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特許7379343高分子無機ナノ粒子組成物、それらの製造方法、及び潤滑剤としてのそれらの使用
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  • 特許-高分子無機ナノ粒子組成物、それらの製造方法、及び潤滑剤としてのそれらの使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】高分子無機ナノ粒子組成物、それらの製造方法、及び潤滑剤としてのそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C10M 161/00 20060101AFI20231107BHJP
   C10M 125/22 20060101ALN20231107BHJP
   C10M 145/14 20060101ALN20231107BHJP
   C10M 149/06 20060101ALN20231107BHJP
   C10N 10/12 20060101ALN20231107BHJP
   C10N 30/04 20060101ALN20231107BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20231107BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20231107BHJP
   C10N 40/08 20060101ALN20231107BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20231107BHJP
【FI】
C10M161/00
C10M125/22
C10M145/14
C10M149/06
C10N10:12
C10N30:04
C10N30:06
C10N40:04
C10N40:08
C10N40:25
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020540593
(86)(22)【出願日】2019-01-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-13
(86)【国際出願番号】 EP2019051505
(87)【国際公開番号】W WO2019145298
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】18152958.7
(32)【優先日】2018-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ヴィーバー
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー フィリップ クローンシュナーブル
(72)【発明者】
【氏名】ロニー ソンジャジャ
(72)【発明者】
【氏名】ソフィア シラク
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ネス
(72)【発明者】
【氏名】ローラント ヴィルケンス
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター シュミット
(72)【発明者】
【氏名】ヂァン メテハン トゥルハン
【審査官】林 建二
(56)【参考文献】
【文献】特開昭47-008279(JP,A)
【文献】特開昭54-131607(JP,A)
【文献】特表2017-506694(JP,A)
【文献】特表2016-515663(JP,A)
【文献】特表2016-515658(JP,A)
【文献】特表2012-520358(JP,A)
【文献】特表2010-532805(JP,A)
【文献】特表2013-537572(JP,A)
【文献】特表2013-544328(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101880589(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第02457884(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0231145(US,A1)
【文献】特開2014-210844(JP,A)
【文献】特表2008-546894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00-177/00
C10N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑剤組成物のための添加剤としての、溶媒(C)中の無機ナノ粒子の分散液の形態の高分子無機ナノ粒子組成物であって、
間化合物(A)及び溶媒(C)としての基油中に溶解させた1つ以上のポリマー化合物(B)を含む混合物を粉砕することによって得られ、
(A) 間化合物が、二硫化タングステンであり、かつ無機フラーレン状の形態を有し、
かつ
(B) 1つ以上のポリマー化合物は、
a2)1つ以上のポリマー化合物(B)の全質量に対して、0.5~5質量%の第一の成分a)としてアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、
a16)1つ以上のポリマー化合物(B)の全質量に対して、5~20質量%の第二の成分a)としてスチレン、
b1) 1つ以上のポリマー化合物(B)の全質量に対して、25~60質量%の、第一の成分b)として式(I)
【化1】
[式中、Rは水素又はメチルであり、R 1 は、炭素原子1~5個を有する直鎖、分枝鎖又は環状のアルキル基を意味する]の1つ以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、及び
b2) 1つ以上のポリマー化合物(B)の全質量に対して、1~10質量%の、第二の成分b)として式(II)
【化2】
[式中、Rは水素又はメチルであり、R 2 は、炭素原子12~15個を有する直鎖、分枝鎖又は環状のアルキル基を意味する]の1つ以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、
及び
c)1つ以上のポリマー化合物(B)の全質量に対して、25~60質量%の、1つ以上の(メタ)アクリル酸のエステルと数平均分子量(Mn)1500~5000g/molを有する1つ以上のヒドロキシル化水素化ポリブタジエンとの反応生成物
を含むモノマー組成物を重合することにより得られ、モノマー組成物の全てのモノマーの量は、合計で100質量%になる、かつ
間化合物(A)と1つ以上のポリマー化合物(B)との質量比が、4:1~2:1であり、
ここで、1つ以上のポリマー化合物(B)は、200000~500000g/molの質量平均分子量(Mw)を有する、前記高分子無機ナノ粒子組成物。
【請求項2】
請求項に記載の高分子無機ナノ粒子組成物を製造するための方法であって、
(a)層間化合物(A)を準備するステップ、
(b)1つ以上のポリマー化合物(B)を準備するステップ、
(c)溶媒(C)を準備するステップ、
(d)少なくとも層間化合物(A)と1つ以上のポリマー化合物(B)と溶媒(C)とを合して混合物を得るステップ、及び
(e)混合物を粉砕するステップ
を含む、前記方法。
【請求項3】
少なくとも、層間化合物(A)、1つ以上のポリマー化合物(B)及び溶媒(C)を合して混合物を得る請求項に記載の方法であって、ステップ(e)は、0.1~10kWh/kgのエネルギーを混合物に導入するボールミルプロセスを介して混合物を粉砕することを含む方法。
【請求項4】
潤滑剤組成物のための添加剤としての、請求項に記載の高分子無機ナノ粒子組成物の使用。
【請求項5】
以下、
(a)基油、及び
(b)請求項に記載の高分子無機ナノ粒子組成物
を含む、配合物。
【請求項6】
基油が、API群Iの基油、API群IIの基油、API群IIIの基油、API群IVの基油、及びAPI群Vの基油、又はそれら基油の2つ以上の混合物からなるリストから選択される、請求項に記載の配合物。
【請求項7】
配合物の全質量に対して、(i)基油40~95質量%、及び(ii)高分子無機ナノ粒子組成物5~60質量%を含む、請求項又はに記載の配合物。
【請求項8】
配合物の全質量に対して、(i)基油50~99.99質量%、及び(ii)高分子無機ナノ粒子組成物0.01~50質量%を含む、請求項又はに記載の配合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子無機ナノ粒子組成物及びそれらの製造方法に関する。本発明は、それら高分子無機ナノ粒子組成物を含む添加剤及び潤滑剤組成物、並びに摩擦学的性能を改善するため、特に金属部分上での極圧性能及び摩擦低減を改善するためのオイル潤滑剤配合物におけるそれら高分子無機ナノ粒子組成物の使用にも関する。
【0002】
背景技術
本発明は潤滑の分野に関する。潤滑剤は、表面間の摩擦を低減する組成物である。潤滑剤は、2つの表面間の運動の自由を可能にし、かつ表面の機械的摩耗を低減することに加えて、表面の腐食を抑制し、及び/又は熱もしくは酸化による表面への損傷を抑制しうる。潤滑剤組成物の例は、エンジンオイル、トランスミッション液、ギアオイル、工業用潤滑油、グリース及び金属加工油を含むが、これらに制限されない。
【0003】
潤滑剤は、一般的に、基流体及び可変量の添加剤を含む。潤滑剤配合物におけるいくつかの添加剤は、接点間の摩擦及び摩耗を低減するために使用され、これは、潤滑される装置のエネルギー効率及び耐久性のために重要である。
【0004】
近年、潤滑剤配合物における固体無機ナノ粒子の使用に関心が高まっている。これらの粒子は、境界潤滑を実現し、分離した表面を維持するために特に有用である。ナノ粒子の添加が、摩耗及び摩擦の性能を大幅に改善できることが研究により示されている(Zhouら、 Tribolology Letters 8, 213-218(2000); Qiuら、J. Tribol. 123 (3) 441-443(2001))。
【0005】
しかしながら、ナノ粒子の安定した分散を生じることは問題がある。ほとんどの未処理の無機ナノ粒子、例えばWS2、TiO2、及びSiO2は、本質的に親水性であり、したがって、オイル又は非極性環境での分散は不十分である。さらに、粒子間の不十分な分散及び弱い力は、粒子を引き寄せ、凝集を引き起こす。これらの凝集物は、配合物にとって望ましくなく効果のない沈降につながるであろう。
【0006】
この沈降を防止し、かつ分散を高めるために、いくつかの技術が採用されている。これらの技術は、例えば、混合オイル中での分散剤成分の使用を含む。オイル配合物に分散剤成分を追加することにより、ナノ粒子の分散を改善できる。分散剤又は界面活性剤は、粒子の表面と相互作用できる親水性部分、及びオイル分散を補助してミセルを形成する疎水性尾部を持する。分散剤の使用に関する1つの問題は、粒子に対する分散剤の注意深い平衡が存在しなければならないか、又は分散が崩壊することである。作業機械又は部品に存在する熱、エネルギー及び剪断力は、この平衡を容易に破ることができる。平衡の乱れは、粒子の沈降及び凝集につながる。さらに、分散剤成分は非極性環境にあまり適していない。典型的には、より極性の高い基流体を添加して分散剤を適合させる必要がある。非極性流体(群III又は群IVのオイル)の増加傾向に伴って、多くの分散剤が、これらのオイルを含むオイル配合物中ではうまく機能しない。
【0007】
独国特許出願公開第2530002号明細書(DE2530002 A1)は、固体潤滑剤、特に二硫化モリブデンの潤滑特性を改善する方法に関する。固体上のポリマー又は官能性有機基もしくは無機基の化学的及び機械的グラフトは公知である。したがって、Angew. Makromol. Chemie 28, 31 (1973)に従って、ポリマーは、種々の固体充填剤にグラフトされて、充填剤の特性が改善された。また、もちろん、ポリマーはすでに種々の用途のために固体と混合されている。しかしながら、固体潤滑剤、及び特に二硫化モリブデンは、未だこれらの方法で処理されたことはない。その欠点は、オイル中の粒子の安定性が不十分であること、及び摩擦学的条件下での分散液の応力安定性が低いことである。開示されている手順は、健康に害のあるガス状又は少なくとも非常に揮発性の高い化合物を非常に複雑なプロセス手順で扱う。
【0008】
米国特許出願公開第20140231145号明細書(US20140231145 A1)は、最先端の分散技術を使用した、官能化剤、例えばアミン、シラン、ポリマー又はそれらの組み合わせを有する潤滑剤中の二硫化モリブデンの無機フラーレン様ナノ粒子(IF-WS2)を記載している。欠点は、4球融着試験(DIN 51350-パート2)のような極圧で乏しい分散性能を示すことである。
【0009】
米国特許出願公開第2017/009171号(US2017/009171 A1)は、オイルベース及びリンベースの非塩素系添加剤を含む工業用潤滑剤組成物を開示している。工業用潤滑剤は、金属カルコゲニド、炭素含有化合物及びホウ素含有化合物の少なくとも1つの層間化合物も含み、ここで、層間化合物は、小板状の形態、球状の形態、多層フラーレン様の形態、管状の形態又はそれらの組合せである形態を有してもよい。金属カルコゲニドの外層は、シラン、アミン、モノマー、ポリマー、コポリマー及びそれらの組み合わせによって官能化されてよい。分散液は、最先端の分散技術を使用して製造される。その欠点は、4球融着試験(DIN 51350-パート2)のような極圧で乏しい分散の性能を示すことである。
【0010】
国際公開第2014170485号(WO2014170485 A1)(米国特許出願公開第2016/075965号明細書(US2016/075965 A1))において、潤滑剤組成物は、少なくとも1つの基油、2000Da以上の質量平均分子量を有する少なくとも1つの分散剤、及び潤滑剤組成物の全質量に対して0.01~2質量%の金属ナノ粒子を含み、前記金属ナノ粒子は、多層構造又はシート構造を有する同心の多面体ナノ粒子である。分散剤は、ポリアクリレート及びその誘導体も含む。非官能化ポリマー構造は、厳しい条件下で安定性の問題を生じ、満足のいく摩擦学的性能をもたらさないことが公知である。
【0011】
米国特許出願公開第2013/0005619号明細書(US 2013/0005619 A1)は、摩擦を低減するために、潤滑剤配合物におけるナノ粒子(SiO2、TiO2、アルミナ、及び酸化スズ)の使用を記載している。この操作において、粒子を適切に分散させるために、慣用の分散剤であるポリイソブテニルスクシンイミドを使用している。
【0012】
米国特許出願公開第2011/0118156号明細書(US 2011/0118156)は、セラミックナノ粒子、特に特殊な形態を有するSiO2を使用して、摩耗及び摩擦を低減している。これらの粒子の添加が材料の耐荷重能力に役立つことも示されている。粒子を分散させるために、基油は極性でなければならず、例えば水、又は極性天然油、例えば大豆油又はパーム油である。
【0013】
Pengら(Industrial Lubrication and Tribology, Vol. 62, Issue 2, 2010, 111-120頁又はTribology International, 42, (2009),911-917頁)は、オイル配合物中のナノ粒子の沈降の問題を説明している。Pengらは、粒子の表面をオレイン酸で処理している。それでも、しばらくたった後に沈降が生じる。
【0014】
例えば、Boettcherら(Polymer Bulletin 44, 223-229, 2000)及びGuら(Journal of Polymer Science, Part A: Polymer Chemistry, 51, 2013, 3941-3949)は、SiO2及びグラフェン表面上で制御されたラジカル重合技術を使用した表面開始重合法を記載している。文献は、表面開始重合を介して表面にポリマーを付加できることを示している。以前の例と同様に、小分子を最初に粒子表面と反応させている。ここで付着した分子は、重合技術の間に反応しうる。この方法の問題の1つは、粒子表面上の反応部位の高い密度により、高いモノマー変換率で架橋が生じやすいことである。この方法の他の欠点は、ポリマーが鎖末端のみに付着しうることである。さらに、制御された重合技術、例えばATRPを使用する場合に、粒子がフィルター媒体を通過できないため、標準的な手段による触媒の濾過が不可能である。最後に、制御された重合方法は費用がかかり、かつ粒子表面への開始剤の付着に時間がかかる。
【0015】
Battezら(Wear 261(2006)256-263)は、PAO6オイル配合物中のZnO粒子が極圧(EP)条件でどのように摩耗を低減できるかを記載している。粒子を分散及び安定化するために、分散剤が必要であった。ここでは、ポリヒドロキシステアリン酸を含む非イオン性分散剤を使用した(分散剤の商品名はOctacare DSP-OL100、及びOctacare DSP-OL300である)。分散が生じたにもかかわらず、未だ沈降及び凝集が発生していた。著者らは、分散剤及び基油のみを含む配合物が摩耗に対して大幅な改善を提供でき、かつある試験において安定化させたナノ粒子分散よりも性能が優れていたことも示した。実際に、不安定なナノ粒子は摩耗を増加させた。
【0016】
極圧添加剤、又はEP添加剤は、機械の大きな損傷をもたらす非常に高い圧力にさらされる部品の融着を減少又は防止する役割を有する潤滑剤のための添加剤である。極圧添加剤は、通常、ギアボックスのような用途で使用される。極圧ギアオイルは、温度、速度及びギアサイズの範囲にわたって良好に機能して、エンジンの始動時及び停止時のギアの損傷を妨げるのを助ける。しかしながら、極圧添加剤がモーターオイル中で使用されることはまれであり、それというのも、それらに含まれる硫黄又は塩素化合物が、水及び燃焼副生成物と反応でき、エンジン部品及びベアリングの腐食を促進する酸を形成するからである。極圧添加剤は、典型的に、高圧条件下で金属表面と化学的に反応する、硫黄-リン化合物及び硫黄-リン-ホウ素化合物を含む有機硫黄、リン又は塩素化合物を含む。かかる条件下で、滑り面上の小さな不規則性は、平均表面温度を著しく上昇することなく、高温(300~1000℃)の局部的なフラッシュを生じる。添加剤と表面との間の化学反応は、この領域に制限される。極圧添加剤は、例えば、暗不活性(dark inactive)硫化脂肪、暗活性(dark active)硫化脂肪、暗色活性硫黄炭化水素、短鎖及び中鎖塩素化アルカン又はポリスルフィドであってよい。工業界における現在の傾向は、SAPS(硫酸灰分、リン及び硫黄)を低下させて、前記欠点を回避することである。
【0017】
したがって、本発明の目的は、潤滑油中で長期間にわたって優れた安定性を維持しながら、改善された極圧性能及び減摩性能を示す潤滑添加剤を提供することであった。このアプローチは、実際に、潤滑剤配合物における異なるパッケージ成分、分散剤、及び他の添加剤間のあらゆる非互換性を回避し、配合物のSAPS含有量を低減又は排除さえする。
【0018】
発明の概要
徹底的な調査の結果、本発明の発明者らは、驚くべきことに、請求項1において本発明の第一の態様として定義した高分子無機ナノ粒子組成物が、潤滑油中で非常に良好に分散しながら潤滑剤組成物に添加される場合に改善された極圧性能及び減摩性能を提供することを見出している。
【0019】
本発明の第二の態様は、かかる高分子無機ナノ粒子組成物の製造方法である。
【0020】
本発明の第三の態様は、潤滑剤組成物のための添加剤としてのかかる高分子無機ナノ粒子組成物の使用である。
【0021】
本発明の第四の態様は、基油及び本発明の高分子無機ナノ粒子組成物を含む配合物(添加剤配合物又は即時使用可能な潤滑剤配合物)である。
【0022】
発明の詳細な説明
本発明による高分子無機ナノ粒子組成物
本発明による高分子無機ナノ粒子組成物は、1つ以上の層間化合物(A)と1つ以上のポリマー化合物(B)とを含む混合物を粉砕することによって得られることを特徴とし、ここで
(A) 1つ以上の層間化合物は、分子式MX2を有する金属カルコゲニドを含み、式中、Mは、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、カドミウム(Cd)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)、水銀(Hg)及びそれらの組合せからなる群から選択される金属元素であり、Xは、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)、酸素(O)及びそれらの組合せからなる群から選択されるカルコゲン元素であり、
かつ
(B) 1つ以上のポリマー化合物は、以下、
a) 以下、
a1) ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えば3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3,4-ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,5-ジメチル-1,6-ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオール(メタ)アクリレート、
a2) アミノアルキル(メタ)アクリレート及びアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、例えばN-(3-ジメチル-アミノプロピル)メタクリルアミド、3-ジエチルアミノペンチル(メタ)アクリレート、3-ジブチル-アミノヘキサデシル(メタ)アクリレート、
a3) メタ)アクリル酸のニトリル及び他の窒素含有(メタ)アクリレート、例えばN-(メタクリロイルオキシエチル)ジイソブチルケチミン、N-(メタクリロイルオキシエチル)ジヘキサデシル-ケチミン、(メタ)アクリロイルアミドアセトニトリル、2-メタクリロイルオキシエチルメチルシアナミド、シアノメチル(メタ)アクリレート、
a4) アリール(メタ)アクリレート、例えばベンジル(メタ)アクリレート又はフェニル(メタ)アクリレート、ここでそれぞれの場合のアクリル残基は、非置換であるか又は4回まで置換されていてよい、
a5) カルボニル含有(メタ)アクリレート、例えば2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシメチル(メタ)アクリレート、N-メチルアクリロイルオキシ)-ホルムアミド、アセトニル(メタ)アクリレート、N-メタクリロイル-2-ピロリジノン、N-(2-メチルアクリロキシオキシエチル)-2-ピロリジノン、N-(3-メタクリロイルオキシ-プロピル)-2-ピロリジノン、N-(2-メタクリロイルオキシペンタデシル)-2-ピロリジノン、N-(3-メタクリロイルオキシヘプタデシル)-2-ピロリジノン、
a6) エーテルアルコールの(メタ)アクリレート、例えばテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、1-ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジルオキシエチル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシ-2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシ-2-エトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシル化(メタ)アクリレート、1-エトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシ-2-エトキシ-2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸及びメトキシポリエチレングリコールのエステル、
a7) ハロゲン化アルコールの(メタ)アクリレート、例えば2,3-ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、4-ブロモフェニル(メタ)アクリレート、1,3-ジクロロ-2-プロピル(メタ)アクリレート、2-ブロモエチル(メタ)アクリレート、2-ヨードエチル(メタ)アクリレート、クロロメチル(メタ)アクリレート、
a8) オキシラニル(メタ)アクリレート、例えば2,3-エポキシブチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、10,11-エポキシウンデシル(メタ)アクリレート、2,3-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、オキシラニル(メタ)アクリレート、例えば10,11-エポキシヘキサデシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、
a9) リン含有、ホウ素含有、及び/又はケイ素含有(メタ)アクリレート、例えば2-(ジメチル-ホスファト)プロピル(メタ)アクリレート、2-(エチルホスフィト)プロピル(メタ)アクリレート、2-ジメチルホスフィノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルホスホノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルメタクリロイルホスホネート、ジプロピルメタクリロイルホスフェート、2-(ジブチルホスホノ)エチル(メタ)アクリレート、2,3-ブチレンメタクリロイルエチルボレート、メチルジエトキシメタクリロイルエトキシシラン、ジエチルホスファトエチル(メタ)アクリレート;
a10) 硫黄含有(メタ)アクリレート、例えばエチルスルフィニルエチル(メタ)アクリレート、4-チオ-シアネートブチル(メタ)アクリレート、エチルスルホニルエチル(メタ)アクリレート、チオシアネートメチル(メタ)アクリレート、メチルスルフィニルメチル(メタ)アクリレート、ビス(メタクリロイルオキシエチル)スルフィド、
a11) 複素環式(メタ)アクリレート、例えば2-(1-イミダゾリル)エチル(メタ)アクリレート、オキサゾリジニルエチル(メタ)アクリレート、N-メタクリロイルモルホリン及び2-(4-モルホリニル)エチル(メタ)アクリレート、
a12) マレイン酸及びマレイン酸誘導体、例えばマレイン酸のモノエステル及びジエステル、マレイン酸無水物、メチルマレイン酸無水物、マレインイミド、メチルマレインイミド、
a13) フマル酸及びフマル酸誘導体、例えばフマル酸のモノエステル及びジエステル、
a14) ハロゲン化ビニル、例えば塩化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン及びフッ化ビニリデン、
a15) ビニルエステル、例えば酢酸ビニル、
a16) 芳香族基を含有するビニルモノマー、例えばスチレン、側鎖にアルキル置換基を有する置換スチレン、例えばアルファ-メチルスチレン及びアルファ-エチルスチレン、環上でアルキル置換基を有する置換スチレン、例えばビニルトルエン及びp-メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、例えばモノクロロスチレン、ジクロロスチレン、トリブロモスチレン及びテトラブロモスチレン、
a17) 複素環式ビニル化合物、例えば2-ビニルピリジン、3-ビニルピリジン、2-メチル-5-ビニルピリジン、3-エチル-4-ビニルピリジン、2,3-ジメチル-5-ビニルピリジン、ビニルピリミジン、ビニルピペリジン、9-ビニルカルバゾール、3-ビニルカルバゾール、4-ビニルカルバゾール、1-ビニルイミダゾール、2-メチル-1-ビニルイミダゾール、N-ビニルピロリドン、2-ビニルピロリドン、N-ビニルピロリジン、3-ビニルピロリジン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルブチロラクタム、ビニルオキソラン、ビニルフラン、ビニルチオフェン、ビニルチオラン、ビニルチアゾール及び水素化ビニルチアゾール、ビニルオキサゾール及び水素化ビニルオキサゾール、
a18) ビニル及びイソプレニルエーテル、
a19) メタクリル酸及びアクリル酸、
を含むリストから選択される、成分a)として1つ以上の官能性モノマー、
並びに
b) 1つ以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、及び
c) (メタ)アクリル酸の1つ以上のエステルと、数平均分子量(Mn)500~10000g/molを有する1つ以上のヒドロキシル化水素化ポリブタジエンとの反応生成物
からなるリストから選択される1つ又は双方の成分
を含むモノマー組成物を重合することによって得られ、かつ
1つ以上の層間化合物(A)と1つ以上のポリマー化合物(B)との質量比は、20:1~1:5である。
【0023】
本発明による層間化合物(成分(A))
本発明による層間化合物という用語は、要素又は層の間に挿入することができる化合物を表す。層間化合物は、典型的にフラーレン状の形態を有する。フラーレン状の形態のコアは、中空、中実、非晶質、又はそれらの組合せであってよい。フラーレン状の形態は、カゴの形態を有することにもあてはまる。より詳述すれば、いくつかの実施形態において、無機フラーレン状の形態を有する層間化合物は、そのコアで中空又は中実であり、かつその周囲で層状であるカゴの形態であってよい。例えば、無機フラーレン状の形態を有する層間化合物は、単層又は二重層構造であってよい。層間化合物は、任意の数の層を有してよいため、単層又は二重層構造のみに制限されない。これらの構造は、当該技術分野においてネスト化層構造ともいわれる。
【0024】
好ましい実施形態において、層間化合物の無機フラーレン状の形態は、中空コアの有無にかかわらず、球形、ほぼ球形、多面体、細長い、棒状、立方体状、シート状もしくは管状の形態又はそれらの混合物であってよい。
【0025】
1つ以上の層間化合物は、式MX2を満たす任意の無機の組成を有してよく、式中、Mは、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、カドミウム(Cd)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)、水銀(Hg)及びそれらの組合せからなる群から選択される金属元素であり、かつXは、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)、酸素(O)及びそれらの組合せからなる群から選択されるカルコゲン元素である。
【0026】
本発明に従って、層間化合物は、2~500nm、好ましくは10~300nm、及びより好ましくは30~200nm(透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して測定する)である少なくとも一次元での微視的な粒子である。この粒子は、個々の特性を有するか、又は凝塊及び/又は凝集した構造で存在してよい。これらの後者の場合に、一次粒子のサイズは、少なくとも一次元で前記サイズの間にある。前記寸法は、例示のみを目的として提供されており、本開示を制限することを意図するものではない。
【0027】
金属カルコゲニド組成物、例えばWS2、及びフラーレン状の形態を有する層間化合物は、流動床反応器中での還元雰囲気下で酸化タングステンナノ粒子の硫化によって生成されてよい。層間化合物は、米国特許第6,217,843号明細書(U.S. Pat. No. 6,217,843)、米国特許第6,710,020号明細書(U.S. Pat. No. 6,710,020)、米国特許第6,841,142号明細書(U.S. Pat. No. 6,841,142)、米国特許第7,018,606号明細書(U.S. Pat. No. 7,018,606)及び米国特許第7,641,886号明細書(U.S. Pat. No. 7,641,886)に開示された方法の少なくとも1つに従って形成されてよく、前記特許文献は参照をもって本明細書に組み込まれたものとする。前記特許に開示された方法は、層間化合物を形成するために適した方法のいくつかの例にすぎない。形成される化合物がフラーレン状の形態を有する限り、前記層間化合物を形成するために任意の方法を使用することができる。
【0028】
その他の好ましい実施形態において、層間化合物はそれぞれ、分子式MX2(M=W及びX=S)を有する金属カルコゲニド組成を有する複数の層から構成される多層フラーレン状ナノ構造を含み、好ましくは球状であるナノ構造化合物である。
【0029】
ポリマー化合物(成分(B))
本発明の好ましい実施形態において、1つ以上のポリマー化合物(B)は、成分a)及びb)を含むが、成分c)を含んでいないモノマー組成物を重合することによって得られ、その際、1つ以上のポリマー化合物(B)は、5000~300000g/mol、より好ましくは10000~200000g/molの質量平均分子量(Mw)を有する。
【0030】
本発明の他の実施形態において、前記で定義されたモノマー組成物は、成分c)として(メタ)アクリル酸の1つ以上のエステル及び500~10000g/molの数平均分子量を有するヒドロキシル化水素化ポリブタジエンを含むモノマー混合物を含んでよい。本記載内容において、本発明のポリマー化合物(B)は、骨格又は主鎖ともいわれる第一のポリマー、及び側鎖といわれ、かつ骨格に共有結合している多数のさらなるポリマーを含む。この場合に、ポリマーの骨格は、前記(メタ)アクリル酸エステルの相互結合した不飽和基によって形成される。(メタ)アクリル酸エステルのアルキル基及び水素化ポリブタジエン鎖は、ポリマーの側鎖を形成する。(メタ)アクリル酸の1つ以上の追加のエステルと、500~10000g/molの数平均分子量を有する1つ以上のヒドロキシル化水素化ポリブタジエンとの反応生成物は、本発明においてマクロモノマーともいわれる。これらのモノマーが含まれる場合に、それらは、以下に挙げた分枝度を算出する目的のためマクロモノマーともみなされる。
【0031】
本発明の代替的な好ましい実施形態において、1つ以上のポリマー化合物(B)は、成分a)及びc)、並びに任意で成分b)を含むモノマー組成物を重合することによって得られ、その際1つ以上のポリマー化合物(B)は、10000~1000000g/mol、より好ましくは50000~1000000g/mol、さらにより好ましくは100000~1000000g/mol、最も好ましくは200000~500000g/molの質量平均分子量(Mw)を有する。
【0032】
本発明において、ポリマーの分子量を、市販のポリメチルメタクリレート(PMMA)標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定した。溶出剤としてTHFを使用したGPCによって測定を実施する(流速:1mL/分、注入量:100μL)。
【0033】
マクロモノマーの数平均分子量Mnを、市販のポリブタジエン標準を使用して、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定する。溶出剤としてTHFを使用するGPCによってDIN 55672-1に対して測定を実施する。
【0034】
成分a)及びc)、並びに任意で成分b)を含むモノマー組成物で調製される1つ以上のポリマー化合物(B)を、そのモル分枝度(「fbranch」)に基づいて特徴付けることができる。モル分枝度は、モノマー組成物中の全てのモノマーの全モル量に対する、使用したマクロモノマー(成分(c))のモル%でのパーセンテージをいう。使用したマクロモノマーのモル量を、マクロモノマーの数平均分子量Mnに基づいて算出する。モル分枝度の算出は、国際公開第2007/003238号(WO 2007/003238 A1)、特に本明細書で明示的に参照される13~14頁に詳細に記載されている。
【0035】
好ましくは、成分a)及びc)、並びに任意で成分b)を含むモノマー組成物を用いて調製される1つ以上のポリマー化合物(B)は、0.1~6モル%、より好ましくは1~4モル%、最も好ましくは1.5~3モル%のモル分枝度fbranchを有する。
【0036】
「(メタ)アクリル酸」という用語は、アクリル酸、メタクリル酸、及びアクリル酸とメタクリル酸との混合物をいい、メタクリル酸が好ましい。「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリル酸のエステル、メタクリル酸のエステル、又はアクリル酸のエステルとメタクリル酸のエステルとの混合物をいい、メタクリル酸のエステルが好ましい。
【0037】
本発明に従って、請求項1で定義される1つ以上のポリマー化合物(B)は、以下のa)~c)を含むモノマー組成物を重合することによって得ることができる:
a)1つ以上のポリマー化合物(B)に対して、1~60質量%、好ましくは2~50質量%、より好ましくは2~40質量%、最も好ましくは3~35質量%の成分a)として1つ以上の官能性モノマー、及び
b)1つ以上のポリマー化合物(B)に対して、10~99質量%、好ましくは20~98質量%、より好ましくは30~98質量%、最も好ましくは35~97質量%の成分b)として1つ以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、及び
c)1つ以上のポリマー化合物(B)に対して、0~89質量%、好ましくは10~80質量%、より好ましくは20~70質量%、最も好ましくは25~60質量%の、成分c)として1つ以上の(メタ)アクリル酸のエステルと500~10000g/molの数平均分子量(Mn)を有する1つ以上のヒドロキシル化水素化ポリブタジエンとの反応生成物。
【0038】
好ましい実施形態において、モノマー組成物のモノマーa)、b)及び任意でc)の量は、合計で100質量%になる。
【0039】
アルキル(メタ)アクリレート(成分b))
「C1-40アルキル(メタ)アクリレート」という用語は、(メタ)アクリル酸と、炭素原子1~40個を有する直鎖、環状又は分枝鎖のアルコールとのエステルをいう。この用語は、特定の長さのアルコールを有する個々の(メタ)アクリル酸エステル、及び同様に(メタ)アクリル酸エステルと異なる長さのアルコールとの混合物を包含する。
【0040】
本発明に従って、高分子無機ナノ粒子組成物の成分b)において、1つ以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーのそれぞれのアルキル基は、独立して、直鎖、環状又は分枝鎖であり、かつ炭素原子1~40個を含むことが好ましい。
【0041】
本発明に従って、それぞれの1つ以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、独立して、
b1)式(I)
【化1】
[式中、Rは水素又はメチルであり、R1は、炭素原子1~8個、好ましくは炭素原子1~5個、より好ましくは炭素原子1~3個を有する直鎖、分枝鎖又は環状のアルキル基を意味する]であるか、
b2)式(II)
【化2】
[式中、Rは水素又はメチルであり、R2は、炭素原子9~15個、好ましくは炭素原子12~15個、より好ましくは炭素原子12~14個を有する直鎖、分枝鎖又は環状のアルキル基を意味する]であるか、又は
b3)式(III)
【化3】
[式中、Rは水素又はメチルであり、R3は、炭素原子16~40個、好ましくは炭素原子16~30個、より好ましくは炭素原子16~20個を有する直鎖、分枝鎖又は環状のアルキル基を意味する]であることも好ましい。
【0042】
すなわち、本発明に従って、成分b)としての1つ以上のアルキル(メタ)アクリレートは、b1)、b2)、b3)又はそれらの混合物から選択されることが好ましい。
【0043】
「C1-8アルキル(メタ)アクリレート」という用語は、(メタ)アクリル酸と、1~8個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルコールとのエステルをいう。この用語は、特定の長さのアルコールを有する個々の(メタ)アクリル酸エステル、及び同様に(メタ)アクリル酸エステルと異なる長さのアルコールとの混合物を包含する。
【0044】
本発明に従って、式(I)に従ったそれぞれの1つ以上のモノマー、すなわちC1-8アルキル(メタ)アクリレートは、独立して、飽和アルコールに由来する(メタ)アクリレート、好ましくはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-tert-ブチルヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、及び3-イソプロピルヘプチル(メタ)アクリレートからなる群から選択されてよく、式(II)に従った最も好ましいモノマーは、メチルメタクリレートである。
【0045】
特に好ましいC1-8アルキル(メタ)アクリレートは、メチル(メタ)アクリレート及びn-ブチル(メタ)アクリレートであり、メチルメタクリレート及びn-ブチルメタクリレートが特に好ましい。
【0046】
「C9-15アルキル(メタ)アクリレート」という用語は、(メタ)アクリル酸と、9~15個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルコールとのエステルをいう。この用語は、特定の長さのアルコールを有する個々の(メタ)アクリル酸エステル、及び同様に(メタ)アクリル酸エステルと異なる長さのアルコールとの混合物を包含する。
【0047】
本発明に従って、式(II)に従ったそれぞれの1つ以上のモノマー、すなわちC9-15アルキル(メタ)アクリレートは、独立して、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、5-メチルウンデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、2-メチルドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、5-メチルトリデシル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、環状置換基を有するシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレートからなる群から選択されてもよい。
【0048】
特に好ましいC9-15アルキル(メタ)アクリレートは、直鎖C12-14アルコール混合物の(メタ)アクリル酸エステル(C12-14アルキル(メタ)アクリレート)である。
【0049】
「C16-40アルキル(メタ)アクリレート」という用語は、(メタ)アクリル酸と、16~40個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルコールとのエステルをいう。この用語は、特定の長さのアルコールを有する個々の(メタ)アクリル酸エステル、及び同様に(メタ)アクリル酸エステルと異なる長さのアルコールとの混合物を包含する。
【0050】
本発明に従って、式(III)に従ったそれぞれの1つ以上のモノマー、すなわちC16-40アルキル(メタ)アクリレートは、独立して、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、2-メチルヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、5-イソプロピルヘプタデシル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルオクタデシル(メタ)アクリレート、5-エチルオクタデシル(メタ)アクリレート、3-イソプロピルオクタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、セチルエイコシル(メタ)アクリレート、ステアリルエイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、エイコシルテトラトリアコンチル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、2,4,5-トリ-t-ブチル-3-ビニルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、及び2,3,4,5-テトラ-t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートからなる群から選択されてもよい。
【0051】
好ましくは、C1-40アルキル(メタ)アクリレートは、C1-8アルキル(メタ)アクリレートとC9-15アルキル(メタ)アクリレートとの混合物を含み、より好ましくはC12-14アルキル(メタ)アクリレートである。
【0052】
ヒドロキシル化水素化ポリブタジエン
本発明に従って成分c)として使用するための1つ以上のヒドロキシル化水素化ポリブタジエンは、500g/mol~10000g/molの数平均分子量Mnを有する。それらの高分子量の理由から、ヒドロキシル化水素化ポリブタジエンは、本発明の記載内容においてマクロアルコールともいうことができる。(メタ)アクリル酸の対応するエステルは、本発明の記載内容においてマクロモノマーともいうことができる。
【0053】
成分c)は、単一のタイプのマクロモノマーを含むか、又は異なったマクロアルコールを基礎とする異なるタイプのマクロモノマーの混合物を含んでよい。
【0054】
500g/mol~10000g/molの数平均分子量を有するマクロアルコールを基礎とする成分c)としてのマクロモノマーと、本発明による1つ以上の化合物a)及び任意に1つ以上のアルキル(メタ)アクリレートb)とを組み合わせることによって、層間化合物(A)と組み合わせた場合に、安定で十分に分散した高分子無機ナノ粒子組成物を提供するポリマー(B)が得られる。
【0055】
ヒドロキシル化水素化ポリブタジエンは、単一の数平均分子量を有する単一のポリブタジエンであってもよく、又は異なる数平均分子量を有する異なるポリブタジエンの混合物であってもよい。
【0056】
好ましくは、モノマー組成物は、成分c)として、1つ以上のポリマー化合物(B)の全質量に対して、20~60質量%、より好ましくは20~50質量%、さらにより好ましくは20~45質量%、最も好ましくは20~35質量%の1つ以上の(メタ)アクリル酸のエステル、及び500g/mol~10000g/molの数平均分子量を有する1つ以上のヒドロキシル化水素化ポリブタジエンを含む。
【0057】
本発明において、「1つ以上のポリマー化合物(B)に対して」という表現は、「モノマー組成物の全質量に対して」又は「1つ以上のポリマー化合物(B)の全質量に対して」と同一の意味である。
【0058】
好ましくは、成分c)の1つ以上のヒドロキシル化水素化ポリブタジエンは、1500~2100g/mol、より好ましくは1800~2100g/mol、最も好ましくは1900~2100g/molの数平均分子量を有する。
【0059】
他の好ましい実施形態において、成分c)として使用するための1つ以上のヒドロキシル化水素化ポリブタジエンは、3500~7000g/mol、好ましくは4000~6000g/mol、より好ましくは4500~5000g/molの数平均分子量を有する。
【0060】
他の好ましい実施形態において、成分c)は、異なる分子量を有する1つ以上のマクロアルコールを使用して調製される1つのマクロモノマーであってよく、第一のマクロアルコールは、1500~2100g/mol、より好ましくは1800~2100g/mol、最も好ましくは1900~2100g/molの数平均分子量を有し、かつ第二のマクロアルコールは、3500~7000g/mol、好ましくは4000~6000g/mol、より好ましくは4500~5000g/molの数平均分子量を有する。
【0061】
成分c)は、2つのマクロモノマーの混合物を含んでいてもよく、第一のマクロモノマーは、1500~2100g/mol、より好ましくは1800~2100g/mol、最も好ましくは1900~2100g/molの数平均分子量を有するマクロアルコールで調製され、かつ第二のマクロモノマーは、3500~7000g/mol、好ましくは4000~6000g/mol、より好ましくは4500~5000g/molの数平均分子量を有するマクロアルコールで調製される。
【0062】
本発明の好ましい実施形態に従って、異なる数平均分子量の2種類のマクロモノマーを組み合わせることによって、高分子量マクロモノマーに対する低分子量マクロモノマーの質量比率は、好ましくは1以上、より好ましくは1.5~15、さらにより好ましくは2~7、最も好ましくは3~6である。
【0063】
好ましい実施形態では、ヒドロキシル化水素化ポリブタジエンは、モノヒドロキシル化水素化ポリブタジエン、好ましくはヒドロキシエチル末端又はヒドロキシプロピル末端水素化ポリブタジエンである。
【0064】
本発明の他の好ましい実施形態において、ポリマー化合物(B)の調製のために使用される成分c)の(メタ)アクリル酸の1つ以上のエステルは、メチル(メタ)アクリレート又はエチル(メタ)アクリレートである。
【0065】
好ましくは、1つ以上のヒドロキシル化水素化ポリブタジエンは、少なくとも99%の水素化度を有する。本発明のポリマーで決定することができる、水素化度に代わる尺度は、ヨウ素価である。ヨウ素価は、ポリマー100gに添加できるヨウ素のグラム数を示す。好ましくは、本発明のポリマーは、ポリマー100g当たり5g以下のヨウ素価を有する。ヨウ素価は、DIN 53241-1:1995-05に従ってWijs法により決定される。
【0066】
好ましいヒドロキシル化水素化ポリブタジエンは、英国特許出願公開第2270317号明細書(GB 2270317)に従って得られる。
【0067】
本明細書において使用されるように、「ヒドロキシル化水素化ポリブタジエン」という用語は、1つ以上のヒドロキシル基を含む水素化ポリブタジエンをいう。ヒドロキシル化水素化ポリブタジエンは、さらに、追加の構造単位、例えば、ポリブタジエンへのアルキレンオキシドの付加に由来するポリエーテル基又はポリブタジエンへの無水マレイン酸の付加に由来する無水マレイン酸基を含んでよい。これらの追加の構造単位は、ポリブタジエンがヒドロキシル基で官能化される場合にポリブタジエンに導入されうる。
【0068】
モノヒドロキシル化水素化ポリブタジエンが好ましい。より好ましくは、ヒドロキシル化水素化ポリブタジエンは、ヒドロキシエチル末端又はヒドロキシプロピル末端水素化ポリブタジエンである。ヒドロキシプロピル末端ポリブタジエンが特に好ましい。
【0069】
これらのモノヒドロキシル化水素化ポリブタジエンは、アニオン重合によってブタジエンモノマーを最初にポリブタジエンに変換することによって調製できる。続いて、ポリブタジエンモノマーとアルキレンオキシド、例えばエチレンオキシド又はプロピレンオキシドとの反応によって、ヒドロキシ官能化ポリブタジエンを調製できる。ポリブタジエンを、1超のアルキレンオキシド単位と反応させてもよく、末端ヒドロキシル基を有するポリエーテル-ポリブタジエンブロックコポリマーを生じる。ヒドロキシル化ポリブタジエンは、適した遷移金属触媒の存在下で水素化できる。
【0070】
これらのモノヒドロキシル化水素化ポリブタジエンは、末端二重結合を有する(コ)ポリマーのヒドロホウ素化によって得られる生成物(例えば米国特許第4,316,973号明細書(US Patent No. 4,316,973)に記載されている)、末端二重結合を有する(コ)ポリマー及び無水マレイン酸とアミノアルコールとのエン反応によって得られる無水マレイン酸-エン-アミノアルコール付加物、並びに末端二重結合を有する(コ)ポリマーをヒドロホルミル化し、続いて水素化することによって得られる生成物(例えば、特開昭63-175096(JP Publication No. S63-175096)に記載されている)から選択されてもよい。
【0071】
本発明に従って使用するためのマクロモノマーは、アルキル(メタ)アクリレートのエステル交換によって調製できる。アルキル(メタ)アクリレートとヒドロキシル化水素化ポリブタジエンとの反応は、本発明のエステルを形成する。反応物としてメチル(メタ)アクリレート又はエチル(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
【0072】
このエステル交換は広く知られている。例えば、この目的のために、不均一系触媒、例えば水酸化リチウム/酸化カルシウム混合物(LiOH/CaO)、純粋な水酸化リチウム(LiOH)、リチウムメトキシド(LiOMe)もしくはナトリウムメトキシド(NaOMe)、又は均一系触媒、例えばイソプロピルチタネート(Ti(OiPr)4)もしくはジオクチルスズオキシド(Sn(OCt)2O)を使用することが可能である。反応は平衡反応である。したがって、放出された低分子量アルコールは、一般的には、例えば蒸留によって除去される。
【0073】
さらに、マクロモノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸もしくは(メタ)アクリル酸無水物から、好ましくはp-トルエンスルホン酸もしくはメタンスルホン酸による酸性触媒下で、又はDCC法(ジシクロヘキシルカルボジイミド)によって遊離メタクリル酸から、直接エステル化を実施することにより得られる。
【0074】
さらに、本発明のヒドロキシル化水素化ポリブタジエンは、酸塩化物、例えば(メタ)アクリロイルクロリドとの反応によってエステルに変換できる。
【0075】
好ましくは、本発明のエステルの前述した調製において、重合阻害剤、例えば、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシルラジカル及び/又はヒドロキノンモノメチルエーテルが使用される。
【0076】
好ましいモノマー組成物
本発明に従って、請求項1で定義した1つ以上のポリマー化合物(B)は、以下を含むモノマー組成物を重合することによって得られることが好ましい:
a)1つ以上のポリマー化合物(B)に対して、1~60質量%、好ましくは2~50質量%、より好ましくは2~40質量%、最も好ましくは3~35質量%の成分a)として1つ以上の官能性モノマー、及び
b)1つ以上のポリマー化合物(B)に対して、10~99質量%、好ましくは20~98質量%、より好ましくは30~98質量%、最も好ましくは35~97質量%の成分b)として1つ以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、及び
c)1つ以上のポリマー化合物(B)に対して、0~89質量%、好ましくは10~80質量%、より好ましくは20~70質量%、最も好ましくは25~60質量%の、成分c)として1つ以上の(メタ)アクリル酸のエステルと500~10000g/molの数平均分子量(Mn)を有する1つ以上のヒドロキシル化水素化ポリブタジエンとの反応生成物。
【0077】
好ましい実施形態において、モノマー組成物のモノマーa)、b)及び任意でc)の量は、合計で100質量%になる。
【0078】
本発明に従って、1つ以上のポリマー化合物(B)は、以下を含むモノマー組成物を重合することによって得られることが好ましい:
a)1つ以上のポリマー化合物(B)に対して、1~60質量%、好ましくは2~50質量%、より好ましくは2~40質量%、最も好ましくは3~35質量%の成分a)として1つ以上の官能性モノマー、及び
b)1つ以上のポリマー化合物(B)に対して、40~99質量%、好ましくは50~98質量%、より好ましくは60~98質量%、最も好ましくは65~97質量%の成分b)として1つ以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、
ここで、モノマー組成物の全てのモノマーの量は、合計で100質量%になる。
【0079】
本発明に従って、1つ以上のポリマー化合物(B)は、以下を含むモノマー組成物を重合することによって得られることが好ましい:
a)1つ以上のポリマー化合物(B)に対して、1~60質量%、好ましくは2~50質量%、より好ましくは2~40質量%、最も好ましくは3~35質量%の成分a)として1つ以上の官能性モノマー、及び
b1)1つ以上のポリマー化合物(B)に対して、0~50質量%、好ましくは0~40質量%、より好ましくは0~20質量%、最も好ましくは0~10質量%の成分b)として1つ以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、及び
b2)1つ以上のポリマー化合物(B)に対して、40~99質量%、好ましくは50~98質量%、より好ましくは60~98質量%、最も好ましくは65~97質量%の、成分b)として1つ以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、
ここで、モノマー組成物の全てのモノマーの量は、合計で100質量%になる。
【0080】
本発明に従って、1つ以上のポリマー化合物(B)は、以下を含むモノマー組成物を重合することによって得られることが好ましい:
a)1つ以上のポリマー化合物(B)に対して、1~60質量%、好ましくは2~50質量%、より好ましくは5~40質量%、最も好ましくは5~25質量%の成分a)として1つ以上の官能性モノマー、及び
b)1つ以上のポリマー化合物(B)に対して、10~95質量%、好ましくは20~80質量%、より好ましくは30~70質量%、最も好ましくは35~60質量%の成分b)として1つ以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、及び
c)1つ以上のポリマー化合物(B)に対して、1~89質量%、好ましくは10~80質量%、より好ましくは20~70質量%、最も好ましくは25~60質量%の、成分c)として1つ以上の(メタ)アクリル酸のエステルと500~10000g/molの数平均分子量(Mn)を有する1つ以上のヒドロキシル化水素化ポリブタジエンとの反応生成物、
ここで、モノマー組成物の全てのモノマーの量は、合計で100質量%になる。
【0081】
本発明に従って、請求項1で定義した1つ以上のポリマー化合物(B)は、以下を含むモノマー組成物を重合することによって得られることが好ましい:
a)1つ以上のポリマー化合物(B)に対して、1~60質量%、好ましくは2~50質量%、より好ましくは2~40質量%、最も好ましくは3~35質量%の、モノマーa2)、a3)、a5)、a11)、a17)又はそれらの混合物からなる群から選択される成分a)として1つ以上の官能性モノマー、及び
b)1つ以上のポリマー化合物(B)に対して、40~99質量%、好ましくは50~98質量%、より好ましくは60~98質量%、最も好ましくは65~97質量%の成分b)として1つ以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、
ここで、モノマー組成物の全てのモノマーの量は、合計で100質量%になる。
【0082】
本発明に従って、請求項1で定義した1つ以上のポリマー化合物(B)は、以下を含むモノマー組成物を重合することによって得られることが好ましい:
a2)1つ以上のポリマー化合物(B)に対して、1~60質量%、好ましくは2~50質量%、より好ましくは2~40質量%、最も好ましくは3~35質量%の成分a)として1つ以上の官能性モノマーa2)、及び
b)1つ以上のポリマー化合物(B)に対して、40~99質量%、好ましくは50~98質量%、より好ましくは60~98質量%、最も好ましくは65~97質量%の成分b)として1つ以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、
ここで、モノマー組成物の全てのモノマーの量は、合計で100質量%になる。
【0083】
本発明の特に好ましい実施形態において、1つ以上のポリマー化合物(B)は、以下を含むモノマー組成物を重合することにより得られる:
a2)1つ以上のポリマー化合物(B)に対して、1~10質量%の成分a)としてアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、最も好ましくはN-(3-ジメチル-アミノプロピル)メタクリルアミド、
b1)1つ以上のポリマー化合物(B)に対して、0~10質量%の第一の成分b)として式(I)のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、最も好ましくはメチルメタクリレート、
b2)1つ以上のポリマー化合物(B)に対して、80~99質量%の成分b)として式(II)のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、最も好ましくはラウリルメタクリレート、
ここで、モノマー組成物の全てのモノマーの量は、合計で100質量%になる。
【0084】
本発明の特に好ましい実施形態において、1つ以上のポリマー化合物(B)は、以下を含むモノマー組成物を重合することにより得られる:
a2)1つ以上のポリマー化合物(B)に対して、1~10質量%の成分a)としてアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、最も好ましくはN-(3-ジメチル-アミノプロピル)メタクリルアミド、及び
b2)1つ以上のポリマー化合物(B)に対して、90~99質量%の成分b)として式(II)のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、最も好ましくはラウリルメタクリレート、
ここで、モノマー組成物の全てのモノマーの量は、合計で100質量%になる。
【0085】
本発明の他の特に好ましい実施形態において、1つ以上のポリマー化合物(B)は、以下を含むモノマー組成物を重合することにより得られる:
a2)1つ以上のポリマー化合物(B)に対して、1~10質量%の成分a)としてアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、最も好ましくはN-(3-ジメチル-アミノプロピル)メタクリルアミド、
b1)1つ以上のポリマー化合物(B)に対して、1~10質量%の第一の成分b)として式(I)のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、最も好ましくはメチルメタクリレート、及び
b2)1つ以上のポリマー化合物(B)に対して、80~98質量%の第二の成分b)として式(II)のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、最も好ましくはC12~C15メタクリレート、
ここで、モノマー組成物の全てのモノマーの量は、合計で100質量%になる。
【0086】
本発明に従って、1つ以上のポリマー化合物(B)は、以下を含むモノマー組成物を重合することによって得られることが好ましい:
a)1つ以上のポリマー化合物(B)に対して、1~60質量%、好ましくは2~50質量%、より好ましくは5~40質量%、最も好ましくは5~25質量%のモノマーa2)、a3)、a5)、a11)、a16)、a17)又はそれらの混合物からなる群から選択される成分a)として1つ以上の官能性モノマー、及び
b)1つ以上のポリマー化合物(B)に対して、10~95質量%、好ましくは20~80質量%、より好ましくは30~70質量%、最も好ましくは35~60質量%の成分b)として1つ以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、及び
c)1つ以上のポリマー化合物(B)に対して、1~89質量%、好ましくは10~80質量%、より好ましくは20~70質量%、最も好ましくは25~60質量%の、成分c)として1つ以上の(メタ)アクリル酸のエステルと500~10000g/molの数平均分子量(Mn)を有する1つ以上のヒドロキシル化水素化ポリブタジエンとの反応混生成物、
ここで、モノマー組成物のモノマーの量は、合計で100質量%になる。
【0087】
本発明のさらに他の特定の好ましい実施形態において、1つ以上のポリマー化合物(B)は、以下を含むモノマー組成物を重合することによって得られる:
a2)1つ以上のポリマー化合物(B)に対して、0.5~5質量%の第一の成分a)としてアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、最も好ましくはN-(3-ジメチル-アミノプロピル)メタクリルアミド、
a16)1つ以上のポリマー化合物(B)に対して、5~20質量%の第二の成分a)として芳香族基を含むビニルモノマー、最も好ましくはスチレン、
b1)1つ以上のポリマー化合物(B)に対して、25~60質量%の第一の成分b)として式(I)のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、最も好ましくはメチルメタクリレート及び/又はブチルメタクリレート、
b2)1つ以上のポリマー化合物(B)に対して、1~10質量%の第二の成分b)として式(II)のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、最も好ましくはラウリルメタクリレート、及び
c)1つ以上のポリマー化合物(B)に対して、25~60質量%の成分c)として(メタ)アクリル酸と500~10000g/molの数平均分子量(Mn)を有するヒドロキシル化水素化ポリブタジエンとのエステル、最も好ましくは(メタ)アクリル酸と1500~5000g/molの数平均分子量(Mn)を有するヒドロキシル化水素化ポリブタジエンとのエステルの反応に由来するマクロモノマー、
ここで、モノマー組成物の全てのモノマーの量は、合計で100質量%になる。
【0088】
他の好ましい実施形態において、混合物を粉砕することによって得られる高分子無機ナノ粒子組成物は、1つ以上の層間化合物(A)及び1つ以上のポリマー化合物(B)を含む混合物に対応し、層間化合物(A)は、それぞれが金属カルコゲニド組成を有し、分子式MX2(M=W及びX=S)を有し、好ましくは球状である複数の層から構成される多層フラーレン状ナノ構造を含むナノ構造化合物であり、
化合物(B)は、前記の好ましいモノマー組成物の1つで調製される。
【0089】
ポリマー化合物(B)の調製
本発明に従って、前記ポリマーは、以下
(a)前記モノマー組成物を準備するステップ、及び
(b)モノマー組成物中でラジカル重合を開始するステップ
を含む方法によって調製されうる。
【0090】
標準的なフリーラジカル重合は、特にUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第6版に詳述されている。一般的に、この目的のために、重合開始剤及び任意で連鎖移動剤を使用する。
【0091】
重合は、標準圧力、減圧又は高圧下で実施されうる。重合温度も重要ではない。しかしながら、一般に、それは-20~200℃、好ましくは50~150℃、及びより好ましくは80~130℃の範囲である。
【0092】
重合ステップ(b)は、オイルで希釈して又は希釈せずに実施してよい。希釈を実施する場合に、反応混合物の全質量に対するモノマー組成物の量、すなわちモノマーの全量は、好ましくは20~90質量%、より好ましくは40~80質量%、最も好ましくは50~70質量%である。
【0093】
好ましくは、モノマー混合物を希釈するために使用されるオイルは、API群I、II、III、IV又はVのオイル、又はそれらの混合物である。好ましくは、群IIIのオイル又はそれらの混合物を使用して、モノマー混合物を希釈する。
【0094】
好ましくは、ステップ(b)は、ラジカル開始剤の添加を含む。
【0095】
適したラジカル開始剤は、例えば、アゾ開始剤、例えばアゾビス-イソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(AMBN)及び1,1-アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、並びにペルオキシ化合物、例えばメチルエチルケトンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、tert-ブチル ペル-2-エチルヘキサノエート、ケトンペルオキシド、tert-ブチルペルオクタノエート、メチルイソブチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、ジクミルペルオキシド、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、クミルヒドロペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド及びビス(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートである。
【0096】
好ましくは、ラジカル開始剤は、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1-ジ-tert-ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、tert-ブチルペルオキシベンゾエート及びtert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエートからなる群から選択される。特に好ましい開始剤は、tert-ブチルペルオキシ2-エチルヘキサノエート及び2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタンである。
【0097】
好ましくは、モノマー混合物の全質量に対するラジカル開始剤の全量は、0.01~5質量%、より好ましくは0.02~1質量%、最も好ましくは0.05~0.6質量%である。
【0098】
ラジカル開始剤の全量を単一のステップで添加してよく、又はラジカル開始剤を、重合反応の過程にわたっていくつかのステップで添加してよい。好ましくは、ラジカル開始剤をいくつかのステップで添加する。例えば、ラジカル開始剤の一部を添加してラジカル重合を開始し、かつラジカル開始剤の第二の部分を第一の投与の0.5~3.5時間後に添加してよい。
【0099】
好ましくは、ステップ(b)は、連鎖移動剤の添加も含む。適した連鎖移動剤は、特に油溶性メルカプタン、例えばn-ドデシルメルカプタンもしくは2-メルカプトエタノール、又はテルペン類の分類からの連鎖移動剤、例えばテルピノレンである。n-ドデシルメルカプタンの添加が特に好ましい。
【0100】
モノマー組成物を第一の部分と第二の部分に分け、ラジカル開始剤の一部を第一の部分に添加して、そこで重合反応を開始することも可能である。そして、ラジカル開始剤の第二の部分をモノマー組成物の第二の部分に添加し、そして0.5~5時間、好ましくは1.5~4時間、より好ましくは2~3.5時間にわたって重合反応混合物に添加する。第二のモノマー混合物の添加後に、ラジカル開始剤の第三の部分を、前記したように重合反応に添加してよい。
【0101】
好ましくは、ラジカル重合の全反応時間は、2~10時間、より好ましくは3~9時間である。
【0102】
ラジカル重合の完了後に、得られたポリマーを、好ましくは所望の粘度に前記オイルでさらに希釈する。好ましくは、ポリマーを、5~60質量%のポリマー、より好ましくは10~50質量%、最も好ましくは20~40質量%の濃度に希釈する。
【0103】
本発明の高分子無機ナノ粒子組成物及びそれらの製造方法
高分子無機ナノ粒子組成物における本発明に従って、1つ以上の層間化合物(A)と1つ以上のポリマー化合物(B)との質量比は、20:1~1:5、好ましくは10:1~1:2、より好ましくは5:1~1:1、最も好ましくは4:1~2:1である。
【0104】
本発明の好ましい実施形態に従って、高分子無機ナノ粒子組成物は、混合物を粉砕することによって得られ、その際、該混合物は、1つ以上の層間化合物(A)及び1つ以上のポリマー化合物(B)を含み、層間化合物(A)は、それぞれ金属カルコゲニド組成を有し、分子式MX2(M=W及びX=S)を有し、好ましくは球状である多層構造化合物から構成される多層フラーレン状ナノ構造を含むナノ構造化合物であり、1つ以上のポリマー化合物(B)は、以下:
a)1つ以上のポリマー化合物(B)に対して、1~60質量%、好ましくは2~50質量%、より好ましくは2~40質量%、最も好ましくは3~35質量%の成分a)として1つ以上の官能性モノマー、及び
b)1つ以上のポリマー化合物(B)に対して、10~99質量%、好ましくは20~98質量%、より好ましくは30~98質量%、最も好ましくは35~97質量%の成分b)として1つ以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマー、及び
c)1つ以上のポリマー化合物(B)に対して、0~89質量%、好ましくは10~80質量%、より好ましくは20~70質量%、最も好ましくは25~60質量%の、成分c)として1つ以上の(メタ)アクリル酸のエステルと500~10000g/molの数平均分子量(Mn)を有する1つ以上のヒドロキシル化水素化ポリブタジエンとの反応生成物、
を含むモノマー組成物を重合することによって得られ、
ここで、1つ以上の層間化合物(A)と1つ以上のポリマー化合物(B)との質量比は、20:1~1:5、好ましくは10:1~1:2、より好ましくは5:1~1:1、最も好ましくは4:1~2:1である。
【0105】
好ましい実施形態において、モノマー組成物のモノマーa)、b)及び任意にc)の量は、合計で100質量%になる。
【0106】
本発明に従って、1つ以上の層間化合物(A)及び1つ以上のポリマー化合物(B)を含む混合物は、溶媒(C)をさらに含むことが好ましく、ここで溶媒は、基油、有機溶媒又はそれらの混合物である。
【0107】
溶媒(C)は、API群I基油、API群II基油、API群III、API群IV基油、及びAPI群V基油、又はそれらの組み合わせからなるリストから選択された基油であってよい。
【0108】
溶媒(C)は、アルカン、芳香族炭化水素、エステル、エーテル又はそれらの組み合わせのリストから選択される有機溶媒であってよい。
【0109】
混合物が、30~99.9質量%、より好ましくは50~99質量%、最も好ましくは70~99質量%の溶媒(C)を含むことが好ましい。
【0110】
高分子無機ナノ粒子組成物の製造方法の好ましい実施形態に従って、1つ以上の層間化合物(A)、1つ以上のポリマー化合物(B)及び溶媒(C)の混合物は、ボールミルプロセスを介して粉砕される。好ましくは、ボールミルプロセスは、0.1~10kWh/kg、好ましくは1~5kWh/kg、より好ましくは1.5~3kWh/kgのエネルギーを混合物に導入することを含む。
【0111】
高分子無機ナノ粒子組成物の製造方法の他の好ましい実施形態において、1つ以上の層間化合物(A)、1つ以上のポリマー化合物(B)及び溶媒(C)の混合物は、10~1000W、好ましくは50~800W、より好ましくは100~500Wの電力を有する超音波装置を使用して粉砕される。好ましくは、前記組成物は、安定した高分子無機ナノ粒子組成物を得るために、1~240分間、より好ましくは10~180分間、さらにより好ましくは30~150分間粉砕される。
【0112】
本発明の他の態様は、本発明による高分子無機ナノ粒子組成物、特に前記した高分子無機ナノ粒子組成物の製造方法である。本発明の方法は、以下
(a)本明細書において定義される1つ以上の層間化合物(A)を準備するステップ、
(b)本明細書において定義される1つ以上のポリマー化合物(B)を準備するステップ、
(c)好ましくは、本明細書において定義される溶媒(C)を準備するステップ、
(d)少なくとも1つ以上の層間化合物(A)と1つ以上のポリマー化合物(B)とを合して混合物を得るステップ、好ましくは少なくとも1つ以上の層間化合物(A)と1つ以上のポリマー化合物(B)と溶媒(C)とを合して混合物を得るステップ、及び
(e)混合物を粉砕するステップ
を含む。
【0113】
本発明に従って、粉砕ステップ(e)は、動的光散乱技術(DLS)を使用して測定した高分子無機ナノ粒子組成物の粒径分布の生じた変化によって定義される。
【0114】
ステップ(e)において記載した本発明による粉砕技術は、高圧均質化、高剪断混合、超音波、ボールミル、超高圧技術(ジェットミル)又はそれらの組み合わせによる粉砕であってよい。実際に、これらの粉砕技術を使用して、アグロメレートの粒径が減少する。
【0115】
高分子無機ナノ粒子組成物の製造方法の好ましい実施形態に従って、1つ以上の層間化合物(A)、1つ以上のポリマー化合物(B)及び溶媒(C)の混合物は、ボールミルプロセスを介して粉砕される。
【0116】
ボールミルを使用することによって、タマネギ状の粒子(層間化合物(A))はバラバラになり、個々の層、層のシート又は断片が分散剤によって分散されて、改善された安定性を有する分散液が得られる(図4を参照されたい)。個々の層、層のシート又は断片は、提供した文献におけるようなタマネギの形状を維持する分散技術(図3を参照)と比較して、驚くほど印象的な極圧性能を示し、かつ境界領域で非常に低い摩擦係数値を示す。
【0117】
本発明による高分子無機ナノ粒子組成物の使用
本発明のさらなる態様は、潤滑剤組成物のための添加剤としての本明細書において定義した高分子無機ナノ粒子組成物の使用である。
【0118】
本明細書において定義した高分子無機ナノ粒子組成物及び本発明による高分子無機ナノ粒子組成物を含む潤滑剤組成物は、有利には、駆動システム潤滑油(例えば、手動トランスミッション液、差動ギアオイル、自動トランスミッション液及びベルト連続可変トランスミッション液、アクスル液配合物、デュアルクラッチトランスミッション液、及び専用ハイブリッドトランスミッション液)、油圧オイル(例えば、機械用油圧オイル、パワーステアリングオイル、ショックアブソーバーオイル)、エンジンオイル(ガソリンエンジン用及びディーゼルエンジン用)、並びに工業用オイル配合物(例えば風力タービン)のために使用される。
【0119】
本発明による好ましい実施形態において、高分子無機ナノ粒子組成物は、極圧性能を改善し、エンジン、自動車のギアボックスもしくはポンプ、風力タービン、又は油圧システムの可動金属部品の摩擦を低減する。
【0120】
配合物
本発明のさらに他の態様は、以下を含む組成物である:
(i)基油、及び
(ii)本明細書において定義される高分子無機ナノ粒子組成物。
【0121】
本発明の好ましい実施形態において、基油は、API群I基油、API群II基油、API群III、API群IV基油、及びAPI群V基油、又はそれら基油の1つ以上の混合物からなるリストから選択される。
【0122】
配合物は、本発明による高分子無機ナノ粒子組成物及び希釈剤として基油を含む添加剤配合物であってよい。添加剤配合物は、例えば、極圧として及び/又は減摩剤として潤滑剤に添加されてよい。典型的に、添加剤配合物は、比較的大量の本発明による高分子無機ナノ粒子組成物を含む。
【0123】
配合物は、本発明による高分子無機ナノ粒子組成物、基油及び任意で以下に論じるさらなる添加剤を含む潤滑剤配合物であってもよい。潤滑剤配合物は、例えば、トランスミッション液又はエンジンオイルとして使用されてよい。典型的に、潤滑剤配合物は、前述の添加剤配合物と比較してより少ない量の本発明による高分子無機ナノ粒子組成物を含む。
【0124】
配合物を添加剤配合物として使用する場合に、成分(i)としての基油の量は、配合物の全質量に対して、好ましくは40~95質量%、より好ましくは70~90質量%であり、成分(ii)としての高分子無機ナノ粒子組成物の量は、配合物の全質量に対して、好ましくは5~60質量%、より好ましくは10~30質量%である。
【0125】
配合物を潤滑剤配合物として使用する場合に、成分(i)としての基油の量は、配合物の全質量に対して、好ましくは50~99.99質量%、より好ましくは65~99.99質量%、さらにより好ましくは75~99.9質量%であり、成分(ii)としての高分子無機ナノ粒子組成物の量は、配合物の全質量に対して、好ましくは0.01~50質量%、より好ましくは0.01~35質量%、さらにより好ましくは0.1~25質量%である。
【0126】
好ましくは、成分(i)及び(ii)の量は、合計で100質量%になる。
【0127】
配合物に使用される基油は、好ましくは、潤滑粘度のオイルを含む。かかるオイルは、天然オイル及び合成オイル、水素化分解、水素化及び水素化精製に由来するオイル、未精製オイル、精製オイル、再精製オイル又はそれらの混合物を含む。
【0128】
基油は、米国石油協会(API)による規定としても定義されうる(“Appendix E-API Base Oil Interchangeability Guidelines for Passenger Car Motor Oils and Diesel Engine Oils”の2008年4月版、1.3節、小見出し1.3.“Base Stock Categories”を参照されたい)。
【0129】
APIは、現在、潤滑剤のベースストックの5つの群を定義している(API 1509, Annex E - API Base Oil Interchangeability Guidelines for Passenger Car Motor Oils and Diesel Engine Oils,2011年9月)。群I、II及びIIIは、飽和量と含まれる硫黄量により、及びそれらの粘度指数によって分類される鉱油であり、群IVはポリアルファオレフィンであり、かつ群Vは、他の全て、例えばエステル油を含む。以下の表は、これらのAPI分類を示す。
【0130】
【表1】
【0131】
本発明に従って使用できるさらなる基油は、群II~IIIのフィッシャー・トロプシュ由来の基油である。
【0132】
フィッシャー・トロプシュ由来の基油は、当該技術分野において公知である。「フィッシャー・トロプシュ由来」という用語は、基油がフィッシャー・トロプシュ法の合成生成物であるか、又は該合成生成物に由来することを意味する。フィッシャー・トロプシュ由来の基油は、GTL(Gas-To-Liquids)基油ともいわれる。本発明の潤滑組成物において基油として都合よく使用することができる、適したフィッシャー・トロプシュ由来の基油は、例えば、欧州特許第0 776 959号明細書(EP 0 776 959)、欧州特許第0 668 342号明細書(EP 0 668 342)、国際公開第97/21788号(WO 97/21788)、国際公開第00/15736号(WO 00/15736)、国際公開第00/14188号(WO 00/14188)、国際公開第00/14187号(WO 00/14187)、国際公開第00/14183号(WO 00/14183)、国際公開第00/14179号(WO 00/14179)、国際公開第00/08115号(WO 00/08115)、国際公開第99/41332号(WO 99/41332)、欧州特許第1 029 029号明細書(EP 1 029 029)、国際公開第01/18156号(WO 01/18156)、国際公開第01/57166号(WO 01/57166)及び国際公開第2013/189951号(WO 2013/189951)に開示されているものである。
【0133】
特にトランスミッションオイル配合物について、API群IIIの基油及び異なる群IIIのオイルの混合物が使用される。好ましい実施形態において、基油は、ポリアルファオレフィン基油、又はポリアルファオレフィン基油とAPI群IIIの基油との混合物、又はAPI群IIIの基油の混合物であってもよい。
【0134】
本発明による潤滑剤配合物は、成分(iii)として、分散剤、消泡剤、洗浄剤、酸化防止剤、流動点降下剤、耐摩耗添加剤、極圧添加剤、防食添加剤、黄銅(yellow metal)不動態化剤、摩擦調整剤、染料及びそれらの混合物からなる群から選択されるさらなる添加剤も含んでよい。
【0135】
適切な分散剤は、ポリ(イソブチレン)誘導体、例えばホウ酸化PIBSIを含むポリ(イソブチレン)スクシンイミド(PIBSI)、及びN/O官能基を有するエチレン-プロピレンオリゴマーを含む。
【0136】
分散剤(ホウ酸化分散剤を含む)は、潤滑剤組成物の全量に対して、好ましくは0~5質量%の量で使用される。
【0137】
適した消泡剤は、シリコーン油、フルオロシリコーン油、フルオロアルキルエーテル等である。
【0138】
消泡剤は、潤滑剤組成物の全量に対して、好ましくは0.001~0.2質量%の量で使用される。
【0139】
好ましい洗浄剤は、金属含有化合物、例えばフェノキシド;サリチレート;チオホスホネート、特にチオピロホスホネート、チオホスホネート及びホスホネート;スルホネート及びカーボネートを含む。金属として、これらの化合物は、特にカルシウム、マグネシウム及びバリウムを含みうる。これらの化合物は、好ましくは、中性又は過塩基型で使用されうる。
【0140】
洗浄剤は、潤滑剤組成物の全量に対して、好ましくは0.2~8質量%、好ましくは0.2~1質量%の量で使用される。
【0141】
適した酸化防止剤は、例えば、フェノール系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤を含む。
【0142】
フェノール系酸化防止剤は、例えば、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート;4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール);4,4’-ビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール);4,4’-ビス(2-メチル-6-t-ブチルフェノール);2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール);2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール);4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール);4,4’-イソプロピリデンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール);2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-ノニルフェノール);2,2’-イソブチリデンビス(4,6-ジメチルフェノール);2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール);2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール;2,6-ジ-t-ブチル-4-エチル-フェノール;2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノール;2,6-ジ-t-アミル-p-クレゾール;2,6-ジ-t-ブチル-4-(N,N’-ジメチルアミノメチルフェノール);4,4’チオビス(2-メチル-6-t-ブチルフェノール);4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール);2,2’-チオビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール);ビス(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルベンジル)スルフィド;ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド;n-オクチル-3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート;n-オクタデシル-3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート;2,2’-チオ[ジエチル-ビス-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等を含む。これらの中でも、ビスフェノール系酸化防止剤及びエステル基含有フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。
【0143】
アミン系酸化防止剤は、例えば、モノアルキルジフェニルアミン、例えばモノオクチルジフェニルアミン、モノノニルジフェニルアミン等;ジアルキルジフェニルアミン、例えば4,4’-ジブチルジフェニルアミン、4,4’-ジペンチルジフェニルアミン、4,4’-ジヘキシルジフェニルアミン、4,4’-ジヘプチルジフェニルアミン、4,4’-ジオクチルジフェニルアミン、4,4’-ジノニルジフェニルアミン等;ポリアルキルジフェニルアミン、例えばテトラブチルジフェニルアミン、テトラヘキシルジフェニルアミン、テトラオクチルジフェニルアミン、テトラノニルジフェニルアミン等;ナフチルアミン、具体的にはアルファ-ナフチルアミン、フェニル-アルファ-ナフチルアミン及びさらにアルキル置換フェニル-アルファ-ナフチルアミン、例えばブチルフェニル-アルファ-ナフチルアミン、ペンチルフェニル-アルファ-ナフチルアミン、ヘキシルフェニル-アルファ-ナフチルアミン、ヘプチルフェニル-アルファ-ナフチルアミン、オクチルフェニル-アルファ-ナフチルアミン、ノニルフェニル-アルファ-ナフチルアミン等を含む。これらの中でも、それらの酸化防止効果の観点から、ナフチルアミンよりもジフェニルアミンが好ましい。
【0144】
適した酸化防止剤は、さらに、硫黄及びリンを含む化合物、例えば金属ジチオホスフェート、例えば亜鉛ジチオホスフェート(ZnDTP)、「OOSトリエステル」=ジチオホスホン酸とオレフィン、シクロペンタジエン、ノルボルナジエン、α-ピネン、ポリブテン、アクリル酸エステル、マレイン酸エステル(燃焼時に無灰)からの活性化二重結合との反応生成物;有機硫黄化合物、例えばジアルキルスルフィド、ジアリールスルフィド、ポリスルフィド、改質チオール、チオフェン誘導体、キサンテート、チオグリコール、チオアルデヒド、硫黄含有カルボン酸;複素環式硫黄/窒素化合物、特にジアルキルジメルカプトチアジアゾール、2-メルカプトベンズイミダゾール;ビス(ジアルキルジチオカルバメート)亜鉛及びビス(ジアルキルジチオカルバメート)メチレン;有機リン化合物、例えば亜リン酸トリアリール及び亜リン酸トリアルキル;有機銅化合物、並びに過塩基化カルシウム及びマグネシウムベースのフェノキシド及びサリチレートからなる群から選択されてよい。
【0145】
酸化防止剤は、潤滑剤組成物の全量に対して、0~15質量%、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.01~5質量%の量で使用される。
【0146】
適した防食添加剤は、コハク酸部分エステル、コハク酸部分エステルアミン塩、有機カルボン酸、スルホネートであり、かつ適した黄銅不動態化剤は、チアジアゾール、トリアゾール及び高分子フェノール系酸化防止剤である。
【0147】
防食添加剤は0~5質量%の量で使用され、黄銅不動態化剤は0~1質量%の量で使用され、全ての量は潤滑剤組成物の全質量に基づく。
【0148】
流動点降下剤は、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、塩素化パラフィン-ナフタレン縮合物、塩素化パラフィン-フェノール縮合物、ポリメタクリレート、ポリアルキルスチレン等を含む。質量平均分子量5000~200000g/molを有するポリメタクリレートが好ましい。
【0149】
流動点降下剤の量は、潤滑剤組成物の全量に対して、好ましくは0.01~5質量%である。
【0150】
好ましい耐摩耗性及び極圧添加剤は、硫黄含有化合物、例えばジチオリン酸亜鉛、ジ-C3-12-アルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、リン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジチオリン酸モリブデン、ジチオリン酸アルキル、ジスルフィド、硫化オレフィン、硫化油脂、硫化エステル、チオカーボネート、チオカーバメート、ポリスルフィド等;リン含有化合物、例えばホスフィット、ホスフェート、例えばトリアルキルホスフェート、トリアリールホスフェート、例えばトリクレジルホスフェート、アミンで中和したモノアルキルホスフェート及びジアルキルホスフェート、エトキシル化したモノアルキルホスフェート及びジアルキルホスフェート、ホスホネート、ホスフィン、これらの化合物のアミン塩又は金属塩等;硫黄及びリン含有耐摩耗剤、例えばチオホスファイト、チオホスフェート、チオホスホネート、これらの化合物のアミン塩又は金属塩等を含む。
【0151】
耐摩耗剤は、潤滑剤組成物の全量に対して、0~3質量%、好ましくは0.1~1.5質量%、より好ましくは0.5~0.9質量%の量で存在してよい。
【0152】
好ましい摩擦調整剤は、機械的に活性のある化合物、例えモリブデンジスルフィド、グラファイト(フッ素化グラファイトを含む)、ポリ(トリフルオロエチレン)、ポリアミド、ポリイミド;吸着層を形成する化合物、例えば長鎖カルボン酸、脂肪酸エステル、エーテル、アルコール、アミン、アミド、イミド、ホスホネート、ホスファイト;トライボケミカル反応を介して層を形成する化合物、例えば飽和脂肪酸、リン酸、ホウ酸エステル及びチオリン酸エステル、キサントゲネート、硫化脂肪酸;ポリマー状の層を形成する化合物、例えばエトキシル化ジカルボン酸部分エステル、ジアルキルフタレート、メタクリレート、不飽和脂肪酸、硫化オレフィン及び有機金属化合物、例えばモリブデン化合物(モリブデンジチオホスフェート及びモリブデンジチオカルバメートMoDTC)及びZnDTPとそれらの組合せ、銅含有有機化合物を含みうる。
【0153】
前記化合物のいくつかは、複数の機能を果たしうる。例えば、ZnDTPは、主に耐摩耗添加剤及び極圧添加剤であるが、酸化防止剤及び腐食防止剤(ここでは金属不動態化剤/不活性化剤)の特徴も有する。
【0154】
前記添加剤は、特に、T. Mang, W. Dresel (eds.): “Lubricants and Lubrication”, Wiley-VCH, Weinheim 2001; R. M. Mortier, S. T. Orszulik (eds.): “Chemistry and Technology of Lubricants”において詳細に記載されている。
【0155】
好ましくは、1つ以上の添加剤(iii)の全濃度は、潤滑剤配合物の全質量に対して、20質量%まで、より好ましくは0.05質量%~15質量%、より好ましくは5質量%~15質量%である。
【0156】
好ましくは、(i)~(iii)の量は、合計で100質量%になる。
【0157】
本発明の高分子無機ナノ粒子組成物を含むオールインワン潤滑剤配合物は、経時的な安定性、並びに以下の実験の部に示されるような改善された耐融着性能及び/又は減摩性を組み合わせる。したがって、このアプローチは、1つの添加剤が全ての特性を組み合わせるため、潤滑剤配合物における異なるパッケージ成分、分散剤、及び他の添加剤間のあらゆる非互換性を回避する。
【0158】
本願により特許請求される対象である高分子無機粒子の利点及び特性をよりよく説明する目的のために、いくつかのグラフを非限定的な例として添付する:
【図面の簡単な説明】
【0159】
図1図1は、境界領域での摩擦の減少を%で示した図である。
図2図2は、本発明による組成物の4球融着の結果を先行技術の組成物と比較した棒グラフである。
図3図3は、イソプロパノール/水で調製し、分散させて乾燥させたIF-WS2の原型の層間化合物の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
図4図4は、本発明によるボールミル処理後のIF-WS2の同一の層間化合物の透過型電子顕微鏡(TEM)画像であり、該画像を遠心分離及びクロロホルムで洗浄後に撮影した。
【0160】
実験の部
本発明は、本発明の範囲を制限することを意図することなく、実施例及び比較例に関して以下にさらに詳細に説明される。
【0161】
略語
1AMA C1-アルキルメタクリレート(メチルメタクリレート;MMA)
4AMA C4-アルキルメタクリレート(n-ブチルメタクリレート)
12-14AMA C12-14-アルキルメタクリレート
12-15AMA C12-15-アルキルメタクリレート
OCTMO オクチルトリメトキシシラン
DMAPMAA N-3-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド
branch mol%での分枝度
MA-1 マクロアルコール(ヒドロキシル化水素化ポリブタジエンMn=2000g/mol)
MM-1 メタクリレート官能基を有するMA-1のマクロモノマー
n 数平均分子量
w 質量平均分子量
NB3020 Nexbase(登録商標)3020、2.2cStのKV100を有するNeste社製の群IIIの基油
NB3043 Nexbase(登録商標)3043、4.3cStのKV100を有するNeste社製の群IIIの基油
NB3060 Nexbase(登録商標)3060、6.0cStのKV100を有するNeste社製の群IIIの基油
VISCOBASE 5-220 480cStのKV100を有するEvonik社製の群Vの合成基流体
VISCOPLEX 14-520 消泡剤
DIパッケージ Afton HiTec(登録商標)307(洗浄剤抑制剤)
PPD 流動点降下剤
PDI 多分散指数、Mw/Mnにより算出した分子量分布
MTM ミニトラクション機械装置。
【0162】
ヒドロキシル化水素化ポリブタジエン(マクロアルコール)MA-1の合成
マクロアルコールを、20~45℃で1,3-ブタジエンとブチルリチウムとをアニオン重合することによって合成した。所望の重合度に達したら、プロピレンオキシドを添加することにより反応を停止し、そしてメタノールを用いた沈殿によりリチウムを除去した。続いて、水素雰囲気下で、貴金属触媒の存在下に、最高140℃及び圧力200barでポリマーを水素化した。水素化が終了した後に、貴金属触媒を除去し、そして有機溶媒を減圧下で除去して、100%マクロアルコールMA-1を得た。
【0163】
表2は、MA-1の特性データを要約したものである。
【表2】
【0164】
マクロモノマーMM-1の合成
サーベル型攪拌機(saber stirrer)、空気入口管、コントローラー付き熱電対、加熱マントル、3mmワイヤースパイラルのランダムパッキングを有するカラム、蒸気分割機、上部温度計、還流冷却器、及び基体冷却器を備えた2Lの攪拌装置中で、前記マクロモノマー1000gを、60℃で攪拌することにより、メタクリル酸メチル(MMA)中で溶解した。その溶液に、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカル20ppm及びヒドロキノンモノメチルエーテル200ppmを添加する。安定化のために空気を通過させながらMMAの還流(最低温度約110℃)まで加熱した後に、共沸乾燥のためにMMA約20mLを蒸留する。95℃に冷却した後に、LiOCH3を添加し、そしてその混合物を加熱して還流する。約1時間の反応時間の後に、メタノールの形成により、頂部温度は~64℃まで下がる。約100℃の一定の最高温度を再び確立するまで、形成したメタノール/MMA共沸混合物を常に蒸留する。この温度で、混合物をさらに1時間反応させる。さらに後処理するために、大部分のMMAを減圧下で抜き取る。不溶性の触媒残留物を、圧力濾過(Seitz T1000 depth filter)により除去する。
【0165】
表3は、マクロモノマーMM-1の合成のために使用したMMA及びLiOCH3の量を要約したものである。
【表3】
【0166】
本発明によるアミン含有コポリマーの調製
前述したように、ポリメチルメタクリレート(PMMA)標準を使用して較正したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によってポリマーの質量平均分子量を測定した。溶出液としてテトラヒドロフラン(THF)を使用する。
【0167】
実施例ポリマー1(P1):本発明によるアミン含有コポリマーの調製
Nexbase 3043 200グラム、n-3-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(DMAPMAA)11.34グラム、ラウリルメタクリレート(C12-14AMA)272.21グラム、n-ドデシルメルカプタン(n-DDM)5.53グラム、2-エチルヘキシルチオグリコレート(TGEH)5.53グラムを、2リットルの四ツ口丸底フラスコに装入した。その反応混合物を、C攪拌棒を使用して攪拌し、窒素で不活性化し、そして90℃に加熱した。反応混合物が設定温度に達したら、t-ブチルペルオクトエート2.83グラムを、2時間にわたって反応器に供給した。2時間後に、その混合物を100℃まで加熱し、そして設定値に達した後に、t-ブチルペル-2-エチルヘキサノエート1.42グラム及びtert-ブチルペルピバレート1.13グラムを1時間で供給した。残留モノマーを、良好なモノマー変換を確実にするためにガスクロマトグラフィーによって測定した。得られたポリマーは、質量平均分子量Mw10500g/mol(PMMA標準)を有する。
【0168】
実施例のポリマー2(P2):本発明によるアミン含有コポリマーの調製
100Nオイル(群IIオイル)276グラム、メチルメタクリレート16グラム、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド13グラム、C12-15AMA290グラム、及びn-ドデシルメルカプタン0.5グラムを、2リットルの四ツ口丸底フラスコに装入した。その反応混合物を、C攪拌棒を使用して攪拌し、窒素で不活性化し、そして110℃に加熱した。反応混合物が設定温度に達したら、tert-ブチル-2-エチルペルオキシヘキサノエート0.6グラムを3時間にわたって反応器に供給した。供給が完了した後に、1時間攪拌して反応させた。残留モノマーを、良好なモノマー変換を確実にするためにガスクロマトグラフィーによって測定した。得られたポリマーは、質量平均分子量Mw157000g/mol(PMMA標準)を有する。
【0169】
実施例のポリマー3(P3):本発明によるアミン及びマクロモノマー含有コポリマーの調製
NB3020 85グラム、ベリラン230SPP 85グラム、マクロモノマー140グラム、ブチルメタクリレート107グラム、スチレン28グラム、ラウリルメタクリレート13グラム、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド8グラム、及びn-ドデシルメルカプタン1グラムを、2リットルの四ツ口丸底フラスコに装入した。その反応混合物を、C攪拌棒を使用して攪拌し、窒素で不活性化し、そして115℃に加熱した。反応混合物が設定温度に達したら、tert-ブチル-2-エチルペルオキシヘキサノエート0.9グラムを、3時間にわたって反応器に供給した。2,2-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-ブタン0.5グラムを、前の供給後30分及び3時間で添加した。1時間攪拌して反応させ、そして追加のNB3020 132グラムを反応器に添加して1時間混合させた。得られたポリマーは、質量平均分子量Mw260000g/mol(PMMA標準)を有する。
【0170】
実施例P1、P2及びP3について、モノマー成分は合計で100%になる。開始剤及び連鎖移動剤の量は、モノマーの全量に対して与えられる。以下の表4は、ポリマーP1、P2及びP3を調製するためのモノマー組成物及び反応物、並びにそれらの最終的な特性を示す。
【0171】
【表4】
【0172】
本発明による高分子無機ナノ粒子濃縮物の調製
分散液IE1:
IF-WS2粒子4gを、P1 2gを含むNB3043オイル14gの溶液に加え、この混合物を超音波(400ワットを有する超音波プロセッサUP400S、Ti-sonotrodeで24kHz)で処理する。添加が完了した後に、分散液を120分間処理する。粒径分布(動的光散乱装置、LA-950、日本国在、Horiba Ltd.社製を使用してTegosoft DECオイルで測定)は、54nmのd50値を示す。
【0173】
分散液IE2:
IF-WS2粒子4gを、P2 2.2gを含むNB3043オイル13.6gの溶液に添加し、この混合物を超音波(400ワットを有する超音波プロセッサUP400S、Ti-sonotrodeで24kHz)で処理する。添加が完了した後に、分散液を120分間処理する。粒径分布(動的光散乱装置、LA-950、日本国在、Horiba Ltd.社製を使用してTegosoft DECオイルで測定)は、71nmのd50値を示す。
【0174】
分散液IE3(ボールミルで):
ボールミル装置(Netzsch Laboratory Mill Micro Series、粉砕チャンバーの85%を0.4mmのY安定化ZrO2ボールで満たした)には、蠕動ポンプを80rpm及びボールミルを1000rpmに設定しながら、NB3043オイル245g及びP1 35gを予め装入する。その後、IF-WS2粒子70gをこの溶液に加える。ボールミルを回転速度3500rpmに設定し、そしてエネルギー1.0kWhを導入するまで分散液を処理する。粒径分布(動的光散乱装置、LA-950、日本国在、Horiba Ltd.社製を使用してTegosoft DECオイルで測定)は、47nmのd50値を示す。
【0175】
分散液IE4(ボールミルで):
ボールミル装置(Bachofen DynoMill、粉砕チャンバーの70%を0.3~0.6mmのCe安定化ZrO2ボールで満たした)に、ボールミルを1000rpmに設定しながら、NB3043オイル143.9g及びP2 24.1gを予め装入する。その後、IF-WS2粒子42gをこの溶液に加える。分散液を、エネルギー2.8kWhを導入するまで処理する。粒径分布(動的光散乱装置、LA-950、日本国在、Horiba Ltd.社製を使用してTegosoft DECオイルで測定)は、48nmのd50値を示す。
【0176】
分散液IE5:
IF-WS2粒子4gを、P3 2.4gを含むNB3043オイル13.6gの溶液に加え、この混合物を超音波(400ワットを有する超音波プロセッサUP400S、Ti-sonotrodeで24kHz)で処理する。添加が完了した後に、分散液を120分間処理する。粒径分布(動的光散乱装置、LA-950、日本国在、Horiba Ltd.社製を使用してTegosoft DECオイルで測定)は、63nmのd50値を示す。
【0177】
比較例としての高分子無機ナノ粒子濃縮物の調製
分散液CE1:
IF-WS2粒子4gを、ε-カプロラクタム1.2gを含むNB3043オイル14.8gの溶液に加え、この混合物を、それぞれ超音波(400ワットを有する超音波プロセッサUP400S、Ti-sonotrodeで24kHz)で120分間処理する。粒径分布(動的光散乱装置、LA-950、日本国在、Horiba Ltd.社製を使用してTegosoft DECオイルで測定)は、1427nmのd50値を示す。
【0178】
分散液CE2:
IF-WS2粒子4gを、OCTMO1.2gを含むNB3043オイル14.8gの溶液に加え、この混合物を、それぞれ超音波(400ワットを有する超音波プロセッサUP400S、Ti-sonotrodeで24kHz)で120分間処理する。粒径分布(動的光散乱装置、LA-950、日本国在、Horiba Ltd.社製を使用してTegosoft DECオイルで測定)は、432nmのd50値を示す。
【0179】
以下の表5は、本発明による本発明の分散液(IE)及び比較分散液(CE)の組成を要約したものである。記載されている質量パーセントは、異なる組成物の全質量に基づく。
【0180】
【表5】
【0181】
動的光散乱(DLS)
粒度分布を、Horiba Ltd.社製の動的光散乱装置LB-500を使用してTegosoft DECオイルで測定した。
【0182】
動的光散乱(DLS)は、懸濁液中の小さな粒子又は溶液中のポリマーのサイズ分布プロフィールを決定するために使用できる物理学の技術である。この装置は、3nm~6μmの範囲で分散した材料(無機ナノ粒子や又はポリマー球等)の粒径を測定するために使用できる。測定は、媒体内の粒子のブラウン運動、並びに液体及び固体材料の屈折率における差異による入射レーザー光の散乱に基づく。
【0183】
得られた値は、粒子の対応する球体の流体力学的直径である。値d50、d90及びd99は、50%、90%又は99%の粒子が粒径分布内にある粒子の流体力学的直径を表すため、慣用的な議論の基準である。これらの値が低いほど、粒子の分散が良好になる。これらの値のモニタリングは、粒子分散の安定性についての手掛かりを得ることができる。値が非常に増加している場合に、粒子は十分に安定しておらず、経時的に凝集して沈降する傾向があり、安定性の欠如をもたらしうる。媒体の粘度に依存して、500nm未満のd99値(例えば、Nexbase基油について)は、粒子が経時的に停止しているため、安定した分散についての示度であると言える。
【0184】
本発明による潤滑組成物の融着及び摩擦の特性の判定
潤滑配合物を、以下の表6に示される質量比に従って調製し、そしてそれらの摩擦及び融着の性能を、以下に記載した2つの方法を使用して試験した。記載した質量パーセントは、異なる配合物の全質量に基づく。
【0185】
比較の目的のために、潤滑配合物を、常に同一の含有量の層間化合物に基づいて比較する。したがって、「-1」と名付けた配合物は、潤滑配合物の全質量に対して0.1質量%の層間化合物濃度を有する配合物に対応する。同様に、「-2」は、0.5質量%の濃度に対応し、かつ「-3」は1質量%の濃度に対応する。「a」と名付けた配合物は、ISO VG 68に従って完全に配合したオイル組成物で調製した配合物に対応する。「b」と名付けた配合物は、Nexbase(登録商標)3043で調製した配合物に対応する。
【0186】
ISO VG 68に従った完全配合オイル組成物:
79.25質量% Nexbase(登録商標)3060(基油)
17.4質量% VISCOBASE(登録商標)5-220(基油)
0.7質量% PPD
2.65質量% Afton HiTec(登録商標)307(DIパッケージ)
+0.2質量% VISCOPLEX(登録商標)14-520(消泡剤)
【表6】
【0187】
4球融着試験による融着(極圧)の改善の判定
DIN 51350第二部に従って4球融着試験を実施した(結果は図2を参照されたい)。
【0188】
表7は、4球融着試験の結果を要約したものである。
【0189】
基準基油混合物である完全に配合したオイルISO VG 68では、5000Nの平均融着荷重で融着する。
【0190】
比較例配合物CE1-3aは、分散液CE1 5質量%(1質量%の層間化合物に対応する)を添加した完全に配合したオイルISO VG 68の配合物を示す。融着荷重は4900Nであったことが判明した。
【0191】
比較例配合物CE2-3aは、分散液CE2 5質量%(1質量%の層間化合物に対応する)を添加した完全に配合したオイルISO VG 68の配合物を示す。融着荷重は3800Nであったことが判明した。
【0192】
本発明の実施例IE1、IE2及びIE4は、ポリマーP1又はP2及びIF-WS2を使用して合成した高分子無機ナノ粒子を含む。該粒子は、配合中に良好に分散し、安定している。
【0193】
本発明の配合物IE1-1aは、分散液IE1 0.5質量%(0.1質量%の層間化合物に対応する)を添加した完全に配合したオイルISO VG 68の配合物を示す。融着荷重は7250Nであったことが判明した。
【0194】
測定した融着荷重は、完全に配合したオイルISO VG 68基準と比較して45%増加している。
【0195】
本発明の配合物IE1-2aは、分散液IE1 2.5質量%(0.5質量%の層間化合物に対応する)を添加した完全に配合したオイルISO VG 68の配合物を示す。融着荷重は8250Nであったことが判明した。
【0196】
測定した融着荷重は、完全に配合したオイルISO VG 68基準と比較して65%増加している。
【0197】
本発明の配合物IE2-3aは、分散液IE2 5質量%(1質量%の層間化合物に対応する)を添加した完全に配合したオイルISO VG 68の配合物を示す。融着荷重は7000Nであったことが判明した。
【0198】
測定した融着荷重は、完全に配合したオイルISO VG 68基準と比較して40%増加している。
【0199】
本発明の配合物IE4-3aは、分散液IE4 5質量%(1質量%の層間化合物に対応する)を添加した完全に配合したオイルISO VG 68の配合物を示す。融着荷重は8750Nであったことが判明した。
【0200】
測定した融着荷重は、完全に配合したオイルISO VG 68基準と比較して75%増加している。
【0201】
【表7】
【0202】
融着荷重が高いほど、極圧性能が良好になる。基準オイル配合物は、融着荷重5000Nに達する。本発明による高分子無機ナノ粒子組成物を潤滑油配合物に添加することは、潤滑油の融着性能を大幅に改善するという、明らかな証拠が見て取れる。比較すると、従来技術による分散液(CE1~CE2)は、低い融着荷重値を有し、粒子のない基準オイル配合物よりもさらに低い。前記実験の結果は、本発明の高分子無機ナノ粒子組成物が、処理した潤滑油組成物の融着性能を維持又はさらに改善しながら、潤滑油組成物を含有する安定な層間化合物をもたらすことを示す。未処理の基準オイル組成物として低い融着荷重値を有する比較例により示されているようにナノ粒子を有する潤滑油の安定性が経時的に制限されることから、この結果は驚くべきことである。
【0203】
本発明の分散液IE3についての剪断安定性の判定
剪断安定性試験を、DIN 51350第6部に従って実施した。
【0204】
本発明の実施例は、ポリマーP1及びIF-WS2を使用して合成した高分子無機ナノ粒子を含む。該粒子は、配合中に良好に分散し、安定している。
【0205】
層間化合物含有量0.25質量%を有する本発明の実施例配合物IE3は、分散物IE3 1.25質量%を添加した完全に配合したオイルISO VG68の配合物を示す。本発明によるこの配合物は、剪断試験後も未だ安定している。
【0206】
ミニトラクション機械による摩擦の減少の判定
摩擦係数を、以下の表4において記載した試験方法に従ってPCS Instruments社製のMTM2と名付けられたミニトラクション機械を使用して測定した。SRRは、滑り率(Sliding Roll Ratio)を示す。このパラメーターを2時間の試験中一定に維持し、(UBall-UDisc)/Uとして定義した。ここで、(UBall-UDisc)は滑り速度を示し、Uはエントレインメント速度を示し、U=(UBall+UDisc)/2で提供する。それぞれの試料についてのストライベック曲線(Stribeck curve)を、表8におけるプロトコルに従って測定した。
【0207】
【表8】
【0208】
MTM法1に従って、摩擦係数を、それぞれのブレンドについての全範囲の速度にわたって記録し、そしてストライベック曲線を得た。摩擦試験を、表9において挙げた配合物についてこれらの条件に従って実施し、その結果を、以下の表10において開示する。記載した質量パーセントは、異なる配合物の全質量に基づく。
【0209】
【表9】
【0210】
摩擦減少を%で表すために、定量化可能な結果を数値で表すことができ、これは、台形法則を使用して滑り速度5mm/秒~60mm/秒の範囲で得られた対応するストライベック曲線を使用して摩擦値曲線を積分することによって得られる。この面積は、選択した速度領域にわたる「全摩擦」に対応する。面積が小さいほど、試験した生成物の摩擦低減効果が大きくなる。摩擦低減率を、摩擦領域6.32mm/秒を生じる基準基油Nexbase(登録商標)3043の値を使用することにより算出した。正の値は、摩擦係数の減少を示す。基準オイルに関する値を、表10にまとめる(図1を参照されたい)。
【0211】
【表10】
【0212】
前記の実験結果は、本発明の高分子無機ナノ粒子組成物が、潤滑油組成物中で経時的に安定であり、従来のオイル配合物と比較して優れた減摩性能を示すことを示している。実際に、滑り速度5mm/秒~60mm/秒の範囲で算出した合計の摩擦の結果は、本発明の実施例IE4及びIE5が、対応する比較例及び基準Nexbase(登録商標)3043オイルよりも摩擦における低減に関して非常に良好な結果を有することを明確に示している。Nexbase(登録商標)3043は基準基油である。摩擦低減値が低い比較例により示されているようにナノ粒子を有する潤滑油の安定性が経時的に制限されることから、この結果は驚くべきことである。
【0213】
得られた結果は、入手可能な従来技術の文献からは予測できなかった。ここには、摩擦接触中に表面上を転がって、互いに反対に移動する2つの表面間での滑走効果により摩擦を低減することができる未処理のタマネギ形状に関して言及されている。驚くべきことに、本発明による分散液をボールミル粉砕することにより得られる高分子無機ナノ粒子は、該粒子を混合した潤滑油組成物に対して改善された減摩特性を提供する。本発明の化学的に改質したナノ粒子は、潤滑油中で長期間にわたって優れた安定性を維持しながら、摩擦挙動に対して肯定的な影響を有することが実証されている。
図1
図2
図3
図4