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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】プレクチン1結合抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20231107BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20231107BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231107BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231107BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231107BHJP
   A61K 31/5517 20060101ALN20231107BHJP
   A61K 33/243 20190101ALN20231107BHJP
   A61K 38/08 20190101ALN20231107BHJP
   A61K 47/68 20170101ALN20231107BHJP
【FI】
A61K39/395 T ZNA
A61K31/7068
A61K45/00
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K31/5517
A61K33/243
A61K38/08
A61K47/68
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2020542037
(86)(22)【出願日】2018-10-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 US2018055438
(87)【国際公開番号】W WO2019075216
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-10-11
(31)【優先権主張番号】62/571,246
(32)【優先日】2017-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520128004
【氏名又は名称】ジィールバイオ,インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】ZIELBIO,INC.
【住所又は居所原語表記】1317 Carlton Avenue, Suite 200, Charlottesville, VA 22902, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケリー,キンバリー,エー.
【審査官】深草 亜子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0151010(US,A1)
【文献】特表2011-521897(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0267719(US,A1)
【文献】Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2013年,Vol.110, No.48,pp.19414-19419
【文献】J.Proteomics,2012年,Vol.75,pp.1803-1815
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌を有する対象に、細胞表面に曝露されたプレクチン1、および配列番号2と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を伴うペプチドと特異的に結合する、有効量の抗体またはその抗原結合フラグメント、および抗癌剤を投与することを含む、癌を処置することのための、前記抗体またはその抗原結合フラグメント、および前記抗癌剤を含む、組成物であって、ここで
前記抗体またはその抗原結合フラグメントと前記抗癌剤は結合されてなく、ここで
抗体またはその抗原結合フラグメントが、6つの相補性決定領域(CDR)、すなわちCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含み、
ここで
(a)CDRH1は、配列番号17として記載される配列を含み、CDRH2は、配列番号19として記載される配列を含み、CDRH3は、配列番号21として記載される配列を含み、CDRL1は、配列番号39として記載される配列を含み、CDRL2は、配列番号41として記載される配列を含み、およびCDRL3は、配列番号43として記載される配列を含み、または
(b)CDRH1は、配列番号61として記載される配列を含み、CDRH2は、配列番号63として記載される配列を含み、CDRH3は、配列番号65として記載される配列を含み、CDRL1は、配列番号83として記載される配列を含み、CDRL2は、配列番号85として記載される配列を含み、およびCDRL3は、配列番号87として記載される配列を含む、前記組成物。
【請求項2】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントおよび前記抗癌剤が、請求項1に記載の組成物として、一緒に投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントおよび前記抗癌剤が、別々に投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記癌が、前記癌細胞の表面でのプレクチン1の発現により特徴付けられる、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記癌が、卵巣癌、食道癌、頭頸部扁平上皮癌、または膵臓癌であり、場合により、前記膵臓癌が、膵管腺癌(PDAC)である、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記対象が、哺乳類、場合により、ヒトである、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
対象に、以下を投与することを含む、対象における癌を処置することのための、細胞表面に曝露されたプレクチン1、および配列番号2と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を伴うペプチドと特異的に結合する、抗体またはその抗原結合フラグメント、および抗癌剤を含む組成物:
(i)前記抗体またはその抗原結合フラグメント;および
(ii)対象における癌を治療する抗がん剤であって、ここで
前記抗体またはその抗原結合フラグメントと前記抗癌剤は結合されてなく、ここで
抗体またはその抗原結合フラグメントが、6つの相補性決定領域(CDR)、すなわちCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含み、
ここで
(a)CDRH1は、配列番号17として記載される配列を含み、CDRH2は、配列番号19として記載される配列を含み、CDRH3は、配列番号21として記載される配列を含み、CDRL1は、配列番号39として記載される配列を含み、CDRL2は、配列番号41として記載される配列を含み、およびCDRL3は、配列番号43として記載される配列を含み、または
(b)CDRH1は、配列番号61として記載される配列を含み、CDRH2は、配列番号63として記載される配列を含み、CDRH3は、配列番号65として記載される配列を含み、CDRL1は、配列番号83として記載される配列を含み、CDRL2は、配列番号85として記載される配列を含み、およびCDRL3は、配列番号87として記載される配列を含む、前記組成物
【請求項8】
(i)および(ii)が、同時に投与される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
(i)および(ii)が、連続して投与される、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記抗癌剤が、アブラキサン(パクリタキセルアルブミン-安定化ナノ粒子製剤)、アドルシル(フルオロウラシル)、アフィニトール(エベロリムス)、エフデックス(フルオロウラシル)、塩酸エルロチニブ、エベロリムス、フルオロプレックス(フルオロウラシル)、フルオロウラシル、塩酸ゲムシタビン、ジェムザール(塩酸ゲムシタビン)、マイトマイシンC、マイトザイトレックス(マイトマイシンC)、ムタマイシン(マイトマイシンC)、パクリタキセルアルブミン-安定化ナノ粒子製剤、リンゴ酸スニチニブ、スーテント(リンゴ酸スニチニブ)、およびタルセバ(塩酸エルロチニブ)、アルトレタミン、アルケラン(メルファラン)、アバスチン(ベバシズマブ)、ベバシズマブ、カルボプラチン、クレード(シクロホスファミド)、シスプラチン、シクロホスファミド、シトキサン(シクロホスファミド)、塩酸ドキソルビシン、Dox-SL(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、DOXIL(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、ドキソルビシン塩酸塩リポソーム、エバセット(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、塩酸ゲムシタビン、ジェムザール(塩酸ゲムシタビン)、ハイカムチン(塩酸トポテカン)、LipoDox(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、リムパーザ(オラパリブ)、メルファラン、ネオザール(シクロホスファミド)、トシル酸ニラパリブ一水和物、オラパリブ、パクリタキセル、パラプラット(カルボプラチン)、パラプラチン(カルボプラチン)、プラチノール(シスプラチン)、プラチノール-AQ(シスプラチン)、ルブラカ(ルカパリブカンシル酸塩)、ルカパリブカンシル酸塩、タキソール(パクリタキセル)、チオテパ、塩酸トポテカン、ゼジュラ(トシル酸ニラパリブ一水和物)から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
抗癌剤が、化学療法剤である、請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
化学療法剤が、ゲムシタビンである、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
抗体またはその抗原結合フラグメントが、配列番号2として記載されるアミノ酸配列を結合する、請求項7に記載の組成物。
【請求項14】
抗体またはその抗原結合フラグメントが、以下に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、請求項に記載の組成物:
(a)それぞれ配列番号23および45;または
(b)それぞれ配列番号67および89。
【請求項15】
前記癌が、癌細胞の表面でのプレクチン1の発現により特徴づけられる、請求項7に記載の組成物。
【請求項16】
前記癌が、卵巣癌、食道癌、頭頸部扁平上皮癌、または膵臓癌であり、場合により、前記膵臓癌が、膵管腺癌(PDAC)である、請求項7に記載の組成物。
【請求項17】
抗癌剤を投与されていた、または投与されている対象に、細胞表面に曝露されたプレクチン1、および配列番号2と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を伴うペプチドと特異的に結合する抗体、またはその抗体フラグメントを投与することを含む、前記対象における癌を処置することのための、前記抗体またはその抗原結合フラグメント、および前記抗癌剤を含む組成物であって、ここで
前記抗体またはその抗原結合フラグメントと前記抗癌剤は結合されてなく、ここで
抗体またはその抗原結合フラグメントが、6つの相補性決定領域(CDR)、すなわちCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含み、
ここで
(a)CDRH1は、配列番号17として記載される配列を含み、CDRH2は、配列番号19として記載される配列を含み、CDRH3は、配列番号21として記載される配列を含み、CDRL1は、配列番号39として記載される配列を含み、CDRL2は、配列番号41として記載される配列を含み、およびCDRL3は、配列番号43として記載される配列を含み、または
(b)CDRH1は、配列番号61として記載される配列を含み、CDRH2は、配列番号63として記載される配列を含み、CDRH3は、配列番号65として記載される配列を含み、CDRL1は、配列番号83として記載される配列を含み、CDRL2は、配列番号85として記載される配列を含み、およびCDRL3は、配列番号87として記載される配列を含む、前記組成物
【請求項18】
抗癌剤が、化学療法剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
化学療法剤が、ゲムシタビンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
抗体またはその抗原結合フラグメントが、以下に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、請求項19に記載の組成物:
(a)それぞれ配列番号23および45;または
(b)それぞれ配列番号67および89。
【請求項21】
細胞表面に曝露されたプレクチン1、および配列番号2と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を伴うペプチドと特異的に結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントを投与されていた、または投与されている対象に、抗癌剤を投与することを含む、前記抗体、またはその抗原結合フラグメントを前記対象における癌を処置することのための、前記抗体またはその抗原結合フラグメント、および前記抗癌剤を含む組成物であって、ここで
前記抗体またはその抗原結合フラグメントと前記抗癌剤は結合されていなく、ここで
抗体またはその抗原結合フラグメントが、6つの相補性決定領域(CDR)、すなわちCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含み、
ここで
(a)CDRH1は、配列番号17として記載される配列を含み、CDRH2は、配列番号19として記載される配列を含み、CDRH3は、配列番号21として記載される配列を含み、CDRL1は、配列番号39として記載される配列を含み、CDRL2は、配列番号41として記載される配列を含み、およびCDRL3は、配列番号43として記載される配列を含み、または
(b)CDRH1は、配列番号61として記載される配列を含み、CDRH2は、配列番号63として記載される配列を含み、CDRH3は、配列番号65として記載される配列を含み、CDRL1は、配列番号83として記載される配列を含み、CDRL2は、配列番号85として記載される配列を含み、およびCDRL3は、配列番号87として記載される配列を含む、前記組成物
【請求項22】
抗癌剤が、化学療法剤である、請求項2に記載の組成物。
【請求項23】
化学療法剤が、ゲムシタビンである、請求項2に記載の組成物。
【請求項24】
抗体またはその抗原結合フラグメントが、以下に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、請求項2に記載の組成物:
(a)それぞれ配列番号23および45;または
(b)それぞれ配列番号67および89。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、「PLECTIN-1 BINDING ANTIBODIES AND USES THEREOF」と題された、2017年10月11日付で出願された、米国仮特許出願番号第62/571,246号の出願時の35 U.S.C.第119条(e)に基づく優先権を主張し、その内容全体は参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
膵管腺癌(PDAC)は、死を導く急速な臨床経過を示す、米国における癌による死亡の第4の主な原因である。診断されると、PDACは、生存期間中央値6ヶ月および5年生存率3パーセントのみである(Liら、Lancet 363:1049~1057頁(2004年))。
【0003】
化学療法および放射線療法は、中程度の長所のみを有するので、外科手術は、患者の20%のみにおいて可能であり、外科的切除が可能な早期発見が、より長期的な生存の最大の希望を与える(Yeoら、Ann Surg 222:580~588頁(1995年);考察588~592頁)。実際、PDACまたはハイリスク患者群(例えば、遺伝性癌症候群、慢性膵炎、および新規発症糖尿病)における高悪性の前兆の検出および処置は、癌診断ポートフォリオにおける重大な、満たされていない要求を示す(Brentnallら、Ann.Intern.Med、131:247~255頁(1999年);Cantoら、Clin.Gastroenterol.Hepatol、2:606~621頁(2004年))。
【発明の概要】
【0004】
いくつかの態様において、本開示は、ある種の癌(例えば、膵臓癌、卵巣癌など)を処置するのに有用な組成物および方法に関する。本開示は、一部、一緒に(例えば、相乗的に)作用して、癌細胞成長を阻害する、単一組成物としてまたは別々に投与される、抗プレクチン1抗体と抗癌剤(例えば、ゲムシタビン、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)などのような、小分子)の組み合わせに基づく。いくつかの実施形態において、組み合わせを処方して、抗体薬物複合体(ADC)を製造する。
【0005】
本開示の態様は、細胞(例えば、癌細胞)の表面に曝露されるプレクチン1に特異的に結合するプレクチン1抗体に基づく。従って、いくつかの態様において、本開示は、癌細胞の表面に曝露されるプレクチン1に特異的に結合する抗体;および1種または複数の抗癌剤を含む組成物を提供し、抗体と抗癌剤は、結合されていない。
【0006】
いくつかの態様において、本開示は、配列番号2と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列(例えば、配列番号2と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列)に特異的に結合する抗体または抗原結合フラグメント;および抗癌剤を含む組成物を提供し、抗体と抗癌剤は、結合されていない。いくつかの実施形態において、抗プレクチン1抗体および抗癌剤は、相乗的に作用する(例えば、Chou-Talalay法により測定される)。
【0007】
いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号23または配列番号67として記載される配列を有する重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号45または配列番号89として記載される配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、抗体は、配列番号23として記載される配列を有する重鎖可変領域および配列番号45として記載される配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、抗体は、配列番号67として記載される配列を有する重鎖可変領域および配列番号89として記載される配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合フラグメントは、細胞表面に曝露されたプレクチン1(例えば、細胞、例えば、癌細胞の表面上で発現するプレクチン1)に結合する。
【0011】
いくつかの実施形態において、抗癌剤は、アブラキサン(パクリタキセルアルブミン-安定化ナノ粒子製剤)、アドルシル(フルオロウラシル)、アフィニトール(エベロリムス)、エフデックス(フルオロウラシル)、塩酸エルロチニブ、エベロリムス、フルオロプレックス(フルオロウラシル)、フルオロウラシル、塩酸ゲムシタビン、ジェムザール(塩酸ゲムシタビン)、マイトマイシンC、マイトザイトレックス(マイトマイシンC)、ムタマイシン(マイトマイシンC)、パクリタキセルアルブミン-安定化ナノ粒子製剤、リンゴ酸スニチニブ、スーテント(リンゴ酸スニチニブ)、およびタルセバ(塩酸エルロチニブ)、アルトレタミン、アルケラン(メルファラン)、アバスチン(ベバシズマブ)、ベバシズマブ、カルボプラチン、クレード(シクロホスファミド)、シスプラチン、シクロホスファミド、シトキサン(シクロホスファミド)、塩酸ドキソルビシン、Dox-SL(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、DOXIL(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、ドキソルビシン塩酸塩リポソーム、エバセット(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、塩酸ゲムシタビン、ジェムザール(塩酸ゲムシタビン)、ハイカムチン(塩酸トポテカン)、LipoDox(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、リムパーザ(オラパリブ)、メルファラン、ネオザール(シクロホスファミド)、トシル酸ニラパリブ一水和物、オラパリブ、パクリタキセル、パラプラット(カルボプラチン)、パラプラチン(カルボプラチン)、プラチノール(シスプラチン)、プラチノール-AQ(シスプラチン)、ルブラカ(ルカパリブカンシル酸塩)、ルカパリブカンシル酸塩、タクソール(パクリタキセル)、チオテパ、塩酸トポテカン、ならびにゼジュラ(トシル酸ニラパリブ一水和物)からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、抗癌剤は、ゲムシタビン(gem)またはシスプラチンである。
【0012】
いくつかの態様において、本開示は、1種または複数の抗癌剤分子(例えば、2~100種の抗癌剤分子)に結合した細胞(例えば、癌細胞)の表面に曝露されたプレクチン1に特異的に結合する抗体または抗原結合フラグメントを含む抗体薬物複合体(ADC)を提供する。
【0013】
いくつかの態様において、本開示は、1種または複数の抗癌剤分子(例えば、2~100種の抗癌剤分子)に結合した配列番号2と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列(例えば、配列番号2と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列)に特異的に結合する抗体または抗原結合フラグメントを含む抗体薬物複合体(ADC)を提供する。
【0014】
いくつかの実施形態において、1種または複数の抗癌剤分子は、抗体または抗原結合フラグメントに直接結合する。
【0015】
いくつかの実施形態において、1種または複数の抗癌剤分子は、リンカー、例えば、フォトリンカーまたは可動性アミノ酸配列リンカーを介して抗体または抗原結合フラグメントに間接的に結合する。
【0016】
いくつかの実施形態において、2、3、4、または5種の抗癌剤分子は、抗体または抗原結合フラグメントに結合する。
【0017】
いくつかの実施形態において、抗癌剤分子は、オーリスタチンまたはピロロベンゾジアゼピン(PBD)である。いくつかの実施形態において、PBD分子は、PBDダイマーである。
【0018】
いくつかの態様において、本開示は、癌を処置する方法であって、癌を有する対象に配列番号2と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列に特異的に結合する有効量の抗体または抗原結合フラグメント、および抗癌剤を投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、対象は、哺乳類、例えば、ヒトである。
【0019】
本開示により記載される方法のいくつかの実施形態において、抗体または抗原結合フラグメントおよび抗癌剤は、一緒に(例えば、本明細書において記載される組成物またはADCとして)投与される。いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合フラグメントおよび抗癌剤は、対象に別々に投与される。
【0020】
いくつかの実施形態において、癌は、癌細胞の表面でのプレクチン1の発現により特徴付けられる。いくつかの実施形態において、癌は、卵巣癌、食道癌、頭頸部扁平上皮癌、または膵臓癌である。いくつかの実施形態において、膵臓癌は、膵管腺癌(PDAC)である。
【0021】
本開示により記載される方法のいくつかの実施形態において、抗体、抗癌剤、ADC、または組成物は、1ng/kg~100mg/kgの範囲の用量にて投与される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1A~1Bは、ヒト組換えタンパク質(図1A)およびヒト(YapCおよびL3.6pl)ならびにマウス(Han14.3)膵細胞株(図1B)における抗plec1抗体の親和性および特異性についての代表的なデータを示す。
図2図2A~2Cは、抗plec1抗体を用いたYapC細胞の処置を示す。図2Aは、G0およびG2成長停止における抗plec1結果を用いた細胞の処置を示す。図2Bは、YapC細胞についての抗plec1のEC50についての代表的なデータを示す。図2Cは、YapC微小管(上、左から右)およびアクチンマイクロフィラメント(下、左から右)に対する抗plec1処置の表現型作用を示す。
図3図3は、抗plec1のゲムシタビン(gem)との組み合わせは、癌細胞に対して相乗作用を有する。等モル濃度の抗plec1およびgemを、細胞と72時間インキュベーションした。インキュベーション後、細胞を処理した。併用療法は、IC50における20分の1の減少をもたらした。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示は、いくつかの態様において、ある種の癌(例えば、プレクチン1の表面発現により特徴付けられる癌)の処置のための組成物および方法に関する。プレクチン1は、卵巣、食道、および頭頸部扁平上皮細胞癌腫、ならびに膵管腺癌を含む、様々な癌についての有用なバイオマーカーである。ブレンツキシマブベドチンにより標的にされるCD30、およびアド-トラスツズマブエムタンシンにより標的にされるHer2のような、抗体標的と対照的に、プレクチン1は、ある種の癌細胞(例えば、膵管腺癌細胞、卵巣癌細胞など)において排他的に、細胞表面に存在し、これにより、精巧な特異性および選択性を生じるので、特に有用である。したがって、いくつかの実施形態において、本開示は、癌細胞の表面上のプレクチン1に特異的に結合する抗体および抗原結合フラグメント、ならびにその使用方法に関する。いくつかの実施形態において、本開示により記載される抗プレクチン1抗体のプレクチン1発現細胞への結合は、細胞の死を誘導する(例えば、アポトーシスの引き金をひく)。
【0024】
本開示は、一部、抗プレクチン1抗体と抗癌剤のある種の組み合わせが、別々の組成物としてまたは単一の組成物(例えば、抗プレクチン1抗体および抗癌剤、または本明細書において記載されるADCを含む組成物)として、一緒にデリバリーされたとき、癌細胞成長の増強された阻害を媒介する能力を有するという認識に基づく。
【0025】
プレクチン1に結合する抗体
本開示は、癌細胞の表面のプレクチン1に結合する抗体および抗原結合フラグメントを含む組成物(例えば、ADC)を提供する。本開示のモノクローナル抗体は、マウス、ヒト化もしくはキメラまたは他の形態であってもよい。本開示の抗体の詳細な説明は、本明細書において提供される。
【0026】
プレクチン1は、細胞骨格、細胞膜および核膜を固定することに加えて、中間フィラメントを微小管およびマイクロフィラメントに結びつける、高分子量のタンパク質(500kDa)である(Sonnenbergら、Exp Cell Res、313:2189~2203頁(2007年)において総説される)。
【0027】
一般に、プレクチン1レベルは、正常な膵管腺細胞において低いが、その発現は、ある種の癌を有する細胞(例えば、前駆膵上皮内腫瘍(PanIN)、膵管腺癌細胞(PDAC)、卵巣癌細胞など)においてアップレギュレーションされる。プレクチン1は、正常な線維芽細胞において異なる細胞質および核局在性を示し、一方、細胞膜における異常な発現は、ある種の癌を有する細胞(例えば、PDAC)において観察される。プレクチン1の変化した細胞内局在性はまた、自己免疫状態、腫瘍随伴性天疱瘡、および関連するリンパ増殖性腫瘍、キャッスルマン病において観察されている(Ahoら、J Invest Dermatol、113:422~423頁(1999年))。プレクチン1はまた、シグナル伝達において重要な役割を果たす。したがって、ある種の癌を有する細胞(例えば、前駆膵上皮内腫瘍(PanIN)、膵管腺癌細胞(PDAC)、卵巣癌細胞など)におけるプレクチン1は、発癌性と関連する細胞遊走、極性およびエネルギー代謝を調節するシグナル伝達経路に対する影響を有するかもしれない。したがって、いくつかの実施形態において、本開示は、癌細胞の表面上のプレクチン1に結合する抗体および抗原結合フラグメントを提供する。
【0028】
いくつかの実施形態において、免疫グロブリンとしても知られる抗体は、それぞれおよそ25kDaの2つの軽(L)鎖およびそれぞれおよそ50kDaの2つの重(H)鎖を含む、4量体のグリコシル化タンパク質である。ラムダおよびカッパーと呼ばれる、2つの種類の軽鎖が、抗体において見いだされ得る。重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンは、5つの主要なクラス:A、D、E、G、およびMに割り当てることができ、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgA、およびIgAにさらに分けられ得る。それぞれの軽鎖は、典型的には、N末端の可変(V)ドメイン(V)および定常(C)ドメイン(C)を含む。それぞれの重鎖は、典型的には、N末端のVドメイン(V)、3または4つのCドメイン(C1~3)、およびヒンジ領域を含む。Vに最も近いCドメインは、C1と呼ばれる。VおよびVドメインは、フレームワーク領域(FR1、FR2、FR3、およびFR4)と呼ばれる、比較的保存された配列の4つの領域からなり、高頻度可変配列(相補性決定領域、CDR)の3つの領域のためのスキャフォールドを形成する。CDRは、抗体の抗原との特異的な相互作用に関与する残基の大部分を含有する。CDRは、CDR1、CDR2、およびCDR3として言及される。したがって、重鎖上のCDR構成物は、CDRH1、CDRH2、およびCDRH3として言及され、一方、軽鎖上のCDR構成物は、CDRL1、CDRL2、およびCDRL3として言及される。CDRは、典型的には、Sequences of Proteins of Immunological Interest、US Department of Health and Human Services(1991年)、Kabatら編において記載される通り、カバットCDRと呼ぶ。抗原結合部位を特徴付けるための別のスタンダードは、Chothiaにより記載される高頻度可変ループを指すことである。例えば、Chothia、D.ら、(1992年)、J.Mol.Biol、227:799~817頁;およびTomlinsonら、(1995年)、EMBO J、14:4628~4638頁を参照のこと。なお別のスタンダードは、オクスフォードの分子AbM抗体モデリングソフトウエアにより使用されるAbM定義である。一般に、例えば、Protein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains、In: Antibody Engineering Lab Manual(編:Duebel, S、およびKontermann, R、Springer-Verlag、Heidelberg)を参照のこと。カバットCDRに関して記載される実施形態は、Chothia高頻度可変ループ、もしくはAbM規定ループ、またはこれらの方法のいずれかの組み合わせに関する同様の記載される関係性を使用して代わりに実行され得る。
【0029】
いくつかの実施形態において、本開示の抗プレクチン1抗体および抗体をコードする本開示の核酸分子は、以下の表1において示されるCDRアミノ酸および核酸配列を含む。
【0030】
【表1】
【0031】
いくつかの実施形態において、本開示の抗プレクチン1結合剤(例えば、抗プレクチン1抗体)は、表1において示される抗体の任意の1つについて提供される、CDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、もしくはCDRL3、またはその組み合わせを含む任意の抗体または抗原結合フラグメントを含む。いくつかの実施形態において、抗プレクチン1結合剤は、表1において示される抗体の任意の1つのCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含む。本開示はまた、表1において示される抗体の任意の1つについて提供される、CDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、またはCDRL3をコードする任意の核酸配列を含む。抗体重鎖および軽鎖CDR3ドメインは、抗原に対する抗体の結合特異性/親和性について特に重要な役割を果たし得る。したがって、本開示の抗プレクチン1抗体、またはその核酸分子は、表1において示される、または配列番号14、21、23、36、43、45、58、65、67、80、87もしくは89により記載される、抗体の重鎖および/または軽鎖CDR3を少なくとも含む。
【0032】
抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域についての完全なアミノ酸および核酸配列は、表2において挙げられる。
【0033】
【表2】
【0034】
いくつかの実施形態において、本開示の抗プレクチン抗体は、表1において示されるか、または本開示の配列表において記載される(例えば、配列番号14、23、36、45、58、67、80、または89)、重鎖可変ドメインもしくは軽鎖可変ドメインまたは両方を含む任意の抗体を含む。本開示はまた、表1において示されるか、または本開示の配列表において記載される(例えば、配列番号3、12、25、34、47、56、69、または78)、重鎖可変ドメインもしくは軽鎖可変ドメイン核酸配列、または両方を含む抗体をコードする任意の核酸分子を含む。
【0035】
本開示の抗プレクチン1抗体は、任意選択で、抗体定常領域またはその一部を含んでもよい。例えば、Vドメインは、CκまたはCλの様な軽鎖定常ドメインに対するそのC末端にて結合されてもよい。同様に、Vドメインまたはその一部は、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMの様な重鎖の全てまたは一部、ならびに任意のアイソタイプサブクラスに結合されてもよい。抗体は、適当な定常領域を含んでもよい(例えば、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、No.91~3242、National Institutes of Health Publications、Bethesda、Md、(1991年)を参照)。それ故、本開示の範囲内の抗体は、当該技術分野において公知の定常領域と組み合わされた、VおよびVドメイン、またはその抗原結合部分を含んでもよい。いくつかの実施形態において、本開示の抗プレクチン1抗体は、配列番号3、13、25、35、47、57、69、または79により表される配列を含む重鎖定常領域を含む。
【0036】
ある種の実施形態において、Vおよび/またはVドメインは、生殖系列配列に復帰されてもよく、例えば、これらのドメインのFRを、従来の分子生物学技術を使用して変異させて、生殖系列細胞により産生されるものと一致させる。他の実施形態において、FR配列は、共通生殖系列配列から逸脱したままである。
【0037】
いくつかの実施形態において、抗プレクチン1抗体または抗原結合フラグメントは、例えば、配列番号5、7、9、11、16、18、20、22、27、29、31、33、38、40、42、44、49、51、53、55、60、62、64、66、71、73、75、77、82、または84において記載される、抗体のフレームワーク領域を含んでもよいし、または含まなくてもよい。いくつかの実施形態において、抗プレクチン1抗体は、マウス抗体である。いくつかの実施形態において、抗プレクチン1抗体は、キメラまたはヒト化抗体である。
【0038】
いくつかの実施形態において、本開示は、抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域についてのアミノ酸および核酸配列のバリアント(例えば、相同体)を考慮することは、理解されるべきである。「相同性」は、2つのポリヌクレオチドまたは2つのポリペプチド部分の間のパーセント同一性を指す。核酸、またはそのフラグメントに言及するとき、用語「実質的な相同性」は、別の核酸(またはその相補鎖)と適切なヌクレオチド挿入または欠損を用いて最適に整列したとき、整列配列の約90~100%のヌクレオチド配列同一性が存在することを示す。例えば、いくつかの実施形態において、実質的な相同性を共有する核酸配列は、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性である。ポリペプチド、またはそのフラグメントに言及するとき、用語「実質的な相同性」は、別のポリペプチドと適切なギャップ、挿入または欠損を用いて最適に整列したとき、整列配列の約90~100%のヌクレオチド配列同一性が存在する。用語「高度に保存された」は、少なくとも80%の同一性、好ましくは、少なくとも90%の同一性、より好ましくは、97%より高い同一性を意味する。例えば、いくつかの実施形態において、高度に保存されたタンパク質は、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性を共有する。ある場合では、高度に保存されたは、100%の同一性を指してもよい。同一性は、例えば、当業者により公知のアルゴリズムおよびコンピュータープログラムの使用により、当業者により容易に決定される。
【0039】
いくつかの実施形態において、本開示の抗プレクチン1抗体は、高い親和性、例えば、Kd10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M以下でプレクチン1に結合することができる。例えば、抗プレクチン1抗体またはその抗原結合フラグメントは、親和性5pM~500nM、例えば、50pM~100nM、例えば、500pM~50nMでプレクチン1に結合することができる。本開示はまた、プレクチン1への結合について本明細書において記載される抗体のいずれかと競合し、親和性50nM以下(例えば、20nM以下、10nM以下、500pM以下、50pM以下、または5pM以下)を有する抗体または抗原結合フラグメントを含む。抗プレクチン1抗体の親和性および結合動態は、バイオセンサーテクノロジー(例えば、OCTETまたはBIACORE)を含むが、これに限定されない、当該技術分野において公知の任意の方法を使用して試験することができる。
【0040】
本明細書において使用される、用語「抗体」は、一般に、免疫グロブリンを指す。特定の結合能を維持するか、または有する、その全ての誘導体はまた、本明細書において提供される。抗体調製物は、モノクローナルまたはポリクローナルであってもよい。
【0041】
本明細書において使用される、用語「抗体フラグメント」または「抗原結合フラグメント」は、全長未満である、抗体の任意の誘導体を指す。一般に、抗原結合フラグメントは、全長抗体の特定の結合能の有意な部分を少なくとも保持する。抗原結合フラグメントの例は、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、Fv、dsFv二重特異性抗体、アフィボディ、およびFdフラグメントを含むが、これらに限定されない。抗原結合フラグメントは、任意の適切な手段により製造されてもよい。例えば、抗原結合フラグメントは、インタクトな抗体の断片化により酵素的または化学的に製造されてもよいか、またはそれは、親抗体配列をコードする遺伝子から組換え的に製造されてもよい。あるいは、抗原結合フラグメントは、全体的または部分的に合成で製造されてもよい。抗原結合フラグメントは、場合により、1本鎖抗体フラグメントであってもよい。あるいは、フラグメントは、例えば、ジスルフィド結合により、一緒に結合している、複数の鎖を含んでもよい。抗原結合フラグメントはまた、場合により、多分子複合体であってもよい。機能的抗原結合フラグメントは、典型的には、少なくとも約50個のアミノ酸を含み、より典型的には、少なくとも約200個のアミノ酸を含む。
【0042】
1本鎖Fv(scFv)は、ポリペプチドリンカーにより互いに共有結合した、可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)のみからなる組換え抗原結合フラグメントである。VLまたはVHのいずれかは、NH2末端のドメインであってもよい。ポリペプチドリンカーは、2つの可変ドメインが、重大な立体障害なく架橋される限り、可変の長さおよび組成のものであり得る。典型的には、リンカーは、溶解性のため分散したいくつかのグルタミン酸またはリジン残基と共に、グリシンおよびセリン残基のひと続きから主に構成される。
【0043】
二重特異性抗体は、ダイマーscFvである。二重特異性抗体の成分は、典型的には、大抵のscFvより短いペプチドリンカーを有し、それらは、ダイマーとしての結合を好む。
【0044】
Fvフラグメントは、非共有相互作用により一緒に保持される1つのVHおよび1つのVLドメインからなる、抗原結合フラグメントである。用語、dsFvを本明細書において使用して、VH-VL対を安定化させるための操作された分子間ジスルフィド結合を含むFvを指す。
【0045】
F(ab’)2フラグメントは、pH4.0~4.5での酵素ペプシンを用いた切断により、免疫グロブリン(典型的には、IgG)から得られるものと本質的に等しい抗原結合フラグメントである。フラグメントは、組換え的に製造されてもよい。
【0046】
Fabフラグメントは、F(ab’)2フラグメントにおける2つの重鎖片を結合するジスルフィド架橋または複数のジスルフィド架橋の還元により得られるものと本質的に等しい抗原結合フラグメントである。Fab’フラグメントは、組換え的に製造されてもよい。
【0047】
Fabフラグメントは、酵素パパインを用いた免疫グロブリン(典型的には、IgG)の消化により得られるものと本質的に等しい抗原結合フラグメントである。Fabフラグメントは、組換え的に製造されてもよい。Fabフラグメントの重鎖セグメントは、Fd片である。
【0048】
アフィボディは、抗原結合分子(例えば、抗体模倣物)として機能する3ヘリックスバンドルを含む、小タンパク質である。一般に、アフィボディは、およそ58アミノ酸長であり、モル質量およそ6kDaを有する。固有の結合特性を有するアフィボディ分子は、親タンパク質ドメインの結合活性に関与する2つのアルファ-ヘリックスに位置する13個のアミノ酸の無作為化により取得される。所望の標的タンパク質に結合する特定のアフィボディ分子は、ファージディスプレイのような方法を使用して、何十億個の異なるバリアントを含有するプール(ライブラリー)から単離することができる。
【0049】
抗体薬物複合体(ADC)
本開示のいくつかの態様は、プレクチン1を標的とする抗体薬物複合体に関する。本明細書において使用される、「抗体薬物複合体」または「ADC」は、1種または複数の標的化分子(例えば、治療分子、および/または検出可能な標識のような、生物学的に活性な分子)に結合した、抗体、または抗原結合フラグメントを含む分子を指す。したがって、いくつかの実施形態において、本開示の抗体または抗原結合フラグメントは、治療剤を用いて修飾されてもよい。本明細書において使用される、用語「治療剤」は、細胞機能を阻害するか、細胞複製を阻害するか、または哺乳類細胞、好ましくは、ヒト細胞、より好ましくは、ヒト癌細胞を殺傷することができる化学物質または薬物またはタンパク質を指す。治療剤の例は、細胞傷害部分、ラジオアイソトープ、植物、真菌、もしくは細菌起源の分子(例えば、植物由来の毒素(例えば、二次代謝産物)、グリコシド、抗微生物化合物(例えば、ストレプトマイシン、ペニシリンなど)、生物学的タンパク質(例えば、タンパク質毒素)、粒子(例えば、組換えウイルス粒子、例えば、ウイルスコートタンパク質を介して))、またはその混合物を含むが、これらに限定されない。治療剤は、例えば、短期間の高エネルギーのアルファ-エミッタ(例えば、131I)を含む、短期間の放射線エミッタのような、細胞内活性薬物または他の剤であり得る。
【0050】
いくつかの実施形態において、治療剤は、抗癌剤である。用語「抗癌剤」は、癌細胞機能を阻害するか、癌細胞成長または複製を阻害するか、または癌細胞を殺傷することができる、化学物質または薬物またはタンパク質を指す。いくつかの実施形態において、抗癌剤は、癌の処置のための、米国食品医薬品局(FDA)により承認されている、化学物質または薬物またはタンパク質である。抗癌剤の例は、アブラキサン(パクリタキセルアルブミン-安定化ナノ粒子製剤)、アドルシル(フルオロウラシル)、アフィニトール(エベロリムス)、エフデックス(フルオロウラシル)、塩酸エルロチニブ、エベロリムス、フルオロプレックス(フルオロウラシル)、フルオロウラシル、塩酸ゲムシタビン、ジェムザール(塩酸ゲムシタビン)、マイトマイシンC、マイトザイトレックス(マイトマイシンC)、ムタマイシン(マイトマイシンC)、パクリタキセルアルブミン-安定化ナノ粒子製剤、リンゴ酸スニチニブ、スーテント(リンゴ酸スニチニブ)、およびタルセバ(塩酸エルロチニブ)、アルトレタミン、アルケラン(メルファラン)、アバスチン(ベバシズマブ)、ベバシズマブ、カルボプラチン、クレード(シクロホスファミド)、シスプラチン、シクロホスファミド、シトキサン(シクロホスファミド)、塩酸ドキソルビシン、Dox-SL(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、DOXIL(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、ドキソルビシン塩酸塩リポソーム、エバセット(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、塩酸ゲムシタビン、ジェムザール(塩酸ゲムシタビン)、ハイカムチン(塩酸トポテカン)、LipoDox(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、リムパーザ(オラパリブ)、メルファラン、ネオザール(シクロホスファミド)、トシル酸ニラパリブ一水和物、オラパリブ、パクリタキセル、パラプラット(カルボプラチン)、パラプラチン(カルボプラチン)、プラチノール(シスプラチン)、プラチノール-AQ(シスプラチン)、ルブラカ(ルカパリブカンシル酸塩)、ルカパリブカンシル酸塩、タキソール(パクリタキセル)、チオテパ、塩酸トポテカン、ならびにゼジュラ(トシル酸ニラパリブ一水和物)を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、抗癌剤は、ゲムシタビン(gem)またはシスプラチンである。
【0051】
いくつかの実施形態において、抗癌剤は、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)である。一般に、PDBは、例えば、Antonow Dら、(2011年)、Chem Rev 111:2815~2864頁;Cipollaら、(2009年)、Anticancer Agents Med Chem、9:1~31頁;およびGerratana、(2012年)、Med Res Rev 32:254~293頁により記載される、配列特異的様式でDNA副溝に結合する、1つのクラスのダイマー架橋剤である。
【0052】
いくつかの実施形態において、治療剤(例えば、抗癌剤)は、免疫調節部分(例えば、免疫調節剤)である。本明細書において使用される、「免疫調節剤」は、剤に応答して対象の免疫応答を増大させるか、または減少させる化合物または分子を指す。例えば、免疫調節剤は、対象の腫瘍に対する免疫応答を増強し得る、例えば、インターロイキン-1(IL-1)、および腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)のような炎症性サイトカインのレベルを増大させ得る。対象の免疫応答を増大させる免疫調節剤の例は、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インターフェロン、イミキモド、細菌由来の細胞膜画分、ある種のインターロイキンおよびサイトカイン(例えば、IL-1β、IL-6、およびTNF-α)、ならびに免疫チェックポイント阻害剤(例えば、PD-1阻害剤、PD1-L阻害剤など)を含む。いくつかの実施形態において、免疫調節剤は、対象の免疫応答を減少させ得る(例えば、免疫抑制を仲介するかまたは達成する)。免疫抑制性の免疫調節物質の例は、免疫抑制薬物(例えば、グルココルチコイド、細胞分裂阻害薬、抗炎症性モノクローナル抗体(例えば、抗IL-2受容体抗体))、および薬物標的イムノフィリン(例えば、シクロスポリン、シロリムスなど)を含むが、これらに限定されない。
【0053】
1種または複数の治療剤(例えば、抗癌剤)は、当該技術分野において公知の技術を使用して、中間体(例えば、当該技術分野に公知のリンカー)を通じて、本開示の抗プレクチン1抗体に直接的または間接的に結合するか、または共役されてもよい。いくつかの実施形態において、複数(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10種以上)の治療剤(例えば、抗癌剤分子)は、抗プレクチン1抗体に結合するか、または共役される。例えば、いくつかの実施形態において、ADCは、抗プレクチン1抗体に共役された1、2、3、4、または5種のPDB分子(例えば、PDBダイマー、トリマーなど)を含む。
【0054】
いくつかの実施形態において、抗体は、リンカーを介して標的化された剤に結合される。本明細書において使用される、用語「リンカー」は、架橋のように、一方の分子または配列を別の分子または配列に結び付ける、アミノ酸配列のような、分子または配列を指す。「結び付けられた」、「共役された」、または「結合した」は、共有結合、または非共有結合、またはファンデルワールス力のような、他の結合により接合されるか、または結合されることを意味する。本開示により記載される抗体は、例えば、タンパク質もしくはペプチド検出可能な部分との融合タンパク質(任意選択の結合配列、例えば、可動性リンカー配列を含むか、または含まない)として、または化学共役部分を介して直接的に標的化剤(例えば、治療部分または検出可能な部分)に結び付けられ得る。多数のかかる共役部分は、当該技術分野において公知であり、例えば、国際特許出願公開第2009/036092号において記載される、例えば、ペプチドリンカーまたは化学リンカーである。いくつかの実施形態において、リンカーは、可動性アミノ酸配列である。可動性アミノ酸配列の例は、2個以上のグリシン残基(例えば、GGGS;配列番号91)のひと続きを含む、グリシンおよびセリンリッチなリンカーを含む。いくつかの実施形態において、リンカーは、フォトリンカーである。フォトリンカーの例は、ケチル反応性ベンゾフェノン(BP)、アントラキノン(AQ)、ニトレン反応性ニトロフェニルアジド(NPA)、およびカルベン反応性フェニル-(トリフルオロメチル)ジアジリン(PTD)を含む。
【0055】
医薬組成物
いくつかの態様において、本開示は、抗プレクチン1抗体を含む医薬組成物(例えば、抗プレクチン1抗体を含むADC)に関する。いくつかの実施形態において、組成物は、抗プレクチン1抗体、抗癌剤、および医薬的に許容される担体を含む。本開示の組成物における抗プレクチン1抗体の抗癌剤に対する比(例えば、濃度比)は、変動することができる。いくつかの実施形態において、抗プレクチン1抗体の抗癌剤に対する比は、約1:100~約100:1の範囲にあり、例えば、その間の任意の比である。いくつかの実施形態において、抗プレクチン1抗体の抗癌剤に対する比(例えば、濃度比)は、約1:1である。
【0056】
本明細書において使用される、用語「医薬的に許容される担体」は、医薬投与と適合可能な、任意および全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌および抗真菌剤、等調および吸収遅延剤などを含むことが意図される。医薬的に有効な物質のためのかかる媒体および剤の使用は、当該技術分野において周知である。任意の従来の媒体または剤が、有効な化合物と適合しない程度または範囲を除き、組成物におけるその使用が考慮される。補足の有効な化合物はまた、組成物に取り込まれ得る。医薬組成物は、以下で記載される通り、調製することができる。有効成分は、任意の従来の医薬的に許容される担体または賦形剤と混合されるか、または配合されてもよい。組成物は、無菌であってもよい。
【0057】
典型的には、医薬組成物は、有効量の剤をデリバリーするため製剤化される(例えば、抗プレクチン1抗体を含む組成物、または抗プレクチン1抗体と抗癌剤を含む抗体薬物複合体)。一般に、「有効量」の有効な剤は、所望される生物学的応答(例えば、癌性細胞の殺傷または腫瘍成長の抑制)を誘発するのに十分な量を指す。有効量の剤は、所望される生物学的エンドポイント、化合物の薬物動態、処置されている疾患(例えば、プレクチン1の表面発現により特徴付けられるある種の癌)、投与様式、および患者のような要因に依存して変動し得る。
【0058】
組成物は、その投与が、レシピエント患者により許容され得るなら、「医薬的に許容される担体」であると言われる。無菌のリン酸緩衝食塩水は、医薬的に許容される担体の一例である。他の適当な担体は、当該技術分野において周知である。例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES、第18編、(1990年)を参照のこと。
【0059】
便宜的に利用され、有効な剤に関して不活性である、任意の投与様式、ビークルまたは担体が、本開示の組成物を調製し、投与するために利用され得ることは、当業者に理解される。かかる方法、ビークルおよび担体の説明は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第4編、(1970年)において記載されるものであり、その開示は、参照により本明細書に取り込まれる。本開示の原理にさらされている当業者は、適当および適切なビークル、賦形剤ならびに担体を決定するか、または活性な剤をそれらと配合して、本開示の医薬組成物を形成させる際において困難さを経験しない。
【0060】
化合物(例えば、抗プレクチン1抗体または抗プレクチン1抗体および標的化された剤を含む抗体薬物複合体)の、治療上有効量としても言及される、有効量は、癌と関連する少なくとも1つの副作用(例えば、腫瘍成長、転移)を改善するのに十分な量である。医薬組成物において含まれるべき治療上有効量は、それぞれの場合において、いくつかの要因、例えば、処置されるべき患者のタイプ、大きさおよび状態、意図される投与様式、意図される剤形を取り込む患者の能力などに依存する。一般に、活性な剤の量は、約0.1~約250mg/kg、好ましくは、約0.1~約100mg/kgをもたらすようにそれぞれの剤形において含まれる。当業者は、経験的に適切な治療上有効量を決定することができる。
【0061】
様々な有効な化合物から選択すること、および効力、相対的バイオアベイラビリティ、患者の体重、重大な副作用の重症度および選択された投与様式のような要因をはかることにより、本明細書において提供される教示と組み合わせて、実質的な毒性を引き起こさず、依然として特定の対象を処置するのに全体的に有効である、有効な予防または治療処置計画を計画することができる。任意の特定の適用の有効量は、処置されている疾患もしくは状態、投与されている特定の治療剤、対象の大きさ、または疾患もしくは状態の重症度のような要因に依存して変動し得る。当業者は、過度の実験を必要とすることなく、特定の核酸および/または他の治療剤の有効量を経験的に決定することができる。
【0062】
いくつかの場合では、本開示の化合物は、コロイド分散系において調製される。コロイド分散系は、水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む、脂質ベースの系を含む。いくつかの実施形態において、本開示のコロイド系は、リポソームである。リポソームは、インビボまたはインビトロでのデリバリーベクターとして有用である、人工メンブレンベシクルである。サイズ0.2~4.0μmの範囲にある、大単ラメラ小胞(LUV)が、巨大な高分子をカプセル化することができることが、示されている。
【0063】
リポソームは、リポソームをモノクローナル抗体、糖、糖脂質、またはタンパク質のような特定のリガンドに結合させることにより、特定の組織に標的化されてもよい。リポソームを、例えば、平滑筋細胞に標的化するのに有用であり得るリガンドは、癌細胞の細胞表面マーカーと相互作用する抗体のような、平滑筋細胞特異的な受容体および分子と相互作用する分子のインタクトまたはフラグメントを含むが、これらに限定されない。かかるリガンドは、当業者に周知の結合アッセイにより容易に同定され得る。さらに他の実施形態において、リポソームは、それを当該技術分野において公知の抗体に結合させることにより、組織に標的化されてもよい。
【0064】
本開示により記載される化合物は、単独(例えば、食塩水もしくは緩衝液中)または当該技術分野において公知の任意のデリバリービークルを使用して投与されてもよい。例えば、次のデリバリービークル:コクリエート;エマルソーム;ISCOM;リポソーム;生きた細菌ベクター(例えば、サルモネラ、大腸菌、無菌化ウシ型結核菌、シゲラ、ラクトバチルス);生きたウイルスベクター(例えば、ワクシニア、アデノウイルス、単純ヘルペス);微粒子;核酸ワクチン;ポリマー(例えば、カルボキシメチルセルロース、キトサン);ポリマー環;プロテオソーム;フッ化ナトリウム;遺伝子導入植物;ビロソーム;およびウイルス様粒子が記載されている。
【0065】
本開示の製剤は、医薬的に許容される濃度の塩、緩衝剤、保存剤、適合可能な担体、アジュバント、および場合により、他の治療成分を常に含有し得る、医薬的に許容される溶液において投与される。
【0066】
用語、医薬的に許容される担体は、ヒトまたは他の脊椎動物への投与に適当である、1種もしくは複数の適合可能な固体または液体充填剤、希釈剤あるいはカプセル化物質を意味する。用語、担体は、有効成分と組み合わされて、適用を促進する、天然もしくは合成の、有機もしくは無機の成分を示す。医薬組成物の成分はまた、所望される医薬効率を実質的に損なう相互作用が存在しないような方法で、互いに、本開示の化合物と混合される能力がある。
【0067】
糖衣錠コアは、適当なコーティングと共に提供される。この目的のため、濃縮糖溶液が使用されてもよく、それは、場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、ならびに適当な有機溶媒または溶媒混合物を含有する。染料または含量を、同定のため、または有効な化合物用量の異なる組み合わせを特徴付けるために、錠剤または糖衣錠コーティングに加えてもよい。
【0068】
本明細書において記載される製剤に加えて、化合物はまた、デポ製剤として製剤化されてもよい。かかる長期作用製剤は、適当なポリマーまたは疎水性物質と共に(例えば、許容可能な油中のエマルジョンとして)もしくはイオン交換樹脂と共に、または難溶性の誘導体として、例えば、難溶性の塩として製剤化されてもよい。
【0069】
医薬組成物はまた、適当な固体もしくはゲルフェーズの担体または賦形剤を含んでもよい。かかる担体または賦形剤の例は、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコールのようなポリマーを含むが、これらに限定されない。
【0070】
適当な液体または固体医薬調製物形態は、例えば、吸入用水溶液または食塩水、マイクロカプセル化されるか、渦巻き状にされるか、顕微鏡的金色粒子にコーティングされるか、リポソームにおいて含有されるか、噴霧されるか、エアロゾル、皮膚への移植用ペレットであるか、または皮膚をひっかくために鋭い物体上に乾燥される。医薬組成物はまた、顆粒剤、粉剤、錠剤、被覆錠剤、(マイクロ)カプセル剤、座薬、シロップ、エマルジョン、懸濁液、クリーム剤、ドロップまたは有効な化合物の保護された放出を有する調製物を含み、調製物の賦形剤および添加物ならびに/または崩壊剤、結合剤、コーティング剤、膨潤剤、滑沢剤、芳香剤、甘味剤もしくは溶解剤のような補助剤が、上で記載される通り、習慣的に使用される。医薬組成物は、様々な薬物デリバリーシステムにおける使用に適当である。薬物デリバリーの方法の簡単な概説について、Langer R、(1990年)、Science、249:1527~1533頁を参照し、それは、参照により本明細書に取り込まれる。
【0071】
化合物は、それ自体(正味)、または医薬的に許容される塩の形態で投与されてもよい。医薬において使用されるとき、塩は、医薬的に許容されるべきであるが、非医薬的に許容される塩を便宜的に使用して、その医薬的に許容される塩を調製してもよい。かかる塩は、次の酸:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p-トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン-2-スルホン酸、およびベンゼンスルホン酸から調製されるものを含むが、これらに限定されない。また、かかる塩は、カルボン酸基の、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、例えば、ナトリウム、カリウムまたはカルシウム塩として調製することができる。
【0072】
適当な緩衝剤は、酢酸および塩(1~2%w/v);クエン酸および塩(1~3%w/v);ホウ酸および塩(0.5~2.5%w/v);ならびにリン酸および塩(0.8~2%w/v)を含む。適当な保存剤は、塩化ベンザルコニウム(0.003~0.03%w/v);クロロブタノール(0.3~0.9%w/v);パラベン(0.01~0.25%w/v)およびチメロサール(0.004~0.02%w/v)を含む。
【0073】
組成物は、便宜上、単位投薬形態で提示されてもよく、薬局の当該技術分野において周知の任意の方法により調製されてもよい。全ての方法は、化合物を、1種または複数のアクセサリー成分を構成する担体と関連させる工程を含む。一般に、組成物は、化合物を、液体担体と均一または親密に関連させ、細かく固体担体に分け、次に、必要に応じて、製品を形作ることにより調製される。液体用量単位は、バイアルまたはアンプル剤である。固体用量担体は、錠剤、カプセル剤および座薬である。
【0074】
処置方法
本開示の態様は、一緒に作用して(例えば、相乗的に)、ある種の癌細胞の成長を阻害する、単一組成物としてまたは別々に投与される、抗プレクチン1抗体と抗癌剤の組み合わせに関する。相乗作用を測定する方法は、知られており、例えば、Chou、(2010年)、Cancer Res、70(2):440~6頁により記載される。いくつかの実施形態において、抗プレクチン1抗体と1種または複数の抗癌剤の組み合わせは、細胞(例えば、癌細胞)の成長を、抗体または抗癌剤単独より2倍~100倍(例えば、2倍、4倍、5倍、10倍、20倍、25倍、50倍、75倍など)阻害する。いくつかの実施形態において、抗プレクチン1抗体と1種または複数の抗癌剤の組み合わせは、細胞(例えば、癌細胞)の成長を、抗体または抗癌剤単独より100倍より高く阻害する。
【0075】
任意の特定の理論により束縛されるものではないが、本開示により記載される組成物およびADCは、いくつかの実施形態において、プレクチン1の表面発現により特徴付けられる癌を処置するのに有用である。本明細書において使用される、「癌を処置すること」は、患者における癌細胞の数を減少すること、患者における癌細胞の成長を遅延させること、患者における癌細胞の維持を低減することを指し、癌の症状を和らげるか、または患者の寿命を増大させるための任意のタイプの応答を含む。
【0076】
プレクチン1の表面発現により特徴付けられる癌の例は、卵巣癌細胞、食道癌細胞、頭頸部扁平上皮癌細胞、または膵臓癌細胞(例えば、膵管腺癌(PDAC))を含むが、これらに限定されない。しかしながら、他の癌(例えば、肺癌、膀胱癌、乳癌、食道癌、口腔癌、舌癌、歯肉癌、皮膚癌(例えば、メラノーマ、基底細胞癌、カポジ肉腫など)、筋肉の癌、心臓癌、肝臓癌、気管支癌、軟骨癌、骨の癌、胃癌、前立腺癌、精巣癌、子宮頸部癌、子宮内膜癌、子宮癌、大腸癌、結腸直腸癌、胃癌、腎臓癌、膀胱癌、リンパ腫癌、脾臓癌、胸腺癌、甲状腺癌、脳の癌、神経の癌、中皮腫、胆嚢癌、眼の癌(例えば、角膜の癌、ぶどう膜の癌、脈絡膜の癌、斑の癌、硝子体液の癌など)、関節の癌(例えば、滑膜の癌)、神経膠芽腫、白血球細胞癌(例えば、リンパ腫、白血病など)、遺伝性非ポリポーシス癌(HNPC)、大腸炎関連癌など)が、プレクチン1の表面発現により特徴付けられ、および/または本開示により記載される組成物およびADCを使用して処置され得ることは、理解されるべきである。肉腫(例えば、骨肉腫およびカポジ肉腫)によりさらに例示される癌は、いくつかの実施形態において、本開示により記載される組成物およびADCを使用して処置され得る。
【0077】
いくつかの態様において、本開示は、癌を処置する方法であって、癌を有する対象に、本開示により記載される有効量の組成物またはADC(例えば、抗プレクチン1抗体と抗癌剤を含む組成物またはADC)を投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、対象は、哺乳類である。ある実施形態において、対象はヒトである。
【0078】
一般に、本開示の抗体および医薬組成物は、好ましくは、錠剤、カプセル剤もしくはピル剤として経口投与される、あるいは非経口、静脈内、皮内、筋肉内もしくは皮下、または経皮投与される、化合物または混合物を与えるのに適当な、医薬的に許容される担体または賦形剤を含有する。
【0079】
医薬組成物および/またはADCは、医薬の投与に適当な任意の経路により投与され得る。様々な投与経路が、利用可能である。選択される特定の様式は、大抵、選択される特定の剤または複数の特定の剤、処置されている特定の状態、および治療有効性に要求される投薬量に依存する。本開示の方法は、一般的に言うと、臨床上許容できない副作用を引き起こすことなく、治療効果を生じる任意の様式を意味する、医薬上許容される任意の投与様式を使用して実行され得る。様々な投与様式が、本明細書において考察される。治療における使用のため、有効量の抗プレクチン1抗体および/または他の治療剤は、剤を所望される表面、例えば、粘膜、全身にデリバリーする任意の様式により対象に投与することができる。
【0080】
本開示の医薬組成物の投与は、当業者に公知の任意の手段により成し遂げられ得る。投与経路は、経口、非経口、静脈内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、舌下、気管内、吸入、皮下、眼、膣、および直腸を含むが、これらに限定されない。全身経路は、経口および非経口を含む。いくつかの種類の装置は、吸入による投与のため定期的に使用される。これらの種類の装置は、定量噴霧式吸入器(MDI)、呼吸作動MDI、ドライパウダー吸入器(DPI)、MDIと組み合わせたスペーサー/ホールディングチャンバー、およびネブライザーを含む。
【0081】
経口投与のため、化合物は、有効な化合物(複数可)を当該技術分野において周知の医薬的に許容される担体を組み合わせることにより、容易に製剤化することができる。かかる担体は、本開示の化合物を、処置されるべき対象による経口接種のため、錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリーおよび懸濁剤などとして製剤化されることを可能にする。経口使用のための医薬調製物は、固形賦形剤として得ることができ、場合により、得られた混合物を粉砕し、顆粒の混合物を処理し、適当な補助剤を加えた後、所望なら、錠剤または糖衣錠コアを得ることができる。適当な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトール、もしくはソルビトールを含む、糖;例えば、メイズスターチ、小麦スターチ、ライススターチ、ジャガイモでんぷん、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)のようなセルロース調製物のような充填剤である。所望されるなら、架橋結合したポリビニルピロリドン、寒天、もしくはアルギン酸またはアルギン酸ナトリウムのようなその塩のような、崩壊剤が、加えられてもよい。場合により、経口製剤はまた、食塩水または内部の酸状態を中和するための緩衝液において製剤化され得るか、または任意の担体なしで投与されてもよい。
【0082】
経口で使用され得る医薬調製物は、ゼラチンで作られたプッシュフィットカプセル剤、ならびにゼラチンおよびグリセロールまたはソルビトールのような、可塑剤で作られた、軟性の密封されたカプセル剤を含む。プッシュフィットカプセル剤は、ラクトースのような充填剤、でんぷんのような結合剤、および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤、ならびに場合により、安定剤と混合して有効な成分を含有することができる。軟カプセル剤において、有効な化合物は、脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコールのような、適当な液体において溶解されるか、または懸濁されてもよい。加えて、安定剤が、加えられてもよい。経口投与用に製剤化された微粒子がまた、使用されてもよい。かかる微粒子は、当該技術分野において十分に定義されている。経口投与用の全ての製剤は、かかる投与に適当な投薬量であるべきである。
【0083】
口腔投与のため、組成物は、従来の方法で製剤化された錠剤またはトローチ剤の形態をとってもよい。
【0084】
吸入による投与のため、本開示による使用のための化合物は、便宜的に、適当な噴霧剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適当なガスを使用して、加圧包装または噴霧吸入器からのエアロゾルスプレー提示の形態でデリバリーされてもよい。加圧エアロゾルの場合、投薬単位は、計量された量をデリバリーするための弁を備えることにより、決定されてもよい。化合物と、ラクトースまたはスターチのような適当な粉末基剤の粉末混合物を含有する、吸入器または注入器における使用のための例えば、ゼラチンのカプセル剤及びカートリッジが、製剤化されてもよい。
【0085】
化合物は、それらを全身的にデリバリーすることが望まれるとき、注入により、例えば、ボーラス注射または持続点滴により非経口投与されてもよい。注射用製剤は、添加された保存剤と共に、例えば、アンプル剤における、または多用量の容器における単位投薬形態で提示されてもよい。組成物は、油性もしくは水性ビークル中の懸濁液、溶液またはエマルジョンのような形態をとってもよく、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤のような配合剤を含有してもよい。
【0086】
非経口投与用の医薬製剤は、水溶性形態の有効な化合物の水溶液を含む。加えて、有効な化合物の懸濁液は、適切な油性注射懸濁液として調製されてもよい。適当な親油性溶媒またはビークルは、ゴマ油のような脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドのような合成脂肪酸エステル、またはリポソームを含む。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランのような、懸濁液の粘度を増大させる物質を含有してもよい。場合により、懸濁液はまた、高度に濃縮された溶液の調製を可能にするよう化合物の溶解性を増大させる適当な安定剤または剤を含有してもよい。
【0087】
あるいは、有効な化合物は、使用前の、適当なビークル、例えば、無菌パイロジェンフリーの水との構成のための粉末形態であってもよい。
【0088】
化合物はまた、例えば、ココアバターまたは他のグリセリドのような従来の座剤基剤を含有する、座薬または保持浣腸剤のような直腸または膣用組成物において製剤化されてもよい。
【0089】
他のデリバリーシステムは、時間放出、遅延放出または持続放出デリバリーシステムを含み得る。かかるシステムは、化合物の繰り返し投与を回避することができ、これにより、対象および医師にとっての便利さを増大させる。多くの種類の放出デリバリーシステムが、入手可能であり、当業者に公知である。それらは、ポリ(ラクチド-グリコライド)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酪酸、およびポリ無水物のようなポリマーベース系を含む。薬物を含有する前述のポリマーのマイクロカプセル剤は、例えば、米国特許第5,075,109号において記載される。デリバリーシステムはまた、コレステロール、コレステロールエステルおよび脂肪酸のようなステロールまたはモノ、ジ、およびトリグリセリドのような中性脂肪を含む脂質;ヒドロゲル放出システム;サイラスティックシステム;ペプチドベースのシステム;ワックスコーティング;従来の結合剤および賦形剤を使用した圧縮錠剤;部分的に融合した移植片などである、非ポリマー系を含む。特定の例は、(a)本開示の剤が、米国特許第4,452,775号、第4,675,189号、および第5,736,152号において記載されるもののようなマトリックス内の形態において含有される、浸食システム、および(b)有効な成分が、米国特許第3,854,480号、第5,133,974号および第5,407,686号において記載されるような、ポリマーから制御された割合で浸透する、拡散システムを含むが、これらに限定されない。加えて、ポンプベースのハードウェアデリバリーシステムを使用することができ、その一部は、移植に適合する。
【0090】
本開示により記載される組成物およびADCは、複数の機会で対象(例えば、癌を有する対象)に投与することができる。いくつかの実施形態において、本開示の抗体または組成物が、対象にデリバリーされる、機会数は、2~10回(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10回)の範囲にある。いくつかの実施形態において、本開示の抗体または組成物は、対象に10回より多くデリバリーされる。
【0091】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物またはADCの用量は、1日毎に1回以下(例えば、24時間の期間)対象に投与される。いくつかの実施形態において、本開示の組成物またはADCの用量は、2、3、4、5、6、または7日毎に1回以下で対象に投与される。いくつかの実施形態において、本開示の組成物またはADCの用量は、1週間毎に1回以下(例えば、7日間)対象に投与される。いくつかの実施形態において、本開示の組成物またはADCの用量は、2週間毎に1回以下(例えば、2週間の期間において1回)対象に投与される。いくつかの実施形態において、本開示の組成物またはADCの用量は、1ヶ月毎に1回以下(例えば、30日間において1回)対象に投与される。いくつかの実施形態において、本開示の組成物またはADCの用量は、6ヶ月毎に1回以下で対象に投与される。いくつかの実施形態において、本開示の組成物またはADCの用量は、1年(例えば、365日またはうるう年において366日)毎に1回以下対象に投与される。
【0092】
本開示は、以下の実施例によりさらに説明され、それらは、決して、さらなる制限と解釈されるべきではない。本出願を通じて引用された参考文献(文献参照物、付与された特許、公開された特許出願、および係属中の特許出願を含む)の全ての全内容が、参照により本明細書に明白に取り込まれる。
【実施例
【0093】
細胞アッセイ
PDAC細胞生存を、スルホローダミンB(SRB)プロトコールを使用して評価する。簡単に言うと、細胞を、96ウェルプレートに播種し、適当な培地において一晩インキュベーションする。翌日、細胞を、増加する濃度のIgG対照、抗plec1、またはゲムシタビン(gem)を用いて処理する。処理の3日後に、細胞を、SRBを用いて染色し、吸光度562nmの波長(Ab562)に設定したプレートリーダーを使用し、定量する。追加のプレートを用意して、処理前0日目の細胞数を決定する。それぞれの濃度におけるパーセント対照成長を、対照細胞成長の%=[平均OD試料-平均OD0日目]/[平均OD負の対照-平均OD0日目]×100として決定する。パーセント成長阻害を、次の通り:%成長阻害=100-[対照細胞成長の%]計算する。
【0094】
抗plec1、IgG、およびgemのIC50を決定した後、細胞を、それぞれの細胞株に特異的である、等効力の抗plec1のgemに対する比(例えば、IC50)を有する、増大する薬物濃度を用いてインキュベーションすることにより、同一の細胞アッセイを行い、相乗効果を決定する。
【0095】
相乗効果の決定
相乗効果を、Chou-Talalay法(例えば、Cancer Res、2010年1月15日;70(2):440~6頁において記載される)を使用し計算して、相乗作用を決定する。次に、組み合わせ指数(CI)を、それぞれの試験した処理濃度について計算する。CI<1、CI=1、およびCI>1は、それぞれ、相乗効果、相加効果、および拮抗作用を示す。例となるアウトプットを、以下の通り提供し、式中、CI:組み合わせ指数;D:用量;Fa=影響された分画;x=Fa。
【数1】
【0096】
抗plec1およびゲムシタビン処理の効果
癌細胞生存に対する抗plec1処理を調べた。クローンPAb1(抗plec1としても言及する)は、試験した抗プレクチン1抗体の最大の親和性および治療効果(図1A~1B)を示すことが観察された。抗plec1を用いた癌細胞の処理は、G0ならびにG2成長停止をもたらした(図2A)。抗plec1細胞のEC50を、444.4nMとして計算した(図2B)。抗plec1処理はまた、微小管およびアクチンフィラメントに作用することにより、均一な上皮様形態の細胞から星様の形態の細胞へ細胞形態を変えることが観察された(図2C)。
【0097】
細胞株を、増大する濃度の抗plec1と72時間インキュベーションした。細胞を、スルホローダミンB(SRB)ベースの細胞生存アッセイを介して解析した。EC50を、ロジスティック回帰分析(GraphPad Prism)により計算し、細胞生存能を50%まで低減した、モノクローナル抗体(mAb)の濃度(ナノモル濃度、nMで表す)として報告した。成長阻害は、プレクチン1発現癌細胞に限定された。心臓、腎臓、皮膚、および膵臓のような、細胞質プレクチン1発現を有する正常細胞は、抗plec1処理により影響されなかった(表3;ND:示していない;「/」:データなし)。
【0098】
【表3】
【0099】
癌と正常細胞の両方が、対照IgGを用いた処理により影響を受けなかった。皮下YAPC(PDAC細胞株)異種移植片を有する動物を用いたインビボ実験は、腫瘍体積における用量依存性の低減を示した。処置を受けた動物は、体重を維持し、別段影響を受けなかった。
【0100】
抗plec1療法は、癌細胞株および処置抵抗性異種移植片に対してインビボで有効であることが示された。単独療法は、長期間で稀に有効であるので(例えば、リツキシマブおよびトラスツズマブ)、抗plec1療法が、癌ケア療法のスタンダードと相乗的であるかどうかを調べた。1:1の濃度比にて、抗plec1は、膵管腺癌(PDAC)のためのケア療法のスタンダードである、ゲムシタビン(gem)との組み合わせにおいて相乗的である(図3)。
【0101】
配列
>配列番号1-プレクチン(半接着斑のタンパク質1)、ヒト(Homo sapiens);標的タンパク質に下線。
MVAGMLMPRDQLRAIYEVLFREGVMVAKKDRRPRSLHPHVPGVTNLQVMRAMASLRARGLVRETFAWCHFYWYLTNEGIAHLRQYLHLPPEIVPASLQRVRRPVAMVMPARRTPHVQAVQGPLGSPPKRGPLPTEEQRVYRRKELEEVSPETPVVPATTQRTLARPGPEPAPATDERDRVQKKTFTKWVNKHLIKAQRHISDLYEDLRDGHNLISLLEVLSGDSLPREKGRMRFHKLQNVQIALDYLRHRQVKLVNIRNDDIADGNPKLTLGLIWTIILHFQISDIQVSGQSEDMTAKEKLLLWSQRMVEGYQGLRCDNFTSSWRDGRLFNAIIHRHKPLLIDMNKVYRQTNLENLDQAFSVAERDLGVTRLLDPEDVDVPQPDEKSIITYVSSLYDAMPRVPDVQDGVRANELQLRWQEYRELVLLLLQWMRHHTAAFEERRFPSSFEEIEILWSQFLKFKEMELPAKEADKNRSKGIYQSLEGAVQAGQLKVPPGYHPLDVEKEWGKLHVAILEREKQLRSEFERLECLQRIVTKLQMEAGLCEEQLNQADALLQSDVRLLAAGKVPQRAGEVERDLDKADSMIRLLFNDVQTLKDGRHPQGEQMYRRVYRLHERLVAIRTEYNLRLKAGVAAPATQVAQVTLQSVQRRPELEDSTLRYLQDLLAWVEENQHRVDGAEWGVDLPSVEAQLGSHRGLHQSIEEFRAKIERARSDEGQLSPATRGAYRDCLGRLDLQYAKLLNSSKARLRSLESLHSFVAAATKELMWLNEKEEEEVGFDWSDRNTNMTAKKESYSALMRELELKEKKIKELQNAGDRLLREDHPARPTVESFQAALQTQWSWMLQLCCCIEAHLKENAAYFQFFSDVREAEGQLQKLQEALRRKYSCDRSATVTRLEDLLQDAQDEKEQLNEYKGHLSGLAKRAKAVVQLKPRHPAHPMRGRLPLLAVCDYKQVEVTVHKGDECQLVGPAQPSHWKVLSSSGSEAAVPSVCFLVPPPNQEAQEAVTRLEAQHQALVTLWHQLHVDMKSLLAWQSLRRDVQLIRSWSLATFRTLKPEEQRQALHSLELHYQAFLRDSQDAGGFGPEDRLMAEREYGSCSHHYQQLLQSLEQGAQEESRCQRCISELKDIRLQLEACETRTVHRLRLPLDKEPARECAQRIAEQQKAQAEVEGLGKGVARLSAEAEKVLALPEPSPAAPTLRSELELTLGKLEQVRSLSAIYLEKLKTISLVIRGTQGAEEVLRAHEEQLKEAQAVPATLPELEATKASLKKLRAQAEAQQPTFDALRDELRGAQEVGERLQQRHGERDVEVERWRERVAQLLERWQAVLAQTDVRQRELEQLGRQLRYYRESADPLGAWLQDARRRQEQIQAMPLADSQAVREQLRQEQALLEEIERHGEKVEECQRFAKQYINAIKDYELQLVTYKAQLEPVASPAKKPKVQSGSESVIQEYVDLRTHYSELTTLTSQYIKFISETLRRMEEEERLAEQQRAEERERLAEVEAALEKQRQLAEAHAQAKAQAEREAKELQQRMQEEVVRREEAAVDAQQQKRSIQEELQQLRQSSEAEIQAKARQAEAAERSRLRIEEEIRVVRLQLEATERQRGGAEGELQALRARAEEAEAQKRQAQEEAERLRRQVQDESQRKRQAEVELASRVKAEAEAAREKQRALQALEELRLQAEEAERRLRQAEVERARQVQVALETAQRSAEAELQSKRASFAEKTAQLERSLQEEHVAVAQLREEAERRAQQQAEAERAREEAERELERWQLKANEALRLRLQAEEVAQQKSLAQAEAEKQKEEAEREARRRGKAEEQAVRQRELAEQELEKQRQLAEGTAQQRLAAEQELIRLRAETEQGEQQRQLLEEELARLQREAAAATQKRQELEAELAKVRAEMEVLLASKARAEEESRSTSEKSKQRLEAEAGRFRELAEEAARLRALAEEAKRQRQLAEEDAARQRAEAERVLAEKLAAIGEATRLKTEAEIALKEKEAENERLRRLAEDEAFQRRRLEEQAAQHKADIEERLAQLRKASDSELERQKGLVEDTLRQRRQVEEEILALKASFEKAAAGKAELELELGRIRSNAEDTLRSKEQAELEAARQRQLAAEEERRRREAEERVQKSLAAEEEAARQRKAALEEVERLKAKVEEARRLRERAEQESARQLQLAQEAAQKRLQAEEKAHAFAVQQKEQELQQTLQQEQSVLDQLRGEAEAARRAAEEAEEARVQAEREAAQSRRQVEEAERLKQSAEEQAQARAQAQAAAEKLRKEAEQEAARRAQAEQAALRQKQAADAEMEKHKKFAEQTLRQKAQVEQELTTLRLQLEETDHQKNLLDEELQRLKAEATEAARQRSQVEEELFSVRVQMEELSKLKARIEAENRALILRDKDNTQRFLQEEAEKMKQVAEEAARLSVAAQEAARLRQLAEEDLAQQRALAEKMLKEKMQAVQEATRLKAEAELLQQQKELAQEQARRLQEDKEQMAQQLAEETQGFQRTLEAERQRQLEMSAEAERLKLRVAEMSRAQARAEEDAQRFRKQAEEIGEKLHRTELATQEKVTLVQTLEIQRQQSDHDAERLREAIAELEREKEKLQQEAKLLQLKSEEMQTVQQEQLLQETQALQQSFLSEKDSLLQRERFIEQEKAKLEQLFQDEVAKAQQLREEQQRQQQQMEQERQRLVASMEEARRRQHEAEEGVRRKQEELQQLEQQRRQQEELLAEENQRLREQLQLLEEQHRAALAHSEEVTASQVAATKTLPNGRDALDGPAAEAEPEHSFDGLRRKVSAQRLQEAGILSAEELQRLAQGHTTVDELARREDVRHYLQGRSSIAGLLLKATNEKLSVYAALQRQLLSPGTALILLEAQAASGFLLDPVRNRRLTVNEAVKEGVVGPELHHKLLSAERAVTGYKDPYTGQQISLFQAMQKGLIVREHGIRLLEAQIATGGVIDPVHSHRVPVDVAYRRGYFDEEMNRVLADPSDDTKGFFDPNTHENLTYLQLLERCVEDPETGLCLLPLTDKAAKGGELVYTDSEARDVFEKATVSAPFGKFQGKTVTIWEIINSEYFTAEQRRDLLRQFRTGRITVEKIIKIIITVVEEQEQKGRLCFEGLRSLVPAAELLESRVIDRELYQQLQRGERSVRDVAEVDTVRRALRGANVIAGVWLEEAGQKLSIYNALKKDLLPSDMAVALLEAQAGTGHIIDPATSARLTVDEAVRAGLVGPEFHEKLLSAEKAVTGYRDPYTGQSVSLFQALKKGLIPREQGLRLLDAQLSTGGIVDPSKSHRVPLDVACARGCLDEETSRALSAPRADAKAYSDPSTGEPATYGELQQRCRPDQLTGLSLLPLSEKAARARQEELYSELQARETFEKTPVEVPVGGFKGRTVTVWELISSEYFTAEQRQELLRQFRTGKVTVEKVIKILITIVEEVETLRQERLSFSGLRAPVPASELLASGVLSRAQFEQLKDGKTTVKDLSELGSVRTLLQGSGCLAGIYLEDTKEKVSIYEAMRRGLLRATTAALLLEAQAATGFLVDPVRNQRLYVHEAVKAGVVGPELHEQLLSAEKAVTGYRDPYSGSTISLFQAMQKGLVLRQHGIRLLEAQIATGGIIDPVHSHRVPVDVAYQRGYFSEEMNRVLADPSDDTKGFFDPNTHENLTYRQLLERCVEDPETGLRLLPLKGAEKAEVVETTQVYTEEETRRAFEETQIDIPGGGSHGGSTMSLWEVMQSDLIPEEQRAQLMADFQAGRVTKERMIIIIIEIIEKTEIIRQQGLASYDYVRRRLTAEDLFEARIISLETYNLLREGTRSLREALEAESAWCYLYGTGSVAGVYLPGSRQTLSIYQALKKGLLSAEVARLLLEAQAATGFLLDPVKGERLTVDEAVRKGLVGPELHDRLLSAERAVTGYRDPYTEQTISLFQAMKKELIPTEEALRLLDAQLATGGIVDPRLGFHLPLEVAYQRGYLNKDTHDQLSEPSEVRSYVDPSTDERLSYTQLLRRCRRDDGTGQLLLPLSDARKLTFRGLRKQITMEELVRSQVMDEATALQLREGLTSIEEVTKNLQKFLEGTSCIAGVFVDATKERLSVYQAMKKGIIRPGTAFELLEAQAATGYVIDPIKGLKLTVEEAVRMGIVGPEFKDKLLSAERAVTGYKDPYSGKLISLFQAMKKGLILKDHGIRLLEAQIATGGIIDPEESHRLPVEVAYKRGLFDEEMNEILTDPSDDTKGFFDPNTEENLTYLQLMERCITDPQTGLCLLPLKEKKRERKTSSKSSVRKRRVVIVDPETGKEMSVYEAYRKGLIDHQTYLELSEQECEWEEITISSSDGVVKSMIIDRRSGRQYDIDDAIAKNLIDRSALDQYRAGTLSITEFADMLSGNAGGFRSRSSSVGSSSSYPISPAVSRTQLASWSDPTEETGPVAGILDTETLEKVSITEAMHRNLVDNITGQRLLEAQACTGGIIDPSTGERFPVTDAVNKGLVDKIMVDRINLAQKAFCGFEDPRTKTKMSAAQALKKGWLYYEAGQRFLEVQYLTGGLIEPDTPGRVPLDEALQRGTVDARTAQKLRDVGAYSKYLTCPKTKLKISYKDALDRSMVEEGTGLRLLEAAAQSTKGYYSPYSVSGSGSTAGSRTGSRTGSRAGSRRGSFDATGSGFSMTFSSSSYSSSGYGRRYASGSSASLGGPESAVA

>配列番号2-プレクチン(半接着斑のタンパク質1)、ヒト;標的タンパク質に下線。
SSSDGVVKSMIIDRRSGRQYDIDDAIAKNLIDRSALDQYRAGTLSITEFADMLSGNAGGFRSRSSSVGSSSSYPISPAVSRTQLASWSDPTEETGPVAGILDTETLEKVSITEAMHRNLVDNITGQRLLEAQACTGGIIDPSTGERFPVTDAVNKGLVDKIMVDRINLAQKAFCGFEDPRTKTKMSAAQALKKGWLYYEAGQRFLEVQYLTGGLIEPDTPGRVPLDEALQRGTVDARTAQKLRDVGAYSKYLTCPKTKLKISYKDALDRSMVEEGTGLRLLEAAAQSTKGYYSPYSVSGSGSTAGSRTGSRTGSRAGSRRGSFDATGSGFSMTFSSSSYSSSGYGRRYASGSSASLGGPESAVA
【0102】
Pab2配列
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表4-4】
【0103】
Pab1配列
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3
【配列表】
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