(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】光学装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20231107BHJP
G01B 11/26 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
G01B11/24 K
G01B11/26 H
(21)【出願番号】P 2020156162
(22)【出願日】2020-09-17
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 博司
(72)【発明者】
【氏名】岡野 英明
(72)【発明者】
【氏名】加納 宏弥
【審査官】飯村 悠斗
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-026512(JP,A)
【文献】特開2009-063383(JP,A)
【文献】特開平07-234108(JP,A)
【文献】特開2003-240509(JP,A)
【文献】特開2020-125921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光を射出する照明部と、
物体の面で反射した前記照明光または前記面を透過した前記照明光が通過する
第1の結像光学素子と、複数の波長選択領域を含
み、前記第1の結像光学素子を通過した前記照明光が入射する波長選択部と、前記波長選択部を通過した前記照明光を受光するセンサーと、を有した撮像部と、
前記照明光と前記第1の結像光学素子の光軸との正対関係を調整可能な位置決め部と、
処理部と、
を備え、
第1の前記波長選択領域は、前記照明光のうち第1の前記波長選択領域を通過する第1の光線を主波長が第1の波長となる第1の選択光線に変換し、
第2の前記波長選択領域は、前記照明光のうち第2の前記波長選択領域を通過する第2の光線を主波長が前記第1の波長と異なる第2の波長となる第2の選択光線に変換し、
前記センサーは、前記第1の選択光線と前記第2の選択光線と
の色相情報を取得可能であり、
前記処理部は、前記撮像部における前記波長選択部の相対位置と前記色相情報とに基づいて前記第1の光線の光線方向および前記第2の光線の光線方向を推定する、
光学装置。
【請求項2】
前記照明部は、
前記照明光が出る出光部と、
前記出光部から出た前記照明光を平行光にする結像光学素子と、
を有した、
請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記波長選択部は、前記第1の結像光学素子の焦点面に配置された、
請求項
1に記載の光学装置。
【請求項4】
前記照明部は、
前記照明光が出る出光部と、
前記出光部から出た前記照明光を平行光にする第2の結像光学素子と、
前記位置決め部と、
を有し、
前記位置決め部は、前記第2の結像光学素子の光軸に対して前記平行光の光線方向を傾けることが可能である、
請求項
1に記載の光学装置。
【請求項5】
前記撮像部は、前記位置決め部を有し、
前記位置決め部は、前記波長選択部の位置を
変化させる、
請求項
1に記載の光学装置。
【請求項6】
前記処理部は、前記色相情報を用いて前記面で散乱された散乱光の光線方向に関する情報を取得する、
請求項1に記載の光学装置。
【請求項7】
前記波長選択領域は、回転対称である、
請求項1に記載の光学装置。
【請求項8】
複数の前記波長選択領域は、一
列に並べられ、
前記センサーは、ラインセンサーである、
請求項1に記載の光学装置。
【請求項9】
前記面で反射される直前の前記照明光の光線方向を、前記撮像部から前記面で前記照明光が反射される点に向かう方向に沿わせるビームスプリッタを備えた、
請求項1に記載の光学装置。
【請求項10】
ビームスプリッタを備え、
前記照明部は、前記ビームスプリッタによって折られた光線経路に沿った前記第1の結像光学素子の焦点面に配置された出光部を有した、
請求項
1に記載の光学装置。
【請求項11】
前記位置決め部は、前記出光部と前記波長選択領域とを含む可動ユニットを有し、
前記可動ユニットは、前記出光部と前記波長選択領域との相対位置を保持した状態で前記第1の結像光学素子の光軸に沿って移動可能である、
請求項
10に記載の光学装置。
【請求項12】
前記第1の結像光学素子は、ズームレンズであり、
前記ズームレンズのズーム倍率の変化に伴う前記ズームレンズの焦点面の移動に応じて、前記光軸に沿って前記可動ユニットが移動する、
請求項
11に記載の光学装置。
【請求項13】
前記位置決め部は、
前記可動ユニットに連結された複数のロボットアームを有し前記可動ユニットを移動させるパラレルリンク機構と、
前記パラレルリンク機構を駆動する駆動部と、
前記駆動部を制御する制御装置と、
を有し、
前記可動ユニットは、前記センサーを有する、
請求項
11に記載の光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な産業において、物体の非接触での形状測定が重要となっている。従来、光線を分光して物体に照明し、撮像素子でそれぞれ分光された画像を取得し、各光線方向を推定して物体の面の情報を取得する手法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光線を照明部側で分光することなく、物体の面の情報を取得できる光学装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の光学装置は、照明光を射出する照明部と、物体の面で反射した前記照明光または前記面を透過した前記照明光が通過する第1の結像光学素子と、複数の波長選択領域を含み、前記第1の結像光学素子を通過した前記照明光が入射する波長選択部と、前記波長選択部を通過した前記照明光を受光するセンサーと、を有した撮像部と、前記照明光と前記第1の結像光学素子の光軸との正対関係を調整可能な位置決め部と、処理部と、を備え、第1の前記波長選択領域は、前記照明光のうち第1の前記波長選択領域を通過する第1の光線を主波長が第1の波長となる第1の選択光線に変換し、第2の前記波長選択領域は、前記照明光のうち第2の前記波長選択領域を通過する第2の光線を主波長が前記第1の波長と異なる第2の波長となる第2の選択光線に変換し、前記センサーは、前記第1の選択光線と前記第2の選択光線との色相情報を取得可能であり、前記処理部は、前記撮像部における前記波長選択部の相対位置と前記色相情報とに基づいて前記第1の光線の光線方向および前記第2の光線の光線方向を推定する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1の実施形態の光学装置の概略構成を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態の光学装置の詳細構成を模式的に示す図であって、光線経路を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態の光学装置の処理部が実行する処理を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、第1の実施形態の第1の変形例の照明部を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態の第2の変形例の照明部を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態の第3の変形例の照明部を模式的に示す図である。
【
図7】
図7は、第2の実施形態の光学装置を模式的に示す図である。
【
図8】
図8は、第3の実施形態の光学装置を模式的に示す図である。
【
図9】
図9は、第3の実施形態の光学装置の処理部が実行する処理を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、第4の実施形態の光学装置の一部を模式的に示す斜視図である。
【
図11】
図11は、第4の実施形態の光学装置の一部を模式的に示す上面図である。
【
図12】
図12は、第4の実施形態の光学装置の一部を模式的に示す断面図である。
【
図13】
図13は、第5の実施形態の光学装置を模式的に示す図である。
【
図14】
図14は、第6の実施形態の光学装置を模式的に示す図である。
【
図15】
図15は、第7の実施形態の光学装置を模式的に示す図である。
【
図16】
図16は、第7の実施形態の光学装置における可動ユニットの移動を説明するための説明図である。
【
図17】
図17は、第8の実施形態の光学装置を模式的に示す斜視図である。
【
図18】
図18は、第8の実施形態の光学装置を模式的に示す分解斜視図である。
【
図19】
図19は、第9の実施形態の光学装置を模式的に示す斜視図である。
【
図20】
図20は、第10の実施形態の光学装置を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1の実施形態)
以下、本実施形態に係る光学装置1について、
図1~3を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態の光学装置1の概略構成を模式的に示す図である。
図2は、本実施形態の光学装置1の詳細構成を模式的に示す図であって、光線経路を示す図である。
図1および
図2は、一部が、物体500の面501上の物点P1(撮像部3のセンサー11に結像される点)を通る断面で示されている。
【0009】
図1に示される本実施形態の光学装置1は、物体500の面501を検査(計測)する光学検査装置である。光学装置1は、照明部2と、撮像部3と制御装置4と、を備える。
【0010】
照明部2は、光源5と、光線射出面6と、位置決め部7と、結像光学素子8と、を有する。結像光学素子8は、第2の結像光学素子の一例である。
【0011】
光源5は、基板30に固定されている。光源5で生成された光は、光線射出面6から射出される。例えば、光線100が光線射出面6から物体500の面501に向けて射出される。ただし、ここでは光を電磁波として定義する。つまり、光は、可視光、X線、赤外線、近赤外線、遠赤外線、マイクロ波でよい。また、光は、コヒーレント光(レーザーなど)あるいはインコヒーレント光(LEDなど)のどちらでもよい。ここでは、可視光の波長は、400nmから800nmとする。光線射出面6は、照明光が出る光出部の一例である。
【0012】
照明部2の光源5は、少なくとも2つの、互いに異なる波長を発するものとする。光源5は、例えば、LED、OLED、熱輻射型フィラメント、プラズマ発光型光源でよい。あるいは、光源5は、導光板とLEDを組み合わせた、導光方式の発光体でもよい。あるいは、光源5は、液晶パネルやマイクロLEDアレイなどの複数の発光素子を備えるものでもよい。つまり、光を発するものならば何でもよい。
【0013】
ここでは、光源5は、LEDとし、白色光を発するものとする。白色光は、波長スペクトルが450nmから650nmの波長領域で有意な強度を持つとする。つまり、白色光は、少なくとも異なる2つの波長を持つとする。
【0014】
結像光学素子8は、代表的なものとして、レンズ、GRINレンズ、凹面ミラーなどがある。結像光学素子8は、物点P1を共役な像点に移す。ここでは、結像光学素子8は、実質的に点と見做せる微小領域から発せられた光線群(発散光)を実質的に点と見做せる光線群(集光光)に移すものとする。結像光学素子8は、このような作用を持つものならば何でもよい。ここでは、一例として、
図2に示されるように、結像光学素子8は、凸レンズである。結像光学素子8は、第1または第2のレンズとも称される。また、結像光学素子8の光軸Ax1は、第1または第2の光軸と称される。
【0015】
照明部2の位置決め部7は、光線射出面6を空間的に移動させることができる。例えば、マイクロメータ付きのリニアステージのような、機械的に可動する機構に光源5を配置して移動させてもよい。このような機械的可動機構は、電気的に制御できるものでもよく、手動で動かすものであってもよい。あるいは、位置決め部7として、光源5として発光素子を複数並べたものとし、各発光素子を点灯あるいは消灯させて電気的なON/OFFにより光線射出面6を移動させてもよい。この場合、機械的な可動機構に比べて、高速化できるという利点がある。
【0016】
本実施形態では、一例として、
図2に示されるように、位置決め部7は、可動部13を有する。可動部13は、マイクロメータ付きリニアステージによって構成されている。可動部13に光源5が配置されている。これにより、マイクロメータを調整することで、光源5の位置を精度よく決めることができる。
【0017】
図1に示されるように、撮像部3は、結像光学素子9と波長選択部10とセンサー11とを有する。
【0018】
撮像部3は、物体500の面501で反射または面501を透過した光線100,200を撮像する。本実施形態では、物体500の面501は、光線100,200を反射する場合とするが、これに限らず、面501は、光線100,200を透過させてもよい。撮像部3は、光線100,200を結像光学素子9によって結像し、撮像画像を取得する。物体500が光を透過する場合、撮像部3によってセンサー11に結像される面を物体500の面501とする。このとき、物体500の面501は物体500の表面または裏面、あるいはその内部にあるとする。結像光学素子9は、第1の結像光学素子の一例である。
【0019】
結像光学素子9は、ここでは凸レンズとする。ただし、結像光学素子9は、レンズや凹面ミラーなどの物点P1を共役な像点に移すものならば何でもよい。結像光学素子9は、第1または第2のレンズとも称される。結像光学素子9の光軸Ax2は、第1または第2の光軸と称される。
【0020】
波長選択部10は、少なくとも2つすなわち複数の波長選択領域12(領域)を備えている。本実施形態では複数の波長選択領域12は、第1の波長選択領域12aと第2の波長選択領域12bとを含む。各波長選択領域12は、透過型あるいは反射型の波長フィルターとする。つまり、各波長選択領域12は、波長選択領域12に入射した光線100,200を、その波長スペクトルに依存して選択的に透過あるいは反射させる。ここでは、波長選択領域12は透過型の波長フィルターとし、第1の波長選択領域12aと第2の波長選択領域12bの透過波長スペクトルは互いに異なるものとする。ここで、第1の波長選択領域12aに入射し透過する光線は、選択光線101と称される。選択光線101は、複数ある。複数の選択光線101は、選択光線101a,101bを含む。ただし、これに限らず、選択光線101は単数でもよい。
【0021】
センサー11は、少なくとも1つ以上の画素を持ち、各画素で光を受光し、光の強度を得る。光の強度をデジタル化したものを、画素値と呼ぶ。また、各画素は、少なくとも2つの色相チャンネルを持つとし、各色相チャンネルに対して画素値が振り分けられる。つまり、各画素において、光の波長スペクトルに応じ、各色相チャンネルの画素値が振り分けられる。ここでは、色相チャンネルに対する画素値を色相画素値と呼ぶ。例えば、波長450nmでピークを持つ青光を受光すれば、色相チャンネルch1(B)の画素値が増加し、色相チャンネルch2(G)と色相チャンネルch3(R)の画素値は増加しない。波長550nmでピークを持つ緑光を受光すれば、色相チャンネルch2(G)の画素値が増加し、他のチャンネルは増加しない。波長650nmでピークを持つ赤光を受光すれば、色相チャンネルch3(R)の画素値が増加し、他の色相チャンネルの画素値は増加しない。つまり、色相画素値によって、光の波長スペクトルを推定することができる。色相画素値は、色相情報の一例である。センサ-11の画素は、少なくとも、第1の波長の光線と第1の波長とは異なる第2の波長の光線をそれぞれ異なる色相に区別して記録できる。
【0022】
センサー11は、ラインに近い形状で画素を並べたラインセンサーでもよく、長方形あるいは正方形に近い形状で画素を並べたエリアセンサーでもよい。これに限らず、センサー11の形状は、多角形でも円でも何でもよい。本実施形態では、センサー11は、エリアセンサーとする。
【0023】
制御装置4は、光学装置1の各部の制御や演算を行うことができる。本実施形態では、制御装置4は、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、を有する。すなわち、制御装置4は、コンピュータである。CPUは、ROM等に記憶されたプログラムを読み出して実行する。また、CPUは、各種演算処理を並列処理可能に構成されている。RAMは、CPUがプログラムを実行して種々の演算処理を実行する際に用いられる各種データを一時的に記憶する。制御装置4は、演算部や情報処理部とも称される。
【0024】
制御装置4は、機能的構成として、少なくとも処理部4aを有する。この機能的構成は、CPUがROM等に記憶されたプログラムを実行した結果として実現される。なお、上記の機能的構成の一部または全部が専用のハードウェア(回路)によって実現されてもよい。
【0025】
処理部4aは、センサー11から色相画素値を受け取り、色相画素値を用いた演算が可能である。
【0026】
図2に示されるように、照明部2から射出される光線を、光線100a,光線100b、光線200a、光線200bとする。光線100aと光線100bとの総称として光線100を用い、光線200aと光線200bとの総称として光線200を用いる。光線100および光線200は、すべて白色光である。ただし、白色光に限らず、少なくとも2つの異なる波長を有する光ならば何でもよい。
【0027】
波長選択部10は、第1の波長選択領域12aにより、波長450nmの青光を主波長(主成分)とする光線を透過する。一方、第1の波長選択領域12aは、波長650nmの赤光は遮光(吸収あるいは反射により透過させない)する。第2の波長選択領域12bは、波長650nmの赤光を主波長(主成分)とする光線を透過するが、波長450nmの青光は遮光(吸収あるいは反射により透過させない)する。ここでは、例えば、波長450nmを第1の波長とし、波長650nmを第2の波長とする。
【0028】
波長選択部10において、第1の波長選択領域12aが中心に配置され、そのまわりに第2の波長選択領域1212b)が配置されている。
【0029】
物体500の面501は、2つの平面で構成されるとし、それらを第1の平面501aと第2の平面501bとする。第1の平面501aは、第2の平面501bに対して傾いている。ここでは、平面の傾き角は、第2の平面501bを基準平面とする。一般的に、平面の傾き角は、2つの変数で表せる。ここでは、第1の平面501aは一軸方向にのみ傾いているとし、傾き角は一つの変数で表せる。また、本実施形態では説明を簡単にするために、物体500の面501は鏡面であるとする。ただし、この限りではなく、物体500の面501は散乱面でもよい。物体500の面501が鏡面である場合、反射光は、正反射光成分のみが存在し、散乱光成分は実質的に存在しない。
【0030】
光線100(光線100a,100b)は、第1の平面501a上の点(物点P1)で反射され、結像光学素子9に入射して屈折され、第1の波長選択領域12aに到達する。さらに、第1の波長選択領域12aを通過した選択光線101(選択光線101a,101b)がセンサー11に到達する。ここで、結像光学素子9は、物点P1(反射された点)をセンサー11に結像する。選択光線101(選択光線101a,101b)は、第1の波長が主波長(主成分)となる。
【0031】
光線200(光線200a,200b)は、第2の平面501b上の点で反射され、結像光学素子9に入射して屈折され、第2の波長選択領域12bに到達する。さらに、第2の波長選択領域12bを通過した選択光線201(選択光線201a,201b)がセンサー11に到達する。ここで、結像光学素子9は、光線200(光線200a,200b)に対する物点(反射された点)をセンサー11に結像する。選択光線201(選択光線201a,201b)は、第2の波長が主波長(主成分)となる。
【0032】
また、本実施形態では、結像光学素子8の焦点面8a(
図2)、あるいは焦点面8a近傍に光線射出面6が配置されている。これにより、光線射出面6から射出された光線群は、結像光学素子8により実質的に平行光になる。つまり、光線100(光線100a,100b)、光線200(光線200a,200b)は、実質的に互いに平行である。これら互いに平行な光線群(光線100a,100b、光線200a,200bを含む群)を平行照明と呼ぶ。光線射出面6の位置決め部7により、光軸Ax1に対する平行照明の傾き角である角度θ1を調整できる。角度θ1は、第1の角度とも称される。
【0033】
また、結像光学素子9の焦点面9a(
図2)、あるいは焦点面9aの近傍に波長選択部10が配置されている。これにより、平行照明(互いに平行な光線群)が結像光学素子9に直接入射した場合、波長選択部10にいったん集光される。さらに、波長選択部10で透過(あるいは反射)された光線が、選択光線となってセンサー11に到達する。本実施系形態では、光軸Ax2に沿って入射した平行光が、波長選択部10の第1の波長選択領域12aにいったん集光される。一方、光軸Ax2に対して傾いた平行光は、波長選択部10の第2の波長選択領域12bにいったん集光される。
【0034】
光線100(光線100a,100b)と光軸Ax2は、第1の平面501aに対して正対の関係となっている。ここで、第1の平面501aが鏡面の場合、正対の関係とは、光線100(光線100a,100b)が第1の平面501aで反射され、その反射方向が光軸Ax2に沿うことを意味する。これはつまり、第1の平面501aが鏡面の場合、光線100(光線100a,100b)の、第1の平面501aの法線方向に対する入射角と反射角とがそれぞれ等しくなると言い換えることもできる。このような反射は、正反射と呼ばれる。ただし、平面が鏡面ではなく、例えば粗面などの拡散面である場合、光は散乱される。この場合、反射光の主成分の方向は、必ずしも入射方向に対して正反射の関係にならない場合がある。反射光の主成分をスペキュラー成分と呼び、その方向をスペキュラー方向と呼ぶ。それ以外の成分を散乱成分と呼ぶ。以下では、平面が鏡面の場合において、正反射光もスペキュラー成分と呼ぶことにする。
【0035】
本明細書において、平面が鏡面でも拡散面でも、ある平面に対して、光線あるいは軸である2つの線が正対の関係にあるとは、一方の線に沿って入射された光線が当該平面で反射されたとき、反射光のスペキュラー方向がもう一方の線に沿うことを意味すると定める。物体500が透過の場合も同様であり、ある線に沿って光線が入射されて物体500内を透過したとき、もう一方の線に透過光の主成分の方向が沿うとき、当該平面に対して2つの線が正対する、と定める。
【0036】
光線100(光線100a,100b)は、第1の平面501aにより、光軸Ax2に沿って反射される。これは、光線100(光線100a,100b)と光軸Ax2が第1の平面501aに対して正対の関係になっているからである。光線100(光線100a,100b)はさらに、結像光学素子9によって波長選択部10の第1の波長選択領域12aを通り、選択光線101(101a,101b)となり、センサー11に結像される。
【0037】
次に、本実施形態の光学装置1の動作について説明する。
図2において、光線100aと光線100bとは、平行光であり、第1の平面501aによって反射される。各光線100a,100bは両者とも光軸Ax2に沿って反射される。これは、光線100a,100bと光軸Ax2が正対の関係になっており、かつ、両光線100a,100bは平行であるからである。位置決め部7によって光線射出面6を移動させることにより、任意の平面に対してこのような正対の関係を取ることが可能となる。光線100aと光線100bとは、さらに、結像光学素子9で屈折透過されて第1の波長選択領域12aに入射する。つまり、第1の平面501a、あるいは傾き角が第1の平面501aと等しい平面で反射された光線は、第1の波長選択領域12aに入射する。言い換えれば、光線100aと平行な任意の2つの光線は、第1の平面501aと同じ傾き角の平面で反射されれば、第1の波長選択領域12aに入射される。光線100aと光線100bは、さらに、それぞれ選択光線101aと選択光線101bとなってセンサー11で結像される。また、両光線100a,100bとも第1の波長選択領域12aに入射したため、選択光線101a,101bは、第1の波長を主波長(主成分)とする。
【0038】
光線200aと光線200bは、平行であり、第2の平面501bによって反射される。両光線200a,200bは、光軸Ax2から傾いた方向に反射される。これは、光線200a,200bと光軸Ax2とは正対の関係になっておらず、かつ、両光線200a,200bが平行であるからである。位置決め部7によって光線射出面6を移動させることにより、任意の平面に対してこのような正対から外れた位置関係を取ることが可能となる。光線200aと光線200bは、さらに、結像光学素子9で屈折透過されて第2の波長選択領域12bに入射する。つまり、第2の平面501bと傾き角が等しい平面で反射された光線は、第2の波長選択領域12bに入射する。言い換えれば、光線200aと平行な任意の2つの光線は、第2の平面501bと同じ傾き角の平面で反射されれば、第2の波長選択領域12bに入射される。光線200aと光線200bは、さらに、それぞれ選択光線201aと選択光線201bとなってセンサー11で結像される。また、両光線200a,200bとも第2の波長選択領域12bを通ったため、選択光線201a,201bは、第2の波長が主波長(主成分)となる。
【0039】
以上により、第1の平面501aと同じ傾き角を持つ平面で反射された光線は全て、第1の波長選択領域12aに入射して、第1の波長を持つ選択光線となってセンサー11に結像される。一方、第2の平面501bと同じ傾き角を持つ平面で反射された光線は全て、第2の波長選択領域12bに入射して、第2の波長を持つ選択光線となってセンサー11に結像される。センサー11の各画素は、第1の波長と第2の波長とを区別し、異なる色相チャンネルに振り分ける。つまり、光線100(光線100a,100b)と光線200(光線200a,200b)とは、色相画素値で識別可能となる。これはつまり、反射光の光線方向を色相画素値で識別可能ということになる。反射光の光線方向は、物体500の面501の傾きで決まるため、物体500の面501の傾きを計測できるとも言える。物体500の面501の傾きは、物体500形状の重要な情報である。つまり、本実施形態により、物体500形状を推測することができると言える。また、撮像部3と照明部2との位置関係の情報があれば、三角測量の原理より、物体500までの距離が算出できる。つまり、物体形状を算出することができる。本実施形態では、処理部4aは、上記の方法により、色相情報である色相画素値に基づいて光線100の光線方向および光線200の光線方向を推定する、また、光線射出面6の位置決め部7により、平行照明の、光軸Ax1に対する傾き角(角度θ1)を調整できる。これにより、反射光の光線方向と波長選択部10の各波長選択領域1212の対応関係を変化させることができる。
【0040】
次に、処理部4aが実行する処理の流れを
図3に基づいて説明する。
図3は、本実施形態の光学装置1の処理部4aが実行する処理を示すフローチャートである。
【0041】
まず、処理部4aが行う処理の前に、制御装置4は、照明部2の位置決め部7により、光線射出面6の位置を決定する。そして、制御装置4は、照明部2の位置決め部7で決定された光線射出面6の、照明部2における相対位置情報によって照明光の方向を決定する。さらに、撮像部3における波長選択部10の相対位置情報に基づいて、物体500の面501で反射される光線の方向と波長選択領域12との関係を定める。波長選択部10の各波長選択領域12を通過(透過あるいは反射)した選択光線は、色相画素値で識別される。そのため、色相画素値と光線方向の関係が定まる。
【0042】
そして、
図3に示されるように、処理部4aが、上記の色相画素値と光線方向の関係を記録する(S11)。そして、処理部4aは、センサー11から撮像画像を取得し(S12)、各画素の色相画素値を取得する。処理部4aは、色相画素値から、先に記録した色相画素値と光線方向の関係を用い、上記の方法によって光線の光線方向を算出する(S13)。
【0043】
なお、色相画素値から光線方向を算出する際、物体500の面501の色分布、反射率分布などの影響を除去してノイズを低減する演算を行ってもよい。
【0044】
例えば、あらかじめ、波長選択部10を取り外した場合の画像を取得しておき、その後、波長選択部10を挿入した場合の画像を取得する。そして、それらの差分を算出することにより、物体500の面501の色分布や反射率分布の影響を低減するという効果がある。あるいは、色相画素値の各色相の画素値に閾値を設け、それをオフセットしてもよい。これにより、背景ノイズが低減するという効果がある。
【0045】
以上のように、本実施形態の光学装置1は、照明部2と、撮像部3と、処理部4aと、を備える。照明部2は、照明光を出射する。撮像部3は、波長選択部10と、センサー11と、を有する。波長選択部は、物体500の面501で反射した照明光または面501を透過した照明光が通過する複数の波長選択領域12(第1の波長選択領域12a,第2の波長選択領域12b)を含む。センサー11は、波長選択部10を通過した照明光を受光する。第1の波長選択領域12aは、照明光のうち第1の波長選択領域12aを通過する光線100を、第1の波長を主波長とする選択光線101に変換する。第2の波長選択領域12bは、照明光のうち第2の波長選択領域12bを通過する光線200を、第1の波長と異なる第2の波長を主波長とする選択光線201に変換する。センサー11は、選択光線101と選択光線201とのそれぞれの色相を示す色相情報を取得可能である。処理部4aは、撮像部3における波長選択部10の相対位置と色相情報とに基づいて光線100の光線方向および光線200の光線方向を推定する。
【0046】
このような構成によれば、光線を照明部2の側で分光することなく、物体500の面501の情報を取得できる。
【0047】
また、本実施形態によれば、撮像画像の各画素において、物体500の面501が第1の平面501aと同じ傾き角を持つか否かを、色相画素値を用いて検査することができるという効果が得られる。また、物体500の面501の傾きが第1の平面501aに近いか、第2の平面501bに近いかを識別することができるという効果が得られる。
【0048】
また、本実施形態では、光学装置1は、照明部2と撮像部3との少なくとも一方(一例として撮像部3)に設けられた位置決め部7を備える。撮像部3は、面501で反射した照明光または面501を透過した照明光が通過する結像光学素子9を有する。波長選択部10には、結像光学素子9を通過した照明光が入射する。位置決め部7は、照明光と結像光学素子9の光軸Ax2との正対関係を決定する。
【0049】
このような構成によれば、位置決め部7によって光線射出面6を移動し、平行照明の角度θを変化させることにより、第2の平面501bからの反射光が第1の波長選択領域12aに入射されるように調整することが可能である。このようにすると、一枚の撮像画像の各画素において、物体500の面501が第2の平面501bと同じ傾き角を持つか否かを、色相画素値を用いて検査することができるという効果が得られる。そして、物体500の面501の傾きが第2の平面501bに近いか、第1の平面501aに近いかを識別することができるという効果が得られる。位置決め部7により、適用できる検査の範囲が広がるという効果が得られる。
【0050】
また、位置決め部7によって光線射出面6を移動し、平行照明の角度θを変化させることにより、色相画素値による識別をより高精度にすることができる場合がある。例えば、物体500の面501が青光を反射しにくいが赤光を反射しやすい場合、第1の波長選択領域12aを通過した青光線である選択光線101の色相画素値は小さく、ノイズとの差が小さくなる。つまり、S/Nが劣化する。その場合、色相画素値による識別が困難になる。そこで、位置決め部7によって光線射出面6を移動し、平行照明の角度θを変化させることにより、第2の平面501bからの反射光が第1の波長選択領域12aに入射されるように調整する。これにより、選択光線101は赤光である第2の波長が主波長(主成分)となり、色相画素値も大きくなる。これにより、S/Nが向上し、色相画素値による識別精度が向上するという効果がある。
【0051】
以上で述べたように、本実施形態は、位置決め部7により照明光線と撮像部3の結像光学素子9の正対関係を調整可能にし、所望の物体500の面501の傾きの検査を可能にするという効果がある。また、物体500の面501の形状の推定精度を向上させるという効果もある。
【0052】
また、本実施形態では、照明部2は、照明光が出る光線射出面6と、光線射出面6から出た照明光を平行光にする結像光学素子8と、を有する。このような構成によれば、照明光を平行光にすることができる。
【0053】
また、本実施形態では照明部2は、照明光が出る光線射出面6と、光線射出面6から出た照明光を平行光にする結像光学素子8と、位置決め部7と、を有する。位置決め部7は、結像光学素子8の光軸Ax1に対して平行光の光線方向を傾けることが可能である。このような構成によれば、撮像部3に位置決め部7を設けなくてもよいので、撮像部3の構成を簡素化することができる。
【0054】
(第1の変形例)
図4は、第1の実施形態の第1の変形例の照明部2を模式的に示す図である。本変形例は、可動部13のリニアステージ上に、光源5および基板30の他に、板部材20が配置されている。板部材20には、開口21が設けられている。開口21は、光線射出面6に面する。光源5から射出された照明光は、開口21を通って結像光学素子8に到達する。すなわち、板部材20の開口21から照明光が出る。板部材20は、光出部の一例である。
【0055】
開口21の大きさを調整することにより、平行照明の平行度を調整することが可能となる。開口21を小さくして平行度を高めることにより、物体500の面501の傾きの分解精度が向上するという効果がある。開口21を大きくして平行度を弱めることにより、光の指向性を弱めることができる。これにより、物体500の面501で指向性の強い光が反射されて、センサー11がハレーションすなわち画素値の上限を超えることを起こすのを防ぐことができるという効果が得られる。
【0056】
(第2の変形例)
図5は、第1の実施形態の第2の変形例の照明部2を模式的に示す図である。本変形例では、可動部13に、光源5および基板30が固定されていない。また、可動部13には、貫通孔31が設けられている。また、可動部13には、第1の変形例で説明した板部材20が配置されている。板部材20の開口21は、貫通孔31と通じている。可動部13は、板部材20を移動させることができる。これにより、板部材20の開口21を移動することが可能となる。これにより、照明部2から射出される平行照明は、貫通孔31および開口21を通って結像光学素子8に向かう。このような構成によれば、照明部2から射出される平行照明の方向を変化させることができるという効果がある。
【0057】
(第3の変形例)
図6は、第1の実施形態の第3の変形例の照明部を模式的に示す図である。本変形例では、光源5は、複数の発光素子40を有する。各発光素子40は、電気的なON/OFFにより、発光を制御できるとする。各発光素子40は、波長スペクトルがあらかじめ異なっていてもよく、あるいは波長スペクトルを電気的に制御できてもよい。波長スペクトルが同一で、固定であり、制御できなくてもよい。ONになった発光素子40により、光線射出面6が形成される。すなわち、発光素子40のON/OFFによって光線射出面6を変更することができる。本実施形態では、光源5と基板30とにより位置決め部7が構成されている。このような構成によれば、機械的な移動よりも高速化できるという効果がある。また、波長スペクトルが異なる2つの発光素子40を同時にONにした場合、2つの異なる方向の平行照明を同時に照射し、かつ色相画素値で同時に識別可能になるという効果がある。
【0058】
(第2の実施形態)
以下、本実施形態に係る光学装置1について、
図7を参照して詳細に説明する。
図7は、本実施形態の光学装置1を模式的に示す図である。
【0059】
本実施形態の光学装置1は、照明部2、撮像部3、および制御装置4を備える。本実施形態の構成は、基本的に第1の実施形態の構成と同じであり、ここでは第1の実施形態と本実施形態との差分を主に説明する。
【0060】
照明部2は、板部材20の開口21の位置を変化させる第1の位置決め部7aを有する。第1の位置決め部7aの構成は、第1の実施形態の第1の変形例の位置決め部7と同様である。すなわち、第1の位置決め部7aは、可動部13と、開口21が設けられた板部材20と、を有する。第1の位置決め部7aは、板部材20の開口21と光源との相対位置を変化させる。ただし、この限りではなく、照明部2は第1の位置決め部7aを備えてなくてもよい。
【0061】
撮像部3は、波長選択部10の位置を変化させる第2の位置決め部7bを備える。すなわち、第2の位置決め部7bは、波長選択部10の位置を決定する。第2の位置決め部7bは、可動部53を有する。可動部53には、開口54(第2の開口)が設けられている。可動部53は、例えばマイクロメータ付きのリニアステージでよい。また、リニアステージの移動は、手動でもよく、モーター駆動による電気的なものでもよい。開口54は、第2の開口の一例である。
【0062】
第2の位置決め部7bと波長選択部10とは一体であってもよい。例えば、第2の位置決め部7bと波長選択部10とは、空間光変調器(SLM)のような液晶マイクロディスプレイによって構成されてもよい。空間光変調器は、反射型でもよく、透過型でもよい。例えば、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)のような反射型の空間光変調器でもよい。つまり、アレイ状に配置された透過型光学素子や反射型光学素子を用いて、波長選択領域12を電気的に制御するものでもよい。この場合、波長選択領域12を高速に変化させることが可能となる。本実施形態においては、機能説明を明確にするために、第2の位置決め部7bをマイクロメータ付きのリニアステージとする。
【0063】
本実施形態の光学装置1は、上記の通り、2つの位置決め部(第1の位置決め部7aおよび第2の位置決め部7b)を備えている。つまり、少なくとも一つの位置決め部を備えている。ただし、位置決め部はどちらか一つでもよい。
【0064】
以下、本実施形態の動作を説明する。
【0065】
第2の位置決め部7bで波長選択部10の位置を変化させることにより、物体500の面501から反射された光線が通過する波長選択領域12を変化させることができる。つまり、光線100と光線200とが波長選択部10を通過して選択光線となる際、各光線と選択光線の主波長(波長スペクトルの主成分に対応する波長)の組み合わせを同時に変化させることができる。本実施形態では、光線100が第2の波長選択領域12bを通過して選択光線101になり、赤光が主成分となる。光線200は、第1の波長選択領域12aを通過して選択光線201となり、青光が主成分となる。つまり、実施形態1の場合と比べて、組み合わせが同時に変化したことになる。
【0066】
本実施形態により、撮像画像の各画素において、物体500の面501が第2の平面501bと同じ傾き角を持つか否かを、色相画素値を用いて検査することができるという効果がある。そして、物体500の面501の傾きが第2の平面501bに近いか、第1の平面501aに近いかを識別することができるという効果がある。
【0067】
一方、第2の位置決め部7bによって波長選択部10を移動することにより、第1の平面501aからの反射光が第1の波長選択領域12aに入射されるように調整することが可能である。このようにすると、撮像画像の各画素において、物体500の面501が第1の平面501aと同じ傾き角を持つか否かを、色相画素値を用いて検査することができるという効果がある。そして、物体500の面501の傾きが第1の平面501aに近いか、第2の平面501bに近いかを識別することができるという効果がある。つまり、第2の位置決め部7bにより、適用できる検査の範囲が広がる効果がある。
【0068】
第2の位置決め部7bによって波長選択部10の位置を変化させることにより、色相画素値による識別をより高精度にすることができる場合がある。例えば、物体500の面501が赤光を反射しにくく、青光を反射しやすい場合、第2の波長選択領域12bを通過した赤光線である選択光線101の色相画素値が小さくなり、ノイズに埋もれてS/Nが下がる。その場合、色相画素値による識別が困難になる。そこで、第2の位置決め部7bによって波長選択部10を移動し、第2の平面501bからの反射光が第1の波長選択領域12aに入射されるように調整する。これにより、選択光線101は、第1の波長が主成分となり、色相画素値も大きくなる。これにより、色相画素値による識別精度が向上するという効果がある。
【0069】
以上で述べたように、第2の位置決め部7bによって色相画素値による物体500形状の検査の適用性が拡大するという効果がある。また、形状推定の精度が向上するという効果がある。
【0070】
第1の位置決め部7aと第2の位置決め部7bを同時に調整することにより、どちらか一方の位置決め部7の調整ではレンジが足りず、物体500の面501の傾きが検査できなかった場合でも検査可能になるという利点がある。つまり、第1の位置決め部7aと第2の位置決め部7bとを両方持つことにより、物体500の面501の傾き検査において、検査できる傾きのレンジが拡大するという効果がある。
【0071】
また、照明部2と撮像部3の正対位置関係をより細かく調整できるため、物体500の面501の形状推定精度が向上するという効果がある。
【0072】
以上のように、本実施形態では、照明部2と撮像部3の正対位置関係を精度よく調整可能にし、色相画素値を用いた物体500の面501の傾き検査を可能にするという効果がある。また、検査可能な、物体500の面501の傾きのレンジを拡大できるという効果がある。これはつまり、検査できなかった物体500の面501の傾きを検査可能にすると言い換えることができる。また、物体500の面501の形状推定精度を向上させる効果がある。
【0073】
また、本実施形態では、撮像部3は、第2の位置決め部7bを有し、第2の位置決め部7bは、波長選択部10の位置を決定する。
【0074】
(第3の実施形態)
以下、本実施形態に係る光学装置1について、
図8,9を参照して詳細に説明する。
【0075】
図8は、本実施形態の光学装置1を模式的に示す図である。本実施形態の光学装置1は、照明部2、撮像部3、および制御装置4を備える。本実施形態の構成は、基本的に第2の実施形態の構成と同じであり、ここでは第2の実施形態と本実施形態との差分を主に説明する。ただし、照明部2は、板部材20と光源との相対位置を変化させる第1の位置決め部7aを備えていてもよいが、本実施形態の効果を明確にするために、備えていないものとする。本実施形態では、照明部2の光源5は、例えば光軸Ax1上に配置され、光線射出面6も光軸上に配置されるとする。また、波長選択部10は、第1の波長選択領域12aおよび第2の波長選択領域12bの他に、第3の波長選択領域12cを有する。第1の波長選択領域12a、第2の波長選択領域12b、および第3の波長選択領域12cは、それぞれ選択する波長が異なる。
【0076】
物体500の面501における物点P1で光線が反射されるとする。ただし、物体500の面501は鏡面ではなく、光を拡散させるような拡散面であるとする。そのため、物点P1に光線が入射すると、散乱光が生成される。つまり、物点P1で反射された光線は、スペキュラー成分と散乱成分が同時に生成される。スペキュラー成分は、結像光学素子9を通り、第1の波長選択領域12aによって選択光線101となって射出されてセンサー11で結像される。散乱光成分は、例えば第2の反射光402と第3の反射光403であり、結像光学素子9を通り、それぞれ、第2の波長選択領域12bおよび第3の波長選択領域12cを通り、選択光線201光と第3の選択光線301となってセンサー11に結像される。
【0077】
波長選択部10は、第1の波長選択領域12aを中心に180°の回転対称であるとする。つまり、第1の波長選択領域12aを中心にし、波長選択部10を紙面内で回転させるとする。すると、回転角が180°のときに、元と一致する。このように、ある軸に対して回転したとき、回転角が360°未満で元と一致するものを回転対称と呼ぶ。波長選択部10が回転対称である例として、波長選択領域12が同一平面上にある場合、同心円や、左右対称なラインなどがある。あるいは、左右対称な格子状でもよい。ここで、波長選択部10の光軸Ax3は、結像光学素子9の光軸Ax2と平行である。
【0078】
以上の構成のもと、本実施形態の動作を説明する。
【0079】
物点P1で光線が散乱される場合、散乱成分の強度分布および波長スペクトル分布はスペキュラー方向D1を軸とし、実質的に軸対称になる場合が多いことが知られている。そのため、散乱光は、スペキュラー方向D1に対する光線の成す角のみに依存することになる。つまり、第2の反射光402と第3の反射光403の強度や波長スペクトルは異なるが、スペキュラー方向D1を軸に実質的に軸対称となる。
【0080】
本実施形態において、スペキュラー成分は、第1の波長選択領域12aに入射し、選択光線101になる。一方、散乱成分は、第1の波長選択領域12aを中心に対称となる。波長選択領域12も、第1の波長選択領域12aを中心に対称になるように配置される。このことより、波長選択部10を通過した散乱成分は、波長スペクトルが実質的に同じ散乱成分が集まって、センサー11に結像する。つまり、散乱成分の色相画素値を高めることができる。これにより、散乱成分の光線方向依存性に関し、S/N比の高い信号を取得できるという効果がある。
【0081】
散乱成分やスペキュラー成分の光線方向依存性を示す定量指標として、BRDF(Bidirectional Reflectance Distribution Function)と呼ばれる量が定義されている。BRDFは、物体500の材料や面501状態に大きく依存する。そのため、BRDFを取得することにより、物体500の材料や面501状態を知ることができるという効果がある。特に、物体500面501に凹凸欠陥がある場合、BRDFが大きく変化する。そのため、物体500面501の欠陥検査が可能になるという効果がある。
【0082】
以上により、対称な波長選択部10の中心である第1の波長選択領域12aに、スペキュラー成分が入射することによりS/Nが向上する。本実施形態は、第2の位置決め部7bにより、波長選択部10を移動させてスペキュラー成分が第1の波長選択領域12aを通過するように調整することが可能である。そのため、任意の拡散面に対して、S/Nの向上を図ることができる。一方、もし第2の位置決め部7bが無ければ、そのような調整をすることができず、特定の拡散面しか検査することができない。つまり、本実施形態により、任意のスペキュラー方向D1を持つ物体500の面501を検査することが可能になるという利点がある。
【0083】
次に、処理部4aが実行する処理の流れを
図9に基づいて説明する。
図9は、本実施形態の光学装置1の処理部4aが実行する処理を示すフローチャートである。
【0084】
まず、処理部4aが行う処理の前に、制御装置4は、撮像部3の位置決め部7により、波長選択領域12の位置を決定する。次に、制御装置4は、波長選択領域12の位置情報と照明部2の光線射出面6の位置情報とに基づいて、物体500の面501で反射される光線の方向と波長選択領域12の関係を定める。波長選択部10の各波長選択領域12を通過した選択光線の波長スペクトルは、色相画素値を用いて識別できる。そのため、色相画素値と光線方向の関係が定まる。
【0085】
そして、
図9に示されるように、処理部4aが、光線方向と色相画素値との関係を記録する(S21)。そして、処理部4aは、撮像画像を取得し(S22)、各画素の色相画素値を取得する。処理部4aは、色相画素値から、先に記録した色相画素値と光線方向の関係を用い、光線方向を算出し、スペキュラー成分と散乱成分に関する情報を取得する(S23)。つまり、物点P1のBRDFが取得できるという効果がある。
【0086】
色相画素値から光線方向を算出する際、物体500の面501の色分布、反射率分布などの影響を受けにくくするための演算を行ってもよい。例えば、波長選択部10に透明領域を設けておき、センサー11で受光される全ての光線がその透明領域を通過するように、位置決め部7を用いて波長選択部10を移動する。波長選択部10が、SLMなど、電気的に各波長領域を独立制御できる場合、全ての波長領域を透明領域に瞬時に切り替えて撮像できるという効果がある。そして、その場合の撮像画像を取得しておき、その後、波長選択部10の各波長選択領域12が互いに異なる透過波長スペクトルを持つように振り分け、画像を取得する。そして、両画像の差分を算出することにより、物体500の面501の色分布や反射率分布の影響を低減できる。あるいは、色相画素値の各色相の画素値に閾値を設け、それをオフセットしてもよい。これにより、背景ノイズが低減するという効果がある。
【0087】
以上のように、処理部4aは、色相情報を用いて面501で散乱された散乱光の光線方向に関する情報を取得する。
【0088】
(第4の実施形態)
以下、本実施形態に係る光学装置1について、
図10~12を参照して詳細に説明する。
【0089】
図10は、本実施形態の光学装置の一部を模式的に示す斜視図である。本実施形態は、照明部2、撮像部3、および制御装置4を備える。本実施形態の構成は、基本的に第1の実施形態の構成と同じであり、ここでは第1の実施形態と本実施形態との差分を主に説明する。
【0090】
撮像部3の波長選択部10は、複数の長方形の波長選択領域12を備える。複数の波長選択領域12は、第1の波長選択領域12aと第2の波長選択領域12bと第3の波長選択領域12cと、を含む。ただし、長方形の短辺が実質的に十分小さい場合、ライン状と見做すこともできる。波長選択領域12は、例えば、180°回転対称であるとする。つまり、第1の波長選択領域12aの中心を通り、その領域に直交する回転軸を取った時、その回転軸に対して波長選択領域12を180°回転させたときに元と一致する。これにより、散乱光のBRDFを精度よく取得することができる。
【0091】
複数の波長選択領域12は、一列に並べられている。そして、センサー11は、ラインセンサーである。
【0092】
以下に本実施形態の動作を説明する。
【0093】
図11は、第4の実施形態の光学装置1の一部を模式的に示す上面図である。
図12は、第4の実施形態の光学装置1の一部を模式的に示す断面図である。
図11の上面図で示される部分は、第3の実施形態で述べたのと同様な動作をする。ここで、スペキュラー方向D1と光軸Ax2とのなす角を角度θとする。また、波長選択部10の軸である光軸Ax3は、第1の波長選択領域12aの中心を通り、第1の波長選択領域12aに直交するように取る。第2の位置決め部7bにより、波長選択部10の軸と光軸Ax2との距離を制御することができる。スペキュラー方向D1に平行な光線は全て、結像光学素子9により、第1の波長選択領域12aを通過する。光線方向が色相画素値を用いて推定可能となるためには、少なくとも、光線が波長選択部10の波長選択領域12を通過し、センサー11に到達しなければならない。つまり、角度θ2が大きい場合、波長選択領域12を通過できない光線が増加するために、S/Nが下がることがある。
【0094】
図12に示す側面側の部分は、通常の撮像光学系と同様に動作する。つまり、結像光学素子9により、物点P1からの発散光を像面に置かれたセンサー11上に結像する。ここで、光軸Ax2と主光線(物点P1から像点を結ぶ線)との成す角を角度θ3とする。角度θ3は、結像光学素子9によって光線がセンサー11に到達できる範囲で変化し、波長選択領域12による制限はない。つまり、
図12に示されるように側面側から見た光線については、広い画角を取ることができる。一方、例えば、波長選択領域12が軸対称であるとし同心円であるとする。このとき、有意な光線は、上面と側面においていずれも波長選択領域12とセンサー11による2つの制限を受けることになる。それに比べ、本実施形態は、一軸方向の光線(側面から見た光線)が波長選択領域12による制限を受けないため、その軸方向の画角を広くとれるという効果がある。
【0095】
(第5の実施形態)
以下、本実施形態に係る光学装置1について、
図13を参照して詳細に説明する。
図13は、本実施形態の光学装置1を模式的に示す図である。
【0096】
本実施形態は、照明部2、撮像部3、および制御装置4を有する。本構成は、本実施形態の構成は、基本的に第1の実施形態の構成と同じであり、ここでは第1の実施形態と本実施形態との差分を主に説明する。
【0097】
本実施形態の光学装置1は、ビームスプリッタ55を備える。ビームスプリッタ55は、照明光の光路において光源5と結像光学素子9との間に配置されている。ビームスプリッタ55は、光線の偏光に依存しないものとする。しかし、その限りではなく、偏光に依存するものであってもかまわない。
【0098】
結像光学素子8と結像光学素子9とは、光軸Ax1と光軸Ax2とが交差するように配置されている。また、光軸Ax1と光軸Ax2との交差する点の近傍にビームスプリッタ55が配置されている。
【0099】
以上の構成では、ビームスプリッタ55により、物体500の面501で照明光が反射される物点P1に対し、撮像部3から物点P1に向かう方向と、照明光が物点P1に向かう方向とを沿わせることができる。すなわち、ビームスプリッタ55は、面501で反射される直前の照明光の光線方向を、撮像部3から面501で照明光が反射される点に向かう方向に沿わせる。つまり、照明光と撮像部3が取りえる正対位置関係の範囲を、ビームスプリッタ55を用いることによって広げることができる。
【0100】
(第6の実施形態)
以下、本実施形態に係る光学装置1について、
図14を参照して詳細に説明する。
図14は、本実施形態の光学装置1を模式的に示す図である。
【0101】
本実施形態は、照明部2、撮像部3、および制御装置4を備える。本実施形態の構成は、基本的に第1の実施形態の構成と同じであり、ここでは第1の実施形態と本実施形態との差分を主に説明する。
【0102】
本実施形態は、ビームスプリッタ55を備える。ビームスプリッタ55は、照明光の光路において結像光学素子9と波長選択部10との間に配置されている。ビームスプリッタ55は、光線の偏光に依存しないものとする。しかし、その限りではなく、偏光に依存するものであってもかまわない。
【0103】
結像光学素子9は、光軸Ax2が光源5の光軸に沿う軸Ax5と光軸Ax2とが交差するように配置されている。また、光軸Ax2と軸Ax5との交差する点の近傍にビームスプリッタ55が配置されている。
【0104】
結像光学素子9の実質的な焦点面9aに波長選択領域12が配置され、ビームスプリッタ55によって折られた光線経路に沿った結像光学素子9の実質的な焦点面9bに光線射出面6が配置される。すなわち、照明部2の光線射出面6は、ビームスプリッタ55によって折られた光線経路に沿った結像光学素子9の焦点面9bに配置されている。すなわち、光線射出面6は、ビームスプリッタ55によって折られた光線経路に沿った結像光学素子9の焦点面9bに配置されている。これより、結像光学素子9と結像光学素子8(
図14には図示せず)は共通化することができ、結像光学素子8を省くことができる。つまり、コンパクト化できるという効果がある。
【0105】
以上の構成により、物体500の面501で照明光が反射される物点P1に対し、撮像部3から物点P1に向かう方向と、照明光が物点P1に向かう方向を沿わせることができる。つまり、照明光と撮像部3の正対位置関係が取りえる範囲を、ビームスプリッタ55を用いることによって広げることができる。
【0106】
(第7の実施形態)
以下、本実施形態に係る光学装置1について、
図15,16を参照して詳細に説明する。
図15は、本実施形態の光学装置1を模式的に示す図である。
【0107】
本実施形態は、照明部2、撮像部3、および制御装置4を有する。本実施形態の構成は、基本的に第6の実施形態の構成と同じであり、ここでは第6の実施形態と本実施形態との差分を主に説明する。
【0108】
本実施形態では、位置決め部7cは、可動ユニット57を備える。可動ユニット57は、不図示の支持部材に移動可能に支持されている。可動ユニット57は、支持部材58と、光源5と、基板30と、ビームスプリッタ55と、波長選択部10と、を有する。支持部材58は、光源5と、基板30と、ビームスプリッタ55と、波長選択部10と、を支持している。詳細には、支持部材58に、光源5と、基板30と、ビームスプリッタ55と、波長選択部10と、が固定されている。すなわち、可動ユニット57は、光線射出面6と波長選択部10の相対位置関係を保ったまま結像光学素子9およびセンサー11に対して移動できるようにユニット化されている。つまり、位置決め部7cは、第1の位置決め部7a(
図7)と第2の位置決め部7b(
図7)とが共通化されたものと言うことができる。
【0109】
このように、位置決め部7cは、光線射出面6と波長選択領域12とを含む可動ユニット57を有する。可動ユニット57は、光線射出面6と波長選択領域12との相対位置を保持した状態で結像光学素子9の光軸Ax2に沿って移動可能である。
【0110】
結像光学素子9は、焦点位置が可変なレンズとする。例えば、ズームレンズのような組レンズでもよい。または、液体レンズのような電気的制御で焦点位置を可変にできるものでもよい。ここでは、結像光学素子9は、例えば液体レンズとする。
【0111】
本実施形態の動作原理を
図16を参照して説明する。
図16は、本実施形態の光学装置1における可動ユニット57の移動を説明するための説明図である。
図16には、可動ユニット57の移動の様子が示されている。具体的には、可動ユニット57が
図16の(a)の位置から
図16の(b)の位置に移動した様子が示されている。
図16は、光源5の光軸Ax4が結像光学素子9の光軸Ax2の軸方向に沿って移動するように、可動ユニット57が移動された例である。このとき、結像光学素子9の焦点面の位置を変化させたとしても、光軸Ax2に沿って可動ユニット57を動かせば、照明光の光線方向と波長選択領域12との関係は保たれるという効果がある。これにより、ワーキングディスタンスや、光学倍率を可変にできるという利点がある。
【0112】
(第8の実施形態)
以下、本実施形態に係る光学装置1について、
図17,18を参照して詳細に説明する。
図17は、本実施形態の光学装置1を模式的に示す斜視図である。
図18は、本実施形態の光学装置1を模式的に示す分解斜視図である。
【0113】
本実施形態の光学装置1は、照明部2、撮像部3、および制御装置4を備える。本実施形態の構成は、基本的に第7の実施形態の構成と同じであり、ここでは第7の実施形態と本実施形態との差分を主に説明する。
【0114】
本実施形態では、結像光学素子9は、ズームレンズとする。結像光学素子9は、位置決め部7dによって、焦点距離を可変にできる。
【0115】
位置決め部7dは、可変部60を有する。可変部60は、第1の部材61と、第2の部材62と、回転レバー63と、可動ユニット57と、を有する。
【0116】
第1の部材61は、円筒状に形成され、内部に可動ユニット57を収容している。可動ユニット57は、ピン57aを有する。第1の部材61には、ピン57aが入れられたスリット61aが設けられている。第1の部材61は、ピン57aひいては可動ユニット57を光軸Ax2に沿って移動可能に支持している。すなわち、可動ユニット57は、第1の部材61のスリット61aを介して一軸方向にスライドする。また、第1の部材61とセンサー11とは、互いに固定されている。
【0117】
第2の部材62は、円筒状に形成され、内部に第1の部材61を収容している。すなわち、第1の部材61の外側に第2の部材62が配置されている。第2の部材62には、ピン57aが入れられたスリット62aが設けられている。第2の部材62は、ピン57aひいては可動ユニット57および第1の部材61を光軸Ax2回りに回転可能に支持している。
【0118】
回転レバー63は、第2の部材62に固定されている。回転レバー63には、結像光学素子9が固定されている。
【0119】
このような構成では、第2の部材62は、回転レバー63によって回転する。また、回転レバーによって第2の部材62が回転すると、可動ユニット57が第1の部材61のスリット61aに沿って一軸方向に移動する。すなわち、可動ユニット57と結像光学素子9とは、相対的に、一軸方向に移動しながら回転可能である。回転レバー63を回転させることによって、結像光学素子9とは、相対的の焦点距離が変化する。それに追随して可動ユニット57が移動する。回転レバー63によって回転する第2のスリットを適正な形状とすることにより、結像光学素子9の焦点面の距離の変化に合わせて可動ユニット57を移動させることができる。換言すると、結像光学素子9のズーム倍率の変化に伴う結像光学素子9の焦点面の移動に応じて、Ax2に沿って可動ユニット57が移動する。
【0120】
(第9の実施形態)
以下、本実施形態に係る光学装置1について、
図19を参照して詳細に説明する。
図19は、本実施形態の光学装置1を模式的に示す斜視図である。
【0121】
本実施形態は、照明部2、撮像部3、および制御装置4を備える。本実施形態の構成は、基本的に第7の実施形態の構成と同じであり、ここでは第7の実施形態と本実施形態との差分を主に説明する。
【0122】
位置決め部7eは、パラレルリンク機構70と、駆動部85と、制御装置4と、を有する。位置決め部7eは、可動ユニット57を結像光学素子9に対して移動させる。なお、本実施形態では、可動ユニット57は、センサー11を含む。
【0123】
パラレルリンク機構70は、複数(一例として三つ)の支持機構71を有している。三つの支持機構71は、第1の支持機構71aと、第2の支持機構71bと、第3の支持機構71cとである。パラレルリンク機構70は、三つの支持機構71によって、可動ユニット57を支持している。三つの支持機構71は、所定の空間内で、可動ユニット57の位置および姿勢を変化させることができる。このように、三つの支持機構71は、互いに同部品から構成される。このため、パラレルリンク機構70の構造がシンプルになり、コスト低減効果がある。
【0124】
各支持機構71は、レール部材72と、スライダー73と、ロボットアーム74と、を有している。すなわち、パラレルリンク機構70は、三つのレール部材72と、三つのスライダー73と、三つのロボットアーム74とを有している。レール部材72は、不図示のベースに支持され、スライダー73は、レール部材72に支持され、ロボットアーム74は、スライダー73に支持されている。また、ロボットアーム74は、可動ユニット57を支持している。
【0125】
レール部材72は、結像光学素子9の光軸Ax2に沿った回転中心回り)に回転可能に、ベースに支持されている。
【0126】
スライダー73は、レール部材72に沿って移動可能にレール部材72に接続(支持)されているとともに、レール部材の回りに回転可能にレール部材72に接続(支持)されている。
【0127】
第3の支持機構72cのスライダー73は、駆動部85によって、レール部材72に沿って移動される。
【0128】
駆動部85は、モータ79と、モータ79に連結されたギヤ80と、プーリ81と、タイミングベルト82と、連結部83と、を有する。モータ79は、ステッピングモーターである。タイミングベルト82は、ギヤ80とプーリ81とに掛け渡されている、連結部83は、タイミングベルト82とスライダー73とを連結している。このような構成では、モータ79が回転することにより、ギヤ80が回転し、タイミングベルト82が動く。これにより、スライダー73がレール部材72に沿って移動する。
【0129】
各ロボットアーム74は、二つのロッド75を有する。各ロッド75は、ジョイント部77によってスライダー73とステージ78に連結されている。ジョイント部77は、ボールジョイントである。ステージ78には、可動ユニット57が固定されている。
【0130】
以上のように、光学装置1は、可動ユニット57に連結された複数のロッド75を有し可動ユニット57を移動させるパラレルリンク機構70と、パラレルリンク機構70を駆動する駆動部85と、駆動部85を制御する制御装置4と、を有する。可動ユニット57は、センサー11を有する。
【0131】
以下、本実施形態の動作原理を説明する。上記のように、各スライダー73には、2つのロッド75が一組になり、互いに平行になるように取り付けられる。また、各ロッド75のもう一方の端部はステージ78にジョイントされる。さらにロッド75の長さは等しいとする。つまり、各組の2つのロッド75は平行かつ長さが等しいため、平行四辺形を描くことになる。
【0132】
本実施形態では、3つのスライダー73のそれぞれに一組のロッド75が配置される。各組のロッド75は平行四辺形を描く。つまり、ステージ78は、各組のロッド75が描く3つの平行な線分上になくてはならない。そのため、ステージ78は常に、ある平面に平行となる。ステージはそのため、スライダー73が様々に移動しても同一の姿勢(傾き)を保ったまま移動できる。そのため、可動ユニット57の照明光と撮像部3の正対位置関係を保ったまま移動できるというメリットがある。
【0133】
(第10の実施形態)
以下、本実施形態に係る光学装置1について、
図20を参照して詳細に説明する。
図20は、本実施形態の光学装置1を模式的に示す図である。
【0134】
本実施形態の光学装置1は、照明部2、撮像部3、および制御装置4を有する。本実施形態の構成は、基本的に第7の実施形態の構成と同じであり、ここでは第7の実施形態と本実施形態との差分を主に説明する。
【0135】
本実施形態の可動ユニット57は、可動部13、センサー11および結像光学素子9を含む。そして、可動ユニット57は、スキャン用のロボット機構90に取り付けられている。これにより、広域スキャンが可能となる。
【0136】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0137】
1…光学装置
2…照明部、
3…撮像部
4…制御装置
4a…処理部
6…光線射出面(出光部)
7,7c,7d,7e…位置決め部
7a…第1の位置決め部
7b…第2の位置決め部
8…結像光学素子
9…結像光学素子
10…波長選択部
11…センサー
12…波長選択領域
12a…第1の波長選択領域
12b…第2の波長選択領域
12c…第3の波長選択領域
20…板部材(出光部)
55…ビームスプリッタ
57…可動ユニット
70…パラレルリンク機構
74…ロボットアーム
85…駆動部
100…光線
101…選択光線
200…光線
201…選択光線
500…物体
501…面