(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】ステレオリソグラフィーによる構成部分の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/35 20170101AFI20231107BHJP
A61C 13/087 20060101ALI20231107BHJP
A61C 13/09 20060101ALI20231107BHJP
B29C 64/124 20170101ALI20231107BHJP
B29C 64/241 20170101ALI20231107BHJP
B29C 64/386 20170101ALI20231107BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20231107BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20231107BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20231107BHJP
【FI】
B29C64/35
A61C13/087
A61C13/09
B29C64/124
B29C64/241
B29C64/386
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/00
(21)【出願番号】P 2021506537
(86)(22)【出願日】2019-06-17
(86)【国際出願番号】 EP2019065889
(87)【国際公開番号】W WO2020030338
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-03-09
(31)【優先権主張番号】102018119027.1
(32)【優先日】2018-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517275117
【氏名又は名称】クルツァー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Kulzer GmbH
【住所又は居所原語表記】Leipziger Strasse 2, D-63450 Hanau, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ラース ヘンドリック ディーツ
(72)【発明者】
【氏名】アブドゥラー ザリー
(72)【発明者】
【氏名】ローガー リッツェル
【審査官】小山 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-504201(JP,A)
【文献】中国実用新案第203831648(CN,U)
【文献】特表2011-520655(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0195994(US,A1)
【文献】国際公開第2018/118832(WO,A1)
【文献】実開平02-080430(JP,U)
【文献】特開平08-141437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
A61C 5/20- 5/35
A61C 5/70- 5/88
A61C 8/00-13/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステレオリソグラフィーによる構成部分(9)の製造方法であって、
A) 担体(8)上で、ステレオリソグラフィーによって液体プラスチック(7)を硬化させることによって、前記構成部分(9)の仮想3Dモデルに応じて前記構成部分(9)を生成するステップであって、
1つの回転軸または複数の回転軸の少なくとも1つの回転軸が前記構成部分(9)の重
心を通るように、または
前記1つの回転軸または前記複数の回転軸の少なくとも1つの回転軸が、前記構成部分(9)と、前記担体(8)と、前記構成部分(9)と共に回転する、遠心分離モジュール(2)のすべての部分とから成るシステムの重
心を通るように
前記構成部分(9)が前記担体(8)上に配置されるように、前記構成部分(9)を前記担体(8)上で生成する、ステップ
(ただし、前記1つの回転軸または前記複数の回転軸の周りでの、前記担体(8)および前記構成部分(9)の回転が釣り合うよう、前記担体(8)に設ける空洞を位置決めおよび配向するステップを除く)と、
B) 前記1つの回転軸または前記複数の回転軸を中心とした前記構成部分(9)の少なくとも1回の回転運動によって前記構成部分(9)を浄化するステップであって、前記回転運動による遠心力によって前記液体プラスチック(7)の残留物を前記構成部分(9)の表面から除去する、ステップと、
を有
し、
前記構成部分(9)を載せた前記担体(8)は、ステップB)における前記構成部分(9)の浄化のために前記遠心分離モジュール(2)に固定され、または固定されており、
前記1つの回転軸は前記遠心分離モジュール(2)内の前記担体(8)の位置によって確定されており、または前記複数の回転軸は前記遠心分離モジュール(2)内の前記担体(8)の位置によって確定されている、製造方法。
【請求項2】
前記構成部分(9)の表面に存在する前記液体プラスチック(7)の前記残留物の少なくとも50%を前記遠心力によって除去する、請求項
1記載の方法。
【請求項3】
前記構成部分(9)の表面に存在する前記液体プラスチック(7)の前記残留物の少なくとも85%を前記遠心力によって除去する、請求項
1記載の方法。
【請求項4】
前記構成部分(9)の表面に存在する前記液体プラスチック(7)の前記残留物の少なくとも95%を前記遠心力によって除去する、請求項
1記載の方法。
【請求項5】
AA) ステップA)の前に、前記担体(8)上の、生成される前記構成部分(9)の位置または位置および配向を確定するステップ、を特徴とし、
前記構成部分(9)の前記少なくとも1つの回転軸が、前記構成部分(9)の重
心を通り、または
前記少なくとも1つの回転軸が、前記構成部分(9)と、前記担体(8)と、前記構成部分(9)と共に回転する、前記遠心分離モジュール(2)のすべての部分とから成る前記システムの重
心を通るように前記構成部分(9)を前記担体(8)上に配置し、
ステップA)において、前記担体(8)上での、このように決定された位置、またはこのように決定された配向を伴う、このように決定された位置で前記構成部分(9)を生成すること
を特徴とする、請求項1から
4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
ステップAA)において、前記構成部分(9)または前記システムの重心を前記仮想3Dモデルに基づいて決定し、これによって前記担体(8)上の、生成される前記構成部分(9)の位置または位置および配向を決定する、請求項
5記載の方法。
【請求項7】
ステップA)における前記液体プラスチック(7)の前記硬化を光、UV光またはレーザー光によって行い、液体プラスチック(7)として、光硬化性プラスチック(7)を使用する、または、アクリル樹脂、エポキシ樹脂もしくはビニルエステル樹脂を使用する、請求項1から
6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記方法によって、義歯を設置するための歯科モデル(9)または口腔モデルを前記構成部分(9)として製造し、または義歯または義歯部分のモデル、もしくは補綴物ベースを前記構成部分(9)として製造し、ステップA)において生成する、請求項1から
7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
C) ステップB)の後に、浄化液を用いて、またはイソプロパノールを用いて前記構成部分(9)を後浄化するステップを特徴とし、ステップC)をステップB)の後に行う、請求項1から
8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
ステップC)において、回転運動による遠心力によって、前記構成部分(9)の表面から前記浄化液の残留物を除去することを特徴とする、請求項
9記載の方法。
【請求項11】
D) ステップB)の後に前記構成部分(9)を後硬化するステップを特徴とし、前記構成部分(9)を、前記後硬化時に前記1つの回転軸を中心に回転させる、または前記複数の回転軸の少なくとも1つの回転軸を中心に回転させる、請求項1から
10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記後硬化を、後露光または熱処理によって、または後露光および熱処理によって行う、請求項
11記載の方法。
【請求項13】
ステップB)において、前記回転運動をハウジング(24)内で行い、前記遠心力によって除去された、前記液体プラスチック(7)の前記残留物を前記ハウジング(24)によって受けとめる、請求項1から
12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
ステップB)における前記回転運動を、毎分200回転~毎分1000回転の間の回転速度で行う、請求項1から
13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
ステップB)における前記回転運動を、毎分300回転~毎分800回転の間の回転速度で行う、請求項1から
14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
構成部分(9)として、中空モデルまたは中空形状を製造する、請求項1から
15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
ステップB)において、前記構成部分(9)に、空気の流れ、または圧縮空気の流れを吹きつける、請求項1から
16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
少なくとも前記回転運動の角速度および/または前記少なくとも1回の回転運動の前記角速度を達成するための角加速度を、前記構成部分(9)の形状に関連して制御し、その結果、前記少なくとも1回の回転運動時の前記構成部分(9)の破壊または変形を回避する、請求項1から
17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
ステレオリソグラフィーによって構成部分(9)を製造するための3Dプリントシステムであって、前記3Dプリントシステムは、
液体プラスチック(7)の、位置に関連する、層ごとの硬化のためのプリント装置(1)と、
制御部(3)と、
遠心分離モジュール(2)と、
を有し、
前記制御部(3)は、生成される構成部分(9)の仮想3Dモデルに即して
、ステップA)に従って、前記プリント装置(1)を制御するのに適しており、かつこのために設けられており、
前記制御部(3)は、前記遠心分離モジュール(2)を制御することで、回転運動による遠心力によって前記液体プラスチック(7)の残留物を前記構成部分(9)の表面から除去できるように
、前記プリント装置(1)によって生成された前記構成部分(9)を回転運動によって回転させることができ、
その際、前記構成部分(9)を載せた担体(8)は、遠心分離モジュール(2)に固定されており、
ここで、前記ステップA)は、前記担体(8)上で、ステレオリソグラフィーによって液体プラスチック(7)を硬化させることによって、前記構成部分(9)の仮想3Dモデルに応じて前記構成部分(9)を生成するステップであって、1つの回転軸または複数の回転軸の少なくとも1つの回転軸が前記構成部分(9)の重心を通るように、または、前記1つの回転軸または前記複数の回転軸の少なくとも1つの回転軸が、前記構成部分(9)と、前記担体(8)と、前記構成部分(9)と共に回転する、遠心分離モジュール(2)のすべての部分とから成るシステムの重心を通るように前記構成部分(9)が前記担体(8)上に配置されるように、前記構成部分(9)を前記担体(8)上で生成するステップ(ただし、前記1つの回転軸または前記複数の回転軸の周りでの、前記担体(8)および前記構成部分(9)の回転が釣り合うよう、前記担体(8)に設ける空洞を位置決めおよび配向するステップを除く)であり、前記1つの回転軸は前記遠心分離モジュール(2)内の前記担体(8)の位置によって確定されており、または前記複数の回転軸は前記遠心分離モジュール(2)内の前記担体(8)の位置によって確定されており、
前記3Dプリントシステムはさらに、
前記構成部分(9)の前記仮想3Dモデルの重心の場所、または前記構成部分(9)と、担体(8)と、前記構成部分(9)と共に回転する、前記遠心分離モジュール(2)のすべての部分とから成るシステムの仮想3Dモデルの重心の場所を決定する重心計算モジュール(5)と、
前記プリント装置(1)において生成される前記構成部分(9)の位置または位置および配向を決定する位置決めモジュール(4)と、
を有する、3Dプリントシステム。
【請求項20】
前記制御部(3)は、コンピュータープログラムを備えたコンピューターである、請求項
19記載の3Dプリントシステム。
【請求項21】
前記位置決めモジュール(4)が前記重心計算モジュール(5)と接続されており、前記重心計算モジュール(5)によって決定された重心にアクセスすることができ、さらに、前記プリント装置(1)における、生成される前記構成部分(9)の位置または位置および方向を、前記重心計算モジュール(5)によって計算された重心に関連して決定することがプログラムされている、請求項
19または
20記載の3Dプリントシステム。
【請求項22】
前記プリント装置(1)は、
前記担体(8)を固定するための保持部(10)を有して
いる、請求項
19から
21までのいずれか1項記載の3Dプリントシステム。
【請求項23】
光または温度によって、または光および温度によって前記構成部分(9)を後硬化する後硬化モジュール(2)を特徴とし、前記構成部分(9)は、前記後硬化時に、前記後硬化モジュール(2)において回転可能である、請求項
19から
22までのいずれか1項記載の3Dプリントシステム。
【請求項24】
前記後硬化モジュールは、前記遠心分離モジュール(2)と一体的に形成されている、請求項
23記載の3Dプリントシステム。
【請求項25】
前記3Dプリントシステムは、請求項1から
18までのいずれか1項記載の方法を実施するように設計されている、請求項
19から
24までのいずれか1項記載の3Dプリントシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステレオリソグラフィーによる構成部分の製造方法に関する。
【0002】
本発明はまた、ステレオリソグラフィーによって構成部分を製造するための3Dプリントシステムに関し、この3Dプリントシステムは、液体プラスチックの、位置に関連する、層ごとの硬化のためのプリント装置および制御部を有している。
【0003】
歯科分野において、手動技術に加えて、デジタルの製造方法もますます重要になってきている。義歯および、たとえばクラウン、ブリッジおよび患者の口腔の3次元モデル等の他の歯科用成形部品は、数年前から、CAD/CAM技術を使用して、ミリングプロセスにおいて減法的に製造されている(CAM:Computer-Aided Manufacturing(ドイツ語でrechnerunterstuetzte Fertigung)、CAD:Computer-Aided Design(ドイツ語でrechnerunterstuetzte Konstruktion))。
【0004】
歯科補綴物を製造するためのCAD/CAM方法は、国際公開第91/07141号から知られており、この方法では、印象体に基づいて補綴物ベースがプラスチックブロックから削り出される。
【0005】
さらに、たとえば1次的補綴物、補綴物、KFO器具(顎整形外科用器具(Kiefer-Orthopaedie-Apparaturen)、バイトガード、ドリルテンプレートまたは歯科モデル等のポリマーベースの歯科製品用のステレオリソグラフィーおよびDLP(Digital light processing)等の生成CAM方法がますます重要になってきている。
【0006】
ステレオリソグラフィーは今日、プラスチック製のプロトタイプまたは構成部分の製造に使用されている。ステレオリソグラフィーは、ラピッドプロトタイピングまたはラピッドマニュファクチャリングの技術的な原理であり、ここではワークピースが、空間において具体化する点によって層ごとに構築される。1つまたは複数の部分の同時製造は、通常、コンピューターで作成されたCADデータから完全に自動的に行われる。この原理は、1984年に米国の物理学者Chuck Hullによって既に開発されており、特許出願、米国特許第4575330号明細書で特許出願が行われた。ステレオリソグラフィーに基づく3Dプリント方法では、液体プラスチックを光重合することによって構成部分が生成される。そのようなステレオリソグラフィー3Dプリンターは、たとえば、米国特許出願公開第2017/291356号明細書および欧州特許第3174693号明細書から知られている。
【0007】
たとえば独国特許出願公開第102009056752号明細書または国際公開第2013/124452号から知られている方法等の方法が存在し、ここでは部分的もしくは完全な歯科補綴物がデジタルで設置され、CAD/CAM方法を介して製造される。DE10304757B4から、歯が仮想モデルに仮想的に設置され、補綴物ベースがこの仮想モデルに基づいて製造される、義歯の製造方法が知られている。
【0008】
構成部分がステレオリソグラフィーで生成された後、それらの表面の液体プラスチック残留物を構成部分から除去する必要がある。現在、ステレオリソグラフィーによって付加製造された構成部分は、このために、圧縮空気銃を用いて圧縮空気によって手動で前浄化される。次に、これらの構成部分は、未硬化のプラスチックの残留物を除去するために、イソプロパノール等の浄化液による超音波浴における最終浄化または後浄化において浄化される。このために構成部分を個別に手に取る必要があるため、これにはコストがかかる。さらに、構成部分の表面は、幾何学的形状が比較的複雑である場合、どこからでも良好に到達されるわけではない。これは特に中空形状に当てはまり、その内部領域には、空気の流れが良好に当たらず、そこには浄化液が溜まることがあり、これを再び取り除くのは困難である。
【0009】
したがって、本発明の課題は、従来技術の欠点を克服することである。特に、ステレオリソグラフィーによって構成部分を僅かな量力で大量生産することが可能になる方法が提供されるべきである。この方法は、可能な限り完全に自動的に実行可能であるべきである。この際に、高品質かつクリーンな構成部分が最終製品として存在するべきである。特に、構成部分の浄化が簡易化され、自動化可能であるべきである。
【0010】
本発明の課題は、
ステップA)担体上で、ステレオリソグラフィーによって液体プラスチックを硬化させることによって、構成部分の仮想3Dモデルに応じて構成部分を生成し、ここで、1つの回転軸または複数の回転軸の少なくとも1つの回転軸が構成部分の重心の領域、特に構成部分の重心を通るように、または1つの回転軸または複数の回転軸の少なくとも1つの回転軸が、構成部分と、担体と、構成部分と共に回転する、遠心分離モジュールのすべての部分とから成るシステムの重心の領域、特にシステムの重心を通るように構成部分が担体上に配置されるように、構成部分が担体上で生成され、および
ステップB)1つの回転軸または複数の回転軸を中心とした構成部分の少なくとも1回の回転運動によって構成部分を浄化し、ここで回転運動による遠心力によって液体プラスチックの残留物を構成部分の表面から除去する、
を有している、ステレオリソグラフィーによる構成部分の製造方法によって解決される。
【0011】
液体プラスチックの残留物が、少なくとも1回の回転運動による遠心力によって構成部分の表面から除去されるということは、本発明の枠において、構成部分の浄化後に、液体プラスチックの残留物がもはや構成部分の表面に残っていないことを意味しない。すなわち、構成部分の表面から液体プラスチックのすべての残留物が除去される必要はない。後浄化によって、残りの残留物をさらに除去することができる。しかしこのような場合にも、後浄化が大幅に簡易化され、浄化液の消費量が少なくなる。その場合、この方法は、従来技術による方法よりもさらに資源効率が高く、とりわけ、遠心分離された液体プラスチックを戻し、(必要に応じてろ過もしくは浄化した後に)新しい構成部分の製造に再利用することができる。
【0012】
同一の回転軸を中心に同じ回転方向に複数の回転が行われる均一な回転も、角速度が両回転方向に振動するように実現され、360°の全回転が不要な振動回転も、対象の回転運動である。同様に、複数の回転軸を中心とした回転が、同時にまたは連続して行われてもよい。
【0013】
有利には、構成部分がステップA)において層ごとに生成されるように設定されていてよい。このようにして、既知のステレオリソグラフィー方法を構成部分の生成に適用することができる。
【0014】
ステップA)において構成部分が、液体プラスチックで満たされた浴槽において生成されるように設定されていてもよい。したがって、ステップB)における浄化時に、液体プラスチックを再び浴槽に返還するもしくは導いて戻すことができる。
【0015】
本発明の方法において、構成部分の表面に存在する液体プラスチックの残留物の少なくとも50%が遠心力によって除去され、有利には構成部分の表面に存在する液体プラスチックの残留物の少なくとも85%が遠心力によって除去され、特に有利には構成部分の表面に存在する液体プラスチックの残留物の少なくとも95%が遠心力によって除去されるように設定されていてもよい。
【0016】
これによって、かなりの量の液体プラスチックが構成部分の表面から除去されるが、構成部分の表面に付着しているプラスチックの全量が除去される必要はないことが明らかである。したがって、この浄化は少なくとも後浄化が簡易化される程度に強い。
【0017】
さらに、ステップA)において、構成部分が担体上で生成されるように設定されている。
【0018】
担体は、ステレオリソグラフィー方法によって構成部分を製造するための構築プラットフォームとして使用可能であり、同時に、構成部分を浄化するための構築プラットフォームとして使用可能であり、この際に、このために構成部分を担体から分離する必要はない。
【0019】
ここで、構成部分を載せた担体が、ステップB)における構成部分の浄化のために遠心分離モジュールに固定される、または固定されているように設定されていてよい。ここで有利には1つの回転軸は遠心分離モジュール内の担体の位置によって確定されている、または複数の回転軸は遠心分離モジュール内の担体の位置によって確定されている。
【0020】
担体を使用することによって、構成部分が損傷を受けるリスクなく、構成部分を簡単な方法でプリント装置から遠心分離モジュールに移動させることができる。択一的に、プリント装置と遠心分離モジュールとを一体的に形成することもできる。
【0021】
さらに、1つの回転軸または複数の回転軸の少なくとも1つの回転軸が構成部分の重心の領域、特に構成部分の重心を通るように、または1つの回転軸または複数の回転軸の少なくとも1つの回転軸が、構成部分と、担体と、構成部分と共に回転する、遠心分離モジュールのすべての部分とから成るシステムの重心の領域、特にシステムの重心を通るように構成部分が担体上に配置されるように、ステップA)において構成部分が担体上で生成されるように設定されている。
【0022】
これによって、少なくとも1回の回転運動の際の、回転運動を妨げる不均衡が回避されるはずであり、これによって一方では、回転運動中の、構成部分の支承、または構成部分と、担体と、遠心分離モジュールのすべての回転部分とから成るシステムの支承が簡易化され、他方では、この不均衡によって発生する力による、まだ完全には硬化していない可能性がある構成部分の損傷を阻止することができる。本発明によって、驚くべきことに、構成部分の生成時に、既に、担体上の構成部分の適切な配置または配置および方向付けによって、簡易かつ安価であるが同時に効率的でもある浄化が、少なくとも1回の回転運動によって実現可能であることが見出された。
【0023】
ここで、1つの回転軸または複数の回転軸の少なくとも1つの回転軸が、接近して重心を通過して、各回転運動時に、そこから結果として生じる不均衡によって発生する力が小さく、このための装置(遠心分離モジュール)を大幅に高価にしてしまう、担体の支承時の構造的なコストをかける必要がないのは、本発明の実現にとって十分である。付加的に、各回転運動時に、そこから結果として生じる不均衡によって発生する力も小さいはずであり、まだ完全には硬化していない構成部分の変形または破壊が阻止される。1つの回転軸または複数の回転軸の少なくとも1つの回転軸は有利には、不均衡を可能な限り小さく保つために、構成部分の重心を正確に、または可能な限り正確に通る。
【0024】
また、本発明によって、方法においてステップAA)が行われることが提案される。ステップAA)ステップA)の前に、担体上の、生成される構成部分の位置または位置および配向を確定し、ここで構成部分は次のように担体上に配置される。すなわち、構成部分の少なくとも1つの回転軸が、構成部分の重心を中心とした領域を通り、特に、まさに、構成部分の重心を通り、または少なくとも1つの回転軸が、構成部分と、担体と、構成部分と共に回転する、遠心分離モジュールのすべての部分とから成るシステムの重心を中心とする領域を通り、特に、まさに、システムの重心を通るように配置され、さらにステップA)における担体上での、このように決定された位置、またはこのように決定された配向を伴う、このように決定された位置での構成部分の生成を特徴とする。
【0025】
これによってまた、少なくとも1回の回転運動の際の、回転運動を妨げる不均衡が回避されるはずであり、これは、一方では回転運動時の構成部分の支承を簡易化し、他方では、この不均衡によって発生する力による、まだ完全には硬化していない可能性がある構成部分の損傷を阻止することができる。さらに、仮想3Dモデルがいずれにせよ存在していることが利用され、仮想3Dモデルを有利に利用することができる。この際に、重心の場所が仮想3Dモデルで簡単に計算されることが利用され、これによって位置と、場合によっては配向とが容易に計算される。
【0026】
ここで、ステップAA)において、構成部分またはシステムの重心が仮想3Dモデルに基づいて決定され、これによって担体上の、生成される構成部分の位置または位置および配向が決定されるように設定されていてよい。
【0027】
これによって、構成部分のコンピューター支援製造の利点が、構成部分の浄化の際にも利用される。
【0028】
有利には、ステップA)における液体プラスチックの硬化が光、UV光またはレーザー光によって行われ、液体プラスチックとして、光硬化性プラスチック、特にアクリル樹脂、エポキシ樹脂またはビニルエステル樹脂が使用されるように設定されていてもよい。
【0029】
これらの硬化方法は、浄化ステップと共に使用されるのが特に合理的である。なぜなら、ここではまた、構成部分を生成するために使用される大量の液体プラスチックが構成部分の表面に付着したままである、かつ/または封入される可能性があるが、これと同時にここではまた、比較的水っぽいままであり、遠心力で良好な浄化効果が得られる場合があるからである。
【0030】
さらに、この方法によって、義歯を設置するための歯科モデルまたは口腔モデルが構成部分として製造され、または義歯または義歯部分のモデル、特に補綴物ベースが構成部分として製造され、ステップA)において生成されるように設定されていてよい。
【0031】
本発明の方法は特に、浄化ステップが簡易化され、良好に完全に自動化可能であるので、歯科分野および歯科製品におけるモデルの自動化された製造に特に適している。
【0032】
さらに、本発明では、以下のステップが設定されていてよい。ステップC)ステップB)の後に、浄化液を用いて、特にイソプロパノールを用いて構成部分を後浄化し、ここでステップC)をステップB)の後に行う。
【0033】
この後浄化によって、浄化後も構成部分に付着している、プラスチックの残留物およびその他の汚染物質を除去することができる。後浄化は、後浄化の様式の通常の浄化のみが実行される場合と比較して、前の浄化によって、格段に低コストである。
【0034】
さらに、ステップC)において、回転運動による遠心力による、構成部分の表面からの浄化液の残留物の除去が設定されていてよい。
【0035】
構成部分はいずれにせよ、ステップB)における浄化のために回転可能に支承されており、場合によっては重心が適切に調整されているので、回転運動を浄化液の残留物の除去のために使用することもできる。
【0036】
さらに、ステップD)構成部分の後硬化が、ステップB)の後に設定されていてよく、ここで、構成部分は、後硬化時に1つの回転軸を中心に回転するか、または複数の回転軸の少なくとも1つの回転軸を中心に回転し、ここで有利には、後硬化は、後露光または熱処理によって、または後露光および熱処理によって行われる。
【0037】
ここでも、構成部分を回転させることができる(特に、強い不均衡なしに回転させることができる)、いずれにせよ利用可能な手法が、後硬化時に構成部分を回転させることによって、構成部分の後硬化を簡易化するために利用される。これによって、後硬化のための装置を、より簡易に、かつより安価に構築することができる、もしくは構成部分のより均一な後硬化を実現することができる。
【0038】
本発明の方法の発展形態では、ステップB)において、回転運動がハウジング内で行われるように設定されていてよく、ここで遠心力によって除去された、液体プラスチックの残留物がこのハウジングによって受けとめられる。
【0039】
これによって、遠心力によって構成部分から除去された、液体プラスチックの残留物を再利用することができる、または少なくとも収集して、再利用のために再処理することができる。
【0040】
ステップB)における回転運動が、毎分200回転~毎分1000回転の間の回転速度で、有利には毎分300回転~毎分800回転の間の回転速度で行われるように設定されていてもよい。
【0041】
これらの回転速度では、構成部分の生成後にまだ完全には硬化していない構成部分が変形することなく、良好な浄化効果が得られる。これらの回転速度は、通常5mm~150mmの間の寸法を有する歯科用成形部品に特に適していることが判明している。
【0042】
構成部分として、中空モデルまたは中空形状が製造されるように設定されていてもよい。
【0043】
本発明の方法による中空モデルおよび中空形状の製造は特に有利である。なぜなら、中空モデルおよび中空形状の内面を他の方法で良好に浄化することができないからである。なぜなら空気の流れがこれに到達することが困難であり得る、または使用される浄化液が中空形状または中空モデル内に定着し、再び除去することが困難であり得るからである。
【0044】
さらに、ステップB)において、構成部分に、空気の流れ、特に圧縮空気の流れが吹きつけられるように設定されていてよい。
【0045】
空気の流れによって付加的な浄化効果を得ることができる。さらに、このようにして、1つの回転軸または複数の回転軸の近くに接近して位置する、構成部分の表面の領域にも空気の流れが到達することができ、空気の流れは、このような部分に付着している、液体プラスチックの残留物を半径方向外側に追い払うことができ、したがってこれはここで遠心力によって追い払われて除去される。
【0046】
少なくとも回転運動の角速度および/または少なくとも回転運動の角速度を達成するための角加速度が、構成部分の形状に関連して制御されるように設定されていてもよく、その結果、少なくとも1回の回転運動時の構成部分の破壊または変形が回避される。
【0047】
これによって、構成部分の破壊または変形を恐れることなく、可能な限り強い回転を、構成部分の迅速かつ効率的な浄化のために使用することができる。この際に本発明では、有利には、構成部分の一貫性を考慮することができる。
【0048】
本発明の基礎となる課題は、ステレオリソグラフィーによって構成部分を製造するための3Dプリントシステムによっても解決され、3Dプリントシステムは、液体プラスチックの、位置に関連する、層ごとの硬化のためのプリント装置、制御部、特にコンピュータープログラムを備えたコンピューターを有している。制御部は、生成される構成部分の仮想3Dモデルに即して、本発明の方法に従って、ステップA)に従って、プリント装置を制御するのに適しており、かつこのために設けられている。3Dプリントシステムはさらに遠心分離モジュールを有しており、この遠心分離モジュールによって、プリント装置によって生成された構成部分を、回転運動による遠心力によって液体プラスチックの残留物を構成部分の表面から除去できるように、回転運動によって回転させることができる。
【0049】
プリント装置は、有利には、光源および浴槽を有しており、浴槽は、光源からの光で硬化可能な液体プラスチックで満たされている、または満たすことができる。
【0050】
遠心分離モジュールは、プリント装置の別個の部分として設けられていても、プリント装置と共に構築されてもよい。後者の場合、たとえば、生成された構成部分が、液体プラスチックの浴槽から持ち上げられ、そこで遠心分離モジュールによって回転運動させられるように設定されていてよい。遠心分離モジュールは、回転運動を生成するための電気モーターと、構成部分または担体を固定するための保持部とを有することができ、ここで構成部分は、担体上で生成されている。理論的には、遠心分離モジュールを、プリント装置による構成部分の生成中にも使用することができる。
【0051】
3Dプリントシステムはここで、構成部分の仮想3Dモデルの重心の場所、または構成部分と、担体と、構成部分と共に回転する、遠心分離モジュールのすべての部分とから成るシステムの仮想3Dモデルの重心の場所を決定する重心計算モジュールおよびプリント装置において生成される構成部分の位置または位置および配向を決定する位置決めモジュールを有することもできる。
【0052】
これによって、構成部分を3Dプリントシステムにおいて、同じ位置、場合によっては同じ配向において生成することができるので、遠心分離モジュール内で回転するときに、構成部分の回転運動を可能な限り容易に実行することができる。この際に、1つの回転軸または複数の回転軸が、重心計算モジュールによって計算された重心を通るように構成部分を配置することによって、不均衡に対応するための、遠心分離モジュールにおける構成部分のコストのかかる支承を回避することができる。
【0053】
ここで配向とは、プリント装置に対する、空間における構成部分の場所、または遠心分離モジュールの非回転部分に対する、構成部分と、担体と、場合によっては構成部分と共に回転する、遠心分離モジュールの部分とから成るシステムの場所であり、これを、プリント装置に対する構成部分の回転または遠心分離モジュールの非回転部分に対するシステムの回転によって得ることができる。すなわち、構成部分の配向の変化は、プリント装置に対する構成部分の回転によって得られ、もしくはシステムの配向の変化は、遠心分離モジュールに対するシステムの回転によって得られる。対照的に、構成部分の位置の変化は、プリント装置に対する構成部分の並進運動によって得られ、これに応じてシステムの位置の変化は、遠心分離モジュールに対するシステムの並進運動によって得られる。
【0054】
ここで位置決めモジュールが重心計算モジュールと接続されており、重心計算モジュールによって決定された重心にアクセスすることができるように設定されていてよく、さらに、プリント装置における、生成される構成部分の位置または位置および方向を、重心計算モジュールによって計算された重心に関連して決定することがプログラムされている。
【0055】
これによって、後の1つの回転軸または複数の回転軸が、構成部分の重心または構成部分と、担体と、場合によっては構成部分と共に回転する、遠心分離モジュールの部分とから成るシステムの重心を通り、遠心分離モジュールにおける回転運動時に不均衡が発生しなくなることが保証される。
【0056】
さらに、プリント装置が、担体を固定するための保持部を有するように設定されていてよく、ここで構成部分は担体上で生成可能であり、有利にはプリント装置は少なくとも1つの担体を有する。
【0057】
これによって、生成された構成部分に機械的なストレスをかけることなく、担体上の構成部分を遠心分離モジュールに移すことができる。
【0058】
3Dプリントシステムが、本発明の方法を実施するように構成されているように設定されていてもよい。
【0059】
これによって、3Dプリントシステムは、本発明の方法の利点を有する。
【0060】
最後に、光または温度によって、または光および温度によって構成部分を後硬化する後硬化モジュールも設けられていてよい。ここで構成部分は、後硬化時に、後硬化モジュールにおいて回転可能であり、有利には後硬化モジュールは、遠心分離モジュールと一体的に形成されている。
【0061】
これによって、構成部分が完成されて、すぐに使用できる、完全自動の3Dプリントシステムが提供される。同時に、構成部分を回転させる手法を、後硬化モジュールの構造を簡易化するために利用することができ、後硬化の均一性の改善が得られる。
【0062】
本発明は、構成部分の少なくとも1回の回転運動によって、ここで生じる遠心力を、構成部分の生成後に、構成部分に付着しているプラスチックの残留物の少なくとも一部、および場合によっては他の汚染物質を構成部分から少なくとも広範囲に除去することに利用することができ、これによってイソプロパノールまたは他の浄化液での簡易な、短時間の後浄化によって十分に、構成部分を浄化することができるという驚くべき認識に基づいている。その後、または後続の後硬化ステップによって、構成部分は、さらに使用できる状態になる。ここで浄化は、後硬化の前に行われるべきであり、これによって、構成部分の製造材料である液体プラスチックの付着残留物が共に硬化しなくなり、これによって構成部分の所望の形状が変造もしくは損傷されなくなる。本発明によって、驚くべきことに、中程度の回転速度の場合に、遠心力は液体プラスチックの残留物を除去するのに十分であり、それにも関わらず、まだ完全には硬化していない構成部分を変形させる恐れがないことも見出された。ここで、使用可能な最大回転速度は、使用される回転軸に関する構成部分の半径方向のサイズ、使用される液体プラスチック、および光源の波長と出力とに関する、使用されるステレオリソグラフィー方法に関連するが、選択されたラスター密度および光源の焦点にも関連する。生成された構成部分の正確な幾何学的形状も、ある程度の役割を果たす。したがって、たとえば、半径方向外側の質量の大きい領域を回転軸と接続する薄いウェブは、中実の構成部分よりも破損する可能性が高い。
【0063】
本発明は、遠心力を利用することによって、付加製造された構成部分の表面ならびに中空空間から、未硬化のプラスチック残留物もしくは合成樹脂残留物を除去することを可能にする。ここで構築プラットフォームまたはプリントされた部分を含む構築プラットフォームの一部を、直接的に浄化設備に配置することが可能である。このプロセスは、従来の浄化方法もしくはプリント方法よりも高速かつ効率的である。さらに、より良い再現性を実現することができる。
【0064】
本発明は、主に、特にユーザーフレンドリーではないと言われ得る手動の前浄化に取って代わる。完全に取って代わることができないが、後浄化の負担を、少なくとも大幅に軽減することができる。特に、液体プラスチックの大部分を少なくとも1回の回転運動によって除去することができるので、後浄化時の浄化液の汚染は、浄化液による従来の最終浄化の場合よりも格段に緩慢になる。
【0065】
ユーザーが、液体合成樹脂もしくは液体プラスチックを用いて作業することが少なくなるので、これによってこれらの物質との身体的な接触が少なくなる。これによって、必要な個人用保護具が少なくなる。この方法によって、圧縮空気銃のユーザーがさらされる騒音および液体プラスチックの蒸気の吸入も回避される。たとえば、保護ゴーグルはもはや必須ではない。さらに、液体プラスチックもしくは液体合成樹脂はもはやそれほど強く噴霧されず、閉鎖されたハウジングにおいてこの浄化を行うことができるので、ベントなしでも無臭の浄化を行うことができる。圧縮空気を用いて構成部分を手動で浄化する際の手動エラーを排除することができるので、プロセスの確実性も高くなる。
【0066】
本願に記載される3Dプリントシステムは、自動浄化設備を含んでおり、構成部分の洗浄および場合によっては後硬化のための完全に自動化されたプロセスチェーンにも適している。
【0067】
以下において、本発明のさらなる実施例を、5つの概略的に示された図に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【
図1】本発明の方法を実施するための遠心分離モジュールを備える本発明による3Dプリントシステムの概略図である。
【
図2】本発明の方法を実施するための第2の択一的な遠心分離モジュールの概略図である。
【
図3】本発明の方法を実施するための第3の択一的な遠心分離モジュールの概略図である。
【
図4】本発明の方法を実施するための第4の択一的な遠心分離モジュールの概略図である。
【
図5】本発明の、ステレオリソグラフィーによる構成部分の製造方法のフローである。
【0069】
図では、見やすくするために、部分的に、異なる実施に対しても、異なるが、類似した部分、たとえば異なる実施におけるブロワーパイプにも同じ参照番号が使用される。これらには、以下の図の説明全体において、およびすべての図において、参照番号26が付けられている。
【0070】
図1は、本発明の方法を実施するための、かつ構成部分9を製造するための、本発明による3Dプリントシステムの概略図を示している。プリントシステムは、元来のステレオリソグラフィープリント装置1および遠心分離モジュール2を含んでいる。制御部3はプリント装置1および遠心分離モジュール2と接続されており、このために、プリント装置1および遠心分離モジュール2を制御することができる。適切にプログラムされたコンピューターを制御部3として使用することができる。制御部3は、CAMの制御を受け持ち、CADの計算のためにも使用される。制御部3は、生成される構成部分9の位置または位置および配向を計算するための位置決めモジュール4を有しており、さらに、生成される構成部分9における重心の場所を計算するための重心計算モジュール5を有している。
【0071】
プリント装置1は、そこから構成部分9が製造される光重合性液体プラスチック7用の浴槽6を有している。液体プラスチック7として、たとえばアクリル樹脂、エポキシ樹脂またはビニルエステル樹脂等の光硬化性合成樹脂が使用される。構成部分9は、プリント装置1の可動プラットフォーム10と、取り外し可能に接続されている担体8上で生成される。浴槽6は液体プラスチック7によって十分に満たされているので、生成される構成部分9は、担体8と共に完全に液体プラスチック7内に浸漬可能である。
【0072】
担体8は、一義的な位置および配向において可動プラットフォーム10と接続されている、もしくは接続可能である。担体8の場所および配向は、データレコードとして制御部3および位置決めモジュール4に格納されており、構成部分9を構築するとき、および構成部分9の位置または位置および場所を計算するときに、位置決めモジュール4によって考慮される。
【0073】
プラットフォーム10は、浴槽6内で、少なくとも高さ(
図1における上から下)において位置調整可能であるが、それに対して直角な面においても位置調整可能であってよい。このために、プラットフォーム10は、浴槽6内に垂直に立っている支柱14に、長手方向でシフト可能であるように配置されている。プラットフォーム10の位置調整は、構成部分9の生成時に、制御部3によって制御される。
【0074】
プリント装置1はレーザー16も含んでおり、このレーザーの波長は、液体プラスチック7を硬化させるのに適している。レーザー16によって生成されたレーザービーム(
図1において太い破線として示されている)は、回転可能に可動に支承された、制御可能なミラー18によって、浴槽6へ向けられる。可動ミラー18の傾斜を、たとえば、ステッピングモーター(図示せず)を介して、相互に直角な2つの軸において調整することができる。制御部3は、空間における可動ミラー18の傾斜を調整するので、プリントプロセス全体を制御部3によって制御することができる。
【0075】
構成部分9を製造するために、担体8がプラットフォーム10上に固定される。続いて、レーザービームによって、担体8上で、および互いの上で液体プラスチック7の層が硬化され、したがって、構成部分9が層ごとに構築される。ここでレーザービームは、制御部3によって調整されるミラー18の傾斜を介して制御される。構成部分9の各層に対して、担体8は、浴槽6もしくは液体プラスチック7内により深く沈められるので、構成部分9の上の層は、常に、液体プラスチック7の表面に接し、したがってレーザービームが到達することができる。プラットフォーム10、ひいては液体プラスチック7内の構成部分9の高さはここで、同様に制御部3によって制御される。
【0076】
構成部分9がプリント装置1において完全に生成された後、その上に構成部分9を備える担体8がプラットフォーム10から取り出され、遠心分離モジュール2に固定される。
【0077】
遠心分離モジュール2は、制御部3によって制御可能なモーター20を有している。モーター20の軸は、クイックリリースクランピング装置22を介して担体8と接続されている、もしくは接続可能である。ここで担体8を、モーター20に対する担体8の位置および配向が確定されるように、クイックリリースクランピング装置22内にクランプすることができる。
【0078】
構成部分9を備える担体8は、遠心分離モジュール2のハウジング24内で移動される。ハウジング24は、構成部分9の表面から滴り落ちる液体プラスチックを捕らえる。液体プラスチックを、プリント装置1の浴槽6に導いて戻すことができ、ここで液体プラスチックは、このために事前に浄化および/またはろ過されてよい。
【0079】
付加的に構成部分9を、その先端が圧縮空気ノズルを形成するブロワーパイプ26を用いて、空気の流れにさらにさらすことができ、これは構成部分9の表面からの液体プラスチックの残留物の分離を支持する。さらに、光源28を、構成部分9の後硬化に使用することができる。
【0080】
図2~
図4には、遠心分離モジュール32、42、52の変形例が示されており、これらは、容易に、
図1の遠心分離モジュール2の代わりに使用され得る。
図2の遠心分離モジュール32の場合、ハウジング24は、下方へ向かって開放して設計されている。これによって、構成部分9から滴り落ちる液体プラスチックを直接的に受けとめることができる。さらに、構成部分9に対するブロワーパイプ26の傾斜が変えられている。それ以外の点では、
図2の遠心分離モジュール32は、
図1の遠心分離モジュール2と同様である。
【0081】
図3の遠心分離モジュール42では、ハウジング24の側面が開放され、構成部分9は水平回転軸を中心に回転させられる。これによって、遠心力が一方向(下向き)において引力に加わるので、重力を、液体プラスチックの滴下により良好に使用することができる。さらに、構成部分9に対するブロワーパイプ26の傾斜が変えられている。それ以外の点では、
図3の遠心分離モジュール42は、
図1の遠心分離モジュール2と同様である。
【0082】
図4の遠心分離モジュール52では、ハウジング24の上部が開放されている。構成部分9は、垂直回転軸53を中心に回転させられる。ここでこの回転軸53は、構成部分9内にない。これによって、不均衡が生じることがある。この不均衡を回避するために、相互に相対する2つの担体(図示せず)が構成部分と共に回転軸53に固定されるように設定されていてよい。構成部分9を回転軸の外側に取り付けることの利点は、回転軸53に対する構成部分の半径方向の距離がより大きくなるので、回転速度が同じ場合に、より大きな遠心力を得ることができるということである。しかし、この場合には、構成部分9は十分に安定し、この際に発生する力が構成部分9を変形または破壊しない程度に十分に硬化されていなければならない。さらに、ブロワーパイプ26は折れ曲がっている。それ以外の点では、
図4の遠心分離モジュール52は、
図1の遠心分離モジュール2と同様である。
【0083】
以下では、例示的な方法が、
図1~
図4の遠心分離モジュール2、32、42、52のうちの1つを備えた、
図1によって示された3Dプリントシステムに基づいて説明される。例示的な方法のフローは、
図5に示されている。
【0084】
第1の作業ステップ100において、歯科用成形部品または患者の口腔状況のモデル等である、生成される構成部分9の仮想3次元モデルが、CADによって、制御部3において計算される。
【0085】
その後、次の作業ステップ101において、構成部分9の仮想3次元モデルの重心が、重心計算モジュール5によって決定される。この際に、構成部分9の仮想モデルが均一な密度を有していることが仮定される。しかし、密度の異なるさまざまな材料で構成されている構成部分の重心を計算することも可能である。これが望まれており、担体8および場合によっては遠心分離モジュール2の共に回転する他の部分も遠心分離モジュール2における、回転時の不均衡に寄与する場合、構成部分9、担体8および場合によっては遠心分離モジュール2の共に回転する部分から成るシステム全体の重心も同じように、重心計算モジュール5によって計算可能である。しかし、本考察では、その形状および質量分布が既知の担体8が、遠心分離モジュール2において、自身の正しい位置に組み込まれている場合に、遠心分離モジュール2および担体8のすべての回転部分のシステムの重心を通る回転軸を中心として遠心分離モジュール2のすべての回転運動が行われるように、遠心分離モジュール2が構築されていることが仮定されれば十分である。たとえば、すべての不均衡が補償されるように、遠心分離モジュール2および担体8の回転部分のすべての慣性モーメントに対してカウンターウェイトを配置することによって、これを実現することができる。その後、システムのバランスがとられる。すなわち、作業ステップ101における重心計算モジュール5の計算および後続の作業ステップ102における位置決めモジュール4の計算の目的は、担体8上でプリントされる構成部分9によって、遠心分離モジュール2における不均衡が発生しないこと、または構成部分9の移動速度が、構成部分9の保護のために、可能な限り低く保たれることである。
【0086】
作業ステップ101に続く作業ステップ102において、位置決めモジュール4によって、構成部分9の仮想モデルは、次のように担体8のモデル上に配置される。すなわち、少なくとも1つの回転軸を中心とした担体8の既知の回転時に、構成部分9のみ、もしくはこれに対するモデル、または遠心分離モジュール内の、すべての共に回転する部分、たとえば担体8および場合によっては存在する遠心分離モジュール2の共に回転させられる固定部分を含む構成部分9、少なくとも1つの回転軸、有利にはすべての回転軸が、作業ステップ101において計算された、構成部分9の重心をそれらが通るように、またはこの重心に接近した領域を通るように配向されているように、構成部分9の仮想モデルは、担体8のモデル上に配置される。ここでは、重心からのずれによって引き起こされる、回転運動時の不均衡を受容することを可能にするために、遠心分離モジュール2における担体8の支承が構造的にコストのかかる方法で強化される必要がないように、少なくとも1つの回転軸が構成部分9の重心に接近して構成部分9を通過すること、および/またはまだ完全には硬化していな構成部分を変形または破壊しないために、生成された構成部分9が過度の力にさらされないことで十分である。本考察では、担体8も遠心分離モジュール2の共に回転する部分も不均衡を引き起こさず、その結果、担体8上の構成部分9の位置または位置および配向が、不均衡を排除するまたは不均衡を低く保つのに十分であることが仮定されれば十分である。その形状および質量分布が既知の、プリント装置1および遠心分離モジュール2における、担体8の位置が既知である。特に、各回転運動時に、構成部分9において発生する遠心力および不均衡から結果として生じる力も、まだ完全には硬化していない構成部分9の変形または破壊が阻止されるように、小さくあるべきである。
【0087】
次の作業ステップ103において、構成部分9はプリント装置1によって、プラスチックから、(CAM方法としての)ステレオリソグラフィーによって、担体8上に層ごとにプリントされ、ここで構成部分9の形状は、作業ステップ100におけるCAD計算に相応して、構成部分9の仮想3Dモデルに相応し、担体8上の構成部分9の位置または位置および配向は、作業ステップ102における位置決めモジュール4の計算に相応する。元来のプリントは、既知のステレオリソグラフィー方法によって行われる。理論的には、担体8を、構成部分9と共にプリントすることもできる。
【0088】
構成部分9がプリントされた後、構成部分は、担体8と共にプリント装置から取り出され、遠心分離モジュール2内に固定される。ここで行われる作業ステップ104において、構成部分9は、遠心分離モジュール2において、その前に計算に使用された1つの回転軸を中心に回転させられる、またはその前に計算に使用された複数の回転軸を中心に回転させられる。ここで、液体プラスチック7の液体残留物は、生成された構成部分9の表面から遠心分離され、ハウジング24内で受けとめられる。遠心力はここで、液体プラスチック7の付着している液体残留物を、構成部分9の表面から分離させる。この分離は、ブロワーパイプ26を用いて構成部分9に向けられる空気の流れによって支援されてよい。構成部分9の回転運動は、一方向でのみ行われても、交互に行われ、これによって角速度が正弦関数に従う、または少なくとも繰り返して方向が変更されてもよい。生成された構成部分9において作用する、この際に発生する加速力および遠心力は、ここで、この時点で存在する自身の状態(硬化)において、構成部分9の変形または破壊が起こり得ない強さでしかあってはならない。
【0089】
有利には、プリント装置1と遠心分離モジュール2とが一体的に形成されているように設定されていてよい。このような場合には、生成された構成部分9を、たとえば、持ち上げるだけで、液体プラスチック7から取り出し、その後、回転させることができる。このような場合には、浴槽6の壁はハウジング24であり、液体プラスチック残留物は落下する、または構成部分9の下方に配置されている液体プラスチック7のリザーバに流入する。
【0090】
必要に応じて任意に実行される後続の作業ステップ105において、構成部分9の表面のプラスチックのまだ残っている残留物および他の汚染物質は、後浄化の枠において、イソプロパノール等の浄化液によって洗い流され、除去される。
【0091】
同様に任意の作業ステップ106において、イソプロパノールを遠心分離させることができる。
【0092】
最後の作業ステップ107において、構成部分9は、光源28の光および35℃~90℃の間の僅かに上昇した温度によって後硬化される。この際に構成部分9は、少なくとも1つの回転軸を中心に回転させられ、このために担体8上に配置されている。
【0093】
構成部分9は担体8から分離させられ、担体8への接続面は必要に応じて再処理される。次に構成部分9が完成させられ、たとえば、義歯を構築するため、または義歯を適合させるために使用することができる。
【0094】
上記の明細書ならびに特許請求の範囲、図面および実施例において開示された本発明の特徴は個別でも、各任意の組み合わせにおいても、その種々の実施形態における本発明の実現にとって、本質的であり得る。
【符号の説明】
【0095】
1 プリント装置
2 遠心分離モジュール
3 制御部
4 位置決めモジュール
5 重心計算モジュール
6 浴槽
7 液体プラスチック
8 担体
9 構成部分
10 プラットフォーム
14 支柱
16 レーザー
18 可動ミラー
20 モーター
22 クイックリリースクランピング装置
24 ハウジング
26 ブロワーパイプ
28 光源
32 遠心分離モジュール
42 遠心分離モジュール
52 遠心分離モジュール
53 回転軸
100 作業ステップ:生成される構成部分の3Dモデルの計算
101 作業ステップ:3Dモデルの重心の計算
102 作業ステップ:担体上の3Dモデルの位置および場合によっては配向の計算
103 作業ステップ:ステレオリソグラフィーによる構成部分のプリント
104 作業ステップ:遠心分離モジュールによる構成部分の浄化
105 作業ステップ:浄化液による構成部分の後浄化
106 作業ステップ:遠心分離による、構成部分からの浄化液の除去
107 作業ステップ:構成部分の後硬化