(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】脂環式ジエステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 67/10 20060101AFI20231107BHJP
C08G 63/64 20060101ALI20231107BHJP
C07C 69/75 20060101ALI20231107BHJP
C07C 67/54 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
C07C67/10
C08G63/64
C07C69/75 Z
C07C67/54
(21)【出願番号】P 2021503873
(86)(22)【出願日】2019-08-14
(86)【国際出願番号】 EP2019071779
(87)【国際公開番号】W WO2020035519
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-08-08
(32)【優先日】2018-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520204744
【氏名又は名称】コベストロ・インテレクチュアル・プロパティ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・アンド・コー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー、マイヤー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス、プフィンクスト
(72)【発明者】
【氏名】ディルク、ハインツマン
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-136927(JP,A)
【文献】特開2003-055298(JP,A)
【文献】特表2016-525610(JP,A)
【文献】特表2018-504497(JP,A)
【文献】特開平04-339823(JP,A)
【文献】特表2004-505103(JP,A)
【文献】Bulletin of the Chemical Society of Japan,1966年,39,141-145
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C,C08G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(Ia)又は(Ib):
【化1】
[式中、Aは、各々独立して、脂肪族又は芳香族基であり、nは、0~3の数である。]
の脂環式ジエステルの製造方法であって、
(i)塩基性触媒の存在下、少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸と少なくとも1つの脂肪族及び/又は芳香族カーボネートとを含有する混合物を反応させて、式(Ia)又は(Ib)の脂環式ジエステルを得る工程と、
(ii)180℃~280℃の温度の蒸留によって、方法工程(i)の前記混合物から式(Ia)又は(Ib)の前記脂環式ジエステルを分離する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
方法工程(ii)における前記蒸留を、10mbar以下の圧力で行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
方法工程(i)において、式(2):
【化2】
[式中、R、R’及びR’’は、各々独立して、同一であっても異なっていてもよく、水素、分岐していてもよいC1~C34アルキル、C7~C34アルキルアリール又はC6~C34アリールであり、Rは加えて-COO-R’’’であってもよく、R’’’は分岐していてもよいC1~C34アルキル、C7~C34アルキルアリール又はC6~C34アリールである。]
の芳香族カーボネートを使用することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
方法工程(i)において、芳香族カーボネートとして、ジフェニルカーボネートを使用することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
方法工程(i)及び(ii)を、追加の有機溶媒の非存在下で行うことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
方法工程(i)において、P含有安定剤及び/又はフェノール性フリーラジカル捕捉剤から成る群から選択される少なくとも1つの安定剤を添加することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
方法工程(i)の前記反応を、180~280℃の温度で行うことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
方法工程(i)の前記反応中、式(Ia)又は(Ib)の前記脂環式ジエステルより低く、かつ、前記脂肪族及び/又は芳香族カーボネートより低い沸点を有する揮発性成分を、必要に応じて段階的に、蒸留によって除去することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
溶融エステル交換によるポリエステルカーボネートの製造方法であって、
(a)請求項1~
8のいずれか一項に記載の方法によって式(Ia)又は(Ib)の脂環式ジエステルを準備する工程と、
(b)方法工程(a)からの式(Ia)又は(Ib)の前記脂環式ジエステル、少なくとも1つのジヒドロキシ化合物及び少なくとも1つのジアリールカーボネートを、溶融エステル交換法で反応させる工程と
を含む、方法。
【請求項10】
方法工程(a)の直後に方法工程(b)を行うことを特徴とする、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
方法工程(b)における前記ジヒドロキシ化合物が、シクロヘキサン-1,2-ジオール、シクロヘキサン-1,3-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,2-ジメタノール、シクロヘキサン-1,3-ジメタノール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、テトラヒドロ-2,5-フランジメタノール、ビスフェノールA、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル
)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(DOD)、4,4’-ジヒドロキシビフェニルエーテル(DODエーテル)、ビスフェノールB、ビスフェノールM、ビスフェノール類(I)~(III):
【化3】
[式(I)~(III)中、R’は、いずれの場合も、C
1~C
4アルキル、アラルキル又はアリールである。]
ブタンジオール、コハク酸、アジピン酸、エチレングリコール、乳酸、ヘキサンジオール、
並びに1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール
から成る群から選択されることを特徴とする、請求項
9又は
10に記載の方法。
【請求項12】
方法工程(b)におけるジアリールカーボネートとして、式(2):
【化4】
[式中、R、R’及びR’’は、各々独立して、同一であっても異なっていてもよく、水素、分岐していてもよいC1~C34アルキル、C7~C34アルキルアリール又はC6~C34アリールであり、Rは加えて-COO-R’’’であってもよく、R’’’は分岐していてもよいC1~C34アルキル、C7~C34アルキルアリール又はC6~C34アリールである。]
の化合物を使用することを特徴とする、請求項
9~
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項
9~
12のいずれか一項に記載の方法によって得られる、ポリエステルカーボネート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂環式ジエステルの製造方法、脂環式ジエステルを使用するポリエステルカーボネートの製造方法、ポリエステルカーボネートを製造するための脂環式ジエステルの使用、及びポリエステルカーボネートに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル、ポリカーボネート及びポリエステルカーボネートは、機械的特性、耐熱変形性及び耐候安定性に関して良好な特性を有することが知られている。使用されるモノマーに依存して、各ポリマー群は、この種類の材料を特色づける特定の重要な特徴を有する。例えば、ポリカーボネートは、特に、良好な機械的特性を有するが、ポリエステルは、より良好な化学安定性を示すことが多い。ポリエステルカーボネートは、選択されたモノマーに依存して、上記群の両方由来の特性プロファイルを示す。
【0003】
芳香族ポリカーボネート又はポリエステルは、しばしば良好な特性プロファイルを有するが、これらは、経時安定性及び耐候安定性に関して弱点を示す。例えば、UV光の吸収により、これらの熱可塑性材料は黄色化し、脆化するかもしれない。この点において脂肪族ポリカーボネート及びポリエステルカーボネートは、より良好な特性、特により良好な経時安定性及び/又は耐候安定性を有する。脂肪族ポリマーの更なる利点は、バイオアベイラビリティに関する原材料に対する改善された入手可能性である。コハク酸又はイソソルビドなどの脂肪族モノマーは、今日、生物原料の原材料から利用可能であるが、対照的に、芳香族モノマーは、仮にあったとしても、生物原料の原材料から限定的にしか利用可能でない。本発明との関連で、語句「生物原料の」は、出願日において関連化学化合物が、再生可能及び/若しくは持続可能な原材料により利用可能及び/若しくは入手可能であり、並びに/又は好ましくはかかる再生可能及び/若しくは持続可能な原材料であることを意味すると理解される。この語句は、特に、化石原料由来の原材料に対して区別するのに役立つ。原材料が生物原料か又は化石原料系であるかどうかは、炭素同位体C14の相対量が化石原料においてより低いので、原材料中の炭素同位体の測定によって決定することができる。例えば、ASTM D6866-18(2018)又はISO16620-1~-5(2015)に従って、これを行うことができる。
【0004】
脂肪族ポリカーボネート又はポリエステルカーボネートの欠点は、その低いガラス転移温度であることが多い。したがって、(コ)モノマーとして脂環式アルコールを使用することは有利である。このような脂環式アルコールの例としては、TCDアルコール(トリシクロデカンジメタノール)、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、並びにイソソルビド及び異性体イソマンニド及びイソイジドなどの1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールをベースとする生物原料のジオールが挙げられる。更にガラス転移温度を高くするために、シクロヘキサン-1,2-、-1,3-又は1,4-ジカルボン酸などの脂環式酸を、(コ)モノマーとして使用することもできる。反応物の選択に応じて、ポリエステル又はポリエステルカーボネートを得る。シクロヘキサンジカルボン酸及びイソソルビドのポリエステルは、Oh et al.、Macromolecules 2013, 46, 2930-2940に記載されている。しかしながら、本発明は、好ましくは、ポリエステルカーボネートを標的としている。
【0005】
更に、ポリエステルカーボネートは、遊離酸から工業的に製造可能ではなく、対応するエステル含有モノマーとジオールとのエステル交換法によって製造されている。例えば、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール及びシクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸のポリエステルは、上記二酸のジメチルエステル(このポリエステル及びポリカーボネートの配合物:DuPont社のXyrex(登録商標))から出発して製造されている。
【0006】
しかしながら、これらの脂環式酸のエステル含有モノマーの反応性は、エステル交換法による重合後期において大きな役割を果たす。このような脂環式ジエステルを製造することは現在まで多くの試みがあるが、特にポリエステルカーボネートの製造に適している。この種類のフェニルエステルは、これらの脂肪族類似体よりも、エステル交換反応における著しく高い反応性を示すことが知られている。これは、例えば、欧州特許出願公開第3026074(A1)号及び欧州特許出願公開第3248999(A1)号に記載されている。
【0007】
これらの文献には、ジフェニルエステルの製造も記載されている。欧州特許出願公開第3026074(A1)号には、対応するエステルを得るための二酸とフェノールとの直接反応が記載されている(実施例1)。しかしながら、フェニルエステルに関する合成工程の収率はむしろ低い(実施例1:欧州特許出願公開第3026074(A1)号)。欧州特許出願公開第3026074(A1)号の実施例2では、ジメチルエステルはフェノールと反応する。ここでも、ジフェニルエステルの収率は改善することができる。
【0008】
欧州特許出願公開第3248999(A1)号の実施例1及び実施例2は、ジフェニルエステルを製造するための溶媒の使用について記載しており、取り扱いが容易でないホスゲンなどの供給原料を必要とする。反応の完了時に溶媒を除去しなければならないので、溶媒の使用は上記方法を高価にし、エネルギー的に好ましくなく、環境の観点からプラスに判断することもできない。ホスゲンの使用は、高レベルの安全対策を必要とするだけでなく、全体的に費用もかかる。脂肪族ポリエステルカーボネートを得る後続の反応はホスゲンを使用することなく行うので、工場の一部におけるホスゲン法とエステル交換法との組合せは非常に不利益である。したがって、欧州特許出願公開第3026074(A1)号及び欧州特許出願公開第3248999(A1)号に記載されている方法は、最適ではない。
【0009】
国際公開第第2002/10111(A1)号には、脂肪族ジフェニルエステルの製造方法が記載されており、脂肪族直鎖状二酸がジフェニルカーボネートと反応する。その後、溶媒を使用した再結晶化によりジエステルを精製する。上記のように、これらは、その後、再び除去されなければならない。加えて、この文献は、脂環式二酸を使用する実施例を記載していない(代わりにもっぱら直鎖状二酸のみ)。直鎖状二酸と対照的に、脂環式二酸は、ほとんどの場合、より不安定である。一例として、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸に対する熱重量分析は、既に、200℃において第一重量減少を示している。したがって、直鎖状二酸の反応条件は、脂環式二酸に容易に転用できない。当業者は、特に、脂環式二酸に対する熱応力を回避するだろう。
【0010】
特開平07-126213号公報には、テレフタル酸又はイソフタル酸などの芳香族二酸とジアリールカーボネートとの反応が記載されている。このような芳香族二酸は、非常に高い熱安定性を有する。この理由のため、芳香族二酸の反応条件は、同様に、脂環式二酸に容易に転用できない。
【発明の概要】
【0011】
したがって、本発明は、従来技術の少なくとも1つの不利益を修正する脂環式ジエステルの製造方法を提供する目的に基づいた。特に、本発明は、ホスゲンの使用を必要としない方法を提供する目的に基づいた。さらに、溶媒なしで行うことができる方法を提供することを目的とする。ただし、この場合、脂環式ジエステルを、例えば熱分解による収率の大きい減少を伴うことなく、好ましくは高純度で簡単な方法で得ることができることを目的とする。
【0012】
上記目的の少なくとも1つ、好ましくは全てが、本発明によって達成された。驚くべきことに、塩基性触媒の存在下、脂環式ジカルボン酸と少なくとも1つの脂肪族及び/又は芳香族カーボネートとの直接反応が、所望の生成物をもたらし、その後の蒸留によって、この生成物を高純度さらに高収率で得ることができることが分かった。脂環式ジエステルを容易に蒸留可能であると想定することはできないので、このことは特に驚くべきことであった。加えて、蒸留の場合、生成物の滞留時間及び温度は、再結晶化に対してかなり増加する。したがって、脂環式ジエステルがかなりの収率減少なしに本発明による熱応力に耐えると想定することはできなかった。当業者は、熱応力は先ず分解をもたらし、収率を低下させ、次に更なる副生成物をもたらし、目標生成物の品質を落とすとむしろ予想するだろう。さらに、エステル交換のため、例えば、対応する酸塩化物の製造によるジカルボン酸の活性化を必要としないことが分かった。一例として、溶媒の使用などの上記デメリットを伴う、両方共あまり立体的にかさ高くなく高反応性物質である塩化チオニル又はホスゲンにより、酸塩化物を製造する。対照的に、脂肪族又は芳香族カーボネート、例えばジフェニルカーボネートは、特に、ホスゲンと比較して、より立体的にかさ高く、かなりゆっくりと反応する。脂環式環は単独で、特に、直鎖状カルボン酸と比較して、カルボン酸を立体的により攻撃困難にするので、同様に立体的にかさ高いジアリールカーボネートとの反応は極めて驚くべきことであった。
【0013】
したがって、このように、ホスゲンの使用を必要とせず、結果として、対応する安全対策を伴わない脂環式ジエステルの製造方法を見出すことができた。さらに、溶媒なしで、上記方法を行うことができる。これは、本発明の方法を環境に優しくする。加えて蒸留は比較的簡単であるので、対応する後処理も既存の工場でも使用することができる。反応中、生成するフェノールが反応の平衡をシフトするために蒸留によって取り除かれることは、本明細書において確かにされるべきである。同じ装置において、その後に、所望の生成物を蒸留して取り出すことが可能であろう。したがって、本発明の方法は、プラント建設にとって対応する利点を提供する。
【0014】
本発明の方法の更なる利点は、脂環式ジエステルをその後に溶融エステル交換法により反応させてポリエステルカーボネートを得ることを目的とするという事実においても分かる。この反応では化合物が溶融し、したがって、入熱を伴うので、蒸留して取り出される本発明の方法の生成物を、このエステル交換法に直接的に供給することができる。この場合、脂環式ジエステルの蒸留により、対応する入熱が既にあるので、対応する再溶融はその際に必要とされない。したがって、全体的に見ると、モノマーの製造及び続く重合を含めて、経済的及び環境的側面に関して特に利点を有する全体的方法を設計することができる。
【0015】
加えて、驚くべきことに、本発明の方法のプロセス生成物は、特に有利な特性を有するポリエステルカーボネートに転換することができるモノマーをもたらすことが分かった。特に、本発明の脂環式ジエステルを使用する場合、特に良好な固有色を有するポリエステルカーボネートが本発明により入手できることがわかった。この色は、更に精製されなかった脂環式ジエステルとの反応において製造されたポリエステルカーボネートよりも、特に良好である。このことから、蒸留プロセスは、再結晶化よりも、生成物から種々の副生成物及び/又は不純物を取り除くことが明白である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
したがって、本発明によれば、式(Ia)又は(Ib):
【0017】
【0018】
[式中、
Aは、各々独立して、好ましくは1~10個の炭素原子を有する脂肪族又は芳香族基であり、特に好ましくは、置換されていてもよい芳香族基であり、非常に特に好ましくは、置換若しくは非置換フェニル基であり、
nは、0~3の数であり、好ましくは0又は1である。]
の脂環式ジエステルの製造方法であって、
(i)塩基性触媒の存在下、少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸と少なくとも1つの脂肪族及び/又は芳香族カーボネートとを含有する混合物を反応させて、式(Ia)又は(Ib)の脂環式ジエステルを得る工程と、
(ii)蒸留によって、方法工程(i)の混合物から式(Ia)又は(Ib)の脂環式ジエステルを分離する工程と
を含む方法が提供される。
【0019】
本発明によれば、本明細書において、式(Ia)又は(Ib)では、Aの両方の例が同一であることが更に好ましい。加えて、これらが、置換又は非置換フェニル基であることが好ましく、非置換フェニル基であることが特に好ましい。
【0020】
式(Ia)では、nは、0又は1であることも好ましい。
【0021】
本発明の方法における工程(i)は、塩基性触媒の存在下、少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸と少なくとも1つの脂肪族及び/又は芳香族カーボネートとを含有する混合物を反応させて、式(Ia)又は(Ib)の脂環式ジエステルを得る工程を含む。例としてシクロヘキサン二酸とジフェニルカーボネート(DPC)との反応を一貫して使用するこの反応を、以下に説明する。これらは好ましいが、これにもかかわらず、本発明はこれらの特定の化合物に限定されない。当業者は、上記反応及び対応する説明を、記載されている化合物の他のものに応用することができる。
【0022】
工程(i)では、次の(例示的)反応が起こる:
【0023】
【0024】
反応中、このように、二酸化炭素及びフェノール(又は化合物A-OH、Aは式(Ia)及び(Ib)に関して記載されている意味を有する)が遊離する。この縮合生成物A-OHが反応工程(i)中に除去される場合、本発明によれば有利であることが分かった。ここで、語句「工程(i)中」は、方法工程(i)の開始時直ちに、又は工程(i)開始後の遅延時間経過後に、除去が開始されることを意味し得る。好ましくは反応条件に適応された減圧の適用によって、当業者に公知の方法で除去を行うことができる。ただし、反応物としての脂肪族及び/又は芳香族カーボネートと、好ましくは当初生成物としての脂環式ジエステルとが反応混合物から除去されないように、方法工程(i)における温度及び減圧を選択することが保証されなければならない。
【0025】
加えて、本発明における方法工程(i)は、好ましくは、下記の工程(ia)~(id)の少なくとも1つ、特に好ましくは全てを含む:
(ia)少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸と脂肪族及び/又は芳香族カーボネートとを溶融させる工程。保護ガス雰囲気下、好ましくは窒素及び/又はアルゴン下で、これを行うことが好ましい。別の方法として、真空下で上記溶融を行ってもよい。
【0026】
本発明において、少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸に対して、モル過剰の少なくとも1つの脂肪族及び/又は芳香族カーボネートを使用することが好ましい。特に好ましくは、少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸1モルに対して、少なくとも1つの脂肪族及び/又は芳香族カーボネートを2.01~2.5、特に好ましくは2.05~2.2モル使用する。この場合、特に、高収率を達成することができるという利点がある。さらに、縮合生成物の除去の結果として起こる可能性があるカーボネートの損失を補償することができる。
【0027】
本発明の1つの態様では、方法工程(ia)において、1つ以上の安定剤を溶融物に添加することができる。本発明の脂環式ジエステルは、反応中に大きな熱応力に暴露される。加えて、可能な限り酸素を用いない方法で反応全体を行うことが好ましい。酸素は、必然的に酸化生成物の生成をもたらす。この生成を最小にするために、安定剤及び/又は酸化防止剤を使用してもよい。
【0028】
この少なくとも1つの安定剤は、好ましくは、P含有(リン含有)安定剤及び/又はフェノール性フリーラジカル捕捉剤から成る群から選択される。ホスファイト及びホスホナイト、並びにホスフィンは、選択的に適している。例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルアルキルホスファイト、フェニルジアルキルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジイソデシルオキシペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6-トリス(tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリステアリルソルビトールトリホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、6-イソオクチルオキシ-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチル-12H-ジベンゾ[d,g]-1,3,2-ジオキサホスホシン、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)メチルホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)エチルホスファイト、6-フルオロ-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチル-12-メチルジベンゾ[d,g]-1,3,2-ジオキサホスホシン、2,2’,2’’-ニトリロ[トリエチルトリス(3,3’,5,5’-テトラ-tert-ブチル-1,1’-ビフェニル-2,2’-ジイル)ホスファイト]、2-エチルヘキシル3,3’,5,5’-テトラ-tert-ブチル-1,1’-ビフェニル-2,2’-ジイルホスファイト、5-ブチル-5-エチル-2-(2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノキシ)-1,3,2-ジオキサホスフィラン、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリフェニルホスフィン(TPP)、トリアルキルフェニルホスフィン、ビスジフェニルホスフィノエタン又はトリナフチルホスフィンが挙げられる。特に好ましくは、トリフェニルホスフィン(TPP)、Irgafos(登録商標)168(トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト)及びトリス(ノニルフェニル)ホスファイト又はその混合物を使用する。
【0029】
アルキル化モノフェノール類、アルキル化チオアルキルフェノール類、ヒドロキノン類及びアルキル化ヒドロキノン類などのフェノール性フリーラジカル捕捉剤を使用することもできる。Irganox(登録商標)1010(ペンタエリスリトール3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)プロピオネート;CAS:6683-19-8)及びIrganox 1076(登録商標)(2,6-ジ-tert-ブチル-4-(オクタデカノキシカルボニルエチル)フェノール)を特に好ましく使用する。
【0030】
P含有(リン含有)安定剤とフェノール性フリーラジカル捕捉剤との組合せを使用することは、更に有利である。(トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト)と(2,6-ジ-tert-ブチル-4-(オクタデカノキシカルボニルエチル)フェノール)との組合せは、特に適している。
【0031】
(ib)上記混合物、好ましくは工程(ia)から得られた溶融物を加熱する工程。好ましくは150℃~300℃まで、特に好ましくは180℃~280℃、とりわけ好ましくは190℃~240℃まで、加熱を行う。
【0032】
(ic)好ましくは撹拌により混合エネルギーを導入しながら、上記混合物、好ましくは工程(ib)から得られた混合物を反応させる工程。この工程の反応時間は、供給原料の量に依存する。工程(ic)の反応時間は、好ましくは0.5時間~24時間、好ましくは1時間~18時間、特に好ましくは1.5時間~10時間である。ここで、カーボネートがほとんど完全に反応するように反応時間を選択することが好ましい。二酸化炭素の生成によって、当業者に公知の方法で、反応の進行を追跡することができる(上記反応スキーム参照)。
【0033】
(id)好ましくは工程(ic)から得られた混合物から、縮合生成物A-OHを除去する工程。したがって、本発明の方法は、方法工程(i)の反応中、式(Ia)又は(Ib)の脂環式ジエステルより低く、かつ、脂肪族及び/又は芳香族カーボネートより低い沸点を有する揮発性成分を、必要に応じて段階的に、蒸留によって除去することを特徴とすることが好ましい。種々の揮発性成分を除去する場合、段階的な除去を選択することが好ましい。可能な限り完全に揮発性成分を除去することを保証するために、段階的な除去を同様に好ましくは選択する。揮発性成分は、好ましくは、化合物A-OHであり、Aは式(Ia)及び(Ib)に関して記載されている意味を有する。それらは、Aが置換又は非置換フェニル基である場合、好ましくは置換又は非置換フェノールである。
【0034】
縮合生成物を、好ましくは150℃~250℃、特に好ましくは180℃~230℃の温度で除去する。除去中の真空度は、更に好ましくは、500mbar~0.01mbarである。真空度を下げることにより除去を段階的に行うことが特に好ましい。縮合生成物としてのフェノールを除去するために、最終段階における真空度は、非常に特に好ましくは10mbar~0.01mbarである。
【0035】
方法工程(i)において使用される少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸は、好ましくは、化学式(IIa)又は(IIb):
【0036】
【0037】
の化合物から選択される。
式中、nは、0~3の数である。式(Ia)及び(Ib)に関するnについて記載されている設定が適用される。
【0038】
方法工程(i)における少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸は、特に好ましくは、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、デカヒドロナフタレン-2,4-ジカルボン酸、デカヒドロナフタレン-2,5-ジカルボン酸、デカヒドロナフタレン-2,6-ジカルボン酸、デカヒドロナフタレン-2,7-ジカルボン酸から成る群から選択され、非常に特に好ましくは、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸及びシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸から成る群から選択され、更に好ましくは、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸である。
【0039】
方法工程(i)における少なくとも1つの脂肪族及び/又は芳香族カーボネートは、好ましくは、少なくとも1つの芳香族カーボネートである。脂肪族アルコールによりエステル化された脂環式二酸は、ポリエステルカーボネートを得るためのエステル交換反応において、芳香族アルコールによるものよりも低い反応性を示し、結果として、エステル交換反応後の対応するポリエステルカーボネートの分子量はかなり低い。この場合のこれらのポリマーは、不満足な特性しか示さない。したがって、芳香族カーボネートの使用が、得られるポリマー特性において特に有利である。式(2)の芳香族カーボネートは、方法工程(i)において特に好ましく使用される。
【0040】
【0041】
式中、R、R’及びR’’は、各々独立して、同一であっても異なっていてもよく、水素、分岐していてもよいC1~C34アルキル、C7~C34アルキルアリール又はC6~C34アリールであり、Rは加えて-COO-R’’’であってもよく、R’’’は分岐していてもよいC1~C34アルキル、C7~C34アルキルアリール又はC6~C34アリールである。このようなカーボネートは、例えば、欧州特許出願公開第1 609 818(A)号に記載されている。ジフェニルカーボネート、4-tert-ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4-tert-ブチルフェニル)カーボネート、ビフェニル-4-イルフェニルカーボネート、ジ(ビフェニル-4-イル)カーボネート、4-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニルフェニルカーボネート及びジ[4-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル]カーボネートが好ましい。方法工程(i)における芳香族カーボネートとして、置換又は非置換、好ましくは非置換ジフェニルカーボネートが、非常に特に好ましくは使用される。
【0042】
モノヒドロキシアリール化合物(カーボネートが、モノヒドロキシアリール化合物から製造される)の残留物含有率を有するカーボネートを使用してもよい。モノヒドロキシアリール化合物の残留物含有率は、20%以下、好ましくは10%、特に好ましくは5%以下、非常に特に好ましくは2%以下になってよい。本発明の方法では、これは、これらの製造プロセス後に複雑な精製をする必要がないカーボネートを使用することもできることを意味する。本発明の方法では、カーボネートが得られるモノヒドロキシアリール化合物は、縮合生成物A-OHとして再び現れ、好ましくは除去されるので、これらの不純物は反応を妨害しない。このように好ましく製造されたカーボネートを用いて、本発明の方法は、全体的に更により経済的に有利であるように構成することができる。
【0043】
別の態様では、少なくとも1つの脂肪族及び/又は芳香族カーボネートを、ホスゲンを用いない方法で製造することもできる。これにより、ポリエステルカーボネートの製造方法全体を、ホスゲンを用いない方法で行うことが可能となる。
【0044】
本発明によれば、方法工程(i)における少なくとも1つの塩基性触媒の存在を必要とすることが明らかになった。さもなければ、カーボネート及び二酸の反応は起こらない。これは、国際公開第02/10111(A1)号において180℃の温度でのDPCと直鎖状脂肪族ジカルボン酸との反応が説明され、好ましいとされているが、直鎖状脂肪族ジカルボン酸に基づく反応条件を、脂環式ジカルボン酸の転化に転用することはできないことを証明している。塩基性触媒の存在下で得られる反応生成物がより多くの不純物を含むことが記載されている。本発明によれば、脂環式ジカルボン酸との反応では、少なくとも適度な温度において触媒は必須であり、それにもかかわらず、本発明の方法によって高純度の生成物を得ることができることが分かった。
【0045】
塩基性触媒は、塩基又は塩基性エステル交換触媒である。一例として、下記塩基又は触媒を使用してよい:
LiOH、NaOH、KOH、CsOH、Li2CO3、Na2CO3、K2CO3、Cs2CO3、LiOAc、NaOAc、KOAc、CsOAcなどのアルカリ金属化合物、Ca(OH)2、Ba(OH)2、Mg(OH)2、Sr(OH)2、CaCO3、BaCO3、MgCO3、SrCO3、Ca(OAc)2、Ba(OAc)2、Mg(OAc)2、Sr(OAc)2などのアルカリ土類金属化合物、無機若しくは有機塩基性化合物、例えば、ハロゲン化物、フェノレート(Naフェノレートなど)、ジフェノレート、フッ化物、ホスフェート、リン酸水素、及びリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、バリウム及びマグネシウムの水素化ホウ素塩、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、酢酸テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラメチルアンモニウム、テトラフェニル水素化ホウ素テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラフェニルホスホニウム、テトラフェニル水素化ホウ素テトラフェニルホスホニウム、水酸化ジメチルジフェニルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウムなどの窒素塩基及びリン塩基、DBU、DBN、若しくは、例えば、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-フェニル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7,7’-ヘキシリデンジ-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7,7’-デシリデンジ-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7,7’-ドデシリデンジ-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンなどのグアニジン系、又は、例えば、ホスファゼン塩基P1-t-oct=tert-オクチルイミノトリス(ジメチルアミノ)ホスホラン、ホスファゼン塩基P1-t-butyl=tert-ブチルイミノトリス(ジメチルアミノ)ホスホラン、BEMP=2-tert-ブチルイミノ-2-ジエチルアミノ-1,3-ジメチルペルヒドロ-1,3,2-ジアザ-2-ホスホランなどのホスファゼン類。加えて、水酸化テトラメチルアンモニウム、酢酸テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラメチルアンモニウム、テトラフェニル水素化ホウ素テトラメチルアンモニウム、水酸化ジメチルジフェニルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、テトラフェニル水素化ホウ素セチルトリメチルアンモニウム及びセチルトリメチルアンモニウムフェノレート。式(8):
【0046】
【0047】
のホスホニウム触媒も適している。
式中、Ra、Rb、Rc及びRdは、同一であっても異なっていてもよいC1~C10アルキル、C6~C14アリール、C7~C15アリールアルキル又はC5~C6シクロアルキルであり、好ましくはメチル又はC6~C14アリールであり、特に好ましくはメチル又はフェニルであり、Xは、水酸化物、硫酸塩、硫酸水素塩、炭酸水素塩、炭酸塩若しくはハロゲン化物、好ましくは塩化物などのアニオン、又は、式-ORのアルキレート若しくはアリーレートであり得る。式中、RはC6~C14アリール、C7~C15アリールアルキル若しくはC5~C6シクロアルキル、好ましくはフェニルであり得る。加えて、テトラブトキシチタンなどのチタンアルコキシド、トリエチルアミンなどの第三級アミン、DMF、ジメチルアセトアミド、メチルピロリドン、テトラメチルウレア、ジメチルイミダゾリドン、ハロゲン化ヘキサアルキルグアニジウムなどのエステル交換触媒。加えて、AlCl3、FeCl3、BiCl3、GaCl3、SbCl5、BF3、Bi(OTf)3、TiCl4、ZrCl4、TiB4又はZrBr4。好ましい触媒は、塩化テトラフェニルホスホニウム、水酸化テトラフェニルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウムフェノレート、ナトリウムフェノレート及び4-ジメチルアミノピリジンであり;これらの中でも、テトラフェニルホスホニウムフェノレートが特に好ましい。触媒を、(2つ以上の)互いに任意に所望の組合せで使用してもよい。加えて、特に、エステル交換率を増大するために、共触媒を使用してもよい。これらとしては、例えば、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の上記アルカリ塩が挙げられる。
【0048】
これらの触媒は、好ましくは、脂環式ジカルボン酸1モルに対して、10-2~10-8モルの量で使用する。共触媒としてのアルカリ塩の量は、脂環式ジカルボン酸1モルに対して、1~500ppb、好ましくは5~300ppb、特に好ましくは5~200ppbの範囲であり得る。
【0049】
方法工程(i)の反応は、180~280℃の温度で行うことが好ましい。ここで、この温度は、存在する場合、方法工程(ib)~(id)において設定又は維持することが好ましい。
【0050】
本発明における方法工程(ii)では、式(Ia)又は(Ib)の脂環式ジエステルを、蒸留によって方法工程(i)の混合物から分離する。用語「蒸留」は、それ自体、熱分離方法として当業者に公知である。蒸留という分離作業は、確立された熱力学的平衡における気相及び液相上での成分の不均等分布に基づく。分離しようとする液体の沸点が異なる場合又は液体が同じ温度において異なる蒸気圧を有する場合に、蒸留は特に適している。かかる蒸留による分離を如何に行うか、及び理想的熱力学的平衡からの逸脱を考慮しながら、如何に対応する装置を具体化する必要があるかを、当業者は知っている。
【0051】
特に、用語「蒸留」は、精留、分留、真空蒸留若しくは共沸蒸留の方法、及びこれらの方法の中の、又は他の熱分離方法(例えば、吸着/脱着方法及びストリッピング)との任意の所望の組合せを含むと理解される。例えば、隔壁塔、反応隔壁塔の使用による上記方法の向上可能性又は反応蒸留の可能性は、当業者に公知である。
【0052】
本発明において、方法工程(ii)における蒸留を、好ましくは10mbar以下、好ましくは<5mbar、特に好ましくは4mbar~0.001mbar、非常に特に好ましくは2mbar~0.01mbarの圧力で行う。これは、生成物への熱応力が可能な限り低く維持され、したがって、望ましくない分解及び副反応を最小限にすることができるという利点を有する。
【0053】
本発明において、方法工程(ii)における蒸留を、好ましくは180℃~280℃、特に好ましくは200℃~260℃、非常に特に好ましくは201℃~260℃の温度で行う。この温度範囲は、好ましくは、望ましくない分解及び副反応を更に最小限にするために上記圧力と組合せるべきである。200℃超の温度においてシクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸の熱重量分析で質量損失が既に観察されているので、これらの温度における本発明による蒸留が高収率及び高純度と関連していることは、特に驚くべきことであった。
【0054】
本発明において、方法工程(i)及び(ii)を両方共、好ましくは、追加の有機溶媒の非存在下で行う。本発明において、これは、使用される少なくとも1つのカーボネート及び生成される反応の縮合生成物の両方が、これらの反応工程において溶媒として存在し得ること(可能な場合)は排除しない。これは、特に、ジカルボン酸に対して化学量論的に過剰にカーボネートを使用する場合である。この好ましい方法の変法は、特に穏やかである。しかしながら、本発明によれば、上記方法に追加の有機溶媒を添加しないことが好ましい。方法工程(i)及び(ii)を、特に好ましくは、塩化メチレン、メタノール及びトルエンの非存在下で行う。追加の有機溶媒が存在しない結果として、上記方法を、都合よく、環境に優しい方法で行うことができる。
【0055】
本発明の別の態様では、式(Ia)又は(Ib):
【0056】
【0057】
[式中、Aは、各々独立して、脂肪族又は芳香族基であり、nは、0~3の数である。]
の脂環式ジエステルが提供され、上記した全ての構成及び設定の本発明の方法によって、脂環式ジエステルが得られることを特徴とする。本発明における実施例は、本発明の方法によって製造された脂環式ジエステルを用いて得られる他のポリマーが、精製されていない脂環式ジエステルを用いたものより、改良された特性を有することを証明している。比較例では、沈殿後でさえ、より本質的に不良な色を有するポリマーが得られる。これは、対応するジエステルは、本発明のジエステルとは副生成物による異なるスペクトルを有することを意味する。比較ジエステルのこれらの副生成物のいくつかは、ポリマー鎖に組み込まれる。対照的に、本発明によれば、本発明のジエステルを使用すれば、たとえジエステルを蒸留によるより長い熱応力に暴露しても、改良された色値を有するポリマーを得ることができる。脂環式二酸を可能な限り小さい熱応力に暴露することが、そうでければ分解及び副生物反応が予想されるという理由で、知られた慣行であるので、蒸留という精製方法は一般的に使用されず、現在の技術分野では通例でもないということから、これは特に驚くべきことである。
【0058】
本発明の更なる態様では、溶融エステル交換法によるポリエステルカーボネートの製造方法であって、
(a)上記した全ての構成及び設定の本発明の方法によって式(Ia)又は(Ib)の脂環式ジエステルを準備する工程と、
(b)方法工程(a)からの式(Ia)又は(Ib)の脂環式ジエステル、少なくとも1つのジヒドロキシ化合物及び少なくとも1つのジアリールカーボネートを、溶融エステル交換法で反応させる工程と
を含む方法が、提供される。
【0059】
ここで、方法工程(b)における反応を、エステル化を達成するのに適した条件下で行う。例えば、当業者に公知の縮合触媒、例えば、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物及びこれらの任意の所望の組合せを使用することができる。対応するポリエステルカーボネートの製造に適している限り、溶融エステル交換の反応条件は、同様に、特に限定されない。一例として、反応温度は、100℃~350℃、好ましくは180℃~310℃の範囲であり得る。特に、方法の後の過程で圧力を低減することができる。反応時間は、1時間~10時間で変わり得る。従来技術から知られているように、1つ以上の段階で重合を行うことができる。
【0060】
既に上述したように、ポリエステルカーボネートを製造するための本発明によるこの方法によって、驚くべきことに、良好な固有色(intrinsic inherent colour)を有するポリマーを得た。
【0061】
本発明によれば、方法工程(b)を方法工程(a)の直ぐ後に行う場合、特に有利である。この場合、語句「直ぐ」は、本発明のジエステルの製造及びその蒸留後、蒸留から得られた生成物を溶融エステル交換プロセスに導入することを意味すると理解されるべきである。結果として、溶融エステル交換プロセスでは溶融した生成物を必要とするので、生成物を部分的にのみ凝集させる必要があり得、又は熱エネルギーは部分的にのみそれから除去する必要があり得る。したがって、熱エネルギーは、2回印加する必要はない。同様に、このように経済的及び環境に優しい方法を設計するために、蒸留された生成物の凝集で蓄積した熱を、適切な手段により溶融エステル交換プロセスに供給することができる。
【0062】
方法工程(b)における少なくとも1つのジヒドロキシ化合物は、好ましくは、シクロヘキサン-1,2-ジオール、シクロヘキサン-1,3-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,2-ジメタノール、シクロヘキサン-1,3-ジメタノール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、テトラヒドロ-2,5-フランジメタノール、ビスフェノールA、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(DOD)、4,4’-ジヒドロキシビフェニルエーテル(DODエーテル)、ビスフェノールB、ビスフェノールM、ビスフェノール類(I)~(III):
【0063】
【0064】
[式(I)~(III)において、R’は、いずれの場合も、C1~C4アルキル、アラルキル又はアリールであり、好ましくはメチル又はフェニルであり、非常に特に好ましくはメチルである。]、ブタンジオール、コハク酸、アジピン酸、エチレングリコール、乳酸、ヘキサンジオール、並びにイソマンニド、イソイジド及びイソソルビドなどの1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールから成る群から選択される。これらは、1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-グリシドール、1,4:3,6-ジアンヒドロ-L-イジトール及び1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-マンニトールとしても知られている。本明細書において、脂肪族ジヒドロキシ化合物が特に好ましい。本明細書における1つの実施形態では、脂肪族ジヒドロキシ化合物に加えて、芳香族ジヒドロキシ化合物をモル不足で(in a molar deficiency)使用することができる。
【0065】
ジヒドロキシ化合物は、非常に特に好ましくは、イソマンニド、イソイジド及びイソソルビドなどの1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールであり、これらの中でも最も好ましくはイソソルビドである。任意の所望の混合物を使用することもできる。ジヒドロキシ化合物は、同様に、好ましくは、イソマンニド、イソイジド及びイソソルビドなどの1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールと、シクロヘキサン-1,2-ジメタノール、シクロヘキサン-1,3-ジメタノール及び/又はシクロヘキサン-1,4-ジメタノールから成る群から選択される少なくとも1つとの混合物である。この場合、シクロヘキサン-1,2-ジメタノール、シクロヘキサン-1,3-ジメタノール及び/又はシクロヘキサン-1,4-ジメタノールを、ジヒドロキシ化合物の総質量に対して、20%以下、好ましくは1~10%の量で使用することが特に好ましい。
【0066】
同様に、方法工程(b)におけるジアリールカーボネートとして、式(2):
【0067】
【0068】
[式中、R、R’及びR’’は、各々独立して、同一であっても異なっていてもよく、水素、分岐していてもよいC1~C34アルキル、C7~C34アルキルアリール又はC6~C34アリールであり、Rは加えて-COO-R’’’であってもよく、R’’’は分岐していてもよいC1~C34アルキル、C7~C34アルキルアリール又はC6~C34アリールである。]
の化合物を使用することが好ましい。式(2)に関して既に記載されている設定が同様に適用される。すなわち方法工程(b)においてポリマーを製造するためにも使用されるカーボネート(一例として、DPC)を用いて本発明の脂環式ジエステルを製造することが有利であることが証明された。この場合、微量の例示的DPCは、続いて方法工程(b)においていずれにしてもDPCを添加するので、方法工程(b)において干渉する。したがって、DPCを使用するこの製造方法は非常に有利である。さもなければ、全ての試薬及び副生成物を、重合前に非常に精密に除去しなければならない。
【0069】
したがって、本発明によれば、脂環式ジエステルと、生物原料のジヒドロキシ化合物(好ましくは、イソマンニド、イソイジド及びイソソルビドなどの1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール)及びジアリールカーボネートとの反応による溶融エステル交換によってポリエステルカーボネートを製造するための、式(Ia)又は(Ib):
【0070】
【0071】
[式中、A及びnは、全組合せ及び設定において上記意味を有する。]
の脂環式ジエステルの使用であって、
式(Ia)又は(Ib)の脂環式ジエステルが、塩基性触媒の存在下、少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸と少なくとも1つの脂肪族及び/又は芳香族カーボネートとの反応により得られることを特徴とする、
脂環式ジエステルの使用も提供される。本発明の方法に関して記載されている構成及び設定が全組合せにおいて適用される。
【0072】
本発明の更なる態様では、上記した全ての構成及び設定のエステル交換法による本発明のポリエステルカーボネートの製造方法により得られるポリエステルカーボネートが提供される。本発明のポリマーは、驚くべきことに、組み込まれた着色性不純物のより低い含有率を有する。
【実施例】
【0073】
使用材料:
シクロヘキサンジカルボン酸:シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸;CAS1076-97-7、99%;Sigma-Aldrich、独国ミュンヘン
ジフェニルカーボネート:ジフェニルカーボネート、99.5%、CAS102-09-0;Acros Organics、ベルギー国ヘール
ナトリウムフェノレート:ナトリウムフェノレート三水和物、98%、CAS652-67-5;Merck、独国ダルムシュタット
テトラフェニルホスホニウムフェノレート:テトラフェニルホスホニウムフェノレート、66.5%、CAS15464-47-8;Rheinchemie
水酸化テトラメチルアンモニウム:水酸化テトラメチルアンモニウム五水和物;≧97%(CAS:10424-65-4);Sigma-Aldrich、独国ミュンヘン
4-ジメチルアミノピリジン:4-ジメチルアミノピリジン;≧98.0%;purum;CAS1122-58-3;Sigma-Aldrich、独国ミュンヘン
イソソルビド:イソソルビド(CAS:652-67-5)、98%、Sigma-Aldrich、独国ミュンヘン;イソソルビドは、使用前にイソプロパノールから再結晶する。
Irganox(登録商標)B900(製造者:BASF)
【0074】
分析方法:
ガラス転移温度の決定:
標準DIN EN ISO11357-1:2009-10及びISO11357-2:2013-05に従って、窒素雰囲気下10K/分の加熱速度で示差走査熱量測定(DSC)によってガラス転移温度を測定し、ガラス転移温度(Tg)の決定は2回目の昇温測定における変曲点として測定した。
【0075】
化学特性決定:
1H NMR:600MHz;Bruker AV III HD600分光計;溶媒:CDCl3
ポリマーサンプルの分子量(Mn)を、(フェニル末端基含有率により)NMRスペクトルにより推定する。
【0076】
黄色度指数(YI)の測定:
黄色度指数を測定するため、対応するポリマー又は反応物の溶液をジクロロメタン(ジクロロメタン;MerckからのUvasol)で調製した。この目的を達成するために、0.02g-ポリマー又は反応物/mlの濃度を使用した。各溶液を、ガラス製セル(cuvette)(光路長1cm)に満たした。島津UV1800においてセルの透過率を測定し、光源D65及び標準観測者10°における黄色度指数(YI)を、色座標(CIE)測定により決定し、ASTM E313-10に従って算出した。それぞれのサンプルの測定結果から純粋な溶媒の測定値を引き算する。
【0077】
例1
3.44g(0.0199モル)のシクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸及び8.99g(0.0419モル)のジフェニルカーボネート、更に0.0031g(0.0000182モル)のナトリウムフェノレート三水和物を、先ず、短経路分液漏斗(short-path separator)を備えたフラスコ中に投入した。排気及び窒素パージを4回することにより、混合物から酸素を脱気した。混合物を溶融させ、撹拌しながら280℃まで加熱した。圧力は、標準圧力のままにした。混合物を5時間撹拌し、その過程で、フェノールを連続的に留去した。
【0078】
褐色樹脂の粗生成物5.9g;NMR(1H NMR)により、所望の化合物を得たことが確認された。
【0079】
上記例は、原則的に、同様に比較的高温で運転することができることを示している。しかしながら、反応がより穏やかに進行するので、真空下及び比較的低温で運転することが好ましい。
【0080】
例2
3.44g(0.0199モル)のシクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸及び8.99g(0.0419モル)のジフェニルカーボネートを、先ず、短経路分液漏斗を備えたフラスコ中に投入した。排気及び窒素パージを4回することにより、混合物から酸素を脱気した。混合物を溶融させ、撹拌しながら160℃まで加熱した。圧力を、環境気圧に調整した。混合物を30分間撹拌し;その後、10mbarまで減圧する。混合物を30分間連続的に留去し、この時間中に、0.5mbarまで減圧した。
底部生成物:3.9g
蒸留レシーバ:6.4g
TLC分析は、底部生成物は、もっぱらジフェニルカーボネート及びシクロヘキサンジカルボン酸であることを示した。蒸留生成物は、もっぱらジフェニルカーボネートであった。したがって、選択された条件下、所望の生成物を得ることができないことが分かった。
【0081】
例3
20g(0.116モル)のシクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸及び52.18g(0.243モル)のジフェニルカーボネート、更に0.018g(1.06×10-4モル)のナトリウムフェノレート三水和物及び0.0072g(DPC及び脂肪族二酸の合計に対して0.01重量%)のIrganox B900を、先ず、短経路分液漏斗及び真空バルブアダプターを備えたフラスコ中に投入した。排気及び窒素パージを4回することにより、混合物から酸素を脱気した。混合物を溶融させ、撹拌しながら220℃まで加熱して、分留した。圧力を、600mbarに調整した。混合物を60分間撹拌し;その後、約4mbarまで減圧した(留分1及び2を除去した)。
【0082】
留分3を4.0~1.6mbarで取り出し、第4留分を1.5~0.9mbarの範囲において240℃で蒸留して取り出した。
底部残渣:5.9g
留分1:15.3g
留分2:7.1g
留分3:6.0g
留分4:23.5g(理論収率の62%);留分3+4(理論収率の78%)
TLCは、もっぱらフェノールが留分1及び2と共に留去されたことを示した。
留分3は、反応生成物並びに微量のDPC及びフェノールの両方を含んでいた。
所望の生成物を、留分4において高純度で得ることができた。白色透明な固体を得た。
【0083】
例4
3.44g(0.0199モル)のシクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸及び8.99g(0.0419モル)のジフェニルカーボネートを、先ず、短経路分液漏斗を備えたフラスコ中に投入した。排気及び窒素パージを4回することにより、混合物から酸素を脱気した。混合物を溶融させ、撹拌しながら180℃まで加熱した。圧力を、600mbarに調整した。混合物を60分間撹拌し;その後、10mbarまで減圧した。DPCを連続して30分間留去し、この時間中に5mbarまで減圧した。
底部残渣:4.67g
蒸留レシーバ:8.0g
TLCは、もっぱらDPCが留去され、所望の生成物は得ることができなかったことを示した。
【0084】
例5
34.4g(0.199モル)のシクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸及び89.9g(0.419モル)のジフェニルカーボネート、更に0.031g(0.00027モル)のナトリウムフェノレート三水和物を、先ず、短経路分液漏斗を備えたフラスコ中に投入した。排気及び窒素パージを4回することにより、混合物から酸素を脱気した。混合物を溶融させ、撹拌しながら230℃まで加熱した。混合物を230℃で3時間、標準圧力下で撹拌し;その過程でフェノールを留去した。その後、反応溶融物の温度を200℃まで低下させて、500mbarまで減圧した。その過程で、フェノールを留去し続けた。混合物を1時間撹拌し、同時に5mbarまで連続的に減圧した。揮発性成分を連続的に除去した。210℃まで昇温し、真空度を1mbarまで低下させた。揮発性成分がもはや取り除かれなくなり、塔頂留出物温度(overhead temperature)がかなり低下するまで蒸留を行った。蒸留レシーバを交換し、220℃まで昇温し、真空度を0.5mbarまで低下させた。その過程で、生成物を蒸留した。混合物を30分間蒸留し;塔頂留出物温度は180~190℃まで上昇した。これにより、明白色の生成物を得た。収量:59.7g(理論の91.5%)。
【0085】
例6
特開平07-126213の実施例2に従った試験
16.6g(0.096モル)のシクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸及び45.0g(0.21モル)のジフェニルカーボネート、更に0.09gの4-ジメチルアミノピリジンを、先ず、短経路分液漏斗を備えた三ツ口フラスコ中に投入した。排気及び窒素パージを4回することにより、装置から酸素を脱気した。混合物を180℃で溶融させ、撹拌しながら220℃まで加熱した。45分以内に700mbarまで減圧し、次いで、更に45分以内に2mbarまで減圧した。その過程で、フェノールを連続的に除去した。
生成物を取り出した。これにより、灰白色粉末を得た。NMR分析は、所望の生成物を示した。収量:17.5g。生成物は、精製しないで更に使用した。
【0086】
例7
国際公開第0210111号の実施例4に従った試験
4.65g(0.027モル)のシクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、17.6g(0.082モル)のジフェニルカーボネート、更に0.3gの水酸化テトラメチルアンモニウム24%水溶液(約0.0008モル)を、先ず、短経路分液漏斗を備えた三ツ口フラスコ中に投入した。排気及び窒素パージを4回することにより、装置から酸素を脱気した。混合物を180℃で溶融させ、撹拌しながら210℃まで加熱した。反応混合物をこの温度において4.5時間撹拌した。次いで、150℃まで降温し、2mbarまで減圧した。1時間撹拌を行い、フェノールを連続的に除去した。
生成物を取り出した。これにより、灰ベージュ色粉末を得た。NMR(1H NMR)により、所望の生成物を確認した。収量:20.3g。
【0087】
例8
32.2g(0.187モル)のシクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、210.0g(0.980モル)のジフェニルカーボネート、更に0.18gの4-ジメチルアミノピリジンを、先ず、短経路分液漏斗を備えた三ツ口フラスコ中に投入した。排気及び窒素パージを4回することにより、装置から酸素を脱気した。混合物を180℃で溶融させ、撹拌しながら220℃まで加熱した。約60分以内に700mbarまで減圧し、次いで、更に4時間以内に10mbarまで減圧した。その過程で、フェノールを連続的に除去した。50分以内に15mbarまで減圧し;その過程で、揮発性成分を除去した。30分以内に1.5mbarまで減圧した。
【0088】
生成物の蒸留のため、210~215℃まで降温し、1mbarまで減圧した。これらの条件下で、生成物留分を取り出した。
【0089】
生成物を取り出した。これにより白色固体を得た(収量43g;理論の71%)。
【0090】
【0091】
光学データは、各生成物の蒸留がより良好な光学品質を有するジエステルをもたらすことを示している。
【0092】
イソソルビドを用いたシクロヘキサンジカルボン酸ジフェニルの重合。
【0093】
例A
8.00g(0.0246モル)の例5のシクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ジフェニル、及び8.98g(0.0616モル)のイソソルビド、さらに8.30g(0.0387モル)のジフェニルカーボネートを、先ず、短経路分液漏斗を備えたフラスコ中に投入した。50ppmの炭酸セシウム及び50ppmの水酸化ナトリウム(水酸化ナトリウム水溶液;6.5%)を添加した。排気及び窒素パージを4回することにより、フラスコから酸素を脱気した。反応混合物を190℃で溶融させ、約15分以内に200mbarまで慎重に減圧した。反応混合物を20分間撹拌した。100mbarまで減圧し、210℃まで昇温した。混合物をこれらの条件下で30分間撹拌し、フェノールを反応混合物から連続的に除去した。10mbarまで減圧し、更に10分後、2mbarまで減圧した。反応混合物を、2mbarにおいて更に15分間撹拌した。その後、生成物を取り出し、ジクロロメタンに溶解させ(生成物はジクロロメタンに完全に可溶であった)、メタノール中で沈殿させた。これにより、白色粉末を得た。
【0094】
例B
例Aと同様にして上記方法を行った。例8の生成物を反応物として使用した。
【0095】
例C
例Aと同様にして上記方法を行った。例7の生成物を反応物として使用した。
【0096】
例D
例Aと同様にして上記方法を行った。例6の生成物を反応物として使用した。
【0097】
【0098】
明度及び固有色は、ポリマーの基本的な品質特性である。ポリマーの固有色は、通常、低分子量生成物に起因する。これらの生成物は、重縮合中に生成し、一般的にポリマー鎖に組み込まれない。これらの不純物は、一般的にポリマーの沈殿によって除去することができる。しかしながら、驚くべきことに、蒸留により精製された生成物では、沈殿後、ポリマーの固有色がより抑制されることが分かった。これは、蒸留のない比較サンプルでは、着色生成物のポリマー鎖への組込みが起こるが、本発明のジアリールエステルでは、このような組込みを低減することができることを意味する。