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特許7379394チタン含有金属化合物からなるインゴットの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】チタン含有金属化合物からなるインゴットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 1/02 20060101AFI20231107BHJP
   C22B 34/12 20060101ALI20231107BHJP
   C22B 9/16 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
C22C1/02 501Z
C22C1/02 503E
C22B34/12 102
C22B9/16
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020573013
(86)(22)【出願日】2019-06-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 FR2019051541
(87)【国際公開番号】W WO2020002811
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-05-25
(31)【優先権主張番号】1855713
(32)【優先日】2018-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロペス,ブルーノ・ビトリーノ
(72)【発明者】
【氏名】フェレール,ロラン
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-128134(JP,A)
【文献】特開2007-056363(JP,A)
【文献】実開平05-036299(JP,U)
【文献】特開2013-184174(JP,A)
【文献】特開2012-177522(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102618733(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F1/00-12/90;C22C1/04-1/059;33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン系金属化合物から作製されたインゴットを製造する方法であって、
-(E1)原材料片を提供するステップと、
-(E3)少なくとも1つのたらいにおいて原材料片を液体金属(4)に溶融するステップと、
-(E4)前記少なくとも1つのたらい内の液体金属を溶融状態に保持するステップと、
-(E5)少なくとも1つのたらいからるつぼへのオーバーフローによって、前記少なくとも1つのたらいから前記るつぼに液体金属を注ぐステップと、
-(E6)るつぼ内の液体金属を冷却してインゴットを形成するステップと、
を備え、
-(E2)前記原材料片の液相線温度の75%以上であり且つその液相線温度よりも厳密に低い予熱温度で、前記原材料片が溶融する前に、前記原材料片を予熱するステップを備える、方法。
【請求項2】
予熱温度が原材料片の固相線温度以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
予熱温度が液相線温度の93%以上である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
チタン系金属化合物が、チタンの溶融温度よりも高い溶融温度を有する少なくとも1つの元素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
原材料片の予熱が誘導によって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
原材料片の予熱が、加熱ビーム発生器によって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、加熱ビーム発生器の向きを制御するステップを備える、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
-(E31):第1のたらいにおいて原材料片を液体金属に溶融するステップと、
-(E41):第1のたらい内の液体金属を溶融状態に保持するステップと、
-(E5’):第1のたらいから第2のたらいへのオーバーフローによって前記第1のたらいから前記第2のたらいへと液体金属を注ぐステップと、
-(E42):第2のたらい内の液体金属を溶融状態に保持するステップと、
-(E51):第2のたらいからるつぼへのオーバーフローによって前記第2のたらいから前記るつぼへと液体金属を注ぐステップと、を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
チタン系金属化合物から作製されたインゴットの製造システムであって、
-液体金属を収容するように構成された少なくとも1つのたらいと、
-原材料片を前記少なくとも1つのたらいに運ぶように構成されたコンベヤと、
-液体金属が前記少なくとも1つのたらいからのオーバーフローによって供給され、液体金属を冷却および固化するように構成されたるつぼと、
-少なくとも1つのたらいおよびるつぼの反対側に位置し、前記少なくとも1つのたらいおよび前記るつぼ内の原材料片を溶融して溶融状態を保持するように構成された加熱手段と、を備え、
システムが、前記原材料片の液相線温度の75%以上であり且つ前記原材料片の液相線温度よりも厳密に低い予熱温度で、前記原材料片をコンベヤ上で加熱するように構成された予熱装置を備える、システム。
【請求項10】
予熱装置が、加熱ビーム発生器を備える、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
予熱装置が、誘導予熱装置を備える、請求項9に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に航空機用部品の製造のための、合金または金属間化合物などのチタン系金属化合物から作製されたインゴットの製造の一般的な分野に関する。
【0002】
チタン系合金またはチタン系金属間化合物から作製されたインゴットは、一般に、異なるたらいにおいて原材料片を溶融し、次に液体金属をるつぼに注いで金属を冷却および固化してインゴットを形成することによって製造される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のチタンインゴットの製造方法は、得られたインゴットの機械的特性が所望の機械的特性に比べて低下するという問題を引き起こす可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
したがって、本発明の主な目的は、本発明の第1の態様によれば、
チタン系金属化合物から作製されたインゴットを製造する方法であって、
-原材料片を提供するステップと、
-少なくとも1つのたらいにおいて原材料片を液体金属に溶融するステップと、
-前記少なくとも1つのたらい内の液体金属を溶融状態に保持するステップと、
-前記少なくとも1つのたらいから前記るつぼへのオーバーフローによって、少なくとも1つのたらいからるつぼに液体金属を注ぐステップと、
-るつぼ内の液体金属を冷却してインゴットを形成するステップと、
を備え、
-前記原材料片を、その液相線温度の75%以上の予熱温度で前記原材料片が溶融する前に予熱するステップであって、前記予熱温度が液相線温度よりも厳密に低いステップを備えることを特徴とする方法を提案することによって、そのような欠点を克服することである。
【0005】
原材料片を予熱するそのようなステップは、特にたらい内の未溶融材料の存在を低減することにより、たらい内の金属の均一性を改善することを可能にする。
【0006】
さらに、そのような予熱は、新たに溶融した金属が前記たらい内に落下するときの、たらい内の温度低下を低減することを可能にし、したがって、たらいにおける未溶融材料の溶解を促進することによって均一性も改善し、金属化合物の溶融速度を増加させ、生産的利益を可能にする。
【0007】
さらに、そのような予熱は、溶融ステップ中に原材料が受ける熱衝撃を低減することを可能にし、したがって、原材料のオフガスを低減する。これらのオフガスは、介在物を生成する可能性のある反応を引き起こす可能性があり、これらの介在物は、インゴットの機械的特性を低下させる。オフガスによって引き起こされる反応はまた、るつぼに堆積される元素を生成する可能性もあり、したがって、インゴットの機械的特性を低下させる。さらに、原材料の熱衝撃は、たらいのさらに下流に落下する可能性があるため短い溶解時間を有する可能性がある、原材料の小さな固体粒子の突出を助長し、したがって、未溶融粒子がるつぼ内に残るリスクを増加させ、インゴットの機械的特性を低下させる。
【0008】
そのような予熱ステップは、これらの金属化合物が高い溶融温度を有し(チタンは1,668℃の溶融温度を有する)、チタン系金属化合物が、インゴットの形成中の未溶融金属粒子の存在のより高いリスクを有するため、チタン系金属化合物から作製されたインゴットの製造に特に有利である。
【0009】
本方法は、技術的可能性に応じて、単独で、または組み合わせて、以下の特性を備えることができる:
-予熱温度が原材料片の固相線温度以上である、
-予熱温度が液相線温度の93%以上である、
-チタン系金属化合物は、チタンの溶融温度よりも高い溶融温度を有する少なくとも1つの元素を含む、
-原材料片の予熱は、誘導によって行われる、
-原材料片の誘導予熱は、前記原材料片の浮揚を確実にするように構成されている、
-原材料片の予熱は、加熱ビーム発生器によって行われる、
-本方法は、加熱ビーム発生器の向きを制御するステップを備える、
-本方法は、以下のステップを備える:
・第1のたらいにおいて原材料片を液体金属に溶融する、
・第1のたらいの液体金属を溶融状態に保持する、
・第1のたらいから第2のたらいへのオーバーフローによって前記第1のたらいから前記第2のたらいに液体金属を注ぐ、
・第2のたらいの液体金属を溶融状態に保持する、
・第2のたらいからるつぼへのオーバーフローによって前記第2のたらいから前記るつぼに液体金属を注ぐ。
【0010】
第2の態様によれば、本発明は、チタン系金属化合物から作製されたインゴットを製造するシステムであって、
-液体金属を受け入れるように構成された少なくとも1つのたらいと、
-原材料片を前記少なくとも1つのたらいに運ぶように構成されたコンベヤと、
-前記少なくとも1つのたらいからのオーバーフローによって供給され、液体金属を冷却および固化するように構成されたるつぼと、
-少なくとも1つのたらいおよびるつぼの反対側に位置し、前記少なくとも1つのたらいおよび前記るつぼ内の原材料片を加熱および溶融するように構成された加熱手段と、を備え、
システムが、前記原材料片の液相線温度の75%以上であり、且つ前記原材料片の液相線温度よりも厳密に低い予熱温度で原材料片をコンベヤ上で加熱するように構成された予熱装置を備えることを特徴とするシステムを提案する。
【0011】
システムは、技術的可能性に応じて、単独で、または組み合わせて、以下の特性を備えることができる:
-予熱装置は、加熱ビーム発生器を備える、
-システムは、画像取得装置および画像分析装置を備え、前記画像取得装置は、加熱ビーム発生器による原材料片の予熱の画像を取得するように構成され、前記画像分析装置は、前記画像取得装置によって取得された画像からの加熱ビーム発生器の向きを制御するように構成される、
-予熱装置は、誘導予熱装置を備える、
-誘導予熱装置は、原材料片を確実に浮揚させるように構成されている。
【0012】
本発明の他の特徴および利点は、限定されることなくその例示的な実施形態を示す添付図面を参照して、以下に与えられる説明から明らかになるであろう。図では以下のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る、チタン系金属化合物から作製されたインゴットの製造システムを概略的に表している。
図2】インゴット製造システムの予熱装置の第1の変形例を表している。
図3】予熱装置の第2の実施形態を表している。
図4】本発明の一実施形態に係る、チタン系金属化合物から作製されたインゴット製造方法の異なるステップの概略図を表している。
図5図1の製造システムの変形例によって実装された製造方法の異なるステップの概略図を表している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示されるように、チタン系金属化合物から作製されたインゴット2を製造するシステム1は、原材料片3が運ばれるコンベヤ11を備える。コンベヤ11は、例えば、振動テーブル、プッシュシリンダ、コンベヤベルトまたはウォームスクリューによって形成されることができる。
【0015】
原材料片3は、チタン系合金またはチタン系金属間化合物のマスター合金、リサイクル材料片、または未使用原材料とすることができる。典型的には、原材料片3は、プレス塊および圧縮されたチップなどの粒子のブロックによって形成されることができ、これらのブロックは、例えば、20cmから50cmの間で構成される長さを有する。
【0016】
チタン系金属化合物とは、ここでは、チタン系合金、すなわちチタンが主成分である合金、またはチタン系金属間化合物、すなわちチタンが主成分である金属間化合物のいずれかと理解される。合金は、異なる金属の組み合わせである一方で、金属間化合物は、少なくとも1つの金属と少なくとも1つの半金属との組み合わせである。
【0017】
金属化合物は、例えば、以下の合金の中からの合金とすることができる:Ti17、TiBeta16、Ti21S、Ti6242およびTi6246;または、以下の金属間化合物の中からの金属間化合物とすることができる:TiAl 48-2-2およびTiNMB1。与えられた例は、限定的ではなく、他の合金またはチタン系金属間化合物が使用されることができる。
【0018】
システム1は、原材料片3が溶融される少なくとも1つのたらいを備える。図1に示される例示的な実施形態では、システム1は、第1のたらい12と、前記第1のたらい12の下流に位置する第2のたらい13とを備える。しかしながら、たらいの数は、より多くすることができ、したがって、システム1は、例えば、3つまたは4つのたらいを備えることができ、またはより少なく、したがって、システム1は、単一のたらいを備えることができる。
【0019】
第1のたらい12および第2のたらい13は、原材料片3の溶融によって得られた液体金属4を収集する。
【0020】
第1のたらい12および第2のたらい13は、一方では、液体金属4を受け入れる壁によって形成され、前記壁は、例えば銅から作製され、他方では、壁をその劣化温度よりも低い温度に保持することを可能にする冷却装置によって形成され、前記冷却装置は、通常、冷却剤循環回路によって製造される。
【0021】
原材料片3は、第1のたらい12において溶融され、次いで、前記原材料片3の溶融によって得られた液体金属4は、第2のたらい13に移される。
【0022】
原材料片3の溶融は、第1のたらい12および第2のたらい13の反対側に位置する加熱手段14によって行われる。
【0023】
加熱手段14は、例えば、プラズマトーチ、電子銃、電気アーク発生器、レーザ発生器、または誘導加熱手段によって形成されることができる。
【0024】
さらに、加熱手段14は、液体金属4を所望の冶金学的状態に置くために、第1のたらい12および第2のたらい13内の液体金属4を溶融状態に保持するように構成される。
【0025】
第1のたらい12および第2のたらい13が位置する雰囲気は制御されることができる。液体金属4が大気と反応しないようにするために、制御された雰囲気は、例えば、真空雰囲気または制御された圧力下の不活性ガス雰囲気によって達成されることができる。別の可能な変形例によれば、制御された雰囲気は、制御された圧力下の特定のガスによって形成され、前記特定のガスは、前記液体金属4、したがってインゴット2の金属化合物を前記特定のガスによって帯電させるために液体金属4と反応するように適合される。
【0026】
第1のたらい12および第2のたらい13もまた、制御されていない雰囲気にさらされる可能性がある。
【0027】
図1に示されるように、システム1は、前記液体金属4を冷却し、それを固化して、半連続鋳造によってインゴット2を形成するように成形される固体金属前進フロント5を形成するために、第2のたらい13の液体金属4が注がれるるつぼ15を備える。
【0028】
るつぼ15に注がれる液体金属4を冷却するために、前記るつぼ15は、前記るつぼ15の壁を冷却する冷却回路を備える。冷却回路によって冷却されるるつぼ15の壁は、例えば銅または銅合金などの高熱伝導性材料から作製される。
【0029】
さらに、図1に見られるように、加熱手段14もまた、るつぼ15の反対側に配置され、るつぼ15の上部にある液体金属4を溶融状態に保持するように構成される。
【0030】
液体金属4は、オーバーフローによって、第1のたらい12から第2のたらい13へ、および第2のたらい13からるつぼ15へと移送される。換言すれば、第2のたらい13は、第1のたらい12から前記第2のたらいへの液体金属4のオーバーフローによって供給され、るつぼ15は、第2のたらい13から前記るつぼ15への液体金属4のオーバーフローによって供給される。そのような特性は、インゴット2の機械的特性を低下させるであろう未溶融金属粒子がるつぼ15に到達するリスクを制限することを可能にする。実際、まだ固体の金属は、第1のたらい13および第2のたらい14の底に落下する傾向がある。
【0031】
チタン系金属化合物のインゴット2の機械的特性を改善するために、システム1は、コンベヤ11の反対側に配置され、前記原材料片3が第1のたらい12において溶融される前に原材料片3を予熱するように構成される予熱装置16を備える。
【0032】
予熱装置16は、前記原材料片3の液相線温度の75%以上であり、前記原材料片3の液相線温度よりも厳密に低い予熱温度で原材料片3を加熱するように構成される。
【0033】
そのような予熱温度は、第1のたらい12の入口での温度勾配を減少させることを可能にする。これは、原材料片3の溶融を容易にすることを可能にし、第1および第2のたらい12および13における未溶融金属粒子の存在を低減し、したがって、これらの未溶融金属粒子がるつぼ15に到達するリスクを制限する。
【0034】
本発明に係る予熱は、特に、小サイズの未溶融金属粒子の溶融を促進することによって、その小サイズ粒子の存在を低減することを可能にし、小サイズの粒子が第1および第2のたらい12および13の底に落下しない可能性が最も高くなり、したがって、液体金属4と共にるつぼ15に注がれる。
【0035】
さらに、そのような予熱温度は、原材料片3が第1のたらい12に到着するときに受ける熱衝撃を低減することを可能にする。熱衝撃の低減は、オフガスの低減を可能にし、したがって、インゴットの機械的特性を低下させる、金属化合物中に不要な元素を生成する可能性があるこれらのオフガスによって引き起こされる反応を制限する。
【0036】
好ましくは、予熱温度は、金属化合物の固相線温度以上であり、これは、第1のたらい12および第2のたらい13における固体金属粒子の溶解のさらなる加速を可能にし、熱衝撃の低減を可能にする。予熱温度は、常に合金の液相線温度よりも厳密に低い。
【0037】
したがって、原材料片3は、金属化合物の固相線温度よりも高いが、液相線温度よりも厳密に低い温度であるため、部分的に溶融される。
【0038】
さらにより好ましくは、予熱温度は、合金の液相線温度の93%以上であり、固体金属粒子の溶解のさらなる加速を可能にし、原材料片3によって経験される温度差のさらなる低減を可能にする。ここでも、予熱温度は、合金の液相線温度よりも厳密に低い。
【0039】
本発明は、例えば、モリブデン、バナジウムまたはタンタルなどのチタンの溶融温度よりも高い溶融温度を有する元素を含むチタン系金属化合物にとって特に有利である。実際、例えば、モリブデン、バナジウム、タンタルなど、チタンの溶融温度よりも高い溶融温度を有する金属化合物に存在する元素は、るつぼ15に到達することができる液体金属4中に未溶融粒子を形成する傾向がある元素である。
【0040】
図2に示される第1の可能な変形例によれば、予熱装置16は、誘導予熱装置16aを備える。誘導予熱装置16aは、図2に示されるようなソレノイドによって、またはコンベヤ11に平行な誘導プレートによって形成されることができる。
【0041】
コンベヤ11との接触による原材料片3の汚染を制限することを可能にする有利な特性によれば、誘導予熱装置16aは、コンベヤ11上の前記原材料片3の浮揚を確実にするように構成される。
【0042】
温度の漸進的な上昇および原材料片の浮揚を確実にするための誘導予熱装置16aの構成は、前記誘導予熱装置16aを通過する電流の強度および周波数を適応させることによって達成される。
【0043】
図3に示される第2の変形例によれば、予熱装置16は、例えば、光源、電子ビーム発生器、プラズマトーチまたはレーザ発生器などの加熱ビームFの発生器16bを備える。
【0044】
有利には、原材料片3の予熱の効率を改善するために、予熱装置は、例えばカメラなどの画像取得装置16cと、例えばプロセッサおよび、画像処理プログラムが記録されるメモリなどの画像解析装置16dとを備える。画像取得装置16cは、加熱ビームFの発生器16bによる原材料片3の予熱画像を取得するように構成される。
【0045】
画像取得装置16cはまた、取得された画像を画像解析装置16dに送信するように構成される。画像解析装置16dは、画像取得装置16cによって送信された画像を解析し、加熱ビームFが実際に原材料片3に向けられ、直接コンベヤ11に向かって、前記原材料片3の隣に向けられないことを確認することによって、加熱ビームFの発生器16bの向きを制御するように構成された部分のためのものである。
【0046】
画像分析装置16dが、加熱ビームFが正しく向けられていないことを検出すると、前記画像解析装置16dは、オペレータまたは自動装置が加熱ビームFの発生器16bの向きを修正するように警告を発することができる。画像解析装置16dはまた、加熱ビームFが正しく向けられていないことを前記画像解析装置16dが検出すると、前記画像解析装置16dが加熱ビームFの前記発生器16bの向きを自動的に修正するように、加熱ビームFの発生器16bの向きを制御するように構成されることができる。
【0047】
チタン系金属化合物から作製されたインゴット2を製造するシステム1は、図4に示される製造方法を実装するように構成される。
【0048】
図4に示されるように、インゴット2を製造する方法は、以下のステップを備える:
-E1:原材料片3を提供する。このステップE1は、コンベヤ11を用いて行われる。
-E2:前記原材料片3の液相線温度の75%以上であり、前記原材料片3の液相線温度よりも厳密に低い予熱温度によって原材料片3を予熱する。この予熱ステップE2は、予熱装置16を用いて行われる。
-E3:少なくとも1つのたらいにおいて原材料片3を液体金属4に溶融する。この溶融ステップは、予熱ステップE2の後に行われる。この溶融ステップE3は、加熱手段14を用いて行われる。
-E4:前記少なくとも1つのたらい内の液体金属4を溶融状態に保持する。溶融状態を保持するこのステップは、液体金属4を所望の冶金学的状態に置くことを可能にし、さらに、未溶融金属粒子の良好な溶解を確実にすることを可能にする。溶融状態を保持するこのステップE4は、加熱手段14を用いて行われる。
-E5:少なくとも1つのたらいからるつぼ15へのオーバーフローによって前記少なくとも1つのたらいから前記るつぼ15へと液体金属4を注ぐ。
-E6:るつぼ15内の液体金属4の冷却によってインゴット2を形成する。
【0049】
図1に示されるシステム1の実施形態では、本方法は、図5に示されるように、以下のステップを備える:
-E31:第1のたらい12において原材料片3を液体金属4に溶融する。第1のたらい12において溶融するこのステップE31は、少なくとも1つのたらいにおいて溶融するステップE3の変形例である。
-E41:第1のたらい12内の液体金属4を溶融状態に保持する。第1のたらい12において溶融状態を保持するこのステップE41は、少なくとも1つのたらいにおいて溶融状態を保持するステップE4の変形例である。
-E5’:第1のたらい12から第2のたらい13へのオーバーフローによって前記第1のたらい12から前記第2のたらい13へと液体金属4を注ぐ。
-E42:第2のたらい13内の液体金属4を溶融状態に保持する。第2のたらい13において溶融状態を保持するこのステップE42は、少なくとも1つのたらいにおいて溶融状態を保持するステップE4の変形例である。
-E51:第2のたらい13からるつぼ15へのオーバーフローによって前記第2のたらい13から前記るつぼ15へと液体金属4を注ぐ。第2のたらい13からるつぼ15へのオーバーフローによって注ぐこのステップE51は、少なくとも1つのたらいからのオーバーフローによってるつぼ15に注ぐステップE5の変形例である。
【0050】
さらにまた、原材料片3の予熱が、加熱ビームFの発生器16bを用いて行われる場合、チタン系金属化合物から作製されたインゴット2の製造方法は、原材料片3を予熱するステップE2の間に行われる加熱ビームFの向きを制御するステップを備えることができる。加熱ビームFの向きを制御するこのステップは、画像取得装置16cによって取得された画像から画像解析装置16dによって行われる。
図1
図2
図3
図4
図5