(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】自動車両の複数のセンサを洗浄するためのシステム
(51)【国際特許分類】
B60S 1/62 20060101AFI20231107BHJP
【FI】
B60S1/62 120B
B60S1/62 110A
B60S1/62 110B
(21)【出願番号】P 2021517188
(86)(22)【出願日】2019-09-25
(86)【国際出願番号】 EP2019075941
(87)【国際公開番号】W WO2020064880
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-05-13
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】512092737
【氏名又は名称】ヴァレオ システム デシュヤージュ
【氏名又は名称原語表記】VALEO SYSTEMES D’ESSUYAGE
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【氏名又は名称】村田 卓久
(72)【発明者】
【氏名】マルセル、トレブー
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/172306(WO,A1)
【文献】特開2013-100077(JP,A)
【文献】特開2000-142328(JP,A)
【文献】特開平10-305758(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0272163(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第10115975(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 1/00 - 1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車両(500)の複数のセンサ(2)を洗浄するための
洗浄システム(1)であって、
各
前記センサ(2)上に洗浄液を噴霧するための複数の噴霧装置(5)と、
洗浄液貯蔵リザーバ(4)と、
前記
洗浄液貯蔵リザーバ(4)に接続された流体搬送ダクト(3)と、
各前記噴霧装置(5)と前記流体搬送ダクト(3)との間に配置される複数の電磁弁(6)と、
少なくとも各前記電磁弁(6)の開閉を制御するように構成された電子管理ユニット(7)と、
前記流体搬送ダクト(3)内の前記洗浄液の流れに関するパラメータを変更するように構成された電子制御ユニット(80)を有する被電子制御ポンプ(8)と、を備え、
前記電子制御ユニット(80)が、作動している電磁弁(6)
の数と外部温度(220)とに基づいて前記被電子制御ポンプ(8)を制御して、前記流体搬送ダクト(3)内の洗浄液の流れを適切な圧力又は流量にする、洗浄システム(1)。
【請求項2】
前記電子制御ユニット(80)が、前記流体搬送ダクト(3)内の前記洗浄液の圧力を変更するように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の洗浄システム(1)。
【請求項3】
前記電子制御ユニット(80)が、前記流体搬送ダクト(3)内の前記洗浄液の流量を変更するように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の洗浄システム(1)。
【請求項4】
前記電子制御ユニット(80)が、
複数の前記センサ(2)のうち洗浄
対象となる前記センサ(2)の性質に関するデータに基づいて前記被電子制御ポンプ(8)を制御するための命令を生成するように構成されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の洗浄システム(1)。
【請求項5】
前記電子制御ユニット(80)が、洗浄されるいくつかのセンサ(2)に基づいて前記被電子制御ポンプ(8)を制御するための命令を生成するように構成されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の洗浄システム(1)。
【請求項6】
前記電子制御ユニット(80)が、前記
自動車両(500)の速度(230)に基づいて前記被電子制御ポンプ(8)を制御するための命令を生成するように構成されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の洗浄システム(1)。
【請求項7】
前記電子管理ユニット(7)が、前記電磁弁(6)の動作を制御するための制御シーケンスを生成するように構成されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の洗浄システム(1)。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の洗浄システム(1)を使用して自動車両(500)の複数のセンサ(2)のうちの少なくとも1つを洗浄する方法であって、
前記洗浄システム(1)の被電子制御ポンプ(8)の電子制御ユニット(80)と通信するように構成された、前記洗浄システム(1)の前記電子管理ユニット(7)が、複数のセンサ(2)のうちの少なくとも1つを洗浄する要求を
車両の制御モジュール(9)から受信する、ステップ(100)と、
洗浄される前記複数のセンサ(2)のうちの前記少なくとも1つへの洗浄液の経路指定を制御する1つまたは複数の前記電磁弁(6)を識別するステップ(150)と、
前記被電子制御ポンプ(8)の前記電子制御ユニット(80)が、前記流体搬送ダクト(3)の前記洗浄液の流れに関するパラメータを変更する命令を生成する、ステップ(200)と
を含む、方法。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載の洗浄システム(1)を装備した自動車両(500)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車両(motor vehicles)上に装着される洗浄システム(cleaning systems)の分野に関する。本発明は、より詳細には、かかる車両に装着されたセンサを洗浄するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両、特に自動車両は、運転支援システムである自動化システムをますます備えるようになってきている。かかる運転支援システムは、車両の周囲およびこの車両の外部のパラメータを検出するための1つまたは複数のモジュールを備え、さらに、このように収集された情報を解釈し、この情報の結果としてなされる必要のある決定を行うように構成された少なくとも1つの制御ユニットも備える。
【0003】
したがって、これらの検出モジュールが車両の寿命を通じて適切に動作していることを確認することが重要であることが理解されよう。特に、これらの検出モジュールは、通常、車両の外側に配置され、例えばこの車両の車体上に支持され、例えば汚れて、場合により、これらの検出モジュールが情報を取得するのが困難になり、不可能にすらなり得る。したがって、堆積し、これらの検出モジュールによる画像の取得を妨げ得るデトリタス、汚れ、有機物、およびその他の破壊的な要素を効果的に除去することができる洗浄システムを提供する必要がある。既知の一解決策が、問題の検出モジュールの光学面上に多量のウォッシャ液を噴霧し、次いでこの面を乾燥させることであるが、このような解決策は、特定の戦略なしに大量に噴霧される場合に、ウォッシャ液(washer fluid)または水に関してコストがかかる可能性があり、車両の周囲に多数の検出モジュールが使用される自動運転車両の場合はなおさらそうであることに留意されたい。
【0004】
複数の洗浄剤噴霧装置を備えるかかる洗浄システムの様々なアーキテクチャが知られている。これらの噴霧装置は、例えば、車両の前面上および/または後面上および/またはサイドミラー上に配置され、したがって、例えば、1つまたは複数のセンサに関連する1つまたは複数のガラス表面を洗浄することが可能になる。
【0005】
これらの噴霧装置に洗浄剤(cleaning product)を供給するために、洗浄システムのアーキテクチャは、リザーバから車両の噴霧装置のそれぞれに関連するラインに供給される洗浄剤の経路をそれぞれ定める1つまたは複数の電磁弁を介して噴霧装置のそれぞれに連接されたリザーバおよびポンプを含む。したがって、そのようなアーキテクチャでは、噴霧装置には、洗浄システムのポンプによって互いに別々に供給され、前述した電磁弁は、リザーバからポンプで送られる洗浄剤をラインのいずれかの方へ向ける。
【0006】
自動車両上の運転者支援装置の開発が進む状況で、また自動運転車両の開発の状況で、車両上に設置されるセンサの数および種類はますます増大しつつある。これらのセンサには、センサの種類に応じて、例えば、使用される洗浄剤の量および/または流量に関して非常に大きく変わり得る洗浄要件および制約がある。ただし、すぐ上で概説したようなアーキテクチャでは、洗浄剤の送出に関するパラメータは、どのセンサが洗浄されるかに関係なく同じであり、これらのパラメータは、これらの要件が最も厳しいセンサに従って定義されることが理解されよう。したがって、上に概説したアーキテクチャの使用は、様々なセンサの洗浄要件に関連して必要とされない洗浄剤の消費につながり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、この欠点を克服すること、および、その実施が洗浄剤の不必要な消費をもたらさないのと同時に、車両上に設置される様々なセンサの洗浄品質要件に適合する洗浄システムを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のために、本発明の1つの主題は、自動車両の複数のセンサを洗浄するためのシステムであって、センサ上に洗浄液(cleaning fluid)を噴霧するための複数の装置を備えるとともに、洗浄液貯蔵リザーバを備え、洗浄システムが、貯蔵リザーバに接続された分配回路であって、噴霧装置のそれぞれが、対応する噴霧装置専用の電磁弁を介して分配回路に接続される、分配回路を備え、洗浄システムが、少なくとも分配回路の動作を制御するように構成された電子管理ユニット(electronic management unit)をさらに備える、洗浄システムにおいて、洗浄システムが被電子制御ポンプ(electronically controlled pump)を備え、被電子制御ポンプの電子制御ユニットが、分配回路内の洗浄液の流れに関するパラメータを変更するように構成されることを特徴とする、洗浄システムである。
【0009】
ここでセンサを洗浄することが意味するのは、センサから一定量のほこり、破片、または汚れを除去するために、このセンサの光学面、例えば透明なガラス面を洗浄する動作であり、問題のセンサの光学面上に一定量のほこり、破片、または汚れが存在すると、このセンサによって実行される検出および/または測定の品質を損なう可能性がある。
【0010】
洗浄液は、様々な例によれば、同じものを洗浄する目的で、上述したように光学面上に噴霧され得る液体または気体の生成物であり得る。様々な非網羅的な例によれば、洗浄液は、水、ウォッシャ液、または空気であり得る。
【0011】
ここでの分配回路は、洗浄液を本発明による洗浄システムの貯蔵リザーバからこの洗浄液を複数のセンサの光学面上に噴霧するための様々な装置まで運ぶように構成されたダクトおよびパイプの集合体を指す。一例によれば、分配回路は、複数の分岐がそこから延びる主ダクトを備え、各分岐は、洗浄液を1つまたは複数のセンサに運ぶように構成される。より具体的には、分配回路の分岐は、1つまたは複数のセンサに関連する1つまたは複数の噴霧装置に向かって洗浄液を運ぶように構成される。すでに指定したように、分配回路は、前述の分岐内、すなわち流体貯蔵リザーバと噴霧装置との間の洗浄液の循環を制御する複数の電磁弁も備える。
【0012】
少なくとも分配回路の動作を制御するように構成された電子管理ユニットは、特に電磁弁の動作を制御する。一例によれば、電子管理ユニットは、対応するセンサの光学面上に洗浄液を噴霧するための1つまたは複数の装置の動作も制御する。
【0013】
本発明によれば、分配回路は、分配回路内の洗浄液の流れに関するパラメータを変更するように構成された、いわゆる電子的に制御されるタイプのポンプを備える。この種のポンプは、特に、ポンプの動作を制御する電気モータの回転速度を、この電気モータの動作を制御する制御信号の変化に基づいて変更するように構成された電子制御ユニットを備える。
【0014】
本発明によれば、被電子制御ポンプは、洗浄液の流れに関するパラメータを変更するように構成される。より具体的には、本発明は、1つまたは複数のセンサを洗浄する操作が実行されるときに、被電子制御ポンプが流体回路の対応する1つまたは複数の分岐内の洗浄液の流れに関するパラメータを変更するように操作され、それによって洗浄される1つまたは複数のセンサの性質に応じて洗浄液の消費を最適化することを規定する。
【0015】
様々な例によれば、前述の流れパラメータは、洗浄液の圧力または流量であり得る。したがって、本発明は、洗浄されるセンサに関連する噴霧装置に供給する分配回路の1つまたは複数の分岐内の選択された流れパラメータ、例えば洗浄液の圧力を調整することを可能にする。言い換えれば、本発明は、本発明による洗浄システムを装備した自動車両の1つまたは複数のセンサ上に噴霧されることを意図した洗浄液の流れを調節することを可能にする。
【0016】
したがって、分配回路の様々な分岐内の洗浄液の分配を制御する電磁弁の動作を制御する電子管理ユニット、および被電子制御ポンプの電子制御ユニットは、互いに有利に接続され、それぞれ互いに通信するように構成される。
【0017】
上述したように、洗浄システムは、分配回路内の洗浄液の流れに関するパラメータを変更するように構成された電子制御ユニットを有する被電子制御ポンプを備える。洗浄液の流れに関するパラメータの変更は、洗浄されるセンサのタイプに固有のパラメータに依存し、かつ/または、車両の外部の環境、特に周囲温度に関するパラメータおよび/または車両の運転、特に車両の速度に関係するパラメータに関するパラメータに依存する。
【0018】
言い換えれば、被電子制御ポンプの電子制御ユニットは、電子制御ユニットが検出または受信することができる様々なパラメータに従って被電子制御ポンプを制御するための命令を生成するように構成される。制御命令は、ここでは最も広い意味で、被電子制御ポンプの動作を制御するための命令と被電子制御ポンプが選択された流れパラメータを調整するための命令とを組み合わせたものであると理解されるべきである。一例によれば、被電子制御ポンプの動作を制御するための命令と選択された流れパラメータを調整するための命令とが、同時に存在し得る。
【0019】
本発明の1つの特徴によれば、電子制御ユニットは、洗浄される1つまたは複数のセンサの性質に関するデータに基づいて被電子制御ポンプを制御するための命令を生成するように構成される。
【0020】
一例によれば、洗浄される1つまたは複数のセンサの性質に関するデータ項目は、これらのセンサのタイプであり得る。非限定的な例として、LIDAR(Light Detection And Ranging(光検出と測距))タイプの電磁波を発する/受信することにより動作する遠隔検出装置のセンサを洗浄するために必要な流体圧力は4バール程度であるのに対して、ビューイングカメラのセンサを洗浄するために必要な流体圧力は2バール程度である。したがって、例えば、前述したような様々なセンサに洗浄液を供給する分配回路の分岐内の圧力を調整することにより、本発明は、車両内の洗浄液の消費を最適化することを可能にする。
【0021】
したがって、本発明は、自動車両上に設置される様々なタイプのセンサについて、洗浄液を不必要に消費しない効果的な洗浄を提案することにより、本発明の提示した目的を達成する。これにより、洗浄液貯蔵リザーバの容量を調整することも可能になり、したがって、洗浄システムを車両内に設置することが容易になり、同時に車両が軽量化される。
【0022】
様々な機能に応じて、下記を別々にまたは組み合わせて検討する。
【0023】
電子制御ユニットは、洗浄されるいくつかのセンサに基づいて被電子制御ポンプを制御するための命令を生成するように構成される。様々な例によれば、これは、例えば、車両上に設置されるセンサの総数に関連し得る、あるいは、これは、同じタイプのいくつかのセンサ、または同様の洗浄要件を有するいくつかのセンサに関連し得る。
【0024】
被電子制御ポンプ用の電子制御ユニットは、外部温度に基づいてポンプを制御するための命令を生成するように構成される。外部温度は、ここでは、洗浄される1つまたは複数のセンサに対応する1つまたは複数の噴霧装置に供給する流体回路の1つまたは複数の分岐内を循環する洗浄液がさらされる温度を意味すると理解されるべきである。洗浄液の粘度はこのような温度に応じて変化し得るため、被電子制御ポンプを制御するための命令を策定するときにこの温度を考慮に入れることで、選択された流れパラメータが調整される精度を高めることが可能になる。
【0025】
被電子制御ポンプ用の電子制御ユニットは、車両の移動速度に基づいてポンプを制御するための命令を生成するように構成される。具体的には、移動速度が速いと、洗浄液が洗浄されるセンサの光学面上に噴霧されているときに洗浄液を分散させる結果となり得るので、洗浄液の損失をもたらすことになる。上に定義した被電子制御ポンプを使用して洗浄液の流れを調整することにより、特に、洗浄液が噴霧装置を出るときに流体の圧力を調整することにより、そうした分散が関係する1つまたは複数のセンサの洗浄の有効性に及ぼすかもしれない影響を低減することが可能になる。
【0026】
被電子制御ポンプ用の電子制御ユニットは、分配回路の電磁弁の動作を制御するための制御シーケンスを生成するように構成される。有利には、前述の制御は、主に、分配回路の1つまたは複数の電磁弁が開状態および/または閉状態にあるかどうかを検証することにある。優先的には、前述の制御は、主に、分配回路の1つまたは複数の電磁弁が閉状態にあるかどうかを検証することにある。より具体的には、本発明は、上述したような洗浄システムを装備した車両において、1つまたは複数のセンサが洗浄操作を必要とするときに、洗浄要求が上に定義した分配回路の電子管理ユニットに運ばれることを規定する。例えば、そのような洗浄要求は、車両に装備されているすべてのセンサと通信するように構成された車両の中央制御モジュールから来てもよい。有利には、前述の洗浄要求は、例えば洗浄されるセンサの数および/またはタイプ、ならびに、例えば車両上のセンサの位置に関する1つまたは複数の情報項目を含む。本発明の一態様によれば、これらの情報項目が流体回路の電子管理ユニットに送信されると、被電子制御ポンプ用の電子制御ユニットは、分配回路の1つまたは複数の電磁弁を制御するための制御シーケンスを生成する。有利な一例によれば、この制御シーケンスは、以前に定義された洗浄要求の対象となる1つまたは複数のセンサと同じタイプの1つまたは複数のセンサ、および/または、車両上に、前述した洗浄要求の対象となるセンサの近くに設置された1つまたは複数のセンサへの洗浄液の分配を制御する電磁弁に対して実行される。特に後者の場合、互いに近接して配置されたセンサが、同じ道路シーンに関する冗長な情報を取得するように構成されて、道路シーンの可能な限り最も忠実な画像が確実に得られるようにしてもよく、運転支援システム、特に自動運転車両を制御するためのシステムでは、道路シーン全体が継続的に検出される必要があることは注目に値する。したがって、このような道路シーンでの事象を検出する機能を有するセンサの少なくとも1つが使える状態であることを確実にする必要がある。
【0027】
前述の結果、本発明は、すぐ上で説明した洗浄システムを使用して自動車両の複数のセンサのうちの少なくとも1つを洗浄する方法にも関し、この方法は、
洗浄システムの被電子制御ポンプの電子制御ユニットと通信するように構成された、洗浄システムの洗浄液分配回路の電子管理ユニットが、複数のセンサのうちの少なくとも1つを洗浄する要求を受信する、ステップと、
洗浄される複数のセンサのうちの前記少なくとも1つへの洗浄液の経路指定を制御する分配回路の少なくとも1つの電磁弁を識別するステップと、
被電子制御ポンプの電子制御ユニットが、前のステップで識別された電磁弁のタイプに基づいて、分配回路内の洗浄液の流れに関するパラメータを変更する命令を生成する、ステップと
を含む。
【0028】
有利には、本発明による方法は、分配回路の1つまたは複数の電磁弁の動作を制御するための制御シーケンスを生成するステップも含み得る。
【0029】
本発明は、上述した本発明による洗浄システムを装備した自動車両にも関する。
【0030】
本発明のさらなる特徴、詳細および利点は、例示として、以下の図面を参照して提供される下記の説明を読むことでより明確に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明による洗浄システムを装備した自動車両の概略図である。
【
図2】本発明による方法の様々なステップを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
まず初めに、上記の図は、本発明を実施するために本発明を詳細に提示するものであるが、これらの図はもちろん、必要に応じて本発明をよりよく定義するために使用され得ることに留意されたい。これらの図は、本発明による可能な例示的実施形態の一部のみを提示することにも留意されたい。
【0033】
図1は、本発明による洗浄システム1を装備した自動車両500を上から見た図で概略的に示し、この洗浄システムにより、車両500上に設置された複数のセンサ2の洗浄が可能になる。非限定的な例として、センサ2は、例えば、車両の運転を支援するために車両の周囲に関する様々な情報項目(非網羅的に、車両が移動している道路の線、障害物の存在など)を検出するように構成された光学センサであり得る。
【0034】
図1を参照すると、本発明による洗浄システム1は、洗浄液を貯蔵リザーバ4から複数の洗浄液噴霧装置5まで運ぶように構成された流体搬送ダクト3を備え、噴霧装置5は、車両500内に、センサ2に関連して配置される。様々な例によれば、1つの噴霧装置5が各センサ2に関連していてもよく、または1つの分配装置5が複数のセンサ2に関連し得る、または複数の分配装置5が1つの同じセンサ2に関連し得る。
【0035】
各噴霧装置5は、他の噴霧装置5とは無関係に、
図1に示されていない1つまたは複数のパイプによって流体搬送ダクト3に接続される。これらのパイプは、パイプが関連している1つまたは複数の噴霧装置5とともに、上に定義したように分配回路10の分岐を形成する。したがって、流体搬送ダクト3は、車両500上に設置されたすべての噴霧装置5に洗浄液を供給する。上に示したように、洗浄液は液体または気体でよく、非網羅的な例として、洗浄液は水、ウォッシャ液、または空気でもよい。
【0036】
図1により具体的に示されている例によれば、流体搬送ダクト3は、車両500内で、車両500の前部に位置する第1の端部30と同車両の後部付近に位置する第2の端部31との間に延びる。しかしながら、本発明の文脈から逸脱することなく、流体搬送ダクトは他の構成を採用し得る、例えば、ループの形態をとり得ることが理解されよう。
【0037】
有利には、電磁弁6が各噴霧装置5と流体搬送ダクト3との間に配置され、電磁弁6の作動により、流体搬送ダクト内を循環する流体の全部または一部が、対応する噴霧装置5の方へ向けられるように取り出されることが可能になる。
【0038】
流体搬送ダクト3、貯蔵リザーバ4、噴霧装置5、および電磁弁6は共に、本発明による洗浄システム1内に洗浄液分配回路10を形成する。電磁弁6は、配列として配置されてもよく、または、
図1に概略的に示されているように流体搬送ダクト3に沿って分散されてもよい。
【0039】
本発明による洗浄システム1は、分配回路10の動作を制御するように構成された電子管理ユニット7も備える。より具体的には、電子管理ユニット7は特に、例えば、分配回路内に延びる制御線内の搬送電流を使用して、または無線タイプの無線通信を使用して、上に定義した電磁弁6および噴霧装置5の動作を制御する。
【0040】
本発明によれば、洗浄システム1は、貯蔵リザーバ4から各噴霧装置5までの洗浄液の経路指定を制御するように構成された被電子制御ポンプ8も備える。
図1に示されるように、被電子制御ポンプ8は、貯蔵リザーバの出口に配置され、流体搬送ダクト3の、上に定義した第1の端部30に接続される。
【0041】
本発明によれば、被電子制御ポンプ8は、上に定義した分配回路10内の洗浄液の流れに関するパラメータを変更するように構成される。
【0042】
被電子制御ポンプ8によって変更される流れパラメータは、ここでは特に、分配回路10内の洗浄液の圧力であり得る。具体的には、センサ2は異なるタイプであってもよく、センサの光学面の洗浄に関連する需要は、例えば洗浄液の圧力に関して、一方のセンサ2から別のセンサ2へと異なっていてもよい。例として、上に示したように、LIDARタイプのアセンブリのセンサの光学面の洗浄には、4バール程度の洗浄液圧が必要であるのに対して、光学カメラの光学面の洗浄には、ほんの2バールの洗浄液圧が必要である。
【0043】
あるいは、前述の流れパラメータは洗浄液の流量であり得る。
【0044】
本発明によれば、被電子制御ポンプ8は、被電子制御ポンプ8を駆動する電気モータの回転速度を変更するように、したがって前記ポンプによって運ばれる洗浄液の流れを変更するように構成された、
図1に概略的に示される電子制御ユニット80を備える。
【0045】
洗浄方法の説明に関連してより詳しく説明するように、したがって、本発明により、分配回路10全体にわたる洗浄液の流れに関するパラメータが、作動されることになる1つまたは複数の電磁弁6とダクト3内を循環する洗浄液を供給されることになる分配装置とに従って調節されることが可能になることが理解されよう。洗浄システムがLIDARタイプのアセンブリのセンサの洗浄に使用される場合、電子制御ユニット80は、被電子制御ポンプ8を制御して、このポンプに洗浄液を4バールの圧力で分配回路全体に送出させる。同時に、特に車両の別の部分において、ビューイングカメラタイプのセンサを洗浄する必要がある場合、最適洗浄に十分な圧力が2バールであっても、4バールの圧力での洗浄液が使用されることになる。他方、洗浄システムがビューイングカメラタイプの1つまたは複数のセンサを洗浄するためだけに使用される場合、電子制御ユニット80は、被電子制御ポンプ8を制御して、このポンプに洗浄液を2バールの圧力で分配回路全体に送出させる。
【0046】
さらに、被電子制御ポンプは、車両の走行条件に関するデータを受信するように構成され、これらのデータには、車両の速度などの車両に固有の条件ならびに周囲温度などの外的条件に関するデータが含まれる。被電子制御ポンプは、これらのデータに基づいて洗浄液の流れの命令を決定するように構成される。
【0047】
有利には、本発明は、被電子制御ポンプ8の電子制御ユニット80と分配回路10の電子管理ユニット7が互いに通信するように構成されることを提供する。
【0048】
図2は、すぐ上で説明した洗浄システム1を実施する洗浄方法を概略的に示す。
【0049】
図2を参照すると、そのような方法は、分配回路10の電子管理ユニット7が車両500上に設置された1つまたは複数のセンサ2を洗浄する要求を受信する、第1のステップ100を含む。洗浄システムが車両上の当初の機器として組み込まれるかどうか、または洗浄システムが既存の車両に後付けされるかどうかに応じて、この洗浄要求は、分配回路10の電子管理ユニット7に直接送信されるか、さもなければ車両の制御モジュール9によって送信されてもよく、制御モジュールは、車両500上に設置されたすべてのセンサ2と通信するように構成される。一例によれば、制御モジュール9は、様々なセンサ2の洗浄に関する情報項目の収集を保存するための記憶ユニットを備えていてもよく、これらの情報項目は、例えば、非網羅的に、これらのセンサの光学面上への洗浄液の噴霧継続時間、洗浄液の圧力、洗浄されるセンサを洗浄するために使用される流量などの動作パラメータであり得る。
【0050】
次に、本発明による方法は、上述した第1のステップ100中に受信された洗浄要求の対象となる複数のセンサ2に向かう洗浄液の経路指定を制御する分配回路10の1つまたは複数の電磁弁6を識別するステップ150を含む。洗浄システムが車両上に設置されているときに、ペアリングデータが分配回路の電子管理ユニット7のメモリに保存され、したがって、この電子管理ユニット7は、洗浄要求の対象となるどの特定のセンサが、どの特定の噴霧装置、適切な場合はどの複数の噴霧装置を介して洗浄されるべきか、したがって、どの特定の電磁弁、適切な場合はどの複数の電磁弁が前記センサを洗浄するために作動されるべきかに関する情報を取り出すことができることに留意されたい。本発明に関しては非限定的に、これらのペアリングデータは、リザーバの被電子制御ポンプ内に組み込まれてもよい。
【0051】
本発明による方法の次のステップ200では、分配回路10の電子管理ユニット7および被電子制御ポンプ8の電子制御ユニット80は、洗浄されるセンサ2に関連する噴霧装置5への洗浄液の搬送および前述の噴霧装置5による洗浄液の送出を制御する。より具体的には、被電子制御ポンプ8の電子制御ユニット80は、第1のサブステップ201で、流体搬送ダクト内への洗浄液の流れを適切な圧力および流量で制御し、分配回路10の電子管理ユニット7は、第2のサブステップ202で、流体を分配回路10の分岐に向ける電磁弁6の動作、および上述した噴霧装置5の動作を制御する。
【0052】
上に示したように、本発明によれば、噴霧装置5に向かう洗浄液の流れは、実行される洗浄操作に関連する1つまたは複数のデータ項目に基づいて、被電子制御ポンプ8によって制御および調節される。
【0053】
一例によれば、洗浄液の流れは、その光学面が洗浄されるセンサ2のタイプおよび/または数を表すパラメータ210に基づいて調節され得る。上述したように、したがって、貯蔵リザーバを出るダクト3内を循環することができる洗浄液の圧力は、洗浄されるセンサに応じて、したがって、作動されることになる電磁弁の基準に従って調節され、それにより流体が適切な噴霧装置に向かって進むことが可能となり得る。
【0054】
別の例によれば、洗浄液の流れは、洗浄液がさらされる温度220に基づいて、洗浄液の粘度の潜在的な変動を考慮に入れるように調節することができる。分配回路10の電子管理ユニット7または被電子制御ポンプ8の電子制御ユニット80は、周囲温度情報を受信し処理するように構成され、この情報の処理は、計算表を介して、洗浄されるセンサ上に噴霧される洗浄液の最適な圧力または流量を所与の温度の関数として決定することにある。標準温度条件下で4バールの洗浄液圧を必要とするセンサの場合、被電子制御ポンプ8は、このセンサが様々な温度条件下で洗浄される必要があるときに洗浄液の圧力を調節する、特に、洗浄液の圧力は温度が下がると上昇するので、洗浄液の粘度が上昇してセンサ上への噴霧が困難になるという危険性を伴う。
【0055】
別の例によれば、洗浄液の流れの調整は、車両500の移動速度230を考慮に入れて、この洗浄液が1つまたは複数の噴霧装置5によって噴霧されているときに洗浄されるセンサ2の周りの洗浄液の起こり得る分散の影響を制限するようにしてもよい。
【0056】
図2に示される例によれば、すぐ上で説明した方法は、分配回路10の1つまたは複数の電磁弁6の動作を制御する制御シーケンスを生成する追加のステップ250を含む。追加のステップ250中に生成される制御シーケンスは、洗浄要求の対象ではないセンサが使える状態であり、車両を取り囲む道路シーンに関するデータを取得するセンサの機能を実行できるかどうかを検証することを目的とする。指定したように、センサの洗浄は、この動作が続く間、センサがもはや信頼できるデータを運転支援システムに送ることができないことを意味し、洗浄されるセンサに直接隣接しているセンサが使える状態になるようにすることが適切である。本発明のこの特徴によれば、センサの運転状態の検証は、対応する電磁弁6が開状態であるか、それとも閉状態にあるかを検証することを含む。
【0057】
この追加のステップ中の1つのオプションは、すべての電磁弁の開状態または閉状態を検証するために、各電磁弁に一般要求を発行することである。
【0058】
別のオプションは、どのセンサが洗浄の要求の対象であるかに応じて、これらの要求が送られる電磁弁を対象にすることである。様々な例によれば、追加のステップ250中にその運転状態が検証される電磁弁6は、センサ2に関連する分配回路10の分岐への洗浄液の搬送を制御するものであり、センサ2は、車両500内で、実行される洗浄運転で洗浄されるセンサ2の役割と類似の役割を持つ、あるいは、センサ2の洗浄を制御するパラメータは、それらのセンサの洗浄を制御するパラメータと類似している。別の例では、追加のステップ250中にその運転状態が検証される電磁弁6は、洗浄されるセンサ2のすぐ近くに位置するセンサ2に関連する分配回路10の分岐への洗浄液の搬送を制御するものである。
【0059】
したがって、
図1を参照すると、第1のセンサ2を洗浄する要求があった場合、例えば、車両の前面に配置された電磁波を発する/受信することにより動作するLIDARタイプのセンサが分配回路10の電子管理ユニット7に送信される場合、上に定義した追加のステップ250は、例えば、前面に配置され、第1のセンサによって検出されたデータに関して冗長であるデータを取得する傾向がある他のセンサへの洗浄液の分配を制御する電磁弁6の状態を確認することにあり得る。
【0060】
言い換えれば、追加のステップ250は、一方で、本発明による方法中に洗浄操作が実行されることに関係していない噴霧装置5に向かって洗浄液が漏れるのを回避することを可能にするが、この追加ステップは、他方で、第1のセンサを洗浄する操作が安全な条件下で実行することができ、第1のセンサと同じ道路シーンの部分に関する情報を検出することができる他のセンサが完全に使える状態になるようにすることも可能にする。そうでない場合は、つまり、第1のセンサを洗浄する操作を情報消失の危険性なしに実行できない場合は、洗浄操作を実行する必要があること、および、そうするために車両を停止する必要があることを運転者または中央モジュールに支持するために、運転者または車両の自動運転を制御する中央モジュールにメッセージを送信することができる。
【0061】
これは、この車両を運転するために使用される同じ種類のデータの収集を車両制御ユニットに供給するために、同じタイプの複数のセンサ2が互いに近接して設置され得る、自動運転車両500の場合に特に有益である。同じ種類のかかるデータは、例えば、車両500の前方のシーンの、異なる視野角から撮影された画像であり得る。そのような状況では、かかる画像を取り込むセンサを洗浄する操作は、車両制御ユニットが、洗浄される1つまたは複数のセンサの近くに位置する同じ種類のセンサから来る高品質の画像を受信し続けることを有利に条件とすることが容易に理解されよう。
【0062】
本発明は、すぐ上で説明したように、したがって、本発明が及ぶ洗浄方法は、分配回路内の洗浄液の流れに関するパラメータを単に調節することにより、自動車両500の複数のセンサ2の効果的な洗浄を最適化した洗浄液消費量で可能にする。
【0063】
しかしながら、すぐ上で説明した本発明は、排他的に説明され図示された手段および構成に限定されるべきではなく、すべての同等の手段または構成、ならびにそのような手段または構成の任意の組合せにも、これらの組合せが本文書に記載されているような分配回路内の洗浄液の流れの調節をもたらすという条件で、適用される。