(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】機能層の製造方法
(51)【国際特許分類】
B05D 3/00 20060101AFI20231107BHJP
B05D 3/12 20060101ALI20231107BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20231107BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20231107BHJP
B05C 5/02 20060101ALI20231107BHJP
B65H 41/00 20060101ALI20231107BHJP
B05C 13/02 20060101ALI20231107BHJP
B65H 20/02 20060101ALI20231107BHJP
B65H 20/12 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
B05D3/00 D
B05D3/12 Z
B05D7/00 A
B05D7/24 302E
B05D7/24 302Z
B05C5/02
B65H41/00 C
B05C13/02
B65H20/02
B65H20/12
(21)【出願番号】P 2021117313
(22)【出願日】2021-07-15
【審査請求日】2023-08-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西條 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】近藤 誠司
(72)【発明者】
【氏名】村上 正洋
(72)【発明者】
【氏名】内山 友成
(72)【発明者】
【氏名】山本 真士
(72)【発明者】
【氏名】久保田 大輝
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/138212(WO,A1)
【文献】特開2013-205545(JP,A)
【文献】特開2005-96218(JP,A)
【文献】特開2016-24364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00- 7/26
B05C 5/00- 5/04
7/00-21/00
B65H20/00-20/40
41/00
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺帯状の被処理材と前記被処理材の表面に貼り付けられた保護フィルムとを有する長尺帯状の原反を搬送する工程、
前記原反の搬送経路に配置された分離部材において前記保護フィルムを引き出すことにより、前記保護フィルムを前記被処理材から剥離する工程、
前記保護フィルムを剥離することによって露出した前記被処理材の表面に塗工液を塗工する工程、を有し、
制御開始時からの一定時間である第1時間の前記保護フィルムの張力の標準偏差(SD1-2)が0.01MPa以下となるように、前記保護フィルムを引き出す、機能層の製造方法。
【請求項2】
長尺帯状の被処理材と前記被処理材の表面に貼り付けられた保護フィルムとを有する長尺帯状の原反を搬送する工程、
前記原反の搬送経路に配置された分離部材において前記保護フィルムを引き出すことにより、前記保護フィルムを前記被処理材から剥離する工程、
前記保護フィルムを剥離することによって露出した前記被処理材の表面に塗工液を塗工する工程、を有し、
制御終了時までの一定時間である第2時間の前記保護フィルムの張力の標準偏差(SD2-2)が0.01MPa以下となるように、前記保護フィルムを引き出す、機能層の製造方法。
【請求項3】
長尺帯状の被処理材と前記被処理材の表面に貼り付けられた保護フィルムとを有する長尺帯状の原反を搬送する工程、
前記原反の搬送経路に配置された分離部材において前記保護フィルムを引き出すことにより、前記保護フィルムを前記被処理材から剥離する工程、
前記保護フィルムを剥離することによって露出した前記被処理材の表面に塗工液を塗工する工程、を有し、
制御開始時から一定時間である第1時間の前記保護フィルムの張力の標準偏差(SD1-2)と、制御終了時までの一定時間である第2時間の前記保護フィルムの張力の標準偏差(SD2-2)との差の絶対値が0.005MPa以下となるように、前記保護フィルムを引き出す、機能層の製造方法。
【請求項4】
前記第1時間の保護フィルムの平均張力と前記第2時間の保護フィルムの平均張力との差の絶対値が0.3MPa以下となるように、前記保護フィルムを引き出す、請求項3に記載の機能層の製造方法。
【請求項5】
前記搬送経路において、張力の変動幅が所定値以下となるように制御しながら前記原反を搬送する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の機能層の製造方法。
【請求項6】
前記保護フィルムの引き出し経路に駆動ロールが配置されており、前記保護フィルムを前記駆動ロールによって引き出す、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の機能層の製造方法。
【請求項7】
前記分離部材から前記駆動ロールまでの前記保護フィルムの長さが1m以上である、請求項6に記載の機能層の製造装置。
【請求項8】
前記分離部材と前記駆動ロールの間に、前記保護フィルムの張力を計測する張力検出器が配置されており、
前記駆動ロールが、サクションロール又はニップロールである、請求項6または7に記載の機能層の製造方法。
【請求項9】
制御中の任意の一定時間における前記保護フィルムの張力の標準偏差が0.01MPa以下となるように、前記保護フィルムを引き出す、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の機能層の製造方法。
【請求項10】
前記保護フィルムが、フィルム基材と、前記フィルム基材に設けられた接合用粘着剤層と、を有し、
前記保護フィルムの引き出し経路に、非粘着性のガイドロールが配置されている、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の機能層の製造方法。
【請求項11】
前記被処理材が、延伸フィルムであり、前記塗工液が、液晶化合物を含む、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の機能層の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺帯状の被処理材に連続的に機能層を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺帯状の被処理材上にハードコート層などの各種の機能層を形成する方法として、被処理材を搬送する過程で、被処理材の表面に塗工液(機能層を形成する溶液)を塗工することが知られている。この方法において、傷付き防止のため、保護フィルムを貼り付けた状態で被処理材を搬送する場合がある。例えば、特許文献1には、ハードコート層(機能層)を形成すべき面及びその面とは反対側の面がそれぞれ保護フィルムによって保護された長尺状のポリカーボネートフィルム(被処理材)を、繰り出し機からガイドロールを介して前記フィルムの長さ方向に搬送しながら、前記ハードコート層を形成すべき面の保護フィルムを剥離してその面を露出させ、露出した面にハードコート材を塗布して乾燥することにより、ポリカーボネートフィルムにハードコート層を形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記方法は、保護フィルムを剥離した後の長尺帯状の被処理材を搬送する過程で、その表面に塗工液を塗工することによって機能層を形成する。この方法によれば、被処理材の長手方向に連続した膜状の機能層を形成できる。しかし、その長手方向において厚みが不均等な機能層が形成されるおそれがある。特に、光学的機能を有する機能層は高い厚み精度が求められるため、機能層の製造方法の改善が必要である。
【0005】
本発明の目的は、厚みが略均一な機能層を連続的に製造できる機能層の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、厚みが不均一な機能層が形成される原因を鋭意精査した。その原因が、塗工液を塗工する際に、塗工対象である被処理材の搬送速度が変動することに起因すると推定した。この被処理材の搬送速度の変動は、保護フィルムを剥離する際の、分岐点に生じる力が被処理材の搬送方向の成分を有することに起因すると推定される。この保護フィルムの剥離時に生じた被処理材の搬送速度の変動(以下、搬送速度の変動を「速度変動」という)が塗工装置の付近に存在する被処理材に影響し、その結果、塗工液の塗工ムラ(塗工厚みの不均等)が生じると推定される。そこで、本発明者らは、被処理材の速度変動を抑制することにより、厚みが略均一な機能層を連続的に形成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
本発明の第1形態の製造方法は、長尺帯状の被処理材と前記被処理材の表面に貼り付けられた保護フィルムとを有する長尺帯状の原反を搬送する工程、前記原反の搬送経路に配置された分離部材において前記保護フィルムを引き出すことにより、前記保護フィルムを前記被処理材から剥離する工程、前記保護フィルムを剥離することによって露出した前記被処理材の表面に塗工液を塗工する工程、を有し、制御開始時からの一定時間である第1時間の前記保護フィルムの張力の標準偏差(SD1-2)が0.01MPa以下となるように、前記保護フィルムを引き出す。
本発明の第2形態の製造方法は、長尺帯状の被処理材と前記被処理材の表面に貼り付けられた保護フィルムとを有する長尺帯状の原反を搬送する工程、前記原反の搬送経路に配置された分離部材において前記保護フィルムを引き出すことにより、前記保護フィルムを前記被処理材から剥離する工程、前記保護フィルムを剥離することによって露出した前記被処理材の表面に塗工液を塗工する工程、を有し、制御終了時までの一定時間である第2時間の前記保護フィルムの張力の標準偏差(SD2-2)が0.01MPa以下となるように、前記保護フィルムを引き出す。
本発明の第3形態の製造方法は、長尺帯状の被処理材と前記被処理材の表面に貼り付けられた保護フィルムとを有する長尺帯状の原反を搬送する工程、前記原反の搬送経路に配置された分離部材において前記保護フィルムを引き出すことにより、前記保護フィルムを前記被処理材から剥離する工程、前記保護フィルムを剥離することによって露出した前記被処理材の表面に塗工液を塗工する工程、を有し、制御開始時から一定時間である第1時間の前記保護フィルムの張力の標準偏差(SD1-2)と、制御終了時までの一定時間である第2時間の前記保護フィルムの張力の標準偏差(SD2-2)との差の絶対値が0.005MPa以下となるように、前記保護フィルムを引き出す。
【0008】
本発明の好ましい製造方法は、前記搬送経路において、張力の変動幅が所定値以下となるように制御しながら前記原反を搬送する。
本発明の好ましい製造方法は、前記保護フィルムの引き出し経路に駆動ロールが配置されており、前記保護フィルムを前記駆動ロールによって引き出す。
本発明の好ましい製造方法は、前記分離部材から前記駆動ロールまでの前記保護フィルムの長さが1m以上である。
本発明の好ましい製造方法は、前記分離部材と前記駆動ロールの間に、前記保護フィルムの張力を計測する張力検出器が配置されており、前記駆動ロールが、サクションロール又はニップロールである。
本発明の好ましい製造方法は、前記第1時間の保護フィルムの平均張力と前記第2時間の保護フィルムの平均張力との差の絶対値が0.3MPa以下となるように、前記保護フィルムを引き出す。
本発明の好ましい製造方法は、制御中の任意の一定時間における前記保護フィルムの張力の標準偏差が0.01MPa以下となるように、前記保護フィルムを引き出す。
本発明の好ましい製造方法は、前記保護フィルムが、フィルム基材と、前記フィルム基材に設けられた接合用粘着剤層と、を有し、前記保護フィルムの引き出し経路に、非粘着性のガイドロールが配置されている。
本発明の好ましい製造方法は、前記被処理材が、延伸フィルムであり、前記塗工液が、液晶化合物を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、被処理材の速度変動を抑制できるので、被処理材の表面に対して塗工液の塗工ムラが生じ難く、略均一な厚みの機能層を連続的に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態の機能層の製造装置の概略側面図。
【
図3】(a)乃至(d)は、原反の層構成を示す拡大側面図。
【
図4】(a)は、非接触搬送変換部(エアーターンバー)の斜視図、(b)は、非接触搬送変換部付近を拡大した概略側面図。
【
図5】第1実施形態の分離部材(ロール)の斜視図。
【
図6】ある層構成の原反から保護フィルムを剥離している状態の拡大側面図。
【
図7】別の層構成の原反から保護フィルムを剥離している状態の拡大側面図。
【
図8】第2実施形態の機能層の製造装置の概略側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、下流側は、原反、被処理材及び保護フィルムなどの搬送に関連し、それらの搬送の先頭側を意味し、上流側は、それとは反対側を意味する。また、下限値以上上限値以下で表現される数値範囲が別個に複数記載されている場合、任意の下限値と任意の上限値を選択し、「任意の下限値以上任意の上限値以下」を設定できるものとする。
【0012】
<本発明の概要>
本発明の製造装置及び製造方法は、被処理材と保護フィルムとを有する長尺帯状の原反を搬送する過程で、保護フィルムを剥離した後、被処理材の表面に機能層を連続的に形成する。保護フィルムを剥離すると被処理材の表面が露出し、その表面に塗工液を塗工することによって、前記機能層を被処理材の表面に形成できる。保護フィルムを引き出して剥離する際には、保護フィルムの張力の変動幅が所定値以下となるように制御する。前記保護フィルムの張力の変動幅が所定値以下となるように制御しながら保護フィルムを引き出すことにより、被処理材の速度変動を抑制できる。
【0013】
<第1実施形態の製造装置>
図1は、第1実施形態の機能層の製造装置Aの概略側面図であり、
図2は、分離部材c1の周辺を紙面上側から見た平面図である。各図の太矢印は、原反1の搬送方向を示し、白抜き矢印は、保護フィルム2の引き出し方向を示し、細矢印は、各種ロールや巻取り部などの回転方向を示す。
機能層の製造装置Aは、長尺帯状の原反1を長手方向に搬送する搬送装置Bと、前記原反1の搬送経路に配置され且つ保護フィルム2を剥離する剥離装置Cと、前記剥離装置Cよりも下流側において前記原反1の搬送経路に配置され且つ被処理材3の表面に塗工液を塗工する塗工装置Dと、を有する。必要に応じて、製造装置Aは、塗工液を乾燥する乾燥処理部e1や塗工液を硬化させる硬化処理部e2などのキュアリング装置E、任意の適宜なフィルムを貼り付ける貼り合わせ部Fなどを有していてもよい。
【0014】
[原反]
前記原反1は、被処理材3と保護フィルム2を有し、必要に応じて、任意の適宜なフィルム及び/又は層を有していてもよい。前記被処理材3は、塗工液の塗工対象である。被処理材3は、長尺帯状の薄いフィルム状(ウェブ状ともいう)である。ここで、本明細書において、「長尺帯状」は、長手方向の長さが幅方向よりも十分に長い平面視略長方形状をいう。前記長手方向の長さは、例えば、幅方向の長さの5倍以上、好ましくは10倍以上である。前記幅方向は、長手方向と直交する方向である。被処理材3は、それ自体、搬送装置Bにて長手方向に搬送できるほどの機械的強度を有していてもよく、或いは、それ自体、前記機械的強度を有していなくてもよい。被処理材3が前記機械的強度を有さない場合、その被処理材3は支持フィルム(前記機械的強度を有するフィルム)に積層された状態で搬送装置Bにて搬送される。以下、説明上、前記機械的強度を有する被処理材と機械的強度を有さない被処理材を区別する必要があるとき、前者を「第1被処理材31」といい、後者を「第2被処理材32」といい、両者を含む意味の場合には単に「被処理材3」という。前記被処理材3は、2つの大面積面を有する。前記被処理材3の表面は、2つの大面積面のうちのいずれか一方であって、塗工液が塗工される面(被処理面)である。以下、前記被処理材3の表面とは反対側の面(もう1つの大面積面)を被処理材3の「反対面」と記す。
前記保護フィルム2は、被処理材3の表面の傷付きを防止するフィルムである。保護フィルム2は、剥離可能な状態で、被処理材3の表面に貼り付けられている。保護フィルム2は、少なくともフィルム基材を有する。保護フィルム2は、必要に応じて、前記フィルム基材の一方面に接合用粘着剤層を有していてもよい。また、保護フィルム2は、任意の適宜なフィルム及び/又は層を有していてもよい。
【0015】
図3に、原反1の層構成の幾つかを例示する。
図3(a)及び(b)は、第1被処理材31(搬送装置Bにて長手方向に搬送できる強度を有する被処理材3)を有する原反1の例示である。同図(a)の原反1は、紙面上側から順に、第1被処理材31と、接合用粘着剤層22及びフィルム基材21を有する保護フィルム2と、を有する。同図(b)の原反1は、紙面上側から順に、適宜なフィルム41と、第1被処理材31と、接合用粘着剤層22及びフィルム基材21を有する保護フィルム2と、を有する。これらの原反1の保護フィルム2は、前記接合用粘着剤層22を介して前記被処理材3に剥離可能に貼り付けられている。従って、保護フィルム2を引き出した際には、第1被処理材31の表面と接合用粘着剤層22との境界で剥離され、その結果、第1被処理材31の表面が露出する。なお、例えば、フィルム基材21を第1被処理材31に擬似接着させるなどの手段によって、前記保護フィルム2を剥離可能な状態で第1被処理材31の表面に直接的に貼り付けることもできる。そのような場合の保護フィルム2は、前記接合用粘着剤層を有さない(図示せず)。
【0016】
図3(c)及び(d)は、第2被処理材32(搬送装置Bにて長手方向に搬送できる強度を有さない被処理材3)を有する原反1の例示である。同図(c)の原反1は、紙面上側から順に、支持フィルム42と、第2被処理材32と、フィルム基材21を有し且つ接合用粘着剤層を有さない保護フィルム2と、を有する。同図(d)の原反1は、紙面上側から順に、適宜なフィルム41と、支持フィルム42と、第2被処理材32と、フィルム基材21を有し且つ接合用粘着剤層を有さない保護フィルム2と、を有する。保護フィルム2を引き出した際には、第2被処理材32の表面と保護フィルム2(フィルム基材21)の境界で剥離され、その結果、第2被処理材32の表面が露出する。前記支持フィルム42は、第2被処理材32を搬送装置Bにて搬送できるように、第2被処理材32をサポートするフィルムである。支持フィルム42は、搬送装置Bにて長手方向に搬送できる機械的強度を有するフィルムが用いられる。
【0017】
前記第1被処理材31としては、例えば、樹脂フィルムなどが挙げられる。材質の観点では、前記第1被処理材31は、特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、セルロースエステル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエステルカーボネート系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂などが挙げられる。好ましくは、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、セルロースエステル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエステルカーボネート系樹脂などの1種又は2種以上を含む樹脂フィルムが挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種以上併用できる。また、光学的な観点から、第1被処理材31は、光学異方性フィルムなどの光学的機能を有するフィルム、光学等方性フィルムなどでもよい。前記光学的機能を有するフィルムとしては、偏光フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルム、輝度向上フィルム、防眩フィルム、光反射フィルムなどが挙げられる。また、第1被処理材31は、配向規制力を有するフィルムでもよく、このようなフィルムとしては、所定方向に延伸された延伸フィルムなどが挙げられる。
第1被処理材31の厚みは、特に限定されず、例えば、10μm~200μmであり、好ましくは12μm~100μmである。
【0018】
前記第2被処理材32としては、例えば、粘着剤層、防眩層、反射防止層、ハードコート層などが挙げられる。第2被処理材32の厚みは、特に限定されない。第2被処理材32が粘着剤層の場合には、その厚みは、例えば、0.5μm~50μmであり、好ましくは1μm~30μmである。
【0019】
前記保護フィルム2を構成するフィルム基材21としては、例えば、樹脂フィルム、合成紙、紙などが挙げられる。中でも、フィルム基材21は、透明性に優れた樹脂フィルムであることが好ましく、さらに、透明性に優れ且つ光学等方性を有する樹脂フィルムであることがより好ましい。フィルム基材21が樹脂フィルムである場合、その材質は特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、ポリブタジエンなどのジエン系樹脂、ポリ塩化ビニルや塩化ビニル共重合体などの塩化ビニル系樹脂、ポリメチルペンテン、ポリウレタン、エチレン-酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種以上併用できる。フィルム基材21の厚みは、特に限定されず、例えば、5μm~200μmであり、好ましくは10μm~100μmである。
前記保護フィルム2が接合用粘着剤層22を有する場合、接合用粘着剤層22としては、例えば、無色透明なアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤などが挙げられる。前記接合用粘着剤層22の厚みは、特に限定されず、例えば、0.1μm~50μmであり、好ましくは1μm~30μmである。
【0020】
前記適宜なフィルム41としては、任意の適切なフィルムが用いられる。前記適宜なフィルム41は、単層構造でもよく、或いは、2層以上の複層構造であってもよい。また、適宜なフィルム41が複層構造である場合、それに任意の適切な層(例えば、接合用粘着剤層22など)が含まれていてもよい。また、前記適宜なフィルム41は、上述のような光学的機能を有するフィルムでもよく、光学等方性フィルムでもよい。
前記支持フィルム42は、機械的強度を有するフィルムであれば特に限定されない。支持フィルム42としては、例えば、樹脂フィルム、合成紙、紙などが挙げられる。支持フィルム42は、保護フィルム2として例示したような透明性に優れた樹脂フィルムを用いることが好ましい。支持フィルム42の厚みは、特に限定されず、例えば、5μm~200μmであり、好ましくは10μm~100μmである。
【0021】
[搬送装置]
図1及び
図2を参照して、搬送装置Bは、原反1を長手方向に搬送する装置である。搬送装置Bは、ロールーツーロール方式で原反1を搬送する。搬送経路中、保護フィルム2を剥離した後、及び、被処理材3の表面に機能層を形成した後のそれぞれにおいて、原反1の層構成は変化する。このように層構成が変化しても、原反1は、搬送経路の全体に亘って被処理材3を必ず含んでいる。以下、説明上、用語を区別する必要がある場合、保護フィルム2を剥離した後から機能層を形成するまでの間の原反1を「処理用原反11」といい、被処理材3の表面に機能層を形成した後の原反1を「製品原反12」といい、巻き出しから巻き取りまでの間を総称して「原反1」という。
【0022】
具体的には、搬送装置Bは、ロール状に巻かれた原反1がセットされる巻出し部b1と、製品原反12を巻き取る巻取り部b2と、前記巻出し部b1から巻取り部b2までの間において原反1を長手方向に連続して搬送する搬送部b3と、を有する。巻出し部b1から巻き出された原反1は、搬送部b3の搬送経路に従って搬送されながら、処理用原反11から製品原反12へと変化した後、巻取り部b2に巻き取られる。
原反1の搬送装置Bの前記巻出し部b1、巻取り部b2及び搬送部b3は、従来公知の機械類を採用できる。例えば、搬送装置Bの巻出し部b1は、巻出し軸を有するブレーキ付きモーターなどのアクチュエーターが用いられ、巻取り部b2は、巻取り軸を有するクラッチ付きモーターなどのアクチュエーターが用いられる。例えば、搬送装置Bの搬送部b3は、上流側のフィードロールb31、複数のガイドロールb32、下流側のフィードロールb33、及びテンションピックアップロールなどの張力検出器(図示せず)を有する。なお、搬送装置Bの搬送部b3は、図示以外のフィードロールをさらに有していてもよく、或いは、図示しないダンサーロールなどを有していてもよい。原反1の搬送装置Bは、原反1の張力の変動幅が所定値以下となるように制御しながら、原反1を長手方向に搬送する。つまり、搬送装置Bは、搬送中の原反1の張力の変動幅が小さくなるように制御している。前記張力の制御方法としては、張力検出器で計測された原反1の張力に基づいて、速度制御を行なうこと(例えば、2つのフィードロールの周速度の差を変えるなど)、又は/及び、トルク制御を行なうこと(例えば、巻出し部b1のトルクを変えるなど)などが挙げられる。
【0023】
前記搬送部b3は、必要に応じて、被処理材3を含む処理用原反11の搬送向きを変える非接触搬送変換部b34を有していてもよい。前記非接触搬送変換部b34は、剥離装置Cと塗工装置Dの間に設けられている。非接触搬送変換部b34は、保護フィルム2を剥離することによって露出した前記被処理材3の表面を異物に接触させることなく、被処理材3を含む処理用原反11の搬送向きを変える部分である。前記異物は、例えば、ガイドロールなどの機械部品類などを含む。図示例では、剥離装置Cから塗工装置Dまでの間で、処理用原反11(被処理材3)は、非接触搬送変換部b34によってへアピン状となって方向転換されている。
具体的には、分離部材c1の下流側において、表面が露出した被処理材3を含む処理用原反11は、その反対面がガイドロールb32に接して方向転換された後、その表面が非接触搬送変換部b34に接することなく方向転換される。図示例では、剥離装置Cから塗工装置Dまでの間で、処理用原反11(被処理材3)は、非接触搬送変換部b34にてへアピン状となって方向転換されている。
非接触搬送変換部b34としては、例えば、エアーターンバーを用いることができる。
図4(a)にエアーターンバーの一例を示す。非接触搬送変換部b34であるエアーターンバーは、無数の吹き出し穴b341が形成された中空状のケース体b342と、ケース体b342内にエアーを供給する供給口b343と、を有する。同図(b)の矢印で示すように、供給口b343から供給されたエアーが、吹き出し穴b341を通じてケース体b342の外面から吹き出すことにより、被処理材3の表面がエアーターンバーb34に接触することなく、被処理材3を含む処理用原反11は方向転換される。
【0024】
[剥離装置]
剥離装置Cは、長手方向に原反1を搬送している途中で、被処理材3(原反1)から保護フィルム2を剥離する装置である。保護フィルム2を剥離することによって被処理材3の表面が露出し、被処理材3の表面が露出した処理用原反11は、搬送装置Bにて長手方向に搬送される。
剥離装置Cは、支点として利用される分離部材c1と、保護フィルム2の張力の変動幅が所定値以下となるように制御しながら保護フィルム2を引き出す張力制御部c2と、ガイドロールc3と、引き出された保護フィルム2を巻き取って回収する回収部c4と、を有する。前記分離部材c1を含む剥離装置Cは、原反1の搬送経路中に配置されている。分離部材c1は、30mm以下の曲率半径を有する円弧面部c12を有し、前記円弧面部c12は、原反1の幅方向に延在されている。分離部材c1の円弧面部c12は、保護フィルム2に接して配置されている。
【0025】
本実施形態では、分離部材c1としては、半径30mm以下のロールが用いられている。
図5は、分離部材c1である半径30mm以下のロールc111の斜視図である。以下、用語上、ガイドロールなどと区別するため、分離部材c1として用いられるロールを「分離ロールc111」という。前記分離ロールc111は、例えば、円柱状部c112と、その円柱状部c112の両側に設けられた一対の軸部c113と、を有する。
図2に示すように、製造装置Aのフレームなどに固定された軸受けc114に分離ロールc111の軸部c113が取り付けられている。前記円柱状部c112は、その周面がステンレスなどの金属で構成されている円柱体、その周面がゴム製(エラストマーを含む)又は合成樹脂製で構成されている円柱体などが挙げられる。分離ロールc111は、その円柱状部c112が幅方向と平行に延在し且つ原反1の保護フィルム2に接している。なお、分離ロールc111の円柱状部c112は、(側面視で円形であるため)その周面の何れの箇所でも30mm以下の曲率半径を有する円弧面部c12を構成している。分離ロールc111の円柱状部c112の半径は、25mm以下が好ましく、さらに、20mm以下がより好ましい。前記分離ロールc111の円柱状部c112の半径の下限は、理論上、零を超えるが、現実的な数値では、1mm以上であり、好ましくは3mm以上である。
【0026】
前記分離ロールc111は、回転可能(自転可能)であってもよく、或いは、回転不能であってもよい。保護フィルム2を円滑に引き出すために、分離ロールc111は、回転可能であることが好ましい。この場合、分離ロールc111の軸部c113が軸受けc114に回転可能に支持されていてもよく、或いは、軸部c113が軸受けc114に固定され且つ円柱状部c112が前記軸部c113に回転可能に取り付けられていてもよい。
【0027】
前記張力制御部c2は、保護フィルム2の引き出し経路に配置された駆動ロールc21と、前記分離部材c1と前記駆動ロールc21の間に配置され且つ前記保護フィルム2の張力を計測する張力検出器c22と、張力検出器c22で計測された張力に基づいて保護フィルム2の張力を制御するコンピューターを含む制御部(図示せず)と、を有する。駆動ロールc21は、特に限定されず、例えば、サクションロール、ニップロールなどを用いることができる。
図1では、駆動ロールc21として、サクションロールが用いられた場合を例示している。サクションロールは、周面に無数の吸引穴が開口され、その吸引穴を通じて保護フィルム2を吸着しながら引き出すことができるロールである。なお、サクションロールやニップロールなどの駆動ロールc21は、テンションカットロールとも呼ばれる。
【0028】
張力制御部c2は、保護フィルム2の張力の変動幅が所定値以下となるように制御しながら、前記保護フィルム2を引き出す。引き出された保護フィルム2は、引き出し経路中を搬送され、最終的に回収部c4に巻き取られる。制御される前記保護フィルム2の張力は、前記分離部材c1と駆動ロールc21の間における保護フィルム2の張力である。前記分離部材c1から前記駆動ロールc21までの保護フィルム2の長さ(分離部材c1と駆動ロールc21の間のパス長)は、適宜設定できる。前記分離部材c1から前記駆動ロールc21までの間が長いほど、略均一な厚みの機能層を形成できる。従って、前記分離部材c1から前記駆動ロールc21までの保護フィルム2の長さは長いことが好ましい。具体的な数値では、前記分離部材c1から前記駆動ロールc21までの間の保護フィルム2の長さは、1m以上であり、好ましくは5m以上であり、より好ましくは10m以上である。前記長さの上限は、特にないが、現実的な数値では、例えば30m以下である。
前記保護フィルム2の張力の制御方法としては、張力検出器c22で計測された保護フィルム2の張力に基づいて、駆動ロールc21の回転速度を変化させることが挙げられる。上流側のフィードロールb31の回転速度は原反1の搬送装置Bによって制御されている。保護フィルム2の制御部(図示せず)は、計測された保護フィルム2の張力に基づいて、駆動ロールc21の回転速度を変えることにより(つまり、前記駆動ロールc21の周速度と前記上流側のフィードロールb31の周速度の差を変えることにより)、保護フィルム2の張力を変化させ、その変動幅が所定値以下となるように制御している。
なお、前記駆動ローラc21が、ニップロールである場合、その駆動ローラc21(ニップロール)が前記分離部材c1を兼ねることもできる。つまり、ニップロールの駆動ローラ又は従動ローラを前記分離部材c1として用いることができる。このように1つのニップロールを分離部材c1及び駆動ロールc21として用いる場合、前記分離部材c1から前記駆動ロールc21までの間の保護フィルム2の長さは0mとなる。
【0029】
ガイドロールc3は、分離部材c1と回収部c4の間の保護フィルム2の引き出し経路に配置されている。ガイドロールc3は、適宜な箇所に1本配置されていてもよいが、通常、適宜な箇所に2本以上配置される。後述するように、保護フィルム2が接合用粘着剤層22を有する場合、少なくとも前記接合用粘着剤層22と接するガイドロールc3は、非粘着性のガイドロールを用いることが好ましい。
図1では、ガイドロールc3のうち符号c31で示すガイドロールが接合用粘着剤層22と接する。非粘着性のガイドロールは、その周面に粘着剤が付着しない又は付着し難いロールをいう。非粘着性のガイドロールとしては、例えば、周面がシリコーンゴムによって被覆されたロール、周面がシリコーン樹脂によって被覆されたロール、周面がフッ素樹脂によって被覆されたロール、周面がサンドブラスト処理などによって粗面化されたロールなどを用いることができる。前記非粘着性のガイドロールを用いることにより、接合用粘着剤層22を有する保護フィルム2を回収部c4に巻き取る際に、その粘着剤がガイドロールに付着することを防止できる。
回収部c4は、引き出された保護フィルム2を巻き取る部分であり、例えば、巻取り軸を有するギア付きモーターなどのアクチュエーターが用いられる。
【0030】
駆動ロールc21によって保護フィルム2を引き出すことにより、原反1は、分離部材c1(分離ロールc111)の円弧面部c12の出側で、被処理材3を含む処理用原反11と保護フィルム2とに分離される。前記引き出された保護フィルム2は、円弧面部c12の周面に沿って湾曲しつつ、駆動ロールc21から回収部c4へと巻き取られる。前記処理用原反11は、搬送装置Bにて搬送される。なお、保護フィルム2の引き出し速度(回収速度)は、原反1の搬送速度と略等しい。
前記処理用原反11の搬送方向と前記保護フィルム2の引き出し方向の成す角度(この角度を「剥離角度」という)は、適宜設定される。なお、
図1に、被処理材3を含む処理用原反11の搬送方向を二点鎖線で示し、保護フィルム2の引き出し方向を一点鎖線で示し、剥離角度を符号αで示している。前記剥離角度が大きいほど、被処理材3(処理用原反11)の速度変動をより抑制できる。従って、前記剥離角度は大きいことが好ましい。具体的な数値では、前記剥離角度αの下限は、例えば、45度以上であり、好ましくは60度以上であり、より好ましくは70度以上である。前記剥離角度αの上限は、例えば、180度以下であり、好ましくは150度以下であり、より好ましくは120度以下である。前記剥離角度αは、例えば、駆動ロールc21の位置を変えることによって、調整できる(剥離角度を大きく又は小さくできる)。
図1に示す例では、剥離角度が約90度である場合を示している。また、分離部材c1と駆動ロールc21の間に、1本又は2本以上のガイドロールを配置してもよい(図示せず)。このようにガイドロールを配置した場合には、分離部材c1の近い側のガイドロールの位置を変えることによって、前記剥離角度を調整することができる。
【0031】
[塗工装置]
塗工装置Dは、露出した被処理材3の表面に塗工液を塗工する装置である。塗工装置Dは、塗工液を被処理材3の表面に塗工できるものであれば特に限定されず、例えば、ダイコータ、リップコータ、グラビアコータ、リバースコータ、バーコータ、ナイフコータなどが挙げられる。
図1では、塗工装置Dとしてスロットダイコータd1を例示している。前記スロットダイコータd1のダイリップは、被処理材3の表面に対向して配置されている。また、前記ダイリップの反対側に、処理用原反11を挟んでバックロールd2が配置されている。
【0032】
ここで、剥離装置Cから塗工装置Dまでの被処理材3(処理用原反11)の搬送長さは、適宜設定できる。なお、前記搬送長さは、パス長とも呼ばれる。前記搬送長さが長いほど、被処理材3の速度変動をより抑制できる。従って、前記搬送長さは長いことが好ましく、具体的な数値では、前記搬送長さは、1m以上であり、好ましくは5m以上であり、より好ましくは10m以上である。前記搬送長さの上限は、特にないが、現実的な数値では、例えば20m以下である。
前記被処理材3(処理用原反11)の、剥離装置Cから塗工装置Dまでの搬送長さを比較的長くすると、製造装置Aが大型化するが、上述の非接触搬送変換部b34を設けることにより、比較的長い搬送長さを確保しつつ、装置の大型化を防止できる。特に、非接触搬送変換部b34を用いることにより、前記被処理材3(処理用原反11)を剥離装置Cから塗工装置Dまで搬送する間、被処理材3の表面に異物が接触することを防止できる。このため、被処理材3の表面が傷付くことなく、その表面に塗工液を塗工して厚みが略均一な機能層を形成できる。
【0033】
[キュアリング装置]
キュアリング装置Eは、必要に応じて、塗工装置Dの下流側に配置される。
キュアリング装置Eは、塗工液を液状から固体状に変化させるために設けられる。なお、塗工液を塗工した後の処理用原反11を搬送している間に、その塗工液が自然に固体状に変化する場合には、前記キュアリング装置Eを省略してもよい。
キュアリング装置Eは、例えば、乾燥処理部e1を有する。乾燥処理部e1は、塗工液を乾燥できるものであれば特に限定されず、例えば、加熱風又は常温風などを吹き付ける送風機、遠赤ヒーターなどが用いられる。また、塗工液が紫外線硬化樹脂などの光硬化樹脂を含む場合、キュアリング装置Eは、紫外線などの光を照射する硬化処理部e2を有する。
【0034】
[貼り合わせ部]
貼り合わせ部Fは、製品原反12(機能層が形成された処理用原反11)に、保護フィルムなどの任意の適宜なフィルム43を貼り付ける部分である。
貼り合わせ部Fは、適宜なフィルム43を巻き出す供給ロールf1と、前記フィルム43を製品原反12に貼り合わせるニップロールf2と、を有する。
【0035】
<機能層の製造方法>
機能層の製造方法は、被処理材3と保護フィルム2とを有する長尺帯状の原反1を搬送する工程、前記原反1の搬送経路に配置された分離部材c1において前記保護フィルム2を引き出すことにより、前記保護フィルム2を前記被処理材3から剥離する工程、前記保護フィルム2を剥離することによって露出した前記被処理材3の表面に塗工液を塗工する工程、を有する。本発明の製造方法は、例えば、
図1に示すような製造装置Aを用いて実施される。
【0036】
[原反の搬送工程]
原反1は、巻出し部b1から巻き出され、搬送部b3によって搬送される。原反1の搬送速度は、特に限定されず、例えば、3m/分以上30m/分以下であり、好ましくは5m/分以上20m/分以下である。
原反1の張力の変動幅が所定値以下となるように制御しながら、前記原反1を搬送する。被処理材3(処理用原反11)の速度変動を抑制する観点から、原反1の張力の変動幅は、できるだけ小さいことが好ましい。前記張力の変動幅は、制御する原反1の全長の搬送時間よりも短い時間における、原反1の張力の変動幅をいう。本明細書において、「時間」は、ある時点とある時点の間の長さ(時の長さ)を意味する。前記制御する原反1の全長は、張力の制御開始時から制御終了時のまでの間で搬送される原反1の長手方向長さである。以下、「制御する原反の全長」を「原反の制御長さ」といい、「張力の制御開始時から制御終了時のまでの間」を「制御全期間」という。
【0037】
具体的な原反1の張力の変動幅の値は、例えば、所定時間内の標準偏差で表すことができる。例えば、第1時間の前記原反1の張力の標準偏差(SD1-1)が、0.04MPa以下であり、好ましくは、0.02MPa以下であり、より好ましくは、0.01MPa以下である。また、第2時間の前記原反1の張力の標準偏差(SD2-1)が、0.04MPa以下であり、好ましくは、0.02MPa以下であり、より好ましくは、0.01MPa以下である。なお、前記標準偏差(SD1-1)及び(SD2-1)のそれぞれの下限値は、理論上、零であるが、通常、零を超える。
前記第1時間は、原反1の張力の制御開始時からの一定時間を意味する。例えば、前記第1時間は、原反1の張力の制御開始時から、原反1の制御長さの2%以上5%以下の長さに相当する時間である。前記第2時間は、原反1の張力の制御終了時までの一定時間を意味する。例えば、前記第2時間は、原反1の張力の制御終了時までの、原反1の制御長さの2%以上5%以下の長さに相当する時間である。ただし、原反1の張力の制御を開始した直後はその張力値が安定しないので、前記制御開始時は、厳密な意味で開始時点ではなく、制御開始後、運転が安定した時点を意味する。
【0038】
また、原反1の張力が制御全期間において略一定となるように、その張力を制御しながら原反1を搬送する。前記張力が略一定とは、制御全期間を複数の時間に等分したとき、その複数の時間における各平均張力が、実質的に同じ値を示すことをいう。前記各平均張力が実質的に同じ値を示すとは、例えば、前記複数の時間における各平均張力のうち、最大値と最小値の差の絶対値が、0.2MPa以下、好ましくは0.09MPa以下である場合が挙げられる。例えば、前記第1時間の原反1の平均張力と前記第2時間の原反1の平均張力との差の絶対値が、0.09MPa以下、好ましくは、0.05MPa以下となるように制御されている。なお、前記絶対値の下限値は、零である。制御開始時からの一定時間である第1時間における平均張力と、制御終了時までの一定時間である第2時間における平均張力との差が、前記のように小さい値であれば、制御全期間において原反1の張力が略一定となっていると推定できる。
搬送中の原反1の単位断面積当たりの張力は、特に限定されず、例えば、0.5MPa以上2.9MPa以下の範囲内に設定され、好ましくは、0.8MPa以上2.6MPa以下の範囲内に設定される。
ここで、原反1の張力、平均張力及び張力の標準偏差の各単位「MPa」は、厚み方向に直交する原反断面の単位断面積当たりの張力を表す。
【0039】
[保護フィルムの剥離工程]
分離部材c1の出側で保護フィルム2を引き出すことにより、分離部材c1の円弧面部c12に沿って保護フィルム2が引き出される。
図6は、
図3(a)に示す層構成の原反1から保護フィルム2を前記分離部材c1において剥離している状態を示し、
図7は、
図3(c)に示す層構成の原反1から保護フィルム2を前記分離部材c1において剥離している状態を示す。
図6の原反1を搬送する場合、保護フィルム2は接合用粘着剤層22及びフィルム基材21を有する。このため、保護フィルム2を引き出すと、分離部材c1の出側において接合用粘着剤層22と被処理材3(第1被処理材31)の界面で分離される。
図7の原反1を搬送する場合、保護フィルム2は接合用粘着剤層22を有さない。このため、保護フィルム2を引き出すと、分離部材c1の出側において保護フィルム2(フィルム基材21)と被処理材3(第2被処理材32)の界面で分離される。
【0040】
上述のように、被処理材3(第1被処理材31及び第2被処理材32)は特に限定されない。例えば、第1被処理材31として、延伸フィルムなどの配向規制力を有するフィルムを用いることができる。また、第2被処理材32として、粘着剤層を用いることができる。
前記配向規制力を有するフィルムである延伸フィルムは、特に限定されず、シクロオレフィン系樹脂フィルム、セルロース系樹脂フィルム、ポリエステル、ポリアリレート、ポリカーボネートなどの主鎖にエステル結合を有するエステル系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム、スチレン系樹脂フィルムなどが挙げられる。前記延伸フィルムの延伸方法は、特に限定されず、例えば、延伸前フィルムを長手方向に一軸延伸する方法(縦一軸延伸法)、延伸前フィルムを幅方向に一軸延伸する方法(横一軸延伸法)などの一軸延伸法;延伸前フィルムを長手方向に延伸すると同時に幅方向に延伸する同時二軸延伸法、延伸前フィルムを長手方向及び幅方向の一方に延伸した後で他方に延伸する逐次二軸延伸法などの二軸延伸法;延伸前フィルムを幅方向に平行でもなく垂直でもない斜め方向に延伸する方法(斜め延伸法);などが挙げられる。延伸フィルムは、一般に、延伸方向と平行な方向に液晶化合物をホモジニアス配向させる配向規制力を有している。このような延伸フィルムの表面に液晶化合物を含む塗工液を塗工すると、液晶化合物が延伸方向と平行に配向した機能層が形成される。
前記延伸フィルムとしては、公知の又は本発明後に公知となったフィルムを用いることができる。一例を挙げると、例えば、特開2020-183980号公報に記載の延伸フィルムなどを用いることができる。前記延伸フィルムの詳細については、前記公報を参照するものとする。
【0041】
第2被処理材32である粘着剤層は、粘着性を有する透明な材料で形成されている。前記粘着剤層を形成する粘着剤ベース材料としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、及びポリエーテル系粘着剤などが挙げられる。透明性、加工性及び耐久性などの観点から、アクリル系粘着剤を用いることが好ましい。
前記粘着剤層としては、公知の又は本発明後に公知となった粘着剤層を用いることができる。一例を挙げると、例えば、特許第6194358号公報に記載のベース粘着剤区分を本発明の粘着剤層(第2被処理材32)として用いることができる。前記ベース粘着剤区分の詳細については、前記公報を参照するものとする。
【0042】
図1、
図6及び
図7を参照して、分離部材c1の円弧面部c12に沿わせて保護フィルム2を引き出す。前記保護フィルム2を引き出すと、分離部材c1の円弧面部c12の周面上の一箇所(分岐点S)で保護フィルム2と被処理材3が分離し、被処理材3の表面が露出した処理用原反11と保護フィルム2が生じる。前記処理用原反11は、搬送装置Bにて塗工装置Dへと搬送され、剥離された保護フィルム2は、分離部材c1の円弧面部c12に沿いながら引き出され、回収部c4に回収される。
【0043】
保護フィルム2の張力の変動幅が所定値以下となるように制御しながら、前記保護フィルム2を引き出す。上述のように、制御する保護フィルム2の張力は、分離部材c1から駆動ロールc21までの間における保護フィルム2の張力をいう。被処理材3(処理用原反11)の速度変動を抑制する観点から、前記保護フィルム2の張力の変動幅は、できるだけ小さいことが好ましい。前記張力の変動幅は、制御する保護フィルム2の全長の引き出し時間よりも短い時間における、保護フィルム2の張力の変動幅をいう。前記制御する保護フィルム2の全長は、張力の制御開始時から制御終了時のまでの間で引き出される保護フィルム2の長手方向長さである。以下、「制御する保護フィルムの全長」を「保護フィルムの制御長さ」といい、「張力の制御開始時から制御終了時のまでの間」を「制御全期間」という。
【0044】
具体的な保護フィルム2の張力の変動幅の値は、例えば、所定時間内の標準偏差で表すことができる。例えば、第1時間の前記保護フィルム2の張力の標準偏差(SD1-2)が、0.01MPa以下であり、好ましくは、0.008MPa以下であり、より好ましくは、0.007MPa以下である。また、第2時間の前記保護フィルム2の張力の標準偏差(SD2-2)が、0.01MPa以下であり、好ましくは、0.008MPa以下であり、より好ましくは、0.007MPa以下である。なお、前記標準偏差(SD1-2)及び(SD2-2)のそれぞれの下限値は、理論上、零であるが、通常、零を超える。
さらに、前記第1時間の保護フィルム2の張力の標準偏差(SD1-2)と、前記第2時間の保護フィルム2の張力の標準偏差(SD2-2)との差の絶対値は、例えば、0.005MPa以下であり、好ましくは0.003MPa以下である。このような差であれば、第1時間と第2時間の張力の変動幅が実質的に変わらず、安定的に保護フィルムが引き出される。
前記第1時間は、保護フィルム2の張力の制御開始時からの一定時間を意味する。例えば、前記第1時間は、保護フィルム2の張力の制御開始時から、保護フィルム2の制御長さの2%以上5%以下の長さに相当する時間である。前記第2時間は、保護フィルム2の張力の制御終了時までの一定時間を意味する。例えば、前記第2時間は、保護フィルム2の張力の制御終了時までの、保護フィルム2の制御長さの2%以上5%以下の長さに相当する時間である。ただし、保護フィルム2の張力の制御を開始した直後はその張力値が安定しないので、前記制御開始時は、厳密な意味で開始時点ではなく、制御開始後、運転が安定した時点を意味する。
【0045】
特に、保護フィルム2の張力制御中の任意の一定時間における保護フィルムの張力の標準偏差が、0.01MPa以下(好ましくは0.008MPa以下、より好ましくは0.007MPa以下)となるように、前記保護フィルム2を引き出すことがより好ましい。前記任意の一定時間は、例えば、保護フィルム2の制御長さの2%以上5%以下の長さに相当する時間であり、その時間の開始点は、保護フィルム2を制御している間であればどの時点でもよいという意味である。前記任意の一定時間は、上述の第1時間でもよく、或いは、上述の第2時間でもよく、或いは、これ以外の時間でもよい。
保護フィルム2の張力制御中の任意の一定時間における保護フィルムの張力の標準偏差が0.01MPa以下であれば、制御全般に亘る張力の変動幅が実質的に変わらず、安定的に保護フィルムが引き出される。
【0046】
また、保護フィルム2の張力が制御全期間において略一定となるように、その張力を制御しながら保護フィルム2を引き出している。前記張力が略一定とは、制御全期間を複数の時間に等分したとき、その複数の時間における各平均張力が、実質的に同じ値を示すことをいう。前記各平均張力が実質的に同じ値を示すとは、例えば、前記複数の時間における各平均張力のうち、その最大値と最小値の差の絶対値が、0.3MPa以下である場合が挙げられる。例えば、前記第1時間の保護フィルム2の平均張力と前記第2時間の保護フィルム2の平均張力との差の絶対値が、0.3MPa以下、好ましくは0.1MPa以下、より好ましくは0.05MPaとなるように制御されている。なお、前記絶対値の下限値は、零である。制御開始時からの一定時間である第1時間における平均張力と、制御終了時までの一定時間である第2時間における平均張力との差が、前記のように小さい値であれば、制御全期間において保護フィルム2の張力が略一定となっていると推定できる。
制御する保護フィルム2の単位断面積当たりの張力は、特に限定されず、例えば、0.8MPa以上3.1MPa以下の範囲内に設定され、好ましくは1.0MPa以上2.6MPa以下の範囲内に設定され、より好ましくは1.1MPa以上2.0MPa以下の範囲に設定される。
ここで、保護フィルム2の張力、平均張力及び張力の標準偏差の各単位「MPa」は、厚み方向に直交するフィルム断面の単位断面積当たりの張力を表す。
【0047】
駆動ロールc21で引き出された保護フィルム2は、回収部c4に巻き取られる。駆動ロールc21はテンションカットロールであるので、前記駆動ロールc21と回収部c4の間の保護フィルム2の張力は、駆動ロールc21と分離部材c1の間の張力に影響を与えない。そのため、駆動ロールc21と回収部c4との間の保護フィルム2の張力は、制御してもよく、或いは、制御しなくてもよい。回収部c4は、駆動ロールc21で引き出された保護フィルム2を巻き取ることができればよい。例えば、回収部c4は、トルク一定で保護フィルム2を巻き取る。
【0048】
[塗工液の塗工工程及び機能層の形成]
分離部材c1の出側で保護フィルム2が分離されると、被処理材3の表面が露出した処理用原反11が下流側に搬送される。処理用原反11は、非接触搬送変換部b34を経由して、塗工装置Dへと搬送される。
前記被処理材3の表面に、塗工装置Dによって塗工液を塗工する。塗工液は、機能層の形成材料である。塗工液は、特に限定されず、形成したい機能層に応じて任意の適切なものが用いられる。被処理材3として、上述の配向規制力を有するフィルムが用いられている場合には、例えば、液晶化合物を含む塗工液が用いられる。前記液晶化合物は、重合性を有する液晶化合物が好ましく、このような重合性液晶化合物の一例として、例えば、特開2020-183980号公報に記載の重合性液晶化合物などを用いることができる。前記重合性液晶化合物及びそれを含む塗工液並びにその重合性液晶化合物の配向方法などの詳細については、前記公報を参照するものとする。また、被処理材3として、上述の粘着剤層が用いられている場合、例えば、屈折率調整材料を含む塗工液が用いられる。屈折率調整材料を含む塗工液の一例を挙げると、例えば、特許第6194358号公報に記載の高屈折率材料を溶媒に分散させた分散液を用いることができる。前記高屈折率材料を溶媒に分散させた分散液及びその塗工方法などの詳細については、前記公報を参照するものとする。
塗工液の塗工厚み(塗膜の厚み)は、特に限定されず、例えば、5nm以上30μmである。前記液晶化合物を含む塗工液の場合、その塗工厚みは、例えば、0.5μm以上30μm以下であり、好ましくは1μm以上15μm以下である。前記屈折率調整材料を含む塗工液の場合、その塗工厚みは、例えば、5nm以上10μm以下であり、好ましくは10nm以上5μm以下である。
【0049】
塗工液を被処理材3の表面に塗工した後、必要に応じて、その塗膜を乾燥処理部e1にて乾燥する。乾燥方法は、特に限定されず、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥などが挙げられる。また、重合性液晶化合物のような光によって重合させる必要がある場合、硬化処理部e2にて紫外線などの光を照射する。
このようにして塗膜を硬化又は固化させることにより、被処理材3の表面に機能層が形成される。この機能層は、原反1の搬送に従い、被処理材3の長手方向に連続的に形成される。例えば、前記被処理材3が前記配向規制力を有するフィルムで且つ前記塗工液が前記液晶化合物を含む場合、被処理材3の表面に、位相差層(機能層)が形成される。また、前記被処理材3が前記粘着剤層で且つ前記塗工液が前記屈折率調整材料を含む場合、被処理材3である粘着剤層の表面に、屈折率調整用区分層(機能層)が形成される。
必要に応じて、前記機能層が形成された製品原反12の当該機能層の表面に、貼り合わせ部Fにてフィルム43(保護フィルムなど)を貼り合わせる。得られた製品原反12は、巻取り部b2に巻き取られる。
【0050】
本発明のように、保護フィルム2の張力の変動幅が所定値以下となるように制御しながら前記保護フィルム2を引き出すことにより、被処理材3の速度変動を効果的に抑制できる。具体的には、保護フィルムを引き出した際の張力が大きく変動すると、その張力変動によって、被処理材が引き出し側に強く引っ張られること及びそれよりも弱く引っ張られることを交互に繰り返す。このため、保護フィルムを引き出した際に、被処理材の速度変動が大きくなると推定される。この点、本発明のように、保護フィルム2の張力の変動幅を所定値以下に制御することにより、前記保護フィルム2を引き出した際の被処理材3(処理用原反11)の速度変動を効果的に抑制できる。
さらに、原反1の張力の変動幅が所定値以下となるように制御しながら原反1を搬送することにより、保護フィルム2を引き出した際の原反1(処理用原反11)の速度変動をより抑制できる。特に、保護フィルム2の張力を制御全期間において略一定となるように制御した場合、保護フィルム2を引き出した際の原反1(処理用原反11)の速度変動をより抑制できる。また、分離部材c1から駆動ロールc21までの前記保護フィルム2の長さが1m以上とされていることにより、仮に、駆動ロールc21によって保護フィルム2がバタついた場合でも、そのバタつきが被処理材3に伝搬し難くなる。
本発明によれば、被処理材3(処理用原反11)の速度変動を抑制できるので、被処理材3の表面に対して塗工液の塗工ムラが生じ難く、略均一な厚みの機能層を連続的に形成できる。つまり、被処理材の搬送速度が速いときには塗工液の塗工厚みが薄くなり、それが遅いときにはその塗工厚みが厚くなるが、被処理材3の速度変動を抑制することにより、塗工ムラを防止できる。
【0051】
また、本発明のように、曲率半径が30mm以下の円弧面部c12に沿わせて保護フィルム2を引き出すことにより、保護フィルム2を被処理材3から剥離した際の、被処理材3の速度変動を抑制できる。その理由は明確ではないが、曲率半径が30mm以下の円弧面部c12の場合、分岐点S(保護フィルム2と被処理材3の分かれ目)が保護フィルム2の引き出し側にずれ難いためと推定される。分岐点Sが保護フィルム2の引き出し側(
図6及び図7では、紙面下側)にずれると、保護フィルム2の引っ張りによって分岐点Sにおいて被処理材に生じる搬送方向の力成分が可及的に小さくなる。このため、被処理材3(処理用原反11)の速度変動を抑制できる。被処理材3(処理用原反11)が速度変動を生じ難いので、被処理材3の表面に対して塗工液の塗工ムラが生じ難く、略均一な厚みの機能層を形成できる。一方、曲率半径が30mmを超える大きな円弧面部の場合、保護フィルムに追従して被処理材が引き出し側に大きくずれるので、分岐点において被処理材に生じる搬送方向の力成分が大きくなり、且つ、保護フィルムが分離したときの反動により、被処理材の速度変動が大きくなると推定される。
さらに、剥離角度を60度以上180度以下として保護フィルム2を引き出すことにより、被処理材3の速度変動をより抑制できる。また、保護フィルム2を剥離した直後から塗工液を塗工する直前までの被処理材3(処理用原反11)の搬送長さが1m以上とされていることにより、保護フィルム2を剥離した際に被処理材3が僅かに速度変動を生じた場合でも、その変動が塗工装置Dの付近にまで影響することを防止できる。
【0052】
<第2実施形態の製造装置>
上記第1実施形態では、駆動ロールc21としてサクションロールが用いられているが、例えば、
図8に示すように、駆動ロールc21としてニップロールを用いてもよい。ニップロールは、一対のロールc211,c212(第1ロールc211と第2ロールc212)の間に保護フィルム2を挟んでそれを送ることができる。第1ロールc211及び第2ロールc212のうちいずれか一方が駆動するロールで且つもう一方が従動するロールであってもよく、或いは、両者が駆動するものでもよい。保護フィルム2に対する接触面積が大きいロールがある場合、そのロールが駆動するロールであることが好ましい。図示例では、少なくとも第1ロールc211が駆動するロールである。第2ロールc212は、第1ロールc211の駆動に従って回転するロール(従動ロール)でもよく、又は、駆動するロールであってもよい。
【0053】
<第3実施形態の製造装置>
上記第1実施形態では、30mm以下の曲率半径を有する円弧面部c12を有する分離部材c1が用いられているが、曲率半径が30mmを超える分離ロールを分離部材c1として用いてもよい(図示せず)。また、分離部材c1として、ブレードを用いてもよい(図示せず)。
【実施例】
【0054】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を更に詳述する。但し、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0055】
<実施例1>
[製造装置]
図1に示すような、搬送装置B、剥離する剥離装置C、塗工装置D、キュアリング装置E及び貼り合わせ装置Fを備える製造装置Aを使用した。剥離装置以外について、簡単に説明すると、搬送装置は、原反の張力の変動幅が小さく、且つ原反の張力が略一定となるように、張力を制御しながら原反を搬送するものを使用した。塗工装置は、既存のスロットダイコータを使用し、キュアリング装置は、既存の乾燥装置及び紫外線照射装置を使用し、貼り合わせ装置は、既存のセパレータフィルムを貼り合わせる装置を使用した。
剥離装置は、保護フィルムの張力の変動幅が小さく、且つ保護フィルムの張力が略一定となるように、張力を制御する張力制御部を有するものを使用した。剥離装置の各部材の仕様は、次の通りである。
分離部材:金属製の半径25mmのロール。
駆動ロール:半径102mmのサクションロール((株)加貫ローラ製作所製の製品名「サクション」)。
張力検出器:三菱電機(株)製の製品名「張力検出器」。
分離部材から駆動ロールまでの保護フィルムの長さ:約6m。
回収部:一定のトルクで保護フィルムを巻取り軸に巻き取る既存のアクチュエーター。
【0056】
[原反及び塗工液]
原反は、
図3(a)に示すような、接合用粘着剤層(アクリル系粘着剤)及びフィルム基材(厚み80μmの透明なポリエチレンテレフタレートフィルム)と、被処理材(斜め方向に延伸されたシクロオレフィン系樹脂フィルム。日本ゼオン株式会社製の製品名「ゼオノア」)と、からなる。原反の幅は、約1330mmであった。
塗工液は、特開2020-183980号公報の実施例A1で用いられている液晶化合物を含む塗工液を使用した。
【0057】
製造装置の全体を始動させ、下記の条件で、搬送装置にて原反を搬送しながら、剥離装置にて、原反から保護フィルム(接合用粘着剤層+フィルム基材)を引き剥がして回収し、塗工装置にて処理用原反に塗工液を塗工し、これを硬化させて製品原反を連続的に作製した。運転は、約8000秒行なった。
なお、製造装置の運転の開始と同時に、原反の張力の制御及び保護フィルムの張力の制御を行なうので、運転開始から終了時までが、原反及び保護フィルムの張力の制御全期間である。また、回収部は、トルク一定で保護フィルムを巻き取るので、サクションロールと回収部の間の保護フィルムの張力は、巻き径に応じて変化する。
原反の搬送速度:10m/分。
サクションロールの吸着力:7kPa。
保護フィルムの剥離角度:84度。
【0058】
[実施例1の原反及び保護フィルムの張力の測定結果]
運転開始から数十秒経過した時点(つまり、運転が安定した時点)から運転終了時点まで、保護フィルムの張力を測定した。保護フィルムの張力は、分離部材と駆動ロールとの間における、保護フィルムの張力を張力検出器にて測定した。保護フィルムの張力のサンプリングピッチは、1秒であった。
運転が安定した時点から300秒間の保護フィルムの張力の標準偏差は、0.006MPaであり、その間の保護フィルムの平均張力は、2.35MPaであった。また、運転終了時までの300秒間(運転後、7700秒から8000秒の間)の保護フィルムの張力の標準偏差は、0.005MPaであり、その間の保護フィルムの平均張力は、2.35MPaであった。また、運転開始後4000秒の時点から300秒間の保護フィルムの張力の標準偏差は、0.006MPaであった。運転が安定した時点から300秒間は、第1時間に相当し、運転終了時までの300秒間は、第2時間に相当する。
【0059】
[実施例1の機能層の評価]
実施例1の第1時間中に形成された機能層(液晶化合物の硬化層)と、第2時間中に形成された機能層(液晶化合物の硬化層)と、をそれぞれ縦×横=1000mm×1320mmに切り出し、これらの機能層を目視で評価した。前記機能層は、位相差特性を有するので、クロスニコルに配置した2枚の偏光フィルムの間に前記機能層を挟み込み、一方の偏光フィルム側からバックライトを当て、もう一方の偏光フィルム側から目視で観察した。
実施例1の第1時間中に形成された機能層及び第2時間中に形成された機能層は、いずれも、色の濃淡差が殆ど見られなかった。従って、略均一な厚みの機能層が形成されていると評価できた。
【0060】
<比較例1>
比較例1では、実施例1の駆動ロール(サクションロール)に代えて、ガイドロールを用いた。これを除いて、比較例1の製造装置は、実施例1の製造装置と同様なものを用い、実施例1と同様にして、原反を搬送しながら、保護フィルムを剥離し、塗工液を塗工して製品原反を連続的に作製した。
【0061】
[比較例1の原反及び保護フィルムの張力の測定結果]
比較例1についても、実施例1と同様にして、保護フィルムの張力を前記サンプリングピッチで測定した。
その結果、第1時間(運転が安定した時点から300秒間)の保護フィルムの張力の標準偏差は、0.0113MPaであり、その間の保護フィルムの平均張力は、2.25MPaであった。また、第2時間(運転終了時までの300秒間)の保護フィルムの張力の標準偏差は、0.0267MPaであり、その間の保護フィルムの平均張力は、1.875MPaであった。また、運転開始後4000秒の時点から300秒間の保護フィルムの張力の標準偏差は、0.0199MPaであった。
【0062】
[比較例1の機能層の評価]
比較例1についても、第1時間中に形成された機能層及び第2時間中に形成された機能層をそれぞれ切り出し、実施例1と同様にして、これらの機能層を目視で評価した。
比較例1の第1時間中に形成された機能層は、色の濃淡差が余り見られなかったが、比較例1の第2時間中に形成された機能層は、所々で明らかな色の濃淡差が視認された。このため、比較例1の第2時間中に形成された機能層は、その厚みが不均一と評価できた。
【符号の説明】
【0063】
A 製造装置
B 搬送装置
C 剥離装置
c12 分離部材の円弧面部
c2 張力制御部
c21 駆動ロール
D 塗工装置
1,11,12 原反
2 保護フィルム
3,31,32 被処理材