(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】診断支援装置及び診断支援方法
(51)【国際特許分類】
A61B 8/12 20060101AFI20231107BHJP
【FI】
A61B8/12
(21)【出願番号】P 2021515909
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2020014319
(87)【国際公開番号】W WO2020217860
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2019086061
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518110280
【氏名又は名称】株式会社ロッケン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100176728
【氏名又は名称】北村 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】坂本 泰一
(72)【発明者】
【氏名】清水 克彦
(72)【発明者】
【氏名】石原 弘之
(72)【発明者】
【氏名】大久保 到
(72)【発明者】
【氏名】佐賀 亮介
(72)【発明者】
【氏名】エン トマ
(72)【発明者】
【氏名】ジャケ クレモン
(72)【発明者】
【氏名】ヘラト ヌワン
(72)【発明者】
【氏名】エリックセン イセリン
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/140116(WO,A1)
【文献】特開2005-160616(JP,A)
【文献】特表2016-517746(JP,A)
【文献】特開平11-221217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液が通る生体組織の内部を移動しながら超音波を送信する超音波振動子を用いて生成される2次元画像から、前記超音波振動子の移動範囲の3次元画像を生成する診断支援装置であって、
単位時間当たりに生成される前記2次元画像の数(FPS)と、前記2次元画像の横方向に対応する前記3次元画像の第1方向の画素数である第1画素数(Xn)と、前記2次元画像の縦方向に対応する前記3次元画像の第2方向の画素数である第2画素数(Yn)とに応じて、前記超音波振動子の移動方向に対応する前記3次元画像の第3方向の画素数である第3画素数(Zn)の上限(Zm)を決定する制御部を備える診断支援装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1画素数(Xn)に対する、前記3次元画像の前記第1方向の寸法の比率、又は前記第2画素数(Yn)に対する、前記3次元画像の前記第2方向の寸法の比率である基準比率(Xp又はYp)と、ある係数(α)との積を、前記第3画素数(Zn)に対する、前記3次元画像の前記第3方向の寸法の比率である設定比率(Zp)に決定する請求項1に記載の診断支援装置。
【請求項3】
前記3次元画像の前記第1方向の寸法は、前記2次元画像のデータが取得される範囲の横寸法(Xd)であり、前記3次元画像の前記第2方向の寸法は、前記2次元画像のデータが取得される範囲の縦寸法(Yd)である請求項2に記載の診断支援装置。
【請求項4】
前記超音波振動子は、スキャナユニットの移動に伴って移動し、
前記制御部は、前記スキャナユニットの移動距離の上限(Mm)を、前記基準比率(Xp又はYp)と、前記係数(α)との積で割って得られる値を前記第3画素数(Zn)とする請求項2又は請求項3に記載の診断支援装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記スキャナユニットの移動距離の上限(Mm)を、前記基準比率(Xp又はYp)と、前記係数(α)との積で割った値が、決定した前記第3画素数(Zn)の上限(Zm)を超えるのであれば、ユーザに警告する請求項4に記載の診断支援装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記基準比率(Xp又はYp)と前記係数(α)との積を前記設定比率(Zp)に決定した後、前記係数(α)がユーザによって変更された場合に、前記基準比率(Xp又はYp)と、変更後の係数(α’)との積を新たな設定比率(Zp’)に決定する請求項2又は請求項3に記載の診断支援装置。
【請求項7】
前記超音波振動子は、スキャナユニットの移動に伴って移動し、
前記制御部は、前記係数(α)が前記ユーザによって変更された場合に、前記スキャナユニットの移動距離の上限(Mm)を、前記基準比率(Xp又はYp)と、前記変更後の係数(α’)との積で割った値が、決定した前記第3画素数(Zn)の上限(Zm)を超えるのであれば、前記ユーザに警告する請求項6に記載の診断支援装置。
【請求項8】
前記超音波振動子は、スキャナユニットの移動に伴って移動し、
前記制御部は、前記第3画素数(Zn)の上限(Zm)を決定した後、前記第1画素数(Xn)及び前記第2画素数(Yn)がユーザによって変更された場合に、前記スキャナユニットの移動距離の上限(Mm)を、変更後の第1画素数(Xn’)に対する、前記3次元画像の前記第1方向の寸法の比率、又は変更後の第2画素数(Yn’)に対する、前記3次元画像の前記第2方向の寸法の比率と、前記係数(α)との積で割った値が、単位時間当たりに生成される前記2次元画像の数(FPS)と、前記変更後の第1画素数(Xn’)と、前記変更後の第2画素数(Yn’)とに応じた前記第3画素数(Zn)の上限(Zm’)を超えるのであれば、前記ユーザに警告する請求項2に記載の診断支援装置。
【請求項9】
前記制御部は、単位時間当たりの前記超音波振動子の移動距離が、単位時間当たりに生成される前記2次元画像の数(FPS)と、決定した前記設定比率(Zp)との積よりも大きい場合に、生成される前記2次元画像の間の画像を補間する請求項2に記載の診断支援装置。
【請求項10】
前記超音波振動子は、スキャナユニットの移動に伴って移動し、
前記制御部は、前記2次元画像が生成される時間間隔ごとの前記スキャナユニットの移動距離を、決定した前記設定比率(Zp)で割って、補間画像数を決定する請求項9に記載の診断支援装置。
【請求項11】
超音波振動子が、血液が通る生体組織の内部を移動しながら超音波を送信し、
診断支援装置が、前記超音波振動子を用いて生成される2次元画像から、前記超音波振動子の移動範囲の3次元画像を生成し、
前記診断支援装置が、単位時間当たりに生成される前記2次元画像の数(FPS)と、前記2次元画像の横方向に対応する前記3次元画像の第1方向の画素数である第1画素数(Xn)と、前記2次元画像の縦方向に対応する前記3次元画像の第2方向の画素数である第2画素数(Yn)とに応じて、前記超音波振動子の移動方向に対応する前記3次元画像の第3方向の画素数である第3画素数(Zn)の上限(Zm)を決定する診断支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、診断支援装置及び診断支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から特許文献3には、US画像システムを用いて心腔又は血管の3次元画像を生成する技術が記載されている。「US」は、ultrasoundの略語である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2010/0215238号明細書
【文献】米国特許第6385332号明細書
【文献】米国特許第6251072号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
心腔内、心臓血管、及び下肢動脈領域などに対してIVUSを用いる治療が広く行われている。「IVUS」は、intravascular ultrasoundの略語である。IVUSとはカテーテル長軸に対して垂直平面の2次元画像を提供するデバイス又は方法のことである。
【0005】
現状として、術者は頭の中でIVUSの2次元画像を積層することで、立体構造を再構築しながら施術を行う必要があり、特に若年層の医師、又は経験の浅い医師にとって障壁がある。そのような障壁を取り除くために、IVUSの2次元画像から心腔又は血管などの生体組織の構造を表現する3次元画像を自動生成し、生成した3次元画像を術者に向けて表示することが考えられる。
【0006】
しかし、術者が3次元画像を参照しながら施術を行えるようにするには、カテーテル操作に応じて次々に生成されるIVUSの2次元画像からリアルタイムに3次元画像を生成する必要がある。従来技術では、時間をかけて心腔内又は血管内の3次元画像を作ることしかできず、リアルタイムに3次元画像を作ることはできない。
【0007】
本開示の目的は、超音波の2次元画像を3次元化する際の3次元空間のサイズを、単位時間当たりに生成される2次元画像の数に応じたサイズに制限することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様としての診断支援装置は、血液が通る生体組織の内部を移動しながら超音波を送信する超音波振動子を用いて生成される2次元画像から、前記超音波振動子の移動範囲の3次元画像を生成する診断支援装置であって、単位時間当たりに生成される前記2次元画像の数(FPS)と、前記2次元画像の横方向に対応する前記3次元画像の第1方向の画素数である第1画素数(Xn)と、前記2次元画像の縦方向に対応する前記3次元画像の第2方向の画素数である第2画素数(Yn)とに応じて、前記超音波振動子の移動方向に対応する前記3次元画像の第3方向の画素数である第3画素数(Zn)の上限(Zm)を決定する制御部を備える。
【0009】
本開示の一実施形態として、前記制御部は、前記第1画素数(Xn)に対する、前記3次元画像の前記第1方向の寸法の比率、又は前記第2画素数(Yn)に対する、前記3次元画像の前記第2方向の寸法の比率である基準比率(Xp又はYp)と、ある係数(α)との積を、前記第3画素数(Zn)に対する、前記3次元画像の前記第3方向の寸法の比率である設定比率(Zp)に決定する。
【0010】
本開示の一実施形態として、前記3次元画像の前記第1方向の寸法は、前記2次元画像のデータが取得される範囲の横寸法(Xd)であり、前記3次元画像の前記第2方向の寸法は、前記2次元画像のデータが取得される範囲の縦寸法(Yd)である。
【0011】
本開示の一実施形態として、前記超音波振動子は、スキャナユニットの移動に伴って移動し、前記制御部は、前記スキャナユニットの移動距離の上限(Mm)を、前記基準比率(Xp又はYp)と、前記係数(α)との積で割って得られる値を前記第3画素数(Zn)とする。
【0012】
本開示の一実施形態として、前記制御部は、前記スキャナユニットの移動距離の上限(Mm)を、前記基準比率(Xp又はYp)と、前記係数(α)との積で割った値が、決定した前記第3画素数(Zn)の上限(Zm)を超えるのであれば、ユーザに警告する。
【0013】
本開示の一実施形態として、前記制御部は、前記基準比率(Xp又はYp)と前記係数(α)との積を前記設定比率(Zp)に決定した後、前記係数(α)がユーザによって変更された場合に、前記基準比率(Xp又はYp)と、変更後の係数(α’)との積を新たな設定比率(Zp’)に決定する。
【0014】
本開示の一実施形態として、前記超音波振動子は、スキャナユニットの移動に伴って移動し、前記制御部は、前記係数(α)が前記ユーザによって変更された場合に、前記スキャナユニットの移動距離の上限(Mm)を、前記基準比率(Xp又はYp)と、前記変更後の係数(α’)との積で割った値が、決定した前記第3画素数(Zn)の上限(Zm)を超えるのであれば、前記ユーザに警告する。
【0015】
本開示の一実施形態として、前記超音波振動子は、スキャナユニットの移動に伴って移動し、前記制御部は、前記第3画素数(Zn)の上限(Zm)を決定した後、前記第1画素数(Xn)及び前記第2画素数(Yn)がユーザによって変更された場合に、前記スキャナユニットの移動距離の上限(Mm)を、変更後の第1画素数(Xn’)に対する、前記3次元画像の前記第1方向の寸法の比率、又は変更後の第2画素数(Yn’)に対する、前記3次元画像の前記第2方向の寸法の比率と、前記係数(α)との積で割った値が、単位時間当たりに生成される前記2次元画像の数(FPS)と、前記変更後の第1画素数(Xn’)と、前記変更後の第2画素数(Yn’)とに応じた前記第3画素数(Zn)の上限(Zm’)を超えるのであれば、前記ユーザに警告する。
【0016】
本開示の一実施形態として、前記制御部は、前記2次元画像が生成される時間間隔ごとの前記超音波振動子の移動距離(Md)が、単位時間当たりに生成される前記2次元画像の数(FPS)と、決定した前記設定比率(Zp)との積よりも大きい場合に、生成される前記2次元画像の間の画像を補間する。
【0017】
本開示の一実施形態として、前記超音波振動子は、スキャナユニットの移動に伴って移動し、前記制御部は、前記2次元画像が生成される時間間隔ごとの前記スキャナユニットの移動距離を、決定した前記設定比率(Zp)で割って、補間画像数を決定する。
【0018】
本開示の一態様としての診断支援方法では、超音波振動子が、血液が通る生体組織の内部を移動しながら超音波を送信し、診断支援装置が、前記超音波振動子を用いて生成される2次元画像から、前記超音波振動子の移動範囲の3次元画像を生成し、前記診断支援装置が、単位時間当たりに生成される前記2次元画像の数(FPS)と、前記2次元画像の横方向に対応する前記3次元画像の第1方向の画素数である第1画素数(Xn)と、前記2次元画像の縦方向に対応する前記3次元画像の第2方向の画素数である第2画素数(Yn)とに応じて、前記超音波振動子の移動方向に対応する前記3次元画像の第3方向の画素数である第3画素数(Zn)の上限(Zm)を決定する。
【発明の効果】
【0019】
本開示の一実施形態によれば、超音波の2次元画像を3次元化する際の3次元空間のサイズを、単位時間当たりに生成される2次元画像の数に応じたサイズに制限することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本開示の一実施形態に係る診断支援システムの斜視図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る2次元画像に含まれる複数の画素の分類例を示す図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係るプローブ及び駆動ユニットの斜視図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係る診断支援装置の構成を示すブロック図である。
【
図5】本開示の一実施形態に係る診断支援システムの動作を示すフローチャートである。
【
図6】本開示の一実施形態に係る診断支援装置のデータフローを示す図である。
【
図7】本開示の一実施形態に係る学習済みモデルの入出力例を示す図である。
【
図8】本開示の一実施形態の変形例に係る診断支援装置のデータフローを示す図である。
【
図9】本開示の一実施形態に係る診断支援装置の動作を示すフローチャートである。
【
図10】本開示の一実施形態に係る3次元空間を示す図である。
【
図11】本開示の一実施形態に係る診断支援装置の動作を示すフローチャートである。
【
図12】本開示の一実施形態に係る診断支援装置の動作を示すフローチャートである。
【
図13】本開示の一実施形態の変形例に係る診断支援システムの動作を示すフローチャートである。
【
図14】本開示の一実施形態に係る超音波の超音波最大到達範囲及びデータ取得範囲の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の一実施形態について、図を参照して説明する。
【0022】
各図中、同一又は相当する部分には、同一符号を付している。本実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。
【0023】
図1及び
図2を参照して、本実施形態の概要を説明する。
【0024】
本実施形態では、診断支援装置11が、血液が通る生体組織の内部で送信された超音波の反射波の信号が処理されることにより生成される、生体組織を含む2次元画像に含まれる複数の画素を、生体組織クラスを含む2つ以上のクラスに対応付ける。2次元画像に含まれる複数の画素を「クラスに対応付ける」とは、2次元画像の各画素に表示された生体組織などの対象物の種類を識別するために、各画素に生体組織ラベルなどのラベルを付与すること、又は各画素を生体組織クラスなどのクラスに分類することと同義である。本実施形態では、診断支援装置11が、生体組織クラスに対応付けた画素群から生体組織の3次元画像を生成する。すなわち、診断支援装置11が、生体組織クラスに分類した画素群から生体組織の3次元画像を生成する。そして、ディスプレイ16が、診断支援装置11により生成された生体組織の3次元画像を表示する。
図2の例では、512ピクセル*512ピクセルの2次元画像に含まれる複数の画素、すなわち、262,144個の画素が生体組織クラスと、血球クラスなどの別のクラスとを含む2つ以上のクラスに分類される。
図2で拡大表示した4ピクセル*4ピクセルの領域では、全16個の画素のうち半分の8個の画素が、生体組織クラスに分類された画素群であり、残りの8個の画素が、生体組織クラスとは別のクラスに分類された画素群である。
図2では、512ピクセル*512ピクセルの2次元画像に含まれる複数の画素の一部である4ピクセル*4ピクセルの画素群を拡大表示し、説明の便宜上、生体組織クラスに分類された画素群にハッチングを付している。
【0025】
本実施形態によれば、超音波の2次元画像から生成される、生体組織の構造を表現する3次元画像の正確性が向上する。
【0026】
本実施形態では、超音波振動子25が、血液が通る生体組織の内部を移動しながら超音波を送信する。診断支援装置11が、超音波振動子25を用いて生成される2次元画像から、超音波振動子25の移動範囲の3次元画像を生成する。診断支援装置11が、単位時間当たりに生成される2次元画像の数FPSと、2次元画像の横方向に対応する3次元画像の第1方向の画素数である第1画素数Xnと、2次元画像の縦方向に対応する3次元画像の第2方向の画素数である第2画素数Ynとに応じて、超音波振動子25の移動方向に対応する3次元画像の第3方向の画素数である第3画素数Znの上限Zmを決定する。単位時間当たりに生成される2次元画像の数FPSは、例えば、フレームレート、すなわち、1秒当たりに生成される2次元画像の数で表すことができる。
【0027】
本実施形態によれば、超音波の2次元画像を3次元化する際の3次元空間のサイズを、単位時間当たりに生成される2次元画像の数に応じたサイズに制限することができる。
【0028】
本実施形態では、診断支援装置11は、超音波の2次元画像として、IVUSの2次元画像を使用する。
【0029】
IVUSは、例えば、インターベンションの最中に使用される。その理由としては、例えば、以下の理由が挙げられる。
・心腔内などの生体組織性状を判定するため。
・ステントなどの留置物を配置する位置、又は留置物が配置されている位置を確認するため。
・IVUSカテーテル以外のカテーテル、及びガイドワイヤなどの位置を、リアルタイムに2次元画像を利用しながら確認するため。
【0030】
上述の「IVUSカテーテル以外のカテーテル」としては、例えば、ステント留置用のカテーテル、又はアブレーションカテーテルがある。
【0031】
本実施形態によれば、術者は頭の中でIVUSの2次元画像を積層して立体構造を再構築しながら施術を行う必要がなくなる。特に若年層の医師、又は経験の浅い医師にとって障壁がなくなる。
【0032】
本実施形態では、診断支援装置11は、術中に3次元画像でIVUSカテーテル以外のカテーテル、若しくは留置物などの位置関係、又は生体組織性状を判定できるように構成される。
【0033】
本実施形態では、診断支援装置11は、特にIVUSカテーテルをガイドするために、リアルタイムに3次元画像を更新することができるように構成される。
【0034】
アブレーションなどの手技においては、血管又は心筋領域の厚みを考慮してアブレーションのエネルギーを決定したいという要求がある。また石灰又はプラークを削るアテレクトミーデバイスなどを使用する際は、生体組織の厚みを考慮して手技を行いたいという要望もある。本実施形態では、診断支援装置11は、厚みを表示することができるように構成される。
【0035】
本実施形態では、診断支援装置11は、常時更新されるIVUS連続画像を用いて、3次元画像を更新し続けることによって、径血管的に観察可能な部位の3次元構造を提供し続けることができるように構成される。
【0036】
IVUSの2次元画像から心腔構造を表現するためには、血球領域、心筋領域、及び心腔内にあるIVUSカテーテル以外のカテーテルなどを区別しなければならない。本実施形態では、それが可能であり、心筋領域のみを表示することができる。
【0037】
IVUSは6MHzから60MHz程度の高周波数帯を使用するため、血球ノイズが強く反映されるが、本実施形態では、生体組織領域と血球領域との差異をつけることが可能である。
【0038】
15fps以上90fps以下の速さで更新されるIVUSの2次元画像から心腔構造を表現する処理をリアルタイムで実行するためには、1枚の画像を処理するための時間が11msec以上66msec以下に限られる。本実施形態では、診断支援装置11は、そのような制限に対応することができるように構成される。
【0039】
本実施形態では、診断支援装置11は、生体組織性状の特定、血球領域の除去、又はIVUSカテーテル以外のカテーテル位置の特定などを行った画像を3次元空間に落とし込み、3次元画像を描画するまでの処理を次のフレーム画像が来るまでの間に、すなわち、リアルタイム性が成立する時間内に計算することができるように構成される。
【0040】
本実施形態では、診断支援装置11は、構造のみならず、石灰又はプラークの情報など、医師の要求に合った追加情報を提供することができるように構成される。
【0041】
図1を参照して、本実施形態に係る診断支援システム10の構成を説明する。
【0042】
診断支援システム10は、診断支援装置11、ケーブル12、駆動ユニット13、キーボード14、マウス15、及びディスプレイ16を備える。
【0043】
診断支援装置11は、本実施形態では画像診断に特化した専用のコンピュータであるが、PCなどの汎用のコンピュータでもよい。「PC」は、personal computerの略語である。
【0044】
ケーブル12は、診断支援装置11と駆動ユニット13とを接続するために用いられる。
【0045】
駆動ユニット13は、
図3に示すプローブ20に接続して用いられ、プローブ20を駆動する装置である。駆動ユニット13は、MDUとも呼ばれる。「MDU」は、motor drive unitの略語である。プローブ20は、IVUSに適用される。プローブ20は、IVUSカテーテル又は画像診断用カテーテルとも呼ばれる。
【0046】
キーボード14、マウス15、及びディスプレイ16は、任意のケーブルを介して、又は無線で診断支援装置11と接続される。ディスプレイ16は、例えば、LCD、有機ELディスプレイ、又はHMDである。「LCD」は、liquid crystal displayの略語である。「EL」は、electro luminescenceの略語である。「HMD」は、head-mounted displayの略語である。
【0047】
診断支援システム10は、オプションとして、接続端子17及びカートユニット18をさらに備える。
【0048】
接続端子17は、診断支援装置11と外部機器とを接続するために用いられる。接続端子17は、例えば、USB端子である。「USB」は、Universal Serial Busの略語である。外部機器としては、例えば、磁気ディスクドライブ、光磁気ディスクドライブ、又は光ディスクドライブなどの記録媒体を使用できる。
【0049】
カートユニット18は、移動用のキャスタ付きのカートである。カートユニット18のカート本体には、診断支援装置11、ケーブル12、及び駆動ユニット13が設置される。カートユニット18の最上部のテーブルには、キーボード14、マウス15、及びディスプレイ16が設置される。
【0050】
図3を参照して、本実施形態に係るプローブ20及び駆動ユニット13の構成を説明する。
【0051】
プローブ20は、駆動シャフト21、ハブ22、シース23、外管24、超音波振動子25、及び中継コネクタ26を備える。
【0052】
駆動シャフト21は、生体の体腔内に挿入されるシース23と、シース23の基端に接続した外管24とを通り、プローブ20の基端に設けられたハブ22の内部まで延びている。駆動シャフト21は、信号を送受信する超音波振動子25を先端に有してシース23及び外管24内に回転可能に設けられる。中継コネクタ26は、シース23及び外管24を接続する。
【0053】
ハブ22、駆動シャフト21、及び超音波振動子25は、それぞれが一体的に軸方向に進退移動するように互いに接続される。そのため、例えば、ハブ22が先端側に向けて押される操作がなされると、駆動シャフト21及び超音波振動子25がシース23の内部を先端側へ移動する。例えば、ハブ22が基端側に引かれる操作がなされると、駆動シャフト21及び超音波振動子25は、矢印で示すように、シース23の内部を基端側へ移動する。
【0054】
駆動ユニット13は、スキャナユニット31、スライドユニット32、及びボトムカバー33を備える。
【0055】
スキャナユニット31は、ケーブル12を介して診断支援装置11と接続する。スキャナユニット31は、プローブ20と接続するプローブ接続部34と、駆動シャフト21を回転させる駆動源であるスキャナモータ35とを備える。
【0056】
プローブ接続部34は、プローブ20の基端に設けられたハブ22の差込口36を介して、プローブ20と着脱自在に接続する。ハブ22の内部では、駆動シャフト21の基端が回転自在に支持されており、スキャナモータ35の回転力が駆動シャフト21に伝えられる。また、ケーブル12を介して駆動シャフト21と診断支援装置11との間で信号が送受信される。診断支援装置11では、駆動シャフト21から伝わる信号に基づき、生体管腔の断層画像の生成、及び画像処理が行われる。
【0057】
スライドユニット32は、スキャナユニット31を進退自在に載せており、スキャナユニット31と機械的かつ電気的に接続している。スライドユニット32は、プローブクランプ部37、スライドモータ38、及びスイッチ群39を備える。
【0058】
プローブクランプ部37は、プローブ接続部34よりも先端側でこれと同軸的に配置して設けられており、プローブ接続部34に接続されるプローブ20を支持する。
【0059】
スライドモータ38は、軸方向の駆動力を生じさせる駆動源である。スライドモータ38の駆動によってスキャナユニット31が進退動し、それに伴って駆動シャフト21が軸方向に進退動する。スライドモータ38は、例えば、サーボモータである。
【0060】
スイッチ群39には、例えば、スキャナユニット31の進退操作の際に押されるフォワードスイッチ及びプルバックスイッチ、並びに画像描写の開始及び終了の際に押されるスキャンスイッチが含まれる。ここでの例に限定されず、必要に応じて種々のスイッチがスイッチ群39に含まれる。
【0061】
フォワードスイッチが押されると、スライドモータ38が正回転し、スキャナユニット31が前進する。一方、プルバックスイッチが押されると、スライドモータ38が逆回転し、スキャナユニット31が後退する。
【0062】
スキャンスイッチが押されると画像描写が開始され、スキャナモータ35が駆動するとともに、スライドモータ38が駆動してスキャナユニット31を後退させていく。術者は、事前にプローブ20をスキャナユニット31に接続しておき、画像描写開始とともに駆動シャフト21が回転しつつ軸方向基端側に移動するようにする。スキャナモータ35及びスライドモータ38は、スキャンスイッチが再度押されると停止し、画像描写が終了する。
【0063】
ボトムカバー33は、スライドユニット32の底面及び底面側の側面全周を覆っており、スライドユニット32の底面に対して近接離間自在である。
【0064】
図4を参照して、本実施形態に係る診断支援装置11の構成を説明する。
【0065】
診断支援装置11は、制御部41、記憶部42、通信部43、入力部44、及び出力部45などの構成要素を備える。
【0066】
制御部41は、1つ以上のプロセッサである。プロセッサとしては、CPU若しくはGPUなどの汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサを使用できる。「CPU」は、central processing unitの略語である。「GPU」は、graphics processing unitの略語である。制御部41には、1つ以上の専用回路が含まれてもよいし、又は制御部41において、1つ以上のプロセッサを1つ以上の専用回路に置き換えてもよい。専用回路としては、例えば、FPGA又はASICを使用できる。「FPGA」は、field-programmable gate arrayの略語である。「ASIC」は、application specific integrated circuitの略語である。制御部41は、診断支援装置11を含む診断支援システム10の各部を制御しながら、診断支援装置11の動作に関わる情報処理を実行する。
【0067】
記憶部42は、1つ以上のメモリである。メモリとしては、例えば、半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリを使用できる。半導体メモリとしては、例えば、RAM又はROMを使用できる。「RAM」は、random access memoryの略語である。「ROM」は、read only memoryの略語である。RAMとしては、例えば、SRAM又はDRAMを使用できる。「SRAM」は、static random access memoryの略語である。「DRAM」は、dynamic random access memoryの略語である。ROMとしては、例えば、EEPROMを使用できる。「EEPROM」は、electrically erasable programmable read only memoryの略語である。メモリは、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する。記憶部42には、診断支援装置11の動作に用いられる情報と、診断支援装置11の動作によって得られた情報とが記憶される。
【0068】
通信部43は、1つ以上の通信用インタフェースである。通信用インタフェースとしては、有線LANインタフェース、無線LANインタフェース、又はIVUSの信号を受信及びA/D変換する画像診断用インタフェースを使用できる。「LAN」は、local area networkの略語である。「A/D」は、analog to digitalの略語である。通信部43は、診断支援装置11の動作に用いられる情報を受信し、また診断支援装置11の動作によって得られる情報を送信する。本実施形態では、通信部43に含まれる画像診断用インタフェースに駆動ユニット13が接続される。
【0069】
入力部44は、1つ以上の入力用インタフェースである。入力用インタフェースとしては、例えば、USBインタフェース又はHDMI(登録商標)インタフェースを使用できる。「HDMI(登録商標)」は、High-Definition Multimedia Interfaceの略語である。入力部44は、診断支援装置11の動作に用いられる情報を入力する操作を受け付ける。本実施形態では、入力部44に含まれるUSBインタフェースにキーボード14及びマウス15が接続されるが、通信部43に含まれる無線LANインタフェースにキーボード14及びマウス15が接続されてもよい。
【0070】
出力部45は、1つ以上の出力用インタフェースである。出力用インタフェースとしては、例えば、USBインタフェース又はHDMI(登録商標)インタフェースを使用できる。出力部45は、診断支援装置11の動作によって得られる情報を出力する。本実施形態では、出力部45に含まれるHDMI(登録商標)インタフェースにディスプレイ16が接続される。
【0071】
診断支援装置11の機能は、本実施形態に係る診断支援プログラムを、制御部41に含まれるプロセッサで実行することにより実現される。すなわち、診断支援装置11の機能は、ソフトウェアにより実現される。診断支援プログラムは、診断支援装置11の動作に含まれるステップの処理をコンピュータに実行させることで、当該ステップの処理に対応する機能をコンピュータに実現させるためのプログラムである。すなわち、診断支援プログラムは、コンピュータを診断支援装置11として機能させるためのプログラムである。
【0072】
プログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、又は半導体メモリを使用できる。プログラムの流通は、例えば、プログラムを記録したDVD又はCD-ROMなどの可搬型記録媒体を販売、譲渡、又は貸与することによって行う。「DVD」は、digital versatile discの略語である。「CD-ROM」は、compact disc read only memoryの略語である。プログラムをサーバのストレージに格納しておき、ネットワークを介して、サーバから他のコンピュータにプログラムを転送することにより、プログラムを流通させてもよい。プログラムをプログラムプロダクトとして提供してもよい。
【0073】
コンピュータは、例えば、可搬型記録媒体に記録されたプログラム又はサーバから転送されたプログラムを、一旦、メモリに格納する。そして、コンピュータは、メモリに格納されたプログラムをプロセッサで読み取り、読み取ったプログラムに従った処理をプロセッサで実行する。コンピュータは、可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行してもよい。コンピュータは、コンピュータにサーバからプログラムが転送される度に、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行してもよい。サーバからコンピュータへのプログラムの転送は行わず、実行指示及び結果取得のみによって機能を実現する、いわゆるASP型のサービスによって処理を実行してもよい。「ASP」は、application service providerの略語である。プログラムには、電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるものが含まれる。例えば、コンピュータに対する直接の指令ではないがコンピュータの処理を規定する性質を有するデータは、「プログラムに準ずるもの」に該当する。
【0074】
診断支援装置11の一部又は全ての機能が、制御部41に含まれる専用回路により実現されてもよい。すなわち、診断支援装置11の一部又は全ての機能が、ハードウェアにより実現されてもよい。
【0075】
図5を参照して、本実施形態に係る診断支援システム10の動作を説明する。診断支援システム10の動作は、本実施形態に係る診断支援方法に相当する。
【0076】
図5のフローの開始前に、術者によって、プローブ20がプライミングされる。その後、プローブ20が駆動ユニット13のプローブ接続部34及びプローブクランプ部37に嵌め込まれ、駆動ユニット13に接続及び固定される。そして、プローブ20が心腔又は血管など、血液が通る生体組織内の目的部位まで挿入される。
【0077】
ステップS1において、スイッチ群39に含まれるスキャンスイッチが押され、さらにスイッチ群39に含まれるプルバックスイッチが押されることで、いわゆるプルバック操作が行われる。プローブ20は、生体組織の内部で、プルバック操作によって軸方向に後退する超音波振動子25により超音波を送信する。
【0078】
ステップS2において、プローブ20は、ステップS1で送信した超音波の反射波の信号を診断支援装置11の制御部41に入力する。
【0079】
具体的には、プローブ20は、生体組織の内部で反射した超音波の信号を、駆動ユニット13及びケーブル12を介して診断支援装置11に送信する。診断支援装置11の通信部43は、プローブ20から送信された信号を受信する。通信部43は、受信した信号をA/D変換する。通信部43は、A/D変換した信号を制御部41に入力する。
【0080】
ステップS3において、診断支援装置11の制御部41は、ステップS2で入力された信号を処理して超音波の2次元画像を生成する。
【0081】
具体的には、
図6に示すように、制御部41は、少なくとも画像処理P1、画像処理P2、及び画像処理P3を管理するタスク管理処理PMを実行する。タスク管理処理PMの機能は、例えば、OSの一機能として実装される。「OS」は、operating systemの略語である。制御部41は、ステップS2で通信部43によりA/D変換された信号を信号データ51として取得する。制御部41は、タスク管理処理PMにより画像処理P1を起動し、信号データ51を処理してIVUSの2次元画像を生成する。制御部41は、画像処理P1の結果であるIVUSの2次元画像を2次元画像データ52として取得する。
【0082】
ステップS4において、診断支援装置11の制御部41は、ステップS3で生成した2次元画像に含まれる複数の画素を、生体組織を表示した画素に対応する生体組織クラスを含む2つ以上のクラスに分類する。本実施形態では、これら2つ以上のクラスには、血液に含まれる血球を表示した画素に対応する血球クラスがさらに含まれる。これら2つ以上のクラスには、IVUSカテーテル以外のカテーテル、又はガイドワイヤなどの医療器具を表示した画素に対応する医療器具クラスがさらに含まれる。これら2つ以上のクラスには、ステントなどの留置物を表示した画素に対応する留置物クラスがさらに含まれてもよい。これら2つ以上のクラスには、石灰又はプラークなどの病変を表示した画素に対応する病変クラスがさらに含まれてもよい。各クラスは、細分化されてもよい。例えば、医療器具クラスは、カテーテルクラス、ガイドワイヤクラス、及びその他の医療器具クラスに分かれていてもよい。
【0083】
具体的には、
図6及び
図7に示すように、制御部41は、タスク管理処理PMにより画像処理P2を起動し、学習済みモデル61を用いて、ステップS3で取得した2次元画像データ52に含まれる複数の画素を分類する。制御部41は、画像処理P2の結果である、2次元画像データ52の各画素に生体組織クラス、血球クラス、及び医療器具クラスのいずれかの分類を付与した2次元画像を分類結果62として取得する。
【0084】
ステップS5において、診断支援装置11の制御部41は、ステップS4で生体組織クラスに分類した画素群から生体組織の3次元画像を生成する。本実施形態では、制御部41は、ステップS3で生成した2次元画像に含まれる複数の画素からステップS4で血球クラスに分類した画素群を除外して生体組織の3次元画像を生成する。また、制御部41は、ステップS4で医療器具クラスに分類した1つ以上の画素から医療器具の3次元画像を生成する。さらに、制御部41は、ステップS4で医療器具クラスに分類した1つ以上の画素に、互いに異なる医療器具を表示した2つ以上の画素が含まれる場合、医療器具の3次元画像を医療器具ごとに生成する。
【0085】
具体的には、
図6に示すように、制御部41は、タスク管理処理PMにより画像処理P2を実行し、ステップS4で取得した、2次元画像データ52の各画素に分類を付与した2次元画像を積層して3次元化する。制御部41は、画像処理P2の結果である、分類ごとの立体構造を表現するボリュームデータ53を取得する。そして、制御部41は、タスク管理処理PMにより画像処理P3を起動し、取得したボリュームデータ53を可視化する。制御部41は、画像処理P3の結果である、分類ごとの立体構造を表現する3次元画像を3次元画像データ54として取得する。
【0086】
本実施形態の一変形例として、制御部41は、ステップS4で医療器具クラスに分類した1つ以上の画素の座標に基づいて、医療器具の3次元画像を生成してもよい。具体的には、制御部41は、駆動ユニット13のスキャナユニット31の移動方向に沿って存在する複数の点の座標として、ステップS4で医療器具クラスに分類した1つ以上の画素の座標を示すデータを保持し、スキャナユニット31の移動方向に沿って当該複数の点をつなぐ線状の3次元モデルを医療器具の3次元画像として生成してもよい。例えば、制御部41は、カテーテルのように断面が小さい医療器具については、医療器具クラスに分類した1つ画素の中心、又は医療器具クラスに分類した画素群の中心の座標に、円断面の3次元モデルを医療器具の3次元画像として配置してもよい。すなわち、カテーテルなどの小さな物体の場合は、画素又は画素の集合としての領域ではなく、座標が分類結果62として返されてもよい。
【0087】
ステップS6において、診断支援装置11の制御部41は、ステップS5で生成した生体組織の3次元画像を表示する制御を行う。本実施形態では、制御部41は、ステップS5で生成した生体組織の3次元画像と医療器具の3次元画像とを互いに区別可能な形式で表示する制御を行う。制御部41は、ステップS5で医療器具の3次元画像を医療器具ごとに生成していれば、生成した医療器具の3次元画像を医療器具ごとに区別可能な形式で表示する制御を行う。ディスプレイ16は、制御部41により制御されて生体組織の3次元画像と医療器具の3次元画像とを表示する。
【0088】
具体的には、
図6に示すように、制御部41は、3D表示処理P4を実行し、ステップS6で取得した3次元画像データ54を、出力部45を介してディスプレイ16に表示させる。心腔又は血管などの生体組織の3次元画像と、カテーテルなどの医療器具の3次元画像とは、異なる色を付けるなどして区別可能に表示される。生体組織の3次元画像と医療器具の3次元画像とのうち、任意の画像がキーボード14又はマウス15により選択されてもよい。その場合、制御部41は、入力部44を介して、画像を選択する操作を受け付ける。制御部41は、選択された画像を、出力部45を介してディスプレイ16に表示させ、選択されていない画像を非表示にする。また、任意の切断面がキーボード14又はマウス15により設定されてもよい。その場合、制御部41は、入力部44を介して、切断面を選択する操作を受け付ける。制御部41は、選択された切断面で切断した3次元画像を、出力部45を介してディスプレイ16に表示させる。
【0089】
ステップS7において、スイッチ群39に含まれるスキャンスイッチが再度押されていなければ、ステップS1に戻ってプルバック操作が継続される。その結果、IVUSの2次元画像が、生体組織の内部で超音波の送信位置を変えながら順次生成される。一方、スキャンスイッチが再度押されていれば、プルバック操作が停止され、
図5のフローが終了する。
【0090】
本実施形態では、画像処理P1及び3D表示処理P4がCPU上で実行され、画像処理P2及び画像処理P3がGPU上で実行される。ボリュームデータ53は、CPU内の記憶領域に保存されてもよいが、CPU及びGPU間のデータ転送を省くために、GPU内の記憶領域に保存される。
【0091】
特に、画像処理P2に含まれる分類、カテーテル検出、画像補間、及び3次元化の各処理は、本実施形態ではGP-GPUにおいて実行されるが、FPGA又はASICなどの集積回路において実行されてもよい。「GP-GPU」は、general purpose graphics processing unitの略語である。各処理は、直列に実行されてもよいし、並列に実行されてもよい。各処理はネットワーク経由で実行されてもよい。
【0092】
ステップS4では、診断支援装置11の制御部41が、従来のようなエッジ抽出の代わりに、領域認識によって生体組織領域を抽出している。その理由について説明する。
【0093】
IVUS画像において、血球領域の除去を目的に血球領域と生体組織領域との境界を示すエッジを抽出し、そのエッジを3次元空間に反映させることで3次元画像を作ることが考えられる。しかし、エッジ抽出は以下の点で非常に難易度が高い。
・血球領域と生体組織領域との境界の輝度勾配は一定ではなく、一様なアルゴリズムで全てを解決することが難しい。
・エッジで3次元画像を作る場合、血管壁のみでなく、心腔全体を対象にした場合など、複雑な構造を表現することができない。
・血球領域が生体組織内側だけでなく、左心房と右心房とが両方見える部分など、生体組織外側にも含まれるような画像ではエッジ抽出だけでは不十分である。
・エッジを抽出するだけではカテーテルを特定し得ない。特に生体組織壁とカテーテルとが接している場合には生体組織との境界を取ることは不可能である。
・薄い壁を挟むときにエッジだけではどちら側が本当に生体組織なのかがわかりにくい。
・厚みを計算しにくい。
【0094】
ステップS2からステップS6では、診断支援装置11の制御部41が、3次元化を行うにあたって、血球成分を除去し、臓器部分を抽出し、その情報を3次元空間に反映させ、3次元画像を描画する必要があるが、リアルタイムに3次元画像を更新し続けるために画像が送られてくる時間Tx以内にそれらの処理を終えることができる。時間Txは、1/FPSである。3次元画像を提供する従来技術では、リアルタイム処理を実現し得ない。従来の手法ではフレームごとに処理を行い、次のフレームが来るまでの間に3次元イメージを更新し続けることはできない。
【0095】
このように、本実施形態では、制御部41は、新たに2次元画像を生成する度に、次に2次元画像を生成する前に、新たに生成した2次元画像に対応する生体組織の3次元画像を生成する。
【0096】
具体的には、制御部41は、毎秒15回以上90回以下の速さでIVUSの2次元画像を生成し、毎秒15回以上90回以下の速さで3次元画像を更新する。
【0097】
ステップS4では、診断支援装置11の制御部41が、従来のようなエッジ抽出ではなく、領域認識によって生体組織以外の物の領域も抽出することで、カテーテルなど特に小さい物を特定することができるため、以下の課題に対処できる。
・カテーテルが壁に接していると1枚の画像だけでは、人間でも生体組織と判定してしまう。
・カテーテルを血栓又はバブルと間違えることで、1枚の画像だけではカテーテルの判定が難しい。
【0098】
平素人間が、過去の連続画像を参考情報として、カテーテル位置を推定しているように、制御部41がカテーテル位置を特定するために過去情報を使用してもよい。
【0099】
ステップS4では、診断支援装置11の制御部41が、2次元画像中心のプローブ20本体と壁面とが接している場合も、従来のようなエッジ抽出ではなく、領域認識によって生体組織以外の物の領域も抽出することで、それらを区別することができる。すなわち、制御部41は、IVUSカテーテルそれ自体と、生体組織領域とを区分することができる。
【0100】
ステップS4では、診断支援装置11の制御部41が、複雑な構造を表現し、生体組織性状を判定し、カテーテルなど小さな物を探すために、エッジ抽出ではなく、生体組織領域及びカテーテル領域を抽出する。そのために、本実施形態では、機械学習のアプローチが採用されている。制御部41は、学習済みモデル61を用いて、画像のそれぞれの画素に対して、その部分がどのような性質を持った部分であるかを直接評価し、分類を付与された画像を定められた条件下で設定された3次元空間に反映させる。制御部41は、3次元空間にその情報を積層し、3次元に配置されたメモリ空間に保存された情報をベースとして3次元化を行い、3次元画像を表示させる。また、それらの処理がリアルタイムに更新され、2次元画像が対応する位置の3次元情報が更新される。順次又は並行して計算が行われる。特に並行して処理が行われることにより、時間的な効率化が図られる。
【0101】
機械学習とは、アルゴリズムを使用して入力データを解析し、その解析結果から有用な規則又は判断基準などを抽出し、アルゴリズムを発展させることを指す。機械学習のアルゴリズムは、一般的に、教師あり学習、教師なし学習、及び強化学習などに分類される。教師あり学習のアルゴリズムでは、サンプルとなる生体音の音声データ及び超音波画像という入力と、それらに対応した疾患のデータという結果とのデータセットが与えられ、それに基づき機械学習が行われる。教師なし学習のアルゴリズムでは、入力データのみが大量に与えられて機械学習が行われる。強化学習のアルゴリズムは、アルゴリズムが出力した解に基づいて環境を変化させ、出力した解がどの程度正しいのかの報酬に基づいて、修正が加えられていく。こうして得られた機械学習済みのモデルが学習済みモデル61として用いられる。
【0102】
学習済みモデル61は、事前に機械学習を行うことによって、サンプルとなる2次元画像から、クラスを特定できるように調教されている。サンプルとなる超音波画像及びその画像に対して予め人がラベル付けした分類が施された画像は、例えば多くの患者が集まる大学病院などの医療機関で収集される。
【0103】
IVUS画像には血球領域のような高ノイズが載っており、さらにシステムノイズも載っている。そのため、ステップS4では、診断支援装置11の制御部41が、学習済みモデル61に挿入する前に画像に前処理を施す。前処理としては、例えば、simple blur、median blur、Gaussian blur、bilateral filter、median filter、若しくはblock averagingなどの様々なフィルタを用いたsmoothing、又はdilation and erosion、opening and closing、morphological gradient、若しくはtop hat and black hatなどのimage morphology、又はflood fill、resize、image pyramids、threshold、low path filter、high path filter、若しくはdiscrete wavelet transformが行われる。ただし、このような処理を通常のCPU上で行った場合、その処理のみでも66msec以内で終わらない可能性がある。そのためこの処理をGPU上で行う。特にディープラーニングと呼ばれる複数のレイヤで構築される機械学習でのアプローチにおいて、そのレイヤとしてアルゴリズムを構築することで、リアルタイム性を持たせた前処理を行うことが可能となることを検証済みである。この検証では、512ピクセル*512ピクセル以上の画像を用いて分類精度97%以上、42fpsを達成している。
【0104】
前処理の有無で比較した場合、生体組織領域の抽出においては前処理のレイヤを加えることが望ましいが、2次元画像内のカテーテルのような小さな物を判定する際は、前処理のレイヤがない方が良い。そのため、本実施形態の一変形例として、クラスごとに異なる画像処理P2が準備されてもよい。例えば、
図8に示すように、生体組織クラス用の、前処理のレイヤを含む画像処理P2aと、カテーテルクラス用又はカテーテル位置特定用の、前処理のレイヤを含まない画像処理P2bとを用意してもよい。
【0105】
この変形例において、診断支援装置11の制御部41は、2次元画像を平滑化する。平滑化とは、画素群の濃淡変動を滑らかにする処理のことである。平滑化には、上述のsmoothingが含まれる。制御部41は、平滑化する前の2次元画像に含まれる複数の画素を医療器具クラス及び他の1つ以上のクラスに分類する第1分類処理を実行する。制御部41は、第1分類処理で医療器具クラスに分類した1つ以上の画素を除く、平滑化した2次元画像に含まれる画素群を、生体組織クラスを含む1つ以上のクラスに分類する第2分類処理を実行する。制御部41は、第1分類処理で分類した1つ以上の画素と、第2分類処理で分類した画素群とを重畳することで、医療器具を精度よく3次元画像に表示することができる。この変形例のさらなる変形例として、制御部41は、平滑化する前の2次元画像に含まれる複数の画素を医療器具クラス及び他の1つ以上のクラスに分類する第1分類処理と、第1分類処理で医療器具クラスに分類した1つ以上の画素を除いた2次元画像を平滑化し、平滑化した2次元画像に含まれる画素群を、生体組織クラスを含む1つ以上のクラスに分類する第2分類処理とを実行してもよい。
【0106】
ステップS5では、診断支援装置11の制御部41が、画像処理P2による分類の結果、取得された生体組織領域の情報を用いて、生体組織の厚みを計測する。また、制御部41が、その計測結果を3次元情報に反映させることにより、厚みを表現する。ステップS6では、制御部41が、グラデーションなどを用いて立体構造の色を分けるなどの処理を加えることで、厚みを表示する。制御部41は、さらに生体組織性状の違いなど、3次元における生体組織構造をクラスごとに色を変えるなどの表示方法で追加情報を与えてもよい。
【0107】
このように、本実施形態では、制御部41は、ステップS4で生体組織クラスに分類した画素群を分析して生体組織の厚みを算出する。制御部41は、算出した生体組織の厚みを表示する制御を行う。ディスプレイ16は、制御部41により制御されて生体組織の厚みを表示する。本実施形態の一変形例として、制御部41は、生成した、生体組織の3次元画像を分析して生体組織の厚みを算出してもよい。
【0108】
本実施形態における3次元空間の定義について説明する。
【0109】
3次元化の手法としては、surface rendering又はvolume renderingなどのレンダリング手法、及びそれに付随したtexture mapping、bump mapping、又はenvironment mappingなど種々の操作が用いられる。
【0110】
本実施形態で利用される3次元空間は、リアルタイム処理を行い得るサイズに限定される。そのサイズはシステムにおいて定められた超音波画像を取得するFPSに準ずるものであることが求められる。
【0111】
本実施形態ではその位置を逐一取得することができる駆動ユニット13が使用される。駆動ユニット13のスキャナユニット31は一軸上を移動することができるが、その軸をz軸、ある瞬間のスキャナユニット31の位置をzとする。またz軸は予め規定された3次元空間のある一軸に紐付いており、その軸をZ軸とする。Z軸とz軸とは紐付いているため、Z軸上の点ZはZ=f(z)となるように予め定められている。
【0112】
Z軸上には画像処理P2によって得られた分類結果62の情報が反映される。ここで定義した3次元空間のXY軸平面には、画像処理P2で分類可能なクラス情報を全て保存することができることが求められる。さらには、元の超音波画像における輝度情報が同時に内包されることが望ましい。画像処理P2によって得られた分類結果62の情報は、その全てのクラス情報が、現在のスキャナユニット31の位置に相当する3次元上Z軸位置におけるXY平面へと反映される。
【0113】
また3次元空間は、Tx(=1/FPS)ごとにvolume renderingなどを用いて3次元化されることが望ましいが、処理時間が限定されているため無限に大きくしていくことはできない。すなわち、3次元空間は、Tx(=1/FPS)以内に計算し得るサイズであることが求められる。
【0114】
駆動ユニット13上の長い範囲を3次元に変換したい場合は、計算し得るサイズに収まらない可能性が考えられる。そのため、駆動ユニット13で表示する範囲を上述の範囲内に抑えるためにZ=f(z)が適切な変換として規定される。これは、Z軸上での駆動ユニット13のスキャナユニット31の移動範囲と、z軸上でボリュームデータ53を保存可能な範囲との両方の制限内でZ軸上の位置をz軸上の位置に変換する関数を設定する必要があるということである。
【0115】
上述のように、本実施形態では、診断支援装置11の制御部41は、血液が通る生体組織の内部で送信された超音波の反射波の信号が処理されることにより生成される2次元画像に含まれる複数の画素を、生体組織を表示した画素に対応する生体組織クラスを含む2つ以上のクラスに分類する。制御部41は、生体組織クラスに分類した画素群から生体組織の3次元画像を生成する。制御部41は、生成した生体組織の3次元画像を表示する制御を行う。したがって、本実施形態によれば、超音波の2次元画像から生成される、生体組織の構造を表現する3次元画像の正確性が向上する。
【0116】
本実施形態によれば、リアルタイムに3次元画像が表示され、術者が頭の中で2次元画像を3次元空間へ変換することなく手技を行うことができるようになり、術者の疲労軽減、及び手技時間の短縮が見込まれる。
【0117】
本実施形態によれば、カテーテルなどの挿入物、又はステントなどの留置物の位置関係が明確となり、手技の失敗が減少する。
【0118】
本実施形態によれば、生体組織の性状を3次元的に捉えることが可能となり、正確な手技を行うことができる。
【0119】
本実施形態によれば、前処理のレイヤを画像処理P2の内部に入れ込むことで、精度が向上する。
【0120】
本実施形態によれば、分類された生体組織領域の情報を用いて、生体組織厚みを計測することができ、その情報を3次元情報に反映させることができる。
【0121】
本実施形態では、入力画像を超音波画像とし、アウトプットを1ピクセルごと、又は複数の画素を集合と見立てた領域に、カテーテル本体の領域、血球領域、石灰化領域、線維化領域、カテーテル領域、ステント領域、心筋壊死領域、脂肪生体組織、又は臓器間の生体組織などの2クラス以上の分類を持たせて分類を行うことで、1枚の画像内からどの部分がどの部分であるかを判定することができる。
【0122】
本実施形態では、少なくとも心臓及び血管領域に対応する生体組織クラスという分類が予め定められる。既に1ピクセルごと、又は複数の画素を集合と見立てた領域に、この生体組織クラスを含む2クラス以上の分類を持たせて分類された教師ありデータを機械学習の材料とすることで、学習効率を向上させることができる。
【0123】
本実施形態において、学習済みモデル61は、CNN、RNN、及びLSTMをはじめとした任意のディープラーニング用のニューラルネットワークとして構築される。「CNN」は、convolutional neural networkの略語である。「RNN」は、recurrent neural networkの略語である。「LSTM」は、long short-term memoryの略語である。
【0124】
本実施形態の一変形例として、診断支援装置11がステップS3の処理を行う代わりに、他の装置がステップS3の処理を行い、診断支援装置11はステップS3の処理の結果として生成された2次元画像を取得してステップS4以降の処理を行ってもよい。すなわち、診断支援装置11の制御部41が、IVUSの信号を処理して2次元画像を生成する代わりに、他の装置が、IVUSの信号を処理して2次元画像を生成し、生成した2次元画像を制御部41に入力してもよい。
【0125】
図9を参照して、診断支援装置11が術者のカテーテル操作に応じて次々に生成されるIVUSの2次元画像からリアルタイムに3次元画像を生成するために、3次元空間のサイズを設定する動作を説明する。この動作は、
図5の動作の前に行われる。
【0126】
ステップS101において、制御部41は、入力部44を介して、血液が通る生体組織の内部を移動しながら超音波を送信する超音波振動子25からの超音波の反射波の信号が処理されることにより単位時間当たりに生成される2次元画像の数FPSを入力する操作を受け付ける。
【0127】
具体的には、制御部41は、単位時間当たりに生成されるIVUSの2次元画像の数FPSを選択するか、又は具体的に指定する画面を、出力部45を介してディスプレイ16に表示させる。単位時間当たりに生成されるIVUSの2次元画像の数FPSを選択する画面では、例えば、30fps、60fps、及び90fpsなどの選択肢が表示される。制御部41は、入力部44を介して、術者などのユーザがキーボード14又はマウス15により選択又は指定した、単位時間当たりに生成されるIVUSの2次元画像の数FPSの数値を取得する。制御部41は、取得した、単位時間当たりに生成されるIVUSの2次元画像の数FPSの数値を記憶部42に記憶する。
【0128】
本実施形態の一変形例として、単位時間当たりに生成されるIVUSの2次元画像の数FPSの数値が記憶部42に予め記憶されていてもよい。
【0129】
ステップS102において、制御部41は、ステップS101で入力された、単位時間当たりに生成される2次元画像の数FPSに応じて、3次元空間の最大ボリュームサイズMVSを決定する。3次元空間の最大ボリュームサイズMVSは、診断支援装置11であるコンピュータのスペックに依存して、単位時間当たりに生成される2次元画像の数FPSの候補の数値又は数値範囲ごとに予め決定されているか、又は算出されるものとする。
図10に示すように、3次元空間のサイズは、2次元画像の横方向に対応する3次元画像の第1方向の画素数である第1画素数Xnと、2次元画像の縦方向に対応する3次元画像の第2方向の画素数である第2画素数Ynと、超音波振動子25の移動方向に対応する3次元画像の第3方向の画素数である第3画素数Znとの積である。この時点では、第1画素数Xn、第2画素数Yn、及び第3画素数Znのいずれも未定である。本実施形態では、2次元画像の横方向がX方向、2次元画像の縦方向がY方向であるが、逆でもよい。本実施形態では、3次元画像の第1方向がX方向、3次元画像の第2方向がY方向、3次元画像の第3方向がZ方向であるが、X方向及びY方向は逆でもよい。
【0130】
具体的には、制御部41は、記憶部42に予め記憶された換算表、又は予め定められた計算式を用いて、ステップS101で記憶部42に記憶した、単位時間当たりに生成される2次元画像の数FPSの数値に対応する3次元空間の最大ボリュームサイズMVSを計算する。制御部41は、計算した最大ボリュームサイズMVSの数値を記憶部42に記憶する。
【0131】
ここで、転送速度に基づいたVoxel値理論値算出法について説明する。
【0132】
CPUからGPUへのデータ転送はPCI Express(登録商標)を通して行われる。その速度は、例えば、1GB/sを標準とし、その倍数で転送速度が決まる。多くの場合に設置されているPCI Express(登録商標)では、GPUにはx16が多くの場合使われる。ここでは、x16、すなわち、1秒あたり、16GB転送できるものと定める。
【0133】
システムの仕様上、15fps以上30fps以下での画面更新とするならば、CPUとGPUとの間の1回当たりの転送は、1/30[fps]=0.033[fps]で行わなければならない。これから考えると、理論的に転送可能なVoxelデータの量は、 16GB/s*0.033=0.533GB=533MB
となり、これが転送サイズとしての上限になる。また、Voxel単位をどのように表現するかでもデータサイズが変わってくる。ここで、各Voxelを8ビットで表現する、つまり0~255としたならば、およそ512*512*2000のサイズを取り扱うことができる。
【0134】
しかし、実際にはこのサイズでは処理できない。具体的には、データを更新するまでに必要な計算時間を考えたとき、以下の式が成立したとき、Xfpsが保証されると考えられる。
1/X[fps]>=Tf(S)+Tp(V)+F(V)
【0135】
この式は転送前の処理及び転送後の処理時間の類型である。ここでTf(S)は、サイズS(=X*Y)のピクセルを処理するためにかかるフィルタの時間、Tp(V)はVoxel作成及び転送準備のために必要な処理時間、F(V)はサイズV(=X*Y*Z)のVoxelの転送時間及び描画時間である。なお、Tp(V)は無視してもよいほど小さい。また、フィルタの処理速度をf[fps](ただし、X<=f)とするならば、次の計算式により理論的に転送可能な上限値が計算できる。
Voxelサイズ<=16GB*(1/X-1/f-F(V))
【0136】
例えば、X=15、F=30とするならば、0.033秒分をボリュームレンダリング及び転送時間など、他の処理に費やすことが可能になり、転送のみに時間を割くことができるならば、512*512*8138を上限、すなわち、最大ボリュームサイズMVSとしたVoxelの転送が理論的には可能になる。
【0137】
ステップS103において、制御部41は、入力部44を介して、第1画素数Xn及び第2画素数Ynを入力する操作を受け付ける。第1画素数Xn及び第2画素数Ynは、異なる数でもよいが、本実施形態では同じ数である。
【0138】
具体的には、制御部41は、第1画素数Xn及び第2画素数Ynを選択するか、又は具体的に指定する画面を、出力部45を介してディスプレイ16に表示させる。第1画素数Xn及び第2画素数Ynを選択する画面では、例えば、512*512、及び1024*1024などの選択肢が表示される。制御部41は、入力部44を介して、ユーザがキーボード14又はマウス15により選択又は指定した第1画素数Xn及び第2画素数Ynの数値を取得する。制御部41は、取得した第1画素数Xn及び第2画素数Ynの数値を記憶部42に記憶する。
【0139】
本実施形態の一変形例として、第1画素数Xn及び第2画素数Ynの数値が記憶部42に予め記憶されていてもよい。
【0140】
ステップS104において、制御部41は、ステップS103で入力された第1画素数Xnに対する、3次元画像の第1方向の寸法の比率である基準比率Xpを計算する。あるいは、制御部41は、ステップS103で入力された第2画素数Ynに対する、3次元画像の第2方向の寸法の比率である基準比率Ypを計算する。なお、3次元画像の第1方向の寸法は、2次元画像のデータが取得される範囲の横寸法Xdである。3次元画像の第2方向の寸法は、2次元画像のデータが取得される範囲の縦寸法Ydである。横寸法Xd及び縦寸法Ydは、いずれも実空間上の生体組織での物理的な距離である。実空間上の生体組織の物理的な距離は、超音波の速さと時間から計算される。すなわち、3次元画像の第1方向の寸法は、生体内の、3次元画像で表現される範囲の横方向の実寸法である。3次元画像の第2方向の寸法は、生体内の、3次元画像で表現される範囲の縦方向の実寸法である。生体内の、3次元画像で表現される範囲には、生体組織だけでなく、生体組織の周辺部分が含まれてもよい。2次元画像のデータが取得される範囲の横寸法Xd、及び2次元画像のデータが取得される範囲の縦寸法Ydは、ユーザが生体組織の物理的距離を推測して入力することもできる。
【0141】
具体的には、制御部41は、記憶部42に予め記憶された、IVUSのデータ取得範囲の横寸法Xdの数値を取得する。制御部41は、取得した横寸法Xdの数値を、ステップS103で記憶部42に記憶した第1画素数Xnの数値で割って、基準比率Xpを求める。すなわち、制御部41は、Xp=Xd/Xnを計算する。制御部41は、求めた基準比率Xpを記憶部42に記憶する。あるいは、制御部41は、記憶部42に予め記憶された、IVUSのデータ取得範囲の縦寸法Ydの数値を取得する。制御部41は、取得した縦寸法Ydの数値を、ステップS103で記憶部42に記憶した第2画素数Ynの数値で割って、基準比率Ypを求める。すなわち、制御部41は、Yp=Yd/Ynを計算する。制御部41は、求めた基準比率Ypを記憶部42に記憶する。なお、
図14に示すように、IVUSの超音波最大到達範囲は、超音波が生体組織に反射した反射波から2次元画像を生成可能な最大の範囲である。本実施形態では、リアルタイムに3次元画像を表示するので、超音波最大到達範囲は、1/「予め決定されたFPS」に、超音波の速さを掛けた距離を半径とする円である。IVUSのデータ取得範囲は、2次元画像のデータとして取得される範囲である。データ取得範囲は、超音波最大到達範囲の全体又は一部分として任意に設定可能である。データ取得範囲の横寸法Xd及び縦寸法Ydは、いずれも超音波最大到達範囲の直径以下となる。例えば、超音波最大到達範囲の半径が80mmであるとすると、データ取得範囲の横寸法Xd及び縦寸法Ydは、それぞれ0mmよりも大きく、かつ超音波最大到達範囲の直径160mm以下の任意の値に設定される。データ取得範囲の横寸法Xd及び縦寸法Ydは、実空間上の生体組織での物理的な距離のため、値が決められており、3次元画像を拡大又は縮小しても、基準比率Xp及び基準比率Ypは変わらない。
【0142】
ステップS105において、制御部41は、入力部44を介して、スキャナユニット31の移動距離の上限Mmを入力する操作を受け付ける。超音波振動子25は、スキャナユニット31の移動に伴って移動し、その移動距離は、スキャナユニット31の移動距離に一致する。スキャナユニット31の移動距離は、本実施形態では、プルバック操作でスキャナユニット31が後退する距離である。
【0143】
具体的には、制御部41は、スキャナユニット31の移動距離の上限Mmを選択するか、又は具体的に指定する画面を、出力部45を介してディスプレイ16に表示させる。上限Mmを選択する画面では、例えば、15cm、30cm、45cm、及び60cmなどの選択肢が表示される。制御部41は、入力部44を介して、ユーザがキーボード14又はマウス15により選択又は指定した、スキャナユニット31の移動距離の上限Mmを取得する。制御部41は、取得した上限Mmを記憶部42に記憶する。
【0144】
本実施形態の一変形例として、スキャナユニット31の移動距離の上限Mmが記憶部42に予め記憶されていてもよい。
【0145】
ステップS106において、制御部41は、ステップS104で計算された基準比率Xp又は基準比率Ypと、ある係数αとの積を、第3画素数Znに対する、3次元画像の第3方向の寸法の比率である設定比率Zpに決定する。係数αは、例えば1.0である。なお、3次元画像の第3方向の寸法は、超音波振動子25が移動した範囲の移動方向の寸法である。すなわち、3次元画像の第3方向の寸法は、生体内の、3次元画像で表現される範囲の奥行き方向の実寸法である。移動方向の寸法は、実空間上の生体組織での物理的な距離である。よって、3次元画像を拡大又は縮小しても、設定比率Zpは変わらない。
【0146】
具体的には、制御部41は、ステップS104で記憶部42に記憶した基準比率Xp又は基準比率Ypと、記憶部42に予め記憶された係数αとを掛けて、設定比率Zpを求める。すなわち、制御部41は、Zp=α*Xp又はZp=α*Ypを計算する。制御部41は、求めた設定比率Zpを記憶部42に記憶する。
【0147】
ステップS107において、制御部41は、ステップS105で入力された、スキャナユニット31の移動距離の上限Mmを、ステップS106で決定された設定比率Zpで割って得られる値を第3画素数Znに決定する。これは、スキャナユニット31の移動距離の上限Mmと、3次元画像の第3方向の全画素に対する実寸とを合わせるためである。
【0148】
具体的には、制御部41は、ステップS105で記憶部42に記憶した、スキャナユニット31の移動距離の上限Mmを、ステップS106で記憶部42に記憶した設定比率Zpで割って、第3画素数Znを求める。すなわち、制御部41は、Zn=Mm/Zpを計算する。制御部41は、求めた第3画素数Znの数値を記憶部42に記憶する。
【0149】
ステップS108において、制御部41は、ステップS102で決定された、3次元空間の最大ボリュームサイズMVSを、ステップS103で入力された第1画素数Xn及び第2画素数Ynの積で割って得られる値を第3画素数Znの上限Zmに決定する。
【0150】
具体的には、制御部41は、ステップS102で記憶部42に記憶した最大ボリュームサイズMVSの数値を、ステップS103で記憶部42に記憶した第1画素数Xn及び第2画素数Ynの数値の積で割って、第3画素数Znの上限Zmを求める。すなわち、制御部41は、Zm=MVS/(Xn*Yn)を計算する。制御部41は、求めた上限Zmを記憶部42に記憶する。
【0151】
ステップS109において、制御部41は、ステップS107で決定した第3画素数Znと、ステップS108で決定した第3画素数Znの上限Zmとを比較する。
【0152】
具体的には、制御部41は、ステップS107で記憶部42に記憶した第3画素数Znの数値がステップS108で記憶部42に記憶した上限Zmを超えているかどうかを判定する。
【0153】
第3画素数Znが上限Zmを超えていれば、ステップS101に戻って再設定が行われる。この再設定では、制御部41は、リアルタイム処理を実現するために、ステップS101で入力された、単位時間当たりに生成される2次元画像の数FPSと、ステップS103で入力された第1画素数Xn及び第2画素数Ynと、ステップS105で入力された、スキャナユニット31の移動距離の上限Mmとのうち少なくともいずれかを変更する必要があることを、出力部45を介してユーザに通知する。すなわち、制御部41は、ユーザに警告する。
【0154】
第3画素数Znが上限Zm以下であれば、ステップS110に進んでメモリが確保される。このメモリは、本実施形態では、3次元空間の実体であるボリュームデータ53の記憶領域であり、具体的には、GPU内の記憶領域である。
【0155】
上述のように、本実施形態では、診断支援装置11は、血液が通る生体組織の内部を移動しながら超音波を送信する超音波振動子25を用いて生成される2次元画像から、超音波振動子25の移動範囲の3次元画像を生成する。診断支援装置11の制御部41は、単位時間当たりに生成される2次元画像の数FPSと、2次元画像の横方向に対応する3次元画像の第1方向の画素数である第1画素数Xnと、2次元画像の縦方向に対応する3次元画像の第2方向の画素数である第2画素数Ynとに応じて、超音波振動子25の移動方向に対応する3次元画像の第3方向の画素数である第3画素数Znの上限Zmを決定する。したがって、本実施形態によれば、超音波の2次元画像を3次元化する際の3次元空間のサイズを、単位時間当たりに生成される2次元画像の数に応じたサイズに制限することができる。
【0156】
本実施形態によれば、3次元空間のサイズを、カテーテル操作に応じて次々に生成されるIVUSの2次元画像からリアルタイムに3次元画像を生成可能なサイズ以下に制限することができる。その結果、術者が3次元画像を参照しながら施術を行えるようになる。
【0157】
IVUSの2次元画像の1画素の実際のスケールは、予め定められた固定値である。この固定値を「深度」という。1/FPS以内に計算し得るサイズで3次元化を行わなければならないため、具体的にはFPSによって、最大のボリューム画素数は定まっている。そのため3次元空間内のX軸、Y軸、及びZ軸の画素数をそれぞれXn、Yn、及びZnとすると、Xn*Yn*Zn=<MVSという関係が成り立つ。また、X軸、Y軸、及びZ軸それぞれの1画素当たりの実際のスケールをXp、Yp、及びZpとすると、Xp=Yp=深度/(Xn又はYn)、Zp=α*Xp=α*Ypとなる。αは基本的には1であるが、実際3次元画像を構築した場合においては、術者のイメージにそぐわない3次元画像が完成するケースがある。そのような場合は、αを調整することにより臨床上の心腔又は血管イメージと近い3次元画像を構築することが可能である。
【0158】
3次元化する実際のスケールが、Xn、Yn、深度、及びFPSの関係から、自動的に決まる場合はよいが、術者がプルバックする距離を自ら設定しようとした際は、その距離に相当するZnがZmを上回る可能性がある。その場合は再度、Xn、Yn、Zn、Xp、Yp、及びZpを改める必要がある。
【0159】
このようにX軸、Y軸、及びZ軸のそれぞれの画素が持つ意味を現実と相関性を持たせることにより、よりリアリティーのある3次元画像を構築することが可能である。また、α値を別途設けることにより、医師がイメージする実際の心腔内のイメージを構築することが可能である。本実施形態によれば、リアルタイムに更新しながら、実際のスケールを模した3次元画像を構築することが可能となる。
【0160】
以下のように、本実施形態では、ユーザが係数αを調整することができる。
【0161】
図11を参照して、ステップS106で診断支援装置11が基準比率Xpと係数αとの積を設定比率Zpに決定した後、係数αがユーザによって変更された場合の診断支援装置11の動作を説明する。この動作は、
図5の動作の前に行われてもよいし、
図5の動作の途中又は後に行われてもよい。
【0162】
ステップS111において、制御部41は、入力部44を介して、変更後の係数α’を入力する操作を受け付ける。
【0163】
具体的には、制御部41は、係数αの現在値を示しつつ、変更後の係数α’の値を選択するか、又は具体的に指定する画面を、出力部45を介してディスプレイ16に表示させる。制御部41は、入力部44を介して、術者などのユーザがキーボード14又はマウス15により選択又は指定した変更後の係数α’を取得する。制御部41は、取得した係数α’を記憶部42に記憶する。
【0164】
ステップS112において、制御部41は、ステップS104で計算された基準比率Xp又は基準比率Ypと、ステップS111で入力された変更後の係数α’との積を新たな設定比率Zp’に決定する。
【0165】
具体的には、制御部41は、ステップS104で記憶部42に記憶した基準比率Xp又は基準比率Ypと、ステップS111で記憶部42に記憶した係数α’とを掛けて、設定比率Zp’を求める。すなわち、制御部41は、Zp’=α’*Xp又はZp’=α’*Ypを計算する。制御部41は、求めた設定比率Zp’を記憶部42に記憶する。
【0166】
ステップS113において、制御部41は、ステップS105で入力された、スキャナユニット31の移動距離の上限Mmを、ステップS112で決定された設定比率Zp’で割って得られる値を第3画素数Zn’に決定する。
【0167】
具体的には、制御部41は、ステップS105で記憶部42に記憶した、スキャナユニット31の移動距離の上限Mmを、ステップS112で記憶部42に記憶した設定比率Zp’で割って、第3画素数Zn’を求める。すなわち、制御部41は、Zn’=Mm/Zp’を計算する。制御部41は、求めた第3画素数Zn’の数値を記憶部42に記憶する。
【0168】
ステップS114において、制御部41は、ステップS113で決定した第3画素数Zn’と、ステップS108で決定した第3画素数Znの上限Zmとを比較する。
【0169】
具体的には、制御部41は、ステップS113で記憶部42に記憶した第3画素数Zn’の数値がステップS108で記憶部42に記憶した上限Zmを超えているかどうかを判定する。
【0170】
第3画素数Zn’が上限Zmを超えていれば、ステップS111に戻って再設定が行われる。この再設定では、制御部41は、リアルタイム処理を実現するために、ステップS111での係数αの変更をキャンセルするか、又はステップS111で係数αを係数α’とは別の値に変更する必要があることを、出力部45を介してユーザに通知する。すなわち、制御部41は、ユーザに警告する。一変形例として、制御部41は、変更後の係数α’を採用しつつ、単位時間当たりに生成される2次元画像の数FPSと、第1画素数Xn及び第2画素数Ynと、スキャナユニット31の移動距離の上限Mmとのうち少なくともいずれかを変更する必要があることをユーザに通知してもよい。
【0171】
第3画素数Zn’が上限Zm以下であれば、ステップS115に進んでメモリが上書きされる。
【0172】
本実施形態によれば、実際に3次元画像を構築した後に、係数αを改め、3次元画像を術者である医師が実際のイメージに近づけるために3次元のスケールを修正することができる。実験では、α=1.0の場合にユーザが違和感を持つことがあり、係数αを調整することで、よりイメージに近い3次元画像を構築できることがわかっている。
【0173】
以下のように、本実施形態では、ユーザが第1画素数Xn及び第2画素数Ynを調整することができる。
【0174】
図12を参照して、ステップS107で診断支援装置11が第3画素数Znの上限Zmを決定した後、第1画素数Xn及び第2画素数Ynがユーザによって変更された場合の診断支援装置11の動作を説明する。この動作は、
図5の動作の前に行われてもよいし、
図5の動作の途中又は後に行われてもよい。
【0175】
ステップS121において、制御部41は、入力部44を介して、変更後の第1画素数Xn’及び第2画素数Yn’を入力する操作を受け付ける。変更後の第1画素数Xn’及び第2画素数Yn’は、異なる数でもよいが、本実施形態では同じ数である。
【0176】
具体的には、制御部41は、第1画素数Xn及び第2画素数Ynの現在値を示しつつ、変更後の第1画素数Xn’及び第2画素数Yn’を選択するか、又は具体的に指定する画面を、出力部45を介してディスプレイ16に表示させる。制御部41は、入力部44を介して、ユーザがキーボード14又はマウス15により選択又は指定した変更後の第1画素数Xn’及び第2画素数Yn’の数値を取得する。制御部41は、取得した第1画素数Xn’及び第2画素数Yn’の数値を記憶部42に記憶する。
【0177】
ステップS122において、制御部41は、ステップS121で入力された変更後の第1画素数Xn’に対する、3次元画像の第1方向の寸法の比率である基準比率Xp’を計算する。あるいは、制御部41は、ステップS121で入力された変更後の第2画素数Yn’に対する、3次元画像の第2方向の寸法の比率である基準比率Yp’を計算する。
【0178】
具体的には、制御部41は、記憶部42に予め記憶された、IVUSのデータ取得範囲の横寸法Xdの数値を取得する。制御部41は、取得した横寸法Xdの数値を、ステップS121で記憶部42に記憶した第1画素数Xn’の数値で割って、基準比率Xp’を求める。すなわち、制御部41は、Xp’=Xd/Xn’を計算する。制御部41は、求めた基準比率Xp’を記憶部42に記憶する。あるいは、制御部41は、記憶部42に予め記憶された、IVUSのデータ取得範囲の縦寸法Ydの数値を取得する。制御部41は、取得した縦寸法Ydの数値を、ステップS103で記憶部42に記憶した第2画素数Yn’の数値で割って、基準比率Yp’を求める。すなわち、制御部41は、Yp’=Yd/Yn’を計算する。制御部41は、求めた基準比率Yp’を記憶部42に記憶する。
【0179】
ステップS123において、制御部41は、ステップS122で計算された基準比率Xp’又は基準比率Yp’と、係数αとの積を新たな設定比率Zp’に決定する。
【0180】
具体的には、制御部41は、ステップS122で記憶部42に記憶した基準比率Xp’又は基準比率Yp’と、記憶部42に予め記憶された係数αとを掛けて、設定比率Zp’を求める。すなわち、制御部41は、Zp’=α*Xp’又はZp’=α*Yp’を計算する。制御部41は、求めた設定比率Zp’を記憶部42に記憶する。
【0181】
ステップS124において、制御部41は、ステップS105で入力された、スキャナユニット31の移動距離の上限Mmを、ステップS123で決定された設定比率Zp’で割って得られる値を第3画素数Zn’に決定する。
【0182】
具体的には、制御部41は、ステップS105で記憶部42に記憶した、スキャナユニット31の移動距離の上限Mmを、ステップS123で記憶部42に記憶した設定比率Zp’で割って、第3画素数Zn’を求める。すなわち、制御部41は、Zn’=Mm/Zp’を計算する。制御部41は、求めた第3画素数Zn’の数値を記憶部42に記憶する。
【0183】
ステップS125において、制御部41は、ステップS102で決定された、3次元空間の最大ボリュームサイズMVSを、ステップS121で入力された変更後の第1画素数Xn’及び第2画素数Yn’の積で割って得られる値を第3画素数Zn’の上限Zm’に決定する。
【0184】
具体的には、制御部41は、ステップS102で記憶部42に記憶した最大ボリュームサイズMVSの数値を、ステップS121で記憶部42に記憶した第1画素数Xn’及び第2画素数Yn’の数値の積で割って、第3画素数Zn’の上限Zm’を求める。すなわち、制御部41は、Zm’=MVS/(Xn’*Yn’)を計算する。制御部41は、求めた上限Zm’を記憶部42に記憶する。
【0185】
ステップS126において、制御部41は、ステップS124で決定した第3画素数Zn’と、ステップS125で決定した第3画素数Zn’の上限Zm’とを比較する。
【0186】
具体的には、制御部41は、ステップS124で記憶部42に記憶した第3画素数Zn’の数値がステップS125で記憶部42に記憶した上限Zm’を超えているかどうかを判定する。
【0187】
第3画素数Zn’が上限Zm’を超えていれば、ステップS121に戻って再設定が行われる。この再設定では、制御部41は、リアルタイム処理を実現するために、ステップS121での第1画素数Xn及び第2画素数Ynの変更をキャンセルするか、又はステップS121で第1画素数Xn及び第2画素数Ynを第1画素数Xn’及び第2画素数Yn’とは別の値に変更する必要があることを、出力部45を介してユーザに通知する。すなわち、制御部41は、ユーザに警告する。一変形例として、制御部41は、変更後の第1画素数Xn’及び第2画素数Yn’を採用しつつ、単位時間当たりに生成される2次元画像の数FPSと、係数αと、スキャナユニット31の移動距離の上限Mmとのうち少なくともいずれかを変更する必要があることをユーザに通知してもよい。
【0188】
第3画素数Zn’が上限Zm’以下であれば、ステップS127に進んでメモリが上書きされる。
【0189】
IVUSの2次元画像の1画素の実際のスケールは、予め定められた固定値である。この固定値を「深度」という。1/FPS以内に計算し得るサイズで3次元化を行わなければならないため、具体的にはFPSによって、最大のボリューム画素数は定まっている。そのため3次元空間内のX軸、Y軸、及びZ軸の画素数をそれぞれXn、Yn、及びZnとすると、Xn*Yn*Zn=<MVSという関係が成り立つ。また、X軸、Y軸、及びZ軸それぞれの1画素当たりの実際のスケールをXp、Yp、及びZpとすると、Xp=Yp=深度/(Xn又はYn)、Zp=α*Xp=α*Ypとなる。αは基本的には1であるが、実際3次元画像を構築した場合においては、術者のイメージにそぐわない3次元画像が完成するケースがある。そのような場合は、αを調整することにより臨床上の心腔又は血管イメージと近い3次元画像を構築することが可能である。
【0190】
3次元化する実際のスケールが、Xn、Yn、深度、及びFPSの関係から、自動的に決まる場合はよいが、術者がプルバックする距離を自ら設定しようとした際は、その距離に相当するZnがZmを上回る可能性がある。その場合は再度、Xn、Yn、Zn、Xp、Yp、及びZpを改める必要がある。
【0191】
このようにX軸、Y軸、及びZ軸のそれぞれの画素が持つ意味を現実と相関性を持たせることにより、よりリアリティーのある3次元画像を構築することが可能である。また、α値を別途設けることにより、医師がイメージする実際の心腔内のイメージを構築することが可能である。本実施形態によれば、リアルタイムに更新しながら、実際のスケールを模した3次元画像を構築することが可能となる。
【0192】
以下のように、本実施形態の一変形例として、制御部41は、2次元画像が生成される時間間隔Tx(=1/FPS)ごとの超音波振動子25の移動距離Mdが、決定した設定比率Zpよりも大きい場合に、生成される2次元画像の間の画像を補間してもよい。つまり、制御部41は、単位時間当たりの超音波振動子25の移動距離が、単位時間当たりに生成される2次元画像の数FPSと、決定した設定比率Zpとの積よりも大きい場合に、生成される2次元画像の間の画像を補間してもよい。すなわち、スキャナユニット31が高速で動いた場合は、画像補間を行ってもよい。
【0193】
スキャナユニット31が移動し得る範囲の直線状の縮尺と、3次元空間上のZ軸における縮尺の関係はZ=f(z)で定められている。時間間隔Txにおける移動距離がZ=f(z)で定められている3次元空間上のZ軸の1画素の意味する範囲よりも大きい場合、情報のない領域が生まれてしまう。すなわち、IVUSカテーテルが画像を取得することができる速度は定まっており、スキャナユニット31を高速で動かした場合、生成された画像間の距離が著しく広くなってしまう可能性がある。このような場合は画像間における欠損領域に対して、補間処理を行う必要がある。またその補間数は、超音波振動子25の各時間間隔Txの移動距離、及びZ=f(z)の関係に従って変更する必要がある。
【0194】
補間処理は機械学習アプローチで行われることが望ましく、2次元画像ごとの分類及びカテーテル抽出の処理とまとめて実行することで、高速処理が可能となる。各処理は分離可能であり、各処理を結合させることも可能である。また各処理は並列又は順列に実行され、並列になれば時間的な節約を図ることができる。
【0195】
3次元画像を更新する範囲が広い場合、リアルタイム性を高めるためより高速に超音波振動子25を往復運動させる必要があり、画像補間しなければならない範囲は大きくなる。すなわちプルバック速度は、3次元化範囲により可変である可能性があり、その場合補間範囲もその速度により可変である必要がある。またIVUSではマニュアルプルバック方式で人が自在に撮影範囲を動かす可能性があるが、その場合常に補間する領域を変更しつつ補間作業を行う必要がある。
【0196】
図13を参照して、この変形例に係る診断支援システム10の動作を説明する。
【0197】
ステップS201において、診断支援装置11の制御部41は、プルバック操作におけるスキャナユニット31の位置に対応付けて3次元空間の位置を定義する。
【0198】
ステップS202からステップS206の処理については、
図5のステップS1からステップS5の処理と同じであるため、説明を省略する。
【0199】
ステップS207において、診断支援装置11の制御部41は、ステップS202のプルバック操作におけるスキャナユニット31の位置情報を取得する。
【0200】
ステップS208において、診断支援装置11の制御部41は、ステップS207で取得した位置情報で示される位置に、ステップS201で対応付けた3次元空間の位置を特定する。制御部41は、特定した位置と、前回のステップS208で特定した位置との間の距離を計算する。制御部41は、ステップS208の処理を初めて実行する場合は、位置の特定だけを行い、距離の計算は行わず、またステップS209からステップS212の処理をスキップする。
【0201】
ステップS209において、診断支援装置11の制御部41は、ステップS208で計算した距離を、ステップS106で決定した設定比率Zpで割って、補間画像数を決定する。すなわち、制御部41は、2次元画像が生成される時間間隔Txごとのスキャナユニット31の移動距離を、決定した設定比率Zpで割って、補間画像数を決定する。制御部41は、決定した補間画像数が0である場合は、ステップS210からステップS212の処理をスキップする。
【0202】
ステップS210において、診断支援装置11の制御部41は、ステップS204で生成した2次元画像、及び必要に応じて前回以前のステップS204で生成した2次元画像を用いて、ステップS209で決定した数の補間画像を生成する。補間画像を生成する方法としては、一般的な画像補間方法を用いてもよいし、又は専用の画像補間方法を用いてもよい。機械学習のアプローチを用いてもよい。
【0203】
ステップS211において、診断支援装置11の制御部41は、ステップS208で特定した位置から逆算して、又は前回のステップS208で特定した位置から計算して、ステップS206で生成した3次元画像における、ステップS210で生成した補間画像を適用する位置を設定する。例えば、制御部41は、ステップS209で決定した補間画像数が1であれば、ステップS208で特定した位置から、ステップS106で決定した設定比率Zpに相当する距離を差し引いた位置を、ステップS210で生成した補間画像を適用する位置に設定する。制御部41は、ステップS209で決定した補間画像数が2であれば、さらに、ステップS208で特定した位置から、ステップS106で決定した設定比率Zpの2倍に相当する距離を差し引いた位置も、ステップS210で生成した補間画像を適用する位置に設定する。
【0204】
ステップS212において、診断支援装置11の制御部41は、ステップS205の処理と同様に、ステップS210で生成した補間画像に含まれる複数の画素を分類する。そして、制御部41は、ステップS206の処理では、ステップS208で特定した位置に、ステップS204で生成した2次元画像が適用されるだけであったのに対し、さらにステップS211で設定した位置に、ステップS210で生成した補間画像が適用されるように、ステップS206の処理と同様の処理を行って、分類した画素群から3次元画像を生成する。
【0205】
ステップS213及びステップS214の処理については、ステップS213において、ステップS206で生成された3次元画像の代わりに、ステップS212で生成された3次元画像が表示される点を除き、
図5のステップS6及びステップS7の処理と同じであるため、説明を省略する。
【0206】
本開示は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、ブロック図に記載の複数のブロックを統合してもよいし、又は1つのブロックを分割してもよい。フローチャートに記載の複数のステップを記述に従って時系列に実行する代わりに、各ステップを実行する装置の処理能力に応じて、又は必要に応じて、並列的に又は異なる順序で実行してもよい。その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲での変更が可能である。
【0207】
例えば、
図6に示した画像処理P1、画像処理P2、及び画像処理P3は並列に実行されてもよい。
【符号の説明】
【0208】
10 診断支援システム
11 診断支援装置
12 ケーブル
13 駆動ユニット
14 キーボード
15 マウス
16 ディスプレイ
17 接続端子
18 カートユニット
20 プローブ
21 駆動シャフト
22 ハブ
23 シース
24 外管
25 超音波振動子
26 中継コネクタ
31 スキャナユニット
32 スライドユニット
33 ボトムカバー
34 プローブ接続部
35 スキャナモータ
36 差込口
37 プローブクランプ部
38 スライドモータ
39 スイッチ群
41 制御部
42 記憶部
43 通信部
44 入力部
45 出力部
51 信号データ
52 2次元画像データ
53 ボリュームデータ
54 3次元画像データ
61 学習済みモデル
62 分類結果
63 血管
64 第1カテーテル
65 第2カテーテル
66 ノイズ