IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ゼロックス コーポレイションの特許一覧

特許7379227非多孔質基材上にインクジェット印刷するための水性インク組成物
<>
  • 特許-非多孔質基材上にインクジェット印刷するための水性インク組成物 図1
  • 特許-非多孔質基材上にインクジェット印刷するための水性インク組成物 図2
  • 特許-非多孔質基材上にインクジェット印刷するための水性インク組成物 図3
  • 特許-非多孔質基材上にインクジェット印刷するための水性インク組成物 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】非多孔質基材上にインクジェット印刷するための水性インク組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/30 20140101AFI20231107BHJP
【FI】
C09D11/30
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020046463
(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公開番号】P2020172632
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-03-13
(31)【優先権主張番号】16/380,014
(32)【優先日】2019-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーナ・レセコー
(72)【発明者】
【氏名】サイエド・アリ
(72)【発明者】
【氏名】カーラ・ブラウン
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-119027(JP,A)
【文献】国際公開第2016/092309(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0171386(US,A1)
【文献】国際公開第2010/071646(WO,A1)
【文献】特開平08-302264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/30-11/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非多孔質基材上にインクジェット印刷するための水性インク組成物であって、
5~40重量%の官能化一次ラテックスであって、
芳香族官能基と、
前記非多孔質基材への接着を提供するための水素結合基と、
可撓性側鎖と、
前記官能化一次ラテックスの自己乳化を可能にするためのイオン性官能基と、を含む、官能化一次ラテックスと、
5~20重量%の二次ラテックス結合剤と、
1つ以上の共溶媒と、を含み、前記水性インク組成物が、25℃で10ミリパスカル秒(mPa・s)未満の粘度を有し
前記非多孔質基材が、ポリオレフィン材料を含み、
前記水素結合基が、環状分子又は芳香族分子に結合された官能基を含む分子を含み、
前記分子が、尿素、アラントイン、チラミン、グルコース、アクリロイルグルコフラノース(MAGP)、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アクリルアミド、アクリルアミドフェニルボロン酸、アミノエチルメタクリルアミド、アクリロイルモルホリン、又はアセトキシフェネチルアクリレートのうちの少なくとも1つを含み、
前記イオン性官能基が、カルボン酸、スルホン酸、又はアンモニウムのうちの少なくとも1つを含み、
前記芳香族官能基、前記水素結合基、前記可撓性側鎖、及び前記イオン性官能基が、ポリ(スチレン-alt-無水マレイン酸)に付加されている、水性インク組成物。
【請求項2】
前記二次ラテックス結合剤が、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリオキシエチレン、又はポリビニルアルコールのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の水性インク組成物。
【請求項3】
前記1つ以上の共溶媒が、プロピレングリコールを含む、請求項1に記載の水性インク組成物。
【請求項4】
前記プロピレングリコールが、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、又はジプロピレングリコールメチルエーテルのうちの少なくとも1つを含む、請求項3に記載の水性インク組成物。
【請求項5】
前記可撓性側鎖が、ブチル、ヘキシル、オクチル、又はデシルのうちの少なくとも1つの側鎖を有する分岐状アルキルを含む、請求項1に記載の水性インク組成物。
【請求項6】
非多孔質基材上にインクジェット印刷するための水性インク組成物を形成するための方法であって、
官能化一次ポリマーラテックスを調製することであって、前記官能化一次ポリマーラテックスが、芳香族官能基と、前記非多孔質基材への接着を提供するための水素結合基と、可撓性側鎖と、前記官能化一次ラテックスの自己乳化を可能にするためのイオン性官能基とを有する、調製することと、
前記官能化一次ポリマーラテックスを、二次ラテックス結合剤並びに1つ以上の共溶媒及び添加剤と混合して、25℃で10ミリパスカル秒(mPa・s)未満の粘度を有する水性インク組成物を形成することとを含み、
前記非多孔質基材が、ポリオレフィン材料を含み、
前記水素結合基が、環状分子又は芳香族分子に結合された官能基を含む分子を含み、
前記分子が、尿素、アラントイン、チラミン、グルコース、アクリロイルグルコフラノース(MAGP)、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アクリルアミド、アクリルアミドフェニルボロン酸、アミノエチルメタクリルアミド、アクリロイルモルホリン、又はアセトキシフェネチルアクリレートのうちの少なくとも1つを含み、
前記イオン性官能基が、カルボン酸、スルホン酸、又はアンモニウムのうちの少なくとも1つを含み、
前記芳香族官能基、前記水素結合基、前記可撓性側鎖、及び前記イオン性官能基が、ポリ(スチレン-alt-無水マレイン酸)に付加されており、
調製される前記官能化一次ポリマーラテックスが、5~40重量パーセントの前記水性インク組成物中の固形分を含み、
前記二次ラテックス結合剤が、5~20重量パーセントの前記水性インク組成物中の固形分を含む、方法。
【請求項7】
前記可撓性側鎖を有する前記官能化一次ポリマーラテックスを調製することが、
ブチル、ヘキシル、オクチル、又はデシルのうちの少なくとも1つの側鎖を有する分岐状アルキルで、前記一次ポリマーラテックスを化学修飾することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記二次ラテックス結合剤が、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリオキシエチレン、又はポリビニルアルコールのうちの少なくとも1つを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ以上の共溶媒が、プロピレングリコールを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記プロピレングリコールが、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、又はジプロピレングリコールメチルエーテルのうちの少なくとも1つを含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、インク組成物に関し、より具体的には、非多孔質基材上にインクジェット印刷するための低毒性を有する成分を有する水性インク組成物、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル印刷、具体的には、インクのインクジェット印刷は、多孔質紙基材上で行うことができる。インクは、乾燥して、汚れなく多孔質紙基材上に保持し得る。インクジェット印刷に使用されるインクは、インクジェットプリンタで使用される印刷ヘッドを通して、インクを制御及び射出させることができる特定の特性を有し得る。インクジェットプリンタは、印刷ヘッドのノズルからインクを分配又は噴出するようにデジタル制御され得る。
【0003】
非多孔質基材上の印刷は、プラスチックフィルムが包装に使用される際に望ましい場合がある。食品包装などの特定の包装の場合、インクは、インク成分の移動によって引き起こされ得る潜在的な健康問題を防止するために、低い毒性を有しなければならない。しかしながら、UV硬化インクなどの非多孔質基材上に印刷することができるインクジェットインクは、包装から製品へと移動し、消費者にとって懸念をもたらし得る化学成分を有する。代替的に、低い毒性を有する現在入手可能な水性インクは、非多孔質基材上に効果的に印刷することができない。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に示される態様によれば、非多孔質基材上にインクジェット印刷するための低毒性を有する水性インク組成物、及びその形成方法が提供される。実施形態の開示される1つの特徴は、芳香族官能基、水素結合基、可撓性側鎖、及びイオン性官能基を有する、一次ポリマーラテックスを調製することと、一次ポリマーラテックスを、二次ラテックス結合剤及び1つ以上の共溶媒と混合することと、を含む、方法である。
【0005】
実施形態の別の開示される特徴は、非多孔質基材上の低毒性水性インク組成物である。一実施形態では、低毒性水性インク組成物は、5~40重量パーセントの官能化低毒性一次ラテックスと、5~20重量パーセントの二次ラテックス結合剤と、1つ以上の共溶媒と、を含む。官能化低毒性一次ラテックスは、芳香族官能基、水素結合基、可撓性側鎖、及びイオン性官能基を含む。低毒性水性インク組成物は、25℃で10ミリパスカル秒(mPa・s)未満の粘度を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本開示の教示は、添付図面と併せて以下の発明を実施するための形態を考慮することによって容易に理解することができる。
【0007】
図1】本開示の官能化ラテックスの例示的な構造を図示する。
図2】本開示の強い水素結合を有する例示的な官能基を図示する。
図3】本開示のイオン安定化界面活性剤を含まないラテックスの一例を図示する。
図4】本開示の非多孔質基材上にインクジェット印刷するための水性インク組成物を形成するための例示的な方法のフローチャートを図示する。
【0008】
理解を容易にするために、同一の参照番号を使用して、可能な場合には、図面に共通する同一の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、非多孔質基材上にインクジェット印刷するための低毒性を有する成分を含有する水性インク組成物、及びその製造方法を提供する。上述のように、プラスチックなどの非多孔質基材上にインクジェット印刷を使用することが望ましい場合がある。しかしながら、インクジェット印刷するために使用される現在利用可能なインクは、インクが汚れるか、又は非多孔質基材に付着しない場合に、潜在的に有害な化学成分を含有するか、又は非多孔質基材上で使用可能ではない。
【0010】
本開示は、低い毒性を有する水性インク組成物を提供する。水性系インク組成物は、食品用途で使用されるプラスチック包装などの非多孔質基材上に印刷するために使用され得る。加えて、水性系インク組成物は、インクがインクジェット印刷ヘッド又はプリンタで使用されることを可能にする低粘度及び所望の粒径などの特性を有する。
【0011】
本開示の実施形態は、プラスチック基材上のインクの補強を提供するいくつかのラテックス及び/又は結合剤を含有する水性インク組成物を提供する。結果として、これらのインクは、プラスチック基材上に良好なフィルム形成、及びプラスチックフィルムに対する良好な接着性を有し、かつ摩擦抵抗性である。
【0012】
一実施形態では、低毒性水性インク組成物は、低毒性官能化一次ラテックス、及び二次ラテックス、又は結合剤を含み得る。水性インク組成物は、水系溶液中の1つ以上の共溶媒及び添加剤と組み合わせてもよい。
【0013】
一実施形態では、一次ラテックスは、間接的な食品接触を有することができる非多孔質又はプラスチック包装材料に使用することができる低毒性ラテックスであり得る。低毒性一次ラテックスの一例としては、100~300ナノメートル(nm)の粒径を有するアンモニアで安定化されたポリスチレンのコポリマーが挙げられ得る。低毒性一次ラテックスは、連邦規則コード175.330に従って食品接触物質に使用される直接添加剤のリスト上にあるポリマーから構成され得る。例示的なポリスチレンコポリマーとしては、ポリ(無水マレイン酸-コ-スチレン)が挙げられ得る。
【0014】
加えて、ラテックスは、水系であってもよく、紫外線(UV)硬化インクに典型的に用いられる任意の触媒又は(光)開始剤を含まなくてもよいため、低い毒性を有し得る。加えて、水性インク組成物全体は、低毒性を有する共溶媒(例えば、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルなどのプロピレングリコール)を使用してもよい。
【0015】
一次ラテックスは、水性インク組成物がインクジェットプリンタで使用され、非多孔質基材上に印刷されることを可能にするための特定の特性を有するように官能化されてもよい。非多孔質基材は、可撓性及び/又は伸縮性プラスチックフィルムを含むプラスチックフィルムを含み得る。プラスチックの種類としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリエチレン、及びポリプロピレンなどの包装に遍在するポリオレフィン材料が挙げられ得る。他の非多孔質基材としては、金属(例えば、鋼、アルミニウムなど)又はガラスが挙げられ得る。
【0016】
一実施形態では、一次ラテックスは、4つの主な化学官能基を含有するように官能化又は処理されてもよい。例えば、一次ラテックスは、異なる化学官能基を提供する異なる分子と混合されるか、又はそれで化学修飾されてもよい。官能基としては、芳香族官能基、水素結合基、可撓性側鎖、及びイオン性官能基が挙げられ得る。芳香族官能基は、フィルム形成用であり得る。芳香族官能基としては、スチレン、フタレート、ピロリドンなどが挙げられ得る。
【0017】
水素結合基は、非多孔質基材上のインクの機械的補強を提供し得る。換言すれば、水素結合基は、非多孔質基材上に印刷されたときに、水性系インク組成物が摩擦抵抗性であることを補助し、非多孔質基材への良好な接着を提供し得る。
【0018】
一次ラテックスは、ヒドロキシル、アミン、及びアミドなどの強い水素結合基を含有する分子で官能化され得る。分子は、環状及び/又は芳香族分子に結合したアミド官能基を含み得る。分子の例としては、尿素、アラントイン、チラミン、グルコース、アクリロイルグルコフラノース(MAGP)、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アクリルアミド、アクリルアミドフェニルボロン酸、アミノエチルメタクリルアミド、アクリロイルモルホリン、アセトキシフェネチルアクリレートなどが挙げられ得る。
【0019】
ポリマーラテックス中の可撓性側鎖は、プラスチックフィルムなどの可撓性基材とのより良好な適合性を得るために組み込まれ得る。可撓性側鎖の例としては、アルキル含有分子(例えば、ブチル、ヘキシル、オクチル、デシルなど)、並びにイソ-、sec-、又はtert-アルキルなどの関連する異性体)が挙げられ得る。このようなアルキルの例としては、イソブチルアクリレート、(イソ)-オクチルアクリレート、イソデシルアクリレートなど)が挙げられ得る。
【0020】
ポリマーラテックス中のイオン性官能基は、ラテックス粒子間の静電的反発により、水溶液中のポリマーラテックス粒子の安定性、及び低粘度を付与し得る。例えば、水中30重量パーセント(重量%)における官能化一次ラテックスの粘度は、25℃で20ミリパスカル秒(mPa・s)未満であり得る。一実施例では、粘度は、25℃で10Cps未満であり得る。更に、一次ラテックス中のイオン性官能基は、界面活性剤を含まないポリマーの自己乳化を可能にし得、これは、典型的に使用される界面活性剤を脱着及び/又は不安定化することができないため、一次ラテックスの安定性を強化する。
【0021】
イオン性官能基は、一次ラテックスが水及び水溶液中で安定したままであることを確実にし得る。イオン性官能基は、水の凝集、フロキュレーション、クリーミング、沈降、及び/又は沈殿を防止し得る。
【0022】
一実施形態では、一次ラテックスに組み込まれ得るイオン性官能基は、カルボン酸、スルホン酸、及びアンモニウムなどの関連する塩を含み得る。イオン性官能基を有する出発モノマーの追加の例としては、アクリル酸、エチルアクリル酸、メチルアクリル酸、メタクリル酸、スルホプロピルアクリレート、[2-(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリドなどが挙げられ得る。
【0023】
上記の異なる官能基のための異なる分子は、アミン含有分子をポリ(無水マレイン酸-コ-スチレン)に求核付加することによって組み込まれ得る。異なる水性インク組成物の例は、以下に更に詳細に記載される。
【0024】
一実施形態では、官能化一次ラテックスの分子量は、約1,000~100,000ダルトン(Da)であり得る。一実施例では、より低い重量(例えば、約2,000Da)を有するポリマーは、ラテックスが水中により容易に分散され、低多分散性指数(例えば、0.2未満)を有する小さい粒子(例えば、約150~200nm)を形成することを可能にし得る。一方、より高い分子量を有するポリマーは、より大きい鎖の絡み合いに起因して、より良好な機械的特性を提供し得る。
【0025】
一実施形態では、ポリマーラテックス中の各官能基の含有量は、5~80重量%の範囲であり得る。一実施形態では、ポリマーラテックス中のスチレン含有量は、基材上の最終水性インク組成物の十分な堅牢性及び機械的特性を達成するために、少なくとも50重量%以上であり得る。一実施形態では、ポリマーラテックス中のイオン性モノマー(例えば、イオン性官能基)の含有量は、約5~10重量%であり得る。水素結合モノマーの含有量(例えば、ポリマーラテックス中の水素結合基は、約5~10重量%であり得る)。
【0026】
一実施形態では、二次ラテックス及び/又は結合剤はまた、強い水素結合基を有し得る。二次ラテックスとしては、例えば、30~100kDaの分子量を有するポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリオキシエチレン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレングリコール)、ヒドロキシエチルセルロースなどが挙げられ得る。別の実施形態では、二次ラテックスは、約200kDa以上の分子量を有するアクリルコポリマー樹脂であり得る。アクリルコポリマー樹脂分散体の例としては、Joncryl FLX5201、Joncryl FLX5100、Joncryl DFC3040、及びJoncryl ECO2177などの商品名によって既知である製品が挙げられ得る。
【0027】
一実施形態では、水性インク組成物は、インク中の固形分の観点から、5~40重量%の官能化一次ラテックス及び5~20重量%の二次ラテックス又は結合剤を含み得る。一実施形態では、官能化一次ラテックスに対する二次ラテックス又は結合剤の比率は、5~100重量%であり得る。一実施形態では、比率は、約20重量%であり得る。
【0028】
上述したように、官能化一次ラテックスに対する二次ラテックスの約20重量%の比率で、共溶媒系及び添加剤を添加して、非多孔質基材上の水性系インク組成物の良好な湿潤及び接着を提供し得る。一実施形態では、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、及びジプロピレングリコールメチルエーテルなどのプロピレングリコールが使用され得る。一実施形態では、添加剤としては、pH調整剤(例えば、トリエタノールアミン)、界面活性剤(例えば、Surfynol420)、又は接着促進剤(例えば、BYK4500)が挙げられ得る。
【0029】
図1は、官能化一次ラテックスの例示的な化学構造を図示する。例えば、官能化一次ラテックスは、芳香族官能基として、「x」個のスチレンのモノマーを含み得る。官能化一次ラテックスは、「y」個の水素結合基を含み得る。官能化一次ラテックスは、イオン性官能基を提供するために、「z」個のカルボン酸アンモニウム塩含有モノマーを含み得る。官能化一次ラテックスは、「n」個の可撓性側鎖を含み得る。
【0030】
図2は、図1の「R」基の異なる例を図示する。例えば、「R」基は、尿素又はアラントインなどの異なるヒドロキシル及びアミド含有分子であり得る。
【0031】
図3は、図1に図示する官能化一次ラテックスが水中に分散されたときに生成されるラテックス粒子の例を図示する。ラテックス粒子は、次いで、水系インクに添加され、インクジェット印刷ヘッドを通して噴出され得るインクジェットプリンタに使用され得る。
【0032】
図4は、非多孔質基材上にインクジェット印刷するための低毒性を有する水性インク組成物を形成するための例示的な方法400のフローチャートを図示する。ブロック402において、方法400は開始する。ブロック404において、方法400は、芳香族官能基、水素結合基、可撓性側鎖、及びイオン性官能基を有する一次ポリマーラテックスを調製する。上述のように、ポリマー(例えば、ポリ(無水マレイン酸-コ-スチレン))を官能化するために、異なる分子が、低毒性ポリマーに添加され得る。各官能基は、水性インク組成物が、非多孔質基材への良好な湿潤及び接着と、インクジェットプリンタに使用することができる良好な摩擦抵抗性と、を伴って、低粘度を有することを可能にする、官能化一次ポリマーラテックスの異なる機能を提供し得る。
【0033】
ブロック406において、方法400は、官能化される一次ラテックスを、二次ラテックス結合剤並びに1つ以上の共溶媒及び添加剤と混合する。一実施形態では、二次ラテックス結合剤並びに1つ以上の共溶媒及び添加剤が、官能化一次ラテックスに添加され、撹拌され得る。
【0034】
一実施形態では、官能化一次ラテックス、二次ラテックス結合剤、及び1つ以上の共溶媒の組み合わせが、性系インクに添加され得る。次いで、インクジェットプリンタを使用して非多孔質基材上に印刷するために、インクが使用され得る。インクはまた、食品業界で使用されるプラスチックフィルム上にインクを印刷することを可能にする低い毒性を提供し得る。ブロック408において、方法400は、終了する。
【0035】
以下は、上述の方法に従って調製された官能化一次ラテックスの例である。
【実施例1】
【0036】
室温で24時間混合物を撹拌することによって、ポリ(スチレン-alt-無水マレイン酸)(数平均分子量(M)2,300、50ミリリットル(mL)のアセトン中10g)をオクチルアミン(32ミリモル(mmol)、3.9g)で修飾し、ポリ(スチレン-コ-無水マレイン酸-コ-N-オクチルマレアミド酸)を得た。イオン性官能基をポリマー中に導入するために、1.25gのNHOH(29重量%)をポリマー溶液に添加し、30分間撹拌した。ラテックスを調製するために、アセトン中のポリ(スチレン-コ-無水マレイン酸-コ-N-オクチルマレアミド酸)溶液を100mLのアセトンで更に希釈し、50℃に加熱した。アセトン中のポリマー溶液を、機械的撹拌下で、60℃で75mLの水に滴下した。40℃で加熱し、撹拌することによって、溶媒を蒸発させることによって、ラテックスを30重量%の固形分に濃縮した。
【実施例2】
【0037】
室温で24時間混合物を撹拌することによって、ポリ(スチレン-無水マレイン酸)(Mn2,300、50mLのアセトン中10g)を、オクチルアミン(32mmol、3.9g)で修飾した。水素結合アラントイン官能性を導入するために、9.6mmol、1.5gのアラントインをジメチルスルホキシドに溶解し、ポリマー溶液に添加し、室温で24時間撹拌した。溶媒を減圧下で蒸発させ、次いで、官能化ポリマーを50℃の150mLのアセトンに溶解させた。ラテックスを調製するために、ポリマー溶液を100mLのアセトンで更に希釈し、50℃に加熱した。ポリマー溶液を、機械的撹拌下で、60℃の75mLの水に滴下した。40℃で加熱し、撹拌することによって、溶媒を蒸発させることによって、ラテックスを30重量%の固形分に濃縮した。
【実施例3】
【0038】
室温で24時間混合物を撹拌することによって、ポリ(スチレン-無水マレイン酸)(Mn2,300、50mLのアセトン中10g)を、オクチルアミン(32mmol、3.9g)で修飾した。水素結合尿素官能性を導入するために、9.6mmol、0.58gの尿素をジメチルスルホキシドに溶解し、ポリマー溶液に添加し、室温で24時間撹拌した。溶媒を減圧下で蒸発させ、次いで、官能化ポリマーを50℃の150mLのアセトンに溶解させた。ラテックスを調製するために、ポリマー溶液を100mLのアセトンで更に希釈し、50℃に加熱した。ポリマー溶液を、機械的撹拌下で、60℃の75mLの水に滴下した。40℃で加熱し、撹拌することによって、溶媒を蒸発させることによって、ラテックスを30重量%の固形分に濃縮した。
【0039】
官能化一次ラテックスの特性
ラテックス及びインクの粒径は、150~250nmの範囲内で低く、試料が室温で約1ヶ月間保管されるとき、変化しないままである。これは、ラテックス中のイオン性官能基が、ラテックス粒子を水中で効果的に安定化させることを確認する。
【0040】
[表]
【0041】
30重量%での官能化ラテックスの粘度は低く、それらは様々な印刷プロセス、特にインクジェット印刷に適している。ラテックスの低粘度は、ラテックス粒子の表面上のイオン性官能基による強い静電的反発及び安定化に起因して、粒子間の低分子間相互作用によるものであり得る。
【0042】
[表]
【0043】
以下は、二次ラテックス及び共溶媒系の異なる組成物との、官能化一次ラテックスを含有する水性インク配合物の例を示す表である。実施例の後に以下に示す表1は、摩擦抵抗及び接着特性を含む官能化一次ラテックスを有するインクの特性を提供する。
【0044】
実施例4.官能化ポリ(スチレン-コ-無水マレイン酸-コ-N-オクチルマレアミド酸)ラテックスを有する水性インク。
【0045】
[表]
【0046】
実施例5.ポリ(スチレン-コ-無水マレイン酸-コ-N-オクチルマレアミド酸)ラテックス及びポリウレタンラテックス(Bayhydrol UH2606)を有する水性インク。
【0047】
[表]
【0048】
実施例6.ポリ(スチレン-コ-無水マレイン酸-コ-N-オクチルマレアミド酸)アラントイン官能化ラテックス及びポリウレタンラテックス(Bayhydrol UH2606)を有する水性インク。
【0049】
[表]
【0050】
実施例7.官能化ラテックスを有しない比較インク。
【0051】
[表]
【0052】
実施例8.Joncryl FLX5201ラテックスを有する比較水性インク。
【0053】
[表]
【0054】
実施例9.Joncryl FLX5201ラテックス及びポリ(スチレン-コ-無水マレイン酸-コ-N-オクチルマレアミド酸)ラテックスを有する水性インク。
【0055】
[表]
【0056】
実施例10.Joncryl FLX5201ラテックス及びポリ(スチレン-コ-無水マレイン酸-コ-N-オクチルマレアミド酸)ラテックス(尿素で官能化された)を有する水性インク。
【0057】
[表]
【0058】
プラスチックフィルム上の官能化ラテックスを有する水性インクの特性
【0059】
【表1】
【0060】
ラテックスを含有する水性インクを未処理のポリエチレンテレフタレート(PET)プラスチックフィルム上に塗布し、60℃で乾燥させた。インクの機械的特性は、乾燥紙繊維光学的拭き取り布を用いてインク表面にわたって二重摩擦を介して摩擦抵抗を試験することによって評価した。0~5のスケール(0は、インクのすべてが基材から剥がれたことを示し、5は、インクのすべてが基材上に残ることを示す)を使用して、接着テープを用いたクロスハッチ接着テープ試験によって接着力を試験した。
【0061】
官能化ラテックスは、強い水素結合を有する他の結合剤及びラテックス(ポリ(ビニルアルコール-コ-エチレン)及びポリウレタンラテックスなど(Bayhydrol UH2606、Joncryl Flx5201など))との組み合わせにおいて特に有効である。ポリウレタンラテックスのみを含有するインクと比較して、官能化ラテックスの添加は、摩擦抵抗を最大70の二重摩擦まで著しく増加させ、PETプラスチックフィルムに対する接着性を等級4まで著しく増加させる。
【0062】
比較例は、インク配合物中の単一の種類のラテックスとは対照的に、2種類のラテックス(例えば、上述の官能化一次ラテックス及び二次ラテックス)を組み合わせる相乗効果を実演する。2つの異なるラテックスを用いて調製されたインクの特性の強化は、ポリマーフィルムを補強する強い水素結合から生じることが予想される。単一の官能化ラテックス(実施例11)を使用して、PET基材上にインク及びフィルムを調製することができる。しかしながら、機械的特性は劣っており、特に摩擦抵抗が低い。これらのラテックスは、典型的には、低分子量(10kDa未満)を有し、これは堅牢なフィルムを形成するのに十分ではない。一方、高分子量(200kDa超)のラテックス(実施例7及び実施例8)は、より良好な摩擦抵抗を有するが、プラスチックPET基材への接着性に劣るインクを製造する。したがって、2つのラテックスの組み合わせは、良好なフィルム形成、摩擦抵抗、及びプラスチックへの接着(実施例5、6、9、10)の観点から相乗効果を提供する。
【0063】
水性インクの粘度は低く、それらは様々な印刷プロセス、特にインクジェット印刷に適している。ラテックスの低粘度は、ラテックス粒子の表面上のイオン性官能基による強い静電的反発及び安定化に起因して、粒子間の低分子間相互作用によるものであり得る。
【0064】
[表]
【0065】
様々な上記で開示された及び他の特徴及び機能、又はこれらの代替物が、他の異なるシステム又は用途に組み合わされ得ることが理解されるであろう。現在予想されていないか又は予測されていないそこでの様々な代替物、修正物、変形物、又は改善物は、以後に当業者によって行われてもよく、これらはまた、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図されている。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕非多孔質基材上にインクジェット印刷するための水性インク組成物を形成するための方法であって、
芳香族官能基、水素結合基、可撓性側鎖、及びイオン性官能基を有する、一次ポリマーラテックスを調製することと、
前記一次ポリマーラテックスを、二次ラテックス結合剤並びに1つ以上の共溶媒及び添加剤と混合することと、を含む、方法。
〔2〕前記水素結合基を有する前記一次ポリマーラテックスを調製することが、
ヒドロキシル基、アミン基、又はアミド基のうちの1つ以上を含む分子で、前記一次ポリマーラテックスを化学修飾することを含む、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕前記分子が、環状分子又は芳香族分子に結合された官能基を含む、前記〔2〕に記載の方法。
〔4〕前記分子が、尿素、アラントイン、又はチラミンのうちの少なくとも1つを含む、前記〔3〕に記載の方法。
〔5〕前記可撓性側鎖を有する前記一次ポリマーラテックスを調製することが、
ブチル(butyle)、ヘキシル、オクチル、又はデシルのうちの少なくとも1つの側鎖を有する分岐状アルキルで、前記一次ポリマーラテックスを化学修飾することを含む、前記〔1〕に記載の方法。
〔6〕前記イオン性官能基を有する前記一次ポリマーラテックスを調製することが、
カルボン酸、スルホン酸、又はアンモニウムのうちの少なくとも1つで、前記一次ポリマーラテックスを化学修飾することを含む、前記〔1〕に記載の方法。
〔7〕調製される前記一次ポリマーラテックスが、5~40重量パーセントの前記水性インク組成物中の固形分を含む、前記〔1〕に記載の方法。
〔8〕前記二次ラテックス結合剤が、5~20重量パーセントの前記水性インク組成物中の固形分を含む、前記〔1〕に記載の方法。
〔9〕前記一次ポリマーラテックスが、ポリスチレンのコポリマーを含む、前記〔1〕に記載の方法。
〔10〕前記二次ラテックス結合剤が、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリオキシエチレン、又はポリビニルアルコールのうちの少なくとも1つを含む、前記〔1〕に記載の方法。
〔11〕前記1つ以上の共溶媒が、プロピレングリコールを含む、前記〔1〕に記載の方法。
〔12〕前記プロピレングリコールが、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、又はジプロピレングリコールメチルエーテルのうちの少なくとも1つを含む、前記〔11〕に記載の方法。
〔13〕非多孔質基材上にインクジェット印刷するための水性インク組成物であって、
5~40重量%の官能化一次ラテックスであって、
芳香族官能基と、
水素結合基と、
可撓性側鎖と、
イオン性官能基と、を含む、官能化一次ラテックスと、
5~20重量%の二次ラテックス結合剤と、
1つ以上の共溶媒と、を含み、前記水性インク組成物が、25℃で10ミリパスカル秒(mPa・s)未満の粘度を含む、水性インク組成物。
〔14〕前記官能化一次ラテックスが、100~300ナノメートル(nm)の粒径を有するアンモニアを有するポリスチレンの低毒性コポリマーを含む、前記〔13〕に記載の水性インク組成物。
〔15〕前記二次ラテックス結合剤が、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリオキシエチレン、又はポリビニルアルコールのうちの少なくとも1つを含む、前記〔13〕に記載の水性インク組成物。
〔16〕前記1つ以上の共溶媒が、プロピレングリコールを含む、前記〔13〕に記載の水性インク組成物。
〔17〕前記プロピレングリコールが、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、又はジプロピレングリコールメチルエーテルのうちの少なくとも1つを含む、前記〔16〕に記載の水性インク組成物。
〔18〕前記水素結合基が、環状分子又は芳香族分子に結合された官能基を含む分子を含む、前記〔13〕に記載の水性インク組成物。
〔19〕前記可撓性側鎖が、ブチル、ヘキシル、オクチル、又はデシルのうちの少なくとも1つの側鎖を有する分岐状アルキルを含む、前記〔13〕に記載の水性インク組成物。
〔20〕非多孔質基材上にインクジェット印刷するための水性インク組成物を形成するための方法であって、
50ミリリットル(mL)のアセトン中の10グラム(g)のポリスチレン-alt-無水マレイン酸(2,300の数平均分子量(Mn))の混合物を、3.9gの32ミリモル(mmol)のオクチルアミンと組み合わせることと、
前記混合物を室温で24時間撹拌することと、
ヒドロキシル及びアミド含有化合物をジメチルスルホキシド中に溶解させることと、
前記ジメチルスルホキシド中に溶解した前記ヒドロキシル及びアミド含有化合物を前記混合物に添加し、24時間撹拌して、官能化ポリマーを生成することと、
前記官能化ポリマーを撹拌しながら水中に添加することによって、ラテックスを調製することと、
官能化されるラテックスを、二次ラテックス、共溶媒、pH調整剤、少なくとも1つの界面活性剤、及び接着促進剤と組み合わせることによって、水性インク組成物を調製することと、を含む、方法。
図1
図2
図3
図4