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特許7379385ウイルス療法を増強するための細胞ベースの媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】ウイルス療法を増強するための細胞ベースの媒体
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20231107BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20231107BHJP
   C12N 5/074 20100101ALI20231107BHJP
   C12N 5/0735 20100101ALI20231107BHJP
   C12N 5/0775 20100101ALI20231107BHJP
   C12N 5/0797 20100101ALI20231107BHJP
   C12N 5/078 20100101ALI20231107BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20231107BHJP
   C12N 5/0784 20100101ALI20231107BHJP
   C12N 5/0786 20100101ALI20231107BHJP
   C12N 5/0787 20100101ALI20231107BHJP
   C12N 5/09 20100101ALI20231107BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20231107BHJP
   A61K 35/13 20150101ALI20231107BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20231107BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20231107BHJP
   A61K 35/768 20150101ALI20231107BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231107BHJP
   C12N 15/63 20060101ALN20231107BHJP
【FI】
C12N5/10
C12N7/01
C12N5/074
C12N5/0735
C12N5/0775
C12N5/0797
C12N5/078
C12N5/0783
C12N5/0784
C12N5/0786
C12N5/0787
C12N5/09
A61K35/12
A61K35/13
A61K35/15
A61K35/17
A61K35/768
A61P35/00
C12N15/63 Z
【請求項の数】 44
(21)【出願番号】P 2020567484
(86)(22)【出願日】2019-06-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 US2019035464
(87)【国際公開番号】W WO2019236633
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-04-28
(31)【優先権主張番号】62/680,570
(32)【優先日】2018-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】318001038
【氏名又は名称】カリディ・バイオセラピューティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Calidi Biotherapeutics,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】ドブリン・ドラガノフ
(72)【発明者】
【氏名】アラダル・エイ・サライ
【審査官】北村 悠美子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0339066(US,A1)
【文献】Gene Ther. (Author manuscript),Vol.17, No.12, pp.1465-1475,<doi:10.1038/gt.2010.104.>
【文献】Viruses,2015年,Vol.7, pp.6200-6217,<doi:10.3390/v7122921>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 5/00-5/28
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍溶解性ウイルスを含む担体細胞であって、
前記ウイルスは前記細胞内で複製することができ;
前記細胞はヒト対象に投与することができ;
前記細胞は、ヒト対象に投与するために前記細胞の免疫抑制特性または免疫特権特性を増強するように、処理もしくは改変されている、またはその両方であり
記処理または改変された細胞は、NKおよび/またはNKT細胞および/またはγδ T細胞を標的化するまたは枯渇させる一本鎖抗体を発現する、操作された細胞である、
細胞。
【請求項2】
前記細胞が、前記細胞内の前記ウイルスの増幅を増強するようにさらに処理または改変されている、請求項1に記載の細胞。
【請求項3】
前記細胞が、前記細胞内の前記ウイルスの増幅を増強するようにさらに処理または改変されており、ここで、該処理または改変は、細胞への成長因子またはサイトカインの搭載を含む、請求項1または2に記載の細胞。
【請求項4】
処理または改変された幹細胞、免疫細胞および腫瘍細胞の中から選択される、請求項1~3のいずれかに記載の細胞。
【請求項5】
幹細胞である、請求項1~4のいずれかに記載の細胞。
【請求項6】
間葉系、神経系、全能性、多能性、人工多能性、複能性、少能性、単能性、脂肪間質、内皮、骨髄、臍帯血、成体末梢血、筋芽細胞、小幼若、上皮、胚性上皮、および線維芽細胞幹細胞の中から選択される、請求項5に記載の細胞。
【請求項7】
間葉系幹細胞、脂肪間質幹細胞、または神経幹細胞である、請求項6に記載の細胞。
【請求項8】
成体骨髄、脂肪組織、血液、歯髄、新生児臍帯、臍帯血、胎盤に由来する間葉系細胞、胎盤由来接着性間質細胞、胎盤由来脱落膜間質細胞、子宮内膜再生細胞、胎盤二能性内皮/間葉系前駆細胞、羊膜または羊水間葉系幹細胞、羊水由来前駆細胞、ホウォートンゼリー間葉系幹細胞、骨盤帯幹細胞、絨毛膜絨毛間葉系間質細胞、皮下白色脂肪間葉系幹細胞、周皮細胞、洞周囲細網幹細胞、毛包由来幹細胞、造血幹細胞、骨膜由来間葉系幹細胞、側板間葉系幹細胞、脱落乳歯幹細胞、歯根膜幹細胞、歯小嚢前駆細胞、歯乳頭由来幹細胞、および筋サテライト細胞の中から選択される間葉系幹細胞である、請求項7に記載の細胞。
【請求項9】
免疫細胞である、請求項1~4のいずれかに記載の細胞。
【請求項10】
顆粒球、肥満細胞、単球、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、リンパ球、腫瘍特異的抗原を標的化するT細胞受容体(TCR)トランスジェニック細胞、および腫瘍特異的抗原を標的化するCAR-T細胞の中から選択される、請求項9に記載の細胞。
【請求項11】
血液悪性腫瘍由来の細胞株の改変または処理された細胞である、請求項1~4のいずれかに記載の細胞。
【請求項12】
a)前記細胞が、白血病細胞株、T細胞白血病細胞株、骨髄単球性白血病細胞株、リンパ腫細胞株、非ホジキンリンパ腫細胞株、バーキットリンパ腫細胞株、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫細胞株、マントル細胞リンパ腫細胞株、AML細胞株、CML細胞株、ALL細胞株、赤白血病細胞株、骨髄単芽球性白血病細胞株、悪性非ホジキンNKリンパ腫細胞株、骨髄腫/形質細胞腫細胞株、多発性骨髄腫細胞株およびマクロファージ細胞株の中から選択される血液悪性腫瘍細胞株のものである;または
b)前記細胞が、ヒト白血病、T細胞白血病、骨髄単球性白血病、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、赤白血病、骨髄単芽球性白血病、悪性非ホジキンNKリンパ腫、骨髄腫/形質細胞腫、多発性骨髄腫およびマクロファージ細胞株の中から選択される細胞株のものである、
請求項11に記載の細胞。
【請求項13】
ヒト腫瘍細胞株の改変または処理された細胞である、請求項1~4のいずれかに記載の細胞。
【請求項14】
NCI-60パネル、線維肉腫、肝癌、前立腺がん、乳がん、頭頸部がん、肺がん、膵臓がん、卵巣がん、結腸がん、胃がん、婦人科系がん、肉腫、黒色腫、扁平上皮癌、肝細胞癌、膀胱がん、腎細胞癌、胚性癌腫、精巣奇形腫、神経膠芽腫、星細胞腫、甲状腺癌または中皮腫細胞株から選択される改変または処理された細胞株である、請求項13に記載の細胞。
【請求項15】
GM-CSF全腫瘍細胞ワクチン(GVAX)の改変または処理された細胞である、請求項1~4のいずれかに記載の細胞。
【請求項16】
前記腫瘍溶解性ウイルスが、ニューカッスル病ウイルス、パルボウイルス、麻疹ウイルス、レオウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、アデノウイルス、ポリオウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、ポックスウイルス、コクサッキーウイルス(CXV)およびセネカバレーウイルス(SVV)の中から選択される、請求項1~15のいずれかに記載の細胞。
【請求項17】
前記ウイルスが、ONYX-015、CG00070、Oncorin(H101)、ColoAd1、ONCOS-102またはデルタ24-RGD/DNX-2401であるアデノウイルスである;または腫瘍溶解性に改変されたHSV-1ウイルスである;またはワクシニアウイルスであるポックスウイルスである、請求項1~16のいずれかに記載の細胞。
【請求項18】
前記腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍溶解性アデノウイルスである、請求項1~17のいずれかに記載の細胞。
【請求項19】
前記ウイルスがワクシニアウイルスであり、Lister株、ウエスタンリザーブ(WR)株、コペンハーゲン(Cop)株、Bern株、Paris株、Tashkent株、Tian Tan株、Wyeth株(DRYVAX)、IHD-J株、IHD-W株、Brighton株、Ankara株、CVA382株、Dairen I株、LC16m8株、LC16M0株、改変ワクシニアAnkara(MVA)株、ACAM株、WR 65-16株、Connaught株、ニューヨーク市保健局(NYCBH)株、EM-63株、NYVAC株、Lister株LIVP、JX-594株、GL-ONC1株、VGFおよびTKが欠失したvvDD TK突然変異株、ACAM2000ならびにACAM1000の中から選択される、請求項16または17に記載の細胞。
【請求項20】
前記ウイルスが、異種遺伝子産物を発現するように、および/または増加した腫瘍形成能を有するように、および/または減少した毒性(増加した弱毒化)を有するように改変される、請求項1~19のいずれかに記載の細胞。
【請求項21】
インターフェロン-γおよび/またはインターフェロン-βの阻害剤を発現するように改変されている;および/または
前記細胞にIL-10、TGFβ、VEGF、FGF-2、PDGF、HGF、IL-6、GM-CSF、RTK/mTORアゴニスト、Wntタンパク質リガンドおよびGSK3阻害剤/アンタゴニストのうちの1つ以上を搭載するための前処理または処理によってウイルス増幅を増強するように感作されている;および/または
前記細胞に、IFN I型/II型受容体を妨害する、下流シグナル伝達を妨害する、IFNAR1/IFNAR2シグナル伝達を妨害する、IFNGR1/IFNGR2シグナル伝達を妨害する、STAT1/2シグナル伝達を妨害する、Jak1シグナル伝達を妨害する、Jak2シグナル伝達を妨害する、IRF3シグナル伝達を妨害する、IRF7シグナル伝達を妨害する、IRF9シグナル伝達を妨害する、TYK2シグナル伝達を妨害する、TBK1シグナル伝達を妨害する、または前記細胞もしくは対象における腫瘍溶解性ウイルスに対する免疫応答に影響を及ぼす他のシグナル伝達経路を妨害する1つ以上の小分子またはタンパク質阻害剤を搭載するための前処理または処理によって抗ウイルス状態の誘導を遮断するように感作されている;および/または
前記細胞に、IFNシグナル伝達/応答性を妨害/調節解除するための1つ以上のHDAC阻害剤を搭載するための前処理または処理によって抗ウイルス状態の誘導を遮断するように感作されている;および/または
前記細胞に、IFNシグナル伝達/応答性を妨害/調節解除するための1つ以上のHDAC阻害剤を搭載するための前処理または処理によって抗ウイルス状態の誘導を遮断するように感作されており、ここで、前記HDAC阻害剤が、ボリノスタット、ロミデプシン、チダミド、パノビノスタット、ベリノスタット、バルプロ酸、モセチノスタット、アベキシノスタット、エンチノスタット、SB939、レスミノスタット、ギビノスタット、キシノスタット、HBI-8000、ケベトリン、CUDC-101、AR-42、CHR-2845、CHR-3996、4SC-202、CG200745、ACY-1215、ME-344、スルフォラファンおよびトリコスタチンの中から選択される、
請求項1~20のいずれかに記載の細胞。
【請求項22】
前記細胞にウイルス感知および/または抗ウイルス防御経路のアンタゴニストを搭載するための前処理または処理によって、抗ウイルス状態の誘導を遮断する、またはウイルス増幅を増強するように感作されている、請求項1~21のいずれかに記載の細胞。
【請求項23】
前記細胞が、前記細胞にウイルス感知および/または抗ウイルス防御経路のアンタゴニストを搭載するための前処理または処理によって、抗ウイルス状態の誘導を遮断する、またはウイルス増幅を増強するように感作されており、ここで、前記ウイルス感知および/または防御経路が、STING、PKR、RIG-1、MDA-5、OAS-1/2/3、AIM2、MAVS、RIP-1/3およびDAI(ZBP1)のうちの1つ以上によって媒介され;および/または
前記細胞が、前記細胞にウイルス感知経路のアンタゴニストを搭載するための前処理または処理によって、抗ウイルス状態の誘導を遮断する、またはウイルス増幅を増強するように感作されており、ここで、前記アンタゴニストが、K1、E3LおよびK3Lワクシニアタンパク質;NS1/NS2インフルエンザタンパク質;C型肝炎NS3-4A;アレナウイルスNPおよびZタンパク質;エボラウイルスVP35;HSV US11、ICP34.5およびICP0;MCMV M45;ならびにボルナ病ウイルスXタンパク質のうちの1つ以上から選択される、
請求項22に記載の細胞。
【請求項24】
前記細胞が、前記細胞に1つ以上のウイルス主要組織適合遺伝子複合体(MHC)アンタゴニストを搭載するための前処理または処理によって不活化/拒絶決定因子から保護するように感作されている、請求項1~16のいずれかに記載の細胞。
【請求項25】
前記細胞が、前記細胞に、ワクシニアのA40R MHCIアンタゴニスト;HIVのNefおよびTAT;アデノウイルスのE3-19K;HSV 1およびHSV2のICP47;牛痘のCPXV012およびCPXV203;水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)のORF66;エプスタインバーウイルス(EBV)のEBNA1、BNLF2a、BGLF5およびBILF1;ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)のUS2/gp24、US3/gp23、US6/gp21、US10およびUS11/gp33;アカゲザルCMV(RhCMV)のRh178/VIHCE;ヒトヘルペスウイルス(HHV)6またはHHV7のU21;カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)のLANA1、ORF37/SOX、kK3/MIR1およびkK5/MIR2;マウス肝炎ウイルス-68(MHV-68)のmK3;アルファヘルペスウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、ウシヘルペスウイルス-2(BHV-1)および仮性狂犬病ウイルス(PRV)のUL41/vhs;バリセロウイルス、BHV-1、ウマヘルペスウイルス1および4(EHV-1/4)ならびにPRVのUL49.5;ならびにマウスCMV(mCMV)のm4/gp34、m6/gp48、m27、m152/gp40のうちの1つ以上の中から選択される1つ以上のウイルス主要組織適合遺伝子複合体(MHC)アンタゴニストを搭載するための前処理または処理によって不活化/拒絶決定因子から保護するように感作されている;および/または
前記細胞が、前記細胞にヒトMHCクラスI鎖関連遺伝子MIC-AおよびMIC-Bのアンタゴニストまたはウイルス起源のベータ-2ミクログロブリン(B2M)アンタゴニストを搭載するための前処理または処理によって不活化/拒絶決定因子から保護するように感作されている、
請求項24に記載の細胞。
【請求項26】
前記細胞が、前記細胞に、ウイルス起源の免疫抑制因子を搭載するため、および/または抗原ペプチドトランスポーター-1/2(TAP-1およびTAP-2)およびタパシンのうちの1つ以上の小分子阻害剤1つ以上を搭載するための前処理または処理によって免疫抑制/免疫回避を増強するように感作されている、請求項1~25のいずれかに記載の細胞。
【請求項27】
前記免疫抑制因子が、免疫FAS/TNF/グランザイムB誘導アポトーシスの阻害剤;IL-1/NFκB/IRF3アンタゴニスト;IL-1およびtoll様受容体(TLR)アンタゴニスト;IL-1βアンタゴニスト;TNFα遮断薬;IFNα/β遮断薬;ならびにIFNγ遮断薬のうちの1つ以上の中から選択される、請求項26に記載の細胞。
【請求項28】
前記細胞に抗体もしくは小分子または補体タンパク質の他の阻害剤を搭載するための前処理または処理によって感作されている、請求項1~27のいずれかに記載の細胞。
【請求項29】
阻害される前記補体タンパク質がC3またはC5である、請求項28に記載の細胞。
【請求項30】
STING、PKR、RIG-I、MDA-5、OAS-1/2/3、AIM2、MAVS、RIP-1/3およびDAI(ZBP1)のうちの1つ以上のアゴニストで前処理される、請求項1~29のいずれかに記載の細胞。
【請求項31】
前記細胞が、補体因子(C1、C2、C3、C4、C5、MBL)のタンパク質アンタゴニスト、ワクシニアウイルス補体制御タンパク質(VCP)、ワクシニアウイルス補体阻害剤(B5R)、scFv抗CD1q、scFv抗CD1r、scFv抗CD1s、抗C3抗体、抗C5抗体、コンプスタチンファミリーのペプチドC3阻害剤、ヒト可溶性膜(s/m)タンパク質、ヒト補体因子Hおよび誘導体、ならびにコブラ毒因子および補体抑制活性を有する誘導体の中から選択される補体の機能を妨害する1つ以上のタンパク質アンタゴニストを発現するようにさらに操作される、請求項1~30のいずれかに記載の細胞。
【請求項32】
薬学的に許容される賦形剤中に請求項1~31のいずれかに記載の細胞を含む医薬組成物。
【請求項33】
固形腫瘍または血液悪性腫瘍を含むがんを有する対象の処置に使用するための請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記細胞が処置される前記対象に対して同種である、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
前記細胞が前記対象に対して自家である、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記細胞が前記対象にマッチングされる、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項37】
前記対象がヒトまたは非ヒト動物である、請求項3336のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項38】
前記がんが、白血病、リンパ腫、黒色腫、癌腫、肉腫、骨髄腫および神経芽細胞腫の中から選択される、請求項3337のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記がんが、膵臓がん、肺がん、卵巣がん、乳がん、子宮頸がん、膀胱がん、前立腺がん、脳がん、中枢神経系がん、腺癌、肝臓がん、皮膚がん、血液がん、胆道がん、骨がん、絨毛癌、結腸および直腸がん、結合組織がん、消化器系がん、子宮内膜がん、食道がん、眼がん、頭頸部がん、胃がん、上皮内新生物、腎臓がん、喉頭がん、口腔がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、呼吸器系がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、子宮がん、ならびに泌尿器系がんの中から選択される、請求項3338のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項40】
IFN-γで前処理された、ウイルスで感染されていない担体細胞と併用され、IFN-γで前処理された、ウイルスで感染されていない担体細胞が、前記医薬組成物の投与前に、または前記医薬組成物と同時に投与または使用される、請求項3339のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項41】
別の抗がん剤または別の抗がん療法による処置との併用処置において使用される、請求項3340のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項42】
前記併用処置が、免疫療法または免疫抑制薬である、別の抗がん剤または処置を含む、請求項41に記載の医薬組成物。
【請求項43】
前記併用処置が、外科手術、免疫共刺激アゴニスト、二重特異性T細胞誘導抗体、腫瘍特異的抗原を標的化するCAR-T細胞およびTCRトランスジェニックT細胞、チェックポイント阻害剤、化学療法化合物/抗体、ならびに免疫抑制薬のうちの1つ以上から選択される抗がん剤または処置を含む、請求項41に記載の医薬組成物。
【請求項44】
前記抗がん剤または処置が、CD28およびICOSの中から選択されるB7ファミリー;4-1BB、OX40、GITR、CD40、CD30およびCD27の中から選択されるTNFRファミリー;LIGHT;LT-α;PD-1、PD-2、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、IDO 1および2、CTNNB1(β-カテニン)、SIRPα、VISTA、LIGHT、HVEM、LAG3、TIM3、TIGIT、ガレクチン-9、KIR、GITR、TIM1、TIM4、CEACAM1、CD27、CD40/CD40L、CD48、CD70、CD80、CD86、CD112、CD137(4-1BB)、CD155、CD160、CD200、CD226、CD244(2B4)、CD272(BTLA)、B7-H2、B7-H3、B7-H4、B7-H6、ICOS、A2aR、A2bR、HHLA2、ILT-2、ILT-4、gp49B、PIR-B、HLA-G、ILT-2/4およびOX40/OX-40L、MDR1、アルギナーゼ1、iNOs、IL-10、TGF-β、pGE2、STAT3、VEGF、KSP、HER2、Ras、EZH2、NIPP1、PP1、TAK1およびPLK1aのうちの1つ以上を標的化するチェックポイント阻害剤;サイトカイン、ケモカイン、成長因子、光増感剤、毒素、抗がん抗生物質、化学療法化合物、放射性核種、血管新生阻害剤、シグナル伝達調節剤、代謝拮抗薬、抗がんワクチン、抗がんオリゴペプチド、有糸分裂阻害剤タンパク質、抗有糸分裂オリゴペプチド、抗がん抗体、免疫療法薬の中から選択される化学療法化合物および抗体;ならびにグルココルチコイド、カルシニューリン阻害剤、mTOR阻害剤、メトトレキサート、レナリドマイド、アザチオプリン、メルカプトプリン、フルオロウラシル、およびシクロホスファミド、TNFα遮断抗体、およびフルダラビンの中から選択される免疫抑制薬のうちの1つ以上の中から選択される、請求項41に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
優先権の利益は、2018年6月4日にDobrin DraganovおよびAladar A.Szalayによって提出され、「ウイルス療法を増強するための細胞ベースの媒体」と題された米国仮特許出願第62/680,570号に基づいて主張される。この出願の主題は、その全体が参照により組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
がんを治療するための担体細胞とウイルスの組み合わせおよび方法、ならびに治療のためにこれらを対象にマッチングさせる方法が本明細書で提供される。
【背景技術】
【0003】
腫瘍溶解性ウイルスは、がん療法として有望である。腫瘍溶解性ウイルスは、癌性細胞で蓄積および複製するように設計される。腫瘍溶解性ウイルスは、癌性細胞を溶解することができ、抗がん剤をコードおよび送達するために使用することもできる。しかしながら、腫瘍溶解性ウイルスの有効性は、循環中和抗体、自然免疫および適応免疫機構、ならびに癌性腫瘍/細胞におけるウイルスの送達および/または蓄積を妨害する他の排除機構によって妨げられうる。腫瘍溶解療法を行うための改善された送達方法が必要である。
【発明の概要】
【0004】
腫瘍溶解療法における問題は、治療対象の免疫系がウイルス感染を排除するように機能することである。腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍組織およびその他の免疫特権環境で優先的に複製するが、特に全身投与される場合、十分なウイルスが腫瘍および転移に到達するように、宿主の免疫(自然および適応)応答から逃れ、これを回避し、またはこれから保護されなければならない。これは、細胞を感染させ、細胞をウイルスの送達媒体(本明細書では担体細胞または細胞媒体とも呼ばれる)として使用することによって対処されてきた。がん細胞、腫瘍細胞、ならびにさまざまな種類の幹細胞および正常細胞が、循環中の補体および抗体によって媒介される中和から腫瘍溶解性ウイルスを保護するのを助けるために、腫瘍溶解性ウイルスを運ぶことができる。ウイルスは細胞内で複製することができ、同時に、腫瘍または腫瘍細胞に到達し、ウイルスを送達するのに十分な時間、宿主の免疫系から逃れることができなければならない。細胞を腫瘍溶解性または治療用ウイルスの担体細胞として適切にするのがこれらの特性である。しかしながら、一般に、細胞が、特に全身的に、ただし局所的にさえ投与される場合、それだけに限らないが、以下を含む課題が存在する:
-腫瘍環境への優先的なホーミングにもかかわらず、限定された送達効率:ほとんどの感染細胞は肺または他の臓器に閉じ込められ、腫瘍に首尾よく到達するのはごくわずかな割合のみである。腫瘍内注射は、投与された担体細胞の腫瘍内での不十分な保持、または循環への漏出を含む理由のために、送達を部分的にしか改善しない。
-ほとんどのがんは、腫瘍溶解性ウイルスに対する対象特異的およびがん型特異的な許容性が限られている(固有の耐性)。
-インターフェロンガンマ(IFNγ)産生を含む自然免疫および適応免疫によりウイルスが効率的に制御および排除されるので、限られた数のウイルスまたは感染した担体細胞のみが腫瘍でコロニー形成する。
-適切な腫瘍コロニー形成は、固有の腫瘍細胞耐性ならびに自然免疫および適応免疫障壁を克服するために、ウイルスの送達だけでなく、初期ブーストまたは重要な増幅工程も必要とする。
-既製(off-the-shelf)の幹細胞またはがん細胞の生存およびウイルス増幅能は、送達媒体として使用される場合、例えば、不活化および/または免疫学的拒絶を含む同種免疫応答によって影響を受けるだろう。
【0005】
これらの課題に対処し、腫瘍溶解療法のための改善された担体細胞およびウイルス含有細胞を提供するための方法、細胞および戦略が本明細書で提供される。細胞は、ウイルスを腫瘍に送達するために使用することができる任意のものを含み、幹細胞、腫瘍細胞、細胞株、初代細胞および培養初代細胞を含む。細胞は幹細胞を含むが、但し、胚性幹細胞または胚性幹細胞もしくは細胞株に由来する細胞が許可されていない場合、幹細胞への言及はこのような細胞を含まない。したがって、いくつかの実施形態では、細胞が、胚性幹細胞および/または胚性幹細胞もしくは細胞株に由来する細胞を除く、任意の幹細胞を含む。細胞は自家または同種であることができる。本明細書の方法は、既製の同種幹細胞およびがん細胞株を含む同種細胞を使用して、腫瘍溶解性ウイルスを送達するだけでなく、その強力な腫瘍内増幅も提供し、それによって既存の同種障壁を克服することを可能にする。本明細書で提供される細胞は、腫瘍溶解性ウイルスを腫瘍に送達するための改善された特性を有する。任意の投与経路が企図されるが、細胞は全身投与を介して投与することができる。細胞は、補体を含む宿主免疫系、および宿主抗ウイルス免疫応答を排除、減少、または回避するように改変および/または処理(感作)される。細胞はまた、治療量が腫瘍、転移、および/または腫瘍微小環境に送達されるように、目的の特定の腫瘍溶解性ウイルスが細胞内で複製できるように改変または操作または選択される。
【0006】
本明細書における知見の中で、以下が本明細書で示される:
【0007】
細胞ベースの送達媒体(幹細胞またはがん細胞)の高い固有のウイルス増幅能力は、インサイチュ/インビボでの担体細胞による腫瘍溶解性ウイルスの腫瘍内増幅の能力を保証するのに十分ではない。細胞ベースの送達媒体の増幅能は、ウイルスまたは細胞、特に同種担体細胞に対する個々の対象の免疫応答によって制限または完全に遮断されうる。この課題は、以下の1つ以上を含む代替および補完戦略を採用することによって克服できる。1)患者と同種細胞ベースの送達媒体との間のアッセイベースのマッチング;2)腫瘍溶解性ウイルスの増幅および送達を改善するための細胞ベースの送達媒体の感作および保護;ならびに3)細胞ベースの送達媒体に特定の遺伝子改変を導入することによる、自然免疫および適応免疫の障壁に対する耐性の操作。
【0008】
細胞内でのウイルス増幅を増加させるもしくは維持する、および/または補体もしくは同種認識などの宿主免疫応答を減少させることができる、および/または同種認識もしくは補体を回避するように細胞を感作させるもしくは操作する因子および処理および/または改変、ならびに/あるいは細胞がウイルスを腫瘍に送達するおよびウイルスが複製するのに十分な時間を可能にする他のこのような応答によって、腫瘍溶解療法が改善され、課題が解決されることが本明細書で示されている。I型およびII型インターフェロン(IFN)は、幹細胞および一部の腫瘍細胞における抗ウイルス状態の強力な誘導物質である。これは、これらの細胞が感染してウイルス増幅を支持する能力を妨害する。ウイルス感染の検出および抗ウイルス状態の誘導を遮断することが、ウイルスの感染、増幅および拡散に対する感作によりさまざまな幹細胞および腫瘍細胞を腫瘍溶解性ウイルスの担体として機能させる治療能を増強できることが本明細書で示されている。細胞媒体を、ウイルス増幅を増強する、および/またはウイルス含有細胞を宿主に投与する際の抗ウイルス状態の誘導を抑制するように、感作する、例えば、処理もしくは前処理、および/または操作することができる。これを達成するための標的には、例えば、インターフェロンシグナル伝達の阻害および/またはJAK1/2の阻害などのJAK-STATシグナル伝達経路の阻害が含まれる。細胞を、インターフェロンまたはインターフェロンシグナル伝達経路の阻害剤を発現するように処理または操作することができる。例えば、細胞、腫瘍細胞および/または幹細胞を、投与前に、JAK1/2阻害剤および/またはインターフェロン阻害剤で前処理することができる。このようなものの例は、ルキソリチニブ、オクラシチニブおよびバリシチニブである。
【0009】
ヒト血清は、ウイルス増幅および/またはウイルス粒子の放出を完了する前にウイルス感染担体細胞を直接攻撃および殺傷し、よって、標的腫瘍細胞へのウイルス拡散を制限することを含む、幹細胞担体への多数の有害効果を有することができる。細胞を、補体から保護または補体を回避するように前処理または操作することができる。標的には、補体タンパク質C3またはC5などの、補体活性化のための古典的および代替経路が含まれる。Soliris(登録商標)(Alexion)の名称で販売されている抗C5抗体などの阻害抗体、およびコンプスタチンなどのC3切断の阻害剤、およびその他のこのような補体活性化阻害剤を使用して、細胞を補体から保護することができる。補体活性化のさまざまな阻害剤は当技術分野で周知である。
【0010】
細胞を、同種認識および拒絶を担う決定因子を抑制および/または排除するように処理または操作することができる。これにより、同種幹細胞または腫瘍細胞が腫瘍溶解性ウイルスを既製の様式で送達し、同種認識および拒絶を回避する治療能を増強できる。このような同種拒絶決定因子には、CD8およびCD4 T細胞によって認識される高度に多型で患者特異的なMHCクラスIおよびクラスII分子、ならびにそれだけに限らないが、MHC様MICA/MICBおよびCD1a、b、c、d分子ならびにその他のさまざまなストレス関連またはストレス感知分子、例えばブチロフィリンおよびアネキシンA2を含む、NKT、iNKTなどのさまざまな自然T細胞亜集団、および混合型の自然/適応集団、例えばγδ(gd)T細胞によって認識される広範囲の多型性の低い決定因子が含まれる。したがって、細胞を、同種認識/拒絶標的を回避または阻害するように感作させる/操作することができる。このような標的には、例えば、NK細胞、CD8+細胞、CD4+細胞のサブセット、およびガンマ-デルタT細胞(gd T細胞またはγδ T細胞)上で発現される活性化受容体である、HLA-A、HLA-B、HLA-CおよびNKG2Dを含む、T細胞およびNK細胞による同種拒絶の決定因子が含まれる。HLA決定因子に対する免疫応答は、例えば、Tue39(BioLegend)などの汎HLA遮断抗体などの汎HLA-A、B、C遮断で遮断することができる。
【0011】
同種およびウイルス感染幹細胞または腫瘍担体細胞の免疫学的応答および拒絶は、典型的には、ウイルス感染腫瘍細胞または形質転換腫瘍細胞の表面で上方制御され、免疫共刺激分子として機能するさまざまな非MHCマーカーの関与によって増強されうる。このようなマーカーは、担体細胞が免疫学的拒絶を回避する能力を直接調節することができる。例えば、NKG2D分子(受容体)は、ウイルス感染腫瘍細胞および形質転換腫瘍細胞の認識および拒絶に関与する共刺激分子として機能する、ヒトMICAおよびMICBなどのさまざまなMHCクラスI関連タンパク質を認識する。本明細書に示されるように、これらは、腫瘍溶解性ウイルス担体の免疫回避能の調節において役割を果たす。NKG2D分子は複雑な生物学を有し、NKおよびCD8 T細胞によって媒介される自然および適応細胞性免疫によって標的化される細胞を感作させる、または表面から放出され、分泌されると、強力な免疫抑制因子としても機能することができる。NKG2Dは、その活性化を遮断することによって直接、および/またはMICA、MICBなどのそのリガンドを阻害することによって阻害することができる。HLA遮断は、細胞による免疫回避を増強し;NKG2Dの関与は、細胞による免疫回避を損なう。
【0012】
幹細胞および腫瘍細胞は、IDO発現およびIL-10分泌を含む、免疫抑制および回避のためのさまざまな戦略を使用する。担体細胞内のウイルス増幅は、細胞生存率および免疫抑制能を徐々に喪失させる。この制限を克服するために、細胞が、免疫抑制剤を発現するように処理または操作される。例えば、細胞が、ウイルスによって媒介される免疫抑制特性の喪失を逆転させ、ウイルス感染担体細胞が同種拒絶/応答または早期の免疫認識を回避する能力を改善するように、高用量の免疫抑制サイトカインIL-10で処理される。細胞を、IL-10などの免疫抑制因子またはPDL-1/PD-1経路のメンバーで感作させる、またはこれらを分泌するように操作することができる。例えば、細胞に対する免疫応答を抑制するIL-10を発現するように細胞を前処理または操作する。
【0013】
上記は、同種幹細胞および腫瘍細胞を含む腫瘍細胞および幹細胞を含む細胞担体を、治療上有効量のウイルスの標的腫瘍細胞への送達を改善するまたは増加させるように処理または改変することができ、ウイルス増幅を増加させるまたは維持するように処理/操作することもできる方法の例である。処理は、細胞の投与前に行うことができる、または薬剤の同時投与によって行うことができる。以下の表は、標的、処理および改変の例を提供する。これらおよびその他は、以下の説明および例に詳述される。
【0014】

【0015】
【0016】



【0017】
ウイルスおよび幹細胞に対する免疫応答の患者特異的な差異を捕捉する方法であって、適切な対象-担体細胞マッチングを提供することと、既製の同種細胞ベースの送達プラットフォームの有効な使用および/または上で論じられる課題に対処するウイルス細胞担体として使用するための同種細胞の開発を可能にすることとを含む方法が本明細書で提供される。腫瘍溶解性ウイルス送達のための同種幹細胞の使用は、細胞の長期生存および生着の必要性の欠如によって促進され;したがって、本明細書の方法は、軽微なMHCミスマッチ障壁を越えて機能することができる。対象および担体細胞を、本明細書に記載されるように処理および改変し、ウイルスの有効な送達のために対象にマッチングさせることができる。したがって、自家幹細胞アプローチの実行可能な代替案が提供される。
【0018】
腫瘍溶解性ウイルスの腫瘍細胞への送達を改善する方法が本明細書で提供される。細胞媒体は、ウイルスが循環抗体および免疫機構を回避するのを助け、ウイルスを癌性腫瘍/細胞に送達する、ウイルスを送達するための担体(担体細胞)として使用されてきた。細胞媒体は、腫瘍部位でのウイルスの増幅を増大させ、それによってその治療有効性を増加させ、ウイルスが固有の腫瘍細胞耐性ならびに自然免疫および適応免疫の障壁を克服することを可能にすることができる。治療対象の免疫応答を回避する能力が改善された担体細胞(細胞媒体)が本明細書で提供される。担体細胞を対象にマッチングさせて免疫系を最も良く回避し、また担体細胞をウイルスとマッチングさせ、担体細胞およびウイルスを治療される対象とマッチングさせる方法が提供される。特に、腫瘍溶解性ウイルスを含む同種担体細胞で対象を治療する方法が提供される。同種担体細胞は、本明細書に記載される方法によって対象にマッチングされる。ウイルスおよび担体細胞は、一般に、投与前に共培養されるが、これらは、異なる組成物で、連続してなど、別々に投与することができる。また、ウイルスと共培養したまたはウイルスに感染した担体細胞を投与することができ、ウイルスと共培養していないまたはウイルスに感染していない追加の担体細胞を投与することができる。
【0019】
細胞内でのウイルス増幅を増加させるもしくは維持する、および/または補体および/またはHLA応答などの宿主免疫応答を減少させる因子および処理および/または細胞の改変、ならびにウイルスを腫瘍に送達するのに十分な時間を可能にする細胞に対する他のこのような応答によって、腫瘍溶解療法が改善され、課題が解決されることが本明細書で示されている。
【0020】
同種細胞を対象にマッチングさせて、細胞がウイルスを増幅し、ウイルスを細胞に送達できる前に、細胞を殺傷または阻害する宿主免疫応答を回避するまたは減少させる方法も提供される。この方法は、特定の細胞型に適したウイルスを選択するのにも役立つことができる。
【0021】
腫瘍溶解性ウイルスが担体細胞内で複製することができる、腫瘍溶解性ウイルスを含む担体細胞であって、ヒト対象に投与することができ;ヒト対象に投与するために担体細胞の免疫抑制特性または免疫特権特性を増強するように、処理もしくは改変されている、またはその両方であり;任意に、担体細胞内のウイルスの増幅を増強するように処理または改変されている、担体細胞が本明細書で提供される。ヒト対象に投与するために細胞の免疫抑制特性または免疫特権特性を増強するように、処理もしくは改変されている、またはその両方であり;細胞内のウイルスの増幅を増強するように処理または改変されている担体細胞が提供される。腫瘍溶解性ウイルス増幅に許容性であり、腫瘍内で蓄積する担体細胞、および/またはウイルスを対象の腫瘍に送達するのに十分な時間、対象の免疫系によって認識されない担体細胞も提供される。目標は、ウイルスを増幅し、ウイルスを腫瘍および転移に送達するのに十分長く細胞が生き残ることである。最終的に、細胞はウイルスによって溶解されるため、数が減少する。担体細胞は、処理または改変された幹細胞、免疫細胞および腫瘍細胞である。担体細胞が幹細胞であるいくつかの実施形態では、細胞が、胚性幹細胞でも胎児性幹細胞でもなく、胚性細胞株に由来もしない。担体細胞を、対象から取り出すもしくは採取して、腫瘍溶解性ウイルスに感染させることができる、または担体細胞は同種であることができる。幹細胞は、成体幹細胞、または許可されている場合、胚性幹細胞もしくは胎児性幹細胞であることができる。例示的な担体細胞は、間葉系、神経系、全能性、多能性、人工多能性、複能性、少能性、単能性、脂肪間質、内皮、骨髄、臍帯血、成体末梢血、筋芽細胞、小幼若、上皮、胚性上皮、および線維芽細胞幹細胞の中から選択することができる。いくつかの実施形態では、担体細胞が間葉系幹細胞である。間葉系幹細胞の例は、成体骨髄、脂肪組織、血液、歯髄、新生児臍帯、臍帯血、胎盤の間葉系細胞、胎盤由来接着性間質細胞、胎盤由来脱落膜間質細胞、子宮内膜再生細胞、胎盤二能性内皮/間葉系前駆細胞、羊膜または羊水間葉系幹細胞、羊水由来前駆細胞、ホウォートンゼリー間葉系幹細胞、骨盤帯幹細胞、絨毛膜絨毛間葉系間質細胞、皮下白色脂肪間葉系幹細胞、周皮細胞、洞周囲細網幹細胞(adventitial reticular stem cell)、毛包由来幹細胞、造血幹細胞、骨膜由来間葉系幹細胞、側板間葉系幹細胞、脱落乳歯幹細胞、歯根膜幹細胞、歯小嚢前駆細胞、歯乳頭由来幹細胞、もしくは筋サテライト細胞、またはこれらの混合物である。
【0022】
いくつかの実施形態では、担体細胞が、脂肪間質間葉系細胞などの脂肪間質細胞である。例えば、細胞は外膜上-脂肪間質細胞(SA-ASC;CD235a-/CD45-/CD34+/CD146-/CD31-)、および/または周皮細胞(CD235a-/CD45-/CD34-/CD146+/CD31-)、例えば外膜上-脂肪間質細胞(CD34+SA-ASC)であることができる。他の実施形態では、担体細胞を、内皮前駆細胞、胎盤内皮前駆細胞、血管新生内皮細胞および周皮細胞の中から選択することができる。許可されている場合、担体細胞が胚性上皮細胞であることができる。
【0023】
他の実施形態では、担体細胞が免疫細胞であることができる。免疫細胞は、顆粒球、肥満細胞、単球、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、リンパ球、腫瘍特異的抗原を標的化するT細胞受容体(TCR)トランスジェニック細胞、および腫瘍特異的抗原を標的化するCAR-T細胞の中から選択することができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、担体細胞が、血液悪性腫瘍(hematological malignancy)細胞株の改変または処理された細胞である。一般的に、悪性細胞は、複製できないように処理される。
【0025】
全ての実施形態で、担体細胞が治療される対象に対して同種であることができる、または担体細胞が自家性であることができる。同種の場合、担体細胞を、治療対象の免疫応答を回避するもしくはこれを受けないように処理もしくは感作させることができる、および/またはウイルスを腫瘍に送達するのに十分な時間、このような応答を回避するように対象にマッチングさせることができる。
【0026】
担体細胞は、それだけに限らないが、ヒト白血病、T細胞白血病、骨髄単球性白血病、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、赤白血病、骨髄単芽球性白血病、悪性非ホジキンNKリンパ腫、骨髄腫/形質細胞腫、多発性骨髄腫およびマクロファージ細胞株などの細胞株の細胞であることができる。このような細胞株の例は、以下の中から選択されるものである:
KASUMI-1、HL-60、THP-1、K-562、RS4;11、MOLT-4、CCRF-CEM、JVM-13、31E9、ARH-77、MoB、JM1、NALM-1またはProPak-X.36である白血病細胞株;
HM-2、CEM-CM3、Jurkat/JurkatクローンE6-1、J.CaM1.6、BCL2 Jurkat、BCL2 S87A Jurkat、BCL2 S70A Jurkat、Neo Jurkat、BCL2 AAA Jurkat、J.RT3-T3.5、J45.01、J.γ1、J.γ1.WT、JK28、P116、P116.cl39、A3、JX17、D1.1、I 9.2またはI 2.1であるT細胞白血病細胞株;
MV-4-11である骨髄単球性白血病細胞株;
HT、BC-3、CA46、Raji、Daudi、GA-10-クローン-4、HHまたはH9であるリンパ腫細胞株;
SU-DHL-1、SU-DHL-2、SU-DHL-4、SU-DHL-5、SU-DHL-6、SU-DHL-8、SU-DHL-10、SU-DHL-16、NU-DUL-1、NCEB-1、EJ-1、BCP-1、TURまたはU-937である非ホジキンリンパ腫細胞株;
Ramos/RA 1、Ramos.2G6.4C10、P3HR-1、Daudi、ST486、Raji、CA46、バーキットリンパ腫患者のヒトガンマヘルペスウイルス4/HHV-4頬腫瘍、DG-75、GA-10、NAMALWA、HS-Sultan、Jiyoye、NC-37、20-B8、EB2、1G2、EB1、EB3、2B8、GA-10クローン20またはHKB-11/腎臓-B細胞ハイブリッドであるバーキットリンパ腫細胞株;
ToledoまたはPfeifferであるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫細胞株;
JeKo-1、JMP-1、PF-1、JVM-2、REC-1、Z-138、MinoまたはMAVER-1であるマントル細胞リンパ腫細胞株;
AML-193、BDCM、KG-1、KG-1a、Kasumi-6またはHL-60/S4であるAML細胞株;
K562、K562-r、K562-s、LAMA84-r、LAMA84-s、AR230-rまたはAR230-sであるCML細胞株;
N6/ADR、RS4;11、NALM6クローンG5、Loucy、SUP-B15またはCCRF-SBであるALL細胞株;
IDH2-突然変異体-TF-1同質遺伝子細胞株である赤白血病細胞株;
GDM-1である骨髄単芽球性白血病細胞株;
NK-92またはNK-92MIである悪性非ホジキンNKリンパ腫細胞株;
U266B1/U266、HAA1、SA13、RPMI-8226、NCI-H929またはMC/CARである骨髄腫/形質細胞腫細胞株;
MM.1R、IM-9またはMM.1Sである多発性骨髄腫細胞株;および
MD、SCまたはWBC264-9Cであるマクロファージ細胞株。
【0027】
担体細胞は、以下の中から選択される改変または処理された細胞であることができる:
APCETH-201(APCETH)、APCETH-301(APCETH)、Cx601(TIGENIX)、TEMCELL、MSC-100-IVまたはProchymal(MESOBLAST)である間葉系幹細胞株;または
ToleraCyte(Fate Therapeutics)である人工多能性幹細胞(iPSC);または
CCD-16LuまたはWI-38である線維芽細胞細胞株;または
Malme-3M、COLO 829、HT-144、Hs 895.T、hTERTまたはPF179T CAFである腫瘍関連線維芽細胞細胞株;または
HUVEC、HUVEC/TERT 2またはTIMEである内皮細胞株;または
HEK-293、HEK-293 STF、293T/17、293T/17 SFまたはHEK-293.2susである胚性上皮細胞株;または
hESC BG01Vである胚性幹細胞株;または
NuLi-1、ARPE-19、VK2/E6E7、Ect1/E6E7、RWPE-2、WPE-stem、End1/E6E7、WPMY-1、NL20、NL20-TA、WT 9-7、WPE1-NB26、WPE-int、RWPE2-W99またはBEAS-2Bである上皮細胞株。
【0028】
担体細胞は、ヒト血液悪性腫瘍細胞株である細胞株の改変または処理された細胞であることができる。担体細胞は、ヒト腫瘍細胞株の改変または処理された細胞であることができる。細胞株には、それだけに限らないが、NCI-60パネル、線維肉腫、肝癌、前立腺がん、乳がん、頭頸部がん、肺がん、膵臓がん、卵巣がん、結腸がん、胃がん、婦人科系がん、肉腫、黒色腫、扁平上皮癌、肝細胞癌、膀胱がん、腎細胞癌、胚性癌腫、精巣奇形腫、神経膠芽腫、星細胞腫、甲状腺癌または中皮腫細胞株から選択される細胞株が含まれる。
【0029】
担体細胞は、GM-CSF全腫瘍細胞ワクチン(GVAX)の改変または処理された細胞であることができる。GVAXを、ウイルスを腫瘍に送達するのに十分な時間、抗ウイルス応答も他の免疫応答も誘導しないように、本明細書に記載されるように改変または処理することができる。例示的なGVAXには、それぞれが本明細書に記載されるように改変または処理される、GVAX前立腺;GVAX膵臓;GVAX肺;またはGVAX腎細胞が含まれる。
【0030】
腫瘍溶解性ウイルスは、当業者に既知の任意のものであることができる。ニューカッスル病ウイルス、パルボウイルス、麻疹ウイルス、レオウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、アデノウイルス、ポリオウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、ポックスウイルス、コクサッキーウイルス(CXV)およびセネカバレーウイルス(SVV)の中から選択される腫瘍溶解性ウイルスが含まれる。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスが、それだけに限らないが、天然痘ワクチンなどのワクシニアウイルスである。例示的なワクシニアウイルスには、Lister株、ウエスタンリザーブ(WR)株、コペンハーゲン(Cop)株、Bern株、Paris株、Tashkent株、Tian Tan株、Wyeth株(DRYVAX)、IHD-J株、IHD-W株、Brighton株、Ankara株、CVA382株、Dairen I株、LC16m8株、LC16M0株、改変ワクシニアAnkara(MVA)株、ACAM株、WR 65-16株、Connaught株、ニューヨーク市保健局(NYCBH)株、EM-63株、NYVAC株、Lister株LIVP、JX-594株、GL-ONC1株、ならびにVGFおよびTKが欠失したvvDD TK突然変異株(例えば、McCartら(2001)Cancer Res.61:8751~8757参照)に由来するものが含まれる。例えば、ワクシニアウイルスはACAM2000またはACAM1000であることができる。
【0031】
ウイルスは、例えば、ONYX-015、CG00070、Oncorin(H101)、ColoAd1、ONCOS-102またはデルタ24-RGD/DNX-2401などの腫瘍溶解性アデノウイルスであることができる。ウイルスは、改変されたHSV-1ウイルス、または麻疹ウイルスであることができる。
【0032】
腫瘍溶解性ウイルスは、異種遺伝子産物を発現するように、および/または増加した腫瘍形成能を有するように、および/または減少した毒性(増加した弱毒化)を有するように改変することができる。ウイルスは、培養物または対象において検出するための検出可能なマーカーをコードすることができる。例えば、マーカーはTurbo-RedまたはGFPなどの蛍光タンパク質であることができる。
【0033】
担体細胞を、以下のうちの1つ以上を(感作も、処理も、操作もされていないウイルスと比較して)達成、増強または改善するように、感作させるまたは処理するまたは操作することができる:細胞内のウイルス増幅、対象もしくは腫瘍微小環境における抗ウイルス状態の誘導の遮断、免疫抑制/免疫回避、同種不活化/拒絶決定因子からの保護、および/または補体からの保護。ウイルス増幅を増強もしくは改善するように感作もしくは操作された;または対象もしくは腫瘍微小環境における抗ウイルス状態の誘導を遮断するように感作もしくは処理もしくは操作された;またはサイトカインもしくは成長因子の1つ以上による前処理もしくは処理によってウイルス増幅を増強するように処理、感作もしくは操作された担体細胞が提供される。例えば、担体細胞を、インターフェロン-γおよび/またはインターフェロン-βを阻害するように処理する、あるいはこれらの阻害剤を発現するように改変することができる。いくつかの実施形態では、細胞を薬剤で処理する代わりに、薬剤および細胞を宿主に同時投与することができる。
【0034】
ウイルス増幅を増強するように感作された担体細胞の例は、細胞にIL-10、TGFβ、VEGF、FGF-2、PDGF、HGF、IL-6、GM-CSF、RTK/mTORアゴニスト、Wntタンパク質リガンドおよびGSK3阻害剤/アンタゴニストのうちの1つ以上を搭載するための前処理または処理によって感作されたものである。抗ウイルス状態の誘導を遮断するように感作された担体細胞の例は、細胞に、IFN I型/II型受容体を妨害する、下流IFNシグナル伝達を妨害する、IFNAR1/IFNAR2シグナル伝達を妨害する、IFNGR1/IFNGR2シグナル伝達を妨害する、STAT1/2シグナル伝達を妨害する、Jak1シグナル伝達を妨害する、Jak2シグナル伝達を妨害する、IRF3シグナル伝達を妨害する、IRF7シグナル伝達を妨害する、IRF9シグナル伝達を妨害する、TYK2シグナル伝達を妨害する、TBK1シグナル伝達を妨害する、または細胞もしくは対象の腫瘍溶解性ウイルスに対する免疫応答に影響を及ぼす他のシグナル伝達経路を妨害する1つ以上の小分子またはタンパク質阻害剤を搭載するための前処理または処理によって感作されたものである。抗ウイルス状態の誘導を遮断するように感作された細胞の例は、細胞に、IFNシグナル伝達/応答性を妨害/調節解除するための1つ以上のHDAC阻害剤を搭載するための前処理または処理によって感作されたものである。例示的なHDAC阻害剤には、それだけに限らないが、ボリノスタット、ロミデプシン、チダミド、パノビノスタット、ベリノスタット、バルプロ酸、モセチノスタット、アベキシノスタット、エンチノスタット、SB939、レスミノスタット、ギビノスタット、キシノスタット、HBI-8000、ケベトリン、CUDC-101、AR-42、CHR-2845、CHR-3996、4SC-202、CG200745、ACY-1215、ME-344、スルフォラファンまたはトリコスタチンの中から選択されるものが含まれる。抗ウイルス状態の誘導を遮断する、またはウイルス増幅を増強するように感作された担体細胞の例は、細胞にウイルス感知および/または抗ウイルス防御経路のアンタゴニストを搭載するための前処理または処理によって感作されたものである。ウイルス感知および/または防御経路には、STING、PKR、RIG-1、MDA-5、OAS-1/2/3、AIM2、MAVS、RIP-1/3およびDAI(ZBP1)のうちの1つ以上によって誘導または調節されるものが含まれる。これらの経路のうちの1つ以上に影響を及ぼすアンタゴニストには、例えば、K1、E3LおよびK3Lワクシニアタンパク質;NS1/NS2インフルエンザタンパク質;C型肝炎NS3-4A;アレナウイルスNPおよびZタンパク質;エボラウイルスVP35;HSV US11、ICP34.5およびICP0;MCMV M45;ならびにボルナ病ウイルスXタンパク質のうちの1つ以上が含まれる。
【0035】
担体細胞を不活化/拒絶決定因子から保護するように感作された担体細胞の例は、細胞に1つ以上のウイルス主要組織適合性(MHC)アンタゴニストを搭載するための前処理または処理によって感作されたものである。例示的なMHCアンタゴニストには、ワクシニアのA40R MHCIアンタゴニスト;HIVのNefおよびTAT;アデノウイルスのE3-19K;HSV 1およびHSV2のICP47;牛痘のCPXV012およびCPXV203;水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)のORF66;エプスタインバーウイルス(EBV)のEBNA1、BNLF2a、BGLF5およびBILF1;ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)のUS2/gp24、US3/gp23、US6/gp21、US10およびUS11/gp33;アカゲザルCMV(RhCMV)のRh178/VIHCE;ヒトヘルペスウイルス-6(HHV6)またはHHV7のU21;カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)のLANA1、ORF37/SOX、kK3/MIR1およびkK5/MIR2;マウス肝炎ウイルス-68(MHV-68)のmK3;アルファヘルペスウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、ウシヘルペスウイルス-2(BHV-1)および仮性狂犬病ウイルス(PRV)のUL41/vhs;バリセロウイルス、BHV-1、ウマヘルペスウイルス1および4(EHV-1/4)ならびにPRVのUL49.5;ならびにマウスCMV(mCMV)のm4/gp34、m6/gp48、m27、m152/gp40のうちの1つ以上の中から選択されるものが含まれる。前処理または処理のための他のアンタゴニストは、細胞にヒトMHCクラスI鎖関連遺伝子MIC-AおよびMIC-Bのアンタゴニストまたはウイルス起源のベータ-2ミクログロブリン(B2M)アンタゴニストを搭載するために処理されるものである。
【0036】
免疫抑制/免疫回避を増強するように感作された担体細胞の例は、細胞にウイルス起源の免疫抑制因子を搭載するための前処理または処理によって感作されたものである。このような因子の例は、免疫FAS/TNF/グランザイムB誘導アポトーシスの阻害剤、IL-1/NFkB/IRF3アンタゴニスト、IL-1およびtoll様受容体(TLR)アンタゴニスト、IL-1βアンタゴニスト、TNFα遮断薬、IFNα/β遮断薬、ならびにIFNγ遮断薬のうちの1つ以上である。
【0037】
免疫抑制/免疫回避を増強するように感作された担体細胞の例は、細胞に、抗原ペプチドトランスポーター-1/2(TAP-1およびTAP-2)およびタパシンのうちの1つ以上の1つ以上の小分子阻害剤を搭載するための前処理または処理によって感作されたものである。
【0038】
担体細胞を、補体から保護するように感作させることもできる。これは、例えば、細胞に抗体もしくは小分子または補体タンパク質の他の阻害剤を搭載するための前処理または処理によって行うことができる。標的化することができる補体タンパク質には、C3およびC5が含まれる。上記および下記のように、ならびに本明細書に例示されるように、それぞれに特異的なアンタゴニスト抗体、および小分子阻害剤を含む、C3およびC5の多数の既知の阻害剤が存在する。
【0039】
担体細胞は一般に、感作または保護する薬剤で前処理される。前処理は、ウイルス感染の前、ウイルス感染後、または対象への投与前、または貯蔵前に、15分~48時間行うことができる。
【0040】
担体細胞を、ウイルス媒介殺傷を減少させるまたは制限するために、延長された生存期間および改善された局所免疫抑制のために感作させるまたは操作することもできる。これを行うための薬剤には、STING、PKR、RIG-I、MDA-5、OAS-1/2/3、AIM2、MAVS、RIP-1/3およびDAI(ZBP1)のうちの1つ以上などのアゴニストが含まれ、これらは、担体細胞がウイルスによってあまりにすぐに殺傷されず、ウイルスを腫瘍に送達する前に宿主の免疫系によって殺傷も阻害もされないように、発現を適切に計時するプロモーターの制御下での細胞もしくはウイルスによる発現のために、または対象への投与によって操作することができる。
【0041】
本明細書で提供される担体細胞を、改善されたウイルス増幅および/または免疫調節のために操作することもできる。これは、例えば、以下のうちの1つ以上によって行うことができる:a)インターフェロンによって誘導される抗ウイルス状態を防止するためまたはこれに応答しないようにするための操作;b)T細胞およびNKT細胞のうちの1つ以上による同種認識ならびに/あるいはγδ T細胞の適応免疫応答を回避するための操作;c)NK細胞による同種認識および/またはγδ T細胞の自然免疫応答を回避するための操作;d)同種抗担体細胞または抗ウイルス免疫応答を防止/阻害するためのヒトまたはウイルス起源の免疫抑制因子を発現するための操作;e)他の方法では非許容性の担体細胞および/または腫瘍細胞のウイルス感染を促進するがんまたは幹細胞由来因子を発現するための操作;およびf)補体および/または中和抗体の機能を妨害する因子を発現するための操作。
【0042】
例えば、a)の場合、担体細胞を、IFN I型/II型受容体および/または下流シグナル伝達の一過的または永続的な抑制によって、インターフェロンによって誘導される抗ウイルス状態を防止するまたはこれに応答しないように操作することができ、永続的な抑制は、抑制される遺伝子座を欠失させることによって行うことができる。抑制は、I型/II型インターフェロン受容体発現、IFN α/β受容体発現、IFNγ受容体発現、IFNAR1/IFNAR2受容体発現、IFNGR1/IFNGR2受容体発現、STAT1/2受容体発現、Jak1/2受容体発現、IRF3受容体発現、IRF7受容体発現、IRF9受容体発現、TYK2キナーゼ発現およびTBK1キナーゼ発現のうちの1つ以上の抑制によって行うことができる。a)の別の例では、担体細胞を、サイトゾルウイルスDNA/RNA感知および抗ウイルス防御機構の要素の一過的または永続的な抑制によって、インターフェロンによって誘導される抗ウイルス状態を防止するまたはこれに応答しないように操作することができる。これは、STING、PKR、RIG-1、MDA-5、OAS-1/2/3、AIM2、MAVS、RIP-1/3およびDAI(ZBP1)のうちの1つ以上を抑制することによって行うことができる。他の実施形態では、担体細胞を、a)STING、PKR、RIG-1、MDA-5、OAS-1/2/3、AIM2、MAVS、RIP-1/3、DAI(ZBP1)によって媒介されるウイルス感知および抗ウイルス防御経路のアンタゴニストの一過的または永続的な発現によって、インターフェロンによって誘導される抗ウイルス状態を防止するまたはこれに応答しないように操作することができる。アンタゴニストには、それだけに限らないが、K1、E3LおよびK3Lワクシニアタンパク質;NS1/NS2インフルエンザタンパク質;C型肝炎NS3-4A;アレナウイルスNPおよびZタンパク質;エボラウイルスVP35;HSV US11、ICP34.5およびICP0;MCMV M45;ならびにボルナ病ウイルスXタンパク質のうちの1つ以上が含まれる。
【0043】
例えば、b)の場合、担体細胞を、T細胞およびNKT細胞のうちの1つ以上による同種認識ならびに/あるいはγδ T細胞の適応免疫応答を回避するように操作することができる。これは、例えば、(i)以下のうちの1つ以上の一過的または永続的な抑制:MHCクラスI分子、MHCクラスII分子、MHC様分子、ならびにMHCクラスI、MHCクラスIIおよびMHC様分子の転写または発現の調節因子;および/または(ii)ウイルス起源のB2Mアンタゴニストおよび/またはウイルス起源のMHCアンタゴニストの一過的または永続的な発現、のいずれかまたは両方によって行うことができる。MHCクラスI分子の1つ以上の一過的または永続的な抑制は、例えば、HLA-A、Bおよび/またはCの永続的または一過的な抑制によって行うことができ;MHCクラスII分子の1つ以上の一過的または永続的な抑制は、HLA-DP、DQおよびDRのうちの1つ以上の抑制によって行われ;MHC様分子の1つ以上の一過的または永続的な抑制は、CD1a/b/c/dの抑制によって行われ;MHCクラスI、MHCクラスIIおよびMHC様分子の転写または発現の調節因子の1つ以上の一過的または永続的な抑制は、TAP1/2、タパシン、ベータ-2ミクログロブリン、CIITA、RFXANK、RFX5およびRFXAPのうちの1つ以上の抑制によって行われる。
【0044】
B2Mおよび/またはMHCの一過的または永続的な抑制は、例えば、hCMVのUL18から選択されるウイルス起源のB2Mアンタゴニストの1つ以上、ならびにワクシニアのA40R MHCIアンタゴニスト;HIVのNefおよびTAT;アデノウイルスのE3-19K;HSV 1およびHSV2のICP47;牛痘のCPXV012およびCPXV203;水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)のORF66;エプスタインバーウイルス(EBV)のEBNA1、BNLF2a、BGLF5およびBILF1;ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)のUS2/gp24、US3/gp23、US6/gp21、US10およびUS11/gp33;アカゲザルCMV(RhCMV)のRh178/VIHCE;ヒトヘルペスウイルス-6またはHHV7のU21;カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)のLANA1、ORF37/SOX、kK3/MIR1およびkK5/MIR2;マウス肝炎ウイルス-68(MHV-68)のmK3;アルファヘルペスウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、ウシヘルペスウイルス-2(BHV-1)および仮性狂犬病ウイルス(PRV)のUL41/vhs;水痘帯状疱疹ウイルス、BHV-1、ウマヘルペスウイルス1および4(EHV-1/4)ならびにPRVのUL49.5;ならびにマウスCMV(mCMV)のm4/gp34、m6/gp48、m27およびm152/gp40のうちの1つ以上の中から選択されるMHCアンタゴニストの1つ以上の一過的または永続的な発現によって行うことができる。
【0045】
例えば、c)の場合、担体細胞を、以下のいずれかまたは両方によって、NK細胞による同種認識および/またはγδ T細胞の自然免疫応答を回避するように操作することができる:(i)膜結合MICA/Bまたは膜結合PVR、または膜結合ネクチン-2の一過的または永続的な抑制、ここでは遺伝子座を欠失させることによって永続的抑制を行うことができる;および(ii)MIC-AおよびMIC-Bのアンタゴニスト、NKG2D受容体のアンタゴニスト、NCRのアンタゴニスト、NK抑制性受容体(KIR)のリガンドならびにNK抑制性受容体NKG2a/CD94のリガンドの一過的または永続的な発現。例えば、担体細胞を、以下のいずれかまたは両方によって、NK細胞による同種認識および/またはγδ T細胞の自然免疫応答を回避するように操作することができる:(i)NKG2Dリガンドおよび/またはDNAM-1リガンドの一過的または永続的な抑制;および(ii)MIC-AおよびMIC-BのアンタゴニストであるkK5(カポジ肉腫ウイルス(KHSV)由来);NKG2D受容体牛痘OMCPのアンタゴニスト;NKp30、NKp44、NKp46受容体、血球凝集素(ワクシニアおよび他のウイルス由来のHA)を標的化するNCRのアンタゴニスト;HLA-Bw4およびHLA-C2から選択されるNK抑制性受容体(KIR)のリガンド;ならびに単独のまたはHLA-E結合ペプチドを産生し、HLA-E表面発現を安定化する21M HLA-Bリガンドと組み合わせたHLA-Eおよび誘導体から選択されるNK抑制性受容体(NKG2a/CD94)のリガンドの一過的または永続的な発現。
【0046】
例えば、d)の場合、担体細胞を、同種抗担体細胞または抗ウイルス免疫応答を防止/阻害するためのヒトまたはウイルス起源の免疫抑制因子を発現するように操作することができる。これは、例えば、担体細胞を、同種抗細胞媒体または抗ウイルス応答を防止/阻害するためのヒトまたはウイルス起源の免疫抑制因子を発現するように操作することによって行うことができる。ヒト起源の因子には、それだけに限らないが、以下のうちの1つ以上が含まれる:IDO、アルギナーゼ、TRAIL、iNOS、IL-10、TGFβ、VEGF、FGF-2、PDGF、HGF、IL-6、sMICA、sMICB、sHLA-G、HLA-E、PD-L1、FAS-L、B7-H4、ならびにNKおよび/またはNKT細胞、および/またはγδ T細胞を標的化するまたは枯渇させる一本鎖抗体(scFv)。ウイルス起源の因子には、それだけに限らないが、エクトロメリア/ワクシニアウイルスSPI-2/CrmA(免疫FAS/TNF/グランザイムB誘導アポトーシスの阻害剤)、ワクシニアウイルスにコードされるN1(IL-1/NFkB/IRF3アンタゴニスト)、HA(NKp30、NKp44、NKp46を標的化するNCRアンタゴニスト)、IL-18結合タンパク質、A40R、A46R、A52R、B15R/B16R、TNFα遮断薬(例えば、ワクシニアウイルスCmrC/CmrE)、IFN α/β遮断薬(例えば、ワクシニアウイルスB18R/B19R)、IFNγ遮断薬(例えば、ワクシニアウイルスB8R)、およびその他のIL-1/IL-1β/NFκB/IRF3/NCR/MHCI/TLR/NKG2Dアンタゴニストのうちの1つ以上が含まれる。
【0047】
例えば、e)の場合、担体細胞を、他の方法では非許容性(不許容性)の担体細胞および/または腫瘍細胞のウイルス感染を促進するがんまたは幹細胞由来因子を発現するように操作することができる。これは、例えば、担体細胞を、他の方法では非許容性(不許容性)の細胞媒体および/または腫瘍細胞のウイルス感染を促進するがんまたは幹細胞由来因子を発現するように操作することによって行うことができ、因子は、ウイルス感染を促進する1つ以上の成長因子およびサイトカインの中から選択される。例示的な因子には、それだけに限らないが、がん関連抗原、癌胎児性抗原、癌遺伝子/腫瘍抑制因子、分化抗原、GM-CSF、IL-10、TGFβ、VEGF、FGF-2、PDGF、HGF、IL-6、RTK/mTORアゴニストおよびWntタンパク質リガンドのうちの1つ以上が含まれる。
【0048】
例えば、f)の場合、担体細胞を、補体および/または中和抗体の機能を妨害する因子を発現するように操作することができる。これは、例えば、担体細胞を、補体タンパク質のタンパク質アンタゴニストおよび/または補体タンパク質を阻害する抗体から選択される、補体および/または中和抗体の機能を妨害する因子を発現するように操作することによって行うことができる。例えば、補体および/または中和抗体の機能を妨害する因子には、それだけに限らないが、補体因子(例えば、補体タンパク質C1、C2、C3、C4、C5、MBL)のタンパク質アンタゴニスト、ワクシニアウイルス補体制御タンパク質(VCP)、ワクシニアウイルス補体阻害剤(B5R)、scFv抗CD1q/CD1r/CD1s、抗C3抗体、抗C5抗体(例えば、エクリズマブ)、コンプスタチンファミリーのペプチドC3阻害剤(例えば、Cp40)、ヒト可溶性膜(s/m)タンパク質(例えば、s/mCR1(CD35)、s/mCR2(CD21)、s/mCD55、s/mCD59)、ヒト補体因子Hおよび誘導体、ならびにコブラ毒因子および補体抑制活性を有する誘導体が含まれる。
【0049】
以下の中から選択される1つ以上の改変を含む改変された細胞媒体または担体細胞も提供される:a)ウイルス増幅能力を増強するための細胞媒体の感作;b)抗ウイルス応答の誘導を遮断するため、および/または免疫回避/免疫抑制を改善するための細胞媒体の感作;c)対象による同種不活化および/または拒絶からの細胞媒体の保護;d)補体からの細胞媒体の保護;および/またはe)細胞媒体をウイルス媒介殺傷に対して耐性にすること。
【0050】
a)細胞媒体をインターフェロンによって誘導される抗ウイルス応答に応答しないようにする遺伝子の一過的または永続的な発現または抑制;b)T細胞およびNKT細胞、およびγδ T細胞による同種認識の回避を促進するための遺伝子の一過的または永続的な発現または抑制;c)NK細胞による同種認識の回避を促進するための遺伝子の一過的または永続的な発現または抑制;d)免疫抑制因子の一過的または永続的な発現;e)細胞媒体とのウイルスの会合を促進する因子の一過的または永続的な発現;およびf)補体および/または中和抗体の機能を妨害する因子の一過的または永続的な発現のために操作された担体細胞も提供される。さらなる改変は、a)ウイルス増幅能力を増強するための細胞媒体の感作;b)抗ウイルス応答の誘導を遮断するため、および/または細胞媒体の免疫抑制/免疫回避を増強するための細胞媒体の感作;c)対象による同種不活化および/または拒絶からの細胞媒体の保護;d)補体からの細胞媒体の保護;および/またはe)細胞媒体をウイルス媒介殺傷に対して耐性にすることのうちの1つ以上を含むことができる。
【0051】
本明細書で提供される腫瘍溶解性ウイルスを含有する担体細胞のいずれも、担体細胞を、がんを有する対象に投与することを含む治療方法で使用することができる。がんを治療するための細胞の使用も提供される。投与は全身的または局所的であることができ、静脈内などの非経口的であることができる。がんには、固形腫瘍および血液悪性腫瘍が含まれ、転移性がんが含まれる。担体細胞は、対象に対して同種または自家であることができる。同種の場合、担体細胞を対象にマッチングさせることができる。特に、マッチングは、以下に記載される方法によって行うことができる。したがって、腫瘍溶解性ウイルスを含む担体細胞が対象に投与され、担体細胞が対象にマッチングするまたはマッチングされており;担体細胞が、ウイルスが複製することができる細胞;および細胞の免疫抑制特性または免疫特権特性を増強するように、処理もしくは改変されている、またはその両方である、ならびに/あるいは細胞内のウイルスの増幅を増強するように処理または改変されている細胞であり、それによって、細胞が対象の自然/適応免疫障壁を克服してウイルスを腫瘍に送達する、がんを治療する使用および方法が提供される。担体細胞には、本明細書に記載される任意のものが含まれる。
【0052】
治療の対象には、動物、特にペット、動物園の動物および家畜、ならびにヒトを含む哺乳動物が含まれる。非ヒトには、例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ウシ、ヤギ、ならびにチンパンジー、ゴリラ、ボノボおよびヒヒなどの非ヒト霊長類が含まれる。
【0053】
治療方法および担体細胞の使用は、腫瘍溶解性ウイルスを含む担体細胞が、がんを有する対象に投与され、担体細胞が、対象に対して同種であり、対象にマッチングされており;担体細胞が、ウイルスが複製することができる細胞;および細胞の免疫抑制特性または免疫特権特性を増強するように、処理もしくは改変されている、またはその両方である、ならびに/あるいは細胞内のウイルスの増幅を増強するように処理または改変されている細胞であり、それによって、細胞が対象の自然/適応免疫障壁を克服してウイルスを腫瘍に送達するものを含む。
【0054】
治療方法および担体細胞の使用は、腫瘍溶解性ウイルスを含む担体細胞が、がんを有する対象に投与され、担体細胞が、対象に対して同種であり、対象にマッチングされているものを含む。マッチングは、本明細書の方法によって行うことができる。
【0055】
担体細胞が腫瘍溶解性ウイルスを含み;担体細胞が対象にマッチングするまたはマッチングされており;担体細胞が、ウイルスが複製することができる細胞;および細胞の免疫抑制特性または免疫特権特性を増強するように、処理もしくは改変されている、またはその両方である、ならびに/あるいは細胞内のウイルスの増幅を増強するように処理または改変されている細胞であり、それによって、細胞が対象の自然/適応免疫障壁を克服してウイルスを腫瘍に送達する、がんを治療するための担体細胞の使用も提供される。担体細胞が腫瘍溶解性ウイルスを含み;担体細胞が対象にマッチングするまたはマッチングされており;担体細胞が本明細書に記載される任意のものである使用が提供される。担体細胞は自家または同種であることができる。同種である場合、これらを、本明細書に記載されるマッチング方法などによって、対象にマッチングさせることができる。
【0056】
本明細書で提供される担体細胞、方法および使用によって治療することができるがんには、固形腫瘍、血液悪性腫瘍および転移性がんが含まれる。がんには、それだけに限らないが、白血病、リンパ腫、黒色腫、癌腫、肉腫、骨髄腫および神経芽細胞腫の中から選択されるものが含まれる。他のがんには、それだけに限らないが、膵臓がん、肺がん、卵巣がん、乳がん、子宮頸がん、膀胱がん、前立腺がん、脳がん、中枢神経系がん、腺癌、肝臓がん、皮膚がん、血液がん、胆道がん、骨がん、絨毛癌、結腸および直腸がん、結合組織がん、消化器系がん、子宮内膜がん、食道がん、眼がん、頭頸部がん、胃がん、上皮内新生物、腎臓がん、喉頭がん、口腔がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、呼吸器系がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、子宮がん、ならびに泌尿器系がんが含まれる。その他には、それだけに限らないが、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、結腸がん、基底細胞癌、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、口唇がん、舌がん、口腔がん、神経膠腫および咽頭がんが含まれる。
【0057】
本明細書に記載されるように、担体細胞は、改善されたウイルス増幅特性を有するように、および/または増強された免疫抑制特性もしくは免疫特権特性を有するように処理または改変することができる。担体細胞は、ウイルス増幅および/または担体細胞の免疫抑制特性もしくは免疫特権特性を促進する因子による前処理によって感作させることができる。担体細胞は、そのウイルス増幅能を改善するように操作することができる。
【0058】
方法および使用において、ウイルスを含む担体細胞は、最初にIFN-ガンマで前処理され、ウイルスを含む担体細胞の投与前にまたはウイルスを含む担体細胞と同時に投与または使用されるウイルスに感染していない担体細胞の投与と共に、または連続して、または投与後に投与することができる。
【0059】
本明細書で提供される担体細胞、方法および使用は、別の抗がん剤、あるいは放射線療法および/または外科手術などの別の抗がん療法による治療との併用療法で使用することができる。さらなる抗がん剤または治療の例としては、それだけに限らないが、免疫共刺激アゴニスト、BiTE、腫瘍特異的抗原を標的化するCAR-T細胞およびTCRトランスジェニックT細胞、チェックポイント阻害剤、化学療法化合物/抗体、ならびに免疫抑制薬が挙げられる。さらなる抗がん剤には、それだけに限らないが、免疫療法および/または免疫抑制薬が含まれる。さらなる抗がん剤または治療には、それだけに限らないが、B7ファミリー(CD28、ICOS);4-1BB、OX40、GITR、CD40、CD30およびCD27の中から選択されるTNFRファミリー;LIGHT;LT-α;PD-1、PD-2、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、IDO 1および2、CTNNB1(β-カテニン)、SIRPα、VISTA、LIGHT、HVEM、LAG3、TIM3、TIGIT、ガレクチン-9、KIR、GITR、TIM1、TIM4、CEACAM1、CD27、CD40/CD40L、CD48、CD70、CD80、CD86、CD112、CD137(4-1BB)、CD155、CD160、CD200、CD226、CD244(2B4)、CD272(BTLA)、B7-H2、B7-H3、B7-H4、B7-H6、ICOS、A2aR、A2bR、HHLA2、ILT-2、ILT-4、gp49B、PIR-B、HLA-G、ILT-2/4およびOX40/OX-40L、MDR1、アルギナーゼ1、iNOs、IL-10、TGF-β、pGE2、STAT3、VEGF、KSP、HER2、Ras、EZH2、NIPP1、PP1、TAK1およびPLK1aのうちの1つ以上を標的化するチェックポイント阻害剤;サイトカイン、ケモカイン、成長因子、光増感剤、毒素、抗がん抗生物質、化学療法化合物、放射性核種、血管新生阻害剤、シグナル伝達調節剤、代謝拮抗薬、抗がんワクチン、抗がんオリゴペプチド、有糸分裂阻害剤タンパク質、抗有糸分裂オリゴペプチド、抗がん抗体、免疫療法薬の中から選択される化学療法化合物および抗体;ならびにグルココルチコイド(例えば、プレドニゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン)、カルシニューリン阻害剤(例えば、シクロスポリン、タクロリムス)、mTOR阻害剤(例えば、シロリムス、エベロリムス)、メトトレキサート、レナリドマイド、アザチオプリン、メルカプトプリン、フルオロウラシル、シクロホスファミド、TNFα遮断抗体(例えば、インフリキシマブ/Remicade、エタネルセプト/Enbrel、アダリムマブ/Humira)およびフルダラビンから選択される免疫抑制薬の中から選択されるものが含まれる。
【0060】
上で論じられるように、方法および使用において使用するために、担体細胞は、同種である場合、投与される予定のまたは投与される対象にマッチングさせることができる。マッチング方法も提供される。
【0061】
担体細胞を、投与される対象の免疫細胞にマッチングさせて、ウイルスを対象に送達するために対象の免疫細胞に十分に免疫学的に適合性である担体細胞を特定することができる。また、担体細胞をウイルスにマッチングさせることができ、ここでは細胞がウイルスを増幅する能力が測定される。細胞/ウイルスの組み合わせを対象にマッチングさせることもできる。対象の免疫細胞には、例えば、末梢血単核細胞(PBMC)が含まれる。マッチング方法は、ウイルスが細胞内で複製する能力および/または細胞がウイルス増幅を促進する能力を試験することを含むことができる。方法および使用および細胞は、ウイルスが細胞内で複製する能力および/または細胞がウイルス増幅を促進する能力が、細胞およびウイルスを共培養し、ウイルス増幅速度を測定することによって試験される、マッチング方法を含む。ウイルスが細胞内で複製する能力および/または細胞がウイルス増幅を促進する能力は、例えば、a)約またはちょうど0.01~10の感染多重度(MOI)を使用してウイルス増幅速度を測定し、等価なアッセイ条件下で1日~約またはちょうど1週間(24時間~1週間)の期間、共培養し;b)感染した細胞担体の数に対して正規化することによって測定され、ここでは等価なアッセイ条件下で測定された細胞当たりの正規化されたPfu値を使用して、担体細胞+ウイルスの組み合わせを療法に適している(または適していない)ものとしてランク付けするためのウイルス増幅スコア(VAS)を計算することができ;1~10の担体細胞当たりのプラーク形成単位(pfu)値は、(特定のウイルスの細胞担体としての)限られた効力と見なされ;10~100の細胞当たりのPfuは優れた効力であり;100~1000の細胞当たりのPfuは非常に優れた効力であり;1000超の細胞当たりのPfuは極めて高い効力であり;少なくとも10のPfu/細胞を示す担体細胞とウイルスの組み合わせが、細胞と対象の対象適合性スクリーニングでの試験のために考慮される。
【0062】
これらの方法によると:担体細胞/ウイルスの組み合わせが、a)患者特異的な遺伝子多型を評価して、MHC I/IIハプロタイプ、KIRハプロタイプおよびリガンド、ならびにHLA-E、CD1a、b、c、d、MICA/Bのうちの1つ以上を含む非古典的MHCハプロタイプを特定し;b)対象の遺伝子多型プロファイルを利用可能な担体細胞のプロファイルと比較して、担体細胞の中から、対象と最も適合性の細胞を特定し;c)細胞、ウイルスおよび免疫細胞を共培養することによって、担体細胞と対象の免疫細胞の適合性を評価し;d)ウイルス増幅のレベルを評価することによって、治療される対象にマッチングされる。したがって、マッチング方法は、e)腫瘍細胞の媒体指向移動およびウイルス増幅を検出することによって、担体細胞+生腫瘍生検+/-ウイルスを測定して、投与のための担体細胞/ウイルスを特定することをさらに含むことができ、対象の腫瘍生検+細胞媒体におけるウイルス増幅は:等価な条件下での腫瘍生検単独におけるウイルス増幅+等価な条件下での細胞媒体単独におけるウイルス増幅の和よりも5%以上大きい;または等価な条件下での腫瘍生検単独におけるウイルス増幅よりも少なくとも5%以上大きい。
【0063】
マッチング方法は、対象由来のPBMC+担体細胞+ウイルスを培養することによって、担体細胞媒介ウイルス療法に対する対象の許容度を評価するために共培養物を分析することをさらに含むことができる。方法、使用、細胞は以下を含むことができる:対象由来のPMBC+担体細胞+ウイルスの共培養物におけるウイルス増幅を測定すること、ここではマッチが:担体細胞と患者PBMCの共培養物におけるウイルス増幅が、同じ担体細胞がPBMCの非存在下で感染した場合のウイルス増幅の80%を超える場合、適合性であり;担体細胞と患者PBMCの共培養物におけるウイルス増幅が、同じ担体細胞がPBMCの非存在下で感染した場合のウイルス増幅の30~80%の範囲にある場合、中程度に適合性であり;担体細胞と患者PBMCの共培養物におけるウイルス増幅が、同じ担体細胞がPBMCの非存在下で感染した場合のウイルス増幅の10~30%の範囲にある場合、最小限に適合性であり;担体細胞と患者PBMCの共培養物におけるウイルス増幅が、同じ担体細胞がPBMCの非存在下で感染した場合のウイルス増幅の10%未満である場合、不適合性であり;%適合性を使用して、担体細胞を各個々の患者および各特定のウイルスについて、最も低い適合性から最も高い適合性の担体細胞までランク付けできる。
【0064】
細胞媒体(担体細胞)を、がんを有する対象への腫瘍溶解性ウイルスの送達に適しているとして選択することによる担体細胞と対象との間のマッチが、以下の決定因子(a)~(f)のうちの1つ以上を、細胞媒体(担体細胞)と対象との間のマッチを示すものとして特定することと:
a)細胞媒体と対象が、以下の合わせた遺伝子座のうちの50%以上で同一の対立遺伝子を有する:
(i)MHC Iおよび/またはMHC IIハプロタイプ;
(ii)KIRハプロタイプおよび/またはKIRリガンドハプロタイプ;および
(iii)HLA-E、CD1a、CD1b、CD1cおよび/またはCD1dハプロタイプ;
b)対象の癌性細胞との共培養物で細胞媒体をインキュベートすると、以下のうちの1つ以上が得られる:
(i)癌性細胞に向かって移動する細胞媒体細胞の20%以上の腫瘍への細胞移動スコア(CTMS);
(ii)細胞媒体細胞に向かって移動する癌性細胞の20%以上の細胞への腫瘍移動スコア(TCMS);および/または
(iii)少なくとも20%の[(i)+(ii)]/2の累積移動スコア(MRS);
c)腫瘍溶解性ウイルスおよび対象の癌性細胞との共培養物で細胞媒体をインキュベートすると、以下のうちの1つ以上が得られる:
(i)癌性細胞に向かって移動する細胞媒体細胞の20%以上の腫瘍へのウイルス搭載細胞移動スコア(V-CTMS);
(ii)細胞媒体細胞に向かって移動する癌性細胞の20%以上の細胞へのウイルス搭載腫瘍移動スコア(V-TCMS);および/または
(iii)少なくとも20%の[(i)+(ii)]/2の累積ウイルス搭載移動スコア(V-MRS);
d)細胞媒体が腫瘍溶解性ウイルスおよび対象から得られた免疫細胞との共培養物でインキュベートされるとき、対象から得られた免疫細胞の非存在下であることを除いて等価な条件下で得られたウイルス増幅量に対する、対象から得られた免疫細胞の存在下でのウイルス増幅量を表す免疫学的ウイルス増幅スコア(IVAS)が少なくとも20%である;
e)細胞媒体が腫瘍溶解性ウイルスおよび対象から得られた免疫細胞との共培養物でインキュベートされるとき、細胞媒体の非存在下であることを除いて等価な条件下での免疫応答に対する、細胞媒体の存在下での免疫応答を表す免疫学的適合性スコア(ICS)が200%以下であり、免疫応答は以下のうちの1つ以上の発現量によって決定される:
(i)IFNγ;
(ii)T細胞、γδ T細胞、NK細胞および/またはNKT細胞媒介細胞傷害性に関連する1つ以上のマーカー;および/または
(iii)T細胞、γδ T細胞、NK細胞および/またはNKT細胞活性化因子/エフェクター機能に関連する1つ以上のマーカー;
f)細胞媒体が腫瘍溶解性ウイルスおよび対象から得られた免疫細胞との共培養物でインキュベートされるとき、細胞媒体が、以下の式に従って0%以上の免疫学的抑制スコア(ISS)によって測定されるように、細胞媒体の非存在下であることを除いて同一の条件に対して、抗ウイルス免疫応答を増強しない、および/または抗ウイルス免疫応答を抑制する:
ISS%=[(IV+IC)-ICV]/(IV+IC)×100(式中、
IV=ウイルス+対象から得られた免疫細胞の共培養物におけるマーカー発現レベル;
IC=対象から得られた免疫細胞+細胞媒体の共培養物におけるマーカー発現レベル;
ICV=対象から得られた免疫細胞+細胞媒体+ウイルスの共培養物におけるマーカー発現レベル;および
マーカー発現レベルは、e)の(i)、(ii)および(iii)に示されるマーカーのうちの1つ以上の発現レベルである);
a)~f)のうちの1つ以上が満たされる場合、細胞媒体と対象との間のマッチを特定し、細胞媒体を、がんを有する対象への腫瘍溶解性ウイルスの送達に適しているとして選択することとを含む方法によって行われる、本明細書における担体細胞、マッチング方法を含む方法、および使用も提供される。
【0065】
a)~f)のうちの1つ以上の前に、この方法は、細胞媒体がウイルスとインキュベートされるとき、Pfu/細胞としてのウイルス増幅スコア(VAS)を決定し;VASスコアが少なくとも10である場合、決定因子(a)~(f)のうちの1つ以上を使用したスクリーニングのために細胞媒体を選択し、細胞媒体と対象との間のマッチがあるかどうかを特定することを含むことができる。
【0066】
マッチング方法を、以下を含む多重化方法によって、可能な担体細胞のパネルに対して多重化して、腫瘍溶解性ウイルスの有効性または対象への送達に基づいてこれらをランク付けすることができ、ランク1が最も望ましく、最高ランクであり、数値が大きいほどあまり望ましくないランクを表す:
(i)パネル内の各細胞媒体についてa)~f)のうちの1つ以上の値を測定し、測定値に従って各細胞媒体をランク付けすること、
a)の場合、細胞媒体と対象との間の対立遺伝子の同一性が高いほど、細胞媒体のランクが高くなる;
b)の場合、細胞媒体についてのCTMS、TCMSおよび/またはMRSスコアが高いほど、細胞媒体のランクが高くなる;
c)の場合、細胞媒体についてのV-CTMS、V-TCMSおよび/またはV-MRSスコアが高いほど、細胞媒体のランクが高くなる;
d)の場合、細胞媒体についてのIVASスコアが高いほど、細胞媒体のランクが高くなる;
e)の場合、細胞媒体についてのICSスコアが低いほど、細胞媒体のランクが高くなる;および
f)の場合、細胞媒体についてのISSスコアが高いほど、細胞媒体のランクが高くなる;ならびに/あるいは
(ii)パネル内の各細胞媒体について、a)~f)のうちの2つ以上の値の測定に基づいて、2つ以上のランクの平均である累積ランクを取得し、累積ランクに従ってパネルの細胞媒体をランク付けすること。
【0067】
多重化方法は、以下をさらに含むことができる:
(i)パネル内の各細胞媒体について、細胞媒体がウイルスとインキュベートされるとき、Pfu/細胞としてのウイルス増幅スコア(VAS)を取得すること;
(ii)パネル内の各細胞媒体について、VASスコアおよびa)~f)のうちの1つ以上の値の測定に基づいて、2つ以上のランクの平均である累積ランクを取得すること;および
(iii)累積ランクに従ってパネルの細胞媒体をランク付けすること。
【0068】
マッチング方法では、ICSスコアおよび/またはISSスコアが、細胞共培養物におけるマーカー発現の測定に基づいて取得される。
【0069】
ICSスコアおよび/またはISSスコアは、共培養物の上清におけるマーカー発現の測定に基づいて取得できる;ならびに/あるいはIVASスコアは、以下を含む方法によって、ウイルス増幅に対する対象の血清の効果について補正できる:(i)d)の共培養物に、対象の血清を共培養量の10~50重量%(またはv/v)の量で添加すること;(ii)以下の式に従って対象血清耐性スコア(SSRS)を計算すること:
および
(iii)以下の式に従って%SSRS補正IVASスコアを計算すること:IVAS(SSRS補正)=IVAS×(1-SSRS)×100。
【0070】
細胞媒体を、がんを有する対象への腫瘍溶解性ウイルスの送達に適しているとして選択する方法(マッチング方法)が提供される。この方法は、以下の決定因子(a)~(f)のうちの1つ以上を、細胞媒体と対象との間のマッチを示すものとして特定することと:
a)細胞媒体と対象が、以下の合わせた遺伝子座のうちの50%以上で同一の対立遺伝子を有する:
(i)MHC Iおよび/またはMHC IIハプロタイプ;
(ii)KIRハプロタイプおよび/またはKIRリガンドハプロタイプ;および
(iii)HLA-E、CD1a、CD1b、CD1cおよび/またはCD1dハプロタイプ;
b)対象の癌性細胞との共培養物で細胞媒体をインキュベートすると、以下のうちの1つ以上が得られる:
(i)癌性細胞に向かって移動する細胞媒体細胞の20%以上の腫瘍への細胞移動スコア(CTMS);
(ii)細胞媒体細胞に向かって移動する癌性細胞の20%以上の細胞への腫瘍移動スコア(TCMS);および/または
(iii)少なくとも20%の[(i)+(ii)]/2の累積移動スコア(MRS);
c)腫瘍溶解性ウイルスおよび対象の癌性細胞との共培養物で細胞媒体をインキュベートすると、以下のうちの1つ以上が得られる:
(i)癌性細胞に向かって移動する細胞媒体細胞の20%以上の腫瘍へのウイルス搭載細胞移動スコア(V-CTMS);
(ii)細胞媒体細胞に向かって移動する癌性細胞の20%以上の細胞へのウイルス搭載腫瘍移動スコア(V-TCMS);および/または
(iii)少なくとも20%の[(i)+(ii)]/2の累積ウイルス搭載移動スコア(V-MRS);
d)細胞媒体が腫瘍溶解性ウイルスおよび対象から得られた免疫細胞との共培養物でインキュベートされるとき、対象から得られた免疫細胞の非存在下であることを除いて等価な条件下で得られたウイルス増幅量に対する、対象から得られた免疫細胞の存在下でのウイルス増幅量を表す免疫学的ウイルス増幅スコア(IVAS)が少なくとも20%である;
e)細胞媒体が腫瘍溶解性ウイルスおよび対象から得られた免疫細胞との共培養物でインキュベートされるとき、細胞媒体の非存在下であることを除いて等価な条件下での免疫応答に対する、細胞媒体の存在下での免疫応答を表す免疫学的適合性スコア(ICS)が200%以下であり、免疫応答は以下のうちの1つ以上の発現量によって決定される:
(i)IFNγ;
(ii)T細胞、γδ T細胞、NK細胞および/またはNKT細胞媒介細胞傷害性に関連する1つ以上のマーカー;および/または
(iii)T細胞、γδ T細胞、NK細胞および/またはNKT細胞活性化因子/エフェクター機能に関連する1つ以上のマーカー;
f)細胞媒体が腫瘍溶解性ウイルスおよび対象から得られた免疫細胞との共培養物でインキュベートされるとき、細胞媒体が、以下の式に従って0%以上の免疫学的抑制スコア(ISS)によって測定されるように、細胞媒体の非存在下であることを除いて同一の条件に対して、抗ウイルス免疫応答を増強しない、および/または抗ウイルス免疫応答を抑制する:
ISS%=[(IV+IC)-ICV]/(IV+IC)×100(式中、
IV=ウイルス+対象から得られた免疫細胞の共培養物におけるマーカー発現レベル;
IC=対象から得られた免疫細胞+細胞媒体の共培養物におけるマーカー発現レベル;
ICV=対象から得られた免疫細胞+細胞媒体+ウイルスの共培養物におけるマーカー発現レベル;および
マーカー発現レベルは、e)の(i)、(ii)および(iii)に示されるマーカーのうちの1つ以上の発現レベルである);
a)~f)のうちの1つ以上が満たされる場合、細胞媒体と対象との間のマッチを特定し、細胞媒体を、がんを有する対象への腫瘍溶解性ウイルスの送達に適しているとして選択することとを含む。
【0071】
上記のように、マッチング方法は、a)~f)のうちの1つ以上の前に、細胞媒体がウイルスとインキュベートされるとき、Pfu/細胞としてのウイルス増幅スコア(VAS)を決定し;VASスコアが少なくとも10である場合、決定因子(a)~(f)のうちの1つ以上を使用したスクリーニングのために細胞媒体を選択し、細胞媒体と対象との間のマッチがあるかどうかを特定することをさらに含むことができる。上記の多重化方法も提供される。
【0072】
薬学的に許容される媒体中に本明細書で提供される担体細胞のいずれかを含有する医薬組成物も提供される。医薬組成物は、がんを治療するため、ならびに上記および下記のがんを治療する方法で使用するためのものである。組成物は、全身的、局所的、腫瘍内、肝内、静脈内、直腸または皮下に投与することができる。担体細胞は、本明細書に記載されるマッチング方法によって対象にマッチングさせることができる。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態を以下の項に記載する:
[項1]
腫瘍溶解性ウイルスを含む担体細胞であって、
前記ウイルスは前記細胞内で複製することができ;
前記細胞はヒト対象に投与することができ;
前記細胞は、ヒト対象に投与するために前記細胞の免疫抑制特性または免疫特権特性を増強するように、処理もしくは改変されている、またはその両方であり;
任意に、前記細胞は、前記細胞内の前記ウイルスの増幅を増強するように処理または改変されている、
細胞。
[項2]
前記細胞が、ヒト対象に投与するために前記細胞の免疫抑制特性または免疫特権特性を増強するように、処理もしくは改変されている、またはその両方であり;
前記細胞が、前記細胞内の前記ウイルスの増幅を増強するように処理または改変されている、
上記項1に記載の細胞。
[項3]
前記細胞が、腫瘍溶解性ウイルス増幅に許容性であり、腫瘍内で蓄積し、および/またはウイルスを対象の腫瘍に送達するのに十分な時間、前記対象の免疫系によって認識されない、上記項1または上記項2に記載の細胞。
[項4]
処理または改変された幹細胞、免疫細胞および腫瘍細胞の中から選択される、上記項1~3のいずれかに記載の細胞。
[項5]
対象から取り出されまたは採取され、前記腫瘍溶解性ウイルスに感染させられている、上記項1~4のいずれかに記載の細胞。
[項6]
幹細胞である、上記項1~5のいずれかに記載の細胞。
[項7]
前記幹細胞が、胚性細胞でも胎児性細胞でもなく、胚性細胞株に由来もしない、上記項6に記載の細胞。
[項8]
成体幹細胞、胚性幹細胞および胎児性幹細胞の中から選択される、上記項6に記載の細胞。
[項9]
間葉系、神経系、全能性、多能性、人工多能性、複能性、少能性、単能性、脂肪間質、内皮、骨髄、臍帯血、成体末梢血、筋芽細胞、小幼若、上皮、胚性上皮、および線維芽細胞幹細胞の中から選択される、上記項6に記載の細胞。
[項10]
間葉系幹細胞である、上記項6~9のいずれかに記載の細胞。
[項11]
前記間葉系幹細胞が、成体骨髄、脂肪組織、血液、歯髄、新生児臍帯、臍帯血、胎盤の間葉系細胞、胎盤由来接着性間質細胞、胎盤由来脱落膜間質細胞、子宮内膜再生細胞、胎盤二能性内皮/間葉系前駆細胞、羊膜または羊水間葉系幹細胞、羊水由来前駆細胞、ホウォートンゼリー間葉系幹細胞、骨盤帯幹細胞、絨毛膜絨毛間葉系間質細胞、皮下白色脂肪間葉系幹細胞、周皮細胞、洞周囲細網細胞、毛包由来幹細胞、造血幹細胞、骨膜由来間葉系幹細胞、側板間葉系幹細胞、脱落乳歯幹細胞、歯根膜幹細胞、歯小嚢前駆細胞、歯乳頭由来幹細胞、および筋サテライト細胞の中から選択される、上記項10に記載の細胞。
[項12]
脂肪間質細胞である、上記項1~9のいずれかに記載の細胞。
[項13]
脂肪間質間葉系細胞である上記項12に記載の細胞。
[項14]
内皮前駆細胞、胎盤内皮前駆細胞、血管新生内皮細胞および周皮細胞の中から選択される内皮細胞である、上記項6~9のいずれかに記載の細胞。
[項15]
胚性上皮細胞である、上記項6~9のいずれかに記載の細胞。
[項16]
免疫細胞である、上記項1~5のいずれかに記載の細胞。
[項17]
前記免疫細胞が、顆粒球、肥満細胞、単球、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、リンパ球、腫瘍特異的抗原を標的化するT細胞受容体(TCR)トランスジェニック細胞、および腫瘍特異的抗原を標的化するCAR-T細胞の中から選択される、上記項16に記載の細胞。
[項18]
血液悪性腫瘍細胞株の改変または処理された細胞である、上記項1~5のいずれかに記載の細胞。
[項19]
治療される前記対象に対して同種である、上記項1~5のいずれか一項に記載の細胞。
[項20]
脂肪由来幹細胞である、上記項1~5のいずれかに記載の細胞。
[項21]
ヒト白血病、T細胞白血病、骨髄単球性白血病、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、赤白血病、骨髄単芽球性白血病、悪性非ホジキンNKリンパ腫、骨髄腫/形質細胞腫、多発性骨髄腫およびマクロファージ細胞株の中から選択される細胞株の細胞である、上記項1~5のいずれかに記載の細胞。
[項22]
前記細胞株が、
KASUMI-1、HL-60、THP-1、K-562、RS4;11、MOLT-4、CCRF-CEM、JVM-13、31E9、ARH-77、MoB、JM1、NALM-1またはProPak-X.36である白血病細胞株;
HM-2、CEM-CM3、Jurkat/JurkatクローンE6-1、J.CaM1.6、BCL2 Jurkat、BCL2 S87A Jurkat、BCL2 S70A Jurkat、Neo Jurkat、BCL2 AAA Jurkat、J.RT3-T3.5、J45.01、J.γ1、J.γ1.WT、JK28、P116、P116.cl39、A3、JX17、D1.1、I 9.2またはI 2.1であるT細胞白血病細胞株;
MV-4-11である骨髄単球性白血病細胞株;
HT、BC-3、CA46、Raji、Daudi、GA-10-Clone-4、HHまたはH9であるリンパ腫細胞株;
SU-DHL-1、SU-DHL-2、SU-DHL-4、SU-DHL-5、SU-DHL-6、SU-DHL-8、SU-DHL-10、SU-DHL-16、NU-DUL-1、NCEB-1、EJ-1、BCP-1、TURまたはU-937である非ホジキンリンパ腫細胞株;
Ramos/RA 1、Ramos.2G6.4C10、P3HR-1、Daudi、ST486、Raji、CA46、バーキットリンパ腫患者からのヒトガンマヘルペスウイルス4/HHV-4頬腫瘍、DG-75、GA-10、NAMALWA、HS-Sultan、Jiyoye、NC-37、20-B8、EB2、1G2、EB1、EB3、2B8、GA-10クローン20またはHKB-11/腎臓-B細胞ハイブリッドであるバーキットリンパ腫細胞株;
ToledoまたはPfeifferであるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫細胞株;
JeKo-1、JMP-1、PF-1、JVM-2、REC-1、Z-138、MinoまたはMAVER-1であるマントル細胞リンパ腫細胞株;
AML-193、BDCM、KG-1、KG-1a、Kasumi-6またはHL-60/S4であるAML細胞株;
K562、K562-r、K562-s、LAMA84-r、LAMA84-s、AR230-rまたはAR230-sであるCML細胞株;
N6/ADR、RS4;11、NALM6クローンG5、Loucy、SUP-B15またはCCRF-SBであるALL細胞株;
IDH2-突然変異体-TF-1同質遺伝子細胞株である赤白血病細胞株;
GDM-1である骨髄単芽球性白血病細胞株;
NK-92またはNK-92MIである悪性非ホジキンNKリンパ腫細胞株;
U266B1/U266、HAA1、SA13、RPMI-8226、NCI-H929またはMC/CARである骨髄腫/形質細胞腫細胞株;
MM.1R、IM-9またはMM.1Sである多発性骨髄腫細胞株;および
MD、SCまたはWBC264-9Cであるマクロファージ細胞株
の中から選択される、上記項21に記載の細胞。
[項23]
APCETH-201(APCETH)、APCETH-301(APCETH)、Cx601(TIGENIX)、TEMCELL、MSC-100-IVまたはProchymal(MESOBLAST)である間葉系幹細胞株;
ToleraCyte(Fate Therapeutics)である人工多能性幹細胞(iPSC);
CCD-16LuまたはWI-38である線維芽細胞細胞株;
Malme-3M、COLO 829、HT-144、Hs 895.T、hTERTまたはPF179T CAFである腫瘍関連線維芽細胞細胞株;
HUVEC、HUVEC/TERT 2またはTIMEである内皮細胞株;
HEK-293、HEK-293 STF、293T/17、293T/17 SFまたはHEK-293.2susである胚性上皮細胞株;
hESC BG01Vである胚性幹細胞株;および
NuLi-1、ARPE-19、VK2/E6E7、Ect1/E6E7、RWPE-2、WPE-stem、End1/E6E7、WPMY-1、NL20、NL20-TA、WT 9-7、WPE1-NB26、WPE-int、RWPE2-W99またはBEAS-2Bである上皮細胞株
の中から選択される、改変または処理された細胞である、上記項1~5のいずれかに記載の細胞。
[項24]
ヒト血液悪性腫瘍細胞株である細胞株の改変または処理された細胞である、上記項1~9のいずれかに記載の細胞。
[項25]
ヒト腫瘍細胞株の改変または処理された細胞である、上記項1~9のいずれかに記載の細胞。
[項26]
前記細胞株が、NCI-60パネル、線維肉腫、肝癌、前立腺がん、乳がん、頭頸部がん、肺がん、膵臓がん、卵巣がん、結腸がん、胃がん、婦人科系がん、肉腫、黒色腫、扁平上皮癌、肝細胞癌、膀胱がん、腎細胞癌、胚性癌腫、精巣奇形腫、神経膠芽腫、星細胞腫、甲状腺癌または中皮腫細胞株から選択される、上記項25に記載の細胞。
[項27]
GM-CSF全腫瘍細胞ワクチン(GVAX)の改変または処理された細胞である、上記項1~9のいずれかに記載の細胞。
[項28]
前記GVAXがGVAX前立腺;GVAX膵臓;GVAX肺;またはGVAX腎細胞である、上記項27に記載の細胞。
[項29]
前記腫瘍溶解性ウイルスが、ニューカッスル病ウイルス、パルボウイルス、麻疹ウイルス、レオウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、アデノウイルス、ポリオウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、ポックスウイルス、コクサッキーウイルス(CXV)およびセネカバレーウイルス(SVV)の中から選択される、上記項1~28のいずれかに記載の細胞。
[項30]
前記腫瘍溶解性ウイルスがワクシニアウイルスである、上記項1~29のいずれかに記載の細胞。
[項31]
前記腫瘍溶解性ウイルスが天然痘ワクチンであるワクシニアウイルスである、上記項1~29のいずれかに記載の細胞。
[項32]
前記ワクシニアウイルスが、Lister株、ウエスタンリザーブ(WR)株、コペンハーゲン(Cop)株、Bern株、Paris株、Tashkent株、Tian Tan株、Wyeth株(DRYVAX)、IHD-J株、IHD-W株、Brighton株、Ankara株、CVA382株、Dairen I株、LC16m8株、LC16M0株、改変ワクシニアAnkara(MVA)株、ACAM株、WR 65-16株、Connaught株、ニューヨーク市保健局(NYCBH)株、EM-63株、NYVAC株、Lister株LIVP、JX-594株、GL-ONC1株、ならびにVGFおよびTKが欠失したvvDD TK突然変異株の中から選択される、上記項30または上記項31に記載の細胞。
[項33]
前記ワクシニアウイルスがACAM2000またはACAM1000である、上記項32に記載の細胞。
[項34]
前記腫瘍溶解性ウイルスが、異種遺伝子産物を発現するように、および/または増加した腫瘍形成能を有するように、および/または減少した毒性(増加した弱毒化)を有するように改変される、上記項1~33のいずれかに記載の細胞。
[項35]
前記腫瘍溶解性ウイルスが検出可能なマーカーをコードする、上記項1~34のいずれかに記載の細胞。
[項36]
前記マーカーが蛍光タンパク質である、上記項35に記載の細胞。
[項37]
前記ウイルスが、ONYX-015、CG00070、Oncorin(H101)、ColoAd1、ONCOS-102またはデルタ24-RGD/DNX-2401であるアデノウイルスである、上記項29に記載の細胞。
[項38]
前記ウイルスが改変されたHSV-1ウイルスである、上記項1~29および34~36のいずれかに記載の細胞。
[項39]
前記細胞が、前記細胞内のウイルス増幅、対象もしくは腫瘍微小環境における抗ウイルス状態の誘導の遮断、免疫抑制/免疫回避、同種不活化/拒絶決定因子からの保護、および/または補体からの保護のうちの1つ以上を達成または増強または改善するように感作または処理されている、上記項1~38のいずれかに記載の細胞。
[項40]
ウイルス増幅を増強または改善するように感作されている、上記項39に記載の細胞。
[項41]
前記対象または前記腫瘍微小環境における抗ウイルス状態の誘導を遮断するように感作または処理されている、上記項39に記載の細胞。
[項42]
サイトカインまたは成長因子の1つ以上による前処理または処理によってウイルス増幅を増強するように感作されている、上記項39に記載の細胞。
[項43]
インターフェロン-γおよび/またはインターフェロン-βを阻害するように処理される、あるいはインターフェロン-γおよび/またはインターフェロン-βの阻害剤を発現するように改変される、上記項1~42のいずれかに記載の細胞。
[項44]
前記細胞にIL-10、TGFβ、VEGF、FGF-2、PDGF、HGF、IL-6、GM-CSF、RTK/mTORアゴニスト、Wntタンパク質リガンドおよびGSK3阻害剤/アンタゴニストのうちの1つ以上を搭載するための前処理または処理によってウイルス増幅を増強するように感作されている、上記項39~43のいずれかに記載の細胞。
[項45]
前記細胞に、IFN I型/II型受容体を妨害する、下流シグナル伝達を妨害する、IFNAR1/IFNAR2シグナル伝達を妨害する、IFNGR1/IFNGR2シグナル伝達を妨害する、STAT1/2シグナル伝達を妨害する、Jak1シグナル伝達を妨害する、Jak2シグナル伝達を妨害する、IRF3シグナル伝達を妨害する、IRF7シグナル伝達を妨害する、IRF9シグナル伝達を妨害する、TYK2シグナル伝達を妨害する、TBK1シグナル伝達を妨害する、または前記細胞もしくは対象における腫瘍溶解性ウイルスに対する免疫応答に影響を及ぼす他のシグナル伝達経路を妨害する1つ以上の小分子またはタンパク質阻害剤を搭載するための前処理または処理によって抗ウイルス状態の誘導を遮断するように感作されている、上記項1~44のいずれかに記載の細胞。
[項46]
前記細胞に、IFNシグナル伝達/応答性を妨害/調節解除するための1つ以上のHDAC阻害剤を搭載するための前処理または処理によって抗ウイルス状態の誘導を遮断するように感作されている、上記項1~45のいずれかに記載の細胞。
[項47]
前記HDAC阻害剤が、ボリノスタット、ロミデプシン、チダミド、パノビノスタット、ベリノスタット、バルプロ酸、モセチノスタット、アベキシノスタット、エンチノスタット、SB939、レスミノスタット、ギビノスタット、キシノスタット、HBI-8000、ケベトリン、CUDC-101、AR-42、CHR-2845、CHR-3996、4SC-202、CG200745、ACY-1215、ME-344、スルフォラファンおよびトリコスタチンの中から選択される、上記項46に記載の細胞。
[項48]
前記細胞にウイルス感知および/または抗ウイルス防御経路のアンタゴニストを搭載するための前処理または処理によって、抗ウイルス状態の誘導を遮断する、またはウイルス増幅を増強するように感作されている、上記項1から47のいずれかに記載の細胞。
[項49]
前記ウイルス感知および/または防御経路が、STING、PKR、RIG-1、MDA-5、OAS-1/2/3、AIM2、MAVS、RIP-1/3およびDAI(ZBP1)のうちの1つ以上によって媒介される、上記項48に記載の細胞。
[項50]
前記アンタゴニストが、K1、E3LおよびK3Lワクシニアタンパク質;NS1/NS2インフルエンザタンパク質;C型肝炎NS3-4A;アレナウイルスNPおよびZタンパク質;エボラウイルスVP35;HSV US11、ICP34.5およびICP0;MCMV M45;ならびにボルナ病ウイルスXタンパク質のうちの1つ以上から選択される、上記項49に記載の細胞。
[項51]
不活化/拒絶決定因子から保護するように感作されている、上記項1~50のいずれかに記載の細胞。
[項52]
前記細胞が、前記細胞に1つ以上のウイルス主要組織適合遺伝子複合体(MHC)アンタゴニストを搭載するための前処理または処理によって不活化/拒絶決定因子から保護するように感作されている、上記項1~51のいずれかに記載の細胞。
[項53]
前記MHCアンタゴニストが、ワクシニアのA40R MHCIアンタゴニスト;HIVのNefおよびTAT;アデノウイルスのE3-19K;HSV 1およびHSV2のICP47;牛痘のCPXV012およびCPXV203;水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)のORF66;エプスタインバーウイルス(EBV)のEBNA1、BNLF2a、BGLF5およびBILF1;ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)のUS2/gp24、US3/gp23、US6/gp21、US10およびUS11/gp33;アカゲザルCMV(RhCMV)のRh178/VIHCE;ヒトヘルペスウイルス(HHV)6またはHHV7のU21;カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)のLANA1、ORF37/SOX、kK3/MIR1およびkK5/MIR2;マウス肝炎ウイルス-68(MHV-68)のmK3;アルファヘルペスウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、ウシヘルペスウイルス-2(BHV-1)および仮性狂犬病ウイルス(PRV)のUL41/vhs;バリセロウイルス、BHV-1、ウマヘルペスウイルス1および4(EHV-1/4)ならびにPRVのUL49.5;ならびにマウスCMV(mCMV)のm4/gp34、m6/gp48、m27、m152/gp40のうちの1つ以上の中から選択される、上記項52に記載の細胞。
[項54]
前記細胞にヒトMHCクラスI鎖関連遺伝子MIC-AおよびMIC-Bのアンタゴニストまたはウイルス起源のベータ-2ミクログロブリン(B2M)アンタゴニストを搭載するための前処理または処理によって不活化/拒絶決定因子から保護するように感作されている、上記項51に記載の細胞。
[項55]
前記細胞にウイルス起源の免疫抑制因子を搭載するための前処理または処理によって免疫抑制/免疫回避を増強するように感作されている、上記項39に記載の細胞。
[項56]
前記免疫抑制因子が、免疫FAS/TNF/グランザイムB誘導アポトーシスの阻害剤;IL-1/NFκB/IRF3アンタゴニスト;IL-1およびtoll様受容体(TLR)アンタゴニスト;IL-1βアンタゴニスト;TNFα遮断薬;IFNα/β遮断薬;ならびにIFNγ遮断薬のうちの1つ以上の中から選択される、上記項55に記載の細胞。
[項57]
前記細胞が、前記細胞に、抗原ペプチドトランスポーター-1/2(TAP-1およびTAP-2)およびタパシンのうちの1つ以上の小分子阻害剤を1つ以上搭載するための前処理または処理によって免疫抑制/免疫回避を増強するように感作されている、上記項39に記載の細胞。
[項58]
前記細胞が、補体から保護するように感作されている、上記項1~57のいずれかに記載の細胞。
[項59]
前記細胞に抗体もしくは小分子または補体タンパク質の他の阻害剤を搭載するための前処理または処理によって感作されている、上記項58に記載の細胞。
[項60]
前記補体タンパク質がC3またはC5である、上記項59に記載の細胞。
[項61]
前記細胞が、ウイルス感染の前、または前記対象への投与前、または貯蔵前に、15分~48時間、感作または保護する薬剤で前処理される、上記項39~60のいずれかに記載の細胞。
[項62]
ウイルス媒介殺傷に対する延長された生存期間および改善された局所免疫抑制のために感作されている、上記項1~61のいずれかに記載の細胞。
[項63]
STING、PKR、RIG-I、MDA-5、OAS-1/2/3、AIM2、MAVS、RIP-1/3およびDAI(ZBP1)のうちの1つ以上のアゴニストで前処理される、上記項62に記載の細胞。
[項64]
以下のうちの1つ以上によって、改善されたウイルス増幅および/または免疫調節のために操作される、上記項1~63のいずれかに記載の細胞:
a)インターフェロンによって誘導される抗ウイルス状態を防止するためまたはこれに応答しないようにするための操作;
b)T細胞およびNKT細胞のうちの1つ以上による同種認識、および/またはγδ T細胞の1つ以上の適応免疫応答を回避するための操作;
c)NK細胞による同種認識および/またはγδ T細胞の1つ以上の自然免疫応答を回避するための操作;
d)同種抗担体細胞または抗ウイルス免疫応答を防止/阻害するためのヒトまたはウイルス起源の免疫抑制因子を発現するための操作;
e)他の方法では非許容性の担体細胞および/または腫瘍細胞のウイルス感染を促進するがんまたは幹細胞由来因子を発現するための操作;および
f)補体および/または中和抗体の機能を妨害する因子を発現するための操作。
[項65]
a)I型/II型IFN受容体および/または下流シグナル伝達の一過的または永続的な抑制によって、インターフェロンによって誘導される抗ウイルス状態に応答しないように操作され、永続的な抑制が、抑制される遺伝子座を欠失させることによって行うことができる、上記項64に記載の細胞。
[項66]
抑制が、I型/II型インターフェロン受容体発現、IFN α/β受容体発現、IFNγ受容体発現、IFNAR1/IFNAR2受容体発現、IFNGR1/IFNGR2受容体発現、STAT1/2受容体発現、Jak1/2受容体発現、IRF3受容体発現、IRF7受容体発現、IRF9受容体発現、TYK2キナーゼ発現およびTBK1キナーゼ発現のうちの1つ以上の抑制によって行われる、上記項65に記載の細胞。
[項67]
a)サイトゾルウイルスDNA/RNA感知および抗ウイルス防御機構の要素の一過的または永続的な抑制によって、インターフェロンによって誘導される抗ウイルス状態に応答しないように操作される、上記項64に記載の細胞。
[項68]
抑制が、STING、PKR、RIG-1、MDA-5、OAS-1/2/3、AIM2、MAVS、RIP-1/3およびDAI(ZBP1)のうちの1つ以上の抑制によって行われる、上記項67に記載の細胞。
[項69]
a)STING、PKR、RIG-1、MDA-5、OAS-1/2/3、AIM2、MAVS、RIP-1/3およびDAI(ZBP1)によって媒介されるウイルス感知および抗ウイルス防御経路のアンタゴニストの一過的または永続的な発現によって、インターフェロンによって誘導される抗ウイルス状態を防止するまたはこれに応答しないように操作される、上記項64に記載の細胞。
[項70]
前記アンタゴニストが、K1、E3LおよびK3Lワクシニアタンパク質;NS1/NS2インフルエンザAタンパク質;C型肝炎NS3-4A;アレナウイルスNPおよびZタンパク質;エボラウイルスVP35;HSV US11、ICP34.5およびICP0;MCMV M45;ならびにボルナ病ウイルスXタンパク質のうちの1つ以上から選択される、上記項69に記載の細胞。
[項71]
b)T細胞およびNKT細胞のうちの1つ以上による同種認識、および/またはγδ T細胞の1つ以上の適応免疫応答を回避するように操作される、上記項64~70のいずれかに記載の細胞。
[項72]
T細胞およびNKT細胞のうちの1つ以上による同種認識、および/またはγδ T細胞の1つ以上の適応免疫応答を回避するための操作が、以下のいずれかまたは両方によって行われる、上記項71に記載の細胞:
(i)MHCクラスI分子、MHCクラスII分子、MHC様分子、ならびにMHCクラスI、MHCクラスIIおよびMHC様分子の転写または発現の調節因子のうちの1つ以上の一過的または永続的な抑制;および
(ii)ウイルス起源のB2Mアンタゴニストおよび/またはウイルス起源のMHCアンタゴニストの一過的または永続的な発現。
[項73]
MHCクラスI分子の1つ以上の一過的または永続的な抑制が、HLA-A、Bおよび/またはCの永続的または一過的な抑制によって行われ;
MHCクラスII分子の1つ以上の一過的または永続的な抑制が、HLA-DP、DQおよびDRのうちの1つ以上の抑制によって行われ;
MHC様分子の1つ以上の一過的または永続的な抑制が、CD1a/b/c/dの抑制によって行われ;
MHCクラスI、MHCクラスIIおよびMHC様分子の転写または発現の1つ以上の調節因子の一過的または永続的な抑制が、TAP1/2、タパシン、ベータ-2ミクログロブリン、CIITA、RFXANK、RFX5およびRFXAPのうちの1つ以上の抑制によって行われる、
上記項72に記載の細胞。
[項74]
B2Mおよび/またはMHCの一過的または永続的な抑制が、
hCMVのUL18から選択されるウイルス起源のB2Mアンタゴニスト;ならびに
ワクシニアのA40R MHCIアンタゴニスト;HIVのNefおよびTAT;アデノウイルスのE3-19K;HSV 1およびHSV2のICP47;牛痘のCPXV012およびCPXV203;水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)のORF66;エプスタインバーウイルス(EBV)のEBNA1、BNLF2a、BGLF5およびBILF1;ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)のUS2/gp24、US3/gp23、US6/gp21、US10およびUS11/gp33;アカゲザルCMV(RhCMV)のRh178/VIHCE;ヒトヘルペスウイルス-6またはHHV7のU21;カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)のLANA1、ORF37/SOX、kK3/MIR1およびkK5/MIR2;マウス肝炎ウイルス-68(MHV-68)のmK3;アルファヘルペスウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、ウシヘルペスウイルス-2(BHV-1)および仮性狂犬病ウイルス(PRV)のUL41/vhs;水痘帯状疱疹ウイルス、BHV-1、ウマヘルペスウイルス1および4(EHV-1/4)ならびにPRVのUL49.5;ならびにマウスCMV(mCMV)のm4/gp34、m6/gp48、m27およびm152/gp40のうちの1つ以上の中から選択される1つ以上のMHCアンタゴニスト
の1つ以上の一過的または永続的な発現によって行われる、上記項72または上記項73に記載の細胞。
[項75]
c)以下のいずれかまたは両方によって、NK細胞による同種認識および/またはγδ T細胞の1つ以上の自然免疫応答を回避するように操作される、上記項64~74のいずれかに記載の細胞:
(i)膜結合MICA/Bまたは膜結合PVR、または膜結合ネクチン-2の一過的または永続的な抑制;ここでは遺伝子座を欠失させることによって永続的な抑制を行うことができる;および
(ii)MIC-AおよびMIC-Bのアンタゴニスト、NKG2D受容体のアンタゴニスト、NCRのアンタゴニスト、NK抑制性受容体(KIR)のリガンドまたはNK抑制性受容体NKG2a/CD94のリガンドの一過的または永続的な発現。
[項76]
c)以下のいずれかまたは両方によって、NK細胞による同種認識を回避するように操作される、上記項64~75のいずれかに記載の細胞:
(i)NKG2Dリガンドおよび/またはDNAM-1リガンドの一過的または永続的な抑制;および
(ii)MIC-AおよびMIC-BのアンタゴニストであるkK5(カポジ肉腫ウイルス(KHSV)由来);
NKG2D受容体牛痘OMCPのアンタゴニスト;
NKp30、NKp44、NKp46受容体、血球凝集素(ワクシニアおよび他のウイルス由来のHA)を標的化するNCRのアンタゴニスト;
HLA-Bw4およびHLA-C2から選択されるNK抑制性受容体(KIR)のリガンド;および/または
単独のまたはHLA-E結合ペプチドを産生し、HLA-E表面発現を安定化する21M HLA-Bリガンドと組み合わせたHLA-Eおよび誘導体から選択されるNK抑制性受容体(NKG2a/CD94)のリガンド
の一過的または永続的な発現。
[項77]
d)同種抗担体細胞または抗ウイルス免疫応答を防止/阻害するための免疫抑制因子を発現するように操作される、上記項64~76のいずれかに記載の細胞。
[項78]
d)ヒトまたはウイルス起源の因子から選択される、同種抗細胞媒体または抗ウイルス免疫応答を防止/阻害するための免疫抑制因子を発現するように操作される、上記項64~77のいずれかに記載の細胞。
[項79]
前記ヒト起源の因子が、IDO、アルギナーゼ、TRAIL、iNOS、IL-10、TGFβ、VEGF、FGF-2、PDGF、HGF、IL-6、sMICA、sMICB、sHLA-G、HLA-E、PD-L1、FAS-L、B7-H4、ならびにNKおよび/またはNKT細胞および/またはγδ T細胞を標的化するまたは枯渇させる一本鎖抗体(scFv)のうちの1つ以上の中から選択される、上記項78に記載の細胞。
[項80]
前記ウイルス起源の因子が、エクトロメリア/ワクシニアウイルスSPI-2/CrmA(免疫FAS/TNF/グランザイムB誘導アポトーシスの阻害剤)、ワクシニアウイルスにコードされるN1(IL-1/NFkB/IRF3アンタゴニスト)、HA(NKp30、NKp44、NKp46を標的化するNCRアンタゴニスト)、IL-18結合タンパク質、A40R、A46R、A52R、B15R/B16R、TNFα遮断薬、IFN α/β遮断薬、IFNγ遮断薬、およびその他のIL-1/IL-1β/NFκB/IRF3/NCR/MHCI/TLR/NKG2Dアンタゴニストのうちの1つ以上の中から選択される、上記項78に記載の細胞。
[項81]
e)他の方法では不許容性の担体細胞および/または腫瘍細胞のウイルス感染を促進するがんまたは幹細胞由来因子を発現するように操作される、上記項64~80のいずれかに記載の細胞。
[項82]
e)他の方法では不許容性の細胞媒体および/または腫瘍細胞のウイルス感染を促進するがんまたは幹細胞由来因子を発現するように操作され、前記因子が、ウイルス感染を促進する1つ以上の成長因子およびサイトカインの中から選択される、上記項64~81のいずれかに記載の細胞。
[項83]
e)他の方法では不許容性の担体細胞および/または腫瘍細胞のウイルス感染を促進するがんまたは幹細胞由来因子を発現するように操作され、前記因子が、がん関連抗原、癌胎児性抗原、癌遺伝子/腫瘍抑制因子、分化抗原、GM-CSF、IL-10、TGFβ、VEGF、FGF-2、PDGF、HGF、IL-6、RTK/mTORアゴニストおよびWntタンパク質リガンドのうちの1つ以上の中から選択される、上記項64~82のいずれかに記載の細胞。
[項84]
f)補体および/または中和抗体の機能を妨害する因子を発現するように操作される、上記項64~83のいずれかに記載の細胞。
[項85]
f)補体タンパク質のタンパク質アンタゴニストおよび/または補体タンパク質を阻害する抗体から選択される、補体および/または中和抗体の機能を妨害する因子を発現するように操作される、上記項64~84のいずれかに記載の細胞。
[項86]
f)補体因子(C1、C2、C3、C4、C5、MBL)のタンパク質アンタゴニスト、ワクシニアウイルス補体制御タンパク質(VCP)、ワクシニアウイルス補体阻害剤(B5R)、scFv抗CD1q/CD1r/CD1s、抗C3抗体、抗C5抗体、コンプスタチンファミリーのペプチドC3阻害剤、ヒト可溶性膜(s/m)タンパク質、ヒト補体因子Hおよび誘導体、ならびにコブラ毒因子および補体抑制活性を有する誘導体の中から選択される、補体および/または中和抗体の機能を妨害する因子を発現するように操作される、上記項64~85のいずれかに記載の細胞。
[項87]
上記項1~86のいずれかに記載の細胞を、がんを有する対象に投与することを含む、がんを処置する方法。
[項88]
がんを有する対象を処置するための、上記項1~86のいずれかに記載の細胞の使用。
[項89]
前記がんが固形腫瘍または血液悪性腫瘍を含む、上記項87に記載の方法または上記項88に記載の使用。
[項90]
前記細胞が前記対象に対して同種である、上記項87~89のいずれかに記載の方法または使用。
[項91]
前記細胞が前記対象に対して自家である、上記項87~89のいずれかに記載の方法または使用。
[項92]
前記細胞が前記対象にマッチングされている、上記項87~90のいずれかに記載の方法または使用。
[項93]
マッチングアッセイによって、前記細胞を、前記細胞が投与される対象にマッチングさせることを含む、上記項87~90のいずれかに記載の方法または使用。
[項94]
腫瘍溶解性ウイルスを含む担体細胞を対象に投与することを含む、がんを処置する方法であって、
前記担体細胞は前記対象にマッチングするまたはマッチングされており;
担体細胞は、
その中で前記ウイルスが複製することができる細胞;および
前記細胞の免疫抑制特性または免疫特権特性を増強するように、処理もしくは改変されている、またはその両方である、および/または前記細胞内の前記ウイルスの増幅を増強するように処理または改変されている細胞であり、それによって、前記細胞は前記対象の自然/適応免疫障壁を克服してウイルスを腫瘍に送達することができる、細胞
である、方法。
[項95]
腫瘍溶解性ウイルスを含む担体細胞を対象に投与することを含む、がんを処置する方法であって、
前記担体細胞は前記対象にマッチングするまたはマッチングされており;
前記担体細胞は上記項1~86のいずれかに記載の細胞を含む、
方法。
[項96]
腫瘍溶解性ウイルスを含む担体細胞を対象に投与することを含む、がんを処置する方法であって、
前記担体細胞は前記対象に対して同種であり、前記対象にマッチングされており;
担体細胞は、
その中で前記ウイルスが複製することができる細胞;および
前記細胞の免疫抑制特性または免疫特権特性を増強するように、処理もしくは改変されている、またはその両方である、および/または前記細胞内の前記ウイルスの増幅を増強するように処理または改変されている細胞であり、それによって、前記細胞は前記対象の自然/適応免疫障壁を克服してウイルスを腫瘍に送達することができる、細胞、
である、方法。
[項97]
腫瘍溶解性ウイルスを含む担体細胞を対象に投与することを含む、がんを処置する方法であって、前記担体細胞は前記対象に対して同種であり、前記対象にマッチングされている、方法。
[項98]
がんの処置に使用するための腫瘍溶解性ウイルスを含む担体細胞であって、対象にマッチングされている担体細胞。
[項99]
がんを処置するための担体細胞の使用であって、
前記担体細胞は腫瘍溶解性ウイルスを含み;
前記担体細胞は対象にマッチングするまたはマッチングされており;
担体細胞は、
その中で前記ウイルスが複製することができる細胞;および
細胞の免疫抑制特性または免疫特権特性を増強するように、処理もしくは改変されている、またはその両方である、および/または前記細胞内の前記ウイルスの増幅を増強するように処理または改変されている細胞であり、それによって、前記細胞は前記対象の自然/適応免疫障壁を克服してウイルスを腫瘍に送達することができる、細胞、
である、使用。
[項100]
がんを処置するための担体細胞の使用であって、
前記担体細胞は腫瘍溶解性ウイルスを含み;
前記担体細胞は対象にマッチングするまたはマッチングされており;
前記担体細胞は上記項1~86のいずれかに記載の細胞を含む、
使用。
[項101]
対象のがんを処置するための担体細胞の使用であって、
前記担体細胞は前記対象に対して同種であり;
前記担体細胞は腫瘍溶解性ウイルスを含み;
前記担体細胞は前記対象にマッチングされる、
使用。
[項102]
対象のがんを処置するための担体細胞の使用であって、
前記担体細胞は前記対象に対して同種であり;
前記担体細胞は腫瘍溶解性ウイルスを含み;
前記担体細胞は前記対象にマッチングされ;
前記担体細胞は上記項1~86のいずれかに記載の細胞を含む、
使用。
[項103]
前記がんが固形腫瘍または血液悪性腫瘍である、上記項94~102のいずれかに記載の方法または使用。
[項104]
前記細胞が、改善されたウイルス増幅特性を有するように、および/または増強された免疫抑制特性もしくは免疫特権特性を有するように処理または改変される、上記項94~103のいずれかに記載の方法または使用。
[項105]
前記細胞が、ウイルス増幅を促進する、および/または前記担体細胞の免疫抑制特性もしくは免疫特権特性を増強する因子による前処理によって感作される、上記項94~104のいずれかに記載の方法または使用。
[項106]
前記細胞が、そのウイルス増幅能を改善するように操作される、上記項104または上記項105に記載の方法または使用。
[項107]
前記がんが固形腫瘍を含む、上記項87~106のいずれかに記載の方法または使用。
[項108]
前記対象がヒトである、上記項87~107のいずれかに記載の方法または使用。
[項109]
前記対象が非ヒト動物である、上記項87~107のいずれかに記載の方法または使用。
[項110]
前記対象がイヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ウシまたは非ヒト霊長類である、上記項87~107のいずれかに記載の方法または使用。
[項111]
前記がんが、白血病、リンパ腫、黒色腫、癌腫、肉腫、骨髄腫および神経芽細胞腫の中から選択される、上記項87~110のいずれかに記載の方法または使用。
[項112]
前記がんが、膵臓がん、肺がん、卵巣がん、乳がん、子宮頸がん、膀胱がん、前立腺がん、脳がん、中枢神経系がん、腺癌、肝臓がん、皮膚がん、血液がん、胆道がん、骨がん、絨毛癌、結腸および直腸がん、結合組織がん、消化器系がん、子宮内膜がん、食道がん、眼がん、頭頸部がん、胃がん、上皮内新生物、腎臓がん、喉頭がん、口腔がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、呼吸器系がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、子宮がん、ならびに泌尿器系がんの中から選択される、上記項87~110のいずれかに記載の方法または使用。
[項113]
前記がんが、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、結腸がん、基底細胞癌、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、口唇がん、舌がん、口腔がん、神経膠腫および咽頭がんの中から選択される、上記項87~112のいずれかに記載の方法または使用。
[項114]
ウイルスを含まない担体細胞がIFN-γで前処理され、ウイルスを含む担体細胞の投与前に、またはウイルスを含む担体細胞と同時に投与または使用される、上記項87~113のいずれかに記載の方法または使用。
[項115]
前記処置が、別の抗がん剤の投与または別の抗がん療法による処置をさらに含む、上記項87~114のいずれかに記載の方法または使用。
[項116]
前記さらなる抗がん剤または処置が免疫療法を含む、上記項115に記載の方法または使用。
[項117]
前記さらなる抗がん剤または治療が、外科手術、免疫共刺激アゴニスト、BiTE、腫瘍特異的抗原を標的化するCAR-T細胞およびTCRトランスジェニックT細胞、チェックポイント阻害剤、化学療法化合物/抗体、ならびに免疫抑制薬のうちの1つ以上から選択される、上記項115に記載の方法または使用。
[項118]
前記さらなる抗がん剤または処置が免疫抑制薬である、上記項117に記載の方法または使用。
[項119]
前記さらなる抗がん剤または処置が、CD28およびICOSの中から選択されるB7ファミリー;4-1BB、OX40、GITR、CD40、CD30およびCD27の中から選択されるTNFRファミリー;LIGHT;LT-α;PD-1、PD-2、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、IDO 1および2、CTNNB1(β-カテニン)、SIRPα、VISTA、LIGHT、HVEM、LAG3、TIM3、TIGIT、ガレクチン-9、KIR、GITR、TIM1、TIM4、CEACAM1、CD27、CD40/CD40L、CD48、CD70、CD80、CD86、CD112、CD137(4-1BB)、CD155、CD160、CD200、CD226、CD244(2B4)、CD272(BTLA)、B7-H2、B7-H3、B7-H4、B7-H6、ICOS、A2aR、A2bR、HHLA2、ILT-2、ILT-4、gp49B、PIR-B、HLA-G、ILT-2/4およびOX40/OX-40L、MDR1、アルギナーゼ1、iNOs、IL-10、TGF-β、pGE2、STAT3、VEGF、KSP、HER2、Ras、EZH2、NIPP1、PP1、TAK1およびPLK1aのうちの1つ以上を標的化するチェックポイント阻害剤;サイトカイン、ケモカイン、成長因子、光増感剤、毒素、抗がん抗生物質、化学療法化合物、放射性核種、血管新生阻害剤、シグナル伝達調節剤、代謝拮抗薬、抗がんワクチン、抗がんオリゴペプチド、有糸分裂阻害剤タンパク質、抗有糸分裂オリゴペプチド、抗がん抗体、免疫療法薬の中から選択される化学療法化合物および抗体;ならびにグルココルチコイド、カルシニューリン阻害剤、mTOR阻害剤、メトトレキサート、レナリドマイド、アザチオプリン、メルカプトプリン、フルオロウラシル、およびシクロホスファミド、TNFα遮断抗体、およびフルダラビンの中から選択される免疫抑制薬のうちの1つ以上の中から選択される、上記項117に記載の方法または使用。
[項120]
前記担体細胞が、投与される予定のまたは投与される対象にマッチングされる、上記項1~119のいずれかに記載の細胞、方法または使用。
[項121]
前記担体細胞を、投与される前記対象の免疫細胞にマッチングさせて、ウイルスを前記対象に送達するために前記対象の免疫細胞に十分に免疫学的に適合性である担体細胞を特定する、上記項1~120のいずれかに記載の細胞、方法または使用。
[項122]
前記細胞がウイルスにマッチングされ、前記細胞がウイルスを増幅する能力が測定される、上記項1~121のいずれかに記載の細胞、方法または使用。
[項123]
前記細胞/ウイルスの組み合わせが前記対象にマッチングされる、上記項120~122のいずれかに記載の細胞、方法または使用。
[項124]
前記対象の前記免疫細胞が末梢血単核細胞(PBMC)を含む、上記項121~123のいずれかに記載の細胞、方法または使用。
[項125]
前記担体が、前記ウイルスが前記細胞内で複製する能力および/または前記細胞がウイルス増幅を促進する能力を試験するために試験される、上記項1~124のいずれかに記載の細胞、方法または使用。
[項126]
前記ウイルスが前記細胞内で複製する能力および/または前記細胞がウイルス増幅を促進する能力が、前記細胞およびウイルスを共培養し、ウイルス増幅速度を測定することによって試験される、上記項125に記載の細胞、方法または使用。
[項127]
前記ウイルスが前記細胞内で複製する能力および/または前記細胞がウイルス増幅を促進する能力が、
a)約またはちょうど0.01~10の感染多重度(MOI)を使用してウイルス増幅速度を測定し、等価なアッセイ条件下で1日~約またはちょうど1週間(24時間~1週間)の期間、共培養し;
b)感染した細胞担体の数に対して正規化する
ことによって測定され、ここで、
等価なアッセイ条件下で測定された細胞当たりの正規化されたプラーク形成単位(pfu)値を使用して、担体細胞+ウイルスの組み合わせを療法に適している(または適していない)ものとしてランク付けするためのウイルス増幅スコア(VAS)を計算することができ;
1~10の担体細胞当たりのプラーク形成単位が、(特定のウイルスの細胞担体としての)限られた効力と見なされ;
10~100の細胞当たりのPfuが優れた効力であり;
100~1000の細胞当たりのPfuが非常に優れた効力であり;
1000超の細胞当たりのPfuが極めて高い効力であり;
少なくとも10のpfu/細胞を示す担体細胞とウイルスの組み合わせが、前記担体細胞と前記対象の対象適合性スクリーニングでの試験のために考慮される、
上記項126に記載の細胞、方法または使用。
[項128]
前記担体細胞/ウイルスの組み合わせが、
a)患者特異的な遺伝子多型を評価して、MHC I/IIハプロタイプ、KIRハプロタイプおよびリガンド、ならびにHLA-E、CD1a、b、c、d、MICA/Bのうちの1つ以上を含む非古典的MHCハプロタイプを特定し;
b)前記対象の遺伝子多型プロファイルを利用可能な担体細胞のプロファイルと比較して、担体細胞の中から、前記対象と最も適合性の細胞を特定し;
c)前記細胞、ウイルスおよび免疫細胞を共培養することによって、前記担体細胞と対象の免疫細胞の適合性を評価し;
d)ウイルス増幅のレベルを評価する
ことによって、処置される前記対象にマッチングされる、上記項1~127のいずれかに記載の細胞、方法または使用。
[項129]
e)担体細胞+生腫瘍生検+/-ウイルスを、腫瘍細胞の媒体指向移動およびウイルス増幅を検出することによって測定して、投与のための担体細胞/ウイルスを特定すること
をさらに含み、ここで、
前記対象の腫瘍生検+細胞媒体におけるウイルス増幅が、
等価な条件下での前記腫瘍生検単独におけるウイルス増幅+等価な条件下での前記細胞媒体単独におけるウイルス増幅の和よりも5%以上大きい;または
等価な条件下での前記腫瘍生検単独におけるウイルス増幅よりも少なくとも5%以上大きい、
上記項128に記載の細胞、方法または使用。
[項130]
対象由来のPBMC+担体細胞+ウイルスを培養することによって、前記担体細胞媒介ウイルス療法に対する対象の許容度を評価するために共培養物を分析することをさらに含む、上記項128または上記項129に記載の細胞、方法または使用。
[項131]
対象由来のPMBC+担体細胞+ウイルスの共培養物におけるウイルス増幅を測定すること
を含み、ここで、マッチが:
担体細胞と患者PBMCの共培養物におけるウイルス増幅が、同じ担体細胞がPBMCの非存在下で感染した場合のウイルス増幅の80%を超える場合、適合性であり;
担体細胞と患者PBMCの共培養物におけるウイルス増幅が、同じ担体細胞がPBMCの非存在下で感染した場合のウイルス増幅の30~80%の範囲にある場合、中程度に適合性であり;
担体細胞と患者PBMCの共培養物におけるウイルス増幅が、同じ担体細胞がPBMCの非存在下で感染した場合のウイルス増幅の10~30%の範囲にある場合、最小限に適合性であり;
担体細胞と患者PBMCの共培養物におけるウイルス増幅が、同じ担体細胞がPBMCの非存在下で感染した場合のウイルス増幅の10%未満である場合、不適合性であり;
%適合性を使用して、担体細胞を各個々の患者および各特定のウイルスについて、最も低い適合性から最も高い適合性の担体細胞までランク付けできる、
上記項128~130のいずれかに記載の細胞、方法または使用。
[項132]
細胞媒体(担体細胞)を、がんを有する対象への腫瘍溶解性ウイルスの送達に適しているとして選択することによる担体細胞と前記対象との間のマッチが、以下の決定因子(a)~(f)のうちの1つ以上を、前記細胞媒体(担体細胞)と前記対象との間のマッチを示すものとして特定すること、および、a)~f)のうちの1つ以上が満たされる場合、前記細胞媒体と前記対象との間のマッチを特定し、前記細胞媒体を腫瘍溶解性ウイルスの前記がんを有する対象への送達に適しているとして選択することを含む方法によって行われるる、上記項1~131のいずれかに記載の細胞、方法または使用:
a)前記細胞媒体と前記対象が、以下の遺伝子座を合わせたのうちの50%以上で同一の対立遺伝子を有する:
(i)MHC Iおよび/またはMHC IIハプロタイプ;
(ii)KIRハプロタイプおよび/またはKIRリガンドハプロタイプ;および
(iii)HLA-E、CD1a、CD1b、CD1cおよび/またはCD1dハプロタイプ;
b)前記対象の癌性細胞との共培養物で前記細胞媒体をインキュベートすると、以下のうちの1つ以上が得られる:
(i)前記癌性細胞に向かって移動する前記細胞媒体細胞の20%以上の腫瘍への細胞移動スコア(CTMS);
(ii)前記細胞媒体細胞に向かって移動する前記癌性細胞の20%以上の細胞への腫瘍移動スコア(TCMS);および/または
(iii)少なくとも20%の[(i)+(ii)]/2の累積移動スコア(MRS);
c)前記腫瘍溶解性ウイルスおよび前記対象の癌性細胞との共培養物で前記細胞媒体をインキュベートすると、以下のうちの1つ以上が得られる:
(i)前記癌性細胞に向かって移動する前記細胞媒体細胞の20%以上の腫瘍へのウイルス搭載細胞移動スコア(V-CTMS);
(ii)前記細胞媒体細胞に向かって移動する前記癌性細胞の20%以上の細胞へのウイルス搭載腫瘍移動スコア(V-TCMS);および/または
(iii)少なくとも20%の[(i)+(ii)]/2の累積ウイルス搭載移動スコア(V-MRS);
d)前記細胞媒体が前記腫瘍溶解性ウイルスおよび前記対象から得られた免疫細胞との共培養物でインキュベートされるとき、前記対象から得られた免疫細胞の非存在下であることを除いて等価な条件下で得られたウイルス増幅量に対する、前記対象から得られた免疫細胞の存在下でのウイルス増幅量を表す免疫学的ウイルス増幅スコア(IVAS)が少なくとも20%である;
e)前記細胞媒体が前記腫瘍溶解性ウイルスおよび前記対象から得られた免疫細胞との共培養物でインキュベートされるとき、前記細胞媒体の非存在下であることを除いて等価な条件下での免疫応答に対する、前記細胞媒体の存在下での免疫応答を表す免疫学的適合性スコア(ICS)が200%以下である;ここで、前記免疫応答が以下のうちの1つ以上の発現量によって決定される:
(i)IFNγ;
(ii)T細胞、NK細胞および/またはNKT細胞媒介細胞傷害性に関連する1つ以上のマーカー;および/または
(iii)T細胞、NK細胞および/またはNKT細胞活性化因子/エフェクター機能に関連する1つ以上のマーカー;
f)前記細胞媒体が前記腫瘍溶解性ウイルスおよび前記対象から得られた免疫細胞との共培養物でインキュベートされるとき、前記細胞媒体が、以下の式に従って0%以上の免疫学的抑制スコア(ISS)によって測定されるように、前記細胞媒体の非存在下であることを除いて同一の条件に対して、抗ウイルス免疫応答を増強しない、および/または抗ウイルス免疫応答を抑制する:
ISS%=[(IV+IC)-ICV]/(IV+IC)x 100
(式中、
IV=前記ウイルス+前記対象から得られた免疫細胞の共培養物におけるマーカー発現レベル;
IC=前記対象から得られた免疫細胞+前記細胞媒体の共培養物におけるマーカー発現レベル;
ICV=前記対象から得られた免疫細胞+前記細胞媒体+前記ウイルスの共培養物におけるマーカー発現レベル;および
前記マーカー発現レベルは、e)の(i)、(ii)および(iii)に示されるマーカーのうちの1つ以上の発現レベルである)。
[項133]
a)~f)のうちの1つ以上の前に、
前記細胞媒体が前記ウイルスとインキュベートされるとき、pfu/細胞としてのウイルス増幅スコア(VAS)を決定し;
前記VASスコアが少なくとも10である場合、前記決定因子(a)~(f)のうちの1つ以上を使用したスクリーニングのために前記細胞媒体を選択し、前記細胞媒体と前記対象との間のマッチがあるかどうかを特定すること
をさらに含む、上記項132に記載の細胞、方法または使用。
[項134]
前記方法が、以下を含む多重化方法によって、可能な担体細胞のパネルに対して多重化されて、対象に対する腫瘍溶解性ウイルスの有効性または送達に基づいてこれらをランク付けし、ランク1が最も望ましい最高ランクであり、数値が大きいほど望ましさの劣るランクを表す、上記項132または上記項133に記載の細胞、方法または使用:
(i)前記パネル内の各細胞媒体についてa)~f)のうちの1つ以上の値を測定し、前記測定値に従って各細胞媒体をランク付けすること;ここで、
a)については、細胞媒体と前記対象との間の対立遺伝子の同一性が高いほど、前記細胞媒体のランクが高くなる;
b)については、細胞媒体についてのCTMS、TCMSおよび/またはMRSスコアが高いほど、前記細胞媒体のランクが高くなる;
c)については、細胞媒体についてのV-CTMS、V-TCMSおよび/またはV-MRSスコアが高いほど、前記細胞媒体のランクが高くなる;
d)については、細胞媒体についてのIVASスコアが高いほど、前記細胞媒体のランクが高くなる;
e)については、細胞媒体についてのICSスコアが低いほど、前記細胞媒体のランクが高くなる;および
f)については、細胞媒体についてのISSスコアが高いほど、前記細胞媒体のランクが高くなる;ならびに/あるいは
(ii)前記パネル内の各細胞媒体について、a)~f)のうちの2つ以上の値の測定に基づいて、2つ以上のランクの平均である累積ランクを取得し、累積ランクに従って前記パネルの前記細胞媒体をランク付けすること。
[項135]
(i)前記パネル内の各細胞媒体について、前記細胞媒体が前記ウイルスとインキュベートされるとき、pfu/細胞としてのウイルス増幅スコア(VAS)を取得すること;
(ii)前記パネル内の各細胞媒体について、VASスコアおよびa)~f)のうちの1つ以上の値の測定に基づいて、2つ以上のランクの平均である累積ランクを取得すること;および
(iii)累積ランクに従って前記パネルの前記細胞媒体をランク付けすること
をさらに含む、上記項134に記載の細胞、方法または使用。
[項136]
前記ICSスコアおよび/または前記ISSスコアが、前記細胞共培養物におけるマーカー発現の測定に基づいて取得される、上記項132~135のいずれかに記載の方法。
[項137]
前記ICSスコアおよび/または前記ISSスコアが、前記共培養物の上清におけるマーカー発現の測定に基づいて取得される、上記項132~135のいずれかに記載の方法。
[項138]
前記IVASスコアが、以下を含む方法によって、ウイルス増幅に対する前記対象の血清の効果について補正される、上記項132~137のいずれかに記載の方法:
(i)d)の前記共培養物に、前記対象の血清を前記共培養物量の10~50重量%(またはv/v)の量で添加すること;
(ii)以下の式に従って対象血清耐性スコア(SSRS)を計算すること:
および
(iii)以下の式に従って%SSRS補正IVASスコアを計算すること:
IVAS(SSRS補正)=IVAS x(1-SSRS)x 100。
[項139]
以下の中から選択される1つ以上の改変を含む、改変された細胞媒体または担体細胞:
a)ウイルス増幅能力を増強するための前記細胞媒体の感作;
b)抗ウイルス応答の誘導を遮断するための前記細胞媒体の感作;
c)前記対象による同種不活化および/または拒絶からの前記細胞媒体の保護;
d)補体からの前記細胞媒体の保護;および/または
e)前記細胞媒体をウイルス媒介殺傷に対して耐性にすること。
[項140]
a)細胞媒体をインターフェロンによって誘導される抗ウイルス応答に応答しないようにする遺伝子の一過的または永続的な発現または抑制;
b)T細胞およびNKT細胞の1つ以上による同種認識、および/またはγδ T細胞の1つ以上の適応免疫応答を回避することを促進するための、遺伝子の一過的または永続的な発現または抑制;
c)NK細胞による同種認識および/またはγδ T細胞の1つ以上の自然免疫応答の回避を促進するための遺伝子の一過的または永続的な発現または抑制;
d)免疫抑制因子の一過的または永続的な発現;
e)細胞媒体とのウイルスの会合を促進する因子の一過的または永続的な発現;および
f)補体および/または中和抗体の機能を妨害する因子の一過的または永続的な発現
のために操作された、改変された細胞媒体(担体細胞)。
[項141]
前記改変が以下の中からさらに選択される、上記項140に記載の改変された細胞媒体(担体細胞):
a)ウイルス増幅能力を増強するための前記細胞媒体の感作;
b)抗ウイルス応答の誘導を遮断するための前記細胞媒体の感作;
c)前記対象による同種不活化および/または拒絶からの前記細胞媒体の保護;
d)補体からの前記細胞媒体の保護;および/または
e)前記細胞媒体をウイルス媒介殺傷に対して耐性にすること。
[項142]
細胞媒体を、がんを有する対象への腫瘍溶解性ウイルスの送達に適しているとして選択する方法であって、以下の決定因子(a)~(f)のうちの1つ以上を、前記細胞媒体と前記対象との間のマッチを示すものとして特定すること
、および、a)~f)のうちの1つ以上が満たされる場合、前記細胞媒体と前記対象との間のマッチを特定し、前記細胞媒体を腫瘍溶解性ウイルスの前記がんを有する対象への送達に適しているとして選択することを含む、方法:
a)前記細胞媒体と前記対象が、以下の遺伝子座を合わせたのうちの50%以上で同一の対立遺伝子を有する:
(i)MHC Iおよび/またはMHC IIハプロタイプ;
(ii)KIRハプロタイプおよび/またはKIRリガンドハプロタイプ;および
(iii)HLA-E、CD1a、CD1b、CD1cおよび/またはCD1dハプロタイプ;
b)前記対象の癌性細胞との共培養物で前記細胞媒体をインキュベートすると、以下のうちの1つ以上が得られる:
(i)前記癌性細胞に向かって移動する前記細胞媒体細胞の20%以上の腫瘍への細胞移動スコア(CTMS);
(ii)前記細胞媒体細胞に向かって移動する前記癌性細胞の20%以上の細胞への腫瘍移動スコア(TCMS);および/または
(iii)少なくとも20%の[(i)+(ii)]/2の累積移動スコア(MRS);
c)前記腫瘍溶解性ウイルスおよび前記対象の癌性細胞との共培養物で前記細胞媒体をインキュベートすると、以下のうちの1つ以上が得られる:
(i)前記癌性細胞に向かって移動する前記細胞媒体細胞の20%以上の腫瘍へのウイルス搭載細胞移動スコア(V-CTMS);
(ii)前記細胞媒体細胞に向かって移動する前記癌性細胞の20%以上の細胞へのウイルス搭載腫瘍移動スコア(V-TCMS);および/または
(iii)少なくとも20%の[(i)+(ii)]/2の累積ウイルス搭載移動スコア(V-MRS);
d)前記細胞媒体が前記腫瘍溶解性ウイルスおよび前記対象から得られた免疫細胞との共培養物でインキュベートされるとき、前記対象から得られた免疫細胞の非存在下であることを除いて等価な条件下で得られたウイルス増幅量に対する、前記対象から得られた免疫細胞の存在下でのウイルス増幅量を表す免疫学的ウイルス増幅スコア(IVAS)が少なくとも20%である;
e)前記細胞媒体が前記腫瘍溶解性ウイルスおよび前記対象から得られた免疫細胞との共培養物でインキュベートされるとき、前記細胞媒体の非存在下であることを除いて等価な条件下での免疫応答に対する、前記細胞媒体の存在下での免疫応答を表す免疫学的適合性スコア(ICS)が200%以下である;ここで、前記免疫応答が以下のうちの1つ以上の発現量によって決定される:
(i)IFNγ;
(ii)T細胞、NK細胞および/またはNKT細胞媒介細胞傷害性に関連する1つ以上のマーカー;および/または
(iii)T細胞、NK細胞および/またはNKT細胞活性化因子/エフェクター機能に関連する1つ以上のマーカー;
f)前記細胞媒体が前記腫瘍溶解性ウイルスおよび前記対象から得られた免疫細胞との共培養物でインキュベートされるとき、前記細胞媒体が、以下の式に従って0%以上の免疫学的抑制スコア(ISS)によって測定されるように、前記細胞媒体の非存在下であることを除いて同一の条件に対して、抗ウイルス免疫応答を増強しない、および/または抗ウイルス免疫応答を抑制する:
ISS%=[(IV+IC)-ICV]/(IV+IC)x 100
(式中、
IV=前記ウイルス+前記対象から得られた免疫細胞の共培養物におけるマーカー発現レベル;
IC=前記対象から得られた免疫細胞+前記細胞媒体の共培養物におけるマーカー発現レベル;
ICV=前記対象から得られた免疫細胞+前記細胞媒体+前記ウイルスの共培養物におけるマーカー発現レベル;および
前記マーカー発現レベルは、e)の(i)、(ii)および(iii)に示されるマーカーのうちの1つ以上の発現レベルである)。
[項143]
a)~f)のうちの1つ以上の前に、
前記細胞媒体が前記ウイルスとインキュベートされるとき、pfu/細胞としてのウイルス増幅スコア(VAS)を決定し;
前記VASスコアが少なくとも10である場合、前記決定因子(a)~(f)のうちの1つ以上を使用したスクリーニングのために前記細胞媒体を選択し、前記細胞媒体と前記対象との間のマッチがあるかどうかを特定すること
をさらに含む、上記項142に記載の方法。
[項144]
細胞媒体のパネルに適用され、腫瘍溶解性ウイルスの対象への送達についての望ましさに従って、これらをランク付けし、ランク1が最も望ましい最高ランクであり、数値が大きいほど望ましさの劣るランクを表す、上記項142または上記項143に記載の方法を含む、多重化方法であって、
(i)前記パネル内の各細胞媒体についてa)~f)のうちの1つ以上の値を測定し、前記測定値に従って各細胞媒体をランク付けすること、ここで、
a)については、細胞媒体と前記対象との間の対立遺伝子の同一性が高いほど、前記細胞媒体のランクが高くなる;
b)については、細胞媒体についてのCTMS、TCMSおよび/またはMRSスコアが高いほど、前記細胞媒体のランクが高くなる;
c)については、細胞媒体についてのV-CTMS、V-TCMSおよび/またはV-MRSスコアが高いほど、前記細胞媒体のランクが高くなる;
d)については、細胞媒体についてのIVASスコアが高いほど、前記細胞媒体のランクが高くなる;
e)については、細胞媒体についてのICSスコアが低いほど、前記細胞媒体のランクが高くなる;および
f)については、細胞媒体についてのISSスコアが高いほど、前記細胞媒体のランクが高くなる;ならびに/あるいは
(ii)前記パネル内の各細胞媒体について、a)~f)のうちの2つ以上の値の測定に基づいて、2つ以上のランクの平均である累積ランクを取得し、累積ランクに従って前記パネルの前記細胞媒体をランク付けすること
を含む方法。
[項145]
(i)前記パネル内の各細胞媒体について、前記細胞媒体が前記ウイルスとインキュベートされるとき、pfu/細胞としてのウイルス増幅スコア(VAS)を取得すること;
(ii)前記パネル内の各細胞媒体について、VASスコアおよびa)~f)のうちの1つ以上の値の測定に基づいて、2つ以上のランクの平均である累積ランクを取得すること;および
(iii)累積ランクに従って前記パネルの前記細胞媒体をランク付けすること
をさらに含む、上記項144に記載の方法。
[項146]
前記ICSスコアおよび/または前記ISSスコアが、前記細胞共培養物におけるマーカー発現の測定に基づいて取得される、上記項142~145のいずれかに記載の方法。
[項147]
前記ICSスコアおよび/または前記ISSスコアが、前記共培養物の上清におけるマーカー発現の測定に基づいて取得される、上記項142~145のいずれかに記載の方法。
[項148]
前記IVASスコアが、以下を含む方法によって、ウイルス増幅に対する前記対象の血清の効果について補正される、上記項142~147のいずれかに記載の方法:
(i)d)の前記共培養物に、前記対象の血清を前記共培養物量の10~50重量%(またはv/v)の量で添加すること;
(ii)以下の式に従って対象血清耐性スコア(SSRS)を計算すること:
および
(iii)以下の式に従って%SSRS補正IVASスコアを計算すること:
IVAS(SSRS補正)=IVAS×(1-SSRS)× 100。
[項149]
腫瘍溶解性ウイルスでがんを有する対象を治療する方法であって、
a)上記項142~148のいずれかに記載の方法に従って腫瘍溶解性ウイルスを送達するための担体細胞を選択すること;および
b)前記細胞媒体および腫瘍溶解性ウイルスを前記対象に投与すること
を含む方法。
[項150]
薬学的に許容される賦形剤中に上記項1~86のいずれかに記載の細胞を含む医薬組成物。
[項151]
がんを治療するために使用するための上記項150に記載の医薬組成物。
[項152]
前記がんが固形腫瘍または血液悪性腫瘍を含む、上記項151に記載の医薬組成物。
[項153]
前記細胞が、全身的、局所的、腫瘍内、肝内、静脈内、直腸または皮下に投与される、上記項1~152のいずれかに記載の細胞、方法、使用または医薬組成物。
[項154]
前記担体細胞が、上記項142~148のいずれかに記載の方法によって前記対象にマッチングされる、上記項97に記載の方法。
[項155]
上記項142~148のいずれかに記載のマッチングアッセイによって、前記細胞を、前記細胞が投与される対象にマッチングさせることを含む、上記項87~92のいずれかに記載の方法または使用。
[項156]
前記担体細胞が、上記項142~148のいずれかに記載の方法によって前記対象にマッチングされる、上記項98に記載の細胞。
[項157]
がんを有する対象を、腫瘍溶解性ウイルスを前記対象に送達するための細胞媒体とマッチングする方法であって、
前記細胞媒体、前記腫瘍溶解性ウイルスおよび前記対象の細胞を含む共培養物において、以下のうちの1つ以上を検出することによって、前記細胞媒体が前記対象における免疫障壁を克服するかどうかを決定することを含む、方法:
(a)前記細胞媒体が存在しないことを除いて等価な条件と比較して減少したレベルのT細胞活性化についての1つ以上のマーカー;
(b)前記細胞媒体が存在しないことを除いて等価な条件と比較して減少したレベルのNK細胞活性化についての1つ以上のマーカー;
(c)前記細胞媒体が存在しないことを除いて等価な条件と比較して減少したレベルのNKT細胞活性化についての1つ以上のマーカー;
ここで、(a)、(b)および(c)のうちの1つ以上が満たされる場合、前記細胞媒体は前記対象についてマッチである。
[項158]
がんを有する対象を、腫瘍溶解性ウイルスを前記対象に送達するための細胞媒体とマッチングする方法であって、
(a)前記ウイルスおよび前記細胞媒体を前記対象の細胞と一緒にインキュベートしたときに得られるウイルス増幅量を測定すること;
(b)前記ウイルスおよび前記細胞媒体を、前記対象の細胞が存在しないことを除いて等価な条件下でインキュベートしたときに得られるウイルス増幅量を測定すること;および
(c)(a)と(b)で測定された量を比較すること
を含み、(a)で測定された増幅量が(b)で測定された増幅量の少なくとも20%である場合、前記細胞媒体は前記対象についてマッチである、方法
[項159]
前記細胞媒体および前記対象の対立遺伝子の少なくとも10%を同一であると特定することをさらに含み、前記対立遺伝子が1つ以上の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)および/またはキラー細胞抑制性受容体(KIR)遺伝子座にある、上記項157または上記項158に記載の方法。
[項160]
同一の対立遺伝子を特定することが、マーカーのレベルまたはウイルス増幅量を測定する前に実施される、上記項159に記載の方法。
[項161]
がんを有する対象を、腫瘍溶解性ウイルスを前記対象に送達するための細胞媒体とマッチングする方法であって、
前記細胞媒体および前記対象の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)および/またはキラー細胞抑制性受容体(KIR)遺伝子座にある同一の対立遺伝子を特定すること;および
前記対立遺伝子の少なくとも50%が同一である場合、前記細胞媒体を前記対象についてマッチであるとして選択すること
を含む方法。
[項162]
がんを有する対象を、腫瘍溶解性ウイルスを前記対象に送達するための細胞媒体とマッチングする方法であって、
前記細胞媒体、前記腫瘍溶解性ウイルスおよび前記対象の細胞を含む共培養物において、前記細胞媒体の非存在下であることを除いて等価な条件下で検出された発現レベルの200%以下である1つ以上の免疫学的マーカーの発現のレベルを検出することによって、前記細胞媒体が前記対象における免疫障壁を克服するかどうかを決定することを含み、ここで、前記マーカーが、
(1)T細胞活性化についてのマーカー;
(2)NK細胞活性化についてのマーカー;および
(3)NKT細胞活性化についてのマーカー;
のうちの1つ以上の中から選択され、前記共培養物における(1)、(2)および(3)の中から選択される少なくとも1つのマーカーの発現レベルが、前記細胞媒体の非存在下であることを除いて等価な条件下で検出された発現レベルの200%以下である場合、前記細胞媒体は前記対象についてマッチである、方法。
[項163]
主要組織適合遺伝子複合体(MHC)および/またはキラー細胞抑制性受容体(KIR)遺伝子座にある前記対立遺伝子の少なくとも1つを前記細胞媒体および前記対象で同一であると特定することをさらに含み、ここで、前記遺伝子座の少なくとも1つが同一であり、前記共培養物における1つ以上の免疫学的マーカーの発現レベルが、前記細胞媒体の非存在下であることを除いて等価な条件下で検出された発現レベルの200%以下である場合、前記細胞媒体は前記対象についてマッチである、上記項162に記載の方法。
[項164]
前記同一の対立遺伝子を特定することが、前記1つ以上の免疫学的マーカーの発現レベルを検出する前に実施される、上記項163に記載の方法。
[項165]
前記細胞媒体が、上記項1~86、120~135および139~141のいずれかに記載の細胞の中から選択される、上記項157~164のいずれかに記載の方法。
許可されている場合、以下および優先出願の米国仮特許出願第62/680,570号に示される特許請求の範囲は参照によりこの節に組み込まれる。

【発明を実施するための形態】
【0074】
概要
A.定義
B.細胞ベースの媒体(「Cell Vehicle」(細胞媒体))を使用するウイルス療法のための構成要素の選択
(1)細胞ベースの媒体
-細胞媒体の種類(自家または同種)
(2)ウイルス
-ウイルスの種類
C.細胞媒体およびウイルスと対象のマッチングについてのアッセイ
(I)対象由来の免疫細胞の選択
-細胞の種類
-細胞を入手する方法
(II)一般的な培養および標識方法
(III)細胞ベースの媒体(「Cell Vehicle」(細胞媒体))とウイルスのマッチング
(IV)細胞媒体/ウイルスの組み合わせと対象のマッチング
1.ハプロタイプマッチング
2.細胞媒体、ウイルスおよび対象由来の免疫細胞を共培養するための条件および方法
3.腫瘍細胞に動員され、ウイルス感染に対して他の方法で耐性の腫瘍細胞を感作させる能力/効率の測定。
4.対象/細胞媒体のマッチングの分析
a.ウイルス増幅の測定
b.共培養物の免疫調節の測定
c.共培養物の上清の免疫調節の測定
d.対象特異的な細胞媒体の選択
D.改善されたマッチング能力を有する改変された細胞媒体
(i)改善されたウイルス増幅および/または免疫調節のために感作される
1.種類
a.ウイルス増幅能力を増強するように感作された細胞媒体
b.抗ウイルス状態の誘導を遮断するように感作された細胞媒体
c.同種不活化/拒絶決定因子から保護された細胞媒体
d.補体から保護された細胞媒体
2.作製する方法
(ii)ウイルス媒介殺傷に対する耐性のために感作される
a.I型および/またはII型インターフェロンで前処理された細胞媒体
b.抗ウイルス状態のアゴニスト/誘導物質(STING、PKR、RIG-I、MDA-5等)で前処理された細胞媒体
2.作製する方法
(iii)改善されたウイルス増幅および/または免疫調節のために操作される
1.種類
a.インターフェロンによって誘導される抗ウイルス状態に応答しないように操作される
b.T細胞、γδ(gd)T細胞(適応免疫応答)およびNKT細胞による同種認識を回避するように操作される
c.NK細胞およびγδ(gd)T細胞(自然免疫応答)による同種認識を回避するように操作される
d.ヒトまたはウイルス起源の免疫抑制因子を発現するように操作される
e.他の方法では不許容性の腫瘍細胞のウイルス感染を促進するがんまたは幹細胞由来因子を発現するように操作される
f.補体および/または中和抗体の機能を妨害する因子を発現するように操作される
2.作製する方法
E.療法のための細胞媒体/ウイルスの投与様式
F.治療方法および治療と連携したモニタリング
G.医薬組成物、組み合わせおよびキット
H.細胞媒体+ウイルス治療と投与される追加の療法
I.治療されるがんの種類
J.実施例
K.特許請求の範囲
【0075】
A.定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書の開示全体を通して言及される全ての特許、特許出願、公開された出願および刊行物、GenBank配列、データベース、ウェブサイト、ならびに他の公開された資料は、特に明記しない限り、その全体が参照により組み込まれる。本明細書の用語について複数の定義がある場合は、この節の定義が優先する。URLまたは他のこのような識別子もしくはアドレスが言及される場合、このような識別子は変化でき、インターネット上の特定の情報は移り変わることができるが、インターネットを検索することによって等価な情報を見つけることができることが理解される。これらへの言及は、このような情報の入手可能性および一般的普及を証明している。
【0076】
本明細書中で用いる場合、「virus」(ウイルス)は、宿主細胞なしでは増殖も複製もできない感染性実体の大きな群のいずれかを指す。ウイルスは、典型的には、遺伝物質のRNAまたはDNAコアを取り囲むタンパク質コートを含むが、半透膜は含まず、生細胞でのみ増殖および増加することができる。ウイルスには、それだけに限らないが、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、ラブドウイルス、パピローマウイルス、水疱性口内炎ウイルス、麻疹ウイルス、ニューカッスル病ウイルス、ピコルナウイルス、シンドビスウイルス、パピローマウイルス、パルボウイルス、レオウイルス、コクサッキーウイルス、インフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、ポリオウイルス、セネカバレーウイルスおよびセムリキ森林ウイルスが含まれる。
【0077】
本明細書中で用いる場合、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍対象の腫瘍細胞において選択的に複製するウイルスを指す。一部の腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍細胞の感染後に腫瘍細胞を殺傷することができる。例えば、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍細胞を溶解することによって、または腫瘍細胞の細胞死を誘導することによって、腫瘍細胞の死を引き起こすことができる。
【0078】
本明細書中で用いる場合、「therapeutic virus」(治療用ウイルス)という用語は、がん、腫瘍および/または転移などの新生物疾患、または炎症または創傷などの疾患または障害の治療、あるいはそれらの診断ならびに/あるいはその両方のために投与されるウイルスを指す。一般に、本明細書の治療用ウイルスは、抗腫瘍活性および最小の毒性を示すものである。
【0079】
本明細書中で用いる場合、「vaccinia virus」(ワクシニアウイルス)または「VACV」または「VV」という用語は、ポックスウイルスファミリーに属する大きく、複雑なエンベロープウイルスを意味する。これは、およそ200のタンパク質をコードする、長さがおよそ190 kbpの線状の二本鎖DNAゲノムを有する。ワクシニアウイルス株には、それだけに限らないが、ウエスタンリザーブ(WR)、コペンハーゲン(Cop)、Bern、Paris、Tashkent、Tian Tan、Lister、Wyeth、IHD-J、IHD-W、Brighton、Ankara、改変ワクシニアAnkara(MVA)、CVA382、Dairen I、LIPV、LC16M8、LC16M0、LIVP、ACAM、WR 65-16、Connaught、JX-594、GL-ONC1、vvDD TK突然変異株、ニューヨーク市保健局(NYCBH)、EM-63およびNYVACワクシニアウイルス株の株、これらに由来する株またはこれらの改変型の株が含まれる。
【0080】
本明細書中で用いる場合、Institute of Viral PreparationsのLister株(LIVP)またはLIVPウイルス株は、Institute of Viral Preparations、モスクワ、ロシアで小牛皮への適応によって産生された弱毒化Lister株であるウイルス株(ATCCカタログ番号VR-1549)を指す(Al’tshteinら(1985)Dokl.Akad.Nauk USSR 285:696~699)。LIVP株は、例えば、Institute of Viral Preparations、モスクワ、ロシア(例えば、Kutinovaら(1995)Vaccine 13:487~493参照);FSRI SRC VB Vectorの微生物コレクション(Kozlovaら(2010)Environ.Sci.Technol.44:5121~5126)から入手することができる;またはMoscow Ivanovsky Institute of Virology(C0355 K0602;Agranovskiら(2006)Atmospheric Environment 40:3924~3929)から入手することができる。これはまた、USSRならびにアジアおよびインド全体でワクチン接種に使用されたワクチン株だったため、当業者に周知である。この株は現在、研究者によって使用されており、周知である(例えば、Altshteynら(1985)Dokl.Akad.Nauk USSR 285:696~699;Kutinovaら(1994)Arch.Virol.134:1~9;Kutinovaら(1995)Vaccine 13:487~493;Shchelkunovら(1993)Virus Research 28:273~283;Srollerら(1998)Archives Virology 143:1311~1320;Zinovievら(1994)Gene 147:209~214;およびChkheidzeら(1993)FEBS 336:340~342参照)。LIVPウイルス株は、細胞株における反復継代を介したLIVPの増殖によって得られる任意のウイルス株またはウイルス調製物を包含する。
【0081】
本明細書中で用いる場合、「modified virus」(改変されたウイルス)という用語は、ウイルスの親株と比較して変化したウイルスを指す。典型的には、改変されたウイルスは、ウイルスのゲノム中に1つ以上の切断、突然変異、挿入または欠失を有する。改変されたウイルスは、1つ以上の改変された内因性ウイルス遺伝子、および/または1つ以上の改変された遺伝子間領域を有することができる。例示的な改変されたウイルスは、ウイルスのゲノムに挿入された1つ以上の異種核酸配列を有することができる。改変されたウイルスは、異種遺伝子の発現のための遺伝子発現カセットの形態の1つ以上の異種核酸配列を含むことができる。
【0082】
本明細書中で用いる場合、「cell vehicle」(細胞媒体)、「carrier vehicle」(担体媒体)、「cell-based delivery vehicle」(細胞ベースの送達媒体)および「cell-based vehicle」(細胞ベースの媒体)と互換的に使用される「carrier cell」(担体細胞)という用語は、ウイルスが感染できるまたは感染する、あるいは例えばウイルスと表面タンパク質との間の化学的もしくは物理的相互作用を通して、または細胞の細胞質もしくは核のウイルスによる感染によって、ウイルスと会合することができるまたは会合する任意の細胞を指す。
【0083】
本明細書中で用いる場合、細胞の特性を変化させるよう「sensitized」(感作される)または「sensitizing a cell」(細胞を感作させる)は、一般に使用前に、細胞の特性を改変する薬剤での処理によって、例えば、遺伝子の発現を誘導することによって、細胞を処理することを指す。
【0084】
本明細書中で用いる場合、特定の細胞担体(本明細書では細胞媒体とも呼ばれる)と、担体細胞およびウイルスで治療されるがんを有する対象との間のマッチは、細胞担体が、対象の免疫系を回避して、ウイルスを対象の腫瘍に送達するのに十分に宿主の免疫系と十分に適合性であることを意味する。治療される対象にマッチングしたマッチング担体細胞を特定するためのアッセイが本明細書で提供される。担体細胞をウイルスにマッチングさせることもでき、マッチングウイルスは細胞内で複製することができる。ウイルスとマッチングした担体細胞は、ウイルスが細胞内で増幅/複製し、細胞がウイルスを対象の腫瘍に送達する場合、対象への投与についてマッチである。担体細胞/ウイルスの組み合わせを選択するためのアッセイも本明細書で提供される。
【0085】
本明細書中で用いる場合、担体細胞におけるウイルスの増幅は、ウイルスが細胞内で複製してウイルスを維持する、または細胞内のウイルスの量を増加させることを意味する。
【0086】
本明細書中で用いる場合、「host cell」(宿主細胞)または「target cell」(標的細胞)は、ウイルスが感染することができる細胞を意味するために互換的に使用される。
【0087】
本明細書中で用いる場合、「tissue」(組織)という用語は、一般に生物内で特定の機能を実施するように作用する類似の細胞の群、集合または集合体を指す。
【0088】
本明細書中で用いる場合、「therapeutic gene product」(治療用遺伝子産物)または「therapeutic polypeptide」(治療用ポリペプチド)または「therapeutic agent」(治療薬)という用語は、疾患もしくは障害の症状を改善する、または疾患もしくは障害を改善する、治療用ウイルスによって発現される任意の異種タンパク質を指す。治療薬には、それだけに限らないが、細胞増殖を阻害するもしくは細胞死を促進する部分、細胞増殖を阻害するもしくは細胞死を促進するために活性化できる部分、または細胞増殖を阻害するもしくは細胞死を促進する別の薬剤を活性化する部分が含まれる。任意に、治療薬は、本明細書の他の場所に記載されるように、造影剤としての使用を可能にする特性などの追加の特性を示す、または明らかにすることができる。例示的な治療薬には、例えば、サイトカイン、成長因子、光増感剤、放射性核種、毒素、代謝拮抗薬、シグナル伝達調節剤、抗がん抗生物質、抗がん抗体、血管新生阻害剤、化学療法化合物またはこれらの組み合わせが含まれる。
【0089】
本明細書中で用いる場合、治療薬は、疾患もしくは障害の症状を改善する、または疾患もしくは障害を改善する薬剤である。治療薬、治療用化合物または治療レジメンには、治療または予防(すなわち、特定の疾患または障害を発症するリスクを減少させる)のためのワクチンを含む、従来の薬物および薬物療法が含まれ、これらは当業者に既知であり、本明細書の他の場所に記載される。新生物疾患を治療するための治療薬には、それだけに限らないが、細胞増殖を阻害するもしくは細胞死を促進する部分、細胞増殖を阻害するもしくは細胞死を促進するために活性化できる部分、または細胞増殖を阻害するもしくは細胞死を促進する別の薬剤を活性化する部分が含まれる。本明細書で提供される方法で使用するための治療薬は、例えば、抗がん剤であることができる。例示的な治療薬には、例えば、治療用ウイルスおよび細菌などの治療用微生物、サイトカイン、成長因子、光増感剤、放射性核種、毒素、代謝拮抗薬、シグナル伝達調節剤、抗がん抗生物質、抗がん抗体、血管新生阻害剤、放射線療法、化学療法化合物またはこれらの組み合わせが含まれる。
【0090】
本明細書中で用いる場合、腫瘍細胞またはがん細胞は、増殖および分裂が調節も制御もされないために異常に分裂および複製する細胞、すなわち、制御されない増殖を受けやすい細胞を指す。腫瘍細胞は、良性細胞または悪性細胞であることができる。典型的には、腫瘍細胞は、転移として知られる過程で、体の他の部分に拡散することができる悪性細胞である。
【0091】
本明細書中で用いる場合、ウイルス調製物またはウイルス組成物は、培養系においてインビボまたはインビトロで、ウイルス株、例えば、ワクシニアウイルス株、ワクシニアウイルスクローン株、または改変されたもしくは組換えウイルス株の増殖によって得られるウイルス組成物を指す。例えば、ワクシニアウイルス調製物は、典型的には当技術分野で既知の標準的な方法を使用して培養系から精製する際に、宿主細胞におけるウイルス株の増殖によって得られるウイルス組成物を指す。ウイルス調製物は、一般に、いくつかのウイルス粒子またはビリオンで構成される。所望であれば、試料または調製物中のウイルス粒子の数を、形成された各プラークが1つの感染性ウイルス粒子を表すと仮定して、試料単位体積当たりのプラーク形成単位の数(pfu/mL)を計算するプラークアッセイを使用して決定することができる。調製物中の各ウイルス粒子またはビリオンは、他のウイルス粒子と比較して同じゲノム配列を有することができる(すなわち、調製物は配列が均質である)、または異なるゲノム配列を有することができる(すなわち、調製物は配列が不均質である)。クローン単離がない場合、ウイルス株の自然選択過程で起こる相同組換えイベントなどによって、ウイルスが複製する際にウイルスのゲノムの不均質性または多様性が生じることができることが当業者に理解される(Plotkin&Orenstein(編)「Recombinant Vaccinia Virus Vaccines」 in Vaccines、第3版(1999))。
【0092】
本明細書中で用いる場合、プラーク形成単位(pfu)または感染単位(IU)は、感染性ウイルスまたは生ウイルスの数を指す。したがって、これは調製物中の活性ウイルスの量を反映する。pfuは、当業者に既知の標準的なアッセイであるウイルスプラークアッセイ(プラーク形成アッセイ)またはエンドポイント希釈アッセイを使用して決定することができる。
【0093】
本明細書中で用いる場合、ナノ粒子は、ちょうどまたは約1~1000ナノメートル(nm)、例えば1~100nmのサイズで微視的であり、輸送および特性に関して単位全体として振る舞う、分子または薬剤を送達するためのコロイド粒子を指す。ナノ粒子には、サイズが均一なものが含まれる。ナノ粒子には、外側に付着した標的化分子を含有するものが含まれる。
【0094】
本明細書中で用いる場合、「targeting molecule」(標的化分子)または「targeting ligand」(標的化リガンド)は、特定の細胞、組織または臓器への局在化を指示する任意の分子シグナルを指す。標的化リガンドの例としては、それだけに限らないが、タンパク質、炭水化物、脂質または他のこのような部分を含む、それだけに限らないが、細胞表面分子に結合するタンパク質、ポリペプチドまたはこれらの部分が挙げられる。例えば、標的化リガンドは、細胞表面受容体に結合するタンパク質もしくはその部分、または標的細胞上で選択的に発現される抗原に向けられる抗体を含む。標的化リガンドには、それだけに限らないが、成長因子、サイトカイン、接着分子、神経ペプチド、タンパク質ホルモンおよび一本鎖抗体(scFv)が含まれる。
【0095】
本明細書の目的のために、「antibody」(抗体)(例えば、免疫応答を抑制するために枯渇または阻害されるT細胞、γδ(gd)T細胞、NK細胞、NKT細胞などの免疫細胞集団上で発現される抗原に向けられる抗体)の列挙には、完全長抗体および抗体フラグメントを含むその部分が含まれる。抗体フラグメントには、それだけに限らないが、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、ジスルフィド結合Fv(dsFv)、Fdフラグメント、Fd’フラグメント、一本鎖Fv(scFv)、一本鎖Fab(scFab)、ダイアボディ、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、または上記のいずれかの抗原結合フラグメントが含まれる。抗体には、合成抗体、組換え産生抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、ヒト抗体、非ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体およびイントラボディ(intrabody)も含まれる。本明細書で提供される抗体は、任意の免疫グロブリン型(例えば、IgG、IgM、IgD、IgE、IgAおよびIgY)、任意のクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはサブクラス(例えば、IgG2aおよびIgG2b)のメンバーを含む。
【0096】
モノクローナル抗体などの抗体は、当業者に既知の標準的な方法を使用して調製することができる(例えば、Kohlerら、Nature 256:495~497(1975);Kohlerら、Eur.J.Immunol.6:511~519(1976);および国際公開第02/46455号パンフレット参照)。例えば、動物は、抗体を分泌する体細胞を産生するための標準的な方法によって免疫化される。次いで、これらの細胞が、骨髄腫細胞への融合のために免疫された動物から取り出される。抗体を産生できる体細胞、特にB細胞を、骨髄腫細胞株との融合に使用できる。これらの体細胞は、プライミングされた動物のリンパ節、脾臓および末梢血に由来することができる。専門の骨髄腫細胞株が、ハイブリドーマ産生融合手順で使用するためにリンパ球腫瘍から開発されている(KohlerおよびMilstein、Eur.J.Immunol.6:511~519(1976);Shulmanら、Nature、276:269~282(1978);Volkら、J.Virol.、42:220~227(1982))。これらの細胞株は3つの有用な特性を有する。1つ目は、これらが、ハイブリドーマの増殖を支持する選択培地で増殖できないようにする酵素欠損を有することによって、融合していない、および同様に無期限に自己増殖する骨髄腫細胞からの融合ハイブリドーマの選択を容易にすることである。2つ目は、これらが抗体を産生する能力を有し、内因性の軽鎖または重鎖免疫グロブリン鎖を産生することができないことである。3つ目の特性は、これらが他の細胞と効率的に融合することである。ハイブリドーマおよびモノクローナル抗体を産生する他の方法は、当業者に周知である。任意のポリペプチド、例えば免疫細胞集団上の抗原マーカーに対する抗体を産生することは日常的である。
【0097】
例示的な免疫細胞枯渇抗体には、それだけに限らないが、以下が含まれる:
-インビボでマウスおよびインビトロでヒトを含むさまざまな種のNK細胞を枯渇させる、抗アシアロGM1(Thermofisher Scientific);
-マウスでNK細胞を枯渇させ、NKT細胞も枯渇させる抗NK1.1;
-NK細胞を枯渇させるためのOKM1(抗CD11b、ヒト)およびB73.1(抗CD16、ヒト)抗体(Strassmannら、J.Immunol.、130(4):1556-60(1983));
-NK細胞を枯渇させるためのDJ130cまたは3G8(抗CD16、ヒト)抗体(Choiら、Immunology、124(2):215~222(2008));
-γδ(gd)T細胞を遮断するIMMU510またはB1.1(抗TCRγδ)。また、受容体遮断のために、γδ PBLが、遮断抗体抗NKp30(クローンF252)、抗NKp44(クローンKS38)、抗NKp46(クローンKL247)、抗TCRγδ(Beckman Coulter、クローンIMMU510またはB1.1)、または抗Vδ1 TCR(Fisher Scientific、クローンTCS1またはTS8.2)(Correiaら、Blood、118:992~1001(2011))とインキュベートされた。
-B1抗体は、抗原によって媒介されるTCRの活性化を遮断する;
-GL3およびUC7-13D5抗体は、γδ(gd)T細胞を枯渇させる、またはマウスのインビボでこれらを内在化する(Koeneckeら、Eur.J.Immunol.、39(2):372-9(2009));
-抗CD1d、クローン1B1はマウスでNKT細胞を枯渇させる(Christakiら、J.Immunol.Res.、2015、論文ID 532717);
-NKTT120は、ヒトでiNKT細胞を枯渇させる。NKTT120は、iNKT細胞を迅速かつ特異的に枯渇させる能力を有する、Vα24-Jα18遺伝子再構成不変TCRを標的化するヒト化IgG1κモノクローナル抗体である(Fieldら、PLoS One、12,2.e0171067(2017))。
【0098】
本明細書中で用いる場合、投与のための送達媒体は、宿主対象への送達のために、本明細書で提供されるウイルスなどの薬剤と会合する、リポソーム、ミセルまたは逆ミセルなどの脂質ベースまたは他のポリマーベースの組成物を指す。
【0099】
本明細書中で用いる場合、特定の組織へのウイルスの蓄積は、ウイルスが宿主の臓器または組織に感染するのに十分に長い、ウイルスの宿主への投与後の期間後の宿主生物の特定の組織におけるウイルスの分布またはコロニー形成を指す。当業者が認識するように、ウイルスの感染の期間は、ウイルス、感染される臓器または組織、宿主の免疫能、およびウイルスの投与量に応じて変化するだろう。一般に、蓄積は、ウイルスの感染後約1日未満、約1日~約2、3、4、5、6もしくは7日、約1週間~約2、3もしくは4週間、約1ヶ月~約2、3、4、5、6ヶ月以上の時点で決定することができる。本明細書の目的のために、ウイルスは、炎症組織または腫瘍組織などの免疫特権組織に優先的に蓄積するが、ウイルスの毒性が軽度である、または許容でき、最大でも致命的でない程度まで、宿主の非腫瘍組織などの他の組織および臓器から排除される。
【0100】
本明細書中で用いる場合、「preferential accumulation」(優先的蓄積)は、第2の位置での蓄積よりも高いレベルでの第1の位置でのウイルスの蓄積を指す(すなわち、第1の位置でのウイルス粒子の濃度または力価が、第2の位置でのウイルス粒子の濃度より高い)。したがって、正常な組織または臓器に対して、炎症組織および腫瘍組織などの免疫特権組織(免疫系から保護されている組織)に優先的に蓄積するウイルスは、ウイルスが正常組織または臓器に蓄積するよりも高いレベル(すなわち、濃度またはウイルス力価)で腫瘍などの免疫特権組織に蓄積するウイルスを指す。
【0101】
本明細書中で用いる場合、活性は、本明細書で提供される化合物またはウイルスのインビトロまたはインビボ活性を指す。例えば、インビボ活性は、本明細書で提供される化合物またはウイルス(またはその組成物もしくは他の混合物)のインビボ投与後に生じる生理学的応答を指す。したがって、活性は、このような化合物、組成物および混合物の結果として生じる治療効果および医薬活性を包含する。活性は、このような活性を試験または使用するように設計されたインビトロおよび/またはインビボ系で観察することができる。
【0102】
本明細書中で用いる場合、「anti-tumor activity」(抗腫瘍活性)または「anti-tumorigenic」(抗腫瘍性)は、対象においてインビトロまたはインビボで腫瘍の形成または成長を防止または阻害するウイルス株を指す。抗腫瘍活性は、抗腫瘍活性を示す1つ以上のパラメータを評価することによって決定することができる。
【0103】
本明細書中で用いる場合、抗腫瘍活性または抗腫瘍形成能に関する「greater」(より大きな)または「improved」(改善された)活性は、ウイルス株が、参照ウイルスもしくは対照ウイルスよりも大きな程度で、またはウイルスによる治療がない場合よりも大きな程度で、対象においてインビトロまたはインビボで腫瘍の形成または成長を防止または阻害することができることを意味する。抗腫瘍活性が「greater」(より大きい)または「improved」(改善されている)かどうかは、抗腫瘍活性を示すパラメータに対するウイルス、および任意に対照ウイルスまたは参照ウイルスの効果を評価することによって決定することができる。2つ以上の異なるウイルスの活性を比較する場合、インビトロアッセイで使用されるまたはインビボで投与されるウイルスの量(例えば、pfu)は同じまたは類似であり、インビトロアッセイまたはインビボ評価の条件(例えば、インビボ投与体制)は同じまたは類似であることが理解される。
【0104】
本明細書中で用いる場合、ウイルスに関する「toxicity」(毒性)(本明細書ではビルレンスまたは病原性とも呼ばれる)は、ウイルスの投与時の宿主に対する有害効果または毒性効果を指す。ワクシニアウイルスなどの腫瘍溶解性ウイルスの場合、ウイルスの毒性は、宿主の生存に影響を及ぼす、または有害効果もしくは毒性効果をもたらすことができる、非腫瘍臓器または組織への蓄積に関連している。毒性は、毒性を示す1つ以上のパラメータを評価することによって測定できる。これらには、非腫瘍組織への蓄積、および体重に対する効果などの、投与された対象の生存率または健康に対する効果が含まれる。
【0105】
本明細書中で用いる場合、「reduced toxicity」(減少した毒性)は、ウイルスで治療されていない宿主と比較して、または別の参照ウイルスもしくは対照ウイルスを投与された宿主と比較して、宿主へのウイルスの投与時の毒性効果または有害効果が減弱または縮小していることを意味する。毒性が減少または縮小しているかどうかは、毒性を示すパラメータに対するウイルス、および任意に対照ウイルスまたは参照ウイルスの効果を評価することによって決定することができる。2つ以上の異なるウイルスの活性を比較する場合、インビトロアッセイで使用されるまたはインビボで投与されるウイルスの量(例えば、pfu)は同じまたは類似であり、インビトロアッセイまたはインビボ評価の条件(例えば、インビボ投与体制)は同じまたは類似であることが理解される。例えば、ウイルスと対照ウイルスまたは参照ウイルスのインビボ投与時の効果を比較する場合、対象は、同じ種、サイズ、性別であり、ウイルスは同じまたは類似の投与レジメンの下で同じまたは類似の量で投与される。特に、減少した毒性を有するウイルスは、疾患の治療などのためにウイルスを宿主に投与した際、ウイルスが、宿主に損傷もしくは危害をもたらす、または治療されている疾患よりも大きな程度に、または対照ウイルスもしくは参照ウイルスよりも大きな程度に宿主の生存に影響を及ぼす程度に宿主の非腫瘍臓器および組織に蓄積しないことを意味することができる。例えば、減少した毒性を有するウイルスには、治療の過程で対象の死をもたらさないウイルスが含まれる。
【0106】
本明細書中で用いる場合、「control」(対照)または「standard」(標準)は、試験パラメータで処理されないことを除いて、試験試料と実質的に同一である試料を指す、またはこれが血漿試料である場合、目的の状態に罹患していない正常なボランティアからのものであることができる。対照は、内部対照であることもできる。例えば、対照は、既知の特性または活性を有するウイルスなどの試料であることができる。
【0107】
本明細書中で用いる場合、投与レジメンは、投与される薬剤、例えば、担体細胞またはウイルスまたは他の薬剤の量、および投与サイクルの過程にわたる投与の頻度を指す。投薬レジメンは、治療される疾患または状態の関数であり、したがって、変化することができる。
【0108】
本明細書中で用いる場合、投与の頻度は、投与サイクル中に薬剤が投与される回数を指す。例えば、頻度は数日、数週間または数ヶ月であることができる。例えば、頻度は、投与サイクル中に1回、2回、3回、4回、5回、6回または7回の投与であることができる。頻度は、投与サイクル中の連続日を指すことができる。特定の頻度は、治療される特定の疾患または状態の関数である。
【0109】
本明細書中で用いる場合、「cycle of administration」(投与サイクル)は、連続投与にわたって繰り返されるウイルスの投与の投与レジメンの繰り返されるスケジュールを指す。例えば、例示的な投与サイクルは28日サイクルである。
【0110】
本明細書中で用いる場合、免疫特権細胞および免疫特権組織という用語は、免疫系から隔離されている固形腫瘍などの細胞および組織を指す。一般に、ウイルスの対象への投与は、対象からウイルスを排除する免疫応答を誘発する。しかしながら、免疫特権部位は免疫応答から保護または隔離されており、ウイルスが生き残り、一般的に複製することを可能にする。免疫特権組織には、腫瘍組織および他の組織などの増殖組織、ならびに他の増殖性障害、創傷に関与する細胞、ならびに炎症反応に関与する他の組織が含まれる。
【0111】
本明細書中で用いる場合、創傷または病変は、生存生物内の任意の組織への任意の損傷を指す。組織は、胃の内壁もしくは骨などの内部組織、または皮膚などの外部組織であることができる。したがって、創傷または病変は、それだけに限らないが、胃腸管潰瘍、骨折、新生物、および切断または擦過皮膚を含むことができる。創傷または病変は、脾臓などの軟組織、または骨などの硬組織にあることができる。創傷または病変は、外傷、感染または外科的介入を含む任意の要因によって引き起こされていることができる。
【0112】
本明細書中で用いる場合、新生物としても知られる腫瘍は、細胞が異常に高速で増殖する場合に生じる異常な組織の塊である。腫瘍は、正常組織との構造的組織化および機能的協調の部分的または全体的な欠如を示すことができる。腫瘍は良性(癌性ではない)または悪性(癌性)であることができる。本明細書中で用いる場合、腫瘍は、造血器腫瘍ならびに固形腫瘍を包含することを意図している。
【0113】
悪性腫瘍は大きく3つの主要な型に分類できる。癌腫は、上皮構造(例えば、乳房、前立腺、肺、結腸および膵臓)から発生する悪性腫瘍である。肉腫は、結合組織、または筋肉、軟骨、脂肪もしくは骨などの間葉系細胞に由来する悪性腫瘍である。白血病およびリンパ腫は、免疫系の構成要素を含む造血構造(血球の形成に関連する構造)に発症する悪性腫瘍である。他の悪性腫瘍には、それだけに限らないが、神経系の腫瘍(例えば、神経線維腫(neurofibromatomas))、胚細胞腫瘍、および芽球性腫瘍が含まれる。
【0114】
本明細書中で用いる場合、切除された腫瘍は、腫瘍のかなりの部分が切除された腫瘍を指す。切除(excision)は、外科手術によって行うことができる(すなわち、外科的に切除された腫瘍)。切除(resection)は、部分的または完全であることができる。
【0115】
本明細書中で用いる場合、疾患または障害は、例えば、感染または遺伝的欠陥から生じ、特定できる症状を特徴とする生物の病理学的状態を指す。本明細書に記載される例示的な疾患は、がんなどの新生物疾患である。
【0116】
本明細書中で用いる場合、疾患または疾患過程に関与する細胞は、その存在が疾患または疾患過程に寄与する、これを悪化させる、これを引き起こす、またはその病因に関与する細胞を指す。このような細胞の阻害または殺傷は、疾患の症状を改善することができる、または疾患を改善することができる。このような細胞の例は腫瘍細胞である。腫瘍細胞を殺傷するまたはその成長もしくは増殖を阻害することが、腫瘍の治療をもたらす。他の例は、さまざまな疾患の病状に寄与する炎症反応に関与する免疫エフェクター細胞である。免疫エフェクター細胞を阻害または殺傷することによって、炎症性構成要素を有する疾患を治療することができる。
【0117】
本明細書中で用いる場合、「killing or inhibiting growth or proliferation of cells」(細胞を殺傷するまたはその成長もしくは増殖を阻害する)とは、細胞が死ぬ、または排除されることを意味する。成長または増殖を阻害することは、このような細胞の数が増加せず、減少することができることを意味する。
【0118】
本明細書中で用いる場合、「tumor cell」(腫瘍細胞)は、腫瘍の一部である任意の細胞である。典型的には、本明細書で提供される担体細胞は、腫瘍細胞に優先的に帰巣し、本明細書で提供されるウイルスは、正常細胞と比較して、対象の腫瘍細胞に優先的に感染する。
【0119】
本明細書中で用いる場合、「metastatic cell」(転移性細胞)は、転移能を有する細胞である。転移性細胞は、対象の第1の腫瘍から転移する能力を有し、対象の異なる部位で組織にコロニー形成して、その部位で第2の腫瘍を形成することができる。
【0120】
本明細書中で用いる場合、「tumorigenic cell」(腫瘍性細胞)は、対象の適切な部位に導入されると、腫瘍を形成することができる細胞である。細胞は非転移性または転移性であることができる。
【0121】
本明細書中で用いる場合、「normal cell」(正常細胞)は、腫瘍に由来しない細胞である。
【0122】
本明細書中で用いる場合、新生物疾患は、腫瘍の発生、成長、転移および進行を含む、がんを含む任意の障害を指す。
【0123】
本明細書中で用いる場合、がんは、転移性がん、リンパ性腫瘍および血液がんを含む、任意の種類の悪性腫瘍によって引き起こされる、またはこれを特徴とする疾患の用語である。例示的ながんには、それだけに限らないが、急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病、腺癌、腺腫、副腎がん、副腎皮質癌、AIDS関連がん、AIDS関連リンパ腫、肛門がん、虫垂がん、星細胞腫、基底細胞癌、胆管がん、膀胱がん、骨がん、骨肉腫/悪性線維性組織球腫、脳幹神経膠腫、脳がん、癌腫、小脳星細胞腫、大脳星細胞腫/悪性神経膠腫、上衣腫、髄芽細胞腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、視路もしくは視床下部神経膠腫、乳がん、気管支腺腫/カルチノイド、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、癌腫、中枢神経系リンパ腫、子宮頸がん、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性障害、結腸がん、皮膚T細胞リンパ腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、子宮内膜がん、上衣腫、類表皮癌、食道がん、ユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管がん、眼がん/眼内黒色腫、眼がん/網膜芽細胞腫、胆嚢がん、胆石腫瘍、胃/胃がん、胃腸カルチノイド腫瘍、胃腸間質腫瘍、巨細胞腫瘍、多形性膠芽腫、神経膠腫、有毛細胞腫瘍、頭頸部がん、心臓がん、肝細胞/肝臓がん、ホジキンリンパ腫、過形成、過形成性角膜神経腫瘍、上皮内癌、下咽頭がん、腸神経節性神経腫、膵島細胞腫瘍、カポシ肉腫、腎臓/腎細胞がん、喉頭がん、平滑筋腫、口唇および口腔がん、脂肪肉腫、肝臓がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、リンパ腫、マクログロブリン血症、悪性カルチノイド、骨の悪性線維性組織球腫、悪性高カルシウム血症、悪性黒色腫、マルファン様体型腫瘍、髄様癌、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、転移性皮膚癌、転移性頸部扁平上皮癌、口腔がん、粘膜神経腫、多発性骨髄腫、菌状息肉症、骨髄異形成症候群、骨髄腫、骨髄増殖性障害、鼻腔および副鼻腔がん、鼻咽頭癌、頸部がん、神経組織がん、神経芽細胞腫、口腔がん、口腔咽頭がん、骨肉腫、卵巣がん、卵巣上皮腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、膵臓がん、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん、褐色細胞腫、松果体星細胞腫、松果体胚細胞腫、松果体芽細胞腫、下垂体腺腫、胸膜肺芽腫、真性赤血球増加症、原発性脳腫瘍、前立腺がん、直腸がん、腎細胞腫瘍、細網肉腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、セミノーマ、セザリー症候群、皮膚がん、小腸がん、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、頸部扁平上皮癌、胃がん、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、精巣がん、咽頭がん、胸腺腫、甲状腺がん、局所皮膚病変、絨毛性腫瘍、尿道がん、子宮/子宮内膜がん、子宮肉腫、膣がん、外陰がん、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症またはウィルムス腫瘍が含まれる。ヒトで一般的に診断される例示的ながんには、それだけに限らないが、膀胱、脳、乳房、骨髄、子宮頸部、結腸/直腸、腎臓、肝臓、肺/気管支、卵巣、膵臓、前立腺、皮膚、胃、甲状腺または子宮のがんが含まれる。イヌ、ネコ、および他のペットで一般的に診断される例示的ながんには、それだけに限らないが、リンパ肉腫、骨肉腫、乳腺腫瘍、肥満細胞腫、脳腫瘍、黒色腫、腺扁平上皮癌、カルチノイド肺腫瘍、気管支腺腫瘍、気管支腺癌、線維腫、粘液軟骨腫、肺肉腫、神経肉腫、骨腫、乳頭腫、網膜芽細胞腫、ユーイング肉腫、ウィルムス腫瘍、バーキットリンパ腫、小膠細胞腫、神経芽細胞腫、破骨細胞腫、口腔新生物、線維肉腫、骨肉腫および横紋筋肉腫、生殖器扁平上皮癌、セルトリ細胞腫瘍、血管外皮細胞腫、組織球腫、緑色腫(例えば、顆粒球肉腫)、角膜乳頭腫、角膜扁平上皮癌、血管肉腫、胸膜中皮腫、基底細胞腫瘍、胸腺腫、胃腫瘍、副腎腺癌、口腔乳頭腫症、血管内皮腫
および嚢胞腺腫、濾胞性リンパ腫、腸リンパ肉腫、線維肉腫および肺扁平上皮癌が含まれる。フェレットなどのげっ歯類で診断される例示的ながんには、それだけに限らないが、インスリノーマ、リンパ腫、肉腫、神経腫、膵島細胞腫瘍、胃MALTリンパ腫、および胃腺癌が含まれる。農業家畜に罹患する例示的な新生物には、それだけに限らないが、白血病、血管外皮細胞腫およびウシの眼新生物(ウシ);包皮線維肉腫、潰瘍性扁平上皮癌、包皮癌、結合組織新生物および肥満細胞腫(ウマ);肝細胞癌(ブタ);リンパ腫および肺腺腫症(ヒツジ);肺肉腫、リンパ腫、ラウス肉腫、細網内皮症、線維肉腫、腎芽細胞腫、B細胞リンパ腫およびリンパ性白血病(鳥類種);網膜芽細胞腫、肝新生物、リンパ肉腫(リンパ芽球性リンパ腫)、形質細胞様白血病および浮袋肉腫(魚類)、乾酪性リンパ節炎(CLA):細菌コリネバクテリウム・シュードツベルクローシス(Corynebacterium pseudotuberculosis)によって引き起こされるヒツジおよびヤギの慢性、感染性、接触伝染性疾患、ならびにヤーグジークテによって引き起こされるヒツジの接触伝染性肺腫瘍が含まれる。
【0124】
本明細書中で用いる場合、「metastasis」(転移)は、体のある部分から別の部分へのがんの拡散を指す。例えば、転移過程では、悪性細胞は、悪性細胞が発生した原発腫瘍の部位から拡散し、リンパ管および血管に移動することができ、これが細胞を生物の他の場所の正常組織に輸送して、ここで細胞が増殖し続ける。転移によって拡散した細胞によって形成された腫瘍は、「metastatic tumor」(転移性腫瘍)、「secondary tumor」(続発性腫瘍)または「metastasis」(転移)と呼ばれる。
【0125】
本明細書中で用いる場合、抗がん剤または抗がん化合物(「antitumor or antineoplastic agent」(抗腫瘍剤または抗新生物剤)と互換的に使用される)は、抗がん治療で使用される任意の薬剤または化合物を指す。これらには、単独でまたは他の化合物もしくは治療と組み合わせて使用した場合に、新生物疾患、腫瘍およびがんに関連する臨床症状または診断マーカーを緩和する、減少させる、改善する、防止するまたはその寛解状態にするもしくはその寛解状態を維持することができ、本明細書で提供される方法、組み合わせおよび組成物で使用することができる任意の薬剤が含まれる。抗がん剤には、抗転移剤が含まれる。例示的な抗がん剤には、それだけに限らないが、化学療法化合物(例えば、毒素、アルキル化剤、ニトロソウレア、抗がん抗生物質、代謝拮抗薬、有糸分裂阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤)、サイトカイン、成長因子、ホルモン、光増感剤、放射性核種、シグナル伝達調節剤、抗がん抗体、抗がんオリゴペプチド、抗がんオリゴヌクレオチド(例えば、アンチセンスRNAおよびsiRNA)、血管新生阻害剤、放射線療法、またはこれらの組み合わせが含まれる。例示的な化学療法化合物には、それだけに限らないが、Ara-C、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、ドキソルビシン、ゲムシタビン、カンプトテシン、イリノテカン、シクロホスファミド、6-メルカプトプリン、ビンクリスチン、5-フルオロウラシル、およびメトトレキサートが含まれる。本明細書中で用いる場合、抗がん剤または化学療法剤への言及は、別段の指示がない限り、抗がん剤もしくは化学療法剤の組み合わせ、または複数の抗がん剤もしくは化学療法剤を含む。
【0126】
本明細書中で用いる場合、対象は、診断、スクリーニング、モニタリングまたは治療が企図される動物を含む任意の生物を含む。動物には、霊長類および飼育動物などの哺乳類が含まれる。例示的な霊長類はヒトである。患者は、疾患状態に罹患している、または疾患状態が決定される、もしくは疾患状態のリスクが決定される、哺乳動物、霊長類、ヒト、または家畜の対象などの対象を指す。
【0127】
本明細書中で用いる場合、患者は、疾患または障害の症状を示すヒト対象を指す。
【0128】
本明細書中で用いる場合、状態、障害または疾患を有する対象の治療は、状態、障害または疾患の症状が改善される、または有益に変化させられる任意の治療方法を意味する。治療は、本明細書に記載および提供されるウイルスの任意の医薬使用を包含する。
【0129】
本明細書中で用いる場合、腫瘍または転移を含む新生物疾患を有する対象の治療は、新生物疾患を有する症状が改善される、または有益に変化させられる任意の治療方法を意味する。典型的には、対象における腫瘍または転移の治療は、腫瘍の血管新生、腫瘍細胞分裂、腫瘍細胞移動の阻害、または基底膜もしくは細胞外マトリックスの分解を含む、腫瘍成長の遅延、腫瘍細胞の溶解、腫瘍のサイズの縮小、新たな腫瘍成長の防止、または原発性腫瘍の転移の防止をもたらす任意の治療方法を包含する。
【0130】
本明細書中で用いる場合、治療効果は、疾患もしくは状態の症状を変化させる、典型的には向上もしくは改善する、または疾患もしくは状態を治癒する、対象の治療から生じる効果を意味する。治療上有効量は、対象への投与後に治療効果をもたらす組成物、分子または化合物の量を指す。
【0131】
本明細書中で用いる場合、特定の医薬組成物の投与などによる、特定の障害の症状の改善または緩和は、組成物の投与に起因するまたは関連することができる、永続的または一時的、持続的または一過的であるかどうかにかかわらない、任意の縮小を指す。
【0132】
本明細書中で用いる場合、有効性は、ウイルスまたはウイルス組成物の投与で、ウイルスが腫瘍細胞などの増殖細胞または免疫特権細胞にコロニー形成し、複製することを意味する。腫瘍細胞におけるコロニー形成および複製は、治療が有効な治療であるまたは有効な治療となることを示す。
【0133】
本明細書中で用いる場合、細胞担体/ウイルスによる有効な治療は、これによる治療がない場合と比較して生存を増加させることができるものである。例えば、ウイルスは、疾患を安定化する、腫瘍退縮を引き起こす、疾患の重症度を減少させる、または腫瘍の転移を遅らせるもしくは減少させる場合に、有効な治療である。
【0134】
本明細書中で用いる場合、特定の疾患を治療するためのウイルスまたは化合物の有効量または治療上有効量は、疾患に関連する症状を改善する、または何らかの方法で減少させる量である。量は個体ごとに異なり、それだけに限らないが、年齢、体重、患者の全体的な健康状態、および疾患の重症度を含むいくつかの因子に依存する。治療上有効量は、それによると有効であるレジメンに従って、単回投与として投与することができる、または複数回投与することができる。この量は、疾患を治癒することができるが、典型的には、疾患の症状を改善するために投与される。症状の望ましい改善を達成するために、反復投与を要することができる。
【0135】
本明細書中で用いる場合、腫瘍または転移を含む新生物疾患を治療するためのウイルスまたは化合物の有効量または治療上有効量は、それだけに限らないが、腫瘍成長の遅延、腫瘍細胞の溶解、腫瘍のサイズの減少、新たな腫瘍成長の防止、または原発性腫瘍の転移の防止を含む、新生物疾患に関連する症状を改善する、または何らかの方法で減少させる量である。
【0136】
本明細書中で用いる場合、「composition」(組成物)は、2つ以上の生成物または化合物の任意の混合物を指す。これは、溶液、懸濁液、液体、粉末、ペースト、水系、非水系、またはこれらの任意の組み合わせであることができる。
【0137】
本明細書中で用いる場合、製剤は、少なくとも1つの活性医薬品または治療薬と、1つ以上の賦形剤とを含有する組成物を指す。
【0138】
本明細書中で用いる場合、共製剤は、2つ以上の活性剤または医薬品または治療薬と、1つ以上の賦形剤とを含有する組成物を指す。
【0139】
本明細書中で用いる場合、組み合わせは、2つ以上の品目間または品目内の任意の会合を指す。組み合わせは、2つの組成物または2つの集合などの2つ以上の別個の品目であることができ、2つ以上の品目の単一の混合物などのその混合物、またはそれらの任意の変形であることができる。組み合わせの要素は、一般に機能的に会合または関連している。例示的な組み合わせには、それだけに限らないが、2つ以上の医薬組成物、2つ以上の有効成分、例えば2つのウイルス、またはウイルスと抗がん剤、例えば化学療法化合物、2つ以上のウイルス、ウイルスと治療薬、ウイルスと造影剤、ウイルスと複数の治療薬および/または造影剤、またはこれらの任意の会合を含有する組成物が含まれる。このような組み合わせは、キットとしてパッケージ化することができる。
【0140】
本明細書中で用いる場合、直接投与は、希釈することなく組成物を投与することを指す。
【0141】
本明細書中で用いる場合、キットは、任意に、組み合わせの使用説明書ならびに/あるいはこのような使用のための他の反応および構成要素を含む、パッケージ化された組み合わせである。
【0142】
本明細書中で用いる場合、「article of manufacture」(製造品)は、製造および販売される製品である。本出願を通して使用される場合、この用語は、担体細胞およびワクシニアウイルスを単独で、または同じもしくは別個の包装品に含有される第2の治療薬もしくは治療エネルギー源と組み合わせて含有する物品を包含することを意図している。
【0143】
本明細書中で用いる場合、装置は、特定の課題のために製造または適合されたものを指す。本明細書の例示的な装置は、表皮もしくは皮膚の表面を覆う、またはこれをコーティングする、またはこれと接触することができる装置である。このような装置の例としては、それだけに限らないが、ラップ、包帯、バインド、ドレス、縫合、パッチ、ガーゼまたはドレッシングが挙げられる。
【0144】
本明細書中で用いる場合、単数形「a」、「an」(ある)、および「the」(該)は、文脈が明瞭にそうでないことを指示するのでなければ、複数の指示対象を含む。
【0145】
本明細書中で用いる場合、範囲および量は、「about」(約)または「approximately」(およそ)の特定の値または範囲として表すことができる。「about」(約)または「approximately」(およそ)には正確な量も含まれる。したがって、「about 5 milliliters」(約5ミリリットル)は、「about 5 milliliters」(約5ミリリットル)および「5 milliliters」(5ミリリットル)も意味する。一般に、「about」(約)には、実験誤差の範囲内であると予想される量が含まれる。
【0146】
本明細書中で用いる場合、「about the same」(ほぼ同じ)は、当業者が同じである、または許容可能な誤差範囲内であると見なす量の範囲内を意味する。例えば、典型的には、医薬組成物の場合、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%または10%以内がほぼ同じであると見なされる。このような量は、対象による特定の組成の変動に対する許容度に応じて変動することができる。
【0147】
本明細書中で用いる場合、「optional」(任意の)または「optionally」(任意に)は、後に記載される事象または状況が発生するまたは発生しないことを意味し、記載は、前記事象または状況が発生する場合およびこれが発生しない場合を含む。
【0148】
本明細書中で用いる場合、保護基、アミノ酸および他の化合物についての略語は、特に明記しない限り、それらの一般的な使用法、認識される略語、または生化学的命名法に関するIUPAC-IUB委員会((1972)Biochem.11:1726参照)に準拠する。
【0149】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書の開示全体を通して言及される全ての特許、特許出願、公開された出願および刊行物、ウェブサイト、ならびに他の公開された資料は、特に明記しない限り、その全体が参照により組み込まれる。本明細書の用語について複数の定義がある場合は、この節の定義が優先する。URLまたは他のこのような識別子もしくはアドレスが言及される場合、このような識別子は変化でき、インターネット上の特定の情報は移り変わることができるが、インターネットおよび/または適切なデータベースを検索することなどによって、等価な情報が知られ、これに容易にアクセスできることが理解される。これらへの言及は、このような情報の入手可能性および一般的普及を証明している。
【0150】
本明細書中で用いる場合、「allogeneic cell」(同種細胞)は、同じ種の遺伝的に異なる個体に由来するために、特定の対象に関して遺伝的に異なる細胞である。例えば、同種幹細胞は、患者(または一卵性双生児)以外のドナーに由来する幹細胞である。
【0151】
本明細書中で用いる場合、「autologous cell」(自家細胞)は、同じ個体、例えば、治療される対象(すなわち、患者)から得られる細胞である。例えば、自家幹細胞は、患者に由来する幹細胞である。
【0152】
本明細書中で用いる場合、細胞媒体または担体細胞に関して「engineered」(操作された)という用語は、細胞の性能を改善または増強することができるタンパク質を発現するような、細胞の遺伝子改変を意味する。例えば、細胞を、改善されたウイルス増幅および/または改善された免疫調節のために操作することができる。
【0153】
本明細書中で用いる場合、「immunomodulation」(免疫調節)は、例えば、免疫応答を誘導、増強または抑制することによって、免疫応答が所望のレベルに改変される任意の過程を指す。
【0154】
本明細書中で用いる場合、「immune suppression」(免疫抑制)または「immunosuppression」(免疫抑制)は、免疫応答の抑制または減少を指す。
【0155】
本明細書中で用いる場合、「immune privileged」(免疫特権)または「immunoprivileged」(免疫特権)は、免疫応答を誘発せず、免疫系を回避することができる細胞または組織を指す。免疫特権細胞および組織は、腫瘍の免疫抑制特性によって免疫系から隔離されている、固形腫瘍および腫瘍微小環境などの細胞および組織を指す。結果として、腫瘍溶解性ウイルスは、免疫系から保護されているので、腫瘍微小環境で腫瘍に優先的に蓄積する。しかしながら、免疫特権組織および細胞は免疫応答から保護または隔離されており、ウイルスが生き残り、一般的に複製することを可能にする。
【0156】
本明細書中で用いる場合、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍細胞において選択的に複製するウイルスを指す。
【0157】
本明細書中で用いる場合、「disease or disorder」(疾患または障害)は、例えば、感染または遺伝的欠陥から生じ、特定できる症状を特徴とする生物の病理学的状態を指す。
【0158】
本明細書中で用いる場合、がんは、任意の種類の悪性腫瘍または血液悪性腫瘍、例えば白血病によって引き起こされる、またはこれを特徴とする疾患の総称である。
【0159】
本明細書中で用いる場合、悪性は、腫瘍に適用される場合、増殖制御および位置制御の喪失を伴う転移能力を有する原発腫瘍を指す。
【0160】
本明細書中で用いる場合、転移は、主に病的過程に関与する部位から離れた異常細胞または新生物細胞の増殖を指す。
【0161】
本明細書中で用いる場合、抗がん剤または抗がん化合物(「anti-tumor or anti-neoplastic agent」(抗腫瘍剤または抗新生物剤)と互換的に使用される)は、抗がん治療で使用される任意の薬剤または化合物を指す。これらには、単独でまたは他の化合物と組み合わせて使用した場合に、新生物疾患、腫瘍およびがんに関連する臨床症状または診断マーカーを緩和する、減少させる、改善する、防止するまたはその寛解状態にするもしくはその寛解状態を維持することができ、本明細書で提供される方法、組み合わせおよび組成物で使用することができる任意の薬剤が含まれる。
【0162】
本明細書中で用いる場合、ウイルス感染に関して「resistant」(耐性)とは、ウイルスへの曝露時に、ウイルスに感染しない、または非常に低い程度で感染する細胞を指す。
【0163】
本明細書中で用いる場合、ウイルス感染に関して「permissive」(許容性)とは、ウイルスへの曝露時に、容易に感染する細胞を指す。
【0164】
本明細書中で用いる場合、「haplotype」(ハプロタイプ)は、一緒に遺伝するDNA変異または多型のセットであり、同じ染色体上に位置する対立遺伝子の群または一塩基多型(SNP)のセットを指すことができる。
【0165】
本明細書中で用いる場合、「matched haplotype」(マッチングハプロタイプ)は、ドナーのハプロタイプが、レシピエントの免疫系を回避するのに十分にレシピエントまたは患者の免疫系と適合性であるような、ドナーのハプロタイプとレシピエントまたは患者のハプロタイプとの間の免疫学的適合性を意味する。
【0166】
本明細書中で用いる場合、「mismatched haplotype」(ミスマッチハプロタイプ)は、ドナーのハプロタイプが、レシピエントまたは患者の免疫系と十分に適合性でなく、ドナー細胞がレシピエントの免疫系を回避することができないような、ドナーのハプロタイプとレシピエントまたは患者のハプロタイプとの間の免疫学的不適合性を意味する。「immunocompromising mismatch」(免疫不全ミスマッチ)は、本明細書で提供されるマッチングアッセイ法によって決定される、%適合性の有意な(例えば、10%以上の)減少に関連する遺伝子多型遺伝子座における対象と担体細胞との間のミスマッチとして定義される。
【0167】
本明細書中で用いる場合、免疫学的適合性は、ウイルスを対象の腫瘍または癌性細胞に送達するのに十分な時間、対象の免疫系を回避するのに十分に対象/宿主の免疫系と適合性である細胞またはウイルスを指す。
【0168】
本明細書中で用いる場合、「co-culture」(共培養物)は、2つ以上の異なる細胞集団が培養される細胞培養物を指す。
【0169】
本明細書中で用いる場合、細胞に関する「loading」(搭載)という用語は、細胞の表面上または細胞内での細胞とウイルス、小分子、治療薬、抗体等などの薬剤との間の化学的または物理的相互作用を通した、細胞と薬剤の会合を指すことができる。
【0170】
本明細書中で用いる場合、脂肪由来幹細胞またはADSCは、ドナーの脂肪組織から得られる間葉系幹細胞である。
【0171】
本明細書中で用いる場合、末梢血単核細胞またはPBMCは、円形の核を有する任意の末梢血細胞、例えば、リンパ球、単球またはマクロファージである。
【0172】
本明細書中で用いる場合、「L14 VV」は、ワクシニアウイルスのTK挿入Turbo-FP635操作LIVP株である。
【0173】
本明細書中で用いる場合、「ACAM2000」とも呼ばれる「WT1」は、ワクシニアウイルスの野生型チミジンキナーゼ(TK)陽性Wyeth株である。これは、CDCから入手可能な天然痘ワクチン株である。
【0174】
本明細書中で用いる場合、ウイルスプラークアッセイ(VPA)は、1ml当たりまたは試料当たりのプラーク形成単位(pfu)として与えられる、感染性ウイルスの量またはウイルス力価を決定するために使用されるアッセイである。
【0175】
本明細書中で用いる場合、「primed」(プライミングされた)または「protected」(保護された)細胞媒体または担体細胞は、細胞を免疫応答から保護するために、サイトカイン、例えばインターフェロン(IFN)、または同種不活化/拒絶決定因子のアンタゴニストなどの薬剤で前処理されたおよび/またはこれを搭載されたものである。
【0176】
本明細書中で用いる場合、治療は、疾患または障害の症状の改善を指す。
【0177】
本明細書中で用いる場合、予防は、疾患もしくは状態を発症するリスクを減少させるため、またはその重症度を減少させる予防的治療を指す。
【0178】
本明細書中で用いる場合、対象は、本明細書における方法および使用によって治療することができる任意の哺乳動物を指す。哺乳動物には、ヒト、他の霊長類、例えばチンパンジー、ボノボおよびゴリラ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヤギ、ならびにその他の家畜およびペットが含まれる。患者はヒト対象を指す。
【0179】
開示を明確にするために、限定としてではなく、詳細な説明を以下の小節に分ける。
B.細胞ベースの媒体(「Cell Vehicle」(細胞媒体)または「Carrier Cell」(担体細胞))を使用するウイルス療法のための構成要素の選択
1.細胞媒体
腫瘍溶解性ウイルス(OV)は、正常細胞と比較して、腫瘍細胞に優先的に感染し、蓄積し、これを殺傷する能力を有する。この能力はウイルスの自然な特徴であることができる(例えば、レオウイルス、ニューカッスル病ウイルスおよびムンプスウイルス)、またはウイルスを、対象の抗ウイルス免疫およびその他の防御を回避するように遺伝的に弱毒化することができる(例えば、水疱性口内炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス、アデノウイルス)、または腫瘍細胞への選好を、例えば腫瘍特異的細胞表面分子、転写因子および組織特異的マイクロRNAを使用して、ウイルスについて選択するもしくはウイルスに操作することができる(例えば、Cattaneoら、Nat.Rev.Microbiol.、6(7):529~540(2008);Dorerら、Adv.Drug Deliv.Rev.、61(7~8):554~571(2009);Kellyら、Mol.Ther.、17(3):409~416(2009)およびNaikら、Expert Opin.Biol.Ther.、9(9):1163~1176(2009)参照)。
【0180】
腫瘍溶解性ウイルスの送達は、直接腫瘍内注射を介して行うことができる。直接腫瘍内送達は、正常細胞のウイルスへの曝露を最小化することができるが、例えば、腫瘍部位への接近不能(例えば、脳腫瘍)により、または広域にわたるいくつかの小さな結節の形態である腫瘍についてはしばしば制限がある。他方、全身送達は、ウイルスが原発腫瘍部位だけでなく、播種性転移にも到達する能力を有する。
【0181】
しかしながら、送達様式に関係なく、腫瘍溶解性ウイルスを使用した治療の成功は、急速に免疫応答を誘導し、ウイルスを中和する宿主の免疫系によって損なうことができる(Kerriganら(2017)Cytotherapy 19(4):445~457;RoyおよびBell(2013)Oncolytic Virotherapy 2:47~56)。例えば、静脈内送達されたウイルスは、中和抗体、補体およびさまざまな免疫細胞に曝露され、肺、脾臓および肝臓などの臓器によって隔離され、その後、排除される(RoyおよびBell(2013)Oncolytic Virotherapy 2:47~56)。中和抗体(NAb)はウイルスに結合し、その細胞表面受容体への付着を遮断し、ウイルス感染を阻害し、よって、OVの治療能を制限する(Jenningsら(2014)Int.J.Cancer 134:1091~1101)。自然免疫応答に加えて、適応免疫をもたらす以前の曝露は、より特異的かつ強力であり、OVの治療能を制限することもできる。さらに、腫瘍の細胞外マトリックスおよび高い間質液圧などの物理的障壁が、ウイルス粒子の腫瘍細胞への効率的な送達を妨げることができる(RoyおよびBell(2013)Oncolytic Virotherapy 2:47~56)。
【0182】
個体の大多数は、麻疹ウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルスおよびレオウイルスを含むいくつかのウイルスに曝露されており、結果として、腫瘍溶解性ウイルス療法の治療能を低下させることができる既存の抗ウイルス免疫を示す。例えば、ほとんどの高齢対象は、ワクシニアウイルスを含むオルソポックスウイルスに対する既存の抗ウイルス免疫をもたらす天然痘の予防接種を受けている。対象が特定のOVに対する既存の免疫をまだ有していない場合であっても、ウイルスの初回投与は堅牢な抗ウイルス免疫応答をもたらし、強力な抗腫瘍応答を達成するために通常必要とされる反復投与の有効性を制限する。これを回避するための戦略には、シクロホスファミドなどの免疫抑制剤の使用、および免疫系を迂回してOVを腫瘍部位に送達するための担体細胞(細胞媒体)の使用が含まれる。
【0183】
シクロホスファミド、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチルおよびメチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウムなどの免疫抑制薬を使用した一過的免疫抑制は、臓器移植で首尾よく使用されてきたが、全身投与OVの腫瘍送達の増強には限られた成功しか示していない(Guoら(2010)Gene Ther.17(12):1465~1475;Guoら(2010)Gene Ther.17(12):1465~1475)。免疫抑制薬の使用はまた、ウイルスの潜在的な毒性を増加させことができ、さらに、腫瘍溶解を助ける免疫系によって開始される抗腫瘍応答を減少させことができる(Thorneら(2010)Molecular Therapy 18(9):1698~1705)。
【0184】
OVを送達するための担体細胞の使用は、ウイルスが進化して宿主内に拡散した方法を模倣できる。例えば、ヒト免疫不全ウイルスは循環樹状細胞(DC)およびマクロファージに結合し、これらがリンパ節に移動し、ウイルスが標的:CD4+T細胞に到達することを可能にすることができる。さらに、細胞から細胞へと拡散することによって複製するウイルスは、中和抗体を首尾よく回避することができる。臨床試験では、腫瘍溶解性レオウイルスが、i.v.投与すると、循環細胞に結合し、中和抗体の存在下でさえ、その感染力を保持し、腫瘍細胞に到達することが示された(RoyおよびBell(2013)Oncolytic Virotherapy 2:47~56)。細胞ベースの媒体を使用することの利点には、OVの腫瘍細胞への特異的送達、それらの治療能の増加および標的外毒性の防止、ならびにOVを既存の抗ウイルス免疫から保護する能力が含まれる。ケモカイン、およびインテグリンなどの接着分子は、免疫系内および腫瘍への細胞の輸送において重要な役割を果たす。がん細胞は、担体細胞を腫瘍に誘引するさまざまなサイトカインおよびケモカインを分泌することが示されている。低酸素などの他の因子も、担体細胞の腫瘍ホーミング能力に寄与することができる。
【0185】
OVは、特異的もしくは非特異的相互作用を介して担体細胞の表面に搭載することによって、担体細胞に会合させることができる、またはこれらによって内在化することができる。OVの内在化は、時々循環NAbに対するより良い保護を提供し、細胞内でのウイルス複製を可能にし、送達されるウイルスの量を増加させる。しかしながら、ウイルス感染は、標的部位に到達する前に担体細胞を殺傷し、腫瘍溶解のためのOVの送達成功を妨げることができる。他方、担体細胞表面への搭載は、腫瘍部位に到達する前のウイルス増幅を妨げ、送達されるウイルスの量を減らすことができる(Jenningsら(2014)Int.J.Cancer 134:1091~1101;Willmonら(2009)Molecular Therapy 17(10):1667~1676)。
【0186】
OVを送達するための担体細胞の有効性は、以下を含むいくつかの因子に依存する:(1)ウイルスの成功したエキソビボ搭載;(2)腫瘍部位でのウイルスのインビボ蓄積;および(3)腫瘍部位でのウイルス増幅/産生(Guoら(2010)Gene Ther.17(12):1465~1475)。理想的な担体細胞は、免疫系による中和からOVを保護するだけでなく、OVを腫瘍に特異的に送達し、自身の抗腫瘍活性を有している。担体細胞は、投与するのに安全で、分離および/または製造が容易で、ウイルスによる感染を受けやすく、ウイルスが複製するのを可能にし、破壊される前に腫瘍部位でウイルスを放出するべきである。さまざまなウイルスがさまざまな速度で複製するが、理想的には、細胞輸送およびウイルス複製の動態が、ウイルスが複製している間に担体細胞が腫瘍部位に到達するように適合性であるべきである。例えば、VSVは急速に複製するウイルスであり、感染の1~2時間後に細胞を注射すると、担体細胞を介した送達の成功を達成することができる。ワクシニアウイルスなどの遅く複製するウイルスでは、感染および担体細胞の送達のタイミングを最適化する際の柔軟性が高い(RoyおよびBell(2013)Oncolytic Virotherapy 2:47~56)。適合性のウイルスと担体細胞のペアを選択することで、確実にウイルス複製が担体細胞の循環およびエフェクター機能に悪影響を及ぼすことも、腫瘍輸送を妨げることもないようにすることができる。例えば、担体細胞が「感染した」と特定されると、早すぎるウイルス複製および/または発現が、直接的な細胞傷害性を介して、または免疫系による間接的なクリアランスを介して、担体細胞の破壊をもたらすことができる(Willmonら(2009)Molecular Therapy 17(10):1667~1676)。ウイルス感染が担体細胞の表面でウイルス抗原の発現を引き起こす場合、免疫によって媒介される担体細胞の破壊を低減または防止するために、ウイルスが腫瘍に到達すると複製するようにウイルスを操作することができる。例えば、腫瘍特異的および低酸素誘導プロモーターを使用して、腫瘍部位でのウイルス複製を駆動することができる(RoyおよびBell(2013)Oncolytic Virotherapy 2:47~56)。
【0187】
上に論じられる、速度論的パラメータに関するウイルス-担体細胞の適合性の考慮に加えて、担体細胞は、関連する腫瘍溶解性ウイルスのように、腫瘍細胞/がん細胞におけるウイルス増幅を促進しながら、自然免疫および適応免疫の障壁を克服できなければならない。自家担体細胞(治療される対象から得られた細胞)の使用は、担体細胞に対して向けられる自然および免疫応答を最小化することができるが、対象にとって厄介であり、高価であり、その入手可能性を制限することができる。さまざまな容易に単離可能なおよび/または市販の細胞/細胞株を含むことができる同種担体細胞は、入手可能性の容易さおよび対象に対する非侵襲性を提供するが、桁外れに大きい自然および/または適応免疫応答が、治療有効性および臨床適用性を損なうことができる。本明細書で提供される方法は、対象特異的および/またはがん特異的方法でウイルス療法を増強することができる「matched」(マッチング)担体細胞のスクリーニング、特定および選択を可能にする。本明細書で提供される方法によると、利用可能な潜在的担体細胞候補が、ウイルスの増幅を促進するおよび/または対象においてウイルスの治療有効性を示す能力が、担体細胞および/または担体細胞/ウイルスの組み合わせに対する対象の免疫応答によって有意には損なわれない担体細胞を特定する方法でスクリーニングされる。次いで、このように特定された担体細胞を、本明細書で提供される治療方法に従って、対象および/またはがん特異的な担体細胞媒介ウイルス療法に使用することができる。
【0188】
本明細書で提供される担体細胞を選択する方法を使用して、OVを送達するための担体細胞として使用されてきた任意の細胞型をスクリーニングすることができる。本明細書に記載されるように、スクリーニングされた担体細胞型を、担体細胞媒介ウイルス腫瘍療法を使用して治療される特定の対象においてウイルス増幅を促進するおよび/または免疫攻撃を回避するそれらの能力に基づいてランク付けすることができる:能力が高いほど、「ランク」が高くなる。次いで、「高」としてランク付けされた1つ以上の細胞型が、治療される特定の対象および/または特定のがんについてマッチとして選択される。このように選択された担体細胞型を使用する治療方法も、本明細書で提供される。
【0189】
さまざまな細胞型が担体細胞として使用されており、これらのいずれも、本明細書で提供される方法でスクリーニングすることができる。いくつかの例では、本明細書で論じられるように、担体細胞を、目的の対象についてより良い「match」(マッチング)を提供するように改変することができる。次いで、スクリーニングおよび/または改変された担体細胞を、本明細書で提供される処理方法で使用することができる。例えば、幹細胞/前駆細胞、免疫細胞、およびがん/形質転換細胞を含むことができる、OVを送達するための例示的な担体細胞型を以下に記載する。本明細書で提供される方法に従ってスクリーニングされる担体細胞は、自家、すなわち、治療される対象に由来するもの、または同種、すなわち、治療される対象以外のドナーに由来するものであることができる。本明細書で提供される方法、組み合わせおよび組成物で使用するための例示的な担体細胞は以下の通りである:
【0190】
細胞ベースの媒体の種類
幹細胞、免疫細胞、がん細胞株
幹細胞、免疫細胞、腫瘍/癌性細胞は、HSV-1、パルボウイルス、麻疹ウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、ワクシニアウイルス、レオウイルス、ニューカッスル病ウイルスおよびアデノウイルスなどを含む腫瘍溶解性ウイルス(OV)の送達媒体として利用できる。本明細書で提供される組成物および方法で使用される送達媒体は、単離され、単離された送達媒体/担体細胞を腫瘍溶解性ウイルスとインキュベートすることによって形成される組成物として投与される;これらは植物の一部でも動物の一部でもない。実施形態では、細胞を、担体として使用するために培養することができる。
【0191】
これらの細胞は、OVの治療効果を増強する腫瘍ホーミング特性を示す。この腫瘍選択性は、低酸素、炎症、ならびにサイトカインおよびケモカインなどの多数の化学誘引物質分子を特徴とする腫瘍微小環境へのこれらの細胞の誘引によるものである。
【0192】
幹細胞
幹細胞は固有の腫瘍ホーミング能力を有し、これが幹細胞を腫瘍溶解性ウイルス療法の担体細胞として魅力的にしている。これは、腫瘍微小環境が、腫瘍の制御されない成長を支持するさまざまな成長因子、血管新生因子、サイトカインおよびケモカインに富んでいるためである。TMEの低酸素性も、幹細胞の腫瘍への移動を促進する。幹細胞はまた、高度に免疫抑制性であり、抗原プロセシングおよび提示に必要な低レベルの分子を発現し、免疫系によるこれらが有するウイルスの認識を遅らせるために、担体細胞として魅力的である(Kimら(2015)Viruses 7:6200~6217)。OVのための担体細胞として使用できる幹細胞の例としては、内皮前駆細胞、神経幹細胞および間葉系幹細胞が挙げられる。
【0193】
内皮前駆細胞は、腫瘍新生血管系の部位に帰巣することが示されており、ヒト神経膠腫のマウスモデルにおいて腫瘍溶解性麻疹ウイルスを送達するために首尾よく利用されている(Guoら(2008)Biochim Biophys Acta 1785(2):217~231)。これらの細胞はインビボで急速に分裂するが、不死ではなく、新たな細胞を臨床試料から繰り返し単離しなければならない(Kimら(2015)Viruses 7:6200~6217)。
【0194】
ニューロンおよびグリア細胞を含む神経系のさまざまな異なる細胞に分化する神経幹細胞(NSC)は、治療薬を脳腫瘍に送達するための担体細胞として調査された最初の幹細胞であった(Kerriganら(2017)Cytotherapy 19(4):445~457)。NSCは、神経膠腫細胞における低酸素誘導因子(HIF)によって媒介される間質細胞由来因子-1(SDF-1)、血管内皮増殖因子(VEGF)、およびウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーター(uPA)の発現により、神経膠芽腫腫瘍に対する強い向性を示す(Kimら(2015)Viruses 7:6200~6217)。NSCは、例えば、IL-4、IL-12、IL-23、シトシンデアミナーゼ、抗血管新生タンパク質トロンボスポンジン、およびアデノウイルスなどのOVの神経膠腫への送達に利用されてきた。しかしながら、NSCは、胎児の脳組織または外科手術中の成人の脳の脳室周囲帯か単離しなければならず、このことは担体細胞としての有用性にとって不利である。
【0195】
成人のヒト骨髄は、骨髄幹細胞が容易に獲得され、免疫拒絶を排除する自家移植のために患者自身から供給できるため、幹細胞の代替供給源として利用されてきた(Kerriganら(2017)Cytotherapy 19(4):445~457)。利用可能なさまざまな骨髄幹細胞の中でも、間葉系幹細胞(MSC)は、患者から容易に単離され、インビトロで増殖され、OVの複製および免疫系による即時中和からの保護を支持し、容易に操作することができ、炎症性サイトカインの腫瘍関連発現のために、インビボで腫瘍に本質的に帰巣するので、担体細胞として魅力的である。MSCは、独立型抗がん剤としてさえも利用できる。例えば、研究により、IFN-βを発現するMSCの腫瘍ホーミング能力および腫瘍溶解効果が実証された(Nakashimaら(2010)Cytokine Growth Factor Rev.21(2~3):119~126)。
【0196】
MSCは低レベルのMHCクラスI分子を発現し、細胞表面上でMHCクラスII分子を発現しないので、同種移植が可能である。MSCは、T細胞増殖および単球の樹状細胞(DC)への分化を阻害でき、CD4+Tヘルパー細胞によって産生されるインターフェロンγおよび腫瘍壊死因子の発現を抑制することができる(Kimら(2015)Viruses 7:6200~6217)。MSCはまた、腫瘍溶解性ウイルス送達に対する物理的障壁を克服するのを助けることができるプロテアーゼの分泌を介して細胞外マトリックスを分解することができる(Ramirezら(2015)Oncolytic Virotherapy 4:149~155)。MSCを使用する別の利点は、ウイルス感染後に凍結でき、解凍時に活性ウイルス複製および抗腫瘍活性を保持し、貯蔵を可能にすることである(RoyおよびBell(2013)Oncolytic Virotherapy 2:47~56)。骨髄に加えて、MSCは脂肪組織、臍帯血、末梢血、筋肉、軟骨および羊水からも単離でき、脂肪組織のアクセスが容易で、豊富なために、脂肪組織が最も魅力的な供給源である(Kerriganら(2017)Cytotherapy 19(4):445~457;Nakashimaら(2010)Cytokine Growth Factor Rev.21(2~3):119~126)。
【0197】
MSCは、膵臓がん、脳がん、腎細胞癌、神経膠芽腫および卵巣がんを治療するための腫瘍溶解性アデノウイルスの担体として、ならびに卵巣がんおよび肝細胞癌を治療するための麻疹ウイルスの担体としての役立ってきた(Kimら(2015)Viruses 7:6200~6217)。例えば、MSCは、進行性転移性神経芽細胞腫の小児を治療するための腫瘍溶解性アデノウイルスICOVIR-5の担体として利用されてきた(Kerriganら(2017)Cytotherapy 19(4):445~457;Ramirezら(2015)Oncolytic Virotherapy 4:149~155)。
【0198】
しかしながら、MSCを使用することの1つの欠点は、腫瘍成長を促進する能力であり、これは、乳がん、子宮内膜腫瘍および神経膠腫のモデルで実証されている。この潜在的な失敗の原因を克服するために、MSCを、例えば自殺遺伝子を保有することによって、OVの送達時に確実に自身を破壊するように操作することができる(Kerriganら(2017)Cytotherapy 19(4):445~457)。
【0199】
担体細胞として利用できる幹細胞(自家または同種)の例としては、例えば、成体幹細胞;胚性幹細胞;胎児性幹細胞;神経幹細胞;間葉系幹細胞(例えば、成体骨髄、脂肪組織、血液、歯髄、新生児臍帯、臍帯血、胎盤から単離される/これに由来する、胎盤由来接着性間質細胞、胎盤由来脱落膜間質細胞、子宮内膜再生細胞、胎盤二能性内皮/間葉系前駆細胞、羊膜または羊水間葉系幹細胞、羊水由来前駆細胞、ホウォートンゼリー間葉系幹細胞、骨盤帯幹細胞、絨毛膜絨毛間葉系間質細胞、皮下白色脂肪間葉系幹細胞、周皮細胞、洞周囲細網細胞、毛包由来幹細胞、造血幹細胞、骨膜由来間葉系幹細胞、側板間葉系幹細胞、脱落乳歯幹細胞、歯根膜幹細胞、歯小嚢前駆細胞、歯乳頭由来幹細胞、筋サテライト細胞等);神経幹細胞;全能性幹細胞;多能性幹細胞;人工多能性幹細胞;複能性幹細胞;少能性幹細胞;単能性幹細胞;脂肪間質幹細胞;内皮幹細胞(例えば、内皮前駆細胞、胎盤内皮前駆細胞、血管新生内皮細胞、周皮細胞);成体末梢血幹細胞;筋芽細胞;小幼若幹細胞;皮膚線維芽細胞幹細胞;組織/腫瘍関連線維芽細胞;上皮幹細胞;および胚性上皮幹細胞が挙げられる。本明細書で提供される組成物および方法の実施形態では、担体細胞が、胚性幹細胞、胎児性幹細胞、臍帯血由来幹細胞、羊水由来幹細胞または胎盤由来幹細胞のうちの1つ以上ではない。
【0200】
免疫細胞
がん部位への輸送によって腫瘍から放出される「危険信号」に応答する免疫細胞は、OVの担体細胞として広く調査されてきた。これらの免疫細胞には、例えば、γδ T細胞を含むT細胞、腫瘍特異的抗原を標的化するCAR-T細胞、腫瘍特異的抗原を標的化するTCRトランスジェニック細胞;NKT細胞、リンパ球、単球、マクロファージ、肥満細胞、顆粒球、樹状細胞(DC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、骨髄由来サプレッサー細胞、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞、およびサイトカイン誘導キラー(CIK)細胞が含まれる。免疫細胞は、全身を循環し、腫瘍を認識できるため、担体細胞として魅力的である(RoyおよびBell(2013)Oncolytic Virotherapy 2:47~56)。OVのための担体として免疫細胞を使用すると、直接的な細胞傷害性の形で、または適応抗腫瘍免疫応答をプライミングすることによって、追加の抗腫瘍活性を提供することもできる(Jenningsら(2014)Int.J.Cancer 134:1091~1101)。
【0201】
例えば、腫瘍抗原特異的T細胞は直接的抗がんエフェクター機能を示し、活性化T細胞はOVの腫瘍への送達において広く調査されてきた。ウイルス感染の炎症誘発性がT細胞のサイレンシングおよび不活化を防ぐことができるため、養子移入T細胞にOVを搭載すると、腫瘍微小環境の免疫抑制性と戦うのを助けることができることが示されている(RoyおよびBell(2013)Oncolytic Virotherapy 2:47~56)。CCL3、CCL21およびCXCL10(IP-10)などのケモカインの腫瘍内発現は、養子T細胞の腫瘍特異的輸送を増強する。T細胞を、CXCR2などのケモカイン受容体を発現するように遺伝子操作して、これらを腫瘍に向けることもできる(Guoら(2008)Biochim Biophys Acta 1785(2):217~231)。研究により、水疱性口内炎ウイルス、レオウイルス、単純ヘルペスウイルス、ニューカッスル病ウイルスおよびレトロウイルス粒子が、T細胞の表面に付着することができ、受動的に、または担体と腫瘍細胞との間の細胞シナプスを介して腫瘍細胞に送達できることが実証されている(RoyおよびBell(2013)Oncolytic Virotherapy 2:47~56)。OVのための担体としてT細胞を使用することの利点にもかかわらず、患者からの高度に腫瘍特異性の抗原に対してT細胞集団を生じることは依然として極めて高価で困難であり、それらの使用を制限している(Willmonら(2009)Molecular Therapy 17(10):1667~1676)。
【0202】
リンホカイン活性化キラー細胞(LAK細胞)は、卵巣がんの治療においてIL-2と組み合わせて有望であった。未成熟樹状細胞(iDC)、LAK細胞およびこれらの共培養物(LAKDC)が、卵巣がんの治療でレオウイルスの担体として試験され、レオウイルス搭載LAKDCが、中和抗体からレオウイルスを保護し、炎症誘発性サイトカイン環境を誘導し、自然および適応抗腫瘍免疫応答を生じることができることが示された(Jenningsら(2014)Int.J.Cancer 134:1091~1101)。DC細胞はまた、黒色腫を治療するためのレオウイルスの担体としても首尾よく使用されてきた(Jenningsら(2014)Int.J.Cancer 134:1091~1101)。
【0203】
CIK細胞は、OVのための担体として使用できる別の種類の免疫細胞である。腫瘍抗原特異的T細胞は1つの抗原を認識するが、CIK細胞は、さまざまな腫瘍細胞で上方制御されるNKG2Dリガンドを認識し、より多用途になっている。CIK細胞はまた、患者からの単離およびエキソビボでの増殖が容易であり、高力価のウイルスを産生することができ、麻疹およびワクシニアウイルスを腫瘍に送達するために首尾よく使用されてきた(RoyおよびBell(2013)Oncolytic Virotherapy 2:47~56;Willmonら(2009)Molecular Therapy 17(10):1667~1676;PowerおよびBell(2007)Mol.Ther.15(4):660~665)。しかしながら、CIK細胞を使用する1つの欠点は、その作製に、インビボでサイトカインを使用して初代白血球を増殖させる必要があることである(Kimら(2015)Viruses 7:6200~6217)。
【0204】
マクロファージは、OVのための担体細胞のさらに別の潜在的なクラスを表す。腫瘍は通常、単球走化性タンパク質-1、マクロファージコロニー刺激因子およびVEGFを分泌するので、単球が自然に腫瘍部位に移動し、低酸素領域に局在化し、腫瘍関連マクロファージに分化し、これが腫瘍成長阻害を増強することができる(RoyおよびBell(2013)Oncolytic Virotherapy 2:47~56)。結果として、マクロファージは腫瘍溶解性アデノウイルスおよび麻疹ウイルスの送達について前臨床的に調査されてきた。論じられる他の種類の免疫細胞に加えて、骨髄由来サプレッサー細胞も、腫瘍溶解性VSVを送達するための担体細胞として調査されてきた。
【0205】
がん細胞
安全のために通常、投与前にγ線照射で不活化されるがん細胞も、OVのための担体細胞として首尾よく使用されてきた。γ線照射は腫瘍形成能を防ぐことができるが、ウイルス産生を維持する。別の安全対策には、がん細胞が対象内に無期限に留まらないことを確保するために、チミジンキナーゼなどの自殺遺伝子を発現するようにOVを操作することが含まれる(すなわち、殺傷され、もはや不死でないようにする)。あるいは、典型的にはレシピエントの免疫系によって排除される同種がん細胞を使用することができる((PowerおよびBell(2007)Mol.Ther.15(4):660~665)。
【0206】
がん細胞は容易に大量に入手でき、正常細胞よりも高いレベルのウイルス感染力および増幅を示すことができる(Guoら(2010)Gene Ther.17(12):1465~1475;RoyおよびBell(2013)Oncolytic Virotherapy 2:47~56)。さらに、転移性疾患で見られるように、一部の腫瘍細胞は一定の臓器に特異的に移動する。例えば、骨髄腫細胞は高レベルのケモカイン受容体CXCR4を発現し、骨髄転移をもたらし、腫瘍溶解性麻疹ウイルスの送達に利用されてきた(RoyおよびBell(2013)Oncolytic Virotherapy 2:47~56)。さまざまな形質転換細胞株が、免疫応答性動物および免疫不全動物で腫瘍溶解性パルボウイルス、麻疹ウイルスおよび水疱性口内炎ウイルスを首尾よく送達することが示されている。例えば、VSVまたはアデノウイルスに感染したがん細胞は、ウイルスをマウスの肺転移に有効に送達するために使用されてきた(Willmonら(2009)Molecular Therapy 17(10):1667~1676;PowerおよびBell(2007)Mol.Ther.15(4):660~665)。しかしながら、固形腫瘍に由来する細胞は、直径が大きいため、IV投与後にマウスの肺に蓄積することが示されている。結果として、造血/血液起源のがん細胞が、体内により広く分布し、OVを肺の外側の解剖学的位置に送達できるため、より良い代替手段となることができる(PowerおよびBell(2007)Mol.Ther.15(4):660~665)。
【0207】
担体細胞として使用できる同種ヒト血液悪性腫瘍細胞株の例としては、白血病細胞(例えば、KASUMI-1、HL-60、THP-1、K-562、RS4;11、MOLT-4、CCRF-CEM、JVM-13、31E9、ARH-77、MoB、JM1、NALM-1、ProPak-X.36など);T細胞白血病細胞(例えば、HM-2、CEM-CM3、Jurkat/JurkatクローンE6-1、J.CaM1.6、BCL2 Jurkat、BCL2 S87A Jurkat、BCL2 S70A Jurkat、Neo Jurkat、BCL2 AAA Jurkat、J.RT3-T3.5、J45.01、J.γ1、J.γ1.WT、JK28、P116、P116.cl39、A3、JX17、D1.1、I 9.2、I 2.1など);骨髄単球性白血病細胞(例えば、MV-4-11);リンパ腫細胞(例えば、HT、BC-3、CA46、Raji、Daudi、GA-10-Clone-4、HH、H9);非ホジキンリンパ腫細胞(例えば、SU-DHL-1、SU-DHL-2、SU-DHL-4、SU-DHL-5、SU-DHL-6、SU-DHL-8、SU-DHL-10、SU-DHL-16、NU-DUL-1、NCEB-1、EJ-1、BCP-1、TUR、U-937など);バーキットリンパ腫細胞(例えば、Ramos/RA 1、Ramos.2G6.4C10、P3HR-1、Daudi、ST486、Raji、CA46、バーキットリンパ腫患者からのヒトガンマヘルペスウイルス4/HHV-4頬腫瘍、DG-75、GA-10、NAMALWA、HS-Sultan、Jiyoye、NC-37、20-B8、EB2、1G2、EB1、EB3、2B8、GA-10クローン20、HKB-11/腎臓-B細胞ハイブリッド);びまん性大細胞型B細胞リンパ腫細胞(例えば、Toledo、Pfeiffer);マントル細胞リンパ腫細胞(例えば、JeKo-1、JMP-1、PF-1、JVM-2、REC-1、Z-138、Mino、MAVER-1);AML細胞(例えば、AML-193、BDCM、KG-1、KG-1a、Kasumi-6、HL-60/S4);CML細胞(例えば、K562、K562-r、K562-s、LAMA84-r、LAMA84-s、AR230-r、AR230-s);ALL細胞(例えば、N6/ADR、RS4;11、NALM6クローンG5、Loucy、SUP-B15、CCRF-SB);赤白血病細胞(例えば、IDH2-突然変異体-TF-1同質遺伝子細胞株);骨髄単芽球性白血病細胞(例えば、GDM-1);悪性非ホジキンNKリンパ腫細胞(例えば、NK-92、NK-92MI);骨髄腫/形質細胞腫細胞(例えば、U266B1/U266、HAA1、SA13、RPMI8226、NCI-H929、MC/CAR);多発性骨髄腫細胞(例えば、MM.1R、IM-9、MM.1S);およびマクロファージ細胞株(例えば、MD、SC、WBC264-9C)が挙げられる。
【0208】
市販の同種細胞株には、例えば、APCETH-201、APCETH-301(APCETH)、Cx601(TIGENIX)、TEMCELL、MSC-100-IV、Prochymal(MESOBLAST)などの間葉系幹細胞;例えば、ToleraCyte(Fate Therapeutics)などの人工多能性幹細胞(iPSC);線維芽細胞、例えば、CCD-16Lu、WI-38;腫瘍関連線維芽細胞、例えば、Malme-3M、COLO 829、HT-144、Hs 895.T、hTERT PF179T CAF等;内皮細胞、例えば、HUVEC、HUVEC/TERT 2、TIME;胚性上皮細胞、例えば、HEK-293、HEK-293 STF、293T/17、293T/17 SF、HEK-293.2sus;胚性幹細胞、例えば、hESC BG01V;および上皮細胞、例えば、NuLi-1、ARPE-19、VK2/E6E7、Ect1/E6E7、RWPE-2、WPE-stem、End1/E6E7、WPMY-1、NL20、NL20-TA、WT 9-7、WPE1-NB26、WPE-int、RWPE2-W99、BEAS-2Bが含まれる。本明細書で提供される組成物および方法の実施形態では、担体細胞が、胚起源、例えば、胚性上皮細胞、胚性幹細胞、胎児細胞等でない。
【0209】
自家または同種全腫瘍細胞ワクチンには、例えば、Cell Genesys/BioSante/Aduro Biotech製のGVAX Prostate(PC3/LNCaPに基づく);GVAX Pancreas;GVAX Lung;およびGVAX Renal Cell等などのGM-CSF分泌全腫瘍細胞ワクチン(GVAX)が含まれる。
【0210】
同種ヒト腫瘍細胞株には、例えば、NCI-60パネル(BT549、HS 578T、MCF7、MDA-MB-231、MDA-MB-468、T-47D、SF268、SF295、SF539、SNB-19、SNB-75、U251、Colo205、HCC 2998、HCT-116、HCT-15、HT29、KM12、SW620、786-O、A498、ACHN、CAKI、RXF 393、SN12C、TK-10、UO-31、CCRF-CEM、HL-60、K562、MOLT-4、RPMI-8226、SR、A549、EKVX、HOP-62、HOP-92、NCI-H226、NCI-H23、NCI-H322M、NCI-H460、NCI-H522、LOX IMVI、M14、MALME-3M、MDA-MB-435、SK-MEL-2、SK-MEL-28、SK-MEL-5、UACC-257、UACC-62、IGROV1、OVCAR-3、OVCAR-4、OVCAR-5、OVCAR-8、SK-OV-3、NCI-ADR-RES、DU145、PC-3)が含まれる。他の同種ヒト腫瘍細胞株には、例えば、線維肉腫細胞株(HT-1080);肝癌細胞株(Hih-7);前立腺がん細胞株(LAPC4、LAPC9、VCaP、LuCaP、MDA PCa 2a/2b、C4、C4-2、PTEN-CaP8、PTEN-P8);乳がん細胞株(HCC1599、HCC1937、HCC1143、MDA-MB-468、HCC38、HCC70、HCC1806、HCC1187、DU4475、BT-549、Hs 578T、MDA-MB-231、MDA-MB-436、MDA-MB-157、MDA-MB-453、HCC1599、HCC1937、HCC1143、MDA-MB-468、HCC38、HCC70、HCC1806、HCC1187、DU4475、BT-549、Hs 578T、MDA-MB-231、MDA-MB-436、MDA-MB-157、MDA-MB-453、BT-20、HCC1395、MDA-MB-361、EMT6、T-47D、HCC1954);頭頸部がん細胞株(A-253、SCC-15、SCC-25、SCC-9、FaDu、Detroit 562);肺がん細胞株(NCI-H2126、NCI-H1299、NCI-H1437、NCI-H1563、NCI-H1573、NCI-H1975、NCI-H661、Calu-3、NCI-H441);膵臓がん細胞株(Capan-2、Panc 10.05、CFPAC-1、HPAF-II、SW1990、BxPC-3、AsPC-1、MIA PaCa-2、Hs 766T、Panc 05.04、PL45);卵巣がん細胞株(PA-1、Caov-3、SW626、SK-OV-3);骨がん細胞株(HOS、A-673、SK-PN-DW、U-2 OS、Saos-2);結腸がん細胞株(SNU-C1、SK-CO-1、SW1116、SW948、T84、LS123、LoVo、SW837、SNU-C1、SW48、RKO、COLO 205、SW1417、LS411N、NCI-H508、HT-29、Caco-2、DLD-1);胃がん細胞株(KATOIII、NCI-N87、SNU-16、SNU-5、AGS、SNU-1);婦人科系がん細胞株(SK-LMS-1、HT-3、ME-180、Caov-3、SW626、MES-SA、SK-UT-1、KLE、AN3-CA、HeLa);肉腫細胞株(SW684、HT-1080、SW982、RD、GCT、SW872、SJSA-1、MES-SA/MX2、MES-SA、SK-ES-1、SU-CCS-1、A-673、VA-ES-BJ、Hs 822.T、RD-ES、HS 132.T、Hs 737.T、Hs 863.T、Hs 127.T、Hs 324.T、Hs 821.T、Hs 706.T、Hs 707(B).Ep、LL 86/LeSa、Hs 57.T、Hs 925.T、GCT、KHOS-312H、KHOS/NP R-970-5、SK-LMS-1、HOS);黒色腫細胞株(SK-MEL-1、A375、G-361、SK-MEL-3、SH-4、SK-MEL-24、RPMI-7951、CHL-1、Hs 695T、A2058、VMM18、A375.S2、Hs 294T、VMM39、A375-P、VMM917、VMM5A、VMM15、VMM425、VMM17、VMM1、A375-MA1、A375-MA2、SK-MEL-5、Hs 852.T、LM-MEL-57、A101D、LM-MEL-41、LM-MEL-42、MeWo、LM-MEL-53、MDA-MB-435S、C32、SK-MEL-28、SK-MEL-2、MP38、MP41、C32TG、NM2C5、LM-MEL-1a、A7/M2A7);扁平上皮癌細胞株(SiHa、NCI-H520、SCC-15、NCI-H226、HCC1806、SCC-25、FaDu、SW 954、NCI-H2170、SCC-4、SW 900、NCI-H2286、NCI-H2066、SCC-9、SCaBER、SW579、SK-MES-1、2A3、UPCI:SCC090、UPCI:SCC152、CAL 27、RPMI 2650、UPCI:SCC154、SW756、NCI-H1703、ME-180、SW962);肝細胞癌細胞株(Hep G2、Hep 3B2.1-7/Hep 3B、C3A、Hep G2/2.2.1、SNU-449、SNU-398、SNU-475、SNU-387、SNU-182、SNU-423、PLC/PRF/5);膀胱がん細胞株(5637、HT-1197、HT-1376、RT4、SW780、T-24、TCCSUP、UM-UC-3);腎細胞癌細胞株(ACHN、786-O/786-0、769-P、A-498、Hs 891.T、Caki-2、Caki-1);胚性癌腫/精巣奇形腫細胞株(NTERA-2 cl.D1、NCCIT、Tera-2、Tera-1、Cates-1B);神経膠芽腫細胞株(LN-229、U-87 MG、T98G、LN-18、U-118 MG、M059K、M059J、U-138 MG、A-172);星細胞腫細胞株(SW1088、CCF-STTG1、SW1783、CHLA-03-AA);脳がん細胞株(PFSK-1、Daoy);甲状腺癌細胞株(TT、MDA-T68、MDA-T32、MDA-T120、MDA-T85、MDA-T41)および中皮腫細胞株(NCI-H28、NCI-H226、NCI-H2452、NCI-H2052、MSTO-211H)が含まれる。
【0211】
2.ウイルスの選択
本明細書で提供される方法に従って選択および/または改変された担体細胞を、腫瘍溶解特性を有すると特定された任意のウイルスを用いたウイルス療法に使用することができる。本明細書で論じられるように、治療される特定の対象および/またはがんの種類についてマッチである担体細胞を選択するために本明細書で提供される方法のいくつかの例では、担体細胞を、治療に使用される腫瘍溶解性ウイルスの増幅を促進するその能力に基づいて選択することもできる。対象および/またはがん特異的マッチングを特定するための本明細書で提供される方法に従って選択される担体細胞-ウイルスの組み合わせを、本明細書で提供される治療方法で使用することができる。本明細書で提供される方法、組み合わせおよび組成物で使用することができる例示的な腫瘍溶解性ウイルスは、以下の通りである:
【0212】
ウイルスの種類
腫瘍溶解性ウイルスは、主に腫瘍細胞特異的複製を特徴とし、腫瘍細胞溶解および効率的な腫瘍退縮をもたらす。腫瘍溶解性ウイルスは、循環腫瘍細胞などの転移性腫瘍細胞を含む腫瘍細胞にコロニー形成または蓄積し、そこで複製することによって治療を行う。本明細書に記載される本発明は、任意の抗がんワクチンまたはウイルスと共に使用することができる。例えば、腫瘍溶解性ウイルスは、それだけに限らないが、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、麻疹ウイルス、レオウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、コクサッキーウイルス、セムリキ森林ウイルス、セネカバレーウイルス、ニューカッスル病ウイルス、センダイウイルス、デングウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、パルボウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、アルファウイルス、フラビウイルス、ラブドウイルス、パピローマウイルス、インフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、テナガザル白血病ウイルスおよびシンドビスウイルスなどの任意の天然に存在するまたは操作された組換えウイルスであることができる。多くの場合、腫瘍選択性は、ワクシニアウイルスおよびその他の腫瘍溶解性ウイルスなどのウイルスの固有の特性である。一般に、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍または腫瘍細胞で複製して、溶解をもたらすことによって治療を行う。
【0213】
いくつかの実施形態では、病原性ウイルスに由来する弱毒化株が、生ワクチンの製造に使用される。ワクシニアウイルスの非限定的な例としては、それだけに限らないが、Lister(Elstreeとしても知られている)、ニューヨーク市保健局(NYCBH)、Dairen、Ikeda、LC16M8、ウエスタンリザーブ(WR)、コペンハーゲン(Cop)、Tashkent、Tian Tan、Wyeth、Dryvax、IHD-J、IHD-W、Brighton、Ankara、改変ワクシニアAnkara(MVA)、Dairen I、LIPV、LC16M0、LIVP、WR 65-16、EM63、Bern、Paris、CVA382、NYVAC、ACAM2000およびConnaught株が挙げられる。ウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスのクローン株であることができる。発色団産生酵素をコードするヌクレオチドの配列を、未改変腫瘍溶解性ウイルスのゲノム内の非必須遺伝子もしくは領域にもしくはその代わりに挿入することができる、または未改変腫瘍溶解性ウイルスのゲノム内の異種遺伝子産物をコードする核酸にもしくはその代わりに挿入する。
【0214】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法で利用されるワクシニアウイルスが、弱毒化ニューヨーク市保健局(NYCBOH)株である。いくつかの実施形態では、ワクシニアウイルスのNYCBOH株が、ATCC VR-118またはCJ-MVB-SPXであることができる。
【0215】
いくつかの実施形態では、ワクシニアウイルスが、Dryvax、ACAM1000、ACAM2000、Lister、EM63、LIVP、Tian Tan、コペンハーゲン、ウエスタンリザーブまたは改変ワクシニアAnkara(MVA)から選択される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスが、これらの株のうちの1つ以上に存在するいずれの遺伝子も欠損していない。
【0216】
いくつかの実施形態では、ウイルスまたはワクチンが複製能力のあるウイルスである。いくつかの実施形態では、ウイルスまたはワクチンが複製欠損である。
【0217】
いくつかの実施形態では、ウイルスまたはワクチンが弱毒化されていない。
【0218】
他の未改変腫瘍溶解性ウイルスには、GLV-1h68、JX-594、JX-954、ColoAd1、MV-CEA、MV-NIS、ONYX-015、B18R、H101、OncoVEX GM-CSF、Reolysin、NTX-010、CCTG-102、Cavatak、OncorineおよびTNFeradeと呼ばれるウイルスの中から選択されるものを含む、当業者に既知の任意のものが含まれる。
【0219】
本明細書で提供される方法で使用するための腫瘍溶解性ウイルスには、当業者に周知のいくつかが含まれ、例えば、水疱性口内炎ウイルス、例えば、米国特許第7,731,974号明細書、同第第7,153,510号明細書、同第6,653,103号明細書および米国特許出願公開第2010/0178684号明細書、同第2010/0172877号明細書、同第2010/0113567号明細書、同第2007/0098743号明細書、同第20050260601号明細書、同第20050220818号明細書および欧州特許第1385466号明細書、同第1606411号明細書および同第1520175号明細書参照;単純ヘルペスウイルス、例えば、米国特許第7,897,146号明細書、同第7731,952号明細書、同第7,550,296号明細書、同第7,537,924号明細書、同第6,723,316号明細書、同第6,428,968号明細書ならびに米国特許出願公開第2011/0177032号明細書、同第2011/0158948号明細書、同第2010/0092515号明細書、同第2009/0274728号明細書、同第2009/0285860号明細書、同第2009/0215147号明細書、同第2009/0010889号明細書、同第2007/0110720号明細書、同第2006/0039894号明細書および同第20040009604号明細書参照;レトロウイルス、例えば、米国特許第6,689,871号明細書、同第第6,635,472号明細書、同第6,639,139号明細書、同第5,851,529号明細書、同第5,716,826号明細書、同第5,716,613号明細書および米国特許出願公開第20110212530号明細書参照;およびアデノ随伴ウイルス、例えば、米国特許第8,007,780号明細書、同第7,968,340号明細書、同第7,943,374号明細書、同第7,906,111号明細書、同第7,927,585号明細書、同第7,811,814号明細書、同第7,662,627号明細書、同第7,241,447号明細書、同第7,238,526号明細書、同第7,172,893号明細書、同第7,033,826号明細書、同第7,001,765号明細書、同第6,897,045号明細書および同第6,632,670号明細書参照が含まれる。
【0220】
ニューカッスル病ウイルス(NDV)は、家禽に感染し、一般にヒトに対して非病原性であるが、インフルエンザ様症状を引き起こすことができる、マイナス極性の一本鎖RNAゲノムを有する鳥類パラミクソウイルスである(Tayebら(2015)Oncolytic Virotherapy 4:49~62;Chengら(2016)J.Virol.90:5343~5352)。その細胞質複製、宿主ゲノムの組込みおよび組換えの欠如、ならびに高いゲノム安定性により、NDVおよび他のパラミクソウイルスは、レトロウイルスまたは一部のDNAウイルスなどの他の腫瘍溶解性ウイルスに対してより安全で魅力的な代替を提供する(Matveevaら(2015)Molecular Therapy-Oncolytics 2、150017)。NDVは腫瘍選択性を示し、腫瘍細胞での複製が正常細胞の10,000倍であり、直接的な細胞変性効果および免疫応答の誘導により腫瘍溶解を引き起こす(Tayebら(2015;Lamら(2011)Journal of Biomedicine and Biotechnology、Article ID 718710)。NDVの腫瘍選択性の機構は完全には明らかではないが、インターフェロン産生の欠陥および腫瘍細胞におけるIFNシグナル伝達への応答により、ウイルスが複製および拡散することが可能になる(Chengら(2016);Gintingら(2017)Oncolytic Virotherapy 6:21~30)。がん細胞に対するパラミクソウイルスの高い親和性はまた、シアル酸を含むがん細胞表面でのウイルス受容体の過剰発現によることができる(Chengら(2016);Matveevaら(2015);Tayebら(2015))。
【0221】
非操作NDV株は、ニワトリでの病原性に基づいて、長潜伏期性(無毒性)、亜病原性(中程度)または短潜伏期性(毒性)に分類され、短潜伏期性および亜病原性株は、複数のヒトがん細胞で複製(およびこれを溶解)することができるが、長潜伏期性株はできない(Chengら(2016);Matveevaら(2015))。NDV株はまた、溶解性または非溶解性に分類され、溶解性株のみが生存可能で感染性の子孫を産生することができる(Gintingら(2017);Matveevaら(2015))。他方、非溶解性株の腫瘍溶解効果は、主に、抗腫瘍活性をもたらす免疫応答を刺激する能力に起因する(Gintingら(2017)Oncolytic Virotherapy 6:21~30)。腫瘍療法で一般的に利用される亜病原性溶解株には、PV701(MK107)、MTH-68/Hおよび73-Tが含まれ、一般的に利用される長潜伏期性非溶解性株にはHUJ、UlsterおよびHitchner-B1が含まれる(Tayebら(2015);Lamら(2011);Beckら(2006)Mol.Ther.13(1):221~228)。
【0222】
腫瘍溶解性ウイルスとしてのNDVの使用は、アデノウイルスおよびNDVが子宮癌に直接注射され、部分的な壊死を引き起こした1950年代初頭に最初に報告された。しかしながら、おそらくウイルスに対する中和抗体の産生による腫瘍溶解活性の抑制が原因で、腫瘍再成長が観察された(Lamら(2011)Journal of Biomedicine and Biotechnology、Article ID 718710)。最近では、NDV株PV701が、第1相試験で結腸直腸がんに対する有望な活性を示し(Laurieら(2006)Clin.Cancer Res.12(8):2555~2562)、NDV株73-Tが、線維肉腫、骨肉腫、神経芽細胞腫および子宮頸癌を含むさまざまなヒトがん細胞株に対するインビトロ腫瘍溶解活性、ならびにヒト神経芽細胞腫、線維肉腫異種移植片、および結腸がん、肺がん、乳がんおよび前立腺がん異種移植片を含むいくつかの癌異種移植片を有するマウスにおけるインビボ治療効果を実証した(Lamら(2011))。NDV株MTH-68/Hは、PC12、MCF7、HCT116、DU-145、HT-29、A431、HELAおよびPC3細胞を含む腫瘍細胞株の有意な退縮をもたらし、吸入によって投与された場合に進行がん患者で有利な応答を実証した(Lamら(2011))。非溶解性株Ulsterは、結腸癌に対する細胞傷害性効果を実証し、溶解性株Italienはヒト黒色腫を有効に殺傷した(Lamら(2011))。長潜伏期性NDV株HUJは、患者に静脈内投与した場合、再発性多形性膠芽腫に対する腫瘍溶解活性を実証し、長潜伏期性株LaSotaは、結腸直腸がん患者の生存期間を延長し(Lamら(2011);Freemanら(2006)Mol.Ther.13(1):221~228)、非小細胞肺癌(A549)、神経膠芽腫(U87MGおよびT98G)、乳腺腺癌(MCF7およびMDA-MB-453)および肝細胞癌(Huh7)細胞株に感染し、これらを殺傷することができた(Gintingら(2017)Oncolytic Virotherapy 6:21~30)。
【0223】
遺伝子操作されたNDV株も腫瘍溶解療法について評価されてきた。例えば、IFNアンタゴニストであるインフルエンザNS1遺伝子が、NDV株Hitchner-B1のゲノムに導入され、さまざまなヒト腫瘍細胞株およびB16黒色腫のマウスモデルで増強された腫瘍溶解効果をもたらした(Tayebら(2015))。NDVの抗腫瘍/免疫刺激効果は、ウイルスゲノムへのIL-2またはGM-CSF遺伝子の導入によって増強された(Lamら(2011))。
【0224】
遊離ウイルスの使用に加えて、研究では、がん治療のためのNDV腫瘍溶解産物、NDV感染細胞ベースの媒体、および他の非がん剤との併用療法の使用が評価された。いくつかの臨床試験で、NDV腫瘍溶解産物が、悪性黒色腫に対する腫瘍溶解活性を実証した(Lamら(2011))。NDV感染細胞ベースの担体の使用も首尾よく実証されている。NDVに感染した自家腫瘍細胞株が、結腸直腸がん、乳がん、卵巣がん、腎臓がん、頭頸部がんおよび神経膠芽腫に対して首尾よく利用された(Lamら(2011))。NDV株MTH-68/Hに感染した骨髄、脂肪および臍帯由来のMSCは、ウイルスを、共培養したA172およびU87神経膠腫細胞および神経膠腫幹細胞に送達し、神経膠腫細胞における用量依存的細胞死、神経膠腫幹細胞における低レベルのアポトーシスおよび自己再生の阻害、ならびに裸のウイルスによる直接感染よりも高レベルのアポトーシスをもたらした(Kazimirskyら(2016)Stem Cell Research&Therapy 7:149)。腫瘍内NDV注射と全身CTLA-4抗体投与を利用した併用療法は、事前に確立された遠隔腫瘍の効率的な拒絶をもたらした(Matveevaら(2015))。
【0225】
パルボウイルス
H-1パルボウイルス(H-1PV)は、パルボウイルス(Parvoviridae)科に属する小さな非エンベロープ一本鎖DNAウイルスであり、その天然の宿主はラットである(Angelovaら(2017)Front.Oncol.7:93;Angelovaら(2015)Frontiers in Bioengineering and Biotechnology 3:55)。H-1PVは、ヒトに対して非病原性であり、その好ましい安全性プロファイル、ヒトにおける既存のH-1PV免疫の欠如、および宿主細胞ゲノム組込みの欠如により、腫瘍溶解性ウイルスとして魅力的である(Angelovaら(2015))。H-1PVは、乳がん、胃がん、子宮頸がん、脳がん、膵臓がんおよび結腸直腸がんの前臨床型を含む固形腫瘍とリンパ腫および白血病を含む血液悪性腫瘍の両方に対する広範な腫瘍抑制能を実証した(Angelovaら(2017))。H-1PVは、腫瘍関連抗原の提示の増加、樹状細胞の成熟、および炎症誘発性サイトカインの放出を介して抗腫瘍応答を刺激する(Moehlerら(2014)Frontiers in Oncology 4:92)。H-1PVはまた、細胞複製および転写因子の利用可能性、NS1パルボウイルスタンパク質と相互作用する細胞タンパク質の過剰発現、ならびに正常細胞ではなく腫瘍細胞でのNS1の機能的調節に関与する代謝経路の活性化に起因すると考えられる腫瘍選択性を示す(Angelovaら(2015)Frontiers in Bioengineering and Biotechnology 3:55)。H-1PVの無害な性質のため、野生型株がしばしば利用され、遺伝子操作による弱毒化の必要性を否定する(Angelovaら(2015))。
【0226】
研究によって、ヒト神経膠腫細胞の腫瘍溶解性H-1PV感染が効率的な細胞殺傷をもたらし、高悪性度神経膠腫幹細胞モデルも溶解性H-1PV感染に許容性であることが示された。腫瘍細胞照射の直後にウイルスを施用した場合、神経膠腫細胞の殺傷増強が観察され、このプロトコルが切除不能な再発性神経膠芽腫に有用となることができることを示している(Angelovaら(2017))。脳内または全身H-1PV注射は、同所性RG-2腫瘍を有する免疫応答性ラット、ならびにヒトU87神経膠腫を移植された免疫不全動物において、毒性副作用なしに神経膠腫の退縮をもたらした(Angelovaら(2015))。Del H-1PVは、感染力が高く、ヒト形質転換細胞株に拡散する適合性変異体であり、膵臓がんおよび子宮頸癌の異種移植モデルにおいてインビボで腫瘍溶解効果を実証した(Geissら(2017)Viruses 9、301)。H-1PVはまた、5つのヒト骨肉腫細胞株(CAL 72、H-OS、MG-63、SaOS-2、U-2OS)のパネル(Geissら(2017)Viruses 9、301)およびヒト黒色腫細胞(SK29-Mel-1、SK29-Mel-1.22)(Moehlerら(2014)Frontiers in Oncology 4:92)に対する腫瘍溶解活性も実証した。別の研究では、子宮頸癌異種移植片を有するヌードラットが、H-1PVによる治療後に用量依存的な腫瘍成長停止および退縮を実証した(Angelovaら(2015))。H-1PVの腫瘍内および静脈内投与も、免疫不全マウスのヒト乳癌異種移植片における有意な成長抑制を実証した(Angelovaら(2015))。ヒト胃癌またはヒトバーキットリンパ腫を有するマウスへの腫瘍内H-1PV注射は、腫瘍退縮および成長抑制をもたらした(Angelovaら(2015))。
【0227】
再発性多形性膠芽腫患者における腫瘍溶解性H-1PV(ParvOryx01)の最初の第I/IIa相臨床試験は2015年に完了し(臨床試験NCT01301430)、好ましい無増悪生存期間、臨床的安全性、および腫瘍内または静脈内注射による患者の忍容性を実証した(Angelovaら(2017);Geissら(2017)Viruses 9、301;Geletnekyら(2017)Mol.Ther.25(12):2620~2634)。この試験は、H-1PVが用量依存的に血液脳関門を通過し、主にCD8+およびCD4+Tリンパ球による白血球浸潤を特徴とする免疫原性抗腫瘍応答、ならびにパーフォリン、グランザイムB、IFNγ、IL-2、CD25およびCD40Lを含む免疫細胞活性化のいくつかのマーカーの局所治療された腫瘍での検出を確立する能力を実証した(Geletnekyら(2017)Mol.Ther.25(12):2620~2634)。
【0228】
H-1PVはまた、ゲムシタビンに耐性の細胞を含む、インビトロでの高度に侵攻性の膵管腺癌(PDAC)細胞の効率的な殺傷を実証し、H-1PVの腫瘍内注射は、PDACの同所性ラットモデルにおいて腫瘍退縮および動物生存の延長をもたらした(Angelovaら(2017);Angelovaら(2015))。選択的腫瘍標的化および毒性の欠如を含む同様の結果が、免疫不全ヌードラットPDACモデルで観察された(Angelovaら(2015))。H-1PVと細胞増殖抑制剤(シスプラチン、ビンクリスチン)または標的化(スニチニブ)薬の組み合わせは、ヒト黒色腫細胞におけるアポトーシスの相乗的誘導をもたらす(Moehlerら(2014))。H-1PVと、HDAC阻害剤であるバルプロ酸の組み合わせは、子宮頸部細胞および膵臓細胞に対する相乗的な細胞傷害性をもたらし(Angelovaら(2017))、ゲムシタビンの治療効率は、2段階プロトコルでH-1PVと組み合わせた場合に有意に改善された(Angelovaら(2015))。他のウイルスと同様に、H-1PVも抗がん分子を発現するように操作することができる。例えば、研究によって、アポプチンを発現するパルボウイルスH1由来ベクターが、野生型H-1PVよりもアポトーシスを誘導する能力が高いことが示された(Geissら(2017))。
【0229】
他の腫瘍溶解性ウイルスと同様に、パルボウイルスの治療能は、パルボウイルスを認識する細胞表面受容体の遍在的発現による非特異的取り込み、および反復投与後の中和抗体の発生によって制限される。しかしながら、H-1PVは、細胞ベースの媒体と組み合わせると、これらの潜在的な課題を回避して、成功した抗腫瘍効果を実証した。ある研究では、自家MH3924Aラットヘパトーマ細胞が、H-1PVの標的化送達、および同じ細胞によって形成される転移の抑制に首尾よく使用された(Raykovら(2004)Int.J.Cancer 109:742~749)。ヘパトーマ細胞は、H-1PV感染の24時間後にγ線照射によって不活化されたが、これは子孫ウイルスの収量を2分の1以下にしか減少させなかった。直接ウイルス注射と比較して、媒体細胞ベースの療法は、転移の抑制の改善およびより少ない中和抗体の産生をもたらし、腫瘍溶解性パルボウイルスを全身送達するための担体細胞の使用を支持する(Raykovら(2004))。
【0230】
麻疹ウイルス
麻疹ウイルス(MV)は、パラミクソウイルス(Paramyxoviruses)のファミリーに属するマイナスセンスゲノムを有するエンベロープ一本鎖RNAウイルスである(Arefら(2016)Viruses 8:294;Hutzenら(2015)Oncolytic Virotherapy 4:109~118)。その非セグメント化ゲノムは安定であり、突然変異して病原性型に戻るリスクが低く、細胞質での複製により、感染細胞での挿入DNA突然変異誘発のリスクがない(Arefら(2016);Hutzenら(2015))。MVは、1954年にEdmonston と呼ばれる患者から最初に分離され、優れた安全性プロファイルを備えた生ワクチンへと開発され、これは、複数のインビトロ継代後の弱毒化により、50年間、世界中の10億人以上の個体を保護することに成功している(Arefら(2016)Viruses 8:294;Hutzenら(2015)Oncolytic Virotherapy 4:109~118)。MV-Edmとして示されるこの株の誘導株は、腫瘍溶解療法の研究で最も一般的に利用されているMV菌株である。しかしながら、Schwarz/Moraten麻疹ワクチン株は、Edm誘導株よりも弱毒化され、免疫原性が高いため、より安全で免疫調節性が高くなっている(Veinaldeら(2017)Oncoimmunology 6(4):e1285992)。野生型MVの腫瘍溶解効果は、1970年代に記述され、急性リンパ芽球性白血病、バーキットリンパ腫およびホジキンリンパ腫の患者の改善が報告されている(Arefら(2016))。
【0231】
MVは、標的細胞への侵入に3つの主要な受容体を利用する:CD46、ネクチン-4およびシグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAM)(Arefら(2016);Hutzenら(2015))。活性化B細胞およびT細胞、未成熟胸腺細胞、単球ならびに樹状細胞で発現されるSLAMが野生型株の主な受容体であるが、弱毒化された腫瘍選択的MV-Edm株は、多くの腫瘍細胞で過剰発現される補体活性化の調節因子であるCD46受容体を主に標的化する(Arefら(2016);Hutzenら(2015);Jacobsonら(2017)Oncotarget 8(38):63096~63109;Msaouelら(2013)Expert Opin.Biol.Ther.13(4))。呼吸上皮で主に発現されるネクチン-4は、野生型株と弱毒化MV株の両方によって利用される(Arefら(2016);Msaouelら(2013)Expert Opin.Biol.Ther.13(4))。他の腫瘍溶解性ウイルスと同様に、腫瘍細胞のIFN抗ウイルス応答の欠陥も、MVの腫瘍選択性を促進する(Arefら(2016);Jacobsonら(2017)Oncotarget 8(38):63096~63109)。現在、多発性骨髄腫(NCT02192775、NCT00450814)、頭頸部がん(NCT01846091)、中皮腫(NCT01503177)および卵巣がん(NCT00408590、NCT02364713)を含むいくつかのがんの治療におけるMVの能力を調査するいくつかの臨床試験がある。
【0232】
MVは、例えば、IL-13、INF-β、GM-CSFおよびヘリコバクター・ピロリ(Heliobacter pylori)好中球活性化タンパク質(NAP)をコードする遺伝子を含む免疫刺激遺伝子および免疫調節遺伝子を発現するように遺伝子操作されてきた(Arefら(2016)、Hutzenら(2015);Msaouelら(2013)Expert Opin.Biol.Ther.13(4))。腫瘍溶解性MVと抗CTLA4および抗PD-L1抗体を利用した併用療法は、黒色腫マウスモデルで成功することが証明されている(Arefら(2016);Hutzenら(2015))。広範なワクチン接種または以前の自然感染のために、ほとんどの患者はMVに対する以前の免疫を有しており、これがその治療能を妨げる。これを回避するために、MVが間葉系幹細胞などの担体細胞で腫瘍に送達され、宿主中和抗体を有効に回避し、急性リンパ芽球性白血病、肝細胞癌および卵巣癌の前臨床モデルで有効であることが分かっている(Arefら(2016))。U-937単球細胞株、未成熟および成熟初代樹状細胞、PMBC、活性化T細胞、初代CD14+細胞、多発性骨髄腫MM1細胞株ならびに血管内皮前駆細胞(blood outgrowth endothelial cell)を含む他のいくつかの細胞担体が、MVの送達について有望な結果を実証している(Msaouelら(2013)Expert Opin.Biol.Ther.13(4))。現在、臨床試験(NCT02068794)が、再発性卵巣がん患者の治療における腫瘍溶解性MV感染間葉系幹細胞の使用を研究している。既存の免疫を克服するための別の戦略には、MV療法とシクロホスファミドなどの免疫抑制剤の組み合わせが含まれる(Hutzenら(2015))。
【0233】
MV-CEA
腫瘍マーカーである癌胎児抗原(CEA)を発現するように遺伝子操作されたMV-CEAは、がん細胞の感染後に患者の血流にCEAを放出し、CEAレベルの検出、よってインビボウイルス感染の追跡を可能にする(Arefら(2016);Hutzenら(2015))。MV-CEAの治療能は前臨床的に実証されており、現在、卵巣がんの治療に関する第I相臨床試験(NCT00408590)で調査されている。
【0234】
MV-NIS
MV-NISは、ナトリウム・ヨウ素共輸送体(NIS)を発現するように操作されている、Edmonston ワクチン系統の別の追跡可能な腫瘍溶解性MVであり、MV-CEA構築物のようなヌクレオカプシド(N)遺伝子の上流の代わりに、MVゲノムのヘマグルチニン(H)遺伝子の下流でのNIS導入遺伝子の配置により、MV-CEAと比較して優れたウイルス増幅を示す(Arefら(2016);Galanisら(2015)Cancer Res.75(1):22~30)。123I、124I、125I、131Iおよび99mTcなどの放射性同位元素は、MV-NIS感染細胞で発現されるNISを介して輸送され、例えば、PET、SPECT/CTおよびγカメラなどを使用した非侵襲的イメージングを可能にする(Msaouelら(2013)Expert Opin.Biol.Ther.13(4))。NISの発現は、放射性ウイルス療法のためのI-131などのβ放出放射性同位元素の腫瘍細胞への侵入を促進することによって腫瘍溶解性MVの有効性を改善することもでき、多発性骨髄腫、多発性膠芽腫、頭頸部がん、甲状腺未分化がんおよび前立腺がんモデルで前臨床的に有望な結果を実証している(Arefら(2016);Hutzenら(2015);Msaouelら(2013))。現在、いくつかの第I/II相臨床試験が、多発性骨髄腫(NCT00450814、NCT02192775)、中皮腫(NCT01503177)、頭頸部がん(NCT01846091)、およびウイルス感染MSCを使用した卵巣がん(NCT02068794)におけるMV-NISの使用を調査している。
【0235】
レオウイルス
レオウイルスとして一般的に知られている呼吸器腸オーファンウイルスは、ヒトに対して非病原性であるレオウイルス(Reoviridae)科の非エンベロープ二本鎖RNAウイルスである。野生型レオウイルスは環境全体に遍在しており、一般集団で70~100%の血清陽性をもたらす(Gongら(2016)World J.Methodol.6(1):25~42)。レオウイルスには、1型Lang、2型Jones、3型Abney および3型Dearing(T3D)の3種の血清型がある。T3Dは、前臨床および臨床研究で最も一般的に利用されている天然に存在する腫瘍溶解性レオウイルス血清型である。
【0236】
腫瘍溶解性レオウイルスは、がん細胞に特徴的な活性化Rasシグナル伝達により、腫瘍選択的であると考えられている(Gongら(2016));Zhaoら(2016)Mol.Cancer Ther.15(5):767~773)。Rasシグナル伝達経路の活性化は、ウイルスタンパク質合成の防止を通常担うタンパク質であるdsRNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)のリン酸化を阻害することによって、細胞の抗ウイルス応答を破壊する(Zhaoら(2016))。Ras活性化はまた、ウイルス脱殻および脱集合を増強し、ウイルス子孫産生および感染力を増強し、アポトーシス増強を通して子孫の放出を促進する(Zhaoら(2016))。全てのヒト腫瘍のおよそ30%が異常なRasシグナル伝達を示すと推定されている(Zhaoら(2016))。例えば、悪性神経膠腫の大部分は活性化Rasシグナル伝達経路を有し、レオウイルスはインビトロで悪性神経膠腫細胞の83%、ならびにインビボでヒト悪性神経膠腫モデルで、およびエキソビボで神経膠腫標本の100%で抗腫瘍活性を実証している(Gongら(2016)World J.Methodol.6(1):25~42)。さらに、膵臓腺癌はRas突然変異の発生率が非常に高く(およそ90%)、レオウイルスはインビトロで試験した膵臓細胞株の100%で強力な細胞傷害性を示し、インビボで皮下腫瘍マウスモデルの100%で退縮を誘導した(Gongら(2016))。
【0237】
レオウイルスは、結腸がん、乳がん、卵巣がん、肺がん、皮膚がん(黒色腫)、神経がん、血液がん、前立腺がん、膀胱がんおよび頭頸部がんを含む範囲の悪性腫瘍にわたって前臨床的に広範な抗がん活性を実証している(Gongら(2016))。レオウイルス療法は現在、放射線療法、化学療法、免疫療法および外科手術と組み合わせて試験されている。レオウイルスと放射線療法の組み合わせは、インビトロでの頭頸部、結腸直腸および乳がん細胞株、ならびにインビボでの結腸直腸がんおよび黒色腫モデルの治療に有益であることが分かっている(Gongら(2016))。レオウイルスおよびゲムシタビン、ならびにレオウイルス、パクリタキセルおよびシスプラチンの組み合わせが、マウス腫瘍モデルで成功することが分かっている(Zhaoら(2016))。B16黒色腫マウスモデルの前臨床研究は、腫瘍溶解性レオウイルスと抗PD-1療法の組み合わせが、レオウイルス単独と比較して抗がん有効性を改善することを示した(Gongら(2016);Zhaoら(2016);Kempら(2015)Viruses 8、4)。
【0238】
レオウイルスによって実証された有望な前臨床結果は、多くの臨床試験につながった。カナダの会社Oncolytics Biotech Inc.によって開発されたReolysin(登録商標)は、臨床開発における唯一の治療用野生型レオウイルスであり、単独でおよび他の治療法と組み合わせて多くの悪性腫瘍において抗がん活性を実証している。例えば、再発性悪性神経膠腫の治療におけるReolysin(登録商標)の第I相臨床試験(NCT00528684)では、レオウイルスの忍容性が良好であることが分かったが、第I/II相試験では、Reolysin(登録商標)が、プラチナ製剤化学療法に反応しなかった卵巣上皮がん、原発性腹膜がんまたは卵管がんの患者で正常細胞を損傷することなく腫瘍細胞を殺傷することができることが分かった(NCT00602277)。Reolysin(登録商標)の第II相臨床試験では、これが肺に転移性の骨および軟部組織肉腫の患者の治療に安全で有効であることが分かった(NCT00503295)。FOLFIRIおよびベバシズマブと組み合わせたReolysin(登録商標)の第I相臨床試験が、転移性結腸直腸がんの患者で現在活発である(NCT01274624)。化学療法薬ゲムシタビンと組み合わせたReolysin(登録商標)の第II相臨床試験が、進行性膵臓腺癌の患者で行われ(NCT00998322)、第II相臨床試験では、転移性去勢抵抗性前立腺がんにおいてドセタキセルと組み合わせたReolysin(登録商標)の治療能が調査され(NCT01619813)、第II相臨床試験では、進行性/転移性乳がん患者でReolysin(登録商標)とパクリタキセルの組み合わせが調査された(NCT01656538)。第III相臨床試験では、プラチナ製剤難治性頭頸部がんにおけるパクリタキセルおよびカルボプラチンと組み合わせたReolysin(登録商標)の有効性が調査され(NCT01166542)、この併用療法を使用した第II相臨床試験が、非小細胞肺がん(NCT00861627)および転移性黒色腫(NCT00984464)の患者で行われた。再発性または難治性の多発性骨髄腫患者における、カルフィルゾミブおよびデキサメタゾンと組み合わせたReolysin(登録商標)の第I相臨床試験が進行中である(NCT02101944)。
【0239】
集団の大部分に中和抗体が存在するため、レオウイルスの全身投与は治療能が限られており、レオウイルスとシクロスポリンAまたはシクロホスファミドなどの免疫抑制剤の同時投与でこれを克服できる(Gongら(2016))。レオウイルスのIV投与前にGM-CSFを投与すると、B16黒色腫腫瘍が有意に減少し、マウスの生存期間が延長された(Kempら(2015)Viruses 8、4)。担体細胞はまた、既存の免疫からウイルスを保護することにおける成功を実証している。例えば、リンホカイン活性化キラー細胞(LAK)およびDCが、卵巣がんのモデルでレオウイルスのための細胞担体として利用され、中和抗体からウイルスを首尾よく保護した(Zhaoら(2016))。NK細胞を含むPMBCは、レオウイルスを首尾よく輸送するだけでなく、レオウイルスによって刺激されて腫瘍標的を殺傷することが示されている(Zhaoら(2016))。別の研究は、DCとT細胞の両方が、ヒト血清の非存在下、インビトロでレオウイルスの有効な担体であるが、DCのみが、中和血清の存在下でウイルスを黒色腫細胞に首尾よく送達することを示した(Ilettら(2011)Clin.Cancer Res.17(9):2767~2776)。DCはまた、リンパ節B16tk黒色腫転移を有するマウスでレオウイルスを送達することができたが、ニートレオウイルスは完全に無効であった(Ilettら(2009)Gene Ther.16(5):689~699)。
【0240】
水疱性口内炎ウイルス(VSV)
水疱性口内炎ウイルス(VSV)は、ラブドウイルス(Rhabdoviridae)科のベシクロウイルス(Vesiculovirus)属のメンバーである。そのゲノムは、マイナスセンス極性を有する一本鎖RNAからなり、11,161ヌクレオチドからなり、ヌクレオカプシドタンパク質(N)、リンタンパク質(P)、マトリックスタンパク質(M)、糖タンパク質(G)および大きなポリメラーゼタンパク質(L)の5つの遺伝子をコードする(Bishnoiら(2018)Viruses 10(2)、90)。VSVは昆虫媒介生物によって感染し、疾患はウマ、ウシおよびブタを含む自然の宿主に限定され、ヒトでは軽度で無症候性の感染である(Bishnoiら(2018)Viruses 10(2)、90)。VSVは、感染細胞におけるアポトーシスの強力かつ迅速な誘導因子であり、化学療法抵抗性腫瘍細胞を感作させることが示されている。VSVは腫瘍血管系に感染し、腫瘍への血流の喪失、血液凝固および新生血管系の溶解をもたらすことが示されている。このウイルスはまた、低酸素組織における細胞変性効果および細胞溶解の複製および誘導が可能である。さらに、WT VSVは、さまざまな組織培養細胞株で高力価に増殖し、大規模なウイルス産生を促進し、小さくて操作が容易なゲノムを有し、宿主細胞形質転換のリスクなしに細胞質で複製する(Bishnoiら(2018);FeltおよびGrdzelishvili(2017)Journal of General Virology 98:2895~2911)。これらの因子が、このウイルスがヒトに対して病原性ではなく、一般にVSVに対する既存のヒト免疫がないという事実と共に、このウイルスをウイルス腫瘍療法の優れた候補にしている。
【0241】
VSVは遍在的に発現される細胞表面分子に付着して「汎親和性」になるが、WT VSVはI型IFN応答に感受性であるので、腫瘍のI型IFNシグナル伝達の欠陥または阻害に基づいて腫瘍選択性を示す(FeltおよびGrdzelishvili(2017))。しかしながら、VSVは、正常細胞の感染力のために、神経病原性を引き起こすことができるが、マトリックスタンパク質および/または糖タンパク質を修飾することによって弱毒化することができる。例えば、マトリックスタンパク質を欠失させることができる、またはマトリックスタンパク質の51位のメチオニン残基を欠失させる、もしくはアルギニンで置換することができる(Bishnoiら(2018);FeltおよびGrdzelishvili(2017))。別のアプローチは、VSVの糖タンパク質をリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)の糖タンパク質(rVSV-GP)に置き換える(Bishnoiら(2018);FeltおよびGrdzelishvili(2017))。VSVを、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(TK)などの自殺遺伝子を含むように、またはIL-4、IL-12、IFNβなどの免疫刺激性サイトカイン、もしくは顆粒球-マクロファージ-コロニー刺激因子1(GM-CSF1)などの共刺激剤を発現するように遺伝子改変して、腫瘍溶解活性を増強することもできる(Bishnoiら(2018)。NISおよびIFNβをコードするVSV-IFNβ-ナトリウム・ヨウ素共輸送体(VSV-IFNβ-NIS)は、現在、米国でいくつかの第I相臨床試験で試験されている(試験NCT02923466、NCT03120624およびNCT03017820についてはClinicalTrials.govで詳細を参照されたい)。
【0242】
水疱性口内炎ウイルス(VSV)は、さまざまなマウスがんモデルに静脈内(IV)投与すると、有効な腫瘍溶解性治療薬となる。ある研究では、VSV-GPが、免疫不全マウスモデルにおいて、皮下移植G62ヒト神経膠芽腫(gliomablastoma)細胞の腫瘍内治療、ならびに同所性U87ヒト神経膠腫細胞の静脈内治療で成功した。VSV-GPの腫瘍内注射は、頭蓋内CT2Aマウス神経膠腫細胞に対しても有効であった(Muikら(2014)Cancer Res.74(13):3567~3578)。VSV-GPが検出可能な中和抗体応答を誘発せず、この遺伝子改変腫瘍溶解性ウイルスがヒト補体に非感受性であり、実験期間中安定なままであることが分かった(Muikら(2014))。別の例では、VSV-GPの腫瘍内投与が、マウスモデルに移植されたヒトA375悪性黒色腫細胞、ならびにマウスB16黒色腫細胞株に有効に感染し、これらを殺傷することが分かった(Kimpelら(2018)Viruses 10、108)。しかしながら、腫瘍溶解性ウイルスの静脈内注射は成功せず、腫瘍内投与群でさえ、I型IFN応答のために腫瘍が全て最終的に成長した(Kimpelら(2018))。別の研究では、A2780ヒト卵巣がん細胞を含む皮下異種移植マウスモデルがVSV-GPの腫瘍内注射で治療され、腫瘍の寛解が神経毒性なしで最初に観察されたが、寛解は一時的であり、腫瘍は再発した。これは、I型IFN応答によるものであることが分かり、VSV-GPをJAK1/2阻害剤であるルキソリチニブと組み合わせることによって、抗ウイルス状態の逆転が観察された(Doldら(2016)Molecular Therapy-Oncolytics 3、16021)。しかしながら、I型IFN応答の阻害は、通常、安全上の懸念から、インビボで野生型VSVの弱毒化変異株では不可能であり、代替解決策が必要になる。
【0243】
研究によって、液性免疫が、抗ウイルス抗体を生じさせ、VSVの治療能を制限することが示されている。転移性腫瘍を有する動物への担体細胞でのVSVの反復投与は、裸のビリオンの注射と比較してはるかに高い治療有効性をもたらすことが分かり(Powerら(2007)Molecular Therapy 15(1):123~130)、担体細胞が循環抗体を回避する能力を実証している。同系CT26マウス結腸癌細胞はVSVに容易に感染し、マウスの肺腫瘍に感染するためのVSVの送達で、静脈内投与後、肺腫瘍に迅速に蓄積したが、周囲の正常な肺組織には蓄積せず、ウイルスを放出し、24時間以内に溶解を受けるまで残った(Powerら(2007))。全身細胞媒介送達は、担体細胞として異種A549細胞を使用しても得られ、VSVの細胞媒介送達が、免疫学的に適合性の同系CT26細胞および免疫学的に不適合性の異種A549細胞を使用して達成できることを示している(Powerら(2007))。L1210マウス白血病細胞も、VSVを肺腫瘍、ならびにマウスの後側腹部に位置する皮下腫瘍に首尾よく送達した(Powerら(2007))。これらのVSV感染白血病細胞を腫瘍のないマウスに投与した場合、正常組織で検出可能なウイルス複製はなく、腫瘍選択性を示した。
【0244】
別の研究では、マトリックスタンパク質のメチオニン51を欠いているため、IFNをコードするmRNAの核内輸送を遮断できないVSV-δ51が、B16ova腫瘍によって発現されるオボアルブミン抗原のSIINFEKLエピトープに特異的にトランスジェニックT細胞受容体を発現するOT-I CD8+T細胞に搭載された(Qiaoら(2008)Gene Ther.15(8):604~616)。この腫瘍溶解性ウイルス/細胞ベースの媒体の組み合わせが、免疫応答性C57B1/6マウスの肺のB16ova腫瘍に対して使用され、ウイルスまたはT細胞単独の使用と比較して有意な治療有効性の増加をもたらした。OT-I細胞内でVSVの検出可能な複製はなかったが、感染したT細胞をB16ova細胞と共培養した後、ウイルスが放出され、有効に感染し、腫瘍細胞内で複製され、腫瘍細胞を殺傷した。T細胞へのVSVの搭載は、インビトロでT細胞活性化を増加させ、インビボでT細胞の腫瘍への輸送を増加させることが示された(Qiaoら(2008))。
【0245】
アデノウイルス
アデノウイルス(Ads)は、1953年にWallace Roweおよび同僚らによって最初に発見され、1956年には子宮頸がんの治療について試験された、線状ゲノムを有する非エンベロープds-DNAウイルスである(Choiら(2015)J.Control.Release 10(219):181~191)。ヒトAdsは環境に遍在しており、交差感受性に基づいて57の血清型(Ad1~Ad57)、および病原性と組織向性に基づいて7つのサブグループ(A~G)に分類される。アデノウイルス血清型5(Ad5)は、腫瘍溶解性ウイルス療法に最も一般的に利用されるアデノウイルスである。ヒトでの感染症は軽度で風邪様症状をもたらし(Yokodaら(2018)Biomedicines 6、33)、全身投与は肝臓向性をもたらし、肝毒性をもたらすことができるが(Yamamotoら(2017)Cancer Sci.108:831~837)、Adsは治療目的のために安全であると見なされている。Adsは、コクサッキーウイルスおよびアデノウイルス受容体(CAR)に付着し、引き続いて細胞表面上のαvβ3およびαvβ5インテグリンとアデノウイルスペントンベースのArg-Gly-Aspトリペプチドモチーフ(RGD)との間の相互作用によって細胞に侵入する(Jiangら(2015)Curr.Opin.Virol.13:33~39)。CARはほとんどの正常細胞の表面で発現されるが、発現はがん細胞の種類によって極めて可変性である。他方、RGD関連インテグリンはがん細胞によって高度に発現されるが、正常細胞でははるかに低レベルで発現される(Jiangら(2015))。結果として、Adsは通常、RGDモチーフを介してがん細胞に標的化される。
【0246】
Adsは、形質転換細胞での高い形質導入効率、宿主ゲノムへの組込みの欠如/挿入突然変異の欠如、ゲノム安定性、大きな治療遺伝子をゲノムに挿入する能力、およびウイルスプロモーターのがん組織選択的プロモーターによる置換などの遺伝子操作を介した腫瘍選択性の能力のために、腫瘍溶解性ウイルスとして魅力的である(Yokodaら(2018)Biomedicines 6、33;Choiら(2015)J.Control.Release 10(219):181~191)。
【0247】
腫瘍特異的プロモーターを用いた腫瘍溶解性Adsの例としては、前立腺特異抗原プロモーターの制御下でのアデノウイルス初期領域1A(E1A)遺伝子による前立腺がん治療のためのCV706、およびE1A遺伝子発現の調節のためにテロメラーゼ逆転写酵素(TERT)プロモーターを利用するOBP-301が挙げられる(Yamamotoら(2017)Cancer Sci.108:831~837)。腫瘍選択性を誘導する別の方法は、AdゲノムのE1領域に突然変異を導入することであり、ここでは、欠落している遺伝子が、網膜芽細胞腫(Rb)経路の異常またはp53突然変異などの、腫瘍細胞に一般的に見られる遺伝子突然変異によって機能的に補完される(Yamamotoら(2017)Cancer Sci.108:831~837)。例えば、腫瘍溶解性Ads ONYX-015およびH101は、p53を不活化するE1B55K遺伝子の欠失を有する。これらの突然変異株は、正常なアポトーシス防御経路を遮断できず、欠陥p53腫瘍抑制経路で新生物細胞の感染を介して腫瘍選択性をもたらす(Yamamotoら(2017)Cancer Sci.108:831~837;Uusi-Kerttulaら(2015)Viruses 7:6009~6042)。E1AΔ24は、E1A遺伝子に24bpの突然変異を含み、Rb結合ドメインを破壊し、Rb経路突然変異を伴うがん細胞でウイルス複製を促進する腫瘍溶解性Adである。ICOVIR-5は、E2FプロモーターによるE1A転写制御、E1AのΔ24突然変異、およびアデノウイルスファイバーへのRGD-4C挿入を組み合わせた腫瘍溶解性Adである(Yamamotoら(2017)Cancer Sci.108:831~837;Uusi-Kerttulaら(2015))。デルタ24-RGD、またはDNX-2401は、RGDモチーフの挿入によってΔ24骨格が改変された腫瘍溶解性Adであり、インビトロおよびインビボで腫瘍溶解性効果の増強を実証した(Jiangら(2015))。
【0248】
腫瘍選択性を改善するための代替戦略は、細胞外マトリックス(ECM)を標的化することによって、固形腫瘍の物理的障壁を克服することを伴う。例えば、ヒアルロニダーゼを発現する腫瘍溶解性AdであるVCN-01は、マウスがんモデルで有望であった。Adsはまた、ECMを破壊するためにリラキシンを発現するように操作されている(Yamamotoら(2017)Cancer Sci.108:831~837;ShawおよびSuzuki(2015)Curr.Opin.Virol.21:9~15)。シトシンデアミナーゼ(CD)およびHSV-1チミジンキナーゼ(TK)などの自殺遺伝子を発現するAdsは、GM-CSFを発現するONCOS-102などの免疫刺激性サイトカインを発現するAdsと同様に、インビボで増強された抗腫瘍有効性を示した(Yamamotoら(2017)Cancer Sci.108:831~837;ShawおよびSuzuki(2015)Curr.Opin.Virol.21:9~15)。抗CTLA4抗体を発現するΔ24ベースの腫瘍溶解性Adは、前臨床試験で有望であった(Jiangら(2015))。
【0249】
アデノウイルスH101(Oncorine(登録商標))は、2005年に進行性上咽頭がんの患者を治療するために、化学療法と組み合わせて中国で臨床使用が承認された最初の腫瘍溶解性Adであった。前臨床研究で示された有望性により、多くの臨床試験が、多種多様ながんを治療するための腫瘍溶解性アデノウイルスの使用を調査してきた。例えば、進行中および過去の臨床試験には、転移性膵臓がんの患者におけるIL-12をコードするAd5(NCT03281382);膵臓腺癌、卵巣がん、胆管癌および結腸直腸がんの患者におけるTMX-CD40Lおよび41BBLを発現する免疫刺激性Ad5(LOAd703)(NCT03225989);膵臓がん患者におけるゲムシタビンおよびnab-パクリタキセルと組み合わせたLOAd703(NCT02705196);膵臓腺癌を含む進行性固形腫瘍の患者におけるゲムシタビンおよびAbraxane(登録商標)と組み合わせたヒトPH20ヒアルロニダーゼ(VCN-01)をコードする腫瘍溶解性アデノウイルス(NCT02045602;NCT02045589);肝細胞癌の患者における、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)プロモーターを含む、腫瘍選択性を有する腫瘍溶解性AdであるTelomelysin(登録商標)(OBP-301)(NCT02293850);肝細胞癌の患者における肝動脈化学塞栓術(TACE)と組み合わせたE1B遺伝子欠失Ad5(NCT01869088);膀胱がんの患者における、GM-CSFを発現し、E1Aの発現を駆動するがん特異的E2F-1プロモーターを含む腫瘍溶解性AdであるCG0070(NCT02365818;NCT01438112);結腸がん、非小細胞肺がん、膀胱がんおよび腎細胞癌の患者における、Ad11p/Ad3キメラグループB腫瘍溶解性ウイルスであるEnadenotucirev(Colo-Ad1)(NCT02053220);ならびに神経膠芽腫の患者におけるテモゾロミド(NCT01956734)またはIFNγ(NCT02197169)と組み合わせたDNX-2401(Ad5 E1AΔ24RGD)を伴う研究が含まれる。
【0250】
他の腫瘍溶解性ウイルスと同様に、Adsは中和抗体の発達により、全身投与した場合に低い治療有効性に悩まされ、血清有病率が高いため、一部の集団の90%もがAdsに対する事前免疫を有していると推定される(Uusi-Kerttulaら(2015)Viruses 7:6009~6042)。さらに、Adsの非特異的肝臓隔離は、肝毒性をもたらす(Choiら(2015))。PEG、正に帯電したアルギニングラフト生体還元性ポリマー(ABP)、PAMAMG5およびその他のナノ材料などのポリマーを利用して、ウイルスカプシドタンパク質を隠し、抗ウイルス免疫応答および非特異的肝臓蓄積を軽減し、腫瘍蓄積を増加させることができる(Choiら(2015))。免疫系を回避するための他のアプローチは、腫瘍溶解性Adsを送達するための担体媒体細胞の使用を伴う。例えば、T細胞が、同所性神経膠腫幹細胞(GSC)ベースの異種移植マウスモデルで、インビトロおよびインビボで神経膠芽腫細胞にデルタ24-RGD Adを送達するために使用された(Balversら(2014)Viruses 6:3080~3096)。ウイルス搭載T細胞の全身投与は、腫瘍内ウイルス送達をもたらした(Balversら(2014))。担体/媒体細胞によるAdの送達を調査する臨床試験には、悪性神経膠腫を治療するための腫瘍溶解性Adを搭載した神経幹細胞(NCT03072134);転移性乳がんの患者におけるHer2を発現するAdに感染した自家樹状細胞(NCT00197522);ならびに転移性および難治性の固形腫瘍を有する小児および成人におけるICOVIR5に感染した自家間葉系幹細胞(MSC)(NCT01844661)の使用が含まれる。
【0251】
ポリオウイルス
ポリオウイルス(PV)は、ピコルナウイルス(Picornaviridae)科のエンテロウイルス(Enterovirus)属に属し、プラスセンス一本鎖RNAゲノムを有する。PV感染は、脊髄および運動ニューロンに対するPVの向性のために、重度の神経学的症候群の急性灰白髄炎もたらす(BrownおよびGromeier(2015)Discov.Med.19(106):359~365)。PVは、活発な抗ウイルスIFN応答の存在下で堅牢な複製能力および細胞傷害性を保持し、免疫刺激ウイルス細胞傷害性効果を増幅するための数ラウンドのウイルス複製を可能にするため、臨床応用に有用である(BrownおよびGromeier(2015)Discov.Med.19(106):359~365)。PVはまた、宿主細胞ゲノムに組み込まれない(Yla-Peltoら(2016)Viruses 8、57)。
【0252】
PV宿主細胞侵入は、PV受容体(PVR)としても知られるIgスーパーファミリー細胞接着分子CD155および神経膠芽腫などの固形腫瘍で広く過剰発現されるネクチン様分子5(Necl5)によって媒介される(BrownおよびGromeier(2015)Curr.Opin.Virol.13:81~85)。CD155はまた、結腸直腸癌、肺腺癌、乳がんおよび黒色腫でも発現され、マクロファージおよび樹状細胞などの抗原提示細胞(APC)でも発現される(Brownら(2014)Cancer 120(21):3277~3286)。
【0253】
PVの配列内リボソーム進入部位(IRES)は、PV RNAゲノムの翻訳開始を促進することを担い、PVの神経病原性に関与している。Sabin血清型に由来する弱毒生PVワクチンは、IRESに重大な弱毒化点突然変異を有する(BrownおよびGromeier(2015)Curr.Opin.Virol.13:81~85)。同族PV IRESがヒトライノウイルス2(HRV2)のもので置き換えられた1型(Sabin)弱毒生PVワクチンである高度に弱毒化されたポリオ/ライノウイルス組換えPVSRIPOは、親PVと比較して神経毒性/神経病原性を示さないが、GBM細胞に対するがん細胞の細胞傷害性および特異性を保持している(BrownおよびGromeier(2015)Curr.Opin.Virol.13:81~85;BrownおよびGromeier(2015)Discov.Med.19(106):359~365)。PVSRIPOは、バルク腫瘍の直接溶解ではなく、抗腫瘍免疫応答を誘発することによって腫瘍退縮を引き起こし、再発性神経膠芽腫(GBM)の治療に関する臨床試験で有望であった(NCT01491893)(BrownおよびGromeier(2015)Curr.Opin.Virol.13:81~85;BrownおよびGromeier(2015)Discov.Med.19(106):359~365)。現在、第1b相臨床試験が、小児の再発性悪性神経膠腫を治療するためのPVSRIPOの使用を調査しており(NCT03043391)、第2相臨床試験が、再発性悪性神経膠腫を有する成人患者で、単独でまたは化学療法薬ロムスチンと組み合わせたPVSRIPOの使用を調査している(NCT02986178)。
【0254】
単純ヘルペスウイルス
単純ヘルペスウイルス(HSV)は、ヘルペスウイルス(Herpesviridae)科に属し、ウイルス複製に必須ではない多くの遺伝子を含む大きな線状二本鎖DNAゲノムを有するので、遺伝子操作の理想的な候補となっている。他の利点には、広範囲の細胞型に感染する能力、アシクロビルおよびガンシクロビルなどの抗ウイルス薬に対する感受性、ならびに挿入突然変異の欠如が含まれる(Sokolowskiら(2015)Oncolytic Virotherapy 4:207~219;Yinら(2017)Front.Oncol.7:136)。HSVには、HSV I型(HSV-1)とII型(HSV-2)の2種類があり、腫瘍溶解性HSVの大部分はHSV-1に由来する。ヒトでは、HSV-1は単純疱疹疾患を引き起こし、細胞表面上のネクチン、糖タンパク質およびヘルペスウイルス侵入メディエーター(HVEM)に結合することによって、上皮細胞、ニューロンおよび免疫細胞に感染する(KohlhappおよびKaufman(2016)Clin.Cancer Res.22(5):1048~1054)。
【0255】
現在までに、多くの異なる腫瘍溶解性HSV-1ウイルスが作製されている。例えば、HSV-1は、乳がんおよび卵巣がん、胃がんおよび神経膠芽腫などのHER-2を過剰発現する腫瘍を標的化する抗HER-2抗体トラスツズマブを発現するように操作されている。トラスツズマブをコードする遺伝子が、HSV-1 gD糖タンパク質遺伝子内の2つの領域に挿入され、2つの腫瘍溶解性HSV、R-LM113およびR-LM249が生み出された。R-LM113およびR-LM249は、ヒト乳がんおよび卵巣がん、ならびにHER2+神経膠芽腫のマウスモデルに対する前臨床活性を実証した。R-LM249は、間葉系幹細胞(MSC)を担体細胞として使用して全身投与され、マウスモデルにおいて卵巣がんおよび乳がんの肺および脳転移に対して治療効果を発揮した(Campadelli-Fiumeら(2016)Viruses 8、63)。別の腫瘍溶解性HSV-1、dlsptk HSV-1は、チミジンキナーゼ(TK)のウイルス相同体をコードするユニークなlong 23(UL23)遺伝子の欠失を含み、hrR3 HSV-1突然変異株は、遺伝子UL39によってコードされる、ICP6としても知られているリボヌクレオチドレダクターゼ(RR)の大きなサブユニットのLacZ挿入突然変異を含む。結果として、dlsptkおよびhrR3 HSV-1突然変異株は、それぞれTKおよびRRを過剰発現するがん細胞でのみ複製できる(Sokolowskiら(2015)Oncolytic Virotherapy 4:207~219)。
【0256】
HF10は、UL43、UL49.5、UL55、UL56および潜伏関連転写物をコードする遺伝子を欠き、UL53およびUL54を過剰発現する、自然突然変異腫瘍溶解性HSV-1である。HF10は、前臨床研究で有望な結果を示し、高い腫瘍選択性、高いウイルス複製、強力な抗腫瘍活性、および好ましい安全性プロファイルを実証した(Eissaら(2017)Front.Oncol.7:149)。HF10を調査する臨床試験には、難治性頭頸部がん、皮膚の扁平上皮癌、乳癌および悪性黒色腫の患者における第I相試験(NCT01017185)、ならびに切除不能な膵臓がんの患者における化学療法(ゲムシタビン、Nab-パクリタキセル、TS-1)と組み合わせたHF10の第I相試験(NCT03252808)が含まれる。HF10は抗CTLA-4抗体イピリムマブとも組み合わせられて、ステージIIIb、IIIcまたはIVの切除不能または転移性黒色腫の患者の治療有効性を改善した(NCT03153085)。第II相臨床試験は、現在、切除可能なステージIIIb、IIIcおよびIVの黒色腫の患者におけるHF10と抗PD-1抗体ニボルマブの組み合わせ(NCT03259425)、ならびに切除不能または転移性黒色腫の患者におけるイピリムマブとの組み合わせ(NCT02272855)を調査している。パクリタキセルとHF10の併用療法は、いずれかの治療単独と比較して、腹膜結腸直腸がんモデルで優れた生存率をもたらし、HF10とエルロチニブの併用治療は、HF10またはエルロチニブ単独のいずれかよりもインビトロおよびインビボで膵臓異種移植片に対する改善された活性をもたらした(Eissaら(2017)Front.Oncol.7:149)。
【0257】
以前はOncoVEXGM-CSFとして知られていたタリモジーン・ラハーパレプベック(Imlygic(登録商標)、T-VEC)は、HSV-1のJS1株から作製され、顆粒球マクロファージ刺激因子(GM-CSF)を発現するように遺伝子操作された、進行性黒色腫を治療するためのFDA承認腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスである(Arefら(2016)Viruses 8:294)。T-VECでは、GM-CSF発現が抗腫瘍細胞傷害性免疫応答を増強し、感染細胞タンパク質34.5(ICP34.5)遺伝子の両コピーの欠失が、正常組織での複製を抑制し、ICP47遺伝子の欠失が、MHCクラスI分子の発現を増加させ、感染細胞上での抗原提示を可能にする(Eissaら(2017))。T-VECは、がん細胞の表面上にあるネクチンに結合することによって腫瘍選択性を示し、破壊された発癌性および抗ウイルス性のシグナル伝達経路、特にプロテインキナーゼR(PKR)およびI型IFN経路を利用することによって腫瘍細胞で優先的に複製する。正常細胞では、PKRがウイルス感染によって活性化され、次いで、これが真核生物開始因子-2Aタンパク質(eIF-2A)をリン酸化し、これを不活化し、今度は細胞タンパク質合成を阻害し、細胞増殖を遮断し、ウイルス複製を防止する。野生型HSVは、eIF-2Aを脱リン酸化するホスファターゼを活性化するICP34.5タンパク質の発現により、抗ウイルス応答を回避し、感染細胞でのタンパク質合成を回復させる。したがって、ICP34.5の欠失は、正常細胞におけるT-VECのウイルス複製を排除する。しかしながら、がん細胞のPKR-eIF-2A経路が破壊され、継続的な細胞増殖および阻害されないウイルス複製を可能にする(KohlhappおよびKaufman(2016)Clin.Cancer Res.22(5):1048~1054;Yinら(2017)Front.Oncol.7:136)。GM-CSFの発現は、樹状細胞蓄積を引き起こし、抗原提示を促進し、T細胞応答をプライミングすることによって、T-VECの免疫原性を改善する(KohlhappおよびKaufman(2016)Clin.Cancer Res.22(5):1048~1054)。
【0258】
T-VECは、乳がん、結腸直腸腺癌、黒色腫、前立腺がんおよび神経膠芽腫を含むさまざまながん細胞株で優先的複製を示している。臨床試験には、例えば、膵臓がん(NCT03086642、NCT00402025)、再発性乳がん(NCT02658812)、小児の進行性非CNS腫瘍(NCT02756845)、非黒色腫皮膚がん(NCT03458117)、筋層非浸潤性膀胱移行上皮癌(NCT03430687)、および悪性黒色腫(NCT03064763)におけるT-VEC、ならびに転移性トリプルネガティブ乳がんおよび肝転移を伴う転移性結腸直腸がんの患者におけるアテゾリズマブと組み合わせた(NCT03256344)、トリプルネガティブ乳がんの患者におけるパクリタキセルと組み合わせた(NCT02779855)、難治性リンパ腫または進行性/難治性非黒色腫皮膚がんの患者におけるニボルマブと組み合わせた(NCT02978625)、進行性頭頸部がんの患者におけるシスプラチンおよび放射線療法と組み合わせた(NCT01161498)、および肝腫瘍(NCT02509507)、頭頸部癌(NCT02626000)、肉腫(NCT03069378)および黒色腫(NCT02965716、NCT02263508)の患者におけるペンブロリズマブと組み合わせたT-VECを調査するものが含まれる。
【0259】
GM-CSFに加えて、IL-12、IL-15、IL-18、TNFα、IFNα/βおよびfms様チロシンキナーゼ3リガンドをコードするものを含む、他の多数の免疫刺激遺伝子が腫瘍溶解性HSVに挿入され、治療有効性の増加をもたらしている(Sokolowskiら(2015);Yinら(2017))。
【0260】
別の腫瘍溶解性HSV-1、R3616は、ICP34.5をコードするRL1(γ134.5としても知られている)遺伝子の両コピーの欠失を含み、PKR経路が破壊されたがん細胞を標的化する。NV1020(またはR7020)は、UL55、UL56、ICP4、RL1およびRL2遺伝子の欠失を含むHSV-1突然変異株であり、減少した神経毒性およびがん選択性をもたらす。NV1020は、頭頸部扁平上皮癌、類表皮癌および前立腺腺癌のマウスモデルで有望な結果を示した(Sokolowskiら(2015))。さらに、臨床試験は、肝臓に転移性の結腸直腸がんにおけるNV1020の安全性および有効性を調査した(NCT00149396およびNCT00012155)。
【0261】
G207(またはMGH-1)は、RL1(γ134.5)欠失およびUL39神経毒性遺伝子へのLacZ不活化挿入を有する別のHSV-1突然変異株である。G207を利用した臨床研究には、進行性または再発性テント上脳腫瘍の小児における単独でのまたは単回放射線投与と合わせたG207の調査(NCT02457845)、再発性脳腫がん(神経膠腫、星細胞腫、神経膠芽腫)の患者におけるG207の安全性および有効性の調査(NCT00028158)、ならびに悪性神経膠腫患者におけるG207投与とそれに続く放射線療法の効果の調査(NCT00157703)が含まれる。
【0262】
G207は、ICP47をコードする遺伝子にさらなる欠失を含むG47Δを作製するために使用された。他のHSV-1由来腫瘍溶解性ウイルスには、RL1の欠失を含むが、インタクトなUL39遺伝子を有し、活発に分裂している細胞で選択的に複製するHSV1716、ならびにUL48およびRL2遺伝子の挿入を有し、最初期遺伝子ウイルス遺伝子の発現の喪失およびがん細胞の選択性が得られるKM100突然変異株が含まれる(Sokolowskiら(2015);Yinら(2017)Front.Oncol.7:136)。
【0263】
集団の大部分はHSV-1に対する既存の免疫を有するので、腫瘍溶解性HSVを送達するための担体細胞の使用はそれらの治療能を改善することができる。例えば、ヒト腹膜中皮細胞(MC)が、HF10のための担体細胞として使用され、インビトロおよび卵巣がんのマウス異種移植モデルでの卵巣がん細胞の効率的な殺傷をもたらした(Fujiwaraら(2011)Cancer Gene Therapy 18:77~86)。
【0264】
腫瘍溶解性ウイルスはHSV-2にも由来している。例えば、FusOn-H2は、セリン/スレオニンプロテインキナーゼ(PK)ドメインをコードするICP10遺伝子のN末端領域の欠失を有するHSV-2腫瘍溶解性ウイルスである。このPKは、GTPアーゼ活性化タンパク質Ras-FAPのリン酸化を担っており、Ras/MEK/MAPK分裂促進経路を活性化し、効率的なHSV-2複製に必要なc-Fosを誘導および安定化する。正常細胞は通常、不活化Rasシグナル伝達経路を有する。したがって、FusOn-H2は、活性化Rasシグナル伝達経路を有する腫瘍細胞でのみ複製することによって腫瘍選択性を示す(Fuら(2006)Clin.Cancer Res.12(10):3152~3157)。FusOn-H2は、膵臓がん異種移植片(Fuら(2006)Clin.Cancer Res.12(10):3152~3157)、シクロホスファミドと組み合わせてルイス肺癌異種移植片、ならびに同系マウス乳腺腫瘍および神経芽細胞腫(Liら(2007)Cancer Res.67:7850~7855)に対する活性を実証した。
【0265】
ポックスウイルス
ワクシニアウイルス
ワクシニアウイルスの例としては、それだけに限らないが、Lister(Elstreeとしても知られている)、ニューヨーク市保健局(NYCBH)、Dairen、Ikeda、LC16M8、ウエスタンリザーブ(WR)、コペンハーゲン(Cop)、Tashkent、Tian Tan、Wyeth、Dryvax、IHD-J、IHD-W、Brighton、Ankara、改変ワクシニアAnkara(MVA)、Dairen I、LIPV、LC16M0、LIVP、WR 65-16、EM63、Bern、Paris、CVA382、NYVAC、ACAM2000およびConnaught株が挙げられる。ワクシニアウイルスは、創傷およびがん遺伝子療法での使用に特に適したものとなるさまざまな特徴を有する腫瘍溶解性ウイルスである。例えば、ワクシニアは細胞質ウイルスであるため、ライフサイクル中にそのゲノムを宿主ゲノムに挿入することはない。宿主の転写機構を必要とする他の多くのウイルスとは異なり、ワクシニアウイルスは、ウイルスゲノムにコードされている酵素を使用して、宿主細胞の細胞質における自身の遺伝子発現を支持することができる。ワクシニアウイルスはまた、宿主および細胞の種類の範囲が広い。特に、ワクシニアウイルスは、腫瘍および/または転移を含み、同様に創傷組織および細胞を含む免疫特権細胞または免疫特権組織に蓄積することができる。しかし、他の腫瘍溶解性ウイルスとは異なり、ワクシニアウイルスは、典型的には、対象の免疫系の活動によってウイルスが投与される対象から排除できるため、アデノウイルスなどの他のウイルスよりも毒性が低くなる。したがって、ウイルスは、典型的には、対象の免疫系の活動によってウイルスが投与される対象から排除することができるが、それにもかかわらず、このような免疫特権領域はから宿主の免疫系から隔離されているため、ウイルスが腫瘍などの免疫特権細胞および組織において蓄積、生存および増殖することができる。
【0266】
ワクシニアウイルスは、異種遺伝子を挿入することによって容易に改変することもできる。これにより、ウイルスの弱毒化をもたらす、および/または治療用タンパク質の送達を可能にすることができる。例えば、ワクシニアウイルスゲノムは外来遺伝子の大きな環境収容力を有し、最大25kbの外因性DNAフラグメント(ワクシニアゲノムサイズのおよそ12%)を挿入できる。ワクシニア株のいくつかのゲノムは完全に配列決定されており、多くの必須遺伝子および非必須遺伝子が特定されている。異なる株間の高い配列相同性により、あるワクシニア株からのゲノム情報を、他の株で改変ウイルスを設計および作製するために使用することができる。最後に、遺伝子工学による改変ワクシニア株の製造技術は十分に確立されている(Moss(1993)Curr.Opin.Genet.Dev.3:86~90;BroderおよびEarl、(1999)Mol.Biotechnol.13:223~245;Timiryasovaら(2001)Biotechniques 31:534~540)。
【0267】
さまざまなワクシニアウイルスが抗腫瘍活性を示すことが実証されている。例えば、ある研究で、非転移性結腸腺癌細胞を有するヌードマウスに、ワクシニア成長因子の欠失およびチミジンキナーゼ遺伝子座に挿入された増強緑色蛍光タンパク質を有することによって改変されたワクシニアウイルスのWR株が全身注射された。この改変ウイルスには外因性治療遺伝子が欠如しているにもかかわらず、ウイルスは1つの完全な応答を含む抗腫瘍効果を有することが観察された(McCartら(2001)Cancer Res.1:8751~8757)。別の研究では、黒色腫患者における第III相臨床試験で、ワクシニア黒色腫腫瘍溶解産物(VMO)が黒色腫陽性リンパ節の近くの部位に注射された。対照として、ニューヨーク市保健局株ワクシニアウイルス(VV)が黒色腫患者に投与された。VMOで治療された黒色腫患者は、未治療の患者よりも生存率が高かったが、VV対照で治療された患者と同様であった(Kimら(2001)Surgical Oncol.10:53~59)。
【0268】
ワクシニアウイルスのLIVP株も、腫瘍の診断および治療、ならびに創傷および炎症を起こした組織および細胞の治療に使用されてきた(例えば、Linら(2007)Surgery 142:976~983;Linら(2008)J.Clin.Endocrinol.Metab.93:4403~7;Kellyら(2008)Hum.Gene Ther.19:774~782;Yuら(2009)Mol.Cancer Ther.8:141~151;Yuら(2009)Mol.Cancer 8:45;米国特許第7,588,767号明細書;米国特許第8,052,968号明細書;および米国特許出願公開第2004/0234455号明細書参照)。例えば、静脈内投与された場合、LIVP株は、インビボで様々な遺伝子座の内部腫瘍に蓄積することが実証されており、それだけに限らないが、乳房腫瘍、甲状腺腫瘍、膵臓腫瘍、胸膜中皮腫の転移性腫瘍、扁平上皮癌、肺癌および卵巣腫瘍を含むさまざまな組織起源のヒト腫瘍を有効に治療することが実証されている。弱毒化形態を含むワクシニアのLIVP株は、ワクシニアウイルスのWR株よりも低い毒性を示し、治療された腫瘍を有する動物モデルの増加したより長い生存をもたらす(例えば、米国特許出願公開第2011/0293527号明細書参照)。
【0269】
ワクシニアは細胞質ウイルスであるため、ライフサイクル中にそのゲノムを宿主ゲノムに挿入することはない。ワクシニアウイルスは、単一の連続ポリヌクレオチド鎖で構成される、長さおよそ180,000塩基対の線状二本鎖DNAゲノムを有する(Baroudyら(1982)Cell 28:315~324)。この構造は、10,000塩基対の逆方向末端反復(ITR)が存在するためである。ITRはゲノム複製に関与している。ゲノム複製は自己プライミングを伴うと考えられており、高分子量コンカテマー(感染細胞から隔離された)の形成をもたらし、その後、これが切断および修復されてウイルスゲノムを形成する(例えば、Traktman,P.、第27章、Poxvirus DNA Replication、775~798頁、DNA Replication in Eukaryotic Cells、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1996))。ゲノムはおよそ250個の遺伝子を含む。一般に、非セグメント化非感染性ゲノムは、中央に位置する遺伝子がウイルス複製に必須である(したがって保存されている)が、2つの末端近くの遺伝子が宿主範囲および病原性などのより周辺の機能に影響を及ぼすように配置される。ワクシニアウイルスは、一般原則として重複しないセットに配置されたオープンリーディングフレーム(ORF)を利用することによって、差次的遺伝子発現を実践する。
【0270】
ワクシニアウイルスは、広範な宿主および細胞の種類の範囲、ならびに低い毒性を含む、がん遺伝子療法およびワクチン接種に使用するためにさまざまな特徴を有する。例えば、ほとんどの腫瘍溶解性ウイルスは自然病原体であるが、ワクシニアウイルスは天然痘ワクチンとして広範に適用されているという独特の歴史があり、ヒトにおける安全性の確立された実績をもたらしている。ワクシニア投与に関連する毒性は、症例の0.1%未満で発生し、免疫グロブリン投与で有効に対処できる。さらに、ワクシニアウイルスは、外来遺伝子の大きな環境収容力(最大25 kbの外因性DNAフラグメント、ワクシニアゲノムサイズのおよそ12%をワクシニアゲノムに挿入できる)、および他の株の改変ウイルスを設計および作製するための異なる株間での高い配列相同性を有する。遺伝子工学による改変ワクシニア株の製造技術は十分に確立されている(Moss(1993)Curr.Opin.Genet.Dev.3:86~90;BroderおよびEarl(1999)Mol.Biotechnol.13:223~245;Timiryasovaら(2001)Biotechniques 31:534~540)。ワクシニアウイルス株は、他の臓器に感染することなく、固形腫瘍に特異的にコロニー形成することが示されている(例えば、Zhangら(2007)Cancer Res.67:10038~10046;Yuら(2004)Nat.Biotech.22:313~320;Heoら(2011)Mol.Ther.19:1170~1179;Liuら(2008)Mol.Ther.16:1637~1642;Parkら(2008)Lancet Oncol.9:533~542参照)。
【0271】
コクサッキーウイルス
コクサッキーウイルス(CV)は、エンテロウイルス(Enterovirus)属およびピコルナウイルス(Picornaviridae)科に属し、宿主細胞ゲノムに組み込まれないプラスセンス一本鎖RNAゲノムを有する。CVは、マウスにおける高価に基づいてA群とB群に分類され、ヒトで軽度の上気道感染症を引き起こすことができる(Bradleyら(2014)Oncolytic Virotherapy 3:47~55)。腫瘍溶解性ウイルス療法のために一般的に調査されているコクサッキーウイルスには、弱毒化コクサッキーウイルスB3(CV-B3)、CV-B4、CV-A9およびCV-A21が含まれる(Yla-Peltoら(2016)Viruses 8、57)。CV-A21は、黒色腫、乳がん、結腸がん、子宮内膜がん、頭頸部がん、膵臓がんおよび肺がんを含む腫瘍細胞、ならびに多発性骨髄腫および悪性神経膠腫ではるかに高いレベルで発現されるICAM-1(またはCD54)およびDAF(またはCD55)受容体を介して細胞に感染する。CV-A21は、インビトロで悪性骨髄腫、黒色腫、前立腺がん、肺がん、頭頸部がんおよび乳がん細胞株に対して、ならびにインビボでヒト黒色腫異種移植片を有するマウスで、ならびにマウスにおける原発性乳がん腫瘍およびその転移に対して、有望な前臨床抗がん活性を示している(Yla-Peltoら(2016);Bradleyら(2014))。CV-A21の誘導株であるCV-A21-DAFvは、CAVATAK(商標)としても知られており、DAFを発現するICAM-1ネガティブ横紋筋肉腫(RD)細胞でCV-A21を連続継代することによって、野生型Kuykendall株から作製され、親株と比較して増強された腫瘍溶解特性を有することが分かった。CAVATAK(商標)はDAF受容体にのみ結合し、がん細胞に対する増強された向性に寄与することができる(Yla-Peltoら(2016))。
【0272】
CV-A21はまた、塩酸ドキソルビシンと組み合わせて研究されており、ヒト乳がん、結腸直腸がんおよび膵臓がん細胞株に対して、ならびにヒト乳がんの異種移植マウスモデルにおいて、単独治療と比較して増強した腫瘍溶解効率を示している(Yla-Peltoら(2016))。集団のかなりの部分がCVに対する中和抗体を既に発達させているため、CV-A21療法は、シクロホスファミドなどの免疫抑制剤と組み合わされており(Bradleyら(2014))、媒体細胞を介した送達の優れた候補である。
【0273】
臨床試験では、ステージIIIcまたはIVの悪性黒色腫の患者におけるCAVATAK(商標)(NCT01636882;NCT00438009;NCT01227551)、および筋層非浸潤性膀胱がんの患者における単独でのまたは低用量マイトマイシンCと組み合わせたCAVATAK(商標)(NCT02316171)の使用が調査されている。臨床試験はまた、黒色腫、乳がんおよび前立腺がんを含む固形腫瘍の治療におけるCV-A21の静脈内投与の効果も研究している(NCT00636558)。進行中の臨床試験には、非小細胞肺がん(NCT02824965、NCT02043665)および膀胱がん(NCT02043665)の患者を治療するための単独でのまたはペンブロリズマブと組み合わせたCAVATAK(商標);ブドウ膜黒色腫および肝転移の患者(NCT03408587)および進行性黒色腫の患者(NCT02307149)におけるイピリムマブと組み合わせたCAVATAK(商標);ならびに進行性黒色腫の患者におけるペンブロリズマブと組み合わせたCAVATAK(商標)(NCT02565992)の調査が含まれる。
【0274】
セネカバレーウイルス
セネカバレーウイルス(SVV)は、ピコルナウイルス(Picornaviridae)科のセネカウイルス(Senecavirus)属のメンバーであり、プラスセンス一本鎖RNAゲノムを有し、神経芽細胞腫、横紋筋肉腫、髄芽腫、ウィルムス腫瘍、神経膠芽腫および小細胞肺がんを含む神経内分泌がんに選択的である(Milesら(2017)J.Clin.Invest.127(8):2957~2967;Qianら(2017)J.Virol.91(16):e00823-17;Burke,M.J.(2016)Oncolytic Virotherapy 5:81~89)。研究により、炭疽毒素受容体1(ANTXR1)がSVVの受容体として特定され、これは、正常細胞と比較して腫瘍細胞の表面上で頻繁に発現されるが、以前の研究で、シアル酸が、小児神経膠腫モデルにおけるSVV受容体の構成要素であることができることも示されている(Milesら(2017))。SVV分離株001(SVV-001)は、静脈内投与後に固形腫瘍を標的化し、これに浸透できる強力な腫瘍溶解性ウイルスであり、挿入突然変異の欠如、ならびにがん細胞に対する選択的向性、ならびにヒトおよび動物における非病原性のために魅力的である。さらに、ヒトでの以前の曝露はまれであり、既存の免疫率が低い(Burke.M.J.(2016)Oncolytic Virotherapy 5:81~89)。
【0275】
SVV-001は、小細胞肺がん、副腎皮質癌、神経芽細胞腫、横紋筋肉腫およびユーイング肉腫細胞株に対する有望なインビトロ活性、ならびに小児GBM、髄芽腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫および神経芽細胞腫の同所性異種移植マウスモデルにおけるインビボ活性を示している(Burke(2016))。Neotropix(登録商標)によって開発された腫瘍溶解性SVV-001であるNTX-010は、単独でまたはシクロホスファミドと組み合わせて、再発/難治性固形腫瘍の小児患者を治療するために実行可能で許容できることが分かっているが、中和抗体の発達によりその治療有効性が制限された(Burkeら(2015)Pediatr.Blood Cancer 62(5):743~750)。臨床試験には、神経内分泌特徴を有する固形腫瘍の患者におけるSV-001(NCT00314925)、再発もしくは難治性神経芽細胞腫、横紋筋肉腫、ウィルムス腫瘍、網膜芽細胞腫、副腎皮質癌またはカルチノイド腫瘍の患者におけるシクロホスファミドと組み合わせたNTX-010/SVV-001(NCT01048892)、および化学療法後の小細胞肺がんの患者におけるNTX-010/SVV-001(NCT01017601)を利用した研究が含まれる。
【0276】
C.細胞媒体およびウイルスと対象のマッチングについてのアッセイ
ウイルス療法を促進するために、ウイルス送達媒体として機能する細胞は、ウイルスの増幅を促進し、それによって腫瘍/がんの感染およびその後の腫瘍溶解の能力を増加させる;ならびに自然(例えば、NK細胞媒介)および適応(例えば、T細胞媒介)免疫障壁、および/または混合自然/適応免疫障壁(例えば、γδ T細胞媒介)を克服するなどの、インビボでの一定の特性を示す能力に基づいて選択される。T細胞は、αβおよびγδ T細胞受容体(TCR)の表面発現によって区別される2つの主要な集団に細分される。ガンマデルタ(γδ)T細胞は、「型破りな」T細胞のプロトタイプであり、T細胞の比較的小さなサブセットを表す(概要については、内容が参照により本明細書に組み込まれる、Wuら、Int.J.Biol.Sci.、10(2):119~135(2014);MoserおよびEberl、Immunol.Reviews、215(1):89~102(2007)を参照されたい)。これらは、γ鎖とδ鎖で構成されるヘテロ二量体T細胞受容体(TCR)の発現によって定義される。これにより、これらはαβ TCRを発現するより一般的なCD4+ヘルパーT細胞およびCD8+細胞傷害性T細胞とは一線を画している。γδ T細胞の大部分は、MHC制限αβ T細胞とは対照的に、MHC非依存的に活性化される。γδ T細胞は、それだけに限らないが、非ペプチド抗原、MHCおよび非MHC細胞表面分子、可溶性タンパク質、スルファチドなどを含む、サイズ、組成および分子構造が異なるさまざまな構造的に異なるリガンドを認識することができる。γδ T細胞は、1群(CD1a、b、c)および2群(CD1d)のCD1分子(適応免疫)などのMHC分子を認識できる。しかしながら、Vγ9Vδ2 T細胞(γδ T細胞集団)上で発現されるNKG2D(NK細胞性免疫に関連する)も、γδ T細胞(自然免疫)によるリガンド認識で役割を果たす。NKG2Dリガンドは、ほとんどの正常組織では発現されないが、Vγ9Vδ2 T細胞による腫瘍細胞認識に必要な多くの腫瘍細胞型によって上方制御される。いくつかの可溶性タンパク質、例えば、無関係のブドウ球菌エンテロトキシンA(SEA)および毒素リステリオリシンO(LLO)を含む細菌タンパク質もγδ T細胞による認識に関与する。γδ T細胞は熱ショックタンパク質(HSP)も認識でき、これは、抗原処理を必要とせず、抗原提示細胞(APC)の非存在下で起こることができる。真菌、細菌または原生動物の感染中に発生するものなどの非ペプチド抗原は、T細胞認識の重要な標的となることができる。ブチロフィリン(BTN3A1)は、免疫調節機能を有する免疫グロブリン様分子のファミリーに属するVγ9Vδ2 T細胞に対するリン酸化抗原提示分子(APM)として特定されている。これは、プレニルピロリン酸のVγ9Vδ2 TCR認識において重要な役割を果たし、リン酸化抗原の細胞内レベルのセンサーとして機能することができる。
【0277】
自家細胞を媒体として使用することができるが、それらの利用可能性は制限的であることができ、対象から細胞を入手することは、時には面倒および/または高価となることができる。間葉系幹細胞(MSC)などの一定の細胞媒体は、一部はその免疫抑制特性のために、同種設定でもウイルス増幅を促進し、自然/適応免疫障壁を克服することが示されている。例えば、脂肪由来幹細胞(ADSC)は、強力なウイルス増幅を促進し、腫瘍細胞をウイルス感染に感作させるというその複合特性を通して、耐性腫瘍細胞さえも根絶することができることが本明細書で示されている。しかしながら、送達媒体としてADSCなどの同種間葉系幹細胞を含む「off the shelf」(既製の)同種細胞株を使用する能力は、一部は抗細胞媒体細胞傷害性IFNγ媒介応答のために、「mismatch」(ミスマッチ)(不十分なウイルス増幅;対象の免疫系の不十分な回避および/または不十分な一過的もしくは局所的免疫抑制を含む免疫抑制)につながることがある、対象特異的な差異によって制限できる。これらの自然および/または適応免疫応答は、例えば、細胞媒体を排除する、または抗ウイルス状態を誘導することによって、治療有効性を損なうことができる。他の研究でも、MHCミスマッチMSCは免疫特権がない場合があることが示されている(Berglundら(2017)Stem Cell Research&Therapy、8:288)。したがって、ウイルス療法のために特定の対象とマッチングし、「off the shelf」(既製の)同種細胞ベースの送達プラットフォームの使用を可能にする細胞媒体をスクリーニングする試験が必要である。ウイルス療法を対象に投与するための対象特異的な特異的「matched」(マッチング)細胞媒体を特定するアッセイが本明細書で提供される。改善された細胞送達のために1つ以上の方法で感作および/または操作された改変細胞媒体も本明細書で提供される(例えば、以下のD節参照)。改変細胞媒体(感作および/または操作された)を含む、本明細書で提供される細胞媒体のいずれも、細胞媒体ベースの送達を通してウイルス療法を投与される対象とのマッチング適合性について、本明細書で提供されるアッセイを使用して試験することができる。
【0278】
概要
そのうちの1つまたは組み合わせを使用して、腫瘍溶解性ウイルスを対象に送達するために対象と「matched」(マッチング)している細胞媒体を特定することができるアッセイ(「matching」(マッチング)アッセイ)が本明細書で提供される。本明細書で提供されるアッセイは、ウイルスの細胞媒体媒介送達に対する対象特異的な特異的応答を測定し、それによって、細胞媒体が、ウイルスを特定の対象に投与するのに適しているかどうか、すなわち、それが対象に「matched」(マッチング)しているかどうかを特定する。以下に要約され、次いで、本明細書でより詳細に解明されるアッセイA~Fのいずれか1つ、またはその任意の組み合わせを使用して、目的の対象とマッチングする細胞媒体を特定することができる。アッセイA~Fのうちの1つ以上を使用して、対象についてマッチとして、その適切性について目的の単一細胞媒体をスクリーニングすることができる、または細胞媒体の1つ超または複数/パネルをスクリーニングし、対象についてマッチとしてその望ましさに従ってランク付けすることができ、一般に、#1が最高ランクであり、後続の番号(2、3、4、…等)は下位ランクを示すが、適切なマッチを特定するための任意の適切なランク付けシステムを使用できる。ランク付けは、アッセイA~Fのうちの1つのみが実施される場合、単一アッセイに基づくことができる、または1つ超のアッセイにおける細胞媒体の性能に基づく組み合わせランク付けとすることができる。マッチングアッセイ、A~Fのそれぞれの概要を以下に提供する。
【0279】
A.ハプロタイプ分析
(a)ハプロタイプの概要
ハプロタイプは、一緒に遺伝するDNA変異または多型のセットであり、同じ染色体上に位置する対立遺伝子の群または一塩基多型(SNP)のセットを指すことができる。
【0280】
主要組織適合遺伝子複合体(MHC)
6番染色体上の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)は、適応免疫系の抗原提示に必須の細胞表面タンパク質のセットをコードするヒト白血球抗原(HLA)遺伝子を含む。MHC分子は、病原体に由来する抗原に結合し、適切なT細胞による認識のためにこれらを細胞表面に表示するため、免疫細胞同士および免疫細胞と他の細胞の相互作用を媒介する。MHCは、臓器移植についてのドナーの適合性、および交差反応免疫を介した自己免疫疾患に対する感受性を決定する。
【0281】
MHC遺伝子ファミリーは、クラスI、クラスIIおよびクラスIIIの3つのサブグループに分けられる。MHCクラスI分子は、細胞内タンパク質に由来する粗面小胞体のペプチドに結合する。これらは全ての有核細胞に見られ、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の表面上のCD8受容体と相互作用し、細胞性免疫を媒介する。MHCクラスIは3つのα鎖遺伝子:HLA-A、HLA-BおよびHLA-Cを含む。貪食されたタンパク質からのペプチドに結合するMHCクラスII分子は、マクロファージおよび樹状細胞(DC)を含む抗原提示細胞(APC)によって発現され、ヘルパーT細胞の表面上のCD4受容体と相互作用して、適応免疫を媒介する。MHCクラスIIは、3対のα鎖およびβ鎖遺伝子を含む。HLA-DP、HLA-DQおよびHLA-DRと、DRα鎖とペアリングできる追加のβ鎖を含むHLA-DRクラスターにより、4種類のMHCクラスII分子が得られる。単一染色体上に存在するHLA対立遺伝子の組み合わせは、HLAハプロタイプと呼ばれる。HLA遺伝子座は、ヒトゲノムで最も多型性であり、クラスIでは12,000を超える対立遺伝子、クラスIIでは4,000を超える対立遺伝子がある。したがって、2人の個体が同じHLAハプロタイプを有する可能性は低い(Meyerら(2018)Immunogenetics 70:5~27)。
【0282】
MHCクラスI
MHCクラスIは、HLA-A、HLA-BおよびHLA-C分子を含む。個々の遺伝子座は、HLA-Aのように大文字で示され、対立遺伝子は、HLA-A*0201のようにアスタリスクに続く数字で示される。MHC対立遺伝子は共優勢に(co-dominantly)発現され、各人が3つのMHCクラスI遺伝子の各々に2つの対立遺伝子を有するので、MHCクラスIには6つの異なるタイプが考えられる(Janeway CA Jr.ら、「Immunobiology:The Immune System in Health and Disease.」第5版 New York:Garland Science;2001.The major histocompatibility complex and its functions.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK27156/から入手可能)。
【0283】
MHCクラスI分子は、ほとんどの細胞型で発現され、プロテアソームによって分解された後、細胞内タンパク質に由来するペプチドに結合し、小胞体に移動し、次いで、ペプチドを細胞表面に輸送し、これらを細胞傷害性CD8 T細胞に提示する。これらのペプチドは短く、典型的には8~11アミノ酸長である(Kaczmarekら(2017)Arch.Immunol.Ther.Exp.65:201~214;ReevesおよびJames(2016)Immunology 150:16~24)。
【0284】
MHCクラスII
MHCクラスIIは、DR α鎖を除いて、それぞれが高度に多型であるα鎖およびβ鎖を含む、HLA-DP、HLA-DQおよびHLA-DRアイソタイプを含む。すべての個体が、親からHLA-DP遺伝子のペア、HLA-DQ遺伝子のペア、1つのHLA-DRA遺伝子、および1つ以上のHLA-DRB遺伝子を受け継ぐため、ヘテロ接合体は細胞上に8つの異なるMHCクラスII分子を有することができる。異なる染色体によってコードされるα鎖とβ鎖の異なる組み合わせは、さらに多数の異なるMHCクラスII分子を生じることができる(Janeway CA Jr.ら、「Immunobiology:The Immune System in Health and Disease.」第5版.ニューヨーク:Garland Science;2001.The major histocompatibility complex and its functions.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK27156/から入手可能)。
【0285】
MHCクラスII分子は、DC、B細胞および単球/マクロファージを含む抗原提示細胞によって発現され、リソソームによって分解された後に貪食された病原体に由来するタンパク質のペプチドに結合し、次いで、これらを細胞表面に輸送し、ヘルパーT細胞に提示する。これらのペプチドは、MHCクラスI分子によって提示されるペプチドよりも長く、通常14~20アミノ酸残基長である(Kaczmarekら(2017)Arch.Immunol.Ther.Exp.65:201~214)。
【0286】
MHCクラスIB(MIC、HLA-Eを含む)
古典的なMHCクラスIおよびクラスII遺伝子に加えて、MIC遺伝子ファミリーのメンバーであるHLA-GおよびHLA-Eを含む、MHCクラスIB遺伝子として知られる、多型をほとんど示さないMHCクラスI型分子をコードする遺伝子がある。5つのMIC遺伝子のうち、MICAとMICBの2つだけが、特に上皮細胞および線維芽細胞で発現され、自然免疫で役割をはたしている。NK細胞、およびγδ T細胞などのT細胞によって発現されるMIC受容体は、NKG2D鎖(NK細胞受容体のNKG2ファミリーの活性化メンバー)、およびDAP10と呼ばれるシグナル伝達タンパク質で構成される。他のHLAクラスI分子のリーダーペプチドに由来するペプチドの特定のサブセットとのHLA-E複合体、およびペプチド:HLA-E複合体は、NK細胞上の抑制性NKG2A受容体に結合し、NK細胞の細胞傷害活性の阻害をもたらす(Janeway CA Jr.ら、「Immunobiology:The Immune System in Health and Disease.」第5版.ニューヨーク:Garland Science;2001 The major histocompatibility complex and its functions.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK27156/から入手可能)。
【0287】
CD1ファミリー
主に抗原提示細胞と胸腺細胞上で発現され、CD4+T細胞、CD8+T細胞、ダブルネガティブT細胞、γδ T細胞、iNKT細胞およびNKT細胞に抗原を提示するCD1ファミリーは、MHC領域の外側にあるMHCクラスI様遺伝子のファミリーである。MHCクラスIおよびクラスII分子とは異なり、CD1分子は脂質抗原に結合し、これを提示することができる。5つのCD1タンパク質、CD1a~eがあり、CD1a~dは細胞表面上に脂質抗原を表示する。CD1a-cは主に抗原提示細胞によって発現され、適応免疫を媒介するクローン的に多様なT細胞に抗原を提示するが、CD1d分子は、DC、B細胞、単球、マクロファージ、ケラチノサイトおよび胃腸上皮細胞を含むいくつかの細胞型によって発現され、NKT細胞に抗原を提示する(Kaczmarekら(2017)Arch.Immunol.Ther.Exp.65:201~214)。
【0288】
KIRおよびKIRリガンド
NK細胞は、MHCクラスI分子(KIRリガンド)を認識し、これに結合するキラーIg様受容体(KIR)を発現する。白血球受容体複合体の19番染色体に見られる17のKIR遺伝子があり、これらの遺伝子のほとんどは複数の対立遺伝子を有する。KIR遺伝子の命名法は、細胞外免疫グロブリン様ドメインの数(2Dまたは3D)、細胞質尾部の長さ(L=長い、S=短い)、および遺伝子が偽遺伝子(P)であるかどうかに基づく。ほとんどのKIRは抑制性であるが、NK細胞は活性化KIRも有する。抑制性KIRがそれらのリガンドに結合すると、NK細胞が不活化される。感染細胞または新生物細胞では、古典的なクラスI遺伝子座の発現が減少し、KIR分子のリガンドの利用可能性を低下し、NK媒介細胞溶解を活性化してもよい(Benson Jr.およびCaligiuri(2014)Cancer Immunol Res.2(2):99~104)。
【0289】
KIR分子は高度に多型であり、KIR遺伝子クラスターはA群およびB群ハプロタイプとして知られている2つの異なるハプロタイプをもたらす。A群ハプロタイプは一定数の遺伝子からなり、抑制性KIRのみを有するが、B群ハプロタイプは可変セットの遺伝子を有し、抑制性KIRと活性化KIRの両方を含む(Benson Jr.およびCaligiuri(2014)Cancer Immunol Res.2(2):99~104)。
【0290】
KIR分子とそのリガンド(MHCクラスI分子)は独立に遺伝するが、特定のKIR/HLAの組み合わせの遺伝は、ウイルス感染、自己免疫およびがんに対する感受性または耐性に関連している。例えば、抑制性KIR/HLA相互作用はがん細胞の溶解を防止するが、KIR-リガンドミスマッチは、同種ドナーNK細胞を投与されている患者の腫瘍細胞溶解の増加をもたらす(Benson Jr.およびCaligiuri(2014)Cancer Immunol Res.2(2):99~104)。
【0291】
(b)ハプロタイプマッチング分析
ハプロタイプマッチング分析は、以下の通り行うことができる:
【0292】
i.全血または代替DNA源(例えば、軟部組織試料、精液、唾液、皮膚細胞、毛根等)を対象から入手する。
【0293】
ii.全血または他の供給源からgDNAを抽出する。
【0294】
iii.以下の遺伝子座のうちの1つ以上で、(例えば、次世代シーケンシングを使用して)対象特異的な遺伝子多型を分析する:
a.古典的なMHC I/IIハプロタイプ
b.KIRハプロタイプおよびリガンド
c.非古典的MHCハプロタイプ(例えば、HLA-E、CD1a/b/c/d;MIC-A/B)
【0295】
iv.上記のiiiで特定される対象の遺伝子多型プロファイルを、細胞媒体または1つ超の細胞媒体または細胞媒体のパネルの遺伝子多型プロファイルと比較する。対象との少なくとも10%、20%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上のマッチング遺伝子座を有する細胞媒体を、ウイルスを対象に送達するためのマッチングと特定することができる。いくつかの例では、iiiに示される遺伝子座のうちの1つ以上での細胞媒体の遺伝子多型プロファイルが、対象の遺伝子多型プロファイルと100%マッチングする。他の例では、iiiに示される遺伝子座のうちの1つ以上での細胞媒体の遺伝子多型プロファイルが、対象のためのマッチング細胞媒体として特定されるために、対象の遺伝子多型プロファイルと少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%マッチングする、または対象の遺伝子多型プロファイルとちょうどまたは約50%~ちょうどまたは約99%のマッチである。
【0296】
v.1つ超の細胞媒体がハプロタイプマッチングについて分析される場合、マッチング遺伝子座の最大数を有する細胞媒体が最も適合性と特定され、100%マッチングが最良である。
【0297】
vi.いくつかの実施形態では、インシリコソフトウェアアルゴリズム/プログラムを使用して、適合性を予測する遺伝子座を特定し、最も適合性のマッチングの特定を導くことができる。
【0298】
B.耐性腫瘍細胞を動員/感作させる、および/またはウイルス増幅を促進する能力
このマッチングアッセイでは、移動アッセイを実施して、細胞媒体が、ウイルス感染に対して腫瘍/がん細胞を動員/感作させる、および/またはウイルス増幅を促進する能力を測定する。移動アッセイは、標準的なトランスウェル、バイオゲル(ヒドロゲル、マトリゲル)または細胞外マトリックス(コラーゲン/フィブロネクチン)でコーティングされた表面系で設定することができ、ここでは、アッセイの構成要素の各々(例えば、固形腫瘍生検および細胞媒体)を、系の種類に応じて、別々のチャンバー(例えば、半透過性膜によって分離されている)または隣接する位置に堆積させる。この方法は以下の通り実施される:
【0299】
i.対象から、手術切片、穿刺吸引、針生検、または組織処理(コラゲナーゼ、ディスパーゼ、DNアーゼ等による酵素消化)後に得られる原発腫瘍細胞/腫瘍オルガノイドを含むことができる腫瘍生検を入手する。適切なトランスウェル/バイオゲル/細胞外マトリックスでコーティングされた表面系で、固形生検/オルガノイド/腫瘍細胞を培養する。
【0300】
ii.腫瘍生検と1つ以上の細胞媒体、または細胞媒体のパネルを使用して移動アッセイを実施し、細胞媒体の各種類(1つ超がスクリーニングされる場合)は、固有の検出可能なマーカー(例えば、蛍光マーカー)で標識される。固形腫瘍生検、原発腫瘍細胞または腫瘍オルガノイドの周囲に蓄積/移動/クラスター化する標識細胞(細胞媒体の各種類について)の割合が、腫瘍への細胞媒体移動スコア(CTMS)であり、100%が最良で、0%が最悪であり、少なくともまたは約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%または50%のCTMSスコアがマッチと見なされる。いくつかの例では、細胞媒体について少なくとも20%のCTMSスコアが、細胞媒体と対象(または治療される腫瘍/がんの種類)との間のマッチと見なされる。他の例では、細胞媒体について約20%~約60%のCTMSスコアを得ることが、細胞媒体と対象(または治療される腫瘍/がんの種類)との間のマッチと見なされる。
【0301】
iii.(例えば、蛍光マーカーを使用して)腫瘍生検または生検由来の原発腫瘍細胞/オルガノイドを標識し、標識された腫瘍生検および上記のステップ2のサブパネルまたは事前スクリーニングが実施されない場合、パネル全体の細胞媒体の各々を使用して移動アッセイを実施する。固形腫瘍から細胞媒体に向かって移動する標識腫瘍細胞または腫瘍関連間質細胞の割合が、細胞媒体への腫瘍移動スコア(TCMS)であり、100%が最良で、0%が最悪であり、少なくともまたは約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%または50%のTCMSスコアがマッチと見なされる。いくつかの例では、細胞媒体について少なくとも20%のTCMSスコアが、細胞媒体と対象(または治療される腫瘍/がんの種類)との間のマッチと見なされる。他の例では、細胞媒体について約20%~約60%のTCMSスコアを得ることが、細胞媒体と対象(または治療される腫瘍/がんの種類)との間のマッチと見なされる。
【0302】
iv.あるウイルスが腫瘍または担体細胞の移動を妨害するかどうかを試験するために、さまざまなウイルスの存在下で移動アッセイを実施することを除いて、ii.およびiii.のように試料を調製する。ウイルスは、共培養物に直接添加する、または生検標本との共培養の前に、担体細胞に事前搭載することができる。ウイルスが細胞移動および生存率を妨害する能力を反映する、上記のウイルス補正CTMS(VCTMS)およびTCMS(VTCMS)を計算する。
【0303】
v.累積平均移動/動員スコア(MRS)を、以下のように、各対象の腫瘍生検/細胞媒体/ウイルスの組み合わせについて計算することができる:
MRS(生検、細胞媒体、ウイルスの組み合わせ)=[VCTMS(生検、細胞媒体、ウイルス)+VTCMS(生検、細胞媒体、ウイルス)]/2;または
MRS(生検、細胞媒体の組み合わせ)=[CTMS(生検、細胞媒体)+TCMS(生検、細胞媒体)]/2。
【0304】
細胞媒体について少なくともまたは約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%または50%のMRSスコアを、細胞媒体と対象(または治療される腫瘍/がんの種類)との間のマッチと見なすことができる。いくつかの例では、細胞媒体について少なくとも20%のMRSスコアが、細胞媒体と対象(または治療される腫瘍/がんの種類)との間のマッチと見なされる。他の例では、細胞媒体について約20%~約60%のMRSスコアを得ることが、細胞媒体と対象(または治療される腫瘍/がんの種類)との間のマッチと見なされる。このマッチングアッセイは、腫瘍塊に向かって首尾よく帰巣する、または移動する腫瘍細胞を誘引/動員して、ウイルスの拡散および感染を促進する能力を有する細胞媒体/ウイルス関連細胞媒体を特定する。MRSスコアを使用して、特定の細胞媒体の適切な移動を妨害しない能力に基づいてウイルスをランク付けする、あるいはウイルスによって媒介される細胞移動の抑制に対する耐性に基づいて細胞媒体をランク付けし、最適な対象特異的なウイルスと担体媒体の組み合わせの特定を可能にすることができる。
【0305】
ii-vに示されるスコアのうちの1つ以上を測定して、良好なマッチングを特定できる。
【0306】
C.対象由来の免疫細胞がウイルス増幅を促進する能力
このマッチングアッセイは、対象由来の免疫細胞の存在下で細胞媒体媒介ウイルス増幅を測定する。このアッセイは以下の通り実施される:
【0307】
i.対象由来の免疫細胞(例えば、全血、PBMC)を入手する。
【0308】
ii.PMBCを細胞媒体およびウイルスと共培養する。添加の順序は以下の通りとすることができる:
同時、または
最初に細胞媒体+ウイルスをインキュベートし(ちょうどまたは約15分~ちょうどまたは約48時間の範囲;いくつかの実施形態では、範囲がちょうどまたは約1時間~ちょうどまたは約5時間であり;特定の実施形態では、インキュベーション時間がちょうどまたは約2時間である)、次いで、PBMCに添加する
【0309】
得られた共培養物を、ちょうどまたは約24時間~ちょうどまたは約1週間(実施形態では、ちょうどまたは約15分~ちょうどまたは約70時間の範囲;いくつかの実施形態では、範囲がちょうどまたは約20時間~ちょうどまたは約60時間である;特定の実施形態では、インキュベーション時間がちょうどまたは約48時間である)インキュベートする。
【0310】
iii.(例えば、蛍光イメージングまたはウイルスプラークアッセイ(VPA)によって)ウイルス増幅を測定し、PBMCの非存在下であることを除いて等価な条件下の対照と比較する。
【0311】
iv.PBMCの存在下でのウイルス増幅が、PBMCの非存在下で得られた値の10%未満である場合、細胞媒体は、対象と不適合性である、またはマッチでないと見なされる。PBMCの存在下でのウイルス増幅が、PBMCの非存在下で得られた値の少なくともまたは約10%~30%である場合、マッチングを十分とみなすことができ、PBMCの存在下でのウイルス増幅が、PBMCの非存在下で得られた値の少なくともまたは約30%~80%である場合、マッチングを中程度と見なすことができ、PBMCの存在下でのウイルス増幅が、PBMCの非存在下で得られた値の少なくともまたは約80%以上である場合、マッチングを良好と見なすことができる。
【0312】
v.免疫学的ウイルス増幅スコア(IVAS)は、以下式を使用して、各対象、細胞媒体、ウイルスの組み合わせについて計算できる:
IVAS=(細胞媒体+PBMC共培養物からのウイルスのpfu(または蛍光)/細胞媒体単独からのウイルスのpfu)。0.1以上の比は、上のiv.に記載されるマッチングの程度で適合性と見なすことができる(PBMCの非存在下で得られた値の10%以上、1.0の比が最高である)。
【0313】
vi.IVASスコアを、任意に血清の効果について補正できる(対象/患者の血清耐性スクリーニング)。IVASスコアは、細胞性免疫のみを考慮に入れており;対象の血清がウイルス増幅を有意に抑制している場合、IVASスコアが許容可能(例えば、0.1以上)であっても、良好なマッチングがなくてもよい。補正は以下の通り実施することができる:
【0314】
対象の血清を上記のii.の共培養物に共培養量の10~50%の量で添加する。
【0315】
患者(対象)の血清耐性スコアを、以下の式を使用して計算できる:
【0316】
PSRS=(血清なしのpfu-血清ありのpfu)/血清なしのpfu(×100、比をパーセント値に変換)。血清耐性スコアが高いほど、血清がウイルス増幅を妨害する。
【0317】
IVAS(補正されたPSRS)=IVAS×(1-PSRS)(×100、比をパーセント値に変換)。
【0318】
D.対象との免疫学的適合性の測定
このマッチングアッセイでは、i.およびii.を上記のパートC.のように実施する。
【0319】
iii.共培養物では、(例えば、マーカーに対する蛍光標識抗体を使用したフローサイトメトリーによって;具体的なマーカーは詳細な概要に列挙される)以下のマーカーのうちの1つ以上を測定する。
【0320】
目的のマーカーに対する蛍光標識抗体を添加し、細胞媒体の存在下で上方制御(存在する場合)を測定する(対照:PBMC単独、試料:PBMC+細胞媒体)。
a.IFNγ
b.T/NK/NKT細胞媒介細胞傷害に関連するマーカー
c.アクチベーター/エフェクター機能マーカーのT/NK/NKT細胞発現に関連するマーカー
【0321】
iv.試料および対照で蛍光を(フローサイトメトリーによって)測定する。
【0322】
v.免疫学的適合性スコア(ICS)を計算する:(試料の蛍光/対照の蛍光)の比。1つ超のマーカーが測定される場合、平均ICSスコアを、測定されたICSスコアの平均として計算できる、または例えば、ウイルス増幅の減少との確立された関連性に基づいて、スコアの一部に重みを付けることができる。
【0323】
vi.1~1.05以下の比は、細胞媒体が対象の免疫応答に対する効果を有さない、すなわち、良好なマッチングを意味する。
1.05~1.5の比は、中程度に適合性の細胞媒体を示す。
1.5~2の比は、十分適合性の細胞媒体を示す。
2より大きい比は、免疫学的に不適合性のマッチングを示す。
【0324】
E.細胞媒体によって媒介される抗ウイルス免疫の抑制の測定
対照に以下を加えることを除いて、上記のパートD.と同様にi.~iv.を実施する:PBMC単独およびPBMC+細胞媒体には、以下の試料も含まれる:PBMC+ウイルス;PBMC+細胞媒体+ウイルス
【0325】
v.1つ以上のマーカーについての免疫抑制スコア(ISS)を計算する。
[(PBMC+ウイルス共培養物のマーカーレベル+PBMC+細胞媒体共培養物のマーカーレベル)-PBMC+ウイルス+細胞媒体共培養物のマーカーレベル]/(PBMC+ウイルス共培養物のマーカーレベル+PBMC+細胞媒体共培養物のマーカーレベル)(x 100、%免疫抑制について)の比。
【0326】
vi.0%より高いISS%スコアは好ましいと見なされる、すなわち、抗ウイルス免疫を抑制し、ウイルスが腫瘍細胞に感染することを可能にする細胞媒体の能力を示す。1つ超のマーカーが測定される場合、平均ISSスコアを測定されたISSスコアの平均として計算できる。
【0327】
F.上清の分析による細胞媒体の免疫調節効果の測定
上記のD.およびE.節に記載される測定は、例えば、ELISAまたはLuminexアッセイによって共培養物の上清を使用して実施することもできるだろう。具体的な応答細胞集団を特定することはできないが(共培養物中の細胞/ウイルスは直接分析されていないため)、上清で測定されたISSおよびICSスコアも適合性に関して有益となることができ;これらのスコアはD.およびE.節で上記のように決定される。
【0328】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、細胞媒体を、任意に、事前スクリーニングに供して、細胞媒体が、対象特異的な細胞の非存在下で、ウイルス増幅を促進する能力を決定することができる。選択した所与のウイルス療法(例えば、ワクシニアウイルス)について、細胞媒体または利用可能な細胞媒体のパネル(自家/同種/オリジナル/感作/操作)を、ウイルス増幅を促進する能力についてスクリーニングすることができる。等価な感染多重度(0.001~1の範囲のMOI)および共培養条件下での感染細胞数に対して正規化された細胞媒体の各種類についてのウイルス増幅率(pfu/細胞)が(例えば、VPA-ウイルスプラークアッセイを使用して)決定される。ウイルスの各種類について最適な読み取り時点を使用した(例えば、ちょうどまたは約1日~ちょうどまたは約5日)。細胞媒体の各種類についてのpfu/細胞が計算され、細胞媒体のウイルス増幅スコア(VAS)として使用される。
【0329】
事前スクリーニングで、少なくとも10のpfu/細胞を産生する細胞媒体を、A~Fに要約され、本明細書にさらに記載される方法のいずれかに従って対象にマッチングさせることによって、さらなるスクリーニングのために選択することができる(10~100は良好、100-1000は極めて良好、1000超は優れている)。サブパネル(または選択された細胞媒体)を、対象との最適なマッチングのためにスクリーニングすることができる。
【0330】
本明細書で提供される方法では、細胞媒体と対象との間のマッチを、上に要約されるアッセイA~Fのうちの1つ以上を使用して特定することができる。いくつかの実施形態では、1つ超の細胞媒体、または複数の細胞媒体もしくは細胞媒体のパネルが、マッチングアッセイA~Fのうちの1つ以上に従って分析される。次いで、細胞媒体が、「最良のマッチング」(例えば、ランク1)から最悪のマッチング(例えば、より高い数のランク)までの範囲で、対象との適合性に従ってランク付けされる。各細胞媒体について、実施されたアッセイの数に応じて、累積ランクが計算される。
【0331】
累積ランク=ランク(VAS)+ランク(IVAS)+ランク(ICS)+ランク(ISS)+ランク(MRS)/5(これらのスコア全てが取得される場合;5未満のスコアが取得できるだろう)。次いで、細胞媒体が、マッチとしてその適切性の順にランク付けされる。ハプロタイプ分析を、細胞媒体のランク付けでも考慮することができる。
【0332】
マッチングアッセイの詳細な方法
a.アッセイで実施される測定の一般的な方法
以下は、本明細書で提供されるマッチングアッセイにおいて一定のパラメータを測定するために使用される一般的な方法である:
【0333】
ウイルスプラークアッセイ(VPA)
ウイルスプラークアッセイ(VPA)は、ウイルス力価、または試料中のウイルス濃度を測定するために使用される。例えば、VPAを使用して、さまざまな条件下で、患者由来の免疫細胞と細胞ベースの送達媒体のさまざまな組み合わせでウイルス粒子増幅を定量化できる。
【0334】
ウイルス含有試料を-80℃で保存し、3回の凍結(-80℃)/解凍(+37℃)サイクルに供し、引き続いて3回、1分離して1分間隔で氷冷水上で超音波処理する。超音波処理された試料を、ワクシニアウイルス感染培地(2%FBS、L-グルタミンおよびペニシリン/ストレプトマイシンを補足したDMEM)で段階希釈する。プラークアッセイを、2連ウェルで24ウェルプレートで実施する。手短に言えば、200,000個のCV-1サル腎臓細胞を1ウェル当たり1mLのD10培地に一晩蒔く。上清を吸引し、ウイルス含有試料の10倍段階希釈液を200μL/ウェルでCV-1単層にアプライする。プレートを、20分毎に手動で振盪して37℃(インキュベーター)で1時間インキュベートする。1mLのCMC培地を細胞の上に静かに重層し、プレートを48時間インキュベートする。CMCオーバーレイ培地を、15gのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩(Sigma-Aldrich、C4888)をオートクレーブ処理し、ペニシリン/ストレプトマイシン、L-グルタミンおよび5%FBSを補足した1L DMEM中、RTで一晩攪拌しながら再懸濁することによって調製し、4℃で短期間貯蔵する。室温で3~5時間、クリスタルバイオレット溶液(1.3%クリスタルバイオレット(Sigma-Aldrich、C6158)、5%エタノール(純エタノール、分子生物学グレード、VWR、71006-012)、30%ホルムアルデヒド(37%v/vホルムアルデヒド、Fisher、カタログ番号F79-9)および再蒸留水)でウェルの頂を覆う(toping)ことによって細胞を固定し、引き続いてプレートを水道水で洗浄し、一晩乾燥させることによって、細胞を固定した後、プラークをカウントする。ウイルス力価(virus tier)を、試料当たりのプラーク形成単位(PFU)で計算する。
【0335】
フローサイトメトリー
フローサイトメトリーは、細胞のカウント、細胞の選別、バイオマーカー/細胞表面抗原の検出に利用できる。例えば、フローサイトメトリーを、ゲーティングパラメータを使用して実施して、T細胞(それだけに限らないが、CD3、CD4、CD8など)、γδ T細胞(例えば、細胞のCD3+NKp46+およびCD3+NKp46-集団など)、NK細胞(それだけに限らないが、NKp46(CD335)、CD16、CD56など)およびNKT細胞(それだけに限らないが、CD3、CD16、CD56、NKp46、aGalCer-CD1dテトラマーなど)を含む特定の免疫細胞集団を特定することができる。例えば、免疫応答は、フローサイトメトリーを使用して、それだけに限らないが、以下を含むさまざまな活性化/エフェクター機能パラメータを分析することによって評価される:CD69、CD25、CD71、CD27(CD70L)、CD154(CD40L)、CD137(4-1BB)、CD44、CD45RA、CD45RO、CD278(ICOS)、CD127(IL-7RA)、CD183(CXCR3)、CD197(CCR7)、CD39、CD73、CD314(NKG2D)、PD-1、CTLA-4、IFNα/β、IFNγ、TNFα、IL-2、IL-4、IL-5、IL-9、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-18、IL-21、IL-22、IL-23、IL-25、GM-CSF、IL-17、IL-6、CD107a、CD107b、TGFβ、Perforin、Granzyme B、IL-1a/IL-1b、G-CSF、RANTES、EXOTAXIN、MIP-1b、MCP-1、EGF、HGF、VEGF、IL-1RA、IL-7、IP-10、IL-2R、MIGおよびIL-8など。フローサイトメトリーはまた、遺伝子操作されたADSCによるeGFP発現を検出するため、およびL14 VV(ワクシニアウイルスのTK挿入Turbo-FP635操作LIVP株)に感染した細胞の割合を測定するために使用される。
【0336】
CDマーカーなどの検出するバイオマーカー/抗原が細胞表面にある場合、表面染色を使用する。しかしながら、サイトカインまたは転写因子などの細胞内タンパク質を検出する場合、抗体染色の前に追加の固定および透過処理工程が必要である。
【0337】
表面染色
共培養物のフローサイトメトリー分析では、例えば、PBMCと幹細胞の共培養物をピペット操作によって回収し、V底プレートに移し、FACS緩衝液(1x PBSと1%FBS)で洗浄する。次いで、適切な抗体カクテルを補足したFACS緩衝液で、細胞を4℃で30分間表面染色する。例えば、T細胞またはNKT細胞の表面上のCD3の検出には、抗ヒトCD3-PerCP/Cy5.5(BioLegend、カタログ番号300328、1:50)を使用し;NK細胞の表面上のCD335/NKp46の検出には、例えば、抗ヒトCD335/NKp46-PE(BioLegend、カタログ番号331908、1:50)を使用し;T細胞、NK細胞およびNKT細胞の表面上のCD69の検出には、例えば、抗ヒトCD69-APC(BioLegend、カタログ番号310910、1:50)を使用する。FACS緩衝液はまた、生存率プローブ(ThermoFisher Scientific、LIVE/DEAD Fixable Violet Dead Cell Stain Kit、405 nm励起用、カタログ番号L34964、1:1000)を含有することもできる。染色後、細胞をFACS緩衝液で2回洗浄し、1x PBS中2%PFAで、RTで15分間固定し、FACS緩衝液で再度洗浄してPFAを除去し、次いで、BD FACSAria IIフローサイトメーター(BD Biosciences、サンノゼ、CA)で分析する。
【0338】
例えば、免疫細胞の表面上のCD107aを検出することによって細胞傷害性機能を評価するために、回収および表面染色の5時間前に、抗ヒトCD107a-AlexaFluor 488(BioLegend、カタログ番号328610)を1:20(10μl/well)で共培養物に直接添加し、引き続いて1時間後に1:1000でモネンシン(BioLegend、カタログ番号420701-BL、1000X)を添加し、37℃でさらに4時間インキュベートする。
【0339】
細胞内染色
例えば、γδ T細胞を含む活性化NK、NKTおよびT細胞でのIFNγ産生を評価するためには、細胞内染色が必要である。ブレフェルジンA溶液(BioLegend、カタログ番号420601-BL、1000X)を、刺激の1時間後、または回復および表面染色の4時間前に1:1000で添加する。細胞をIFNγ産生とCD107a表面曝露の両方について評価する場合、モネンシン(BioLegend、カタログ番号420701-BL、1000X)とブレフェルジンAを一緒に添加する。標準的な表面染色および生存率染色の後、eBioscience Intracellular Staining Buffer Set(ThermoFisher、カタログ番号00-5523)を使用して細胞を処理する。手短に言えば、抗CD107a-AlexaFluor 488の有無にかかわらず、表面染色後、細胞を1部の固定/透過処理濃縮液(ThermoFisher、カタログ番号00-5123)および3部の固定/透過処理希釈液(ThermoFisher、カタログ番号00-5223)で30分間固定し、再蒸留水で1:10に希釈した200μl/ウェルの透過処理緩衝液10x(ThermoFisher、カタログ番号00-8333)で2回洗浄し、室温で1時間、透過処理緩衝液中抗ヒトIFNγ-APC抗体(BioLegend、カタログ番号502512、1:50)で染色する。次いで、細胞を透過処理緩衝液で2回洗浄し、1x PBS中2%PFAで、室温で15分間固定し、FACS緩衝液で再度洗浄してPFAを除去し、BD FACSAria IIフローサイトメーター(BD Biosciences、サンノゼ、CA)で分析する。
【0340】
ELISPOT
酵素結合免疫スポット(Enzyme-Linked ImmunoSpot)(ELISPOT)は、珍しい抗原特異的およびサイトカイン産生免疫細胞の高感度で正確な特定および定量化、ならびにPBMCの集団内の単一陽性細胞を検出する能力に基づいて、細胞免疫応答をモニタリングするために広く利用される免疫測定法である。フローサイトメトリーと同様に、ELISPOTは、γδ T細胞(それだけに限らないが、CD3、CD4、CD8など)を含むT細胞、γδ T細胞(それだけに限らないが、NKp46(CD335)、CD16、CD56など)を含むNK細胞およびNKT細胞(それだけに限らないが、CD3、CD16、CD56、NKp46、aGalCer-CD1dテトラマーなど)などの特定の免疫細胞集団を特定するマーカーのパネル、ならびにそれだけに限らないが以下を含む活性化/エフェクター機能マーカーのパネルに基づいて、免疫活性化および免疫抑制を分析するために使用することができる:CD69、CD25、CD71、CD27(CD70L)、CD154(CD40L)、CD137(4-1BB)、CD44、CD45RA、CD45RO、CD278(ICOS)、CD127(IL-7RA)、CD183(CXCR3)、CD197(CCR7)、CD39、CD73、CD314(NKG2D)、PD-1、CTLA-4、IFNα/β、IFNγ、TNFα、IL-2、IL-4、IL-5、IL-9、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-18、IL-21、IL-22、IL-23、IL-25、GM-CSF、IL-17、IL-6、CD107a、CD107b、TGFβ、Perforin、Granzyme B、IL-1a/IL-1b、G-CSF、RANTES、EXOTAXIN、MIP-1b、MCP-1、EGF、HGF、VEGF、IL-1RA、IL-7、IP-10、IL-2R、MIGおよびIL-8など。
【0341】
ELISPOTアッセイは、サンドイッチ酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)と技術が極めて類似である。典型的なプロトコルでは、最初に、PVDFメンブレンを、35%エタノール中で30秒間インキュベートし、引き続いて200μl/ウェルのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回洗浄してエタノールを除去することによって、96ウェルプレートで調製する。次いで、プレートを目的の分析物に特異的な捕捉抗体(PBS中約2~15μg/ml、100μl/ウェルに希釈)でコーティングし、4℃で一晩インキュベートする。次いで、ウェルを空にし、200μl/ウェルのPBSで3回洗浄して、結合していない捕捉抗体を除去し、例えば、100μl/ウェルの2%乾燥脱脂乳または200μl/ウェルのPBS中1%BSAを使用してメンブレンをブロッキングし、室温で2時間インキュベートして、膜への非特異的結合を防ぐ。次いで、プレートを200μl/ウェルのPBSで3回洗浄し、風乾し、次いで、次のステップで使用する、または乾燥剤と共に4℃で最大2週間保存する。細胞、例えばPBMCを希釈し、典型的には、1ウェル当たり2x104~5x105個のPBMCで、ウェルにピペットで移し、適切な培養培地を添加し、プレートを加湿した37℃のCO2インキュベーターに指定された期間、通常は24~72時間、例えば、IFNγ、IL-2およびTNFαの場合は24時間、IL-4、IL-5およびIL-10の場合は48時間入れる。活性化細胞から分泌されるIFNγなどのサイトカインが、PVDFメンブレン上の固定化抗体に結合する。ウェルを200μl/ウェルのPBSで3回、次いで200μl/ウェルのPBS/0.1%Tween-20で3回洗浄して細胞および未結合分析物を洗い流し、PBS/1%BSA中およそ0.25~2μg/ウェル(100μl/ウェル)に希釈した目的の分析物に特異的なビオチン化検出抗体を添加し、室温で1~2時間、または4℃で一晩インキュベートする。次いで、プレートを200μl/ウェルのPBS 0.1%Tween-20で3~4回洗浄して、未結合のビオチン化されたものを除去し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)またはアルカリホスファターゼ(AP)などの酵素にコンジュゲートしたストレプトアビジン(100μl/ウェル、PBS-Tween-BSAで1:500~1:2000に希釈された)を各ウェルに添加し、プレートを室温で1~2時間インキュベートする。あるいは、検出抗体を酵素に直接コンジュゲートさせることができる。未結合酵素を洗い流し(3×200μl/ウェルのPBS/0.1%Tween-20および3×200μl/ウェルのPBS)、沈殿基質溶液(例えば、HRPの場合はAEC、APの場合はBCIP/NBT)を添加する。HRPの場合は赤色、またはAPの場合は黒みがかった青色である着色沈殿物が形成し、各着色スポットは、典型的には個々のサイトカイン分泌細胞を表す。蒸留水で穏やかに洗浄することによって反応を停止し、プレート/メンブレンを室温で乾燥させ、スポットを手動で(例えば、解剖もしくは実体顕微鏡で)、または自動化ELISPOTリーダーでカウントすることができる。同じアッセイで複数のサイトカインを測定する場合、蛍光標識された抗サイトカイン抗体を使用し、修正されたアッセイはFluoroSpotアッセイとして知られている。
【0342】
b.対象由来の免疫細胞の選択
1.PBMC-例えばFicoll-Paque遠心分離を使用して分離することができる。
【0343】
2.全血-全ヘパリン添加血は、PBMC以外の血球型、例えば好中球を含む。
【0344】
3.RBC溶解を伴う全血-多数の赤血球を除去し、より高濃度のリンパ球および骨髄細胞を達成することができる。この溶解に続く洗浄ステップを任意に実施して、Ficoll-Paque PBMC分離中のように、対象の血清/血漿を除去することができる。
【0345】
4.自家対象血漿/血清を補足したRBC溶解を伴うPBMC/全血-対象血漿は、高速遠心分離後にヘパリン添加ヒト血液から分離することができ、血清は、対象の非ヘパリン添加および凝固血液の高速遠心分離後に分離することができる。次いで、RBC溶解後のPBMCまたは全血球を、補足物として添加された10%~50%の自家対象血清または血漿と共にインキュベートすることができる。アッセイのいくつかの条件では、血清/血漿中の補体を、任意に、熱的または薬理学的にさらに不活化することができる。
【0346】
5.特定の免疫細胞集団、亜集団およびその組み合わせ
【0347】
c.細胞媒体とウイルスのマッチング
この分析は、対象由来の免疫細胞と培養する前に実施することができる。細胞媒体/ウイルス適合性スクリーニングは、分析される1つ以上の細胞媒体とウイルスの共培養物の分析によって実施され;1つ超の細胞媒体/ウイルスの組み合わせを評価する場合、方法はアッセイと等価な条件下で実施される。
【0348】
共培養物の各々について、細胞媒体がウイルス増幅を促進する能力は、検出可能に標識されたタンパク質、例えば、蛍光標識されたタンパク質を発現するように操作された細胞媒体/ウイルスを使用して、当業者に既知の方法によって測定される。例えば、以下を含む当業者に既知の方法を使用することができる:
1.ウイルスプラークアッセイ(VPA)
2.qPCR
3.蛍光イメージング(検出可能な標識または蛍光タンパク質を発現するように操作される)
4.ELISA(例えば、ウイルスにコードされるβ-ガラクトシダーゼの測定)
5.生物発光(例えば、レポーター遺伝子ルシフェラーゼを発現するように操作されたウイルス)
6.蛍光顕微鏡(蛍光強度を測定するためのイメージングソフトウェア)/ウイルス感染の時間経過をモニタリングするための蛍光プレートリーダー(例えば、緑色チャネル(GFP)の細胞媒体、赤色チャネル(TurboFP635)のウイルスを追跡)。
【0349】
ウイルス増幅率を、等価なアッセイ条件下でMOI(0.01~10)および約24時間~1週間の共培養期間を使用して、分析する各細胞媒体について測定する。測定された率を、感染細胞媒体の数に対して正規化する。1~10のPfu/細胞媒体を限られた効力と見なすことができ(所与のウイルスの細胞媒体として);10~100のPfu/細胞媒体を良好な効力と見なすことができ;100~1000のPfu/細胞媒体を非常に良好な効力と見なすことができ;1000超のPfu/細胞媒体を極めて高い効力と見なすことができる。少なくとも10のpfu/細胞媒体を実証する細胞媒体とウイルスの組み合わせを、対象に由来する細胞を使用するマッチングアッセイでの試験のために考慮することができる。あるいは、正規化された、等価なアッセイ条件下で測定されたpfu/細胞媒体値を、療法のためのマッチ(またはそうではない)としての細胞媒体+ウイルスの組み合わせのランク付けに寄与するウイルス増幅スコア(VAS)として使用できる。
【0350】
d.細胞媒体/ウイルスの組み合わせと対象のマッチング
1.対象のハプロタイピングデータは、より近いまたはより遠いマッチングに基づいて、特定の細胞媒体との患者の適合性を予測することができる。HLA遺伝子座マッチング(HLA-A、HLA-DP)およびKIRハプロタイプマッチングは、通常、複数の同種細胞媒体に対する対象の広範な許容度を示唆するが、決定的なものではない。しかしながら、データの予測値を、対象のマッチング/適合性データをデータベースに蓄積し、開発アルゴリズムを使用して、アッセイで検証された相関に基づいて適合性を予測することによって増強できる。ハプロタイピング方法は、以下の通り実施することができる:
i.患者の血液または他のDNA源を分離する
ii.当技術分野で既知の方法を使用して、gDNAを抽出する
iii.次世代シーケンシングまたは当技術分野で既知の等価な方法を使用して、患者特異的な遺伝子多型の関連遺伝子座を分析する
-古典的なMHC I /IIハプロタイプ
-KIRハプロタイプおよびリガンド
-非古典的MHCハプロタイプ(例えば、HLA-E;CD1a、b、c、d;MICA/B)
iv.各患者の遺伝子多型プロファイルを、利用可能な細胞媒体のプロファイルと比較する。
-患者と細胞媒体との間のMHCミスマッチを特定する
-患者と細胞媒体との間のKIRおよびKIRリガンドのミスマッチを特定する
-患者と細胞媒体との間の非古典的MHC遺伝子座でのミスマッチを特定する
-利用可能な全ての細胞媒体を比較して、最小数のミスマッチに基づいて、どの細胞媒体が患者と最も適合性であるかを特定する、または、単一細胞媒体のみを使用する場合、ミスマッチの割合を確認して、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%またはそれ以上のマッチングがあるかどうかを見る。
-インシリコソフトウェアアルゴリズム/プログラムを使用して、アッセイデータを繰り返し蓄積し、特定の遺伝子座でのミスマッチが好ましくなく、細胞媒体がウイルスを増幅できないことを示すことに基づいて最も適合性のマッチングを予測できる。インシリコ適合性予測アルゴリズムは、新たな対象および細胞媒体の適合性スクリーニングデータで繰り返し更新でき、さまざまな腫瘍溶解性ウイルス(例えば、ワクシニアウイルス以外)についての細胞媒体の適合性を予測するためにインリシコで調整できる。
【0351】
2.耐性腫瘍細胞を動員する/感作させる能力の測定:細胞媒体+生腫瘍生検+/-ウイルス
【0352】
対象由来の免疫細胞、細胞媒体およびウイルスを同時に共培養することができる、または細胞媒体+ウイルスを最初にインキュベートし(例えば、15分~48時間)、次いで、対象由来の免疫細胞に添加することができる。例えば、24時間~1週間、いくつかの実施形態では48時間のインキュベーション時間の後、以下の測定を実施する:
a.標識された細胞媒体の「Tumor-directed migration」(腫瘍指向性移動)を可視化および定量化するための蛍光イメージング
b.非標識または標識された腫瘍生検由来のがんまたは間質細胞(例えば、がん関連線維芽細胞、免疫細胞等)の細胞媒体指向性移動を可視化および定量化するための蛍光イメージング
c.対象の腫瘍生検の細胞媒体増強コロニー形成およびウイルス増幅の相乗効果を可視化および定量化するための蛍光イメージング、すなわち、対象の腫瘍生検+細胞媒体におけるウイルス増幅は、以下のいずれかである:
-等価な条件下での腫瘍生検単独におけるウイルス増幅+等価な条件下での細胞媒体単独におけるウイルス増幅の和よりも5%以上大きい;
-または等価な条件下での腫瘍生検単独におけるウイルス増幅よりも少なくとも5%以上大きい。
d.方法:
-対象から新たに分離された生固形腫瘍生検を、等価なサイズ/質量/体積の複製片に分割できる。
-移動アッセイは、標準的なトランスウェル、バイオゲル(ヒドロゲル)または細胞外マトリックス(コラーゲン/フィブロネクチン)でコーティングされた表面系を使用して設定することができ、ここでは、2つの構成要素(固形腫瘍生検および細胞媒体)をそれぞれ別々のチャンバーまたは隣接する位置に体積させる。
-新鮮な生対象腫瘍生検の等価な複製片を、CFSE、GFP、RFP等などの蛍光マーカーで標識された細胞媒体と15分~1週間共培養する。
-腫瘍生検を1つ超の種類の細胞媒体と共培養する場合、細胞媒体を異なる蛍光マーカーで標識して、どの種類の細胞媒体が対象の腫瘍生検に優先的に動員されるかを特定および定量化できる。
-固形腫瘍生検で蓄積する蛍光標識細胞媒体細胞の%を、細胞媒体動員の効率の尺度として使用でき、100%動員が最良であり、0%動員が最悪であり、この%を腫瘍への細胞媒体移動スコア(CTMS)として使用できる。
-あるいは、新鮮な腫瘍生検を、CFSE、CYTO-ID Green/Red(Enzo)、CellTracker(Thermofisher Scientific)などの非毒性トレーサー色素で蛍光標識して、固形腫瘍生検から出て細胞媒体に向かう腫瘍または腫瘍関連間質細胞の細胞媒体指向性移動を追跡できる。
-腫瘍から出て細胞媒体に向かって移動する蛍光標識された腫瘍または腫瘍関連間質細胞の%を、細胞媒体による腫瘍/間質細胞動員の効率の尺度として使用でき、100%動員が最良であり、0%動員が最悪であり、この%を細胞媒体への腫瘍移動スコア(TCMS)として使用できる。
-並行して、腫瘍細胞生検単独、腫瘍細胞生検と細胞媒体、または細胞媒体単独の複製共培養物の一部を、蛍光マーカーで操作された腫瘍溶解性ウイルス(TurboFP635など)に感染させて、腫瘍生検の外側にとどまる蛍光標識された細胞媒体に対する腫瘍生検中のウイルス増幅の程度の可視化および蛍光強度基づく定量化を可能にすることができる。
-腫瘍生検+/-細胞媒体または細胞媒体単独でのウイルス増幅の程度を、ウイルス操作マーカーの蛍光強度を使用して、ならびに標準VPA(ウイルスプラークアッセイ)によって評価できる。
-あるウイルスが腫瘍または担体細胞の移動を有意に妨害するかどうかを試験するために、さまざまなウイルスの存在下で移動アッセイを使用することもできる。ウイルスは、共培養物に直接添加する、または生検標本との共培養の前に、担体細胞に事前搭載することができる。ウイルスが細胞移動および生存率を妨害する能力を反映する、上記のウイルス補正CTMS(VCTMS)およびTCMS(VTCMS)を計算する
-各対象の腫瘍生検-細胞媒体-ウイルスの組み合わせについての累積平均移動/動員スコア(MRS)を、以下の式を使用して計算することができる:
MRS(生検、細胞媒体、ウイルスの組み合わせ)=[VCTMS(生検、細胞媒体、ウイルス)+VTCMS(生検、細胞媒体、ウイルス)]/2;または
MRS(生検、細胞媒体の組み合わせ)=[CTMS(生検、細胞媒体)+TCMS(生検、細胞媒体)]/2
-その後、平均MRSスコアに基づいて、各対象とウイルスの組み合わせについて細胞媒体をランク付けできる。
【0353】
3.対象/細胞媒体のマッチング、すなわち、細胞媒体媒介ウイルス療法に対する対象の許容度についての共培養物の分析:対象由来のPBMC+細胞媒体+ウイルス
【0354】
(a)-ウイルス増幅の測定(当技術分野で既知のアッセイおよび本明細書で提供されるアッセイを参照)
-細胞媒体と患者のPBMCの共培養物におけるウイルス増幅が、PBMCの非存在下で同じ細胞媒体に感染した場合のウイルス増幅の80%を超える場合、適合性のマッチング。
-細胞媒体と患者のPBMCの共培養物におけるウイルス増幅が、同じ細胞媒体がPBMCの非存在下で感染した場合のウイルス増幅の30~80%の範囲にある場合、中程度に適合性のマッチング。
-細胞媒体と患者のPBMCの共培養物におけるウイルス増幅が、PBMCの非存在下で同じ細胞媒体に感染した場合のウイルス増幅の10~30%の範囲にある場合、十分に適合性のマッチング。
-細胞媒体と患者のPBMCの共培養物におけるウイルス増幅が、PBMCの非存在下で同じ細胞媒体に感染した場合のウイルス増幅の10%未満である場合、不適合性のマッチング。
-%適合性を使用して、細胞媒体を各個々の患者および各特定のウイルスについて、最も低い適合性から最も高い適合性の細胞媒体までランク付けできる。
-%適合性は、以下の式を使用して、患者、細胞媒体および腫瘍溶解性ウイルスの各組み合わせについての免疫学的ウイルス増幅スコア(IVAS)として計算することもできる:
【0355】
IVAS(%、患者、細胞媒体、ウイルス)=(細胞媒体+対象のPBMCの共培養物からのウイルスのpfu/細胞媒体単独からのウイルスのpfu)×100
【0356】
例えば、10%以上、20%以上、30%以上、または10%~30%以上のIVASスコアを、検討に十分であるとみなすことができる。
【0357】
1種超の細胞媒体をスクリーニングする場合、このIVASスコア(%が高いほど、適合性が高い)を使用して、細胞媒体を各患者および各ウイルスについて最も低い適合性から最も高い適合性の細胞媒体までランク付けできる。
【0358】
-IVASスコアを、任意に、対象の血清中の補体および中和抗体の効果を考慮に入れることによってさらに補正することができる(任意の対象血清耐性スクリーニング):
【0359】
-PBMCの有無にかかわらず、対象由来の血清の存在下での細胞媒体によるウイルス増幅の抑制%を0~100%抑制のスケールで評価し、以下の式を使用して患者の血清耐性スコア(PSRS)を計算する:
【0360】
PSRS=(血清なしのpfu-血清ありおよび補体不活化なしのpfu/血清なしのpfu)×100
【0361】
-95%超のPSRSスコアは、強力な血清媒介抑制を示し、許容可能なIVASスコアを実証しているにもかかわらず、後者(IVASスコア)が対象の細胞性免疫のみを考慮しているため、ウイルスが対象と適合性でないことを示唆している。
【0362】
-補正されたIVASスコアを使用して、細胞媒体適合性試験で使用されるウイルスを評価する:IVAS(補正したPSRS)=IVAS×(100-PSRS)/100
【0363】
-ウイルス増幅の抑制に対する補体の寄与を、以下の式を使用して、0~100%のスケールで、対象PBMCの有無にかかわらず、および熱的または薬理学的血清不活化の有無にかかわらず、対象由来の血清の存在下での細胞媒体によるウイルス増幅の抑制%を使用して評価できる:
【0364】
%補体抑制=(血清ありおよび補体不活化ありのpfu-血清ありおよび補体不活化なしのpfu/血清なしのpfu)×100
【0365】
-この%補体抑制は、対象/患者の補体耐性スコア(PCRS)として使用でき、ウイルス特異的中和抗体に関連する既存の曝露/免疫の存在とは無関係に、複数の腫瘍溶解性ウイルスに対してより広範な耐性を有する対象を示す。
【0366】
(b)-免疫学的適合性の測定(免疫特権/免疫抑制効果)
(i)-ウイルス/細胞媒体媒介インターフェロン(例えば、IFNγ)産生の上方制御を測定する(許容可能なパラメータ範囲については、以下の(I)節のICSスコアの説明を参照)
IFNγ ELISPOT
フローサイトメトリー
-使用される標識抗体は、抗ヒトIFNγ、例えば、抗ヒトIFNγ-APCである
(ii)-γδ T細胞、NK細胞およびNKT細胞媒介細胞傷害性を含む、T細胞に関連するマーカーの上方制御を測定する
グランザイムB ELISPOT
フローサイトメトリー
-使用される標識抗体は、抗ヒトCD107a/CD107b(例えば、抗ヒトCD107a-AlexaFluor 488)である。
(iii)-γδ T細胞、NK細胞およびNKT細胞媒介活性化/エフェクター機能を含む、T細胞に関連する他のマーカーの上方制御を測定する(許容可能なパラメータ範囲については、以下の(I)節のICSスコアの説明を参照)
-蛍光標識抗体を使用して、免疫細胞上/内のさまざまな活性化/エフェクター機能マーカー、例えば以下の表面または細胞内発現のレベルを測定できる:
活性化因子/エフェクター機能マーカー
CD69(例えば、抗ヒトCD69-APC)
CD25
CD71
ICOS
CD314(NKG2D)
PD-1
CTLA-4
IFNα/β
IFNγ
TNFα
IL-2
IL-4
IL-5
IL-6
IL-8
IL-9
IL-10
IL-12
IL-13
IL-15
IL-17
IL-18
IL-21
IL-22
IL-23
IL-25
GM-CSF
CD107a
CD107b
TGFβ
パーフォリン
グランザイムB
CD27(CD70L)
CD154(CD40L)
CD137(4-1BB)
CD44
CD45RA
CD45RO
CD278(ICOS)
CD127(IL-7RA)
CD183(CXCR3)
CD197(CCR7)
CD39
CD73
IL-1a/IL-1b
G-CSF
RANTES
EXOTAXIN
MIP-1b
MCP-1
EGF
HGF
VEGF
IL-1RA
IL-7
IP-10
IL-2R
MIG
(iv)-標識抗体(例えば、蛍光)を使用して、さまざまな特徴的なマーカー、例えば以下を発現する特定の免疫細胞集団を特定することができる:
T細胞/γδ T細胞:
CD3(例えば、抗ヒトCD3-PerCP/Cy5.5)
CD69(例えば、抗ヒトCD69-APC)
CD4
CD8
NK細胞/γδ T細胞:
CD107a/CD107b(例えば、抗ヒトCD107a-AlexaFluor 488)
CD335(例えば、抗ヒトCD335またはNKp46-PE)
CD16
CD56
NKT細胞:
CD335(例えば、抗ヒトCD335またはNKp46-PE)
CD3
CD16
CD56
aGalCer-CD1dテトラマー
【0367】
(v)-最良マッチングのための共培養物からのELISPOT/フローサイトメトリーデータの分析を、以下のスコアによって決定できる:
【0368】
(I)免疫学的適合性スコア(ICS)
-PBMC単独に対する共培養物における活性化/エフェクター機能パラメータ(上記の少なくとも1つ)の比が約1~1.05以下である場合、細胞媒体が免疫応答に対する効果を有さない、または応答を低下させる、すなわち、これが免疫学的に適合性のマッチングであることを示す。
【0369】
-中程度に免疫学的に互換性のマッチングは、比が1.05~1.5の範囲内にある場合である。
【0370】
-最小限に免疫学的に適合性のマッチングは、比が1.5~2の範囲内にある場合である。
【0371】
-免疫学的に不適合性のマッチングは、比が2超である場合である。
【0372】
-活性化/エフェクターパラメータは、ウイルス増幅の減少との確立された関連性に基づいて重み付けでき、例えば、IFNγおよびCD107aは、ウイルス増幅への影響において有意であると見なされ、他の活性化/エフェクターパラメータからのデータが利用可能になると、有意水準/重みを繰り返し更新する(インシリコ分析の節を参照)。
【0373】
-同種細胞媒体に応答する免疫細胞集団も、ウイルス増幅の減少との確立された関連性に基づいて重み付けでき、例えば、NK、NKTおよびγδ T細胞亜集団を含むT細胞は有意と見なされ、他の集団/亜集団との関連性の新たなデータが利用可能になると、有意水準/重み亜集団を繰り返し更新する(インシリコ分析の節を参照)。
【0374】
-以下の通り、各患者-細胞媒体の組み合わせについて選択される免疫細胞亜集団および活性化/エフェクターパラメータ(p1、2、3等)のICS比の平均に基づいて累積ICSスコアを計算する:
NK細胞:ICS(NK)=[ICS(p1)+ICS(p2)+ICS(p3)+..ICS(pn)]/n
T細胞:ICS(T)=[ICS(p1)+ICS(p2)+ICS(p3)+..ICS(pn)]/n
NKT細胞:ICS(NKT)=[ICS(p1)+ICS(p2)+ICS(p3)+..ICS(pn)]/n
式中、「n」は、検討中の関連する活性化/エフェクター機能パラメータの総数である(例えば、IFNγおよびCD107aのみが評価されている場合、n=2)。
【0375】
-各患者-細胞媒体の組み合わせおよび全ての関連するエフェクター集団の組み合わせについての累積平均ICSスコアを、以下の式を使用して計算できる:
ICS[NK(1)+T(2)+NKT(3)+..E(n)]=[ICS(NK,1)+ICS(T,2)+ICS(NKT,3)+..ICS(E,n)]/n
式中、「n」は、検討中の関連するエフェクター免疫細胞集団/亜集団の総数である(例えば、NK、T、およびNKT細胞のみが評価されている場合、n=3、他の集団、例えばgd(γδ)T細胞も考慮される場合、n=4等)。
【0376】
(II)免疫学的抑制スコア(ISS)
-細胞媒体によって媒介される抗ウイルス免疫の抑制を、以下の式を使用して、患者と細胞媒体の各組み合わせについて、ならびに各免疫細胞サブタイプおよびエフェクターパラメータについて評価して、免疫学的抑制スコア(ISS;抗ウイルス細胞性免疫の%抑制)を計算できる:
ISS=(PBMC+ウイルスの共培養物における%活性化エフェクター + PBMC+細胞媒体の共培養物における%活性化エフェクター - PBMC+ウイルス+細胞媒体の共培養物における%活性化エフェクター/PBMC+ウイルスの共培養物における%活性化エフェクター + PBMC+細胞媒体の共培養物における%活性化エフェクター)×100
式中、%活性化エフェクターは、バックグラウンドまたはPBMC単独対照の%活性化エフェクターを差し引くことによって最初に正規化される。
【0377】
-0%以上のISSが好ましい。0%のISSは免疫抑制がないことを示す、または負のISS値は、細胞媒体が、抗ウイルス免疫を抑制するのではなくむしろ刺激することを示している可能性があるが、これらの値は細胞媒体がウイルスを増幅する能力を単に反映している可能性があり、よって下流で抗ウイルス免疫を抑制するのではなくむしろ増強すると予想することができるので、このような結論は決定的ではない。
【0378】
-負の%値は決定的ではない。
【0379】
-より高いISS値は、細胞媒体が抗ウイルス免疫を抑制するより高い能力、およびウイルスが腫瘍細胞に拡散する改善された能力を示す。しかしながら、高いIVASスコアおよび低いICSスコアは高いウイルス増幅と相関し、抗ウイルス応答の抑制をより困難にする可能性があるため、全体的な有意性は、IVASおよびICSなどの他のスコアリング基準にも依存する。
【0380】
-以下の通り、各患者-細胞媒体の組み合わせについてすべての応答免疫細胞亜集団および重要な活性化/エフェクターパラメータ(p1、2、3等)についてのISS%抑制の平均に基づいて累積ISSスコアを計算する:
NK細胞:ISS(NK)=[ISS(p1)+ISS(p2)+ISS(p3)+...ISS(pn)]/n
T細胞:ISS(T)=[ISS(p1)+ISS(p2)+ISS(p3)+...ISS(pn)]/n
NKT細胞:ICS(NKT)=[ISS(p1)+ISS(p2)+ISS(p3)+...ISS(pn)]/n
式中、「n」は、検討中の関連する活性化/エフェクター機能パラメータの総数である(例えば、IFNγおよびCD107aのみが評価されている場合、n=2)。
【0381】
-各患者-細胞媒体の組み合わせおよび全ての関連するエフェクター集団の組み合わせについての累積平均ISSスコアを、以下の式を使用して計算できる:
ISS[NK(1)+T(2)+NKT(3)+...E(n)]=[ISS(NK,1)+ISS(T,2)+ISS(NKT,3)+...ISS(E,n)]/n
式中、「n」は、検討中の関連するエフェクター免疫細胞集団/亜集団の総数である(例えば、NK、T、およびNKT細胞のみが評価されている場合、n=3、他の集団、例えばgd(γδ)T細胞も考慮される場合、n=4等)。
【0382】
(c)-共培養物の上清を分析することによる免疫調節(免疫特権/免疫抑制効果)の測定
当技術分野で既知の方法、例えば、ELISAおよびLuminexアッセイを使用して、共培養物の上清中の以下の活性化因子/エフェクター機能パラメータを測定することができる:
IFNα/β
IFNγ
TNFα
IL-2
IL-4
IL-5
IL-9
IL-10
IL-12
IL-13
IL-15
IL-18
IL-21
IL-22
IL-23
IL-25
GM-CSF
IL-17
IL-6
TGFβ
パーフォリン
グランザイムB
IL-1a/IL-1b
G-CSF
RANTES
EXOTAXIN
MIP-1b
MCP-1
EGF
HGF
VEGF
IL-1RA
IL-7
IP-10
IL-2R
MIG
IL-8
【0383】
これらの測定値(上清)が起源の細胞を特定することはできないが、共培養物について記載される方法で累積ICS(および/またはISS)スコアを測定することはできる。
【0384】
-フローサイトメトリーの結果を確認する、または細胞媒体によって誘導される活性化/エフェクター免疫細胞がエフェクターサイトカイン/ケモカインの産生の有意な増加に関連している患者についての累積スコアを補正する。これは、免疫エフェクターの頻度だけでなく、それらの活性の大きさも説明する。
【0385】
(d)-対象特異的な適合性に基づくウイルス療法のための細胞媒体の選択
本明細書で提供される方法に従って対象とマッチングするように選択される細胞媒体は、以下の特徴のうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つを有する:
(1)対象由来の細胞の非存在下での最大ウイルス増幅(VASスコア)
(2)対象由来の細胞の存在下での最大ウイルス増幅(IVASスコア);
(3)抗細胞媒体免疫学的応答の最小誘導(ICSスコア);
(4)抗ウイルス免疫学的応答の誘導を抑制する最大能力(ISSスコア)。
(5)腫瘍に向かって移動し、腫瘍および/または腫瘍関連間質細胞を動員する最大能力(このような細胞/腫瘍にアクセスできる場合;MRSスコア)。
(6)本明細書で提供される一定の遺伝子座での最小ハプロタイプミスマッチ。
【0386】
-1つ超の細胞媒体または細胞媒体のパネルを対象とのマッチングについてスクリーニングする場合、細胞媒体選択肢を、ハプロタイプミスマッチの数に基づいてランク付けでき、上記の(1)~(5)に示されるスコアのうちの1つ、または1つ超の種類のマッチングアッセイを実施する場合、上記の(1)~(5)に示されるスコアのいずれかの2つ以上の組み合わせを使用して累積ランクを取得できる。細胞媒体を、例えば、VAS、IVAS、ICS、ISSおよびMRSスコアのうちの2つ以上の最良の組み合わせに従ってランク付けできる。
累積RANKスコア=[RANK(VAS)+RANK(IVAS)+RANK(ICS)+RANK(ISS)+(任意の)RANK(MRS)]/5(5つのスコア全てが取得される場合;より小さいスコアが取得される場合、2、3または4)
【0387】
これらのアッセイから十分な量のマッチングデータが収集された場合、これらのスコアの各々が、インシリコ分析で追加の重み係数の対象となる可能性がある。
【0388】
(e)-インシリコ分析は以下の通り実施できる:
各対象および細胞媒体を、それらのタイピング特性、例えば以下について分析する、
古典的MHC I/IIハプロタイプ;
KIRハプロタイプおよびリガンド;
非古典的MHCハプロタイプ(HLA-E;CD1a、b、c、d;MICA/B)。
【0389】
データバンクを確立するために、特定のウイルス/細胞媒体ペアを用いた対象免疫細胞(PBMC/免疫細胞/血液)の各共培養アッセイからデータを収集する。
【0390】
データバンクの各アッセイで確立されたマッチング適合性スコア(IVAS、ICS、ISS)は、細胞媒体と対象のハプロタイプとの間のマッチングの程度と相関し、特定の遺伝子座のミスマッチとマッチング適合性スコア(IVAS、ICS、ISS)のうちの1つまたは全てに対する有意な悪影響との間の負の相関を確立する。
【0391】
このような相関は、統計学的に有意であることが分かった場合、「インシリコ」事前スクリーニングを行い、対象との望ましくないミスマッチ(乏しいマッチング適合性スコアに関連する)の存在に基づいて不適切な細胞媒体を排除するために使用できる。
【0392】
さらに、対象を治療するために選択および使用される細胞媒体とウイルスのすべての組み合わせについて確立されたマッチング適合性スコアは、データベースに収集され、治療の最初の48時間以内(例えば、24時間~3日間の範囲)に治療された対象の血液または腫瘍から得られるウイルス増幅データとさらに相関し、インビボでの実際の治療有効性の尺度として使用できる。
【0393】
マッチング適合性スコアとインビボでの実際の治療有効性との間の相関分析を使用して、より高い重み係数をインビボでの治療有効性と密接に関連する/これを予測するIVAS、ICSまたはISSスコアに割り当てることにより、最適な細胞媒体を選択するために使用される累積RANKスコア式を調整/改善できる。
【0394】
D.改善された送達および/またはマッチング能力を有する改変細胞媒体
腫瘍溶解性ウイルスの対象への送達を促進する、および/または対象とのマッチングを改善するようにその特性が改変される細胞媒体(担体細胞)も本明細書で提供される。本明細書で提供される細胞媒体(例えば、幹細胞、免疫細胞、がん細胞)のいずれも、このように改変できる。このような特性は、それだけに限らないが、細胞送達媒体におけるウイルス増幅の改善された促進、細胞媒体および/またはウイルスに対する免疫応答を回避する改善された能力、ならびに/あるいは改善された免疫抑制を含むことができる。実施形態では、免疫調節能力(例えば、免疫応答の回避、免疫応答の抑制)が、局所的および/または一過的であることができ、腫瘍または他の癌性細胞におけるウイルスの送達、蓄積および感染を促進するのに必要な程度まで存在する。
【0395】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される改変された細胞媒体を、本明細書で提供されるマッチングアッセイ(C節)を使用してスクリーニングして、腫瘍溶解性ウイルスを特定の対象および/または特定のがん/腫瘍型に送達するための細胞媒体としてのその適切性を確認することができる。実施形態では、複数の改変された細胞媒体/改変された細胞媒体のパネルを、本明細書で提供されるマッチングアッセイによってスクリーニングし、それらのマッチング能力の順にランク付けできる。いくつかの例では、細胞媒体のパネルが、改変されていない細胞媒体を含むことができる。
【0396】
本明細書で提供される改変された細胞媒体は、以下に記載されるように、この節および本明細書の他の場所に示される改変のうちの1つ以上を含むことができる:
【0397】
(i)改善されたウイルス増幅および/または免疫調節のために感作/保護された細胞媒体
ウイルス送達を促進するための改善されたウイルス増幅および/免疫調節ならびに/あるいはウイルス療法で治療される対象との改善されたマッチングのために改変される細胞媒体が本明細書で提供される。改変は、以下の実施形態のうちの1つ以上を含むことができる:実施形態では、細胞媒体を以下のうちの1つ以上で前処理/搭載することによって、そのウイルス増幅能力を増強するように、細胞媒体を感作させることができる:IL-10、TGFβ、VEGF、FGF-2、PDGF、HGF、IL-6、GM-CSF、成長因子、RTK/mTORアゴニスト、wntタンパク質リガンドおよびGSK3阻害剤/アンタゴニスト(例えば、チデグルシブ、バルプロ酸)。他の実施形態では、例えば、細胞媒体を、IFN I型/II型受容体を妨害する、および/またはそれだけに限らないが、IFNAR1/IFNAR2シグナル伝達、IFNGR1/IFNGR2シグナル伝達、STAT1/2シグナル伝達、Jak1シグナル伝達(例えば、トファシチニブ、ルキソリチニブ、バリシチニブ)、Jak2シグナル伝達(例えば、SAR302503、LY2784544、CYT387、NS-018、BMS-911543、AT9283)、IRF3シグナル伝達、IRF7シグナル伝達、IRF9シグナル伝達、TYK2シグナル伝達(例えば、BMS-986165)、TBK1シグナル伝達(例えば、BX795、CYT387、AZ13102909)を含む下流シグナル伝達を妨害する小分子またはタンパク質阻害剤で前処理/搭載することによって、抗ウイルス状態の誘導を遮断するように細胞媒体を感作させることができる。
【0398】
いくつかの実施形態では、細胞媒体を、IFNシグナル伝達/応答性を妨害する/調節解除するためのHDAC阻害剤で前処理/搭載することができ;このような阻害剤は、それだけに限らないが、ボリノスタット、ロミデプシン、チダミド、パノビノスタット、ベリノスタット、バルプロ酸、モセチノスタット、アベキシノスタット、エンチノスタット、SB939、レスミノスタット、ギビノスタット、キシノスタット、HBI-8000、ケベトリン、CUDC-101、AR-42、CHR-2845、CHR-3996、4SC-202、CG200745、ACY-1215、ME-344、スルフォラファンおよび/またはトリコスタチンを含むことができる。他の実施形態では、細胞媒体を、STING、PKR、RIG-1、MDA-5、OAS-1/2/3、AIM2、MAVS、RIP-1/3、DAI(ZBP1)によって媒介されるウイルス感知および/または抗ウイルス防御経路のアンタゴニストで前処理/搭載することができ;このようなアンタゴニストは、それだけに限らないが、K1、E3L、K3Lタンパク質(ワクシニア)、NS1/NS2タンパク質(インフルエンザ)、NS3-4A(C型肝炎)、NPおよびZタンパク質(アレナウイルス)、VP35(エボラウイルス)、US11、ICP34.5、ICP0(HSV)、M45(MCMV)およびXタンパク質(BDV:ボルナ病ウイルス)のうちの1つ以上を含むことができる。実施形態では、細胞をウイルス起源のMHCアンタゴニスト、例えば、A40R MHCIアンタゴニスト(ワクシニア)、NefおよびTAT(HIV)、E3-19K(アデノウイルス)、ICP47(HSV-1/2)、CPXV012およびCPXV203(牛痘)、ORF66(VZV)、EBNA1、BNLF2a、BGLF5、BILF1(EBV)、US2/gp24、US3/gp23、US6/gp21、US10、US11/gp33(hCMV)、Rh178/VIHCE(RhCMV)、U21(HHV-6/7)、LANA1、ORF37/SOX、kK3/MIR1、kK5/MIR2(KSHV)、mK3(MHV-68)、UL41/vhs(a-ヘルペスウイルス、HSV、BHV-1、PRV)、UL49.5(バリセロウイルス、BHV-1、EHV-1/4、PRV)ならびにm4/gp34、m6/gp48、m27、m152/gp40(mCMV)のうちの1つ以上で前処理/搭載することなどによって、細胞媒体を同種不活化/拒絶決定因子から保護することができる。
【0399】
実施形態では、本明細書で提供される改変された細胞媒体を、ウイルス起源のB2Mアンタゴニスト、例えば、UL18(HCMV)で前処理/搭載することができる。他の実施形態では、細胞媒体を、MIC-AおよびMIC-B(NKG2Dリガンド)のアンタゴニスト、例えば、kK5(KHSV)で前処理/搭載することができる。いくつかの実施形態では、細胞媒体を、それだけに限らないが、免疫FAS/TNF/グランザイムB誘導アポトーシスの阻害剤(例えば、エクトロメリア/ワクシニアウイルスSP1-2/CrmA)、IL-1/NFkB/IRF3アンタゴニスト(例えば、ワクシニアウイルスにコードされるN1)、IL-1およびTLRアンタゴニスト(例えば、IL-18結合タンパク質、A46R、A52R)、IL-1βアンタゴニスト(例えば、B15R/B16R)、TNFα遮断薬(例えば、ワクシニアウイルスCmrC/CmrE)、IFNα/β遮断薬(例えば、ワクシニアウイルスB18R/B19R)ならびにIFNγ遮断薬(例えば、ワクシニアウイルスB8Rを含むウイルス起源の1つ以上の免疫抑制因子で前処理/搭載することができる。実施形態では、細胞媒体を、TAP1/2および/またはタパシンの小分子阻害剤で前処理/搭載することができる。
【0400】
実施形態では、本明細書で提供される改変された細胞媒体を、例えば、細胞媒体を補体因子(例えば、C1、C2、C3、C4、C5、MBL)の小分子阻害剤で前処理/搭載することによって、補体から保護することができ;このような阻害剤は、それだけに限らないが、VCP(ワクシニアウイルス補体制御タンパク質)、B5R(ワクシニアウイルス補体阻害剤)、scFv抗CD1q/CD1r/CD1s、抗C3、抗C5(例えば、エクリズマブ)、補体ファミリーのペプチドC3阻害剤(例えば、Cp40)、ヒト可溶性膜(s/m)タンパク質(例えば、s/mCR1(CD35)、s/mCR2(CD21)、s/mCD55、s/mCD59)、ヒト補体因子Hおよび誘導体、コブラ毒因子ならびに補体阻害活性を有する誘導体のうちの1つ以上を含むことができる。
【0401】
感作された細胞媒体は、当技術分野で既知の方法によって作製できる。例えば、細胞媒体を、細胞バンキング、ウイルス感染または対象への投与前に10分~48時間以上、例えば、細胞バンキング、ウイルス感染または対象への投与前に、約もしくは少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55もしくは60分間または約もしくは少なくとも1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47もしくは48時間以上、インキュベートすることによって感作剤、例えばタンパク質または小分子アゴニスト/アンタゴニストで前処理することができる。タンパク質/脂質不溶性小分子の細胞への搭載を増強するために、リポフェクタミンまたは代替のタンパク質トランスフェクション試薬、例えば、Xfect(Takara)、Pierce Pro-Ject(ThermoFisher)、Pro-DeliverIN(OZ Biosciences)、TurboFect(Fermentas)などを使用できる。
【0402】
(ii)ウイルス媒介殺傷に対する耐性のために感作される(延長された生存期間および改善された局所免疫抑制のため)
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される改変された細胞媒体を、細胞媒体をウイルス媒介殺傷に対して耐性にする1つ以上の薬剤で前処理/搭載することができる。例えば、いくつかの実施形態では、細胞媒体を、I型および/またはII型インターフェロンで前処理することができる。他の実施形態では、細胞媒体を、抗ウイルス状態のアゴニスト/誘導物質(例えば、STING、PKR、RIG-I、MDA-5)で前処理することができる。このような「protected」(保護された)細胞媒体を作製するために、任意の自家または同種細胞媒体を、インターフェロンI型(例えば、IFNα/β)および/またはII型(例えば、IFNγ)ならびに/あるいはSTING、PKR、RIG-I、MDA-5、OAS-1/2/3、AIM-2、MAVS、RIP-1/3、DAI(ZBP1)経路のアゴニストで、ウイルス感染なしでまたはウイルス感染の前に、30分~最大48時間以上、例えば約もしくは少なくとも30分または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47もしくは48時間以上処理することができる。
【0403】
これらの「protected」(保護された)細胞媒体は、このように保護されておらず、ウイルスを含む、マッチング/感作/操作された細胞媒体と同時に別個の組成物として投与することができ;保護された細胞媒体は、延長された生存期間および/または改善された局所免疫抑制を提供することができる。いくつかの実施形態では、保護された細胞媒体を、例えば、このように保護されておらず、ウイルスを含む、マッチング/感作/操作された細胞媒体の投与の前後約もしくは少なくとも10、15、20、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47もしくは48時間または1、2、3、4もしくは5日以内に投与することができる。
【0404】
(iii)ウイルス増幅および/または免疫調節を改善するために操作された細胞媒体
改善されたウイルス増幅および/または免疫調節を促進するための遺伝子の一過的または永続的な発現または抑制のために操作された改変された細胞媒体も本明細書で提供される。細胞媒体を、以下の実施形態のうちの1つ以上で操作することができる。本明細書で提供される細胞媒体のいずれも、本明細書で提供される細胞媒体を感作させる、保護するおよび/または操作するための実施形態の1つまたは組み合わせを使用して改変することができる。
【0405】
いくつかの実施形態では、細胞媒体を、インターフェロン(IFN)によって誘導される抗ウイルス状態に応答しないように操作することができる。例えば、細胞媒体を、例えば、I型/II型インターフェロン受容体発現;IFN α/β、IFNγ受容体発現;IFNAR1/IFNAR2受容体発現;IFNGR1/IFNGR2受容体発現;STAT1/2受容体発現;Jak1/2受容体発現;IRF3受容体発現;IRF7受容体発現;IRF9受容体発現;TYK2キナーゼ発現およびTBK1キナーゼ発現のうちの1つ以上の抑制などのIFN I型/II型受容体および/または下流シグナル伝達の一過的または永続的な(例えば、遺伝子座の切除)抑制のために操作することができる。
【0406】
実施形態では、細胞媒体を、それだけに限らないが、PKR、RIG-I、MDA-5、cGAS、STING、TBK1、IRF3、OAS-1/2/3、AIM2、MAVS、RIP-1/3およびDAI(ZBP1)のうちの1つ以上を含むサイトゾルウイルスDNA/RNA感知および抗ウイルス防御機構の要素の一過的または永続的な抑制のために操作することができる。他の実施形態では、細胞媒体を、例えば、STING、PKR、RIG-1、MDA-5、OAS-1/2/3、AIM2、MAVS、RIP-1/3、DAI(ZBP1)によって媒介されるウイルス感知および抗ウイルス防御経路のアンタゴニストの一過的または永続的な発現のために操作することができ;これらは、それだけに限らないが、K1、E3L、K3L(ワクシニア);NS1/NS2(インフルエンザA);NS3-4A(C型肝炎);NP、Zタンパク質(アレナウイルス);VP35(エボラウイルス);US11、ICP34.5、ICP0(HSV);M45(MCMV);およびXタンパク質(BDV:ボルナ病ウイルス)のうちの1つ以上を含むことができる。
【0407】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される改変された細胞媒体を、T細胞およびNKT細胞のうちの1つ以上による同種認識、ならびにγδ T細胞の適応免疫応答を回避するように操作することができる。例えば、細胞媒体を、以下のうちの1つ以上の発現の一過的または永続的な抑制のために操作することができる:MHCクラスI分子(HLA-A、B、C);MHCクラスII分子(HLA-DP、DQ、DR);MHC様分子(CD1a/b/c/d);またはMHCクラスI、MHCクラスII、MHC様分子の転写もしくは発現の調節因子(例えば、TAP1/2、タパシン、ベータ2ミクログロブリン、CIITA、RFXANK、RFX5およびRFXAP)。他の例では、細胞媒体を、以下のうちの1つ以上の一過的または永続的な発現のために操作することができる:ウイルス起源のB2Mアンタゴニスト(例えば、UL18(HCMV);および/またはウイルス起源のMHCアンタゴニスト(例えば、A40R MHCI(ワクシニア);Nef、TAT(HIV);E3-19K(アデノウイルス);ICP47(HSV-1/2);CPXV012、CPXV203(牛痘);EBNA1、BNLF2a、BGLF5、BILF1(EBV);ORF66(VZV);US2/gp24、US3/gp23、US6/gp21、US10、US11/gp33(hCMV);rh178/VIHCE(RhCMV);U21(HHV-6/7);LANA1、ORF37/SOX、kK3/MIR1、kK5/MIR2(KHSV);mK3(MHV-68);UL41/vhs(a-ヘルペスウイルス、HSV、BHV-1、PRV);UL49.5(バリセロウイルス、BHV-1、EHV-1/4、PRV);およびm4/gp34、m6/gp48、m27、m152/gp40(mCMV)のうちの1つ以上)。
【0408】
実施形態では、細胞媒体を、NK細胞による同種認識および/またはγδ T細胞の自然免疫応答を回避するように操作することができる。例えば、細胞媒体を、以下のうちの1つ以上の発現の一過的または永続的な抑制のために操作することができる:膜結合MICA/B(NKG2Dリガンド);膜結合PVR(DNAM-1リガンド);膜結合ネクチン-2(DNAM-1リガンド)。他の例では、細胞媒体を、以下のうちの1つ以上の一過的または永続的な発現のために操作することができる:MIC-AおよびMIC-B(NKG2Dリガンド)のアンタゴニスト(例えば、kK5(KHSV));NKG2D受容体の拮抗薬(例えば、牛痘OMCP);NKp30、NKp44、NKp46受容体を標的化するNCRのアンタゴニスト(例えば、HA(血球凝集素-ワクシニアおよび他のウイルス));NK抑制性受容体(KIR)のリガンド(例えば、HLA-Bw4;HLA-C2);NK抑制性受容体(NKG2a/CD94)のリガンド(例えば、単独のまたはHLA-E結合ペプチドを作製し、HLA-E表面発現を安定化させるために21M HLA-Bリガンドと組み合わせたHLA-Eおよび誘導体)。
【0409】
一定の実施形態では、細胞媒体を、ヒトまたはウイルス起源の免疫抑制因子を発現するように操作することができる(例えば、同種抗細胞媒体または抗ウイルス免疫応答を防止/阻害するため)。ヒト起源の因子には、それだけに限らないが、IDO、アルギナーゼ、TRAIL、iNOS、IL-10、TGFβ、VEGF、FGF-2、PDGF、HGF、IL-6、sMICA、sMICB、sHLA-G、HLA-E、PD-L1、FAS-L、B7-H4、ならびにNKおよび/またはNKTおよび/またはγδ T細胞を標的化するまたは枯渇させる一本鎖抗体(scFv)が含まれる。ウイルス起源の因子には、それだけに限らないが、エクトロメリア/ワクシニアウイルスSPI-2/CrmA(免疫FAS/TNF/グランザイムB誘導アポトーシスの阻害剤);ワクシニアウイルスにコードされるN1(IL-1/NFkB/IRF3アンタゴニスト);HA(NKp30、NKp44、NKp46を標的化するNCRアンタゴニスト);IL-18結合タンパク質;A40R;A46R;A52R;B15R/B16R;TNFα遮断薬(例えば、ワクシニアウイルスCmrC/CmrE);IFN α/β遮断薬(例えば、ワクシニアウイルスB18R/B19R);IFNγ遮断薬(例えば、ワクシニアウイルスB8R);およびその他のIL-1/IL-1β/NFKB/IRF3/NCR/MHCI/TLR/NKG2Dアンタゴニストが含まれる。
【0410】
いくつかの実施形態では、細胞媒体を、他の方法では不許容性の細胞媒体および/または腫瘍細胞のウイルス感染を促進するがんまたは幹細胞由来因子を発現するように操作することができる。例えば、細胞媒体を、以下のうちの1つ以上を発現するように操作することができる:がん関連抗原(例えば、がん精巣抗原(MAGE-A1、MAGE-A3、MAGE-A4、NY-ESO-1、PRAME、CT83、SSX2、BAGEファミリー、CAGEファミリー);癌胎児性抗原(AFP、CEA);癌遺伝子/腫瘍抑制因子(myc、Rb、Ras、p53、テロメラーゼ);分化抗原(MELAN、チロシナーゼ、TRP-1/2、gp100、CA-125、MUC-1、ETA);GM-CSF;IL-10;TGFβ;VEGF;FGF-2;PDGF;HGF;IL-6;成長因子;RTK/mTORアゴニスト;およびwntタンパク質リガンド。
【0411】
実施形態では、改変された細胞媒体を、それだけに限らないが、以下のうちの1つ以上を含む、補体および/または中和抗体の機能を妨害する因子を発現するように操作することができる:補体因子(C1、C2、C3、C4、C5、MBL)のタンパク質アンタゴニスト;ワクシニアウイルス補体制御タンパク質(VCP);ワクシニアウイルス補体阻害剤(B5R);scFv抗CD1q/CD1r/CD1s;抗C3、抗C5(例えば、エクリズマブ);コンプスタチンファミリーのペプチドC3阻害剤(例えば、Cp40);ヒト可溶性膜(s/m)タンパク質(例えば、s/mCR1(CD35)、s/mCR2(CD21)、s/mCD55、s/mCD59);ヒト補体因子Hおよび誘導体、ならびにコブラ毒因子および補体抑制活性を有する誘導体。
【0412】
本明細書で提供される操作された細胞媒体を作製するためなどの、細胞を操作するいくつかの方法が当技術分野で既知である。このような方法には、それだけに限らないが、以下が含まれる:
【0413】
(a)CRISPR-CAS9標的化抑制(永続的な遺伝子/遺伝子座の欠失)
細胞媒体を、CAS9タンパク質と目的の遺伝子に特異的なガイドRNA(gRNA)の両方を発現するDNAプラスミドでトランスフェクトすることができる。ゲノムのgRNA-CAS9媒介切断は、ドナーDNAプラスミドを使用して修復でき、これにより、標的化遺伝子が特異的に欠失し、遺伝子にコードされたタンパク質が永続的かつ完全に失われる。タンパク質発現の喪失は、PCR(DNAレベル)、ノーザンブロット/FISH(RNAレベル)、またはウエスタンブロットもしくはフローサイトメトリーなどの任意のタンパク質アッセイを使用して検証できる。
【0414】
(b)CRISPR-CAS9標的化発現(永続的な遺伝子/遺伝子座の挿入)
この方法を使用して、目的の遺伝子を細胞媒体ゲノムの特定の位置に挿入することができる。細胞媒体を、CAS9タンパク質と特定の挿入位置に特異的なガイドRNA(gRNA)の両方を発現するDNAプラスミドでトランスフェクトすることができる。ゲノムのgRNA-CAS9媒介切断は、ドナーDNAプラスミドを使用して修復でき、このプラスミドは、DNA切断/二本鎖切断の位置の両側に細胞媒体ゲノムの配列が隣接する目的の挿入遺伝子を有し、ランダムではなく、特定のゲノム位置への目的の遺伝子の相同組換え媒介挿入を引き起こす。成功した挿入およびタンパク質発現は、PCR(DNAレベル)、ノーザンブロット/FISH(RNAレベル)、または例えば、ウエスタンブロットもしくはフローサイトメトリーなどの任意のタンパク質アッセイを使用して検証できる。
【0415】
(c)RNA干渉(shRNA/マイクロRNAのレトロウイルス/レンチウイルス/トランスポゾン媒介形質導入)(永続的な遺伝子抑制)
細胞媒体ゲノムへの安定な組込みのために、目的の特定の遺伝子/タンパク質を標的化するshRNA/マイクロRNAを、レトロウイルス/レンチウイルス/トランスポゾンベクターに設計およびクローニングすることができる。細胞媒体をベクターで形質導入することができ、ベクターにコードされた選択マーカーを使用して、首尾よく形質導入された細胞を選択することができる。目的の遺伝子のshRNA媒介抑制は、例えばノーザンブロットおよびタンパク質アッセイを使用して評価できる。
【0416】
(d)レンチウイルス/γ-レトロウイルス媒介ランダム/マルチコピー遺伝子挿入
細胞媒体ゲノムへの安定なランダム組込みのために、目的の特定の遺伝子/タンパク質を、レトロウイルスまたはレンチウイルスベクターに設計および/またはクローニングすることができる。細胞媒体をウイルスベクターで形質導入することができ、ベクターにコードされた選択マーカーを使用して、首尾よく形質導入された細胞を選択することができる。目的の遺伝子のshRNA媒介抑制は、ノーザンブロットおよびウエスタンブロット、フローサイトメトリーなどの任意のタンパク質アッセイ等を使用して評価される。
【0417】
(e)トランスポゾン媒介ランダム/マルチコピー遺伝子挿入
目的の特定の遺伝子/タンパク質を、PiggyBac(SBI System Biosciences)または等価なものなどの哺乳動物トランスポゾンベクター系に設計および/またはクローニングすることができる。細胞媒体を、逆方向末端反復(ITR)配列およびトランスポサーゼベクターが隣接する目的の遺伝子(cDNA)を含むトランスポゾンベクターでコトランスフェクトすることができる。トランスポサーゼ酵素は、目的の遺伝子のTTAA染色体組込み部位への移入を媒介することができる。首尾よく形質導入された細胞を、任意に、ベクターにコードされた選択マーカーを使用して選択することができる。成功した挿入およびタンパク質発現は、PCR(DNAレベル)、ノーザンブロット/FISH(RNAレベル)、または例えば、ウエスタンブロットもしくはフローサイトメトリーなどの任意のタンパク質アッセイを使用して検証できる。
【0418】
(f)目的のタンパク質の発現の一過的遺伝子抑制は、例えば、RNA干渉を介して達成することができる。siRNA/マイクロRNAを、当技術分野で既知の確立された方法論、例えば:塩化カルシウムトランスフェクション;リポフェクション;Xfect;電気穿孔;ソノポレーションおよび細胞圧搾(例えば、siRNAを導入するため)のいずれかによって細胞媒体にトランスフェクトすることができる。
【0419】
(g)一過的遺伝子発現は、例えば、目的の遺伝子を、所望の産物をコードするプラスミドDNAを有する細胞媒体にトランスフェクトすることができる適切な哺乳動物プラスミド発現ベクターにクローニングすることによって達成することができる。あるいは、目的の遺伝子/タンパク質をコードするmRNAを細胞媒体に直接トランスフェクトすることができる。トランスフェクションは、確立された方法論、例えば:塩化カルシウムトランスフェクション;リポフェクション;Xfect;電気穿孔;ソノポレーションおよび細胞圧搾(例えば、siRNAを導入するため)のいずれかを使用して実施することができる。
【0420】
細胞媒体の例示的な改変
1.抗ウイルス状態の誘導を抑制する
形質転換されていない幹細胞およびいくつかの腫瘍細胞は、通常、腫瘍溶解性ウイルスのための細胞媒体/担体細胞としてそれらを使用する能力を損なうインタクトな抗ウイルス機構を有する。I型およびII型インターフェロンは、幹細胞および一部の腫瘍細胞における抗ウイルス状態の強力な誘導物質であり、これらの細胞が感染してウイルス増幅を支持する能力を妨害することができる。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書で提供され、本明細書で提供される方法で使用される細胞媒体が、ウイルス感染の検出および/または抗ウイルス状態/免疫応答の開始を遮断するインターフェロンシグナル伝達の1つ以上の阻害剤を搭載されるまたは発現するように操作される。例えば、Jak1/Jak2のインターフェロンシグナル伝達小分子阻害剤であるルキソリチニブは、さまざまな幹細胞および腫瘍細胞をウイルス感染、増幅および拡散に感作させる(感受性にする)ことによって、これらの細胞が腫瘍溶解性ウイルスの担体として機能する治療能を増強するために首尾よく使用できる(例えば、実施例6参照)。
【0421】
2.細胞媒体を補体から保護する
ヒト血清は、ウイルス増幅が開始および/またはピークに達する前にウイルス感染担体細胞を直接攻撃および殺傷すること、または担体細胞から放出された裸のウイルス粒子を中和し、よって、標的腫瘍細胞へのウイルスの拡散を制限することを含む、担体細胞に対する有害効果を有することができる。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書で提供され、本明細書で提供される方法で使用される細胞媒体が、1つ以上の補体遮断因子を搭載されるまたは発現するように操作される。例えば、コンプスタチン、補体C3活性化のペプチド阻害剤、または中和抗ヒトC3a/C3a(desArg)/C3抗体を使用して、担体細胞内のウイルスペイロードを増加させ、またウイルス増幅を増強し、標的腫瘍に拡散させることができる(例えば、実施例7参照)。
【0422】
3.同種認識/拒絶を回避する
本明細書に実証されるように、幹細胞担体(細胞媒体)は、同種認識を回避し、NK細胞、T細胞、gd(γδ)T細胞および/またはNK細胞マーカー(NKp46)とT細胞マーカー(CD3)の両方を発現する「NKT」細胞の集団を積極的に免疫抑制する能力により、同種障壁に対して腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを首尾よく増幅および送達することができる。しかしながら、「incompatible/resistant」(不適合性/耐性)レシピエントのサブセットでは、幹細胞担体が同種認識を回避できない場合があり、結果としてウイルスの非存在下でも、担体幹細胞に対する迅速で強力な同種免疫応答が開始される。これらの速い同種応答は、抗幹細胞細胞傷害性の発生およびインターフェロン(例えば、IFNγ)媒介抗ウイルス状態の誘導に関連し、担体細胞殺傷と抗ウイルス応答の誘導の組み合わせにより、有意に阻害されたワクシニアウイルスを増幅する能力をもたらすことができる。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書で提供され、本明細書で提供される方法で使用される細胞媒体である細胞媒体が抑制性因子を搭載される、または同種拒絶決定因子の抑制/排除/遮断のために操作される。このような同種拒絶決定因子は、それだけに限らないが、CD8およびCD4 T細胞によって認識される高度に多型で患者特異的なMHCクラスIおよびクラスII分子、またはMHC様MICAおよびCD1a、b、c、d分子ならびにその他のさまざまなストレス関連もしくはストレス感知分子、例えばブチロフィリンおよびアネキシンA2を含む、NKT、iNKT、γδ(gd)T細胞などのさまざまな自然もしくは混合型の自然/適応T細胞亜集団によって認識される広範囲の多型性の低い決定因子を含むことができる。
【0423】
例えば、同種MHC I分子の排除/遮断は、担体幹細胞および腫瘍細胞に対する同種免疫応答、特に同種MHC Iミスマッチの認識および応答を担うCD8 T細胞の同種免疫応答を抑制することができる。汎HLA遮断抗体(抗ヒトHLA-A、B、C抗体)(実施例8を参照)を使用して、さまざまな自然および適応免疫細胞集団の同種抗担体細胞応答を抑制することができ、その数を、例えば、活性化マーカーとしてのCD69、および以下の通りの細胞型特異的マーカーのセットを使用するマルチパラメータフローサイトメトリー分析によって特定することができる:γδ T細胞(CD3+、γδ TCR+)、iNKT/NKT 1型細胞(CD3+、Va24Ja18+)、一般的NKT(CD3+CD56+細胞;γδおよびiNKTを除く)、古典的CD4(CD3+CD4+;γδおよびiNKTを除く)、古典的CD8 T細胞(CD3+CD8+;γδおよびiNKTを除く)、一般的NK細胞(CD3-CD56+)、およびNK亜集団CD56highCD16-(サイトカイン産生)およびCD56lowCD16+(細胞傷害性)。同種免疫応答の誘導および/または抗ウイルス状態を誘導し、ウイルスペイロードの送達および拡散を遮断することができるIFNγなどのエフェクターサイトカインの選択を遮断することによって、HLA(MHCクラスI)などの同種拒絶決定因子の一過的または永続的な遮断または排除を、増強された免疫回避能および腫瘍溶解性ウイルスをより有効に送達する能力を有する幹細胞または腫瘍細胞ベースの担体(細胞媒体)を作製するための有効な戦略として使用することができることが本明細書で実証されている。
【0424】
同種およびウイルス感染の幹細胞または腫瘍担体細胞の免疫学的応答および拒絶は、典型的には、ウイルス感染腫瘍細胞または形質転換腫瘍細胞の表面で上方制御され、免疫共刺激分子として機能するさまざまな他の非MHCマーカーの関与によって増強できる。このようなマーカーは、担体細胞(例えば、ウイルスに感染し、ウイルスの送達に使用される腫瘍細胞または幹細胞)が免疫学的拒絶を回避する能力を損なうことができる。例えば、NKG2D分子は、ウイルス感染腫瘍細胞および形質転換腫瘍細胞の認識および拒絶に関与する共刺激分子として機能することが知られている、ヒトMIC AおよびMIC BなどのMHCクラスI関連タンパク質を認識する。実施例9は、例えば、NKG2D特異的抗体を使用するNKG2Dシグナル伝達経路の活性化が、免疫認識および細胞性免疫応答の活性化を増強し、これに寄与する強力な共刺激シグナルを提供することを実証している。したがって、本明細書で提供され、本明細書で提供される方法で使用される細胞媒体のいくつかの実施形態では、細胞媒体が、抑制性因子を搭載される、またはNKG2Dシグナル伝達経路の共刺激シグナルの抑制/排除/遮断のために操作される。例えば、担体細胞は、MIC Aおよび/またはMIC Bの発現の一過的または永続的な抑制のために操作することができる、あるいは以下を搭載するまたはその一過的もしくは永続的な発現のために操作することができる:MICA/MICBの分解を標的化するカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)タンパク質K5(別名kK5またはMIR2)、MICBに結合し、細胞表面上のリガンドの発現を防止する(MICBの細胞内保持を引き起こす)UL16(HCMV)、リソソーム分解のためにMICAを標的化するHCMV US18およびUS20(US20はMICAおよびMICBも下方制御する)、シスゴルジ装置での保持によってMICAを下方制御するHCMV UL142、MICAおよびMICBの細胞表面発現を抑制するヒトヘルペスウイルス-7(HHV-7)U21タンパク質、MICAの下方制御をもたらすEBVタンパク質LMP2A、MICA/Bの細胞表面輸送を防止し、CD8 T細胞およびNK細胞による認識を阻害するアデノウイルスE3/19Kタンパク質など。
【0425】
4.免疫抑制因子を分泌する
幹細胞および腫瘍細胞は、IDO発現およびIL-10分泌を含む、免疫抑制および回避のためのさまざまな戦略を使用することが知られている。しかしながら、これらがウイルスのための担体細胞/細胞媒体として使用される場合、担体細胞におけるウイルス増幅は、生存能力および免疫抑制能力の段階的な喪失を引き起こす。したがって、本明細書で提供され、本明細書で提供される方法で使用される細胞媒体のいくつかの実施形態では、細胞媒体が、ウイルスによって媒介される免疫抑制特性の喪失を部分的または完全に逆転させ、ウイルス感染担体細胞が同種応答および/または早期免疫認識を回避する能力を改善するように、免疫抑制分子もしくはサイトカイン、例えばIL-10を搭載される、または一過的もしくは永続的に発現するように操作される(例えば、実施例10参照)。
【0426】
5.細胞媒体を改変する;療法のための投与
上記および本明細書の他の場所に記載されるように、免疫認識を回避ならびに/あるいは抗ウイルスおよび/または同種免疫応答を抑制するように改変された担体細胞/細胞媒体は、担体細胞を目的の免疫応答改変剤(例えば、ルキソリチニブ、C3活性化のペプチド阻害剤、IL-10、MIC A/MIC Bの阻害剤等)で前処理/搭載することによって、または当業者に既知であり、本明細書に記載される方法を使用した、目的の免疫応答改変剤の発現/発現の抑制のための担体細胞の一過的もしくは永続的な改変によって入手することができる。実施形態では、搭載/発現が、局所的および/または一過的であることができ、ウイルスによる感染、ウイルスの増幅、腫瘍または他の癌性細胞へのウイルスの送達、および腫瘍または他のがん内のウイルスの拡散を促進するのに必要な程度に存在している。実施形態では、改変が、当業者に既知のプラスミドまたは他のベクターを使用する一過的発現によるものである。実施形態では、プラスミドが、発現される外因性遺伝子の発現がウイルスプロモーター(例えば、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、CMVなどのいくつかのウイルスの最初期、初期、中期、後期プロモーター、RSVの長い末端反復プロモーター、アデノウイルスE1Aプロモーターなど)の制御下にあり、それによって、その後担体細胞に搭載されるウイルスによる外因性遺伝子発現のシャットダウンを低減または排除するように操作される。
【0427】
改変された担体細胞は、本明細書に記載されるウイルスを搭載し、非経口的、全身的、腫瘍内、または本明細書で提供される他の経路で投与することができる。全身投与の場合、担体細胞が、ウイルスを標的腫瘍/がん部位に送達し、その増幅および拡散を促進するのに十分長く、免疫認識を回避するおよび/またはウイルスもしくは同種細胞免疫応答を抑制すべきである。腫瘍内投与の場合、担体細胞が、腫瘍に深く浸透するのに十分長く、免疫認識を回避するおよび/またはウイルスもしくは同種細胞免疫応答を抑制すべきである。送達時間は、担体細胞/ウイルス組成に応じて、数時間、例えば、10、15、16、17、18、19または20時間などの10~20時間から数日、数日、例えば、24時間、30時間、36時間、40時間、48時間から3、4、5日以上のあたりであることができる。一般に、腫瘍特異的免疫応答(腫瘍に対する)の効果を発揮するのを妨げることができるので、いったんウイルスの送達および標的送達部位(例えば、腫瘍)での拡散が達成されたら、持続的な免疫抑制は望ましくない。
【0428】
E.療法のための細胞媒体/ウイルスの投与様式
本明細書で提供される担体細胞/ウイルスは、療法のために、腫瘍を有するまたは新生物細胞を有する対象を含む対象に投与することができる。投与される担体細胞およびウイルスは、本明細書で提供される担体細胞およびウイルス、または本明細書で提供される方法を使用して作製される任意の他の担体細胞およびウイルスであることができる。いくつかの例では、担体細胞が、幹細胞、免疫細胞またはがん細胞である自家細胞(すなわち、患者に由来する)または同種細胞(すなわち、患者に由来しない)である。担体細胞を、例えば、ウイルス増幅能力を増強し、抗ウイルス状態の誘導を遮断し、同種不活化/拒絶決定因子から保護し、補体から保護するように感作させることができる、または担体細胞を、例えば、インターフェロンによって誘導される抗ウイルス状態に応答しない、γδ T細胞、NK細胞およびNKT細胞を含むT細胞による同種認識を回避する、ヒトもしくはウイルス起源の免疫抑制因子を発現する、許容性が低い腫瘍細胞を腫瘍溶解性ウイルス感染に感作させるがんもしくは幹細胞由来因子を発現する、ならびに補体および中和抗体の機能を妨害する因子を発現するように操作することができる。いくつかの例では、投与されるウイルスが、弱毒化された病原性、低毒性、腫瘍における優先的蓄積、腫瘍細胞に対する免疫応答を活性化する能力、高い免疫原性、複製能および外因性タンパク質を発現する能力、ならびにこれらの組み合わせなどの特徴を含むウイルスである。
【0429】
a.照射または非照射ウイルス感染担体細胞の投与
担体細胞を、腫瘍溶解性ウイルスの感染前または後に照射することができる。腫瘍溶解性ウイルス療法のための細胞担体として形質転換細胞を使用するためには、非感染細胞が投与後に新たな転移性増殖を確立するのを防がなければならない。これは、ウイルス感染の前または後、投与前の担体細胞のγ線照射によって達成することができ、γ照射は腫瘍形成能を除去するが、代謝活性を維持し、ウイルス産生/増幅および放出に影響を及ぼさない。例えば、担体細胞は、ウイルス感染の最大24時間前、またはウイルス感染の最大24時間後に照射することができる。
【0430】
放射線の量は、担体細胞およびウイルスの性質を含むさまざまな因子のいずれかに応じて当業者が選択することができる。放射線量は、ウイルス感染、増幅および放出に影響を及ぼすことなく、担体細胞を不活化し、腫瘍形成を防止するのに十分であることができる。例えば、放射線の量は、約5Gy、10Gy、15Gy、20Gy、25Gy、30Gy、35Gy、40Gy、45Gy、50Gy、100Gy、120Gy、150Gy、200Gy、250 Gy、500Gyまたはそれ以上であることができる。
【0431】
b.投与経路
担体細胞/ウイルスの組み合わせは、対象に局所的または全身的に送達または投与することができる。例えば、投与様式には、それだけに限らないが、全身、非経口、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、経皮、皮内、動脈内(例えば、肝動脈注入)、小胞内灌流、胸膜内、関節内、局所、腫瘍内、病変内、内視鏡的、多穿刺(例えば、天然痘ワクチンで使用される)、吸入、経皮、皮下、鼻腔内、気管内、経口、腔内(例えば、カテーテルを介した膀胱への投与、坐剤または浣腸による腸への投与))、膣、直腸、頭蓋内、前立腺内、硝子体内、耳、眼または局所投与が含まれる。
【0432】
当業者は、対象および担体細胞/ウイルスの組み合わせと適合性の任意の投与様式を選択することができ、これはまた、担体細胞/ウイルスが標的細胞型または組織、例えば腫瘍および/または転移に到達および侵入する結果となる可能性が高い。投与経路は、疾患の性質、標的細胞または組織の特性(例えば、腫瘍の種類)、および投与される特定の細胞媒体/ウイルスを含むさまざまな因子のいずれかに応じて、当業者が選択することができる。標的部位への投与を、例えば、コロイド分散系として弾道送達(ballistic delivery)によって実施することができる、または全身投与を、動脈への注射によって実施することができる。
【0433】
c.装置
医薬品、医薬組成物およびワクチンを投与するための当技術分野で既知のさまざまな装置のいずれも、担体細胞/ウイルスの組み合わせを投与するために使用することができる。例示的な装置には、それだけに限らないが、皮下注射針、静脈留置針、カテーテル、無針注射装置、吸入器、および点眼器などの液体ディスペンサーが含まれる。例えば、Qaudra-Fuse(商標)多面注射針(Rex Medical、コンショホッケン、PA)を使用できる。
【0434】
典型的には、担体細胞/ウイルスの組み合わせを投与するための装置は、担体細胞/ウイルスの組み合わせと適合性であり;例えば、高圧注射装置などの無針注射装置は、高圧注射によって損傷を受けない担体細胞/ウイルスで使用することができるが、典型的には、高圧注射によって損傷を受ける担体細胞/ウイルスでは使用されない。追加の薬剤または化合物を対象に投与するための装置も本明細書で提供される。医薬品を対象に投与するための当技術分野で既知のさまざまな装置のいずれかを使用することができる。例示的な装置には、それだけに限らないが、皮下注射針、静脈留置針、カテーテル、無針注射装置、吸入器、および点眼器などの液体ディスペンサーが含まれる。典型的には、化合物を投与するための装置は、化合物の所望の投与方法と適合性であるだろう。例えば、全身的または皮下に送達される化合物は、皮下注射針および注射器で投与することができる。
【0435】
d.投与の投与量
投与レジメンは、さまざまな方法および量のいずれかであることができ、既知の臨床的因子に従って当業者が決定することができる。医学分野で既知のように、任意のある患者のための投与量は、対象の種、サイズ、体表面積、年齢、性別、免疫能力および健康全般、投与される特定の細胞担体およびウイルス、投与の期間および経路、疾患の種類および段階、例えば、腫瘍サイズ、ならびに同時に投与される化学療法薬などの他の治療または化合物を含む多くの因子に依存することができる。上記の因子に加えて、このようなレベルは、当業者が決定できるように、ウイルスの感染力および増幅能、ならびに担体細胞および/またはウイルスの性質によって影響を及ぼすことができる。
【0436】
本方法では、細胞担体およびウイルスの適切な最小投与量レベルおよび投与体制が、担体細胞がウイルスを標的部位に送達し、ウイルスが腫瘍または転移において生存、増殖および複製するのに十分なレベルであることができる。一般に、100,000~10億個の未改変、感作、保護または遺伝子操作された同種または自家担体細胞が、0.1以上の感染多重度(MOI)で、本明細書で提供される共培養スクリーニングおよび分析方法に基づいて選択される腫瘍溶解性ウイルスを含む任意の適切な腫瘍溶解性ウイルスにエキソビボで感染する。少なくとも10のpfu/細胞を産生する担体細胞が選択される。例えば、少なくともまたは少なくとも約10、少なくともまたは少なくとも約100、少なくともまたは少なくとも約1,000以上のpfu/細胞を産生する細胞担体が選択される。一般に、ウイルスは、投与サイクルにわたって少なくとも1回、少なくともまたは約またはちょうど1×105pfuである量で投与される。ウイルスを65kgのヒトに投与するための例示的な最小レベルは、少なくとも約1×105のプラーク形成単位(pfu)、少なくとも約5×105pfu、少なくとも約1×106pfu、少なくとも約5×106pfu、少なくとも約1×107pfu、少なくとも約1×108pfu、少なくとも約1×109pfu、または少なくとも約1×1010pfuを含むことができる。例えば、ウイルスは、投与サイクルにわたって少なくとも1回、少なくともまたは約またはちょうど1×105pfu、1×106pfu、1×107pfu、1×108pfu、1×109pfu、1×1010pfu、1x1011pfu、1×1012pfu、1×1013pfu、または1×1014pfuである量で投与される。
【0437】
e.レジメン
投与レジメンでは、担体細胞およびウイルスの量を、単回投与として、または投与サイクルにわたって複数回投与することができる。したがって、本明細書で提供される方法は、細胞担体/ウイルスの組み合わせの対象への単回投与、または細胞担体/ウイルスの組み合わせの対象への複数回投与を含むことができる。いくつかの例では、単回投与が、ウイルスを腫瘍内に送達および確立するのに十分であり、ウイルスが増殖し、対象の抗腫瘍応答を引き起こすまたは増強することができ;このような方法は、対象の抗腫瘍応答を引き起こすまたは増強するために担体細胞/ウイルスの組み合わせの追加の投与を必要とせず、例えば、腫瘍成長の阻害、転移成長もしくは形成の阻害、腫瘍サイズの減少、腫瘍もしくは転移の排除、新生物疾患の再発もしくは新たな腫瘍形成の阻害もしくは防止、または他のがん療法効果をもたらすことができる。
【0438】
他の例では、細胞担体/ウイルスの組み合わせを、典型的には少なくとも1日時間的に隔てられた、異なる機会で投与することができる。例えば、担体細胞/ウイルスの組み合わせを、投与の間に1日以上、2日以上、1週間以上または1ヶ月以上あけて、2回、3回、4回、5回または6回以上投与することができる。別々の投与は、以前の投与がウイルスを腫瘍または転移に送達するのに無効であった場合に、ウイルスを腫瘍または転移に送達する可能性を増加させることができる。別々の投与は、ウイルス増殖が起こることができる腫瘍もしくは転移上の位置を増加させることができる、または腫瘍に蓄積されるウイルスの力価を増加させることができ、これによって宿主の抗腫瘍免疫応答の誘発または増強において腫瘍からの抗原または他の化合物の放出の規模を増加させ、また任意にウイルスベースの腫瘍溶解または腫瘍細胞死のレベルを増加させることができる。ウイルスの別々の投与は、ウイルス抗原に対する対象の免疫応答をさらに拡大させることができ、これによってウイルスが蓄積した腫瘍または転移に対する宿主の免疫応答を拡大させ、宿主が抗腫瘍免疫応答を開始する可能性を増加させることができる。
【0439】
別々の投与が実施される場合、各投与は、他の投与の投与量と比較して同じまたは異なる投与量であることができる。一例では、全ての投与量が同じである。他の例では、第1の投与量が、1つ以上の後の投与量よりも多い投与量、例えば、後の投与量よりも少なくとも10倍多い、少なくとも100倍多い、または少なくとも1000倍多いことができる。第1の投与量が1つ以上の後の投与量よりも多い別々の投与の方法の一例では、全ての後の投与量が、第1の投与と比較して同じまたはより少ない量であることができる。
【0440】
別々の投与は、2、3、4、5または6回の投与を含む2回以上の任意の回数の投与を含むことができる。当業者は、治療方法をモニタリングするための当技術分野で既知の方法および本明細書で提供される他のモニタリング方法に従って、1つ以上の追加の投与を実施するための投与回数またはこれを実施することの望ましさを容易に決定することができる。したがって、本明細書で提供される方法は、担体細胞/ウイルスの組み合わせの1つ以上の投与を対象に提供する方法を含み、投与回数は、対象をモニタリングし、モニタリングの結果に基づいて、1つ以上の追加の投与を提供するかどうかを決定することによって決定することができる。1つ以上の追加の投与を提供するかどうかの決定は、それだけに限らないが、腫瘍成長の徴候または腫瘍成長の阻害、新たな転移の出現または転移の阻害、対象の抗ウイルス抗体力価、対象の抗腫瘍抗体力価、対象の全体的な健康、対象の体重、腫瘍および/または転移のみにおけるウイルスの存在、ならびに正常組織または臓器におけるウイルスの存在を含む、さまざまなモニタリング結果に基づくことができる。
【0441】
投与の間の期間は、さまざま期間のいずれかであることができる。投与の間の期間は、投与回数、対象が免疫応答を開始する期間、対象が正常組織からウイルスを排除する期間、または腫瘍もしくは転移におけるウイルス増殖の期間に関して記載されるモニタリング工程を含む様々な因子のいずれかの関数であることができる。一例では、期間が、対象が免疫応答を開始する期間の関数であることができ;例えば、期間が、対象が免疫応答を開始する期間より長く、例えば、約1週間超、約10日超、約2週間超、または約1ヶ月超であることができ;別の例では、期間が、対象が免疫応答を開始する期間よりも短く、例えば、約1週間未満、約10日未満、約2週間未満、または約1ヶ月未満であることができる。別の例では、期間が、対象が正常組織からウイルスを排除する期間の関数であることができ;例えば、期間が、対象が正常組織からウイルスを排除する期間より長く、例えば、約1日超、約2日超、約3日超、約5日超、または約1週間超であることができる。別の例では、期間が、腫瘍または転移におけるウイルス増殖の期間の関数であることができ;例えば、期間が、検出可能なマーカーを発現するウイルスの投与後に腫瘍または転移において検出可能なシグナルが生じる期間よりも長く、例えば、約3日、約5日、約1週間、約10日、約2週間、または約1か月であることができる。
【0442】
例えば、ある量の担体細胞/ウイルスの組み合わせは、投与サイクルにわたって2回、3回、4回、5回、6回または7回投与される。この量のウイルスを、サイクルの初日、サイクルの初日と2日目、サイクルの最初の3連続日のそれぞれ、サイクルの最初の4連続日のそれぞれ、サイクルの最初の5連続日のそれぞれ、サイクルの最初の6連続日のそれぞれ、またはサイクルの最初の7連続日のそれぞれに投与することができる。一般的に、投与サイクルは7日、14日、21日または28日である。患者の応答性または予後に応じて、投与サイクルが数ヶ月または数年にわたって繰り返される。
【0443】
一般に、担体細胞/ウイルスの適切な最大投与量レベルまたは投与レジメンは、宿主に毒性でないレベル、3倍以上の脾腫を引き起こさないレベル、約1日後または約3日後または約7日後に正常組織または臓器にウイルスコロニーまたはプラークをもたらさないレベルである。
【0444】
F.治療方法および治療と連携したモニタリング
腫瘍溶解性ウイルスを、ウイルスの送達を促進するための本明細書で提供される細胞媒体と組み合わせて投与して、増殖性または炎症性の疾患または状態を有する対象を治療することによる治療方法が本明細書で提供される。特に、状態は免疫特権細胞または組織に関連している。免疫特権細胞または組織に関連する疾患または状態には、例えば、癌性細胞、新生物、腫瘍、転移、がん幹細胞、および他の免疫特権細胞または組織、例えば創傷および創傷組織または炎症組織の治療(阻害など)を含む、増殖性の障害または状態が含まれる。このような方法の特定の例では、本明細書で提供される組み合わせが、全身送達のための静脈内投与によって投与される。他の例では、本明細書で提供される組み合わせが、腫瘍内注射によって投与される。実施形態では、対象が、がんを有する。本明細書で提供されるマッチングアッセイによってさらにスクリーニングされる感作/操作された細胞媒体を含むことができる感作された細胞媒体、保護された細胞媒体、操作された細胞媒体、およびマッチングされた細胞媒体を含む、本明細書で提供される細胞媒体のいずれかを使用して、ウイルス療法を対象に提供することができる。
【0445】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、対象が、細胞媒体とウイルスの組み合わせで治療されることに加えて、延長された生存期間および/または局所免疫抑制を提供するために、例えば、IFNγで前処理された、保護された細胞媒体を含有する別個の組成物でさらに治療される。保護された細胞媒体を含有する別個の組成物は、細胞媒体/ウイルスの組み合わせと同時に投与することができる、または組み合わせを投与する10時間~3日以上前もしくは後に投与することができる。いくつかの実施形態では、保護された細胞媒体が、組み合わせを投与する24時間前または24時間後に投与される。
【0446】
本明細書で提供される組み合わせは、単回注射によって、複数回注射によって、または連続的に投与することができる。例えば、組成物は、静脈内ポンプ、シリンジポンプ、静脈内点滴または遅い注射を使用することを含む遅い注入によって投与することができる。例えば、組成物の連続投与は、数分~数時間、例えば、ちょうどまたは約1分~1時間、例えば、20~60分の間に行うことができる。
【0447】
本明細書に記載される治療および検出方法を受けることができるがんには、転移するがんも含まれる。転移は、原発腫瘍から非隣接部位への、通常は血流またはリンパ管を介した細胞の拡散であり、続発性腫瘍成長を確立することが当業者によって理解される。治療が企図されるがんの例としては、それだけに限らないが、脈絡膜および皮膚黒色腫を含む黒色腫;膀胱がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、肺がん、頭部がん、頚部がん、乳がん、膵臓がん、歯肉がん、舌がん、前立腺がん、腎臓がん、骨がん、精巣がん、卵巣がん、子宮頸がん、胃腸リンパ腫、脳がんまたは結腸がん;肝細胞癌;網膜芽細胞腫;中皮腫;星細胞腫;神経膠芽腫;神経芽細胞腫;および転移した、または転移のリスクがある任意の他の腫瘍または新生物が挙げられる。
【0448】
本明細書で提供される方法の対象は、哺乳動物または鳥類種を含む、動物または植物の対象などの任意の対象であることができる。例えば、動物対象は、それだけに限らないが、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ネコまたはイヌなどの飼育動物および家畜を含む、ヒトまたは非ヒト動物であることができる。特定の例では、動物対象がヒト対象である。
【0449】
本明細書で提供される方法は、対象をモニタリングする工程、腫瘍をモニタリングする工程、および/または対象に投与されるウイルスをモニタリングする工程のうちの1つ以上をさらに含むことができる。それだけに限らないが、腫瘍サイズのモニタリング、抗(腫瘍抗原)抗体力価のモニタリング、転移の存在および/またはサイズのモニタリング、対象のリンパ節のモニタリング、対象の体重または血液もしくは尿マーカーを含む他の健康指標のモニタリング、抗(ウイルス抗原)抗体力価のモニタリング、検出可能な遺伝子産物のウイルス発現のモニタリング、ならびに対象の腫瘍、組織または臓器におけるウイルス力価の直接モニタリングを含む、さまざまなモニタリング工程のいずれかを本明細書で提供される方法に含めることができる。
【0450】
モニタリングの目的は、対象の健康状態または対象の治療的処置の進行を評価するためであることができる、あるいは同じもしくは異なるウイルスのさらなる投与が是認されるかどうかを決定する、または化合物を対象にいつ投与するかもしくは投与するかしないかを決定するためであることができ、ここでは化合物が治療方法の有効性を増加させるように作用することができる、または化合物が対象に投与されたウイルスの病原性を低下させるように作用することができる。
【0451】
腫瘍および/または転移のサイズは、本明細書に記載される検出方法などの外部評価方法または断層撮影もしくは磁気イメージング方法を含む、当技術分野で既知のさまざまな方法のいずれかによってモニタリングすることができる。さらに、例えば、遺伝子発現(例えば、ウイルス遺伝子発現)をモニタリングする本明細書で提供される方法を、腫瘍および/または転移のサイズをモニタリングするために使用することができる。
【0452】
いくつかの時点にわたるサイズのモニタリングは、本明細書で提供される治療方法の有効性に関する情報を提供することができる。さらに、腫瘍または転移のサイズの増加または減少のモニタリングはまた、対象における追加の腫瘍および/または転移の存在(すなわち、検出および/または診断)に関する情報を提供することができる。いくつかの時点にわたる腫瘍サイズのモニタリングは、本明細書で提供される治療などの対象における新生物疾患の治療の有効性を含む、対象における新生物疾患の発症に関する情報を提供することができる。
【0453】
本明細書で提供される方法はまた、ウイルスを対象に送達する細胞媒体の投与に応じて産生される抗体を含む、対象における抗体力価をモニタリングすることを含むことができる。例えば、本明細書で提供される方法で投与されるウイルスは、内因性ウイルス抗原に対する免疫応答を誘発することができる。本明細書で提供される方法で投与されるウイルスはまた、ウイルスによって発現される外因性遺伝子に対する免疫応答を誘発することができる。本明細書で提供される方法で投与されるウイルスはまた、腫瘍抗原に対する免疫応答を誘発することができる。ウイルス抗原、ウイルスによって発現される外因性遺伝子産物、または腫瘍抗原に対する抗体力価のモニタリングを、ウイルスの毒性をモニタリングする方法、治療方法の有効性をモニタリングする方法、あるいは遺伝子産物または抗体を産生および/または収穫についてモニタリングする方法に使用することができる。
【0454】
一例では、抗体力価のモニタリングを使用して、ウイルスの毒性をモニタリングすることができる。ウイルスに対する抗体力価は、ウイルスの対象への投与後の期間にわたって変化することができ、ある特定の時点では、低い抗(ウイルス抗原)抗体力価が高い毒性を示すことができ、他の時点では、高い抗(ウイルス抗原)抗体力価が高い毒性を示すことができる。本明細書で提供される方法で使用されるウイルスは、免疫原性であることができ、したがって、ウイルスを対象に投与した直後に免疫応答を誘発することができる。
【0455】
一般に、対象の免疫系が強力な免疫応答を迅速に開始できるウイルスは、対象の免疫系が全ての正常な臓器または組織からウイルスを除去できる場合、低い毒性を有するウイルスであることができる。したがって、いくつかの例では、ウイルスを対象に投与した直後のウイルス抗原に対する高い抗体力価が、ウイルスの低い毒性を示すことができる。対照的に、高度に免疫原性ではないウイルスは、強力な免疫応答を誘発することなく宿主生物に感染することができ、宿主に対するウイルスの高い毒性をもたらすことができる。したがって、いくつかの例では、ウイルスを対象に投与した直後のウイルス抗原に対する高い抗体力価が、ウイルスの低い毒性を示すことができる。
【0456】
他の例では、抗体力価のモニタリングを使用して、治療方法の有効性をモニタリングすることができる。本明細書で提供される方法では、抗(腫瘍抗原)抗体力価などの抗体力価が、新生物疾患を治療するための治療方法などの治療方法の有効性を示すことができる。本明細書で提供される治療方法は、腫瘍および/または転移に対する免疫応答を引き起こすまたは増強することを含むことができる。したがって、抗(腫瘍抗原)抗体力価をモニターすることによって、腫瘍および/または転移に対する免疫応答を引き起こすまたは増強することにおける治療方法の有効性をモニタリングすることが可能である。
【0457】
本明細書で提供される治療方法はまた、腫瘍に蓄積することができ、抗ウイルスまたは抗細胞媒体免疫応答を引き起こすまたは増強することができるウイルスを含有する細胞媒体を対象に投与することを含むことができる。したがって、宿主が腫瘍または転移に蓄積されたウイルスまたは細胞媒体に対する免疫応答を開始する能力をモニタリングすることが可能であり、これによって対象が抗腫瘍免疫応答も開始したことを示すことができる、または対象が抗腫瘍免疫応答を開始する可能性が高いことを示すことができる、または対象が抗腫瘍免疫応答を開始することができることを示すことができる。
【0458】
本明細書で提供される方法はまた、対象の健康をモニタリングする方法を含むことができる。本明細書で提供される方法のいくつかは、新生物疾患の治療方法を含む治療方法である。当技術分野で既知のように、対象の健康のモニタリングを使用して、治療方法の有効性を決定することができる。本明細書で提供される方法はまた、本明細書で提供される細胞媒体とウイルスとの組み合わせを対象に投与する工程を含むことができる。対象の健康のモニタリングを使用して、対象に投与された場合の組み合わせ中のウイルスの病原性を決定することができる。当技術分野で既知のように、新生物疾患、感染性疾患または免疫関連疾患などの疾患をモニタリングするためのさまざまな健康診断方法のいずれかをモニタリングすることができる。例えば、対象の体重、血圧、脈拍、呼吸、色、温度または他の観察可能な状態が、対象の健康を示すことができる。さらに、対象からの試料中の1つ以上の構成要素の存在または非存在またはレベルが、対象の健康を示すことができる。典型的な試料は、血液および尿試料を含むことができ、ここでは1つ以上の構成要素の存在または非存在またはレベルを、例えば、血液パネルまたは尿パネル診断試験を実施することによって決定することができる。対象の健康を示す例示的な構成要素には、それだけに限らないが、白血球数、ヘマトクリットまたは反応性タンパク質濃度が含まれる。
【0459】
G.医薬組成物、組み合わせおよびキット
本明細書で提供される担体細胞および腫瘍溶解性ウイルスを含有する医薬組成物、組み合わせおよびキットが本明細書で提供される。医薬組成物は、本明細書で提供される方法によって特定されたマッチングした担体細胞および医薬担体を含むことができる。マッチングした担体細胞は、本明細書で提供される方法のいずれかによって調製された、感作された細胞、操作された細胞、またはプライミングされた細胞(例えば、IFNγで前処理された「protected」(保護された)担体細胞)を含むことができる。医薬組成物は、本明細書で提供される腫瘍溶解性ウイルスおよび医薬担体を含むことができる。組み合わせは、例えば、担体細胞と腫瘍溶解性ウイルス;マッチングした担体細胞と腫瘍溶解性ウイルス;感作された担体細胞と腫瘍溶解性ウイルス;遺伝子操作された担体細胞と腫瘍溶解性ウイルス;感作および操作された細胞を含む任意の担体細胞と腫瘍溶解性ウイルスとプライミングされた(保護された)担体細胞;腫瘍溶解性ウイルスとプライミングされた(保護された)担体細胞と本明細書で提供されるようにマッチングまたは改変された保護されていない担体細胞を含むことができる。組み合わせは、本明細書で提供される担体細胞のいずれかと腫瘍溶解性ウイルスと検出可能な化合物;任意の担体細胞と腫瘍溶解性ウイルスと治療用化合物;任意の担体細胞と腫瘍溶解性ウイルスとウイルス発現調節化合物、またはこれらの任意の組み合わせを含むことができる。キットは、本明細書で提供される1つ以上の医薬組成物または組み合わせ、および1つ以上の構成要素、例えば使用説明書、医薬組成物もしくは組み合わせを対象に投与するための装置、治療用もしくは診断用化合物を対象に投与するための装置、または対象のウイルスを検出するための装置を含むことができる。
【0460】
医薬組成物、組み合わせまたはキットに含有される担体細胞は、本明細書で提供される任意の担体細胞を含むことができる。医薬組成物、組み合わせまたはキットに含有される腫瘍溶解性ウイルスは、本明細書で提供される任意のウイルスを含むことができる。
【0461】
1.医薬組成物
担体細胞、プライミングされた(保護された)担体細胞、感作された担体細胞、操作された担体細胞、腫瘍溶解性ウイルス、または本明細書で提供される任意の担体細胞および腫瘍溶解性ウイルス、ならびに適切な医薬担体を含有する医薬組成物が本明細書で提供される。薬学的に許容される担体は、ウイルスのための媒体担体または媒体として作用する固体、半固体または液体の材料を含む。本明細書で提供される医薬組成物は、さまざまな形態、例えば、固体、半固体、水性、液体、粉末または凍結乾燥形態で製剤化することができる。本明細書で提供される任意の担体細胞(プライミングされた細胞、感作された細胞、操作された細胞を含む)または腫瘍溶解性ウイルスを含有する例示的な医薬組成物には、それだけに限らないが、無菌注射溶液、無菌包装粉末、点眼剤、錠剤、丸剤、散剤、ロゼンジ、サシェ、カシェ、エリキシル、懸濁剤、乳剤、液剤、シロップ、エアゾール(固体または液体媒体として)、軟膏、軟および硬ゼラチンカプセル、ならびに坐剤が含まれる。
【0462】
適切な医薬担体の例は当技術分野で既知であり、それだけに限らないが、水、緩衝液、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、さまざまな種類の湿潤剤、滅菌溶液、アルコール、アラビアゴム、植物油、ベンジルアルコール、ゼラチン、グリセリン、炭水化物、例えばラクトース、スクロース、デキストロース、アミロースまたはデンプン、ソルビトール、マンニトール、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸モノグリセリドおよびジグリセリド、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ならびに粉末などが挙げられる。本明細書で提供される医薬組成物は、例えば、抗酸化剤、保存剤、鎮痛剤、結合剤、崩壊剤、着色剤、希釈剤、賦形剤、増量剤、滑剤、可溶化剤、安定剤、等張化剤、媒体、粘度剤、香味剤、甘味剤、エマルジョン、例えば油/水エマルジョン、乳化剤および懸濁化剤、例えばアカシア、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ベントナイト、カルボマー、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、セルロース、コレステロール、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、オクトキシノール9、オレイルアルコール、ポビドン、プロピレングリコールモノステアレート、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンエステル、ステアリルアルコール、トラガント、キサンタンガムおよびこれらの誘導体、溶媒、ならびに種々雑多な成分、例えば、それだけに限らないが、結晶セルロース、微結晶セルロース、クエン酸、デキストリン、液体グルコース、乳酸、ラックトース、塩化マグネシウム、メタリン酸カリウム、デンプンなどを含む他の添加剤を含有することができる。このような担体および/または添加剤は、従来の方法によって製剤化することができ、適切な用量で対象に投与することができる。脂質、ヌクレアーゼ阻害剤、ポリマーおよびキレート剤などの安定剤は、組成物を体内での分解から保護することができる。医薬組成物で使用するための他の適切な製剤は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(2005、第21版、Gennaro&Gennaro編、Lippencott WilliamsおよびWilkins)に見出すことができる。
【0463】
注射または粘膜送達のための本明細書で提供される担体細胞および/または腫瘍溶解性ウイルスを含む医薬製剤は、典型的には、注射もしくは粘膜投与に適した緩衝液で提供されるウイルスの水溶液、または注射もしくは粘膜投与に適した緩衝液で再構成するためのウイルスの凍結乾燥形態を含む。このような製剤は、任意に、本明細書に記載される、または当技術分野で既知の1つ以上の薬学的に許容される担体および/または添加剤を含有することができる。経口投与用の液体組成物は、一般に、水溶液、適切に風味付けされたシロップ、水性または油性懸濁液、およびコーン油、綿実油、ゴマ油、ヤシ油または落花生油などの食用油を含む風味付けされたエマルジョン、ならびにエリキシルおよび同様の医薬媒体を含む。
【0464】
本明細書で提供される医薬組成物は、当技術分野で既知の手順を使用することによって、本明細書に記載される担体細胞および/またはウイルスの迅速放出、徐放または遅延放出を提供するように製剤化することができる。錠剤などの固体組成物を調製するために、本明細書で提供される担体細胞および/またはウイルスを医薬担体と混合して、固体組成物を形成する。任意に、錠剤または丸剤をコーティングする、または配合して、対象において長期作用の利点を与える剤形を提供する。例えば、錠剤または丸剤は、内側投薬構成要素と外側投薬構成要素を含有し、後者が前者を覆うエンベロープの形態である。2つの成分を、例えば、胃内での崩壊に耐え、内部構成要素が無傷で十二指腸に入ること、または放出を遅らせることを可能にするよう働く腸溶性層によって分離することができる。このような腸溶性層またはコーティングには、例えば、いくつかのポリマー酸ならびにポリマー酸とシェラック、セチルアルコールおよび酢酸セルロースのような材料との混合物を含む、さまざまな材料が使用される。
【0465】
吸入または吹送用の組成物には、薬学的に許容される水性溶媒もしくは有機溶媒中の溶液および懸濁液、またはこれらの混合物、および粉末が含まれる。これらの液体または固体組成物は、任意に、本明細書に記載されるまたは当技術分野で既知の適切な薬学的に許容される賦形剤および/または添加剤を含有することができる。このような組成物は、例えば、局所的効果または全身的効果のために経口または鼻呼吸経路によって投与される。薬学的に許容される溶媒中の組成物は、不活性ガスを使用することによって噴霧される。噴霧された溶液は、例えば、噴霧装置から直接、取り付けられたフェイスマスクテントから、または断続的な陽圧呼吸模擬装置から吸入される。溶液、懸濁液または粉末組成物は、例えば、吸入器の使用などの適切な方法で製剤を送達する装置から、例えば、経口または経鼻的に投与される。
【0466】
本明細書で提供される医薬組成物は、経皮送達装置(「パッチ」)を介した経皮送達用に製剤化することができる。そのような経皮パッチは、本明細書で提供されるウイルスの連続的または非連続的な注入を提供するために使用される。医薬品を送達するための経皮パッチの構築および使用は、当技術分野で既知の方法に従って実施される(例えば、米国特許第5,023,252号明細書参照)。このようなパッチは、本明細書で提供される担体細胞および/またはウイルスの連続的、脈動性、またはオンデマンド送達のために構築される。
【0467】
ウイルスの送達に使用できるコロイド分散系には、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、ならびに水中油型エマルジョン(混合)、ミセル、リポソームおよびリポプレックスを含む脂質ベースの系が含まれる。例示的なコロイド系はリポソームである。臓器特異的または細胞特異的リポソームを、所望の組織のみへの送達を達成するために使用することができる。リポソームの標的化は、一般に知られている方法を適用することによって、当業者が行うことができる。この標的化には、受動的標的化(リポソームが洞様毛細血管を含む臓器の細網内皮系(RES)の細胞に分布する自然な傾向を利用する)または能動的標的化(例えば、当業者に既知の方法によって、リポソームを特定のリガンド、例えば、抗体、受容体、糖、糖脂質およびタンパク質に結合することによる)が含まれる。モノクローナル抗体を使用して、例えば特定の細胞表面リガンドを介して、リポソームを特定の組織、例えば腫瘍組織に標的化することができる。
【0468】
2.組み合わせ
担体細胞と腫瘍溶解性ウイルス;感作された担体細胞と腫瘍溶解性ウイルス;操作された担体細胞と腫瘍溶解性ウイルス;または感作および操作された細胞を含む任意の担体細胞と腫瘍溶解性ウイルスとプライミングされた(保護された)担体細胞(例えば、IFNγで前処理された担体細胞)の組み合わせが提供され、これらの組み合わせは、任意に、本明細書で提供される方法に従ってマッチングまたは改変された保護されていない担体細胞を含むことができる。組み合わせは、第2のウイルスまたは他の治療薬もしくは診断薬などの第3または第4の薬剤を含むことができる。組み合わせは、例えば、1つ以上の追加の診断用または治療用ウイルスを含む、1つ以上の追加のウイルスと共に本明細書で提供されるウイルスを含むことができる。組み合わせは、本明細書に記載されるように、本明細書で提供されるウイルス;または担体細胞(感作および操作された細胞を含む)とウイルス;または担体細胞(感作および操作された細胞を含む)とウイルスとプライミングされた細胞を含有する医薬組成物を含有することができる。組み合わせはまた、例えば、抗ウイルス剤または化学療法剤などの、本明細書で提供される方法に従って治療または診断を行うための任意の試薬を含むことができる。組み合わせはまた、ウイルスによってコードされる内因性または異種遺伝子からの遺伝子発現の調節に使用される化合物を含有することができる。
【0469】
本明細書で提供される組み合わせは、担体細胞とウイルスと治療用化合物を含有することができる。本明細書で提供される組成物の治療用化合物は、例えば、抗がん化合物または化学療法化合物であることができる。例示的な治療用化合物には、それだけに限らないが、例えば、サイトカイン、成長因子、光増感剤、放射性核種、毒素、siRNA分子、酵素/プロEドラッグペア、代謝拮抗薬、シグナル伝達調節剤、抗がん抗生物質、抗がん抗体、血管新生阻害剤、化学療法化合物、代謝拮抗化合物またはこれらのいずれかの組み合わせが含まれる。
【0470】
本明細書で提供される担体細胞およびウイルスは、白金配位錯体などの抗がん化合物と組み合わせることができる。例示的な白金配位錯体には、例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、DWA2114R、NK121、IS3 295および254-Sが含まれる。例示的な化学療法剤には、それだけに限らないが、メトトレキサート、ビンクリスチン、アドリアマイシン、非糖含有クロロエチルニトロソウレア、5-フルオロウラシル、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダカルバジン、タキソール、フラジリン、メグラミンGLA、バルルビシン、カルムスチン、ポリフェプロザン、MM1270、BAY 12-9566、RASファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、MMP、MTA/LY231514、ロメテレキソール/LY264618、Glamolec、CI-994、TNP-470、ハイカムチン/トポテカン、PKC412、バルスポダール/PSC833、ノバントロン/ミトキサントロン、メタレット(Metaret)/スラミン、BB-94/バチマスタット、E7070、BCH-4556、CS-682、9-AC、AG3340、AG3433、インセル(Incel)/VX-710、VX-853、ZD0101、IS1641、ODN 698、TA 2516/マリマスタット、BB2516/マリマスタット、CDP 845、D2163、PD183805、DX8951f、Lemonal DP 2202、FK 317、ピシバニール/OK-432、バルルビシン/AD 32、ストロンチウム-89/メタストロン、テモダール/テモゾロミド、ユータキサン(Yewtaxan)/パクリタキセル、タキソール/パクリタキセル、パキセクス(Paxex)/パクリタキセル、シクロパックス(Cyclopax)/経口パクリタキセル、ゼローダ/カペシタビン、フルツロン/ドキシフルリジン、経口タキソイド、SPU-077/シスプラチン、HMR 1275/フラボピリドール、CP-358(774)/EGFR、CP-609(754)/RAS癌遺伝子阻害剤、BMS-182751/経口プラチナ、UFT(テガフール/ウラシル)、エルガミソール/レバミソール、カンプト/レバミソール、エニルウラシル/776C85/5FUエンハンサー、カンプトサール/イリノテカン、トムデックス/ラルチトレキセド、ロイスタチン/クラドリビン、カエリクス(Caelyx)/リポソームドキソルビシン、ミオセット/リポソームドキソルビシン、ドキシル/リポソームドキソルビシン、エバセット/リポソームドキソルビシン、フルダラ/フルダラビン、ファルモルビシン/エピルビシン、DepoCyt、ZD1839、LU 79553/ビス-ナフタルイミド、LU 103793/ドラスタチン、ジェムザール/ゲムシタビン、ZD 0473/AnorMED、YM 116、ヨウ素種、CDK4およびCDK2阻害剤、PARP阻害剤、D4809/デキシホスファミド(dexifosfamide)、イフェックス(Ifex)/メスネックス(Mesnex)/イホスファミド、ブモン(Vumon)/テニポシド、パラプラチン/カルボプラチン、プラチノール/シスプラチン、VePesid/エポシン/エトポホス/エトポシド、ZD 9331、タキソテール/ドセタキセル、グアニンアラビノシドのプロドラッグ、タキサン類似体、ニトロソウレア、メルファランおよびシクロホスファミドなどのアルキル化剤、アミノグルテチミド、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、クロラムブシル、シタラビンHCl、ダクチノマイシン、ダウノルビシンHCl、エストラムスチンリン酸ナトリウム、エトポシド(VP16-213)、フロクスウリジン、フルオロウラシル(5-FU)、フルタミド、ヒドロキシウレア(ヒドロキシカルバミド)、イホスファミド、インターフェロンアルファ-2a、インターフェロンアルファ-2b、酢酸リュープロリド(LHRH放出因子類似体)、ロムスチン(CCNU)、メクロレタミンHCl(ナイトロジェンマスタード)、メルカプトプリン、メスナ、ミトタン(o,p’-DDD)、ミトキサントロンHCl、オクトレオチド、プリカマイシン、プロカルバジンHCl、ストレプトゾシン、クエン酸タモキシフェン、チオグアニン、チオテパ、硫酸ビンブラスチン、アムサクリン(m-AMSA)、アザシチジン、エリスロポエチン、ヘキサメチルメラミン(HMM)、インターロイキン2、ミトグアゾン(メチル-GAG;メチルグリオキサールビスグアニルヒドラゾン;MGBG)、ペントスタチン(2’デオキシコホルマイシン)、セムスチン(メチル-CCNU)、テニポシド(VM-26)および硫酸ビンデシンも含まれる。本明細書で提供される医薬組成物および組み合わせで使用するための追加の例示的な治療用化合物は、本明細書の他の場所で見出すことができる(例えば、例示的なサイトカイン、成長因子、光増感剤、放射性核種、毒素、siRNA分子、酵素/プロドラッグペア、代謝拮抗薬、シグナル伝達調節剤、抗がん抗生物質、抗がん抗体、血管新生阻害剤および化学療法化合物についてはH節参照)。
【0471】
いくつかの例では、組み合わせが、例えば、ウイルスによってコードおよび発現される酵素の基質である化合物、または本明細書で提供されるもしくはウイルスと共同して作用することが当技術分野で既知の他の治療用化合物などの追加の治療用化合物を含むことができる。例えば、ウイルスは、プロドラッグをがん細胞を殺傷するための活性化学療法薬に変換する酵素を発現することができる。したがって、本明細書で提供される組み合わせは、プロドラッグなどの治療用化合物を含有することができる。例示的なウイルス/治療用化合物の組み合わせは、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼをコードするウイルスとプロドラッグガンシクロビルを含むことができる。提供される組み合わせで使用するための追加の例示的な酵素/プロドラッグペアには、それだけに限らないが、水痘帯状疱疹チミジンキナーゼ/ガンシクロビル、シトシンデアミナーゼ/5-フルオロウラシル、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ/6-メチルプリンデオキシリボシド、ベータラクタマーゼ/セファロスポリン-ドキソルビシン、カルボキシペプチダーゼG2/4-[(2-クロロエチル)(2-メシルオキシエチル)アミノ]ベンゾイル-L-グルタミン酸、チトクロームP450/アセトアミノフェン、西洋ワサビペルオキシダーゼ/インドール-3-酢酸、ニトロレダクターゼ/CB1954、ウサギカルボキシルエステラーゼ/7-エチル-10-[4-(1-ピペリジノ)-1-ピペリジノ]カルボニルオキシカンプトテシン(CPT-11)、マッシュルームチロシナーゼ/ビス-(2-クロロエチル)アミノ-4-ヒドロキシフェニルアミノメタノン28、ベータガラクトシダーゼ/1-クロロメチル-5-ヒドロキシ-1,2-ジヒドロ-3H-ベンゾ[e]インドール、ベータグルクロニダーゼ/エピルビシン-グルクロニド、チミジンホスホリラーゼ/5’-デオキシ-5-フルオロウリジン、デオキシシチジンキナーゼ/シトシンアラビノシド、ベータラクタマーゼおよびリナメラーゼ/リナマリンが含まれる。組み合わせで使用するための追加の例示的なプロドラッグはまた、本明細書の他の場所に見出すこともできる(例えば、H節参照)。本明細書で提供される、または当技術分野で既知のさまざまな既知の組み合わせのいずれかを、本明細書で提供される組み合わせに含めることができる。
【0472】
いくつかの例では、組み合わせが、ウイルスの増殖または毒性を殺すまたは阻害することができる化合物を含むことができる。このような化合物を使用して、ウイルス感染から生じることができる1つ以上の有害な副作用を軽減することができる(例えば、米国特許出願公開第2009-016228号明細書参照)。本明細書で提供される組み合わせは、感染症を治療するための抗生物質、抗真菌、抗寄生生物または抗ウイルス化合物を含有することができる。いくつかの例では、抗ウイルス化合物が、ウイルスの増殖または毒性を阻害する化学療法剤である。
【0473】
本明細書で提供される担体細胞およびウイルスと組み合わせて含めることができる例示的な抗生物質には、それだけに限らないが、セフタジジム、セフェピム、イミペネム、アミノグリコシド、バンコマイシンおよび抗シュードモナスβ-ラクタムが含まれる。本明細書で提供される担体細胞およびウイルスと組み合わせて含めることができる例示的な抗真菌剤には、それだけに限らないが、アムホテリシンB、ダプソン、フルコナゾール、フルシトシン、グリセオフルビン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、クロトリマゾール、ナイスタチンおよびこれらの組み合わせが含まれる。本明細書で提供される担体細胞およびウイルスと組み合わせて含めることができる例示的な抗ウイルス剤には、それだけに限らないが、シドフォビル、シドフォビルのアルコキシアルキルエステル(CDV)、環状CDV、および(S)-9-(3-ヒドロキシ-2ホスホニルメトキシプロピル)アデニン、5-(ジメトキシメチル)-2’-デオキシウリジン、イサチン-β-チオセミカルバゾン、N-メタノカルバチミジン、ブリブジン、7-デアザンプラノシンA、ST-246、Gleevec、2’-β-フルオロ-2’,3’-ジデオキシアデノシン、インジナビル、ネルフィナビル、リトナビル、ネビラピン、AZT、ddI、ddCおよびこれらの組み合わせが含まれる。典型的には、抗ウイルス剤との組み合わせは、組み合わせのウイルスに対して有効であることが知られている抗ウイルス剤を含有する。例えば、組み合わせは、ワクシニアウイルスと、シドフォビル、シドフォビルのアルコキシアルキルエステル、ガンシクロビル、アシクロビル、ST-246、Gleevecおよびこれらの誘導体などの抗ウイルス化合物を含有することができる。
【0474】
いくつかの例では、組み合わせが、検出可能な化合物を含むことができる。検出可能な化合物は、例えば、ウイルスまたは担体細胞によってコードおよび発現されるタンパク質またはRNAと相互作用する、および/またはこれに特異的に結合することができ、断層撮影、分光法、磁気共鳴または他の既知の技術によって検出可能なシグナルなどの検出可能なシグナルを提供することができるリガンド、基質または他の化合物を含むことができる。いくつかの例では、タンパク質またはRNAが外因性タンパク質またはRNAである。いくつかの例では、ウイルスまたは担体細胞によって発現されるタンパク質またはRNAが検出可能な化合物を修飾し、修飾された化合物が検出可能なシグナルを放出する。例示的な検出可能な化合物は、磁気共鳴、超音波、または放射性核種を含む断層撮影造影剤などの造影剤であることができる、またはこれを含有することができる。検出可能な化合物は、本明細書の他の場所で提供される、または当技術分野で既知のさまざまな化合物のいずれかを含むことができる。検出に使用されるウイルスまたは担体細胞によって発現することができる例示的なタンパク質と検出可能な化合物の組み合わせには、それだけに限らないが、ルシフェラーゼとルシフェリン、β-ガラクトシダーゼと(4,7,10-トリ(酢酸)-1-(2-β-ガラクトピラノシルエトキシ)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン)ガドリニウム(Egad)、および当技術分野で既知の他の組み合わせが含まれる。
【0475】
いくつかの例では、組み合わせが、ウイルスまたは担体細胞によってコードされる1つ以上の遺伝子の発現を調節する遺伝子発現調節化合物を含むことができる。遺伝子発現を調節する化合物は当技術分野で知られており、それだけに限らないが、転写活性化因子、誘導物質、転写抑制因子、RNAポリメラーゼ阻害剤、およびsiRNAまたはリボザイムなどのRNA結合化合物を含む。当技術分野で既知のさまざまな遺伝子発現調節化合物のいずれかを、本明細書で提供される組み合わせに含めることができる。典型的には、本明細書で提供される組み合わせにウイルスと共に含まれる遺伝子発現調節化合物は、組み合わせのウイルスまたは担体細胞の転写因子またはRNAなどの遺伝子発現において活性である1つ以上の化合物に結合、これを阻害またはこれと反応することができる化合物である。例示的なウイルスまたは担体細胞/発現調節因子の組み合わせは、酵母GAL4 DNA結合ドメイン、単純ヘルペスウイルスタンパク質VP16の活性化ドメインに融合した突然変異ヒトプロゲステロン受容体を有し、アデノウイルス主要後期E1B TATAボックスの上流に一連のGAL4認識配列を含む合成プロモーターも含むキメラ転写因子複合体をコードするウイルスまたは担体細胞であることができ、ここでは化合物がRU486であることができる(例えば、Yuら(2002)Mol Genet Genomics 268:169~178参照)。当技術分野で既知の他のさまざまなウイルスまたは担体細胞/発現調節因子の組み合わせも、本明細書で提供される組み合わせに含めることができる。
【0476】
いくつかの例では、組み合わせがナノ粒子を含有することができる。ナノ粒子は、本明細書で提供される1つ以上の治療薬を運ぶように設計することができる。さらに、ナノ粒子は、ナノ粒子を腫瘍細胞に標的化する分子を運ぶように設計することができる。1つの非限定的な例では、ナノ粒子を、放射性核種、および任意に、腫瘍関連抗原と免疫反応性の抗体でコーティングすることができる。
【0477】
いくつかの例では、組み合わせが、診断または治療のために、1つ以上の追加の治療用および/または診断用ウイルスあるいは他の治療用および/または診断用微生物(例えば、治療用および/または診断用細菌)を含有することができる。例示的な治療用および/または診断用ウイルスは当技術分野で既知であり、それだけに限らないが、治療用および/または診断用のポックスウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスおよびレオウイルスを含む。例示的な腫瘍溶解性ウイルスは、本明細書中で上に記載されている。
【0478】
3.キット
本明細書で提供される担体細胞、ウイルス、医薬組成物または組み合わせは、キットとしてパッケージ化することができる。キットは、任意に、使用説明書、装置および追加の試薬などの1つ以上の構成要素、ならびに方法を実施するためのチューブ、容器および注射器などの構成要素を含むことができる。例示的なキットは、本明細書で提供される担体細胞およびウイルス、あるいは保護された担体細胞、保護されていない担体細胞およびウイルスを含むことができ;任意に、使用説明書、対象中の担体細胞および/またはウイルスを検出するための装置、担体細胞およびウイルスを対象に投与するための装置、あるいは追加の薬剤または化合物を対象に投与するための装置を含むことができる。
【0479】
一例では、キットが説明書を含むことができる。説明書は、典型的には、担体細胞およびウイルス、および任意に、キットに含まれる他の成分を説明する具体的な表現、ならびに担体細胞およびウイルスを投与するための、対象の適切な状態、適切な投与量および適切な投与方法を決定する方法を含む投与方法を含む。説明書はまた、治療期間にわたって対象をモニタリングするためのガイダンスを含むことができる。
【0480】
別の例では、キットが、対象中の担体細胞および/またはウイルスを検出するための装置を含むことができる。対象中の担体細胞および/またはウイルスを検出するための装置は、例えば、ルシフェラーゼから放出される、または緑色もしくは赤色蛍光タンパク質などの蛍光タンパク質から蛍光を発せられる光を検出するための弱光イメージング装置、MRIまたはNMR装置などの磁気共鳴測定装置、PET、CT、CAT、SPECTまたは他の関連スキャナーなどの断層撮影スキャナー、超音波装置、あるいは対象内の担体細胞および/またはウイルスによって発現されるタンパク質を検出するために使用することができる他の装置を含むことができる。典型的には、キットの装置は、キットの担体細胞および/またはウイルスによって発現される1つ以上のタンパク質を検出することができるだろう。担体細胞、ウイルスおよび検出装置、例えば、ルシフェラーゼを発現する担体細胞もしくはウイルスと弱光イメージャー、または緑色もしくは赤色蛍光タンパク質などの蛍光タンパク質を発現する担体細胞もしくはウイルスと弱光イメージャーを含むさまざまなキットのいずれかを本明細書で提供されるキットに含めることができる。
【0481】
本明細書で提供されるキットはまた、担体細胞およびウイルスを対象に投与するための装置を含むことができる。医薬品、医薬組成物およびワクチンを投与するための当技術分野で既知のさまざまな装置のいずれかを、本明細書で提供されるキットに含めることができる。例示的な装置には、それだけに限らないが、皮下注射針、静脈留置針、カテーテル、無針注射装置、吸入器、および点眼器などの液体ディスペンサーが含まれる。例えば、例えば静脈内注射によって全身送達される担体細胞とウイルスの組み合わせを、皮下注射針および注射器を含むキットに含めることができる。典型的には、キットの担体細胞とウイルスの組み合わせを投与するための装置は、キットの担体細胞とウイルスと適合性であり;例えば、高圧注射装置などの無針注射装置は、高圧注射によって損傷を受けない担体細胞とウイルスを含むキットに含めることができるが、典型的には、高圧注射によって損傷を受ける担体細胞とウイルスを含むキットには含まれない。
【0482】
本明細書で提供されるキットはまた、追加の薬剤または化合物を対象に投与するための装置を含むことができる。医薬品を対象に投与するための当技術分野で既知のさまざまな装置のいずれかを、本明細書で提供されるキットに含めることができる。例示的な装置には、それだけに限らないが、皮下注射針、静脈留置針、カテーテル、無針注射装置、吸入器、および点眼器などの液体ディスペンサーが含まれる。典型的には、キットの化合物を投与するための装置は、化合物の所望の投与方法と適合性であるだろう。例えば、全身的または皮下に送達される化合物を、皮下注射針および注射器を含むキットに含めることができる。
【0483】
本明細書で提供されるキットはまた、電磁エネルギーなどのエネルギーを対象に印加するための任意の装置を含むことができる。このような装置には、それだけに限らないが、レーザー、発光ダイオード、蛍光ランプ、ダイクロイックランプおよびライトボックスが含まれる。キットはまた、内視鏡または光ファイバーカテーテルなどの、エネルギーの対象への内部曝露をもたらす装置を含むことができる。
【0484】
H.細胞媒体+ウイルス治療と投与される追加の療法
腫瘍溶解性ウイルスを、ウイルス療法を必要とする対象に送達するための本明細書で提供される腫瘍溶解性ウイルスおよび細胞媒体を含有する本明細書で提供される組成物またはキットは、単独で、または他の療法もしくは治療とさらに組み合わせて使用することができる。本明細書で提供される組み合わせまたは組成物を、他の治療薬もしくは薬理学的薬剤または手技などの治療と一緒に、その前に、断続的に、またはその後に、さらに共製剤化または共投与することができる。例えば、このような薬剤には、それだけに限らないが、他の生物製剤、抗がん剤、小分子化合物、分散剤、麻酔薬、チェックポイント阻害剤、血管収縮剤、外科手術、放射線、化学療法剤、生物剤、ポリペプチド、抗体、ペプチド、小分子、遺伝子療法ベクター、ウイルスおよびDNA、ならびにこれらの組み合わせが含まれる。このような薬剤はまた、副作用を改善、低減または防止するための1つ以上の薬剤を含むことができる。場合によっては、併用療法を、原発腫瘍を除去する、または治療前に対象を免疫抑制する1つ以上のがん治療と組み合わせて使用することができる。例えば、本明細書で提供される併用療法に加えて、追加の化学療法または放射線療法を使用することができる。このような追加の療法は、対象の免疫系を弱化する効果を有することができる。他の例では、外科的除去および/または免疫系弱化療法が必要でなくてもよい。その中で組み合わせることができる例示的な他の方法は、(例えば、腫瘍抑制化合物を投与することによって、もしくは腫瘍細胞特異的化合物を投与することによって)免疫系を弱化することなく腫瘍もしくは新生物細胞の増殖速度を低下させる化合物を投与すること、または血管新生阻害化合物を投与することを含む。
【0485】
第2の薬剤または治療の調製物は、一度に投与することができる、または時間間隔で投与するためにいくつかのより少ない用量に分割することができる。選択された薬剤/治療調製物は、治療時間の過程にわたって、例えば、数時間、数日、数週間または数ヶ月にわたって、1つ以上の用量で投与することができる。場合によっては、継続投与が有用である。正確な投与量および投与過程は、適応症および患者の忍容性に依存することが理解される。一般に、本明細書の第2の薬剤/治療のための投薬レジメンは、当業者に既知である。
【0486】
例えば、本明細書で提供される併用療法は、それだけに限らないが、免疫共刺激アゴニスト(例えば、B7ファミリー(CD28、ICOS);TNFRファミリー(4-1BB、OX40、GITR、CD40、CD30、CD27);LIGHT、LTα);BiTE;腫瘍特異的抗原を標的化するCAR-T細胞およびTCRトランスジェニックT細胞;チェックポイント阻害剤(標的には、PD-1、PD-2、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、IDO 1および2、CTNNB1(β-カテニン)、SIRPα、VISTA、LIGHT、HVEM、LAG3、TIM3、TIGIT、ガレクチン-9、KIR、GITR、TIM1、TIM4、CEACAM1、CD27、CD40/CD40L、CD48、CD70、CD80、CD86、CD112、CD137(4-1BB)、CD155、CD160、CD200、CD226、CD244(2B4)、CD272(BTLA)、B7-H2、B7-H3、B7-H4、B7-H6、ICOS、A2aR、A2bR、HHLA2、ILT-2、ILT-4、gp49B、PIR-B、HLA-G、ILT-2/4およびOX40/OX-40L、MDR1、アルギナーゼ1、iNO、IL-10、TGF-β、pGE2、STAT3、VEGF、KSP、HER2、Ras、EZH2、NIPP1、PP1、TAK1およびPLK1aが含まれる);ならびに化学療法化合物および抗体を含む1つ以上とさらに組み合わせて使用することができる。
【0487】
本明細書で提供されるウイルス療法に加えて投与するための例示的な化学療法化合物および抗体は、サイトカイン、ケモカイン、成長因子、光増感剤、毒素、抗がん抗生物質、化学療法化合物、放射性核種、血管新生阻害剤、シグナル伝達調節剤、代謝拮抗薬、抗がんワクチン、抗がんオリゴペプチド、有糸分裂阻害剤タンパク質、抗有糸分裂オリゴペプチド、抗がん抗体、抗がん抗生物質および免疫療法剤を含むことができる。
【0488】
本明細書の併用療法の投与後、投与と同時に、または投与前に投与することができる例示的な抗がん剤には、それだけに限らないが、アシビシン;アビシン;アクラルビシン;アコダゾール;アクロニン;アドゼレシン;アルデスロイキン;アレムツズマブ;アリトレチノイン(9-シス-レチノイン酸);アロプリノール;アルトレタミン;アルボシジブ;アンバゾン;アンボマイシン;アメタントロン;アミフォスチン;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アナキシロン;アンシタビン;アントラマイシン;アパジコン;アルギメスナ(Argimesna);三酸化ヒ素;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アトリムスチン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バノキサントロン;バタブリン;バチマスタット;BCG生;ベナキシビン;ベンダムスチン;ベンゾデパ;ベキサロテン;ベバシズマブ;ビカルタミド;ビエタセルピン;ビリコダル;ビサントレン;ビザントレン;ジメシル酸ビスナフィド;ビゼレシン;ブレオマイシン;ボルテゾミブ;ブレキナル;ブロピリミン;ブドチタン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カネルチニブ;カペシタビン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルボコン;カルモフール;カルムスチンとポリフェプロサン;カルムスチン;カルビシン;カルゼレシン;セデフィンゴール;セレコキシブ;セマドチン;クロラムブシル;シオテロネル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;クランフェヌル;クロファラビン;クリスナトール;シクロホスファミド;シタラビンリポソーム;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;ダルベポエチンアルファ;ダウノルビシンリポソーム;ダウノルビシン/ダウノマイシン;ダウノルビシン;デシタビン;デニロイキン・ディフティトックス;デクスニグルジピン;デキソンナプラチン(Dexonnaplatin);デクスラゾキサン;デザグアニン;ジアジコン;ジブロスピジウム;ジエノゲスト;ジナリン;ジセルモリド(Disermolide);ドセタキセル;ドフェキダール(Dofequidar);ドキシフルリジン;ドキソルビシンリポソーム;ドキソルビシンHCL;ドキソルビシンHCLリポソーム注射;ドキソルビシン;ドロロキシフェン;プロピオン酸ドロモスタノロン;デュアゾマイシン;エコムスチン;エダトレキサート;エドテカリン;エフロルニチン;エラクリダル;エリナフィド;エリオットB液;エルサミトルシン;エミテフール;エンロプラチン;エンプロマート;エンザスタウリン;エピプロピジン;エピルビシン;エポエチンアルファ;エプタロプロスト;エルブロゾール;エソルビシン;エストラムスチン;エタニダゾール;エトグルシド;リン酸エトポシド;エトポシドVP-16;エトポシド;エトプリン;エキセメスタン;エクシスリンド;ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フィルグラスチム;フロクスウリジン;フルダラビン;フルオロウラシル;5-フルオロウラシル;フルオキシメステロン;フルロシタビン;ホスキドン;ホストリエシン;ホストリエシン;ホトレタミン;フルベストラント;ガラルビシン;ガロシタビン;ゲムシタビン;ゲムツズマブ/オゾガマイシン;ゲロキノール;ギマテカン;ギメラシル;グロキサゾン;グルホスファミド;酢酸ゴセレリン;ヒドロキシウレア;イブリツモマブ/チウキセタン;イダルビシン;イホスファミド;イルモホシン;;イロマスタット;メシル酸イマチニブ;イメキソン;インプロスルファン;インジスラム;インプロコン;インターフェロンアルファ-2a;インターフェロンアルファ-2b;インターフェロンアルファ;インターフェロンベータ;インターフェロンガンマ;インターフェロン;インターロイキン-2および他のインターロイキン(組換えインターロイキンを含む);イントプリシン;ヨーベングアン[131-I];イプロプラチン;イリノテカン;イルソグラジン;イキサベピロン;ケトトレキサート;L-アラノシン;ランレオチド;ラパチニブ;レドキサントロン;レトロゾール;ロイコボリン;リュープロリド;リュープロレリン(リュープロレリド);レバミゾール;レクサカルシトール(Lexacalcitol);リアロゾール;ロバプラチン;ロメトレキソール;ロムスチン/CCNU;ロムスチン;ロナファルニブ;ロソキサントロン;ラルトテカン;マホスファミド;マンノスルファン;マリマスタット;マソプロコール;マイタンシン;メクロレタミン;メクロレタミン/ナイトロジェンマスタード;酢酸メゲストロール;メゲストロール;メレンゲストロール;メルファラン;メルファランlL-PAM;メノガリル;メピチオスタン;メルカプトプリン;6-メルカプトプリン;メスナ;メテシンド;メトトレキサート;メトキサレン;メトミダート;メトプリン;メツレデパ;ミボプラチン;ミプロキシフェン;ミソニダゾール;ミチンドミド;ミトカルシン;ミトクロミン;ミトフラキソン;ミトギリン;ミトグアゾン;ミトマルシン;マイトマイシンC;マイトマイシン;ミトナフィド;ミトキドン;ミトスペル;ミトタン;ミトキサントロン;ミトゾロミド;ミボブリン;ミゾリビン;モファロテン;モピダモール;ムブリチニブ;ミコフェノール酸;フェニルプロピオン酸ナンドロロン;ネダプラチン;ネルザラビン;ネモルビシン;ニトラクリン;ノコダゾール;ノフェツモマブ;ノガラマイシン;ノラトレキセド;ノルトピキサントロン;オクトレオチド;オプレルベキン;オルマプラチン;オルタタキセル;オテラシル;オキサリプラチン;オキシスラン;オキソフェナルシン;パクリタキセル;パミドロネート;パツビロン;ペガデマーゼ;ペグアスパラガーゼ;ペグフィルグラスチム;ペルデシン;ペリオマイシン;ペリトレキソール;ペメトレキセド;ペンタムスチン;ペントスタチン;ペプロマイシン;ペルホスファミド;ペリフォシン;ピコプラチン;ピナフィド;ピポブロマン;ピポスルファン;ピルフェニドン;ピロキサントロン;ピクサントロン;プレビトレキセド;プリカミシド・ミトラマイシン(Plicamycid Mithramycin);プリカマイシン;プロメスタン;プロメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィマー;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;プロカルバジン;プロパミジン;プロスピジウム;プミテパ;ピューロマイシン;ピラゾフリン;キナクリン;ラニムスチン;ラスブリカーゼ;リボプリン;リトロスルファン;リツキシマブ;ログレチミド;ロキニメクス;ルフォクロモマイシン;サバルビシン;サフィンゴール;サルグラモスチム;サトラプラチン;セブリプラチン;セムスチン;シムトラゼン;シゾフィラン;ソブゾキサン;ソラフェニブ;スパルフォセート;スパルフォシン酸;スパルソマイシン;スピロゲルマニウム;スピロムスチン;スピロプラチン;スピロプラチン;スクアラミン;ストレプトニグリン;ストレプトバリシン;ストレプトゾシン;スホスファミド;スロフェヌール;スニチニブリンゴ酸塩;6-チオグアニン(6-TG);タセジナリン;タルク;タリソマイシン;タリムスチン;タモキシフェン;タリキダル;タウロムスチン(Tauromustine);テコガラン;テガフール;テロキサントロン;テモポルフィン;テモゾロミド;テニポシド/VM-26;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアミプリン;チアゾフリン;チロミソール;チロロン;チムコダー;チモナシク;チラパザミン;トピキサントロン;トポテカン;トレミフェン;トシツモマブ;トラベクテジン(エクテイナシジン743);トラスツズマブ;トレストロン;トレチノイン/ATRA;トリシリビン;トリロスタン;トリメトレキサート;四硝酸トリプラチン;トリプトレリン;トロホスファミド;ツブロゾール;ウベニメクス;ウラシルマスタード;ウレデパ;バルルビシン;バルスポダール;バプレオチド;ベルテポルフィン;ビンブラスチン;ビンクリスチン;ビンデシン;ビネピジン;ビンフルニン;ビンホルミド(Vinformide);ビングリシナート;ビンロイシノール(Vinleucinol);ビンロイロシン;ビノレルビン;ビンロシジン;ビントリプトール;ビンゾリジン;ボロゾール;キサントマイシンA(グアメサイクリン);ゼニプラチン;ジラスコルブ(Zilascorb)[2-H];ジノスタチン;ゾレドロネート;ゾルビシン;およびゾスキダル、例えば
【0489】
アルデスロイキン(例えば、PROLEUKIN(登録商標));アレムツズマブ(例えば、CAMPATH(登録商標));アリトレチノイン(例えば、PANRETIN(登録商標));アロプリノール(例えば、ZYLOPRIM(登録商標));アルトレタミン(例えば、HEXALEN(登録商標));アミフォスチン(例えば、ETHYOL(登録商標));アナストロゾール(例えば、ARIMIDEX(登録商標));三酸化ヒ素(例えば、TRISENOX(登録商標));アスパラギナーゼ(例えば、ELSPAR(登録商標));;BCG生(例えば、TICE(登録商標)BCG);ベキサロテン(例えば、TARGRETIN(登録商標));ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標));ブレオマイシン(例えば、BLENOXANE(登録商標));ブスルファン静注(例えば、BUSULFEX(登録商標));ブスルファン経口(例えば、MYLERAN(登録商標));カルステロン(例えば、METHOSARB(登録商標));カペシタビン(例えば、XELODA(登録商標));カルボプラチン(例えば、PARAPLATIN(登録商標));カルムスチン(例えば、BCNU(登録商標)、BiCNU(登録商標));カルムスチンとポリフェプロサン(例えば、GLIADEL(登録商標)Wafer);セレコキシブ(例えば、CELEBREX(登録商標));クロラムブシル(例えば、LEUKERAN(登録商標));シスプラチン(例えば、PLATINOL(登録商標));クラドリビン(例えば、LEUSTATIN(登録商標)、2-CdA(登録商標));シクロホスファミド(例えば、CYTOXAN(登録商標)、NEOSAR(登録商標));シタラビン(例えば、CYTOSAR-U(登録商標));シタラビンリポソーム(例えば、DepoCyt(登録商標));ダカルバジン(例えば、DTIC-Dome):ダクチノマイシン(例えば、COSMEGEN(登録商標));ダルベポエチンアルファ(例えば、ARANESP(登録商標));ダウノルビシンリポソーム(例えば、DANUOXOME(登録商標));ダウノルビシン/ダウノマイシン(例えば、CERUBIDINE(登録商標));デニロイキン・ディフティトックス(例えば、ONTAK(登録商標));デクスラゾキサン(例えば、ZINECARD(登録商標));ドセタキセル(例えば、TAXOTERE(登録商標));ドキソルビシン(例えば、ADRIAMYCIN(登録商標)、RUBEX(登録商標));ドキソルビシンHCLリポソーム注射を含むドキソルビシンリポソーム(例えば、DOXIL(登録商標));プロピオン酸ドロモスタノロン(例えば、DROMOSTANOLONE(登録商標)およびMASTERONE(登録商標)注射);エリオットB液(例えば、エリオットB液(登録商標));エピルビシン(例えば、ELLENCE(登録商標));エポエチンアルファ(例えば、EPOGEN(登録商標));エストラムスチン(例えば、EMCYT(登録商標));リン酸エトポシド(例えば、ETOPOPHOS(登録商標));エトポシドVP-16(例えば、VEPESID(登録商標));エキセメスタン(例えば、AROMASIN(登録商標));フィルグラスチム(例えば、NEUPOGEN(登録商標));フロクスウリジン(例えば、FUDR(登録商標));フルダラビン(例えば、FLUDARA(登録商標));5-FUを含むフルオロウラシル(例えば、ADRUCIL(登録商標));フルベストラント(例えば、FASLODEX(登録商標));ゲムシタビン(例えば、GEMZAR(登録商標));ゲムツズマブ/オゾガマイシン(例えば、MYLOTARG(登録商標));酢酸ゴセレリン(例えば、ZOLADEX(登録商標));ヒドロキシウレア(例えば、HYDREA(登録商標));イブリツモマブ/チウキセタン(例えば、ZEVALIN(登録商標));イダルビシン(例えば、IDAMYCIN(登録商標));イホスファミド(例えば、IFEX(登録商標));メシル酸イマチニブ(例えば、GLEEVEC(登録商標));インターフェロンアルファ-2a(例えば、ROFERON-A(登録商標));インターフェロンアルファ-2b(例えば、INTRON A(登録商標));イリノテカン(例えば、CAMPTOSAR(登録商標));レトロゾール(例えば、FEMARA(登録商標));ロイコボリン(例えば、WELLCOVORIN(登録商標)、LEUCOVORIN(登録商標));レバミゾール(例えば、ERGAMISOL(登録商標));ロムスチン/CCNU(例えば、CeeBU(登録商標));メクロレタミン/ナイトロジェンマスタード(例えば、MUSTARGEN(登録商標));酢酸メゲストロール(例えば、MEGACE(登録商標));メルファラン/L-PAM(例えば、ALKERAN(登録商標));6-メルカプトプリンを含むメルカプトプリン(6-MP;例えば、PURINETHOL(登録商標));メスナ(例えば、MESNEX(登録商標));メトトレキサート;メトキサレン(例えば、UVADEX(登録商標));マイトマイシンC(例えば、MUTAMYCIN(登録商標)、MITOZYTREX(登録商標));ミトタン(例えば、LYSODREN(登録商標));ミトキサントロン(例えば、NOVANTRONE(登録商標));フェニルプロピオン酸ナンドロロン(例えば、DURABOLIN-50(登録商標));ノフェツモマブ(例えば、VERLUMA(登録商標));オプレルベキン(例えば、NEUMEGA(登録商標));オキサリプラチン(例えば、ELOXATIN(登録商標));パクリタキセル(例えば、PAXENE(登録商標)、TAXOL(登録商標));パミドロネート(例えば、AREDIA(登録商標);;ペガデマーゼ(例えば、ADAGEN(登録商標));ペグアスパラガーゼ(例えば、ONCASPAR(登録商標));ペグフィルグラスチム(例えば、NEULASTA(登録商標));ペントスタチン(例えば、NIPENT(登録商標));ピポブロマン(例えば、VERCYTE(登録商標));プリカマイシン/ミトラマイシン(例えば、MITHRACIN(登録商標));ポルフィマーナトリウム(例えば、PHOTOFRIN(登録商標));プロカルバジン(例えば、MATULANE(登録商標));キナクリン(例えば、ATABRINE(登録商標));ラスブリカーゼ(例えば、ELITEK(登録商標));リツキシマブ(例えば、RITUXAN(登録商標));サルグラモスチム(例えば、PROKINE(登録商標));ストレプトゾシン(例えば、ZANOSAR(登録商標));スニチニブリンゴ酸塩(例えば、SUTENT(登録商標));タルク(例えば、SCLEROSOL(登録商標));タモキシフェン(例えば、NOLVADEX(登録商標));テモゾロミド(例えば、TEMODAR(登録商標));テニポシド/VM-26(例えば、VUMON(登録商標));テストラクトン(例えば、TESLAC(登録商標));6-チオグアニン(6-TG)を含むチオグアニン;チオテパ(例えば、THIOPLEX(登録商標));トポテカン(例えば、HYCAMTIN(登録商標));トレミフェン(例えば、FARESTON(登録商標));トシツモマブ(例えば、BEXXAR(登録商標));トラスツズマブ(例えば、HERCEPTIN(登録商標));トレチノイン/ATRA(例えば、VESANOID(登録商標));ウラシルマスタード;バルビシン(例えば、VALSTAR(登録商標));ビンブラスチン(例えば、VELBAN(登録商標));ビンクリスチン(例えば、ONCOVIN(登録商標));ビノレルビン(例えば、NAVELBINE(登録商標));およびゾレドロネート(例えば、ZOMETA(登録商標))が含まれる。
【0490】
本明細書で提供される細胞およびウイルス(ウイルス療法のための組み合わせ)の投与後、投与と同時に、または投与前に投与することができる例示的なチェックポイント阻害剤には、それだけに限らないが、抗CTLA4剤、抗PD-1剤などが含まれ、その例示的なものは以下である:
【0491】
【0492】
本明細書で提供されるウイルス療法のための組み合わせで投与される追加の治療は、1つ以上の免疫抑制薬、例えば、グルココルチコイド(例えば、プレドニゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン);カルシニューリン阻害剤(例えば、シクロスポリン、タクロリムス);mTOR阻害剤(例えば、シロリムス、エベロリムス);メトトレキサート;レナリドマイド;アザチオプリン;メルカプトプリン;フルオロウラシル;シクロホスファミド;TNFα遮断抗体(例えば、インフリキシマブ/レミケード、エタネルセプト/エンブレル、アダリムマブ/ヒュミラ)およびフルダラビンを含むことができる。
【0493】
I.治療されるがんの種類
本明細書に開示される方法は、固形腫瘍および血液悪性腫瘍を含む、あらゆる種類のがんまたは転移を治療するために使用することができる。本明細書に開示される方法によって治療することができる腫瘍には、それだけに限らないが、膀胱腫瘍、乳房腫瘍、前立腺腫瘍、癌腫、基底細胞癌、胆道がん、膀胱がん、骨がん、脳がん、CNSがん、神経膠腫腫瘍、子宮頸がん、脈絡膜癌、結腸および直腸がん、結合組織がん、消化器系がん、子宮内膜がん、食道がん、眼がん、頭頸部がん、胃がん、上皮内新生物、腎臓がん、喉頭がん、白血病、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、黒色腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、口腔がん、卵巣がん、膵臓がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、直腸がん、腎臓がん、呼吸器系がん、肉腫、皮膚がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、子宮がん、ならびに泌尿器系のがん、例えばリンパ肉腫、骨肉腫、乳腺腫瘍、肥満細胞腫、脳腫瘍、黒色腫、腺扁平上皮癌、カルチノイド肺腫瘍、気管支腺腫瘍、気管支腺癌、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、線維腫、粘液軟骨腫、肺肉腫、神経肉腫、骨腫、乳頭腫、網膜芽細胞腫、ユーイング肉腫、ウィルム腫瘍、バーキットリンパ腫、小膠細胞腫、神経芽細胞腫、破骨細胞腫、口腔新生物、線維肉腫、骨肉腫および横紋筋肉腫、生殖器扁平上皮癌、伝染性性病腫瘍、精巣腫瘍、セミノーマ、セルトリ細胞腫瘍、血管外皮細胞腫、組織球腫、緑色腫、顆粒球性肉腫、角膜乳頭腫、角膜扁平上皮癌、血管肉腫、胸膜中皮腫、基底細胞腫瘍、胸腺腫、胃腫瘍、副腎癌、口腔乳頭腫症、血管内皮腫、嚢胞腺腫、濾胞性リンパ腫、腸リンパ肉腫、線維肉腫、および肺扁平上皮癌、白血病、血管外皮細胞腫、眼新生物、包皮線維肉腫、潰瘍性扁平上皮癌、包皮癌、結合組織新生物、肥満細胞腫、肝細胞癌、リンパ腫、肺腺腫症、肺肉腫、ラウス肉腫、細網内皮症、線維肉腫、腎芽細胞腫、B細胞リンパ腫、リンパ性白血病、網膜芽細胞腫、肝新生物、リンパ肉腫、形質細胞様白血病、浮袋肉腫(魚類)、乾酪性リンパ節炎(caseous lumphadenitis)、肺癌、インスリノーマ、リンパ腫、肉腫、唾液腺腫瘍、神経腫、膵島細胞腫瘍、胃MALTリンパ腫および胃腺癌が含まれる。
【0494】
いくつかの実施形態では、腫瘍が、転移性黒色腫;食道および胃腺癌;胆管癌(任意のステージ);膵臓腺癌(任意のステージ);胆嚢がん(任意のステージ);高悪性度の粘液性虫垂がん(任意のステージ);高悪性度の胃腸神経内分泌がん(任意のステージ);中皮腫(任意のステージ);軟部組織肉腫;前立腺がん;腎細胞癌;肺小細胞癌;肺非小細胞癌;頭頸部扁平上皮癌;結腸直腸がん;卵巣癌;肝細胞癌;および神経膠芽腫から選択される。
【0495】
いくつかの実施形態では、腫瘍が、神経膠芽腫、乳癌、肺癌、前立腺癌、結腸癌、卵巣癌、神経芽細胞腫、中枢神経系腫瘍および黒色腫から選択される。
【0496】
J.実施例
以下の実施例は、例示目的でのみ含まれており、主題の範囲を制限することを意図したものではない。
【0497】
実施例1
細胞の分離および培養
【0498】
A.脂肪由来幹細胞(ADSC)
i.脂肪間質血管画分の検索および調製
pH 7.4に滴定された0.5%のリドカイン0.5%と1:400,000のエピネフリンおよび8.4%のHCO3を含有する局所麻酔(一般的に、総量60ccで5ccのHCO3)を対象に投与する。次いで、対象は、脂肪処理ユニット(脂肪吸引用の気密注射器)および2.5~3mmのカニューレを含む、Cell Surgical Network、ビバリーヒルズ、CA、米国(CSN)製の商標Time-Machine(登録商標)装置の下で利用可能な細胞採取および閉鎖系採取および処理システムを利用する脂肪吸引手技を受ける。バシトラシン軟膏および絆創膏を、圧迫包帯とともに創傷の上に固定する。
【0499】
本明細書で提供される実施例では、外膜上脂肪間質細胞に由来する拡大脂肪幹細胞を使用した。ADSCを含有する間質血管画分(SVF)を、以下のプロトコルに従って閉鎖系で調製する:
a.CSN TimeMachine(登録商標)(CSNから入手可能)などの脂肪幹細胞を採取および処理するための閉鎖系は、脂肪の採取物を60cc TP-101シリンジ(単回使用滅菌気密脂肪処理シリンジ)に抽出する
b.2800rpmで3分間遠心分離する
c.TP-109閉鎖系を介して遊離脂肪酸および壊死組織片(局所/血液)を除去する
d.25ccの濃縮脂肪をTP-102シリンジ(SVF処理シリンジ)に移す
e.12.5 Wunsch単位の酵素(1 Wunsch単位=1000コラーゲン分解単位(CDU))を含有する予熱(38℃)した25ccのRoche T-MAX(登録商標)Time Machine Accelerator(GMPグレードコラゲナーゼ)を添加する
f.38℃で30~45分間インキュベートする
g.200gで4分間遠心分離する
h.底部3~10ccを除く上清液を除去する
i.コラゲナーゼ残渣を除去するための洗浄液として50cc D5LR(乳酸加リンゲル液および5%デキストロース)を添加し、200gで4分間遠心分離する
j.さらに2回繰り返し、合計3回洗浄する
k.3~10ccのペレット収集物-これは間質血管画分である-を残して、全ての上清液を除去する
l.100ミクロンフィルタを通してSVFをラベル付き20ccシリンジに移す
m.SVF試料を収集し、細胞数、生存率を特定し、凝集も壊死組織片もないことを確認する。
n.各細胞懸濁液のアリコートを、細胞選別、エンドトキシン試験および無菌染色のために取っておく。SVFを、エンドトキシンユニットレベル(EU)が5EU/kg/時間以下であり、グラム染色の結果が陰性であることを確認した後、注射用に放出する
o.細胞を20mlのIsolyteに再懸濁する。細胞懸濁液を、注射用の18ゲージ針を通して注射器に引き込み;最大1億個の生細胞を注射に使用する
p.次いで、注射器を、対象の名前および医療記録番号がラベル付けされた密封検体バッグに入れる。
【0500】
ii.細胞培養
非がんドナー間質血管画分(SVF)を、上記のように、書面による同意(International Cell Surgical Society;IRB番号ICSS-2016-024)の後に、IRB承認プロトコルの一部として取得した。新鮮なSVFを蒔いて一晩付着させ、翌日洗浄して付着していない細胞および壊死組織片を除去した。間葉系幹細胞(MSC)が増殖し始め、80%コンフルエントに達するまで、培地を3~4日毎に交換した。細胞を80%コンフルエントまで増殖させ、TrypLE(商標)Express(Life Technologies、(1x)、フェノールレッドなし、カタログ番号12604021、3分、37℃インキュベーター)を使用して3~4日毎に最大10回継代した。脂肪由来幹細胞(ADSC)を、L-グルタミンおよびペニシリン/ストレプトマイシンを補足したDMEM中5%ヒト血小板抽出物(Cook Regentec、Stemmulate、PL-SP-100)で増殖および維持した。ADSCは6人のドナーから分離し、RM20、RM35、RM47、RM48、RM58およびBH21とラベル付けした。
【0501】
iii.eGFP(高感度緑色蛍光タンパク質)を構成的に発現する脂肪由来幹細胞の作製
継代0のRM20脂肪由来幹細胞を、CMVプロモーター(UniProtKB-C5MKY7(C5MKY7_HCMV))の制御下でeGFP(Clontech、パロアルト、CA)を発現するように操作した。eGFPを含むレンチウイルスベクター(VectorBuilder Inc.、サンタクララ、CAから入手可能なVectorBuilder)を使用して、構成的発現のためにeGFPをADSCに導入した。10,000個のeGFP陽性細胞を、BioRAD S3 Cell Sorterを使用して継代1、およびその後、継代2で選別した。eGFP発現を、Keyence All-in-one Fluorescence Microscope BZ-X700シリーズを使用してフローサイトメトリーおよび蛍光顕微鏡法によって確認した。
【0502】
B.がん細胞
B16 F10黒色腫、A549肺癌およびK562細胞を、10%ウシ胎児血清(Omega Scientific、FB-02、USDA認可、熱不活化)、2mM L-グルタミン(ThermoFisher Scientific、25030081、100x)およびペニシリン/ストレプトマイシン(Life Technologies、15140122、100x)を補足したDMEM(B16、A549)(Gibco、カタログ番号:11960069)またはRPMI 1640(K562)(Gibco、カタログ番号:21870092)で増殖させた。
【0503】
C.末梢血単核細胞(PBMC)
PBMCを、書面による同意(International Cell Surgical Society;IRB番号ICSS-2016-024)の後に、IRB承認プロトコルの一部として取得した。PBMCを、標準的なFicollプロトコル(Ficoll-Paque Plus、GE Healthcare、カタログ番号95021-205)を使用して分離した。PBMCは8人のドナーから分離し、BH62、RM20、RM47、RM48、RM52、RM53、SIBD01およびSIBD02とラベル付けした。
【0504】
D.共培養物
共培養物は、PBMCまたは全血などの患者の免疫細胞を、幹細胞または腫瘍細胞を含む細胞ベースの送達媒体/担体細胞と共に、例えば、試験される腫瘍溶解性ウイルス、例えばワクシニアウイルス、単純ヘルペスウイルスおよびアデノウイルスなどの有無にかかわらず含むことができる。
【0505】
患者の血液を分離し、これを処理してPBMCおよび血清を分離した後、患者のPBMCを腫瘍溶解性ウイルスの有無にかかわらず、さまざまな担体細胞と共培養して、担体細胞の適合性を判断する。試験される対照を含む共培養物には、例えば、以下が含まれる:PBMC単独+/-ウイルス;担体細胞単独+/-ウイルス;PBMC+担体細胞+/-ウイルス;担体細胞単独+ウイルス+/-血清(10~50%)+/-補体の熱または薬理学的(コブラ毒因子または等価物)不活化(患者の血清耐性スクリーニング用);PBMC+担体細胞+ウイルス+/-血清(10~50%)+/-補体の熱または薬理学的(コブラ毒因子または等価物)不活化(患者の血清耐性スクリーニング用);および上記のPBMCの代わりにヘパリン処理された全血(天然環境試験用)。
【0506】
次いで、共培養物(細胞および/または上清を含む)を分析して、ウイルスの増幅および感染のレベル、ならびに免疫抑制/免疫刺激効果を、それだけに限らないが、表面および細胞内マルチパラメータフローサイトメトリーまたは等価物、例えば飛行時間によるサイトメトリー(CyTOF);酵素結合免疫吸着測定法(ELISA);酵素結合免疫スポット(ELISPOT)アッセイ;ウイルスプラークアッセイ(VPA);定量的PCR(qPCR);生物発光アッセイ;蛍光顕微鏡法;および細胞内染色を含むさまざまなアッセイおよび試験を使用して決定する。
【0507】
フローサイトメトリーを、例えば、ゲーティングパラメータを使用して実施して、T細胞(それだけに限らないが、CD3、CD4、CD8など)、NK細胞(それだけに限らないが、NKp46、CD16、CD56など)およびNKT細胞(それだけに限らないが、CD3、CD16、CD56、NKp46、aGalCer-CD1dテトラマーなど)を含む特定の免疫細胞集団を特定する。免疫応答を、それだけに限らないが、以下を含むさまざまな活性化/エフェクター機能パラメータを分析することによって評価する:CD69、CD25、CD71、CD27(CD70L)、CD154(CD40L)、CD137(4-1BB)、CD44、CD45RA、CD45RO、CD278(ICOS)、CD127(IL-7RA)、CD183(CXCR3)、CD197(CCR7)、CD39、CD73、CD314(NKG2D)、PD-1、CTLA-4、IFNα/β、IFNγ、TNFα、IL-2、IL-4、IL-5、IL-9、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-18、IL-21、IL-22、IL-23、IL-25、GM-CSF、IL-17、IL-6、CD107a、CD107b、TGFβ、Perforin、Granzyme B、IL-1a/IL-1b、G-CSF、RANTES、EXOTAXIN、MIP-1b、MCP-1、EGF、HGF、VEGF、IL-1RA、IL-7、IP-10、IL-2R、MIGおよびIL-8など。
【0508】
例えば、PBMCを、96ウェル平底プレート上および合計200μlのR10培地(10%FBS、L-グルタミンおよびPen/Strepを補足したRPMI 1640)で、ワクシニアウイルス(50μl)の有無にかかわらずADSC(50μl)と48時間共培養(100μl)する。一部の実験では、ウイルス(50μl)およびADSC(50μl)を事前に混合し、オービタルシェーカーで37℃(インキュベーター)で1時間攪拌し、次いで、(100μlの混合液)を結合していないウイルスの追加の洗浄なしでPBMCに添加する。48時間のインキュベーション期間の終わりに、細胞を回収して染色およびフローサイトメトリー分析を直接、または任意にK562細胞もしくはPMA/イオノマイシン(50μl)とモネンシン/ブレフェルジンA(50μl)でさらに4~5時間刺激した後に行う。
【0509】
実施例2
対象からの免疫細胞(末梢血単核細胞(PBMC))の存在下および非存在下でのウイルスの増幅および感染に対する脂肪由来幹細胞(ADSC)の効果
特定のウイルスについて、ウイルスを増幅する担体細胞を、ウイルス療法のためにウイルスを対象に送達するための候補として特定する。この例は、担体細胞がウイルスの増幅および感染を促進する能力に対する、対象に由来する免疫細胞の効果を評価する。PBMCをこの目的で使用する。担体細胞によってウイルスの感染および増幅に影響を与える因子には、例えば、インターフェロン(IFN)の有無および/またはPBMCの有無が含まれ、存在するウイルスの量を測定する適切なアッセイを使用して評価される。このようなアッセイには、例えば、ウイルスプラークアッセイ(VPA)、qPCR(または存在するウイルスDNAゲノムの量を測定する任意の代替アッセイ)、ELISA(それだけに限らないが、β-ガラクトシダーゼなどの、ウイルスにコードされるまたは操作されたレポータータンパク質または酵素を測定する)、および生物発光アッセイ(それだけに限らないが、ルシフェラーゼなどのウイルスにコードされる発光レポータータンパク質を測定する)が含まれる。担体細胞、PBMCおよび腫瘍細胞のウイルス感染は、例えば、フローサイトメトリーおよび蛍光顕微鏡法を使用してモニタリングすることができる。
【0510】
A.ウイルスプラークアッセイ(VPA)
実施例1に記載される共培養物を保存し、その後、VPAを使用して分析して、さまざまな条件下で、患者由来の免疫細胞と細胞ベースの送達媒体のさまざまな組み合わせでウイルス粒子増幅を定量化することができる。
【0511】
ウイルス含有試料を-80℃で保存し、3回の凍結(-80℃)/解凍(+37℃)サイクルに供し、引き続いて3回、1分離して1分間隔で氷冷水上で超音波処理する。超音波処理された試料を、ワクシニアウイルス感染培地(2%FBS、L-グルタミンおよびペニシリン/ストレプトマイシンを補足したDMEM)で段階希釈する。プラークアッセイを、2連ウェルで24ウェルプレートで実施する。200,000個のCV-1サル腎臓細胞を1ウェル当たり1mLのD10培地に一晩蒔く。上清を吸引し、ウイルス含有試料の10倍段階希釈液を200μL/ウェルでCV-1単層にアプライする。プレートを、20分毎に手動で振盪して37℃(インキュベーター)で1時間インキュベートする。1mLのCMC培地を細胞の上に静かに重層し、プレートを48時間インキュベートする。室温で3~5時間、クリスタルバイオレット溶液(1.3%クリスタルバイオレット(Sigma-Aldrich、C6158)、5%エタノール(純エタノール、分子生物学グレード、VWR、71006-012)、30%ホルムアルデヒド(37%v/vホルムアルデヒド、Fisher、カタログ番号F79-9)および再蒸留水)でウェルの頂を覆う(toping)ことによって細胞を固定し、引き続いてプレートを水道水で洗浄し、一晩乾燥させることによって、細胞を固定した後、プラークをカウントする。CMCオーバーレイ培地を、15gのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩(Sigma-Aldrich、カタログ番号C4888)をオートクレーブ処理し、ペニシリン/ストレプトマイシン、L-グルタミンおよび5%FBSを補足した1L DMEM中、室温で一晩攪拌しながら再懸濁することによって調製し、4℃で短期間貯蔵する。
【0512】
B.蛍光顕微鏡法
ウイルス感染を、eGFP標識ADSC(実施例1)などの蛍光標識細胞、および例えば、ドイツ、ベルンリートのStemVac GmbHから入手したワクシニアのTK挿入Turbo-FP635操作LIVP株であるTurboFP635操作L14ウイルスなどの蛍光標識腫瘍溶解性ウイルスを使用してモニタリングする。Keyence All-in-one蛍光顕微鏡BZ-X700シリーズで、蛍光顕微鏡法を使用してウイルス感染の経時的顕微鏡観察を実施する。例えば、eGFPを発現するように操作されたADSCをGFPチャネルで追跡し(1秒の露光)、TurboFP635操作LIVPウイルスによるウイルス感染をTRITCチャネルでモニタリングする(3秒の露光)。4倍または10倍の倍率の画像を収集し、明視野(位相差、1/50秒の露光)でオーバーレイする。
【0513】
C.インターフェロン(IFN)の存在下および非存在下でのADSC(脂肪由来幹細胞)によるワクシニアウイルス増幅の評価
ADSCがワクシニアウイルスを増幅し、インターフェロンの防御的抗ウイルス効果に応答する能力を、L14ワクシニアウイルス(VV)(TK挿入Turbo-FP635操作LIVP株)を使用して評価した。ワクシニアウイルス(L14 VV)を、ドイツのベルンリートのStemVac GmbHから入手した。50,000個のRM35 ADSCを、12ウェルプレート中、感染時または24時間前(IFNβ/γ 24時間)に添加した増加する用量(0.08ng/mL、0.3ng/mL、1.3ng/mL、5ng/mL、および20ng/mL)のIFNγ(Peprotech、カタログ番号AF3000220UG、凍結乾燥20 mg、0.1%FBSを補足した1x PBS中およそ1000Xストックから20μg/mLに希釈、-80℃で保存)またはIFNβ(Peprotech、カタログ番号AF30002B5UG、5μg凍結乾燥、0.1%FBSを補足した1x PBS中およそ1000Xストックから5μg/mLに希釈、-80℃で保存)の存在下、10,000pfu(プラーク形成単位)のL14 VVで感染させた。蛍光イメージングおよびプラークアッセイを、感染後48時間で実施した。
【0514】
プラークアッセイ分析の結果を表1に示す。感染後48時間での蛍光イメージングおよびプラークアッセイは、I型およびII型インターフェロンがADSCをワクシニアウイルス(VV)感染から用量依存的に保護することを示している。これは、これらの細胞が形質転換されておらず、機能的抗ウイルスインターフェロン応答を有していることと一致している。インターフェロンをウイルス曝露の24時間前ではなく同時に添加した場合、ウイルス感染からの保護はあまり効率的でなかった。
【0515】
I型インターフェロンとII型インターフェロンの組み合わせがVV感染に対する保護の増加をもたらすかどうかを評価するために、50,000個のRM35 ADSCを、10,000pfuのL14 VVに感染する前に、単独でまたは組み合わせた増加する用量(0.02、0.08、0.3、1.3、5、20および80ng/mL)のIFNγとIFNβで24時間前処理した。プラークアッセイの結果(表2)は、I型インターフェロンとII型のインターフェロンの組み合わせが保護をさらに増強しないことを示している。
【0516】
次いで、IFNγによって誘導される抗ウイルス状態の安定性を決定した。100,000個のRM20-eGFP ADSC(実施例1参照)を、12ウェルプレートで100,000pfuのL14 VVに感染させ、最大4日間インキュベートした。ADSCは未処理((-)IFNγ対照)、または20ng/mLのIFNγで24時間前処理した。IFNγをウイルス感染の1、2または3日前に投与した。時間経過蛍光画像分析を使用して、ウイルス感染の進行を可視化し、感染後24時間、48時間、72時間および96時間に画像を撮影した。IFNγの非存在下でウイルスに感染したADSC((-)IFNγ対照)の蛍光イメージングは、感染していない(eGFP+/緑色)ADSC、感染した死ADSC(TurboFP635/赤色)、および感染した生ADSC(黄色)を示し、24~96時間の感染した死細胞の増加する数が、インターフェロンの非存在下でのウイルスによるADSCの感染が成功したことを実証している。IFNγへの24時間の曝露後にウイルスに感染したADSCの蛍光イメージングは、赤色細胞も黄色細胞も明らかにせず、インターフェロンによる前処理がウイルス感染を防止することを示している。
【0517】
プラーク分析を、ウイルス単独(ADSCなし)対照および(-)IFNγ対照を用いて、上記のように実施した。表3に示されるように、(-)IFNγ対照のみがウイルス増幅を示した。ADSCは、ワクシニアウイルス感染に対して高度に許容性であった。プラーク分析の結果は、ADSCがウイルスを増幅する能力が、インターフェロンなしの対照群と比較して、インターフェロン前処理によって抑止されたことを示している。インターフェロン処理によって誘導された抗ウイルス状態は安定しており、IFNγへの一過的な24時間の曝露後数日間持続した。したがって、I型およびII型インターフェロン応答は、ADSCをウイルス感染から保護し、免疫抑制能力を潜在的に改善しながら、インビボでワクシニアウイルスを送達および増幅する能力を損なう効果も有する。
【0518】
【表1】
【0519】
【表2】
【0520】
【表3】
【0521】
D.担体細胞/PBMC共培養物におけるウイルス増幅および感染
同種PBMCの存在下でのADSC(担体細胞)によるワクシニアウイルス(VV)の増幅能を評価するために、50,000個のRM20-eGFP ADSCを、5,000個もしくは50,000個のL14 VV単独で、または1×106個の同種PBMC(BH62と指定される血液ドナー由来)の存在下で最大48時間感染させた。オーバーレイ蛍光イメージングおよびウイルスプラークアッセイを使用して、同種ADSC+PBMCの共培養物の結果を、単独で培養したADSCおよび単独で培養したPBMCと比較することによって、ワクシニアウイルスの感染および増幅をそれぞれ評価した。
【0522】
結果を表4に示す。ADSC単独はVVの感染および増幅に許容性であるが、PBMC単独は、VVの感染も増幅も示さない。共培養物は、ADSCが同種PBMCの存在下でワクシニアウイルスを増幅できること、および同種PBMCの存在下で、別々に感染した場合のADSCとPBMCの合計出力と比較して全体的なウイルス出力が増加することを実証し、ADSCがPBMCをワクシニアウイルス感染に対して感作させることを示した。
【0523】
【表4】
【0524】
実施例3
担体細胞+腫瘍細胞共培養物におけるウイルス増幅および感染
さまざまな腫瘍/がん細胞型の存在下での腫瘍溶解性ウイルスの増幅および感染を評価して、特定の担体細胞と腫瘍溶解性ウイルスの組み合わせが腫瘍/がん細胞の腫瘍溶解に有効であるかどうかを決定する。このようにして、腫瘍をウイルス感染に対して耐性または許容性であると特定することができ、担体細胞による腫瘍細胞へのウイルス送達の増強を評価することができる。IFNγ前処理の役割、担体細胞の用量、および担体細胞による可溶性因子の分泌などの他の因子も評価できる。この例は、例示的なウイルスであるワクシニアウイルスを例示的ながん細胞株であるB16黒色腫細胞に送達する能力に対する例示的な担体細胞型であるADSCの効果を評価する。
【0525】
A.耐性および許容腫瘍細胞株のADSCによって促進される腫瘍溶解
例えば、蛍光顕微鏡法、プラークアッセイ分析およびフローサイトメトリーを使用して、ADSCを使用してワクシニアウイルスの腫瘍/がん細胞への送達を増強する効果を決定することができる。ウイルスを耐性B16 F10黒色腫細胞により有効に送達するためのADSCの使用を評価した。比較のために、ウイルス感染に高度に許容性のA549細胞を含めた。
【0526】
1×106個のB16細胞またはA549細胞を、RM20ドナーの2×105個のeGFP標識ADSC(実施例1参照)と12ウェルプレートで共培養し、1x105pfuのL14 VV(MOI=0.1~B16)に感染させ、最大72時間インキュベートした。どのウイルス対照も、B16細胞単独、A549細胞単独、eGFP標識ADSC単独およびeGFP ADSCと共培養したB16細胞を含まなかった。蛍光画像を、24時間、48時間および72時間のインキュベーション期間後に撮像した。単独で培養された耐性B16細胞と単独で培養された許容性A549細胞の比較は、蛍光画像に赤色細胞が存在することによって示されるように、A549細胞で劇的に高いレベルのウイルス感染を示した。eGFP標識ADSC(緑色)を使用して、これらを可視化し、非標識B16細胞(灰色)と区別すると、コンフルエントな環境では、ADSCが集まって、標識されていない黒色腫細胞を誘引する傾向があることが観察された。ウイルスが存在しない場合、72時間後に緑色の幹細胞クラスターが観察された。ウイルスの存在下では、この誘引により、濃い赤色の感染したB16細胞に囲まれた高度に感染した黄色のADSCクラスターが形成された。これらの効果は、耐性マウスB16黒色腫細胞の単層の劇的に改善された腫瘍溶解と関連していた。
【0527】
これらの結果は、ヒトADSCが、L14ワクシニアウイルスの増強された増幅を通して、耐性B16黒色腫細胞の腫瘍溶解を促進することを示している。別のドナー(RM35)に由来するADSCでも、耐性B16細胞の標的化の改善が観察された。1×106個のB16細胞を200,000個のRM35 ADSCと共培養し、100,000pfuのL14 VVに最大4日間感染させた。蛍光イメージング分析により、ヒトRM35 ADSCもインビトロで耐性マウスB16黒色腫細胞の腫瘍溶解を促進することが明らかになった。
【0528】
ワクシニアウイルス増幅のプラークアッセイ分析を、B16細胞単独、A549肺癌細胞単独、B16+A549共培養物、ADSC単独、およびB16+ADSC共培養物で上記のように実施した。結果を表5に要約する。A549肺癌細胞を、高度にワクシニアウイルス許容性の陽性対照として使用したところ、ADSC単独と同様のウイルス増幅レベルを示した。B16+A549またはB16+ADSC共培養物から回収されたウイルス力価は、分離した感染した個々の細胞からのウイルス出力の合計を上回り、高度に許容性のがん細胞とADSCが共に耐性黒色腫細胞をワクチンウイルスの感染に感作させることができることを示している。
【0529】
【表5】
【0530】
B.耐性腫瘍細胞株のADSCによって促進される腫瘍溶解に対するIFNγ前処理の効果
ウイルス増幅に対するADSCのIFNγ前処理の効果を試験した。200,000個のRM20-eGFP細胞(0.2 M)を20ng/mLのIFNγで24時間前処理し、次いで、200,000個(0.2 M)のRM20 ADSC、A549細胞またはB16細胞と共培養し、上記のようにL14ワクシニアウイルスに感染させた。蛍光画像を、24時間、48時間および72時間後に撮像した。結果は、IFNγ前処理が比較的耐性のB16細胞の存在下でのみADSCをウイルス感染から保護するが、高度に許容性のA549細胞の存在下では保護しないことを示した。ADSCのウイルスからの保護により、ADSCのIFNγ前処理はB16単層の腫瘍溶解を損ない、観察された抗腫瘍能が、ADSCによるウイルスの増幅に主に依存することを示している。
【0531】
C.B16細胞の腫瘍溶解に対する担体細胞数/用量の効果
B16単層の腫瘍溶解に対する幹細胞数/用量の効果を評価した。1×106個のB16細胞を200,000個(0.2 M)または20,000個(0.02 M)のRM20-eGFP ADSCと共培養し、上記のようにL14 VVに感染させ、蛍光画像を24時間、48時間および72時間で撮像した。結果は、不十分な数のADSC(2%以下)がB16単層の不完全な腫瘍溶解をもたらすことを示し、観察された抗腫瘍能がADSCによるウイルスの増幅に依存することを確認している。
【0532】
D.耐性マウスB16腫瘍細胞およびヒトK562がん細胞の腫瘍溶解に対する担体細胞によって分泌される可溶性因子の効果
i.耐性腫瘍細胞の感作
耐性腫瘍細胞の腫瘍溶解の成功は、ADSCによるウイルス増幅だけでなく、ウイルス感染に対する腫瘍細胞の感作にも帰することができる。耐性腫瘍細胞の腫瘍溶解において感作が果たす役割を決定するために、ADSC細胞の代わりにADSCからの上清を添加することによって、ADSCによって分泌される可溶性因子の効果を評価した。10,000個のB16細胞を、上記のように96ウェル平底プレートで96時間、0.1のMOIで、L14 VVに3連で感染させた。ヒトRM20 ADSCからの上清を添加し、B16細胞のウイルス感染に対する効果を、TurboFP635蛍光を使用して分析し、感染後72時間でプラークアッセイによって定量化した。プラークアッセイの結果を表6に示す。蛍光画像およびプラークアッセイの結果は、ADSCからの上清の添加が耐性B16細胞におけるウイルス増幅をもたらすことを示しており、ADSCが耐性B16腫瘍細胞をウイルス感染に感作させることを示している。
【0533】
【表6】
【0534】
同様の実験で、4人の異なるADSCドナー(RM20、RM35、BH21およびRM58)からの上清を、96ウェル平底プレートで96時間、0.1のMOIでL14 VVに感染したB16(10,000個)およびK562(100,000個)細胞に添加した。蛍光イメージング分析により、異なるADSCドナーからの上清が、マウスB16細胞および極めて耐性のヒトK562がん細胞の同様の感作を提供することが明らかになった。
【0535】
ii.B16細胞のADSC媒介感作と2つの異なるワクシニアウイルス株による感染の比較:L14 VVおよびWT1 VV
WT1(ACAM2000)は、ワクシニアウイルスの野生型チミジンキナーゼ(TK)ポジティブWyeth株であり、L14 VVよりも高い増幅能および抗ウイルス免疫を回避する能力を有する。L14 VVによる感染に対する耐性B16細胞のADSC媒介感作能を、WT1 VVによる感染に対する細胞の感作能と比較した。4人のADSCドナー(RM20、RM35、BH21およびRM58)からの上清を、96ウェル平底プレートで96時間、0.1のMOIでL14 VVまたはWT1 VVに感染した10,000個のB16細胞に添加した。B16細胞におけるL14およびWT1ワクシニアウイルス増幅のプラークアッセイ分析を、前に記載されるように実施した。細胞生存率を、MTTアッセイを使用して決定した。MTT(テトラゾリウム色素;3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)アッセイは、細胞代謝活性を評価するための周知の比色アッセイである。NAD(P)H依存性細胞オキシドレダクターゼ酵素は、規定の条件下で、存在する生細胞の数を反映することができる。このアッセイは、テトラゾリウム色素MTTの紫色ホルマザン色素への還元を評価する。MTT(ThermoFisher、カタログ番号M-6494、1x PBS中5mg/mLストック、-20℃に維持)を96ウェル平底プレートの細胞(10μL~100μL細胞/ウェル)に最終濃度5μg/mLで添加し、37℃(インキュベーター)で1~2時間インキュベートした。インキュベーション後、100μLのイソプロパノール:1M HCl(24:1、10%Triton X100、Sigma-Aldrich、X100-100MLを補足)を添加して細胞を溶解し、激しくピペッティングしてホルマザンを溶解した。Tecan Infinite(登録商標)200 Proでプレートを読み取り、570nmでのOD値から650nmでのOD値を差し引くことによって、1時間以内にMTTシグナルを測定した。バックグラウンドシグナルを排除するために、MTTまたはブランク/培地ウェルのない細胞を対照として含めた。
【0536】
表7に示されるプラーク分析の結果は、ADSC上清の存在下で平均pfu/試料が増加する全体的な傾向を示しており、ADSC上清がB16細胞をL14およびWT1 VV感染に感作させることができることを示している。MTTアッセイの結果(表8)は、L14またはWT1 VVに感染したB16細胞の生存に対するADSC上清単独の有意な影響がないことを示している。
【0537】
【表7】
【0538】
【表8】
【0539】
iii.ADSC上清またはADSCの存在下でのK562細胞のウイルス感染
100,000個のK562細胞を96ウェル平底プレートで96時間、0.1のMOIでTurboFP635+(蛍光標識)L14 VVに感染させ、4人の異なるADSCドナー(RM20、RM35、BH21およびRM58)からの上清を添加した。フローサイトメトリー分析を実施し、L14 VVに感染したK562細胞の%および中央蛍光強度(MFI)を記録した。プラーク分析を使用してウイルス力価を決定し、MTTアッセイを使用して細胞生存率を決定した。結果は、感染したK562細胞の頻度(割合)(表9)、TurboFP635+MFI(表10)およびウイルス力価(表11)のわずかな増加を示したが、MTTアッセイによって測定されるように、高度に耐性のK562細胞の全生存に対する有意な効果を示さず、K562細胞のADSC上清増強感染を実証している。
【0540】
結果は、ADSC上清単独で、K562細胞をウイルス感染に感作させることができるが、有意な腫瘍溶解を引き起こさないことを示している。ADSCの効果をADSC上清の効果と比較した。100,000個のK562細胞を0.1のMOIでL14 VVに感染させたが、ADSC上清の代わりに、K562細胞を5,000個または20,000個のRM20-eGFP ADSCと3連で共培養した。蛍光イメージングおよびフローサイトメトリー分析は、緑色蛍光ADSCが非標識/灰色K562細胞を誘引し、感染K562細胞の%を劇的に増加させることを示している。高度に耐性のK562細胞の増強された感染力にもかかわらず(表12)、ADSCは最終的に全生存を根絶することも、有意に影響を与えることもできず(表13)、これは、ADSCが感染を増強する能力とは異なる、K562細胞がワクシニアウイルスを増幅する最小の能力と一致している。
【0541】
この結果は、ADSCがウイルスの増幅(約10,000倍または5,000pfu/細胞)と腫瘍細胞への拡散の両方の独自の特性を有することを示している。これは、高い局所感染多重度(MOI)が、および何らかの形の化学誘引に帰することができる。この効果は、少なくとも部分的には、ADSCの上清中に存在する未確認の可溶性因子の分泌によるものである。感染したB16およびK562細胞の頻度ならびにウイルス増幅に対するADSC上清の観察された増強効果は比較的小さく(およそ2倍)、耐性腫瘍の療法を成功させるには、ADSCおよびその上清の感作および増幅特性、ならびにADSC自体がマウスおよびヒト腫瘍細胞を動員し、これらの細胞の感染を増強する能力が必要である。
【0542】
【表9】
【0543】
【表10】
【0544】
【表11】
【0545】
【表12】
【0546】
【表13】
【0547】
実施例4
対象を治療するための腫瘍溶解性ウイルス/担体細胞の組み合わせを特定するための免疫パラメータの分析
本明細書に記載されるように、最適な腫瘍溶解性ウイルス/細胞ベースの送達媒体の組み合わせは、免疫活性化を防止し、ウイルスの腫瘍への送達中のウイルスによって誘導される免疫活性化を抑制しながら、治療される対象におけるウイルス増幅および腫瘍溶解を促進する。前の例は、ADSCなどの担体細胞を、ウイルス増幅能、腫瘍/がん細胞をウイルスによる感染に対して感作させる能力、およびウイルスによる腫瘍溶解を促進する能力(例えば、遠隔腫瘍/がん細胞を動員することによる)について評価する方法を実証している。
【0548】
この例は、腫瘍溶解性ウイルスを腫瘍/がん細胞に送達するための既製の細胞ベースの送達媒体の治療能を制限することができる対象特異的な免疫制限を評価する。このような制限には、例えば、ウイルスによって誘導されるおよび/または同種担体細胞によって誘導される免疫活性化、例えば、IFNγおよび細胞傷害性応答が含まれる。これらの応答は、不適切にマッチングした対象/レシピエントの自然(NK、NKT)および適応(T)免疫細胞に由来する。この例は、ADSCなどの、自家または同種投与時にウイルス療法のための良好な送達媒体の要件を一般的に満たす担体細胞(すなわち、これらはウイルス増幅を促進し、ウイルスおよび/または担体細胞に対する自然免疫および/または適応免疫応答の回避および/または抑制を実証する)が、それにもかかわらず、一定の同種設定では時折あまり効率的でないことができることを実証している。
【0549】
担体細胞/腫瘍溶解性ウイルスに対する対象の潜在的な免疫応答を評価するために、担体細胞(自家または同種)、腫瘍溶解性ウイルス、および対象由来の免疫細胞(例えば、PBMC、PBMC+血漿/血清、または赤血球が溶解したもしくはしていない全血)を共培養する。腫瘍溶解性ウイルス/同種細胞ベースの送達媒体の組み合わせの免疫誘導効果、および並行する同種/自家細胞ベースの担体によって誘導される免疫抑制は、T細胞(それだけに限らないが、CD3、CD4、CD8など)、NK細胞(それだけに限らないが、NKp46、CD16、CD56など)およびNKT細胞(それだけに限らないが、CD3、CD16、CD56、NKp46、aGalCer-CD1dテトラマーなど)を含むさまざまな免疫細胞集団を特定するマーカーのパネル、ならびにそれだけに限らないが、以下を含む活性化/エフェクター機能マーカーのパネルに基づいて、例えば、酵素結合免疫スポット(ELISPOT)またはフローサイトメトリー分析(または例えば、CyTOFなどの等価物)を使用して評価される:例えば、CD69、CD25、CD71、CD27(CD70L)、CD154(CD40L)、CD137(4-1BB)、CD44、CD45RA、CD45RO、CD278(ICOS)、CD127(IL-7RA)、CD183(CXCR3)、CD197(CCR7)、CD39、CD73、CD314(NKG2D)、PD-1、CTLA-4、IFNα/β、IFNγ、TNFα、IL-2、IL-4、IL-5、IL-9、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-18、IL-21、IL-22、IL-23、IL-25、GM-CSF、IL-17、IL-6、CD107a、CD107b、TGFβ、Perforin、Granzyme B、IL-1a/IL-1b、G-CSF、RANTES、EXOTAXIN、MIP-1b、MCP-1、EGF、HGF、VEGF、IL-1RA、IL-7、IP-10、IL-2R、MIGおよびIL-8。
【0550】
A.自家および同種設定におけるADSCの免疫抑制特性
ADSCが免疫障壁を克服する能力を評価するために、自家または同種ヒトPBMCの存在下でNK細胞を抑制する能力を試験した。250,000個の新たに分離されたRM20 PBMCを、10,000個または100,000個の自家(RM20)または同種(RM35)ADSCと48時間共培養した。PBMCを、96ウェル平底プレート上および合計200μLのR10培地(10%FBS、L-グルタミンおよびPen/Strepを補足したRPMI 1640)でADSC(50μL)と48時間共培養(100μL)した。48時間のインキュベーション期間の終わりに、共培養物を、NK細胞の250,000個のK562細胞またはPMA/イオノマイシン(50μL)と任意にモネンシン/ブレフェルジンA(50μL)によるさらに4時間の刺激に供した。
【0551】
NK細胞およびT細胞の頻度(割合)、ならびにNK細胞活性化およびNK細胞傷害活性の程度を、PBMC単独、PBMC+10,000個または+100,000個の自家ADSC、およびPBMC+10,000個または+100,000個の同種ADSCのフローサイトメトリー分析を使用して評価した。フローサイトメトリー分析では、PBMCとADSCの共培養物をピペッティングによって回収し、V底プレートに移し、ここでFACS緩衝液(1%FBSを含む1x PBS)で洗浄し、以下の抗体カクテル:抗ヒトCD3-PerCP/Cy5.5(BioLegend、カタログ番号300328、1:50)、抗ヒトCD335またはNKp46-PE(BioLegend、カタログ番号331908、1:50)、抗ヒトCD69-APC(BioLegend、カタログ番号310910、1:50)を補足したFACS緩衝液中、4℃で30分間表面染色した。FACS緩衝液はまた、生存率プローブ(ThermoFisher Scientific、LIVE/DEAD Fixable Violet Dead Cell Stain Kit、405 nm励起用、カタログ番号L34964、1:1000)を含有していた。染色後、細胞をFACS緩衝液で2回洗浄し、1x PBS中2%PFAで、RTで15分間固定し、FACS緩衝液で再度洗浄してPFAを除去し、BD FACSAria IIで分析した。細胞傷害機能を評価するために、回収および表面染色の5時間前に、抗ヒトCD107a-AlexaFluor 488(BioLegend、カタログ番号328610)を1:20(10μl/well)で共培養物に直接添加し、引き続いて1時間後に1:1000でモネンシンを添加し、37℃でさらに4時間インキュベートした(BioLegend、カタログ番号420701-BL、1000X)。
【0552】
NK細胞およびT細胞の割合を、自家および同種共培養物で決定し、PBMC単独の対照と比較した。結果を以下の表14に要約する。自家および同種設定では、ADSC媒介免疫抑制が、NK細胞およびT細胞の頻度に影響を及ぼさないことが分かった。
【0553】
【表14】
【0554】
ゲーティング生CD3-NKp46+NK細胞でのCD69上方制御を使用したNK活性化のフローサイトメトリー分析(表15)は、K562細胞またはPMA/イオノマイシンによる刺激後、PBMCを自家(RM20)または同種(RM35)ADSCと共培養するとCD69が上方制御されたことを示している。CD107a表面曝露を使用したNK細胞の細胞傷害機能のフローサイトメトリー分析(表15)は、PBMCと自家および同種ADSCの共培養物におけるCD107aの上方制御を示している。
【0555】
したがって、ADSCとのPBMC共培養物は、K562標的細胞への曝露によって刺激されたNK細胞の免疫応答に対して有意な用量依存的免疫抑制効果を実証している。免疫抑制効果は、自家および同種設定で観察され、ADSCが自家および同種設定でNK細胞を抑制できることを実証している。
【0556】
【表15】
【0557】
B.ウイルスによって誘導されるT、NKおよびNKT細胞応答の同種幹細胞抑制
同種幹細胞が免疫障壁を克服する能力は、ウイルスによって誘導されるT、NKおよびNKT様細胞応答を抑制する能力と相関している。RM35ドナーからの同種ADSCが、NK、TおよびNKT細胞によって媒介されるウイルスによって誘導される応答を特異的に抑制する能力を、2人のPBMCドナーの新たなコホートで試験し、患者特異的制限の可能性を明らかにした。
【0558】
2人の異なる献血者(RM47およびRM48)からの250,000個のPBMC(100μL)を、96ウェル平底プレート上で48時間、合計200μLのR10培地(10%FBS、L-グルタミンおよびPen/Strepを補足したRPMI 1640)で、10,000pfu(50μL)のWT1 VV(ACAM2000)の存在下または非存在下で、400;2,000;10,000または60,000個の同種RM35 ADSC(50μL))と共培養した。ゲーティング生T、NKおよびNKT様細胞のフローサイトメトリー分析を実施して、単独で培養したPBMC(対照)、WT1 VVと培養したPBMC(ADSCなし)、ウイルスなしのPBMC+同種ADSC共培養物、およびWT1 VVを含むPBMC+同種ADSC共培養物の各免疫細胞型からのCD69+活性化細胞の%を決定した。
【0559】
結果を以下の表16に要約する。ゲーティング生T、NKおよびNKT様細胞のフローサイトメトリー分析は、CD69+活性化T細胞、NK細胞およびNKT細胞の%が全て、ADSCなしで培養されたWT1 VV+PBMCと比較して、WT1 VV+PBMC+同種ADSC共培養物で劇的に減少したことを示している。これらの結果は、同種RM35 ADSCがワクシニアウイルスによって誘導される自然および適応免疫応答を抑制できることを実証している。
【0560】
48時間の共培養期間の終わりに250,000個のK562細胞で4時間刺激することを使用して、同種幹細胞の免疫抑制能を評価した。T細胞と比較して、NK細胞が主要な応答集団であり、ウイルスと低用量の幹細胞の組み合わせが、NK細胞の80%超の活性化をもたらした。低用量の幹細胞は、免疫抑制およびウイルスによって誘導される免疫応答の増加には不十分であり、おそらく有意に増強されたウイルス増幅を反映している。しかしながら、高用量のADSCは、より弱いワクシニアウイルスによって誘導されるT細胞応答の強力な抑制を用量依存的に提供し、幹細胞媒介免疫抑制が増強されたウイルス増幅の免疫刺激効果を克服することを示している。
【0561】
抗ウイルス性NK細胞応答の抑制は、最高の幹細胞用量でのみ明らかであり、試験した2人の同種献血者間で一貫していなかった。献血者の1人(RM48)のNK細胞は、同種ADSCに直接応答した。48時間のPBMC/ADSC/VV共培養実験の終わりに標準的な4時間のK562 NK刺激アッセイを使用すると、抗ウイルスNK応答の一貫性のない抑制が、幹細胞の免疫特権状態および免疫抑制能力の喪失と相関することが実証された。活性化マーカーの上方制御を有する、ウイルス感染に激しく応答したNKp46+CD3+NKT様細胞集団が特定された。この細胞集団は、ウイルス感染の制御におけるNKT細胞の既に確立された役割と一致した、ワクシニアウイルスに応答して迅速かつ選択的に増殖する能力を示した。
【0562】
【表16】
【0563】
C.同種幹細胞に対する対象特異的な応答の決定
RM20ドナー(実施例1)に由来する同種ADSCの免疫抑制およびウイルス増幅能力を評価し、PBMCドナーのより大きなコホートで試験して、患者特異的な制限を決定した。
【0564】
4人の異なる献血者(SIBD01、SIBD02、RM52、RM53)からの250,000個のPBMCをそれぞれ、5,000pfuのWT1 VVの存在下または非存在下で、48時間、5,000;10,000;20,000;または40,000個の同種RM20 ADSCと共培養した。フローサイトメトリー分析を上記のように実施して、CD69+活性化NK、TおよびNKT細胞の%を決定した。幹細胞なしで培養したPBMCを対照として使用した。表17~19に示される結果は、以前のデータと一致しており、同じRM20 ADSCが、4人の新たな同種PBMCドナーのパネルに対して試験した場合、対象特異的な方法で、直接的NK、TおよびNKT細胞応答を誘因できることを示している。同種幹細胞とウイルスの両方に対するNK、TおよびNKT細胞応答で高い対象間変動が観察された。献血者のうちの2人は対照的な結果を示し、SIBD01が最も耐性があり、SIBD02が同種ADSCに対して最も許容性であった。
【0565】
【表17】
【0566】
【表18】
【0567】
【表19】
【0568】
48時間の共培養期間の終わりに250,000個のK562細胞で4時間刺激することを使用して、SIBD01およびSIBD02献血者からのNK細胞を使用して、同種RM20 ADSCによるNK細胞抑制の程度を評価した。単独で培養したPBMCを対照として使用した。フローサイトメトリー分析を使用してCD69+NK、TおよびNKT細胞の%を決定し、プラーク分析を使用して、耐性献血者試料対許容性献血者試料の存在下での同種ADSCによるウイルス増幅を定量化した。フローサイトメトリー分析(表20)は、ADSCの免疫抑制特性が、ウイルスが存在しない場合でさえ、幹細胞が免疫特権状態を喪失し、NK細胞およびT細胞を直接活性化する好ましくない同種環境で失敗することを明らかにした。
【0569】
これらの免疫学的差異は、幹細胞のウイルス増幅能に有意な影響を及ぼす。表21に示されるように、48時間の共培養物のプラークアッセイ分析は、RM20 ADSCが許容性SIBD02ドナーからの同種PBMCの存在下でのみ、WT1ワクシニアウイルスを増幅できるが、耐性SIBD01ドナーではできないことを実証した。これは、不適切にマッチングした幹細胞と潜在的なMSCレシピエントを表す献血者が、同種ADSCのウイルス増幅能を完全に抑止できることを実証しており、よって、ADSCに対する「permissiveness」(許容性)または「resistance」(耐性)をもたらすことができる重大な患者特異的な差異を明らかにしている。
【0570】
【表20】
【0571】
【表21】
【0572】
最高用量(40,000個)の同種ADSCに対するNK、TおよびNKT細胞応答(%CD69+細胞、未処理PBMC対照に対して正規化)の相関分析を実施した。表22~24に示される相関分析の結果は、ワクシニアウイルスが有意に協調したNK、NKTおよびT細胞応答を誘導することを示している。同種幹細胞に対するNK細胞およびT細胞の応答についても同様の相関関係が明らかであるが、ウイルス対同種ADSCに対する応答性は一致せず、おそらく互いに独立である。
【0573】
【表22】
【0574】
【表23】
【0575】
【表24】
【0576】
したがって、PBMCドナーは、単独のまたは組み合わせた同種幹細胞およびウイルスに対するさまざまな応答を示す。これらの対象特異的な差異は、対象と担体細胞の間の適切なマッチングが治療有効性を改善できることを示している。
【0577】
D.ADSCの生存に対する対象特異的な免疫学的障壁
同種RM20 ADSCに対してそれぞれ有意に耐性(SIBD01)および有意に許容性(SIBD02)である献血者のペアを特定して、これらのドナーを使用して、ADSCに対する対象特異的な耐性の根底にある機構をさらに分析した。20,000個のeGFP標識RM20 ADSCを、耐性(SIBD01;「resistant PBMC」(耐性PBMC))または許容性(SIBD02;「permissive PBMC」(許容性PBMC))献血者からの250,000個のPBMCの存在下で、最大48時間、20,000pfuのL14 VV(1のMOI)と共培養した。ADSCを、PBMCとの共培養時にウイルスに感染させた、または絶えず振盪しながら37℃のインキュベーターで1時間事前感染させ、次いで、未結合ウイルスを洗い流すことなくPBMCに添加した。
【0578】
24時間および48時間後、以下の細胞培養物の蛍光画像を撮像した:ADSC単独、ADSC+耐性PBMCおよびADSC+許容性PBMC。ウイルス感染は、ADSC単独およびADSC+許容性PBMC共培養物で観察されたが、ADSC+耐性PBMC共培養物では観察されなかった。許容性PBMC対耐性PBMCの場合の同種ADSCの生存および増幅能の比較分析は、耐性が、耐性同種PBMCの存在下およびウイルス感染の非存在下での幹細胞の急速な喪失と関連していることを示した。これらの同じ幹細胞は、許容性レシピエントからのPBMCと共培養した場合、インタクトなままであった。ADSCのL14 VVによる事前感染は、耐性PBMCの感染に影響を及ぼさず、ウイルスに担体細胞での増幅の「head start」(ヘッドスタート)を与えることが、耐性PBMCの免疫学的障壁を克服するのに十分ではなかったことを示している。
【0579】
ウイルス感染レベルに対する、ADSCをL14 VVまたはWT1 VVで事前感染させることの効果を評価するために、2,500;5,000;10,000または20,000個のADSCを、絶えず振盪しながら、37℃のインキュベーターで1時間、L14 VVまたはWT1 VVとプレインキュベートし、プラーク分析を上清で実施した。結果を表25に示す。20,000個のADSCを使用する場合、ウイルス(L14 VVまたはWT1 VV)のおよそ半分が細胞に侵入するのに事前感染で十分であり、高いMOI(少ない幹細胞)では、ウイルスのほとんどが遊離のままであるように見え、組み込むのにより長い時間が必要であることが決定された。
【0580】
【表25】
【0581】
ADSC/PBMC共培養物におけるウイルス増幅に対するL14 VVまたはWT1 VVによるADSCの事前感染の効果を評価した。2,500;5,000;10,000および20,000個のADSCを、上記のように耐性および許容性のPBMCと共培養し、遺伝的弱毒化L14ワクシニアウイルスおよび野生型WT1(ACAM2000)ワクシニアウイルスによる並行感染を行った。ADSCを、PBMCとの共培養時にウイルスに感染させた、または絶えず振盪しながら37℃のインキュベーターで1時間事前感染させ、次いで、未結合ウイルスを洗い流すことなくPBMCに添加した。ワクシニアウイルス増幅のプラーク分析を上記のように実施した。結果(表26)は、幹細胞感染を潜在的に増強し、ウイルス増幅を加速するにもかかわらず、1時間のヘッドスタートが、同種PBMCの存在下でのADSCの増幅能に小さな全体的効果しか及ぼさなかったことを示している。許容性SIBD02 PBMCは、L14 VVの増幅を部分的に抑制したが、WT1 VVはしなかった。ほとんどの遺伝的弱毒化ワクシニアウイルス株のように、TK遺伝子座が不活化/除去されたListerベースのTurbo-FP635操作L14ウイルスとは対照的に、WT1/ACAM2000は、実証されたより高い増幅能およびより強力な同種障壁を克服する能力を有する野生型TKポジティブWyeth株ワクシニアウイルスである。これは、可能な速い増幅サイクルおよび/または増強された抗ウイルス免疫を回避する能力のためである。それにもかかわらず、WT1ウイルスのこれらの利点は、耐性レシピエント(SIBD01)の免疫学的障壁を克服するには不十分であり、ウイルス増幅は、同種異系PBMCとの共培養の1時間前に幹細胞のウイルス感染を開始することによってわずかにしか改善されなかった。したがって、同種ADSCに対する患者特異的な免疫学的障壁は、遺伝的弱毒化ワクシニアウイルス株および野生型ワクシニアウイルス株の治療能を制限することができる。
【0582】
【表26】
【0583】
実施例5
対象特異的な遺伝子多型の分析
この例は、対象による同種担体細胞の拒絶に寄与することができる因子を理解するためのハプロタイプ分析、およびこの課題を回避できる方法を提供する。一定の患者特異的な遺伝子多型は、対象と同種担体細胞との間の「immunological mismatch」(免疫学的ミスマッチ)をもたらすことができる。関連する遺伝子座には、それだけに限らないが、例えば、古典的MHC I/IIハプロタイプ、KIRハプロタイプ/リガンド、および非古典的MHCハプロタイプ(例えば、HLA-E、CD1a、b、c、dおよびMICA/Bなど)が含まれる。
【0584】
対象特異的な遺伝子多型の関連する遺伝子座の分析は、例えば、次世代シーケンシングを使用して実施することができる。次いで、各対象の遺伝子多型プロファイルを、利用可能な担体細胞型の各々のプロファイルと比較して、MHCミスマッチ、KIRおよびKIRリガンドのミスマッチ、ならびに非古典的MHC遺伝子座でのミスマッチを含む、対象と担体細胞との間のミスマッチを特定し、「immunocompromising」(免疫不全)ミスマッチを特定する。「immunocompromising mismatch」(免疫不全ミスマッチ)は、本明細書で提供されるマッチングアッセイ法によって決定される、%適合性の有意な(例えば、10%以上の)減少に関連する遺伝子多型遺伝子座における対象と担体細胞との間のミスマッチである。
【0585】
A.同種ADSCに対する耐性はHLAミスマッチに関連する
さまざまな同種ADSC系統に対する耐性または許容性を評価した。耐性(SIBD01)および許容性(SIBD02)献血者からの250,000個のPBMCを、5,000pfuのWT1 VVに感染した4人の異なるドナー(RM20、RM35、BH21およびRM58)からの40,000個または5,000個の同種ADSCと48時間共培養した。ADSC単独を対照として使用し、プラークアッセイを上記のように実施した。結果(表27)は、SIBD01およびSIBD02献血者が、それぞれ4つの同種ADSC系統に対して幅広い耐性および許容性を実証したことを示している。4つの同種異系ADSC系統は、許容性SIBD02献血者からのPBMCの存在下でのみワクシニアウイルスを増幅した。
【0586】
【表27】
【0587】
厳密にHLAがマッチングした細胞の拒絶は、KIRハプロタイプの違い、またはNK細胞抑制性(KIR、NKG2A/CD94)もしくは刺激性(KIR、NKG2D)受容体を通したシグナル伝達のバランスの違いによって説明できる。HLAおよびKIR/MICタイピング分析を、それぞれProImmune(オックスフォード、英国)およびScisco Genetics(シアトル、米国)によってNGSを介して行った。PBMC(SIBD01、SIBD02)およびADSC(RM20、RM35、BH21およびRM58)ドナーのHLA対立遺伝子における既知のKIRリガンドA3/A11(HLA-A)、Bw4(HLA-B)およびC1/C2(HLA-C)エピトープの有無はdorak.info/mhc/nkcell.htmlから入手した。NK細胞上のNKG2A/CD94受容体を通して抑制性シグナル伝達を提供する、HLA-EによるHLA-B由来リーダーペプチドの強/弱結合および提示を予測する、リーダー配列からのアンカーアミノ酸での-21M/T(メチオニン/スレオニン)二型性は、ebi.ac.uk/ipdのImmuno Polymorphism Database(IPD)から入手した。
【0588】
NK細胞上のNKG2D活性化受容体のリガンドとして機能する少型性MICA/B分子の分析を含む、KIRハプロタイプ、ならびにBw4エピトープ(HLA-B)および弱/強C1/C2エピトープ(HLA-C)を含む既知のKIRリガンドの存在の分析を実施した。長い(L)抑制性および短い(S)活性化KIR受容体の分布およびコピー数も、存在する抑制性受容体および活性化受容体の総数と共に分析した。
【0589】
結果は、許容性/耐性およびKIRハプロタイプ/KIRリガンド、-21M/T二型性およびMICA/B少型性の間に明確な相関関係がないことを示している。RM58幹細胞は、耐性SIBD01献血者および許容性SIBD02献血者とのKIRリガンドC1/C2ミスマッチを示し、このミスマッチ単独では耐性を付与するのに不十分であることを示している。許容性対耐性のより広範な決定因子は、主にHLA-AおよびHLA-DP遺伝子座での部分的マッチングと相関し、広く許容性のドナーは最も一般的なHLA-A*02:01対立遺伝子を有し、耐性ドナーはHLA-A*01:01対立遺伝子を有する。不一致のHLA-A*01:01症例は、C2 KIRリガンドのミスマッチに関連している可能性があり、これは、以前の研究で、不十分なKIR抑制性シグナル伝達およびHLA-ハプロタイプ一致iPSCのNK細胞媒介拒絶に関連付けられている(Ichiseら(2017)Stem Cell Reports 9:853~867)。したがって、HLA-A*01:01 RM58 ADSCの不一致症例に見られるように、HLAタイピングデータ単独では、許容性と耐性を予測するには不十分である。これらのデータは、さまざまな遺伝子座を組み合わせて検討する必要があることを示している。
【0590】
B.同種ADSCに対する耐性は抗幹細胞細胞傷害性およびインターフェロン応答の急速な誘導に関連している
相関フローサイトメトリーを使用して、上記のパートAのPBMC/ADSC/WT1共培養物からのゲーティング生NK、NKTおよびT細胞におけるWT1 VVおよび同種ADSCに対するCD107aおよびIFNγ応答を分析した。表28~30に示される結果は、試験した同種幹細胞株のうちの4つ全てが、ウイルスの非存在下でさえ、耐性献血者からのNK細胞およびT細胞ではるかに強いCD107aおよびIFNγ応答を誘導したが、許容性献血者ではしなかったことを示している。各細胞型のCD107aまたはIFNγシングルポジティブリンパ球の平均割合を、3連ウェルに基づいて分析し、それぞれのバックグラウンド(未処理PBMC対照)に対して正規化した。許容性献血者では、4つの同種幹細胞が、バックグラウンド(未処理PBMC対照)より下に自発的NK細胞媒介IFNγ応答を抑制した。
【0591】
【表28】
【0592】
【表29】
【0593】
【表30】
【0594】
フローサイトメトリー分析はまた、ワクシニアウイルスまたは同種幹細胞による治療がゲーティングリンパ球集団の頻度に有意に影響を及ぼさないことを示している。例外は、耐性SIBD01献血者からのCD3+NKp46+NKT様細胞であった。これらの細胞は、同種幹細胞単独に応答して、さらにワクシニアウイルス感染の存在下で増殖した(表31)。いくつかの同種幹細胞株に対するSIBD01ドナーの幅広い耐性は、ウイルスおよび同種幹細胞に応答して数が増加した唯一の細胞集団であったCD3+NKp46+NKT様細胞の異常に高い頻度と関連付けることができる。
【0595】
【表31】
【0596】
C.NKT様細胞はIFNγの最も初期の産生細胞である
抗ウイルスおよび抗幹細胞誘導免疫応答を評価するために、2,000個または10,000個のRM20 ADSCを、耐性SIBD01または許容性SIBD02献血者からの250,000個のPBMCならびに5,000pfuのWT1 VVと共培養した。ゲーティング生NK、NKTおよびT細胞を、6時間および24時間の時点で活性化因子(CD69表面染色;表32~34)およびエフェクター(IFNγの細胞内染色;表35~37)機能についてフローサイトメトリーによって分析した。有意なバックグラウンド免疫細胞の活性化は6時間で明らかであり、24時間の時点でおさまった。6時間で、耐性ドナーからのT細胞およびNKT細胞のみが、幹細胞によって誘導されるCD69の上方制御を実証したが、IFNγ応答はしなかった。24時間で、ウイルスの有無に関係なく、3つのサブセット全てがCD69活性化マーカーの上方制御によって同種幹細胞に応答した。NK細胞応答が最も活発であったが、NKTサブセットのみが統計学的に有意な幹細胞誘導IFNγ応答を示し、NKT細胞が同種幹細胞に対するエフェクターサイトカイン応答を開始する最初の免疫細胞サブタイプである可能性があることを示している。許容性ドナーからのNK、NKTおよびT細胞は、どの時点でも、幹細胞に応答してCD69を上方制御することもIFNγを産生することもなかった。24時間の時点で、同種幹細胞は、許容性ドナーNK細胞によるIFNγ産生をバックグラウンドより下に抑制することさえできた。
【0597】
【表32】
【0598】
【表33】
【0599】
【表34】
【0600】
【表35】
【0601】
【表36】
【0602】
【表37】
【0603】
D.許容性PBMC対耐性PBMCの免疫細胞応答に対するADSCのIFNγ前処理の効果
インビボで起こることができる免疫細胞と同種幹細胞との間の相互作用に対するIFNγ分泌の潜在的な有害効果を試験するために、幹細胞を、ワクシニアウイルスの存在下または非存在下でPBMCと共培養する前にIFNγで前処理した。耐性(SIBD01)およびいくつかの許容性(SIBD02、RM52、RM53)献血者のPBMCを、未処理のまたは20ng/mL IFNγで48時間前処理した増加する数の同種RM20 ADSC(5,000;10,000;20,000または40,000個)と共培養した。ゲーティングNK、NKTおよびT細胞のフローサイトメトリー分析を前記のように実施した。
【0604】
WT1ワクシニアウイルスの存在下で、ただし非存在下でも、許容性患者において、IFNγ前処理が、NKおよびT細胞応答を抑制するのではなく、増強することが決定された(表38~43)。データはまた、RM20幹細胞(p12)のその後の継代が、いくらかのT細胞免疫抑制能力を保持するが、NK細胞を抑制する能力を喪失することを実証している。NK特異的刺激細胞株K562によるNK細胞の刺激は、TおよびNKT細胞応答の間接的な活性化を誘導し、これはNK-NKT-T細胞のクロストークを示す(表44~46)。
【0605】
したがって、HLAまたはKIRマッチングは、担体細胞に対する許容性と耐性を決定することにおいて役割を果たすことができるが、担体細胞型の最終的な治療有効性は、自然免疫細胞および適応免疫細胞の組成、活性化状態、ならびにウイルス/同種細胞のミスマッチに対する感受性を含む他の対象特異的な差異によって影響を受けることができる。例えば、部分的なHLAまたはKIR/KIRリガンドのマッチングの程度に関係なく、同種ADSCがウイルスを効率的に増幅する能力は、試験した4つの同種ADSC系統全てにわたって、有意な抗幹細胞IFNγならびに細胞傷害性NKおよびT細胞の欠如と関連していることが分かった。有意に耐性のSIBD01レシピエントからのPBMCの分析は、不適切にマッチングした同種幹細胞が、ウイルス感染がない場合でも検出可能なIFNγ応答を誘導することを示している。この応答は、NK細胞およびT細胞に由来するように見える。T細胞は初期のIFNγ産生細胞の大部分を表すが、NK細胞は最も高い比率の細胞傷害活性を示し、自然免疫細胞集団と適応免疫細胞集団との間のクロストークの存在を示している。
【0606】
【表38】
【0607】
【表39】
【0608】
【表40】
【0609】
【表41】
【0610】
【表42】
【0611】
【表43】
【0612】
【表44】
【0613】
【表45】
【0614】
【表46】
【0615】
実施例6
IFN媒介抗ウイルス状態の誘導の抑制は、幹細胞および腫瘍細胞をウイルスの感染および増幅に感作させる
多くの型の腫瘍細胞が、腫瘍溶解性ウイルス療法に感受性になる損なわれたインターフェロンシグナル伝達を示す。さまざまな細胞ウイルスセンサーおよびインターフェロンによって媒介される、形質転換されていない幹細胞および一定の型の腫瘍細胞におけるインタクトな抗ウイルス機構は、このような細胞が腫瘍溶解性ウイルスを送達するための担体細胞として機能する能力に対する障壁を作り出すことができる。例えば、I型およびII型インターフェロンは、幹細胞および一部の型の腫瘍細胞における抗ウイルス状態の強力な誘導物質である。これは、これらの細胞のウイルス感染に対する感受性を妨害し、ウイルス増幅を支持する能力を低下させる。
【0616】
ウイルス感染の検出を遮断すること、ならびに/あるいは幹担体細胞および腫瘍担体細胞における抗ウイルス状態の誘導を遮断することによって、担体細胞をウイルス感染、増幅および拡散に感作させることができることが本明細書で実証されている。ウイルス感染の検出の遮断は、インターフェロンシグナル伝達を阻害するJAK1/JAK2の小分子阻害剤であるルキソリチニブを使用して行った。これにより、腫瘍溶解性ウイルスの担体としてのさまざまな幹細胞および腫瘍細胞の治療能が改善される。
【0617】
A. JAK1/2阻害は幹細胞担体のウイルス感染および増幅能を増強する
インターフェロンシグナル伝達、よって抗ウイルス状態の誘導を妨害することが、腫瘍溶解性ウイルス担体としての幹細胞の治療能を改善するかどうかを決定するために、幹細胞を、I型またはII型インターフェロンの存在下、インターフェロンシグナル伝達阻害剤ルキソリチニブを用いてまたは用いないで培養し、ウイルス感染、増幅および腫瘍細胞への送達を評価した。RM35 ADSC(継代5)幹細胞(以下、ADSC-RM35幹細胞と呼ぶ;上記の実施例1に記載される外膜上脂肪間質細胞に由来する)を、2時間、0.1のMOIでTurboFP635蛍光タンパク質を発現するように操作されたL14腫瘍溶解性ワクシニアウイルスに感染させた。遊離ウイルスを洗い流した後、細胞を、50nMのルキソリチニブ(LC Laboratories、カタログ番号R-6688)を用いてまたは用いないで、20ng/mL IFNβ(I型インターフェロン)または20ng/mL IFNγ(II型インターフェロン)を添加して、96ウェル組織培養プレートに1ウェル当たり10,000細胞の密度で直ちに蒔き、37℃、5%CO2で48時間インキュベートした。IFNなしで培養した細胞を対照として使用した。細胞を培養してから48時間後、ウイルスの感染および増幅を経時的蛍光イメージングによって評価し、これを使用して、ウイルスによってコードされるTurboFP635タンパク質の蛍光強度を測定した。結果を以下の表47に要約し、これは対照幹細胞(IFNなし);対照幹細胞+ルキソリチニブ;幹細胞+IFNβ;幹細胞+IFNβ+ルキソリチニブ;幹細胞+IFNγ;および幹細胞+IFNγ+ルキソリチニブについての平均蛍光強度密度を示している。
【0618】
対照細胞にはIFNを添加しなかったため、抗ウイルス状態の誘導はなく、TurboFP635蛍光の強度によって測定されるウイルスの感染および増幅の量は、ルキソリチニブの添加の有無にかかわらず同じであった。対照細胞と比較して、細胞培養物に20ng/mLのIFNβまたはIFNγを添加すると、それぞれ蛍光が26.7%および17.8%減少した。これは、ウイルス感染後の幹細胞のIFNへの曝露が、担体細胞がウイルス増幅を支持する能力を低下させることを示している。これらの培養条件は、感染した担体細胞のI型およびII型インターフェロンへの曝露を模倣し、これらのインターフェロンは、それぞれ他の感染した担体細胞またはインビボでの対象の免疫細胞に由来することができる。
【0619】
形質転換されていない幹細胞(および多くの腫瘍細胞)は、ワクシニアウイルスおよび他の腫瘍溶解性ウイルスに対するインタクトな固有のウイルス感知および防御機構を有することができる。したがって、これらが担体細胞として使用される場合、高い増幅能を維持するために、IFN媒介抗ウイルス状態の誘導を防止することが有益となることができる。表47に示されるように、IFNβまたはIFNγに曝露された幹細胞に50nMルキソリチニブを添加すると、IFNに曝露されなかった対照細胞とほぼ同じ量の蛍光が得られる。これらの結果は、50 nMのルキソリチニブの添加がI型およびII型インターフェロンによる抗ウイルス状態の誘導を有効かつ完全に逆転させ、担体細胞をウイルスの感染および増幅を支持するように感作させることを実証している。
【0620】
【表47】
【0621】
B.JAK1/2阻害は腫瘍細胞のウイルス感染および増幅能を増強する
IFNシグナル伝達の阻害が腫瘍細胞をワクシニアウイルスの感染および増幅に感作させるかどうかを決定するために、200,000個のPC3ヒト前立腺がん細胞を、2時間、0.1のMOIでL14ウイルスに事前感染させた20,000個のADSC-RM35幹細胞と共培養した。5nMまたは50nMのルキソリチニブを含むまたは含まない、20ng/mLのIFN I型+20ng/mLのIFN II型を共培養物に添加し、ウイルスの感染および拡散の進行を蛍光イメージングによって最大48時間モニタリングした。IFNもルキソリチニブ(Rux)も添加しない共培養物を対照として使用した。結果を以下の表48に要約し、これは以下についての平均蛍光強度密度(IntDen)を示している:対照細胞(IFNなし/ルキソリチニブなし);共培養物+IFN I/II;共培養物+IFN I/II+5nMのルキソリチニブ;および共培養物+IFN I/II+50nMのルキソリチニブ。%IFN阻害の逆転を、以下の式を使用して計算した:
%IFN阻害の逆転=[(IntDenRux+IFN-IntDenIFN)/(IntDen対照-IntDenIFN)] x100。
【0622】
結果は、IFNを添加すると、腫瘍細胞のウイルス感染、および腫瘍細胞によるウイルスの増幅が有意に減少したことを示している。5nMのルキソリチニブの添加は、PC3細胞における抗ウイルス状態の誘導を部分的に逆転させ(40%)、ウイルスにコードされるTurboFP635蛍光シグナルの増加によって証明されるように、ウイルスの感染および増幅のレベルを増加させた。50nMのルキソリチニブの添加は、PC3細胞における抗ウイルス状態の誘導を逆転させるのに極めて有効であり(約91%の逆転)、ウイルスの感染および増幅のレベルを対照細胞よりわずかに低いレベルに戻した。
【0623】
これらの結果は、幹細胞および腫瘍細胞のインターフェロンシグナル伝達経路などの固有の抗ウイルス防御機構に対する薬理学的および/または遺伝的妨害を使用して、ウイルス感染/増幅能を改善/維持できることを実証している。これによって、担体細胞が、ウイルス搭載またはインビボでの曝露中のインターフェロンの効果に耐性になり、腫瘍溶解性ウイルスのための担体としての能力が改善する。インターフェロンは感染細胞と隣接する非感染細胞との間の抗ウイルス状態の拡散を媒介するため、担体細胞での抗ウイルス状態の誘導を遮断することの追加の利点は、I型インターフェロンの抑制された産生が抗ウイルス状態の初期拡散を最小化し、よって、インビボでのウイルス感染の拡散を促進することができることである。
【0624】
【表48】
【0625】
実施例7
補体遮断は幹細胞および腫瘍細胞をウイルス感染および増幅に感作させる
ヒト血清は、ウイルス増幅前にウイルス感染担体細胞を直接攻撃および殺傷すること、または担体細胞から放出された裸のウイルス粒子を中和し、それによって、標的腫瘍細胞へのウイルスの拡散を制限することを含む、ある担体細胞に対する有害効果を有することができる。補体遮断因子を発現するように担体細胞を操作することが細胞を保護し、それらの治療効力を改善するかどうかを決定するために、担体細胞がL14腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを増幅および送達する能力に対する、補体ペプチド阻害剤コンプスタチン、または中和抗ヒトC3a/C3a(desArg)/C3抗体を添加することの効果を評価した。
【0626】
A.ウイルス感染担体幹細胞に対する補体遮断の効果
ADSC-RM35担体幹細胞を、2時間、0.1のMOIでTurboFP635蛍光タンパク質を発現するように操作されたL14ワクシニアウイルスに感染させた。ウイルスの増幅および担体細胞の感染していない90%への拡散に対する補体活性の効果を、10%ヒト血清(ドナーCBD2から)の添加、およびL14ワクシニアウイルスにコードされるTurboFP635蛍光シグナルの蓄積を血清に曝露されなかった対照細胞と比較することによって評価した。
【0627】
72時間にわたる経時的蛍光イメージングは、10%ヒト血清が、ウイルスに感染した担体幹細胞がウイルスを増幅するのを妨げなかったことを示している。
【0628】
遮断補体が担体幹細胞のウイルス増幅および送達能力を改善するかどうかを評価するために、ウイルス感染幹細胞を、補体C3に結合し、C3コンバターゼによるそのタンパク質分解切断を阻害するコンプスタチンの存在下で、または中和抗ヒトC3a/C3a(desArg)/C3抗体の存在下で、ヒト血清とインキュベートした。ADSC-RM35幹細胞を、2時間、0.1のMOIでL14ワクシニアウイルスに感染させ、10%ヒト血清(ドナーCBD2由来)を、20μMのコンプスタチン(カタログ番号2585;Tocris Bioscience、MN)、50ng/mLのアイソタイプ対照(カタログ番号400166;BioLegend、サンディエゴ、CA)、または50ng/mLの抗C3抗体(カタログ番号518104;BioLegend、サンディエゴ、CA)の存在下で添加した。10%ヒト血清単独とインキュベートしたウイルス感染幹細胞を対照として使用した。72時間での蛍光イメージングを使用して、対照担体細胞(10%ヒト血清単独);担体細胞+血清+コンプスタチン;担体細胞+血清+アイソタイプ対照;および担体細胞+血清+抗C3抗体間のウイルスの感染および増幅(平均蛍光強度密度によって測定される)を比較した。
【0629】
以下の表49に要約される結果は、20μMのコンプスタチンの添加が、対照細胞と比較して50%、蛍光シグナル、したがって、担体幹細胞におけるウイルス増幅の量を増加させることを示している。50ng/mLのアイソタイプ対照の添加は、対照細胞と比較して蛍光シグナルの強度に影響を及ぼさないが、50ng/mLの抗C3抗体の添加は、対照細胞と比較して蛍光シグナルを12.5%増加させる。これらの結果は、ペプチド阻害剤コンプスタチンまたは抗C3中和抗体による補体の遮断がウイルス増幅をさらに増加させることを示している。したがって、補体を遮断すると、より高いウイルスペイロードの蓄積が可能になる。これは、ウイルス保有細胞にペプチドもしくは小分子阻害剤を事前搭載するなど補体を遮断する薬剤を共投与する、および/または補体の阻害剤を発現するように細胞を操作する、または任意の他の適切な方法によって、達成することができる。
【0630】
【表49】
【0631】
次に、コンプスタチンおよび/または抗C3抗体による補体遮断の効果を、3人の異なるドナーからの20%ヒト血清に対して評価した。ADSC-RM35幹細胞を、2時間、0.1のMOIでL14ワクシニアウイルスに感染させ、3人の異なるドナー(CBD1、CBD2およびCBD3)からの20%ヒト血清を、20μMのコンプスタチン、10μg/mLの抗C3抗体、または50μg/mLの抗C3抗体の存在下で添加した。(補体遮断なしで)3人のドナーの各々からの20%ヒト血清とインキュベートしたウイルス感染幹細胞を対照として使用した。インキュベーション後48時間での蛍光イメージングを使用して、さまざまな細胞培養物間でウイルスの感染および増幅(ウイルスによって発現されるTurboFP635の平均蛍光強度密度によって測定される)を比較した。以下の表50に要約される結果は、20μMのコンプスタチンの添加により、それぞれ、ドナーCBD1、CBD2およびCBD3について、血清単独の対照細胞と比較して、蛍光強度が27.7%、8.1%および18.7%増加することを示している。対照細胞と比較して、10μg/mLの抗C3抗体を添加すると、蛍光強度がドナーCBD1で6.1%、ドナーCBD3で10.3%増加し、ドナーCBD2で0.8%減少する。50μg/mLの抗C3抗体を添加すると、それぞれ、ドナーCBD1、CBD2およびCBD3について、対照細胞と比較して、蛍光強度が20.9%、1.6%および10.3%増加する。これらの結果は、小ペプチド阻害剤コンプスタチン(20μMの濃度)または抗C3抗体(10μg/mLもしくは50μg/mL)による補体遮断が、ウイルス感染幹細胞に対するヒト血清の悪影響を部分的に逆転させ、複数のヒト血液/血清ドナー間でワクシニアウイルスの拡散および増幅を増強したことを示している。
【0632】
【表50】
【0633】
B.腫瘍細胞におけるウイルス感染および増幅に対する補体遮断の効果
遮断補体がウイルスの標的腫瘍細胞への拡散も促進することを示すために、幹細胞をL14ウイルスに感染させ、コンプスタチンを用いてまたは用いないで、20%ヒト血清の存在下で腫瘍細胞と共培養した。20,000個のRM35脂肪由来幹細胞担体を、2時間、1のMOIでL14ワクシニアウイルスに感染させ、次いで、300,000個のPC3ヒト前立腺がん細胞の一晩単層に播種した。幹細胞担体から腫瘍細胞へのウイルス感染の拡散を、20μMのコンプスタチンを添加してまたはしないで、ドナーCBD2からの20%ヒト血清の存在下で48時間進行させた。血清またはコンプスタチンの非存在下でのウイルス感染幹細胞と腫瘍細胞の共培養物を対照として使用した。48時間後の蛍光イメージングを使用して、平均蛍光強度密度、すなわち、L14ワクシニアウイルスによって発現されるTurboFP635からの蛍光シグナルによって測定される腫瘍細胞の感染の程度を決定した。
【0634】
結果を以下の表51に要約する。20%ヒト血清の添加は、41.1から34.5への蛍光強度密度の減少によって証明されるように、感染担体幹細胞から腫瘍細胞へのウイルスの拡散を部分的に減少させた。20μMのコンプスタチンを添加すると、蛍光強度密度が36.4に増加した。したがって、コンプスタチンを使用して補体を遮断すると、補体によって媒介されるウイルス拡散の抑制が部分的に逆転し、蛍光強度が28.5%増加する。これらの結果は、補体に対する保護のために担体細胞を感作させることにより、標的PC3腫瘍細胞へのウイルスの拡散および増幅が増強されることを示している。
【0635】
全体として、これらのデータは、ペプチド阻害剤または補体中和/拮抗抗体などの補体遮断剤を送達するように操作された担体細胞を使用するなどによって補体を遮断することが、担体細胞、およびこれらが放出する裸のウイルス粒子をヒト血清中の補体および中和抗体から保護することを確認している。これにより、より高いウイルスペイロードの蓄積が可能になり、それによって、担体細胞が腫瘍溶解性ウイルスを増幅し、腫瘍細胞に送達および拡散する能力が改善される。
【0636】
【表51】
【0637】
実施例8
HLA遮断を使用した同種拒絶決定因子およびその抑制の評価
実施例4は、幹細胞担体が、同種障壁にもかかわらず、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを増幅および送達できることを実証している。これは、同種認識を回避し、NK細胞、T細胞、ならびにNK(NKp46)およびT細胞(CD3)マーカーを発現する「NKT」細胞の集団を積極的に免疫抑制する能力に起因する。「incompatible/resistant」(不適合性/耐性)レシピエントのサブセットでは、幹細胞が同種認識を回避できず、結果としてウイルスの非存在下でも、担体幹細胞に対する迅速で強力な同種NK、TおよびNKT細胞応答が開始された。これらの迅速な同種応答は、共培養の48時間以内に発生し、抗幹細胞細胞傷害性応答およびIFNγ媒介抗ウイルス状態の発生と関連しており、幹細胞がワクシニアウイルスを増幅する能力を阻害した。これらの結果は、強力な幹細胞特異的免疫抑制および免疫回避能力を欠く腫瘍細胞などの非幹細胞担体が、同様のまたはより強力な同種制限を受け、腫瘍溶解性ウイルスの増幅および送達の能力を患者特異的な方法で制限する可能性があることを示している。このことが、今度は、その既製の使用および有効性を制限する。
【0638】
同種認識および拒絶を担う因子の特定、抑制および排除を使用して、腫瘍溶解性ウイルスを既製の方法で送達するための担体細胞としての同種幹細胞または腫瘍細胞の治療能を増加させることができる。このような同種拒絶決定因子には、CD8およびCD4 T細胞によって認識される高度に多型で患者特異的なMHCクラスIおよびクラスII分子、ならびにgd(γδ)T、iNKTおよびNKT細胞などのさまざまな自然T細胞亜集団によって認識される、MHC様MICAおよびCD1a、b、c、d分子およびその他のさまざまなストレス関連またはストレス感知分子、例えばブチロフィリンおよびアネキシンA2を含む、広範囲の多型性の低い決定因子が含まれる。
【0639】
同種MHC I分子の遮断を、担体幹細胞および腫瘍細胞に対する同種免疫応答、特に同種MHC Iミスマッチの認識および応答を担うCD8 T細胞の応答を抑制する能力について評価した。
【0640】
A.非感染のおよびワクシニアウイルスに感染した幹細胞および腫瘍細胞による免疫細胞枯渇
適合性および不適合性ドナーからのPBMCと共培養された非感染のおよびワクシニアウイルスに感染した担体幹細胞および腫瘍細胞の免疫抑制特性および免疫細胞枯渇能を評価した。不適合性/耐性(CBD1)および適合性/許容性(CBD2)ドナーからの300,000個のPBMCを、10,000個の非感染対照細胞である脂肪由来幹細胞(RM35)もしくはがん細胞(ヒト前立腺PC3)、または2時間、10のMOIでACAM2000ワクシニアウイルスに感染させた担体細胞と60時間共培養した。60時間の共培養後、ワクシニアウイルス(VV)に感染した担体幹細胞および腫瘍細胞と不適合性/耐性(CBD1)および適合性/許容性(CBD2)レシピエントからのPBMCの共培養物から回収されたさまざまな免疫細胞サブタイプの数を分析した。CBD1またはCBD2 PBMC単独から、および非感染担体細胞と共培養したCBD1またはCBD2 PBMCから回収されたさまざまな免疫細胞サブタイプの数を対照として使用した。さまざまな免疫細胞サブタイプを、活性化マーカーとしてのCD69、および以下の通りの細胞型特異的マーカーのセットを使用するマルチパラメータフローサイトメトリー分析によって特定した:γδ(gd)T細胞(CD3+、γδ TCR+);iNKT/NKT 1型細胞(CD3+、Va24Ja18+);一般的NKT様細胞(CD3+CD56+細胞;gdおよびiNKTを除く);古典的CD4 T細胞(CD3+CD4+;gdおよびiNKTを除く);古典的CD8 T細胞(CD3+CD8+;gdおよびiNKTを除く);一般的NK細胞(CD3-CD56+);およびNK亜集団CD56highCD16-(サイトカイン産生)およびCD56lowCD16+(細胞傷害性)。
【0641】
結果を、以下の表52(幹細胞の場合)および表53(PC3細胞、ヒト前立腺がん細胞の場合)に要約する。表54は、非感染幹細胞と腫瘍細胞の免疫抑制および免疫細胞枯渇特性を%抑制に関して比較している。免疫細胞サブタイプの%抑制は、以下の式を使用して計算した:
【0642】
不適合性/耐性(CBD1)および適合性/許容性(CBD2)ドナーからのPBMCと非感染RM35 ADSCの共培養物は、PBMC単独(対照)と比較して全ての免疫サブタイプの減少/枯渇をもたらす。これは、脂肪由来幹細胞の強力な免疫抑制能を確認している(表52参照)。CBD1およびCBD2 PBMCをPC3腫瘍細胞と共培養しても、この効果が観察されたが、はるかに少ない程度であり(表53参照)、腫瘍細胞と比較して幹細胞の免疫抑制特性が優れていることを示している(表54参照)。しかしながら、幹細胞(表52)および腫瘍細胞(表53)をワクシニアウイルスに事前感染させ(RM35 ADSC(幹細胞)+VV、またはPC3細胞(腫瘍細胞)+VV)、担体として使用した場合、全ての免疫細胞サブタイプの数の増加によって証明されるように、免疫細胞を枯渇させる能力は失われた。これらのデータは、担体細胞が増幅しているウイルスによって徐々に殺傷され、免疫抑制能を喪失していることと一致している。
【0643】
【表52】
【0644】
【表53】
【0645】
【表54】
【0646】
B.同種担体細胞およびワクシニアウイルスに応答する免疫サブセット
PBMC+非感染担体細胞共培養物とPBMC単独から回収された各免疫亜集団のCD69+細胞の割合を使用した、免疫活性化の分析により、同種幹細胞または腫瘍細胞担体に応答する免疫細胞の主要な集団が特定された。表55に要約される結果は、非感染幹細胞または腫瘍細胞を不適合性PBMCに添加すると、全てのサブタイプの免疫細胞(幹細胞に応答するCD56highCD16-NK細胞を除く)の数が増加することを示している。数の最大の変化は、γδ T、iNKT、NKT、一般的NKおよび細胞傷害性NK(CD56lowCD16+)細胞で観察された。一般的NK細胞および細胞傷害性NK細胞数の増加は、幹細胞よりもPC3細胞に応答して有意に大きく、幹細胞が優れた免疫抑制特性を有することを確認している。非感染担体細胞を適合性PBMCと共培養すると、免疫応答は一般的に小さく、一部の免疫サブタイプ(例えばγδ T、iNKT、NKTおよびCD4 T細胞)の数が減少する場合があった。これは、不適合性同種共培養物における免疫応答が、適合性同種共培養物よりも大きかったことを示しており、同種設定におけるドナー-レシピエント適合性の重要性を確認している。
【0647】
PBMC+ウイルス感染担体細胞共培養物とPBMC+非感染担体細胞共培養物から回収された各免疫亜集団のCD69+細胞の割合を使用した、免疫活性化の分析により、ウイルスに応答する免疫細胞の主要な集団が特定された。これらの結果を表56に要約し、これはウイルスに応答する主要な免疫細胞サブタイプに、γδ T、iNKT、一般的NKT様(CD3+CD56+;γδ TおよびiNKTを除く)、一般的NK、細胞傷害性NK(CD56lowCD16+)およびサイトカイン産生NK(CD56highCD16-)細胞が含まれていたことを示している。免疫細胞の同じ集団は、適合性レシピエントと不適合性レシピエントの両方でウイルスに応答した。全てのT亜集団の応答の大きさが、幹細胞担体と腫瘍細胞担体の両方と適合性のレシピエント設定で弱かった、またはさらには陰性であり(抗ウイルス応答の完全な抑制を示す)、適合性が同種細胞担体のいずれの型でもウイルスに対する応答に影響を及ぼすことを実証している。NK細胞の場合、これは、幹細胞担体によって送達されたウイルスに対するサイトカイン産生NK細胞(CD56highCD16-)の応答にのみ当てはまり、適合性レシピエント設定では完全に抑制されたが、不適合性レシピエント設定ではされなかった。同種腫瘍担体細胞によって送達されるウイルスに対するサイトカイン産生NK細胞(CD56highCD16-)の応答は、両レシピエントで等しく強かった。ウイルスに対する細胞傷害性NK(CD56lowCD16+)細胞応答は非常に高く、両レシピエントで類似であった。不適合性レシピエントにおける同種腫瘍細胞担体でのウイルスに対する一見低い応答は、ウイルスの非存在下でも、担体細胞単独に対するこれらのNK細胞の極めて高い活性化を反映しており(表55を参照)、この設定での低い抗ウイルスNK細胞応答を示すものではない。
【0648】
実施例4は、腫瘍溶解性ウイルスの同種細胞担体に応答して、T細胞(CD3+)およびNK細胞(NKp46+)マーカーを発現する自然T細胞集団の重要な役割を実証している。表55および56に要約されるデータは、これらの自然T細胞集団がγδ T細胞、iNKT(NKT I型)細胞およびCD56+CD3+NKT(NKT II型)細胞を含むことを示している。
【0649】
【表55】
【0650】
【表56】
【0651】
C.不適合性PBMC対適合性PBMCの同種担体細胞に対する免疫応答
表55および56に示されるように、不適合性PBMCとの共培養物は、適合性PBMCと比較して、有意に多数の自然免疫T細胞亜集団(γδ T細胞およびCD3+CD56+NKT細胞)、ならびにウイルス感染担体に対する強力な応答を誘発する。全PBMCの%としてのCD69+活性化免疫細胞亜集団の数を決定し、ワクシニアウイルスに感染した幹細胞または腫瘍担体細胞と共培養した不適合性(CBD1)および適合性(CBD2)PBMCについて比較し、結果を表57に要約する。各特定の亜集団内の%としての、CD69+活性化免疫細胞亜集団の数も、不適合性PBMCと適合性PBMCについて計算し、結果を表58に要約する。表57は、各PBMC亜集団のCD69+活性化細胞を、PBMCの総数の割合(%)として示している。表58は、各PBMC亜集団内のCD69+活性化細胞を、その特定の亜集団内の細胞の総数の割合として示している。
【0652】
不適合性(CBD1)PBMCと適合性(CBD2)PBMCとの間の主な違いは、不適合性PBMCで観察される自然免疫T細胞亜集団(γδ T細胞およびCD3+CD56+NKT細胞)の有意に多い数、およびウイルス感染担体に対するはるかに強力な応答であった。これは、さまざまなサブタイプの細胞の総数の増加(表55および56参照)、および全PBMC(表57参照)または特定の亜集団(表58参照)内のCD69+活性化細胞の割合から明らかである。
【0653】
これらの結果はまた、一般に、幹細胞が腫瘍細胞と比較して担体として優れた免疫抑制/免疫回避特性を有し、後者はNK細胞を除く全ての自然および適応免疫亜集団のより強力な活性化を刺激することも示している(表57および58、RM35対PC3参照)。
【0654】
【表57】
【0655】
【表58】
【0656】
D. HLA遮断は担体細胞に対するCD8 T細胞の応答を抑制する
上に論じられるように、同種認識および拒絶を担う因子の特定、抑制および/または排除を使用して、腫瘍溶解性ウイルスを既製の方法で送達するための同種幹細胞または腫瘍細胞の治療有効性を増加させることができる。同種拒絶決定因子には、CD8およびCD4 T細胞によって認識される高度に多型で患者特異的なMHCクラスIおよびクラスII分子、ならびにγδ T、iNKTおよびNKT細胞などのさまざまな自然T細胞亜集団によって認識される、MHC様MICAおよびCD1a、b、c、d分子ならびにその他のストレス関連またはストレス感知分子、例えばブチロフィリンおよびアネキシンA2を含む、広範囲の多型性の低い決定因子が含まれる。
【0657】
同種MHC I分子の排除/遮断を、それが担体幹細胞および腫瘍細胞に対する同種免疫応答、特に同種MHC Iミスマッチの認識および応答を担うCD8 T細胞の応答を抑制するかどうか評価するために評価した。不適合性ドナーおよび適合性ドナーからのそれぞれ300,000個のPBMCを、2時間、10のMOIでACAM2000ワクシニアウイルスに感染させた10,000個の脂肪由来幹細胞(RM35)またはがん細胞(ヒト前立腺PC3細胞)と60時間共培養した。汎抗HLA遮断抗体(抗HLA抗体;Ultra-LEAF(商標)精製抗ヒトHLA-A、B、C抗体クローンW6/32、カタログ番号311428、BioLegend、サンディエゴ、CA)またはアイソタイプ対照(Ultra-LEAF(商標)精製マウスIgG2a、κアイソタイプCtrl抗体、クローンMOPC-173、カタログ番号400264;BioLegend、サンディエゴ、CA)を共培養物に添加して、さまざまな自然および適応免疫細胞集団、特にCD8 T細胞による抗担体細胞応答の活性化に対するHLA遮断の効果を評価した。免疫活性化を、10μg/mLのアイソタイプ対照またはHLA遮断抗体の存在下、37℃および5%CO2で60時間、PBMCを事前感染RM35 ADSCまたはPC3腫瘍細胞と共培養した後に分析した。免疫細胞サブタイプを、活性化マーカーとしてのCD69、ならびにCD8 T細胞についてはCD3+CD8+(γδおよびiNKTを除く)、および一般的NK細胞についてはCD3-CD56+を含む細胞型特異的なマーカーのセットを使用するマルチパラメータフローサイトメトリー分析によって特定した。
【0658】
以下の表59は、それぞれ、ウイルス感染幹細胞(RM35 ADSC);ウイルス感染幹細胞+アイソタイプ対照;ウイルスに感染幹細胞+HLA遮断抗体;ウイルス感染腫瘍細胞(PC3);ウイルス感染腫瘍細胞+アイソタイプ対照;またはウイルス感染腫瘍細胞+HLA遮断抗体と共培養した、不適合性(CBD1)および適合性(CBD2)PBMCで観察されたCD69+活性化CD8 T細胞およびNK細胞の平均%を示している。表60は、HLA遮断によって媒介されるCD8 TおよびNK細胞活性化の抑制の%に関する結果を示している。%抑制は以下の式を使用して計算した:
%抑制=(1-(抗HLA抗体を使用した平均免疫細胞数/アイソタイプ対照を使用した平均免疫細胞数))×100。
【0659】
表59に示されるように、同種ウイルス感染幹細胞と不適合性(CBD1)または適合性(CBD2)PBMCの共培養物は、7~12.5%のCD69+CD8 T細胞活性化、および70%超のCD69+NK細胞活性化をもたらした。アイソタイプ対照の添加は、免疫細胞応答を抑制することも有意に影響を及ぼすこともなかった。しかしながら、共培養物への抗HLA抗体の添加は、全ての共培養物で免疫細胞の数を減少させ、特に適合性PBMCとの共培養物でCD8 T細胞の活性化に大きな影響を及ぼした。例えば、表60に示されるように、汎HLA遮断抗体でHLAを遮断すると、不適合性PBMCとのウイルス感染幹細胞共培養物でCD8 T細胞が58%抑制され、適合性PBMCとのウイルス感染幹細胞共培養物でCD8 T細胞が86%抑制された。一般に、ウイルス感染腫瘍細胞は、ウイルス感染幹細胞よりも多数のNK細胞およびCD8 T細胞を誘発した。HLAの遮断により、PC3細胞については幹細胞と同様の結果が得られ、ウイルス感染PC3細胞と不適合性PBMCの共培養物でCD8 T細胞活性化が58%抑制され、ウイルス感染PC3細胞と適合性PBMCの共培養物でCD8 T細胞活性化が82%抑制された。
【0660】
これらの結果は、汎HLA遮断抗体によるHLAの遮断が、同種抗担体細胞CD8 T細胞、およびある程度はNK細胞応答を抑制し、遮断活性は一般に、特にCD8 T細胞応答に関して、不適合性CBD1ドナーよりも適合性CBD2ドナーで有効であることを実証している。これらのデータは、自然T細胞集団のより大きな関与、ならびに不適合性設定でγδ T細胞およびNKT細胞によって認識される追加の同種拒絶決定因子、ならびに古典的CD8およびCD4 T細胞によって認識される古典的MHCクラスIおよびクラスII分子に加えて、これらを排除する必要性と一致している。
【0661】
したがって、HLA(MHCクラスI)分子などの同種拒絶決定因子の一過的および/または永続的な遮断または排除を使用して、免疫回避が増強された幹細胞または腫瘍細胞ベースの担体を作製することができる。このような担体細胞は、細胞傷害性T細胞およびNK細胞の産生に関連する同種応答、ならびに抗ウイルス状態を誘導し、ウイルスペイロードの送達および拡散を遮断するIFNγなどのエフェクターサイトカインの分泌を誘導することなく、腫瘍溶解性ウイルスをより有効に送達できる。
【0662】
【表59】
【0663】
【表60】
【0664】
実施例9
NKG2Dシグナル伝達の調節による同種認識/拒絶の回避
MHCクラスIおよびクラスII分子に加えて、ウイルス感染幹細胞および腫瘍担体細胞に対する免疫応答および同種拒絶は、免疫共刺激分子として機能するさまざまな非MHCマーカーの関与によって増強される。これらの非MHCマーカーは、ウイルスに感染した細胞または形質転換された腫瘍細胞の表面上で上方制御され、担体細胞が免疫拒絶を回避する能力を調節する。これらの「stress-induced」(ストレス誘発性)非MHCマーカーには、NK細胞、NKT細胞、γδ T細胞およびCD8+T細胞によって発現されるNKG2D受容体のリガンドであるヒトMICAおよびMICBなどのMHCクラスI関連タンパク質が含まれる。したがって、NKG2D受容体は、自然および適応細胞性免疫による標的化のために、腫瘍溶解性ウイルス担体などのストレス誘発性マーカー/リガンドを発現する細胞を感作させることができる。
【0665】
NKG2Dシグナル伝達の活性化を、ウイルス感染幹細胞または腫瘍担体細胞が免疫系を回避する能力に対する効果について評価した。ヒトNKG2D特異的抗体を使用して、ウイルス感染担体細胞に対する免疫応答に対するNKG2D受容体の関与の効果を評価した。この抗体は、免疫認識および細胞性免疫応答の活性化に寄与し、これらを増強する強力な共刺激シグナルとして機能する。このNKG2D抗体は、ウイルス感染細胞および腫瘍細胞によって発現されるものなどのNKG2Dリガンドのように振る舞うアゴニスト抗体である。この例では、その添加により、NKG2D軸のインビボ関与および活性化がシミュレートされる。
【0666】
脂肪由来幹細胞(ADSC-RM35)および腫瘍細胞(ヒト前立腺PC3細胞)をそれぞれ、2時間、10のMOIでACAM2000ワクシニアウイルスに事前感染させた。不適合性(CBD1)および適合性(CBD2)ドナーからの300,000個のPBMCを、50μg/mLのヒトNKG2D特異的抗体(カタログ番号MAB139-500、R&D Systems)または50μg/mLのマウスIgG1アイソタイプ対照(カタログ番号MAB002、R&D Systems)の存在下、10,000個のウイルス感染RM35 ADSCまたはPC3腫瘍細胞と、37℃および5%CO2で60時間共培養した。次いで、免疫活性化を、上記のマルチパラメータフローサイトメトリー分析を使用して、CD69+γδ T細胞(CD3+、γδ TCR+)、一般的NK細胞(CD3-CD56+)、サイトカイン産生NK細胞亜集団(CD56highCD16-)および細胞傷害性NK細胞亜集団(CD56lowCD16+)の%を決定することによって評価した。
【0667】
不適合性(CBD1)または適合性(CBD2)PBMCとウイルス感染幹細胞(「VV-ADSC」)の共培養物についての結果を表61に示し、ウイルス感染PC3腫瘍細胞(「VV-PC3」)との共培養物についての結果を以下の表62に示す。表は、アイソタイプ対照またはNKG2D特異的抗体とインキュベートした各共培養物で観察された、CD69+活性化γδ T細胞、一般的NK細胞、CD56highCD16-(サイトカイン産生)NK細胞およびCD56lowCD16+(細胞傷害性)NK細胞の%を示している。NKG2D活性化によるCD69+活性化免疫細胞亜集団の%増加は、以下式を使用して計算した:
%増加=((平均%NKG2D特異的抗体を含む免疫細胞サブタイプ-平均%アイソタイプ対照を含む免疫細胞サブタイプ)/(平均%アイソタイプ対照を含む免疫細胞サブタイプ))×100。
【0668】
表61に示されるように、NKG2D抗体とのインキュベーションは、アイソタイプ対照と比較して、全ての免疫細胞サブタイプについての不適合性(CBD1)および適合性(CBD2)設定で、ウイルス感染幹細胞担体に対する免疫活性化/応答を増加させた。γδ T細胞およびサイトカイン産生CD56highCD16-NK細胞の活性化が最も有意であり、不適合性および適合性設定でγδ T細胞がそれぞれ16.5%および27.4%増加し、不適合性および適合性設定でCD56highCD16-NK細胞がそれぞれ83.3%および51.5%増加した。高度細胞傷害性CD56lowCD16+NK亜集団に対する効果は最小限であり、これは、NKG2D抗体が細胞傷害性NK細胞と細胞担体との間の接触を遮断していることに帰することができる。これらの結果は、NKG2Dシグナル伝達/関与が、感染担体細胞に対する免疫応答の調節に関与していることを示している。
【0669】
表62の結果は、NKG2D抗体をウイルス感染腫瘍細胞と不適合性または適合性PBMCの共培養物とインキュベートしても、同じ免疫細胞亜集団の活性化が増加しなかったことを示している。これらの結果は、幹細胞担体と比較して、強力な腫瘍細胞担体に対する免疫反応、および同種認識を回避する能力の低下と一致している。幹細胞担体および腫瘍細胞担体に対する対照的な免疫応答は、NKG2D経路が形質転換/腫瘍細胞に応答して既により活性であることに帰することができる。これは、腫瘍細胞上のMIC-A/BなどのNKG2Dリガンドの構成的発現レベルが高く、腫瘍細胞を認識しやすくしているためである。NKG2Dリガンドのように振る舞うNKG2D抗体の添加は、腫瘍細胞が既に増加したレベルのNKG2Dリガンド発現を示しているので、アイソタイプ対照と比較して腫瘍細胞担体に対する免疫活性化を増加させなかった。
【0670】
データは、NKG2D経路がウイルス感染担体細胞の免疫回避能力の制御に関与していることを示している。したがって、MIC-A/BなどのNKG2Dリガンドを排除することで、細胞担体の免疫回避特性を改善することができる。これは、より高い基礎レベルのストレス誘発性リガンド発現を示す腫瘍細胞担体の状況に特に関連している。ウイルスに感染した非形質転換幹細胞におけるNKG2Dリガンドの排除は、ウイルス感染が進行するにつれて、これらの細胞がストレス誘発性リガンドの発現を上方制御もするため、免疫回避特性を改善することもできる。これを達成するために、担体細胞を、膜結合MICA/Bの発現を一過的または永続的に抑制するように操作することができる。あるいは、NKG2D受容体とそのリガンドとの間の相互作用を阻害することができる。例えば、担体細胞を、MIC-AおよびMIC-Bのアンタゴニスト(例えば、kK5(KHSV))ならびに/あるいはNKG2D受容体のアンタゴニスト(例えば、牛痘OMCP)の一過的または永続的な発現のために操作することができる。あるいは、細胞をアンタゴニストまたは抗NKG2Dモノクローナル抗体などの遮断抗体(例えば、Kimら(2010)Immunology 130:545~555参照)で前処理して、そのリガンドによる結合を防止し、アンタゴニストとして作用することができる。
【0671】
【表61】
【0672】
【表62】
【0673】
実施例10
免疫抑制因子を分泌するように感作/操作された担体細胞
幹細胞および腫瘍細胞は、IDO発現およびIL-10分泌を含む、免疫抑制および回避のためのさまざまな戦略を使用する。しかしながら、担体細胞内のウイルス増幅は、細胞の生存率および免疫抑制能を徐々に喪失させる。この制限を克服するために、高用量の免疫抑制サイトカインIL-10が、ウイルスによって媒介される免疫抑制特性の喪失を逆転させ、ウイルス感染担体細胞が同種拒絶/応答または早期の免疫認識を回避する能力を改善する能力を評価した。
【0674】
非感染のまたはワクシニアウイルスに感染した担体細胞(RM35 ADSC-幹細胞、またはPC3-腫瘍細胞)を、外因的に提供される組換えヒトIL-10(哺乳動物発現、担体フリー)(カタログ番号573202;BioLegend、サンディエゴ、CA)の存在下または非存在下で、上記の実施例8に記載されるように、不適合性(CBD1)および適合性(CBD2)PBMCと共培養した。手短に言えば、不適合性ドナーおよび適合性ドナーからのそれぞれ300,000個のPBMCを、2時間、10のMOIでACAM2000ワクシニアウイルスに感染させた10,000個の脂肪由来幹細胞(RM35)または腫瘍細胞(ヒト前立腺PC3細胞)と60時間共培養した。免疫活性化を、10nMの組換えヒトIL-10の存在下または非存在下、37℃および5%CO2で60時間、PBMCを事前感染ADSC-RM35またはPC3腫瘍細胞と共培養した後に分析した。さまざまな免疫細胞サブタイプを、活性化マーカーとしてのCD69、および前記の細胞型特異的マーカーのセット(実施例8参照)を使用するマルチパラメータフローサイトメトリー分析によって特定および列挙した。以下の表63は、不適合性または適合性PBMCと非感染幹細胞;ワクシニアウイルス感染幹細胞;またはワクシニアウイルス感染幹細胞+IL-10の各々の共培養物から回収されたCD69+活性化免疫細胞亜集団の各々についての平均数を示している。表64は、非感染PC3腫瘍細胞およびワクシニアウイルス感染PC3腫瘍細胞との共培養物についての同じデータを示している。表65は、以下の式を使用して計算された、免疫細胞サブタイプの%IL-10媒介抑制に関する結果を示している:
%IL-10抑制=(1-(ウイルス感染担体細胞+IL-10の平均免疫細胞数/ウイルス感染担体細胞の平均免疫細胞数))×100。
【0675】
表63および64に示されるように、ウイルス感染幹細胞および腫瘍細胞担体は、非感染担体細胞と比較して、不適合性(CBD1)と適合性(CBD2)PBMCとの共培養物でより大きな応答で、全ての免疫細胞サブタイプにわたって免疫応答を誘発する。ウイルス感染腫瘍細胞は、幹細胞が増強された免疫抑制および免疫回避特性を有するという事実と一致して、より多数の全ての免疫細胞サブタイプを誘発した。IL-10の添加は、ウイルス感染担体細胞に応答した免疫活性化を防止しなかったが、適合性設定と不適合性設定の両方で、およびウイルス感染幹細胞(表63)または腫瘍細胞(表64)との共培養物で試験された全ての免疫サブタイプにわたってCD69+活性化免疫細胞の数を有意に抑制した。一般に、IL-10媒介抑制の効力は、適合性PBMCとのウイルス感染幹細胞共培養物で最も高かった(表65参照)。これらの結果は、不適合性設定(CBD1対CBD2)での担体細胞(腫瘍または幹細胞)に対するより強力な同種反応と一致している。 データは、幹細胞または腫瘍細胞担体におけるIL-10およびその他の免疫抑制因子の操作された発現が、担体細胞の免疫抑制特性を維持および拡大し、担体細胞が免疫認識および同種拒絶を回避するのを可能にすることができることを示している。このことが、今度は、免疫系によって攻撃される前に、ウイルスを増幅し、標的腫瘍細胞に送達および拡散する能力を改善することによって、治療有効性を増強する。
【0676】
これを達成するために、担体細胞を、ヒトまたはウイルス起源の免疫抑制因子の一過的または永続的な発現のために操作することができる。例えば、担体細胞を、それだけに限らないが、IDO、アルギナーゼ、TRAIL、iNOS、IL-10、TGFβ、VEGF、FGF-2、PDGF、HGF、IL-6、sMICA、sMICB、sHLA-G、HLA-E、PD-L1、FAS-L、B7-H4、ならびにNKおよび/またはNKT細胞を標的化するまたは枯渇させる一本鎖抗体(scFv)などの、ヒト起源の免疫抑制因子を発現するように操作することができる。担体細胞を、それだけに限らないが、エクトロメリア/ワクシニアウイルスSPI-2/CrmA(免疫FAS/TNF/グランザイムB誘導アポトーシスの阻害剤);ワクシニアウイルスにコードされるN1(IL-1/NFκB/IRF3アンタゴニスト);HA(NKp30、NKp44、NKp46を標的化するNCRアンタゴニスト);IL-18結合タンパク質;A40R;A46R;A52R;B15R/B16R;TNFα遮断薬(例えば、ワクシニアウイルスCmrC/CmrE);IFN α/β遮断薬(例えば、ワクシニアウイルスB18R/B19R);IFNγ遮断薬(例えば、ワクシニアウイルスB8R);およびその他のIL-1/IL-1β/NFκB/IRF3/NCR/MHCI/TLR/NKG2Dアンタゴニストなどのウイルス起源の免疫抑制因子を発現するように操作することもできる。
【0677】
【表63】
【0678】
【表64】
【0679】
【表65】
【0680】
改変は当業者に明らかであるため、本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ制限されることが意図される。