(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】燃料電池システムの制御方法及び燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
B60L 58/40 20190101AFI20231107BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20231107BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20231107BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20231107BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20231107BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20231107BHJP
B60L 50/75 20190101ALI20231107BHJP
B60L 58/10 20190101ALI20231107BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231107BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20231107BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20231107BHJP
【FI】
B60L58/40
H01M8/04 Z
H01M8/04858
H01M8/04537
B60L9/18 J
B60L50/60
B60L50/75
B60L58/10
H02J7/00 P
H02J7/00 303E
H02J1/00 306L
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2021161209
(22)【出願日】2021-09-30
【審査請求日】2022-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】清水 研一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-051042(JP,A)
【文献】特開平07-320752(JP,A)
【文献】特表2006-501798(JP,A)
【文献】特開2018-019533(JP,A)
【文献】特開2009-277584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 58/40
H01M 8/04
H01M 8/04858
H01M 8/04537
B60L 9/18
B60L 50/60
B60L 50/75
B60L 58/10
H02J 7/00
H02J 1/00
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池システムの制御方法であって、
前記燃料電池システムは、
発電電圧を発生する燃料電池と、
蓄電電圧を発生する蓄電装置と、
モータと、直流端が前記蓄電装置に接続され交流端が前記モータに接続されるインバータとからなる負荷と、
入力端が前記燃料電池に接続され、出力端が前記インバータの直流端と前記蓄電装置に接続される昇圧コンバータと、を有し、
前記制御方法は、
前記発電電圧と前記蓄電電圧を取得
し、前記蓄電電圧から前記発電電圧を引いた差電圧を求める工程と、
前記蓄電電圧が前記発電電圧を下回らないように、前記燃料電池の
電力である発電出力を制御する工程と、を有
し、
前記発電出力を制御する工程では、
前記負荷が要求する電力である負荷出力の小出力領域で、前記蓄電装置の電力である蓄電出力を可変して前記蓄電出力のみにより前記負荷出力を賄い、
その後、前記負荷出力が増加し、前記差電圧が予め定めた閾値差電圧まで小さな電圧となったときに前記小出力領域から遷移する前記負荷出力の中出力領域では、前記蓄電電圧が前記発電電圧を下回らないように前記発電出力を可変して前記発電電圧を低下させた発電出力と、一定値の蓄電出力と、により前記負荷出力を賄うように制御する
燃料電池システムの制御方法。
【請求項2】
燃料電池システムの制御方法であって、
前記燃料電池システムは、
発電電圧を発生する燃料電池と、
蓄電電圧を発生する蓄電装置と、
モータと、直流端が前記蓄電装置に接続され交流端が前記モータに接続されるインバータとからなる負荷と、
入力端が前記燃料電池に接続され、出力端が前記インバータの直流端と前記蓄電装置に接続される昇圧コンバータと、を有し、
前記制御方法は、
前記負荷が要求する電力である負荷出力の大きさに応じて予め定めた出力配分基準に沿って、前記負荷出力を、前記燃料電池の発電出力と前記蓄電装置の蓄電出力により賄うように制御する工程
を有し、
前記出力配分基準に沿って前記発電出力と前記蓄電出力を制御する工程では、
前記負荷出力の小出力領域では、可変した前記蓄電出力のみにより前記負荷出力を賄い、
前記負荷出力の中出力領域では、一定値の蓄電出力と、可変した前記発電出力と、により前記負荷出力を賄うように制御する
燃料電池システムの制御方法。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の燃料電池システムの制御方法において、
前記発電出力
と前記蓄電出力を制御する工程
にあっては、
前記負荷出力の大出力領域では、一定値の前記発電出力と
、可変した
前記蓄電出力とにより前記負荷出力を賄うように制御する
燃料電池システムの制御方法。
【請求項4】
請求項
3に記載の燃料電池システムの制御方法において、
前記発電出力を制御する工程では、
前記負荷出力の中出力領域から大出力領域へ遷移する際
、前記燃料電池の発電電流が、予め定めた閾値発電電流を上回る電流となったときに遷移させる
燃料電池システムの制御方法。
【請求項5】
発電電圧を発生する燃料電池と、
蓄電電圧を発生する蓄電装置と、
モータと、直流端が前記蓄電装置に接続され交流端が前記モータに接続されるインバータとからなる負荷と、
入力端が前記燃料電池に接続され、出力端が前記インバータの直流端と前記蓄電装置に接続される昇圧コンバータと、
メモリと、該メモリに記録されたプログラムを実行するCPUとを備え、
前記CPUが前記メモリに記録されたプログラムを実行することにより、前記燃料電池、前記蓄電装置、前記モータ、前記インバータ、前記昇圧コンバータを制御する際に、
前記CPUは、
前記負荷の要求電力である負荷出力を賄うために、前記燃料電池の発電出力と前記蓄電装置の蓄電出力を制御するものであり、
前記発電電圧と前記蓄電電圧を取得し、前記蓄電電圧から前記発電電圧を引いた差電圧を求め、
前記蓄電電圧が前記発電電圧を下回らないように、前記燃料電池の
電力である発電出力を制御
し、
前記発電出力を制御する際に、
前記負荷が要求する電力である負荷出力の小出力領域で、前記蓄電装置の電力である蓄電電力を可変して前記蓄電出力のみにより前記負荷出力を賄い、
その後、前記負荷出力が増加し、前記差電圧が予め定めた閾値差電圧まで小さな電圧となったときに前記小出力領域から遷移する前記負荷出力の中出力領域では、前記蓄電電圧が前記発電電圧を下回らないように前記発電出力を可変して前記発電電圧を低下させた発電出力と、一定値の蓄電出力と、により前記負荷出力を賄うように制御する
燃料電池システム。
【請求項6】
発電電圧を発生する燃料電池と、
蓄電電圧を発生する蓄電装置と、
モータと、直流端が前記蓄電装置に接続され交流端が前記モータに接続されるインバータとからなる負荷と、
入力端が前記燃料電池に接続され、出力端が前記インバータの直流端と前記蓄電装置に接続される昇圧コンバータと、
メモリと、該メモリに記録されたプログラムを実行するCPUとを備え、
前記CPUが前記メモリに記録されたプログラムを実行することにより、前記燃料電池、前記蓄電装置、前記モータ、前記インバータ、前記昇圧コンバータを制御する際に、
前記CPUは、
前記負荷が要求する電力である負荷出力の大きさに応じて予め定めた出力配分基準に沿って、前記負荷出力を、前記燃料電池の発電出力と前記蓄電装置の蓄電出力により賄うように制御し、
前記出力配分基準に沿って前記発電出力と前記蓄電出力を制御する際に、
前記負荷出力の小出力領域では、可変した前記蓄電出力のみにより前記負荷出力を賄い、
前記負荷出力の中出力領域では、一定値の蓄電出力と、可変した前記発電出力と、により前記負荷出力を賄うように制御する
燃料電池システム。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の燃料電池システムにおいて、
前記CPUは、前記発電出力と前記蓄電出力を制御するにあたり、
前記負荷出力の大出力領域では、一定値の前記発電出力と、可変した前記蓄電出力とにより前記負荷出力を賄うように制御する
燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料電池の電力(発電出力、単位は[W])と蓄電装置の電力(蓄電出力、単位は[W])による、いわゆるハイブリッド電源により駆動されるモータを備える燃料電池システムの制御方法及び燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術が、例えば、特許文献1に開示されている。この技術では、モータを駆動するための発電出力と蓄電出力との合成出力を最大限使用可能としている。このために、低電圧の発電出力を高電圧の発電出力とする燃料電池用のコンバータと、低電圧の蓄電出力を高電圧の蓄電出力とする蓄電装置用のコンバータとを備えている。
【0003】
この場合、両コンバータの昇圧比を可変することで、燃料電池の出力電圧(発電電圧)が、蓄電装置の出力電圧(蓄電電圧)を上回らないように制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、燃料電池システム及び燃料電池自動車では、コスト低減が重要な課題となっている。例えば、前記蓄電装置用のコンバータを削減することにより、燃料電池システム及び燃料電池自動車のコストが低減できると考えられる。
【0006】
しかしながら、前記蓄電装置用のコンバータを削減して、前記燃料電池用のコンバータの出力端と前記蓄電装置とを直接接続(直結)した場合に、発電出力と蓄電出力との合成出力を最大限使用可能にしようとすると次に説明する問題が発生する。
【0007】
すなわち、蓄電出力を大出力とすると蓄電装置の電圧(蓄電電圧)が低下するが、低下した蓄電電圧が発電電圧より低下した場合には、燃料電池用のコンバータを昇圧状態に制御することが不可能になり、燃料電池と蓄電装置とが直結状態になるという問題が発生する。
【0008】
この直結状態では、燃料電池の出力電圧(発電電圧)が蓄電装置の出力電圧(蓄電電圧)になるので、発電出力が制御不能になることから燃料電池が劣化するという課題がある。
【0009】
この発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の一態様は、燃料電池システムの制御方法であって、前記燃料電池システムは、発電電圧を発生する燃料電池と、蓄電電圧を発生する蓄電装置と、モータと、直流端が前記蓄電装置に接続され交流端が前記モータに接続されるインバータとからなる負荷と、入力端が前記燃料電池に接続され、出力端が前記インバータの直流端と前記蓄電装置に接続される昇圧コンバータと、を有し、前記制御方法は、前記発電電圧と前記蓄電電圧を取得し、前記蓄電電圧から前記発電電圧を引いた差電圧を求める工程と、前記蓄電電圧が前記発電電圧を下回らないように、前記燃料電池の電力である発電出力を制御する工程と、を有し、前記発電出力を制御する工程では、前記負荷が要求する電力である負荷出力の小出力領域で、前記蓄電装置の電力である蓄電出力を可変して前記蓄電出力のみにより前記負荷出力を賄い、その後、前記負荷出力が増加し、前記差電圧が予め定めた閾値差電圧まで小さな電圧となったときに前記小出力領域から遷移する前記負荷出力の中出力領域では、前記蓄電電圧が前記発電電圧を下回らないように前記発電出力を可変して前記発電電圧を低下させた発電出力と、一定値の蓄電出力と、により前記負荷出力を賄うように制御する。
この発明の他の態様は、燃料電池システムの制御方法であって、前記燃料電池システムは、発電電圧を発生する燃料電池と、蓄電電圧を発生する蓄電装置と、モータと、直流端が前記蓄電装置に接続され交流端が前記モータに接続されるインバータとからなる負荷と、入力端が前記燃料電池に接続され、出力端が前記インバータの直流端と前記蓄電装置に接続される昇圧コンバータと、を有し、前記制御方法は、前記負荷が要求する電力である負荷出力の大きさに応じて予め定めた出力配分基準に沿って、前記負荷出力を、前記燃料電池の発電出力と前記蓄電装置の蓄電出力により賄うように制御する工程を有し、前記出力配分基準に沿って前記発電出力と前記蓄電出力を制御する工程では、前記負荷出力の小出力領域では、可変した前記蓄電出力のみにより前記負荷出力を賄い、前記負荷出力の中出力領域では、一定値の蓄電出力と、可変した前記発電出力と、により前記負荷出力を賄うように制御する。
【0011】
この発明のさらに他の態様に係る燃料電池システムは、発電電圧を発生する燃料電池と、蓄電電圧を発生する蓄電装置と、モータと、直流端が前記蓄電装置に接続され交流端が前記モータに接続されるインバータとからなる負荷と、入力端が前記燃料電池に接続され、出力端が前記インバータの直流端と前記蓄電装置に接続される昇圧コンバータと、メモリと、該メモリに記録されたプログラムを実行するCPUとを備え、前記CPUが前記メモリに記録されたプログラムを実行することにより、前記燃料電池、前記蓄電装置、前記モータ、前記インバータ、前記昇圧コンバータを制御する際に、前記CPUは、前記負荷の要求電力である負荷出力を賄うために、前記燃料電池の発電出力と前記蓄電装置の蓄電出力を制御するものであり、
前記発電電圧と前記蓄電電圧を取得し、前記蓄電電圧から前記発電電圧を引いた差電圧を求め、前記蓄電電圧が前記発電電圧を下回らないように、前記燃料電池の電力である発電出力を制御し、前記発電出力を制御する際に、前記負荷が要求する電力である負荷出力の小出力領域で、前記蓄電装置の電力である蓄電電力を可変して前記蓄電出力のみにより前記負荷出力を賄い、その後、前記負荷出力が増加し、前記差電圧が予め定めた閾値差電圧まで小さな電圧となったときに前記小出力領域から遷移する前記負荷出力の中出力領域では、前記蓄電電圧が前記発電電圧を下回らないように前記発電出力を可変して前記発電電圧を低下させた発電出力と、一定値の蓄電出力と、により前記負荷出力を賄うように制御する。
この発明のさらに他の態様に係る燃料電池システムは、発電電圧を発生する燃料電池と、蓄電電圧を発生する蓄電装置と、モータと、直流端が前記蓄電装置に接続され交流端が前記モータに接続されるインバータとからなる負荷と、入力端が前記燃料電池に接続され、出力端が前記インバータの直流端と前記蓄電装置に接続される昇圧コンバータと、メモリと、該メモリに記録されたプログラムを実行するCPUとを備え、前記CPUが前記メモリに記録されたプログラムを実行することにより、前記燃料電池、前記蓄電装置、前記モータ、前記インバータ、前記昇圧コンバータを制御する際に、前記CPUは、前記負荷が要求する電力である負荷出力の大きさに応じて予め定めた出力配分基準に沿って、前記負荷出力を、前記燃料電池の発電出力と前記蓄電装置の蓄電出力により賄うように制御し、前記出力配分基準に沿って前記発電出力と前記蓄電出力を制御する際に、前記負荷出力の小出力領域では、可変した前記蓄電出力のみにより前記負荷出力を賄い、前記負荷出力の中出力領域では、一定値の蓄電出力と、可変した前記発電出力と、により前記負荷出力を賄うように制御する。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、蓄電電圧が発電電圧を下回らないように、言い換えれば、前記発電電圧が前記蓄電電圧よりも下がるように、燃料電池の発電出力を制御している。これにより昇圧コンバータにより発電電圧を蓄電電圧に常時昇圧することが可能になる。したがって、発電電圧が蓄電電圧を上回ることを原因として前記昇圧コンバータの昇圧動作が不能となって、燃料電池と蓄電装置とが非昇圧状態の昇圧コンバータを通じて直結状態になることが回避される。このため、発電出力の制御が不可能になることを原因とする燃料電池の劣化を未然に防止することができる。
【0013】
結果として、従来技術で必要であった、蓄電装置とインバータの直流端との間に配されていた蓄電装置用の昇降圧コンバータの削除が可能となる。したがって削除された昇降圧コンバータ分のコストを削減できる。また、昇降圧コンバータ分のスペースを広くできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、この発明の一実施形態に係る燃料電池システムの制御方法を実施する一実施形態に係る燃料電池自動車の概略全体構成図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した燃料電池自動車の簡略的なブロック図である。
【
図4】
図4は、電源出力に対する蓄電電圧及び発電電圧の特性図である。
【
図5】
図5は、負荷に要求される負荷出力に対する電源出力の配分を示す出力配分表である。
【
図6】
図6は、出力配分表の利用手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、一実施形態の燃料電池自動車の動作説明に供されるフローチャートである。
【
図8】
図8Aは、負荷に対する蓄電出力の利用状況を示すタイムチャートである。
図8Bは、負荷への利用状況に応じた蓄電電圧と発電電圧の推移を示すタイムチャートである。
図8Cは、負荷に対する発電出力の利用状況を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明に係る燃料電池システム及び燃料電池システムの制御方法について、これを実施する燃料電池自動車との関係において、好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0016】
[燃料電池自動車の制御方法に係る構成の説明]
図1は、この実施形態に係る燃料電池システムとしての燃料電池自動車10(以下、「FCV10」又は「車両10」ともいう。)の概略構成図を示している。
【0017】
図2は、FCV10の簡略的なブロック図を示している。
【0018】
燃料電池システムの主負荷が走行用のモータ12である場合の燃料電池システムをFCV10という。なお、主負荷が走行用以外のモータである工場用施設等のプラント等の燃料電池システムにも、この実施形態に係る燃料電池システムの制御方法を適用することができる。
【0019】
図1に示すように、FCV10は、基本的には、燃料電池(FCともいう。)20と、昇圧コンバータ{FCコンバータ又はFCVCU(VCU:Voltage Control Unit)ともいう。}22と、蓄電装置(BATともいう。)24と、インバータ(INVともいう。)26と、モータ12と、トランスミッション(T/M)28と、車輪30と、これらを制御する電子制御装置50(以下「ECU50」ともいう。)と、を備える。
【0020】
なお、
図1において、煩雑さの回避のためにECU50と各構成要素間との配線(信号線等)を一部省略している。
【0021】
燃料電池20と蓄電装置24は、基本的には、FCV10の並列的な電源装置(いわゆる、ハイブリッド電源)として機能する。この電源装置は、インバータ26及びモータ12からなる負荷(主負荷ともいう。)18に出力[W]を供給する。
【0022】
すなわち、燃料電池20の電力(相対的に低電圧の発電出力)Pfc[W]は、昇圧コンバータ22を介して相対的に高電圧の発電出力Pfcとして負荷18に供給される。
【0023】
一方、蓄電装置24の相対的に高電圧の電力(蓄電出力)Pbat[W]は、直接、負荷18に供給される。
【0024】
なお、図示はしないが、蓄電出力Pbatは、負荷18以外に、それぞれが補機負荷である、燃料電池20を駆動するエアポンプ、及びFCV10の灯火装置、電動パワーステアリング装置等にも供給される。
【0025】
燃料電池20は、例えば、固体高分子電解質膜をアノード電極とカソード電極とで両側から挟み込んで形成された燃料電池セルを積層した構造を有する。
【0026】
燃料電池20の近くには、それぞれ図示はしないが、燃料タンクを有する燃料ガス供給源を含むアノード系、エアポンプを有する酸化剤ガス供給源を含むカソード系の他、冷却ポンプを有する冷却系等が含まれる。
【0027】
アノード系は、燃料電池20のアノードに対して燃料ガス(水素)を給排する。カソード系は、燃料電池20のカソードに対して酸素を含む空気(酸化剤ガス)を給排する。冷却系は、燃料電池20を所定温度に保持するために冷却媒体により冷却する。
【0028】
蓄電装置24は、複数のバッテリセルを含むエネルギストレージであり、例えば、リチウムイオン2次電池、ニッケル水素2次電池等を利用することができる。この実施形態ではリチウムイオン2次電池を利用している。蓄電装置24としては、キャパシタを用いることも可能である。
【0029】
昇圧コンバータ22は、チョッパ型のステップアップコンバータ(昇圧電圧変換器)である。昇圧コンバータ22は、図示しているように、例えば、チョークコイル(インダクタ)L1と、ダイオードD1と、スイッチング素子(トランジスタ)T1と、平滑コンデンサC11、C12とから構成される。
【0030】
昇圧コンバータ22は、スイッチング素子T1をデューティ比D{スイッチング素子T1の「ON期間+OFF期間」に対する「ON期間」の比}に応じてON/OFF(ONとOFFの繰り返し)するデューティ制御を行う。このデューティ制御により燃料電池20の出力電圧である発電電圧Vfcを昇圧し、インバータ直流端電圧Vinvdc(Vinvdc=Vbat)として2次側2S側のインバータ26に印加する。昇圧比(Vbat/Vfc)は、公知のように、(Vbat/Vfc)={1/(1-D)}として算出される。
【0031】
インバータ26は、例えば、3相のフルブリッジ型で構成され、双方向動作する直流交流変換器である。モータ12が、燃料電池20及び/又は蓄電装置24の出力により駆動されるFCV10(モータ12)の力行時には、インバータ26は、発電出力Pfc及び/又は蓄電出力Pbatに基づきインバータ26の直流端に発生した直流の力行電力を3相の交流電力に変換してモータ12に供給する。
【0032】
一方、モータ12がインバータ26を通じて駆動されないで回転している回生時には、モータ12に発生する3相の交流電力を直流電力(それぞれ回生電力)に変換して蓄電装置24に供給する。
【0033】
燃料電池20と昇圧コンバータ22の1次側1Sとの間には、燃料電池20の発電電圧Vfcを検出する電圧センサ80と、燃料電池20の発電電流Ifcを検出する電流センサ82が配されている。
【0034】
昇圧コンバータ22の2次側2Sと、蓄電装置24との間には、蓄電装置24の蓄電電圧Vbatを検出する電圧センサ84と、蓄電装置24の蓄電電流Ibatを検出する電流センサ86とが配されている。
【0035】
昇圧コンバータ22の2次側2Sには、昇圧後の発電電流Ifc2を検出する電流センサ88が配されている。
【0036】
インバータ26の直流端には、インバータ直流端電流Iinvdcを検出する電流センサ90が配されている。
【0037】
図1、
図2において、このFCV10では、蓄電装置24をインバータ26の直流端に直接接続(直結)しているので、インバータ26のインバータ直流端電圧Vinvdcは、蓄電電圧Vbatに等しい(Vinvdc=Vbat)ことに留意する。つまり、インバータ直流端電圧Vinvdcは、電圧センサ84により検出(測定)することが可能である。
【0038】
FCV10には、車速を増減又は維持するためのアクセルペダル110が配され、このアクセルペダル110には、アクセルペダル110の踏込量を、アクセルペダル開度θapとして検出する踏込量センサ112が配されている。
【0039】
モータ12には、その回転数Nmotを検出する回転数センサ114が配されている。
【0040】
さらに、FCV10の電源スイッチ(電源SW)116がダッシュボードに配されている。
【0041】
これらセンサ及び電源スイッチ116の信号は、信号線(一部不図示)を通じてECU50に供給される。ECU50は、信号線を介して、各種センサの物理量及び電源スイッチ116のオンオフ等を信号として取得する。信号線は、有線に限らず、無線でもよい。
【0042】
ECU50は、入出力装置、演算装置(CPUを含む)及び記憶装置(メモリ)を備える。ECU50は、前記信号を検出し、記憶装置に記録されているプログラム(制御プログラム)を実行することで各種機能手段として機能し、FCV10を制御する。ECU50は、1つに限らず、燃料電池20用、負荷18用及び蓄電装置24の各制御用に分割して構成してもよい。
【0043】
図3は、燃料電池20の出力特性(IV特性)102を示している。
【0044】
燃料電池20の出力特性102は、発電電圧Vfcが開回路電圧Vfcocvから低下するに従い、発電電流Ifcが増加する特性となっている。より具体的には、開回路電圧Vfcocvとなっている燃料電池20から発電電流Ifcが、閾値発電電流Ifcaまで引かれると、発電電圧Vfcが、開回路電圧Vfcocvから比較的に急傾斜で低下する。
【0045】
次に、閾値発電電流Ifcaから閾値発電電流Ifcbまで、発電電流Ifcが引かれると、発電電圧Vfcが緩傾斜で低下する。
【0046】
さらに、発電電流Ifcが閾値発電電流Ifcb以上に引かれると、発電電圧Vfcが急傾斜で低下する。
【0047】
図4は、電源出力Ppower(発電出力Pfc)[W]に対する発電電圧Vfcの特性106及び電源出力Ppower(蓄電出力Pbat)[W]に対する蓄電電圧Vbatの特性104を示す特性図である。
【0048】
特性106から分かるように、燃料電池20の発電電圧Vfcは、発電出力Pfcの増加に従い、減少関数の2次関数的に減少する。
【0049】
特性104から分かるように、蓄電装置24の蓄電電圧Vbatは、蓄電出力Pbatの増加に従い、負比例の1次関数的(線形)に減少する。
【0050】
図5は、ECU50の記憶装置に予め記録されている出力配分表52を示している。
【0051】
横軸は、負荷18(インバータ26とモータ12)に要求される出力である負荷出力Pload[W]とされ、縦軸は、負荷出力Ploadとして供給される電源出力Ppower[W]とされる。
【0052】
電源出力Ppowerは、発電出力Pfcと蓄電出力Pbatの合成出力(Ppower=Pfc+Pbat)とされる。
【0053】
負荷出力Pload[W]の電力0値から負荷出力P1までの小出力領域Psdでは、負荷出力Ploadは、破線で示す蓄電出力Pbatのみにより賄われる。
【0054】
負荷出力P1から負荷出力P2までの中出力領域Pmdでは、閾値出力である破線で示す一定出力の蓄電出力Pbatconstと、一点鎖線で示す発電出力Pfcの合成出力(Pbatconst+Pfc)とにより賄われる。
【0055】
負荷出力P2以上の大出力領域Pldでは、一点鎖線で示す一定値に維持された発電出力Pfcconstと、破線で示す蓄電出力Pbatの合成出力(Pfcconst+Pbat)により賄われる。
【0056】
太い実線は、合成出力である電源出力Ppower(Ppower=Pbat+Pfc)を示している。
【0057】
図6は、出力配分表52のECU50による利用手順を示すフローチャートである。
【0058】
ECU50は、FCV10の電源スイッチ116のON状態時に、ステップS1にて、負荷18から要求される負荷出力Ploadに対して、それぞれが閾値(基準値)である負荷出力P1と負荷出力P2とを比較する。
【0059】
負荷出力Ploadが負荷出力P1未満のとき(Pload<P1)、ステップS2にて、電源出力Ppowerを、蓄電出力Pbatに設定する(Ppower=Pbat)。
【0060】
負荷出力Ploadが負荷出力P1以上で負荷出力P2未満のとき(P1≦Pload<P2)、ステップS3にて、電源出力Ppowerを、一定蓄電出力Pbatconstと発電出力Pfcの合成出力(Ppower=Pfc+Pbatconst)に設定する。
【0061】
負荷出力Ploadが負荷出力P2以上であるとき(Pload≧P2)、ステップS4にて、電源出力Ppowerを、一定発電出力Pfcconstと蓄電出力Pbatの合成出力(Ppower=Pfcconst+Pbat)に設定する。
【0062】
このように、出力配分表52は、負荷18が要求する電力である負荷出力Ploadを、該負荷出力Ploadの大きさに応じて予め定めた出力配分基準である。後に詳細に説明するように、ECU50は、出力配分表52に定められた出力配分基準に沿って発電出力Pfcと蓄電出力Pbatの配分を設定(決定)し、負荷出力Ploadが賄えるように昇圧コンバータ22等を制御する。
【0063】
[FCV10の基本的な動作説明]
基本的には、以上のように構成されるFCV10の基本的な動作(力行制御と回生制御)を最初に説明する。
【0064】
走行中、ECU50の制御下に、アクセルペダル110の踏込量センサ112から取得される踏込量(アクセルペダル開度)θapに応じた負荷出力Ploadの要求(要求負荷出力)が生成される(モータ12の力行時)。
【0065】
この負荷出力Ploadの要求に基づき、発電中の燃料電池20から供給される発電出力Pfc(Pfc=Ifc×Vfc)及び/又は蓄電装置24から供給される蓄電出力Pbat(Pbat=Vbat×Ibatd)(Ibatd:放電電流)により負荷18が駆動される。
【0066】
この場合、インバータ26を介して駆動されるモータ12が、走行用の動力である駆動力を発生する。当該駆動力によりトランスミッション28を通じて車輪30が回転駆動され、FC自動車10が走行する。
このようにしてECU50は、力行制御を行う。
【0067】
一方、モータ12の回生時、すなわち、アクセルペダル110の踏込量センサ112から取得される踏込量(アクセルペダル開度)θapがゼロ値、いわゆるアクセルペダル110が開放されている減速時にECU50は回生制御を行う。
【0068】
この回生制御中に、インバータ26は、モータ12に発生した交流の回生出力(回生電力)によるインバータ交流端電力をインバータ直流端電力{(直流端電圧Vinvdc×インバータ直流端電流Iinvdc(回生電流Iinvr))}に変換する。
【0069】
モータ12が回生を行うことで発生した回生電力は、蓄電装置24に蓄電電流Ibatcとして蓄電(充電)される。
【0070】
[FCV10の制御方法の説明]
次に、実施形態に係るFCV10の制御方法について、
図7のフローチャート及び
図8A~
図8Cに示すタイムチャートに基づいて説明する。
【0071】
図8A及び
図8Cに示す蓄電出力Pbatの0値及び発電出力Pfcの0値は、負荷出力Ploadとして供給される電力が0値であることを意味している。
【0072】
フローチャートに係るプログラムは、ECU50を制御主体として実行される。
【0073】
ステップS11にて、電源スイッチ116がOFF状態からON状態に遷移したか否かが監視され、ON状態になったことが確認される(ステップS11:YES)と、ステップS12に進む。
【0074】
ステップS12にて、燃料電池20の発電を開始させ、燃料電池20をアイドリング状態に保持する。
【0075】
図8A~
図8Cに示すように、時点t0~時点t1の間(時点ta等)では、発電電圧Vfcは、
図3に示す開回路電圧Vfcocvと発電電圧(閾値電圧)Vfcaとの間の適当な電圧であるアイドル発電電圧Vfcidle(
図8B)に保持される。
【0076】
アイドル発電電圧Vfcidleに係る発電出力Pfcidleは、不図示の補機負荷に供給、若しくは、蓄電装置24に充電される。
【0077】
このアイドル発電期間(t0~t1)において、エアポンプ等の補機負荷には、蓄電装置24の蓄電出力Pbatが供給される。蓄電装置24の蓄電電圧Vbatは、開回路電圧Vbatocvに近い値に保持される。なお、
図8Aは、負荷18に供給される電力を示しているので、時点t0~時点t1の間では0値としている。
【0078】
一方、時点t0(ステップS12)以降、電源スイッチ116がON状態からOFF状態に切り替えられるまで、昇圧コンバータ22は、ECU50により発電電圧Vfcが設定電圧(目標電圧)となるように昇圧比{Vbat(Vinvdc)/Vfc}が制御される。
【0079】
なお、時点t0~時点t1の間では、昇圧コンバータ22の昇圧比は、Vbatocv/Vfcidle(
図8B参照)に設定される。
【0080】
次に、ステップS13にて蓄電出力Pbatが負荷出力PloadとされてFCV10が走行する(時点t1~時点t2の間の時点tb等)。つまり、負荷出力Ploadが蓄電出力Pbatのみにより賄われる。
【0081】
この場合、ステップS14にて、時点t1~時点t2に示すように、蓄電電圧Vbatが低下することを監視する。
【0082】
時点t1~時点t2の間で昇圧コンバータ22の昇圧比は、Vbat/Vfcidleに設定される。
【0083】
次いで、ステップS15にて、低下している蓄電電圧Vbatと発電電圧Vfc(この場合、アイドル発電電圧Vfcidle)との差電圧(Vbat-Vfc)が、予め定めた閾値差電圧ΔVth(≒0[V])まで低下したか否かが判定される。
【0084】
閾値差電圧ΔVthまで低下していない(ステップS15:NO)場合、ステップS16にて、発電電圧Vfcが蓄電電圧Vbatより低い(Vfc<Vbat)ことが監視される(時点tb等)。
【0085】
次いで、ステップS17にて、ステップS1(
図6)で説明した処理と同じ処理を行う。
【0086】
ECU50は、負荷18から要求される負荷出力Ploadに対して、負荷出力P1と負荷出力P2とを比較する。
【0087】
負荷出力Ploadが負荷出力P1未満のとき(Pload<P1)、ステップS12~ステップS17にて、電源出力Ppowerが、蓄電出力Pbatに設定される(Ppower=Pbat)。
【0088】
ステップS12~ステップS17の処理の繰り返し中、ステップS15の判定が肯定的となるまで蓄電電圧Vbatが低下した(Vbat-Vfc=ΔVth)とき、ステップS19に進む。
【0089】
ステップS19では、例えば、時点t2~時点t3の間の時点tcにおいて、一定蓄電出力Pbatconstと発電出力Pfcの合成出力である電源出力Ppowerにより負荷出力Ploadが賄われる。
【0090】
ステップS20にて、発電出力Pfcの増加に応じた発電電圧Vfcの低下が監視され、ステップS16に進む。
【0091】
ステップS16にて、発電電圧Vfcが蓄電電圧Vbatより低い(Vfc<Vbat)ことが監視される。
【0092】
次いで、ステップS17にて、ステップS1(
図6)で説明した処理と同じ処理を再び行う。つまり、ECU50は、負荷18から要求される負荷出力Ploadに対して、負荷出力P1と負荷出力P2とを比較する。
【0093】
負荷出力Ploadが負荷出力P1以上で負荷出力P2未満のとき(P1≦Pload<P2)、ステップS19に戻り、一定蓄電出力Pbatconstと発電出力Pfcの合成出力である電源出力Ppowerにより負荷出力Ploadを賄う。
【0094】
ステップS17→ステップS19→ステップS20→ステップS16の処理の繰り返し継続中、ステップS17の判定にて、負荷出力Ploadが負荷出力P2よりも大きくなった(Pload≧P2)とき、ステップS18に進む。
【0095】
このステップS18では、大きな負荷出力Ploadが、一定発電出力Pfcconstと蓄電出力Pbatとの合成出力である電源出力Ppower(Ppower=Pfcconst+Pbat)により賄われる(時点t3以降)。
【0096】
以降、ステップS16→ステップS17→ステップS18の処理を繰り返し、ステップS17の判定結果により処理を選択する。
【0097】
[変形例]
上記実施形態は、以下のような変形も可能である。
【0098】
ステップS17からステップS18へ処理を進める際、換言すれば、負荷出力Ploadの中出力領域Pmdから大出力領域Pldへ遷移する際、発電電圧Vfcが、予め定めた発電電圧(閾値電圧)Vfcb(
図3)まで低下したとき、又は発電電流Ifcが、予め定めた閾値発電電流Ifcb(
図3)を上回る電流となったときに遷移させるようにしてもよい。このような遷移制御を行うことにより簡易な制御で中出力領域Pmdと大出力領域Pldとを切り替えることができる。
【0099】
[実施形態及び変形例から把握し得る発明]
ここで、上記実施形態から把握し得る発明について、以下に記載する。なお、理解の便宜のために構成要素の一部には、上記実施形態で用いた符号を付けているが、該構成要素は、その符号を付けたものに限定されない。
【0100】
この発明は、燃料電池システムの制御方法であって、前記燃料電池システムは、発電電圧Vfcを発生する燃料電池20と、蓄電電圧Vbatを発生する蓄電装置24と、モータ12と、直流端が前記蓄電装置24に接続され交流端が前記モータ12に接続されるインバータ26とからなる負荷18と、入力端が前記燃料電池20に接続され、出力端が前記インバータ26の直流端と前記蓄電装置24に接続される昇圧コンバータ22と、を有し、前記制御方法は、前記発電電圧Vfcと前記蓄電電圧Vbatを取得する工程(ステップS16)と、前記蓄電電圧Vbatが前記発電電圧Vfcを下回らないように、前記燃料電池20の出力である発電出力Pfcを制御する工程(ステップS16、S17、S12、S18、S19)と、を有する。
【0101】
このように、蓄電電圧Vbatが発電電圧Vfcを下回らないように、言い換えれば、前記発電電圧Vfcが前記蓄電電圧Vbatよりも下がるように、燃料電池20の発電出力Pfcを制御している。これにより昇圧コンバータ22により発電電圧Vfcを蓄電電圧Vbatに常時昇圧することが可能になる。したがって、発電電圧Vfcが蓄電電圧Vbatを上回ることを原因として前記昇圧コンバータ22の昇圧動作が不能となって、燃料電池20と蓄電装置24とが非昇圧状態の昇圧コンバータ22を通じて直結状態になることが回避される。このため、発電出力Pfcの制御が不可能になることを原因とする燃料電池20の劣化を未然に防止することができる。
【0102】
結果として、従来技術で必要であった、蓄電装置24とインバータ26の直流端との間に配されていた蓄電装置用の昇降圧コンバータの削除が可能となる。したがって削除された昇降圧コンバータ分のコストを削減できる。また、昇降圧コンバータ分のスペースを広くできる。
【0103】
また、燃料電池システムの制御方法において、前記発電出力Pfcを制御する工程では、前記負荷18が要求する電力である負荷出力Ploadを、該負荷出力Ploadの大きさに応じて予め定めた出力配分基準に沿って前記発電出力Pfcと前記蓄電装置24の蓄電出力Pbatにより賄うように制御する。
【0104】
これにより、予め定めた出力配分基準に沿って発電出力Pfcを機械的に制御(処理)することができる。
【0105】
さらに、燃料電池システムの制御方法において、前記発電出力を制御する工程では、前記負荷18が要求する電力である負荷出力Ploadの小出力領域Psdでは、前記蓄電装置24の電力を可変して蓄電出力Pbatのみにより前記負荷出力Ploadを賄い、前記負荷出力Ploadの中出力領域Pmdでは、一定値の前記蓄電出力Pbatconstと前記燃料電池20の電力である発電出力Pfcを可変した発電出力Pfcにより前記負荷出力Ploadを賄い、前記負荷出力Ploadの大出力領域Pldでは、一定値の前記発電出力Pfcconstと、前記蓄電出力Pbatを可変した蓄電出力Pbatとにより前記負荷出力Ploadを賄うように制御する。
【0106】
これにより、この燃料電池システムは、電源出力Ppowerが、蓄電出力Pbatと発電出力Pfcとのハイブリッド電源出力になる。
【0107】
負荷出力Ploadの小出力領域Psdでは、電力効率の低い発電出力Pfcを用いずに蓄電出力Pbatを用いる。負荷出力Ploadの中出力領域Pmdでは、ともに電力効率の高い発電出力Pfcと蓄電出力Pbatの両方を用いる。負荷出力Ploadの大出力領域Pldでは、蓄電出力Pbatと電力効率の高い領域での一定値の発電出力Pfcconstとを用いる。
【0108】
このように制御することで、電源出力Ppower(負荷出力Pload)の小出力領域Psdから大出力領域Pldまでの全領域で高い電力効率で燃料電池システムを動作させることができる。
【0109】
さらにまた、燃料電池システムの制御方法において、前記発電出力を制御する工程では、前記負荷出力Ploadの小出力領域Psdから中出力領域Pmdへ遷移する際、前記蓄電電圧Vbatから前記発電電圧Vfcを引いた差電圧(Vbat-Vfc)が、予め定めた閾値差電圧ΔVthまで小さな電圧となったときに、遷移させる。
【0110】
これにより、簡易な制御で小出力領域Psdと中出力領域Pmdとを切り替えることができる。
【0111】
さらにまた、燃料電池システムの制御方法において、前記発電出力Pfcを制御する工程では、前記負荷出力Ploadの中出力領域Pmdから大出力領域Pldへ遷移する際、前記発電電圧Vfcが、予め定めた閾値電圧Vfcbまで低下したとき、又は発電電流Ifcが、予め定めた閾値発電電流Ifcbを上回る電流となったときに、遷移させるようにしてもよい。
【0112】
この場合にも、簡易な制御で中出力領域Pmdと大出力領域Pldとを切り替えることができる。
【0113】
なお、モータ12は、燃料電池自動車10の走行用モータとすることができる。
【0114】
この発明に係る燃料電池自動車10は、発電電圧Vfcを発生する燃料電池20と、蓄電電圧Vbatを発生する蓄電装置24と、モータ12と、直流端が前記蓄電装置24に接続され交流端が前記モータ12に接続されるインバータ26とからなる負荷18と、入力端が前記燃料電池20に接続され、出力端が前記インバータ26の直流端と前記蓄電装置24に接続される昇圧コンバータ22と、メモリと、該メモリに記録されたプログラムを実行するCPUとを備え、前記CPUが前記メモリに記録されたプログラムを実行することにより、前記燃料電池20、前記蓄電装置24、前記モータ12、前記インバータ26、前記昇圧コンバータ22を制御する際に、前記CPUは、前記蓄電電圧Vbatが前記発電電圧Vfcを下回らないように、前記燃料電池20の出力である発電出力Pfcを制御する。
【0115】
この燃料電池自動車10では、昇圧コンバータ22により発電電圧Vfcを蓄電電圧Vbatに常時昇圧することが可能になる。したがって、発電電圧Vfcが蓄電電圧Vbatを上回ることを原因として前記昇圧コンバータ22の昇圧動作が不能となって、燃料電池20と蓄電装置24とが非昇圧状態の昇圧コンバータ22を通じて直結状態になることが回避される。このため、発電出力Pfcの制御が不可能になることを原因とする燃料電池20の劣化を未然に防止することができる。
【0116】
結果として、従来技術で必要であった、蓄電装置24とインバータ26の直流端との間に配されていた蓄電装置用の昇降圧コンバータの削除が可能となる。したがって削除された昇降圧コンバータ分のコストを削減できる。また、昇降圧コンバータ分のスペースを広くできる。
【0117】
なお、この発明は、上述した実施形態に限らず、この発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0118】
10…燃料電池自動車(車両、FC自動車、FCV)
12…モータ 18…負荷
20…燃料電池 22…昇圧コンバータ
24…蓄電装置 26…インバータ
50…電子制御装置(ECU) 52…出力配分表
102…出力特性 104、106…特性