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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】密閉電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/578 20210101AFI20231107BHJP
   H01M 50/107 20210101ALI20231107BHJP
   H01M 50/152 20210101ALI20231107BHJP
   H01M 50/342 20210101ALI20231107BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20231107BHJP
【FI】
H01M50/578
H01M50/107
H01M50/152
H01M50/342 101
H01M50/184 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020562981
(86)(22)【出願日】2019-12-02
(86)【国際出願番号】 JP2019047082
(87)【国際公開番号】W WO2020137372
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2018246385
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】322003798
【氏名又は名称】パナソニックエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 政幹
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 仰
(72)【発明者】
【氏名】野上 嵩広
(72)【発明者】
【氏名】高野 曉
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/164000(WO,A1)
【文献】特表2017-529659(JP,A)
【文献】特開2012-174563(JP,A)
【文献】国際公開第2016/157750(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/578
H01M 50/107
H01M 50/152
H01M 50/342
H01M 50/184
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の外装缶、及び前記外装缶の開口部を塞ぐ封口体を含む電池ケースと、
前記外装缶と前記封口体の間に配置されたガスケットと、
電極リードを含み、前記電池ケース内に収容された電極体と、
を備える密閉電池であって、
前記封口体は、
前記電極リードが電気的に接続される環状部、及び前記電池ケースの内圧が所定の閾値を超えたときに前記環状部から切り離される切離部を含む金属板と、
前記金属板よりも前記電池ケースの外側に配置され、前記切離部に接続される弁体と、
前記金属板と前記弁体の間に配置され、前記金属板と前記弁体の接続部分以外を絶縁する絶縁板と、
を有し、
前記絶縁板又は前記ガスケットには、前記金属板の前記切離部が前記環状部から切り離されるときに前記弁体の方向に変形する弾性変形部が設けられている、密閉電池。
【請求項2】
前記弾性変形部は、前記弁体又は前記金属板の前記切離部に当接した状態で折りたたまれた突起であり、
前記突起は、前記切離部が前記環状部から切り離されるときに前記弁体の方向に向かって突出するように形成されている、請求項1に記載の密閉電池。
【請求項3】
前記絶縁板又は前記ガスケットは、開口部を含み、
前記突起は、前記開口部の周縁部に複数形成されている、請求項2に記載の密閉電池。
【請求項4】
前記弾性変形部は、前記ガスケットに設けられた凸部であり、
前記凸部は、前記金属板の前記切離部に当接して前記電池ケースの内側に押し込まれ、前記切離部が前記環状部から切り離されるときに前記弁体の方向に向かって膨出するように形成されている、請求項1に記載の密閉電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、密閉電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有底筒状の外装缶、及び外装缶の開口部を塞ぐ封口体を含む電池ケースを備えた密閉電池が広く知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、電極体と電気的に接続される金属板、及び金属板よりも電池ケースの外側に配置され、金属板と電気的に接続される弁体を有し、電池ケースの内圧が上昇したときに、弁体が外側に凸となるように反転して弁体と金属板の電気的導通が遮断されるように構成された封口体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-3700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示された封口体では、弁体と金属板の電気的導通が遮断された後に弁体が金属板と再び接触して再導通を引き起こす可能性がある。このため、例えば弁体の反転による変形量を大きくして、かかる再導通を防止する必要がある。即ち、弁体の変形量に寸法的な設計尤度を見積もっておく必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様である密閉電池は、有底筒状の外装缶、及び外装缶の開口部を塞ぐ封口体を含む電池ケースと、外装缶と封口体の間に配置されたガスケットと、電極リードを含み、電池ケース内に収容された電極体とを備える密閉電池であって、封口体は、電極リードが電気的に接続される環状部、及び電池ケースの内圧が所定の閾値を超えたときに環状部から切り離される切離部を含む金属板と、金属板よりも電池ケースの外側に配置され、切離部に接続される弁体と、金属板と弁体の間に配置され、金属板と弁体の接続部分以外を絶縁する絶縁板とを有し、絶縁板又はガスケットには、金属板の切離部が環状部から切り離されるときに弁体の方向に変形する弾性変形部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本開示に係る密閉電池によれば、電池ケースの内圧の上昇により弁体が変形して弁体と金属板の電気的導通が遮断された後、弁体と金属板の再接触による再導通が発生する可能性を低減できる。また、弁体の変形量など、封口体の構成部材の寸法的な設計尤度を従来に比べて拡大できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は実施形態の一例である密閉電池の断面図である。
図2図2は実施形態の一例である封口体の断面図である。
図3図3は実施形態の一例である封口体を構成する絶縁板の平面図である。
図4図4図3中のAA線断面図である。
図5図5は実施形態の一例である封口体を構成する内部端子板が破断した状態を示す図である。
図6図6は実施形態の他の一例である封口体及びガスケットの断面図である。
図7図7はガスケットの変形例を示す図である。
図8図8はガスケットの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態の一例について詳細に説明する。以下では、本開示に係る密閉電池の実施形態の一例として、巻回型の電極体14が円筒形状の電池ケース15に収容された円筒形電池を例示するが、電池は角形の電池ケースを備えた角形電池であってもよい。また、電極体は、複数の正極と複数の負極がセパレータを介して交互に積層されてなる積層型であってもよい。本明細書では、説明の便宜上、電池ケース15の軸方向に沿った方向を「上下方向」、電池ケース15の封口体17側を「上」、外装缶16の底部側を「下」とする。
【0009】
図1は、実施形態の一例である密閉電池10の断面図である。図1に例示するように、密閉電池10は、有底筒状の外装缶16、及び外装缶16の開口部を塞ぐ封口体17を含む電池ケース15と、外装缶16と封口体17の間に配置されたガスケット23と、電極リードを含み、電池ケース15内に収容された電極体14とを備える。また、電池ケース15内には電解質が収容されている。電極体14は、正極11と、負極12と、正極11及び負極12の間に介在するセパレータ13とを含み、正極11と負極12がセパレータ13を介して巻回されてなる巻回構造を有する。
【0010】
電解質は、水系電解質、非水電解質のいずれであってもよい。好適な密閉電池10の一例は、非水電解質を用いた、リチウムイオン電池等の非水電解質二次電池である。非水電解質は、例えば非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む。非水溶媒には、エステル類、エーテル類、ニトリル類、アミド類、及びこれらの2種以上の混合溶媒等が用いられる。非水溶媒は、これら溶媒の水素の少なくとも一部をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含有していてもよい。なお、非水電解質は液体電解質に限定されず、ゲル状ポリマー等を用いた固体電解質であってもよい。電解質塩には、LiPF等のリチウム塩が使用される。
【0011】
電極体14は、長尺状の正極11と、長尺状の負極12と、長尺状の2枚のセパレータ13とを有する。また、電極体14は、電極リードとして、正極11に接合された正極リード20と、負極12に接合された負極リード21とを有する。負極12は、リチウムの析出を抑制するために、正極11よりも一回り大きな寸法で形成される。2枚のセパレータ13は、少なくとも正極11よりも一回り大きな寸法で形成され、例えば正極11を挟むように配置される。
【0012】
正極11は、正極芯体と、正極芯体の両面に設けられた正極合材層とを有する。正極芯体には、アルミニウム、アルミニウム合金など正極11の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。正極合材層は、正極活物質、アセチレンブラック等の導電材、及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)等の結着材を含む。正極11は、正極芯体上に正極活物質、導電材、及び結着材等を含む正極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧縮して正極合材層を正極芯体の両面に形成することにより作製できる。
【0013】
正極活物質には、例えばリチウム遷移金属複合酸化物が用いられる。リチウム遷移金属複合酸化物に含有される金属元素としては、Ni、Co、Mn、Al、B、Mg、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Ga、Sr、Zr、Nb、In、Sn、Ta、W等が挙げられる。好適なリチウム遷移金属複合酸化物の一例は、Ni、Co、Mnの少なくとも1種を含有するリチウム金属複合酸化物である。具体例としては、Ni、Co、Mnを含有する複合酸化物、Ni、Co、Alを含有する複合酸化物が挙げられる。
【0014】
負極12は、負極芯体と、負極芯体の両面に設けられた負極合材層とを有する。負極芯体には、銅、銅合金など負極12の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。負極合材層は、負極活物質、及びスチレンブタジエンゴム(SBR)等の結着材を含む。負極12は、負極芯体上に負極活物質、及び結着材等を含む負極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧縮して負極合材層を負極芯体の両面に形成することにより作製できる。
【0015】
負極活物質には、例えば鱗片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛等の天然黒鉛、塊状人造黒鉛、黒鉛化メソフェーズカーボンマイクロビーズ等の人造黒鉛などの黒鉛が用いられる。負極活物質には、Si、Sn等のリチウムと合金化する金属、当該金属を含有する合金、当該金属を含有する化合物等が用いられてもよく、これらが黒鉛と併用されてもよい。当該化合物の具体例としては、SiO(0.5≦x≦1.6)で表されるケイ素化合物が挙げられる。
【0016】
電極体14の上下には、絶縁板18,19がそれぞれ配置される。図1に示す例では、正極11に取り付けられた正極リード20が絶縁板18の貫通孔を通って封口体17側に延び、負極12に取り付けられた負極リード21が絶縁板19の外側を通って外装缶16の底部側に延びている。正極リード20は、封口体17の電池ケース15の内側を向いた内面に溶接等で接続され、封口体17が正極外部端子となる。負極リード21は、外装缶16の底部内面に溶接等で接続され、外装缶16が負極外部端子となる。
【0017】
電池ケース15は、上述の通り、有底筒状の外装缶16と、外装缶16の開口部を塞ぐ封口体17とで構成される。外装缶16は、有底円筒形状の金属製容器である。外装缶16と封口体17の間にはガスケット23が設けられ、電池ケース15の内部空間が密閉されると共に、外装缶16と封口体17が絶縁される。外装缶16は、例えば側面部の外側からのスピニング加工により側面部に形成された、封口体17を支持する溝入部22を有する。溝入部22は、外装缶16の周方向に沿って環状に形成されることが好ましく、その上面で封口体17を支持する。また、外装缶16の上端部は、電池ケース15の内側に折り曲げられ封口体17の周縁部に加締められている。外装缶16の開口部は平面視円形状であり、同様に、封口体17も平面視円形状である。
【0018】
以下、図2図4をさらに参照しながら、封口体17について詳説する。図2は、封口体17の断面図であって、封口体17の径方向中央部を拡大して示す図である。図3は封口体17を構成する絶縁板50の平面図、図4図3中のAA線断面図である。
【0019】
図2に例示するように、封口体17は、内部端子板30と、内部端子板30よりも電池ケース15の外側に配置される弁体40と、内部端子板30と弁体40の間に配置される絶縁板50とを備える。封口体17は、例えば平面視略真円形状を有し、また内部端子板30、弁体40、及び絶縁板50も平面視略真円形状を有する。ここで、「略真円状」とは、真円形状及び実質的に真円と認められる形状を意味する。
【0020】
封口体17は、電池ケース15の内側(電極体14側)から順に、内部端子板30、絶縁板50、及び弁体40が積層された構造を有する。内部端子板30は、正極リード20が電気的に接続される環状部31、及び電池ケース15の内圧が所定の閾値を超えたときに環状部31から切り離される切離部32を含む金属板である。所定の閾値は、電池容量、用途などに基づいて適宜設定される。なお、密閉電池10は、環状部31に負極リード21が接続される構造であってもよい。この場合、封口体17が負極外部端子となる。
【0021】
封口体17では、弁体40が最も外側に配置され、外部装置につながった外部リード(図示せず)が接続される封口体17の天板を構成している。弁体40は、内部端子板30の切離部32に溶接等で接続され、通常の使用状態において内部端子板30と電気的に接続されている。弁体40は、電池ケース15の内圧上昇により上方に凸となるように変形しようとし、内圧が所定の閾値を超えると弁体40に接続された内部端子板30が破断して切離部32が環状部31から切り離される。さらに内圧が上昇すると、弁体40が破断してガスの排出口が形成される。絶縁板50は、内部端子板30の環状部31と弁体40の間に介在し、内部端子板30と弁体40の接続部分以外を絶縁する。
【0022】
詳しくは後述するが、絶縁板50には、電池ケース15の内側から外側に向かって弁体40に押圧力が作用する状態で配置され、内部端子板30の環状部31が切離部32から切り離されるときに弁体40の方向に変形する弾性変形部が設けられている。絶縁板50に弾性変形部を設けることで、電池ケース15の内圧の上昇により弁体40が変形して、弁体40と正極リード20が接続された内部端子板30の環状部31の電気的導通が遮断された後、弁体40と環状部31の再接触による再導通が発生する可能性を低減できる。また、後述の図6等に例示するように、弾性変形部はガスケットに設けられていてもよい。
【0023】
封口体は、環状部31及び切離部32を含む内部端子板30、弁体40、及び絶縁板50以外の構成部材を含んでいてもよい。例えば、内部端子板30よりも電極体側に、電極リードが接続される金属板が設けられてもよい。この場合は、当該金属板が端子板として機能し、当該金属板を介して、環状部に電極リードが電気的に接続される。したがって、内部端子板30に電極リードが必ずしも直接接続される必要はない。
【0024】
内部端子板30は、絶縁板50を挟んで弁体40と対向配置され、径方向中央部において弁体40と溶接等で接続されている。密閉電池10では、通常の使用状態において、正極リード20が接続された内部端子板30と、外部リードが接続された弁体40とが電気的に接続されることで、電極体14から外部リードにつながる電流経路が形成されている。内部端子板30は、径方向中央部に、弁体40に接続される切離部32を有する。環状部31は、切離部32を囲んで、内部端子板30の径方向外側(外周部)に形成される。環状部31には、電極体14側に向いた下面に正極リード20が溶接される。
【0025】
本実施形態では、環状部31と切離部32の境界位置に環状の溝33が形成されている。図2に示す例では、内部端子板30の弁体40側に向いた上面に溝33が形成されているが、溝33は内部端子板30の下面に形成されていてもよい(後述の図6参照)。内部端子板30の溝33が形成された部分は、他の部分よりも厚みが薄い薄肉部となり、電池ケース15の内圧上昇時に優先的に破断する易破断部となる。溝33は、角のない環状に形成されることが好ましく、略真円状に形成されることが特に好ましい。
【0026】
内部端子板30は、例えば、環状の溝33により区分けされた環状部31と切離部32を含む1枚の金属板で構成される。好適な金属板の一例は、アルミニウムを主成分とするアルミニウム合金板である。環状部31は、正極リード20が溶接等で接続される部分であるから、切離部32よりも厚肉に形成されることが好ましい。内部端子板30の下面は、切離部32が形成された径方向中央部が上方に窪んだ形状を有する。環状部31には、内部端子板30を厚み方向に貫通した開口部である通気孔34が形成されている。図2では、後述する絶縁板50の通気孔52は図示されていないが、内部端子板30及び絶縁板50は、通気孔34,52の少なくとも一部が上下方向に重なるように配置されることが好ましい。
【0027】
弁体40は、径方向中央部に、内部端子板30側に凸の下凸部41を有する。下凸部41は、絶縁板50の開口部51を介して内部端子板30の切離部32に接続されている。弁体40が内部端子板30の通気孔34を介して圧力を受けることで、電池ケース15の内圧が所定の閾値を超えたときに内部端子板30を薄肉部で破断させる。弁体40は、電池の通常の使用状態において電池ケース15の内側に凸の下凸形状を有し、電池に異常が発生して内圧が上昇したときに電池ケース15の外側に凸の上凸形状となるように反転する。弁体40は、当該反転が可能な構造を有する。
【0028】
弁体40は、径方向中央部の周囲に形成された薄肉部42を有する。薄肉部42は、例えば、下凸部41を囲むように環状に形成される。薄肉部42は、電池に異常が発生して内圧が上昇したときに上述の反転を容易にし、さらに内圧が上昇したときに破断する。本実施形態では、弁体40の上面(外面)が、薄肉部42の径方向内側から外側に向かって次第に上方に凸となるように傾斜している。また、薄肉部42の厚みは、径方向内側から外側に向かって次第に薄くなっている。薄肉部42又は薄肉部42の径方向外端には、環状の溝が形成されてもよい。
【0029】
弁体40は、例えば、下凸部41及び薄肉部42を含む1枚の金属板で構成される。好適な金属板の一例は、アルミニウムを主成分とするアルミニウム合金板である。弁体40は、内部端子板30及び絶縁板50よりも大きな直径を有し、ガスケット23を介して外装缶16の上端部に固定されている。また、弁体40は、薄肉部42の径方向外側に位置する下面の一部が電極体14側に突出して環状に形成された突起部43(図1参照)を有し、内部端子板30及び絶縁板50は突起部43の内側に嵌め込まれている。
【0030】
絶縁板50は、上述のように、内部端子板30と弁体40の間に介在し、内部端子板30と弁体40の接続部分以外の部分を絶縁する。絶縁板50は、例えば内部端子板30よりも大きく、弁体40よりも小さな直径を有し、後述する突起54の弾性変形が可能な樹脂で構成される。好適な樹脂材料の例としては、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン等のポリオレフィン、塩化ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)などが挙げられる。
【0031】
絶縁板50は、電極体14側に突出し、径方向外端に沿って環状に形成されたスカート部53(図1参照)を有する。内部端子板30はスカート部53の内側に嵌め込まれ、絶縁板50の下面は内部端子板30の上面に当接している。また、絶縁板50の上面は、弁体40の下面に当接している。但し、薄肉部42が形成された部分において、弁体40の下面と絶縁板50の上面の間には隙間が存在する。
【0032】
図3及び図4に例示するように、絶縁板50は、径方向中央部に平面視円形状の開口部51が、開口部51の周りに円周方向に沿って複数の通気孔52が、それぞれ形成された円板状の部材である。開口部51及び通気孔52は、絶縁板50を厚み方向に貫通して形成される。開口部51は、内部端子板30の切離部32と弁体40の下凸部41の接続を可能とするために形成され、下凸部41を挿入可能な大きさを有する。複数の通気孔52は、開口部51との間に所定の間隔をあけて、開口部51とスカート部53の間に形成されている。図4に示す例では、円周方向に長い通気孔52が4つ形成されているが、通気孔52の形状及び個数は特に限定されない。
【0033】
絶縁板50には、内部端子板30の切離部32が環状部31から切り離され、弁体40が上方に凸となるように反転したときに、弁体40の方向に向かって変形する突起54が設けられている。突起54は、弁体40に当接した状態で折りたたまれ、弁体40が反転したときに弁体40の方向に向かって、即ち弁体40の反転により生じた空間に向かって突出するように形成されている。このように、突起54は弾性変形可能な弾性変形部として機能する。突起54は、弁体40によって押圧された状態で内部端子板30と弁体40の間に配置されている。換言すると、突起54は、電池ケース15の外側(上方)に向かって弁体40に押圧力が作用する状態で配置されている。つまり、突起54は弁体40を介して切離部32を電池ケース15の外側(上方)に向かって付勢している。
【0034】
突起54は、内部端子板30が破断して弁体40が上方に凸となるように変形することで弁体40からの押圧力が作用しなくなると、弾性変形して元の形状に戻る。図4に示す例では、絶縁板50が封口体17に組み込まれる前において、絶縁板50の面方向に対して略垂直に突起54が立設している。突起54は、絶縁板50の他の部分よりも上方に大きく突出し、絶縁板50の厚み方向に沿って伸びている。内部端子板30の破断により上方に突出する突起54を設けることで、弁体40と内部端子板30の環状部31の間に形成された隙間が維持され、弁体40と環状部31の再導通が発生する可能性を低減できる。
【0035】
突起54は、複数形成されることが好ましい。突起54は、電池の通常の使用状態において、弁体40の下面に当接して弁体40を上方に押圧可能な部分に複数形成される。本実施形態では、複数の突起54が開口部51の周縁部に形成されている。複数の突起54は、例えば絶縁板50の円周方向に沿って略等間隔で形成され、また2個の突起54が絶縁板50の径方向に並んで形成される。図3に示す例では、4個の突起54が開口部51の周縁部に等間隔で形成されている。突起54の数は特に限定されないが、好ましくは2個~21個であり、より好ましくは3個~8個である。
【0036】
突起54は、上述のように、絶縁板50の厚み方向に立ち上がった状態である元の形状から、絶縁板50の面方向に沿うように折り曲げ可能である。また、突起54は、絶縁板50の面方向に沿うように折りたたまれた状態から元の形状に戻る復元力を有する。突起54は、封口体17の組み立て時に弁体40の下面に押されて折りたたまれる。本実施形態では、絶縁板50の上面の突起54と隣接する部分に、折りたたまれた突起54を収容する凹部55が形成されている。凹部55は、絶縁板50の上面に形成された窪みであって、突起54の根元から、絶縁板50の径方向外側に向かって突起54を収容可能な形状、大きさで形成されている。
【0037】
突起54の形状は特に限定されないが、好適な形状の一例は略矩形形状である。突起54の根元から先端までの長さL1(高さ)は、弁体40の反転により生じる弁体40と内部端子板30の環状部31の隙間が維持できる長さであればよく、例えば絶縁板50の厚みTの1.5倍~5倍、又は1.8倍~4倍、又は2倍~3倍である。ここで、厚みTは、内部端子板30の上面及び弁体40の下面に当接し、かつ凹部55等が形成されない部分における絶縁板50の厚みを意味する。長さL1の具体例は、0.5mm~2mm、又は0.7mm~1mmである。絶縁板50の面方向に沿った突起54の長さL2は、例えば0.1mm~5mm、又は0.5mm~2mmである。突起54の厚みは、例えば厚みTの10%~60%である。
【0038】
突起54の先端部には、絶縁板50の径方向外側から内側に向かって次第に長さL1が短くなるように傾斜したテーパ面が形成されていてもよい。また、突起54の根元部にも、同様のテーパ面が形成されていてもよい。突起54の根元部にテーパ面を形成することで、突起54の折りたたみが容易になる。
【0039】
図5は、内部端子板30が破断した状態を示す図である。図5に例示するように、電池ケース15の内圧が上昇して所定の閾値を超えると、溝33が形成された部分で内部端子板30が破断して切離部32が環状部31から切り離され、弁体40が上方に凸となるように反転する。このとき、弁体40の下面に当接し押圧力が作用する状態で折りたたまれていた複数の突起54が、上方に向かって伸びる元の形状に戻り、弁体40の反転により生じる上方の空間に向かって突出する。
【0040】
上方に突出した複数の突起54は、外部リードが接続される弁体40と、正極リード20が接続される内部端子板30の環状部31との隙間に介在し、弁体40と環状部31の電気的導通が遮断された状態を維持する。したがって、上述の構成を備えた封口体17を用いることにより、弁体40と環状部31の再導通がより確実に防止される。
【0041】
なお、絶縁板には、略矩形形状の突起54の代わりに、絶縁板の上面に針状の突起が多数立設されていてもよい。針状の突起は、弁体40に押圧されて根元から折れ曲がり、内部端子板30が破断したときに、元の形状に戻る弾性変形部である。また、突起54の代わりに、発泡体、多孔質体等の弾性変形部材が絶縁板の上面に貼着されていてもよい。
【0042】
図6図8に例示するように、上述の弾性変形部はガスケットに設けられていてもよい。図6に例示するガスケット60は、内部端子板30の下面に当接する円板状の底部61と、底部61の外周縁に沿って環状に形成された側壁部(図示せず)とを含む有底円筒状の樹脂製部材であって、弾性変形部として突起64が設けられた構造を有する。ガスケット60の側壁部は、封口体と外装缶の間に介在し、両部材を絶縁すると共に電池ケース内を密閉する。図6に示す例では、内部端子板30と弁体40の間に、弾性変形部を有さない絶縁板56が配置されているが、絶縁板56の代わりに弾性変形部を有する絶縁板を用いてもよい。
【0043】
ガスケット60の底部61には、底部61を厚み方向に貫通した開口部である通気孔62が形成されている。通気孔62は、例えば内部端子板30の切離部32、通気孔34と上下方向に重なる位置に形成される。突起64は、突起54と同様に、通気孔62の周縁部に複数形成されている。複数の突起64は、例えば底部61の円周方向に沿って略等間隔で形成される。
【0044】
突起64は、内部端子板30の切離部32に当接した状態で折りたたまれ、切離部32が環状部31から切り離されるときに弁体40の方向に向かって突出するように形成されている。また、底部61の上面の突起64と隣接する部分には、折りたたまれた突起64を収容する凹部65が形成されている。電池ケース15の内圧が上昇して溝33が形成された部分で内部端子板30が破断すると、弁体40が上方に凸となるように反転し、複数の突起64が環状部31の上面よりも上方に突出する。これにより、弁体40と環状部31の再導通が防止される。
【0045】
図7に例示するガスケット70は、内部端子板30の下面に当接する円板状の底部71と、底部71の外周縁に沿って環状に形成された側壁部72とを含む有底円筒状の樹脂製部材である点で、ガスケット60と共通する。底部71には、通気孔73が形成されている。ガスケット70は、上述の弾性変形部として、底部71の径方向中央部に形成された凸部74を有する。凸部74は、内部端子板30の切離部32に当接して電池ケース15の内側に押し込まれ、切離部32が環状部31から切り離されるときに弁体40の方向に向かって膨出するように形成されている。つまり、凸部74は切離部32を電池ケース15の外側(上方)に向かって付勢している。凸部74は、切離部32に押し込まれている状態では必ずしも弁体40に向かって膨出している必要はない。
【0046】
凸部74は、上方に凸のドーム状に形成され、上下方向に弾性変形する。凸部74は、電池の通常の使用状態では内部端子板30によって上から押え付けられているが、内部端子板30が破断して当該押圧力が作用しなくなると、弾性変形して元のドーム状に戻る。凸部74は、底部71の径方向に伸びるブリッジ状部分が径方向中央部で交差し、交差部分が最も膨出した形状を有する。なお、当該ブリッジ状部分にバネ構造を形成してもよく、当該交差部分にコイル状のバネ構造を形成してもよい。
【0047】
図8に例示するガスケット80は、内部端子板30の下面に当接する円板状の底部81と、底部81の外周縁に沿って環状に形成された側壁部82とを含む有底円筒状の樹脂製部材である点で、ガスケット60,70と共通する。底部81には、通気孔83が形成されている。ガスケット80は、ガスケット70の凸部74と同様に、内部端子板30の切離部32に当接して電池ケース15の内側に押し込まれ、切離部32が環状部31から切り離されるときに弁体40の方向に向かって膨出する凸部84を有する。凸部84は、底部81の径方向中央部が最も膨出するように渦巻き状に形成され、全体として上方に凸のドーム状に形成されている。
【0048】
ガスケット70,80を用いた場合も、内部端子板30が破断して切離部32が環状部31から切り離されたときに、上方に膨出する凸部74,84によって、弁体40と環状部31の電気的導通が遮断された状態が維持される。
【符号の説明】
【0049】
10 密閉電池、11 正極、12 負極、13 セパレータ、14 電極体、15 電池ケース、16 外装缶、17 封口体、18,19 絶縁板、20 正極リード、21 負極リード、22 溝入部、23,60,70,80 ガスケット、30 内部端子板、31 環状部、32 切離部、33 溝、34,52 通気孔、40 弁体、41 下凸部、42 薄肉部、43 突起部,53 スカート部、50,56 絶縁板、51,62 開口部、54,64 突起、55,65 凹部、61,71,81 底部、72,82 側壁部、73,83 通気孔、74,84 凸部
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図2
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図5
図6
図7
図8