(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20231107BHJP
H01M 50/528 20210101ALI20231107BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20231107BHJP
H01M 50/534 20210101ALI20231107BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/528
H01M4/66 A
H01M50/534
(21)【出願番号】P 2020105546
(22)【出願日】2020-06-18
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多賀 和樹
(72)【発明者】
【氏名】伊東 成人
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 衛
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/114993(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 50/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電池と、前記第1電池と直列に接続されている第2電池と、を備えている電池モジュールであって、
前記第1電池は、
複数の第1正極と、
複数の第1負極と、
複数の前記第1正極のそれぞれに積層されている複数の第1集電体と、
複数の前記1集電体のそれぞれから前記第2電池に向かって延びている複数の第1接続体と、を備えており、
複数の前記第1接続体のそれぞれは、第1金属材料の金属箔で構成されており、
前記第2電池は、
複数の第2正極と、
複数の第2負極と、
複数の前記第2負極のそれぞれに積層されている複数の第2集電体と、
複数の前記2集電体のそれぞれから前記第1電池に向かって延びている複数の第2接続体と、を備えており、
複数の前記第2接続体のそれぞれは、前記第1金属材料とは異なる第2金属材料の金属箔で構成されており、
前記第1電池の複数の前記第1接続体のそれぞれと、前記第2電池の複数の前記第2接続体のそれぞれとは、交互に積層されて
互いの金属箔の表面が直接当接している状態でそれらの積層方向に超音波溶接されて接続されている、電池モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の電池モジュールであって、
前記第1金属材料は、アルミニウム系材料であり、
前記第2金属材料は、銅系材料である、電池モジュール。
【請求項3】
第1電池と、前記第1電池と直列に接続されている第2電池と、を備えている電池モジュールであって、
前記第1電池は、
複数の第1正極と、
複数の第1負極と、
複数の前記第1正極のそれぞれに積層されている複数の第1集電体と、
複数の前記1集電体のそれぞれから前記第2電池に向かって延びている複数の第1接続体と、を備えており、
複数の前記第1接続体のそれぞれは、第1金属材料の金属箔で構成されているとともに積層されて第1接続体群を構成しており、
前記第2電池は、
複数の第2正極と、
複数の第2負極と、
複数の前記第2負極のそれぞれに積層されている複数の第2集電体と、
複数の前記2集電体のそれぞれから前記第1電池に向かって延びている複数の第2接続体と、を備えており、
複数の前記第2接続体のそれぞれは、前記第1金属材料とは異なる第2金属材料の金属箔で構成されているとともに積層されて第2接続体群を構成しており、
前記第1電池の複数の前記第1接続体のそれぞれと、前記第2電池の複数の前記第2接続体のそれぞれとのうちの少なくとも一方の表面には、それらの表面の摩擦係数を変化させるための表面処理が施されており、
前記第1電池の前記第1接続体群と、前記第2電池の前記第2接続体群とは、互いに積層されて
互いの接続体群の表面が直接当接している状態でそれらの積層方向に超音波溶接されて接続されている、電池モジュール。
【請求項4】
請求項3に記載の電池モジュールであって、
前記第1金属材料は、アルミニウム系材料であり、
前記第2金属材料は、銅系材料であり、
複数の前記第1接続体のそれぞれの表面に前記表面処理が施されている、電池モジュール。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の電池モジュールであって、
前記第1電池および前記第2電池は、同一の外装体で覆われている、電池モジュール。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の電池モジュールであって、
複数の前記第1集電体のそれぞれは、前記第1金属材料の金属箔で構成されており、
複数の前記第2集電体のそれぞれは、前記第2金属材料の金属箔で構成されている、電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、電池モジュールに関する。特に、第1電池と、その第1電池と直列に接続されている第2電池と、を備えている電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に電池モジュールが開示されている。特許文献1の電池モジュールは、複数の正極と複数の負極がセパレータを介して交互に積層されている複数の積層体を備えている。特許文献1の電池モジュールでは、一方の電池の各正極に積層されている第1集電体から、第1接続体群(特許文献1では、第1の電極タブ群と称している)が他方の電池に向かって延びている。他方の電池の各負極に積層されている第2集電体から、第2接続体群(特許文献1では、第2の電極タブ群と称している)が一方の電池に向かって延びている。第1接続体群および第2接続体群は、複数の金属箔を積層して構成されている。特許文献1の電池モジュールでは、第1接続体群と第2接続体群が互いに積層されている状態で、両接続体群が溶接される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
正極と負極では、接続体の金属箔を構成する材料が異なる。第1接続体の表面の摩擦係数は、第2接続体の表面の摩擦係数と異なる。金属箔同士を接続する際に超音波溶接が用いられることがある。異なる材料で構成されている金属箔を積層方向に超音波溶接する場合、金属箔をその積層方向に対して直交する方向に振動させることがある。そのため、積層されている金属箔の表面の摩擦係数が異なる場合、摩擦係数が小さい金属箔は、超音波溶接時に積層方向に対して直交する方向にずれやすい。また、このずれを防止するために超音波溶接時に金属箔を加圧固定すると、金属箔が破断するおそれがある。このように、積層する金属箔の表面の摩擦係数が異なる場合、安定して超音波溶接をすることが難しい。本明細書では、複数の金属箔を積層した状態で電池が接続されている電池モジュールにおいて、超音波溶接時に金属箔がずれにくい電池モジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する電池モジュールは、第1電池と、その第1電池と直列に接続されている第2電池と、を備えている。第1電池は、複数の第1正極と、複数の第1負極と、複数の第1正極のそれぞれに積層されている複数の第1集電体と、複数の第1集電体のそれぞれから第2電池に向かって延びている複数の第1接続体と、を備えている。複数の第1接続体のそれぞれは、第1金属材料の金属箔で構成されている。第2電池は、複数の第2正極と、複数の第2負極と、複数の第2負極のそれぞれに積層されている複数の第2集電体と、複数の2集電体のそれぞれから第1電池に向かって延びている複数の第2接続体と、を備えている。複数の第2接続体のそれぞれは、第1金属材料とは異なる第2金属材料の金属箔で構成されている。第1電池の複数の第1接続体のそれぞれと、第2電池の複数の第2接続体のそれぞれとは、交互に積層されている状態でそれらの積層方向に超音波溶接されて接続されている。
【0006】
上述した電池モジュールでは、複数の第1接続体のそれぞれと複数の第2接続体のそれぞれが交互に積層された状態で、複数の第1接続体と複数の第2接続体がそれらの積層方向に超音波溶接される。これにより、第1電池と第2電池を直列に接続する。超音波溶接時に第1金属材料の第1接続体の表面と第2金属材料の第2接続体の表面が直接当接する。その結果、複数の当接している接続体の表面間の摩擦係数は均一となる。すなわち、上述した電池モジュールは、超音波溶接時に、各接続体(すなわち金属箔)がずれにくい。
【0007】
上述した電池モジュールでは、第1金属材料をアルミニウム系材料としてもよく、第2金属材料を銅系材料にしてもよい。これにより、直列接続時の抵抗を低減することができる。
【0008】
上述した電池モジュールは、第1電池の複数の第1接続体のそれぞれは、積層されて第1接続体群を構成してもよく、第2電池の複数の第2接続体のそれぞれは、積層されて第2接続体群を構成してもよい。その場合、第1接続体のそれぞれと、第2接続体のそれぞれとのうちの少なくとも一方の表面には、それらの表面の摩擦係数を変化させるための表面処理が施されていてもよい。
【0009】
表面処理によって接続体の表面の摩擦係数が変化することで、第1接続体と第2接続体の摩擦係数の差が小さくなる。これにより、上述した電池モジュールでは、第1接続体群と第2接続体群が互いに積層されている状態でそれらの積層方向に超音波溶接されても、各接続体(すなわち金属箔)がずれにくい。
【0010】
上述した電池モジュールでは、第1金属材料をアルミニウム系材料とし、第2金属材料を銅系材料にする場合、アルミニウム系材料で構成される第1接続体の表面に表面処理を施してもよい。
【0011】
アルミニウム系材料は、銅系材料に比して摩擦係数が小さい。アルミニウム系材料で構成される第1接続体の表面に表面処理を施して摩擦係数を大きくすることで、第1接続体と第2接続体の表面の摩擦係数の差が小さくなる。その結果、第1接続体が超音波溶接時にずれにくくなる。
【0012】
上述した電池モジュールでは、第1電池および第2電池を同一の外装体で覆ってもよい。これにより、第1電池と第2電池を別々の外装体で覆うのに比して外装体の使用量を低減することができる。
【0013】
上述した電池モジュールでは、複数の第1集電体のそれぞれが、第1金属材料の金属箔で構成されていてもよい。また、複数の第2集電体のそれぞれが、第2金属材料の金属箔で構成されていていてもよい。
【0014】
この構成によれば、第1金属材料の1枚の金属箔によって第1集電体と第1接続体を構成することができる。そのため、簡潔な構成にすることができる。また、第1集電体と第1接続体を例えば超音波溶接によって接続する必要がなくなる。第1集電体と第1接続体が例えば超音波溶接によって接続されている場合には、他の部分を超音波溶接するときに、その超音波溶接の振動によって第1集電体と第1接続体が分離すること考えられる。しかしながら、上記の構成によれば、第1集電体と第1接続体が分離することを抑制できる。第2集電体と第2接続体についても同様である。
【0015】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】
図1の線II-IIでカットした断面図である。
【
図3】
図2の破線IIIで囲まれている範囲の拡大図である。
【
図4】
図2の破線IVで囲まれている範囲の拡大図である。
【
図5】変形例の電池モジュールにおける
図4と同じ拡大図である。
【
図6】
図5の破線VIで囲まれている範囲の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施例)
図面を参照して実施例の電池モジュールについて説明する。
図1は、実施例の電池モジュール2の平面図を示している。電池モジュール2は、外装体4の内部に第1電池10と第2電池20と電解液を収容している。実施例の電池モジュール2の外装体4は、ラミネートフィルムによって袋状に構成されている。第1電池10と第2電池20は、ともにいわゆる二次電池である。なお、本明細書では、図中の座標軸のZ軸方向正側を「上」と表現し、その反対側を「下」と表現することがある。
【0018】
図1に示されるように、第1電池10と第2電池20は互いに接続された状態で外装体4の内部に収容されている。第1電池10の第2電池20と反対側の端部には、負極タブ6が接続されている。第2電池20の第1電池10と反対側の端部には、正極タブ8が接続されている。負極タブ6は、銅板により構成され、正極タブ8は、アルミニウム板により構成されている。負極タブ6と正極タブ8は、電池モジュール2と外部の回路を電気的に接続する。
【0019】
図2および
図3を参照して、電池モジュール2の内部の構造について説明する。
図2に示されるように、第1電池10と第2電池20はともに複数の層が積層されて構成されている。第1電池10は、複数の第1金属箔12のそれぞれと、複数の第2金属箔14のそれぞれとが、発電要素を挟んで交互に積層されて構成されている。第2電池20は、複数の第1金属箔22のそれぞれと、複数の第2金属箔24のそれぞれとが、発電要素を挟んで交互に積層されて構成されている。
図2では、第1電池10の最も上側に位置している第1金属箔12にのみ符号を記載し、それ以外の第1金属箔12の符号の記載を省略している。また、第1電池10の最も下側に位置している第2金属箔14にのみ符号を記載し、それ以外の第2金属箔14の符号の記載を省略している。同様に、第2電池の最も上側に位置している第1金属箔22と最も下側に位置している第2金属箔24にのみ符号を記載し、それ以外の金属箔の符号の記載を省略している。
【0020】
第1電池10の第1金属箔12は、第1集電体12aと第1接続体12bを備えている。第1接続体12bは、第1集電体12aから第2電池20に向かって延びている。第1電池10の第2金属箔14は、第2集電体14aと第2接続体14bを備えている。第2接続体14bは、第2集電体14aから負極タブ6に向かって延びている。
図2に示されるように、複数の第2接続体14bの端部は、負極タブ6に積層されている。第2電池20の第2金属箔24は、第2集電体24aと第2接続体24bを備えている。第2接続体24bは、第1電池10に向かって延びている。第2電池20の第1金属箔22は、第1集電体22aと第1接続体22bを備えている。第1接続体22bは、正極タブ8に向かって延びている。複数の第1接続体22bの端部は、正極タブ8に積層されている。第1金属箔12、22は、アルミニウムにより構成されている。第2金属箔14、24は、銅により構成されている。すなわち、第1金属箔12、22と、第2金属箔14、24は、異なる金属材料の金属箔である。
【0021】
図3を参照して第1電池、第2電池の詳細構造について説明する。
図3は、
図2の破線IIIに囲まれている範囲の拡大図である。
図3では、第2電池の積層体の一部を拡大しているが、第2電池20についても同じ構造である。
図3に示されるように、第1電池10は、セパレータ30と、正極10Pと、第1集電体12aと、負極10Nと、第2集電体14aが互いに積層されて形成されている。第1集電体12aは、上下の正極10Pに挟まれるように積層されている。正極10Pの下側には、セパレータ30が積層されている。セパレータ30の下側には、負極10Nが積層されている。第2集電体14aは、上下の負極10Nに挟まれるように積層されている。なお、正極10Pおよび負極10Nは、対応する集電体の片方の面にのみ積層されてもよい。
【0022】
正極10Pは、正極活性物質を含んでいる。正極活性物質は、典型的にはLiMn2O4等のリチウム遷移金属複合酸化物である。負極10Nは、負極活性物質を含んでいる。負極活性物質は、典型的にはソフトカーボン等の炭素材料である。外装体4(
図2参照)の内部に収容されている電解液は、典型的には有機溶媒である。第1電池10は、正極10Pと負極10Nの間で電解液を介してリチウムイオンが移動することによって放電および充電を行う。第1電池10の第1集電体12aと第2集電体14aは、第1電池10が発生させる電気を集める。セパレータ30は、隣接する正極10Pと負極10Nが接触することを防止する。なお、第1電池10と第2電池20が電力を発生させる技術については、既知であるためここでは説明を省略する。
【0023】
再び
図2を参照して、第1電池10と第2電池20を接続する構造について説明する。先に述べたように、第1電池10と第2電池20は、同じ構造を有している。第1電池10と第2電池20は、電池モジュール2の中央部で互いに接続されている。
図2に示されるように、第1電池10からは、複数の第1接続体12bが第2電池20に向かって延びている。第2電池20からは、複数の第2接続体24bが第1電池10に向かって延びている。第1電池10の複数の第1接続体12bは、正極10P(
図3参照)と積層されている第1集電体12aと一体に構成されている。同様に、第2電池20の複数の第2接続体24bは、第2電池20の負極と積層されている第2集電体24aと一体に構成されている。複数の第1接続体12bのそれぞれと複数の第2接続体24bのそれぞれは、互いに交互に積層されている。すなわち、第1電池10と第2電池20は、直列に接続されている。第1電池10と第2電池20の電圧は、ともに例えば4Vである。実施例の電池モジュール2は、第1電池10と第2電池20を直列に接続することで、電圧を8Vに増加させる。
【0024】
図4を参照して、第1電池10と第2電池20を直列に接続する構造について説明する。
図4は、第1電池10の複数の第1接続体12bと第2電池20の複数の第2接続体24bを接続する超音波溶接時の断面図である。
図4に示されるように、最も下側に位置している第2接続体24bは、アンビル42に支持される。上方から溶接ホーン40が第1接続体12bに接近する。溶接ホーン40は、最も上側に位置している第1接続体12bと当接した状態で、
図4の矢印に示されるように、X軸方向に振動する。溶接ホーン40は、例えば1秒間あたり約2万回X軸方向に振動する。これにより、隣接している複数の接続体間の油分や、埃、酸化被膜が取り除かれる。その結果、隣接している接続体同士が原子間距離まで接近して接続される。このように、第1電池10の複数の第1接続体12bのそれぞれと、第2電池20の複数の第2接続体24bのそれぞれは、互いに交互に積層されている状態で、それらの積層方向に超音波溶接で接続される。
【0025】
第1電池10の第1接続体12bと第2電池20の第2接続体24bを超音波溶接する際、複数の第1接続体12bと複数の第2接続体24bは、溶接ホーン40と同調してX軸方向に振動する。隣接している第1接続体12bと第2接続体24bがX軸方向にずれてしまうと、安定して超音波溶接できない。また、第1接続体12bと第2接続体24bは、ともに約10μmの厚みの金属箔で構成されている。このため、超音波溶接時のX軸方向のずれを防止するために溶接ホーン40により加圧すると、金属箔が破断するおそれがある。特に、溶接ホーン40と当接する最も上側に位置している第1接続体12bが、溶接ホーン40の加圧により破断するおそれがある。
【0026】
先に述べたように、第1接続体12bは、アルミニウムの金属箔である。第2接続体24bは、銅の金属箔である。アルミニウムの金属箔と銅の金属箔では、その表面の摩擦係数が異なる。表面の摩擦係数が小さければ、超音波溶接時にX軸方向にずれやすい。表面の摩擦係数が大きければ、超音波溶接時にX軸方向にずれにくい。隣接している接続体のX軸方向のずれを抑制するためには、複数の隣接している接続体間の摩擦係数を均一に近づける必要がある。
【0027】
第1実施例の電池モジュール2(
図2参照)の第1電池の複数の第1接続体12bのそれぞれと第2電池の複数の第2接続体24bのそれぞれは、互いに交互に積層されている状態で、それらの積層方向に超音波溶接で接続される。すなわち、第1実施例の電池モジュール2では、超音波溶接時に、アルミニウムの第1接続体12bの表面と銅の第2接続体24bの表面が当接している状態で、複数の第1接続体12bと複数の第2接続体24bが積層されている。その結果、隣接している接続体間の摩擦係数は均一となる。すなわち、第1実施例の電池モジュール2は、超音波溶接時に、各接続体がずれにくい。
【0028】
(第2実施例)
図5を参照して第2実施例の電池モジュール2aについて説明する。
図5は、第2実施例の電池モジュール2aが備えている第1電池10aと第2電池20aを直列に接続する構造を示す断面図である。なお、第1実施例の第1電池10と第2実施例の10aは、
図5に示す接続部以外では同じ構造であるため図示および説明を省略する。同様に、第1実施例の第2電池20と第2実施例の20aは、
図5に示す接続部以外では同じ構造であるため図示および説明を省略する。
【0029】
図5に示されるように、第2実施例の電池モジュール2aでは、複数の第1接続体12cが積層されて第1接続体群12gを構成している。同様に、複数の第2接続体24cが積層されて第2接続体群22gを構成している。第1接続体群12gの下方に第2接続体群22gが配置されている。第2接続体群22gは、下方からアンビル42に支持されている。第1接続体群12gの上方から溶接ホーン40が接近して、第1接続体群12gの最も上側に位置している第1接続体12cと溶接ホーン40が当接する。第2実施例の電池モジュール2aは、
図5に示される状態で第1接続体群12gと第2接続体群22gが超音波溶接される。すなわち、第1電池10aの第1接続体群12gと、第2電池20aの第2接続体群22gとは、互いに積層されている状態でそれらの積層方向に超音波溶接されて接続される。
【0030】
図6を参照して第1接続体群12gと第2接続体群22gの詳細構造について説明する。
図6は、
図5の破線VIに囲まれた範囲の拡大図である。先に述べたように、第1接続体群12gと第2接続体群22gは、超音波溶接時に溶接ホーン40に同調してX軸方向に振動する。第1実施例の電池モジュール2と同様に、第1接続体12cは、アルミニウムの金属箔であり。第2接続体24cは、銅の金属箔である。アルミニウムの金属箔は、銅の金属箔に比して、摩擦係数が小さい。このため、第1接続体群12gの複数の第1接続体12cは、超音波溶接時にずれるおそれがある。
【0031】
図6に示されるように、第1接続体12cの先端には、無電解ニッケル層12mが形成されている。無電解ニッケル層12mは、メッキ処理によって第1接続体12cの先端に形成される。無電解ニッケル層12mは、アルミニウムの金属箔に比して摩擦係数が大きい。第1接続体12cの先端に無電解ニッケル層12mを形成することで、第1接続体12cの摩擦係数が変化する。その結果、第1接続体12cの表面の摩擦係数と、第2接続体24cの表面の摩擦係数の差が小さくなる。このように、第2実施例の電池モジュール2a(
図5参照)は、第1接続体12cに無電解ニッケル層12mを形成する表面処理を施すことで、第1接続体群12gの複数の第1接続体12cの超音波溶接時のずれを抑制することができる。
【0032】
(対応関係)無電解ニッケル層12mを形成するメッキ処理が、「表面処理」の一例である。「表面処理」は、錫メッキであってもよい。また、「表面処理」は、コーティング処理であってもよい。さらに、「表面処理」は、第1接続体12cの表面粗さを粗くする磨き処理であってもよい。
【0033】
以上、実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。上述した実施例の変形例を以下に列挙する。
【0034】
(変形例1)上述した実施例では、第1、第2集電体と、第1、第2接続体が、それぞれ一枚の金属箔によって形成されている。変形例では、第1集電体と第1接続体、第2集電体と第2接続体が、それぞれ、別体で構成されていてもよい。
【0035】
(変形例2)上述した実施例では、2個の電池が直列に接続されている。変形例では、さらに複数の電池が直列に接続されていてもよい。
【0036】
(変形例3)上述した第2実施例では、第1接続体12cの表面のみに無電解ニッケル層12mが形成されているが、変形例では、第2接続体24cの表面にも無電解ニッケル層を形成する表面処理を施してもよい。
【0037】
(変形例4)上述した実施例では、第1電池と第2電池を同一の外装体4で覆っているが、変形例では、第1電池と第2電池を別々の外装体で覆ってもよい。
【0038】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書又は図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0039】
2、2a :電池モジュール
4 :外装体
6 :負極タブ
8 :正極タブ
10、10a:第1電池
10N :負極
10P :正極
12、22 :第1金属箔
12a、22a :第1集電体
12b、12c、22b :第1接続体
12g :第1接続体群
12m :無電解ニッケル層
14、24 :第2金属箔
14a、24a :第2集電体
14b、24b、24c :第2接続体
20、20a :第2電池
22g :第2接続体群
30 :セパレータ
40 :溶接ホーン
42 :アンビル