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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】サーマルプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/36 20060101AFI20231107BHJP
   B41J 2/365 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
B41J2/36 E
B41J2/365
B41J2/36 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020005276
(22)【出願日】2020-01-16
(65)【公開番号】P2021112831
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 光宏
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-096377(JP,A)
【文献】特開平07-251519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/35 - 2/38
B41J 2/315 - 2/345
B41J 2/42 - 2/425
B41J 2/475 - 2/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発熱素子を有するサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドに設けられ、前記サーマルヘッドの温度を計測する温度センサと、
前記サーマルヘッドの温度及び前記サーマルヘッドの累積発熱時間に基づいて、前記サーマルヘッドにパルス信号を供給するパルス供給時間を決定することにより、前記複数の発熱素子からの発熱量を制御し、印字動作が行われていないとき、一定時間ごとに前記累積発熱時間を減算する制御部と
を具備するサーマルプリンタ。
【請求項2】
前記制御部は、前記累積発熱時間が所定の閾値以上のとき、前記サーマルヘッドの温度に基づいて決定される時間よりも短い時間に前記パルス供給時間を調整する、請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【請求項3】
前記サーマルヘッドの温度と、前記パルス供給時間との関係を示すテーブルを記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記累積発熱時間が所定の閾値以上のとき、前記テーブルの参照先を前記サーマルヘッドの温度より高温側に調整する、
請求項2に記載のサーマルプリンタ。
【請求項4】
前記制御部は、前記複数の発熱素子のうちの印字に用いた発熱素子の割合を前記パルス供給時間に乗じた時間を、前記累積発熱時間に加算する、請求項1から請求項のうちのいずれか1項に記載のサーマルプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、サーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サーマルヘッドを使用して感熱紙に印字するサーマルプリンタがある。サーマルプリンタにおいて連続印字を行う際には、前ラインまでの印字によりサーマルヘッド自体の温度が上昇する。このため、所望の発熱温度よりもサーマルヘッドの温度が高くなり、感熱紙の意図する領域外で発色する尾引きなどの画質劣化現象が起きる場合があった。これに対し、サーマルヘッドにサーミスタなどの温度センサを搭載し、測定されたサーマルヘッドの温度に基づいてサーマルヘッドの発熱時間を決定する技術が知られている。
【0003】
しかしながら、発熱時点でのサーマルヘッドの温度が、測定時点の温度から変化している場合がある。この場合、測定時点でのサーマルヘッドの温度に基づいて決定された発熱時間を使用すると、サーマルヘッドが過度に発熱し、印字の品質が低下するおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、サーマルヘッドの発熱時間を適切に決定することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のサーマルプリンタは、サーマルヘッドと、温度センサと、制御部とを備える。前記サーマルヘッドは、複数の発熱素子を有する。前記温度センサは、前記サーマルヘッドに設けられ、前記サーマルヘッドの温度を計測する。前記制御部は、前記サーマルヘッドの温度及び前記サーマルヘッドの累積発熱時間に基づいて、前記サーマルヘッドにパルス信号を供給するパルス供給時間を決定することにより、前記複数の発熱素子からの発熱量を制御する。前記制御部は、印字動作が行われていないとき、一定時間ごとに前記累積発熱時間を減算する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態に係るサーマルプリンタを搭載するPOS(point of sale)端末の外観の一例を示す図である。
図2図2は、実施形態に係るサーマルプリンタの内部構成の一例を示す図である。
図3図3は、実施形態に係るサーマルヘッドの構成の一例を示す模式図である。
図4図4は、実施形態に係るサーマルプリンタの構成の一例を示すブロック図である。
図5図5は、実施形態に係るサーマルプリンタの機能構成の一例を示すブロック図である。
図6図6は、実施形態に係るサーマルプリンタで実行される処理の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、実施形態に係る発熱時間テーブルについて説明するための図である。
図8図8は、実施形態に係る発熱時間調整の一例について説明するための図である。
図9図9は、実施形態に係る発熱時間調整の別の一例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、実施形態に係るサーマルプリンタを詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により、この発明が限定されるものではない。
【0008】
図1は、実施形態に係るサーマルプリンタ1を搭載するPOS(point of sale)端末3の外観の一例を示す図である。POS端末3は、店舗などに設置され、店員などのオペレータにより操作される。POS端末3は、ネットワークを介して店舗サーバと通信可能に構成される。
【0009】
実施形態で説明するサーマルプリンタ1は、図1に示すように、POS端末3に搭載され、レシートを発行するためのレシートプリンタであるとする。サーマルプリンタ1は、上部に蓋21を有する。
【0010】
図2は、実施形態に係るサーマルプリンタ1の内部構成の一例を示す図である。サーマルプリンタ1は、図2に示すように、サーマルヘッド15、搬送ローラ18a、ピンチローラ18b、プラテンローラ18c、カット部19及び排出口20を有する。
【0011】
サーマルプリンタ1は、内部にロール紙PR(サーマルロール紙)が着脱可能に構成される。ロール紙PRは、連続紙Sが巻き回されたロール状の印字媒体である。連続紙Sは、帯状の用紙である。連続紙Sは、所定温度以上に発熱したサーマルヘッド15の発熱素子15aからの熱により、透明色から可視色(例えば黒色)に発色する。すなわち、連続紙Sは、サーマルヘッド15が所定の発色温度以上となったことを条件に自ら発色する。
【0012】
搬送ローラ18aは、フレームなどに回転可能に取り付けられ、モータ17(図4参照)の動力により回転する。ピンチローラ18bは、搬送ローラ18aに対向した位置に設けられる。ピンチローラ18bは、板バネなどに付勢されて搬送ローラ18aに押し当てられる。搬送ローラ18a及びピンチローラ18bは、ロール紙PRから引き出された連続紙Sを挟持して、矢印Pの方向に搬送する。
【0013】
サーマルヘッド15及びプラテンローラ18cは、搬送された連続紙Sを挟持する。サーマルヘッド15は、プラテンローラ18cとの間に挟持された連続紙Sに取引明細等の情報を印刷するサーマルプリンタヘッドである。プラテンローラ18cは、フレームなどに回転可能に取り付けられ、モータ17(図4参照)の動力により回転する。プラテンローラ18cが回転すると、引き出された連続紙Sは、排出口20の方向に搬送される。
【0014】
図3は、実施形態に係るサーマルヘッド15の構成の一例を示す模式図である。図3に示すように、サーマルヘッド15には、1ライン分の画素に対応する複数の発熱素子15aが直線状に配列されている。サーマルヘッド15は、各発熱素子15aの発熱により、1ラスター分の印字が行われるように構成されている。ここで、ラインとは、印字データにおいて副走査位置が同一の画素群である。また、ラスターとは、当該ラインに対応する印字である。
【0015】
図3に示す例では、模式的に、通電されて発熱する発熱素子15aが黒Dotとして示され、発熱しない発熱素子15aが白Dotとして示されている。なお、図3に例示する印字データは、8つの発熱素子15aの発熱/非発熱を16進数で示している。つまり、「31h」は、「00110001」を示し、「70h」は、「01110000」を示す。「1」及び「0」は、それぞれ、黒Dot及び白Dotに対応する。このように、複数の発熱素子15aのうちの各ラインの印字データに応じた発熱素子15aが発熱する。
【0016】
具体的には、個々の発熱素子15aには、それぞれパルス(ストローブパルス)信号が供給される。サーマルヘッド15に配列された各発熱素子15aのうち、印字に用いる発熱素子15a(黒Dot)に接続されたトランジスタのゲート端子に供給されるパルス信号は、発熱を開始するタイミングでLowからHigh又はHighからLowに切り替わる。各発熱素子15aには、パルスの立ち上がり又は立ち下がりに応じて電流が流れ始める。各発熱素子15aは、電流が流れると発熱する。
【0017】
ここで、図2を再び参照して説明を続ける。カット部19は、連続紙Sから印刷完了部分(例えば、レシートとなる部分)を切り離すためのカッターである。図2には、カット部19の一例として、スライド式カッターが示されているが、ローラ式カッターなどの他の構成も適宜利用可能である。印刷されたレシート(連続紙S)は、排出口20から排出される。図1に示す例では、排出口20は、蓋21に形成されている。
【0018】
なお、サーマルプリンタ1は、例えばPOS端末3に内蔵されるが、POS端末3とは異なる筐体を有して独立に形成されても構わない。
【0019】
なお、実施形態に係る技術は、レシートプリンタに限らず、例えばラベルに印字するラベルプリンタを含む、感熱記録方式又は熱転写記録方式の各種の印刷装置に適用可能である。
【0020】
なお、図1及び図2に示した外観及び内部構成は、あくまで一例であり、様々な変形が可能である。
【0021】
図4は、実施形態に係るサーマルプリンタ1の構成の一例を示すブロック図である。図4に示すように、サーマルプリンタ1は、プロセッサ11、RAM(Random Access Memory)12a、ROM(Read Only Memory)12b、通信I/F13、入出力I/F14、温度センサ16及びモータ17をさらに有する。プロセッサ11、RAM12a、ROM12b、通信I/F13及び入出力I/F14は、バスライン等を介して互いに通信可能に接続される。
【0022】
プロセッサ11は、サーマルプリンタ1の全体の動作を制御する。プロセッサ11は、ROM12bに記憶された制御プログラム121をRAM12aにロードし、ロードされた制御プログラム121を実行することにより、サーマルプリンタ1の動作を制御する。プロセッサ11としては、例えばCPU(Central Processing Unit)が利用されるが、GPU(Graphics Processing Unit)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の他のプロセッサが利用されても構わない。
【0023】
RAM12aは、ワーキングメモリとして利用され、プロセッサ11が演算処理を実行する際にデータが格納される揮発性メモリである。ROM12bは、プロセッサ11が実行する制御プログラム121などの各プログラムやパラメータなどのデータを記憶する不揮発性メモリである。また、ROM12bは、発熱時間テーブル122を記憶する。
【0024】
発熱時間テーブル122は、サーマルヘッド15からの発熱量を決定するためのテーブルである。発熱時間テーブル122は、サーマルヘッド15の温度と、発熱時間との関係を示す。発熱時間テーブル122において、サーマルヘッド15の温度が高いほど、発熱時間は小さい。ここで、サーマルヘッド15の発熱時間とは、サーマルヘッド15へのパルス(ストローブパルス)信号の供給時間である。したがって、発熱時間テーブル122は、サーマルヘッド15の温度と、サーマルヘッド15にパルス信号を供給するパルス供給時間との関係を示す。また、発熱時間テーブル122において、サーマルヘッド15の温度が高いほど、パルス供給時間は小さい。
【0025】
なお、サーマルプリンタ1は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリなどの他の不揮発性メモリを有していても構わない。この場合、プロセッサ11が実行する制御プログラム121などの各プログラムやパラメータなどのデータ、発熱時間テーブル122は、他の不揮発性メモリに記憶されていてもよい。
【0026】
通信I/F13は、POS端末3との間で通信を行う通信回路である。サーマルプリンタ1及びPOS端末3は、通信I/F13を介して有線で接続されていてもよいし、無線で接続されてもよい。つまり、通信I/F13は、有線通信用の通信回路であってもよいし、無線通信用の通信回路であってもよい。
【0027】
入出力I/F14は、サーマルヘッド15、温度センサ16及びモータ17にそれぞれ接続されるインタフェース回路である。入出力I/F14は、サーマルヘッド15の各発熱素子15aとそれぞれ接続され、各発熱素子15aにパルス信号を供給することにより通電し、各発熱素子15a(すなわちサーマルヘッド15)を発熱させるヘッドドライバを含む。入出力I/F14は、モータ17に接続され、モータ17の回転を制御するモータドライバを含む。
【0028】
温度センサ16は、サーマルヘッド15に配置され、サーマルヘッド15の温度を計測するセンサである。温度センサ16としては、例えばサーミスタが利用されるが、熱電対や測温抵抗体などの他のセンサが利用されても構わない。また、温度センサ16として放射温度計が利用されても構わない。この場合、温度センサ16は、サーマルヘッド15に配置されていなくてもよい。
【0029】
モータ17は、搬送ローラ18a及びプラテンローラ18cを駆動する。モータ17としては、例えばステッピングモータが利用される。なお、モータ17は、搬送ローラ18aを駆動する搬送モータと、プラテンローラ18cを駆動するプラテンモータとをそれぞれ有していても構わない。
【0030】
図5は、実施形態に係るサーマルプリンタ1の機能構成の一例を示すブロック図である。プロセッサ11は、RAM12aにロードされた制御プログラム121を実行することにより、印字制御部101、温度測定部102及び発熱制御部103としての機能を実現する。
【0031】
印字制御部101は、POS端末3から通信I/F13に印字データが入力されたかを判断する。印字制御部101は、POS端末3からの印字データをRAM12aに記憶する。印字制御部101は、印字データと、発熱制御部103により決定されたパルス供給時間とに基づいて、各ラスターの印字のための各ラインのパルス信号を生成する。また、印字制御部101は、生成された各ラインのパルス信号をサーマルヘッド15に供給する。
【0032】
温度測定部102は、温度センサ16の計測値に基づいて、サーマルヘッド15の温度を測定する。一例として、温度測定部102は、POS端末3からの印字データが入力されたことを契機として、サーマルヘッド15の温度測定を開始する。温度測定部102は、測定されたサーマルヘッド15の温度(以下、温度Tmと記載する。)をRAM12aに記憶する。
【0033】
発熱制御部103は、温度測定部102により測定された温度Tmに基づいて、サーマルヘッド15にパルス信号を供給するパルス供給時間を決定する。具体的には、発熱制御部103は、発熱時間テーブル122を参照し、温度Tmに対応するパルス供給時間を読み出すことにより、パルス供給時間を決定する。
【0034】
また、発熱制御部103は、サーマルヘッド15の発熱時間(パルス供給時間)を累積し、累積発熱時間を算出する。発熱制御部103は、累積発熱時間が所定の累積発熱時間以上のとき、発熱時間テーブル122の参照先を調整する。具体的には、発熱制御部103は、発熱時間テーブル122の温度Tmより高い温度に対応するパルス供給時間を読み出すことにより、温度Tmに対応する時間より短い時間のパルス供給時間を決定する。このように、発熱制御部103は、サーマルヘッド15の温度(温度Tm)及び累積発熱時間に基づいて、サーマルヘッド15にパルス信号を供給するパルス供給時間を決定する。
【0035】
また、発熱制御部103は、印字動作が行われていないとき、一定時間ごとに累積発熱時間を減算する。一定時間の時間幅や減算する累積発熱時間の大きさは、例えば予め設定されてROM12bなどに記憶されているとする。なお、一定時間の時間幅や減算する累積発熱時間の大きさは、連続紙Sの種類や温度Tm、サーマルヘッド15の周囲温度などに応じて変更されても構わない。
【0036】
以下、図面を参照して、実施形態に係るサーマルプリンタ1で実行される処理について説明する。
【0037】
図6は、実施形態に係るサーマルプリンタ1で実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【0038】
印字制御部101は、POS端末3から通信I/F13に印字データが入力されたかを判断する(S101)。印字制御部101は、POS端末3から印字データが入力されていないとき(S101:No)、待機する。
【0039】
一方で、POS端末3から印字データが入力されたとき(S101:Yes)、印字制御部101は、POS端末3からの印字データをRAM12aに記憶する。また、温度測定部102は、入出力I/F14を介して温度センサ16の出力を取得し、取得された温度センサ16の出力に基づいて、サーマルヘッド15の温度Tmを測定する(S102)。また、温度測定部102は、温度TmをRAM12aに記憶する。
【0040】
発熱制御部103は、サーマルヘッド15の累積発熱時間が所定の閾値以上であるか否かを判定する(S103)。所定の閾値は、例えば予め設定されてROM12b等に記憶されているとする。
【0041】
サーマルヘッド15の累積発熱時間が所定の発熱累積時間未満であるとき(S103:No)、発熱制御部103は、温度Tmに基づいて、サーマルヘッド15の発熱時間を決定する(S105)。図7は、実施形態に係る発熱時間テーブル122について説明するための図である。発熱制御部103は、温度Tmに基づいて、発熱時間テーブル122を参照し、サーマルヘッド15へのパルス供給時間を決定する。図7に示す例では、発熱制御部103は、発熱時間テーブル122を参照し、温度Tmが25℃であることに応じて、パルス供給時間(発熱時間)を250μsに決定する。なお、発熱時間テーブル122の各値は、一例であり、図7に限定されない。
【0042】
一方で、サーマルヘッド15の累積発熱時間が所定の累積発熱時間以上であるとき(S103:Yes)、発熱制御部103は、パルス供給時間(発熱時間)を調整する(S104)。図8は、実施形態に係る発熱時間調整の一例について説明するための図である。図8に示す例では、累積発熱時間が100msである。ここでは、所定の累積発熱時間が100ms未満である場合を例として説明するが、これに限定されない。また、発熱時間テーブル122の各値は、一例であり、図8に限定されない。図8に示すように、発熱制御部103は、発熱時間テーブル122の参照先を温度Tmより高温側に調整する。つまり、発熱制御部103は、温度Tm及び累積発熱時間に基づいて、発熱時間テーブル122を参照し、サーマルヘッド15へのパルス供給時間を決定する(S105)。図8に示す例では、発熱制御部103は、温度Tmが25℃であることに応じて、25℃より高温側の発熱時間テーブル122を参照し、パルス供給時間(発熱時間)を200μsに決定する。
【0043】
印字制御部101は、該当ラインの印字を実行する(S106)。具体的には、印字制御部101は、印字データと、発熱制御部103により決定されたパルス供給時間とに基づいてパルス(ストローブパルス)信号を生成し、生成されたパルス信号をサーマルヘッド15に供給する。
【0044】
発熱制御部103は、該当ラインの印字に関するパルス供給時間を累積発熱時間に加算する(S107)。
【0045】
その後、印字制御部101は、印字終了か否かを判定する(S108)。図6の流れは、S101で入力された印字データに含まれるすべてのラインに関して印字が終了していないとき(S108:No)、S102へ戻る。一方で、図6の流れは、S101で取得された印字データに含まれるすべてのラインに関して印字が終了したとき(S108:Yes)、終了する。
【0046】
このように、本実施形態に係るサーマルプリンタ1は、サーマルヘッド15の温度(温度Tm)及びサーマルヘッド15の累積発熱時間に基づいて、サーマルヘッド15にパルス信号を供給するパルス供給時間を決定することにより、複数の発熱素子15aからの発熱量を制御する。具体的には、発熱制御部103は、サーマルヘッド15の累積発熱時間が所定の発熱累積時間以上であるとき、測定されたサーマルヘッド15の温度(温度Tm)に基づいて決定される時間よりも短い時間にパルス供給時間を調整する。この構成によれば、サーマルヘッド15の発熱時間を適切に決定することができる。つまり、サーマルヘッド15が冷却しきらないうちに次のラインの印字が開始される場合には、次のラインの印字に係る発熱時間が短く設定される。これにより、サーマルヘッド15の蓄熱に伴う過度の発熱を抑制し、尾引きの発生などの印字品質の低下を抑制することができる。
【0047】
なお、上述したように、サーマルヘッド15においては、すべての発熱素子15aのうちの印字に用いる発熱素子15a(黒Dot)だけが発熱する。つまり、サーマルヘッド15への蓄熱は、すべての発熱素子15aのうちの印字に用いた発熱素子15a(黒Dot)の割合(以下、印字ドット率という。)に依存する。このことから、累積発熱時間は、印字ドット率に応じて算出されてもよい。
【0048】
図9は、実施形態に係る発熱時間調整の別の一例について説明するための図である。上述の実施形態では、パルス供給時間が100μsであったとき、累積発熱時間に100μsが加算される(S107)場合を例示した。一方で、図9に示す例では、発熱制御部103は、パルス供給時間に印字ドット率を乗じた時間(発熱加算時間)を累積発熱時間に加算する(S107)。一例として、発熱制御部103は、パルス供給時間が100μsであり、印字ドット率が50%であるとき、発熱加算時間として50μsを累積発熱時間に加算する。この構成によれば、サーマルヘッド15からの実際の発熱密度に応じた累積発熱時間を算出することができる。つまり、サーマルヘッド15の発熱時間をより適切に決定することができる。
【0049】
なお、発熱時間テーブル122の参照先の調整量は、一定の調整量であってもよいし、累積発熱時間に応じた調整量であってもよい。累積発熱時間に応じた調整量は、累積発熱時間が大きいほど、大きな調整量となる。一例として、発熱制御部103は、累積発熱時間が100msのとき、図8に示すように、温度Tmより5℃高い温度を参照し、累積発熱時間が200msのとき、温度Tmより10℃高い温度を参照する。もちろん、累積発熱時間と参照先の調整量とは、線形の関係に限らず、非線形の関係であってもよい。
【0050】
なお、発熱時間テーブル122の参照先の調整量は、連続紙Sの種類や環境温度(サーマルヘッド15の周囲温度)に応じた調整量であっても構わない。
【0051】
なお、発熱時間テーブル122に代えて、温度Tmと、パルス供給時間との関係を示す関係式が利用されても構わない。当該関係式は、発熱時間テーブル122と同様に、例えば予め設定されてROM12b等に記憶されていればよい。
【0052】
なお、発熱時間テーブル122は、累積発熱時間の項目をさらに有していてもよい。つまり、発熱時間テーブル122は、測定されたサーマルヘッド15の温度(温度Tm)と、累積発熱時間と、パルス供給時間(発熱時間)との関係を示すテーブルであってもよい。同様に、温度Tmと、累積発熱時間と、パルス供給時間(発熱時間)との関係を示す関係式が利用されても構わない。
【0053】
なお、S103及びS104の流れは、S105の後に行われても構わない。つまり、温度Tmに基づいてパルス供給時間が決定(S105)された後、累積発熱時間が所定の閾値以上であるとき(S103:Yes)に決定されたパルス供給時間が調整(S104)されても構わない。
【0054】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、サーマルヘッド15の発熱時間を適切に決定することができる。
【0055】
なお、本実施形態のサーマルプリンタ1で実行される制御プログラム121は、ROM13等に予め組み込まれて提供される。
【0056】
本実施形態のサーマルプリンタ1で実行される制御プログラム121は、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0057】
さらに、本実施形態のサーマルプリンタ1で実行される制御プログラム121を、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、本実施形態のサーマルプリンタ1で実行される制御プログラム121をインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
【0058】
本実施形態のサーマルプリンタ1で実行される制御プログラム121は、上述した各部(印字制御部101、温度測定部102及び発熱制御部103)を含むモジュール構成となっている。CPUなどのプロセッサ11は、上記記憶媒体から制御プログラム121を読み出して、上記各部を主記憶装置上にロードする。これにより、印字制御部101、温度測定部102及び発熱制御部103が主記憶装置上に生成される。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
1 サーマルプリンタ
3 POS端末
11 プロセッサ
12a RAM
12b ROM
13 通信I/F
14 入出力I/F
15 サーマルヘッド
15a 発熱素子
16 温度センサ
17 モータ
18a 搬送ローラ
18b ピンチローラ
18c プラテンローラ
19 カット部
20 排出口
101 印字制御部(制御部)
102 温度測定部(制御部)
103 発熱制御部(制御部)
121 制御プログラム
122 発熱時間テーブル
PR ロール紙
S 連続紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0061】
【文献】特開2001-287333号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9