(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】可膨張式ポート、可膨張式ポートを含むカテーテルアセンブリ、およびその方法
(51)【国際特許分類】
A61M 39/02 20060101AFI20231107BHJP
【FI】
A61M39/02 102
(21)【出願番号】P 2020570877
(86)(22)【出願日】2019-06-20
(86)【国際出願番号】 US2019038321
(87)【国際公開番号】W WO2019246448
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-05-20
(32)【優先日】2018-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591018693
【氏名又は名称】シー・アール・バード・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】C R BARD INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】1 Becton Drive Franklin Lakes NEW JERSEY 07417 UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】100116322
【氏名又は名称】桑垣 衛
(72)【発明者】
【氏名】エバンス、ジョン ジー.
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-526198(JP,A)
【文献】米国特許第03934274(US,A)
【文献】特開平07-255843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可膨張式ポートであって、
ハウジングと、
主要開口部および小開口部を有する、前記ハウジング内のチャンバと、
前記チャンバの主要開口部の上方において、前記ハウジングに固定されるセプタムと、
前記チャンバの前記小開口部によって前記チャンバに流体接続され、前記ハウジングから延在する中空のステムと、
前記ハウジングの少なくとも一部分の周りの袋であって、
流体の注入による前記袋の膨張時に前記可膨張式ポートのサイズを増大させ、
前記流体の引き抜きによる前記袋の収縮時に前記可膨張式ポートの前記サイズを減少させるように構成された前記袋とを備える、可膨張式ポート。
【請求項2】
前記袋は前記チャンバの前記主要開口部および前記小開口部の周りで前記ハウジングに固定され、それによって、前記セプタムへのニードルアクセスが妨げられず、かつ、前記チャンバと前記ステムとの間に流体連通が提供される、請求項1に記載の可膨張式ポート。
【請求項3】
前記袋は、ニードルで貫通してシリンジ内の
前記流体を注入することによって膨張するように構成され、ニードルの貫通可能な、自己密封式の袋である、請求項1または2に記載の可膨張式ポート。
【請求項4】
前記袋は、ニードルで貫通して前記袋からシリンジ内へ
前記流体を引き抜くことによって収縮するように構成され、ニードルの貫通可能な、自己密封式の袋である、請求項1または2に記載の可膨張式ポート。
【請求項5】
前記流体は水または生理食塩水を含む液体、および、空気、窒素、またはアルゴンを含む気体から選択される、請求項3または4に記載の可膨張式ポート。
【請求項6】
前記流体は滅菌生理食塩水である、請求項3または4に記載の可膨張式ポート。
【請求項7】
前記ハウジングは、前記可膨張式ポートを通る注入物の所望の流量を達成するように機械的に補助された加圧注入のための構造的一体性を有する、請求項1~6のうちのいずれか一項に記載の可膨張式ポート。
【請求項8】
a)可膨張式ポートであって、
ハウジングと、
主要開口部および小開口部を有する、前記ハウジング内のチャンバと、
前記チャンバの前記主要開口部の上方において前記ハウジングに固定されたセプタムと、
前記チャンバの前記小開口部によって前記チャンバに流体接続され、前記ハウジングから延在する中空のステムと、
前記ハウジングの少なくとも一部分の周りにある袋であって、
流体の注入による前記袋の膨張時に前記可膨張式ポートのサイズを増大させ、
前記流体の引き抜きによる前記袋の収縮時に前記可膨張式ポートの前記サイズを減少させるように構成された、袋と、
を含む可膨張式ポートと、
b)前記可膨張式ポートの前記ステムの上方を摺動するように構成される端部を含むカテーテルであって、前記可膨張式ポートの前記チャンバと流体連通するルーメンを有する、前記カテーテルと、
c)前記可膨張式ポートの前記ステム上方において前記カテーテルの前記端部上を摺動するように構成され、それによって、前記可膨張式ポートの前記ステム上に前記カテーテルをロックする、カテーテルロックとを含む、カテーテルアセンブリ。
【請求項9】
前記袋は前記チャンバの前記主要開口部および前記小開口部の周りで前記ハウジングに固定され、それによって、前記セプタムへのニードルアクセスが妨げられず、かつ、前記チャンバと前記ステムとの間に流体連通が提供される、請求項8に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項10】
前記袋は、ニードルで貫通してシリンジ内の
前記流体を注入することによって膨張するように構成され、ニードルの貫通可能な、自己密封式の袋である、請求項8または9に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項11】
前記袋は、ニードルで貫通して前記袋からシリンジ内へ
前記流体を引き抜くことによって収縮するように構成され、ニードルの貫通可能な、自己密封式の袋である、請求項8または9に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項12】
前記流体は水または生理食塩水を含む液体、および、空気、窒素、またはアルゴンを含む気体から選択される、請求項10または11に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項13】
前記流体は滅菌生理食塩水である、請求項10または11に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項14】
前記ハウジングは、前記可膨張式ポートを通る注入物の所望の流量を達成するように機械的に補助された加圧注入のための構造的一体性を有する、請求項8~13のうちのいずれか一項に記載のカテーテルアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可膨張式ポート、可膨張式ポートを含むカテーテルアセンブリ、およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床医は、一般的に、血管アクセスポートを移植するときに患者に作られる切開サイズおよびポートポケットサイズを最小化するように努力する。それに対応して、ポートの移植からの傷跡を最小化するように、より小さなサイズのアクセスポートが選択される。残念なことに、より小さなサイズのポートは必ずしも患者の体質と一致するわけではない場合がある。これにより、輸液セットアクセス用に位置決め、または触診できないアクセスポートになり得る。
【0003】
輸液セットアクセスに付随する位置決めおよび触診の問題を回避するために、より大きなサイズのアクセスポートが移植された場合、そのより大きなサイズのアクセスポートは、患者(特に、癌患者が悪液質になった場合に続く典型的な体重減少の患者)にとって大きすぎることになる。これは、患者に美容上の課題、また、皮膚びらんの問題の可能性を生じ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の観点から、ポート配置の傷跡を最小化し、輸液セットアクセスに付随する位置決めおよび触診の問題を回避する血管アクセスポートが必要とされる。本明細書に開示されるのは、膨張アクセスポート、膨張アクセスポートを含むカテーテルアセンブリ、および少なくとも前述したことに取り組む方法である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示されているのは、いくつかの実施形態において、ハウジングと、ハウジング内のチャンバと、チャンバ上方のセプタムと、ハウジングから延在する中空のステムと、ハウジングの少なくとも一部分の周りの袋とを含む、可膨張式ポートである。チャンバは、主要開口部および小開口部を有する。セプタムは、チャンバの主要開口部の上方にある。セプタムは、ハウジングに固定される。ステムは、チャンバの小開口部によってチャンバに流体接続する。袋は、袋の膨張時に可膨張式ポートのサイズを増大させ、袋の収縮時に可膨張式ポートのサイズを減少させるように構成される。
【0006】
いくつかの実施形態において、袋は、チャンバの主要開口部および小開口部の周りでハウジングに対して固定される。チャンバの主要開口部の周りでハウジングに対して袋を固定することにより、セプタムに対するニードルのアクセスが妨げられることなく提供される。チャンバの小開口部の周りでハウジングに対して袋を固定することにより、チャンバとステムとの間に流体連通が提供される。
【0007】
いくつかの実施形態において、袋は、ニードルで貫通してシリンジ内の流体を注入することによって膨張するように構成された、ニードルで貫通可能な、自己密封式の袋である。
【0008】
いくつかの実施形態において、袋は、ニードルで貫通して袋からシリンジ内へ流体を引き抜くことによって収縮するように構成された、ニードルで貫通可能な、自己密封式の袋である。
【0009】
いくつかの実施形態において、流体は、水または生理食塩水を含む液体、および、空気、窒素、またはアルゴンを含む気体から選択される。いくつかの実施形態において、流体は滅菌生理食塩水である。
【0010】
いくつかの実施形態において、ハウジングは、可膨張式ポートを通る注入物の所望の流量を達成するように機械的に補助された加圧注入のための構造的一体性を有する。
本明細書に、また開示されるのは、いくつかの実施形態において、可膨張式ポートと、可膨張式ポートに流体接続するように構成されたカテーテルと、可膨張式ポート上にカテーテルをロックするように構成されたカテーテルロックとを含むカテーテルアセンブリである。可膨張式ポートは、ハウジングと、ハウジング内のチャンバと、チャンバ上方のセプタムと、ハウジングから延在する中空のステムと、ハウジングの少なくとも一部分の周りの袋とを含む。チャンバは、主要開口部および小開口部を有する。セプタムは、チャンバの主要開口部の上方にある。セプタムは、ハウジングに固定される。ステムは、チャンバの小開口部によってチャンバに流体接続する。袋は、袋の膨張時に可膨張式ポートのサイズを増大させ、袋の収縮時に可膨張式ポートのサイズを減少させるように構成される。カテーテルは、可膨張式ポートのステム上方に摺動するように構成された端部を含む。カテーテルは、可膨張式ポートに連結されるとき、可膨張式ポートのチャンバと流体連通するルーメンを有する。カテーテルロックは、可膨張式ポートのステム上にカテーテルをロックするように、可膨張式ポートのステム上方のカテーテルの当該端部上を摺動するように構成される。
【0011】
いくつかの実施形態において、袋はチャンバの主要開口部および小開口部の周りでハウジングに固定される。チャンバの主要開口部の周りでハウジングに対して袋を固定することにより、セプタムに対するニードルのアクセスが妨げられることなく提供される。チャンバの小開口部の周りでハウジングに対して袋を固定することにより、チャンバとステムとの間に流体連通が提供される。
【0012】
いくつかの実施形態において、袋は、ニードルで貫通してシリンジ内の流体を注入することによって膨張するように構成された、ニードルで貫通可能な、自己密封式の袋である。
【0013】
いくつかの実施形態において、袋は、ニードルで貫通して袋からシリンジ内へ流体を引き抜くことによって収縮するように構成された、ニードルで貫通可能な、自己密封式の袋である。
【0014】
いくつかの実施形態において、流体は、水または生理食塩水を含む液体、および、空気、窒素、またはアルゴンを含む気体から選択される。いくつかの実施形態において、流体は滅菌生理食塩水である。
【0015】
いくつかの実施形態において、ハウジングは、可膨張式ポートを通る注入物の所望の流量を達成するように機械的に補助された加圧注入のための構造的一体性を有する。
また、本明細書に開示されるのは、カテーテルアセンブリを移植するための方法であって、いくつかの実施形態において、カテーテルアセンブリの構成要素を入手することと、患者の鎖骨近くの第1切開を通って患者の上大静脈にカテーテルを導入することと、患者の胸上の第1切開の下の第2切開を通って作られた患者のポートポケットに可膨張式ポートを導入することと、可膨張式ポートにカテーテルを連結し、可膨張式ポートのステム上にカテーテルをロックすることと、患者にとって適切なサイズのポートに可膨張式ポートを膨張させることとを含む。カテーテルアセンブリの構成要素は、可膨張式ポートと、可膨張式ポートのステム上方を摺動するように構成された端部を含むカテーテルと、可膨張式ポートのステム上にカテーテルをロックするために、可膨張式ポートのステムの上方においてカテーテルの端部上を摺動するように構成されたカテーテルロックとを含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、可膨張式ポートを小さいサイズから患者にとって適切なサイズのポートに対応する大きいサイズの可膨張式ポートに膨張させることによって、第2切開を、既存のポートに必要な通常のものより小さい切開にできる。これは患者の傷跡を最小化する。
【0017】
いくつかの実施形態において、本方法は、また、可膨張式ポートを膨張させる前に第2切開の周りの縫合でポートポケットを閉じることを含む。
いくつかの実施形態において、可膨張式ポートは、ハウジングと、ハウジング内のチャンバと、チャンバ上方のセプタムと、ハウジングから延在する中空のステムと、ハウジングの少なくとも一部分の周りの袋とを含む。チャンバは、主要開口部および小開口部を有する。セプタムは、チャンバの主要開口部の上方にある。セプタムは、ハウジングに固定される。ステムは、チャンバの小開口部によってチャンバに流体接続される。袋は、ニードルで貫通可能な、自己密封式の袋である。袋は、袋の膨張時に可膨張式ポートのサイズを増大させ、袋の収縮時に可膨張式ポートのサイズを減少させるように構成される。
【0018】
いくつかの実施形態において、本方法は、また、袋をニードルで貫通すること、および、可膨張式ポートを膨張させるようにシリンジ内の流体を袋に注入することを含む。
いくつかの実施形態において、本方法は、また、可膨張式ポートを収縮させるようにニードルで貫通して袋から流体を引き抜くことを含む。本方法は、また、袋から流体を引き抜いた後、患者のポートポケットから可膨張式ポートを取り除くことを含む。
【0019】
本明細書に提供された概念のこれらの特徴および他の特徴は、そのような概念の特定の実施形態をより詳細に開示する添付の図面および以下の記載の観点から、当業者にはより明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】いくつかの実施形態による、可膨張式ポートを含むカテーテルアセンブリを装着した患者を示す図。
【
図2】いくつかの実施形態による、膨張状態の可膨張式ポートおよび収縮状態の可膨張式ポートを含むカテーテルアセンブリを示す図。
【
図3A】いくつかの実施形態による、可膨張式ポートの膨張を示す図。
【
図3B】いくつかの実施形態による、可膨張式ポートの収縮を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
いくつかの特定の実施形態がより詳細に開示される前に、本明細書に開示される特定の実施形態は、本明細書に提供される概念の範囲を限定しないことを理解されたい。本明細書に開示される特定の実施形態は、その特定の実施形態から容易に分離でき、任意選択的に、本明細書に開示される他の複数の実施形態のうちのいずれかの特徴と組み合わせるか、または置換することができる特徴を有し得ることも理解されたい。
【0022】
本明細書に使用される用語に関して、用語は、いくつかの特定の実施形態の説明の目的のためであり、それらの用語が本明細書に提供される概念の範囲を限定しないことも理解されたい。序数(例えば、第1、第2、第3など)は、一般に、特徴またはステップの一群内の異なる複数の特徴またはステップを区別または識別するために使用され、シリアルまたは数的な限定を供給しない。例えば、「第1」、「第2」、および「第3」の特徴またはステップは、必ずしもその順序で現れる必要はなく、そのような特徴またはステップを含む特定の実施形態は、必ずしも3つの特徴またはステップに限定される必要はない。「左」、「右」、「前部」、「後部」、「頂部」、「底部」、「順」、「逆」、「時計回り」、「反時計回り」、「上」、「下」などのラベル、または「上部」、「下部」、「後方」、「前方」、「垂直」、「水平」、「近位」、「遠位」などの他の同様の用語は、便宜上使用され、例えば、特定の任意の固定された位置、配向、または方向を含意することを意図していない。代わりに、そのようなラベルは、例えば、相対的な位置、配向、または方向を反映するために使用される。単数形の「a」、「an」、および「the」には、文脈で特に明確に指示されなければ、複数形の参照が含まれる。
【0023】
「近位」に関して、例えば、本明細書に開示されるカテーテルの「近位部分」または「近位端部」は、カテーテルが患者に使用されるとき、臨床医の近くにあることが意図されるカテーテルの部分を含む。同様に、例えば、カテーテルの「近位長」は、カテーテルが患者に使用されるとき、臨床医の近くにあることが意図されるカテーテルの長さを含む。例えば、カテーテルの「近位端」は、カテーテルが患者に使用されるとき、臨床医の近くにあることが意図されるカテーテルの一端を含む。カテーテルの近位部分、近位端部、または近位長は、カテーテルの近位端を含み得る。しかしながら、カテーテルの近位部分、近位端部、または近位長は、カテーテルの近位端を含む必要はない。すなわち、特に文脈が示唆しなければ、カテーテルの近位部分、近位端部、または近位長は、カテーテルの末端部または末端長ではない。
【0024】
「遠位」に関して、例えば、本明細書に開示されるカテーテルの「遠位部分」または「遠位端部」は、カテーテルが患者に使用されるとき、患者の近くまたは患者内にあることが意図されるカテーテルの部分を含む。同様に、例えば、カテーテルの「遠位長」は、カテーテルが患者に使用されるとき、患者の近くまたは患者内にあることが意図されるカテーテルの長さを含む。例えば、カテーテルの「遠位端」は、カテーテルが患者に使用されるとき、患者の近くまたは患者内にあることが意図されるカテーテルの一端を含む。カテーテルの遠位部分、遠位端部、または遠位長は、カテーテルの遠位端を含み得る。しかしながら、カテーテルの遠位部分、遠位端部、または遠位長は、カテーテルの遠位端を含む必要はない。すなわち、特に文脈が示唆しなければ、カテーテルの遠位部分、遠位端部、または遠位長は、カテーテルの末端部または末端長ではない。
【0025】
可膨張式ポートの袋の膨張していない状態のように、「膨張していない」に関して、袋の膨張していない状態は、袋がまだ臨床医によって膨張させられていない袋の状態を含む。すなわち、膨張していない状態にある袋は、新たに開梱された可膨張式ポートの袋を含む。可膨張式ポートの袋の膨張した状態のように、「膨張した」に関して、袋の膨張した状態は、臨床医によって、少なくともある流体が袋内に注入されている袋の状態を含む。すなわち、膨張したポートの膨張した状態にある袋は、少なくとも部分的に膨張した袋を含む。可膨張式ポートの袋内に最大量の流体が注入されたとき、袋は「完全に膨張した」ことになる。可膨張式ポートの袋の収縮した状態のように、「収縮した」に関して、袋の収縮した状態は、臨床医によって、少なくともある流体が袋から引き抜かれた袋の状態を含む。すなわち、収縮した状態にある膨張したポートの袋は、少なくとも部分的に膨張した袋を含む。文脈により、膨張したポートが膨張した状態にあるかまたは収縮状態にあるかどうかを決定することができる。
【0026】
特に定義されなければ、本明細書に使用される全ての技術的および科学的用語は、当業者によって一般的に理解されていることと同じ意味を有する。
臨床医は、一般的に、血管アクセスポートを移植するときに患者に作られる切開サイズおよびポートポケットサイズを最小化するように努力する。それに対応して、ポートの移植からの傷跡を最小化するように、より小さなサイズのアクセスポートもまた選択される。残念なことに、より小さなサイズのアクセスポートは必ずしも患者の体質と一致するわけではない場合がある。これにより、輸液セットアクセス用に位置決め、または触診できないアクセスポートになり得る。
【0027】
輸液セットアクセスに付随する位置決めおよび触診の問題を回避するために、より大きなサイズのポートが移植された場合、そのより大きなサイズのポートは、患者(特に、癌患者が悪液質になった場合に続く典型的な体重減少の患者)にとって大きすぎることになる。これは、患者に美容上の課題、また、皮膚びらんの問題の可能性を生じ得る。
【0028】
前述の観点から、ポート配置の傷跡を最小化し、輸液セットアクセスに付随する位置決めおよび触診の問題を回避するアクセスポートが必要とされる。本明細書に開示されるのは、可膨張式ポート、可膨張式ポートを含むカテーテル、および少なくとも前述したことに取り組む方法である。
【0029】
可膨張式ポート
図2、3A、および3Bに示されるように、可膨張式ポート210は、ハウジング340と、ハウジング340内のチャンバ350と、チャンバ350上方のセプタム360と、ハウジング340から延在する中空のステム370と、少なくともハウジング340の部分の周りの袋380とを含み得る。チャンバ350は主要開口部および小開口部を含み得る。セプタム360は、チャンバ350の主要開口部の上方にあり得る。セプタム360はハウジング340に固定され得る。ステム370は、チャンバ350の小開口部によって、チャンバ350に流体接続され得る。袋380は、袋380の膨張時に可膨張式ポート210のサイズを増大させ、袋380を収縮時に可膨張式ポート210のサイズを減少させるように構成され得る。
【0030】
袋380は、チャンバ350の主要開口部および小開口部の周りでハウジング340に固定され得る。チャンバ350の主要開口部の周りでハウジング340に袋380を固定することにより、セプタム360に対するニードルのアクセスが妨げられることなく提供される。チャンバ350の小開口部の周りでハウジング340に袋380を固定することは、チャンバ350とステム370との間に流体連通を提供する。
【0031】
図3Aおよび3Bに示されるように、袋380はまた、ニードルが貫通してシリンジ内の流体を注入することによって膨張するように構成された、ニードルが貫通可能な自己密封式の袋であり得る。袋380はまた、ニードルが貫通して袋380からシリンジ内に流体を引き抜くことによって収縮するように構成され得る。
【0032】
袋380を膨張させるための流体は、水または生理食塩水(例えば、滅菌生理食塩水)を含む液体および空気、窒素、またはアルゴンを含む気体から選択され得る。
ハウジング340は、可膨張式ポート210を通る注入物の所望の流量を達成する、機械的に補助された加圧注入の構造的一体性を有することができる。機械的に補助された加圧注入は、コンピュータ断層撮影(「CT」)スキャン中に造影剤を提供するのに役立つ。
【0033】
可膨張式ポート210は、また、X線撮影によって可膨張式ポート210を識別するために構成された1つ以上の放射線不透過性要素で構成され得る。
可膨張式ポートを含むカテーテルアセンブリ
図1、2、3A、および3Bに示されるように、カテーテルアセンブリ100は、可膨張式ポート210と、可膨張式ポート210に流体接続されるように構成されたカテーテル220と、可膨張式ポート210上にカテーテル220をロックするように構成されたカテーテルロック230とを含み得る。可膨張式ポート210は、上述したように、ハウジング340と、ハウジング340内のチャンバ350と、チャンバ350上方のセプタム360と、ハウジング340から延在する中空のステム370と、ハウジング340の少なくとも一部分の周りにある袋380とを含む。カテーテル220は、可膨張式ポート210のステム370の上を摺動するように構成された端部を含む。カテーテル220は、可膨張式ポート210に連結されたとき、可膨張式ポート210のチャンバ350と流体連通するルーメン322を有する。カテーテルロック230は、可膨張式ポート210のステム370上にカテーテルをロックするように、可膨張式ポート210のステム370の上方のカテーテル220の端部上を摺動するように構成される。
【0034】
カテーテル220(例えば、カテーテル220の端部)、カテーテルロック230、またはカテーテル220およびカテーテルロック230の両方は、また、X線撮影によって可膨張式ポート210を識別するために構成された1つ以上の放射線不透過性要素で構成され得る。
【0035】
方法
カテーテルアセンブリ100を移植する方法は、カテーテルアセンブリ100の構成要素を入手することと、患者Pの鎖骨近くの第1切開を通って患者Pの上大静脈にカテーテル220を導入すること(
図1参照)と、第1切開の下の患者Pの胸の第2切開を通って作られた患者P内のポートポケットに可膨張式ポート210を導入することと、カテーテル220を可膨張式ポート210に連結し、カテーテル220を可膨張式ポート210のステム370上にロックすることと、可膨張式ポート210を患者Pのための適切なサイズのポートに膨張させることとを含み得る。この場合もまた、カテーテルアセンブリ100の構成要素は、可膨張式ポート210と、可膨張式ポート210のステム370の上方を摺動するように構成された端部を含むカテーテル220と、可膨張式ポート210のステム370上にカテーテルをロックするように、可膨張式ポート210のステム370の上方でカテーテル220の端部上を摺動するように構成されたカテーテルロック230とを含む。可膨張式ポート210は、ハウジング340と、ハウジング340内のチャンバと、チャンバ上方のセプタム360と、ハウジング340から延在する中空のステム370と、ハウジング340の少なくとも一部分の周りにある袋380とを含む。
【0036】
可膨張式ポート210を小さいサイズから患者Pにとって適切なサイズのポートに対応する大きいサイズの可膨張式ポート210に膨張させることによって、第2切開を既存のポートに必要な通常のものより小さい切開にできる。これは患者Pの傷跡を最小化する。
【0037】
本方法は、また、可膨張式ポート210を膨張させる前に第2切開の周りの縫合でポートポケットを閉じることを含み得る。可膨張式ポート210は、ポートポケットを閉じる前に膨張され得るか、またはポートポケットが閉じられると患者の皮膚を通って膨張され得る。
【0038】
本方法は、また、袋380をニードル(例えば、ノンコアリングニードル)で貫通させることおよび可膨張式ポート210を膨張させるためにシリンジから流体を袋380に注入することを含み得る。これは
図3Aにおいて示される。
【0039】
本方法は、また、袋380をニードル(例えば、ノンコアリングニードル)で貫通させることおよび可膨張式ポート210を収縮させるために袋380から流体を引き抜くことを含み得る。これは
図3Bにおいて示される。
【0040】
本方法は、また、袋380から流体を引き抜いた後、患者のポートポケットから可膨張式ポート210を取り除くことを含む。
前述の観点から、移植手順中の少なくとも配置のための、膨張していないときの最小限のプロファイル(例えば、最小限の高さと幅)を有する可膨張式ポートが開示される。可膨張式ポートの配置に続いて、可膨張式ポートは、可膨張式ポートの高さ、可膨張式ポートの幅、またはその両方を増大させるように膨張され得る。可膨張式ポートのサイズにおける増大は、触診による可膨張式ポートの位置決めに対して改善された安定性および改善された能力を提供し得る。可膨張式ポートは、また、可膨張式ポートの小型化のために収縮させられ得る。可膨張式ポートのサイズにおける減少は、体重減少を経験した患者のための適切なサイズの可膨張式ポートを提供し、その結果、彼または彼女の皮膚の下のポートプロファイルが露出する。したがって、可膨張式ポートは、患者の治療(例えば、癌治療)のタイムラインで一度に必要な特定の寸法に応じて、膨張または収縮させることができる。
【0041】
いくつかの特定の実施形態が本明細書に開示され、特定の実施形態は、いくらか詳細に開示されているが、特定の実施形態が本明細書で提供される概念の範囲を限定することは意図されていない。追加の適応および/または修正は、当業者に明白であり得、より広い態様においては、これらの適応および/または修正もまた包含される。したがって、本明細書で提供される概念の範囲から逸脱することなく、本明細書で開示される特定の実施形態から逸脱し得る。