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  • 特許-画像層を有する可撓性研磨物品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】画像層を有する可撓性研磨物品
(51)【国際特許分類】
   B24D 11/00 20060101AFI20231107BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20231107BHJP
   B32B 37/14 20060101ALI20231107BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
B24D11/00 B
B24D3/00 340
B24D11/00 Q
B24D11/00 Z
B32B37/14
B32B27/00 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020523265
(86)(22)【出願日】2018-10-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 IB2018058388
(87)【国際公開番号】W WO2019082148
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-10-25
(31)【優先権主張番号】62/577,431
(32)【優先日】2017-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】グラハム,ポール ディー.
(72)【発明者】
【氏名】デイビス,ダグラス エー.
(72)【発明者】
【氏名】堂越 茂明
(72)【発明者】
【氏名】クマール,カンタ
(72)【発明者】
【氏名】松田 智志
(72)【発明者】
【氏名】ニートフェルド,ジョン ピー.
(72)【発明者】
【氏名】パール,トーマス イー.
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/073227(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 11/00
B24D 3/00
B32B 37/14
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主支持表面を有する除去可能な支持シートを供給することと、
インクを含む画像層を前記第1の主支持表面上に印刷することと、
前記画像層の上に直接バッキング層を押し出し、第1の主バッキング表面を前記画像層の上に形成し、前記第1の主バッキング表面の反対側にある第2の主バッキング表面を形成することと、
研磨層を含む機能層を前記第2の主バッキング表面上に適用することと、
前記除去可能な支持シートを前記バッキング層から分離するとともに、前記第1の主バッキング表面に前記画像層を取り付けたままにすることと、を含み、
前記分離時に、前記画像層が前記除去可能な支持シートから剥離する、方法。
【請求項2】
前記機能層を適用することが、メイクコートを適用することと、研磨粒子を適用することと、前記メイクコート及び前記研磨粒子上にサイズコートを適用することとを含む、請求項1に記載の方法
【請求項3】
前記バッキング層を前記画像層上に押し出す前に、トップコート層を前記画像層上に適用することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記トップコート層が、ポリウレタンを含む、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記バッキング層が、ポリウレタンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記除去可能な支持シートが、ポリエチレンテレフタレートを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
第1の主表面を有する除去可能な支持シートと、
前記第1の主表面上に適用されたインクを含む画像層と、
前記画像層に隣接して位置する第1の主バッキング表面、及び前記第1の主表面の反対側にある第2の主バッキング表面を有する、ポリウレタンバッキング層と、
前記第2の主バッキング表面に適用された研磨層を含む機能層であって、前記研磨層が、メイクコート、研磨粒子、及びサイズコートを含む、機能層と、を含み、
前記除去可能な支持シートが前記ポリウレタンバッキング層から分離される時に、前記画像層が前記除去可能な支持シートから剥離し、前記第1の主表面上に適用されたままである、物品。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
研磨紙は、家のリフォーム及び金物類の店舗にて家庭用のサンディング用に広く販売されている。サンディングされる通常の家庭用基材としては、例えば、型、隆起パネル、彫り物、及び溝付けが挙げられる。より狭いスポットを得るため、制御及び能力を高めるために、指先の周囲に研磨紙を巻き付けること及び/又は包むことは、ユーザーが通常行っていることである。しかし、このような行いは、典型的な紙のバッキングによる研磨紙の剛性により理想的とは言えない場合があり、実際に、研磨紙は裂け、ひいてはて製品寿命が短くなる場合がある。
【発明の概要】
【0002】
本発明者らは、一実施形態ではポリウレタンを含む可撓性及び耐久性のあるバッキングを含む、研磨物品を作製することにより、上述の欠点を克服した。しかし、可撓性研磨物品の製造業者には、製品情報を可撓性研磨物品上に画像層内で配置して、研磨グリットサイズ、製造業者、安全上の警告、又は他の望ましい図柄などの情報を伝達する必要がある。画像層内での情報は、典型的には、研磨層の反対側にある、このような製品の露出したバッキング層上に位置する。多くの場合、バッキング層は、研磨層の適用前に、別の方法において好適に予め印刷される。
【0003】
ポリウレタンの物理的特性は、使用時に高い適合性を有するものであるが、多くの場合、メイクコートを適用し、研磨粒子層を適用し、メイクコートを硬化させ、サイズコートを適用し、サイズコートを硬化させる工程中に、一体性をもたらすために、製造プロセス中に追加の支持層が必要であることを意味する。しかし、研磨層の適用前に支持層が画像層の適切な配置を妨害するので、追加の支持層により、可撓性バッキング層の裏面は、紙のバッキングによる製品と同じ方法では印刷されなくなる。したがって、必要なことは、除去可能な支持層をインクで印刷し、画像層を形成し、次いで支持層を除去する時に画像層を可撓性バッキングに転写することである。
【0004】
このことから、一態様では、本発明は、第1の主支持表面を有する除去可能な支持シートを供給する工程と、インクを含む画像層を第1の主表面上に印刷する工程と、バッキング層を画像層の上に押し出し、第1の主バッキング表面を画像層の上に形成し、第1の主バッキング表面の反対側にある第2の主バッキング表面を形成するする工程と、機能層を第2の主バッキング表面上に適用する工程と、除去可能な支持シートをバッキング層から分離するとともに、第1の主バッキング表面に画像層を取り付けたままにする工程と、を含む、方法にある。
【0005】
別の態様では、本発明は、第1の主表面を有する除去可能な支持シートと、第1の主表面の上に適用されたインクを含む画像層と、画像層に隣接して位置する第1の主バッキング表面、及び第1の主表面の反対側にある第2の主バッキング表面を有するポリウレタンバッキング層と、第2の主表面に適用された研磨層を含む機能層であって、研磨層が、メイクコート、研磨粒子、及びサイズコートを含む、機能層と、を含む、物品である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示による除去可能な支持層105を有する可撓性研磨物品100の一実施形態の側面図である。
図2】支持層を可撓性研磨物品から部分的に除去することにより、画像層120が可撓性研磨物品100に転写されている、図1の側面図である。
【0007】
図中の様々な層は、理解を深めるために縮尺どおりに描かれていない。
【発明を実施するための形態】
【0008】
この文書全体にわたって、範囲の形式で表される値は、その範囲の限界として明示的に記載されている数値を含むだけでなく、その範囲内に含まれる全ての個々の数値又は部分範囲も、各数値範囲及び部分範囲が明示的に記載されている場合と同様に含むように、柔軟に解釈すべきである。例えば、「約0.1%~約5%」又は「約0.1%~5%」という範囲は、約0.1%~約5%だけでなく、示された範囲内の各値(例えば、1%、2%、3%、及び4%)及び部分範囲(例えば、0.1%~0.5%、1.1%~2.2%、3.3%~4.4%)も含むと解釈すべきである。「約X~Y」という記述は、特に断りのない限り、「約X~約Y」と同じ意味を有する。同様に、「約X、Y、又は約Z」という記述は、特に断りのない限り、「約X、約Y、又は約Z」と同じ意味を有する。
【0009】
本文書において、「1つの(a)」、「1つの(an)」、又は「その(the)」という用語は、コンテクスト上明確な別段の指示がない限り、1つ以上を含めるために使用される。「又は」という用語は、特に断りのない限り非排他的な(nonexclusive)「又は」を指すために使用される。「A及びBのうちの少なくとも1つ」又は「A又はBのうちの少なくとも1つ」という記述は、「A、B、又はA及びB」と同じ意味を有する。加えて、本明細書で用いられている特に定義されていない表現又は用語は、説明のみを目的としており、限定するためではないと理解されるべきである。節の見出しの使用はいずれも、本文書の読み取りを補助することを意図しており、限定と解釈すべきではなく、節の見出しに関連する情報は、その特定の節の中又は外に存在し得る。
【0010】
本明細書で使用されるとき、「約」という用語は、値又は範囲のある程度の変動性、例えば、記述されている値の又は記述されている範囲の限界の10%以内、5%以内、又は1%以内を許容可能であり、かつ正確な記述されている値又は範囲を含む。
【0011】
本明細書で使用されるとき、「実質的に」という用語は、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%、若しくは少なくとも約99.999%以上などの大部分若しくはほとんど又は100%を指す。本明細書で使用されるとき、「実質的に含まない」という用語は、存在する材料の量が材料を含む組成物の材料特性に影響を及ぼさないような、組成物が、材料を約0重量%~約5重量%、又は約0重量%~約1重量%、又は約5重量%以下、又は約4.5重量%、4、3.5、3、2.5、2、1.5、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.01、若しくは約0.001重量%以下の値について、これら未満であるか、これらと等しいか、若しくはこれらより多い量を有さないか、又はわずかな量を有することを意味し得る。「実質的に含まない」という用語は、組成物が、材料を約0重量%~約5重量%、又は約0重量%~約1重量%、又は約5重量%以下、又は約4.5重量%、4、3.5、3、2.5、2、1.5、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.01、若しくは約0.001重量%以下の値について、これら未満であるか、これらと等しいか、若しくはこれらより多いか、又は約0重量%であるようなわずかな量を有することを意味し得る。
【0012】
ここで図1を参照すると、可撓性研磨物品100は、除去可能な支持層105と、任意選択的な第1のコート層110と、画像層120と、任意選択的なトップコート層130と、可撓性バッキング層140と、研磨層160などの任意選択的な機能層と、を含む。これらの層の各々は、後で別個の見出しにて詳細に記載されている。
【0013】
典型的な製造法は、第1の主表面107及び反対側にある第2の主表面109を有する除去可能な支持層105を巻き出し、任意選択的に、除去可能な支持層の第1の主表面107を第1のコート層110でコーティングすることによって始まる。任意選択的な第1のコート層110を使用して、画像層120の結合を強化すること、支持層105の除去容易性を補助すること、又は両方の機能を行うことのいずれかができる。次に、印刷インク及び好適な図柄印刷方法を使用することにより、画像層120を、第1の主表面107上に直接、又は第1のコート層110上にのいずれかで適用する。次いで、任意選択的なトップコート層130を画像層120の上に適用してもよい。任意選択的なトップコート層130を使用し、更なる加工工程中に画像層を損傷しないようにすることができ、画像層の高さを、充填すること及び画像層を合わせることによって、合わせることができ、これにより、印刷されている領域が、印刷されていない領域と同じ高さになり、可撓性バッキング層140の適用を平滑にし、又は可撓性バッキング層の結合を強化する。可撓性バッキング層140の適用前に、層110、120、及び/又は130を、典型的には、次の層の適用前に必要に応じて硬化及び/又は乾燥する。
【0014】
次に、可撓性バッキング層140を、任意選択的なトップコート層130又は画像層120のいずれかの上に押し出し、多層ウェブをロールに巻き取る前に少なくとも部分的に硬化させることができる。前述の工程を、単一の製造ライン上で行ってもよく、又は必要に応じて複数の工程に分解してもよい。一実施形態では、次に、多層巻き取りロールを、研磨物品製造機の巻き出し台内に入れ、そこではそれを巻き出さず、メイクコート及び研磨粒子を、可撓性バッキング層の露出表面に適用し、メイクコートを少なくとも個別に硬化させる。次いで、サイズコートを適用し、少なくとも部分的に硬化する。コーティングされた研磨物品をロールに巻き取る前又はオフライン操作においてのいずれかで、除去可能な支持層105を、可撓性バッキング層140から分離し、別個のウェブ経路に沿って進め、別個のロールに巻き取り、他方、コーティングされた研磨物品を、別のロールに巻き取っておき、又は従来の要領で加工装置により処理しておく。除去可能な支持層105を多層ウェブから引き剥がし、他方、除去可能な支持層に元々適用されていた画像層120を、図2に見られるように、可撓性バッキング層140に転写し、それと一緒のままにしておく。更なる加工工程を行い、コーティングされた研磨物品をシート又は円盤に切断し、当業者に既知のように、研磨層、又は画像層120を有する可撓性バッキング層140のいずれかに、他のコーティング又は材料を適用することができる。このような追加のコーティング又は層の例としては、感圧接着剤などの接着剤、フック層による相補的付属品に剥離可能な取り付け部を提供するループを提供する織布層、及び参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2016209651号に開示されているものなどの摩擦改変表面が挙げられる。
【0015】
除去可能な支持層
除去可能な支持層105は、コーティング工程及び任意の後続の加工工程中、寸法安定性をもたらすことができる任意のフィルムであってもよい。いくつかの好ましい実施形態では、除去可能な支持体層105は、厚さが0.002”のポリエチレンテレフタレート(PET)のフィルムである。他の実施形態では、支持フィルムは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド(ナイロン6,6など)、又はポリアセタールであってもよい。他の実施形態では、除去可能な支持フィルムの第1の主表面107は、その表面エネルギーを改変するために、又は画像層用のインクへの接着を調節するために、放電処理又は他の表面処理で処理されていてもよい。いくつかの実施形態では、除去可能な支持層の厚さは、約0.0005”~約0.020”、又は約0.001”~約0.010”、又は約0.001”~約0.005”の範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、除去可能な支持層は、2層フィルム又は多層フィルムであってもよい。このような実施形態では、1つのこのような層は紙であってもよく、他の層は、上に列挙したポリマーのうちの1つであってもよい。
【0016】
任意選択的な第1のコート層
任意選択的な第1のコート層は、剥離コーティング又はプライマーコーティングであってもよい。いくつかの実施形態では、任意選択的な第1のコート層は、除去可能な支持層に接着したままになっており、支持層体とともに除去され、他の実施形態では、任意選択的な第1のコート層は、支持層が除去されるとき、画像層及び可撓性基材に取り付けたままになる。
【0017】
一実施形態では、任意選択的な第1のコート層110は、画像層内での適用されたインクの適切な濡れに好適な表面を提供する、仮コーティングである。任意選択的な第1のコート層により、可撓性バッキングコーティング工程に十分なインク接着がもたらされ、その後、除去可能な支持フィルムから最終的に分離されるとき、インク画像層を剥離させることができる。
【0018】
任意選択的な第1のコート層は、感圧接着剤コーティングからの容易な剥離をもたらすように配合されている剥離コーティングであってもよい。このような実施形態では、剥離コーティングは、それが可撓性バッキング層から剥離される際、除去可能な支持フィルム上に残る。いくつかの好ましい実施形態では、剥離コーティングは、オクチルデシルアクリレートに基づく組成物を含む。
【0019】
第1のコート層の剥離コーティングは、除去可能な支持層105の第1の主表面107、若しくは除去可能な支持層の第2の主表面109のいずれかに、又は両面に適用されてもよい。任意選択的な剥離コーティングは、第2の主表面109に適用されていると、多層材料がロールに巻き取られたとき、フィルムの裏面への画像層のブロッキングを防止することができる。剥離コーティングは、第1の主表面107に適用されている場合、例えばポリウレタン表面などの可撓性バッキング層140からの除去可能な支持フィルムの剥離を促進することができる。
【0020】
別の実施形態では、任意選択的な第1のコート層は、ポリマー材料を含む。好適なポリマー材料は、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリエーテル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、天然又は合成ゴム、及びポリウレタンを含む、ホモポリマー及びコポリマーを含むがこれらに限定されない、樹脂から作製されている。ポリウレタンとしては、脂肪族及び芳香族ポリウレタンが挙げられ、水、溶媒を含んでもよく、又は100%固体であってもよい。より具体的には、ポリウレタン樹脂は、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリウレタン、又はポリエーテルポリウレタンを含んでもよい。いくつかの好ましい実施形態では、任意選択的な第1のコート層は、SU-22-196若しくはSU-96-603、又はこれらのブレンドを含み、これらの両方とも、Stahlから入手可能な溶媒系脂肪族ポリカーボネート-ポリウレタン溶液である。
【0021】
いくつかの好ましい実施形態では、任意選択的な第1のコート層は、QC4830若しくはQA3781、又はこれらのブレンドを含み、これらの両方とも、Chase Corporation(Westwood,MA)から入手可能な溶媒型コーティングである。いくつかの好ましい実施形態では、任意選択的な第1のコート層は、Estane5715及びEstane5714などの溶液ポリウレタン樹脂を含み、これらの両方とも、Lubrizolから入手可能である。
【0022】
任意選択的な第1のコート層は、任意の通常のコーティング技術を使用して適用されてもよい。いくつかの好ましい実施形態では、任意選択的な第1のコート層は、グラビアコーティングによって適用される。いくつかの好ましい実施形態では、任意選択的な第1のコート層は、メイヤーロッドコーティング、スロットダイコーティング、フレキソ印刷、ナイフオーバーロールコーティング、スプレーコーティング、又はホットメルトコーティングによって適用される。
【0023】
いくつかの実施形態では、任意選択的な第1のコート層の厚さは、約1μm~約75μmの範囲であってもよい。他の実施形態では、第1のコート層の厚さは、約1μm~約25μmの範囲であってもよい。更に他の実施形態では、第1のコート層の厚さは、1μm~約5μmの範囲であってもよい。
【0024】
任意選択的な第1のコーティング層が、除去可能な支持層から剥離するように配合されている場合、画像層及び可撓性バッキング層への、任意選択的な第1のコーティング層の接着は、除去可能な支持層への接着よりも高いものである必要がある。いくつかの実施形態では、画像層及び可撓性バッキング層への、任意選択的な第1のコート層の剥離接着は、除去可能な支持層への、任意選択的な第1のコーティング層の剥離接着の少なくとも2倍である必要がある。
【0025】
任意選択的なトップコート層がない実施形態では、任意選択的な第1のコート層は、好ましくは、ウェブがロールに巻き取られるとき、裏面(第1のコーティング層の反対側にあるの側)にブロッッキングしないように選択される。
【0026】
画像層
画像層120を形成するパターンでインクを適用するために使用することができる、多種多様なインク及び画像化方法がある。いくつかの好ましい実施形態では、インクは、Sun Chemical Co.から入手可能なFlexomax銘柄のインクである。他の実施形態では、インクは、Sun Chemical Co.から入手可能なSL-800シリーズのインクである。いくつかの好ましい実施形態では、画像層は、フレキソ印刷法又はグラビア印刷法によって適用される。いくつかの好ましい実施形態では、画像層は、インクジェット、オフセットリソグラフィによって適用される。
【0027】
任意選択的なトップコート層
任意選択的なトップコート層130は、望ましくは、画像層120への十分な接着を有する。好ましい実施形態では、トップコートにより、除去可能な支持層100の裏面からの好適な剥離をもたらすことによって、適切なロール形成及び巻き出し特性が実現される。任意選択的なトップコート層の材料は、任意選択的な第1のコート層に使用されるものと同じであってもよく、同様の適用方法が使用されてもよい。
【0028】
多くの実施形態では、任意選択的なトップコート層に選択される材料は、任意選択的な第1のコート層に選択されてもよい材料と同じである。しかし、任意選択的なトップコート層の要件が、任意選択的な第1のコート層の要件と異なっていてもよい。任意選択的なトップコート層は、画像層及び任意選択的な第1のコーティング層の両方に接着するように選択される必要がある。また、任意選択的なトップコーティング層は、除去可能な支持層の裏面にブロッキングしないように選択される必要がある。また、いくつかの実施形態では、任意選択的なトップコート層は、画像層を適切に見ることが可能になるように、十分に光学的に透明であるように選択される必要があることがある。
【0029】
任意選択的なトップコート層は、任意の通常のコーティング技術を使用して適用されてもよい。いくつかの好ましい実施形態では、任意選択的なトップコート層は、グラビアコーティングによって適用されている。いくつかの好ましい実施形態では、任意選択的なトップコート層は、メイヤーロッドコーティング、スロットダイコーティング、フレキソ印刷、ナイフオーバーロールコーティング、スプレーコーティング、又はホットメルトコーティングによって適用される。
【0030】
いくつかの実施形態では、任意選択的なトップコート層の厚さは、約1μm~約75μmの範囲であってもよい。他の実施形態では、トップコート層の厚さは、約1μm~約25μmの範囲であってもよい。更に他の実施形態では、トップコート層の厚さは、1μm~約5μmの範囲であってもよい。
【0031】
可撓性バッキング層
可撓性バッキング層140は、第1の主表面142、及び反対側にある第2の主表面144を有する。第1の主表面は、画像層120又は任意選択的なトップコート層130のいずれかと接触している。第2の主表面は、後で記載しているように、機能層を支持し、又は機能層に適用されている。可撓性バッキング層は、可撓性研磨物品に可撓性及び耐久性をまとめて与える、多数の物理的特性を有してもよい。
【0032】
一実施形態では、可撓性バッキング層は、0.5~8mil(12~200ミクロン)、好ましくは1~6mil(25~150ミクロン)、より好ましくは1~5mil(25~125ミクロン)の平均厚さを有してもよい。この実施形態では、可撓性バッキング層は、500~3200psi(3.4~22.1MPa)、好ましくは1000~2500psi(6.9~17.2MPa)、より好ましくは1600~2100psi(11.0~14.5MPa)の範囲の引張強度、及び230~530%、好ましくは300~460%、より好ましくは350~410%の極限伸び(すなわち、破断点伸び)を有してもよい。
【0033】
可撓性バッキング層は、単一であってもよく、すなわち、単一層からなってもよいが、特定の実施形態では、所望により、複合可撓性バッキング層であってもよい。典型的には、可撓性バッキング層は、少なくとも実質的に均質であるが、これが必須ではない。可撓性バッキング層は穿孔されてもよいが、穿孔されている場合、平均厚さは、穿孔の領域を使用して求められ、穿孔の領域では、可撓性バッキング層がそこに存在しないので、当然のことながら、厚さはゼロである。好ましくは、可撓性バッキング層は、液体の水に対して非浸透性であり、空隙空間を実質的に含まないが、少しの大きさの多孔率(porosity)は許容されてもよい。例えば、可撓性バッキング層は、可撓性バッキング層の総体積を基準にして、10%未満、2%未満、1%未満、又は更に0.01%未満の固有空隙(すなわち、意図的に付与されたものではないが、可撓性バッキング層を構成する材料の固有の特性である空隙)を有してもよい。
【0034】
可撓性バッキング層は、1つ以上のポリウレタンを含んでもよい。好ましくは、ポリウレタンは、少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタン(TPU)を含み、又は少なくともそれから本質的になる。用語「から本質的になる(consisting essentially of)」は、このコンテクストで使用されるとき、添加剤化合物(例えば、芳香剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、及び/又は充填剤)が、引張強度及び極限伸びがそれらの存在によって実質的に影響されないままである限りにおいて、可撓性バッキング層内に存在してもよいことを意味する。例えば、添加剤は、引張強度及び極限伸びに対し、5%未満、好ましくは1%未満の影響を有することがある。
【0035】
いくつかの実施形態では、可撓性バッキング層は、単一の熱可塑性ポリウレタン、又は熱可塑性ポリウレタンの組み合わせを含んでもよい。ポリウレタンの1つの好ましい部類は、芳香族ポリエーテル系ポリウレタン、好ましくは熱可塑性ポリエーテル系ポリウレタンである。いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリエーテル系ポリウレタンは、4,4’-メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(MDI)、ポリエーテルポリオール、及びブタンジオールから誘導されたものである。
【0036】
熱可塑性ポリウレタンは公知であり、多くの既知の技術に従って作製したものでもよく、又は商業的供給業者から入手したものでもよい。例えば、Lubrizol Corp.(Cleveland,Ohio)は、様々な熱可塑性ポリウレタンの1つの商業的供給業者であり、その熱可塑性ポリウレタンには、例えば、商品名「ESTANE GP TPU(Bシリーズ)」(例えば、等級52DB、55DB、60DB、72DB、80AB、85AB、及び95AB)で入手可能なポリエステル系芳香族TPU、並びに商品名「ESTANE58000 TPUシリーズ」(例えば、等級58070、58091、58123、58130、58133、58134、58137、58142、58144、58201、58202、58206、58211、58212、58213、58215、58219、58226、58237、58238、58244、58245、58246、58248、58252、58271、58277、58280、58284、58300、58309、58311、58315、58325、58370、58437、58610、58630、58810、58863、58881、及び58887)で入手可能なポリエステル系及びポリエーテル系TPUなどがある。
【0037】
可撓性バッキング層は、ポリエチレンなどのポリオレフィン材料、ポリエチレン-co-アクリル酸などのポリオレフィンコポリマー、天然ゴム、合成ゴム、ポリ塩化ビニルを含んでもよい。可撓性バッキング層は、キャスティング(例えば、溶媒又は水から)されたものでもよく、又は押出成形されたものでもよい。これは、充填剤、溶融加工助剤、酸化防止剤、難燃剤、着色剤、又は紫外線安定剤などの、1つ以上の添加剤を含んでもよい。
【0038】
任意選択的な機能層
いくつかの実施形態では、任意選択的な機能層が、可撓性バッキング層の第2の主表面144に適用される。機能層は、研磨、保護(例えば、国際公開第2009/005975号を参照されたい)、光改変(例えば、国際公開第2010/002562号又は同第2006/098899号を参照されたい)、剥離(例えば、米国特許第8614281号又は同第8609787号を参照されたい)、接着(例えば、米国特許出願公開第20160289514号又は同第20130184394号を参照されたい)、又は他の好適な特性をもたらすために選択されてもよい。全ての先行する特許、特許公開、又は米国の対応する特許出願公開若しくは対応する米国の対応する特許査定済特許は、参照により本明細書に組み込まれる。例えば、機能層は、研磨層であってもよく、多層ウェブが自動車車体パネル用保護フィルムになることができるようにハードコート層であってもよく、多層ウェブがミラー又は光学フィルタのように機能することができるように光学的に活性なコーティングであってもよく、接着促進層、感圧接着剤層、又は湿潤防止層/防曇層であってもよい。
【0039】
一実施形態では、任意選択的な機能層は、可撓性バッキング層140の第2の主表面144上に配置され固定された研磨層160を含む。研磨層160は、メイク層170及び研磨粒子180、並びにメイク層170及び研磨粒子180の上に配置されているサイズ層190を含む。任意選択的なスーパーサイズ層200が、サイズ層190上に配置されている。研磨層160は、可撓性バッキング層の第2の主表面144上に配置され、それに固定されている。
【0040】
メイク層及びサイズ層は、それぞれのメイク層前駆体又はサイズ層前駆体を硬化させることによって調製されてもよい。メイク層前駆体及びサイズ層前駆体は、同じ組成を有しても異なる組成を有してもよく、同じコート重量で適用されても異なるコーティング重量で適用されてもよい。
【0041】
メイク層及びサイズ層は、少なくとも1つのポリエポキシド及び少なくとも1つの多官能性(メタ)アクリレート、ポリエポキシド用の硬化剤(例えば、ポリアミン、ポリチオール、酸触媒、又は光触媒)、及びフリーラジカル開始剤(光開始剤及び/又は熱開始剤)を含む。また、単官能性のエポキシド及びポリオール(例えば、鎖延長剤として使用されるジオール)が、ポリエポキシドと組み合わせて使用されてもよい。
【0042】
有用なポリエポキシドは、芳香族若しくは脂肪族ポリエポキシド、又はこれらの組み合わせであってもよい。有用なポリエポキシドは、液体であっても固体であってもよいが、典型的には、取り扱いを容易にするために液体である。液体又は固体のいずれであっても、ポリエポキシドは、概して、前駆体組成物(例えば、メイク層前駆体組成物又はサイズ層前駆体組成物)に溶解することができるように選択される必要がある。いくつかの場合では、加熱することが、ポリエポキシドの溶解を促進するために有用なことがある。
【0043】
芳香族ポリエポキシドの例としては、多価フェノールのポリグリシジルエーテル、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(通常、当技術分野ではDGEBAと呼ばれる)、並びにHexion Specialty Chemicals(Columbus,Ohio)から上市されている商品名「EPON」(例えば、EPON RESIN825、EPON RESIN828、EPON RESIN1001F、EPON RESIN1002F、EPON RESIN1004F、EPON RESIN1007F、及びEPON RESIN1009F)を有する市販のビスフェノールA由来エポキシ樹脂及びビスフェノールF由来エポキシ樹脂、並びに、Dow Chemical Company(Midland,Michigan)から上市されている商品名「DER」(例えば、DER332、DER337、DER362、及びDER364)を有するビスフェノールA由来エポキシ樹脂、エポキシクレゾールノボラック樹脂、エポキシフェノールノボラック樹脂、並びに芳香族カルボン酸のグリシジルエステル(例えば、フタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル、及びピロメリット酸テトラグリシジルエステル)、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0044】
有用な脂肪族ポリエポキシドの例としては、エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(例えば、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(例えば、Dow Chemical Co.から「ERL-4221」で入手可能)、3,4-エポキシ-2-メチルシクロヘキシルメチル3,4-エポキシ-2-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート(例えば、Dow Chemical Co.からERL-4201として入手可能)、ビニルシクロヘキセンジオキシド(例えば、Dow Chemical Co.からERL-4206として入手可能)、ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル(例えば、Dow Chemical Co.からERL-0400として入手可能)、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート(例えば、Dow Chemical Co.からERL-4289として入手可能)、ジペンテリックジオキシド(例えば、Dow Chemical Co.からERL-4269として入手可能)、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,1’-スピロ-3’,4’-エポキシシクロヘキサン-1,3-ジオキサン、及び2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロパンが挙げられる。
【0045】
メイク層前駆体中に存在するポリエポキシドの量は、典型的には、メイク層前駆体中の固形分(すなわち、不揮発性構成成分)の総重量を基準にして、約40~70重量%、好ましくは50~60重量%の範囲であるが、この範囲外の量も、使用されてもよい。
【0046】
有用な多官能性(メタ)アクリレートは、液体であっても固体であってもよいが、典型的には、取り扱いを容易にするために液体である。液体又は固体のいずれであっても、多官能性(メタ)アクリレートは、概して、前駆体組成物中に溶解することができるように選択される必要がある。いくつかの場合では、加熱することが、多官能性(メタ)アクリレートの溶解を促進するために有用なことがある。例示的な有用な多官能性(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリレート化ポリマー、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0047】
多種多様な多官能性(メタ)アクリレートが、例えば、Sartomer Co.(Exton,Pennsylvania)及びUCB Chemicals Corp.(Smyrna,Georgia)のようなベンダーから商業的に容易に入手可能である。
【0048】
例示的な多官能性(メタ)アクリレートとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びメタクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びメタクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びトリメタクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート及びジメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0049】
有用な多官能性(メタ)アクリレートモノマーの例としては、例えば、Sartomer Co.からSR351として入手可能なトリメチロールプロパントリアクリレート、例えば、Sartomer Co.からSR454として入手可能なエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、例えば、Sartomer Co.からSR295として入手可能なペンタエリスリトールテトラアクリレート、及び、例えば、Sartomer Co.からSR247として入手可能なネオペンチルグリコールジアクリレートが挙げられる。
【0050】
多官能性アクリレートは、少なくとも1つの(メタ)アクリレートオリゴマーを構成してもよい。例示的な(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、(メタ)アクリレート化エポキシオリゴマー(例えば、ビスフェノールA系エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー)、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、及び芳香族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。追加の有用な多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、Sartomer Co.からSR259として入手可能なポリエチレングリコール200ジアクリレート、及びSartomer Co.からSR344として入手可能なポリエチレングリコール400ジアクリレートなどのポリエーテルオリゴマー、並びにUCB Chemicals Corp.からEbecryl3500、Ebecryl3600、及びEbecryl3700として入手可能なものをはじめとするアクリレート化エポキシが挙げられる。
【0051】
いくつかの好ましい実施形態では、多官能性(メタ)アクリレートは、重合性(メタ)アクリレートのブレンドとして存在するか、又は単一構成成分として存在するかに関わらず、少なくとも2.2、少なくとも2.5、又は更に少なくとも3の平均(メタ)アクリロキシ基による官能性を有する。
【0052】
メイク層前駆体中に存在する多官能性(メタ)アクリレートの量は、典型的には、メイク層前駆体中の固形分(すなわち、不揮発性構成成分)の総重量を基準にして、約5~約20重量%、好ましくは約5~約15重量%、更により望ましくは約8~約12重量%の範囲であるが、この範囲外の量も、使用されてもよい。
【0053】
メイク層前駆体及びサイズ層前駆体は、任意選択的な二元反応性(bireactive)重合性構成成分、例えば、少なくとも1つのフリーラジカル重合性基及び少なくとも1つのカチオン重合性基を有する化合物を、更に含んでもよい。二元反応性化合物は、例えば、少なくとも1つのエチレン性不飽和基を、1つ以上のエポキシ基を既に含む化合物に導入することによって作製されたものでもよく、又は反対に、少なくとも1つのエポキシ基を、1つ以上のエチレン性不飽和基を既に含む化合物に導入することによって作製されたものでもよい。
【0054】
例示的な二元反応性重合性化合物としては、0.4~0.6重量当量のアクリル酸と1モルのビスフェノールAのジグリシジルエーテルとの反応生成物に含まれるもの、フェノールホルムアルデヒドノボラックのポリグリシジルエーテル、クレゾールホルムアルデヒドノボラックのポリグリシジルエーテル、ジグリシジルテレフタレート、トリメリット酸のトリグリシジルエステル、ジシクロペンタジエンジオキシド、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、及びビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシル)メチルアジペートが挙げられる。
【0055】
使用される場合、任意選択的な二元反応性材料は、望ましくは、カチオン重合性樹脂の硬化をあまり阻害しないように選択される。このような硬化を妨害することがある例示的な基としては、一級、二級、及び三級アミン、アミド、並びにイミドが挙げられる。
【0056】
メイク層前駆体及びサイズ層前駆体は、典型的には、ポリエポキシド硬化剤のための有効量の硬化剤(例えば、ポリアミン又はルイス酸触媒)、及び多官能性(メタ)アクリレートのためのフリーラジカル重合開始剤(好ましくはフリーラジカル光開始剤)を含むが、硬化条件に応じてのものであり、これが必須ではない。
【0057】
好適な硬化剤としては感光性及び/又は感熱性のものが挙げられ、望ましくは少なくとも1つのフリーラジカル重合開始剤及び少なくとも1つのカチオン重合触媒を含み、これは同じであっても異なっていてもよい。メイク層前駆体及び/又はサイズ層前駆体のポットライフを維持しつつも、硬化中の加熱を最小限に抑えるために、前駆体は、好ましくは光硬化性であり、光開始剤及び/又は光触媒を含む。
【0058】
本明細書で定義される「光触媒」は、化学線に曝露された場合、本開示の実施に用いられるポリエポキシドを少なくとも部分的に重合することが可能な、活性種を形成する材料である。任意選択的に、バインダー前駆体は、少なくとも1つの光触媒(例えば、オニウム塩及び/又はカチオン性有機金属塩)を含んでもよい。
【0059】
望ましくは、オニウム塩光触媒には、ヨードニウム錯塩及び/又はスルホニウム錯塩が含まれる。有用な芳香族オニウム錯塩は、例えば、米国特許第4,256,828号(Smith)に更に記載されている。例示的な芳香族ヨードニウム錯塩としては、ジアリールヨードニウムヘキサフルオロホスフェート又はジアリールヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートが挙げられる。例示的な芳香族スルホニウム錯塩としては、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート及びp-フェニル(チオフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートが挙げられる。
【0060】
芳香族オニウム塩は、本開示の実施に有用であり、典型的には、スペクトルの紫外領域でのみで感光性であるが、既知の光分解性有機ハロゲン化合物のための増感剤によって、近紫外及びスペクトルの可視範囲に対し増感されてもよい。例示的な増感剤としては、例えば、米国特許第4,250,053号(Smith)に記載されているような、芳香族アミン及び有色の芳香族多環式炭化水素が挙げられる。
【0061】
本開示に有用な好適な光活性化有機金属錯塩としては、例えば、米国特許第5,059,701号(Keipert)、同第4,751,138号(Tumey)、同第4,985,340号(Palazzotto)、同第5,191,101号(Palazzottoら)、及び同第5,252,694号(Willettら)に記載されているものが挙げられる。
【0062】
光活性化触媒として有用な例示的な有機金属錯カチオンとしては、
(η-ベンゼン)(η-シクロペンタジエニル)FeSbF
(η-トルエン)(η-シクロペンタジエニル)FeSbF
(η-キシレン)(η-シクロペンタジエニル)FeSbF
(η-クメン)(η-シクロペンタジエニル)FePF
(η-キシレン(異性体の混合))(η-シクロペンタジエニル)FeSbF
(η-キシレン(異性体の混合))(η-シクロペンタジエニル)FePF
(η-o-キシレン)(η-シクロペンタジエニル)FeCFSO
(η-m-キシレン)(η-シクロペンタジエニル)FeBF
(η-メシチレン)(η-シクロペンタジエニル)FeSbF
(η-ヘキサメチルベンゼン)(η-シクロペンタジエニル)FeSbFOH、及び
(η-フルオレン)(η-シクロペンタジエニル)FeSbF
が挙げられる。
【0063】
任意選択的に、有機金属塩開始剤には、三級アルコールのオキサレートエステルなどの促進剤が伴っていてもよい。存在する場合、促進剤は、望ましくは、全バインダー前駆体の約0.1~約4重量%、より望ましくは有機金属塩開始剤の約60重量%を構成する。
【0064】
有用な市販の光触媒としては、Dow Chemical Co.からUVI-6974として入手可能な芳香族スルホニウム錯塩が挙げられる。
【0065】
有用なフリーラジカル光開始剤としては、例えば、多官能性アクリレートをフリーラジカルにより光硬化するのに有用であることが公知のものが挙げられる。例示的な光開始剤としては、ベンゾイン及びその誘導体、例えばα-メチルベンゾイン、α-フェニルベンゾイン、α-アリルベンゾイン、α-ベンジルベンゾイン、ベンゾインエーテル、例えばベンジルジメチルケタール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル、アセトフェノン及びその誘導体、例えば2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン及び1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-(4-モルホリニル)-1-プロパノン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、ピバロインエチルエーテル、アニソインエチルエーテル、アントラキノン、例えば、アントラキノン、2-エチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、1,4-ジメチルアントラキノン、1-メトキシアントラキノン、ベンゾアントラキノンハロメチルトリアジン、ベンゾフェノン及びその誘導体、ジアリールヨードニウム塩及びトリアリールスルホニウム塩、チタン錯体、例えばビス(η-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス[2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル]チタン、ハロメチルニトロベンゼン、モノ及びビスアシルホスフィン、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0066】
本開示に有用な光開始剤及び光触媒は、有効量、概して、メイク層前駆体及び/又はサイズ層前駆体量の全固形分を基準にして、0.01~10重量%、より典型的には0.01~5重量%、又は更に0.1~2重量%の範囲の、バインダー前駆体の光硬化性(すなわち、電磁放射線により架橋性)構成成分で存在してもよいが、これらの範囲外の量も、有用なことがある。
【0067】
任意選択的に、熱硬化剤が、バインダー前駆体に含まれてもよい。望ましくは、このような熱硬化剤は、構成成分の混合が行われる温度において熱的に安定である。エポキシ樹脂及びアクリレートのための例示的な熱硬化剤は、当該技術分野において公知であり、例えば、米国特許第6,258,138号(DeVoeら)に記載されている。熱硬化剤は、メイク層前駆体及び/又はサイズ層前駆体中に任意の有効量で存在していてもよい。このような量は、典型的には、メイク層前駆体及びサイズ/層前駆体の全固形分を基準にして、約0.01重量部~5重量部の範囲、望ましくは約0.025重量部~2重量部の範囲であるが、これらの範囲外の量も、有用なことがある。
【0068】
本開示による可撓性研磨物品を作製するために使用されるメイク層前駆体、サイズ層前駆体、及び任意選択的なスーパーサイズ層前駆体は、例えば、フェノール樹脂(ノボラック又はレゾール)、アミノプラスト、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、及び/又はアルキド樹脂などの追加の硬化性構成成分を含んでもよい。
【0069】
他の構成成分に加えて、本開示による可撓性研磨物品のメイク層、サイズ層、及び任意選択的なスーパーサイズ層は、例えば、性能及び/又は外観を改変するために、任意選択的な添加剤を含んでもよい。例示的な任意選択的な添加剤としては、研削助剤、充填剤、可塑剤、湿潤剤、界面活性剤、顔料、カップリング剤、繊維、潤滑剤、チキソトロピー性材料、帯電防止剤、懸濁化剤、顔料、及び染料が挙げられる。
【0070】
有機であっても無機であってもよい例示的な研削助剤としては、ワックス、ハロゲン化有機化合物、例えばテトラクロロナフタレン、ペンタクロロナフタレン、及びポリ塩化ビニルのような塩素化ワックス、ハロゲン化物塩、例えば塩化ナトリウム、カリウム氷晶石、ナトリウム氷晶石、アンモニウム氷晶石、テトラフルオロホウ酸カリウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、フッ化ケイ素、塩化カリウム、塩化マグネシウム、並びに金属及びそれらの合金、例えばスズ、鉛、ビスマス、コバルト、アンチモン、カドミウム、鉄、及びチタンなどが挙げられる。他の研削助剤の例としては、イオウ、有機イオウ化合物、黒鉛、及び金属硫化物が挙げられる。異なる研削助剤の組み合わせ、例えば、米国特許第5,552,225号(Ho)に記載されているものなどが、使用されてもよい。
【0071】
メイク層の坪量(すなわち、硬化後)は、例えば、意図される使用、研磨粒子の種類、及び調製されているコーティングされた研磨物品の性質に応じたものでもよいが、概して、約1~約30グラム/平方メートル(すなわちgsm)、好ましくは約10~約25gsm、より望ましくは約10~約20gsmの範囲である。
【0072】
メイク層は、可撓性バッキング層の主表面上にメイク層前駆体をコーティングすることによって形成されてもよい。メイク層前駆体は、例えば、例えば、ロールコーティング、押出ダイコーティング、カーテンコーティング、ナイフコーティング、グラビアコーティング、及びスプレーコーティングをはじめとする、メイク層を可撓性バッキング層に適用するための任意の既知のコーティング方法によって適用されてもよい。
【0073】
メイク層前駆体が可撓性バッキング層に適用された後、ただしサイズ層前駆体が適用される前に、研磨粒子がメイク層前駆体に適用され、次いで、メイク層前駆体は任意選択的に部分的に硬化されてもよい(例えば、a段階又はb段階まで)。
【0074】
本開示の実施に利用される研磨層に使用するのに好適な研磨粒子としては、研磨剤の技術分野において既知の任意の研磨粒子が挙げられる。例示的で有用な研磨粒子としては、溶融酸化アルミニウム系の材料、例えば、酸化アルミニウム、酸化アルミニウムセラミック(これには、1つ以上の金属酸化物変性剤、及び/又はシード剤若しくは核形成剤が含まれてもよい)、熱処理酸化アルミニウム、炭化ケイ素、共溶融されたアルミナ-ジルコニア、ダイヤモンド、セリア、二ホウ化チタン、立方晶窒化ホウ素、炭化ホウ素、ガーネット、フリント、エメリー、ゾルゲル法由来の研磨粒子、及びこれらのブレンドが挙げられる。望ましくは、研磨粒子には、溶融酸化アルミニウム、熱処理酸化アルミニウム、セラミック酸化アルミニウム、炭化ケイ素、アルミナジルコニア、ガーネット、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、ゾル-ゲル法由来の研磨粒子、又はこれらの混合物が含まれる。ゾル-ゲル研磨粒子の例としては、米国特許第4,314,827号(Leitheiserら)、同第4,518,397号(Leitheiserら)、同第4,623,364号(Cottringerら)、同第4,744,802号(Schwabel)、同第4,770,671号(Monroeら)、同第4,881,951号(Woodら)、同第5,011,508号(Waldら)、同第5,090,968号(Pellow)、同第5,139,978号(Wood)、同第5,201,916号(Bergら)、同第5,227,104号(Bauer)、同第5,366,523号(Rowenhorstら)、同第5,429,647号(Larmie)、同第5,498,269号(Larmie)、及び同第5,551,963号(Larmie)に記載されているものが挙げられる。
【0075】
研磨粒子は、例えば、個々の粒子、凝集物、研磨剤複合粒子、αアルミナ研磨剤片、及びこれらの混合物の形態であってもよい。例示的な凝集物は、例えば、米国特許第4,652,275号(Bloecherら)及び同第4,799,939号(Bloecherら)に記載されている。また、例えば、米国特許第5,078,753号(Brobergら)に記載されている希釈剤浸食性凝集粒を使用することも、本開示の範囲内である。研磨剤複合粒子は、バインダー中で砥粒を構成する。例示的な研磨剤複合粒子は、例えば、米国特許第5,549,962号(Holmesら)に開示されている。αアルミナ研磨剤片は、米国特許出願公開第2011/0314746(A1)号(Ericksonら)に記載されている。
【0076】
研磨粒子は、典型的には、約0.1~約2000μm、より望ましくは約1~約1300μmの平均直径を有する。研磨粒子は、概ね、所与の粒径分布に等級分けされた後、使用される。このような分布は、典型的には、粗粒子から微粒子までのある範囲の粒径を有する。研磨剤の技術分野において、この範囲は、「粗い」、「統制された」、及び「細かい」画分とときに呼ばれる。
【0077】
研磨剤業界公認の等級基準に従って等級分けされた研磨粒子は、各公称等級に対する粒径分布を数量的限界内で指定している。このような業界公認の等級基準(すなわち、研磨剤業界指定の公称等級)としては、アメリカ規格協会(ANSI)規格、研磨製品の欧州生産者連盟(FEPA)規格、及び日本工業規格(JIS)として既知のものが挙げられる。
【0078】
ANSI等級表記(すなわち、指定の公称等級)としては、ANSI4、ANSI6、ANSI8、ANSI16、ANSI24、ANSI36、ANSI40、ANSI50、ANSI60、ANSI80、ANSI100、ANSI120、ANSI150、ANSI180、ANSI220、ANSI240、ANSI280、ANSI320、ANSI360、ANSI400、及びANSI600が挙げられる。FEPA等級表記としては、P8、P12、P16、P24、P36、P40、P50、P60、P80、P100、P120、P150、P180、P220、P320、P400、P500、P600、P800、P1000、及びP1200が挙げられる。JIS等級の表記としては、JIS8、JIS12、JIS16、JIS24、JIS36、JIS46、JIS54、JIS60、JIS80、JIS100、JIS150、JIS180、JIS220、JIS240、JIS280、JIS320、JIS360、JIS400、JIS600、JIS800、JIS1000、JIS1500、JIS2500、JIS4000、JIS6000、JIS8000、及びJIS10,000が挙げられる。成形された三次元表面を有する木材トリム及び型(塗装又は非塗装)などの手でのサンディング用途で使用するために、研磨粒子は、ANSI等級P100~P320の範囲内に収まる径分布を有する。
【0079】
あるいは、研磨粒子は、ASTM E-11「Standard Specification for Wire Cloth and Sieves for Testing Purposes」に準拠する米国標準試験用ふるいを使用して、公称選別等級に等級付けされたものでもよい。ASTM E-11は、指定の粒径に従って材料を分類するための、枠内に取り付けられた織金網の媒体を使用する試験用ふるいの設計及び構造の要件を規定している。典型的な表記は、-18+20のように表されていることがあり、これは、研磨粒子が、ASTM E-11の18号ふるいの規格を満たす試験用ふるいを通過し、かつASTM E-11の20号ふるいの規格を満たす試験用ふるいに残ることを意味する。特定の実施形態では、研磨粒子は、大多数の研磨粒子が18号のメッシュ試験用ふるいを通過し、かつ20、25、30、35、40、45、又は50号のメッシュ試験用ふるいに残ることができる、粒径を有する。本開示の様々な実施形態では、研磨粒子は、-18+20、-20/+25、-25+30、-30+35、-35+40、-40+45、-45+50、-50+60、-60+70、-70/+80、-80+100、-100+120、-120+140、-140+170、-170+200、-200+230、-230+270、-270+325、-325+400、-400+450、-450+500、又は-500+635を含む公称選別等級を有してもよい。
【0080】
研磨粒子のコーティング重量は、例えば、使用されるバインダー前駆体、研磨粒子を適用するための方法、及び研磨粒子の径に応じたものでよいが、典型的には約5~約250グラム/平方メートル(gsm)、好ましくは20~100gsm、より好ましくは30~80gsm、より好ましくは45~65gsmの範囲であるが、他の量も、使用されてもよい。
【0081】
次に、サイズ層前駆体は、メイク層前駆体及び研磨粒子の上に適用されてもよく、メイク層前駆体及びサイズ層前駆体は、使用可能なコーティングされた研磨物品を形成するために、十分に硬化されてもよい。硬化は、熱的方法を使用して達成してもよく及び/又は光化学的方法を使用して達成してもよい。
【0082】
メイク層と同様に、サイズ層は、前駆体組成物(すなわち、サイズ層前駆体)から同様に形成されてもよい。サイズ層は、メイク層前駆体で使用するために、上記で列挙した構成成分のいずれかを含んでもよい。
【0083】
サイズ層前駆体中に存在するポリエポキシドの量は、典型的には、メイク層前駆体中の固形分(すなわち、不揮発性構成成分)の総重量を基準にして、約40~80重量%、好ましくは50~70重量%、より好ましくは55~65重量%の範囲であるが、この範囲外の量も、使用されてもよい。
【0084】
サイズ層前駆体中に存在する多官能性(メタ)アクリレートの量は、典型的には、メイク層前駆体中の固形分(すなわち、不揮発性構成成分)の総重量を基準にして、約5~約50重量%、好ましくは約15~約40重量%、更により望ましくは約25~約35重量%の範囲であるが、この範囲外の量も、使用されてもよい。
【0085】
また、サイズ層の坪量(すなわち、硬化後)は、意図される使用、研磨粒子の種類、及び調製されているコーティングされた研磨物品の性質に応じて変更されてもよいが、概して、10~150gsm、好ましくは20~80gsm、より好ましくは35~55gsmの範囲である。サイズ層は、例えば、ロールコーティング、押出ダイコーティング、カーテンコーティング、及びスプレーコーティングをはじめとする、例えば、サイズ層を可撓性バッキング層に適用するための任意の既知のコーティング方法によって適用されてもよい。
【0086】
次に、サイズ層前駆体及び任意の未硬化のメイク層前駆体は、十分に硬化され、使用可能なコーティングされた研磨物品が提供される。概して、この硬化工程は、熱及び/又は放射線エネルギー(例えば、紫外線及び/若しくは可視化学線又は電子線放射)を伴うが、これが必須ではない。熱エネルギーの有用な形態としては、例えば、加熱及び赤外放射線が挙げられる。例示的な熱エネルギー源としては、オーブン(例えば、フェストーンのオーブン)、加熱したロール、熱風ブロアーが挙げられる。例示的な放射線エネルギー源としては、例えば、電子ビーム、紫外線(例えば、中圧水銀バルブ、キセノンフラッシュランプから、又はH型若しくはD型マイクロ波駆動バルブから)、及び可視光が挙げられる。他の放射線エネルギー源としては、赤外線及びマイクロ波が挙げられる。電離放射線としても知られる電子線放射線は、約0.1~約10メガラド(Mrad)の線量、好ましくは約1~約10Mradの線量で使用されてもよい。紫外線は、約200~約400ナノメートル(nm)の範囲内、好ましくは約250~400nmの範囲内の波長を有する、非粒子状放射線を指す。特定の実施形態では、紫外線は、100~300ワット/cmの線量の紫外線によって提供されてもよい。可視光線は、約400~約800nmの範囲内、特定の実施形態では約400~約550nmの範囲内の波長を有する、非粒子状放射線を指す。
【0087】
任意選択的に、スーパーサイズ層は、サイズ層の少なくとも一部分に適用されてもよい。存在する場合、スーパーサイズは、典型的には、研削助剤及び/又は耐荷重材料を含む。任意選択的なスーパーサイズ層は、コーティングされた研磨物品の切断能力を劇的に低下させることがある研磨粒子間の切屑(加工物から研磨された材料)の蓄積を、防止又は低減する役割を果たすことができる。有用なスーパーサイズ層は、典型的には、研削助剤(例えば、テトラフルオロホウ酸カリウム)、脂肪酸の金属塩(例えば、ステアリン酸亜鉛又はステアリン酸カルシウム)、リン酸エステルの塩(例えば、ベヘニルリン酸カリウム)、リン酸エステル、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、鉱油、架橋シラン、架橋シリコーン、及び/又はフルオロケミカル品を含む。有用なスーパーサイズ材料は、例えば、米国特許第5,556,437号(Leeら)に更に記載されている。
【0088】
スーパーサイズ層の坪量は、存在する場合、1~50gsm、より好ましくは5~30gsm、より好ましくは約10~約20gsmであってもよい。スーパーサイズは、例えば、サイズ層又はメイク層を調製するために使用されるものなどのバインダーを含んでもよいが、バインダー樹脂を含む必要は全くない。スーパーサイズ層は、概して、乾燥及び/又は硬化され、例えばウェブ形態のシートであってもよい可撓性研磨物品が提供される。特定の形状(例えば、矩形シート又は円盤)に加工することは、例えば、ダイ切断、ナイフ切断、及びレーザー切断などの従来の方法を使用して達成されてもよい。
【0089】
得られた可撓性研磨物品は、例えば、印刷、レーザーマーキング、トリミング、穿孔、屈曲、後硬化、又はこれらの組み合わせなどの更なる従来の処理に供されてもよい。
【0090】
いくつかの好ましい実施形態では、可撓性研磨物品が十分に透光性又は透明であり、可撓性研磨物品を加工物の表面から除去することなく、ユーザーが研磨中に加工物を目視で知覚できるように、様々な構成成分が選択される。これにより、紙のバッキングによる研磨製品と比較して利点がもたらされる。
【0091】
本開示による可撓性研磨物品は、典型的には、特に湾曲した及び/又は複雑な表面形状を伴う、塗装された若しくは未塗装の木材又は金属加工物(例えば、家具及び建築用トリム、例えば、型、手すり、又は高級家具)に対する、手でのサンディング用途において使用するのに十分に好適である。本開示による可撓性研磨製品のこれについての利点としては、優れた手触り、手での握り、透けて見える透光性、並びに可撓性及び三次元の細部を有する建築用トリムを構成する加工物表面に対する適合性のうちの1つ以上を挙げることができる。
【0092】
本開示の選択された実施形態
実施形態1.第1の主支持表面を有する除去可能な支持シートを供給することと、
インクを含む画像層を第1の主表面上に印刷することと、
画像層の上にバッキング層を押し出し、第1の主バッキング表面を画像層の上に形成し、第1の主バッキング表面の反対側にある第2の主バッキング表面を形成することと、
機能層を第2の主バッキング表面上に適用することと、
除去可能な支持シートをバッキング層から分離するとともに、第1の主バッキング表面に画像層を取り付けたままにすることと、を含む、方法。
【0093】
実施形態2.機能層を適用することが、メイクコートを適用することと、研磨粒子を適用することと、メイクコート及び研磨粒子上にサイズコートを適用することと、を含む、実施形態1に記載の方法。
【0094】
実施形態3.画像層を適用する前に、第1のコート層を第1の主支持表面上に適用することを含む、実施形態1に記載の方法。
【0095】
実施形態4.第1のコート層が、ポリウレタンを含む、実施形態3に記載の方法。
【0096】
実施形態5.第1のコート層が、オクチルデシルアクリレートを含む、実施形態3に記載の方法。
【0097】
実施形態6.バッキング層を画像層上に押し出す前に、トップコート層を画像層上に適用することを含む、実施形態1又は3に記載の方法。
【0098】
実施形態7.トップコート層が、ポリウレタンを含む、実施形態6に記載の方法。
【0099】
実施形態8.バッキング層が、ポリウレタンを含む、実施形態1に記載の方法。
【0100】
実施形態9.除去可能な支持シートが、ポリエチレンテレフタレートを含む、実施形態1に記載の方法。
【0101】
実施形態10.
第1の主表面を有する除去可能な支持シートと、
第1の主表面の上に適用されたインクを含む、画像層と、
画像層に隣接して位置する第1の主バッキング表面、及び第1の主表面の反対側にある第2の主バッキング表面を有する、ポリウレタンバッキング層と、
第2の主表面に適用された研磨層を含む機能層であって、研磨層が、メイクコート、研磨粒子、及びサイズコートを含む、機能層と、を含む、物品。
【0102】
実施形態11.除去可能な支持シートが、ポリエチレンテレフタレートを含む、実施形態10に記載の物品。
【0103】
実施形態12.除去可能な支持シートと画像層との間に位置する第1のコート層を含む、実施形態10に記載の物品。
【0104】
実施形態13.第1のコート層が、ポリウレタンを含む、実施形態12に記載の物品。
【0105】
実施形態14.画像層とポリウレタンバッキング層との間に位置するトップコート層を含む、実施形態10又は12に記載の物品。
【0106】
実施形態15.トップコート層が、ポリウレタンを含む、実施形態14に記載の物品。
【実施例
【0107】
本開示の目的及び利点を以下の非限定的な実施例で更に例示する。ただし、これらの実施例において列挙される特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本開示を過度に制限すると解釈されるべきではない。
【0108】
実施例の記載にあたり以下の略語を用いる。
【0109】
【表1】
【0110】
別段の記載がない限り、全ての試薬は、Sigma-Aldrich Company(St.Louis,Missouri)などの化学ベンダーから得られたか、入手可能であるか、公知の方法で合成することができる。特記がない限り、全ての比及び百分率は重量による。
【0111】
本実施例で使用される材料及び試薬に関する略語は以下のとおりである。
【0112】
【表2】
【0113】
メイク樹脂番号1の調製
メイク樹脂番号1を、表1に列挙した組成に従って調製した。AMOX、EP1、EP2、CHDM及びPEPを、300回転/分で動いている、30℃、105℃、110℃、100℃、65℃、及び60℃の温度ゾーンによる二軸押出成形機に直接計量した。次いで、この混合した樹脂を、1750回転/分で動いているピンミキサーに供給し、ACR、PC2、PC3、PC4及びPropCarbをピンミキサー内に直接計量した。
【0114】
【表3】
【0115】
メイク樹脂番号2の調製
メイク樹脂番号2を、表2に列挙した組成に従って調製した。AMOX、EP1、EP2、CHDM及びPEPを、300回転/分で動いている、30℃、105℃、110℃、100℃、65℃、及び60℃の温度ゾーンによる二軸押出成形機に直接計量した。次いで、この混合した樹脂を、1750回転/分で動いているピンミキサーに供給し、ACR、PC2、PC3、PC4及びPropCarbをピンミキサー内に直接計量した。
【0116】
【表4】
【0117】
サイズ樹脂の調製
以下の表3に、サイズ樹脂を配合するために使用される構成成分及び量を列挙する。サイズ樹脂を、EP2、EP3、及びACRを容器内で合わせること及び混合することによって調製した。研磨剤作製の前に、PC1及びPIを、予混合樹脂バッチに添加し、均質になるまで室温(すなわち、20~24℃)で30分間撹拌した。
【0118】
【表5】
【0119】
コーティング配合物番号1の調製
以下の表4に、コーティング配合物番号1を配合するために使用される構成成分及び量を列挙する。この配合物を、合わせること及び混合することによって調製した。
【0120】
【表6】
【0121】
コーティング配合物番号2の調製
以下の表5に、コーティング配合物番号2を配合するために使用される構成成分及び量を列挙する。この配合物を、合わせること及び混合することによって調製した。
【0122】
【表7】
【0123】
実施例1
PET1のシートを除去可能な支持層として使用し、このシートは、第2の主表面109に適用したステアリルアクリレート及びイソステアリルアクリレートのコポリマーからなる剥離コーティングを有するものであった。逆転モードで動作するA85LPI、18bcmのグラビアロールを使用し、コーティング配合物番号1を、任意選択的な第1のコート層110として、反対側にあるPET1の第1の主表面107に適用した。この配合物をオーブン乾燥し、次いでグラビア印刷法を用いてINK1のパターンを適用し、画像層120を形成した。インクをオーブン乾燥し、順方向モードで動作する別の85LPI 18bcmのグラビアロールを使用し、コーティング配合物番号2を、トップコート層130として画像層の上に適用した。次いで、押出法を用いて、PUR1の厚さ0.002”の層を適用し、可撓性バッキング層140をコーティング配合物番号2の表面上に形成した。次いで、メイク樹脂番号1を、16.5g/mの名目上のコーティング重量でPUR1の表面上にコーティングし、フィルムアセンブリを、両方とも600W/in(236W/cm)で動作する、1組のDバルブ及び1組のVバルブを有するFusion UV System下に通した。次いで、研磨剤鉱物P2000を、14g/mの名目上のコーティング重量でメイク層上にコーティングし、次いでウェブを、赤外線ヒーターにて100℃の名目上のウェブ温度設定で約7秒間加熱した。次いで、サイズ樹脂を、7g/mの名目上の乾燥コーティング重量でメイク層上及び研磨粒子上にロールコーティングし、3つのいずれも600W/in(236W/cm)で動作する、1組のHバルブ、及び2組のDバルブを有するFusion UV System下に通した。次いでこれを、125℃の目標出口ウェブ温度による赤外線オーブンを通して処理した。次いで、ZNSTを、4g/mの名目上のコーティング重量でサイズ層上にコーティングし、135℃の目標出口ウェブ温度による乾燥オーブンを通して処理した。次いで、PET1の除去可能な支持層を、多層構造体から分離し、可撓性バッキング層上に画像層を有する、1片のPET1及び研磨物品を提供した。研磨物品がインク層を含む間、PET1は透明であり、このことは、インクが、PET1の除去可能な支持層から、PUR1の可撓性バッキング層の裏面に転写されていたことを示すものであった。
【0124】
実施例2(コーティング配合物番号2がないことを除き、実施例1と同じ)
PET1のシートを除去可能な支持層として使用し、このシートは、第2の主表面109に適用したステアリルアクリレート及びイソステアリルアクリレートのコポリマーからなる剥離コーティングを有するものであった。逆転モードで動作するA85LPI、18bcmのグラビアロールを使用し、コーティング配合物番号1を、任意選択的な第1のコート層110として、反対側にあるPET1の第1の主表面107に適用した。この配合物をオーブン乾燥し、次いでグラビア印刷法を用いてINK1のパターンを適用し、画像層120を形成した。次いで、押出法を用いて、PUR1の厚さ0.002”の層を適用し、可撓性バッキング層140を画像層上に形成した。次いで、メイク樹脂番号1を、16.5g/mの名目上のコーティング重量でPUR1の表面上にコーティングし、フィルムアセンブリを、両方とも600W/in(236W/cm)で動作する、1組のDバルブ及び1組のVバルブを有するFusion UV System下に通した。次いで、研磨剤鉱物P2000を、14g/mの名目上のコーティング重量でメイク層上にコーティングし、次いでウェブを、赤外線ヒーターにて100℃の名目上のウェブ温度設定で約7秒間加熱した。次いで、サイズ樹脂を、7g/mの名目上の乾燥コーティング重量でメイク層上及び研磨粒子上にロールコーティングし、3つのいずれも600W/in(236W/cm)で動作する、1組のHバルブ、及び2組のDバルブを有するFusion UV System下に通した。次いでこれを、125℃の目標出口ウェブ温度による赤外線オーブンを通して処理した。次いで、ZNSTを、4g/mの名目上のコーティング重量でサイズ層上にコーティングし、135℃の目標出口ウェブ温度による乾燥オーブンを通して処理した。次いで、PET1の除去可能な支持層を、多層構造体から分離し、可撓性バッキング層上に画像層を有する、1片のPET1及び研磨物品を提供した。研磨物品がインク層を含む間、PET1は透明であり、このことは、インクが、PET1の除去可能な支持層から、PUR1の可撓性バッキング層の裏面に転写されていたことを示すものであった。
【0125】
実施例3
グラビアコーティング法を使用して、ステアリルアクリレート及びイソステアリルアクリレートを共重合することによって作製したコポリマーの薄いコーティングを、除去可能な支持層PET2の第2の主表面109上に適用した。このコーティングを、逆転モードで動作するグラビアシリンダにより適用した。同じプレス通し中に、150LPI、9.6bcmの順方向モードで動作するグラビアシリンダを使用して、画像層にINK2を、第1の主表面107に適用した。次いで、押出法を用いて、PUR1の厚さ0.0025”の層を、可撓性バッキング層140として画像層上に適用した。次いで、メイク樹脂番号2を、16.5g/mの名目上のコーティング重量でPUR1の表面上にコーティングし、フィルムアセンブリを、両方とも600W/in(236W/cm)で動作する、1組のDバルブ及び1組のVバルブを有するFusion UV System下に通した。次いで、研磨剤鉱物P800を、25g/mの名目上のコーティング重量でメイク層上にコーティングし、次いでウェブを、赤外線ヒーターにて100℃の名目上のウェブ温度設定で約7秒間加熱した。次いで、サイズ樹脂を、11g/mの名目上の乾燥コーティング重量でメイク層上及び研磨粒子上にロールコーティングし、3つのいずれも600W/in(236W/cm)で動作する、1組のHバルブ、及び2組のDバルブを有するFusion UV System下に通した。次いでこれを、125℃の目標出口ウェブ温度による赤外線オーブンを通して処理した。次いで、ZNSTを、6g/mの名目上のコーティング重量でサイズ層上にコーティングし、135℃の目標出口ウェブ温度による乾燥オーブンを通して処理した。次いで、PET2の除去可能な支持層を、多層構造体から分離し、可撓性バッキング層上に画像層を有する、1片のPET2及び研磨物品を提供した。研磨物品がインク画像を含む間、PET2は透明であり、このことは、インクが、PET2の除去可能な支持層から、PUR1の可撓性バッキング層の裏面に転写されていたことを示すものであった。
【0126】
実施例4
3つの印刷台によるフレキソコーティング法を使用し、PET2の除去可能な支持層の第1の主表面107に印刷した。第1の印刷台では、300LPI、7.0bcmのAniloxローを使用し、INK3のフラッドコーティングを適用した。第2の印刷台では、300LPI、7.0bcmのAniloxロールを使用し、INK4のフラッドコーティングを適用した。第3の印刷台では、300LPI、7.25bcmのAniloxロールを使用し、INK3の画像を適用した。3つのインク層が画像層120を形成。次いで、押出法を用いて、PUR1の厚さ0.002”の層を、印刷画像層上の可撓性バッキング層140のためにコート適用した。次いで、メイク樹脂番号2を、16.5g/mの名目上のコーティング重量でPUR1の第2の主表面144上にコーティングし、フィルムアセンブリを、両方とも600W/in(236W/cm)で動作する、1組のDバルブ及び1組のVバルブを有するFusion UV System下に通した。次いで、研磨剤鉱物P800を、25g/mの名目上のコーティング重量でメイク層上にコーティングし、次いでウェブを、赤外線ヒーターにて100℃の名目上のウェブ温度設定で約7秒間加熱した。次いで、サイズ樹脂を、11g/mの名目上の乾燥コーティング重量でメイク層上及び研磨粒子上にロールコーティングし、3つのいずれも600W/in(236W/cm)で動作する、1組のHバルブ、及び2組のDバルブを有するFusion UV System下に通した。次いでこれを、125℃の目標出口ウェブ温度による赤外線オーブンを通して処理した。次いで、ZNSTを、6g/mの名目上のコーティング重量でサイズ層上にコーティングし、135℃の目標出口ウェブ温度による乾燥オーブンを通して処理した。次いで、PET2の除去可能な支持層を、多層構造体から分離し、可撓性バッキング層上に画像層を有する、1片のPET2及び研磨物品を提供した。研磨物品がインク画像を含む間、PET2は透明であり、このことは、インクが、PET2の除去可能な支持層から、PUR1の可撓性バッキング層の裏面に転写されていたことを示すものであった。
図1
図2