(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】カテキン抱合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 311/62 20060101AFI20231107BHJP
C07H 17/065 20060101ALI20231107BHJP
C07F 7/18 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
C07D311/62
C07H17/065
C07F7/18 S CSP
C07F7/18 A
(21)【出願番号】P 2021092256
(22)【出願日】2021-06-01
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩井 隆太
(72)【発明者】
【氏名】岩下 真純
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 浩二郎
【審査官】長谷川 莉慧霞
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104327034(CN,A)
【文献】特開2009-007272(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111233810(CN,A)
【文献】DOCAMPO-PALACIOS, Maite L. et al.,Efficient Chemical Synthesis of (Epi)catechin Glucuronides: Brain-Targeted Metabolites for Treatment,ACS Omega,2020年11月12日,Volume 5, Issue 46,pp. 30095-30110
【文献】VAN DYK, Martha S. et al.,Selective O-methylation of polyhydroxyflavan-3-ols via benzyl carbonates,Tetrahedron Letters,1990年,Volume 31, Issue 18,pp. 2643-2646
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C07F
C07H
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化1】
で表されるカテキン化合物の3′位又は4′位の水酸基をベンジルオキシカルボニル化して下記式(II):
【化2】
で表される化合物とし、塩基の存在下tert-ブチルジメチルシリル化剤を反応させて、下記式(III):
【化3】
〔式中、R
1a
及びR
2a
はいずれか一方が水素原子で他方がTBS基を示す。〕
で表されるシリル化カテキン誘導体とし、次いで、その水酸基をベンジルオキシカルボニル化して、下記式(IV):
【化4】
〔式中、R
1b及びR
2bはいずれか一方がCbz基で他方がTBS基を示す。〕
で表されるシリル化カテキン保護誘導体とし、次いで、TBS基を脱離して下記式(V):
【化5】
〔式中、R
1c及びR
2cはいずれか一方がCbz基で他方が水素原子を示す。〕
で表される化合物とし、次いで、硫酸化、メチル化、グルクロン酸化及びグルコシル化から選ばれる抱合反応に付し、続いて保護基を脱離する、下記式(VI):
【化6】
〔式中、R
1d及びR
2dはいずれか一方が水素原子で他方がメチル基、グルクロノシル基、グルコシル基又は-SO
3M(ここで、Mは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子又はアンモニウムを示す。〕
で表されるカテキン抱合体の製造方法。
【請求項2】
下
記一般式(IV)で表されるシリル化カテキン保護誘導体。
【化7】
〔式中
、R
1b及びR
2bはいずれか一方がCbz基で他方がTBS基を示す。〕
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカテキン抱合体の製造方法及びその製造中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
茶葉に含まれるカテキン類は、コレステロール上昇抑制作用、体脂肪燃焼作用等、様々な優れた生理活性機能を有することが知られている。
【0003】
体内に吸収されたカテキン類は、遊離の状態の他、グルクロン酸抱合体、硫酸抱合体、メチル抱合体等の抱合体として存在することが知られている。したがって、斯かる抱合体の体内動態や生物学的活性を検証することはカテキン類の有用性を探る上でも重要である。しかしながら、斯かる代謝物を血液や尿等の体液から直接単離することによっては当該化合物を十分な量で得ることは困難であり、それらを化学的に合成することが求められる。
【0004】
カテキン又はエピカテキンの抱合体を化学的に合成する手法としては、カテキン類を過剰量の抱合試薬で非選択的に処理し、得られた生成物を分離する方法の他、安価なバルク出発材料を使用し、カップリングによってカテキン骨格を構築する全合成法(例えば、非特許文献1、特許文献1)や、カテキン又はエピカテキンを出発原料としてフェノール基水酸基を選択的に保護し、特定部位を抱合化する半合成法が存在する。全合成法では合成工程数が長いことに加え、不斉中心の構築も必要になるという課題があり、半合成法では水酸基の選択的保護及び脱保護が課題になる。
例えば、非特許文献2、3や特許文献2には、カテキンA環の水酸基をメチル基もしくはアシル基で保護することによりカテキンA環を修飾する方法が開示されている。しかしながら、これらのA環修飾法は、A環のいずれか一方の水酸基の選択的保護に適するとは云えず、また脱保護する際の選択性も良いとは云えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2014-522870号公報
【文献】特開2019-34944号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Tetrahedron Letters 2012, 53, 1501-1503
【文献】J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1, 2002, 6, 821.
【文献】Tetrahedron Letters 1990, 31, 2643-2646
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、半合成法により、効率良くカテキン抱合体を製造する方法、及びその製造中間体を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、カテキンやエピカテキンカテキン等のカテキン化合物からカテキン抱合体を化学合成すべく検討したところ、以下に示すように、B環のフェノール性水酸基をベンジルオキシカルボニル基(Cbz)で保護した後に、tert-ブチルジメチルシリル(TBS)化剤を反応させると、A環のフェノール性水酸基のいずれか一方のみをTBS化することができ、斯かるシリル化カテキン誘導体(III)を経由して抱合反応を用いることにより、カテキン化合物の5位又は7位の水酸基を効率よく抱合化できることを見出した。
【0009】
【0010】
〔式中、R1a及びR2aはいずれか一方が水素原子で他方がTBS基を示し、R1b及びR2bはいずれか一方がCbz基で他方がTBS基を示し、R1c及びR2cはいずれか一方がCbz基で他方が水素原子を示し、R1d及びR2dはいずれか一方が水素原子で他方がメチル基、グルクロノシル基、グルコシル基又は-SO3M(ここで、Mは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子又はアンモニウムを示す)を示す。また、R1b及びR2bはR1a及びR2aに、R1c及びR2cはR1b及びR2bに、R1d及びR2dはR1c及びR2cに、それぞれ対応する。〕
【0011】
すなわち、本発明は、以下の1)~3)に係るものである。
1)上記式(I)で表されるカテキン化合物の3′位又は4′位の水酸基をCbz化して式(II)で表される化合物とし、次いで塩基の存在下TBS化剤を反応させる、式(III)で表されるシリル化カテキン誘導体の製造方法。
2)1)の方法により得られた式(III)で表されるシリル化カテキン誘導体の水酸基をCbz化して式(IV)で表されるシリル化カテキン保護誘導体とし、次いで、TBS基を脱離して式(V)で表される化合物とし、次いで、硫酸化、メチル化、グルクロン酸化及びグルコシル化から選ばれる抱合反応に付し、続いて保護基を脱離する、式(VI)で表されるカテキン抱合体の製造方法。
3)上記一般式(III)で表されるシリル化カテキン誘導体又は一般式(IV)で表されるシリル化カテキン保護誘導体。
【発明の効果】
【0012】
本発明のカテキン抱合体及びその製造中間体を簡易に効率よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明のカテキン抱合体の製造法について、各工程ごとに説明する。
本発明のカテキン抱合体の製造方法において、出発原料として用いられる下記式(I):
【0014】
【化2】
で表される化合物には、フラバノールの2位及び3位の不斉炭素原子に関する立体異性体(鏡像異性体、ジアステレオ異性体)の全てが包含される。すなわち、式(I)で表される化合物には、(+)-カテキン(2R,3S)、(-)-カテキン(2S,3R)、(+)-エピカテキン(2S,3S)、(-)-エピカテキン(2R,3R)が包含され、本発明においてはこれらを纏めてカテキン化合物(I)と称する。
また、慣例に従い、フラバノール骨格の二つのベンゼン環をA環及びB環(カテコール部分)とし、両者を結ぶ3つの炭素原子と酸素原子から構成される環をC環と呼ぶ。
【0015】
【0016】
本工程は、カテキン化合物(I)の3´位又は4´位の水酸基をベンジルオキシカルボニル(「Cbz」と略記する)化する工程である。
【0017】
本工程におけるCbz化は、現在公知のあらゆる方法を採用することができる。
Cbz化試薬としては、例えば、クロロギ酸ベンジル(塩化ベンジルオキシカルボニル(Z-Cl))を用いるSchotten-Baumann法のほか、p-ニトロフェニルエステル(Z-ONp)、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(Z-ONSu)を挙げることができるが、好ましくはクロロギ酸ベンジルである。
Cbz化試薬の使用量は、化合物(I)1モルに対して、Cbz化試薬の使用量は、収率を向上する点から通常1.5モル以上、好ましくは1.7モル以上、より好ましくは1.9モル以上、さらに好ましくは2.0モル以上である。また、Cbz化試薬の使用量は、B環の水酸基を優先的にCbz化する点から、化合物(I)1モルに対して、、通常2.5モル以下、好ましくは2.4モル以下、より好ましくは2.2モル以下、さらに好ましくは2.1モル以下である。さらに、Cbz化試薬の使用量は、化合物(I)1モルに対して、通常1.5~2.5モル、好ましくは1.7~2.4モル、さらに好ましくは1.9~2.2モル、さらに好ましくは2.0~2.1モルである。
【0018】
反応溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム等の不活性ハロゲン化炭化水素系溶媒;トルエン等の不活性炭化水素系溶媒;エーテル、テトラヒドロフラン等の不活性エーテル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド類;アセトニトリルのようなニトリル類等を挙げることができる。
【0019】
反応は、塩基の存在下に行われ、用いられる塩基としては、トリアルキルアミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン等)、ピリジン、キノリン、ピペリジン、イミダゾール、ピコリン、4-ジメチルアミノピリジン、N,N-ジメチルアニリン、N-メチルモルホリン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)等の有機塩基、炭酸カリウム等の無機塩基等が挙げられる。
塩基の使用量は、化合物(I)1モルに対して、通常1.5~2.5モル、好ましくは1.7~2.4モル、さらに好ましくは1.90~2.2モル、さらに好ましくは2.00~2.10モルである。
【0020】
反応温度としては、-20~60℃の範囲であり、0℃~室温の範囲が好ましい。
反応時間は、通常0.5~5時間程度であり、1~2時間程度が好ましい。
【0021】
【0022】
〔式中、R1a及びR2aはいずれか一方が水素原子で他方がTBS基を示す。〕
【0023】
続いて、上記工程で得られた化合物(II)のA環のフェノール性水酸基をtert-ブチルジメチルシリル(「TBS」と略記する)化し、シリル化カテキン誘導体(III)を得る。当該誘導体(III)は、文献未記載の新規化合物である。
TBS化は、化合物(II)を塩基の存在下でTBS化剤と反応させることにより行われる。
【0024】
溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさないものであればよく、例えば、非プロトン性極性溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、或いはこれらの混合溶媒等が挙げられる。非プロトン性極性溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられ、ハロゲン化炭化水素系溶媒としては、例えばジクロロメタン等が挙げられる。より好ましくはN,N-ジメチルホルムアミド、ジクロロメタンである。
【0025】
塩基としては、例えば、トリアルキルアミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン等)、ピリジン、キノリン、ピペリジン、イミダゾール、ピコリン、4-ジメチルアミノピリジン、N,N-ジメチルアニリン、N-メチルモルホリン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)等の有機塩基が挙げられ、イミダゾール、ピリジン等が挙げられ、好ましくはトリアルキルアミン、より好ましくはトリエチルアミンが挙げられる。
【0026】
塩基の使用量は、化合物(II)1モルに対して、通常0.5~2.4モル、好ましくは0.8~2.1モル、さらに好ましくは1.2~1.7モルである。
【0027】
TBS化剤としては、例えばtert-ブチルジメチルシリルクロリド(TBS-Cl)、tert-ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート(TBS-OTf)等が挙げられるが、tert-ブチルジメチルシリルクロリドを用いるのが好ましい。
TBS化剤の使用量は、反応効率の点から、化合物(II)1モルに対して、0.5モル以上、好ましくは1モル以上、さらに好ましくは2モル以上、さらに好ましくは2.5モル以上である。また、TBS化剤の使用量は、反応精度の点から、化合物(II)1モルに対して、7モル以下、好ましくは5モル以下、さらに好ましくは4モル以下、さらに好ましくは3.5モル以下である。TBS化剤の使用量は、A環のフェノール性水酸基のいずれか一方をTBS化する点から、化合物(II)1モルに対して、通常0.5~7モル、好ましくは1~5モル、さらに好ましくは2~4モル、さらに好ましくは2.5~3.5モルである。
【0028】
反応温度は特に限定されず、通常、冷却下、室温下及び加熱下のいずれでも反応が行われる。好ましくは0~60℃、さらに好ましくは10~40℃、さらに好ましくは20~30℃程度の温度条件下、2~3時間、好ましくは0.5~1.5時間反応させるのがよい。
【0029】
得られたシリル化カテキン誘導体(III)は、オクタデシルシリル化シリカゲル(ODS)等を充填したカラムを用いた分取HPLCにより、5位TBS化体と7位TBS化体を分離することができる。
【0030】
【0031】
〔式中、R1a及びR2aはいずれか一方が水素原子で他方がTBS基を示し、R1b及びR2bはいずれか一方がCbz基で他方がTBS基を示し、R1b及びR2bはR1a及びR2aにそれぞれ対応する。〕
【0032】
続いて、上記工程で得られたシリル化カテキン誘導体(III)の残余の水酸基をCbz化し、シリル化カテキン保護誘導体(IV)を得る。当該誘導体(IV)も文献未記載の新規化合物である。
Cbz化は、工程-1で示した方法と同様の方法を採用することができる。
【0033】
【0034】
〔式中、R1b及びR2bはいずれか一方がCbz基で他方がTBS基を示し、R1c及びR2cはいずれか一方がCbz基で他方が水素原子を示し、R1c及びR2cはR1b及びR2bにそれぞれ対応する。〕
【0035】
上記工程で得られたシリル化カテキン保護誘導体(IV)のTBS基を脱離し、化合物(V)を得る。
TBS基の脱離は、公知の方法によって行うことができ、例えば有機溶媒中でフッ化物の塩、又はフッ化水素の付加体を作用させる方法が汎用される。
フッ化物の塩としては、例えばフッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(TBAF)、ジフルオロトリメチルケイ酸トリス(ジメチルアミノ)スルホニウム(TASF)等が挙げられ、フッ化水素の付加体としては、例えばフッ化水素ピリジン、フッ化アンモニウム等が挙げられる。
【0036】
フッ化物の塩又はフッ化水素付加体の使用量は、化合物(IV)1モルに対して、好ましくは0.5~5モル、より好ましくは1~3モル、より好ましくは1.5~2.5モルである。
【0037】
この反応で使用される溶媒としては、例えば、テトラヒドロフランや1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、クロロホルムやジクロロメタンや1、1-ジクロロエタンやクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、アセトンやアセトニトリルやN,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒が例示される。
【0038】
フッ化物の塩を用いた反応は、化合物(IV)とフッ化物の塩を溶媒中で攪拌し、0~40℃、好ましくは20~30℃で、1~60分間、好ましくは5~20分間反応させるのがよい。
【0039】
【0040】
〔式中、R1c及びR2cはいずれか一方がCbz基で他方が水素原子を示し、R1d及びR2dはいずれか一方が水素原子で他方がメチル基、グルクロノシル基、グルコシル基又は-SO3M(ここで、Mは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子又はアンモニウムを示す)を示し、R1d及びR2dはR1c及びR2cにそれぞれ対応する。〕
【0041】
化合物(V)の抱合体化は、硫酸化、メチル化、グルクロン酸化又はグルコシル化のいずれかであり、化合物(V)に対して、公知の硫酸供与体、メチル供与体、グルクロン酸供与体又はグルコース供与体を反応させることにより行われる。
硫酸供与体としては、例えばネオペンチルクロロスルファート、トリクロロエチルクロロスルファート、2,2,2-トリクロロエトキシ-スルフリル-1,2-ジメチルイミダゾリウムトリフレート(2,2,2-trichloroethoxy-sulfuryl-1,2-dimethylimidazolium triflate;SDIS)等が挙げられる。
グルクロン酸供与体としては、2,3,4-トリ-O-アセチル-α-D-メチルグルクロノピラノシル-1-(N-フェニル)-2,2,2-トリフルオロアセトイミダート、2,3,4-トリ-O-アセチル-α-D-メチルグルコピラノシル-1-(N-4-メトキシフェニル)-2,2,2-トリフルオロアセトイミダート、2,3,4-トリ-O-アセチル-α-D-メチルグルクロノピラノシル-1-O-(2,2,2-トリクロロアセトイミダート)、アセトブロモ-α-D-グルクロン酸メチルエステル等が挙げられる。
グルコース供与体としては、2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-α-D-グルコピラノシル-1-(N-フェニル)-2,2,2-トリフルオロアセトイミダート、2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-α-D-グルクロピラノシル-1-O-(2,2,2-トリクロロアセトイミダート)、α-アセトブロモグルコース等が挙げられる。
メチル供与としては、例えば、ヨウ化メチル、ジメチル硫酸、p-トルエンスルホン酸メチルエステル、メタンスルホン酸メチルエステル等のメチル化剤が挙げられる。
【0042】
例えば、硫酸化は、硫酸供与体としてSDISを用いる方法が好ましく、エーテル系、塩素系、非プロトン性又はその混合溶媒中、塩基の存在下、カテキン保護誘導体(V)とSDISを撹拌することにより行われる。塩基としては、トリエチルアミン、N、N―ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、イミダゾール、キノリン、ピコリン、1-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、4-ジメチルアミノピリジン、N,N-ジメチルアニリン、N-メチルモルホリン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)等の3級アミンが挙げられ、好ましくは1,2-ジメチルイミダゾールが挙げられる。
反応温度は、通常23~27℃程度であり、反応時間は、通常1~12時間程度である。
【0043】
グルクロン酸化は、グルクロン酸供与体として2,3,4-トリ-O-アセチル-1-O-(トリクロロアセトイミドイル)-α-D-グルクロン酸メチルを用いる方法が好ましく、エーテル系、塩素系、非プロトン性又はその混合溶媒中、ルイス酸とモレキュラーシーブス4Aの存在下、カテキン保護誘導体(V)と2,3,4-トリ-O-アセチル-1-O-(トリクロロアセトイミドイル)-α-D-グルクロン酸メチルを撹拌することにより行われる。ルイス酸としては、塩化アルミニウム(III)、ジエチルアルミニウムクロリド、塩化ニッケル(II)(6水和物)、塩化スズ(IV)(5水和物)、塩化チタン(IV)、塩化亜鉛、トリフルオロボラン-エーテル錯体が挙げられ、好ましくはトリフルオロボラン-エーテル錯体が挙げられる。反応温度は、通常23~27℃程度であり、反応時間は、通常1~24時間程度である。
【0044】
グルコシル化は、グルコシル供与体として2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノシル2,2,2-トリクロロアセトイミダートを用いる方法が好ましく、エーテル系、塩素系、非プロトン性又はその混合溶媒中、ルイス酸とモレキュラーシーブス4Aの存在下、カテキン保護誘導体(V)と2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノシル2,2,2-トリクロロアセトイミダートを撹拌することにより行われる。ルイス酸としては、塩化アルミニウム(III)、ジエチルアルミニウムクロリド、塩化ニッケル(II)(6水和物)、塩化スズ(IV)(5水和物)、塩化チタン(IV)、塩化亜鉛、トリフルオロボラン-エーテル錯体が挙げられ、好ましくはトリフルオロボラン-エーテル錯体が挙げられる。反応温度は、通常23~27℃程度であり、反応時間は、通常1~24時間程度である。
【0045】
メチル化は、例えば非プロトン性極性溶媒中、0℃~室温で化合物(V)とメチル化剤及び塩基とを反応させることにより行うことができる。
ここで、メチル化剤としては、ヨードメタン、硫酸ジメチル、トリフルオロメタンスルホン酸メチル、ジアゾメタン、トリメチルシリルジアゾメタン等を用いるのが好ましく、より好ましくはヨードメタン、硫酸ジメチル、トリフルオロメタンスルホン酸メチルである。非プロトン性極性溶媒とは、N、N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドもしくはヘキサメチルリン酸トリアミド、又はこれらの混合物及びこれらと不活性溶媒(例えばテトラヒドロフラン、1.2-ジメトキシエタン等)との混合物が挙げられる。
塩基としては、例えばナトリウム、カリウムのようなアルカリ金属;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム第3級ブトキシドのようなアルカリ金属アルコキシド;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムのような炭酸塩;重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウムのような重炭酸塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのような金属水酸化物;水素化ナトリウム、水素化カリウムのような金属水素化物等が使用できる。
【0046】
斯くして得られる、カテキン保護誘導体(V)と硫酸供与体、メチル供与体、グルクロン酸供与体又はグルコース供与体との反応生成物については、必要に応じて、各供与体に由来するエステル残基等の保護基を脱離すること、併せてB環及びC環のCbz基を脱離することにより、カテキン抱合体(VI)を得る。
【0047】
エステル残基等の保護基の脱離手段としては、例えば加水分解反応が挙げられる。加水分解反応は、酸又は塩基の存在下、反応生成物と水とを適宜溶媒中で接触させることにより実施することができる。ここで、使用可能な酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸等の無機酸や、酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、p-トルエンスルホン酸等の有機酸が挙げられる。塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム等の金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩、更には酢酸ナトリウム等が挙げられる。
溶媒としては、例えば、エタノール、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの水混和性有機溶媒が水と共に用いられる。
反応は、通常、約0~100℃、好ましくは室温~50℃で、0.5~3時間、好ましくは0.5~2時間行われる。
【0048】
また、B環及びC環のCbz基の脱離手段としては、水素化触媒存在下で加水素分解することにより、行うことができる。
【0049】
反応は、水素源(水素、ギ酸又はギ酸アンモニウム等のギ酸類等)の存在下において、適当な溶媒中、水素化触媒の存在下で、カテキン保護誘導体(V)と硫酸供与体、メチル供与体、グルクロン酸供与体又はグルコース供与体との反応生成物を撹拌することにより行われる。
溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、ギ酸、酢酸等の酸性溶媒及びこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0050】
水素化触媒としては、水酸化パラジウム(II)/炭素(Pd(OH)2/C)、パラジウム/炭素(Pd/C)等のパラジウム触媒、ラネーニッケル等の水素担持金属触媒等が挙げられる。
【0051】
水素化触媒の使用量は、化合物(VI)の仕込質量に対して、通常1~300質量%、好ましくは5~200質量%、さらに好ましくは10~150質量%、さらに好ましくは15~100質量%、さらに好ましくは20~50質量%である。
【0052】
反応温度は、通常23~27℃程度であり、反応時間は、通常6~24時間程度である。
【0053】
尚、本発明の各反応における目的物の単離は、必要に応じて、有機合成化学で常用される精製法、例えば濾過、洗浄、乾燥、再結晶、各種クロマトグラフィー、蒸留等により行うことができる。
【実施例】
【0054】
実施例1 硫酸抱合体の製造
(1)化合物6の合成
【0055】
【0056】
アルゴン雰囲気下、500mL丸底フラスコに化合物1(5g,17mmol)をとり、脱水アセトン(167mL)を加え撹拌し、澄明な溶液を得た。続いて、トリエチルアミン(4.8mL,34mmol)とクロロギ酸ベンジル(4.8mL,34 mmol)を氷浴で冷却下、順次加え、1時間撹拌した。反応後、濾過し、アセトン(80mL)で洗浄、得られた有機層をエバポレーターにて溶媒を減圧蒸留した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出溶媒:クロロホルム-メタノール(20:1,v/v))により精製し、白いアモルファスとして化合物6(7.5g, 13mmol, 80%)を得た。
【0057】
1H-NMR(600MHz,acetone-d6)δ7.56(d,J=2.0Hz,1H),7.50(dd,J=8.3,1.8Hz,1H),7.46-7.44(m,4H),7.41-7.36(m,7H),6.04(d,J=2.3Hz,1H),5.95(d,J=2.3Hz,1H),5.27(s,2H),5.26(s,2H),5.07-5.07(m,1H),4.32-4.32(m,1H),2.91(dd,J=17,4.5,Hz,1H),2.79(dd,J=16.4,2.5Hz,1H)
【0058】
13C-NMR(150MHz,acetone-d6)δ157.64,157.62,156.66,153.46,153.40,142.97,142.61,140.20,136.14,129.44,129.41,129.18,126.27,123.37,122.65,99.59,96.38,95.68,79.18,78.72,71.12,66.40,29.12
【0059】
(2) (4-((2′R,3′R)-5′-((tert-Butyldimethylsilyl)oxy)-3′,7′-dihydroxychroman-2′-yl)-1,2-phenylene)dibenzyl biscarbonate(化合物7)及び(4-((2′R,3′R)-7′-((tert-butyldimethylsilyl)oxy)-3′,5′-dihydroxychroman-2′-yl)-1,2-phenylene)dibenzyl biscarbonate(化合物8)の合成
【0060】
【0061】
アルゴン雰囲気下、20mL丸底フラスコに化合物6(100mg,0.18mmol)とをとり、脱水ジクロロメタン(4mL)を加え撹拌し、澄明な溶液を得た。続いて、トリエチルアミン(38μL,0.27mmol)とt-ブチルジメチルシリルクロリド(84mg,0.55mmol)を室温で順次加え、1時間撹拌した。反応後、酢酸エチル(10mL)で希釈した後、水を加えることで反応を停止した。引き続き、酢酸エチルにて3回抽出、得られた有機層を飽和食塩水により洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、エバポレーターにて溶媒を減圧蒸留した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン-酢酸エチル(5:2,v/v))により精製し、白いアモルファスとして化合物7(76mg,0.11mmol,61%)と化合物8(29mg,0.04mmol,24%)を得た。
【0062】
化合物7:
1H-NMR(600MHz,acetone-d6)δ7.54(d,J=1.8Hz,1H),7.50(dd,J=8.6,1.8Hz,1H),7.44-7.46(m,4H),7.36-7.41(m,7H),6.07(d,J=2.3Hz,1H),6.05(d,J=2.2Hz,1H),5.27(s,2H),5.26(s,2H),5.08(s,1H),4.32-4.34(m,1H),4.07(d,J=5.7Hz,1H),2.92(dd,J=16,4.4Hz,1H),2.79(dd,J=16,2.7Hz,1H),1.01(s,9H),0.24(s,6H)
【0063】
13C-NMR(150MHz,acetone-d6)δ157.47,156.79,156.01,153.46,153.41,142.99,142.65,140.08,136.14,129.45,129.42,129.19,126.29,123.40,122.65,103.60,100.22,97.43,78.75,71.13,66.35,26.13,18.82,-4.40,-4.12
【0064】
化合物8:
1H-NMR(600MHz,acetone-d6)δ7.56(d,J=1.8Hz,1H),7.51(dd,J=8.4,1.6Hz,1H),7.44-7.46(m,4H),7.36-7.41(m,7H),6.08(d,J=2.2Hz,1H),5.97(d,J=2.2Hz,1H),5.27(s,2H),5.26(s,2H),5.10(s,1H),4.34-4.37(m,1H),4.07(d,J=5.5Hz1H),2.94(dd,J=16,4.5Hz,1H),2.80-2.83(m,1H),0.97(s,9H),0.19(s,6H)
【0065】
13C-NMR(150MHz,acetone-d6)δ157.48,156.61,155.66,153.46,153.41,143.00,142.64,140.08,136.15,129.45,129.42,129.41,126.24,123.40,122.65,101.86,100.76,100.37,78.76,71.13,66.23,26.03,18.74,-4.250,-4.27
【0066】
(3) (4-((2′R,3′R)-3′,7′-Bis(((benzyloxy)carbonyl)oxy)-5′-((tert-butyldimethylsilyl)oxy)chroman-2′-yl)-1,2-phenylene)dibenzyl biscarbonate(化合物9)及び(4-((2′R,3′R)-3′,5′-Bis(((benzyloxy)carbonyl)oxy)-7′-((tert-butyldimethylsilyl)oxy)chroman-2′-yl)-1,2-phenylene)dibenzyl biscarbonate(化合物11)の合成
【0067】
【0068】
(3-1)化合物9の合成
アルゴン雰囲気下、100mL丸底フラスコに化合物7(1.8g,2.67mmol)とN,N-ジメチルアミノピリジン(0.982g,8.03mmol)をとり、脱水ジクロロメタン(27mL)を加え撹拌し、澄明な溶液を得た。続いて、トリエチルアミン(1.1mL,8.03mmol)とクロロギ酸ベンジル(1.89mL,13mmol)を氷浴で冷却下、順次加え、1時間撹拌した。反応後、酢酸エチル(54mL)で希釈した後、水を加えることで反応を停止した。引き続き、酢酸エチルにて3回抽出、得られた有機層を飽和食塩水により洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、エバポレーターにて溶媒を減圧蒸留した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン-酢酸エチル(3:1,v/v))により精製し、白いアモルファスとして化合物9(1.44g,1.52mmol,57%)を得た。
【0069】
1H-NMR(600MHz,acetone-d6)δ7.58(d,J=1.9Hz,1H),7.51(dd,J=8.7,1.9Hz,1H),7.25-7.48(m,21H),6.51(d,J=2.2Hz,1H),6.43(d,J=2.2Hz,1H),5.49-5.50(m,1H),5.42(s,1H),5.27(s,4H),5.25(s,2H),4.99(s,2H),3.17(dd,J=17,4.3Hz,1H),3.10(d,J=16Hz,1H),1.01(s,9H),0.26(s,3H),0.23(s,3H)
【0070】
13C-NMR(150MHz,acetone-d6)δ156.02,155.54,155.05,153.98,153.32,151.38,143.28,143.14,137.91,136.45,136.31,136.09,136.08,129.44,129.42,129.37,129.27,129.23,129.18,129.05,128.91,125.94,123.87,122.42,109.06,105.67,103.67,76.99,71.95,71.19,70.74,70.09,26.04,18.79,-4.20,-4.22
【0071】
(3-2)化合物11の合成
アルゴン雰囲気下、50mL丸底フラスコに化合物8(660mg,0.98mmol)とN,N-ジメチルアミノピリジン(360mg,2.94mmol)をとり、脱水ジクロロメタン(10mL)を加え撹拌し、澄明な溶液を得た。続いて、トリエチルアミン(411μL、0.98mmol)とクロロギ酸ベンジル(692μL,4.90mmol)を氷浴で冷却下、順次加え、1時間撹拌した。反応後、酢酸エチル(20mL)で希釈した後、水を加えることで反応を停止した。引き続き、酢酸エチルにて3回抽出、得られた有機層を飽和食塩水により洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、エバポレーターにて溶媒を減圧蒸留した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン-酢酸エチル(3:1,v/v))により精製し、白いアモルファスとして化合物11(678mg,0.72mmol,74%)を得た。
【0072】
1H-NMR(600MHz,acetone-d6)δ7.58(d,J=1.7Hz,1H),7.51(dd,J=8.4,1.6Hz,1H),7.25-7.48(m,21H),6.46(d,J=2.2Hz,1H),6.44(d,J=2.2Hz,1H),5.45(m,1H),5.40(s,1H),5.29(s,2H),5.28(s,2H),5.25(s,2H),4.99(s,2H),3.12(dd,J=17,4.3Hz,1H),2.94(d,J=16Hz,1H),0.99(s,9H),0.23(s,6H)
【0073】
13C-NMR(150MHz,acetone-d6)δ156.08,155.89,155.04,153.50,153.33,153.31,151.36,143.29,143.20,137.80,136.46,136.30,136.10,136.09,129.46,129.45,129.43,129.28,129.20,129.18,129.04,128.86,126.02,123.88,122.45,108.01,106.70,106.18,77.05,71.57,71.21,70.96,70.13,26.17,25.93,18.70,-439,-4.42.
【0074】
(4)化合物10及び化合物12の合成
【0075】
【0076】
(4-1)化合物10の合成
アルゴン雰囲気下、100mL丸底フラスコに化合物9(1.4g,1.48mmol)をとり、水含有テトラヒドロフラン(20mL)を加え撹拌し、澄明な溶液を得た。続いて、酢酸(430μL,7.44mmol)とフッ化テトラ-n-ブチルアンモニウムテトラヒドロフラン溶液(3mL,2.97mmol)を室温で順次加え、10分間撹拌した。反応後、酢酸エチル(40mL)で希釈した後、塩化アンモニウム水溶液を加えることで反応を停止した。引き続き、酢酸エチルにて3回抽出、得られた有機層を飽和食塩水により洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、エバポレーターにて溶媒を減圧蒸留した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン-酢酸エチル(1:1,v/v))により精製し、白いアモルファスとして化合物10(1.09g,1.32mmol,89%)を得た。
【0077】
1H-NMR(600MHz,acetone-d6)δ7.59(d,J=1.9Hz,1H),7.52(dd,J=8.6,1.8Hz,1H),7.25-7.48(m,21H),6.39(m,2H),5.49-5.50(m,1H),5.41(s,1H),5.27(s,2H),5.26(s,2H),5.25(s,2H),5.00(s,2H),3.16(dd,J=18,4.3Hz,1H),3.07(d,J=16Hz,1H)
【0078】
13C-NMR(150MHz,acetone-d6)δ157.21,156.00,155.11,154.08,153.33,151.52,143.28,143.11,138.04,136.50,136.37,136.10,129.45,129.42,129.37,129.27,129.23,129.19,129.02,128.84,125.95,123.84,122.44,105.06,101.82,101.69,76.99,72.02,71.20,70.67,70.05,26.42
【0079】
(4-2)化合物12の合成
アルゴン雰囲気下、50mL丸底フラスコに化合物11(650mg,0.69mmol)をとり、水含有テトラヒドロフラン(10mL)を加え撹拌し、澄明な溶液を得た。続いて、酢酸(200μL,3.45mmol)とフッ化テトラ-n-ブチルアンモニウムテトラヒドロフラン溶液(1.38mL,1.38mmol)を室温で順次加え、10分間撹拌した。反応後、酢酸エチル(20mL)で希釈した後、塩化アンモニウム水溶液を加えることで反応を停止した。引き続き、酢酸エチルにて3回抽出、得られた有機層を飽和食塩水により洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、エバポレーターにて溶媒を減圧蒸留した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン-酢酸エチル(2:1,v/v))により精製し、白いアモルファスとして化合物12(551mg,0.67mmol,97%)を得た。
【0080】
1H-NMR(600MHz,acetone-d6)δ7.57(d,J=1.9Hz,1H),7.51(dd,J=8.4,1.8Hz,1H),7.25-7.48(m,21H),6.40(m,2H),5.41-5.42(m,1H),5.38(s,1H),5.29(s,2H),5.27(s,2H),5.25(s,2H),4.99(s,2H),3.08(dd,J=17,4.3Hz,1H),2.90(d,J=15Hz,1H)
【0081】
13C-NMR(150MHz,acetone-d6)δ157.84,156.18,155.05,153.58,153.33,151.53,143.27,143.17,137.94,136.48,136.35,136.10,136.08,129.45,129.43,129.28,129.19,129.18,129.02,128.83,126.03,123.87,122.45,103.91,103.52,102.01,77.01,71.72,71.20,70.90,70.09,26.08
【0082】
(5)化合物13及び化合物14の合成
【0083】
【0084】
(5-1)化合物13の合成
アルゴン雰囲気下、50mL丸底フラスコに化合物10(100mg,0.12mmol)とSDIS(111mg,0.24mmol)をとり、脱水ジクロロメタン(5mL)を加え撹拌し、澄明な溶液を得た。続いて、1,2-ジメチルイミダゾール(25mg,0.24mmol)を室温で加え、5時間撹拌した。反応後、酢酸エチル(10mL)で希釈した後、水を加えることで反応を停止した。引き続き、酢酸エチルにて3回抽出、得られた有機層を飽和食塩水により洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、エバポレーターにて溶媒を減圧蒸留した。得られた残渣を分取薄層クロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン-酢酸エチル(3:1,v/v))により精製し、白いアモルファスとして化合物13(82mg,0.08mmol,66%)を得た。
【0085】
1H-NMR(600MHz,acetone-d6)δ7.59(d,J=1.8Hz,1H),7.53(dd,J=8.5,1.9Hz,1H),7.24-7.48(m,21H),7.13(d,J=2.2Hz,1H),7.00(d,J=2.2Hz,1H),5.59(m,2H),5.25-5.30(m,8H),4.99(m,2H),3.45(dd,J=17,4.1Hz,1H),3.40(d,J=17Hz,1H)
【0086】
13C-NMR(150MHz,acetone-d6)δ156.44,154.88,153.72,153.32,153.30,151.31,149.45,143.35,143.32,137.23,136.37,136.10,136.08,136.07,129.51,129.47,129.36,129.29,129.21,129.08,128.88,126.00,123.99,122.46,111.82,110.36,108.72,93.64,81.65,77.47,71.23,71.18,70.82,70.26,26.71
【0087】
(5-2)化合物14の合成
アルゴン雰囲気下、50mL丸底フラスコに化合物12(420mg,0.50mmol)とSDIS(463mg,1.01mmol)をとり、脱水ジクロロメタン(21mL)を加え撹拌し、澄明な溶液を得た。続いて、1,2-ジメチルイミダゾール(98mg,1.01mmol)を室温で加え、2時間撹拌した。反応後、酢酸エチル(42mL)で希釈した後、水を加えることで反応を停止した。引き続き、酢酸エチルにて3回抽出、得られた有機層を飽和食塩水により洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、エバポレーターにて溶媒を減圧蒸留した。得られた残渣を分取薄層クロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン-酢酸エチル(2:1,v/v))により精製し、白いアモルファスとして化合物14(434mg,0.62mmol,82%)を得た。
【0088】
1H-NMR(600MHz,acetone-d6)δ7.58(d,J=1.9Hz,1H),7.52(dd,J=8.4,1.8Hz,1H),7.24-7.49(m,21H),7.14(d,J=2.3Hz,1H),7.11(d,J=2.3Hz,1H),5.51-5.53(m,1H),5.32(s,2H),5.28(s,2H),5.27(s,2H),5.26(s,2H),3.24(dd,J=17,4.1Hz,1h),3.07(d,J=16Hz,1h)
【0089】
13C-NMR(150MHz,acetone-d6)δ156.36,154.88,153.32,153.30,153.18,151.34,149.41,143.34,137.21,136.37,136.09,136.07,136.03,129.55,129.50,129.46,129.29,129.21,129.07,128.86,126.00,123.99,122.45,113.43,109.11,108.72,93.65,81.36,77.48,71.39,71.24,70.88,70.24,26.41.
【0090】
(6)(2R,3R)-2-(3′,4′-Dihydroxyphenyl)-3,7-dihydroxychroman-5-yl ammonium sulfate(化合物2)及び(2R,3R)-2-(3′,4′-Dihydroxyphenyl)-3,5-dihydroxychroman-7-yl ammonium sulfate(化合物3)の合成
【0091】
【0092】
(6-1)化合物2の合成
アルゴン雰囲気下、50mL丸底フラスコに化合物13(80mg,77μmol)とギ酸アンモニウム(49mg,0.77mmol)をとり、テトラヒドロフラン-メタノール混合液(8mL,3:1)を加え撹拌し、澄明な溶液を得た。続いて、パラジウム炭素(20mg)を室温で加え、フラスコ内を水素置換し、16時間激しく撹拌した。反応後、パラジウム炭素を濾過、テトラヒドロフラン-メタノール混合液(32mL,3:1)で洗浄、得られた有機層をエバポレーターにて溶媒を減圧蒸留した。得られた残渣を分取逆相薄層クロマトグラフィー(溶出溶媒:水-メタノール(9:1,v/v))により精製し、白色個体を得た。得られた個体を分取HPLCにより精製し、白色個体として化合物2(26mg,67μmol,87%)を得た。
【0093】
[分取条件]
分取カラム:L-columnODS,size20mmx259mm5μm
溶離液:A(10mM酢酸酸アンモニウム水溶液)、B(アセトニトリル)
流速:20mL/min
注入量:500μL
温度:40℃
検出波長:280nm
グラジエント条件B(%):10%(5分)、10→30%(8分)
【0094】
1H-NMR(600MHz,DMSO-d6)δ6.89(s,1H),6.65(s,2H),6.53(d,J=2.2Hz,1H),5.93(d,J=2.3Hz,1H),4.72(s,1H),3.97-3.99(m,1H),2.78(dd,J=16,4.4Hz,1H),2.58(dd,J=16,3.2Hz,1H)
【0095】
HRMScalcd.forC15H15O9S+[M+H]+:371.0431;found:371.0438
【0096】
(6-2)化合物3の合成
アルゴン雰囲気下、50mL丸底フラスコに化合物14(73mg,70μmol)とギ酸アンモニウム(45mg,0.70mmol)をとり、テトラヒドロフラン-メタノール混合液(8mL,3:1)を加え撹拌し、澄明な溶液を得た。続いて、パラジウム炭素(20mg)を室温で加え、フラスコ内を水素置換し、16時間激しく撹拌した。反応後、パラジウム炭素を濾過、テトラヒドロフラン-メタノール混合液(32mL,3:1)で洗浄、得られた有機層をエバポレーターにて溶媒を減圧蒸留した。得られた残渣を分取逆相薄層クロマトグラフィー(溶出溶媒:水-メタノール(9:1,v/v))により精製し、白色個体を得た。得られた個体を分取HPLCにより精製し、白色個体として化合物3(17mg,44μmol,63%)を得た。
【0097】
[分取条件]
分取カラム:L-columnODS,size20mmx259mm5μm
溶離液:A(10mM酢酸アンモニウム水溶液)、B(アセトニトリル)
流速:20mL/min
注入量:500μL
温度:40℃
検出波長:280nm
グラジエント条件B(%):10%(5分)、10→20%(12分)
【0098】
1H-NMR(600MHz,DMSO-d6)δ6.91(s,1H),6.66(s,2H),6.31(d,J=2.0Hz,1H),6.12(d,J=2.0Hz,1H),4.76(s,1H),4.0(m,1H),2.72(dd,J=16,4.3Hz,1H),2.55(dd,J=16,2.6Hz,1H)
【0099】
HRMScalcd.forC15H15O9S+[M+H]+:371.0431;found:371.0442.
【0100】
実施例2 グルクロン酸抱合体の製造
(1)化合物15及び化合物16の合成
【0101】
【0102】
(1-1)化合物15の合成
アルゴン雰囲気下、50mL丸底フラスコに化合物10(150mg,0.18mmol)、2,3,4-トリ-O-アセチル-1-O-(トリクロロアセトイミドイル)-α-D-グルクロン酸メチル(60mg,0.54mmol)、そしてモレキュラーシーブス4Å(750mg)をとり、脱水ジクロロメタン(10mL)を加え撹拌し、澄明な溶液を得た。続いて、トリフルオロボランエーテル錯体(460μL,3.63mmol)を0℃で加えた後、室温まで昇温し、16時間撹拌した。反応後、酢酸エチル(20mL)で希釈した後、水を加えることで反応を停止した。引き続き、酢酸エチルにて3回抽出、得られた有機層を飽和食塩水により洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、エバポレーターにて溶媒を減圧蒸留した。得られた残渣を分取順相薄層クロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン-酢酸エチル(2:1,v/v))により粗精製し、白いアモルファスとして混合物(103mg)を得た。
【0103】
(1-2)化合物16の合成
アルゴン雰囲気下、50mL丸底フラスコに化合物12(150mg,0.18mmol)、2,3,4-トリ-O-アセチル-1-O-(トリクロロアセトイミドイル)-α-D-グルクロン酸メチル(260mg,0.54mmol)、そしてモレキュラーシーブス4Å(750mg)をとり、脱水ジクロロメタン(10mL)を加え撹拌し、澄明な溶液を得た。続いて、トリフルオロボランエーテル錯体(460μL,3.63mmol)を0℃で加えた後、室温まで昇温し、16時間撹拌した。反応後、酢酸エチル(20mL)で希釈した後、水を加えることで反応を停止した。引き続き、酢酸エチルにて3回抽出、得られた有機層を飽和食塩水により洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、エバポレーターにて溶媒を減圧蒸留した。得られた残渣を分取順相薄層クロマトグラフィー(溶出溶媒:ヘキサン-酢酸エチル(2:1,v/v))により粗精製し、白いアモルファスとして混合物(153mg)を得た。
【0104】
(2)(2R,3R,4R,5S,6R)-6-(((2′R,3′R)-2-(3″,4″-Dihydroxyphenyl)-3′,7′-dihydroxychroman-5′-yl)oxy)-3,4,5-trihydroxytetrahydro-2H-pyran-2-carboxylic acid(化合物4)及び(2R,3R,4R,5S,6R)-6-(((2′R,3′R)-2-(3″,4″-Dihydroxyphenyl)-3′,5′-dihydroxychroman-7′-yl)oxy)-3,4,5-trihydroxytetrahydro-2H-pyran-2-carboxylic acid(化合物5)の合成
【0105】
【0106】
(2-1)化合物4の合成
アルゴン雰囲気下、20mL丸底フラスコに化合物15の合成で得られた混合物(103mg)をとり、テトラヒドロフラン-メタノール混合液(4mL,3:1)を加え撹拌し、澄明な溶液を得た。続いて、パラジウム炭素(33mg)を室温で加え、フラスコ内を水素置換し、3時間激しく撹拌した。反応後、パラジウム炭素を濾過、テトラヒドロフランーメタノール混合液(32mL,3:1)で洗浄、得られた有機層をエバポレーターにて溶媒を減圧蒸留した。引き続き、脱水メタノール(10mL)とナトリウムメトキシドメタノール溶液(397μL,1.98mmol)を氷浴で冷却下、順次加え、30分間撹拌した。撹拌後、精製水(3.97mL)を加え、さらに室温で30分間撹拌した。その後、エバポレーターにて溶媒を減圧蒸留し、得られた残渣を分取HPLCにより精製し、白色個体として化合物4(17mg,36μmol,20%(3行程収率))を得た。
【0107】
[分取条件]
分取カラム:L-columnODS,size20mmx259mm5μm
溶離液:A(0.1%ギ酸水溶液)、B(アセトニトリル)
流速:20mL/min
注入量:500μL
温度:40℃
検出波長:280nm
グラジエント条件B(%):3→10%(5分)、10%(10分)
【0108】
1H-NMR(600MHz,D2O-acetone-d6(1:9))δ7.00(d,J=1.8Hz,1H),6.78(dd,J=8.1,1.7Hz,1H),6.75(d,J=8.1Hz,1H),6.49(d,J=2.1Hz,1H),6.00(d,J=2.2Hz,1H),4.83(s,1H),4.80d,J=7.2Hz,1H),4.16(m,1H),3.70(d,J=8.5Hz,1H),3.52-3.55(m,3H),2.90(dd,J=16,3.1Hz,1H),2.84(dd,J=16,4.3Hz,1H)
【0109】
HRMScalcd.forC21H22O12Na+[M+Na]+:489.1003;found:489.1004.
【0110】
(2-2)化合物5の合成
アルゴン雰囲気下、20mLL丸底フラスコに化合物16の合成で得られた混合物(153mg)をとり、テトラヒドロフラン-メタノール混合液(4mL,3:1)を加え撹拌し、澄明な溶液を得た。続いて、パラジウム炭素(50mg)を室温で加え、フラスコ内を水素置換し、3時間激しく撹拌した。反応後、パラジウム炭素を濾過、テトラヒドロフランーメタノール混合液(32mL,3:1)で洗浄、得られた有機層をエバポレーターにて溶媒を減圧蒸留した。引き続き、脱水メタノール(10mL)とナトリウムメトキシドメタノール溶液(591μL,2.94mmol)を氷浴で冷却下、順次加え、30分間撹拌した。撹拌後、精製水(5.91mL)を加え、さらに室温で30分間撹拌した。その後、エバポレーターにて溶媒を減圧蒸留し、得られた残渣を分取HPLCにより精製し、白色個体として化合物5(10mg,21μmol,12%(3行程収率))を得た。
【0111】
[分取条件]
分取カラム:L-columnODS,size20mmx259mm5μm
溶離液:A(0.1%ギ酸水溶液)、B(アセトニトリル)
流速:20mL/min
注入量:500μL
温度:40℃
検出波長:280nm
グラジエント条件B(%):3→10%(5分)、10%(15分)
【0112】
1H-NMR(600MHz,D2O-acetone-d6(9:1))δ6.89(s,1H),6.78(m,2H),6.18(s,1H),6.16(s,1H),4.87(d,J=6.9Hz,1H),4.79(s,1H),4.18(s,1H),3.68(m,1H),3.41-3.46(m,3H),2.78(dd,J=16,3.1Hz,1H),2.64(d,J=16Hz,1H)
【0113】
HRMScalcd.forC21H22O12Na+[M+Na]+:489.1003;found:489.1020.
【0114】
比較例
本発明の工程-2において、t-ブチルジメチルシリルクロリドに代えて、表1に示す試薬を用いてA環の水酸基保護を検討したが、アリル化試薬の場合、反応性が低く目的の化合物が得られなかった。一方で、t-ブチルジメチルシリルクロリドでは、5置換体ならびに7置換体が良好な収率で得られた。
【0115】