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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-15
(54)【発明の名称】箔転写装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/48 20060101AFI20231107BHJP
   B41F 16/00 20060101ALI20231107BHJP
   B44C 1/17 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
B41J2/48
B41F16/00 B
B41F16/00 Z
B44C1/17 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020055712
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021045955
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2019165683
(32)【優先日】2019-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】317009525
【氏名又は名称】DGSHAPE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】中林 昌基
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-098554(JP,A)
【文献】特許第6100449(JP,B1)
【文献】特開平10-283894(JP,A)
【文献】実開平02-038769(JP,U)
【文献】特許第6505805(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/48
B41F 16/00
B44C 1/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部が形成された筐体と、
前記筐体に設けられ、前記開口部を開閉するカバーと、
前記筐体内に配置され、被転写物を載置可能に形成された支持台と、
前記筐体内かつ前記支持台の上方に配置され、かつ、光吸収性を有し、前記被転写物上に載置された熱転写箔を上方から押圧して前記熱転写箔を前記被転写物上に固定する光吸収フィルムと、
前記光吸収フィルムを保持し、前記筐体に着脱自在に構成されたフィルム保持具と、
ケース本体と、前記被転写物および前記被転写物上に配置された前記熱転写箔および前記光吸収フィルムを押圧すると共に前記光吸収フィルムに向けて光を照射可能に構成された押圧体と、を有する転写用ツールと、
前記転写用ツールを前記支持台に対して相対的に移動させる移動機構と、を備え、
前記フィルム保持具は、
上下方向に貫通する開口が形成され、平面視で前記開口と重なるように前記光吸収フィルムを保持する保持枠と、
前記保持枠から下方に向けて延び、前記筐体に形成された挿入孔に挿入される棒状部材と、を備えている、箔転写装置。
【請求項2】
正面視で上下方向に延びる軸をZ軸とし、正面視で前記Z軸と直交する軸をX軸としたとき、
前記棒状部材は、前記保持枠の前記X軸方向の一方の端部から下方に延びる第1棒状部材と、前記保持枠の前記X軸方向の他方の端部から下方に延びる第2棒状部材と、を含む、請求項1に記載の箔転写装置。
【請求項3】
前記支持台には、前記第1棒状部材が挿入されかつ平面視で前記挿入孔と重なる第1貫通孔と、前記第2棒状部材が挿入されかつ平面視で前記挿入孔と重なる第2貫通孔とが形成されている、請求項2に記載の箔転写装置。
【請求項4】
前記第1貫通孔には、前記第1棒状部材を保持する保持部材が設けられている、請求項3に記載の箔転写装置。
【請求項5】
前記支持台に設けられ、前記押圧体の有無を検出するために用いられる検出用治具を備え、
前記検出用治具は、平面視で前記保持枠と重ならない、請求項1から4のいずれか一項に記載の箔転写装置。
【請求項6】
前記検出用治具は、平面視で矩形状に形成された転写領域の四隅のうちの一隅でありかつ前記転写用ツールが待機位置に位置するときに平面視で前記転写用ツールと重なる第1検出位置、または、前記転写領域の四隅のうちの他の一隅でありかつ前記第1検出位置の対角に位置する第2検出位置に設けられている、請求項5に記載の箔転写装置。
【請求項7】
前記押圧体は、前記ケース本体の下面から下方に向けて突出するように設けられ、
前記保持枠は、前記検出用治具よりも上方に位置し、
平面視で前記押圧体が前記検出用治具と重なる第1位置において前記転写用ツールを下降させたとき、および、平面視で前記押圧体が前記検出用治具と重ならずかつ平面視で前記ケース本体の少なくとも一部が前記検出用治具と重なる第2位置において前記転写用ツールを下降させたときに、前記保持枠は、前記転写用ツールと接触しないように形成されている、請求項5または6に記載の箔転写装置。
【請求項8】
前記転写用ツールおよび前記移動機構を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、
前記押圧体の下端から前記ケース本体の下面までの上下方向の長さである基準長さを記憶する記憶部と、
前記第1位置において、前記転写用ツールを下降させて、前記転写用ツールの一部と前記検出用治具とが接触したときの前記転写用ツールの上下方向の第1高さ位置を検出する第1検出部と、
前記第2位置において、前記転写用ツールを下降させて、前記転写用ツールの一部と前記検出用治具とが接触したときの前記転写用ツールの上下方向の第2高さ位置を検出する第2検出部と、
前記基準長さと、前記第1高さ位置および前記第2高さ位置とに基づいて、前記押圧体の有無を判断する判断部と、を備えている、請求項7に記載の箔転写装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記判断部によって前記押圧体が無いと判断されたときに、前記押圧体が前記ケース本体に取り付けられていないことを通知する通知部を有している、請求項8に記載の箔転写装置。
【請求項10】
前記転写用ツールは、前記押圧体を介して前記熱転写箔に向けて光を照射する光源を有し、
前記制御装置は、前記光源からの光の照射を制御する光制御部を有し、
前記光制御部は、前記判断部によって前記押圧体が有ると判断されたときには、前記光源から光を照射可能に構成され、かつ、前記判断部によって前記押圧体が無いと判断されたときには、前記光源から光を照射不能に構成されている、請求項8または9に記載の箔転写装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、箔転写装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、意匠性の向上等を目的として、熱転写箔(熱転写シートともいう)を利用した熱転写法による装飾加工が行われている。熱転写箔は、大まかには、基材と、装飾層と、接着層とがこの順に積層されて構成されている。そして転写に際しては、被転写物上に、接着層側が当接するように熱転写箔を重ね、光(例えばレーザー光)を照射する光源および熱転写箔を押圧する押圧体を備えた転写用ツールで熱転写箔を上から押圧しながら光を照射して熱転写箔を加熱する。これにより、熱転写箔のうち押圧されている部分の接着層が溶融され、被転写物の表面に付着したのち、放熱により硬化する。その結果、被転写物から熱転写箔の基材を剥離することで、箔押しした部分に対応する形状の装飾層を接着層とともに被転写物に付着させることができる。これにより、被転写物の表面に、任意の形状(例えば図形や文字)を有する装飾が施される。
【0003】
例えば、特許文献1には、レーザー光を照射する転写用ツールを用いて被転写物に箔を転写する技術が開示されている。また、特許文献1には、熱転写箔が被転写物に対して移動しないように、熱転写箔を上方から押圧して熱転写箔を被転写物に固定する箔固定用フィルムが開示されている。箔固定用フィルムは、フィルム保持具に保持されている。例えば、保持台に被転写物を載置するときには、上下方向に延びるスライドバーを中心にフィルム保持具を回転させている。これにより、フィルム保持具に干渉されることなく、被転写物を保持台に載置することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6505805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、フィルム保持具を回転させる構成では、フィルム保持具の回転可動範囲を確保する必要がある。例えば、保持台の側方に筐体の壁が存在する場合には、上記回転可動範囲を確保するためには壁の位置を保持台から離す必要があるため、回転可動範囲が大きいほど筐体が大きくなる虞がある。一方、筐体の大きさを維持したまま回転可動範囲を確保しようとすると、フィルム保持具を小型化する必要がある。フィルム保持具がより小さくなるということは、被転写物に対して熱転写箔を転写することができる領域が小さくなることを意味するため、比較的大きな被転写物を用いることができない。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な構造で熱転写箔を被転写物に固定すると共に、比較的大きな被転写物に熱転写箔を転写することが可能な箔転写装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る箔転写装置は、開口部が形成された筐体と、前記筐体に設けられ、前記開口部を開閉するカバーと、前記筐体内に配置され、被転写物を載置可能に形成された支持台と、前記筐体内かつ前記支持台の上方に配置され、かつ、光吸収性を有し、前記被転写物上に載置された熱転写箔を上方から押圧して前記熱転写箔を前記被転写物上に固定する光吸収フィルムと、前記光吸収フィルムを保持し、前記筐体に着脱自在に構成されたフィルム保持具と、ケース本体と、前記被転写物および前記被転写物上に配置された前記熱転写箔および前記光吸収フィルムを押圧すると共に前記光吸収フィルムに向けて光を照射可能に構成された押圧体と、を有する転写用ツールと、前記転写用ツールを前記支持台に対して相対的に移動させる移動機構と、を備えている。前記フィルム保持具は、上下方向に貫通する開口が形成され、平面視で前記開口と重なるように前記光吸収フィルムを保持する保持枠と、前記保持枠から下方に向けて延び、前記筐体に形成された挿入孔に挿入される棒状部材と、を備えている。
【0008】
本発明に係る箔転写装置によると、光吸収フィルムを保持するフィルム保持具は、筐体に着脱自在に構成されている。即ち、フィルム保持具の棒状部材を筐体に形成された挿入孔に挿入することで、フィルム保持具を筐体に取り付けることができる。また、棒状部材を挿入孔から抜くことで、フィルム保持具を筐体から取り外すことができる。このため、被転写物上に熱転写箔が載置された状態で、フィルム保持具を筐体に取り付けることにより、光吸収フィルムによって熱転写箔を上方から押圧することができる。これにより、熱転写箔は、被転写物上に固定され、熱転写箔が被転写物に対して移動することが抑制される。また、フィルム保持具を上下方向に移動させて、棒状部材を挿入孔に挿入したり抜き出したりすることにより、フィルム保持具を筐体に取り付けたり取り外したりすることができるため、支持台の側方に余分なスペースを設ける必要がなく、フィルム保持具を回転移動させる構成と比較して同じ筐体であってもより大きな被転写物に熱転写箔を転写することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡易な構造で熱転写箔を被転写物に固定すると共に、比較的大きな被転写物に熱転写箔を転写することが可能な箔転写装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る箔転写装置を示す斜視図である。
図2】一実施形態に係る箔転写装置のカバーを取り外した状態を示す斜視図である。
図3】一実施形態に係る転写用ツール周辺の構成を模式的に示す正面図である。
図4】一実施形態に係る転写用ツールを模式的に示す断面図である。
図5】一実施形態に係る支持台に検出用治具が取り付けられた状態を示す平面図である。
図6】一実施形態に係る支持台に検出用治具が取り付けられた状態を示す斜視図である。
図7】一実施形態に係る支持台に検出用治具およびフィルム保持具が取り付けられた状態を示す平面図である。
図8】一実施形態に係る支持台に検出用治具およびフィルム保持具が取り付けられた状態を示す斜視図である。
図9】一実施形態に係る箔転写装置のブロック図である。
図10A】第1位置を示す平面図である。
図10B】第1位置において転写用ツールの押圧体と検出用治具とが接触した状態を模式的に示す正面図である。
図11A】第2位置を示す平面図である。
図11B】第2位置において転写用ツールのケース本体と検出用治具とが接触した状態を模式的に示す正面図である。
図12】第1位置において転写用ツールのケース本体と検出用治具とが接触した状態を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0012】
図1は、一実施形態に係る箔転写装置10を示す斜視図である。図2は、カバー18を取り外した箔転写装置10を示す斜視図である。以下の説明では、左、右、上、下とは、箔転写装置10の正面にいるユーザが箔転写装置10を見た場合の左、右、上、下をそれぞれ意味することとする。また、上記ユーザが箔転写装置10に近づく方を後方、遠ざかる方を前方とする。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表す。本実施形態に係る箔転写装置10は、相互に直交する軸をX軸、Y軸およびZ軸としたときに、X軸とY軸とで構成される平面に置かれるものとする。ここでは、X軸は、左右方向に延びる。Y軸は、前後方向に延びる。X軸とY軸とで構成される平面は、ここでは水平面である。Z軸は、上下方向に延びる。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、箔転写装置10の設置態様を何ら限定するものではない。
【0013】
図2に示すように、箔転写装置10は、被転写物80にシート状の熱転写箔82と光吸収フィルム84とを重ねた状態で、後述する転写用ツール60によって熱転写箔82および光吸収フィルム84を押圧および加熱することにより、被転写物80の表面に熱転写箔82中の装飾層を付与(転写という)する装置である。熱転写箔82は、光吸収フィルム84を介して転写用ツール60に間接的に押圧される。
【0014】
被転写物80を構成する材料や形状は、特に限定されない。被転写物80は、例えば、金、銀、銅、プラチナ、真鍮、アルミ、鉄、チタン、ステンレス等の金属類であってもよいし、アクリル、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)等の樹脂材料、普通紙、画用紙、和紙等の紙類、ゴム類等であってもよい。また、本革(即ち天然皮革)や上記樹脂材料等を少なくとも一部に含む人造皮革(例えば合成皮革や人工皮革)やであってもよい。
【0015】
熱転写箔82としては、例えば、熱転写用に一般に市販されている転写箔を特に限定なく用いることができる。熱転写箔82は、一般的には、基材と、装飾層と、接着層とがこの順に積層されている。熱転写箔82は、例えば、金箔、銀箔等のメタリック箔や、ハーフメタリック箔、顔料箔、多色印刷箔、ホログラム箔、静電気破壊対策箔等を包含する。熱転写箔82は、帯状やシート状に形成されている。熱転写箔82は、被転写物80上に載置される。熱転写箔82の接着層が被転写物80と接触するように、熱転写箔82は被転写物80上に載置される。
【0016】
光吸収フィルム84は、筐体11内かつ支持台20の上方に配置される。光吸収フィルム84は、熱転写箔82の上面側に配置される。光吸収フィルム84は、被転写物80上に載置された熱転写箔82を上方から押圧して熱転写箔82を被転写物80上に固定する。光吸収フィルム84は、光吸収性を有する。光吸収フィルム84とは、転写用ツール60のレーザー発振器62(図4参照)から照射される所定の波長帯のレーザー光を効率よく吸収して、光エネルギーを熱エネルギーに変換可能なように構成されたシートである。光吸収フィルム84は、100~200℃での耐熱性を有している。光吸収フィルム84は、例えばポリイミドのような樹脂で構成されている。光吸収フィルム84は、単色である。光吸収フィルム84の色相は、光エネルギーを効率よく熱エネルギーへと変換する観点から、レーザー発振器62から照射されるレーザー光の色と補色関係にあることが好ましい。例えば、レーザー発振器62から照射されるレーザー光が青色である場合には、光吸収フィルム84は黄色であることが好ましい。なお、光吸収フィルム84には、必要に応じて強度を高めるためのサポートフィルムを設けてもよい。サポートフィルムは、光吸収フィルム84に比べて光吸収性が著しく低い。また、サポートフィルムは、光吸収フィルム84に比べて光透過性が高い。サポートフィルムは、レーザー発振器62から発せられるレーザー光を透過する材料から形成されている。サポートフィルムは、例えば透明である。サポートフィルムは、例えばポリエステルのようなプラスチックフィルムである。
【0017】
図1に示すように、箔転写装置10は箱状に形成されている。箔転写装置10は、前方および上方に向けて開口する開口部11A(図2参照)が形成された筐体11と、開口部11Aを開閉するカバー18と、筐体11内に配置された押圧体移動機構30と、転写用ツール60と、被転写物80を載置可能に形成された支持台20とを備えている。カバー18は、後端を軸に回転可能なように筐体11に支持されている。カバー18を上方に回転させることによって、筐体11の内部空間と外部空間とが連通される。筐体11は、底壁部12と、左側壁部13と、右側壁部14と、上壁部15と、後壁部16とを備えている。
【0018】
図2に示すように、底壁部12には、支持台20が設けられている。底壁部12のX軸方向の長さは、底壁部12のY軸方向の長さより短い。底壁部12の前方の領域は、支持台20が設けられる第1領域12aである。底壁部12の後方の領域は、支持台20に載置された被転写物80が支持台20を越えて載置可能な第2領域12bである。底壁部12には、挿入孔12H(図5参照)が形成されている。挿入孔12Hは、矩形状に形成されている。挿入孔12Hは、第1領域12aに形成されている。
【0019】
図2に示すように、左側壁部13は、底壁部12の左端において上方に延びている。左側壁部13は、底壁部12に対して垂直に設けられている。右側壁部14は、底壁部12の右端において上方に延びている。右側壁部14は、底壁部12に対して垂直に設けられている。後壁部16は、底壁部12の後端において上方に延びている。後壁部16は、左側壁部13の後端および右側壁部14の後端に接続されている。後壁部16には、後述する制御装置90が収容されている。上壁部15は、左側壁部13の後部の上端、右側壁部14の後部の上端および後壁部16の上端に接続されている。底壁部12と左側壁部13と右側壁部14と上壁部15と後壁部16とに囲まれた領域が、筐体11の内部空間である。
【0020】
図2に示すように、筐体11の内部空間は、被転写物80に熱転写箔82を転写する空間である。内部空間には、押圧体移動機構30が設けられている。即ち、押圧体移動機構30は、筐体11に収容されている。押圧体移動機構30は、移動機構の一例である。押圧体移動機構30は、転写用ツール60を保持する第1キャリッジ31と、第1キャリッジ31を保持する第2キャリッジ32と、第2キャリッジ32を保持する第3キャリッジ33と、第1キャリッジ31をZ軸方向に移動させるZ軸方向移動機構36(図3参照)と、第1キャリッジ31および第2キャリッジ32をX軸方向に移動させるX軸方向移動機構40と、第1キャリッジ31および第2キャリッジ32および第3キャリッジ33をY軸方向に移動させるY軸方向移動機構44とを備えている。押圧体移動機構30は、転写用ツール60を三次元方向に移動させる。転写用ツール60は、Z軸方向移動機構36、X軸方向移動機構40およびY軸方向移動機構44により、支持台20(即ち被転写物80)に対して相対的に移動可能に構成されている。即ち、押圧体移動機構30は、転写用ツール60の押圧体66を支持台20に対して相対的に移動させる。Z軸方向移動機構36、X軸方向移動機構40およびY軸方向移動機構44は、いずれも底壁部12よりも上方に配置されている。第1キャリッジ31には転写用ツール60が設けられている。
【0021】
図3に示すように、Z軸方向移動機構36は、第2キャリッジ32に設けられている。Z軸方向移動機構36は、転写用ツール60の押圧体66をZ軸方向に移動させる機構である。第2キャリッジ32は、Y軸方向およびX軸方向に延びる第1部分32aと、第1部分32aの下方に位置しかつY軸方向およびX軸方向に延びる第2部分32bと、第1部分32aの後端と第2部分32bの後端とを接続しかつZ軸方向に延びる第3部分32cとを有する。Z軸方向移動機構36は、第1Z軸シャフト37aと、第2Z軸シャフト37bと、台形ネジ39と、第1モータ38とを備えている。第1Z軸シャフト37a、第2Z軸シャフト37bおよび台形ネジ39は、Z軸方向に延びる。第1Z軸シャフト37aおよび第2Z軸シャフト37bは、第2キャリッジ32の第1部分32aと第2部分32bとに支持されている。台形ネジ39は、第2キャリッジ32の第1部分32aを貫通している。台形ネジ39の上端は、第1モータ38に連結されている。台形ネジ39の下端は、第1キャリッジ31に接続されている。第1モータ38は、台形ネジ39を回転させる。第1モータ38は、第2キャリッジ32の第1部分32a上に配置されている。第1モータ38は、電動モータである。第1モータ38は、制御装置90(図9も参照)に制御される。第1Z軸シャフト37aおよび第2Z軸シャフト37bには、第1キャリッジ31がZ軸方向に摺動可能に設けられている。第1モータ38が駆動されると、第1キャリッジ31は、台形ネジ39の回転により、第1Z軸シャフト37aおよび第2Z軸シャフト37bに沿ってZ軸方向に移動する。
【0022】
図2に示すように、X軸方向移動機構40は、第3キャリッジ33に設けられている。X軸方向移動機構40は、転写用ツール60の押圧体66をX軸方向に移動させる機構である。第3キャリッジ33は、箱型状に形成されている。第3キャリッジ33は、上壁部15より下方かつ底壁部12より上方に配置されている。第3キャリッジ33は、左側壁部13から右側壁部14に延びる。X軸方向移動機構40は、第1X軸シャフト41aと、第2X軸シャフト41bと、左側のプーリ43aと、右側のプーリ43bと、左側のプーリ43aおよび右側のプーリ43bに巻かれたワイヤー43cと、左側のプーリ43aに接続された第2モータ42(図9参照)とを備えている。第1X軸シャフト41aおよび第2X軸シャフト41bは、X軸方向に延びる。第1X軸シャフト41aおよび第2X軸シャフト41bは、第3キャリッジ33に支持されている。左側のプーリ43a、右側のプーリ43bおよびワイヤー43cは、第3キャリッジ33に設けられている。ワイヤー43cは、第1X軸シャフト41aの下方かつ第2X軸シャフト41bの上方に配置されている。ワイヤー43cは、第1X軸シャフト41aおよび第2X軸シャフト41bより後方に配置されている。ワイヤー43cの一部は、第2キャリッジ32に接続されている。第2モータ42は、左側のプーリ43aを回転させる。第2モータ42は、第3キャリッジ33に配置されている。第2モータ42は、電動モータである。第2モータ42は、制御装置90(図9も参照)に制御される。第1X軸シャフト41aおよび第2X軸シャフト41bには、第2キャリッジ32がX軸方向に摺動可能に設けられている。第2モータ42が駆動されると、第2キャリッジ32は、ワイヤー43cの走行により、第1X軸シャフト41aおよび第2X軸シャフト41bに沿ってX軸方向に移動する。
【0023】
図2に示すように、Y軸方向移動機構44は、筐体11に設けられている。Y軸方向移動機構44は、転写用ツール60の押圧体66をY軸方向に移動させる機構である。Y軸方向移動機構44は、左側壁部13および右側壁部14のそれぞれに、Y軸シャフト45と、前側のプーリ47aと、後側のプーリ47bと、前側のプーリ47aおよび後側のプーリ47bに巻かれたワイヤー47cとを備えている。Y軸方向移動機構44は、右側壁部14に配置された後側のプーリ47bに接続された第3モータ46(図9参照)を備えている。第3モータ46は、右側壁部14に設けられている。Y軸シャフト45は、Y軸方向に延びる。Y軸シャフト45は、左側壁部13および右側壁部14にそれぞれ支持されている。前側のプーリ47a、後側のプーリ47bおよびワイヤー47cは、左側壁部13および右側壁部14にそれぞれ設けられている。ワイヤー47cは、Y軸シャフト45の上方に配置されている。第3モータ46は、右側壁部14に設けられた後側のプーリ47bを回転させる。第3モータ46は、電動モータである。第3モータ46は、制御装置90(図9も参照)に制御される。Y軸シャフト45には、第3キャリッジ33に接続された摺動部材33aがY軸方向に摺動可能に設けられている。摺動部材33aは、第3キャリッジ33と一体となって移動する。ワイヤー47cの一部は、摺動部材33aに接続されている。第3モータ46が駆動されると、第3キャリッジ33は、ワイヤー47cの走行により、Y軸シャフト45に沿ってY軸方向に移動する。
【0024】
図4に示すように、転写用ツール60は、被転写物80上に載置された熱転写箔82および光吸収フィルム84を押圧すると共に光吸収フィルム84に向けて光(例えばレーザー光)を照射可能に構成された装置である。転写用ツール60は、熱転写箔82上に配置された光吸収フィルム84に光を照射し、熱転写箔82に熱を供給する装置である。転写用ツール60は、支持台20より上方に配置されている。転写用ツール60は、レーザー発振器62と、ケース本体61と、ケース本体61の下端に着脱自在に保持された押圧体66とを備えている。転写用ツール60は、後述する転写領域TA(図5参照)内を移動可能に構成されている。レーザー発振器62は、光源の一例である。
【0025】
図3に示すように、ケース本体61は、第1キャリッジ31に保持されている。図4に示すように、ケース本体61は、長尺の円筒形状に形成されている。ケース本体61の内部には、レーザー発振器62に接続された光ファイバ64の一部が収容される。ケース本体61は、押圧体66を保持するホルダ68を備えている。ホルダ68には、上下方向に貫通する貫通孔Pが形成されている。押圧体66は、貫通孔Pと重なるように保持される。光ファイバ64の端部は、貫通孔Pと重なる。これにより、ホルダ68は、レーザー光の光路LPに干渉しない。
【0026】
図4に示すように、押圧体66は、ケース本体61の下面61B(即ちホルダ68の下面に相当)から下方に向けて突出する。押圧体66は、被転写物80および被転写物80上に配置された熱転写箔82および光吸収フィルム84を押圧する。押圧体66は、光吸収フィルム84に向けて光を照射可能に構成されている。後述するように、レーザー発振器62において生成されたレーザー光は、押圧体66を透過して外部に照射される。押圧体66は、例えば、ガラスにより構成することができる。本実施形態における押圧体66は、合成石英ガラスにより構成されている。押圧体66は、レンズの機能を果たす。
【0027】
レーザー発振器62は、レーザー光を生成する。レーザー発振器62によって生成されたレーザー光は、光ファイバ64を通って押圧体66に到達する。押圧体66に到達したレーザー光は、押圧体66を透過してケース本体61の外部に照射される。レーザー光は、押圧体66によって押圧されている部分に照射される。本実施形態におけるレーザー発振器62は、レーザー光を照射するレーザーダイオード(半導体レーザー)および光学系等により構成されている。レーザー発振器62は、制御装置90に制御される。レーザー発振器62は、筐体11内に配置されている。
【0028】
図2に示すように、支持台20は、筐体11内に配置されている。支持台20には被転写物80が載置される。支持台20の表面20Aは、底壁部12より上方に位置する。図5に示すように、支持台20は、底壁部12(図2参照)に形成された挿入孔12Hを塞ぐように配置されている。支持台20は、X軸方向の長さがY軸方向の長さよりも長い矩形状に形成されている。なお、支持台20は、X軸方向の長さがY軸方向の長さよりも長くてもよく、X軸方向の長さとY軸方向の長さが同一であってもよい。転写領域TAは、支持台20に設けられている。転写領域TAは、平面視で矩形状に形成されている。転写領域TAは、X軸方向の長さがY軸方向の長さよりも長い矩形状に形成されている。なお、転写領域TAは、X軸方向の長さがY軸方向の長さよりも長くてもよく、X軸方向の長さとY軸方向の長さが同一であってもよい。転写領域TAとは、転写用ツール60の押圧体66が移動可能な領域である。即ち、被転写物80に熱転写箔82を転写することができる領域である。支持台20の表面には、後述するフィルム保持具50の前側の第1棒状部材54Aが挿入される前側の第1貫通孔20Lと、フィルム保持具50の後側の第1棒状部材54Bが挿入される後側の第1貫通孔20Mと、フィルム保持具50の第2棒状部材54Cが挿入される第2貫通孔20Nとが形成されている。前側の第1貫通孔20Lおよび後側の第1貫通孔20Mは、支持台20の左側の領域に形成されている。第2貫通孔20Nは、支持台20の右側の領域に形成されている。前側の第1貫通孔20L、後側の第1貫通孔20Mおよび第2貫通孔20Nは、転写領域TAよりも外側に形成されている。即ち、前側の第1貫通孔20L、後側の第1貫通孔20Mおよび第2貫通孔20Nは、平面視で転写領域TAと重ならない。前側の第1貫通孔20L、後側の第1貫通孔20Mおよび第2貫通孔20Nは、平面視で底壁部12に形成された挿入孔12Hと重なる。第2貫通孔20Nは、前側の第1貫通孔20Lより後方かつ後側の第1貫通孔20Mより前方に形成されている。前側の第1貫通孔20Lおよび後側の第1貫通孔20Mは、円形状である。第2貫通孔20Nは、長孔形状である。後側の第1貫通孔20M内には、ブッシュ21が設けられている。ブッシュ21は、後側の第1棒状部材54Bを保持する保持部材の一例である。支持台20の表面20Aには、複数の貫通孔20Hが形成されている。貫通孔20Hは、転写領域TAの内側に形成されている。即ち、貫通孔20Hは、平面視で転写領域TAと重なる。貫通孔20Hには、図示しない位置合わせ用のピンが挿入される。位置合わせ用のピンに被転写物80を当てつけることで、被転写物80の位置決めが容易に行われる。
【0029】
図6に示すように、箔転写装置10は、転写用ツール60の押圧体66の有無を検出するために用いられる検出用治具70を備えている。検出用治具70は、支持台20に設けられている。検出用治具70は、支持台20に着脱自在に構成されている。図5および図6に示す例では、転写領域TAの四隅のうちの左奥の隅である第1検出位置TP1および右手前の隅である第2検出位置TP2にそれぞれ検出用治具70が着脱自在に設けられている。第1検出位置TP1とは、転写用ツール60が待機位置HP(図2参照)に位置するときに平面視で転写用ツール60と重なる領域である。ここで、待機位置HPとは、箔押待機時、すなわち、被転写物80に熱転写箔82が転写されていないときに、転写用ツール60が待機する位置である。本実施形態では、待機位置HPは、第1X軸シャフト41aおよび第2X軸シャフト41bの左端部かつY軸シャフト45の後端部に設けられている。第2検出位置TP2とは、第1検出位置TP1の対角に位置する。図5に示すように、検出用治具70は、支持台20に取り付けられたときに平面視で転写領域TAと重なる。図6に示すように、検出用治具70は、正面視で略L字形状に形成されている。検出用治具70は、L字形状に形成された本体部70Aと、本体部70Aの上端から前方に延びかつ転写用ツール60と接触する接触部70Bと、本体部70Aの下端から前方に延びかつ支持台20の表面20Aと接触する支持部70Cと、本体部70Aの左端から前方および下方に延びかつ支持台20にネジ72を介して固定される固定部70Dとを有する。検出用治具70の接触部70Bが平面視で転写領域TAと重なる。
【0030】
図5および図6に示す例では、第1検出位置TP1および第2検出位置TP2にそれぞれ検出用治具70が取り付けられているが、検出用治具70の取り付け位置は、これらに限定されない。例えば、転写領域TAの四隅のうちの右奥の隅や左手前の隅に取り付けてもよい。また、転写領域TAの四隅を除く各辺上に取り付けてもよい。また、検出用治具70は、支持台20に少なくとも1つ取り付けられていればよい。即ち、図5に示す例では、検出用治具70は、被転写物80の形状等に応じて、第1検出位置TP1または第2検出位置TP2に取り付ければよい。さらに、検出用治具70を取り付ける位置に応じて、検出用治具70の上下方向の長さ(即ち接触部70Bの支持台20からの高さ)を変更してもよい。
【0031】
図2に示すように、箔転写装置10は、光吸収フィルム84を保持するフィルム保持具50を備えている。フィルム保持具50は、筐体11に着脱自在に構成されている。フィルム保持具50は、支持台20の上方に配置される。より詳細には、フィルム保持具50は、被転写物80上に配置された熱転写箔82の上に光吸収フィルム84が位置するように筐体11に配置される。図7および図8に示すように、フィルム保持具50は、保持枠52と、棒状部材54とを備えている。なお、図7および図8に示す例では、被転写物80および熱転写箔82の図示を省略している。
【0032】
図7に示すように、保持枠52は、光吸収フィルム84を保持する。保持枠52は、略矩形状に形成されている。保持枠52の左側後部および右側前部には、それぞれ切り欠き部53が形成されている。切り欠き部53は、平面視で保持枠52が検出用治具70と重ならないように形成されている。即ち、フィルム保持具50が筐体11に取り付けられたとき、フィルム保持具50は、平面視で検出用治具70と重ならない。保持枠52には、上下方向に貫通する開口52Hが形成されている。フィルム保持具50が筐体11に取り付けられたとき、開口52Hの全体は、転写領域TAと重なる。即ち、開口52Hは、転写領域TAの内方に位置する。保持枠52は、平面視で開口52Hと重なるように光吸収フィルム84を保持する。光吸収フィルム84は、平面視で開口52Hの全体と重なるように保持枠52に保持されている。本実施形態では、光吸収フィルム84は、保持枠52の裏面(下面)に保持されている。光吸収フィルム84を保持する方法は特に限定されないが、例えば、両面テープにより保持枠52に保持されている。なお、光吸収フィルム84は熱転写箔82を上方から押圧するように構成されているが、押圧力の大部分は保持枠52の自重によるものである。
【0033】
図8に示すように、棒状部材54は、フィルム保持具50を筐体11に固定するための部材である。棒状部材54は、前側の第1棒状部材54Aと、後側の第1棒状部材54Bと、第2棒状部材54Cとを含む。前側の第1棒状部材54A、後側の第1棒状部材54Bおよび第2棒状部材54Cは、上下方向に延びる。前側の第1棒状部材54A、後側の第1棒状部材54Bおよび第2棒状部材54Cは、保持枠52の裏面(下面)から下方に延びる。前側の第1棒状部材54Aおよび後側の第1棒状部材54Bは、保持枠52の左端52Lから下方に延びる。左端52Lは、X軸方向の一方の端部の一例である。第2棒状部材54Cは、保持枠52の右端52Rから下方に延びる。右端52Rは、X軸方向の他方の端部の一例である。前側の第1棒状部材54A、後側の第1棒状部材54Bおよび第2棒状部材54Cは、筐体11の底壁部12に形成された挿入孔12H(図7参照)に挿入される。より詳細には、前側の第1棒状部材54Aは、支持台20に形成された前側の第1貫通孔20Lを介して挿入孔12Hに挿入される。後側の第1棒状部材54Bは、支持台20に形成された後側の第1貫通孔20Mを介して挿入孔12Hに挿入される。第2棒状部材54Cは、支持台20に形成された第2貫通孔20Nを介して挿入孔12Hに挿入される。
【0034】
箔転写装置10の全体の動作は、制御装置90によって制御されている。図9に示すように、制御装置90は、押圧体移動機構30と、転写用ツール60のレーザー発振器62と通信可能に接続されており、それらを制御可能に構成されている。制御装置90は、第1モータ38と、第2モータ42と、第3モータ46とに通信可能に接続されており、それらを制御可能に構成されている。制御装置90は、典型的にはコンピュータである。制御装置90は、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器からの印刷データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU)と、CPUが実行するプログラムを格納したROMと、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAMと、上記プログラムや各種データを格納するメモリなどの記憶装置とを備えている。
【0035】
図9に示すように、制御装置90は、記憶部90Aと、第1検出部91と、第2検出部92と、判断部95と、通知部96と、光制御部97とを備えている。制御装置90の各部の機能は、プログラムによって実現されている。このプログラムは、例えばCDやDVDなどの記録媒体から読み込まれる。なお、このプログラムは、インターネットを通じてダウンロードされるものであってもよい。また、制御装置90の各部の機能は、プロセッサおよび/または回路などによって実現可能なものであってもよい。なお、これら各部の具体的な機能については後述する。
【0036】
記憶部90Aは、転写用ツール60の押圧体66の下端66Bからケース本体61の下面61Bまでの上下方向の長さである基準長さLB(図3参照)を記憶する。記憶部90Aは、箔画像データを記憶する。箔画像データは、ユーザが外部のコンピュータにインストールされたソフトウェアを用いることによって任意に作成することができる。記憶部90Aは、検出用治具70が支持台20のどこに取り付けられているかを記憶する。
【0037】
第1検出部91は、平面視で押圧体66が検出用治具70と重なる第1位置H1(図10A参照)において、転写用ツール60を下降させて、転写用ツール60の一部と検出用治具70とが接触したときの転写用ツール60の上下方向の第1高さ位置を検出する。図10Bに示すように、転写用ツール60に押圧体66が取り付けられている場合には、転写用ツール60を下降させると、押圧体66(より詳細には下端66B)と検出用治具70(より詳細には接触部70B)とが接触する。このときの第1高さ位置は、例えば、支持台20の表面20Aからケース本体61の下面61Bまでの上下方向の長さZ1として算出される。第1検出部91は、第1モータ38、第2モータ42および第3モータ46を制御する。なお、図10Bに示すように、フィルム保持具50の保持枠52が検出用治具70より上方に位置する場合であっても、第1位置H1において転写用ツール60を下降させたときには、保持枠52は転写用ツール60(より詳細にはケース本体61)とは接触しないように形成されている。即ち、保持枠52に切り欠き部53が形成されていることにより、平面視でケース本体61と保持枠52とが重ならないように構成されている。
【0038】
第2検出部92は、平面視で押圧体66が検出用治具70と重ならずかつ平面視でケース本体61の少なくとも一部が検出用治具70と重なる第2位置H2(図11A参照)において、転写用ツール60を下降させて、転写用ツール60の一部と検出用治具70とが接触したときの転写用ツール60の上下方向の第2高さ位置を検出する。本実施形態では、第2位置H2は第1位置H1より右方(支持台20の内側)である。図11Bに示すように、転写用ツール60に押圧体66が取り付けられている場合には、転写用ツール60を下降させると、ケース本体61(より詳細には下面61B)と検出用治具70(より詳細には接触部70B)とが接触する。このときの第2高さ位置は、例えば、支持台20の表面20Aからケース本体61の下面61Bまでの上下方向の長さZ2として算出される。第2検出部92は、第1モータ38、第2モータ42および第3モータ46を制御する。なお、図11Bに示すように、フィルム保持具50の保持枠52が検出用治具70より上方に位置する場合であっても、第2位置H2において転写用ツール60を下降させたときには、保持枠52は転写用ツール60(より詳細にはケース本体61)とは接触しないように形成されている。
【0039】
判断部95は、記憶部90Aに記憶されている基準長さLB(図3参照)と、第1検出部91によって検出された第1高さ位置および第2検出部92によって検出された第2高さ位置とに基づいて、押圧体66の有無を判断する。即ち、判断部95は、第1高さ位置と第2高さ位置との差の絶対値(例えば|Z1-Z2|)が基準長さLBと等しいかを判断する。判断部95は、第1高さ位置と第2高さ位置との差の絶対値が基準長さLBと等しい場合には、押圧体66が有ると判断する。一方、判断部95は、第1高さ位置と第2高さ位置との差の絶対値が基準長さLBと等しくない場合には、押圧体66が無いと判断する。例えば、図12に示すように、転写用ツール60に押圧体66が取り付けられていない合には、第1位置H1において転写用ツール60を下降させると、ケース本体61(より詳細には下面61B)と検出用治具70(より詳細には接触部70B)とが接触する。即ち、このときの第1高さ位置は第2高さ位置と等しくなり、第1高さ位置と第2高さ位置との差の絶対値は基準長さLBと等しくない。
【0040】
通知部96は、判断部95によって押圧体66が無いと判断されたときに、押圧体66がケース本体61に取り付けられていないことを通知する。なお、通知方法は特に限定されず、例えば、視覚的な表示、音声等による通知が挙げられる。本実施形態では、通知部96は、筐体11の外部に設けられた図示しないLEDライト通じて視覚的にユーザに対する通知を行う。
【0041】
光制御部97は、レーザー発振器62からのレーザー光の照射を制御する。光制御部97は、判断部95によって押圧体66が有ると判断されたときには、レーザー発振器62からレーザー光を照射可能に構成されている。光制御部97は、判断部95によって押圧体66が無いと判断されたときには、レーザー発振器62からレーザー光を照射不能に構成されている。
【0042】
以上のように、本実施形態の箔転写装置10によれば、光吸収フィルム84を保持するフィルム保持具50は、筐体11に着脱自在に構成されている。即ち、フィルム保持具50の棒状部材54を筐体11の底壁部12に形成された挿入孔12Hに挿入することで、フィルム保持具50を筐体11に取り付けることができる。また、棒状部材54を挿入孔12Hから抜くことで、フィルム保持具50を筐体11から取り外すことができる。このため、被転写物80上に熱転写箔82が載置された状態で、フィルム保持具50を筐体11に取り付けることにより、光吸収フィルム84によって熱転写箔82を上方から押圧することができる。これにより、熱転写箔82は、被転写物80上に固定され、熱転写箔82が被転写物80に対して移動することが抑制される。また、フィルム保持具50を上下方向に移動させて、棒状部材54を挿入孔12Hに挿入したり抜き出したりすることにより、フィルム保持具50を筐体11に取り付けたり取り外したりすることができるため、支持台20の側方(例えば右方および左方)に余分なスペースを設ける必要がなく、フィルム保持具50を回転移動させる構成と比較して同じ筐体11であってもより大きな被転写物80に熱転写箔82を転写することができる。
【0043】
本実施形態の箔転写装置10によれば、フィルム保持具50の棒状部材54は、保持枠52の左端52Lから下方に延びる前側の第1棒状部材54Aおよび後側の第1棒状部材54Bと、保持枠52の右端52Rから下方に延びる第2棒状部材54Cと、を含む。これにより、フィルム保持具50の支持台20に対する位置決めが容易になる。
【0044】
本実施形態の箔転写装置10によれば、支持台20には、前側の第1棒状部材54Aが挿入されかつ平面視で挿入孔12Hと重なる前側の第1貫通孔20Lと、後側の第1棒状部材54Bが挿入されかつ平面視で挿入孔12Hと重なる後側の第1貫通孔20Mと、第2棒状部材54Cが挿入されかつ平面視で挿入孔12Hと重なる第2貫通孔20Nとが形成されている。これにより、前側の第1棒状部材54A、後側の第1棒状部材54Bおよび第2棒状部材54Cの上下方向の長さを短くすることができる。また、フィルム保持具50の支持台20に対する位置決めがより容易になる。
【0045】
本実施形態の箔転写装置10によれば、後側の第1貫通孔20Mには、後側の第1棒状部材54Bを保持するブッシュ21が設けられている。これにより、フィルム保持具50を支持台20に対してより確実に固定することができる。
【0046】
本実施形態の箔転写装置10によれば、押圧体66の有無を検出するために用いられる検出用治具70は、平面視でフィルム保持具50の保持枠52と重ならない。これにより、フィルム保持具50を筐体11から取り外すときに、検出用治具70を支持台20から取り外さなくてもよい。
【0047】
本実施形態の箔転写装置10によれば、検出用治具70は、転写領域TAの四隅のうちの一隅でありかつ転写用ツール60が待機位置HPに位置するときに平面視で転写用ツール60と重なる第1検出位置TP1、または、転写領域TAの四隅のうちの他の一隅でありかつ第1検出位置TP1の対角に位置する第2検出位置TP2に設けられている。例えば、検出用治具70を第1検出位置TP1に取り付けた場合には、第1検出位置TP1と待機位置HPとが比較的近いため、押圧体66の有無を検出した後に直ちに熱転写箔82の転写を開始することができる。一方、検出用治具70を第2検出位置TP2に取り付けた場合には、第1検出位置TP1に取り付けた場合と比較して転写領域TAを広く使用することができるため、被転写物80の配置の自由度がより高い。
【0048】
本実施形態の箔転写装置10によれば、フィルム保持具50の保持枠52は、検出用治具70よりも上方に位置する。第1位置H1および第2位置H2において転写用ツール60を下降させたとき、保持枠52は、転写用ツール60と接触しないように形成されている。これにより、被転写物80の厚みが比較的厚い場合であっても、押圧体66の有無を検出することができる。
【0049】
本実施形態の箔転写装置10によれば、判断部95は、基準長さLBと、第1高さ位置および第2高さ位置とに基づいて、押圧体66の有無を判断する。このように、第1位置H1と第2位置H2とにおいて転写用ツール60を検出用治具70に接触させることで、容易に押圧体66の有無を判断することができる。
【0050】
本実施形態の箔転写装置10によれば、制御装置90は、判断部95によって押圧体66が無いと判断されたときに、押圧体66がケース本体61に取り付けられていないことを通知する通知部96を有している。これにより、ユーザは押圧体66がケース本体61に取り付けられていないことを認識することができる。
【0051】
本実施形態の箔転写装置10によれば、光制御部97は、判断部95によって押圧体66が有ると判断されたときには、レーザー発振器62からレーザー光を照射可能に構成され、かつ、判断部95によって押圧体66が無いと判断されたときには、レーザー発振器62からレーザー光を照射不能に構成されている。これにより、押圧体66がケース本体61に取り付けられていない場合には、レーザー発振器62から光が照射されることが防止される。
【0052】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の各実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
【0053】
上述した実施形態では、底壁部12に形成された挿入孔12Hには、前側の第1棒状部材54A、後側の第1棒状部材54Bおよび第2棒状部材54Cの全てが挿入可能に構成されていたが、これに限定されない。底壁部12には、前側の第1棒状部材54A、後側の第1棒状部材54Bおよび第2棒状部材54Cのそれぞれを挿入可能な独立した挿入孔が形成されていてもよい。また、底壁部12には、前側の第1棒状部材54Aおよび後側の第1棒状部材54Bを挿入可能な第1の挿入孔と、第2棒状部材54Cを挿入可能な第2の挿入孔が独立して形成されていてもよい。
【0054】
上述した実施形態では、ブッシュ21は後側の第1貫通孔20M内に設けられていたが、前側の第1貫通孔20Lに設けてもよいし第2貫通孔20Nに設けてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 箔転写装置
11 筐体
20 支持台
30 押圧体移動機構
50 フィルム保持具
52 保持枠
54 棒状部材
60 転写用ツール
61 ケース本体
66 押圧体
84 光吸収フィルム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12