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特許7379450オンセンターステアリングおよび高速反応車両のための方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】オンセンターステアリングおよび高速反応車両のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/02 20120101AFI20231107BHJP
   B60G 17/015 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
B60W30/02
B60G17/015
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021192643
(22)【出願日】2021-11-29
(62)【分割の表示】P 2018555129の分割
【原出願日】2017-04-21
(65)【公開番号】P2022036086
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2021-12-24
(31)【優先権主張番号】62/326,679
(32)【優先日】2016-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512321121
【氏名又は名称】クリアモーション,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョヴァナルディ,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】テイラー,マシュー,ジョー
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラセカール,ジャガナート
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-137446(JP,A)
【文献】特開昭62-221908(JP,A)
【文献】特開2005-162021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
B60G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の車両の運転者からの特定の指令に対する前記第1の車両の車体の反応を制御する方法であって、
第1の車両による第1の操作を行う、前記第1の車両の運転者からの前記特定の指令をセンサーから受け取ることであって、前記特定の指令がステアリング指令と、ブレーキ指令と、加速指令とを含むグループから選択される、受け取ることと、
記特定の指令に基づいて、目標方向と、目標大きさと、目標変化率とのうちの少なくとも1つを含む特定の1組の目標アスペクトを有する前記車体の目標反応を、プロセッサにより数値モデルを用いて予測することであって、前記目標方向は、ロール方向、ピッチ方向、および/またはヒーブ方向であり、前記目標大きさは、ロール大きさ、ピッチ大きさ、および/またはヒーブ大きさであり、前記目標変化率は、ロール変化率、ピッチ変化率、および/またはヒーブ変化率である、予測することと、
プロセッサを含むコントローラを用い、前記車体の前記目標反応に基づいて、1の能動力を判断することと、
つまたは複数の能動サスペンションアクチュエータによって前記車体に対して前記第1の能動力を加え、それによって前記第1の車両に、前記特定の指令に対して、前記第1の車両の固有反応より速い反応をさせることとを含む方法。
【請求項2】
前記反応は、前記特定の目標反応の方向に等しい能動方向を有する動きを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応は、前記特定の目標反応の変化率に等しい能動変化率を有する動きを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記反応は、前記特定の指令に対する第2の車両の反応の大きさに等しい大きさを有する動きを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記予測することは、
第2の車両のモデルを使用して、特定の目標反応を予測することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の車両は受動または半能動サスペンションシステムを有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の車両は、第1のヨー慣性を有し、前記第1の車両は前記第1のヨー慣性より大きい第2のヨー慣性を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記判断することは、
固有反応が固有方向と、固有大きさと、固有目標変化率とを含むグループから選択される、第2の組のアスペクトを有する、前記特定の指令に対する前記第1の車両の前記固有反応を判断することと、
前記固有反応のアスペクトと、予測された前記第2の車両の目標反応のアスペクトとの差を計算することと、
前記差に基づいて第1の能動力を判断することとを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
記第1の能動力は前記固有方向に加えられる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記判断することは、
前記固有反応の固有変化率を判断することを含み、
前記反応は前記固有変化率よりも速い変化率を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記判断することは、
前記固有反応の固有大きさを判断することを含み、
前記反応は、前記固有大きさと等しい大きさ、前記固有大きさより大きい大きさのうちの少なくとも一方の大きさを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の操作は、第1の時点から第2の時点まで存続する存続期間を有し、前記方法は、
前記第1の時点より後であって前記第2の時点よりも早い第3の時点で前記第1の能動力の印加を停止することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の操作は旋回方向への旋回を含み、前記固有反応は前記旋回方向から離れる方向へのロールを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の操作は、ブレーキをかけることを含み、前記固有反応は前方方向のピッチである、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の車両は、前記特定の指令に対する所望の反応を有する仮想車両である、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 開示の実施形態は、一般には車両の反応に関し、より詳細にはオンセンターステアリングを含む車両ステアリングに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 乗車者、特に運転者との車両の相互作用のかなりの部分が、ハンドル、アクセルペダルおよび/またはブレーキペダルによって生じる制御入力によって決まる。これらの装置からのこのような入力に対する反応は車両間で大幅に異なることがある。
【発明の概要】
【0003】
[0003] 実施形態によっては、例えばハンドルおよび/または、ブレーキペダルおよび/またはガスペダルなどの1つまたは複数のペダルを使用して与えられる特定の運転者入力または指令に対する反応が、1つまたは複数の能動力の印加によって引き起こされ、影響され、調整される。これらの能動力は、例えば、能動サスペンションシステムの1つまたは複数のアクチュエータによって車両の車体に加えられ得る。ある実施形態では、能動サスペンションシステムの介入によって、車両が、能動力の印加がない場合の反応よりも車両の運転者にとってより反応がよいように思われるようにすることができる。実施形態によっては、例えば、車輌のコントローラが、特定の運転条件において、1つまたは複数の運転者入力に対する被制御車両の予想される固有反応を判断することができる。次に、コントローラは、能動サスペンションアクチュエータを使用して、より望ましい強制反応を生じさせるように被制御車両の固有反応を修正することができる。この強制反応は、例えば1つまたは複数の点で実際または仮想の目標車両の固有反応を近似するかまたは再現することができる。
【0004】
[0004] 例えば、一実施形態では、車両コントローラが運転者生成入力および/または、ハンドルセンサからの、例えばハンドル位置(δ)、アクセルペダル位置(α)センサからのアクセルペダル位置、ブレーキペダル一センサ(β)からのブレーキペダル位置、車輪にかかる駆動トルクまたはブレーキトルク、ステアバイワイヤまたは後部ステアシステムのための指令信号または測定信号、このような数量の一次、二次、またはより高次の時間導関数、および/または、車速を測定可能なセンサからの車速を含む、車両動作パラメータに関する情報を受信することができる。1つまたは複数のこのようなパラメータおよびこのような運転者入力情報と、これらの入力に対する被制御車両の予想固有反応と望ましい目標反応との差に関する情報とに基づいて、コントローラは車両の1つまたは複数のアクチュエータを使用して、1つまたは複数の能動力を加えることによってこれらの入力に対して反応することができる。加えられる能動力は、例えば車両のロール、ヒーブおよび/またはピッチパラメータなどの特定の反応標識を、例えば生成、修正または補強することができる。
【0005】
[0005] 実施形態によっては、特定の運転条件下で、運転者によって受け取られる反応標識は、例えば、ロール角(φ)、
【数1】

【数2】

ピッチ角(θ)、
【数3】

【数4】

などのロールおよび/またはピッチパラメータを含み得るが、これらには限定されない。ある実施形態では、これらの標識は、ハンドル角(δ)、
【数5】

【数6】

など1つまたは複数のステアリングおよび/またはペダル入力に対する反応であってもよい。ある実施形態では、能動サスペンションアクチュエータを使用して1つまたは複数の反動標識を生成、補強または修正することができる。
【0006】
[0006] 本明細書で使用される「反応性」という用語は、運転者生成入力に対する車両の反応が運転者によってどれだけ迅速に知覚されるかを意味するものと解釈される。
【0007】
[0007] 本明細書で使用される「能動力」とは、その力の印加時点で車体の運動の方向に車体に加えられる力を意味し、それに対して「受動力」(または「減衰力」)という用語は、その力の印加時点で車体の運動の方向とは逆の方向に車体に加えられる力を意味するものと解釈される。
【0008】
[0008] 本明細書で使用される車両操作者による特定の指令または入力に対する車両の「固有反応」とは、例えば車両のロールおよび/またはピッチを誘起、補強および/または修正するための車体に対する能動力の印加が存在しない状態または実質的に存在しない状態での車両の反応を意味するものと解釈される。
【0009】
[0009] 本明細書で使用される、車両操作者による特定の指令または入力に対する車両の「強制反応」という用語は、例えば、1つまたは複数の能動力の印加によって補強または修正される、例えば車両のロールおよび/またはピッチを意味するものと解釈される。
【0010】
[0010] 本明細書で使用される「被制御車両」という用語は、文脈が別の解釈を示さない限り、車両入力に反応して車体のロールおよび/またはピッチモーメントを誘起または修正するために、車両の能動サスペンションシステムを使用して能動力を加えることが可能な車両を意味する。能動力は、運転者によって与えられるハンドルおよび/またはペダル入力に反応して加えることができる。その結果のロールおよび/またはピッチモーメントは、特定の条件で、運転者入力に対して固有反応よりもより反応がよいと知覚されるような方式で車両を動かすことができる。
【0011】
[0011] 本明細書で使用される、車両操作者による特定の指令または入力に対する車両の「目標反応」という用語は、被制御車両の固有反応よりも速いことがある望ましい反応を意味するものと解釈される。目標反応は、例えば、被制御車両自体の1人または複数の車両乗車者から事前に取得されたフィードバック、他の車両(例えば被制御車両と類似または同一のモデル)から事前に取得された反応データ、望ましい反応を有するものと見なされ得る他の車両モデル(例えば2016年型フェラーリ488GTB、または類似の反応を有する他の車両)の数値モデル予測性能からの反応データ、予め選択された反応特性を有する実際の目標車両の反応および/または仮想目標車両の反応に基づいて定義されてよい。
【0012】
[0012] 本明細書で使用される、旋回を行っている車体を基準にした「内部側」(または内側)という用語は、(a)車両が(運転者の視点から見て)左折するときの(米国内運転向けに構成された車両における)運転席側と、(b)車両が(運転手の視点から見て)右折するときの米国内運転向けに構成された車両における)助手席側とを意味するものと解釈される。同様に、旋回を行っている車体を基準にした「外部側」(または外側)とは、(a)車両が(運転手の視点から見て)右折するときの(米国内運転向けに構成された車両における)運転席側と、(b)車両が(運転者の視点から見て)左折するときの(米国内運転向けに構成された車両における)助手席側とを意味するものと解釈される。本明細書で使用するロールは、車体の外側が車体の内側に対して相対的に垂直方向に下げられるように(あるいは、言い換えると、車体の内側が車体の外側に対して相対的に垂直方向に上げられるように)車体がローリングするとき、「ポジティブ」である、または旋回の方向から「遠ざかって」いると言う。ロール運動は、車体の外側が車体の内側に対して相対的に垂直方向に上げられるときに、「ネガティブ」である、または旋回に「入って」いると言う。
【0013】
[0013] 一態様では、被制御車両の車体の反応を制御する方法が開示され、この方法は、(a)自律走行車両または半自律走行車両の場合に運転者からの入力または制御システムからの信号を受け取ることと、(b)車体の反応のアスペクトを変更することとを含み、反応はロールとピッチとのうちの少なくとも一方であり、アスペクトは速度と大きさとのうちの少なくとも一方であり、アスペクトの値は少なくとも部分的に入力に基づく。ある実施形態では、車両の反応のアスペクトを修正することは、被制御車両の能動サスペンションシステムの1つまたは複数のアクチュエータによって、車体に第1の力を加えることを含む。ある実施形態では、入力は、車両に対して旋回方向に旋回するように指令するハンドル角の変更であり、第1の力は旋回方向から離れる方向のトルクである。ある実施形態では、入力は被制御車両に対して旋回方向に旋回するように指令するハンドル角の変更であり、第1の力は、(i)被制御車両の内側に沿って位置する車体の第1のコーナに加えられる上向きの力と、(ii)被制御車両の外側に沿って位置する車体の第2のコーナに加えられる下向きの力とのうちの少なくとも一方(例えば少なくとも一方、両方)を含む。ある実施形態では、入力は、被制御車両に対してブレーキをかけるように指令するブレーキペダル位置の変更であり、第1の力は車体の前端を車体の後端に対して相対的に垂直方向に下げさせるトルクである。ある実施形態では、入力は、被制御車両に対してブレーキをかけるように指令するブレーキペダル位置の変更であり、第1の力は、(i)被制御車両の前端に位置する車体の第1のコーナに加えられる上向きの力と、(ii)被制御車両の後端に位置する車体の第2のコーナに加えられる下向きの力とのうちの少なくとも一方(例えば少なくとも一方、両方)を含む。ある実施形態では、入力は、被制御車両に対して加速(または減速)するように指令するアクセルペダル(例えばガスペダル)位置の変更であり、第1の力は、被制御車両の後端を被制御車両の前端に対して相対的に垂直方向に上げさせるトルクである。ある実施形態では、入力は、被制御車両に対して加速するように指令するアクセルペダル(例えばガスペダル)位置の変更であり、第1の力は、(i)被制御車両の前端に位置する車体の第1のコーナに加えられる下向きの力と、(ii)被制御車両の後端に位置する車体の第2のコーナに加えられる上向きの力とのうちの少なくとも一方(例えば少なくとも一方、両方)を含む。ある実施形態では、車体は入力に対する固有反応を有し、第1の力は固有反応の方向に等しい方向を有する。ある実施形態では、アスペクトは変化率であり、反応はロールである。ある実施形態では、アスペクトは変化率であり反応はピッチである。
【0014】
[0014] 別のアスペクトでは、指令(例えばブレーキ指令、加速指令、ステアリング指令)に対する被制御車両の車体の強制反応を制御する方法が開示され、この方法は、(a)(例えば車両を前方方向に加速するため、車両を前方方向に減速するため、車両を第1の方向(例えば左、右)に旋回させるために)車両による第1の操作を行う指令を受領、測定、推定または導出することと、(b)固有反応がロールとヒーブとピッチ運動とのうちの少なくとも1つを含む、指令に対する固有反応の方向を判断することと、(c)1つまたは複数(例えば少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ)の能動サスペンションアクチュエータによって車体に第1の力(例えば直線力、トルク)を固有反応の方向に加え、それによって強制反応(例えば強制反応は能動ロール、能動ヒーブ、能動ピッチ運動のうちの少なくとも1つを含む)を生じさせることとを含む。ある実施形態では、第1の力は固有反応が開始する前であって指令が受け取られる前に加えられる。ある実施形態では、ステップ(b)は、固有反応の固有変化率(例えば速度)を判断することをさらに含み、強制反応は固有変化率よりも速い変化率を有する。ある実施形態では、ステップ(b)は、固有反応の固有大きさを判断することをさらに含み、強制反応は、固有大きさと等しい大きさ、固有大きさよりも大きい大きさのうちの少なくとも一方である大きさを有する。ある実施形態では、第1の操作は、第1の時点から第2の時点まで存続する期間を有し、方法は第3の時点で第1の力の印加を停止することをさらに含み、第3の時点は第1の時点よりも後であり、第2の時点よりも早い。ある実施形態では、第1の操作は、旋回方向(例えば、左、右))への旋回を含み、固有反応は旋回方向から離れる方向にローリングする(すなわち、車体の外側が車体の内側に対して相対的に下げられる)ことを含む。ある実施形態では、操作は、ブレーキをかけること(例えば前方方向の減速)を含み、固有反応は前方方向のピッチである(すなわち車体の前端が車体の後端に対して相対的に下げられる)。
【0015】
[0015] 別の実施形態では、特定の指令(例えばブレーキ指令、加速指令、ステアリング指令)に対する被制御車両(例えば能動サスペンションシステムを含む車両)の車体の強制反応(例えば能動ロール、能動ピッチ、能動ヒーブ)を制御する方法が開示され、この方法は、(a)特定の指令がステアリング指令と、ブレーキ指令と、加速指令とのうちの少なくとも1つを含む、被制御車両による第1のステアリングを行う特定の指令を受け取ることと、(b)特定の指令に基づいて、目標方向(例えばロール方向、ピッチ方向、ヒーブ方向)、目標大きさ(例えばロール大きさ、ピッチ大きさ、ヒーブ大きさ)、目標変化率(例えばロール変化率、ピッチ変化率、ヒーブ変化率)のうちの少なくとも1つを含む特定の1組の目標アスペクトを有する特定の目標車体反応(例えば目標ロール、目標ピッチ、目標ヒーブ)を判断することと、(c)特定の目標車体反応に基づいて、第1の力(例えば直線力、トルク)を判断することと、(d)1つまたは複数(例えば、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ)の能動サスペンションアクチュエータによって、車体に第1の力(例えば直線力、トルク)を加え、それによって車体の強制反応を生じさせることとを含む。ある実施形態では、強制反応は、特定の目標車体反応の方向と等しい能動方向を有する動きを含む。ある実施形態では、強制反応は、特定の目標車体反応の変化率と等しい能動変化率を有する動きを含む。ある実施形態では、強制反応は、特定の目標車体反応の大きさと等しい能動大きさを有する動きを含む。
【0016】
[0016] ある実施形態では、前記ステップ(b)は、目標車両のモデル(例えば1組の規則、1組の関数)を得ることをさらに含み、モデルは目標車体の目標反応を、基準ステアリング指令、基準加速指令、基準ブレーキ指令のうちの少なくとも1つの関数として定義し、そのモデルに照らして特定の指令を評価することによって特定の目標車体反応を計算することをさらに含む。ある実施形態では、目標車両は受動または半能動サスペンションシステムを有する。ある実施形態では、目標車両は第1のヨー慣性を有し、被制御車両は、第1のヨー慣性よりも大きい第2のヨー慣性を有する。ある実施形態では、前記ステップ(c)は、固有反応が固有方向(例えばロール方向、ピッチ方向、ヒーブ方向)と、固有大きさ(例えばロール大きさ、ピッチ大きさ、ヒーブ大きさ)と、固有目標変化率(例えばロール変化率、ピッチ変化率、ヒーブ変化率)とのうちの少なくとも1つを含む第2の1組のアスペクトを有する、指令に対する固有反応を判断することと、第2の1組のアスペクトと第1の1組のアスペクトとの差を計算することと、差に基づいて第1の力を判断することとをさらに含む。ある実施形態では、第1の力は固有方向に加えられる。
【0017】
[0017] 別のアスペクトでは、ステアリング指令に対する車両(例えば能動サスペンションシステムを含む車両)の車体の強制反応を制御する方法が開示され、この方法は、車両のハンドルを第1の回転変化率で第1の位置まで回転させることと、第1の位置と第1の変化率とのうちの少なくとも1つ(例えば少なくとも1つ、少なくとも2つ)に基づいて、第1の力(例えば直線力、トルク)を判断することと、1つまたは複数(例えば、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ)の能動サスペンションアクチュエータによって車体に第1の力を加え、それによって強制反応を生じさせる(例えば、強制反応は能動ロールと、能動ヒーブと、能動ピッチ運動とのうちの少なくとも1つを含む)こととを含む。ある実施形態では、ハンドルを回転させることによって車両を(例えば米国向けに構成された車両における運転席側に)左折させ、第1の力は時計回り(すなわち車両の背後にいる観察者が知覚する時計回り)の方向を有するトルクである。他の実施形態では、ハンドルを回転させることによって車両を(米国向けに構成された車両における助手席側に)右折させ、第1の力は反時計回り(すなわち車両の背後にいる観察者が知覚する反時計回り)の方向を有するトルクである。
【0018】
[0018] さらに別のアスペクトでは、加速指令に対する車両(例えば能動サスペンションシステムを含む車両)の車体の強制反応を制御する方法が開示され、この方法は、アクセルペダル(例えばガスペダル)、ブレーキペダルのうちの1つである車両のペダルの位置を第1の変化率で第1の位置から第2の位置に変化させることと、第1の位置と第2の位置と第1の変化率とのうちの少なくとも1つ(例えば少なくとも1つ、少なくとも2つ)に基づいて、第1の力(例えば直線力、トルク)を判断することと、1つまたは複数(例えば、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ)の能動サスペンションアクチュエータによって車体に第1の力を加え、それによって強制反応を生じさせること(例えば、強制反応は、能動ロールと、能動ヒーブと、能動ピッチ運動とのうちの少なくとも1つを含む)とを含む。ある実施形態では、ペダルの位置を変更することは、車両を前方方向に加速させ、第1の力は車両の後端を車両の前端に対して垂直方向に下げさせる。他の実施形態では、ペダルの位置を変更することは、車両を前方方向に減速させ、第1の力は車両の前端を車両の後端に対して相対的に垂直方向に下げさせる。
【0019】
[0019] さらに別のアスペクトでは、車両が開示され、この車両は、車体と、車両を左(すなわち米国向けに構成された車両における運転席側)に旋回するように指令するステアリング指令に反応して車体に対して時計回り方向(すなわち車両の背後にいる観察者によって知覚される時計回り)にトルクを加えるように構成された1つまたは複数(例えば1つ、2つ、3つ、4つ)の能動サスペンションアクチュエータの第1の1組とを含む。
【0020】
[0020] さらに別のアスペクトでは、車両が開示され、この車両は、車体と、車両を右(すなわち米国向けに構成された車両における助手席側)に旋回するように指令するステアリング指令に反応して車体に反時計回り方向(すなわち、車両の背後にいる観察者によって知覚される反時計回り)にトルクを加えるように構成された1つまたは複数(例えば1つ、2つ、3つ、4つ)の能動サスペンションアクチュエータの第1の1組とを含む。
【0021】
[0021] 車両能動サスペンションまたはその他の制御システムおよび方法の上記およびその他の特徴および利点を含む前記の概要、および本発明の好ましい実施形態の簡単な説明は、添付図面とともに読めばよりよく理解できるであろう。本発明の1つまたは複数の実施形態を例示するためとその動作を説明するために、図面および概略図を示す。しかし、本発明は、図示されている厳密な構成、変形、構造、特徴、実施形態、アスペクト、方法、利点、改良および手段には限定されず、図示および/または記載されている構成、変形、構造、特徴、実施形態、アスペクト、方法、利点、改良および手段は、システムまたは方法において単独で使用されてもよく、または他の構成、変形、構造、特徴、実施形態、アスペクト、方法と組み合わせて使用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】[0022]ハンドル角入力に反応する車両の上面および側面を示す概略図である。
図2】[0023]例示の被制御車両におけるハンドル角の運転者入力と被制御車両および目標車両のロール角反応とを示す図である。
図3】[0024]ステアリング角入力に反応する車両の前面の概略を示す図である。
図4】[0025]二輪車モデルの一実施形態を示す概略図である。
図5】[0026]運転者入力に対する車両反応を制御するためのコントローラアルゴリズムの一実施形態を示す概略ブロック図である。
図6】[0027]ハンドル入力の階段状変化に反応する被制御車輌とより反応のよい目標車両のためのモデル出力を示すグラフである。
図7】[0028]ロール力指令アルゴリズムを示す概略ブロック図である。
図8】[0029]与えられた入力に反応する所望の動きパターンを計算するために使用されるアルゴリズムの一実施形態の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[0030] 以下、車両反応制御システムのための本明細書で開示されるシステムおよび方法の構造、機能、製造および使用の原理を包括的に理解することができるように、特定の例示の実施形態について説明する。これらの実施形態の1つまたは複数の例を、添付図面に示し、本明細書で説明する。当業者は、本明細書に記載され、添付図面に示されているシステム、方法、および例は、非限定的な例示の実施形態であることと、本発明の範囲は特許請求の範囲のみによって規定されることがわかるであろう。1つの実施形態に関連して図示または記載されている特徴を他の実施形態の特徴と組み合わせてもよく、これらの特徴は、個別に、単独で、および/または様々な組み合わせで使用されてもよい。このような変更は本開示の範囲内に含まれるものと意図されている。
【0024】
[0031] 現代の車両の重要かつ求められている一面は、例えば、ハンドル、アクセル、および/またはブレーキペダル入力などの、運転者からの入力指令に対して即座に、予測通りに反応することができる能力である。これらの入力には、1つまたは複数の方向への車体の加速が含まれることがあり、車両および乗車者に特定の慣性力を受けさせる。
【0025】
[0032] 発明人等は、実験と分析により、運転者による車両の反応性の知覚は、運転者によって検知または感じられるが、運転者が生じさせる入力に起因し得る、1つまたは複数の反応標識に少なくとも部分的に依存する可能性があることを認識した。例えば、運転者が、車両のハンドルを回すことによってステアリング入力を生じさせると、運転者は車両の横加速度を感知することができる。反応のよい車両では、この感知される標識は急速に現れ、高減衰であることがあり、つまり入力が変化しなくなった後は長く存続しない。例えば、実施形態によっては、きわめて反応のよい車両は、少なくとも0.7の近臨界減衰係数で最大5Hzまでのロール方向の固有振動数を有することがある一方、反応の悪い車両は、約1.5Hzの振動数と約0.4以下の減衰係数を有することがある。なお、本開示はこれらには限定されず、車両の種類ごとに上記した範囲外にある固有振動数および減衰係数が、反応のよい車両および反応の悪い車両によって示され得るものと理解される。発明人等は、運転者は、いくつかの異なる方法で運転者入力に対する車両の反応を知覚することができることを認識した。例えば、ある実施形態では車両の固有反応の結果、横加速度または前後加速度の感覚、および/または、車両のロール角および/またはピッチ角の変化の感覚を生じさせることがあるとともに、これらの数量が変化する変化率、および/または変化率の導関数を運転者が感知することができ、ステアリング指令および/またはペダル指令に対する反応標識と解釈することができる。運転者は、入力指令が与えられる時点と特定の反応標識が感知される時点との間の時間の長さを車両の反応性の尺度として知覚することができる。
【0026】
[0033] 知覚される車両の反応性は広範囲にわたって異なることがあり、例えば2016年型フェラーリ488GTBまたはそれに匹敵する反応性を備えた車両は、きわめて反応がよいと見なすことができ、2016年型BMW5シリーズまたはそれに匹敵する反応性を備えた車両は中程度に反応がよいと見なすことができ、2016年型リンカーンナビゲーターまたはそれに匹敵する反応性を備えた車両は反応性が悪いと見なすことができる。
【0027】
[0034] 発明人等は、ある実施形態では、車両の実際の固有反応にかかわらず、運転者生成指令に対する車両の知覚される反応は、1つまたは複数のアクチュエータを使用して、車両に加えられるロール、ヒーブおよび/またはピッチモーメントを少なくとも一時的に誘起、変更または補強することによって改善し得ることも認識した。
【0028】
[0035] 発明人等はさらに、多くの運転者が、車両の反応が運転者の指令入力と線形関係または比例関係にあると知覚されるときに安心でき、および/または望ましいとも考えることを認識した。例えば、ステアリング指令の場合、運転者は、反応がステアリング入力の非線形関数である「U」字型であるよりもむしろ、車両の反応がステアリング角入力に正比例する「V」字型ステアリング反応を有するステアリングシステムを好み、反応は、例えば、上述の知覚される反応標識、および、操舵トルク、操舵トルク変化率、およびパワーステアリングシステムからの可聴反応などの他の標識のうちの1つまたは複数を含むものと定義される。
【0029】
[0036] 実験により、発明人等は、車両の能動サスペンションシステムを使用して、運転者によって知覚されることになる特定の反応標識を迅速に与えることができることを認識した。1つまたは複数のこのような標識を与えることによって、車両をはるかにより反応がよく思われるようにすることができる。ある実施形態では、反応標識は運転者入力に正比例し得る。例えば、ある実施形態では、反応標識が車両ロール角であり、運転者入力がハンドル角である場合、ロール角はハンドル角の負数に正比例し得る。
【0030】
[0037] 実施形態によっては、能動サスペンションシステムを使用して車両のオンセンターステアリング感覚および/または挙動を改善することができる。例えば、運転者が車両を正しく車線の中央を走行させるためにハンドル角を変えると、能動サスペンションアクチュエータを使用して、ステアリング入力に相応した標識を運転者に与えることができる。
【0031】
[0038] 能動サスペンションシステムの採用による車体への能動力の印加のタイミングの大きさおよび存続期間は、車両の固有反応と定義された目標車両反応とに依存し得る。
【0032】
[0039] 発明人等は、実験および分析により、運転者による車両の反応性の知覚は、運転者が生じさせる入力に起因する、運転者によって検知または感じられる1つまたは複数の反応標識に少なくとも部分的に依存し得ることを認識した。例えば、運転者がハンドルを回すことによってステアリング入力を生じさせると、運転者は車両の横加速度を感知することができる。反応のよい車両では、この感知される加速度標識は迅速に現れ、高減衰であり、つまり入力が変化しなくなった後は長く存続しない。例えば、実施形態によっては、きわめて反応のよい車両は少なくとも0.7の近臨界減衰係数で最高5Hzまでのロール方向の固有振動数を有することがあり、一方、反応のよくない車両は約1.5Hzの振動数と約0.4以下の減衰係数を有することがある。なお、本開示はこれらには限定されず、車両の種類ごとに上記した範囲外にある固有振動数および減衰係数が、反応のよい車両および反応の悪い車両によって示され得るものと理解される。
【0033】
[0040] ある種の車両では、サスペンションシステムは、車両が旋回しているときに外側前部コーナが沈むように調整されてもよい。例えば、受動または半能動車両のサスペンションは、旋回中に車両が同時にローリングし、ピッチングするようになされるように調整されてもよい。これは、運転者に、車両前端がポジティブロールを受けている可能性があると同時に、旋回中に車輌の外側前端が「沈み込んで」いるというという印象を与える。ある種の車両では、この沈み込み運動は反応標識の役割を果たすことができる。
【0034】
[0041] 車両において、高瞬間ロールセンタを通る後車軸上により迅速なロールモーメント伝達を生じさせてよく、より低い瞬間ロールセンタを通る前車軸においてより迅速でない伝達を生じさせてもよい。これに加えて、またはこれに代えて、非対称減衰比を有する受動または半能動フロントダンパを使用してもよい。これにより、ダンパを一方向(典型的にはダンパを縮める方向、または圧縮方向)において「より柔らかく」することができ、逆方向において「より硬く」することができ、したがって、下方に動いている車のコーナを、上方に動く車のコーナよりもより積極的に動かすことができる。これは、ステアリング入力に対する車両の初期反応が、典型的には下方および旋回の内側に傾けられた軸(車両の瞬間ロール軸)を中心としたロール加速であることを意味する。言い換えると、旋回の最初に車両の外側前部コーナが沈み込むことになる。受動サスペンションを使用した車両のダンパおよびサスペンションシステムの「調整」により、旋回の外側に向かう車両前部の所望の量の選択的沈み込みを実現することができる。
【0035】
[0042] しかし、ある種の車両では、車両が運転者入力に動的に反応するときにかなりの固有の遅れがある場合がある。このような状況では、運転者は、運転者によって与えられる入力の妥当性または適切さを評価するのに十分に迅速に、十分な反応標識を受け取ることができない。運転者が例えば視覚、触覚、および/または体性感覚反応標識を十分に迅速に受け取ることができない場合、運転者は十分なフィードバックメカニズムを有することができず、車両の有効な制御が困難になる可能性がある。
【0036】
[0043] 運転者入力に対する車両の反応が本質的に遅く、概ね非線形である場合、運転者は例えばステアリング角を絶えず変えることによって絶えず過剰に補償せざるを得ず、過剰反応し、その後、入力を懸命に正そうとする可能性がある。例えば、駆動機構における過度の急激な動作を伴う車両の反応は、「反応が鈍」く、直線的でないと思われる可能性がある。通常は反応が迅速な車両であっても、車両が部分的に空気の抜けたタイヤを有する(「ふらつき」の知覚につながる)か、またはショックアブソーバが劣化している(例えば不均衡なロール反応につながる)場合は反応が鈍く思われることがある。
【0037】
[0044] 車両の反応が予測可能である場合であっても、運転者によってそのように知覚されない場合、または遅すぎると知覚される場合、運転者は車両から離隔されていると感じ、特定の入力が十分および/または適切である時点を予測できないと感じる可能性がある。十分なフィードバックがないと、際限のない修正と再調整に至る可能性がある。より長距離の運転中は、これは操作者の疲労をもたらし、事故の可能性を高くする恐れがある。
【0038】
v 発明人等は、実験により、特定の状況において車両がどのように反応しているかという運転者の知覚は、車両の実際の反応よりも重要であることを認識した。
【0039】
[0045] 発明人等は、実験により、能動サスペンションシステムを備えた車両では、アクチュエータを使用して、運転者入力に対する有効なフィードバックの役割を果たし得る特定の反応標識を運転者に与えることができることを認識した。これらの標識は、他のより遅いフィードバックの代わりとなるかまたは補強することができる。このような代用標識は、例えば、車両ロール、車両ピッチ、および/または、ロールおよび/またはピッチの一次、二次および/またはより高次の導関数の様々な組み合わせを含み得る。
【0040】
[0046] ある種の車両では、上述の固有沈み運動は、かなり遅れて発生することがあり、その場合、有効な反応標識として機能しない可能性がある。能動サスペンションを備えた車両では、アクチュエータを使用してより迅速および/または誇張された沈み込み反応を強制的に生じさせてもよい。運転者入力に対するこの改変された沈み込み反応により、車両がより反応がよいと運転者に思わせることができる。
【0041】
[0047] 図1に能動サスペンションシステムを備えた車両の側面図1と上面図2とを示す。ある実施形態では、車両のロール軸3の向きがサスペンションの弾性運動学によって左右され得るが、能動サスペンション車両は、例えば、(少なくとも前輪7を旋回させる)車両の右折9を指令するハンドル入力に反応して車両の左前部コーナ4の所望の沈み込み運動を生じさせているように思わせることができる。能動サスペンションシステムの1つまたは複数のアクチュエータを使用して、運転者のハンドル入力に反応してこの運動を誘起することができる。例えば、車両の左前部コーナ4またはその付近に配置された第1のアクチュエータを使用して、車体に垂直方向下向きの力を加えながら、車両の右後部コーナ6またはその付近に配置された第2のアクチュエータを使用して車体に同時に垂直方向上向きの力を加えてもよい。沈み込みのタイミングおよび大きさは、例えば被制御車両、他の類似の車両、目標車輌から予め収集されたデータ、および/または、所望の反応を定義するシミュレーションモデルに基づいて決定してもよい。
【0042】
[0048] 発明人等は、実験により、特定の状況において、能動サスペンションシステムの1つまたは複数のアクチュエータを使用して、車両の瞬間的横加速および/または前後加速とは独立可能な強制ロールおよび/またはピッチ反応を誘起することができることも認識した。この強制反応も、前述の沈み込み運動と組み合わせて、またはその代わりとして使用すると、車両をより反応よく思わせることができる。
【0043】
[0049] 発明人等は、実験および分析により、実施形態によっては、例えば、能動サスペンションシステムによるロールサスペンション、および/または、きわめて硬い受動または半能動サスペンションのために、ロール運動がないか、遅れるかまたは不十分な場合、運転手の知覚は、車両の反応がよくないというものであることを認識した。したがって、能動サスペンションシステムを使用して車両を実質的にゼロロールに維持することは、知覚される車両の反応性に関しては逆効果である場合がある。この知覚は、運転席側および/または車体上部に横力を与え得る、ポジティブ方向における車両のロール加速がないことによることがある。運転者は、座席またはその他の表面にかかる圧力の変化を運転者入力に対する反応標識として知覚し得る。
【0044】
[0050] 車両ロールを抑制するように構成された能動サスペンションを備えた車両を、ポジティブ車両ロールを可能にするように構成された能動サスペンションを備えた同じ車両と比較することによって実験を行った。概して、ポジティブロールを可能にするように構成された能動サスペンションを備えた車両は、より反応がよいと知覚された。発明人等は、実施形態によっては、横加速の知覚は、能動サスペンションシステムによって導入されるタイミングをとったロール加速によって補強または代替することができることを認識した。
【0045】
[0051] ある実施形態では、例えばハンドル指令および/またはペダル指令などの入力が、能動サスペンションシステムの1つまたは複数のアクチュエータと通信するコントローラによって受け取られ、コントローラはそれらの入力に反応して特定のアクチュエータに対して車体に能動力を加えるように指令することができる。本明細書では、コントローラとは、1つまたは複数の内蔵回路(例えばプロセッサ)、付随するソフトウェア、および/または、1つまたは複数の入力信号を受信し、受信した入力信号に基づいて1つまたは複数の出力信号を送信または印加することができる付随する電子回路の組を意味するものと解釈される。実施形態によっては、能動サスペンションシステムによって、ステアリング入力および/またはその他の運転者入力に反応して、適切なタイミングと比例とが取られた動きを誘起することができる。この反応は、運転者および/または他の乗車者によって「より速やかな」車両の反応として知覚され得る。能動サスペンションシステムによって誘起されるこのような動きを使用して、車両の固有反応の観察または予測される遅さを少なくともある程度補償することができる。
【0046】
[0052] 以下で詳述するように、実施形態によっては車両の動きの固有ロールおよび/またはピッチ反応は、横方向および/または前後方向の慣性力によって誘起することができる。この固有反応は、強制反応を生じさせるように、1つまたは複数の能動サスペンションアクチュエータによって修正することができる。これらの能動サスペンションアクチュエータは、例えば、これらには限らないが、車線の中央を走行し続けるようにステアリングすること、および/または、右折または左折運転することなど、運転操作中に与えられ得る運転者による入力指令に反応して作動することができる。実施形態によっては、操作中にアクチュエータによって加えられる力を使用して、ステアリング入力および/またはペダル入力に対する車両の反応性の運転者による知覚を改変することができる。
【0047】
[0053] 次に、図2を参照すると、グラフ11は、特定の運転条件の被制御車両の例示の運転者ハンドル角(δ)入力を時間の関数として表したものである。グラフ12は、被制御車両のその特定の運転条件での固有ロール角(φ)反応を時間の関数として表したものである。グラフ13は、目標車両の同じ運転条件での固有ロール角(φ)反応を時間の関数として表したものである。ある実施形態では、目標車両の(例えば図2の3秒における)最終ロール角は、被制御車両の最終ロール角以下とすることができることがわかる。目標車両は、例えば、より小さいヨー慣性を有する車両、またはより高いコーナリング係数を有するタイヤを有する車両など、所望の反応特性を有する車両に相当し得る。グラフ14は、少なくともロールの開始時にポジティブ方向におけるロール角をより急速に増大させるためと、第1の被制御車両の強制反応15を生じさせるために、被制御車体に加えることができる能動力を表す。ある実施形態では、被制御車両の強制反応15は、目標車両の固有反応13と同等または同一とすることができることがわかる。図2に示す実施形態および運転条件では、強制反応により実現される定常ロール角は、車両の固有反応により実現される定常ロール角と等しく、これは実施形態によっては、能動サスペンションから出力される定常力を最小限にするために望ましい結果であり得る。
【0048】
[0054] ある実施形態では、ハンドルが回転されたという入力、および/または、回転の程度の入力をコントローラが受け取ると、コントローラは能動サスペンションシステムの1つまたは複数のアクチュエータに対して、一定時間、慣性力によって誘起される、固有ロールおよび/またはその他の反応を補強する力を加えるように指令することができる。能動力の印加は、一定時間後に(例えば徐々に、急に)停止してよく、または操作全体を通して維持されてもよい。ある実施形態および/または運転条件では、強制反応の定常ロール角は、固有反応の定常ロール角より大きくまたは小さくすることができる。固有反応の定常状態とは異なる強制反応のための定常ロール角を維持するために、能動サスペンションシステムを使用して定常モーメントを加えてもよい。
【0049】
[0055] 上記のように、実施形態によっては、アクチュエータのうちの1つまたは複数のアクチュエータを使用して、所望の強制車両反応を生じさせるために被制御車両に1つまたは複数の能動力を加えることができる。本開示はこれには限定されず、実施形態によっては、能動力は、操作の開始前、操作全体を通じて、および/または、操作のうちの一部の間のみ加えてもよい。また、実施形態によっては、特定の条件下で、例えばヒーブ、ピッチおよび/またはロールの量を維持する必要がなくなった時点で、または、ヒーブ、ピッチおよび/またはロールを維持することが望ましくなくなった場合に、能動力を停止してもよい。能動力は、例えば事故が起こりそうな状況など、望ましくない状況または危険な状況が発生した場合にも停止してよい。
【0050】
[0056] 実施形態によっては、車両の固有運動が開始する前、および/または、固有運動が完了する前に反応標識を与えるように、能動サスペンションシステムを使用して所望の方向および大きさの車両の動きを誘起してよい。車両の知覚反応を向上させるためにアクチュエータによって誘起される動きの最終的な存続期間、方向および程度は、能動サスペンションシステムによる能動力の印加なしに実現されたであろう車両の固有反応と等しいかそれ以上とすることができる。旋回を含む操作中、能動サスペンションシステムによって加えられる力は、少なくとも最初は、旋回の方向から離れる方向(すなわちポジティブロール方向)のロールを誘起することができる。操作は、これに加えて前後加速を含んでよく、誘起される運動は前方方向のピッチを含んでもよい。
【0051】
[0057] ある実施形態では、1つまたは複数の能動力を加えるために使用されるアクチュエータは、電気油圧式線形アクチュエータ、電気機械式線形アクチュエータ、全線形電気アクチュエータ、および/または、例えば電気機械式、電気油圧式、および油圧機械式ロールバーアクチュエータなどの回転型アクチュエータを含み得るが、これらには限定されない。ある実施形態では、能動サスペンションシステムは、車両の各車輪または各車輪付近に配置された個別アクチュエータを含み得る。ある実施形態では、能動サスペンションシステムの各アクチュエータは、車両の各車輪を車体に結合してもよい。
【0052】
[0058] 実施形態によっては、車両およびサスペンションシステム構成、車速、および、車両に与えられる特定の指令を含むがこれらには限定されない要素の作用をモデル化する車両シミュレーションを使用して、車両の固有反応を特性評価する(例えば、予測、近似、計算、シミュレーションする)ことができる。あるいは、車両の固有反応を指令に関係づける1つまたは複数の式または関係を使用してもよい。これらに加えて、またはこれらに代えて、車両の固有反応は、予め収集および/または計算されたデータに少なくとも部分的に基づいてもよい。これらに加えて、またはこれらに代えて、車両の固有反応は、例えば、ヨー変化率センサ、または車体のロールセンタまたはその付近で測定された横加速度など、能動サスペンションによって誘起される動きに影響を受けない測定量に基づいてもよい。
【0053】
[0059] ある実施形態では、被制御車両は、ローカルおよび/またはリモートで記憶されている第1のデータベースにアクセス可能であってもよい。第1のデータベースは、被制御車両が部分的または全面的にエミュレートする所望の目標車両の固有反応を定義するために使用することができる。この第1のデータベースは、所望の目標車両の様々なデータを含むことができる。ある実施形態では、第1のデータベースは、複数の目標車両のデータを含んでよく、所望の目標車両が、車両の製造業者、車両の所有者、車両乗車者、車両運転者、整備者、または車両にアクセスすることを許可された任意の他の者によって選択されてよい。実施形態によっては、(例えば車両のダッシュボードに配置された表示装置を介して)車両の操作者(例えば製造業者、所有者、車両乗車者、車両運転者、整備者、または車両にアクセスすることを許可された他の任意の者)に様々な選択肢を提示してもよく、操作者は、反応をエミュレートする所望の目標車両を選択することができてもよい。
【0054】
[0060] 第1のデータベースに記憶される情報は、車両ロール、ピッチおよび/またはヒーブの開始、車両ロール、ピッチおよびヒーブの変化率、車両ロール、ピッチおよびヒーブの加速度、およびこれらの量の前後分布などの、目標車両の反応データを含み得るがこれらには限定されない。反応データは、例えば車速、および、例えばハンドル角、ハンドル角の変化率、ブレーキペダル位置、ブレーキペダル位置の変化率などの様々な独立変数の関数として記憶されてもよい。
【0055】
[0061] これらに加えて、またはこれらに代えて、(例えばサスペンションシステムによって加えられる能動力がない状態で)被制御車両がどのように反応する可能性があるかを定義する反応データを第2のデータベースに記憶してもよい。被制御車両の固有反応は、様々な運転条件下で車両を運転することによる経験的方法、および、例えばステアリング指令および/またはペダル指令などの様々な運転者入力に応じた車両の固有反応に関するデータを収集することを含む、いくつかの異なる方法でも判断することができる。この反応情報は、能動力の印加なしに収集されて第2のデータベースに記憶されてよい。これらに加えて、またはこれらに代えて、第2のデータベースは、過去の機会に被制御車両が能動力のない状態でどのような挙動を示したかを特性づけるデータ、および/または、能動サスペンションシステムによって能動力が加えられたときに過去の機会に被制御車両がどのような挙動を示したかを特性づけるデータを含んでもよい。第2のデータベースに記憶される情報は、車両ロール、ピッチおよび/またはヒーブの開始、車両ロール、ピッチおよびヒーブの変化率、車両ロール、ピッチおよびヒーブの加速度、およびこれらの量の前後分布などの被制御車両の反応データを含み得るがこれらには限定されない。反応データは、例えば車速と、例えばハンドル角、ハンドル角の変化率、ブレーキペダル位置、ブレーキペダル位置の変化率などの与えられた指令などの、様々な独立変数の関数として記憶されてもよい。これには、過去の機会に収集された車両反応データが含まれ得る。
【0056】
[0062] 第1のデータベースおよび/または第2のデータベースは、上記に加えて、または上記に代えて、同じモデルの車両など、被制御車両車両に類似した他の車両に関するデータを含んでもよい。第1および/または第2のデータベースに格納された情報に基づいて、目標車両をより近く近似またはエミュレートするために、被制御車両の見かけの反応性を向上させるように被制御車両のアクチュエータを動作させてもよい。ある実施形態では、第1のデータベースおよび第2のデータベースは、非一時的コンピュータ可読メモリに記憶されてもよい。
【0057】
[0063] 上記に代えて、または上記に加えて、ある実施形態では、被制御車両および/または目標車両のそれぞれの数値モデル(例えば経験的に求められたモデル、二輪車モデル、単線モデル)を使用して、被制御車両および/または目標車両の固有反応を判断してもよい。車両のモデル(「車両モデル」とも呼ぶ)とは、1つまたは複数の入力指令(例えばステアリング指令、加速指令、ブレーキ指令)の関数としての出力反応(例えば車体の動き)を定義可能な1組の関数、規則、配列またはこれらの組み合わせを意味するものと解釈される。上述の車両モデルのような車両モデルは、例えば掃引試験またはステアリング試験を行うことによって経験的に求めてよく、そのような試験は当業者に知られており、例えばISO7401、ISO8725およびISO8726を含む様々なISO(すなわち国際標準化機構)規格に記載されている。上記のISO試験手順は、様々な指令に対する車両反応のモデルを作成するために使用可能な試験の非限定的な例として示したものであり、本開示はこれに限定されず、これらのモデルを作成するために当業者に知られている他の試験も企図および使用することができる。
【0058】
[0064] 実施形態によっては、上記の制御概念は、以下に詳述する2モデル手法を使用して実装してもよい。この手法では、第1のモデルを使用して、運転者入力に対する被制御車両の反応を特性評価する(例えば、予測、近似、シミュレーション、計算を行う)。このモデルは、運転者入力(例えばハンドル角、アクセルペダル位置、ブレーキペダル位置、ハンドル位置の変化率など)、車両状態情報(例えば車速、車両加速度)、車両の特性(例えば、幾何形状、質量、重心、ロール軸)、および/または、被制御車両の反応をシミュレーションするために使用可能な任意のその他のパラメータを受け入れることができる。このモデルは、例えば単線または二輪車モデルであってもよい。
【0059】
[0065] 同様に、第2のモデルを使用して、同じまたは類似した運転者入力に対する目標車両の反応を特性評価する(例えば、予測、近似、シミュレーション、計算する)ことができる。第2の車両は、例えば、同じかまたは類似した入力に反応し、類似または同じ運転条件下における被制御車両の固有反応と比較してより速いかまたはより望ましい反応を有することができる。例えば、第2のモデルは、第2のモデルがステアリング入力またはその他の入力に対してより速い反応を有することにつながる可能性がある、大幅により低いヨー慣性を有する目標車両のものであってもよい。実施形態によっては、例えば、第2の車両のヨー慣性は、例えば被制御車両のヨー慣性の約50%であってもよい。本開示はこれに限定されず、他の実施形態では、目標車両のヨー慣性は、例えば被制御車両のヨー慣性の約20%ないし約90%の範囲であってもよい。次に、第1のモデルおよび第2のモデルの出力を使用して、目標車両の望ましい「より速い反応」と被制御車両の固有反応との差を計算することができる。この差は、被制御車両による目標車両の動きの近似、部分的または全面的エミュレート、または再現のために、例えば能動サスペンションシステムによって被制御車両に加える必要があると考えられる補償能動力を判断するのに使用することができる。このようにして、第1の被制御車両を、例えば、車両がロールを引き起こすのに十分な横加速をすでに受けているかのように、予測ロール方向にロールさせことができる。車両の横運動の発生を予期してその前にロール運動を実現することによって、同じ条件下で目標車両において運転者が経験するであろうものと同じ反応性の知覚を運転者に生じさせることができる。
【0060】
[0066] その結果、被制御車両は、よく調整され、反応のよい目標車両の動きと一致し得る方向、変化率、および/または大きさでロール、ピッチおよびヒーブを受けることができる。この動きは、車両の運転者または乗車者によって好意的に知覚されると業界によって判断されている多くのパターンのうちの1つに従うことができる。例えば、多くの乗用車は、旋回する(すなわち車両の前端を下げる)ときに前方に迅速にピッチングするように、また、迅速に外側にローリングする(車両の外側を下げる)ように構築される。この前方へのピッチングと外側へのローリングとの組み合わせは、外側前部コーナの沈み込みと車両を旋回に「導く」知覚を引き起こし、このことは運転者によって、よく制御されていると知覚されると判断されている。一方、車両の前部が沈み込まないように車両を構築する、あるいはそれどころか旋回に入ると車両の前部が上がるように車両を構築することを好む製造業者もある。本開示は、このような動きが車両の乗車者による、車輌のステアリング反応またはオンセンターステアリング挙動の知覚にとって好ましいとみなされる場合には、このような動きも排除しないものと理解される。実施形態によっては、被制御車両の強制ロール、ピッチまたはヒーブ反応に続いて、わずかな遅延を伴うものの、そのようなロール運動と整合する車両の横加速度およびヨー反応があってもよい。実施形態によっては、人為的強制反応は、この作用を運転者にとって快適なものとし、いらいらさせないようにするために、定常操作中の車両の最終的な姿勢に振幅が知覚的に近いものとしてよい。
【0061】
[0067] ステアリング入力に対する被制御車両の反応が最初は不相応に思われ,その後、知覚的に異なる姿勢に落ち着く場合、運転者に車両の制御をよく掌握していないと感じさせる可能性があるという点で望ましくないと思われる過剰反応の知覚を生じさせることがある。能動サスペンションシステムが、運動の面外方向(ヒーブ、ピッチおよびロール、または前、後ろ、ロール、または左、右、ピッチなど、それらの任意の直交する1組の組み合わせ)のいずれかの方向における車両の定常姿勢に作用することができる場合、能動サスペンションシステムの作用を受ける車両の最終姿勢を微調整して、振幅および方向を過渡的な強制反応にきわめて近似するようにすることができる。
【0062】
[0068] 実施形態によっては、サスペンションシステムが車両の定常姿勢に作用することができない場合、またはそれが望ましくない場合(例えば、そうするためにかなりのパワーを消費しなければならないサスペンションシステムなど)、過渡的強制反応は、過渡的強制反応の完了後に被制御車両の固有反応の最終姿勢を近似するように形成されてもよい。
【0063】
[0069] 例えば、実施形態によっては、能動サスペンションの介入がない状態での被制御車両の最終ロールおよびピッチ位置(すなわち車両の固有反応)が特性評価され、過渡的強制反応は、車両を固有反応と同じかまたは類似した最終ロールおよびピッチ位置にするが、いかなる能動的介入もない状態での固有反応によって実現されるはずの変化率よりも速い変化率でその位置にするように形成されてもよい。ある実施形態では、被制御車両が最終ロールおよびピッチ位置に達した後は、固有反応のみが残るように能動力を徐々に低減してもよい。このようにして、運転者の知覚は、ステアリング入力に反応して、同じ最終姿勢に達しながら、基本車両よりもはるかに速く固有最終姿勢に達する車両の知覚となる。したがって、与えられた操作の結果として、被制御車両は、より迅速に達成される点を除いては固有反応車両の最終姿勢と知覚的に異なって感じられない最終姿勢をとる。
【0064】
[0070] 実際の被制御車両と、モデル化されたより速い目標車両との動きの差を使用して、動きのパターンを作成することができる。発明人等は、より反応のよい目標車両の挙動を目標とすることによって、能動サスペンションシステムの介入がある被制御車両を、「本物のよう」であり自然であると感じさせながら、実際よりもより反応がよいと感じさせることができることを見出した。
【0065】
[0071] 上述のように、このパターンは運転者による車両の品質の知覚に影響を与え、したがって所望の反応を微調整するために使用することができる。典型的な車両は、3面内自由度(長手方向、横方向、およびヨー)と3面外自由度(例えばヒーブとロールとピッチとに分解することができる)とを有する。
【0066】
[0072] 実施形態によっては、動きのパターンは、被制御車両の第1のコーナ(例えば内側後部コーナ)が垂直方向に動かないように、したがってパターンを第1のコーナ(例えば内側後部コーナ)を中心としたロールとピッチとに分解可能な明確な2自由度のみに縮小するように選定されてもよい。このパターンにより、運転者にとって快適で安心感を与える予測可能な調和運動を形成するように2自由度をスケーリングすることによって、挙動を微調整することが可能になる。例えば、車両が右折9する図1では、車両の残りの部分がロール軸3を中心としてポジティブ方向にローリングする間、左後部コーナ5の垂直方向の動きを制限することができる。その結果、右後部コーナ6が上がり、左前部コーナ4が沈み込む。
【0067】
[0073] 能動サスペンションシステムを使用することにより、車両の4コーナの所望の量の相対的沈み込みまたは上昇を生じさせるように被制御車両の瞬間ロール角をシフトさせることができる。
【0068】
[0074] 実施形態によっては、動的運転状況において、特定のタイヤの荷重印加および荷重解除を生じさせるように被制御車両の所望の動きを誘起させてもよい。例えば、特定の理論に縛られることを望むものではないが、車両が旋回を通して加速しているときに、車両を前部外側コーナにローリングさせることによってそのコーナの瞬間的抜重を生じさせることができ、その後、車両が加速を止めるとそのコーナのタイヤにかかる粘着摩擦が著しく増大する。これは、車体の垂直加速度を生じさせるために、(例えばサスペンションによって)車体に力を加えなければならないことによる場合がある。したがって、車体があるタイヤの方に加速している場合、これはそのタイヤが抜重され得ることを示している。次に車体の垂直方向の動きを遅くするために、タイヤにかかる荷重を増大させることになる垂直方向に車体に向けられた力を加えることができる。運転者の入力時に、能動サスペンションが車体を前部外側コーナに向かって垂直方向に車体を加速する上述のパターンの例では、そのコーナが最初は抜重され、その後、より大きな力で加重され、それによってより大きな粘着摩擦を生じさせる。これは、車両の内側旋回反応に大きく影響を与え、より動的な所望の反応、例えば初期ステアリング入力直後の外側前輪における粘着摩擦の増大を生じさせるために使用することができる。
【0069】
[0075] 一部の実施形態の一態様は、運転者のみならず同乗者に与える効果である。車両の知覚される反応性は、運転車両または自律走行車両の同乗者にも及ぶ。これは2つの効果を有し得る。車両の動きに注意を払っており、車両の動きを先読みしようとしている同乗者は、改善された反応性を運転者と同程度に快適に感じる可能性があるのに対し、車両からのどのような反応にも注意を払わずしたがって予期していない同乗者は、逆に、運転者によって反応がないと知覚される車両を、それが注意深くない同乗者にとっては動き入力がより少ないのと等しいために好むことがある。そこで、ある状態、例えば車両が運転者によって制御されているときには運転者にとって望ましい効果を生じさせ、他の状態、例えば車両が自律走行車両または運転手付き車両であるときには、運転していない乗車者にとって望ましい効果を生じさせるように、本発明を使用してもよい。
【0070】
[0076] 本開示は、コーナリングおよびオンセンターステアリングに関するのみならず、ブレーキペダル反応およびアクセルペダル反応にも適用可能である。本開示は、運転者が車内で行うその他の機能、および、車体の動きに関して車両からの反応として運転者が期待するかまたは好む反応を車両が予測し、運転者入力に反応して能動力を使用することによってその反応を少なくともある程度与える場合にも適用可能である。
【0071】
[0077] 図3に、コーナリング操作中の車両の概略図を示す。この図では、車両は運転者から見て左にコーナリング301し、図の左から右に動いている。図から明かなように、この状況において、ある乗用車は、当然ながら前傾する(つまり、車両の前部303が車両の後部305よりも低くなる)可能性があり、離れる方向にローリングする(つまり、この場合は車両の右側/助手席側309が左側/運転席側307よりも低くなる)。これは、ある種のよく調整された車両の典型的な挙動であるが、製造業者の選好によっても形成され、すべての車両には当てはまらないことがある。動きの1つのパターンが必ずしも好まれるわけではない。
【0072】
[0078] 図3に示す例示の左側へのコーナリングの場合、タイヤにかかる垂直力は、旋回の外側のタイヤ311に対して増加し、旋回の内側(この場合左側/運転席側)のタイヤ313に対して減少する可能性がある。この作用を一般に横荷重伝達と呼ぶ。車体の加速による力の成分もあり、それによって横荷重伝達成分が増加する。
【0073】
[0079] 図4に、単純な二輪車モデルの例示の概略図を示す。二輪車モデルは、車両が前輪が両方とも第1の単一の車輪401として合体されたかのようであり、後輪が第2の単一の車輪403として合体されたかのように車両を表すため、しばしば「単線」モデルとも呼ばれる。前輪401はステアリング角入力に反応し、車両は質量および慣性モーメントを有するものとして表されている。実施形態によっては、本開示はこれには限定されず、後輪403はステアリングしてもステアリングしなくてもよい。このモデルの最も単純なものは、モデルの動力学を表すために4つの状態を使用する。典型的には、これらは横加速度405と、車両のヨー変化率と、横速度と、ヨー角であるが、状態の他の組み合わせも選定されてよく、車両は常に一定した前進速度を有するものとする。二輪車モデルのこれよりやや複雑なものは、タイヤ力増大のローパス性を表すタイヤラグパラメータを含む6つの状態を有することができ、より複雑なモデルは、ロール挙動、エンジン質量挙動、およびその他の詳細を含む、20を超える状態を含むことができる。
【0074】
[0080] 二輪車モデルの基本原理は、定常入力として前進速度を使用することと、ステアリング角入力407の関数として横加速度とヨー変化率動力学とを計算することである。車両に必要な典型的なパラメータは、車両質量、ヨー慣性モーメント、前輪および後輪コーナリングコンプライアンス、重心の位置に関する幾何学情報、所望の出力点、および車両のホイールベースである。
【0075】
[0081] これらの二輪車モデルは、車両の測定された横加速度とヨー変化率とを「補正」信号として使用して、パラメータのカルマンフィルタリングを使用することによって改良することができる。
【0076】
[0082] 図5に、概略アルゴリズムの一例のブロック図を示す。車両で測定されたステアリング角の関数である主車輪ステアリング角501と、車両の前進速度503と、路面摩擦係数の推定値505とを、2つの別々の二輪車モデル表現507および509に入力する。第1の二輪車モデル507は、被制御車両の近似の固有反応を追跡するモデルを表し、第2のモデル509は、実施形態によっては同じかまたは類似の定常特性を有し得る、反応がより速い目標車両の固有反応を近似する。次に、この2つのモデルによって計算された横加速度を、能動サスペンションシステムによって車体に加える力513を計算するアルゴリズムブロック511に適用する。
【0077】
[0083] 図6に、所与の運転条件における3度の主車輪ステアリング角(または車両の長手方向を基準にした前輪の3度の角度)の階段状ハンドル入力61に反応する、図5の2つのモデルの出力を示す。最上部のプロット60は、0度の角度から時点t=0.2秒における3度の角度への階段状変化を有する入力ステアリング角を示す。2番目のプロット62は、2つの別個のトレース、すなわち、被制御車両をシミュレートする第1のモデルによって計算された(横加速度の関数である)度数単位のロール角63と、第2のより反応の速い目標車両モデルによって計算された(横加速度の関数である)度数単位のロール角64とを示す。最下部のプロット65は、2番目のプロットにおける2つの信号間の差を示す。これらのグラフからわかるように、この例における実際の車両は入力に反応してロール角(または横加速度)を増大させるのに約350ミリ秒を要するのに対し、より「速い」モデルは、この場合はわずか20ミリ秒でロール角(または横加速度)を増大させる。2つの信号を比較すると、入力後約20ミリ秒でピークに達し、約500ミリ秒後に0に安定する信号となる。この場合、これは2つのモデルが前述のように同じ定常反応を有することを意味する。ある実施形態では、図6に示す目標反応に類似させるかまたは再現するために、コントローラが1つまたは複数の能動サスペンションシステムアクチュエータに対して、1つまたは複数の能動力を適切な時間間隔にわたって加えるように指令することができる。
【0078】
[0084] 図7に、ロール力指令アルゴリズムの概略ブロック図を示す。被制御車両のモデルは、例えば能動サスペンション車両におけるロールおよびヨー制御に使用することができる実際の横加速度701を計算し、「より速い」目標車両のモデルはそれ自体の横加速度703を計算する。上述のように、2つの信号は、「DeltaAy」と符号が付された差信号705を計算するために使用される。この信号は次に、例えば、パターン709のピッチ成分に適用するスケール係数、および動きパターン711のロール成分に適用するスケール係数などの、追加の入力も受け取ることができるパターンアルゴリズム707への入力として使用される。次に、結果として得られる力指令が、総合利得713(主としてアルゴリズムの調整可能性のために使用される)によってスケーリングされ、出力信号717における高周波ノイズを低減するためにローパスフィルタ715に通される。
【0079】
[0085] 図8に、所与の入力に反応して所望の動きパターンを計算するために使用されるアルゴリズムの一実施形態の例を示す。本明細書に記載のこの実施形態では、車両の内側後部コーナは動くように指令されず、その結果、車両の動きは2つのそれぞれのスケール係数801によってスケーリングされる2自由度のみとなるように、パターンがモデル化された。この動きパターンは入力802に関して非対称である(例えば、左折するときには左後部コーナが垂直方向に動くように指令されず、右折する時には右後部コーナが垂直方向に動くように指令されない)ため、左折と右折の2つの場合が別々に扱われる。実施形態によっては、入力802は、例えば図6のプロット65に示す信号であってよい。実施形態によっては、非対称反応は正信号飽和ブロック802と負信号飽和ブロック803とを使用して2つの場合を分離し、その結果の力指令の和をとることによって実現可能である。ある実施形態では、正の入力は目標車両の予測される動きが被制御車両の動きよりも大きいときに(例えば予測、計算および/または測定情報に基づくことができる)、発生し得る。負の入力は、目標車両の予測される動きが被制御車両の動きよりも小さいときに発生する。したがって、正の入力の場合、計算される力の分岐の一方は「正の入力パターン」を指令することとなり、他方は何も指令せず、その結果の和は「正の入力パターン」に等しくなる。同様の論法が負の入力にも当てはまる。なお、図5図7および図8は、動的システムをモデリングするためのグラフィカルプログラミング環境であるシミュリンクツールを使用して生成されたものである。シミュリンクは、米国マサチューセッツ州ナティックにあるMathWorksの製品である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8