができるので、目的の遺伝子を標的とするcrRNAの正確なユーザー指定の組合せを構築するためにチップベースの合成を利用することができる。dSpCas9 gRNAで同じことを実施する場合、長さがより長い(約100nt)ガイドRNAが必要とされ、単一転写産物からのプロセッシングを可能にするためにはアクセサリー配列および因子が必要とされるのでより困難である。したがって、これらの結果は、2つ以上の遺伝子の発現が同時に制御される多重ライブラリースクリーニングを含む方法を実施する実現可能性を実証しており、それにより、この手法を使用してより複雑な細胞表現型の分析が可能になる。
【0021】
Cpf1
クラスター化された規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR:Clustered,regularly interspaced,short palindromic repeat)系は、細菌の適応免疫に不可欠なRNAガイド型エンドヌクレアーゼをコードしている26。CRISPR関連(Cas)ヌクレアーゼは、様々な生物においてゲノム編集するために標的DNA配列を切断するように容易にプログラムすることができる27~30。Cas9タンパク質と呼ばれるこれらのヌクレアーゼの1つのクラスは、2つの短いRNA:crRNAおよびトランス活性化crRNA(tracrRNA)と複合体を形成する31、32。最も一般的に使用されているCas9オルソログのSpCas9は、標的DNA部位の「プロトスペーサー」領域に相補的な、20ヌクレオチド(nt)をその5’末端に有するcrRNAを使用する。また効果的な切断には、SpCas9がプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を認識することを必要とする。crRNAおよびtracrRNAは、通常、SpCas9のDNA切断活性を導く単一の約100ntガイド型RNA(gRNA)31、33~35に組み合わされる。異なるgRNAと対になったSpCas9ヌクレアーゼのゲノムワイドな特異性は、多くの異なる手法を使用して特徴付けられている36~39。またゲノムワイドな特異性が実質的に改善されたSpCas9変異体も設計されている40、41
【0022】
最近、標的DNA配列を切断するようにもプログラムされ得るCpf1という名称のCasタンパク質が同定された42~45。SpCas9とは異なり、Cpf1は単一の42ntのcrRNAだけを必要とし、これは標的DNA配列のプロトスペーサーに相補的である23ntをその3’末端に有している44。さらに、SpCas9はプロトスペーサーの3’にあるNGG PAMシーケンスを認識するが、それに対しAsCpf1およびLbCp1はプロトスペーサーの5’で確認されるTTTN PAMを認識する44。AsCpf1およびLbCpf1の初期の実験では、これらのヌクレアーゼはヒト細胞の標的部位を編集するようにプログラムされ得ることが示されたが44、それらは少数の部位に対してしか試験されていない。AsCpf1およびLbCpf1の両方のオンターゲット活性およびゲノムワイドな特異性は、Kleinstiver & Tsai et al., Nature Biotechnology 2016で特徴付けられている。
【0023】
本明細書ではLbCpf1を含む融合タンパク質が提供される。LbCpf1野生型タンパク質の配列は以下のとおりである:
【0024】
LbCpf1-V型CRISPR関連タンパク質Cpf1[ラクノスピラ科細菌(Lachnospiraceae bacterium)ND2006]、GenBank Acc番号 WP_051666128.1
【0025】
【化1】
【0026】
18アミノ酸のシグナル配列のない成熟LbCpf1:
【0027】
【化2】
【0028】
本明細書に記載のLbCpf1変異体は、表Aの1つまたは複数の位置で変異を有する(すなわち、天然アミノ酸の異なるアミノ酸、例えばアラニン、グリシン、またはセリンとの置換)、配列番号1のアミノ酸配列、例えば、少なくとも配列番号1のアミノ酸23~1246を含み得る;配列番号1のアミノ酸19~1246は、配列番号2のアミノ酸1~1228と同一である(配列番号1のアミノ酸1~1246は、本明細書ではLbCPF1(+18)と呼ばれる)。いくつかの実施形態において、LbCpf1変異体は、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%、例えば少なくとも85%、90%、または95%同一であり、例えば、本明細書に記載の変異に加えて、例えば保存的変異で置換された配列番号2の最大5%、10%、15%、または20%の残基に差異を有する。好ましい実施形態において、変異体は、所望する親の活性、例えばヌクレアーゼ活性(親がニッカーゼもしくはデッドCpf1である場合を除く)、および/またはガイドRNAおよび標的DNAと相互作用する能力を保持する。本実施例で使用されたLbCpf1のバージョンは配列番号2であり、Zetsche et al. Cell 163, 759-771 (2015)で記載されているように上記の枠で囲んだ最初の18アミノ酸が除かれている。
【0029】
いくつかの実施形態において、Cpf1変異体はまた、表Aに挙げた以下の変異体のうちの1つを含み、これらはCpf1のヌクレアーゼ活性を低減または破壊する(すなわち、それらを触媒的に不活性化する):
【0030】
【表1】
【0031】
例えば、Yamano et al., Cell. 2016 May 5; 165(4):949-62;Fonfara et al., Nature. 2016 Apr 28; 532(7600):517-21;Dong et al., Nature. 2016 Apr 28; 532(7600):522-6;およびZetsche et al., Cell. 2015 Oct 22; 163(3):759-71を参照されたい。「LbCpf1(+18)」は、配列番号1のアミノ酸1~1246の完全配列を意味し、一方、LbCpf1は、本明細書で配列番号2のアミノ酸1~1228および配列番号1のアミノ酸19~1246としても示されているZetscheらのLbCpf1の配列を意味することに注意されたい。したがって、いくつかの実施形態において、LbCpf1に関して、触媒活性を破壊する変異がD832およびE925で作製されており、例えば、D832AおよびE925Aである。
【0032】
好ましくは1つまたは複数のヌクレアーゼ低減変異または死滅変異を含むCpf1変異体は、Cpf1のN末端またはC末端で、転写活性化ドメイン(例えば、単純ヘルペスウイルスのVP16ドメイン(Sadowski et al., 1988, Nature, 335:563-564)もしくはVP64由来の転写活性化ドメイン;細胞転写因子NF-κB由来のp65ドメイン細胞転写因子(Ruben et al., 1991, Science, 251:1490-93);タンデムに連結された活性化因子VP64、p65およびRta(VPR)から構成された、dCas9に融合された三種エフェクター、Chavez et al., Nat Methods. 2015 Apr;12(4):326-8;またはp300 HATドメインに融合され得る。p300/CBPはヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)であって、その機能は哺乳類細胞における遺伝子発現の制御にとって重要である。p300 HATドメイン(1284~1673)は触媒的に活性であり、標的エピゲノム編集用のヌクレアーゼに融合させることができる。Hilton et al., Nat Biotechnol. 2015 May; 33(5):510-7を参照されたい。
【0033】
例えば、FK506結合タンパク質(FKBP)、例えば、Rollins et al., Proc Natl Acad Sci USA. 2000 Jun 20; 97(13): 7096-7101を参照;目的のタンパク質がそれぞれDmrAおよびDmrC結合ドメインに融合され、二量化がA/Cヘテロ二量化剤(AP21967)を添加することにより誘導されるClontech/Takara製のiDEVIERIZE(商標)誘導性二量化系に基づく、任意の誘導可能なタンパク質二量化系を使用することができる。また他に、CyP-FasおよびFKCsA二量化剤を用いるFKBP(Belshaw et al., Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America. 93 (10): 4604-7 (1996)を参照);ラパマイシン二量化剤を用いるmTORのFKBPおよびFRBドメイン(Rivera et al., Nature Medicine. 2 (9): 1028-32 (1996));クーママイシン二量化剤を用いるGyrBドメイン(Farrar et al., Nature. 383 (6596): 178-81 (1996));ジベレリン誘導性二量化(Miyamoto et al., Nature Chemical Biology. 8 (5): 465-70 (2012);Miyamoto et al., Nature Chemical Biology. 8 (5): 465-70 (2012)を参照);ならびにHaloTagおよびSNAP-tagに由来の小分子交差結合融合タンパク質に基づくタンパク質ヘテロ二量化系(Erhart et al., Chemistry and Biology. 20 (4): 549-57 (2013))などが知られている。
【0034】
2つの核酸配列の同一性パーセントを決定するため、最適に比較する目的で配列をアラインする(例えば、最適なアラインメントのためにギャップを第1および第2のアミノ酸または核酸配列の一方または両方に導入することができ、非相同配列は比較目的において無視することができる)。比較目的でアラインされた参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも80%であり、いくつかの実施形態においては、少なくとも90%または100%である。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のヌクレオチドが比較される。第1の配列中の位置が第2の配列中の対応する位置と同じヌクレオチドによって占有されている場合、その分子はその位置で同一である(本明細書で使用される場合、核酸「同一性」は核酸「相同性」と同等である)。2つの配列間の同一性パーセントは、それらの配列により共有される同一の位置の数の関数であり、2つの配列の最適なアラインメントに導入することが必要とされるギャップの数、およびそれぞれのギャップの長さを考慮に入れる。2つのポリペプチドまたは核酸配列間の同一性パーセントは、当技術分野の技能の範囲内の様々な手段において、例えば、公的に入手可能なコンピュータソフトウェア、例えば、Smith Waterman Alignment(Smith,T.F. and M.S. Waterman (1981) J Mol Biol 147: 195-7);GeneMatcher Plus(商標)に組み込まれた「BestFit」(Smith and Waterman, Advances in Applied Mathematics, 482-489(1981))、Schwarz and Dayhof (1979) Atlas of Protein Sequence and Structure, Dayhof, M.O., Ed, pp 353-358;BLASTプログラム(Basic Local Alignment Search Tool);(Altschul, S.F., W.Gish, et al. (1990) J Mol Biol 215:403-10)、BLAST-2、BLAST-P、BLAST-N、BLAST-X、WU-BLAST-2、ALIGN、ALIGN-2、CLUSTAL、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを使用して決定される。さらに、当業者は、比較される配列の長さにわたる最大アラインメントを達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを含む、アラインメントの測定に適切なパラメーターを決定することができる。一般に、タンパク質または核酸については、比較の長さは、完全長以下の任意の長さ(例えば、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%)であり得る。本組成物および方法の目的のために、配列の完全長の少なくとも80%がアラインされる。
【0035】
本発明の目的のために、2つの配列間の配列の比較および同一性パーセントの決定は、Blossum 62スコアリングマトリックスを、ギャップペナルティ12、ギャップ伸長ペナルティ4、およびフレームシフトギャップペナルティ5で使用して達成することができる。
【0036】
保存的置換としては、典型的には、以下の群:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン;リジン、アルギニン;およびフェニルアラニン、チロシン内の置換が挙げられる。
【0037】
いくつかの実施形態において、変異体は、野生型アミノ酸の代わりにアラニンを有する。いくつかの実施形態において、変異体は、アルギニンまたはリジン(または天然アミノ酸)以外の任意のアミノ酸を有する。
【0038】
また本明細書では、任意選択で、変異タンパク質を発現するための1つまたは複数の制御ドメインに作動可能に連結されている、Cpf1融合タンパク質をコードする単離核酸、その単離核酸を含むベクター、ならびにその核酸を含み、任意選択で変異タンパク質を発現する宿主細胞、例えば哺乳動物宿主細胞も提供される。
【0039】
本明細書に記載された融合タンパク質は、細胞のゲノムを変更するために使用することができる。本方法は、一般に、細胞において変異タンパク質を、細胞のゲノムの選択部分に相補的な領域を有するガイドRNAと共に発現させることを含む。細胞のゲノムを選択的に変更する方法は当技術分野においては公知であり、例えば、米国特許第8,993,233号明細書;米国特許出願公開第20140186958号明細書;米国特許第9,023,649号明細書;国際公開第2014/099744号パンフレット;国際公開第2014/089290号パンフレット;国際公開第2014/144592号パンフレット;国際公開第144288号パンフレット;国際公開第2014/204578号パンフレット;国際公開第2014/152432号パンフレット;国際公開第2115/099850号パンフレット;米国特許第8,697,359号明細書;米国特許出願公開第20160024529号明細書;米国特許出願公開第20160024524号明細書;米国特許出願公開第20160024523号明細書;米国特許出願公開第20160024510号明細書;米国特許出願公開第20160017366号明細書;米国特許出願公開第20160017301号明細書;米国特許出願公開第20150376652号明細書;米国特許出願公開第20150356239号明細書;米国特許出願公開第20150315576号明細書;米国特許出願公開第20150291965号明細書;米国特許出願公開第20150252358号明細書;米国特許出願公開第20150247150号明細書;米国特許出願公開第20150232883号明細書;米国特許出願公開第20150232882号明細書;米国特許出願公開第20150203872号明細書;米国特許出願公開第20150191744号明細書;米国特許出願公開第20150184139号明細書;米国特許出願公開第20150176064号明細書;米国特許出願公開第20150167000号明細書;米国特許出願公開第20150166969号明細書;米国特許出願公開第20150159175号明細書;米国特許出願公開第20150159174号明細書;米国特許出願公開第20150093473号明細書;米国特許出願公開第20150079681号明細書;米国特許出願公開第20150067922号明細書;米国特許出願公開第20150056629号明細書;米国特許出願公開第20150044772号明細書;米国特許出願公開第20150024500号明細書;米国特許出願公開第20150024499号明細書;米国特許出願公開第20150020223号明細書;米国特許出願公開第20140356867号明細書;米国特許出願公開第20140295557号明細書;米国特許出願公開第20140273235号明細書;米国特許出願公開第20140273226号明細書;米国特許出願公開第20140273037号明細書;米国特許出願公開第20140189896号明細書;米国特許出願公開第20140113376号明細書;米国特許出願公開第20140093941号明細書;米国特許出願公開第20130330778号明細書;米国特許出願公開第20130288251号明細書;米国特許出願公開第20120088676号明細書;米国特許出願公開第20110300538号明細書;米国特許出願公開第20110236530号明細書;米国特許出願公開第20110217739号明細書;米国特許出願公開第20110002889号明細書;米国特許出願公開第20100076057号明細書;米国特許出願公開第20110189776号明細書;米国特許出願公開第20110223638号明細書;米国特許出願公開第20130130248号明細書;米国特許出願公開第20150050699号明細書;米国特許出願公開第20150071899号明細書;米国特許出願公開第20150045546号明細書;米国特許出願公開第20150031134号明細書;米国特許出願公開第20150024500号明細書;米国特許出願公開第20140377868号明細書;米国特許出願公開第20140357530号明細書;米国特許出願公開第20140349400号明細書;米国特許出願公開第20140335620号明細書;米国特許出願公開第20140335063号明細書;米国特許出願公開第20140315985号明細書;米国特許出願公開第20140310830号明細書;米国特許出願公開第20140310828号明細書;米国特許出願公開第20140309487号明細書;米国特許出願公開第20140304853号明細書;米国特許出願公開第20140298547号明細書;米国特許出願公開第20140295556号明細書;米国特許出願公開第20140294773号明細書;米国特許出願公開第20140287938号明細書;米国特許出願公開第20140273234号明細書;米国特許出願公開第20140273232号明細書;米国特許出願公開第20140273231号明細書;米国特許出願公開第20140273230号明細書;米国特許出願公開第20140271987号明細書;米国特許出願公開第20140256046号明細書;米国特許出願公開第20140248702号明細書;米国特許出願公開第20140242702号明細書;米国特許出願公開第20140242700号明細書;米国特許出願公開第20140242699号明細書;米国特許出願公開第20140242664号明細書;米国特許出願公開第20140234972号明細書;米国特許出願公開第20140227787号明細書;米国特許出願公開第20140212869号明細書;米国特許出願公開第20140201857号明細書;米国特許出願公開第20140199767号明細書;米国特許出願公開第20140189896号明細書;米国特許出願公開第20140186958号明細書;米国特許出願公開第20140186919号明細書;米国特許出願公開第20140186843号明細書;米国特許出願公開第20140179770号明細書;米国特許出願公開第20140179006号明細書;米国特許出願公開第20140170753号明細書;国際公開第2008/108989号パンフレット;国際公開第2010/054108号パンフレット;国際公開第2012/164565号パンフレット;国際公開第2013/098244号パンフレット;国際公開第2013/176772号パンフレット;Makarova et al., ”Evolution and classification of the CRISPR-Cas systems” 9(6) Nature Reviews Microbiology 467-477 (1-23) (Jun. 2011);Wiedenheft et al., ”RNA-guided genetic silencing systems in bacteria and archaea” 482 Nature 331-338 (Feb. 16, 2012);Gasiunas et al., ”Cas9-crRNA ribonucleoprotein complex mediates specific DNA cleavage for adaptive immunity in bacteria” 109(39) Proceedings of the National Academy of Sciences USA E2579-E2586 (Sep. 4, 2012);Jinek et al., ”A Programmable Dual-RNA-Guided DNA Endonuclease in Adaptive Bacterial Immunity” 337 Science 816-821 (Aug. 17, 2012);Carroll, ”A CRISPR Approach to Gene Targeting” 20(9) Molecular Therapy 1658-1660 (Sep. 2012);2012年5月25日に出願された米国特許出願第61/652,086号明細書;Al-Attar et al., Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats (CRISPRs): The Hallmark of an Ingenious Antiviral Defense Mechanism in Prokaryotes, Biol Chem. (2011) vol. 392, Issue 4, pp. 277-289;Hale et al., Essential Features and Rational Design of CRISPR RNAs That Function With the Cas RAMP Module Complex to Cleave RNAs, Molecular Cell, (2012) vol. 45, Issue 3, 292-302を参照されたい。
【0040】
本明細書に記載の融合タンパク質は、前述の参照文献に記載されたCas9またはCpf1タンパク質のいずれかに代えて、もしくはそれらに加えて、またはそれらに記載された類似の変異体との組合せで、選択されたCpf1に適切なガイドRNAと共に、すなわち選択された配列を標的とするガイドRNAと共に、使用することができる。
【0041】
さらに、本明細書に記載の融合タンパク質は、当技術分野において公知の野生型Cas9、Cpf1、または他のCas9もしくはCpf1変異体(例えばdCpf1またはCpf1ニッカーゼ)、例えば、米国特許第8,993,233号明細書;米国特許出願公開第20140186958号明細書;米国特許第9,023,649号明細書;国際公開第2014/099744号パンフレット;国際公開第2014/089290号パンフレット;国際公開第2014/144592号パンフレット;国際公開第144288号パンフレット;国際公開第2014/204578号パンフレット;国際公開第2014/152432号パンフレット;国際公開第2115/099850号パンフレット;米国特許第8,697,359号明細書;米国特許出願公開第2010/0076057号明細書;米国特許出願公開第2011/0189776号明細書;米国特許出願公開第2011/0223638号明細書;米国特許出願公開第2013/0130248号明細書;国際公開第2008/108989号パンフレット;国際公開第2010/054108号パンフレット;国際公開第2012/164565号パンフレット;国際公開第2013/098244号パンフレット;国際公開第2013/176772号パンフレット;米国特許出願公開第20150050699号明細書;米国特許出願公開第20150071899号明細書、および国際公開第2014/124284号パンフレットに記載されているような異種機能性ドメインを有する融合タンパク質に代えて使用することができる。
【0042】
いくつかの実施形態において、融合タンパク質は、Cpf1変異体と異種機能性ドメインの間にリンカーを含む。これらの融合タンパク質で(または連結構造の融合タンパク質間で)使用することができるリンカーは、融合タンパク質の機能を妨げない任意の配列を含み得る。好ましい実施形態において、リンカーは短く、例えば、2~20アミノ酸であり、典型的には、フレキシブルである(すなわち、自由度の高いアミノ酸、例えばグリシン、アラニン、およびセリンを含む)。いくつかの実施形態において、リンカーは、GGGS(配列番号3)またはGGGGS(配列番号4)からなる1つまたは複数の単位、例えば、GGGS(配列番号3)またはGGGGS(配列番号4)単位の2、3、4つ、またはそれより多いリピートを含む。また、他のリンカー配列も使用することができる。
【0043】
いくつかの実施形態において、変異タンパク質は、細胞内空間への送達を促進する細胞透過性ペプチド配列、例えば、HIV由来TATペプチド、ペネトラチン、トランスポータン、またはhCT由来細胞透過性ペプチドを含み、例えば、Caron et al., (2001) Mol Ther. 3(3):310-8;Langel, Cell-Penetrating Peptides: Processes and Applications (CRC Press, Boca Raton FL 2002);El-Andaloussi et al., (2005) Curr Pharm Des. 11(28):3597-611;およびDeshayes et al., (2005) Cell Mol Life Sci. 62(16):1839-49を参照されたい。
【0044】
細胞透過性ペプチド(CPP)は、細胞膜を通過して細胞質または他の細胞小器官、例えば、ミトコンドリアおよび核への広範囲の生体分子移動を促進する短鎖ペプチドである。CPPにより送達することができる分子の例としては、治療薬、プラスミドDNA、オリゴヌクレオチド、siRNA、ペプチド核酸(PNA)、タンパク質、ペプチド、ナノ粒子、およびリポソームが挙げられる。CPPは、一般に、30アミノ酸以下であり、天然または非天然のタンパク質またはキメラ配列に由来し、相対存在量の高い正荷電アミノ酸、例えばリジンもしくはアルギニン、または交互パターンの極性および非極性アミノ酸のいずれかを含有する。当技術分野において一般に使用されるCPPとしては、Tat(Frankel et al., (1988) Cell. 55:1189-1193、Vives et al., (1997) J. Biol. Chem. 272:16010-16017)、ペネトラチン(Derossi et al., (1994) J. Biol. Chem. 269:10444-10450)、ポリアルギニンペプチド配列(Wender et al., (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:13003-13008、Futaki et al., (2001) J. Biol. Chem. 276:5836-5840)、およびトランスポータン(Pooga et al., (1998) Nat. Biotechnol. 16:857-861)が挙げられる。
【0045】
CPPは、共有または非共有結合手段によってそれらのカーゴと結合させることができる。CPPおよびそのカーゴを共有結合させる方法は当技術分野においては公知であり、例えば、化学的架橋(Stetsenko et al., (2000) J. Org. Chem. 65:4900-4909、Gait et al. (2003) Cell. Mol. Life. Sci. 60:844-853)または融合タンパク質のクローニング(Nagahara et al., (1998) Nat. Med. 4:1449-1453)である。カーゴと、極性および非極性ドメインを含む短鎖両親媒性CPPとの間の非共有結合のカップリングは、静電および疎水性相互作用を介して確立される。
【0046】
CPPは、当技術分野において、治療上の可能性のある生体分子を細胞に送達するために利用されてきた。例としては、免疫抑制のためのポリアルギニンに結合されたシクロスポリン(Rothbard et al., (2000) Nature Medicine 6(11):1253-1257)、腫瘍形成を阻害するためのMPGと呼ばれるCPPに結合されたサイクリンB1に対するsiRNA(Crombez et al., (2007) Biochem Soc. Trans. 35:44-46)、がん細胞増殖を低減させるためのCPPに結合された腫瘍抑制因子p53ペプチド(Takenobu et al., (2002) Mol. Cancer Ther. 1(12):1043-1049、Snyder et al., (2004) PLoS Biol. 2:E36)、および喘息を治療するためのTatに融合されたRasまたはホスホイノシトール3キナーゼ(PI3K)のドミナントネガティブ型(Myou et al., (2003) J. Immunol. 171:4399-4405)が挙げられる。
【0047】
CPPは、当技術分野において、画像化およびバイオセンシングに適用するため造影剤の細胞への輸送に利用されてきた。例えば、Tatに付着されている緑色蛍光タンパク質(GFP)は、がん細胞の標識に使用されてきた(Shokolenko et al., (2005) DNA Repair 4(4):511-518)。量子ドットにコンジュゲートされているTatは、ラット脳の可視化において血液脳関門をうまく通過させるために使用されてきた(Santra et al., (2005) Chem. Commun. 3144-3146)。またCPPは、細胞画像化において磁気共鳴画像化技術と組み合わせることができる(Liu et al., (2006) Biochem. and Biophys. Res. Comm. 347(1):133-140)。また、Ramsey and Flynn, Pharmacol Ther. 2015 Jul 22. pii: S0163-7258 (15) 00141-2も参照されたい。
【0048】
その代わりに、またはそれに加えて、変異タンパク質は、核局在化配列、例えば、SV40ラージT抗原NLS(PKKKRRV(配列番号5))およびヌクレオプラスミンNLS(KRPAATKKAGQAKKKK(配列番号6))を含むことができる。他のNLSは、当技術分野において公知である。例えば、Cokol et al., EMBO Rep. 2000 Nov 15; 1(5): 411-415;Freitas and Cunha, Curr Genomics. 2009 Dec; 10(8): 550-557を参照されたい。
【0049】
いくつかの実施形態において、変異体は、リガンドに対して高い親和性を有する部分、例えば、GST、FLAG、またはヘキサヒスチジン配列を含む。そのような親和性タグは、組換え変異タンパク質の精製を促進することができる。
【0050】
変異タンパク質を細胞に送達する方法については、タンパク質は、当技術分野において公知の任意の方法を使用して、例えば、変異タンパク質をコードする核酸からのインビトロ翻訳、または適切な宿主細胞における発現により産生することができる。タンパク質産生については、当技術分野において多数の方法が公知である。例えば、タンパク質は、酵母、大腸菌(E.coli)、昆虫細胞系、植物、トランスジェニック動物、または培養哺乳動物細胞中で産生され、精製することができる。例えば、Palomares et al., ”Production of Recombinant Proteins: Challenges and Solutions,” Methods Mol Biol. 2004;267:15-52を参照されたい。さらに、変異タンパク質は、細胞中への導入を容易にする成分、例えば、脂質ナノ粒子に、任意選択でタンパク質が細胞内に存在したら切断されるリンカーと共に結合させることができる。例えば、LaFountaine et al., Int J Pharm. 2015 Aug 13; 494(1):180-194を参照されたい。
【0051】
発現系
本明細書に記載のCpf1融合タンパク質を使用するため、それらをコードする核酸からそれらを発現させることが望ましい場合がある。これは、様々な方法で実施することができる。例えば、Cpf1融合タンパク質をコードする核酸を、複製および/または発現用の原核細胞または真核細胞へ形質転換するための中間ベクターにクローニングすることができる。中間ベクターは、典型的には、Cpf1融合タンパク質を産生するCpf1融合タンパク質をコードする核酸を貯蔵または操作するための原核生物ベクター、例えば、プラスミド、もしくはシャトルベクター、または昆虫ベクターである。またCpf1融合タンパク質をコードする核酸は、植物細胞、動物細胞、好ましくは哺乳動物細胞またはヒト細胞、真菌細胞、細菌細胞、または原虫細胞に投与するための発現ベクターにクローニングすることもできる。
【0052】
発現を得るため、Cpf1融合タンパク質をコードする配列は、典型的には、転写を指示するプロモーターを含有する発現ベクターにサブクローニングされる。適切な細菌および真核生物のプロモーターは、当技術分野において周知であり、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual (3d ed. 2001);Kriegler, Gene Transfer and Expression: A Laboratory Manual (1990);およびCurrent Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al., eds., 2010)に開示されている。遺伝子操作したタンパク質を発現させるための細菌発現系は、例えば、大腸菌(E.coli)、バチルス属種(Bacillus sp.)、およびサルモネラ(Salmonella)において利用可能である(Palva et al., 1983, Gene 22:229-235)。そのような発現系用のキットは市販されている。哺乳動物細胞、酵母、および昆虫細胞のための真核生物発現系も当技術分野において周知であって、それらも市販されている。
【0053】
核酸の発現の指示に使用されるプロモーターは、特定の適用に依存する。例えば、強力な構成的プロモーターは、典型的には、融合タンパク質の発現および精製に使用される。対照的に、Cpf1融合タンパク質が遺伝子制御のためにインビボ投与される場合、Cpf1融合タンパク質の特定の使用に応じて、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターのいずれかを使用することができる。さらに、Cpf1融合タンパク質の投与に対する好ましいプロモーターは、弱いプロモーター、例えば、HSV TKまたは類似の活性を有するプロモーターであり得る。またプロモーターは、トランス活性化に応答性のエレメント、例えば、低酸素応答エレメント、Gal4応答エレメント、lacリプレッサー応答エレメント、ならびに小分子制御系、例えばテトラサイクリン制御系およびRU-486系を含み得る(例えば、Gossen & Bujard, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:5547;Oligino et al., 1998, Gene Ther., 5:491-496;Wang et al., 1997, Gene Ther., 4:432-441;Neering et al., 1996, Blood, 88:1147-55;およびRendahl et al., 1998, Nat. Biotechnol., 16:757-761を参照されたい)。
【0054】
プロモーターに加えて、発現ベクターは、典型的には、原核生物または真核生物のいずれかの宿主細胞における核酸の発現に必要とされるすべての追加のエレメントを含有する転写単位または発現カセットを含む。したがって、典型的な発現カセットは、例えば、Cpf1融合タンパク質をコードする核酸配列に作動可能に結合されたプロモーター、および、例えば、転写産物の効率的なポリアデニル化、転写終止、リボソーム結合部位、または翻訳終止に必要とされる任意のシグナルを含有する。カセットの追加エレメントとしては、例えば、エンハンサー、および異種スプライシングイントロンシグナルを挙げることができる。
【0055】
遺伝子情報の細胞への輸送に使用される特定の発現ベクターは、Cpf1融合タンパク質の目的とする使用、例えば、植物、動物、細菌、真菌、原生動物などにおける発現に関して選択される。標準的な細菌発現ベクターとしては、プラスミド、例えばpBR322ベースのプラスミド、pSKF、pET23D、ならびに市販のタグ融合発現系、例えばGSTおよびLacZが挙げられる。
【0056】
真核生物ウイルス由来の制御エレメントを含有する発現ベクターは、多くの場合、真核細胞発現ベクター、例えばSV40ベクター、パピローマウイルスベクター、およびエプスタイン・バーウイルス由来のベクターで使用される。他の例示的な真核生物ベクターとしては、pMSG、pAV009/A+、pMTO10/A+、pMAMneo-5、バキュロウイルスpDSVE、およびSV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター、メタロチオネインプロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ポリヘドリンプロモーター、または真核細胞における発現に有効であることが示された他のプロモーターの指示下でタンパク質を発現させることができる他の任意のベクターが挙げられる。
【0057】
Cpf1融合タンパク質を発現させるためのベクターは、ガイドRNAの発現を駆動するRNA PolIIIプロモーター、例えば、H1、U6または7SKプロモーターを含み得る。これらのヒトプロモーターは、プラスミドのトランスフェクション後に哺乳動物細胞においてCpf1融合タンパク質を発現させることができる。
【0058】
いくつかの実施形態において、例えば以下のような、複数のCpf1 gRNAをコードする単一核酸が使用される。
【0059】
【化3】
【0060】
hU6プロモーターは上記において太字で示されている。
【0061】
Lb crRNAの直列反復配列は、AATTTCTACTAAGTGTAGAT(配列番号38、上記において斜体で示されている)である。Cpf1を標的遺伝子に方向付ける17~20nt(好ましくは20)のスペーサー配列は、スペーサー配列1、2、または3として示されている。
【0062】
いくつかの発現系は、安定的にトランスフェクトされた細胞系を選択するためのマーカー、例えば、チミジンキナーゼ、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ、およびジヒドロ葉酸レダクターゼを有する。また高収率の発現系は、例えば、バキュロウイルスベクターを昆虫細胞において、ポリヘドリンプロモーターまたは他の強力なバキュロウイルスプロモーターの指示下でgRNAコード配列と共に使用するのに適切である。
【0063】
また、発現ベクターに典型的に含まれるエレメントとしては、大腸菌(E.coli)で機能するレプリコン、組換えプラスミドを保有する細菌を選択することができる抗生物質耐性をコードする遺伝子、および組換え配列を挿入することができるプラスミドの非必須領域中の特有の制限部位が挙げられる。
【0064】
標準的なトランスフェクション方法を使用して、多量のタンパク質を発現する細菌、哺乳動物、酵母または昆虫の細胞系を産生し、次いでそのタンパク質を標準的な技術を使用して精製する(例えば、Colley et al., 1989, J. Biol. Chem., 264:17619-22;Guide to Protein Purification, in Methods in Enzymology, vol. 182 (Deutscher, ed., 1990)を参照されたい)。真核細胞および原核細胞の形質転換は、標準的な技術に従って実施される(例えば、Morrison, 1977, J. Bacteriol. 132:349-351;Clark-Curtiss & Curtiss, Methods in Enzymology 101:347-362 (Wu et al., eds, 1983)を参照されたい)。
【0065】
宿主細胞内に外来ヌクレオチド配列を導入するためのいずれかの公知の手順を使用することができる。これらには、リン酸カルシウムトランスフェクション、ポリブレン、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、ヌクレオフェクション、リポソーム、マイクロインジェクション、ネイキッドDNA、プラスミドベクター、ウイルスベクター、エピソーム型および組込み型の両方、ならびにクローン化ゲノムDNA、cDNA、合成DNAまたは他の外来遺伝子材料を宿主細胞内に導入する他の周知の方法のいずれかの使用が含まれる(例えば、Sambrook et al.、前掲を参照されたい)。使用される特定の遺伝子操作手順には、Cpf1変異体を発現し得る宿主細胞に少なくとも1つの遺伝子をうまく導入され得ることが唯一必要なことである。
【0066】
また本発明は、ベクター、ベクターを含む細胞、ならびに融合タンパク質を発現する細胞およびトランスジェニック動物を含む。
【実施例
【0067】
本発明を以下の実施例においてさらに説明するが、それらは特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲を限定しない。
【0068】
方法
以下の材料および方法を下記の実施例において使用した。
【0069】
プラスミドおよびオリゴヌクレオチド。
この研究において使用されたプラスミドおよび関連配列のリストは、以下の配列の項目で確認される;LbCpf1 crRNAの情報は表1にある。
【0070】
【表2】
【0071】
dLbCpf1-p65およびdLbCpf1-VPRプラスミド(それぞれ、JG1202およびJG1211)は、Gibsonアセンブリを介してBstZ17I部位およびNotI部位を使用し、p65およびVPRをdLbCpf1(MMW1578)にクローニングすることにより構築した。VPRは、George Churchから寄贈されたSP-dCas9-VPRから増幅した(Addgeneプラスミド番号63798)46。dLbCpf1-DmrA(X1)からdLbCpf1-DmrA(×4)(それぞれ、JG674、JG676、JG693およびYET1000)は、Gibsonクローニング法を使用して、異なる数のDmrAドメインを有するAgeIおよびXhoIで消化された構築物(それぞれ、dCas9-DmrA(×4)からdCas9-DmrA(×4)についてBPK1019、BPK1033、BPK1140、BPK1179)にdLbCpf1を挿入することによって作製した。DmrCをコードする前述のプラスミドをNrulで消化し、p65またはVPRをG4S-リンカーを共にGibsonアセンブリを介してDmrC-P65(BPK1169)およびDmrC-VPR(MMW948)に対して加えた。単一crRNAプラスミドを構築するため、crRNAスペーサーのオリゴヌクレオチド対をアニールし、BsmBIで消化したLbCpf1 crRNAバックボーンプラスミド、BPK3082(Addgene番号78742)14に連結した。この研究で使用した多重化crRNAをクローニングするため、3対のオリゴヌクレオチドを、オーバーハングを有するように設計した。各オリゴヌクレオチド対をT4 PNKの存在下でアニーリングし、3つのすべてのオリゴ対を、BsmBIおよびHindIIIで消化したLbCpf1 crRNAバックボーンプラスミドBPK3082に一反応で連結させる。すべてのオリゴ対についての配列を表2A~Bに挙げる。
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
ヒト細胞培養およびトランスフェクション。
HEK293細胞を、10%ウシ胎仔血清ならびに1%ペニシリンおよびストレプトマイシンを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で、37℃、5%CO2で増殖させた。750ngのdLbCpf1-p65/VPRを250ngのLbCpf1 crRNAと共に、3ulのTransIT(登録商標)-LT1トランスフェクション試薬(Minis、カタログ番号MIR2300)を使用して、12ウェルプレート中のHEK293細胞に同時トランスフェクトした。異なる数のDmrAと融合させた400ngのdLbCpf1、200ngのDmrC-p65/VPR、および400ngのLbCpf1 crRNAを、3ulのLT-1を使用して、12ウェルプレート中のHEK293細胞に同時トランスフェクトした。
【0075】
逆転写定量的PCR。
全RNAをトランスフェクション72時間後のトランスフェクトされた細胞からNucleoSpin(登録商標)RNA Plus(Clontech、カタログ番号740984.250)を使用して抽出し、250ngの精製RNAを、High-Capacity RNA-cDNAキット(ThermoFisher、カタログ番号4387406)を使用するcDNA合成に使用した。cDNAを1:20に希釈し、3ulのcDNAを定量的PCR(qPCR)に使用した。qPCR反応の試料は、cDNA、SYBR(ThermoFisher、カタログ番号4385612)、および各標的転写産物を検出するプライマーを使用して調製した。プライマー配列は表3に示す。qPCRは、Roche LightCycler480を使用して実施した。Ct値は超低発現転写産物について変動するので、Ct値が35を超える場合、本発明者らはそれらを35と見なした。LbCpf1 crRNAバックボーンプラスミドのBPK3082でトランスフェクトした試料を陰性対照として使用し、陰性対照に対する活性化倍数レベルをHPRT1の発現に対して正規化した。
【0076】
【表5】
【0077】
[実施例1]
個々のcrRNAをdLbCpf1ベースの活性化因子と共に使用する標的化ヒト内因性遺伝子制御
【0078】
最初の実験において、本発明者らは、触媒的に不活性なCpf1ヌクレアーゼの転写活性化ドメインへのダイレクト融合体(図1A)が内因性ヒト遺伝子プロモーターを活性化することができるか否かについて試験した。本発明者らは、各プロモーターに対し3つのcrRNAを設計することによって、ヒトHEK293細胞において発現しない3つの異なる内因性遺伝子(HBB、AR、およびNPY1R)のプロモーターを標的とした(表2A~Bを参照されたい)。本発明者らは、ラクノスピラ科細菌(Lachnospiraceae bacterium)ND2006由来のCpf1の触媒的に不活性なヌクレアーゼ-デッドバージョン(dLbCpf1)を使用した。その理由は、ヒト細胞において活性であることが報告されている他のCpf1ヌクレアーゼ(アシドアミノコックス属種(Acidaminococcus sp.)BV3L6由来のAsCpf1)14、36、44と比較して、これがより高いヌクレアーゼ活性を有することが本発明者ら他により示されたからである。9つの別個のcrRNAを用いて試験した単一ヒトNF-KB p65活性化ドメインへのdLbCpf1融合は、3つのヒト遺伝子標的プロモーターからの転写を増加させなかいか、わずかに増加させただけであり(図1B)、dSpCas9への単一活性化ドメインの融合に関する以前に公表された結果と一致している46。対照的に、合成多量体化VPR活性化因子(ウイルス系のVP16活性化因子の4つのコピー、ヒトNF-KB p65活性化ドメイン、およびエプスタイン・バーウイルスRトランス活性化因子Rtaから構成される)へのdLbCpf1融合は、3つのそれぞれの標的遺伝子に対して少なくとも1つのcrRNAで転写を活性化することができる(図1B)。この結果は、標的遺伝子プロモーター活性の効率的なアップレギュレーションを達成するために複数の転写活性化ドメインを動員する必要性を実証した、dSpCas9活性化因子を用いた以前の実験と類似している46、47
【0079】
また、本発明者らは、細胞表面タンパク質をコードする2つの追加の内因性遺伝子CD5およびCD22のTSSの1kb上流または500bp下流内に配置されたより大きな一連の32のcrRNAを試験した。試験した32のcrRNAの大部分は、TSSの約600bp上流と約400bp下流の間に配置された場合、標的遺伝子プロモーターを有意に活性化することができ(図1C)、dSpCas9活性化因子を使用して得られた結果と一致する。dLbCpf1ベースの活性化因子で観察された活性化のレベルは、天然の生物系で観察され得るレベルに匹敵し、また類似のdCas9ベースの活性化因子に関して以前に報告されているレベルと同等である
【0080】
次に、本発明者らは、化学的に誘導可能な2部から構成されるdLbCpf1ベースの転写活性化因子を開発しようと試みた。本発明者らは、それぞれDmrAドメインおよびDmrCドメインとして知られるFK506結合タンパク質(FKBP)およびFKBP-ラパマイシン結合タンパク質(FRB)の断片の二量化系を使用することを構想したが、これらドメインはA/Cヘテロ二量化剤48として知られているラパマイシン類似体の存在下でのみ、dLbCpf1活性化因子をA/C薬物の存在下で構築し得る2つの部分に分割するよう相互作用する(図1D)。NF-KB p65またはVPRのいずれかと融合したDmrCドメインと一緒に単一のDmrAドメインに融合したdLbCpf1は、これらのプロモーターでダイレクトdLbCpf1活性化因子融合体と効果的に作用するいずれかの単一crRNAと共にHBB、ARまたはNPYIR遺伝子の転写を活性化することはできなかった(図1E)。本発明者らは、dLbCpf1に連結されたDmrAドメインの数を増やすことによって遺伝子活性化の効率を増加させることができる可能性があると推論し、2、3、または4つのDmrAドメインを保有する融合体を構築した。単一crRNAを伴うDmrC-VPRとのこれらの融合の試験から、3つの内因性遺伝子プロモーターのうち2つでの活性化が示され(HBBおよびNPY1R;図IE)、数多くのDmrAドメインで効果が増大したことが観察され、最大レベルはダイレクトdLbCpf1-VPR融合体で観察されたレベルの半分に達した。この活性化の最大レベルは、A/Cヘテロ二量化薬の存在に依存していたが(図1E)、このことはこの系が薬物誘導性であることを示唆している。
【0081】
驚いたことに、これらのDmrC-p65を伴うdLbCpf1融合体は、単一crRNAを使用して、3つの標的遺伝子プロモーターすべてから転写を強力に活性化することができたが(図1E)、同じcrRNAを用いたダイレクトdLbCpf1-p65融合体では、活性化が欠如することが観察される予期せぬ知見を得た(図1B)。ARプロモーターについては、DmrC-p65は、DmrC-VPRによる効果の欠如と比べて、転写を約25倍まで活性化することができる。HBBおよびNPYIRプロモーターについては、DmrC-p65で観察された活性化レベルは、DmrC-VPRで得られた活性化レベルよりも若干低いが(それぞれ約50%および約30%)、しかし依然として定数項では強力である(約20倍および約10倍の活性化)。DmrC-p65融合体による最大活性化は、これもA/Cヘテロ二量化薬の存在に依存した。総合すると、これらの知見は、p65が、薬物誘導性dLbCpf1活性化因子プラットフォームにおいてVPRに対する重要な選択肢を提供し得ることを示唆している。
【0082】
[実施例2]
dLbCpf1ベースの活性化因子による内因性ヒト遺伝子の多重および相乗的制御
【0083】
Cas9ヌクレアーゼと比較したCpf1ヌクレアーゼの主な利点は、多重適用のための複数のガイドRNAをより容易に発現できる能力である。これまでの研究では、U6プロモーターによって駆動される単一転写産物にコードされている複数のcrRNAがCpf1自体によって個々のcrRNAにプロセッシングされ(図2A)、変異原性ゲノム編集イベントの多重誘導を可能にすることが示されている49。本発明者らは、dLbCpf1ベースの系を使用して、3つの異なる内在性ヒト遺伝子が、既にそれぞれdLbCpf1ベースの活性化因子と共に活性され、単一転写産物上にすべてがコードされていることが示されている3つのcrRNAを用いて活性化できるかどうかを試験した(図2B)。これらの多重crRNA転写産物の試験によれば、dLbCpf1-VPRダイレクト融合体、dLbCpf1-DmrA(×4)およびDmrC-VPRの融合体、dLbCpf1-DmrA(×4)およびDmrC-p65の融合体と一緒にこれらを使用して、ヒトHEK293細胞における複数の内因性遺伝子プロモーターの転写活性化を媒介することができることが明らかになった(図2C)。多重crRNAで観察された活性化の程度は、単一crRNAの発現で観察された活性化よりも若干低かった(約18~55%)。この違いについての可能性のある1つの説明は、dLbCpf1融合タンパク質への結合に対する大きな競合によるものであり、推定で3倍高いレベルのcrRNAが多重転写産物を発現する細胞に存在するためであり得る。それにもかかわらず、これらの結果は、dLbCpf1ベースの活性化因子を用いて複数の遺伝子標的の転写を活性化するために、より大きな多重転写産物にコードされている3つものcrRNAを使用することができることを示唆している。
【0084】
また本発明者らの知見を別のヒト細胞株に拡大するため、本発明者らは、ヒトU20S細胞においてダイレクトVPR活性化因子融合体と薬物制御VPRおよびp65活性化因子も試験し、MST crRNAおよび単一crRNAで同じ遺伝子(HBB、AR、およびNPY1R)を標的とした(図2D)。本発明者らは、HBBおよびNPY1Rが高度にアップレギュレートされること、ならびにDmrC-p65によるHBBの活性化がHEK293よりもさらに大きいことを観察した。本発明者らは、AR遺伝子の活性化は観察しなかったが、それはそのベースライン発現がU20S細胞において既に高く上昇していたからである(ベースの適量的RT-PCR Ct値は約28である)。単独でまたはMSTで発現されたcrRNAの効果の相対的な差異は、本発明者らがHEK293で観察したものと類似していた。
【0085】
また本発明者らは、単一の構築物から発現された複数のcrRNAが同一細胞において実際に活性であるかどうかを判定することを試みた。本発明者らの実験は発現ベクターの一時的なトランスフェクションにより細胞集団で実施されるので、本発明者らが上記で観察した多重遺伝子活性化は、形式的には、トランスフェクト細胞集団内の異なる細胞において異なるcrRNAが活性化されることによる可能性がある。この可能性を排除するため、本発明者らは、同じ遺伝子プロモーター内の部位に対して設計された多重crRNAが単一細胞内の同じ転写産物から発現される場合、これは標的遺伝子プロモーターからの転写で相乗的増加に結びつくものと推論した(図2E)(相乗的活性化は、相加効果または同じプロモーターに対する2つ以上の活性化因子の作用よりも大きいものと定義される)。VPRのdLbCpf1へのダイレクト融合体により、本発明者らは、本発明者らが試験した3つの内因性遺伝子プロモーターのうちの2つについて、単一転写産物において発現された3つのcrRNAを使用して相乗的活性化を観察した(HBBおよびAR;図2F)。第3の遺伝子プロモーター(NPY1R)については、本発明者らは、同じ転写産物から発現された場合、3つのcrRNAによる相乗的な活性化は観察しなかったが、同時に導入された個別のRNAとして発現された場合の対照実験において相乗効果が確認された(図2F)。また本発明者らは、同じ転写産物または個別の転写産物のいずれかから発現された3つのcrRNAを用いた場合、3つの遺伝子のいずれにおいても、p65のdLbCpf1へのダイレクト融合体による相乗的活性化は観察されなかった(図2F)。薬物誘導性のdLbCpf1とVPR活性化因子系では、本発明者らは、NPB1Rプロモーターで個別に発現された転写産物とのみ、HBBおよびARプロモーターで相乗効果を観察した(図2G)。同様の結果パターンは、薬物誘導性のLbCpf1とp65系で観察された(図2G)。重要なことには、HBB遺伝子およびAR遺伝子上のp65活性化ドメインで観察された相乗的活性化レベルもまた、VPR活性化因子で実施された同等の実験よりも高かった(図2G)。総合すると、複数の活性crRNAは、複数の個別の発現ベクターから発現される場合よりも若干活性は低いものの、同じ細胞で単一転写産物から発現され得ると本発明者らは結論付けた。
【0086】
さらに、本発明者らは、A/Cヘテロ二量化剤の添加および中止に対する活性化因子効果の動態を評価した。本発明者らは、HBB遺伝子およびAR遺伝子の最大の活性化が、薬物を添加した約25時間から35時間後に観察されるが(図2H)、活性化された遺伝子発現のベースラインへの復帰は、薬物の中止から約35時間から45時間後に発生することを確認した(図2I)。本発明者らは、薬物誘導性が他のオルソログにも容易に拡大できることを予見し、同じこれらの方策を使用してdSpCas9ベースの活性化因子を制御および調整することに成功した。
【0087】
【表6】
【0088】
1. MMW1578:CAG-ヒトdLbCpf1(D832A)-NLS-3xHA
ヒトコドン最適化dLbCpf1:太字、NLS:斜体、3xHA:小文字
【0089】
【化4-1】
【0090】
【化4-2】
【0091】
2. BPK1169:CAG-DmrC-NLS-FLAG-P65
DmrC:太字、NLS-Flag:斜体、P65:小文字
【0092】
【化5】
【0093】
3. MMW948:CAG-DmrC-NLS-FLAG-VPR
DmrC:太字、NLS-Flag:斜体、VPR:小文字
【0094】
【化6】
【0095】
4. JG1202:CAG-ヒトdLbCpf1(D832A)-NLS-3xHA-P65
ヒトコドン最適化dLbCpf1:太字、NLS:斜体、3xHA:小文字、P65:小文字および太字
【0096】
【化7-1】
【0097】
【化7-2】
【0098】
5. JG1211:CAG-ヒトdLbCpf1(D832A)-NLS-3xHA-VPR
ヒトコドン最適化dLbCpf1:太字、NLS:斜体、3xHA:小文字、VPR:小文字および太字
【0099】
【化8-1】
【0100】
【化8-2】
【0101】
【化8-3】
【0102】
6. JG674:CAG-ヒトdLbCpf1(D832A)-NLS-3xHA-DmrA(×1)
ヒトコドン最適化dLbCpf1:太字、NLS:斜体、3xHA:小文字、DmrA:小文字および太字
【0103】
【化9-1】
【0104】
【化9-2】
【0105】
7. JG676:CAG-ヒトdLbCpf1(D832A)-NLS-3xHA-DmrA(×2)
ヒトコドン最適化dLbCpf1:太字、NLS:斜体、3xHA:小文字、DmrA:小文字および太字
【0106】
【化10-1】
【0107】
【化10-2】
【0108】
8. JG693:CAG-ヒトdLbCpf1(D832A)-NLS-3xHA-DmrA(×3)
ヒトコドン最適化dLbCpf1:太字、NLS:斜体、3xHA:小文字、DmrA:小文字および太字
【0109】
【化11-1】
【0110】
【化11-2】
【0111】
【化11-3】
【0112】
9. YET1000:CAG-ヒトdLbCpf1(D832A)-NLS-3xHA-DmrA(×4)
ヒトコドン最適化dLbCpf1:太字、NLS:斜体、3xHA:小文字、DmrA:小文字および太字
【0113】
【化12-1】
【0114】
【化12-2】
【0115】
【化12-3】
【0116】
10. BPK3082:U6-Lb-crRNA-BsmBIカセット
U6プロモーター:太字、Lb crRNA:斜体、BsmBIサイト:小文字、U6ターミネーター:斜体および太字
【0117】
【化13】
【0118】
11.図2b_配列
hU6プロモーター:太字、Lb crRNA直列反復:斜体、crRNA1_HBBスペーサー配列:小文字、crRNA3_ARスペーサー配列:小文字および太字、crRNA1_NPY1 Rスペーサー配列:小文字、太字および斜体、ターミネーター:太字および斜体
【0119】
【化14】
【0120】
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【0121】
他の実施形態
本発明をその詳細な説明と併せて記載したが、前述の説明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を例示するものであって、限定するものではないことを理解されたい。他の態様、利点、および修正は、以下の特許請求の範囲内にある。

以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載の発明を列挙する。
[発明1]
少なくとも1つの活性化ドメインに融合された触媒的に不活性なラクノスピラ科細菌(Lachnospiraceae bacterium)ND2006タンパク質Cpf1(dLbCpf1)を含む融合タンパク質であって、好ましくは、前記活性化ドメインが、VP16の4つのコピー、ヒトNF-KB p65活性化ドメイン、およびエプスタイン・バーウイルスRトランス活性化因子(Rta)を含む合成VPR活性化因子である、融合タンパク質。
[発明2]
条件付き二量化ドメインに融合された触媒的に不活性なラクノスピラ科細菌(Lachnospiraceae bacterium)ND2006 Cpf1(dLbCpf1)を、任意選択の介在リンカーと共に含む、融合タンパク質。
[発明3]
前記条件付き二量化ドメインが、DmrAまたはDmrCである、発明2に記載の融合タンパク質。
[発明4]
発明2に記載の融合タンパク質、および第2の融合タンパク質を含む組成物であって、前記第2の融合タンパク質は、二量化剤の存在下で、発明2に記載の融合タンパク質において条件付き二量化で二量化する第2の条件付き二量化ドメインに融合された少なくとも1つの活性化ドメインを、前記活性化ドメインおよび/または前記第2の二量化ドメインのそれぞれの間の任意選択の介在リンカーと共に含む、組成物。
[発明5]
(i)発明2に記載の融合タンパク質における前記条件付き二量化がDmrAであり、前記第2の条件付き二量化ドメインがDmrCであるか、または(ii)発明2に記載の融合タンパク質における前記条件付き二量化がDmrCであり、前記第2の条件付き二量化ドメインがDmrAである、発明4に記載の組成物。
[発明6]
前記活性化ドメインが、VP64、Rta、NF-κB p65、またはVPRである、発明4に記載の組成物。
[発明7]
発明1から3に記載の融合タンパク質をコードする核酸。
[発明8]
発明2に記載の融合タンパク質、および第2の融合タンパク質をコードする核酸を含むキットであって、前記第2の融合タンパク質は、二量化剤の存在下で、発明2に記載の融合タンパク質における前記条件付き二量化で二量化する第2の条件付き二量化ドメインに融合された活性化ドメインを、前記活性化ドメインと前記第2の二量化ドメインとの間の任意選択の介在リンカーと共に含む、キット。
[発明9]
(i)発明2に記載の融合タンパク質における条件付き二量化がDmrAであり、前記第2の条件付き二量化ドメインがDmrCであるか、または(ii)発明2に記載の融合タンパク質における条件付き二量化がDmrCであり、前記第2の条件付き二量化ドメインがDmrAである、発明8に記載のキット。
[発明10]
発明1から3に記載の融合タンパク質を発現する細胞。
[発明11]
発明2に記載の融合タンパク質、および第2の融合タンパク質を発現する細胞であって、第2の融合タンパク質は、二量化剤の存在下で、発明2に記載の融合タンパク質における前記条件付き二量化で二量化する第2の条件付き二量化ドメインに融合された活性化ドメインを含む、細胞。
[発明12]
(i)発明2に記載の融合タンパク質における前記条件付き二量化がDmrAであり、前記第2の条件付き二量化ドメインがDmrCであるか、または(ii)発明2に記載の融合タンパク質における前記条件付き二量化がDmrCであり、前記第2の条件付き二量化ドメインがDmrAである、発明11に記載の細胞。
[発明13]
細胞における標的遺伝子の発現を増加させる方法であって、
(i)発明1に記載の融合タンパク質、および前記標的遺伝子の制御領域に前記融合タンパク質を方向付ける少なくとも1つのcrRNA;
(ii)発明2に記載の融合タンパク質、および二量化剤の存在下で、発明2に記載の融合タンパク質において前記条件付き二量化で二量化する第2の条件付き二量化ドメインに融合された活性化ドメインを、前記活性化ドメインと前記第2の二量化ドメインとの間の任意選択の介在リンカーと共に含む第2の融合タンパク質、および前記標的遺伝子の制御領域に前記融合タンパク質を方向付ける少なくとも1つのcrRNA
のうちの1つまたは複数と細胞を接触させる、またはそれらを細胞中で発現させることを含む、方法。
[発明14]
細胞における複数の標的遺伝子の発現を増加させる方法であって、
(i)発明1に記載の融合タンパク質、および前記標的遺伝子の1つの制御領域に前記融合タンパク質をそれぞれ方向付ける複数のcrRNAをコードする少なくとも1つの核酸;
(ii)発明2に記載の融合タンパク質、および二量化剤の存在下で、発明2に記載の融合タンパク質において前記条件付き二量化で二量化する第2の条件付き二量化ドメインに融合された活性化ドメインを、前記活性化ドメインと前記第2の二量化ドメインとの間の任意選択の介在リンカーと共に含む第2の融合タンパク質、および前記標的遺伝子の1つの制御領域に前記融合タンパク質をそれぞれ方向付ける複数のcrRNAをコードする少なくとも1つの核酸
のうちの1つまたは複数と細胞を接触させる、またはそれらを細胞中で発現させることを含む、方法。
[発明15]
前記細胞が哺乳動物細胞である、発明13または14に記載の方法。
[発明16]
前記哺乳動物細胞がヒト細胞である、発明15に記載の方法。
[発明17]
前記制御領域がプロモーター領域である、発明13または14に記載の方法。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図2-5】
図2-6】
図2-7】
図2-8】