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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】二次電池の交換方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/42 20060101AFI20231107BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
H01M10/42 P
H01M10/48 P
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021129714
(22)【出願日】2021-08-06
(65)【公開番号】P2023023826
(43)【公開日】2023-02-16
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】福間 保
(72)【発明者】
【氏名】八十嶋 珠仁
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0161615(US,A1)
【文献】特開2002-015781(JP,A)
【文献】特開2010-181262(JP,A)
【文献】特開2003-109670(JP,A)
【文献】特開2009-266413(JP,A)
【文献】特開2014-127404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42 -10/48
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の電槽を備えた二次電池を1列に複数個積層して拘束し、複数個の当該二次電池を電気的に直列または並列に接続した組電池において、交換が必要と判定された不良二次電池を交換する二次電池の交換方法であって、
前記組電池において不良二次電池を特定し、不良二次電池と特定された二次電池を除去する除去のステップと、
前記除去のステップにより除去されなかった二次電池を移動して、前記組電池の前記二次電池の列において、少なくともその列方向の一端部に二次電池を組付け可能とする配列移動のステップと、
記少なくともその列方向の一端部に、前記樹脂製の電槽の壁面の強度の低下による劣化の少ない良品二次電池を組み付ける補充のステップとを備えたことを特徴とする二次電池の交換方法。
【請求項2】
前記補充のステップにおいて、前記組電池の列方向の一端部側のみに劣化の少ない良品二次電池を組み付けることを特徴とする請求項1に記載の二次電池の交換方法。
【請求項3】
前記補充のステップにおいて、前記組電池の列方向の両端部に劣化の少ない良品二次電池を組み付けることを特徴とする請求項1に記載の二次電池の交換方法。
【請求項4】
前記補充のステップにおいて、前記不良二次電池を除去した前記組電池の前記二次電池の列において、端部に配列した良品二次電池以外の二次電池を、前記不良二次電池を除去した前記組電池の前記二次電池のうち、最も容量の劣化が少ない二次電池に隣接するように配置して組み付けることを特徴とする請求項1に記載の二次電池の交換方法。
【請求項5】
前記補充のステップにおいて、前記不良二次電池を除去した前記組電池の前記二次電池の列において、前記不良二次電池を除去した前記組電池の前記二次電池のうち、隣接する二次電池との容量の差があらかじめ設定した閾値より小さくなる良品二次電池を選択して組みつけることを特徴とする請求項1に記載の二次電池の交換方法。
【請求項6】
前記補充のステップにおいて、前記不良二次電池を除去した前記組電池の前記二次電池の列において、前記不良二次電池を除去した前記組電池の前記二次電池のうち、最も容量の劣化が大きい二次電池との容量の差があらかじめ設定した閾値より小さくなる良品二次電池を選択して組み付けることを特徴とする請求項1に記載の二次電池の交換方法。
【請求項7】
前記除去のステップにおいて、
前記組電池の各二次電池毎に電圧を測定し、電圧があらかじめ設定された閾値を下回る場合に、その二次電池を不良二次電池と判断する電圧不良判断のステップとを備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の二次電池の交換方法。
【請求項8】
前記除去のステップに先立ち前記二次電池の容量と、当該二次電池と隣接する良品二次電池との電圧差との相関関係を予め取得する電圧差データ取得のステップを備え、
前記除去のステップにおいて、
前記組電池の各二次電池毎に、電池容量を測定する容量測定のステップと、
前記容量測定のステップにおいて測定した容量が、電圧差データに基づいて電圧差があらかじめ設定された閾値を超える容量以下である場合に前記二次電池を不良二次電池と判断する電圧差不良判断のステップを備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の二次電池の交換方法。
【請求項9】
前記電圧差データを、マップ、テーブル、数式などからなる参照データとしてあらかじめ制御装置の記憶手段に記憶するとともに、
前記制御装置は、前記除去のステップにおいて、当該参照データを参照して制御を行うことを特徴とする請求項8に記載の二次電池の交換方法。
【請求項10】
前記除去のステップにおいて、
前記組電池の各二次電池毎に電池容量を測定し、電池容量があらかじめ設定された閾値を下回る場合に、その二次電池を不良二次電池と判断する容量不良判断のステップとを備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の二次電池の交換方法。
【請求項11】
前記除去のステップに先立ち前記二次電池の容量と良品二次電池との容量差との相関関係を予め取得する容量差データ取得のステップと、
前記除去のステップにおいて、
前記組電池の各二次電池毎に、電池容量を測定する容量測定のステップと、
前記容量測定のステップにおいて測定した容量が、容量差データに基づいて容量差があらかじめ設定された閾値を超える容量以下である場合に前記二次電池を不良二次電池と判断する容量差不良判断のステップとを備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の二次電池の交換方法。
【請求項12】
前記容量差データを、マップ、テーブル、数式などからなる参照データとしてあらかじめ制御装置の記憶手段に記憶するとともに、
前記制御装置は、前記除去のステップにおいて、当該参照データを参照して制御を行うことを特徴とする請求項11に記載の二次電池の交換方法。
【請求項13】
前記良品二次電池が、未使用の二次電池であることを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の二次電池の交換方法。
【請求項14】
前記組電池は、前記二次電池を制御する制御装置を備え、前記二次電池は、前記制御装置が制御する単位である複数の単電池からなる電池ブロックを単位として制御されることを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載の二次電池の交換方法。
【請求項15】
前記二次電池がアルカリ二次電池であることを特徴とする請求項1~14のいずれか一項に記載の二次電池の交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の交換方法に係り、詳しくは、使用された組電池から不良電池を取り出したのち良品電池を組み付けて組電池を再利用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より電気自動車(EV)や、エンジンと電動機を備えたいわゆるハイブリッド自動車(HEV)において、電動機を駆動する際の主電源として二次電池が用いられている。その高いエネルギー密度や高い出力密度の点から、NiMH電池(ニッケル水素蓄電池)やリチウムイオン二次電池が使用されている。かかる電気自動車やハイブリッド車両に搭載される二次電池では、電動機に対して十分な高電圧や大電流を供給できるように、単電池を複数個直列又は並列に組み合わせた電池ブロックを形成する。そして、さらに複数の電池ブロック組み合わせて1つの組電池を構成している。このような組電池をケースに収容し、センサや制御装置を備えた電池パックとしたものを車載して用いている。
【0003】
このような電池パックは、その使用環境が適切であれば長時間にわたり使用可能となるが、二次電池の個体差や二次電池を構成する部品のばらつき、環境温度などにより、組電池を構成する二次電池が、それぞれ個別に容量の低下などの劣化を生じる。組電池の中の一つの二次電池に異常が発生した場合には、二次電池の充放電のばらつきなどを生じ組電池本来の機能が発揮できず、システムの不具合に到る可能性も高い。そのため、従来から二次電池に異常が生じた場合には、これを検出した上、速やかに交換していた。
【0004】
しかしながら、従来は、異常が生じた電池ブロックを単純に交換するだけであり、入れ換え後の組電池の性能が最適化されないという問題があった。
そこで、特許文献1には、以下のような組電池において異常が検出された一部の二次電池を交換する異常電池の交換方法が開示されている。
【0005】
組電池は、一般的に列方向中央部の高温領域内の電池ブロックが電池温度が高く、端部は温度が低い。電池温度が高温度となると、二次電池内の内部抵抗が低下すると共に充電効率も低下する。そのため、組電池の中央部の電池ブロックは容量の低下を生じやすい。そこで、組電池を構成する二次電池に異常電池が発生した場合、これを新品電池と交換する際には、最も容量の低下の大きい中央部の電池ブロックと交換する。この為、新品電池を高温領域内に配置すれば、最も劣化した二次電池を新品電池と置き換えることで、これ以外の二次電池との機能差が縮小される。そのため、組電池を構成する二次電池間の性能のばらつきが小さくなるので、組電池の性能を最適化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-109670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、二次電池は、密閉した電槽内部で副反応により気体が発生することがあり電槽の内圧が高まることがある。そのため、組電池の両端部のエンドプレートに接した電池ブロックは、列方向中央部に比較して拘束力が小さく電槽が膨張しやすく、組電池の使用により電槽の壁面の強度が低下することがある。
【0008】
特許文献1のように組電池の両端部付近を除いた、電池温度が高く、温度差が無い高温領域内の位置に新品電池を配置すると、組電池の両端部の二次電池は交換されることがない。そのため、特許文献1のような異常電池の交換方法では、組電池の両端部の電槽の壁面の強度低下が改善されることがないという問題があった。
【0009】
本発明の二次電池の交換方法が解決しようとする課題は、不良電池の交換をした場合に、組電池の端部の電槽の壁面の強度低下を改善することができる二次電池の交換方法とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の二次電池の交換方法では、二次電池を1列に複数個積層して拘束し、複数個の当該二次電池を電気的に直列または並列に接続した組電池において、交換が必要と判定された不良二次電池を交換する二次電池の交換方法であって、前記組電池において不良二次電池を特定し、不良二次電池と特定された二次電池を除去する除去のステップと、前記不良二次電池を除去した前記組電池の前記二次電池の列において、少なくともその列方向の一端部に劣化の少ない良品二次電池を組み付ける補充のステップとを備えたことを特徴とする。
【0011】
前記補充のステップにおいて、前記組電池の列方向の一端部側のみに劣化の少ない良品二次電池を組み付けてもよい。
また、前記補充のステップにおいて、前記組電池の列方向の両端部に劣化の少ない良品二次電池を組み付けるようにしてもよい。
【0012】
さらに、前記補充のステップにおいて、前記不良二次電池を除去した前記組電池の前記二次電池の列において、端部に配列した良品二次電池以外の二次電池を、前記不良二次電池を除去した前記組電池の前記二次電池のうち、最も劣化が少ない二次電池に隣接するように配置して組み付けるようにすることもできる。
【0013】
また、前記補充のステップにおいて、前記不良二次電池を除去した前記組電池の前記二次電池の列において、前記不良二次電池を除去した前記組電池の前記二次電池のうち、隣接する二次電池との容量の差があらかじめ設定した閾値より小さくなる良品二次電池を選択して組みつけることが望ましい。
【0014】
また、前記補充のステップにおいて、前記不良二次電池を除去した前記組電池の前記二次電池の列において、前記不良二次電池を除去した前記組電池の前記二次電池のうち、最も劣化が大きい二次電池との容量の差があらかじめ設定した閾値より小さくなる良品二次電池を選択して組み付けることも望ましい。
【0015】
前記除去のステップにおいて、前記組電池の各二次電池毎に電圧を測定し、電圧があらかじめ設定された閾値を下回る場合に、その二次電池を不良二次電池と判断する電圧不良判断のステップとを備えることも望ましい。
【0016】
前記除去のステップに先立ち前記二次電池の容量と、当該二次電池と隣接する良品二次電池との電圧差との相関関係を予め取得する電圧差データ取得のステップを備え、前記除去のステップにおいて、前記組電池の各二次電池毎に、電池容量を測定する容量測定のステップと、前記容量測定のステップにおいて測定した容量が、前記電圧差データに基づいて電圧差があらかじめ設定された閾値を超える容量以下である場合に前記二次電池を不良二次電池と判断する電圧差不良判断のステップを備えることも望ましい。
【0017】
前記電圧差データを、マップ、テーブル、数式などからなる参照データとしてあらかじめ制御装置の記憶手段に記憶するとともに、前記制御装置は、前記除去のステップにおいて、当該参照データを参照して制御を行うようにしてもよい。
【0018】
前記除去のステップにおいて、前記組電池の各二次電池毎に電池容量を測定し、電池容量があらかじめ設定された閾値を下回る場合に、その二次電池を不良二次電池と判断する容量不良判断のステップとを備えるようにしてもよい。
【0019】
前記除去のステップに先立ち前記二次電池の容量と良品二次電池との容量差との相関関係を予め取得する容量差データ取得のステップと、前記除去のステップにおいて、前記組電池の各二次電池毎に、電池容量を測定する容量測定のステップと、前記容量測定のステップにおいて測定した容量が、前記容量差データに基づいて容量差があらかじめ設定された閾値を超える容量以下である場合に前記二次電池を不良二次電池と判断する容量差不良判断のステップとを備えるようにしてもよい。
【0020】
前記容量差データを、マップ、テーブル、数式などからなる参照データとしてあらかじめ制御装置の記憶手段に記憶するとともに、前記制御装置は、前記除去のステップにおいて、当該参照データを参照して制御を行うようにしてもよい。
【0021】
前記良品二次電池が、未使用の二次電池であるのも望ましい。
前記組電池は、前記二次電池を制御する制御装置を備え、前記二次電池は、前記制御装置が制御する単位である複数の単電池からなる電池ブロックを単位として制御されるようにしてもよい。
【0022】
前記二次電池がアルカリ二次電池である場合に好適に実施できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の二次電池の交換方法によれば、不良電池の交換をした場合に、組電池の端部の電槽の壁面の強度低下を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】組電池の構成を示す模式図。
図2】使用された電池の容量の低下の例を示す概念図。
図3】組電池の電池ブロックの交換の手順を示すフローチャート。
図4】使用された二次電池の電池容量と、良品二次電池との電圧差との関係を示すグラフ。
図5】使用された二次電池の電池容量と、良品二次電池との容量差との関係を示すグラフ。
図6】本実施形態の二次電池の交換の手順を示す組電池の模式図。(a)不良二次電池と判断された電池ブロックB6~B9。(b)不良二次電池を除去した状態の組電池1。(c)不良二次電池が除去された組電池1の残りの電池ブロックBの配列を移動させた状態。(d)良品電池を組み付けた状態。
図7】別の実施形態の二次電池の交換の手順を示す模式図。(a)不良二次電池と判断された電池ブロックB6~B9。(b)不良二次電池を除去した状態の組電池1。(c)不良二次電池が除去された組電池1の残りの電池ブロックBの配列を移動させた状態。(d)良品電池を組み付けた状態。
図8】別の実施形態の二次電池の交換の手順を示す模式図。(a)不良二次電池と判断された電池ブロックB1、B2と、B13、B14。(b)不良二次電池を除去した状態の組電池1。(c)不良二次電池が除去された組電池1の残りの電池ブロックBの配列を移動させた状態。(d)良品電池を組み付けた状態。
図9】本実施形態のニッケル水素蓄電池の構成を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1の実施形態)
以下、本発明の二次電池の交換方法を、ニッケル水素蓄電池である複数の電池ブロックB1~B14からなる組電池1における電池ブロックBの交換方法の第1の実施形態を一例に図1~9を参照して説明する。
【0026】
<電池ブロックB>
ニッケル水素蓄電池などの二次電池は、繰り返し充放電が可能であり、精密電子機器から車両の動力源まで幅広く使用される。精密電子機器であれば、単電池が使用されることも多く、電池が劣化した場合は単電池を丸ごと交換する。一方、車載用の二次電池では、ニッケル水素蓄電池やリチウムイオン二次電池が用いられる。これらは、車両の駆動のため高電圧・高電流が要求され、多数の単電池が直列、並列に接続された組電池として使用されている。冒頭で述べたように、二次電池は、電池自体のばらつきだけでなく、置かれた環境温度などで劣化に差が出る。組電池1自体の性能が低下した場合に組電池1全体を交換するのは、劣化していない単電池などを無駄にする。一方多数の単電池を個別に監視・制御・交換するのは煩雑である。
【0027】
そこで、本実施形態の二次電池では、一定数の単電池を「電池ブロックB」として、監視・制御・交換の単位として扱う。組電池は、電池ブロックBの単位で制御・交換するようにしている。本実施形態では、一例としてニッケル水素蓄電池を例に、複数の単電池(例えば6個)を一体電槽に収容した電池モジュールを複数スタックしたものを、電池ブロックBとしている。
【0028】
<組電池1>
図1は、本実施形態の組電池1の構成を示す模式図である。車載用の組電池1を備えた電池パック(不図示)は、制御の単位を構成する複数の電池ブロックBを備える。例えば本実施形態の組電池1では、電池ブロックB1~B14の14個の電池ブロックBを備える。なお、説明においては、特に区別しない場合は、「電池ブロックB」という。
【0029】
電池ブロックB1~B14は、順にスタックされ、その列方向の両端に電池ブロックB1~B14を列方向に挟むようにエンドプレート11がそれぞれ配置される。エンドプレート11は、硬質の板状の部材で、電池ブロックBを押圧する。組電池1には2本の拘束ロッド12が電池ブロックBの積層方向に、電池ブロックB1~B14を幅方向で挟むように配置される。拘束ロッド12の両端はエンドプレート11を貫通する。拘束ロッド12の両端はねじが切ってあり、エンドプレート11を貫通した先端に拘束ナット13が螺合されて、エンドプレート11を押圧する。このため、電池ブロックB1~B14は、一対のエンドプレート11に挟持されて圧力受けながら拘束される。図示を省略したが、これらの電池ブロックB1~B14は直列又は並列に電気的に接続され、1つの組電池1として機能する。
【0030】
<電池パック>
複数の電池ブロックBがスタックされて組電池1が構成され、単独の組電池1または複数の組電池1が電池パックの収容ケースに収容される。
【0031】
そして、図1に示すように各電池ブロックB1~B14を個別に監視するセンサや、各電池ブロックBを個別に制御する電池制御装置2が接続線21を介してそれぞれの電池ブロックB1~B14に接続される。そして冷却システムなどが装着されて、車両搭載用の電池パック(不図示)が構成される。
【0032】
<電池ブロックBを構成する電池モジュール>
図9は、本実施形態のニッケル水素蓄電池の構造を示す部分断面図である。以下に本実施形態の電池ブロックBを構成するニッケル水素蓄電池の電池モジュールの一例を、簡単に説明する。
【0033】
図9に示すように、ニッケル水素蓄電池は、密閉型電池であり、電気自動車やハイブリッド自動車等の車両の電源として用いられる電池である。車両に搭載されるニッケル水素蓄電池としては、所要の電力容量を得るべく、一体電槽100に複数の単電池110を電気的に直列接続して構成された角形密閉式の電池モジュールからなるものが採用される。
【0034】
電池モジュールは、複数の単電池110を収容可能な一体電槽100と、この一体電槽100を封止する蓋体200とによって構成される直方体状の角形ケース300を有している。なお、この角形ケース300は、樹脂製のものを用いることができる。
【0035】
樹脂製の角形ケース300は、金属製の電池ケースと比較すると、軽量で絶縁性がよいが、内圧が高まると、樹脂製の角形ケース300は、金属製の電池ケースより変形しやすい。そのため壁面が繰り返し変形し、壁面に負担を掛けることがある。そのため、図1に示すように複数の電池モジュールをスタックして、拘束・押圧することで、樹脂製の角形ケース300の壁面の変形を抑制する。この場合、列方向両端に配置された電池ブロックBの壁面に応力がかかることが解析により確かめられている。そのため、列方向両端に配置される電池ブロックBは、未使用の壁面の強度が高い電池ブロックBを配置することが望ましい。
【0036】
角形ケース300を構成する一体電槽100は、アルカリ性の電解液に対して耐性を有する合成樹脂材料、例えばポリプロピレンやポリエチレン等により構成されている。そしてこの一体電槽100の内部には、複数の単電池110を区画する隔壁120が形成されており、この隔壁120によって区画された部分が、単電池110毎の電槽130となる。一体電槽100は、例えば、6つの電槽130を有しており、図1には、その一部の4つが示されている。
【0037】
こうして区画された電槽130内には、極板群140と、その両側に接合された正極の集電板150及び負極の集電板160とが電解液とともに収容されている。
極板群140は、矩形状の正極板141及び負極板142がセパレータ143を介して積層して構成されている。このとき、正極板141、負極板142及びセパレータ143が積層された方向(紙面に鉛直な方向)が、積層方向である。極板群140の正極板141及び負極板142は、板面の方向(紙面に沿う方向)であって互いに反対側の側部に突出されることで正極板141のリード部141a及び負極板142のリード部142aが構成されている。これらリード部141a、142aの側端縁にそれぞれ集電板150、160が接合されている。
【0038】
また、隔壁120の上部には各電槽130の接続に用いられる貫通孔170が形成されている。貫通孔170は、集電板150の上部に突設されている接続突部151、及び集電板160の上部に突設されている接続突部161の2つの接続突部151,161同士が該貫通孔170を介して溶接接続される。このことで、各々隣接する電槽130の極板群140を電気的に直列接続させる。貫通孔170のうち、両端の電槽130の各々外側に位置する貫通孔170は、一体電槽100の端側壁上方で正極の接続端子152又は負極の接続端子(図示略)が装着される。正極の接続端子152は、集電板150の接続突部151と溶接接続される。負極の接続端子は、集電板160の接続突部161と溶接接続される。こうして直列接続された極板群140、すなわち複数の単電池110の総出力が正極の接続端子152及び負極の接続端子153から取り出される。
【0039】
一方、角形ケース300を構成する蓋体200には、角形ケース300の内部圧力を開弁圧以下にする排気弁210と、極板群140の温度を検出するためのセンサを装着するセンサ装着穴220が設けられている。センサ装着穴220は、極板群140の近傍まで電槽130内を延びる穴によって、極板群140の温度を測定可能にしている。
【0040】
排気弁210は、一体電槽100内の内部圧力を許容されうる閾値以下に維持するためのものであり、内部圧力の値が許容される閾値を超えた開弁圧以上になった場合には、開弁されることで一体電槽100内部に発生したガスを排出する。ニッケル水素蓄電池では、過充電を生じると、副反応による気体の発生により内圧が高まることがある。そのため、内圧が一定の閾値を超すと排気弁210が開弁する。
【0041】
排気弁210が作動しなくても、内圧が高まると、樹脂製の角形ケース300の壁面が繰り返し変形し、壁面に負担を掛けることがある。そのため、図1に示すように複数の電池モジュールをスタックして、拘束・押圧することで、樹脂製の角形ケース300の壁面の変形を抑制する。
【0042】
<正極板141>
正極板141は、発泡ニッケル三次元多孔体からなる正極基板と、ここに塗工された水酸化ニッケル及びコバルトを活物質とした合材層で構成されている。詳しくは、水酸化ニッケルに、水酸化コバルトや金属コバルト粉末などの導電剤、そして必要に応じてカルボキシメチルセルロースなどの増粘剤やポリテトラフルオロエチレンなどの結着剤を含む。
【0043】
<負極板142>
負極板142は、例えば、ランタン、セリウム、及びネオジム等の希土類元素の混合物であるミッシュメタル、ニッケル、アルミニウム、コバルトおよびマンガンを構成要素とする水素吸蔵合金を活物質として構成されている。
【0044】
<セパレータ143>
セパレータ143としては、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の不織布、もしくは必要に応じてこれにスルフォン化などの親水処理を施したものを用いることができる。
【0045】
<ニッケル水素蓄電池の主反応と副反応>
このように構成されたニッケル水素蓄電池の電極の活物質の主反応は、(1)式及び(2)式にて表される。
【0046】
正極;Ni(OH)+OH⇔NiOOH+HO+e…………(1)
負極;M+HO+e⇔MH+OH…………………………………(2)
(Mは水素吸蔵合金)
また、水の電気分解が生じると、正極では以下の(3)式の反応が生じ、酸素が発生する。
【0047】
正極;OH→1/4O+1/2HO+e………………………(3)
負極では、以下の(4)式の反応が生じ、水素が発生する。
負極;HO+e→1/2H+OH………………………………(4)
また、充電末期において、正極では、(1)式の反応と、以下に示す(3)式の副反応である酸素発生反応とが競合して起こることが知られている。
【0048】
このように、ニッケル水素蓄電池では、条件により気体が発生する。気体が発生すると内圧が高まり、樹脂製の角形ケース300の壁面が繰り返し変形し、壁面に負担を掛けることがある。
【0049】
<ニッケル水素蓄電池と温度環境による劣化>
図2は、使用されたニッケル水素蓄電池の組電池1の電池ブロックBごとの容量の低下の例を示す概念図である。縦軸は、電池ブロックB1~B14の電池容量[Ah]を示す。横軸は、電池ブロックB1~B14の電池ナンバーNo.を示す。一般的に、組電池1では中央部が、電池の冷却効率が悪く温度が上昇しやすいため、内部温度に起因する劣化が進みやすい。図2において未使用の劣化していない電池ブロックである良品二次電池GBの満容量の電池容量[Ah]を基準容量fAhとする。この基準容量fAhに対する使用された電池ブロックB1~B14の電池容量[Ah]により劣化状況を示す。図2に示すように、中央部に配置された電池ブロックB7,B8が最も劣化が大きく、その電池容量[Ah]は、最少容量bAhとなっている。また、最も劣化が少ない両端の電池ブロックB1、B14の電池容量[Ah]は、最大容量aAhとなっている。また、この最大容量aAhと基準容量fAhとの差は、容量差ΔAhとなっている。その他の電池ブロックB2~B6及びB9~B13は、組電池1の端部から中央部にかけて、漸次容量が少なくなっている。
【0050】
<電池制御装置2>
図1に示すように組電池1の各電池ブロックB1~B14には、電池制御装置2が接続線21により個別に接続されている。電池制御装置2は、CPU、ROM,RAM、記憶手段、インタフェースを備えたコンピュータとして構成されている。詳細な図示は省略したが、各電池ブロックB1~B14にはそれぞれ電圧、温度を測定するセンサが設けられ、また、組電池1の電流を測定するセンサが設けられている。電池制御装置2は、電池ブロックB1~B14の個別の電圧値と温度、組電池1の電流値を取得できる。また、組電池1には、組電池1を充放電する充放電装置3が接続されている。このため、電池制御装置2は、充放電装置3を制御して、組電池1を充電又は放電することができる。そして、電池制御装置2は、取得した電圧・電流・温度に基づいて電池ブロックB1~B14のSOCの推定や、電池容量の計測や、内部抵抗の算出などをすることができる。本実施形態の電池制御装置2と充放電装置3とで、本実施形態の二次電池の交換装置として機能する。
【0051】
<二次電池の電池交換の手順>
図3は、組電池1のニッケル水素蓄電池からなる電池ブロックBの交換の手順を示すフローチャートである。
【0052】
まず、組電池1の電池ブロックBの交換の手順の開始にあたっては、先立って準備段階として、容量差グラフG1(図4参照)が参照テーブルとして電池制御装置2の記憶手段に記憶されている。容量差グラフG1は、取得した電池ブロックBの測定容量xAhと、良品二次電池GBと取得した電池ブロックBの測定容量xAhとの容量差ΔAhの相関関係を取得する容量差データ取得のステップが実行されて作成される。
【0053】
また、電圧差グラフG2(図5参照)が参照テーブルとして電池制御装置2の記憶手段に記憶されている。電圧差グラフG2は、取得した電池ブロックBの測定容量xAhと、良品二次電池GBと取得した電池ブロックBとの電圧差ΔVの相関関係を取得する電圧差データ取得のステップが実行されて作成される。
【0054】
これらの準備が完了したら二次電池の交換の手順が開始される(電池ブロック交換開始)。手順が開始されると、まず電池ブロック毎の電池容量・電圧・内部抵抗の測定(S1)を実施する。
【0055】
電池ブロックB1~B14の処理は、B1から行われ、順次B14まで行われる。最初に電池ブロックB1についてS1の手順からS6の手順までが行われ、電池ブロックB1についての処理が完了したら、次の処理があるので(S7:NO)、再びS1の手順に戻って、電池ブロックB2についてS1の手順からS6の手順までが行われる。そして、順次処理を進め、B14についてのS2の手順からS10のすべての手順までが完了したら(S7:YES)、電圧差判定の手順(S8)に進む。以下、S1の手順からS6の手順までを説明する。
【0056】
<電池ブロック毎の電池容量・電圧・内部抵抗の測定(S1)>
電池ブロック毎の電池容量・電圧・内部抵抗の測定(S1)では、電池ブロックB1~B14のそれぞれの個別の電池容量[Ah]・電圧[V]・内部抵抗[Ω]の測定が、電池ブロックB1から電池ブロック14まで順次行われる。最初の手順は、電池制御装置2は電池ブロックB1について充放電装置3により充放電を行い、電圧センサ、電流センサから電圧値、電流値を取得して、個別の電池容量[Ah]・電圧[V]・内部抵抗[Ω]の推定をする。
【0057】
電池容量[Ah]は、電池制御装置2が、組電池1をSOC100%の満充電まで充電し、SOC0%まで放電したときの総放電量[Ah]を測定する。この手順が本発明の容量測定に相当する。
【0058】
また、電圧[V]は、SOC100%まで満充電したときの電圧[V]を測定する。
内部抵抗[Ω]は、パルス電流を発して、電圧[V]と電流[A]とから内部抵抗を測定する。
【0059】
<基準範囲外か否かの判定(S2)>
続いて、電池制御装置2は、予め設定された良品/不良品の閾値を基準に基準範囲内か基準範囲外かの判定を行う(S2)。判定は、電池ブロック毎の電池容量・電圧・内部抵抗の測定の手順(S1)で取得した電池ブロックB1~B14のそれぞれの個別の電池容量[Ah]・電圧[V]・内部抵抗[Ω]に基づく。この手順が、本発明の電圧不良判断、容量不良判断に相当する。
【0060】
基準範囲外か否かの判定(S2)で、電池容量[Ah]・電圧[V]・内部抵抗[Ω]のいずれか1つでも、基準範囲外となった場合(S2:YES)は、その電池ブロックBの継続的な使用は組電池1の寿命において好ましくないとして交換の対象となる。すでに現在、劣化の兆候を示しているからである。この場合は、その電池ブロックBを不良二次電池BBと判定して(S5)、電池制御装置2の記憶手段に記憶され、次の電池ブロックBの手順に進む(S11:NO→S1)。
【0061】
なお、本実施形態では、電池容量[Ah]・電圧[V]・内部抵抗[Ω]により、上記判定を実施しているが、例えば、電池容量のみのように、いずれか1つまたは2つを用いてもよい。また、他の基準を用いて判定を実施してもよい。
【0062】
<容量差判定(S3)>
次に、電池容量[Ah]・電圧[V]・内部抵抗[Ω]のいずれもが、基準範囲内となった場合(S2:NO)は、容量差判定の手順を行う(S3)。この手順が本発明の容量差不良判断に相当する。
【0063】
容量差判定の手順にあたり、予め容量差データ取得のステップにおいて取得した電池ブロックBの測定容量xAhと、良品二次電池GBとの容量差ΔAhの相関関係を示す容量差グラフG1(図4)を取得してある。そして、容量差グラフG1を参照し、判定対象の測定容量xAhに基づいて判定対象となる電池ブロックBの電池容量xAhと良品二次電池GBの電池容量fAhとの容量差ΔAhを推定する。ここでの電池容量[Ah]は、SOC0%から100%における電池容量[Ah]で比較する。
【0064】
S2における電池容量[Ah]の判定は、判定する電池ブロックB自体の電池容量の絶対値に基づく判定である。これに対して、ここでの電池容量[Ah]は、判定する電池ブロックBの電池容量xAhに基づいて、良品二次電池GBの基準容量fAHとの容量差ΔAhに基づく判定である点で異なる。
【0065】
<ダイアグについて>
近年、電気自動車などの車両では、コンピュータを備えるECU(Electronic Control Unit)が、車両の制御をするとともに、車両の故障の自己診断を行うものが多い。ECUは、故障診断対象項目(診断項目)の各々について、その項目の故障診断実施条件(診断条件)が成立したか否かを判定するダイアグ(ダイアグノーシス:diagnosis:診断)のプログラムを実行する。そしてECUは、該当する項目についての故障診断処理を実施する。ECUは、車載の電池パックなどに対しても、その監視と制御を行っている。ECUは、故障診断実施条件が成立した場合に、例えば、運転者に警告を報知したり、電池の使用を制限する所定の修正プログラムを実施したりするなどする。
【0066】
図2に示すように、例えば、組電池1を構成する電池ブロックBのうち、最少の電池容量の電池ブロックB7、B8の電池容量bAhと、基準電池容量fAhとの電池容量の容量差ΔAhが大きすぎる場合がある。この場合、各電池ブロックBの電池容量に比べて基準容量fAhが大きすぎ、すべてについて同じ条件で充放電ができない。そのため、ダイアグは電池パックの制御が困難になる異常として運転者に警告を報知したり、電池パックの保護を行うプログラムが実施したりする。
【0067】
また、例えば、組電池1内で容量差ΔAhが大きすぎる場合は、電池パックの充放電の制御が困難になる異常として運転者に警告を報知したり、電池パックの保護を行うプログラムが実施したりする。このため、電池パックの制御が制限されてしまう場合がある。
【0068】
<容量差グラフG1>
図4は、使用された電池ブロックBの電池容量Ahと、良品二次電池GBの基準容量fAhと電池ブロックBとの容量差ΔAhとの関係を示す容量差グラフG1である。容量差グラフG1は、電池制御装置2の記憶手段に変換テーブルとして記憶されている。上述のとおり電池制御装置2は、判定対象となる電池ブロックBの測定容量xAhを電池ブロック毎の電池容量・電圧・内部抵抗の測定(S1)で既に測定している。電池制御装置2は、測定した測定容量xAhに基づいて、容量差グラフG1を用いてその電池ブロックBの電池容量xAhと良品二次電池GBの基準容量fAhとの容量差ΔAhに変換する。そして、電池制御装置2は、求めた容量差ΔAhを容量差閾値tAhと比較する。求めた容量差ΔAhが容量差閾値tAh以上の場合(S4:YES)は、その電池ブロックBは、組電池1に組み入れたときに、いずれの配置であっても望ましい制御ができない可能性がある。そのため前述のダイアグが実行されてしまう場合がある。そのため、このような電池ブロックBは、予め交換の対象とする。この場合は、その電池ブロックBを不良二次電池BBと判定して(S5)、電池制御装置2の記憶手段に記憶され、次の電池ブロックBの手順に進む(S7:NO→S1)。
【0069】
<良品二次電池判定(S6)>
求めた容量差ΔAhが容量差閾値tAh未満の場合(S4:NO)は、その電池ブロックBは、組電池1に組み入れたときに、いずれの配置であっても望ましい制御ができる。
【0070】
すなわち、その電池ブロックBは、電池容量・電圧・内部抵抗が基準範囲内で(S2:YES)、かつ、容量差ΔAhが閾値以下であるので、良品二次電池と判定され(S6)、電池制御装置2の記憶手段に記憶される。
【0071】
<不良/良品二次電池判定の終了>
電池ブロックB1~B14のすべての電池ブロックBの不良/良品二次電池判定が終了したら(S7:YES)、電圧差判定(S8)に進む。
【0072】
<電圧差判定(S8)>
電圧差判定(S8)の目的は、未使用の電池ブロックBについて、交換用の電池ブロックBとして使用できるか否かについて判断することである。交換用の電池ブロックBは、未使用の電池ブロックBが、品質も一定しており、劣化がなく電池容量も大きいことから好ましい。また、数量の確保も容易である。
【0073】
しかしながら、交換用の良品二次電池GBとして未使用の電池ブロックBを組付けた場合、隣接する使用済みの電池ブロックBと、電圧差ΔVが過大な場合は、充放電制御が困難となる場合がある。また、車両によっては隣接する使用済みの電池ブロックBと、電圧差ΔVが過大な場合は、ダイアグの機能により、正常に機能しない場合がある。
【0074】
そこで、電圧差判定(S8)では、交換用の電池ブロックBとして、未使用の電池ブロックBが活用できるか否かの判定を行うものである。
電圧差判定(S8)にあたり、予め電圧差データ取得のステップにおいて取得した電池ブロックBの測定容量xAhと、良品二次電池GBとの電圧差ΔVの相関関係を示す電圧差グラフG2(図5)が取得され、電池制御装置2の記憶手段に記憶されている。電池制御装置2は、判定対象の測定容量xAhに基づいて、判定対象となる電池ブロックBの電圧と良品二次電池GBの電圧との電圧差ΔVを推定する。ここでの電圧[V]は、SOC100%における電圧[V]で比較する。
【0075】
ところで、S2における電圧[V]の判定は、判定する電池ブロックB自体の絶対値に基づく判定である。これに対して、電圧差判定(S8)における電圧[V]は、判定する電池ブロックBの電池容量xAhに基づいて、未使用の良品二次電池GBの電圧との電圧差ΔVに基づく判定である点で異なる。
【0076】
<電圧差グラフG2>
図5は、使用された電池ブロックBの電池容量Ahと、良品二次電池GBの電圧[V]とその電池ブロックBの電圧[V]との電圧差ΔVとの関係を示す電圧差グラフG2である。電圧差グラフG2は、電池制御装置2の記憶手段に変換テーブルとして記憶されている。上述のとおり電池制御装置2は、判定対象となる電池ブロックBの測定容量xAhを電池ブロック毎の電池容量・電圧・内部抵抗の測定(S1)で既に測定している。電池制御装置2は、測定した測定容量xAhに基づいて、電圧差グラフG2を用いてその電池ブロックBの電圧[V]と良品二次電池GBの電圧[V]との電圧差ΔVに変換する。
【0077】
<電圧差閾値tV以上か否かの判定(S9)>
電池制御装置2は、まず、電池ブロックB1~B14のうち、最も電池容量[Ah]が大きい電池ブロックBを選択する。図2に示すように、一般的には本実施形態のように組電池1の列方向の両端に配置された電池ブロックBが容量の低下が少ない。本実施形態では、電池ブロックB1若しくは電池ブロックB14の電池容量xAhを記憶する。
【0078】
続いて、電池制御装置2は、測定した測定容量xAhに基づいて、電圧差グラフG2を用いてその電池ブロックBの電圧[V]と良品二次電池GBの電圧[V]との電圧差ΔVに変換する。
【0079】
そして、電池制御装置2は、求めた電圧差ΔVを電圧差閾値tVと比較する。
<電圧差ΔVが電圧差閾値tV以上の場合(S9:YES)>
求めた電圧差ΔVが電圧差閾値tV以上の場合は(S9:YES)、その電池ブロックBは、良品二次電池GBと隣接させた場合に、望ましい制御ができないとして、前述のダイアグが実行されてしまう場合がある。
【0080】
そのため、この場合は、その電池ブロックBを未使用品活用不可と判定して(S10)、電池ブロック交換の手順を終了する(終了)。
この場合は、交換用の電池ブロックBを、未使用のものでなく使用されて容量が小さくなったものか、最初から容量を小さくした電池ブロックBなどに交換して、電池制御装置2の基準容量fAhを設定しなおして、再度電池ブロックの交換の手順を行う。
【0081】
<電圧差ΔVが電圧差閾値tV未満の場合(S9:NO)>
一方、求めた電圧差ΔVが電圧差閾値tV未満の場合(S9:NO)は、その電池ブロックBは、未使用の良品二次電池GBと隣接させた場合でも、望ましい制御ができるとして、前述のダイアグは実行されない。そのため、このような電池ブロックBは、継続して使用することができる「未使用品活用可能」と判定される(S11)。この判定により、良品二次電池組付け(S14)において、未使用の良品二次電池を使用することができる。
【0082】
なお、交換用の電池ブロックBの組付け(S14)にあたっては、電圧差判定(S8)の対象となった電池ブロックB(本実施形態では電池ブロックB14)に隣接するように組付けなければならない。
【0083】
<未使用品活用不可と判定された電池ブロックB>
なお、未使用品活用不可と判定された電池ブロックBについては(S10)、未使用の良品二次電池GBと隣接させて使用することはできない。但し、使用により電池容量が低下し、電圧差ΔVが電圧差閾値tV未満の電池ブロックBであれば、交換用の電池ブロックBとして使用できる。
【0084】
そして、このような電池ブロックBを組み付けることで、電圧差判定(S7)における判定で、改めて本実施形態の電池ブロックの交換方法を行えば、未使用品の電池ブロックBを、この使用された電池ブロックBに隣接させることが可能になる場合がある。
【0085】
<不良二次電池除去(S12)>
図6は、本実施形態の二次電池の交換の手順を示す組電池1の模式図である。図6(a)は、不良二次電池と判断された電池ブロックB6~B9を示す。図6(b)は、不良二次電池BBを除去した状態の組電池1を示す。図6(c)は、不良二次電池BBが除去された組電池1の残りの電池ブロックBの配列を移動させた状態を示す。図6(d)は、良品二次電池GBを組み付けた状態を示す。
【0086】
不良二次電池除去(S12)では、電池ブロックB1~B14のうち不良二次電池判定の手順(S5)で、不良二次電池BBと判定され判定電池制御装置2の記憶手段に記憶されている電池ブロックB自体を物理的に除去する。
【0087】
図6(a)に示すように、不良二次電池BBと判定した電池ブロックBは電池制御装置2の記憶手段に記憶されている(S5)。本実施形態では、図2に示すように、電圧差閾値容量t1Ahと比較して、電池ブロックB6・B7・B8・B9の電池容量が低くなっている。そのため、電池ブロックB6・B7・B8・B9は、電圧差判定(S3)において、容量差ΔAhが電圧差閾値容量t1Ah以上となっている(S4:YES)。そのため、電池ブロックB6・B7・B8・B9は、不良二次電池BBとして電池制御装置2の記憶手段に記憶されている(S7)。
【0088】
次に、図1に示す拘束ナット13が緩められ、拘束ロッド12によりエンドプレート11に掛っている張力が開放される。また、これらの配線は、必要に応じて外される。
図6(b)に示すように、この電池ブロックBの拘束が解かれた状態で、不良二次電池BBと判断された電池ブロックB6・B7・B8・B9は、物理的に除去される(S10)。
【0089】
<二次電池配列移動(S13)>
次に、図6(c)に示すように、二次電池配列移動(S11)を行う。二次電池配列移動(S11)では、電池ブロックB6~B9を除去した組電池1の電池ブロックBのうち、電池ブロックB10~B14を、元の電池ブロックB6~B9の位置に、その配列のままずらして移動させる。そうすると、電池ブロックB10~B14が元あった位置は、空間ができる。
【0090】
図6(d)に示すように本実施形態では、電池の配列の移動は、不良二次電池BBを除去した組電池1の電池ブロックBの列において、少なくともその列方向の一端部に劣化の少ない良品二次電池GBを組み付ける。その理由は、組電池1の電池ブロックBの列において、その列方向の一端部に劣化の少ない良品二次電池GBを配置することで、電槽の壁面の強度が高い電池ブロックBを配置するためである。
【0091】
また、劣化の少ない良品二次電池GBをその列方向の一端部に配置したので、隣接する電池ブロックBの容量の差が小さいことが求められる。そのためには、電池容量の均一な電池ブロックBを配置することが好ましい。本実施形態では、良品二次電池GBは、未使用の二次電池を用いているため、電池容量がfAhで均一である。さらに、組電池1の中の使用された電池ブロックBのうち、最も電池容量が大きいのは、列方向両端に配置された電池ブロックB1とB14である。
【0092】
以上まとめると、本実施形態においては、列方向の一端部に良品二次電池GBを配置することが望ましい。隣接する電池ブロックBは容量差が少ないことが望ましい。元の列方向の一両端部に配設されていた電池ブロックB1、B14が最も電池容量が大きい。このことを鑑みれば、補充する良品二次電池GBは、列方向の一端部に4つの良品二次電池GBを並べて配置することがこの条件に合致する。そこで、列方向の一端部に4つの良品二次電池GBを並べて配置できるように、電池ブロックB10~B14を、元の電池ブロックB6~B9の位置に、その配列のままずらして移動させることがこの条件に適合する。
【0093】
<良品電池組付け(S14)>
二次電池配列移動(S13)によって、元の電池ブロックB11~B14にできた空間に、4つの良品二次電池GBを連続して組み付ける。その後、図1に示す拘束ナット13が締められ、拘束ロッド12は、エンドプレート11に張力が掛けられる。その結果、電池ブロックB1~B14は列方向に圧縮され、拘束される。このような状態で、電池ブロックBを構成する電池モジュールの壁面は相互に当接されて、膨らむ力が相殺されて、電池モジュールの壁面の膨張は抑制される。電池ブロックB1~B14に必要な配線を施し、組電池1として再生される、終了する。
【0094】
<検査(S13)>
このように組付けられた組電池1は、組電池としての電池電圧、電池容量、内部抵抗の検査が行われ、検査に合格したものは、再生品の電池パックとして再使用される。
【0095】
以上が、本実施形態の電池交換の手順である。
(本実施形態の作用)
<壁面強度>
本実施形態では、組電池1の列方向の端部に、エンドプレート11に当接するように良品二次電池GBを配置するため、エンドプレート11に接する電池ブロックBの電池ケースの壁面は、他の電池ブロックBよりも新しく、疲労の少ない壁面とする。
【0096】
このため、外部の衝撃力が大きい側に、最も強度の高く、壁面が破損しにくくなっている交換用の電池ブロックBが配置されるので、外部衝撃に対するスタック破壊を抑制する。
【0097】
<容量差>
交換される良品二次電池GBとの容量差ΔAhが大きなもの電池ブロックBは、容量差判定(S3)において不良二次電池BBと判断される。
【0098】
容量差判定(S3)において、交換すべき電池ブロックBを適切に選択するため、既存のダイアグを装備したECUを備えた車両についても、ダイアグによる異常の警報などを作動させることがなく、実施することができる。
【0099】
<電圧差>
電圧差判定(S7)の手順で、電池ブロックBの一部が交換された組電池1は、隣接する電池ブロックBの電圧差ΔVを所定の電圧差閾値tVとすることができるか否かが判定される。ここで、ΔVが電圧差閾値tVより大きなものは、未使用の良品電池ブロックGBを用いた交換ができないように判断される。そのため電圧差判定(S7)において、交換すべき電池ブロックBを適切に選択するため、既存のダイアグを装備したECUを備えた車両についても、ダイアグによる異常の警報などを作動させることがなく、実施することができる。
【0100】
未使用の良品電池ブロックGBとのΔVが電圧差閾値tVより大きい場合は、ΔVが電圧差閾値tVより小さくなるような使用された電池容量[Ah]が減少した電池ブロックBを交換用の良品二次電池GBとして準備する必要がある。
【0101】
<交換作業>
未使用の電池ブロックBを組電池1の列方向の一端部に置く場合、交換されなかった電池ブロックB1が他端部に配置されるため、メンテナンスにおいては他端側の電池ブロックB1の電池容量だけ見ればよい。
【0102】
本実施形態のニッケル水素蓄電池の組電池1の電池ブロックBの交換方法であれば、元々の組電池1内の電池ブロックBの配置を大きく変更せずに電池ブロックBの交換をすることができる。
【0103】
また、構造が複雑なECUを設置した側と逆側の端部のみに交換用の電池ブロックBを配置することで、交換作業が容易にできる。
(第1の実施形態の効果)
(1-1)本実施形態では、組電池1の列方向の一端部に、エンドプレート11に当接するように良品二次電池GBを配置する。このため、エンドプレート11に接する電池ブロックBの電槽の壁面は、他の電池ブロックBよりも新しく、疲労の少ない壁面とすることができる。
【0104】
このため、外部の衝撃力が大きい側に、最も強度の高く、壁面が破損しにくくなっている交換用の電池ブロックBが配置されるので、外部衝撃に対するスタック破壊を抑制することができる。
【0105】
(1-2)容量差判定(S3)において、交換される良品二次電池GBとの容量差ΔAhが大きなもの電池ブロックBは、容量差判定(S3)において不良二次電池BBと判断される。このため、交換すべき電池ブロックBを適切に選択され、ダイアグを装備したECUを備えた既存の車両についても、ダイアグによる異常の警報などを作動させることがなく、実施することができる。
【0106】
(1-3)電圧差判定(S8)の手順で、電池ブロックBの一部が交換された組電池1は、隣接する電池ブロックBの電圧差ΔVを所定の電圧差閾値tVとすることができるか否かが判定される。ここで、ΔVが電圧差閾値tVより大きなものは、未使用の良品電池ブロックGBを用いた交換ができないように判断される。このため、電池制御装置2における充放電制御において、すべての電池ブロックBに対して、適正な充放電管理ができるようになる。
【0107】
(1-4)電圧差判定(S8)において、交換すべき電池ブロックBを適切に選択するため、既存のダイアグを装備したECUを備えた車両についても、ダイアグによる異常の警報などを作動させることがなく、実施することができる。
【0108】
(1-5)未使用の良品電池ブロックGBとのΔVが電圧差閾値tVより大きい場合は、ΔVが電圧差閾値tVより小さくなるような使用された電池容量[Ah]が減少した電池ブロックBを交換用の良品二次電池GBとして使用することができる。
【0109】
このため、未使用の電池ブロックBを交換用として活用できるため、使用された良品二次電池GBが不足する場合でも、これらを使用することを抑制することができる。
(1-6)なお、ΔVが電圧差閾値tVより小さくなるような使用された電池容量[Ah]が減少した電池ブロックBを交換用の良品二次電池GBとして使用する。このことで、この状態から電圧差判定(S8)を行えば、未使用の良品電池ブロックGBとのΔVが電圧差閾値tVより小さくなり、未使用の良品電池ブロックGBを使用することもできる。
【0110】
(1-7)本実施形態のニッケル水素蓄電池の組電池1の電池ブロックBの交換方法であれば、元々の組電池1内の電池ブロックBの配置を大きく変更せずに電池ブロックBの交換をすることができる。
【0111】
(1-8)未使用の電池ブロックBを組電池1の列方向の一端部に配置したので、交換されなかった電池ブロックB1が他端部に配置され、他端側の電池ブロックB1の電池容量だけ見ればよいのでメンテナンスが容易になる。
【0112】
(1-9)また、構造が複雑なECUを設置した側と逆側の端部のみに交換用の電池ブロックBを配置することで、交換作業が容易にできる。
(1-10)本実施形態の組電池1の電池ブロックBの交換方法では、特段の設備なしで、実施することができる。
【0113】
(1-11)そして、使用により容量が低下した組電池1を無駄なく効率的に再生することができる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、第1の実施形態と二次電池配列移動の手順(S13)と、良品電池組付けの手順(S14)が異なるのみであるので、その相違部分のみを説明する。
【0114】
図7は、第2の実施形態の二次電池の交換の手順を示す模式図である。図7(a)は、不良二次電池と判断された電池ブロックB6~B9を示す。図7(b)は、不良二次電池を除去した状態の組電池1を示す。図7(c)は、不良二次電池が除去された組電池1の残りの電池ブロックBの配列を移動させた状態を示す。図7(d)は、良品電池を組み付けた状態を示す。図6と比較すると、図7(a)は、図6(a)と同一である。図7(b)は、図6(b)と同一である。ここまでは、第1の実施形態と同じ手順で実施する。
【0115】
図7(c)に示す二次電池配列移動の手順(S13)では、第1の実施形態では、列方向の一方の端部を空けるように良品二次電池GBと判断された電池ブロックBを他方の端部に寄せている。これに対し、図7(c)に示す第2の実施形態では、列方向の両方の端部を空けるように良品二次電池GBと判断された電池ブロックBを中央部に寄せている。このため、元の電池ブロックB1、B2とB13、B14の位置が空間として空けられている。そして、図7(d)に示す良品電池組付けの手順(S14)では、元の電池ブロックB1、B2とB13、B14の位置に、補充する電池ブロックBを組み付ける。
【0116】
(第2の実施形態の作用・効果)
(2-1)第1の実施形態の効果の(1-1)~(1-7)、(1-10)~(1-11)と同様な効果を奏する。
【0117】
(2-2)さらに、第2の実施形態では、組電池1の列方向の両端部に、エンドプレート11に当接するように良品二次電池GBを配置する。このため、エンドプレート11に接する電池ブロックBの電槽の壁面は、他の電池ブロックBよりも新しく、疲労の少ない壁面とすることができる。
【0118】
このため、外部の衝撃力が大きい両外側に、最も強度の高く、壁面が破損しにくくなっている交換用の電池ブロックBが配置されるので、外部衝撃に対するスタック破壊を抑制することができる。
【0119】
(第3の実施形態)
図8は、第3の実施形態の二次電池の交換の手順を示す模式図である。図8(a)は、不良二次電池と判断された電池ブロックB1、B2と、B13、B14を示す。図8(b)は、不良二次電池を除去した状態の組電池1を示す。図8(c)は、不良二次電池が除去された組電池1の残りの電池ブロックBの配列を移動させた状態を示す。図8(d)は、良品電池を組み付けた状態を示す。
【0120】
第1の実施形態及び第2の実施形態が、前提として組電池1を構成する電池ブロックB1~B14は、中央部の電池容量低下が大きく、その両端側は、電池容量の低下が小さいものを例示した。しかしながら、電池容量の低下は、電池パックの冷却システムなどによっても影響を受ける。そこで、第3の実施形態では、組電池1を構成する電池ブロックB1~B14は、両端部の電池容量低下が大きく、その中央部は、電池容量の低下が小さいものを例示する。
【0121】
このような場合、図8(a)に示すように、容量差判定の手順(S3)では、容量差閾値tAhから求められる電池容量[Ah]未満の電池ブロックBは、列方向両端の電池ブロックB1、B2及びB13、B14となる。そんため電池ブロックB1、B2及びB13、B14が不良二次電池BBと判定される。
【0122】
そして、図8(b)に示す不良二次電池除去の手順(S12)では、電池ブロックB1、B2及びB13、B14が不良二次電池BBとして除去される。
続いて、二次電池配列移動の手順(S13)が行われる。ここでは、二次電池配列移動の第1の条件として、少なくとも、列方向の両端部のエンドプレート11に当接する位置には、優先的に補充する電池ブロックBを配置することがある。これは、外部の衝撃力が大きい両外側に、最も強度の高く、壁面が破損しにくくなっている交換用の電池ブロックBが配置することで、外部衝撃に対するスタック破壊を抑制するためである。
【0123】
続いて、第2の条件としては、列方向の両端部に電池ブロックBを配置した後は、次の電池ブロックは、残存している電池ブロックBのうち、最も容量の大きな電池ブロックBに隣接するように配置する。このように配置することで、新たな電池ブロックBが隣接する残存した電池ブロックBとの電圧差ΔVが小さくなるからである。具体的には、図8(c)に示すように、最も容量の大きな電池ブロックBは、電池ブロックB7と電池ブロックB8(この例では同容量)である。そのため、これらの電池ブロックB7と電池ブロックB8に補充する電池ブロックBを隣接させるために、電池ブロックB7と電池ブロックB8の位置を空けて空間を作る。すなわち、電池ブロックB3~B7を、図上左にずらして電池ブロックB2~B6とする。また、電池ブロックB8~B12を、図上右にずらして電池ブロックB9~B13とする。
【0124】
そして、図8(d)に示すように、電池ブロックB1、B7、B8、B14に、交換用の電池ブロックBを組付ける。
(第3の実施形態の作用・効果)
(3-1)第3の実施形態では、電池容量にかかわらず、組電池1の列方向の両端部に、交換する電池ブロックを優先的に配置する。このことで、組電池1の列方向の両端部に、エンドプレート11に当接するように良品二次電池GBを配置する。そのため、エンドプレート11に接する電池ブロックBの電槽の壁面は、他の電池ブロックBよりも新しく、疲労の少ない壁面とすることができる。
【0125】
このため、外部の衝撃力が大きい両外側に、最も強度の高く、壁面が破損しにくくなっている交換用の電池ブロックBが配置されるので、外部衝撃に対するスタック破壊を抑制することができる。
【0126】
なお、図8(d)のように、隣接する電池ブロックB1と電池ブロックB2との容量差、すなわち電圧差が大きなものになるが、第3の実施形態では、外部衝撃に対する強度を優先するものである。
【0127】
図示は、省略するが、組電池1を構成する電池ブロックBの容量低下は様々な態様が想定されるが、第3の実施形態に開示したような方法であれば、外部衝撃に対する強度と円滑な充放電制御のバランスを考慮して配置することができる。
【0128】
(変形例)
〇本実施形態では、電池ブロックBを電池ブロックB1~B14の14個の組み合わせで組電池1を構成しているが、その数は実施形態に限定されない。
【0129】
○本実施形態では、ニッケル水素蓄電池を例に、複数の単電池(例えば6個)を一体電槽に収容した電池モジュールを複数(例えば2つ)スタックしたものを、「電池ブロックB」としている。しかし、本発明はこれに限定されず、二次電池の種類や用途により当業者において適宜最適化される。
【0130】
○本実施形態の電池ブロックBは、複数(例えば6つ)の電池モジュールをスタックしたニッケル水素蓄電池を例に挙げたが、監視・制御・交換の単位となる、例えば、リチウムイオン二次電池の単独の単電池などで構成されてもよい。
【0131】
〇例えば、1つの電池モジュールを「電池ブロックB」として実施することもできる。そして、この電池モジュールを複数スタックしたものを「組電池1」として実施することもできる。
【0132】
〇さらに、例えば、リチウムイオン二次電池や全固体電池において、単電池毎に制御され、単電池毎に交換される場合は、単電池が「電池ブロックB」を構成する。そして、これらがスタックされた複数の電池が「組電池1」を構成する。さらに、電池パックにおいて各スタックを「電池ブロックB」として、これらを組み合わせたものを「組電池1」として、本発明を実施することもできる。
【0133】
図4に示す容量差グラフG1、図5に示す電圧差グラフG2は、発明を説明するための概念的なグラフであり、参照データとしてのマップとして機能する。電池制御装置2の記憶手段には、それぞれの関係を示す数式を記憶しておき、数式に沿って変換してもよい。また、対応する数値を表にして変換テーブルとして変換するようにしてもよい。
【0134】
○本実施形態の二次電池は、ニッケル水素蓄電池を例に説明したが、その他のアルカリ二次電池でもよい。さらにリチウムイオン二次電池のような非水二次電池や、全固体二次電池など組電池を構成する二次電池であれば本発明を実施できる。
【0135】
○本実施形態の電池パックでは、複数の組電池1により構成されるが、単独の組電池1から構成されるようなものであってもよい。
○本実施形態の二次電池は、車両用の組電池1を例示したが、船舶や航空機に搭載するようなものでも、本発明は実施することができる。さらに、定置用として、実施することもできる。
【0136】
図3に示すフローチャートは、二次電池の交換方法の手順の一例であり、各手順を付加、削除、変更し、又は順序を変えて実施することができることは言うまでもない。
〇本実施形態では例示として、電池ブロックごとの電池容量・電圧・内部抵抗の測定(S1)の手順で、電池容量・電圧・内部抵抗を測定して、いずれも良否を判定している(S2)。しかしながら、ここで判定する内容は、電池容量・電圧・内部抵抗のいずれか一つでもよいし、その他の検査項目、例えば、内圧、充電効率、微小短絡の検査や、漏液の検査などとしてもよい。また、電池ブロックごとの電池容量・電圧・内部抵抗の測定(S1)の手順自体を省略してもよい。
【0137】
〇本実施形態では、電池ブロックごとの電池容量・電圧・内部抵抗の測定(S1)及び容量差判定(S3)を行い、その後電圧差判定(S8)を行っているが、その順序は入れ替えて行ってもよい。
【0138】
○本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲であれば、当業者によりその構成を付加し、削除し、又は変更して実施することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0139】
1…組電池
11…エンドプレート
12…拘束ロッド
13…拘束ナット
2…電池制御装置
21…接続線
3…充放電装置
B(B1~B14)…電池ブロック
BB…不良二次電池
GB…良品二次電池
fAh…基準容量
aAh…最大容量
bAh…最少容量
ΔAh…容量差
t1Ah…電圧差閾値容量
t2Ah…容量差閾値容量
tAh…容量差閾値
xAh…測定容量
ΔV…電圧差
tV…電圧差閾値
G1…容量差グラフ
G2…電圧差グラフ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9