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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】撮像システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/60 20230101AFI20231107BHJP
   H04N 25/10 20230101ALI20231107BHJP
   H04N 23/45 20230101ALI20231107BHJP
   H04N 23/55 20230101ALI20231107BHJP
   H04N 23/54 20230101ALI20231107BHJP
【FI】
H04N23/60 500
H04N25/10
H04N23/45
H04N23/55
H04N23/54
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020038326
(22)【出願日】2020-03-06
(65)【公開番号】P2021141469
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】室本 大賀
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 拓洋
【審査官】▲徳▼田 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-148512(JP,A)
【文献】特開2012-019429(JP,A)
【文献】特開2017-055397(JP,A)
【文献】特開2017-017696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/60
H04N 25/10
H04N 23/45
H04N 23/55
H04N 23/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体光を分岐して被写体像をN個(Nは2以上の自然数)生成する分解光学系と、
N個未満の前記被写体像に対して配置され、ローリングシャッタ式の撮像動作を行って映像信号(以下、「ローリング映像」という)を生成するN個未満の主撮像素子を有する主撮像部と、
前記主撮像素子が配置されない、残りの前記被写体像に対して配置され、グローバルシャッタ式の撮像動作を行って映像信号(以下、「グローバル映像」という)を生成する副撮像素子を有する副撮像部と、
前記グローバル映像を解析して、前記ローリングシャッタ式に起因する現象の発生を検出する検出部と、
前記検出部が前記現象の発生を検出した場合に、前記ローリング映像の前記現象を補正
する補正部とを備え、
前記検出部は、前記グローバル映像の信号レベルの上昇に基づいて、前記ローリング映
像に生じるフラッシュバンドの発生を検出し、
前記補正部は、前記検出部が前記フラッシュバンドの発生を検出した場合に、前記ロー
リング映像の前記フラッシュバンドを補正する
ことを特徴とする撮像システム。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像システムであって、
前記検出部は、前記グローバル映像と前記ローリング映像とのラインずれに基づいて、前記ローリング映像に生じるローリングシャッタ歪みの発生を検出し、
前記補正部は、前記検出部が前記ローリングシャッタ歪みの発生を検出した場合に、前
記ローリング映像の前記ローリングシャッタ歪みを補正する
ことを特徴とする撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走査ラインごとに露光期間をずらしながら映像信号を読み出すローリングシャッタ式の撮像素子が知られている。
【0003】
このようなローリングシャッタ式で撮像された映像信号(以下、「ローリング映像」という)では、走査ラインごとに露光タイミングがずれるため、動体被写体がライン方向に位置ずれして歪むローリングシャッタ歪みが発生する。このようなローリングシャッタ式の現象を補正する技術として、例えば特許文献1には、ローリング映像を画像解析してローリングシャッタ歪みの歪み量を検出し、ローリングシャッタ歪みを補正する技術が開示される。
【0004】
また、ローリング映像には、フラッシュ光の影響が帯状に現れるフラッシュバンドが生じる。このようなフラッシュバンドを補正する技術として、例えば特許文献2には、ローリング映像を画像解析してフラッシュバンドを検出し、検出されたフラッシュバンドを補正する技術が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-114148号公報
【文献】特開2019-146128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2どちらの技術も、ローリングシャッタ式に起因する現象を軽減する上で有効な技術である。
【0007】
しかしながら、被写体の動きが継続する場合、被写体映像はローリングシャッタ歪みによって継続的に歪む。特許文献1の技術では、ローリングシャッタ歪みが継続する被写体映像から、本来の被写体の形状を検出することができない。そのため、ローリングシャッタ歪みの発生を検出することは困難になる。
【0008】
また、フラッシュ光が断続的に照射された場合、被写体の映像にはフラッシュバンドが継続して発生する。特許文献2の技術では、継続するフラッシュバンドを被写体の本来の絵柄(パターン)と区別することができない。そのため、フラッシュバンドの発生を検出することは困難になる。
【0009】
そこで、本発明は、ローリングシャッタ式に起因する現象の発生を検出するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の代表的な撮像システムの一つは、分解光学系、主撮像部、副撮像部、検出部、および補正部を備える。
前記分解光学系は、被写体光を分岐して被写体像をN個(Nは2以上)生成する。
【0011】
前記主撮像部は、N個未満の前記被写体像に対して配置され、ローリングシャッタ式の撮像動作を行ってローリング映像を生成するN個未満の主撮像素子を有する。
【0012】
前記副撮像部は、前記主撮像素子が配置されない、残りの前記被写体像に対して配置され、グローバルシャッタ式の撮像動作を行ってグローバル映像を生成する副撮像素子を有する。
前記検出部は、前記グローバル映像を解析して、前記ローリングシャッタ式に起因する現象の発生を検出する。
前記補正部は、前記検出部が前記現象の発生を検出した場合に、前記ローリング映像の前記現象を補正する。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、ローリングシャッタ式に起因する現象の発生を検出することが可能になる。
【0014】
なお、上記した以外の課題、構成および効果については、以下の実施形態の説明において説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施例1の装置構成を説明するブロック図である。
図2図2は、実施例1の動作を説明する流れ図である。
図3図3は、フラッシュ光の影響を説明するための図である。
図4図4は、フラッシュバンドの処理を説明するための図である。
図5図5は、実施例2の装置構成を説明するブロック図である。
図6図6は、実施例2の動作を説明する流れ図である。
図7図7は、動体被写体の影響を説明するための図である。
図8図8は、ローリングシャッタ歪みの処理を説明するための図である。
図9図9は、実施例3の光学系の構成を示すブロック図である。
図10図10は、映像信号処理部230の内部処理を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら実施例を開示する。
【0017】
なお、本開示における「ローリングシャッタ式に起因する現象」とは、例えば「フラッシュバンド」または「ローリングシャッタ歪み」などの現象を意味するが、より広義には「グローバルシャッタ式と異なる、ローリングシャッタ式の走査ラインごとの露光期間のずれに起因して発生する現象」を意味する。
【実施例1】
【0018】
<実施例1の構成説明>
図1は、実施例1の装置構成を説明するブロック図である。
【0019】
同図において、撮像システム100は、撮影光学系101、分解光学系102、主撮像部110、副撮像部120、検出部130、および補正部140を備える。
【0020】
これらの内、撮影光学系101は、入射する被写体光を結像する。分解光学系102は、結像する被写体光を波長別に分岐して、赤色成分R、緑色成分G1、緑色成分G2、青色成分Bからなる4つの被写体像を生成する。
【0021】
主撮像部110は、ローリングシャッタ式の主撮像素子113R、113G、113B、および駆動部114を備える。3つの主撮像素子113R、113G、113Bは、3つの色成分R,G1,Bの被写体像それぞれに対して配置される。駆動部114は、これら3つの主撮像素子113R、113G、113Bに対して駆動信号を供給して、走査ラインごとに露光期間がずれるローリングシャッタ式の露光制御を実施する。その結果、主撮像素子113R、113G、113Bは、走査ラインごとに露光期間がずれた映像信号(ローリング映像)を色成分R,G1,B別に出力する。
【0022】
副撮像部120は、グローバルシャッタ式の副撮像素子121G、および駆動部122を備える。副撮像素子121Gは、緑色成分G2の被写体像に対して配置される。駆動部122は、副撮像素子121Gに対して駆動信号を供給して、グローバルシャッタ式の露光制御を実施する。ここでのグローバルシャッタ式とは、副撮像素子121Gの走査ライン全てについて露光期間が一致する露光制御、つまりフレーム一括露光の映像信号(以下、「グローバル映像」という)を生成する露光制御である。なお、副撮像素子121Gについては、主撮像素子113R、113G、113Bと同じ撮像画素数である必要はない。そのため、副撮像素子121Gの撮像画素数を低画素化することによって、グローバル映像の処理速度を高速化してもよい。
【0023】
検出部130は、フラッシュ検出部131を備える。このフラッシュ検出部131は、グローバル映像を取得してフレーム間の信号レベルの瞬間的な上昇を検出することにより、ローリング映像に生じるフラッシュバンドの発生を検出する。
【0024】
補正部140は、フレームメモリ141、フラッシュバンド検出部142、およびフラッシュバンド補正部143を備える。フレームメモリ141は、撮影されたローリング映像をフラッシュバンドの補正に必要なフレーム数だけ順次に更新記録するメモリである。フラッシュバンド検出部142は、ローリング映像に生じるフラッシュバンドの発生領域を検出する。フラッシュバンド補正部143は、ローリング映像の各色成分についてフラッシュバンドを軽減する補正を実施する。
【0025】
<実施例1の動作説明>
続いて、実施例1によるフラッシュバンドの処理について説明する。
図2は、実施例1の動作を説明する流れ図である。
同図に示すステップ番号の順に説明する。
【0026】
ステップS101: 駆動部114および駆動部122は、主撮像素子113R、113G、113Bおよび副撮像素子121Gに対して、垂直同期(フレーム同期)をとった駆動信号を供給する。
【0027】
主撮像素子113R、113G、113Bには、図3の上段[1]に示すような、走査ラインごとに露光期間をずらすローリングシャッタ式の露光制御が実施される。その結果、3つの色成分R,G1,Bからなるローリング映像がフレーム単位に生成される。
【0028】
一方、副撮像素子121Gに対しては、図3の下段[2]に示すような、全ての走査ラインに対して露光期間が一致したグローバルシャッタ式の露光制御が実施される。その結果、緑色成分G2からなるグローバル映像がフレーム単位に生成される。
【0029】
ステップS102: フレームメモリ141は、色成分R,G1,Bのローリング映像をフレーム蓄積する。フレームメモリ141は、フラッシュバンドの補正に必要なフレーム数だけの過去フレームが保持され、それ以前の過去フレームは上書き消去される。
【0030】
ステップS103: 図3の下段[2]に示すように、フレーム期間内に外部から照射されるフラッシュ光は、当該フレームの全ての走査ラインに対して瞬間的なレベル上昇を生じさせる。
【0031】
そこで、フラッシュ検出部131は、緑色成分G2のグローバル映像において走査ラインに一様なレベル上昇を生じたか否かを判定することにより、フレーム期間内にフラッシュ光が照射されたか否かを検出する。例えば、フラッシュ検出部131は、フレームごとにグローバル映像の平均レベルを検出し、その平均レベルをフレーム間で比較することにより、フレーム間のレベル変動を検出する。
【0032】
ステップS104: フラッシュ検出部131は、緑色成分G2のグローバル映像において、フレームにフラッシュ光に起因するレベル上昇を検出したか否かを判定する。
【0033】
グローバル映像にレベル上昇が検出された場合(ステップS104のYES側)、フラッシュ検出部131は、フラッシュバンド補正部143に検出結果(フラッシュバンドの発生)を報知してステップS105に動作を進める。一方、グローバル映像にレベル上昇が検出されない場合(ステップS104のNO側)、フラッシュ検出部131はステップS101に動作を戻す。
【0034】
ステップS105: フラッシュバンド補正部143は、フラッシュ光を検出したグローバル映像のフレーム番号を特定する。ここでは、説明の便宜上、ローリング映像の対応するフレーム番号をQとする。
【0035】
ステップS106: フラッシュバンド補正部143は、フラッシュバンド検出部142が(Q-1)フレーム内をライン比較して検出したフラッシュバンド領域F1を情報取得する。
【0036】
例えば、図3の上段[1]では、ローリング映像の(Q-1)フレームにおいて、画面の下側ラインの露光期間中にフラッシュ光が発生する。そのため、ローリング映像の(Q-1)フレームには、画面の下側にフラッシュバンド領域F1が発生する。
【0037】
なお、フラッシュバンド検出部142は、グローバル映像とローリング映像とのフレーム差に基づいて、フラッシュバンド領域F1を検出してもよい。
【0038】
ステップS107: フラッシュバンド補正部143は、色成分R,G1,Bのローリング映像の(Q-1)フレームから、フラッシュバンド領域F1を除いて、残りの領域A2を得る(図4参照)。
【0039】
ステップS108: フラッシュバンド補正部143は、色成分R,G1,Bのローリング映像の(Q-2)フレームから、フラッシュバンド領域F1に対応する領域A1を得る(図4参照)。
【0040】
ステップS109: フラッシュバンド補正部143は、領域A2と領域A1とを合成することにより、色成分R,G1,Bの補正映像を生成し、ローリング映像の(Q-1)フレームとして出力する(図4参照)。
【0041】
なお、領域A2と領域A1を合成する代わりに、領域A2と領域A3(図4参照)とを合成して、(Q-1)フレームの補正映像を生成してもよい。
【0042】
ステップS110: フラッシュバンド補正部143は、色成分R,G1,Bのローリング映像のQフレームから、フラッシュバンド領域F1に対応する領域A3を除いて、残りのフラッシュバンド領域F2を得る(図4参照)。
【0043】
ステップS111: フラッシュバンド補正部143は、フラッシュバンド領域F2とフラッシュバンド領域F1とを合成することにより、色成分R,G1,Bの補正映像(フラッシュ光が走査ライン全てに影響した映像)を生成し、ローリング映像のQフレームとして出力する(図4参照)。フラッシュバンド補正部143は、このような補正処理を完了した後に、ステップS101に動作を戻す。
【0044】
以上の動作によって、フラッシュバンドの発生の検出と、それに伴うフラッシュバンド補正が実施される。
【0045】
<実施例1の効果>
実施例1は、次の効果を奏する。
【0046】
(1)実施例1では、ローリングシャッタ式の撮像動作を行う主撮像部110に加えて、グローバルシャッタ式の撮像動作を行う副撮像部120を備える。この副撮像部120の副撮像素子121Gが撮像するグローバル映像には、フラッシュ光の影響がフレームに対して一様に生じる。そのため、グローバル映像をレベル判定することによって、フラッシュ光の発生、つまりローリング映像におけるフラッシュバンドの発生を容易かつ確実に検出することが可能になる。
【0047】
(2)実施例1では、フラッシュ光が断続的に照射された場合も、グローバル映像をフレーム単位に継続的に観測することによって、フラッシュ光の断続的な発生(それに伴うローリング映像のフラッシュバンドの継続的な発生)を検出することが可能になる。
【0048】
(3)実施例1では、4板式の撮像システム100の3板をローリングシャッタ式の主撮像素子113R、113G、113Bに割り振り、残りの1板をグローバルシャッタ式の副撮像素子121Gに割り振る。そのため、主撮像部110および副撮像部120は、撮像範囲を略一致させることが可能になる。したがって、副撮像部120は、主撮像部110の撮像範囲に起こるフラッシュバンドなどの現象を見逃すことなく検出することが可能になる。
【0049】
(4)実施例1では、ステップS106において説明したように、グローバル映像とローリング映像とのフレーム差に基づいて、フラッシュバンド領域F1を検出してもよい。その場合、フラッシュバンド領域F1を確実に検出することが可能になる。
【0050】
(5)グローバル映像を撮像システムの外部に出力しない場合、グローバル映像に高い映像品質は要求されない。そのため、副撮像素子121Gとしては、比較的安価な低画素の撮像素子が使用できる。したがって、追加的なコストを抑えつつ、実施例1の撮像システムを実現することが可能になる。
【実施例2】
【0051】
次に、実施例2について説明する。
【0052】
<実施例2の構成説明>
図5は、実施例2の装置構成を説明するブロック図である。
【0053】
同図において、撮影光学系101、分解光学系102、主撮像部110、および副撮像部120については、実施例1と同じ構成のため、ここでの重複説明を省略する。
実施例2の構成上の特徴は、検出部130が歪み量検出部135を備え、補正部140が歪み補正部145を備える点である。
【0054】
歪み量検出部135は、緑色成分G2のグローバル映像と、緑色成分G1のローリング映像とのフレーム間の走査ライン方向のずれに基づいて、色成分R,G1,Bのローリング映像に生じるローリングシャッタ歪みの発生を検出する。
【0055】
歪み補正部145は、歪み量検出部135がローリングシャッタ歪みの発生を検出した場合に、色成分R,G1,Bのローリング映像のローリングシャッタ歪みを補正する。
【0056】
<実施例2の動作説明>
続いて、実施例2によるローリングシャッタ歪みの処理について説明する。
図6は、実施例2の動作を説明する流れ図である。
同図に示すステップ番号の順に説明する。
【0057】
ステップS201: 駆動部114および駆動部122は、主撮像素子113R、113G、113Bおよび副撮像素子121Gに対して、垂直同期(フレーム同期)をとった駆動信号を供給する。
【0058】
主撮像素子113R、113G、113Bには、図7の上段[1]に示すような、走査ラインごとに露光期間をずらすローリングシャッタ式の露光制御が実施される。その結果、3つの色成分R,G1,Bからなるローリング映像がフレーム単位に生成される。
【0059】
一方、副撮像素子121Gに対しては、図7の下段[2]に示すような、全ての走査ラインに対して露光期間が一致したグローバルシャッタ式の露光制御が実施される。その結果、緑色成分G2からなるグローバル映像がフレーム単位に生成される。
【0060】
ステップS202: 歪み量検出部135は、緑色成分G1のローリング映像に対して画素数変換を施して縮小画像を生成する。この縮小画像の縦横画素数は、グローバル映像の縦横画素数に一致させる。
【0061】
ステップS203: 図7の上段[1]に示すように、ローリング映像では、走査ラインごとの露光タイミングがずれる。そのため、動体被写体(カメラブレやパンニングも含む)の各走査ラインは、ライン方向の位置がずれて歪み、ローリングシャッタ歪みが発生する。
【0062】
一方、図7の下段[2]に示すように、グローバル映像では、走査ライン全ての露光タイミングが一致する。そのため、動体被写体(カメラブレやパンニングも含む)の走査ラインは、ライン方向の位置が全て一致するため、ローリングシャッタ歪みは起こらない。そこで、ローリング映像の縮小画像と、グローバル映像とをフレーム単位に比較することによって、ローリングシャッタ歪みの発生を検出することが可能になる。
【0063】
例えば、歪み量検出部135は、ローリング映像の縮小画像と、グローバル映像とをライン単位にずらしながら相関検出を行うことにより、走査ラインごとに歪み量δと、歪み範囲Lを求める(図7参照)。なお、ローリング映像の縮小画像と、グローバル映像との走査ラインごとの単純差分に基づいて、歪み量δと歪み範囲Lを求めてもよい。
【0064】
ステップS204: 歪み量検出部135は、ノイズレベルを超える有意な歪み量δを検出したか否かを判定する。
【0065】
有意な歪み量δが検出された場合(ステップS204のYES側)、歪み量検出部135は、歪み補正部145に検出結果(ローリングシャッタ歪みの発生)を報知してステップS205に動作を進める。一方、有意な歪み量δが検出されない場合(ステップS204のNO側)、歪み量検出部135はステップS201に動作を戻す。
【0066】
ステップS205: 歪み補正部145は、歪み量δと歪み範囲Lをローリング映像の画素サイズに合うように変換する。
【0067】
ステップS206: 歪み補正部145は、図8の下段[3]に示すように、色成分R,G1,Bのローリング映像に対して、ライン単位の歪み範囲Lを歪み量δだけ変位させる歪み補正を行う。
【0068】
なお、動体被写体をライン方向にずらす際に、歪み量δの相当分だけ背景が欠落する。この背景の欠落部分については、例えば、動体被写体を尾引方向に暈かすことで動線(像流れ)として処理してもよい。また、この背景の欠落部分については、ローリング映像の前後フレームの対応領域を使用して補完してもよい。
歪み補正部145は、これらの補正処理を完了した後に、ステップS201に動作を戻す。
【0069】
以上の動作によって、ローリングシャッタ歪みの発生の検出と、それに伴う歪み補正が実施される。
【0070】
<実施例2の効果>
実施例2は、次の効果を奏する。
【0071】
(1)実施例2では、ローリングシャッタ式の撮像動作を行う主撮像部110に加えて、グローバルシャッタ式の撮像動作を行う副撮像部120を備える。この副撮像部120の副撮像素子121Gが撮像するグローバル映像には、ローリングシャッタ歪みが生じない。そのため、グローバル映像とローリング映像とを比較することによって、ローリングシャッタ歪みの発生を容易かつ確実に検出することが可能になる。
【0072】
(2)実施例2では、ローリングシャッタ歪みの影響を受けないグローバル映像によって、動体被写体の本来の(歪みのない)形状を検出できる。そのため、図8の中段[2]に示すように、複数フレームにわたってローリング映像にローリングシャッタ歪みが継続する状況においても、グローバル映像を比較基準にすることで、ローリングシャッタ歪みを検出し、補正することが可能になる。
【0073】
(3)実施例2では、4板式の撮像システム100の3板をローリングシャッタ式の主撮像素子113R、113G、113Bに割り振り、残りの1板をグローバルシャッタ式の副撮像素子121Gに割り振る。そのため、主撮像部110および副撮像部120は、撮像範囲を略一致させることが可能になる。したがって、副撮像部120は、主撮像部110の撮像範囲に起こるローリングシャッタ歪みなどの現象を見逃すことなく検出することが可能になる。
【0074】
(4)実施例2においても、グローバル映像を撮像システムの外部に出力しない場合、グローバル映像に高い映像品質は要求されない。そのため、副撮像素子121Gとしては、比較的安価な低画素の撮像素子が使用できる。したがって、追加的なコストを抑えつつ、実施例2の撮像システムを実現することが可能になる。
【実施例3】
【0075】
続いて、実施例3について説明する。
【0076】
<光学系の構成>
図9は、実施例3の光学系の構成を示すブロック図である。
同図において、撮像システム200は、撮影光学系201、分解光学系202、主撮像部210、副撮像部220、検出部240と補正部250とを含む映像信号処理部230、フレームメモリ260、およびCPU部270を備える。
【0077】
撮影光学系201は、入射する被写体光を結像光束に変換する。
分解光学系202は、ハーフプリズムの部分(光分解光学系)と、ダイクロイックプリズムの部分(色 分解光学系)とを備える。
【0078】
ハーフプリズムの部分は、撮影光学系201から入射する結像光束を、「比較的光量の少ない第1光束」と「比較的光量の多い第2光束」に分岐する。ここでは、第1光束と第2光束の光量比を「1/P対1(ただしP>1.0)」とする。
【0079】
分解光学系202のダイクロイックプリズムの部分は、第2光束を波長別に分岐して、赤色成分R、緑色成分G、青色成分Bからなる3つの被写体像を生成する。
【0080】
主撮像部210は、ローリングシャッタ式の主撮像素子213R、213G、213B、および駆動部214を備える。主撮像素子213R、213G、213Bは、色成分R,G,Bの被写体像に対してそれぞれ配置される。駆動部214は、これら3つの主撮像素子213R、213G、213Bに駆動信号を供給して、走査ラインごとに露光期間がずれるローリングシャッタ式の露光制御を実施する。その結果。主撮像素子213R、213G、213Bは、走査ラインごとに露光期間がずれた映像信号(ローリング映像)を色成分R,G,B別にR信号、G信号、B信号として出力する。
【0081】
副撮像部220は、グローバルシャッタ式の副撮像素子221C、および駆動部222を備える。副撮像素子221Cは、第1光束の結像面に対して配置される。この副撮像素子221Cには、単板でカラーの映像信号を生成するため、例えば、撮像面のカラーフィルタをモザイク配列(例えばベイヤー配列)したモザイクカラーフィルタ撮像素子や、撮像面の入射深さ方向で被写体像を色分解(波長分離)して撮像する多層タイプの撮像素子などが使用される。駆動部222は、副撮像素子221Cに駆動信号を供給して、グローバルシャッタ式の露光制御を実施する。その結果、副撮像素子221Cは、走査ライン全てについて露光期間が一致する、つまりフレーム一括露光のカラーの映像信号(以下、「カラーのグローバル映像」という)をC信号として出力する。
【0082】
なお、副撮像素子221Cについては、主撮像素子213R、213G、213Bと同じ撮像画素数であってもよいし、同じ撮像画素数でなくてもよい。例えば、副撮像素子221Cの撮像画素数を低画素化することによって、カラーのグローバル映像の処理速度を高速化してもよい。
【0083】
映像信号処理部230内の検出部240は、少なくともカラーのグローバル映像を解析して、ローリングシャッタ式に起因する現象の発生を検出する。この場合、グローバル映像を色成分ごとに解析することにより、「ローリングシャッタ式に起因する現象の発生」を色成分ごとに検出することが可能になる。
【0084】
また、検出部240は、グローバル映像とローリング映像とを比較して、ローリングシャッタ式に起因する現象の発生を検出してもよい。この場合、グローバル映像とローリング映像とを色成分ごとに比較することにより、「ローリングシャッタ式に起因する現象の発生」を色成分ごとに検出することが可能になる。この検出部240の詳細については後述する。
【0085】
映像信号処理部230内の補正部250は、「ローリングシャッタ式に起因する現象の発生」の検出結果に基づいてローリング映像の現象を補正し、所定の映像規格(HD-SDIなど)で映像信号を出力する。なお、本発明の撮像システム200から出力する映像信号は、HD-SDIに限定するものではなく、圧縮や暗号化等も問わない。なお、フレームメモリ260は、映像処理の必要性に応じて使用される。また、CPU部270は、撮像システム200の各部を制御する。
【0086】
<検出部240の内部処理>
続いて、検出部240の内部処理について説明する。
図10は、映像信号処理部230の内部処理を説明するブロック図である。
図10に示すように、検出部240は、利得補正部241、画素補間部242、遅延部243、および映像比較部244を備える。
【0087】
利得補正部241は、カラーのグローバル映像(C信号)を利得補正する。この利得補正によって、第1光束と第2光束の光量比Pによる利得差や、副撮像素子221Cと主撮像素子213R、213G、213BのRGB光電変換率の差による利得差が補正される。その結果、グローバル映像の平均信号レベルとローリング映像の平均信号レベルとが揃えられる。
【0088】
画素補間部242は、カラーのグローバル映像のRGB画素配列(ベイヤ配列など)をデモザイク処理などして、RGB3面分のグローバル映像(R’,G’,B’信号)を出力する。
【0089】
遅延部243は、ローリング映像(R,G,B信号)を遅延させて、グローバル映像(R’,G’,B’信号)のフレームタイミングに合わせる。遅延部243は、FIFO(First In First Out)、またはLPF(Low Pass Filter)やEQ(equalizer)などの位相補償回路でもよい。なお、遅延部243は、主撮像素子213R、213G、213Bの駆動信号により信号を所定時間遅延させて読み出せる場合には省いてもよい。
【0090】
映像比較部244は、フレームタイミイグや画素数を合わせたローリング映像(R,G,B信号)とグローバル映像(R’,G’,B’信号)とを画素単位や画素ブロック単位にフレーム比較することにより、RGB別の比較結果を出力する。
【0091】
検出部240は、この比較結果に有意差がある場合、ローリングシャッタ式に起因する現象が発生したと判定する。
【0092】
例えば、グローバル映像とローリング映像との間で被写体の位置や形が異なる場合、検出部240は、ローリング映像にローリングシャッタ歪みが発生したと判定する。
【0093】
また例えば、グローバル映像のフレーム間に瞬間的な信号レベル上昇が生じる場合や、グローバル映像とローリング映像との間に有意な信号レベル差が生じる場合、検出部240はローリング映像にフラッシュバンドが発生したと判定する。
【0094】
<補正部250の内部処理>
続いて、補正部250の内部処理について説明する。
【0095】
図10に示すように、補正部250は、画素座標変換部252、利得補正部253、映像選択部254、ガンマ補正部255、および映像信号出力部256を備える。
【0096】
画素座標変換部252は、検出部240によるローリングシャッタ歪みの検出に応じて、ローリング映像(R,G,B信号)の走査ライン方向の画素ずれをグローバル映像(R’,G’,B’信号)に合わせて画素座標変換する。
【0097】
この画素座標変換によって、ローリング映像には画素情報の欠落領域が発生する。映像選択部254は、この欠落領域に対してグローバル映像(R’,G’,B’信号)に基づく補間画素を埋め込んで合成する。
【0098】
また、映像選択部254は、高速被写体など画素座標変換が困難なローリングシャッタ歪みを検出した場合、ローリング映像(R,G,B信号)の破綻領域や破綻フレームを、グローバル映像(R’,G’,B’信号)の補間領域や補間フレームに差し替える。
【0099】
利得補正部253は、検出部240によるフラッシュバンドの検出に応じて、ローリング映像(R,G,B信号)のフラッシュバンドの領域をRGB別に利得補正して、グローバル映像(R’,G’,B’信号)の対応領域の輝度および色味に合わせる。
【0100】
また、ローリング映像(R,G,B信号)のフラッシュバンドの領域が信号飽和している場合、映像選択部254は、ローリング映像(R,G,B信号)のフラッシュバンドの飽和領域や飽和フレームを、グローバル映像(R’,G’,B’信号)の補間領域や補間フレームに差し替える。
【0101】
以上のように補正または差し替えられたローリング映像(R,G,B信号)は、ガンマ補正部255によるガンマ補正や、色変換、輪郭補正などの必要に応じた映像処理を経た後、映像信号出力部256によって映像信号として出力される。
【0102】
<実施例3の効果>
実施例3は、実施例1,2の効果に加えて、さらに次の効果を奏する。
【0103】
(1)実施例3では、カラーのグローバル映像(R’,G’,B’信号)を生成する。したがって、このカラーのグローバル映像(R’,G’,B’信号)に基づいて、ローリングシャッタ式に起因する現象をカラーで、つまり色成分別に検出することが可能になる。
【0104】
(2)実施例3では、ローリングシャッタ式に起因する現象の色成分別の検出結果に応じて、ローリング映像を色成分別に利得補正することにより、当該現象を色味まで合わせて補正することが可能になる。
【0105】
(3)実施例3では、カラーのグローバル映像(R’,G’,B’信号)を用いて、カラーのローリング映像(R,G,B信号)の破綻領域や破綻フレームを差し替えることが可能になる。
【0106】
(4)実施例3では、比較的光量の少ない第1光束に基づいて、カラーのグローバル映像(R’,G’,B’信号)を生成する。そのため、カラーのグローバル映像(R’,G’,B’信号)は、信号飽和しづらく、フラッシュ光の影響を受けづらい。したがって、カラーのグローバル映像(R’,G’,B’信号)は、フラッシュバンドの検出および補正に好適な映像信号になる。
【0107】
(5)さらに、実施例3では、カラーのグローバル映像(R’,G’,B’信号)は信号飽和しづらいため、高輝度被写体や高彩度被写体の撮像に際して階調飽和や色飽和の影響を受けづらい。そのため、カラーのグローバル映像(R’,G’,B’信号)を所定比率でカラーのローリング映像(R,G,B信号)に加重するなどして、階調飽和や色飽和を修正した広ダイナミックレンジの映像信号を生成することも可能になる。
【0108】
(6)実施例3の副撮像素子221Cは、ローリングシャッタ歪みが生じる高速被写体や、フラッシュ発光下など瞬間的な映像フレームに対して使用される。このような撮影状況では、人間の視覚特性によって画質低下が目立ちにくい。したがって、副撮像素子221Cとしては、比較的低コストの低画素数の撮像素子を使用することが可能になる。
【0109】
<実施形態の補足事項>
上述した実施例1~3は、別々の実施例として説明している。しかしながら本発明はこれに限定されない。例えば、実施例1~3の各機能を適宜に組み合わせた撮像システムを実施してもよい。
【0110】
さらに、上述した実施例1~3では、分解光学系、主撮像部、副撮像部、検出部、および補正部を一体構成した撮像装置において、撮影動作と補正処理とを同時並行に行っている。しかしながら、本発明はこれに限定されない。
【0111】
例えば、撮像システムとして、分解光学系、主撮像部および副撮像部を備える撮像装置(カメラ)と、検出部および補正部を備える画像処理装置とを別体に構成してもよい。その場合、撮像装置では、ローリング映像とグローバル映像とを映像ファイル(例えばRAWファイル)として保存する。この場合の映像ファイルには、ローリング映像とグローバル映像と共に、両映像の間でフレーム同期をとるために必要な情報を含めることが好ましい。このようなシステム構成によって、撮像装置の処理負荷を低減しつつ、ローリングシャッタ式に起因する現象に対して画像処理装置において撮影後に高度な補正処理を行うことが可能になる。
【0112】
さらに、このような画像処理装置は、ハードウェアとしてCPU(Central Processing Unit)やメモリなどを備えたコンピュータシステムとして構成してもよい。このハードウェアがコンピュータ可読媒体に記憶された画像処理プログラムを実行することにより、検出部や補正部の各種機能が実現する。このハードウェアの一部または全部については、専用の装置、汎用の機械学習マシン、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、PLD(programmable logic device)などで代替してもよい。また、ハードウェアやプログラムの一部または全部をネットワーク上のサーバに集中または分散してクラウドシステムを構成することにより、複数のクライアント端末(ユーザ)に対して検出部や補正部の各種機能をサービス提供してもよい。
【0113】
なお、本発明は上記した実施例1~3に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例1~3は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0114】
また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。さらに、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0115】
100…撮像システム、101…撮影光学系、102…分解光学系、110…主撮像部、113R…主撮像素子、113G…主撮像素子、113B…主撮像素子、114…駆動部、120…副撮像部、121G…副撮像素子、122…駆動部、130…検出部、131…フラッシュ検出部、135…歪み量検出部、140…補正部、141…フレームメモリ、142…フラッシュバンド検出部、143…フラッシュバンド補正部、145…歪み補正部、200…撮像システム、201…撮影光学系、202…分解光学系、210…主撮像部、220…副撮像部、230…映像信号処理部、240…検出部、241…利得補正部、242…画素補間部、243…遅延部、244…映像比較部、250…補正部、252…画素座標変換部、253…利得補正部、254…映像選択部、255…ガンマ補正部、256…映像信号出力部、260…フレームメモリ、270…CPU部
図1
図2
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図10