(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】プロペラシャフト及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B60K 17/22 20060101AFI20231107BHJP
F16D 3/84 20060101ALI20231107BHJP
F16J 3/04 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
B60K17/22 Z
F16D3/84 R
F16J3/04 C
(21)【出願番号】P 2021539201
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(86)【国際出願番号】 JP2020029219
(87)【国際公開番号】W WO2021029228
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2019148706
(32)【優先日】2019-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 晋一
(72)【発明者】
【氏名】増田 肇幸
(72)【発明者】
【氏名】石倉 健一郎
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-115999(JP,A)
【文献】実開昭62-138917(JP,U)
【文献】特開2010-112474(JP,A)
【文献】特開平07-42841(JP,A)
【文献】特開平5-87254(JP,A)
【文献】特開2009-68510(JP,A)
【文献】特開平6-341551(JP,A)
【文献】特開平7-269708(JP,A)
【文献】特開2008-45675(JP,A)
【文献】特開2016-156469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/22
F16D 3/84
F16J 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の動力源からの回転力を車両の車輪に伝達するプロペラシャフトであって、
筒状のブーツ部材であって、前記ブーツ部材の回転軸線に対する径方向において前記径方向の内側へ向かって突出した突出部と、前記径方向において前記突出部の反対側に設けられ、前記回転軸線に向かって凹んだブーツバンド締結部と、を有する前記ブーツ部材と、
前記ブーツ部材の内側に挿入された軸部材であって、前記回転軸線の方向において、前記軸部材の先端部から順に、外径が前記突出部の内径よりも大径に形成された第1外径部と、外径が前記第1外径部よりも小径に形成され、前記突出部が収容される溝部と、外径が前記第1外径部よりも大径に形成された第2外径部と、を有する前記軸部材と、
前記ブーツバンド締結部に巻き付けられるブーツバンドと、
を備え、
前記軸部材は、前記溝部の溝底部と前記第1外径部と繋がる第1接続部と、前記溝部の溝底部と前記第2外径部と繋がる第2接続部と、を有し、
前記径方向における前記回転軸線から前記第1接続部までの長さが、前記回転軸線の方向において、前記第1外径部から前記溝部の溝底部に近づくほど徐々に短く形成され、前記径方向における前記回転軸線から前記第2接続部までの長さが、前記回転軸線の方向において、前記溝部の溝底部から前記第2外径部に近づくほど徐々に長く形成され、
前記ブーツ部材は、前記第1接続部と当接する第1当接部と、前記第2接続部と当接する第2当接部と、を有し、
前記径方向において、前記回転軸線から前記第2当接部までの長さよりも前記回転軸線から前記第1当接部までの長さの方が短い、
ことを特徴とするプロペラシャフト。
【請求項2】
請求項1に記載のプロペラシャフトであって、
前記回転軸線に直交する断面から見たときに、前記溝部の溝底部と前記第1接続部の成す角度は、前記溝部の溝底部と前記第2接続部の成す角度よりも小さいことを特徴とするプロペラシャフト。
【請求項3】
請求項1に記載のプロペラシャフトであって、
前記ブーツバンドは、樹脂材料によって形成されたことを特徴とするプロペラシャフト。
【請求項4】
請求項3に記載のプロペラシャフトであって、
前記軸部材は、前記回転軸線の方向において、前記第1外径部と前記溝部の間に、前記第1外径部の外径よりも大径かつ前記第2外径部の外径よりも小径に形成された凸部を有することを特徴とするプロペラシャフト。
【請求項5】
請求項1に記載のプロペラシャフトであって、
前記ブーツバンド締結部は、前記回転軸線の方向において、前記第1外径部側に設けられた第1端部と、前記回転軸線の方向において、前記第2外径部側に設けられた第2端部と、前記径方向において、前記径方向の内側へ向かって凹んだ凹部と、を有し、前記回転軸線の方向において、前記凹部から前記第1端部までの幅である第1幅部よりも、前記凹部から前記第2端部までの幅である第2幅部の方が長いことを特徴とするプロペラシャフト。
【請求項6】
請求項1に記載のプロペラシャフトであって、
前記突出部の内周面は、前記溝部の外周面に対応する形状を有することを特徴とするプロペラシャフト。
【請求項7】
請求項1に記載のプロペラシャフトであって、
前記ブーツバンド締結部は、前記径方向において、前記径方向の内側へ向かって凹んだ第1凹部と、前記第1凹部と繋がるように設けられ、前記径方向において、前記径方向の内側へ向かって前記第1凹部よりも浅く凹んだ第2凹部と、を有することを特徴とするプロペラシャフト。
【請求項8】
請求項1に記載のプロペラシャフトであって、
前記ブーツバンド締結部は、前記ブーツバンドに向かって突出する締結部側突起部を有することを特徴とするプロペラシャフト。
【請求項9】
請求項1に記載のプロペラシャフトであって、
前記ブーツバンドは、前記ブーツバンド締結部と対向する面に、前記ブーツバンド締結部に向かって突出するバンド側突起部を有することを特徴とするプロペラシャフト。
【請求項10】
棒部材と、
前記棒部材に取り付けられる筒状のブーツ部材であって、前記ブーツ部材の回転軸線に対する径方向において前記回転軸線の方向に向かって突出した突出部と、前記径方向において前記突出部の反対側に設けられ、前記回転軸線に向かって凹んだブーツバンド締結部と、を有する前記ブーツ部材と、
前記棒部材の先端部が挿入され、前記ブーツ部材によって一部が覆われた筒状の軸部材であって、前記回転軸線の方向において、前記軸部材の先端部から順に、前記突出部の内径よりも大径に形成された第1外径部と、前記第1外径部よりも小径に形成され、前記突出部が嵌合する嵌合溝と、前記第1外径部よりも大径に形成された第2外径部と、を有する前記軸部材と、
を備え、
前記軸部材は、前記嵌合溝の溝底部と前記第1外径部と繋がる第1接続部と、前記嵌合溝の溝底部と前記第2外径部と繋がる第2接続部と、を有し、
前記径方向における前記回転軸線から前記第1接続部までの長さが、前記回転軸線の方向において、前記第1外径部から前記嵌合溝の溝底部に近づくほど徐々に短く形成され、前記径方向における前記回転軸線から前記第2接続部までの長さが、前記回転軸線の方向において、前記嵌合溝の溝底部から前記第2外径部に近づくほど徐々に長く形成され、
前記ブーツ部材は、前記第1接続部と当接する第1当接部と、前記第2接続部と当接する第2当接部と、を有し、
前記径方向において、前記回転軸線から前記第2当接部までの長さよりも前記回転軸線から前記第1当接部までの長さの方が短い、
プロペラシャフトの製造方法であって、
前記ブーツ部材を前記棒部材に取り付ける第1工程と、
前記棒部材を前記軸部材の内周部に挿入する第2工程と、
前記突出部を前記嵌合溝に嵌合する第3工程と、
を備えたことを特徴とするプロペラシャフトの製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載のプロペラシャフトの製造方法であって、
前記ブーツ部材は、ブロー成形によって形成されたことを特徴とするプロペラシャフトの製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載のプロペラシャフトの製造方法であって、
前記棒部材の外周面に、前記突出部が嵌合す
る嵌合溝が形成されたことを特徴とするプロペラシャフトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロペラシャフト及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプロペラシャフトとしては、例えば以下の特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
すなわち、このプロペラシャフトは、車両の変速機に接続される第1軸部と、車両の差動装置に接続される第2軸部と、を有し、この第1軸部と第2軸部とがスプライン嵌合をもって軸方向に相対移動可能に接続されている。そして、前記第1軸部の外周側には、ブーツ部材の一端部が、ブーツバンドを介して固定され、前記第2軸部の外周側には、ブーツ部材の他端部が、ブーツバンドを介して固定されることで、前記第1軸部と前記第2軸部の接続部が前記ブーツ部材によって液密に保護されている。具体的には、前記ブーツ部材は、各端部の内周側に突出形成された環状の突出部が前記第1、第2軸部の外周面に設けられた環状の嵌合溝に嵌合した状態で、外周側からブーツバンドによって締結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来のプロペラシャフトは、前記ブーツ部材の挿入方向において、前記第1、第2軸部の外径が、前記嵌合溝の前後で同じ大きさに設定されている。このため、前記第1、第2軸部に対して前記ブーツ部材を挿入する際、当該ブーツ部材の内径を前記突出部の突出量分だけ余分に拡げる必要が生じ、当該ブーツ部材の組み付け作業性が良くない。
【0006】
一方、前記ブーツ部材の挿入負荷を低減するため、前記嵌合溝の前後の外径を小径化することが考えられる。しかしながら、この場合、前記嵌合溝の前後の外径を小径化することで、前記突出部が前記嵌合溝を乗り越えてしまうなど、前記突出部が前記嵌合溝に嵌合し難くなり、前記第1、第2軸部を適切な外径に設定した場合とは別の観点で、組み付け作業性が悪化してしまう。
【0007】
そこで、本発明は、前記従来のプロペラシャフトの技術的課題に鑑みて案出されたものであり、軸部に対するブーツ部材の挿入作業性を向上させることができるプロペラシャフト及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、その一態様として、軸部において、嵌合溝よりも手前側(ブーツ部材の挿入方向手前側)の外径が、前記嵌合溝よりも奥側(ブーツ部材の挿入方向奥側)の外径よりも相対的に小さく設定されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、軸部に対するブーツ部材の挿入作業性を向上させることができる
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るプロペラシャフトの全体を表した半縦断面図である。
【
図2】
図1に示す第1カラー部材の半縦断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態を示す図であり、
図2のA部を拡大して表示したプロペラシャフトの部分断面図である。
【
図4】プロペラシャフトの製造方法を示す図であり、(a)は第1工程、(b)は第2工程、(c)は第3工程を表したプロペラシャフトの要部縦断面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態を示す図であり、
図2のA部拡大図に相当するプロペラシャフトの部分断面図である。
【
図6】本発明の第3実施形態を示す図であり、
図2のA部拡大図に相当するプロペラシャフトの部分断面図である。
【
図7】本発明の第4実施形態を示す図であり、
図2のA部拡大図に相当するプロペラシャフトの部分断面図である。
【
図8】本発明の第5実施形態を示す図であり、
図2のA部拡大図に相当するプロペラシャフトの部分断面図である。
【
図9】本発明の第6実施形態を示す図であり、
図2のA部拡大図に相当するプロペラシャフトの部分断面図である。
【
図10】本発明の第7実施形態を示す図であり、
図2のA部拡大図に相当するプロペラシャフトの部分断面図である。
【
図11】本発明の第8実施形態を示す図であり、
図2のA部拡大図に相当するプロペラシャフトの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るプロペラシャフトの実施形態について、図面に基づいて詳述する。なお、下記の実施形態では、当該プロペラシャフトを、従来と同様に、自動車用のプロペラシャフトについて適用したものを例示して説明する。また、以下では、説明の便宜上、
図1の左側を「前」、右側を「後」として説明すると共に、
図1の回転軸線Zに沿う方向を「軸方向」、回転軸線Zに直交する方向を「径方向」、回転軸線Z周りの方向を「周方向」として説明する。
【0012】
(プロペラシャフトの構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係るプロペラシャフトPSの全体の形態を表した、当該プロペラシャフトPSの軸方向半断面図である。
図2は、
図1に示すプロペラシャフトPSにおけるスリーブ軸2とスタブ軸3の接続部分の近傍を拡大して表示した断面図である。なお、
図2については、説明の便宜上、スリーブ軸2のみを半断面で表示してある。
【0013】
図1に示すように、プロペラシャフトPSは、車両の前方に配置される図示外の第1軸部と、車両の後方に配置される図示外の第2軸部と、の間に、車両の前後方向に沿って配置される。ここで、いわゆるFR(フロントエンジン・リアドライブ)方式の車両の場合、前記第1軸部は、車両の前方に配置され、エンジンやモータなどの駆動源から回転力が伝達される変速機(トランスミッション)の出力軸に相当し、前記第2軸部は、車両の後方に配置され、車両の車輪に回転力を伝達する差動装置(ディファレンシャル)の入力軸に相当する。
【0014】
すなわち、本実施形態に係るプロペラシャフトPSは、いわゆる1ピース構造のプロペラシャフトであって、前端側が、第1継手部材5を介して前記第1軸部に接続されると共に、後端側が、第2継手部材6を介して前記第2軸部に接続される。より具体的には、プロペラシャフトPSは、軸方向の両端部が開口する円筒状のチューブ1と、チューブ1の第1端部11に挿入される軸部材としてのスリーブ軸2と、スリーブ軸2に対して軸方向へ相対移動可能に接続されたスタブ軸3と、チューブ1の第2端部12に挿入されるカラー軸4と、を有する。
【0015】
チューブ1は、炭素繊維強化プラスチック材料(いわゆるCFRP)により、軸方向において一定の内径R1を有する円筒状に形成されている。また、このチューブ1は、第1端部11及び第2端部12の肉厚T1、T2が、一般部の肉厚T3よりも厚く形成されている。具体的には、チューブ1は、炭素繊維の配向角が異なる内周層13と外周層14の少なくとも2層以上の層で形成され、第1端部11及び第2端部12においては、後述するスリーブ軸挿入部22及びカラー軸挿入部44を圧入するため、内周層13の巻き数が多くなっている。
【0016】
スリーブ軸2は、チューブ1の第1端部11から露出し、スタブ軸3に接続されるスリーブ軸本体部21と、スリーブ軸本体部21の後端部から延出し、チューブ1の第1端部11の内部に挿入されるスリーブ軸挿入部22と、を有する。スリーブ軸本体部21とスリーブ軸挿入部22とは、所定の金属材料により一体に形成されている。スリーブ軸本体部21は、前端側に延出するスリーブ軸基部23と、スリーブ軸基部23の後端部から段差状に拡径され、スリーブ軸挿入部22に接続されるスリーブ軸フランジ部24と、を有する。スリーブ軸挿入部22は、セレーション結合により、チューブ1と一体回転可能に固定されている。
【0017】
ここで、スリーブ軸フランジ部24の外径Dxは、チューブ1の第1端部11の内周層13の内径R1よりも大きく、かつ外周層14の内径R2よりも小さく設定されている。すなわち、プロペラシャフトPSは、図示外の車両の衝突等によってプロペラシャフトPSに軸方向の圧縮荷重が入力された場合に、スリーブ軸フランジ部24によってチューブ1の第1端部11の内周層13を剥離しつつ外周層14を径方向外側に押し拡げながら、スリーブ軸本体部21がチューブ1の内部へ進入可能となっている。このような、スリーブ軸本体部21をチューブ1の内部へ潜り込ませる、いわゆるコラプス構造により、前記圧縮荷重が緩衝され、前記車両の衝突エネルギが吸収されると共に、プロペラシャフトPSが車体側へ屈曲してしまうなどの不具合を抑制可能となっている。
【0018】
また、スリーブ軸2の内周側には、後述するスタブ軸3の雄スプライン部34と嵌合することによってスタブ軸3との接続に供する雌スプライン部25が、軸方向に沿って形成されている。
【0019】
スタブ軸3は、円筒状に形成された第1筒状基部31と、第1筒状基部31の後端側に設けられ、スプライン嵌合によってスリーブ軸2に接続されるスリーブ軸側接続部32と、第1筒状基部31の前端側に設けられ、複数の第1ボルトB1によって第1継手部材5に接続される第1継手側接続部33と、を有する。第1筒状基部31とスリーブ軸側接続部32とは、所定の金属材料により一体に形成されている。また、第1筒状基部31と第1継手側接続部33とは、周知の摩擦撹拌接合によって接合されている。
【0020】
第1筒状基部31は、大径部311、中径部312及び小径部313を有し、前端側から後端側に向かって段差状に縮径するような、段差径状に形成されている。大径部311は、前端部が第1継手側接続部33に接続されている。中径部312は、大径部311に対して段差状に縮径され、大径部311と小径部313の間に設けられる。小径部313は、中径部312に対して段差状に縮径され、後端部がスリーブ軸側接続部32に接続されている。
【0021】
スリーブ軸側接続部32は、外周側に、スリーブ軸2の雌スプライン部25に嵌合可能な雄スプライン部34を有する。雄スプライン部34は、スリーブ軸側接続部32の軸方向領域の全体に、軸方向に沿って形成されている。そして、この雄スプライン部34がスリーブ軸2の雌スプライン部25に嵌合することによって、スリーブ軸2との一体回転が可能、かつスリーブ軸2に対して軸方向移動が可能となっている。
【0022】
第1継手側接続部33は、中央部に設けられる円環状の第1環状基部35と、第1環状基部35の外周側へ放射状に延出し、複数の第1ボルトB1を介して第1継手部材5に接続される複数(例えば3つ又は4つ)の第1フランジヨーク36と、を有する。第1環状基部35と第1フランジヨーク36とは、所定の金属材料により一体に形成されている。
【0023】
カラー軸4は、円筒状に形成されたカラー軸本体部41と、カラー軸本体部41の後端側に設けられ、複数の第1ボルトB1によって第2継手部材6に接続される第2継手側接続部42と、を有する。カラー軸本体部41と第2継手側接続部42とは、周知の摩擦撹拌接合によって接合されている。
【0024】
カラー軸本体部41は、チューブ1の第2端部12から露出し、第2継手側接続部42に接続される第2筒状基部43と、第2筒状基部43の前端部から延出し、チューブ1の第2端部12の内部に挿入されるカラー軸挿入部44と、を有する。第2筒状基部43とカラー軸挿入部44とは、所定の金属材料により一体に形成されている。第2筒状基部43は、後端側に延出するカラー軸基部45と、カラー軸基部45の前端部から段差状に拡径され、カラー軸挿入部44に接続されるカラー軸フランジ部46と、を有する。カラー軸挿入部44は、セレーション結合により、チューブ1と一体回転可能に固定されている。
【0025】
第2継手側接続部42は、第1継手側接続部33と同様、中央部に設けられる円環状の第2環状基部47と、第2環状基部47の外周側へ放射状に延出し、複数の第1ボルトB1を介して第2継手部材6に接続される複数(例えば3つ又は4つ)の第2フランジヨーク48と、を有する。この第2環状基部47と第2フランジヨーク48とは、所定の金属材料により一体に形成されている。そして、第2筒状基部43と第2継手側接続部42とは、周知の摩擦撹拌接合によって接合されている。
【0026】
また、カラー軸フランジ部46の外径Dxは、スリーブ軸フランジ部24と同様に、チューブ1の第2端部12の内周層13の内径R1よりも大きく、かつチューブ1の外周層14の内径R2よりも小さく設定されている。これにより、カラー軸フランジ部46によってチューブ1の第2端部12の内周層13を剥離しつつ外周層14を径方向外側に押し拡げながら、第2筒状基部43及びカラー軸フランジ部46がチューブ1の内部へと潜り込み、車両衝突時の衝突エネルギの吸収や、プロペラシャフトPSの車体側への屈曲の抑制が可能となっている。
【0027】
第1継手部材5は、円環状に形成されたラバージョイントであって、周方向に概ね等間隔に配置され、それぞれ第1継手側接続部33との接続に供する第1継手第1ボルト貫通孔51と、第1継手第1ボルト貫通孔51の周方向間に概ね等間隔に配置され、それぞれ図示外の第1軸部との接続に供する第1継手第2ボルト貫通孔52と、を有する。すなわち、第1継手第1ボルト貫通孔51を貫通する第1ボルトB1及びこれに締結される第1ナットN1を介して、第1継手側接続部33と第1継手部材5とが接続され、一体回転可能に固定される。他方、第1継手第2ボルト貫通孔52を貫通する図示外の第2ボルト及びこれに締結される図示外の第2ナットを介して、図示外の第1軸部と第1継手部材5とが接続され、一体回転可能に固定される。
【0028】
同様に、第2継手部材6も、円環状に形成されたラバージョイントであって、周方向に概ね等間隔に配置され、それぞれ第2継手側接続部42との接続に供する第2継手第1ボルト貫通孔61と、第2継手第1ボルト貫通孔61の周方向間に概ね等間隔に配置され、それぞれ図示外の第2軸部との接続に供する第2継手第2ボルト貫通孔62と、を有する。すなわち、第2継手第1ボルト貫通孔61を貫通する第1ボルトB1及びこれに締結される第1ナットN1を介して、第2継手側接続部42と第2継手部材6とが接続され、一体回転可能に固定される。他方、第2継手第2ボルト貫通孔62を貫通する図示外の第2ボルト及びこれに締結される図示外の第2ナットを介して、図示外の第2軸部と第2継手部材6とが接続され、一体回転可能に固定される。
【0029】
また、
図1、
図2に示すように、スリーブ軸2とスタブ軸3の間には、スリーブ軸2とスタブ軸3との接続部分(特にスリーブ軸2から露出した雄スプライン部34)を包囲する蛇腹円筒状のブーツ部材7が、スリーブ軸2とスタブ軸3に跨るかたちで設けられている。ブーツ部材7は、樹脂材料、例えばポリプロピレン(PP)及びエチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)をブロー成形してなるものであり、軸方向の両端部である後述する第1取付基部71及び第2取付基部72が、スリーブ軸2及びスタブ軸3の外周面に、それぞれ金属材料又は樹脂材料からなる環状のブーツバンド8によって締め付け(緊縛)固定されている。すなわち、ブーツバンド8の締め付け力(緊縛力)によって第1取付基部71及び第2取付基部72の内周面がスリーブ軸2及びスタブ軸3の外周面に密着することで、スリーブ軸2とスタブ軸3との接続部分が液密に保護されている。また、この液密に保護されたブーツ部材7の内部には、スリーブ軸2とスタブ軸3との接続部分の潤滑に供する図示外のグリスが封入されている。
【0030】
〔第1実施形態〕
図3は、
図2のA部を拡大して表示した部分拡大断面図を示している。なお、
図3では、図示の便宜上、ブーツバンド8を仮想線にて表示している。また、ブーツ部材7の取付構造は、スリーブ軸2とスタブ軸3とで同じ取付構造を有する。このため、説明の便宜上、以下では、ブーツ部材7とスリーブ軸2の取付構造についてのみ説明し、ブーツ部材7とスタブ軸3の取付構造についての説明は省略する。
【0031】
図3に示すように、ブーツ部材7は、後端部に設けられ、ブーツバンド8を介してスリーブ軸2に取り付けられる第1取付基部71と、前端部に設けられ、ブーツバンド8を介してスタブ軸3に取り付けられる第2取付基部72と、第1取付基部71と第2取付基部72の間に設けられ、軸方向に伸縮可能に形成された蛇腹部73と、を有する。ここで、第1取付基部71と第2取付基部72は、同様の構成を有するため、以下では、第1取付基部71についてのみ、具体的な構成について説明し、第2取付基部72の構成については、説明を省略する。
【0032】
第1取付基部71は、概ね円筒状を呈し、径方向において回転軸線Zの方向に向かって突出形成され、後述する溝部である嵌合溝26に嵌合可能又は収容される突出部74と、径方向において突出部74の反対側に設けられ、ブーツバンド8の締結に供するブーツバンド締結部75と、を有する。また、ブーツバンド締結部75の底部750には、径方向において回転軸線Zの方向に向かって凹む凹部76が設けられている。
【0033】
突出部74は、軸方向の断面において円弧状を呈し、第1取付基部71の全周にわたって周方向に連続する、いわゆる突条として構成され、後述する嵌合溝26に嵌合することによって、スリーブ軸2に対するブーツ部材7の軸方向の位置決めに供する。ここで、本実施形態では、突出部74は、第1取付基部71の軸方向範囲において、概ね中央位置に設けられている。すなわち、突出部74は、第1取付基部71の軸方向範囲において、突出部74の円弧面740の中心P(後述する凹部76の軸方向幅の中心P)からブーツバンド締結部75の両端部である第1端部751及び第2端部752までの距離L1,L2が概ね等しくなる位置に設けられる。
【0034】
また、突出部74の軸方向幅W1は、当該突出部74の相手側となる後述の嵌合溝26の開口部の軸方向幅W2よりも若干大きく設定されている。さらに、突出部74の内径D1は、後述するスリーブ軸2(スリーブ軸基部23)の第1外径部231の外径X1よりも若干小さく、かつ後述する嵌合溝26の外径D2よりも大きく設定されている。かかる構成から、突出部74は、後述する第1取付基部71をブーツバンド8で締結することにより、当該突出部74の円弧面740の軸方向両端部(第1、第2当接部741,742)が後述する嵌合溝26の第1、第2接続部261,262に当接して、シール作用を発揮する。また、本実施形態では、上述の寸法関係(X1<X2)から、径方向において、回転軸線Zから第2当接部742までの長さY2よりも、回転軸線Zから第1当接部741までの長さY1の方が短くなっている。
【0035】
ブーツバンド締結部75は、第1取付基部71の外周側に、径方向において回転軸線Zの方向に向かって凹み形成されたもので、第1取付基部71の全周にわたって周方向に連続する、いわゆる環状溝として構成されている。さらに、ブーツバンド締結部75は、ブーツバンド8の軸方向幅W3よりも若干大きい軸方向幅W4を有する。
【0036】
また、ブーツバンド締結部75の底部750には、突出部74の径方向反対側に、径方向の外側から内側へ(突出部74側へ)凹む凹部76が形成されている。この凹部76は、軸方向の断面において概ね矩形状に形成され、ブーツバンド締結部75の全周にわたって、周方向に連続して設けられている。そして、かかる凹部76が設けられていることにより、突出部74の近傍の剛性が低下し、ブーツバンド締結部75にブーツバンド8を締結したときに、ブーツバンド8の締め付け力(緊縛力)が突出部74へと伝わりやすく、突出部74の第1、第2当接部741,742が後述する嵌合溝26の第1、第2接続部261,262に密着可能となっている。
【0037】
一方、ブーツ部材7が取り付けられるスリーブ軸2(スリーブ軸基部23)の外周面には、突出部74が嵌合可能な嵌合溝26が、スリーブ軸基部23の外周面の全周にわたって、周方向に連続して形成されている。この嵌合溝26は、回転軸線Zに平行な溝底部260と、溝底部260の前端側に設けられ、溝底部260と後述する第1外径部231とを接続する第1接続部261と、溝底部260の後端側に設けられ、溝底部260と後述する第2外径部232とを接続する第2接続部262と、を有し、縦断面(軸方向断面)が概ね矩形状となるように形成されている。また、第1接続部261及び第2接続部262は、溝底部260に対して、傾斜状に形成されている。すなわち、第1接続部261及び第2接続部262は、第1接続部261及び第2接続部262と溝底部260とのなす角θ1,θ2が、それぞれ鈍角となるように形成されている。なお、本実施形態では、第1接続部261と溝底部260とのなす角θ1と、第2接続部262と溝底部260とのなす角θ2とは、概ね同一に設定されている。
【0038】
また、スリーブ軸2のスリーブ軸基部23は、嵌合溝26の前後、すなわち嵌合溝26よりも前端側に形成される第1外径部231と、嵌合溝26よりも後端側に形成される第2外径部232とで、異なる外径を有する。具体的には、スリーブ軸基部23では、第2外径部232の外径X2が、第1外径部231の外径X1よりも大きく設定されている。このように、スリーブ軸基部23は、スリーブ軸2に対するブーツ部材7の挿入方向において、奥側となる第2外径部232の外径X2に対し、手前側となる第1外径部231の外径X1が相対的に小さくなるように形成されている。
【0039】
ここで、第1外径部231の外径X1は、ブーツ部材7の突出部74の内径D1よりも若干大きく設定され、突出部74に対して所定の締め代を有する。これにより、スリーブ軸2にブーツ部材7を挿入したとき、突出部74が嵌合溝26の第1接続部261に引っ掛かる構成となっている。すなわち、ブーツ部材7をスリーブ軸2(スリーブ軸基部23)に挿入した状態で、ブーツ部材7自体の締め付け力(緊縛力)によって突出部74が嵌合溝26の第1接続部261に引っ掛かり、スリーブ軸2に対するブーツ部材7の軸方向の位置決めが可能となっている。これにより、ブーツ部材7をブーツバンド8によって締結する際、スリーブ軸2に対するブーツ部材7の軸方向の位置ずれが抑制され、ブーツ部材7の締結作業を容易に行うことができる。
【0040】
また、第2外径部232の外径X2は、第1外径部231の外径X1よりも大きく設定されていて、ブーツ部材7の突出部74の内径D1よりも十分に大きく設定されている。すなわち、第2外径部232の外径X2は、スリーブ軸2にブーツ部材7を挿入したとき、突出部74が嵌合溝26の第2接続部262に引っ掛かり、この第2接続部262を超えて第2外径部232に乗り上げ難い外径に設定されている。
【0041】
(プロペラシャフトの製造方法)
以下、本実施形態に係るプロペラシャフトPSの製造方法について、
図4に基づいて説明する。なお、以下では、プロペラシャフトPSの製造方法のうち、スリーブ軸2に対するスタブ軸3の接続に係る工程、換言すれば、本発明の技術的課題に係るブーツ部材7の取付に係る工程について説明する。
【0042】
図4は、プロペラシャフトPSの製造方法を表したプロペラシャフトPSの要部縦断面図であって、(a)は第1工程、(b)は第2工程、(c)は第3工程を示している。
【0043】
まず、第1工程として、
図4(a)に示すように、ブーツ部材7の第2取付基部72を、スタブ軸3(第1筒状基部31の中径部312)の外周面に取り付ける。すなわち、スタブ軸3のスリーブ軸側接続部32の後端側からブーツ部材7を挿入し、第1筒状基部31の中径部312の外周側に設けられる嵌合溝37に、ブーツ部材7の第2取付基部72の内周側に設けられた突出部74を嵌合させる。その後、ブーツ部材7の第2取付基部72の外周側に設けられたブーツバンド締結部75にブーツバンド8を締結し、当該ブーツ部材7の第2取付基部72をスタブ軸3に固定する。
【0044】
続いて、第2工程として、
図4(b)に示すように、ブーツ部材7の第2取付基部72が取り付けられたスタブ軸3のスリーブ軸側接続部32をスリーブ軸2の内周部に挿入する。すなわち、スタブ軸3のスリーブ軸側接続部32の雄スプライン部34をスリーブ軸2の雌スプライン部25に嵌合させながら、スタブ軸3のスリーブ軸側接続部32をスリーブ軸2の内周側に挿入する。
【0045】
続いて、第3工程として、
図4(c)に示すように、前記スタブ軸3のスリーブ軸側接続部32の挿入に伴い、ブーツ部材7の第1取付基部71をスリーブ軸2のスリーブ軸基部23の先端側から挿入し、当該ブーツ部材7の第1取付基部71に設けられた突出部74をスリーブ軸2の嵌合溝26に嵌合させる。その後、ブーツ部材7の第1取付基部71のブーツバンド締結部75にブーツバンド8を締結し、当該ブーツ部材7の第1取付基部71をスリーブ軸2に固定する。
【0046】
(本実施形態の作用効果)
前述のように、従来のプロペラシャフトは、ブーツ部材の挿入方向において、第1、第2軸部の外径が、嵌合溝の前後で同じ大きさに設定されている。このため、第1、第2軸部に対してブーツ部材を挿入する際に、当該ブーツ部材の内径を突出部の突出量分だけ余分に拡げる必要が生じ、組み付け作業性が良くない。
【0047】
一方、ブーツ部材の挿入負荷を低減するため、嵌合溝の前後の外径を小径化することが考えられる。しかしながら、この場合、ブーツ部材の挿入にあたり、例えば突出部が嵌合溝を乗り越えてしまうなど、突出部が嵌合溝に嵌合し難くなり、第1、第2軸部を共に適切な外径に設定した場合とは別の観点で、組み付け作業性が悪化してしまう。
【0048】
これに対して、本実施形態に係るプロペラシャフトPSでは、以下の効果が奏せられることにより、前記従来のプロペラシャフトの課題を解決することができる。
【0049】
前記プロペラシャフトPSは、車両の動力源からの回転力を車両の車輪に伝達するプロペラシャフトであって、筒状のブーツ部材であって、ブーツ部材7の回転軸線Zに対する径方向において前記径方向の内側へ向かって突出した突出部74と、前記径方向において突出部74の反対側に設けられ、回転軸線Zに向かって凹んだブーツバンド締結部75と、を有するブーツ部材7と、ブーツ部材7の内側に挿入された軸部材(スリーブ軸2)であって、回転軸線Zの方向において、軸部材(スリーブ軸2)の先端部から順に、外径X1が突出部74の内径D1よりも大径に形成された第1外径部231と、外径D2が第1外径部231よりも小径に形成され、突出部74が収容される溝部(嵌合溝26)と、外径X2が第1外径部231よりも大径に形成された第2外径部232と、を有する軸部材(スリーブ軸2)と、ブーツバンド締結部75に巻き付けられるブーツバンド8と、を備えている。
【0050】
このように、本実施形態では、従来は第2外径部232の外径X2と同じ外径に設定されていた第1外径部231の外径X1が、第2外径部232の外径X2よりも相対的に小さく設定されている。これにより、第1外径部231の外径X1と第2外径部232の外径X2との差分だけ、軸部材(スリーブ軸2)にブーツ部材7を挿入する際、突出部74の拡径量を低減することができる。その結果、従来よりも小さい拡径量でもって、突出部74を嵌合溝26に嵌合させることができ、軸部材(スリーブ軸2)に対するブーツ部材7の挿入作業性を向上させることができる。
【0051】
また、第1外径部231の外径X1が突出部74の内径D1よりも大きく設定されると共に、第2外径部232の外径X2が第1外径部231の外径X1よりも大きく設定されていることで、軸部材(スリーブ軸2)にブーツ部材7を挿入する際、突出部74を嵌合溝26内に確実に嵌合させることができる。これにより、ブーツ部材7の軸方向移動が確実に規制され、突出部74が嵌合溝26を乗り越えて第2外径部232に乗り上げてしまう不具合が抑制され、かかる観点からも、軸部材(スリーブ軸2)に対するブーツ部材7の挿入作業性を向上させることができる。
【0052】
また、本実施形態では、軸部材(スリーブ軸2)は、溝部(嵌合溝26)の溝底部260と第1外径部231と繋がる第1接続部261と、溝部(嵌合溝26)の溝底部260と第2外径部232と繋がる第2接続部262と、を有し、前記径方向における回転軸線Zから第1接続部261までの長さが、回転軸線Zの方向において、第1外径部231から溝部(嵌合溝26)の溝底部260に近づくほど徐々に短く形成され、前記径方向における回転軸線Zから第2接続部262までの長さが、回転軸線Zの方向において、溝部(嵌合溝26)の溝底部260から第2外径部232に近づくほど徐々に長く形成され、ブーツ部材7は、第1接続部261と当接する第1当接部741と、第2接続部262と当接する第2当接部742と、を有し、前記径方向において、回転軸線Zから第2当接部742までの長さよりも、回転軸線Zから第1当接部741までの長さの方が短い。
【0053】
このように、本実施形態では、ブーツ部材7の突出部74の第1、第2当接部741,742がそれぞれ溝部(嵌合溝26)の第1、第2接続部261,262と当接する構成となっている。換言すれば、ブーツ部材7の突出部74が、第1、第2当接部741,742の2点で溝部(嵌合溝26)に当接する構成となっている。これにより、溝部(嵌合溝26)内における突出部74によるシール性が向上し、その結果、内部からのグリス(図示外)の漏出や、外部からの泥水等の浸入を抑制することができる。
【0054】
また、本実施形態では、スリーブ軸2の第2外径部232が、ブーツ部材7(第1取付基部71)の突出部74の内径D1よりも大径に形成されている。
【0055】
このように、本実施形態では、スリーブ軸2の第2外径部232が、ブーツ部材7の第1取付基部71の突出部74の内径D1よりも大きい外径X2を有する。これにより、突出部74が嵌合溝26に嵌合し易くなり、嵌合溝26に対する突出部74の着座性が向上する。換言すれば、突出部74が嵌合溝26の第2接続部262に引っ掛かり易くなり、突出部74と嵌合溝26(特に第2接続部262)との密着性が向上する。その結果、突出部74と嵌合溝26との間のシール性を向上し、ブーツ部材7の第1取付基部71側からの水分の浸入を効果的に抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態に係る前記プロペラシャフトPSの製造方法としては、棒部材(スタブ軸3)と、棒部材(スタブ軸3)に取り付けられる筒状のブーツ部材7であって、ブーツ部材7の回転軸線Zに対する径方向において回転軸線Zの方向に向かって突出した突出部74と、前記径方向において突出部74の反対側に設けられ、回転軸線Zに向かって凹んだブーツバンド締結部75と、を有するブーツ部材7と、棒部材(スタブ軸3)の先端部が挿入され、ブーツ部材7によって一部が覆われた筒状の軸部材(スリーブ軸2)であって、回転軸線Zの方向において、軸部材(スリーブ軸2)の先端部から順に、突出部74の内径D1よりも大径に形成された第1外径部231と、第1外径部231よりも小径に形成され、突出部74が嵌合する嵌合溝26と、第1外径部231よりも大径に形成された第2外径部232と、を有する軸部材(スリーブ軸2)と、を備えたプロペラシャフトPSの製造方法であって、ブーツ部材7を棒部材(スタブ軸3)に取り付ける第1工程と、棒部材(スタブ軸3)を軸部材(スリーブ軸2)の内周部に挿入する第2工程と、突出部74を嵌合溝26に嵌合する第3工程と、を備えている。
【0057】
このように、本実施形態では、従来は第2外径部232の外径X2と同じ外径に設定されていた第1外径部231の外径X1が、第2外径部232の外径X2よりも相対的に小さく設定されている。これにより、第1外径部231の外径X1と第2外径部232の外径X2との差分だけ、軸部材(スリーブ軸2)にブーツ部材7を挿入する際、突出部74の拡径量を低減することができる。その結果、従来よりも小さい拡径量でもって、突出部74を嵌合溝26に嵌合させることができ、軸部材(スリーブ軸2)に対するブーツ部材7の挿入作業性を向上させることができる。
【0058】
また、第1外径部231の外径X1が突出部74の内径D1よりも大きく設定されると共に、第2外径部232の外径X2が第1外径部231の外径X1よりも大きく設定されていることで、軸部材(スリーブ軸2)にブーツ部材7を挿入する際、突出部74を嵌合溝26内に確実に嵌合させることができる。これにより、ブーツ部材7の軸方向移動が確実に規制され、突出部74が嵌合溝26を乗り越えて第2外径部232に乗り上げてしまう不具合が抑制される。かかる観点からも、軸部材(スリーブ軸2)に対するブーツ部材7の挿入作業性を向上させることができる。
【0059】
また、本実施形態に係るプロペラシャフトPSの製造方法では、ブーツ部材7は、ブロー成形によって形成されている。
【0060】
このように、本実施形態では、ブーツ部材7が、樹脂材料をブロー成形することにより形成されているため、当該ブーツ部材7の成形に係る金型がブーツ部材7の外周側のみで足り、ブーツ部材7を比較的簡易に成形できるメリットがある。これにより、プロペラシャフトPSの製造コストの削減や、生産性の向上を図ることができる。
【0061】
また、本実施形態に係るプロペラシャフトPSの製造方法では、棒部材(スタブ軸3のスリーブ軸側接続部32)の外周面に、突出部74が嵌合する嵌合溝37が形成されている。
【0062】
このように、本実施形態では、棒部材(スタブ軸3のスリーブ軸側接続部32)の外周面に、ブーツ部材7の第2取付基部72の内周側に設けられた突出部74が嵌合する嵌合溝37が設けられている。これにより、ブーツ部材7の第2取付基部72についても、第1取付基部71と同様に、棒部材(スタブ軸3のスリーブ軸側接続部32)に対するブーツ部材7の挿入作業性を向上させることができる。
【0063】
〔第2実施形態〕
図5は本発明に係るプロペラシャフトの第2実施形態を示し、前記第1実施形態に係るプロペラシャフトPSのスリーブ軸2における嵌合溝26の構成を変更したものである。なお、かかる変更点以外の基本的な構成については、前記第1実施形態と同様であるため、当該第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。また、当該実施形態の説明においては、便宜上、
図5の左側を「前」、右側を「後」として説明すると共に、
図5の回転軸線Zに沿う方向を「軸方向」、回転軸線Zに直交する方向を「径方向」、回転軸線Z周りの方向を「周方向」として説明する。
【0064】
図5は、本発明の第2実施形態に係るプロペラシャフトPSの要部拡大図であって、
図3と同様に、
図2のA部を拡大して表示したものである。
【0065】
図5に示すように、本実施形態では、ブーツ部材7の回転軸線Zに直交する第1仮想線V1を定義したとき、この第1仮想線V1と嵌合溝26の第1接続部261との成す角θ3が、第1仮想線V1と嵌合溝26の第2接続部262との成す角θ4よりも小さくなるように構成されている。換言すれば、本実施形態では、嵌合溝26の溝底部260に対する第1接続部261の傾斜角θ1が、嵌合溝26の溝底部260に対する第2接続部262の傾斜角θ2よりも大きく設定されている。
【0066】
以上のように、本実施形態では、ブーツ部材7の回転軸線Zに直交する断面から見たときに、溝部(嵌合溝26)の溝底部260と第1接続部261の成す角θ3が、溝部(嵌合溝26)の溝底部260と第2接続部262の成す角θ4よりも小さい。これにより、溝部(嵌合溝26)に対し、第1接続部261側に係るブーツ部材7の食い込み量を、第2接続部262側に係るブーツ部材7の食い込み量よりも大きくすることが可能となる。すなわち、溝部(嵌合溝26)の第2接続部262に対するブーツ部材7の突出部74の食い込み量に対して、溝部(嵌合溝26)の第1接続部261に対するブーツ部材7の突出部74の食い込み量を大きくすることが可能となる。その結果、突出部74と溝部(嵌合溝26)の第2接続部262との間のシール性に対して、突出部74と溝部(嵌合溝26)の第1接続部261との間のシール性を相対的に高めることができる。すなわち、突出部74と第2接続部262との間から溝部(嵌合溝26)内に水分が浸入してしまっても、前記相対的に高められた、突出部74と第1接続部261との間のシール性をもって、溝部(嵌合溝26)内の水分がさらに第1外径部231側へと浸入してしまうのを抑制することができる。
【0067】
〔第3実施形態〕
図6は本発明に係るプロペラシャフトの第3実施形態を示し、前記第1実施形態に係るプロペラシャフトPSのスリーブ軸2における嵌合溝26の構成を変更したものである。なお、かかる変更点以外の基本的な構成については、前記第1実施形態と同様であるため、当該第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。また、当該実施形態の説明においては、便宜上、
図6の左側を「前」、右側を「後」として説明すると共に、
図6の回転軸線Zに沿う方向を「軸方向」、回転軸線Zに直交する方向を「径方向」、回転軸線Z周りの方向を「周方向」として説明する。
【0068】
図6は、本発明の第3実施形態に係るプロペラシャフトPSの要部拡大図であって、
図3と同様に、
図2のA部を拡大して表示したものである。
【0069】
図6に示すように、本実施形態では、軸方向において、スリーブ軸2の第1外径部231と嵌合溝26との間、すなわち嵌合溝26の第1外径部231側の開口縁に、径方向外側(突出部74の反対側)へ突出する凸部27が設けられている。この凸部27は、第1外径部231の外径X1よりも大径であって、かつ第2外径部232の外径X2よりも小径な外径X3に形成されている。
【0070】
以上のように、本実施形態では、軸部材(スリーブ軸2)は、回転軸線Zの方向において、第1外径部231と溝部(嵌合溝26)の間に、第1外径部231の外径X1よりも大径かつ第2外径部232の外径X2よりも小径に形成された凸部27を有する。この凸部27が設けられていることで、突出部74が、溝部(嵌合溝26)の第1外径部231側の開口縁に、より一層強く当接することになる。これにより、突出部74と溝部(嵌合溝26)の第1接続部261との間の密着性が向上し、突出部74と溝部(嵌合溝26)との間のシール性を向上させることができる。その結果、ブーツ部材7の第1取付基部71側から溝部(嵌合溝26)内に浸入した水分の第1外径部231側への浸入を、より効果的に抑制することができる。
【0071】
〔第4実施形態〕
図7は本発明に係るプロペラシャフトの第4実施形態を示し、前記第1実施形態に係るプロペラシャフトPSのブーツバンド締結部75における凹部76の配置を変更したものである。なお、かかる変更点以外の基本的な構成については、前記第1実施形態と同様であるため、当該第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。また、当該実施形態の説明においては、便宜上、
図7の左側を「前」、右側を「後」として説明すると共に、
図7の回転軸線Zに沿う方向を「軸方向」、回転軸線Zに直交する方向を「径方向」、回転軸線Z周りの方向を「周方向」として説明する。
【0072】
図7は、本発明の第4実施形態に係るプロペラシャフトPSの要部拡大図であって、
図3と同様に、
図2のA部を拡大して表示したものである。
【0073】
図7に示すように、本実施形態では、突出部74が、軸方向において、蛇腹部73側(第1取付基部71の開口部と反対側)に偏倚して配置されている。すなわち、突出部74は、第1取付基部71の軸方向範囲において、突出部74の円弧面740の中心P(凹部76の軸方向幅の中心P)からブーツバンド締結部75の第2端部752までの距離のL2が、中心Pからブーツバンド締結部75の第1端部751までの距離L1よりも大きくなる位置に設けられている。
【0074】
以上のように、本実施形態では、ブーツバンド締結部75は、回転軸線Zの方向において、第1外径部231側に設けられた第1端部751と、回転軸線Zの方向において、第2外径部232側に設けられた第2端部752と、前記径方向において、前記径方向の内側へ向かって凹んだ凹部76と、を有し、回転軸線Zの方向において、凹部76から第1端部751までの幅である第1幅部(中心Pからブーツバンド締結部75の第1端部751までの距離L1)よりも、凹部76から第2端部752までの幅である第2幅部(中心Pからブーツバンド締結部75の第2端部752までの距離L2)の方が長い。
【0075】
このように、本実施形態では、突出部74が蛇腹部73側に偏倚して設けられていて、凹部76からブーツバンド締結部75の第1端部751までの距離L1よりも凹部76からブーツバンド締結部75の第2端部752までの距離L2が大きく設定されている。これにより、第2外径部232におけるブーツ部材7(第1取付基部71)との当接面積が増大し、当該第1取付基部71と第2外径部232との密着性が向上する。その結果、ブーツ部材7の第1取付基部71の開口部からの水分の浸入を、より効果的に抑制することができる。
【0076】
〔第5実施形態〕
図8は本発明に係るプロペラシャフトの第5実施形態を示し、前記第1実施形態に係るプロペラシャフトPSのブーツ部材7の突出部74の構成を変更したものである。なお、かかる変更点以外の基本的な構成については、前記第1実施形態と同様であるため、当該第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。また、当該実施形態の説明においては、便宜上、
図8の左側を「前」、右側を「後」として説明すると共に、
図8の回転軸線Zに沿う方向を「軸方向」、回転軸線Zに直交する方向を「径方向」、回転軸線Z周りの方向を「周方向」として説明する。
【0077】
図8は、本発明の第5実施形態に係るプロペラシャフトPSの要部拡大図であって、
図3と同様に、
図2のA部を拡大して表示したものである。
【0078】
図8に示すように、本実施形態では、ブーツ部材7の突出部74の内周面に相当する突出部74の外面が、スリーブ軸2の嵌合溝26の外周面に相当する嵌合溝26の内面に対応する形状、すなわち嵌合溝26に密着可能な相似形に形成されている。
【0079】
以上のように、本実施形態では、突出部74の内周面は、溝部(嵌合溝26)の外周面に対応する形状を有する。これにより、突出部74の内周面に相当する当該突出部74の外面のほぼ全体を、溝部(嵌合溝26)の内面に相当する当該溝部(嵌合溝26)の外周面に密着させることが可能となる。その結果、突出部74と溝部(嵌合溝26)との間のシール性を、容易かつ確実に高めることができる。
【0080】
さらに、突出部74の内周面に相当する当該突出部74の外面が、溝部(嵌合溝26)の外周面に相当する当該溝部(嵌合溝26)の内面に対応することで、突出部74が溝部(嵌合溝26)の開口縁など、溝部(嵌合溝26)の近傍に形成される角部と当接するのを抑制することができる。その結果、ブーツ部材7の耐久性(寿命)が向上し、突出部74による良好なシール性を長く維持することができる。
【0081】
〔第6実施形態〕
図9は本発明に係るプロペラシャフトの第6実施形態を示し、前記第1実施形態に係るプロペラシャフトPSのブーツ部材7のブーツバンド締結部75の構成を変更したものである。なお、かかる変更点以外の基本的な構成については、前記第1実施形態と同様であるため、当該第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。また、当該実施形態の説明においては、便宜上、
図9の左側を「前」、右側を「後」として説明すると共に、
図9の回転軸線Zに沿う方向を「軸方向」、回転軸線Zに直交する方向を「径方向」、回転軸線Z周りの方向を「周方向」として説明する。
【0082】
図9は、本発明の第6実施形態に係るプロペラシャフトPSの要部拡大図であって、
図3と同様に、
図2のA部を拡大して表示したものである。
【0083】
図9に示すように、本実施形態では、ブーツバンド締結部75の底部750には、凹部76が第2端部752側へ向かって階段状に形成されている。すなわち、ブーツバンド締結部75の底部750は、軸方向の中央位置に設けられ、前記第1実施形態の凹部76に相当する第1凹部76と、第1凹部76の第2端部752側に隣接して設けられ、第1凹部76の深さDP1よりも浅い深さDP2を有する第2凹部77と、を有する。そして、この第1、第2凹部76,77を設けることで、突出部74の後端側(第1取付基部71の開口部側)が、前端側(蛇腹部73側)に対して、相対的に緩やかな傾斜状に形成されている。換言すれば、突出部74の後端側(第1取付基部71側)における突出部74の外面から回転軸線Zまでの距離Lxの増大率が、突出部74の前端側(蛇腹部73側)における突出部74の外面から回転軸線Zまでの距離Lxの増大率よりも小さくなるように構成されている。
【0084】
以上のように、本実施形態では、ブーツバンド締結部75は、前記径方向において、前記径方向の内側へ向かって凹んだ第1凹部76と、第1凹部76と繋がるように設けられ、前記径方向において、前記径方向の内側へ向かって第1凹部76よりも浅く凹んだ第2凹部77と、を有する。このように、第1、第2凹部76,77からなる階段状の凹部が設けられることで、ブーツ部材7の挿入側に位置する突出部74の傾斜を、より緩やかに形成することが可能となる。これにより、軸部材(スリーブ軸2)にブーツ部材7を挿入する際の突出部74による挿入抵抗を低減でき、軸部材(スリーブ軸2)に対するブーツ部材7の挿入作業性をさらに向上させることができる。
【0085】
〔第7実施形態〕
図10は本発明に係るプロペラシャフトの第7実施形態を示し、前記第1実施形態に係るプロペラシャフトPSのブーツ部材7のブーツバンド締結部75の構成を変更したものである。なお、かかる変更点以外の基本的な構成については、前記第1実施形態と同様であるため、当該第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。また、当該実施形態の説明においては、便宜上、
図10の左側を「前」、右側を「後」として説明すると共に、
図10の回転軸線Zに沿う方向を「軸方向」、回転軸線Zに直交する方向を「径方向」、回転軸線Z周りの方向を「周方向」として説明する。
【0086】
図10は、本発明の第7実施形態に係るプロペラシャフトPSの要部拡大図であって、
図3と同様に、
図2のA部を拡大して表示したものであり、(a)はブーツバンド8の締結前、(b)はブーツバンド8の締結後の状態を示している。
【0087】
図10(a)に示すように、本実施形態では、ブーツバンド締結部75の底部750に、ブーツバンド8を締結する前のブーツ部材7の自由状態において径方向の外側(ブーツバンド8側)へ向かって突出する締結部側突起部78が、ブーツ部材7の第1取付基部71と一体に設けられている。締結部側突起部78は、ブーツバンド締結部75の底部750において嵌合溝26の第1外径部231側の開口縁部に設けられたものであり、軸方向の断面(縦断面)が円弧状に形成されると共に、周方向に沿って連続して形成された環状の突起である。
【0088】
そして、
図10(b)に示すように、第1取付基部71のブーツバンド締結部75にブーツバンド8を締結させることで、このブーツバンド8の締め付け力(緊縛力)によって、締結部側突起部78が潰れ変形する。すなわち、この締結部側突起部78の潰れ変形に基づく反力によって、ブーツバンド8の締め付け力(緊縛力)を向上させることが可能となっている。
【0089】
以上のように、本実施形態では、ブーツバンド締結部75は、ブーツバンド8に向かって突出する締結部側突起部78を有する。
【0090】
このように、ブーツバンド締結部75に締結部側突起部78が設けられていることにより、ブーツ部材7の第1取付基部71をブーツバンド8によって締結した際、締結部側突起部78の潰れ変形により発生するブーツ部材7(ブーツバンド締結部75)の反力に基づいて、ブーツバンド8による締め付け力(緊縛力)を増大させることができる。その結果、ブーツ部材7の第1取付基部71におけるシール性をさらに向上させることができる。
【0091】
また、本実施形態では、締結部側突起部78が、ブーツバンド締結部75の底部750における嵌合溝26の第1外径部231側の開口縁部に設けられている。これにより、とりわけ、第1取付基部71と第1外径部231との間のシール性を向上させることができ、第1取付基部71の開口部側から浸入した水分を、より効果的に堰き止めることができる。
【0092】
さらには、締結部側突起部78が、ブーツバンド締結部75の底部750における嵌合溝26の第1外径部231側の開口縁部に設けられていることで、ブーツバンド8の締め付け力(緊縛力)が締結部側突起部78を介して突出部74に一層大きく作用する。これにより、かかる観点からも、第1取付基部71と第1外径部231との間のシール性が向上し、第1取付基部71の開口部側から浸入した水分を、より効果的に堰き止めることができる。
【0093】
〔第8実施形態〕
図11は本発明に係るプロペラシャフトの第8実施形態を示し、前記第1実施形態に係るプロペラシャフトPSのブーツバンド8の構成を変更したものである。なお、かかる変更点以外の基本的な構成については、前記第1実施形態と同様であるため、当該第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。また、当該実施形態の説明においては、便宜上、
図11の左側を「前」、右側を「後」として説明すると共に、
図11の回転軸線Zに沿う方向を「軸方向」、回転軸線Zに直交する方向を「径方向」、回転軸線Z周りの方向を「周方向」として説明する。
【0094】
図11は、本発明の第8実施形態に係るプロペラシャフトPSの要部拡大図であって、
図3と同様に、
図2のA部を拡大して表示したものである。
【0095】
図11に示すように、本実施形態では、ブーツバンド8のブーツバンド締結部75と対向する面に、径方向の内側(ブーツバンド締結部75側)へ向かって突出するバンド側突起部81が、ブーツバンド8と一体に設けられている。バンド側突起部81は、ブーツバンド8の内周面において、嵌合溝26の第1外径部231側の開口縁部と対向する軸方向位置に設けられたものであり、軸方向の断面(縦断面)が円弧状に形成されると共に、周方向に沿って連続して形成された環状の突起である。
【0096】
そして、同図に示すように、第1取付基部71のブーツバンド締結部75にブーツバンド8を締結させることにより、バンド側突起部81がブーツバンド締結部75の底部750に食い込むことになる。すなわち、このバンド側突起部81の食い込みに基づいてブーツバンド締結部75に発生する反力によって、ブーツバンド8の締め付け力(緊縛力)を向上させることが可能となっている。
【0097】
以上のように、本実施形態では、ブーツバンド8は、ブーツバンド締結部75と対向する面に、ブーツバンド締結部75に向かって突出するバンド側突起部81を有する。
【0098】
すなわち、ブーツバンド8の内周面にバンド側突起部81が設けられていることにより、ブーツ部材7の第1取付基部71をブーツバンド8によって締結した際、バンド側突起部81の食い込みに基づき、ブーツバンド8による締め付け力(緊縛力)を増大させることができる。その結果、ブーツ部材7の第1取付基部71におけるシール性をさらに向上させることができる。
【0099】
また、本実施形態では、バンド側突起部81が、ブーツバンド締結部75の底部750における嵌合溝26の第1外径部231側の開口縁部と対向する軸方向位置に設けられている。これにより、とりわけ、第1取付基部71と第1外径部231との間のシール性を向上させることができ、第1取付基部71の開口部側から浸入した水分を、より効果的に堰き止めることができる。
【0100】
さらには、バンド側突起部81が、ブーツバンド締結部75の底部750における嵌合溝26の第1外径部231側の開口縁部と対向する軸方向位置に設けられていることで、ブーツバンド8の締め付け力(緊縛力)がバンド側突起部81を介して突出部74に一層大きく作用する。これにより、かかる観点からも、第1取付基部71と第1外径部231との間のシール性が向上し、第1取付基部71の開口部側から浸入した水分を、より効果的に堰き止めることができる。
【0101】
本発明は、前記実施形態で例示した構成や態様に限定されるものではなく、前述した本発明の作用効果を奏し得るような形態であれば、適用対象の仕様やコスト等に応じて自由に変更可能である。
【0102】
例えば、前記実施形態では、前記図示外の第1軸部を車両の変速機の出力軸とし、前記図示外の第2軸部を車両の差動装置の入力軸としたものを例示したが、その逆であってもよい。
【0103】
また、前記変速機が駆動輪(後輪)側に設けられた車両の場合は、前記第1軸部はエンジンの出力軸、前記第2軸部は変速機の入力軸としてもよく、また、その逆であってもよい。
【0104】
また、前記変速機の代わりに電動モータを無段減速機として使用する車両に対しても適用することができる。
【0105】
さらに、前記実施形態は、ブーツ部材7のうち第1取付基部71側を中心に、本発明に係る軸部材をスリーブ軸2とした、ブーツ部材7の第1取付基部71をスリーブ軸2に挿入して取り付ける構造について例示したものである。換言すれば、前記各実施形態に係るブーツ部材7の取り付け構造は、本発明に係る軸部材をスタブ軸3として、ブーツ部材7の第2取付基部72側にも同様に適用することができる。
【0106】
以上説明した実施形態等に基づくプロペラシャフトとしては、例えば以下に述べる態様のものが考えられる。
【0107】
すなわち、当該プロペラシャフトは、その1つの態様において、車両の動力源からの回転力を車両の車輪に伝達するプロペラシャフトであって、筒状のブーツ部材であって、前記ブーツ部材の回転軸線に対する径方向において前記径方向の内側へ向かって突出した突出部と、前記径方向において前記突出部の反対側に設けられ、前記回転軸線に向かって凹んだブーツバンド締結部と、を有する前記ブーツ部材と、前記ブーツ部材の内側に挿入された軸部材であって、前記回転軸線の方向において、前記軸部材の先端部から順に、外径が前記突出部の内径よりも大径に形成された第1外径部と、外径が前記第1外径部よりも小径に形成され、前記突出部が収容される溝部と、外径が前記第1外径部よりも大径に形成された第2外径部と、を有する前記軸部材と、前記ブーツバンド締結部に巻き付けられるブーツバンドと、を備えている。
【0108】
前記プロペラシャフトの好ましい態様において、前記軸部材は、前記溝部の溝底部と前記第1外径部と繋がる第1接続部と、前記溝部の溝底部と前記第2外径部と繋がる第2接続部と、を有し、前記径方向における前記回転軸線から前記第1接続部までの長さが、前記回転軸線の方向において、前記第1外径部から前記溝部の溝底部に近づくほど徐々に短く形成され、前記径方向における前記回転軸線から前記第2接続部までの長さが、前記回転軸線の方向において、前記溝部の溝底部から前記第2外径部に近づくほど徐々に長く形成され、前記ブーツ部材は、前記第1接続部と当接する第1当接部と、前記第2接続部と当接する第2当接部と、を有し、前記径方向において、前記回転軸線から前記第2当接部までの長さよりも、前記回転軸線から前記第1当接部までの長さの方が短い。
【0109】
別の好ましい態様では、前記プロペラシャフトの態様のいずれかにおいて、前記回転軸線に直交する断面から見たときに、前記溝部の溝底部と前記第1接続部の成す角度は、前記溝部の溝底部と前記第2接続部の成す角度よりも小さい。
【0110】
さらに別の好ましい態様では、前記プロペラシャフトの態様のいずれかにおいて、前記ブーツバンドは、樹脂材料によって形成されている。
【0111】
さらに別の好ましい態様では、前記プロペラシャフトの態様のいずれかにおいて、前記軸部材は、前記回転軸線の方向において、前記第1外径部と前記溝部の間に、前記第1外径部の外径よりも大径かつ前記第2外径部の外径よりも小径に形成された凸部を有する。
【0112】
さらに別の好ましい態様では、前記プロペラシャフトの態様のいずれかにおいて、前記ブーツバンド締結部は、前記回転軸線の方向において、前記第1外径部側に設けられた第1端部と、前記回転軸線の方向において、前記第2外径部側に設けられた第2端部と、前記径方向において、前記径方向の内側へ向かって凹んだ凹部と、を有し、前記回転軸線の方向において、前記凹部から前記第1端部までの幅である第1幅部よりも、前記凹部から前記第2端部までの幅である第2幅部の方が長い。
【0113】
さらに別の好ましい態様では、前記プロペラシャフトの態様のいずれかにおいて、前記突出部の内周面は、前記溝部の外周面に対応する形状を有する。
【0114】
さらに別の好ましい態様では、前記プロペラシャフトの態様のいずれかにおいて、前記ブーツバンド締結部は、前記径方向において、前記径方向の内側へ向かって凹んだ第1凹部と、前記第1凹部と繋がるように設けられ、前記径方向において、前記径方向の内側へ向かって前記第1凹部よりも浅く凹んだ第2凹部と、を有する。
【0115】
さらに別の好ましい態様では、前記プロペラシャフトの態様のいずれかにおいて、前記ブーツバンド締結部は、前記ブーツバンドに向かって突出する締結部側突起部を有する。
【0116】
さらに別の好ましい態様では、前記プロペラシャフトの態様のいずれかにおいて、前記ブーツバンドは、前記ブーツバンド締結部と対向する面に、前記ブーツバンド締結部に向かって突出するバンド側突起部を有する。
【0117】
以上説明した実施形態等に基づくプロペラシャフトの製造方法としては、例えば以下に述べる態様のものが考えられる。
【0118】
すなわち、当該プロペラシャフトの製造方法は、その1つの態様において、棒部材と、前記棒部材に取り付けられる筒状のブーツ部材であって、前記ブーツ部材の回転軸線に対する径方向において前記回転軸線の方向に向かって突出した突出部と、前記径方向において前記突出部の反対側に設けられ、前記回転軸線に向かって凹んだブーツバンド締結部と、を有する前記ブーツ部材と、前記棒部材の先端部が挿入され、前記ブーツ部材によって一部が覆われた筒状の軸部材であって、前記回転軸線の方向において、前記軸部材の先端部から順に、前記突出部の内径よりも大径に形成された第1外径部と、前記第1外径部よりも小径に形成され、前記突出部が嵌合する嵌合溝と、前記第1外径部よりも大径に形成された第2外径部と、を有する前記軸部材と、を備えたプロペラシャフトの製造方法であって、前記ブーツ部材を前記棒部材に取り付ける第1工程と、前記棒部材を前記軸部材の内周部に挿入する第2工程と、前記突出部を前記嵌合溝に嵌合する第3工程と、を備えている。
【0119】
前記プロペラシャフトの製造方法の好ましい態様において、前記ブーツ部材は、ブロー成形によって形成されている。
【0120】
別の好ましい態様では、前記プロペラシャフトの製造方法の態様のいずれかにおいて、前記棒部材の外周面に、前記突出部が嵌合する前記嵌合溝が形成されている。