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特許7379189ビルダグリプチン含有コーティング粒子、ビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠、ビルダグリプチン含有コーティング粒子の製造方法及びビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】ビルダグリプチン含有コーティング粒子、ビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠、ビルダグリプチン含有コーティング粒子の製造方法及びビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/40 20060101AFI20231107BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20231107BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20231107BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20231107BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20231107BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20231107BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20231107BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20231107BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20231107BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20231107BHJP
   A61P 3/10 20060101ALN20231107BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20231107BHJP
【FI】
A61K31/40
A61K9/14
A61K9/20
A61K47/02
A61K47/04
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/26
A61K47/32
A61P3/10
A61P43/00 111
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020015832
(22)【出願日】2020-01-31
(65)【公開番号】P2021123537
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000209049
【氏名又は名称】沢井製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】高田 新也
(72)【発明者】
【氏名】小林 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】池治 宣晃
【審査官】深草 亜子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-132696(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02572704(EP,A1)
【文献】特表2008-543767(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0287583(US,A1)
【文献】特開2012-087073(JP,A)
【文献】国際公開第2017/060861(WO,A2)
【文献】中国特許出願公開第105233300(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00-9/72
A61K 47/00-47/69
CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビルダグリプチン粒子と、
前記ビルダグリプチン粒子上に配置されたワックス層と、
前記ワックス層上に配置され、胃溶性高分子及び凝集防止剤を含む胃溶性高分子層と、
を含み、
前記ワックス層は、常温で固体であり、且つ融点が72℃未満のワックスで構成されることを特徴とするビルダグリプチン含有コーティング粒子。
【請求項2】
前記ワックス層は、ショ糖脂肪酸エステル、常温で固体のポリエチレングリコール、モノステアリン酸グリセリン及びラウロマクロゴールから選択される1つのワックスで構成されることを特徴とする請求項に記載のビルダグリプチン含有コーティング粒子。
【請求項3】
前記胃溶性高分子層は、メタクリル酸メチル-メタクリル酸ブチル-メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、メタクリル酸メチル-メタクリル酸ジエチルアミノエチル共重合体及びポリビニルアセタール・ジエチルアミノアセテートから選択される1つの胃溶性高分子で構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のビルダグリプチン含有コーティング粒子。
【請求項4】
前記凝集防止剤は、タルク、軽質無水ケイ酸、酸化チタン、含水二酸化ケイ素、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及びステアリン酸マグネシウムから選択される1つの凝集防止剤を含むことを特徴とする請求項1乃至の何れか一に記載のビルダグリプチン含有コーティング粒子。
【請求項5】
前記胃溶性高分子層は、D-マンニトール、乳糖又はエリスリトールを更に含むことを特徴とする請求項に記載のビルダグリプチン含有コーティング粒子。
【請求項6】
請求項1乃至の何れか一に記載のビルダグリプチン含有コーティング粒子と、
医薬的に許容される1つ以上の添加剤と、
を含むことを特徴とするビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠。
【請求項7】
ビルダグリプチン粒子に、常温で固体であり、且つ融点が72℃未満のワックスを付着させて、第1の温度で加熱して、ワックス層を形成し、
前記第1の温度よりも低い第2の温度で加熱して、前記ワックス層に胃溶性高分子及び凝集防止剤を付着させ、
前記第1の温度よりも低く、前記第2の温度よりも高い第3の温度で加熱して、胃溶性高分子層を形成することを特徴とするビルダグリプチン含有コーティング粒子の製造方法。
【請求項8】
前記ワックス層に前記胃溶性高分子及び前記凝集防止剤とともにD-マンニトール、乳糖又はエリスリトールを付着させることを特徴とする請求項に記載のビルダグリプチン含有コーティング粒子の製造方法。
【請求項9】
前記第3の温度で加熱する際に、前記凝集防止剤を更に添加して、前記胃溶性高分子層を形成することを特徴とする請求項に記載のビルダグリプチン含有コーティング粒子の製造方法。
【請求項10】
前記ワックス層を形成した後に、前記ワックス層が形成されたビルダグリプチン粒子を解砕し、
前記胃溶性高分子層を付着させた後に、前記胃溶性高分子が付着したビルダグリプチン粒
子を解砕することを特徴とする請求項乃至の何れか一に記載のビルダグリプチン含有コーティング粒子の製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至の何れか一に記載のビルダグリプチン含有コーティング粒子と、医薬的に許容される1つ以上の添加剤とを混合して、圧縮成形することを特徴とするビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルダグリプチン含有コーティング粒子、ビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルダグリプチン((2S)-1-{[(3-Hydroxytricyclo[3.3.1.13,7]dec-1-yl)amino]acetyl}-pyrrolidine-2-carbonitrile)は、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)などの分解酵素であるジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)を阻害する2型糖尿病の治療薬である。
【0003】
特許文献1には、ビルダグリプチンが吸湿性であるため、安定性に問題があることが記載されており、ビルダグリプチン含有製剤の製造時に用いる溶媒や保管時の水分にビルダグリプチンが触れることで、ビルダグリプチンの分解が促進されることが知られている。
【0004】
一方、服用性向上等の目的から、ビルダグリプチン含有製剤を高齢者や嚥下困難な患者等に飲みやすい剤形である口腔内崩壊錠とすることが望まれている。特に、2型糖尿病治療の場合は長期間に亘って服薬する必要があるため、服用が容易な口腔内崩壊錠は、患者の積極的な治療への参加、服薬行動の向上に繋がるものと期待されている。口腔内崩壊錠は、錠剤としての適度な硬度と速やかな崩壊性に加え、味などの服用感が良いことが必要であり、原薬が苦味等を有する場合は苦味等をマスキングすることが求められる。ビルダグリプチン含有製剤を口腔内崩壊錠とするにあたり、ビルダグリプチンは強い苦味を有しているため、ビルダグリプチンの苦味をマスキングする工夫が必要である。しかし、上述した通り、ビルダグリプチンは安定性に問題があることが知られていることから、製造時及び保存時でビルダグリプチンが安定に保たれるように苦味をマスキングすることが求められる。
【0005】
近年、苦味をマスキングする手段の一つとして、原薬を含む粒子をコーティングする技術が報告されている。例えば、特許文献2には、コア及びそれを覆うワックス層を有する粒子に乾式でポリマーを付着させるレイアリング工程後に、粒子を解砕することを含む、多層粒子の製造方法が記載されている。しかし、安定性に問題があるビルダグリプチンの苦味マスキングの手段として適用出来るかは、これまで検討されてこなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5122144号公報
【文献】特許第6067154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、製造時及び保存時でのビルダグリプチンの類縁物質の生成を抑制するビルダグリプチン含有コーティング粒子、ビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠及びそれらの製造方法を提供することを目的の一つとする。または、本発明一実施形態は、ビルダグリプチン由来の苦味を抑制するビルダグリプチン含有コーティング粒子、ビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠及びそれらの製造方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によると、ビルダグリプチン粒子と、ビルダグリプチン粒子上に配置されたワックス層と、ワックス層上に配置され、胃溶性高分子及び凝集防止剤を含む胃溶性高分子層と、を含むことを特徴とするビルダグリプチン含有コーティング粒子が提供される。
【0009】
ワックス層は、常温で固体であり、且つ融点が72℃未満のワックスで構成されてもよい。
【0010】
ワックス層は、ショ糖脂肪酸エステル、常温で固体のポリエチレングリコール、モノステアリン酸グリセリン及びラウロマクロゴールから選択される1つのワックスで構成されてもよい。
【0011】
胃溶性高分子層は、メタクリル酸メチル-メタクリル酸ブチル-メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、メタクリル酸メチル-メタクリル酸ジエチルアミノエチル共重合体及びポリビニルアセタール・ジエチルアミノアセテートから選択される1つの胃溶性高分子で構成されてもよい。
【0012】
凝集防止剤は、タルク、軽質無水ケイ酸、酸化チタン、含水二酸化ケイ素、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及びステアリン酸マグネシウムから選択される1つの凝集防止剤を含んでもよい。
【0013】
胃溶性高分子層は、D-マンニトール、乳糖又はエリスリトールを更に含んでもよい。
【0014】
本発明の一実施形態によると、前記何れかのビルダグリプチン含有コーティング粒子と、医薬的に許容される1つ以上の添加剤と、を含むことを特徴とするビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠が提供される。
【0015】
本発明の一実施形態によると、ビルダグリプチン粒子にワックスを付着させて、第1の温度で加熱して、ワックス層を形成し、第1の温度よりも低い第2の温度で加熱して、ワックス層に胃溶性高分子及び凝集防止剤を付着させ、第1の温度よりも低く、第2の温度よりも高い第3の温度で加熱し、胃溶性高分子層を形成することを特徴とするビルダグリプチン含有コーティング粒子の製造方法が提供される。
【0016】
第3の温度で加熱する際に、D-マンニトール、乳糖又はエリスリトールを付着させてもよい。
【0017】
第3の温度で加熱する際に、凝集防止剤を更に添加して、胃溶性高分子層を形成してもよい。
【0018】
ワックス層を形成した後に、前記ワックス層が形成されたビルダグリプチン粒子を解砕し、前記胃溶性高分子層を付着させた後に、前記胃溶性高分子層が付着したビルダグリプチン粒子を解砕してもよい。
【0019】
本発明の一実施形態によると、前記何れかに記載のビルダグリプチン含有コーティング粒子と、医薬的に許容される1つ以上の添加剤とを混合して、圧縮成形することを特徴とするビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一実施形態によると、製造時及び保存時でのビルダグリプチンの類縁物質の生成を抑制するビルダグリプチン含有コーティング粒子、ビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠及びそれらの製造方法が提供される。または、本発明の一実施形態によると、ビルダグリプチン由来の苦味を抑制するビルダグリプチン含有コーティング粒子、ビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠及びそれらの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】(a)は、本発明の一実施形態に係るビルダグリプチン含有コーティング粒子を示す模式図であり、(b)は、本発明の一実施形態に係るビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るビルダグリプチン含有コーティング粒子、ビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠及びそれらの製造方法について詳細に説明する。ただし、本発明のビルダグリプチン含有コーティング粒子、ビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠及びそれらの製造方法は、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0023】
[ビルダグリプチン含有コーティング粒子10]
図1(a)は、本発明の一実施形態に係るビルダグリプチン含有コーティング粒子10を示す模式図である。一実施形態において、ビルダグリプチン含有コーティング粒子10は、ビルダグリプチン粒子11と、ビルダグリプチン粒子11上に配置されたワックス層13と、ワックス層13上に配置された胃溶性高分子層15と、を含む。
【0024】
ビルダグリプチン粒子11は、ビルダグリプチンからなる粒子であり、ビルダグリプチンの粒子径が小さい場合には、収率の低下及び安定性が悪化し、一方、粒子径が大きい場合には口腔内で崩壊時にざらつきを感じるため、粒径はD90=20μm以上、400μm以下であることが好ましい。
【0025】
ワックス層13は、常温で固体であり、且つ融点が72℃未満であるワックスで構成される。常温で液体のワックスは、製造時に局所的に固化していまい、均一に分散させるのが困難であるため、好ましくない。また、融点が72℃以上であると、ワックスを融解させて、ワックス層13上に胃溶性高分子層15を形成させる際に、胃溶性高分子同士が固着・凝集し、コーティングの効率が著しく低下するため、好ましくない。本明細書においては、「常温」とは、15℃以上25℃以下の温度を示す。ワックス層13は、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、常温で固体のポリエチレングリコール、モノステアリン酸グリセリン及びラウロマクロゴールから選択される1つのワックスで構成されるが、これらに限定されるものではない。一方、ワックスとして汎用される添加剤であっても、例えば、カルナウバロウ、常温で液体又は半固形状のポリエチレングリコール、ヒマシ油及び硬化油は上記の条件を満たすことができず、好ましくない。特許文献2においては、このような検討はなされておらず、本願において見出された新たな知見である。
【0026】
ビルダグリプチン含有コーティング粒子10を構成する胃溶性高分子層15は、例えば、メタクリル酸メチル-メタクリル酸ブチル-メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、メタクリル酸メチル-メタクリル酸ジエチルアミノエチル共重合体及びポリビニルアセタール・ジエチルアミノアセテートから選択される1つの胃溶性高分子で構成されてもよい。
【0027】
一実施形態において、胃溶性高分子層15は、胃溶性高分子の凝集によりビルダグリプチン含有コーティング粒子10が凝集するのを防止するため、例えば、タルク、軽質無水ケイ酸、酸化チタン、含水二酸化ケイ素、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及びステアリン酸マグネシウムから選択される1つの凝集防止剤を含んでもよい。また、胃溶性高分子層15が凝集防止剤を含むことにより、保存後の口腔内崩壊錠において、溶出遅延を抑制することができる。
【0028】
一実施形態において、胃溶性高分子層15は、凝集防止剤に加えて、D-マンニトール、乳糖又はエリスリトールを更に含むことが好ましい。
【0029】
ビルダグリプチン含有コーティング粒子10は、上記の層構造を有することにより、製造時及び保存時でのビルダグリプチンの類縁物質の生成を抑制することができる。また、ビルダグリプチン含有コーティング粒子10は、上記の層構造を有することにより、ビルダグリプチン由来の苦味を抑制することもできる。
【0030】
[ビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠100]
ビルダグリプチン含有コーティング粒子10を用いて、ビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠100を構成することができる。図1(b)は、本発明の一実施形態に係るビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠100を示す模式図である。一実施形態において、ビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠100は、ビルダグリプチン含有コーティング粒子10と、医薬的に許容される1つ以上の添加剤101と、を含む。ビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠100に含まれるビルダグリプチンは、1錠あたり50mgであるが、これに限定されず、必要に応じて処方を変更することも可能である。
【0031】
ビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠100が含む医薬的に許容される添加剤としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、安定化剤、矯味剤及び滑沢剤等が挙げられる。これらの添加剤から、1つ以上を選択してビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠100を構成することができるが、口腔内で崩壊する特性を付与するために、賦形剤及び崩壊剤を含むことが好ましい。また、これらの添加剤の2種以上を組み合わせたプレミックス添加剤を含んでもよい。
【0032】
賦形剤は、例えば、糖類、糖アルコール類、デンプン類、セルロース類、カルメロース類、アラビアゴム、デキストラン、プルラン、ケイ酸塩類、リン酸塩、炭酸塩及び硫酸塩等から選択することができる。糖類としては、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、トレハロース、マルトース等が挙げられる。糖アルコール類としては、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、イソマルト等が挙げられる。また、デンプン類としては、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン 、デキストリン等が挙げられる。セルロース類としては、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。カルメロース類としては、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム等が挙げられる。ケイ酸塩類としては、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等が挙げられる。リン酸塩としては、リン酸水素カルシウム等が挙げられる。炭酸塩としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。硫酸塩としては、硫酸カルシウム等が挙げられる。これらの賦形剤は、単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0033】
結合剤は、例えば、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、エチルセルロースおよびメチルセルロースなどのセルロース類、ポビドン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール完全けん化物、ポリビニルアルコール部分けん化物、カルボキシビニルポリマー、ポリ塩化ビニルなどのビニル系高分子物質、アミノアルキルメタクリレートコポリマー(E、RS)、メタクリル酸コポリマー(L、S、LD)、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液などのアクリル系高分子物質、ステアリルアルコール、ゼラチン、デキストリン、アラビアゴム、プルラン、マクロゴール、デンプン等から選択することができる。
【0034】
結合剤は、より好ましくは、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、エチルセルロースおよびメチルセルロースなどのセルロース類、ポビドン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール完全けん化物、ポリビニルアルコール部分けん化物、カルボキシビニルポリマー、ポリ塩化ビニルなどのビニル系高分子物質、ステアリルアルコール、ゼラチン、デキストリン、アラビアゴム、プルラン、マクロゴール、デンプン等などから選択することができる。
【0035】
崩壊剤は、例えば、カルメロース、カルメロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウムおよびメチルセルロースなどのセルロース類、部分アルファー化デンプンおよびトウモロコシデンプンなどのデンプン類、クロスポビドン等から選択することができる。
【0036】
安定化剤は、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスパラギン酸、アスパラギン酸ナトリウム、アルギニン、エデト酸ナトリウム、無水クエン酸、クエン酸水和物、クエン酸ナトリウム水和物、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、ステアリン酸、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム等から選択することができる。
【0037】
矯味剤は、例えば、アスコルビン酸、アスパラギン酸、アスパラギン酸ナトリウム、アスパルテーム、カラメル、還元麦芽糖水アメ、グリチルリチン酸、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクラロース、ステビア抽出精製物、精製白糖、メントール等から選択することができる。
【0038】
滑沢剤は、例えば、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ロイシン等から選択することができる。
【0039】
ビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠100は、上記の層構造を有するビルダグリプチン含有コーティング粒子10を含むことにより、製造時及び保存時でのビルダグリプチンの類縁物質の生成を抑制することができる。また、ビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠100は、上記の層構造を有するビルダグリプチン含有コーティング粒子10を含むことにより、ビルダグリプチン由来の苦味を抑制することもできる。さらに、ビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠100は、ビルダグリプチン含有コーティング粒子10が、胃溶性高分子層15にD-マンニトール、乳糖又はエリスリトールを含むことにより、速やかな崩壊性を得ることができる。ビルダグリプチン含有コーティング粒子10が、胃溶性高分子層15にD-マンニトール、乳糖又はエリスリトールを含むことによる、ビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠100の速やかな崩壊性は、ビルダグリプチン含有コーティング粒子10の外部にD-マンニトール、乳糖及びエリスリトールを含む口腔内崩壊錠では得られない効果であり、本願により初めて見出された効果である。
【0040】
<ビルダグリプチン含有コーティング粒子10の製造方法>
本発明に係るビルダグリプチン含有コーティング粒子10は、乾式微粒子コーティング法を用いて製造することができる。例えば、ビルダグリプチン粒子11にワックスを付着させて、第1の温度で加熱して、ビルダグリプチン粒子11の表面にワックス層13を形成する。第1の温度は、ビルダグリプチン粒子11に付着したワックス同士が結合して、ワックス層13を形成可能な温度範囲から選択される。第1の温度は、ワックス粒子の融点より1~10℃高い程度であり、例えば、50℃~90℃、好ましくは55℃~80℃の範囲で選択することができる。
【0041】
ワックス層13を形成すると、ワックス層13を介して隣接するビルダグリプチン粒子11が凝集する。このため、ワックス層13を形成した後に、凝集したビルダグリプチン粒子11を解砕し、ワックス層13を含むビルダグリプチン粒子11を得る。
【0042】
第1の温度よりも低い第2の温度で加熱して、ワックス層13に胃溶性高分子を付着させる(レイアリング)。第2の温度は、ワックス層13に胃溶性高分子が付着可能な温度範囲から選択される。なお、第2の温度はワックス層13に胃溶性高分子を付着させるための温度であり、この後の胃溶性高分子層15を形成するための第3の温度よりも低い温度である。
【0043】
胃溶性高分子の凝集によりビルダグリプチン含有コーティング粒子10が凝集するのを防止するため、一実施形態において、胃溶性高分子層15は凝集防止剤を含む。このため、胃溶性高分子とともに凝集防止剤を胃溶性高分子層15に付着させる。
【0044】
また、一実施形態において、胃溶性高分子層15は凝集防止剤に加えて、D-マンニトール、乳糖又はエリスリトールを含むことが好ましい。胃溶性高分子層15がD-マンニトール、乳糖又はエリスリトールを含むことにより、ビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠100に速やかな崩壊性を付与することができる。このため、胃溶性高分子とともに凝集防止剤及びD-マンニトール、乳糖又はエリスリトールを胃溶性高分子層15に付着させることが好ましい。
【0045】
また、一実施形態において、ワックス層13上に胃溶性高分子、凝集防止剤、(必要に応じて、D-マンニトール、乳糖又はエリスリトール)を付着させたビルダグリプチン粒子11を解砕することもできる。胃溶性高分子層15に凝集防止剤を含むことに加えて、胃溶性高分子、凝集防止剤が付着したビルダグリプチン粒子11を解砕することで、ビルダグリプチン含有コーティング粒子10が凝集するのを、より防止することができる。
【0046】
胃溶性高分子が付着したワックス層13を含むビルダグリプチン粒子11を、第1の温度よりも低く、第2の温度よりも高い第3の温度で加熱して、ワックス層13の表面に胃溶性高分子層15を形成する(キュアリング)。第3の温度が第1の温度より高いとビルダグリプチン粒子が凝集してしまうだけでなく、収率の低下、熱によるビルダグリプチンの分解が起きる恐れがあるほか、製造時間も延びるため好ましくない。第3の温度は、ガラス転移が起きる胃溶性高分子の場合はガラス転移温度+1~40℃の温度である。第3の温度は、例えば、50~90℃の範囲で選択することができる。
【0047】
一実施形態において、凝集防止剤を更に添加して、第3の温度で加熱して、胃溶性高分子層15を形成することが好ましい。これにより、第3の温度で加熱した際に、胃溶性高分子を介してワックス層13を含むビルダグリプチン粒子11が凝集するのを更に効果的に抑制することができる。
【0048】
得られたビルダグリプチン含有コーティング粒子10は、分級してビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠100の製造に用いることが好ましい。
【0049】
[ビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠100の製造方法]
ビルダグリプチン含有コーティング粒子10と、医薬的に許容される1つ以上の添加剤とを、通常用いられる混合機を用いて混合し、通常用いられる打錠機で圧縮成形(打錠)することにより、ビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠100を製造することができる。
【0050】
[総類縁物質]
本明細書において、ビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠100の安定性の評価として、液体クロマトグラフィを用いてビルダグリプチンの純度を評価する。面積百分率法により、クロマトグラム上に得られたビルダグリプチン及びビルダグリプチン由来の類縁物質の各成分のピーク面積の総和を100とし、ピーク面積の比からビルダグリプチン由来の総類縁物質(%)を算出する。
【0051】
[崩壊時間]
本明細書において、ビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠100の崩壊時間は、第十七改正日本薬局方の崩壊試験法に準じて行う。
【実施例
【0052】
上述した本発明に係るビルダグリプチン含有コーティング粒子及びビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠の具体的な実施例及び試験結果を示して、詳細に説明する。
【0053】
[ワックスの検討]
ワックスについて、保存後の類縁物質量の変化と、乾式微粒子コーティング法による製造性を検討した。ビルダグリプチン3.6gと各ワックス0.36gを混合し、40℃湿度75%開放条件下で1週間保管した後のビルダグリプチン由来の総類縁物質量と個々最大類縁物質量を測定した。総類縁物質量と個々最大類縁物質量の測定には、L-Column2 ODS、φ3.0×150mm、3μmを用いて、10mMリン酸塩緩衝液(pH7.0)及びアセトニトリルを移動相として、フォトダイオードアレイ検出器(測定波長:210nm)を用いた液体クロマトグラフィにより行った。測定結果と、乾式微粒子コーティング法による製造性の検討結果を表1に示す。
【表1】
【0054】
表1の結果より、何れのワックスも保存後の類縁物質量の優位な増加は認められなかった。一方、常温で液体のポリエチレングリコール400(PEG400)及びヒマシ油は、製造時に局所的に固化していまい、均一に分散させるのが困難であるため、適用できないと判断された。また、カルナウバロウ及び硬化油は、融点が72℃以上であるため、ワックスを融解させて、ワックス層上に胃溶性高分子層を形成させる際に、胃溶性高分子自体が固着・凝集し、コーティングの効率が著しく低下するため、適用できないと判断された。
【0055】
[実施例1]
上記の検討により利用可能と判断されたモノステアリン酸グリセリンを用いて実施例1のビルダグリプチン含有コーティング粒子を製造し、ビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠を製造した。具体的には、ビルダグリプチン粒子50mg当たり、モノステアリン酸グリセリン(リケマールS-100P、理研ビタミン株式会社)3.0mgを乾式コーティング装置(シューネルコータ RM-10、株式会社大川原製作所)に投入し、78℃迄加熱してワックス層を形成した。ワックス層を含むビルダグリプチン粒子を、コーミルを用いて解砕した。
【0056】
ワックス層を含むビルダグリプチン粒子と、胃溶性高分子としてオイドラギット(登録商標)(EPO、Evonik Nutrition & Care GmbH)40mgと、凝集防止剤としてタルク(富士タルク工業株式会社)15mgを乾式コーティング装置に投入し、56℃迄加熱してワックス層にオイドラギットを付着させた。オイドラギットが付着したワックス層を含むビルダグリプチン粒子を、コーミルを用いて解砕した。
【0057】
オイドラギットが付着したワックス層を含むビルダグリプチン粒子と、タルク15mgを乾式コーティング装置に投入し、70℃迄加熱してワックス層上に胃溶性高分子層を形成した。胃溶性高分子層を形成したビルダグリプチン含有コーティング粒子を篩22号で整粒して、実施例1のビルダグリプチン含有コーティング粒子を得た。
【0058】
実施例1のビルダグリプチン含有コーティング粒子と、D-マンニトール(マンニットP、三菱商事フードテック株式会社)146.0mg、結晶セルロースとしてPH-101(旭化成株式会社)18.0mg、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC(NBD-22)、信越化学工業株式会社)9.0mg、クロスポビドン(Kollidon(登録商標)CL-F、BASF)3.6mg、クロスポビドン(Kollidon(登録商標)CL-M、BASF)3.6mgを含む造粒物と、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(ノイシリン(登録商標)UFL2、富士化学工業株式会社)3.0mg、D-マンニトール(200SD、ROQUETTE)13.0mg、スクラロース(P、三栄現エフ・エフ・アイ株式会社)1.4mg、ドライコートメントール微量(0.3mg)、及びステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社)3.3mgを混合し、打錠前粉末を得た。打錠機(VELA5、菊水製作所社製)を用い、重量330mgとなるよう打錠前粉末を打錠し、実施例1のビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠を得た。
【0059】
[比較例1]
比較例1として、ビルダグリプチン含有普通錠を調製した。具体的には、ビルダグリプチン粒子50.0mg当たり、D-マンニトール19.0mg(200SD、ROQUETTE)、ステアリン酸マグネシウム1.0mg(植物、太平化学産業)を加え混合後、ローラーコンパクター(TF-MINI、フロイント産業株式会社)を使用しロール圧100kgf/cm2にて乾式造粒を行い、ビルダグリプチン含有量70.0重量%の乾式造粒末を得た。この乾式造粒末をパワーミル(スクリーン径1.0mm)で整粒したのち、結晶セルロース44.0mg(UF-702、旭化成)、D-マンニトール80.0g(200SD、Ferromet)、クロスポビドン4.0mg(Kollidon(登録商標)CL-F、BASF)、ステアリン酸マグネシウム2.0mg(植物、太平化学産業)を加え十分混合後、ロータリー打錠機(VELA、株式会社菊水製作所)により打錠成形し、200.0mgのビルダグリプチン含有錠剤を得た。
【0060】
[比較例2]
比較例2として本邦で販売されているビルダグリプチン含有錠剤(エクア錠、ノバルティスファーマ株式会社)を用いた。
【0061】
実施例1及び比較例1、比較例2の錠剤について、40℃湿度75%アルミニウムフィルム密封条件下で3ヶ月間保管した後、及び25℃湿度75%開放条件下で3ヶ月間保管した後のビルダグリプチン由来の総類縁物質量と個々最大類縁物質量を上述した方法により測定した。測定結果を表2に示す。
【表2】
【0062】
表2の結果より、実施例1のビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠は、保存後の類縁物質の生成が抑制されることが明らかとなった。
【0063】
[実施例2]
実施例2として、ビルダグリプチン粒子50.0mg当たりモノステアリン酸グリセリン(リケマールS-100P、理研ビタミン株式会社)3.0mgを乾式コーティング装置(シューネルコータ RM-10、株式会社大川原製作所)に投入し、78℃迄加熱してワックス層を形成した。ワックス層を含むビルダグリプチン粒子を、コーミルを用いて解砕した。
【0064】
ワックス層を含むビルダグリプチン粒子と、胃溶性高分子としてオイドラギット(登録商標)(EPO、Evonik Nutrition & Care GmbH) 40.0mgと、凝集防止剤としてタルク(富士タルク工業株式会社)15.0gを乾式コーティング装置に投入し、56℃迄加熱してワックス層にオイドラギットを付着させた。オイドラギットが付着したワックス層を含むビルダグリプチン粒子を、コーミルを用いて解砕した。
【0065】
オイドラギットが付着したワックス層を含むビルダグリプチン粒子と、タルク15.0mgを乾式コーティング装置に投入し、70℃迄加熱してワックス層上に胃溶性高分子層を形成した。胃溶性高分子層を形成したビルダグリプチン含有コーティング粒子を篩22号で整粒して、実施例2のビルダグリプチン含有コーティング粒子を得た。
【0066】
実施例2のビルダグリプチン含有コーティング粒子と、D-マンニトール(マンニットP、三菱商事フードテック株式会社)152.3mg、結晶セルロースとしてPH-101(旭化成株式会社)18.8mg、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC(NBD-22)、信越化学工業株式会社)9.4mg、クロスポビドン(Kollidon(登録商標)CL-F、BASF)3.8mg、クロスポビドン(Kollidon(登録商標)CL-M、BASF)3.8mgを含む造粒物とクロスポピドン(CL-F、BASF)6.0mg、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(ノイシリン(登録商標)UFL2、富士化学工業株式会社)3.0mg、D-マンニトール(ペアリトール25C、ROQUETTE)4.0mg、サッカリンナトリウム水和物(サッカリンナトリウム水和物B-P、大和化成)3.0mg、ドライコートメントール(香料ドライコートメントール♯32-Z、高田香料)微量(0.3mg)、及びステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社)3.0mgを混合し、打錠前粉末を得た。打錠機(VELA5、菊水製作所社製)を用い、重量330mgとなるよう打錠前粉末を打錠し、実施例2のビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠を得た。
【0067】
[実施例3]
実施例3として、胃溶性高分子層にD-マンニトールを含むビルダグリプチン含有コーティング粒子を用いて、口腔内崩壊錠を製造した。オイドラギット及びタルクとともにD-マンニトール(ペアリトール25C、ROQUETTE)4.0mgを添加して胃溶性高分子層を形成したこと以外は実施例2のビルダグリプチン含有コーティング粒子と同様の製造方法により、実施例3のビルダグリプチン含有コーティング粒子を製造した。
【0068】
実施例3のビルダグリプチン含有コーティング粒子と造粒物を用いて、D-マンニトールを添加せずに口腔内崩壊錠を製造したこと以外は実施例2のビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠と同様の製造方法により、実施例3のビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠を製造した。
【0069】
[硬度]
シュロイニゲル錠剤硬度計(MODEL6D、Dr. Schleuniger Pharmatron AG)を用いて、製造時(イニシャル)の実施例2及び3のビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠の各3錠について硬度を測定し、その平均値をそれぞれの口腔内崩壊錠の硬度とした。
【0070】
[崩壊時間]
口腔内崩壊錠の崩壊時間は、第十七改正日本薬局方の崩壊試験法に準じ、実施例2及び3のビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠について、製造時(イニシャル)及び40℃湿度75%開放条件下で1週間保管した後の崩壊時間を測定した。
【0071】
実施例2及び3のビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠の硬度及び崩壊時間を表3に示す。
【表3】
【0072】
表3の結果より、胃溶性高分子層にD-マンニトールを含むビルダグリプチン含有コーティング粒子を用いた実施例3のビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠においては、崩壊時間の遅延が抑制されることが明らかとなった。
【0073】
上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0074】
10 ビルダグリプチン含有コーティング粒子、11 ビルダグリプチン粒子、13 ワックス層、15 胃溶性高分子層、100 ビルダグリプチン含有口腔内崩壊錠、101 1以上の添加剤
図1