(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】グルコラファニンを含有する組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7028 20060101AFI20231107BHJP
A61K 36/31 20060101ALI20231107BHJP
A61K 38/47 20060101ALI20231107BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231107BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231107BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20231107BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20231107BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20231107BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20231107BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20231107BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20231107BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20231107BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20231107BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20231107BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20231107BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20231107BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20231107BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
A61K31/7028
A61K36/31
A61K38/47
A61P43/00
A61P35/00
A61P3/10
A61P9/00
A61P31/04
A61P25/24
A61P25/00
A61P25/28
A61P11/00
A61K47/22
A61K47/02
A61K9/14
A61K9/16
A61K9/20
A61K9/48
(21)【出願番号】P 2021566266
(86)(22)【出願日】2019-06-11
(86)【国際出願番号】 CN2019090681
(87)【国際公開番号】W WO2020224027
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2021-11-05
(31)【優先権主張番号】201910377899.1
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521486491
【氏名又は名称】シェンジェン・フーシャン・バイオテック・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シャオロン・リ
(72)【発明者】
【氏名】ジペン・チュー
(72)【発明者】
【氏名】リグイ・デン
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102011008478(DE,A1)
【文献】国際公開第2014/060509(WO,A1)
【文献】特表2012-500822(JP,A)
【文献】特表2014-506597(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0182751(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105017343(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/7028
A61K 9/00-9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 36/00-36/9068
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分:
1)
ブロッコリーの水性抽出物である、グルコラファニンを提供する成分I;
2) ミロシナーゼを提供する成分II;及び
3) 塩基性塩化合物
を含み、
塩基性塩化合物が、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、ピロリン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、クエン酸カリウム及びそれらの混合物からなる群から選択される、固体の形態の組成物。
【請求項2】
さらにアスコルビン酸を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分I、成分II及び塩基性塩化合物の質量比が、10~80:1~80:0.1~1である、請求項
1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
粉末、顆粒、カプセル又は錠剤の調製物の形態である、請求項
1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
成分Iが、ブロッコリーの種子
の水性抽出
物である、請求項
1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
成分IIが、セイヨウワサビ、ダイコン、ケール
、及びその抽出物からなる群から選択される、請求項
1又は2に記載の組成物。
【請求項7】
グルコラファニンによって防止及び/又は処置することができる疾患又は障害の防止及び/又は処置
における使用のため
の請求項
1又は2に記載の組成
物であって、グルコラファニンによって防止及び/又は処置することができる疾患又は障害が、がん、糖尿病、心血管疾患、ヘリコバクターピロリ感染、自閉症、統合失調症、うつ病、アルツハイマー病及び肺線維症からなる群から選択される、組成物。
【請求項8】
グルコラファニンをスルフォラファンにin vitroで変換する方法であって、
1) 請求
項1又は2に記載の組成物を提供する工程、及び
2) 前記組成物を、水又は水溶液と混合する工程
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年5月8日に提出され、「グルコラファニンを含有する組成物及びその使用」と題された、中国特許出願出願番号第201910377899.1号の優先権を主張し、その開示は、参照により本明細書に組込まれる。
【0002】
本発明は、バイオ医薬品の分野、特にグルコラファニンを含む組成物に属し、グルコラファニンを使用することによって防止及び/又は処置することができる疾患又は障害を防止及び/又は処置するための生成物の製造における、上記組成物の使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
世界保健機構の2014年の年次報告によると、がんは、世界中で罹患及び死亡の主な原因であり、人々の生命及び健康にとって大きな脅威をもたらし、社会開発に重い経済的負担をもたらしている。がんと闘う長いプロセスにおいて、がんの化学的予防の概念が1976年に提案され、それは、天然又は合成化学物質を使用して、がんの進展を防止、遅延又は反転する戦略を指す。
【0004】
化学名1-イソチオシアネート-4-メタンスルホニルブタン(1-isothiocyanate-4-methanesulfonylbutane)を有し、イソチオシアネートに属するスルフォラファン(SFN)は、がんを防止する能力を有する、John Hopkings大学のPaul Talalayによってブロッコリーから発見された、生物学的に活性な物質である。SFNは、今日までに野菜で発見された最も強力な抗がん成分である。スルフォラファンの分子メカニズム及び細胞実験の結果は、スルフォラファンが、第I相酵素代謝産物又は外来物質の代謝的解毒に関する第II相酵素活性を制御することによって、がんの化学的予防として機能することを更に示す(Myzak MC, Dashwood RH. Cancer Lett., 2006, 233:208-18.)。スルフォラファンは、Nrf2 (NF-E2関連因子2(NF-E2 related factor 2)、細胞酸化ストレスを制御する転写因子)の誘導物質であることが知られている。主な作用機序は、Nrf2シグナル経路の活性化及び第II相酵素(NQO1、グルタチオンチオールトランスフェラーゼ、ガンマグルタミルシステインシンテターゼ、グルクロニルトランスフェラーゼ等)発現の誘導、及び抗酸化応答エレメントの制御等である。先行技術では、例えば胃潰瘍及びヘリコバクターピロリ感染に対する化学保護剤としての、スルフォラファン及びその前駆体化合物グルコラファニンの様々な活性及び効果が開示されている(CN1935003A; CN1170472C; CN101208079B)。Nrf2は、多くの解毒酵素及び抗酸化酵素の発現を制御する転写因子であることが知られている。スルフォラファン及びグルコラファニンは、グラム陽性細菌及びグラム陰性細菌並びに酵母に対する抗微生物活性を有することが知られている。さらに、それらは、(マウスモデルにおいて)パーキンソン病に対する保護効果を発揮することが示されており、詳細には、利尿特性、抗貧血特性及び緩下特性も有する。スルフォラファンの作用機序の分子的基礎調査は、スルフォラファン及びグルコラファニンが、第II相解毒酵素を刺激することによって抗酸化剤として間接的に作用することを示す。さらに、スルフォラファン化合物であるスルフォラファン及びグル
コラファニンは、紫外線放射保護を有し、それによって日焼け、ROS(活性酸素種)によって引き起こされる分解、及び皮膚がんを避けることが示されている(Talalay P; Fahey JW; Healy ZR; Wehage SL; Benedict AL; Min C.; Dinkova-Kostova AT PNAS, 2007, 104, 17500-17505; CN104284885B)。因子Nrf2は、成長因子制御、シグナリング及び組織修復(特に、酸化ストレス誘導肝再生)において重要な役割を果たすことが近年示された(Beyer T.; Xu W.; Teupser D.; Keller U.; Bugnon P.; Hildt E.; Thiery J.; Yuet Wai K.; Werner S. The EMBO Journal, 2008, 27, 212-223)。
【0005】
要約すると、上記のメカニズムに基づくと、イソチオシアネートとしてのスルフォラファンは、第II相酵素制御及びNrf2活性化と関連する様々な活性及び機能を有することが見出され、確認されている。研究の深化により、がんの化学的予防の分野におけるスルフォラファンの役割に加えて、糖尿病、心血管疾患、ヘリコバクターピロリ感染、自閉症、統合失調症、うつ病及びアルツハイマー病を含む多くのその他の疾患における予防的及び/又は治療的効果を有することが見出され、動物及び臨床試験で確認されている。例えば、スルフォラファンは、2型糖尿病の患者における肝グルコース産生を減少させ、血糖コントロールを向上させることができ(Axelsson AS, Tubbs E, Mecham B, et al. Sci Transl Med., 2017, 9 (394));血管炎症を低減し、初代上皮細胞への単球のTNF-a誘導性接着を防止することができ(Nallasamy P, Si H, Babu PV, et al. J Nutr Biochem., 2014, 25(8): 824-33.);マウス及びヒトの胃におけるH.ピロリのコロニー形成を阻害し、感染誘導性の胃炎を低減することができ(Yanaka A, Fahey JW, Fukumoto A, et al. Cancer Prev Res (Phila)., 2009, 2(4): 353-60.);臨床試験において、酸化ストレス、低い抗酸化能、阻害されたグルタチオン合成、低減されたミトコンドリアの機能及び酸化的リン酸化、増強された脂質過酸化並びに神経炎症を含む、自閉症に関連する異常症状を反転させることができる(Singh K, Connors SL, Macklin EA, et al. Proc Natl Acad Sci USA, 2014, 111(43): 15550-5.);統合失調症の患者における認知機能を向上させることができる(Shiina A, Kanahara N, Sasaki T, et al. Clin Psychopharmacol Neurosci., 2015, 13(1): 62-7.)。スルフォラファンが豊富であるブロッコリースプラウトは、うつ病に対する予防効果を有する(Zhang JC, Yao W, Dong C, et al. J Nutr Biochem., 2017, 39: 134-144.)。スルフォラファンの投与は、Y迷路及び受動回避行動試験において、アミロイドβタンパク質(Aβ)によって誘導された急性ADマウスモデルの認知機能を向上することができる(Kim HV, Kim HY, Ehrlich HY, et al. Amyloid., 2013, 20(1): 7-12.)。さらに、Han Liらは、Nrf2経路を介した肺線維症に対するスルフォラファンの効果を報告した(Han Li, Jiang Tao, Chinese Journal of New Drugs and Clinical Medicine, 2016, No. 12)。
【0006】
アブラナ科植物は、スルフォラファン及びその前駆体化合物グルコラファニンの主な供給源であることが知られている。ブロッコリーは、スルフォラファン及びその前駆体化合物であるグルコラファニンを提供する、好ましいアブラナ科の植物である。ブロッコリーは、アブラナ科アブラナ属(Brassicaceae Brassica)植物である。グルコラファニン含有量は、ブロッコリーの種及び実生(芽)に比較的より高いことが知られている。そうであったとしても、ブロッコリーを食べることによって有効量のスルフォラファンを摂取することは非現実的である。従って、ブロッコリーを抽出して、その抽出物を介して有効な生物学的効力を達成することが必要である。
【0007】
一方で、ブロッコリーは、生物学的に活性でなく、活性なスルフォラファンに変換するために植物に含まれるグルコラファニンを分解するミロシナーゼを必要とする、スルフォラファンの前駆体、すなわちグルコラファニンを含む。ミロシナーゼは、主にアブラナ科植物で見出される。特定の条件下において、ミロシナーゼは、グルコラファニンを分解して、生物学的に活性なイソチオシアネートを含む生成物を産生する。しかしながら、本発明者らは、ミロシナーゼを使用することによって、ブロッコリー中のグルコラファニンを前もってスルフォラファンに変換したとしても、生成物中のスルフォラファンは、酸素及び熱に不安定であるので、保存及び使用することが難しいことを見出しました。
【0008】
本発明者らは、原材料としてのミロシナーゼ及びグルコラファニンを固体形態で別々に提供し、そのプレミックスを提供した場合、保管の間の酵素によるグルコラファニンの分解を避けることができることを見出した。水を添加後及び/又は経口投与後、酵素の分解は溶液環境中で達成され、スルフォラファンの効果的な吸収が達成され得る。
【0009】
しかしながら、研究の過程の間において、保管及び配置の間の固体形態で存在する(ブロッコリー及び/又はそれらの抽出物の形態中の原材料を含む)原材料としてのミロシナーゼ及びグルコラファニンの混合物に関してでさえ、グルコラファニンの含有量の減少という形で表され、生成物の質に影響を与える、生成物の外観の変色及び苦味等の問題も引き起こす、安定性の問題がまだ存在することは、予想外であった。
【0010】
従って、グルコラファニン及びミロシナーゼを含む組成物の安定性の問題を克服する必要性、並びに満足な質を有する、グルコラファニン及びミロシナーゼを含む安定な組成物を提供する必要性が、本分野において依然として存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、グルコラファニン及びミロシナーゼを含む組成物に塩基性塩化合物を添加した場合、外観及び味の安定性を維持しつつ、組成物の安定性がよく向上させることができることを、研究において、予想外にも見出した。
【0012】
この発見に基づいて、本発明の第一の態様において、以下の成分:
1) グルコラファニンを提供する成分I;
2) ミロシナーゼを提供する成分II;及び
3) 塩基性塩化合物
を含む組成物を提供する。
【0013】
本発明において、グルコラファニンを提供する成分Iは、グルコラファニン化合物の供給源を提供することができる任意の物質又は原材料であり得る。好ましくは、グルコラファニンを提供する成分Iは、アブラナ科の植物、その抽出物及びその混合物からなる群から選択される。アブラナ科の植物は、好ましくは、ブロッコリー、カリフラワー、赤キャベツ、芽キャベツ又はキャベツからなる群から選択され、ブロッコリーが特に好ましい。アブラナ科の植物は、植物の全体又は一部、例えば、植物全体、その地上部、球根(flower ball)、実生、種子又はそれらの組合せであってもよい。グルコラファニンを提供する成分Iはまた、アブラナ科の植物の抽出物、例えば、溶媒抽出物、好ましくは、水性抽出物、アルコール抽出物、水-アルコール抽出物であってもよい。アブラナ科の植物の植物組織、抽出物及びそれらの混合物に加えて、本発明のグルコラファニンを提供する成分Iは、化学合成された、半化学合成された、及び/又は酵素的に合成されたグルコラファニンをさらに含むことができる。
【0014】
本発明において、ミロシナーゼを提供する成分IIは、ミロシナーゼの供給源を提供することができる任意の物質又は原材料であり得る。好ましくは、ミロシナーゼを提供する成分IIは、アブラナ科の植物、その抽出物及びその混合物からなる群から選択される。好ましくは、ミロシナーゼを提供する成分IIは、セイヨウワサビ、ダイコン及びケールからなる群から選択される。一部の好ましい実施形態において、ミロシナーゼを提供する成分IIは、セイヨウワサビ抽出物、ダイコン抽出物、キャベツ抽出物からなる群から選択され;その他の好ましい実施形態においては、ミロシナーゼを提供する成分IIは、セイヨウワサビ、ダイコン及び/若しくはケールからの絞り汁若しくはスラリー、又は絞り汁若しくはスラリーを乾燥させることによって得られる粉末である。
【0015】
本発明において、ブロッコリーは、ブロッコリー植物の全て又は一部を意味する。好ましくは、ブロッコリーは、通常の意味の可食部から選択され;より好ましくは、ブロッコリーは、ブロッコリーの球根、ブロッコリーの種子及びブロッコリーの実生、並びにそれらの組合せからなる群から選択される。
【0016】
本発明において、ブロッコリー抽出物は、ブロッコリー植物の全て又は一部の抽出物を意味し、ブロッコリー、ブロッコリーの球根、ブロッコリーの種子及び/又はブロッコリーの実生の抽出物を含むがこれらに限定はされない。一方で、抽出物は、溶媒を用いた抽出によって得られる抽出物であり、抽出物は、好ましくは、水性抽出物、アルコール抽出物又は水‐アルコール抽出物、特に好ましくは、水性抽出物である。
【0017】
本発明において、グルコラファニンを提供する成分Iは、好ましくは、ブロッコリーの球根、ブロッコリーの種子、ブロッコリーの実生、ブロッコリーの抽出物及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0018】
本発明において、塩基性塩化合物は、塩基性の無機酸塩又は有機酸塩であり得り、好ましくは、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、ピロリン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、クエン酸カリウム及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0019】
本発明において、成分I、成分II及び塩基性塩化合物の質量比は、10~80:1~80:0.1~1;好ましくは、10~50:1~50:0.1~0.5、より好ましくは10~30:1~20:0.1~0.5である。
【0020】
一部の実施形態において、本発明の組成物は、さらにアスコルビン酸を含む。
【0021】
本発明の組成物は、好ましくは、固体形態、例えば、粉末、顆粒、カプセル又は錠剤の調製物の形態である。より好ましくは、本発明の組成物において、成分I、成分II及び塩基性塩化合物は、全て、固体形態で存在する。例えば、成分Iは、抽出物、実生又は種子の粉末(凍結乾燥粉末を含む)の形態であってもよい。
【0022】
一部の好ましい実施形態において、本発明の成分Iは、ブロッコリーの種子抽出物、ブロッコリーの実生粉末、ブロッコリーの球根凍結乾燥粉末、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0023】
別の態様において、本発明は、スルフォラファンによって防止及び/又は処置することができる疾患又は障害の防止及び/又は処置のための生成物の製造における、本発明の組成物の使用を提供する。生成物は、医薬又は食品であり得る。好ましくは、生成物は医薬である。一部の好ましい実施形態において、スルフォラファンによって防止及び/又は処置することができる疾患又は障害は、がん、糖尿病、心血管疾患、ヘリコバクターピロリ感染、自閉症、統合失調症、うつ病、アルツハイマー病(AD)及び肺線維症からなる群から選択される。
【0024】
本発明の別の態様において、グルコラファニンをスルフォラファンにin vitroで変換する方法であって、以下の工程:
1) 本発明による組成物を提供する工程、及び
2) 組成物を、水又は水溶液と混合する工程
を含む方法を提供する。
【0025】
本発明の第三の態様において、スルフォラファンを、それを必要とする対象に補給する方法であって、本発明の組成物を対象に投与する工程を含む方法を提供する。
【0026】
さらなる態様において、本発明は、スルフォラファンによって防止及び/又は処置することができる疾患又は障害を防止及び/又は処置する方法であって、それを必要とする対象に、本発明の組成物を投与する工程を含む方法を提供する。好ましくは、スルフォラファンによって防止及び/又は処置することができる疾患又は障害は、がん、糖尿病、心血管疾患、ヘリコバクターピロリ感染、自閉症、統合失調症、うつ病、アルツハイマー病(AD)及び肺線維症からなる群から選択される。
【0027】
本発明者らは、組成物に塩基性塩化合物を添加することによって、生成物中のグルコラファニンの含有量の低下を避けることができ、外観及び味の安定性を維持しつつ、組成物の安定性を効果的に向上させることができることを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0028】
実施例1
(1) 本発明の組成物1の調製:720gのブロッコリーの種子の水性抽出物(13.0%のグルコラファニンを含有する、Brassica Protection Products LLC社から購入、以下同様)を、296gのセイヨウワサビ粉末及び10gの炭酸ナトリウムと、均一に混合して、グルコラファニンが9.09%を占める、1.03kgの組成物1を得た。上記組成物1を、袋あたり5gの重量で小袋に入れ、対応する粉末生成物を得た。
【0029】
(2) 対照組成物1の調製:720gのブロッコリーの種子の水抽出物(13.0%のグルコラファニンを含有する)及び296gのセイヨウワサビ粉末を、均一に混合して、グルコラファニンが9.18%を占める、1.02kgの対照組成物1を得た。上記対照組成物1を、袋あたり5gの重量で小袋に入れ、対応する粉末生成物を得た。
【0030】
(3) 加速安定性実験:上記2つの粉末生成物を、37℃、相対湿度75%の加速試験チャンバーに3か月間入れ、その後取出し、外観の変化を観察し、スルフォラファン産生率を以下の方法によって測定した。
【0031】
1.03gの組成物1及び1.02gの対照組成物1(両方ともグルコラファニン93.6mgを含有する)を取り、30mLの水に加えて、37℃の疑似醸造条件をインキュベートした。試料を、それぞれ、5分、8分及び30分で取った。スルフォラファンの含有量をHPLCにより決定し、スルフォラファン産生率を算出した。
【0032】
スルフォラファンの決定のためのHPLC方法:試料溶液を取り、HPLC解析のために0.45pmフィルターに通した。HPLC条件:カラム:Huapu Unitary C18 (4.6mm×250mm, 5pm);カラム温度:30℃;移動相:70%水‐30%アセトニトリル;流速:0.8mL/分;注入量:10pL;UV検出波長:245nm。
【0033】
実験結果を以下のTable 1(表1)に示す。
【表1】
【0034】
塩基性塩を含む本発明の組成物1は、加速実験後の外観及び味に有意な変化がなく、スルフォラファン産生率は、塩基性塩を含まない対照組成物1よりも良好のままであることが、実験結果から見ることができる。スルフォラファン産生率は、加速実験の前後で基本的に変わらず、それは加水分解後の組成物中のスルフォラファン含有量が、加水分解前からほとんど変わらなかったことを示す。
【0035】
実施例2
(1) 本発明の錠剤1の調製:200gのブロッコリーの実生の水性抽出物(13.0%のグルコラファニンを含有する)、200gのセイヨウワサビ粉末、4gのビタミンC、10gのリン酸ナトリウム及び596gの錠剤賦形剤(デンプン、マルトデキストリン及びヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる、5:80:2の比(w/w)である、以下同様)を均一に混合し、錠剤あたり0.6gに基づいて錠剤化し、フィルムコーティングで覆って、グルコラファニンが2.57%を占める、1.02kgの本発明の錠剤1を作製した。上記本発明の錠剤1を、ボトルあたり60個の錠剤で、ボトルに入れ、乾燥剤をそこに加え、ボトルを密閉して、対応する錠剤生成物を得た。
【0036】
(2) 対照錠剤1の調製:200gのブロッコリーの実生の水性抽出物(13.0%のグルコシノレートを含有する)、200gのセイヨウワサビ粉末、4gのビタミンC及び596gの錠剤賦形剤を均一に混合し、錠剤あたり0.6gに基づいて錠剤化し、フィルムコーティングで覆って、グルコラファニンが2.6%を占める、1.01kgの本発明の対照錠剤1を作製した。上記本発明の錠剤1を、ボトルあたり60個の錠剤で、ボトルに入れ、乾燥剤をそこに加え、ボトルを密閉して、対応する錠剤生成物を得た。
【0037】
(3) 加速安定性実験:上記2つの錠剤生成物を、37℃、相対湿度75%の加速試験チャンバーに3か月間入れ、その後取出し、外観の変化を観察し、スルフォラファン産生率を以下の方法によって測定した。
【0038】
30gの各錠剤試料を取り、すりつぶした。1.02gの本発明の錠剤1粉末及び1.01gの対照錠剤1粉末(両方とも26mgのグルコラファニンを含む)をそれぞれ取り、30mLの人工的な食後の胃液を模した溶液(人工的な食後の胃液を模した溶液は、中国薬局方 II部 2015版に従って調製した、pHは3.5に調整した)に加え、温度を37℃で維持した。試料を、それぞれ、30分及び60分で取った。スルフォラファン含有量を、HPLC法によって決定して、スルフォラファン産生率を算出した。スルフォラファンの決定のためのHPLC法は、実施例1と同じであった。
【0039】
実験結果を以下のTable 2(表2)に示す。
【表2】
【0040】
塩基性塩を含む本発明の錠剤1は、加速実験後の外観及び味に有意な変化がなく、スルフォラファンの産生率は、塩基性塩を含まない対照錠剤1と比較して、良好のままであることが、実験結果から見ることができる。加速実験後において、スルフォラファン産生率は、対照錠剤よりも有意により高かった。
【0041】
実施例3
(1) 本発明の錠剤2の調製:200gのブロッコリーの種子の水性抽出物(13.0%のグルコラファニンを含む)、50gのブロッコリーの実生粉末(4.5%のグルコラファニンを含む)、50gのブロッコリーの球根凍結乾燥粉末、250gのセイヨウワサビ粉末、4gのカルシウムビタミンC、10gのクエン酸ナトリウム及び596gの錠剤賦形剤(デンプン、マルトデキストリン及びヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる、5:80:2の比(w/w)である)を均一に混合し、錠剤あたり0.6gに基づいて錠剤化し、フィルムコーティングで覆って、グルコラファニンが2.80%を占める、1.16kgの本発明の錠剤2を作製した。上記本発明の錠剤2を、ボトルあたり60個の錠剤で、ボトルに入れ、乾燥剤をそこに加え、ボトルを密閉して、対応する錠剤生成物を得た。
【0042】
(2) 対照錠剤2の調製:200gのブロッコリーの種子の水性抽出物(13.0%のグルコシノレートを含む)、50gのブロッコリーの実生粉末(4.5%のグルコラファニンを含む)、50gのブロッコリーの球根凍結乾燥粉末、250gのセイヨウワサビ粉末、4gのカルシウムビタミンC、10gのリン酸ナトリウム及び596gの錠剤賦形剤(デンプン、マルトデキストリン及びヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる、5:80:2の比(w/w)である)を均一に混合し、錠剤あたり0.6gに基づいて錠剤化し、フィルムコーティングで覆って、グルコラファニンが2.83%を占める、1.15kgの対照錠剤2を作製した。上記本発明の対照錠剤2を、ボトルあたり60個の錠剤で、ボトルに入れ、乾燥剤をそこに加え、ボトルを密閉して、対応する対照錠剤生成物を得た。
【0043】
(3) 加速安定性実験:上記2つの錠剤生成物を、37℃、相対湿度75%の加速試験チャンバーに3か月間入れ、その後取出し、外観の変化を観察し、スルフォラファン産生率を以下の方法によって測定した。
【0044】
100gの各錠剤試料を取り、すりつぶした。1.16gの本発明の錠剤2粉末及び1.15gの対照錠剤2粉末(両方とも28mgのグルコラファニンを含む)をそれぞれ取り、30mLの人工的な食後の胃液を模した溶液(人工的な食後の胃液を模した溶液は、中国薬局方 II部 2015版に従って調製した、pHは3.5に調整した)に加え、温度を37℃で維持した。試料を、それぞれ、30分及び60分で取った。スルフォラファン含有量を、HPLC法によって決定して、スルフォラファン産生率を算出した。スルフォラファンの決定のためのHPLC法は、実施例1と同じであった。
【0045】
実験結果を以下のTable 3(表3)に示す。
【表3】
【0046】
塩基性塩を含む本発明の錠剤2は、加速実験後の外観及び味に有意な変化がなく、スルフォラファンの産生率は、塩基性塩を含まない対照錠剤2と比較して、良好のままであることが、実験結果から見ることができる。加速安定性実験後において、スルフォラファン産生率は、対照錠剤よりも有意により高かった。