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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/739 20060101AFI20231107BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20231107BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20231107BHJP
   H01L 29/744 20060101ALI20231107BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20231107BHJP
   H01L 29/868 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
H01L29/78 655A
H01L29/78 655B
H01L29/78 655D
H01L29/78 652B
H01L29/78 652H
H01L29/78 652J
H01L29/78 652M
H01L29/78 652T
H01L29/78 653C
H01L29/74 C
H01L29/91 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020512790
(86)(22)【出願日】2018-07-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 CN2018097167
(87)【国際公開番号】W WO2019042052
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2020-03-02
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】201710757159.1
(32)【優先日】2017-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520068630
【氏名又は名称】南京芯舟科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】NANJING SINNOPOWER TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 506-1, New Town Headquarters Building, No. 1 Pukou Avenue, Jiangpu Street, Pukou District, Nanjing, Jiangsu 211800 (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】呂信江
【合議体】
【審判長】瀧内 健夫
【審判官】河本 充雄
【審判官】市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0025522(US,A1)
【文献】特開2007-074006(JP,A)
【文献】特開2017-028250(JP,A)
【文献】特開2009-277792(JP,A)
【文献】特開2011-204803(JP,A)
【文献】特開2019-012762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/336
H01L29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイスであって、前記半導体デバイスは、少なくとも1つの第1電極と、少なくとも1つの第2電極と、少なくとも1つのセルを備え、前記セルの構造は、
N型基材と、少なくとも1つのN型キャリア障壁領域と、少なくとも2つのP型電界遮蔽領域とを備え、
前記N型基材一側には、少なくとも1つの第1溝部単位と少なくとも2つの第2溝部単位とが設けられ、
前記N型基材の他側には、少なくとも1つのP型半導体領域が設けられ、ここで、前記P型半導体領域はアノード領域であり、前記第1電極は前記P型半導体領域を覆い、
前記N型キャリア障壁領域のドーピング濃度は、前記N型基材のドーピング濃度よりも高く、
前記P型電界遮蔽領域は、前記少なくとも2つの第2溝部単位の底部にそれぞれ位置され、前記P型電界遮蔽領域には、前記第2溝部単位と直接接続する面が設けられ、且つ隣接するP型電界遮蔽領域の間と下部は前記N型基材か接触せず、
前記N型キャリア障壁領域は、前記第1溝部単位の底部に位置され、前記N型キャリア障壁領域には、前記第1溝部単位と直接接続する面が設けられ、前記N型キャリア障壁領域には、前記第2溝部単位と直接接続する面がさらに設けられ
前記第1溝部単位に、ゲート領域が設けられ、前記ゲート領域と前記N型基材との間は、第1絶縁媒質を設けることで分離され、前記第2溝部単位に、カソード領域が設けられ、前記カソード領域と前記N型基材との間は、第2絶縁媒質を設けることで分離され、前記第2電極は前記カソード領域を少なくとも部分的に覆い、
前記P型半導体領域には、前記第1電極と直接接触する面が設けられ、
前記カソード領域は、前記第2電極と接続され、
少なくとも1つの前記ゲート領域と前記第2電極との間は、第3絶縁媒質を設けることで分離され、前記ゲート領域は、半導体デバイスの第3電極であり、
前記半導体デバイスは、MOS制御のバイポーラトランジスタであり、前記第1溝部単位と前記第2溝部単位との間に、P型ソース領域が設けられ、
前記P型ソース領域と前記第1溝部単位との間に、少なくとも1つのN型電子ソース領域が設けられ、
少なくとも前記P型ソース領域の一部と、前記N型電子ソース領域の一部とは、前記第2電極と接続され、
前記第1溝部単位、前記N型キャリア障壁領域、前記P型ソース領域、および前記N型電子ソース領域は、N-MOS構造を構成し、
前記第2溝部単位、前記P型ソース領域、前記N型キャリア障壁領域、および前記P型電界遮蔽領域は、P-MOS構造を構成し、
前記P型半導体領域、前記N型基材、および前記P型電界遮蔽領域は、PNPバイポーラトランジスタを構成し、
前記N型基材の一側に、少なくとも1つの浮遊P型半導体領域が設けられ、前記浮遊P型半導体領域は前記第2溝部単位に対して前記P型ソース領域とは反対側に位置され、且つ、前記浮遊P型半導体領域と前記第2電極との間は、第4絶縁媒質を設けることで分離される、ことを特徴とする半導体デバイス。
【請求項2】
前記第1溝部単位の幅は前記第2溝部単位の幅と同じ、または、前記第1溝部単位は第2溝部単位の幅と異なり、
前記第1溝部単位の深さは、前記第2溝部単位の深さより浅い、ことを特徴とする請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項3】
前記P型半導体領域と前記N型基材との間に、第1N型半導体領域が設けられ、前記第1N型半導体領域は、フィールドストップ領域である、ことを特徴とする請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項4】
前記N型基材の一部は、第2N型半導体領域を介して、前記第1電極と接続される、ことを特徴とする請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項5】
前記セルは、前記第1溝部単位とは別の第1溝部単位を備え、前記別の第1溝部単位に設けられたゲート領域は、前記第2電極に接続される、ことを特徴とする請求項1に記載の半導体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の技術領域に属し、特に半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor、IGBTと略称する)は、絶縁ゲート電解効果トランジスタ(MOS)とバイポーラトランジスタ(BJT)とで構成された複合完全制御型電圧駆動式電力用半導体素子である。高入力インピーダンス、低い駆動電力、簡単な駆動回路、早いスイッチ速度、または低い電圧降下などの優れる点があるため、家庭用電化製品、鉄道輸送、スマートグリッド、航空宇宙、電気自動車、新エネルギー機器などの分野で非常に幅広く応用されており、電力変換と輸送のコアコンポーネントである。
【0003】
パワーエレクトロニクス技術のコアデバイスとして、IGBTは定格状態で動作するだけでなく、過電圧、過電流、高電圧および電流変化率(dv/dt、di/dt)などの電力システムに頻繁に発生する極端な条件にも耐える必要がある。したがって、電気回路システムにとって、IGBTの安定性および信頼性は特に重要である。
【0004】
IGBTの故障には、様々な原因があるが、その主な原因は、安全な作業領域(Safe Operating Area、SOAと略称する)を超えることである。故障のメカニズムは、(1)寄生サイリスタのラッチアップ(Latch-up)に起因する故障と、(2)高電圧および大電流下でのデバイスの自己発熱に起因する最大ジャンクションによる故障と、(3)ゲートーコレクタ容量(CGC)により、高dv/dtの条件の下でのゲート障害、または酸化物層の破壊をもたらす過剰なゲート電位による故障と、(4)電気回路の寄生電界により、高dv/dtの条件の下でのデバイスが実際に受ける電圧が最大電圧許容値を超え、結果として故障になること、などに起因する。
【0005】
従って、上述した原因による信頼性への影響を低減または完全に回避することができる新たなデバイス構造を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上述した問題を解決できる半導体デバイスを提供することである。前記半導体デバイスは、新型のセル構造を有することで、(1)大きな安全動作領域、(2)短絡耐性、(3)寄生サイリスタなどの動作を抑制する、(4)低ゲートーコレクタ電荷(QGC)で最大dv/dt耐性を得る、(5)エミッタ側のコンダクタンス変調を大きくして、より大きな電流密度と非常に低いオン電圧降下を得る、(6)小さなターンオフ損失、(7)比較的に低い製造プロセスの複雑さ、を実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、以下の手段を採用している。
【0008】
半導体デバイスであって、少なくとも1つのセルを備え、前記セルの構造は、
N型基材と、少なくとも1つのN型キャリア障壁領域と、少なくとも1つのP型電界遮蔽領域とを備え、
前記N型基材に一側には、少なくとも1つの第1溝部単位と少なくとも1つの第2溝部単位とが設けられ、
前記N型基材の他側には、少なくとも1つのP型半導体領域が設けられ、ここで、前記P型半導体領域は陽極領域であり、
前記N型キャリア障壁領域のドーピング濃度は、前記N型基材のドーピング濃度よりも高く、
前記N型キャリア障壁領域には、前記第1溝部単位と直接接続する面が設けられ、前記N型キャリア障壁領域には、前記第2溝部単位と直接接続する面がさらに設けられ、前記P型電界遮蔽領域には、前記第2溝部単位と直接接続する面が設けられ、
前記第1溝部単位に、ゲート領域が設けられ、前記ゲート領域と半導体材料との間は、第1媒質を設けることで分離され、前記第2溝部単位に、カソード領域が設けられ、前記カソード領域と半導体材料との間は、第2媒質を設けることで分離され、
前記半導体デバイスは、少なくとも1つの第1電極と、少なくとも1つの第2電極とを備え、
前記P型半導体領域には、前記第1電極と直接接触する面が設けられ、
前記カソード領域は、前記第2電極と接続され、
少なくとも1つの前記ゲート領域と前記第2電極との間は、第3媒質を設けることで分離され、前記ゲート領域は、半導体デバイスの第3電極である、半導体デバイスを提供する。
【0009】
好ましくは、前記第1溝部単位の幅は前記第2溝部単位の幅と同じ、または、前記第1溝部単位は第2溝部単位の幅と異なり、前記第1溝部単位の深さは、前記第2溝部単位の深さと同じまたは浅い。
【0010】
好ましくは、前記N型基材の一側に、少なくとも1つの浮遊P型半導体領域が設けられ、前記浮遊P型半導体領域と前記第2電極との間は、第4媒質を設けることで分離される。
【0011】
好ましくは、前記P型半導体領域と前記N型基材との間に、第1N型半導体領域が設けられ、前記N型半導体領域は、フィールドストップ領域である。
【0012】
好ましくは、前記N型基材は、第2N型半導体領域を介して、前記第1電極と接続される。
【0013】
好ましくは、前記セルは、2つ以上の前記第1溝部単位を備え、少なくとも1つの第1ゲートまたは第2ゲートは、前記第2電極に接続される。
【0014】
好ましくは、前記セルは、2つ以上の第2溝部単位を備え、少なくとも2つの前記P型電界遮蔽領域が接続している。
【0015】
好ましくは、前記半導体デバイスは、MOS制御のバイポーラトランジスタであり、前記第1溝部単位と前記第2溝部単位との間に、P型ソース領域が設けられ、 前記P型ソース領域は、前記第1溝部単位に隣接する一側に、少なくとも1つのN型電子ソース領域が設けられ、少なくとも前記P型ソース領域の一部と、前記N型電子ソース領域の一部とは、前記第2電極と接続され、前記第1溝部単位、前記N型キャリア障壁領域、P型ソース領域、および前記N型電子ソース領域は、MOS構造を構成する。
【0016】
好ましくは、前記半導体デバイスはMOS制御のサイリスタである。
【0017】
好ましくは、前記半導体デバイスはダイオードである。
【0018】
好ましくは、前記半導体デバイスはショックレーダイオードである。
【0019】
好ましくは、前記半導体デバイスはゲートターンオフサイリスタである。
【0020】
好ましくは、N型とP型とが互いに交換できる。
【0021】
本発明の目的は、上述した問題を解決できる半導体デバイスを提供することである。前記半導体デバイスは、新型のセル構造を有することで、(1)大きな安全動作領域、(2)短絡耐性、(3)寄生サイリスタなどの動作を抑制する、(4)低ゲートーコレクタ電荷(QGC)で最大dv/dt耐性を得る、(5)エミッタ側のコンダクタンス変調を大きくして、より大きな電流密度と非常に低いオン電圧降下を得る、(6)小さなターンオフ損失、(7)比較的に低い製造プロセスの複雑さ、を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明のある実施形態を示す図である。
図2】本発明のある実施形態を示す図である。
図3】本発明のある実施形態を示す図である。
図4】本発明のある実施形態を示す図である。
図5】本発明のある実施形態を示す図である。
図6】本発明のある実施形態を示す図である。
図7】本発明のある実施形態を示す図である。
図8】本発明のある実施形態を示す図である。
図9】本発明のある実施形態を示す図である。
図10】本発明のある実施形態を示す図である。
図11】本発明のある実施形態を示す図である。
図12】本発明のある実施形態を示す図である。
図13】本発明のある実施形態を示す図である。
図14】本発明のある実施形態を示す図である。
図15】本発明のある実施形態を示す図である。
図16】本発明のある実施形態を示す図である。
図17】本発明のある実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0023】
N型基材001、P型半導体領域002、第1N型半導体領域003、第2N型半導体領域004、N型キャリア障壁領域010、ゲート領域011、第1媒質012、第3媒質015、第4媒質016、第1ゲート017、第2ゲート021、P型電界遮蔽領域101、カソード領域111、第2媒質112、第1P型領域113、P型ソース領域202、浮遊P型半導体領域203、P型領域205、N型領域207、第3N型半導体領域302、N型電子ソース領域303、第1電極502、第2電極500、導電体600、第1溝部単位700、第2溝部単位800。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、具体な実施形態を例示して、本発明の技術内容を説明する。
【0025】
実施形態1
本発明のMOS制御のバイポーラトランジスタ(MCBT)は、複数のセル単位で構成され、図1は、1つのセルの構造断面図である。当該セル構造は、N型基材001を基材とし、N基材001の一側に、陽極領域と呼ばれるP型半導体領域002が設けられ、N基材001の他側に、少なくとも1つの第1溝部単位700と少なくとも1つの第2溝部単位800が設けられている。第1溝部単位700の深さは、第2溝部単位800の深さよりも小さい。第1溝部単位700の底部には、N基材001のドーピング濃度よりも高いN型キャリア障壁領域010を有し、前記N型キャリア障壁領域010が少数キャリア(minority carrier)障壁領域と呼ばれる。第2溝部単位800の底部には、P型電界遮蔽領域101が設けられる。第1溝部単位700内に、ゲート領域011が設けられ、ゲート領域011とN基材001との間は、第1媒質012を設けることで分離されている。第2溝部単位800内に、陰極領域111が設けられ、カソード領域111とN基材001との間は、第2媒質112を設けることで分離されている。前記N型キャリア障壁領域010の一側は、前記第2溝部単位800の第2媒質112と接触している。第1溝部単位700と第2溝部単位800との間に、P型ソース領域202が設けられ、P型ソース領域202の第1溝部単位700の一側に隣接するように、N型電子ソース領域303が設けられている。第1溝部単位700と第2溝部単位800との外側に、浮遊P型半導体領域203が設けられている。金属材料で構成された第1電極502は、前記P型半導体領域002を覆って前記MCBTのコレクタを形成する。金属材料で構成された第2電極500は、少なくとも一部のカソード領域111、少なくとも一部のP型ソース領域202、および少なくとも一部のN型電子ソース領域303を覆って前記MCBTのエミッタを形成する。前記ゲート領域011は、前記MCBTのゲートである。前記ゲート領域011と第2電極500との間は、第3媒質015を設けることで分離され、前記浮遊P型半導体領域203と第2電極500との間は、第4媒質016を設けることで分離されている。
【0026】
さらに、第1溝部単位700、N型キャリア障壁領域010、P型ソース領域202、およびN型電子ソース領域303で、N-MOS構造を構成する。N型電子ソース領域303は、当該N-MOSの電子のソース領域であり、N型キャリア障壁領域010は、当該N-MOSの電子のドレイン領域である。
【0027】
さらに、第2溝部単位800、P型ソース領域202、N型キャリア障壁領域010、およびP型電界遮蔽領域101は、P-MOS構造を形成する。前記P型電界遮蔽領域101は、当該P-MOSの正孔のソース領域であり、前記P型ソース領域202は、当該P-MOSの正孔のソース領域である。
【0028】
さらに、P型半導体領域002、N型基材001、およびP型電界遮蔽領域101は、PNPバイポーラトランジスタを形成する。P型半導体領域002は、当該PNPトランジスタの少数キャリアのエミッター電極であり、P型電界遮蔽領域101は、当該PNPトランジスタの少数キャリアのコレクタ領域であり、N型基材001は、当該PNPトランジスタのベース領域である。
【0029】
以下、図1に示された実施形態における、本発明のMOS制御のトランジスタ(MCBT)の主な電気的特性を説明する。
【0030】
(第1の特性)
本実施形態によって提供されるMCBTは、非常に低いオン電圧降下VONを有する。前記MCBTの第1電極502と第2電極500との間の電圧VCEが0よりも大きく、且つゲート領域011と第2電極500との間の電圧VGEが前記N-MOSの閾値電圧VTHNを超える場合、電子は、N型電子ソース領域303からP型ソース領域202、N型キャリア障壁領域010、N型基材001を順に流れ、P型半導体領域002に到達する。同時に、正孔は、P型半導体領域002から、N型基材001に流れ、P型電界遮蔽領域101に到達する。なお、N型基材001と、ドーピング濃度の比較的に高いN型キャリア障壁領域010との間に、濃度差によるビルトイン電位が形成され、ビルトイン電位は、N型基材001の正孔の障壁となり、正孔のP型ソース領域202への流れを阻碍し、N型基材001内の正孔濃度をN型キャリア障壁領域010の近くで大幅に増加させ、デバイスの電流密度が大幅に増加する。一方で、同じ電流密度では、MCBTのオン電圧降下VONがIGBTのオン電圧降下VONよりも低くなる。
【0031】
(第2の特性)
本実施形態によって提供されるMCBTは、非常に高いラッチアップ(Latch-up)能力を有する。実際の用途では、パワー半導体デバイスは、高電圧および大電流などの極端な状況で動作刷る場合がよくある。この時、多數の正孔がP型半導体領域002からN型基材001に注入され、且つP型電界遮蔽領域101に到達する。正電荷の正孔は、P型電界遮蔽領域101に入るので、当該領域の電圧が上昇する。P型電界遮蔽領域101の電位がある程度に上昇すると、前記P-MOSがオンになり、第2溝部単位800に隣接する側の壁に正孔のチャネルが形成され、この際、N型基材001内の多數の正孔は、当該チャネルに沿ってP型ソース領域202に到達し、最終に、MCBTのエミッタ第2電極500に到達する。通常のIGBT、MCTなどのデバイスと異なるのは、当該正孔チャネルは前記N-MOSの電子チャネルから分離されており、正孔がP型ソース領域202においてN型電子ソース領域303の底部を流れない。これにより、寄生トランジスタがオンになることを防ぎ、ラッチアップ(Latch-up)の発生を効果的に抑制することができる。
【0032】
(第3の特性)
本実施形態によって提供されるMCBTは、比較的に小さなゲートーコレクタ容量(CGC)を有する。CGCの大きさは、セル面積に対するP型電界遮蔽領域101の面積の比率に関係している。P型電界遮蔽領域101がコレクタ第1電極502およびN型基材001からの電界を遮蔽するため、P型電界遮蔽領域101の面積がセル面積の大きな比率を占めると、コレクタ電位の変化によって、P型電界遮蔽領域101内の電荷量の変化を引き起こし、少数の電力線がゲート領域011に到達する。そのため、ゲート領域011内の電荷はコレクタの電位の変化の影響を受けにくく、ゲートーコレクタ容量(CGC)が減少する。
【0033】
(第4の特性)
本実施形態によって提供されるMCBTは、より高い降伏電圧を実現することができる。降伏電圧の大きさは、セル面積に対するP型電界遮蔽領域101の面積の比率に関係している。ブロッキング状態では、部分的に消耗されたP型電界遮蔽領域101内のイオン化アクセプターによって生成された負電荷は、消耗されたN型基材001内のイオン化ドナーから生成された正電荷を吸収するので、第1溝部単位700と第2溝部単位800との底部にある媒質層の周囲の電界は、容易に集中されないため、高阻止電圧を得ることができる。
【0034】
(第5の特性)
本実施形態によって提供されるMCBTは、良好な短絡耐性を有する。実用では、パワー半導体デバイスは、短絡状態で動作する場合があり、高電圧および大電流下では、デバイスが自己発熱して生じた温度が最大接合温度を超え、故障が発生することがある。一定のゲート電圧下では、デバイスの短絡耐性と飽和コレクタ電流とが直接関係する。実施形態1のセルでは、第1溝部単位700と第2溝部単位800の以外に、浮遊P型半導体領域203が設けられ、当該浮遊P型半導体領域203が占めるセルの面積比を調整することにより、適切な良好な飽和コレクタ電流が得られ、優れる短絡耐性を得ることができる。
【0035】
(第6の特性)
本実施形態によって提供されるMCBTは、比較的に小さいターンオフ損失を有する。通常のIGBTは、ターンオフ過程においてアノードにキャリアが注入し続けるため、電流の裾引き減少が生じる。ターンオフ過程では、電力損失の大部分は、裾引き電流により形成され、且つ当該裾引き電流の大きさはアノードにキャリアの注入効率の増加につれて増大する。本発明によって提供されるMCBTは、N型キャリア障壁領域010側に正孔濃度を大幅に増加させたので、同じオン電圧降下の下で、アノードの正孔注入効率は大幅に低下することによって、総電流に対する電子電流の比率(電子電流/総電流)が増加し、裾引き電流が減少するため、より小さいターンオフ損失を得ることができる。
【0036】
実施形態1に説明された半導体は、シリコン(Si)材料または炭化シリコン(SiC)材料で構成され、前記ゲート領域011と前記カソード領域111とは、金属材料またはポリシリコン材料で構成され、前記第1媒質012、第2媒質112、第3媒質015および第4媒質016は、二酸化ケイ素または他の絶縁材料で構成される。
【0037】
実施形態2
上述した実施形態では、N型基材001は非パンチスルー型(Non Punch Through)であり、すなわち、コレクタとエミッタとの間に最高電圧が印加されたときに、N型基材領域001は完全に消耗しない。実施形態2では、パンチスルー型(Punch Through)または電場遮断型(Field Stop)のセルが提供されており、構造は図2に示されている。P型半導体領域002と隣接する側には、第1N型半導体領域003が設けられ、前記第1N型半導体領域003はフィールドストップ領域003と呼ばれ、フィールドストップ領域003のドーピング濃度は、N型基材001のドーピング濃度よりも高い。つまり、コレクタとエミッタとの間に最高電圧が印加サれると、電場がフィールドストップ領域003内で遮断され、且つフィールドストップ領域003が完全に消耗しない。実施形態2の電場遮断型構造では、実施形態1よりもN型基材001の厚さを薄くすることができる。
【0038】
N型基材001の厚さが薄くなるため、実施形態2は、実施形態1よりも小さいオン電圧降下(Von)を得ることができる。また、N型基材001内のキャリアの総量はN型基材001の厚さに対して正比例であり、N型基材001の厚さを減らすと、キャリア総量も減少する。一定の電流下では、デバイスは、オン状態からオフ状態に、またはオフオフ状態からオン状態に切り替えるのに必要な時間が短くなるため、実施形態2は、実施形態1よりも小さいスイッチング損失を得ることができる。
【0039】
実施形態3
実施形態3は、逆導通型(Reverse Conduction)セルを提供しており、その構造は図3に示されている。P型半導体領域002に隣接する側に、第2N型半導体領域004が設けられ、 P型半導体領域002と第2N型半導体領域004とは、第1電極502と直接接触しており、アノード短絡(Anode Short)構造を形成する。
【0040】
P型ソース領域202、N型キャリア障壁領域010、N型基材001、および第2N型半導電体領域004は、P-N-Nダイオードを形成し、エミッタ第2電極500の電位がコレクタ第1電極502の電位よりも高い場合、当該P-N-Nダイオード正偏、この時、電流がエミッタ第2電極500よりコレクタ第1電極502に流れて逆導通を形成する。
【0041】
また、アノード短絡により、アノード注入効率が低下するため、実施形態3は、実施形態1より小さなターンオフ損失を得ることができる。
【0042】
図4は、図3の構造に基づいてフィールドストップ領域003をさらに備えたセル構造を示す図である。これによって、図4に示す構造は、図2および図3で説明した2つの電気的特性を有し、ここでは詳細を省略する。
【0043】
特に明記しない限り、以下の実施形態では、非パンチスルー(Non Punch Through)構造を例として説明するが、本発明の保護の範囲を限定しない。以下の実施形態は、パンチスルー型(Punch Through)、フィールドストップ型(Field Stop)、またはアノード短絡型(Anode Short)の構造にも適用可能である。
【0044】
実施形態4
実施形態4のMCBTにおける1つのセル構造は、複数の第1溝部単位700を有する。図5は、2つの第1溝部単位700を有するセル構造の構造図を示している。複数の第1溝部単位700は、有効チャネル幅を増大させ、電流密度をさらに増大させることができる。
【0045】
図5に示す2つの第1溝部単位700の底部は、1つのN型キャリア障壁領域010を共有し、図6に示す2つの第1溝部単位700の底部には、それぞれのN型キャリア障壁領域010を有し、且つ、2つのN型キャリア障壁領域010と接触している。
【0046】
実施形態5
図7に示すように、実施形態5のMCBTにおける1つのセル構造は、複数の第1溝部単位700を有し、N型電子ソース領域303が第1溝部単位700の片側に位置される。飽和コレクタ電流は、N-MOSの有効電子チャネルの幅に正比例するため、図5に示す構造に対して、図7で提供された実施形態のN-MOSの有効電子チャネルの幅は、図5の半分である。したがって、図7で提供された実施形態の飽和コレクタ電流は、図5の半分であり、デバイスの耐短絡時間を改善しやすい。
【0047】
実施形態6
図8に示すように、実施形態6のMCBTにおける1つのセル構造は、複数の第1溝部単位(700)を有し、一部の第1溝部単位700の第1ゲート017は、エミッタ第2電極500と接触している。
【0048】
図8に示すセル構造は、図1のセル構造よりも強いラッチアップ(Latch-up)能力を有する。高電圧および大電流下では、多數の正孔がP型半導体領域002よりN型基材001に注入され且つP型電界遮蔽領域101に到達する。正電荷の正孔がP型電界遮蔽領域101に入ることで当該領域の電圧が増大する。P型電界遮蔽領域101の電位がある程度に増大すると、P型電界遮蔽領域101、第2溝部単位800、P型ソース領域202、およびN型キャリア障壁領域010が形成したP-MOSはオンになり、第2溝部単位800に隣接する側壁では、正孔のチャネルが形成される。この時、N型基材001内の大量の正孔は、当該チャネルを通じて、P型ソース領域202に到達し、最後に、MCBTのエミッタ第2電極500に到達する。図1に示すセル構造と異なるのは、当該正孔チャネルと前記N-MOSの電池チャネルとが完全に分離されていることであり、ラッチアップ(Latch-up)の発生はほぼ完全に抑制されることができる。
【0049】
実施形態7
図9に示すように、実施形態7のMCBTにおける1つのセル構造では、複数の第2溝部単位800を備えっている。図9の右側の2つの第2溝部単位800の間に第1溝部単位700およびN型キャリア障壁領域010はなく、且つP型電界遮蔽領域101、第2溝部単位800、P型領域205、および右側の2つの第2溝部単位800に囲まれたN型基材001の一部で、PーMOSが形成される。N型基材領域001の一部は、当該PーMOSのソース領域にある。N型基材001のドーパント量がN型キャリア障壁領域010のドーパント量よりも小さいため、P-MOSはより小さな閾値電圧を有する。
【0050】
図9に示すセル構造は、図1に示す構造よりも強いラッチアップ(Latch-up)を有する。これは、正孔がP型半導体領域002よりN型基材001に注入され且つP型電界遮蔽領域101に到達すると、正孔電流のほとんどがより小さい閾値電圧のP-MOSを流れ、最終的に、P型領域205を通過してエミッタ第2電極500に到達する、これによって、正孔チャネルはと前記N-MOSの電池チャネルから完全に分離され、タッチアップ(Latch-up)の発生はほぼ完全に抑制されることができる。
【0051】
また、P-MOSにより、P型電界遮蔽領域101の電位がクランプされる(例えば、P-MOSの閾値電圧が3Vであり、高電圧および大電流下でP型電界遮蔽領域101の電位が10V以内にクランプされることができる)ので、第2媒質112の媒質層が破壊されるリスクを効果的に低減し、デバイスの信頼性を向上させることができる。
【0052】
実施形態8
実施形態8のMCBTにおける1つのセル構造は、複数の第1溝部単位700を有し、且つ複数の第2溝部単位800を有し、一部の第1溝部単位700のゲート領域011とエミッタ第2電極500とが第3媒質015により分離され、一部の第1溝部単位700の第2ゲート021とエミッタ第2電極500とが接続されている(図10を参照)。P型電界遮蔽領域101、第2溝部単位800、P型領域205、および右側の2つの第2溝部単位800に囲まれたN型キャリア障壁領域010は、P-MOSを形成する。P-MOSの閾値電圧は、N型キャリア障壁領域010の第2溝部単位800の近傍にある濃度で決定されるので、図10に示すP-MOSの閾値電圧は設計に応じて調整することができる。
【0053】
実施形態9
上述した実施形態の第2溝部単位800は、図11に示すように、第1P型領域113に囲まれても良い。当該第1P型領域113のドープイオンと、N型キャリア障壁領域010の第2溝部単位800の近傍にあるドープイオンとが補償されるので、調整可能なP-MOSの閾値電圧が得られる。
【0054】
実施形態10
実施形態9に基づいて、実施形態10のMCBTにおける1つのセル構造は、複数の第1溝部単位700を有し、同時に、複数の第2溝部単位800を有する。一部の第1溝部単位700のゲート領域011とエミッタ第2電極500とは、第3媒質015を設けることによって分離され、一部の第1溝部単位700の第2ゲート021とエミッタ第2電極500とが接続されている(図12を参照)。また、第2溝部単位800の周囲は、第1P型領域113に囲まれる。図12に示す実施形態でのN-MOSの有効電子チャネル幅は、図11に示す形態の半分であるため、図12に示す実施形態の飽和コレクタ電流は、図11の半分であり、デバイスの短絡耐性を改善させることができる。
【0055】
実施形態11
図13に示すように、実施形態11は、MCBTの他種のセル構造を提供している。図1に示す構造と異なるのは、隣接する2つの前記P型電界遮蔽領域101が接触している。
【0056】
第1溝部単位700で形成されたN-MOSおよびP型半導体領域002、N型基材001、P型電界遮蔽領域101、並びにN型キャリア障壁領域010により、MOSと直列されたPNPNのショックレーダイオード(Shockley Diode)の構造を形成する。当該構造におけるP型電界遮蔽領域101およびN型キャリア障壁領域010が正孔の障壁を形成するので、図1に示すセルのオン電圧よりも低いオン電圧を得ることができる。
【0057】
実施形態12
実施形態11が提供したMOSと直列されたPNPNのショックレーダイオードは、オンに追加のトリガーを必要とするため、実施形態12は、図14に示すように、図1図13に示すセル構造を組み合わせた構造を提供している。図14では、左側の2つの第2溝部単位800の底部のP型電界遮蔽領域101が互いに直接接触せず、右側の2つの第2溝部単位800の底部のP型電界遮蔽領域101が接触している。
【0058】
実施形態12に示されたセルは、図1に示すセルの速いスイッチングの利点を有するだけでなく、図13に示すセルのより低いオン電圧のの利点も有する。
【0059】
実施形態13
図15に示すように、実施形態13は、本発明に基づいて、ダイオード(Diode)のセル構造を提供する。図1に示す構造と異なるのは、前記第1溝部単位700のゲート領域011とエミッタ第2電極500とが接触し、N型基材001は、エミッタ第2電極500に連接する側に、第3N型半導体領域302が設けられ、当該第3N型半導体領域302とエミッタ第2電極500とが接続されている。P型半導体領域002、N型基材001、N型キャリア障壁領域010、および第3N型半導体領域302は、PNダイオードを形成する。
【0060】
実施形態14
図16に示すように、実施形態14は、本発明の実施形態11に基づいて、ショックレーダイオード(Shockley Diode)のセル構造を提供する。図13に示す構造と異なるのは、前記第1溝部単位700のゲート領域011とエミッタ第2電極500とが接触し、且つ、N型領域207と第1溝部単位700と接触している。また、P型半導体領域002、N型基材001、P型電界遮蔽領域101、N型キャリア障壁領域010、およびN型領域207は、PNPNダイオード構造を形成する。
【0061】
実施形態15
図17に示すように、実施形態15は、本発明の実施形態14に基づいて、ゲートターンオフサイリスタ(Gate Turn-off Thyristor、GTO)のセル構造を提供する。図16に示す構造と異なるのは、前記第2溝部単位800と第2電極500とが直接接触する面を有せず、且つ、導電体600と浮遊P型半導体領域203とが直接接触する。前記導電体600は、当該GTOのゲートとなる。第2電極500に対して導電体600の電圧を制御することにより、当該GTOをオンおよびオフに制御することができる。
【0062】
なお、上述したN型とP型は交換することができ、対応する電子と正孔も交換することができるが、交換後も本発明の原理が適用可能である。
【0063】
以上、具体な実施形態を参照して本発明の技術的原理を説明した。これらの説明は、本発明の原理を理解するためのものであり、本願特許請求の範囲を限定するものではない。ここでの説明に基づいて、当業者は創造的な作業なしに他の実施形態を想到できると考えられ、これらの実施形態も本発明の特許請求の範囲に含まれている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17