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特許7379553回折型IOLのためのアポダイゼーションパターンの調整
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】回折型IOLのためのアポダイゼーションパターンの調整
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/16 20060101AFI20231107BHJP
【FI】
A61F2/16
【請求項の数】 4
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022015620
(22)【出願日】2022-02-03
(62)【分割の表示】P 2018544519の分割
【原出願日】2017-02-16
(65)【公開番号】P2022066205
(43)【公開日】2022-04-28
【審査請求日】2022-03-04
(31)【優先権主張番号】15/059,581
(32)【優先日】2016-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】リチャード マックール
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-536796(JP,A)
【文献】特表2012-509152(JP,A)
【文献】特表2015-511145(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0140166(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科レンズであって、
前面と、
後面と、
前記眼科レンズの中心からの複数の半径方向距離範囲に対応する複数のゾーンを含む少なくとも1つの回折格子であって、前記複数のゾーンは、前記眼科レンズの前記中心からの第一の半径方向距離範囲に対応する第一の近方視ゾーンと、前記眼科レンズの前記中心から前記第一の半径方向距離範囲より遠い第二の半径方向距離範囲に対応する第二の遠方視ゾーンと、前記眼科レンズの前記中心から前記第二の半径方向距離範囲より遠い第三の半径方向距離範囲に対応する第三の近方視ゾーンと、を含む、回折格子と、を備え、
前記第一の近方視ゾーンは、第一の段差高さと第一の曲率半径とを有する複数の第一のエシェレットを含み、前記第一のエシェレットは、複数の前記第一のエシェレットによって透過された光を近方視焦点へ方向づけるように構成されており、
前記第二の遠方視ゾーンは、第二の段差高さと第二の曲率半径とを有する複数の第二のエシェレットを含み、前記第二の段差高さは前記第一の段差高さと異なり、前記第二の曲率半径は前記第一の曲率半径と異なり、前記第二のエシェレットは、複数の前記第二のエシェレットによって透過された光を遠方視焦点へ方向づけるように構成されており、
前記第三の近方視ゾーンは、前記第一の段差高さと前記第一の曲率半径とを有する複数の第三のエシェレットを含み、前記近方視焦点へ方向づけられる光エネルギーの総量が、前記第三の近方視ゾーンの半径方向最内周の境界よりも大きな瞳孔に対して増加するように、前記第三のエシェレットは、複数の前記第三のエシェレットによって透過された光を前記近方視焦点へ方向づけるように構成されている、眼科レンズ。
【請求項2】
前記前面は、ベースカーブを有し、前記回折格子は、前記ベースカーブの上に配置されている、請求項1に記載の眼科レンズ。
【請求項3】
前面と、後面と、眼科レンズの中心からの複数の半径方向距離範囲に対応する複数のゾーンを含む少なくとも1つの回折格子であって、前記複数のゾーンは、前記眼科レンズの前記中心からの第一の半径方向距離範囲に対応する第一のゾーンと、前記眼科レンズの前記中心から前記第一の半径方向距離範囲より遠い第二の半径方向距離範囲に対応する第二のゾーンと、前記眼科レンズの前記中心から前記第二の半径方向距離範囲より遠い第三の半径方向距離範囲に対応する第三のゾーンと、を含む、回折格子と、を有する眼科レンズと、
前記第一のゾーンは、第一の段差高さと第一の曲率半径とを有する複数の第一のエシェレットを含み、前記第一のエシェレットは、複数の前記第一のエシェレットによって透過された光を近方視焦点へ方向づけるように構成されており、
前記第二のゾーンは、第二の段差高さと第二の曲率半径とを有する複数の第二のエシェレットを含み、前記第二の段差高さは前記第一の段差高さと異なり、前記第二の曲率半径は前記第一の曲率半径と異なり、前記第二のエシェレットは、複数の前記第二のエシェレットによって透過された光を遠方視焦点へ方向づけるように構成されており、
前記第三のゾーンは、前記第一の段差高さと前記第一の曲率半径とを有する複数の第三のエシェレットを含み、前記近方視焦点へ方向づけられる光エネルギーの総量が、前記第三のゾーンの半径方向最内周の境界よりも大きな瞳孔に対して増加するように、前記第三のエシェレットは、複数の前記第三のエシェレットによって透過された光を前記近方視焦点へ方向づけるように構成されている、眼科レンズと、
前記眼科レンズに連結された複数のハプティクスと、
を備える、眼科医療機器。
【請求項4】
眼科レンズを提供する方法であって、
前記眼科レンズのベースカーブの上に配置された少なくとも1つの回折格子を提供することであって、前記少なくとも1つの回折格子は、前記眼科レンズの中心からの複数の距離範囲に対応する複数のゾーンを含み、前記複数のゾーンは、前記眼科レンズの前記中心からの第一の半径方向距離範囲に対応する第一のゾーンと、前記眼科レンズの前記中心から前記第一の半径方向距離範囲より遠い第二の半径方向距離範囲に対応する第二のゾーンと、前記眼科レンズの前記中心から前記第二の半径方向距離範囲より遠い第三の半径方向距離範囲に対応する第三のゾーンと、を含む、少なくとも1つの回折格子を提供することを含み、
前記第一のゾーンは、第一の段差高さと第一の曲率半径とを有する複数の第一のエシェレットを含み、前記第一のエシェレットは、複数の前記第一のエシェレットによって透過された光を近方視焦点へ方向づけるように構成されており、
前記第二のゾーンは、第二の段差高さと第二の曲率半径とを有する複数の第二のエシェレットを含み、前記第二の段差高さは前記第一の段差高さと異なり、前記第二の曲率半径は前記第一の曲率半径と異なり、前記第二のエシェレットは、複数の前記第二のエシェレットによって透過された光を遠方視焦点へ方向づけるように構成されており、
前記第三のゾーンは、前記第一の段差高さと前記第一の曲率半径とを有する複数の第三のエシェレットを含み、前記近方視焦点へ方向づけられる光エネルギーの総量が、前記第三のゾーンの半径方向最内周の境界よりも大きな瞳孔に対して増加するように、前記第三のエシェレットは、複数の前記第三のエシェレットによって透過された光を前記近方視焦点へ方向づけるように構成されている、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
眼内レンズ(IOL:intraocular lens)は、患者の水晶体と置換すること、またはフェイキックIOLの場合は患者の水晶体を補助することのいずれかのために患者の眼内に移植される。従来のIOLのいくつかは単焦点IOLであり、またいくつかは多焦点IOLである。単焦点IOLは1つの焦点距離または1つのパワーを有する。眼/IOLから焦点距離にある物体は焦点が合っているが、それより近いか、または遠い物体は焦点が合わないかもしれない。他方で、多焦点IOLには少なくとも2つの焦点距離がある。例えば、二焦点IOLでは、2つの範囲、すなわちより長い焦点距離に対応する遠方領域とより短い焦点距離に対応する近方領域の焦点を改善するための2つの焦点距離がある。三焦点IOLでは、近方領域、中間領域、および遠方領域に対応する3つの焦点距離がある。他の多焦点レンズには、また別の数の焦点距離があってもよい。
【0002】
複数の焦点距離を提供するために、多焦点IOLでは典型的に、レンズがレンズの中心からの距離に基づいてゾーン(例えば、環状領域)に分割される。レンズ中心付近の1つまたは複数のゾーンは近方視用として構成される。レンズ中心からより遠いゾーンは遠方視用として構成される。例えば、いくつかの従来のIOLは、回折を利用して複数の焦点距離を提供している場合がある。回折型IOLはIOLの表面上のベースカーブに形成された回折格子を利用する。ベースカーブはレンズの曲率半径に対応する。回折格子は典型的に、レンズ表面上に形成された顕微鏡レベルのエシェレット、すなわち表面の鋸歯状ファセットの形態をとる。エシェレットは、特定の焦点距離を有する回折格子を形成する。各ゾーンは、特定の段差高さと曲率半径を有するエシェレットの集合を含む。レンズ中心により近いゾーンは、より短い焦点距離のために構成されたエシェレットを有していてもよく、近方視専用であってもよい。レンズの縁により近いゾーンは、より長い焦点距離用に構成されたエシェレットを有していてもよく、遠方視専用であってもよい。
【0003】
それに加えて、ゾーンはまた、グレアまたはハロ等のアーチファクトを軽減するためにアポダイズされてもよい。アポダイゼーションは、エシェレットの段差高さをレンズの中心からの距離が増大するにつれて減少させる。したがって、中心からより遠いゾーンが遠方視専用であることに加え、これらのゾーンのためのエシェレットの段差高さはより低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の回折型IOLは、ほとんどの患者においては容認可能な程度に良好に機能するが、さらなる改良が望まれる。例えば、患者は異なる矯正パワーを必要とするかもしれないだけでなく、患者の眼の物理的特性もまた異なるかもしれない。例えば、基準と異なる眼のジオメトリを有する患者は、特定のIOLでの成功は限られるかもしれない。したがって、必要とされているのは様々な患者にとってのIOLの性能を改善するためのシステムおよび方法である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
方法およびシステムは眼科医療機器を提供する。眼科医療機器は、前面と、後面と、少なくとも1つの回折格子と、を有する眼科レンズを含む。回折格子は、前面と後面の少なくとも一方に配置される。回折格子は、前面および/または後面の中心からの距離範囲に対応するゾーンを含む。ゾーンは第一の距離範囲に対応する第一のゾーン、中心から第一の距離範囲より遠い第二の距離範囲に対応する第二のゾーンおよび、中心から第二の距離範囲より遠い第三の距離範囲に対応する繰返しゾーンを含む。第一のゾーンは、第一の段差高さと第一の曲率半径を有するエシェレットを含む。第二のゾーンは、第二の段差高さと第二の曲率半径を有するエシェレットを含む。繰返しゾーンは、第一の段差高さと第一の曲率半径の少なくとも1つを有するエシェレットを含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】眼科医療機器の例示的実施形態の平面図を示す。
図2】眼科医療機器のレンズの例示的実施形態の側面図を示す。
図3】眼科医療機器の一部の例示的実施形態のための回折格子の他の例示的実施形態を示す側面図である。
図4】眼科医療機器の一部の他の例示的実施形態のためのレンズの例示的実施形態の平面図を示す。
図5】眼科医療機器の一部の例示的実施形態のための回折格子の他の例示的実施形態を示す側面図である。
図6】眼科医療機器の一部の例示的実施形態のための回折格子の他の例示的実施形態を示す側面図である。
図7】眼科医療機器の一部の例示的実施形態のための回折格子の他の例示的実施形態を示す側面図である。
図8】眼科医療機器の一部の例示的実施形態のための回折格子の他の例示的実施形態を示す側面図である。
図9】眼科医療機器を提供する方法の例示的実施形態を示すフローチャートである。
図10】眼科医療機器を利用するための方法の例示的実施形態を示すフローチャーである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
例示的実施形態は、回折格子を含むIOLに関する。以下の説明は、当業者が本発明を製作し、使用できるようにするために提示され、特許出願とその要求事項に関して提供される。本明細書に記載されている例示的実施形態および全体的原理と特徴に対する各種の変更は、容易に明らかとなるであろう。例示的実施形態は主に、特定の実装において提供される特定の方法およびシステムに関して説明されている。しかしながら、この方法およびシステムは他の実装についても有効に動作するであろう。「例示的実施形態」、「1つの実施形態」、および「他の実施形態」等の語句は、同じまたは異なる実施形態のほか、複数の実施形態を指すかもしれない。実施形態は、特定のコンポーネントを有するシステムおよび/または機器に関して説明される。しかしながら、このシステムおよび/または機器は、図示されているものより多くの、またはそれより少ないコンポーネントを含んでいてもよく、コンポーネントの配置とタイプは、本発明の範囲から逸脱することなく、変更されてもよい。例示的実施形態はまた、特定のステップを有する特定の方法に関して説明される。しかしながら、この方法およびシステムは、異なるおよび/または追加のステップと、例示的実施形態とは異なる別の順序のステップを有する他の方法についても有効に動作する。それゆえ、本発明は図示されている実施形態に限定されるものではなく、本明細書に記載されている原理および特徴と矛盾しない最も広い範囲が本発明に付与されるものとする。
【0008】
方法およびシステムは、眼科医療機器を提供する。この眼科医療機器は、前面と、後面と、少なくとも1つの回折格子と、を有する眼科レンズを含む。回折格子は、前面と後面の少なくとも一方に配置される。回折格子は、前面および/または後面の中心からの距離範囲に対応するゾーンを含む。ゾーンには、第一の距離範囲に対応する第一のゾーン、中心から第一の距離範囲より遠い第二の距離範囲に対応する第二のゾーン、および中心から第二の距離範囲より遠い第三の距離範囲に対応する繰返しゾーンが含まれる。第一のゾーンは、第一の段差高さと第一の曲率半径を有するエシェレットを含む。第二のゾーンは、第二の段差高さと第二の曲率半径を有するエシェレットを含む。繰返しゾーンは、第一の段差高さと第一の曲率半径の少なくとも一方を有するエシェレットを含む。
【0009】
図1~2は、IOLとして使用されてもよい眼科医療機器100の例示的実施形態を示す。図1は、眼科医療機器100の平面図を示し、図2は眼科レンズ110の側面図を示す。明瞭を期して付記すれば、図1および2は正確な縮尺によらない。眼科医療機器100は、眼科レンズ110のほか、ハプティクス102および104を含む。眼科レンズは様々な光学材料で製作されてもよく、これにはシリコン、ヒドロゲル、およびアクリル樹脂のうちの1つまたは複数が含まれるが、これらに限定されない。ハプティクス102および104は、眼科医療機器100を患者の眼(明らかには示されていない)の中の所定の位置に保持するために使用される。しかしながら、他の実施形態において、眼科医療機器を眼内の所定の位置に保持するために他の機構を使用してもよい。明瞭を期して付記すれば、ハプティクスは後述する図2~7には示されていない。眼科レンズ110は、図1の平面図では円形の断面を有するように描かれているが、他の実施形態では他の形状が使用されてもよい。
【0010】
眼科レンズ110(以下、「レンズ」)は、光軸106のほか、後面112と前面114を有する。レンズ110の一部と言われるが、光軸106は前面114と後面112の中心を通る想像上の線と考えてよい。光軸106はまた、それが面112および114を通る点において面112および114に対して垂直であってもよい。
【0011】
前面114および後面は、ベースカーブにより特徴付けられる。ベースカーブは回折格子等の他の特徴を持たない表面の曲率を説明する。図示されている実施形態において、回折格子120は前面114の中に形成され、その一方、後面112にはこのような格子がない。それゆえ、後面112のベースカーブは面112そのものである。前面114は回折格子120を含むため、前面114のベースカーブ116は図2の中で、点線で示される。
【0012】
前面114は、エシェレット130からなる回折格子120を含む。代替的実施形態において、追加の回折格子(図示せず)が後面112に提供されてもよい。このような実施形態において、レンズ110は両面112および114に格子を有する。また別の実施形態において、回折格子120は前面114ではなく後面112にあってもよい。エシェレット130は、典型的に顕微鏡レベルの大きさの、回折格子120を形成するステップである。各エシェレット130は、段差高さ(以下、「高さ」)と曲率半径により特徴付けられる。高さは、エシェレットの上部とエシェレットの底部との間の差である。曲率半径は、エシェレットの曲率として見ることができる。曲率半径はまた、エシェレット130のベース曲率と側面の曲率との間の差とも見ることができる。単純にするために、2つのエシェレット130のみに参照番号が付けられている。
【0013】
レンズ110と、それゆえ前面114および回折格子120は、光軸106からのその半径方向の距離が異なるゾーンに分割される。図示されている実施形態において、眼科レンズ110は4つのゾーン、すなわちゾーン1 122、ゾーン2 124、ゾーン3 126、およびゾーン4 128に分割される。各ゾーン122、124、126、および128は環状である。前面114の中心に屈折要素118がある。他の実施形態において、屈折要素118はなくてもよい。このような実施形態において、ゾーン1 122は、ゼロ半径(光軸)から第一の最小半径までに対応する円である。しかしながら、図示されている実施形態では、ゾーン1 122は、第一の最小半径から第二の半径までの環状リングある。ゾーン2 124は、第二の半径から、第二の半径より大きい第三の半径までの環状リングである。ゾーン3 126は、第三の半径から第三の半径より大きい第四の半径までの環状リングである。ゾーン4 128は、第四の半径から第四の半径より大きい第五の半径までの環状リングである。それゆえ、ゾーン122、124、126、および128は4つの距離範囲に対応する。図示されている実施形態において、ゾーン4 128はほとんどレンズ110の外周近くまで延びている。しかしながら、他の実施形態では、ゾーンはレンズ110の外周付近まで延びている必要はない。また別の実施形態において、ゾーンはレンズ110の外周まで延びていてもよい。4つのゾーンは例示を目的として示されているにすぎない。他の実施形態では、他の数のゾーンが含められてもよい。例えば、少なくは3つのゾーン、または5つ以上のゾーンが存在してもよい。一般に、レンズ110はより大きい数のゾーンを有していてもよい。ゾーン122、124、126、および128の幅と位置は、ゾーン122、124、126、および128の所望の焦点距離等の要素に依存していてもよい。
【0014】
回折格子120のエシェレット130は、ゾーン122、124、126、および128において異なる。より具体的には、エシェレット130の表面の曲率半径、エシェレット130の高さ、および/またはエシェレット130間の距離(すなわち、格子120の周期)はゾーンによって異なる。それゆえ、ゾーン1 122のエシェレット130は、第一の曲率半径、第一の高さ、および第一の周期を有する。ゾーン2 124のエシェレット130は、第二の曲率半径、第二の高さ、および第二の周期を有する。いくつかの実施形態において、ゾーン122、124、126、および128は、光軸106により近いゾーンは近方視用に構成され、縁により近いゾーンは遠方視用に構成される。それゆえ、光軸106により近いゾーンはより短い焦点距離を有し、縁により近いゾーンはより長い焦点距離を有する。例えば、ゾーン1 122のエシェレット130は、ゾーン2 124のエシェレット130より短い焦点距離を有することになる曲率半径と周期を有していてもよい。同様に、ゾーン1 122の距離範囲は、焦点距離がゾーン2 124の場合より短くなるように設定されてもよい。あるいは、ゾーン122、124、126、および128は、異なるゾーン122、124、126、および128を通じた光の透過が、レンズ110のための複数の焦点距離が得られるような方法で干渉するように構成されてもよい。いずれの場合も、ゾーン122、124、126、および128の各々は、多焦点レンズ110のための1つまたは複数の焦点距離に関連付けられると考えてもよい。
【0015】
従来のレンズでは、エシェレットの高さは光軸から遠いゾーンにおいて減少していてもよい。しかしながら、光軸106により近い少なくとも1つの特徴が、レンズ110の光軸からより遠い少なくとも1つのゾーンで繰り返される。光軸106により近いゾーンについてのエシェレット130の高さおよび/または曲率半径は、光軸からより遠いゾーンについて繰り返される。いくつかの実施形態において、格子の周期もまた繰り返されてよい。例えば、図示されている実施形態において、ゾーン1 122のエシェレット130の高さと曲率半径は、ゾーン3 126で繰り返されている。同様に、ゾーン2 124のエシェレット130の高さと曲率半径は、ゾーン4 128で繰り返されている。代替的な実施形態において、内側ゾーンのエシェレット130の高さのみ、または曲率半径のみが、光軸106より遠いゾーンで繰り返される。
【0016】
ゾーン122、124、126、および128は、様々なパターンで繰り返されてもよい。例えば、回折格子120はゾーン1 122、ゾーン2 124、繰返しゾーン1(ゾーン3 126において)、および繰返しゾーン2(ゾーン4 128において)を有していてもよい。このような実施形態では、ゾーン3 126とゾーン4 128のエシェレット130は、それぞれゾーン1 122およびゾーン2 124のエシェレット130と同じ高さおよび/または曲率半径を有する。このような実施形態は図1~2に示されている。他の実施形態では、ゾーンはゾーン1 122、ゾーン2 124、ゾーン3 126、および繰返しゾーン1(4 128において)であってもよい。この実施形態において、ゾーン4 128のエシェレット130は、ゾーン1 122のエシェレットと同じ高さおよび/または曲率半径を有する。繰返しは、光軸106に最も近いゾーンから始まる必要はない。例えば、このゾーンはゾーン1 122、ゾーン2 124、ゾーン3 126、繰返しゾーン2(ゾーン4 128において)であってもよい。このような実施形態では、ゾーン4 128のエシェレット130はゾーン2 124のエシェレットと同じ高さおよび/または曲率半径を有する。繰返しは、回折格子120全体を通じて連続している必要はない。例えば、このゾーンは、ゾーン1 122、ゾーン2 124、繰返しゾーン1(ゾーン3 126において)、およびゾーン4 128であってもよい。この実施形態において、ゾーン3 126のエシェレット130は、ゾーン1 122のエシェレットと同じ高さおよび/または曲率半径を有する。しかしながら、ゾーン4 128のエシェレットは、他のゾーン122、124、126、および128とは異なる曲率半径と段差高さを有していてもよい。より多くのゾーンを有するレンズの場合、繰り返されるゾーンの数は増えてもよい。例えば、7つのゾーンを有するレンズ(図示せず)は、(光軸からの距離が増す順番に)ゾーン1、ゾーン2、ゾーン3、ゾーン4、繰返しゾーン1(ゾーン5において)、繰返しゾーン2(ゾーン6において)、および繰返しゾーン3(ゾーン7において)で構成されてもよい。これらの各種の構成において、光軸106からより遠いゾーンのエシェレットの特徴は、光軸により近いゾーンのエシェレット130のそれらと同じ特性を有する。
【0017】
レンズ110と、それゆえ眼科医療機器100は、様々な患者への改善された適用可能性を有していてもよい。前述のように、レンズ110の中心からより遠いゾーンのエシェレット130の高さおよび/または曲率半径は、レンズ110の中心により近いゾーンのエシェレット130の高さおよび/または曲率半径と同じであってもよい。レンズは、光軸により近い1つまたは複数のゾーンが近方視用として構成され、光軸からより遠いゾーンが遠方視用として構成されるように設計されてもよい。換言すれば、光軸により近いゾーンを透過する光のより多くの部分が近方視に使用される。光軸からより遠いゾーンを透過する光のより多くの部分は、遠方視専用であってもよい。レンズ110の縁により近い領域において内側ゾーンの特性を繰り返すことにより、より大きな面積を近方視専用とすることができる。別の言い方をすれば、レンズ110を通過する光エネルギーのより多くの部分が近方視に使用されてもよい。瞳孔の大きさがより大きい個人の場合、瞳孔に到達する、より多くの光エネルギーが近方視専用とされる。これは、このような個人にとって、近方視が改善されるということになる。それゆえ、ゾーン122、124、126、および128は、近視および老眼等の問題の矯正のためだけでなく、瞳孔の大きさの違い等、患者の眼の物理的構造の違いも考慮するために構成されてよい。そのため、レンズ110および眼科医療機器100の各種の実施形態を様々な瞳孔の大きさを有する様々な患者に使用されてもよい。
【0018】
図3および4は、他の例示的実施形態のレンズ150の側面図と平面図を示す。図3および4は正確な縮尺によらない。図3は、ベースカーブを取り除いた後の回折格子のエシェレットの高さを示す。したがって、図3に示される図は水平軸を有する。しかしながら、回折格子のある前面および/または後面は典型的には湾曲している。レンズ150は、レンズ110と同様であり、それゆえ、眼科医療機器100に組み込まれてもよい。レンズ150は光軸、屈折要素151、および回折格子158を構成するゾーン152、154、および156を含む。ゾーン152、154、および156は、それぞれエシェレット153、155、および157を含む。屈折要素151、回折格子158、およびゾーン152、154、および156は、それぞれ屈折要素118、回折格子120、およびゾーン122、124、126、および128と同様である。明瞭を期して付記すれば、3つのゾーン152、154、および156だけが示されている。しかしながら、他の数のゾーンがあってもよい。ゾーン152、154、および156は、異なる焦点距離、異なるエシェレット高さ、および/または異なるエシェレット曲率半径を有していてもよい。少なくともいくつかの実施形態において、ゾーン1 152は近方視のための、より短い焦点距離に対応し、ゾーン2 154は遠方視のための、より長い焦点距離に対応する。それゆえ、光軸により近いゾーンは近方視用として構成され、レンズ150の縁により近いゾーンは遠方視用として構成される。
【0019】
図示されている実施形態において、エシェレット153、155、および157の高さは、それぞれゾーン152、154、および156の中で変化している。各ゾーン152、154、156の中で、それぞれエシェレット153、155、および157の高さは光軸からの距離が増大するとともに減少する。しかしながら、ゾーン3 156はゾーン1 152の繰返しゾーンである。それゆえ、エシェレット157の高さはエシェレット153に関するものと同じである。図示されている実施形態において、エシェレット157はまた、エシェレット153と同じ曲率半径も有する。
【0020】
回折格子158を有するレンズ150は、レンズ110および眼科医療機器100と共通の利益を有する。レンズ110の中心からより遠い1つまたは複数のゾーンのエシェレットの高さおよび/または曲率半径を繰り返すことにより、光エネルギーのより多くの量を近方視専用とすることができる。瞳孔の大きさがより大きい個人の場合、瞳孔に到達する、より多くの光エネルギーが近方視専用とされてもよい。このような個人にとっての近方視が改善されてもよい。そのため、レンズ150の各種の実施形態は、様々な瞳孔の大きさを有する様々な患者に使用されてもよい。
【0021】
図5は、レンズ110および/または150等のレンズのための他の例示的実施形態の回折格子160の側面図を示す。図5は正しい縮尺によらない。図5は、ベースカーブが取り除かれた後の回折格子のためのエシェレットの高さを示す。したがって、図5に示される図は水平軸を有する。しかしながら、回折格子のある前面および/または後面は典型的には湾曲している。回折格子160は、回折格子120および/または158と同様であり、それゆえ、眼科医療機器100に組み込まれてもよい。レンズは、光軸(ゼロ半径で)、屈折要素161、および回折格子160を形成するゾーン162、164、166、および168を含む。ゾーン162、164、166、および168は、それぞれエシェレット163、165、167、および169を含む。屈折要素161、回折格子160、およびゾーン162、164、166、および168は、それぞれ屈折要素118、回折格子120/158およびゾーン122/152、124/154、126/156、128と同様である。明瞭を期して付記すれば、4つのゾーン162、164、166、および168のみが示されている。しかしながら、他の数のゾーンがあってもよい。ゾーン162、164、166、および168は複数の焦点距離に対応してもよく、光軸からの異なる距離範囲、異なるエシェレット高さ、および異なるエシェレット曲率半径を有していてもよい。少なくともいくつかの実施形態において、ゾーン1 162は、近方視のための、より短い焦点距離を有し、ゾーン2 164は、遠方視のための、より長い焦点距離を有する。
【0022】
各ゾーン162、164、166、および168において、それぞれエシェレット163、165、167、および169は光軸からの距離が増大するのに伴い減少する。それに加えて、エシェレット163、165、167、および169の高さは単調に減少する。しかしながら、ゾーン3 166はゾーン1 162の繰返しゾーンである。ゾーン4はゾーン2 164の繰返しゾーンである。図示されている実施形態において、曲率半径だけが繰り返されている。それゆえ、エシェレット167の曲率半径は、エシェレット163のそれと同じである。図示されている実施形態では、エシェレット169は、エシェレット165と同じ曲率半径を有する。それゆえ、2つのゾーンは回折格子160の中で繰り返される。
【0023】
回折格子160を含むレンズは、レンズ110/150および眼科医療機器100と共通の利益を有する。回折格子160の中心からより遠い1つまたは複数のゾーンのエシェレットの曲率半径を繰り返すことにより、光エネルギーのより多くの量を近方視専用とすることができるかもしれない。瞳孔の大きさがより大きい個人の場合、瞳孔に到達する、より多くの光エネルギーを近方視専用としてもよい。このような個人にとっての近方視は改善されるかもしれない。そのため、回折格子160を有するレンズの各種の実施形態は、様々な瞳孔の大きさを有する様々な患者に使用されてもよい。
【0024】
図6は、レンズ110および/または150等のレンズのための他の例示的実施形態の回折格子170の側面図を示す。図6は正しい縮尺によらない。図6は、ベースカーブが取り除かれた後の回折格子のためのエシェレットの高さを示す。したがって、図6に示される図は水平軸を有する。しかしながら、回折格子のある前面および/または後面は典型的には湾曲している。回折格子170は、回折格子120、158および/または160と同様であり、それゆえ、眼科医療機器100に組み込まれてもよい。レンズは、光軸(ゼロ半径で)、屈折要素171、および回折格子170を形成するゾーン172、174、176、および178を含む。ゾーン172、174、176、および178は、それぞれエシェレット173、175、177、および179を含む。屈折要素171、回折格子170、およびゾーン172、174、176、および178は、図1~5に示される同様の要素と同様である。明瞭を期して付記すれば、4つのゾーン172、174、176、および178のみが示されている。しかしながら、他の数のゾーンがあってもよい。ゾーン172、174、176、および178は複数の焦点距離に対応してもよく、光軸からの異なる距離範囲、異なるエシェレット高さ、および異なるエシェレット曲率半径を有していてもよい。少なくともいくつかの実施形態において、ゾーン1 172は、近方視のための、より短い焦点距離を有し、ゾーン2 174は、遠方視のための、より長い焦点距離を有する。
【0025】
各ゾーン172、174、176、および178において、それぞれエシェレット173、175、177、および179の高さは一定である。しかしながら、ゾーン間で、エシェレット173、175、177、および179の高さは光軸からの距離が増大するのに伴い減少する。それゆえ、エシェレット175の高さはエシェレット173の高さより低い。しかしながら、ゾーン3 176はゾーン1 172の繰返しゾーンである。ゾーン4 178はゾーン2 174の繰返しゾーンである。図示されている実施形態において、高さだけが繰り返されている。それゆえ、エシェレット177の曲率半径はエシェレット173のそれと異なる。同様に、エシェレット179は、エシェレット175とは異なる曲率半径を有する。したがって、格子170の周期もまた、ゾーン172、174、176、および178間で変化する。
【0026】
回折格子170を含むレンズは、レンズ110/150および眼科医療機器100と共通の利益を有する。回折格子170の中心からより遠い1つまたは複数のゾーンのエシェレットの高さを繰り返すことにより、光エネルギーのより多くの量を近方視専用とすることができる。別の言い方をすれば、回折格子170の縁のより近くに、より高いエシェレットを提供することによって、近方視専用の光の量が増大するかもしれない。瞳孔の大きさがより大きい個人の場合、瞳孔に到達する、より多くの光エネルギーを近方視専用としてもよい。このような個人にとっての近方視は改善されるかもしれない。そのため、回折格子170を含むレンズの各種の実施形態は、様々な瞳孔の大きさを有する様々な患者に使用されてもよい。
【0027】
図7は、レンズ110および/または150等のレンズのための他の例示的実施形態の回折格子180の側面図を示す。図7は正しい縮尺によらない。図7は、ベースカーブが取り除かれた後の回折格子のためのエシェレットの高さを示す。したがって、図7に示される図は水平軸を有する。しかしながら、回折格子180のある前面および/または後面は典型的には湾曲している。回折格子180は、回折格子120、158、160および/または170と同様であり、それゆえ、眼科医療機器100に組み込まれてもよい。レンズは、光軸(ゼロ半径で)、屈折要素181、および回折格子180を形成するゾーン182、184、186、および188を含む。ゾーン182、184、186、および188は、それぞれエシェレット183、185、187、および189を含む。屈折要素181、回折格子180、およびゾーン182、184、186、および188は、図1~6に示される同様の要素と同様である。明瞭を期して付記すれば、4つのゾーン182、184、186、および188のみが示されている。しかしながら、他の数のゾーンがあってもよい。ゾーン182、184、186、および188は複数の焦点距離に対応してもよく、光軸からの異なる距離範囲、異なるエシェレット高さ、および異なるエシェレット曲率半径を有していてもよい。少なくともいくつかの実施形態において、ゾーン1 182は、近方視のための、より短い焦点距離を有し、ゾーン2 184は、遠方視のための、より長い焦点距離を有する。
【0028】
各ゾーン182、184、186、および188において、それぞれエシェレット183、185、187、および189の高さは一定である。しかしながら、ゾーン間で、エシェレット183、185、187、および189の高さは光軸からの距離が増大するのに伴い減少する。ゾーン3 186はゾーン1 182の繰返しゾーンである。しかしながら、ゾーン4 188はゾーン2 184の繰返しではない。図示されている実施形態において、高さだけが繰り返されている。それゆえ、エシェレット187の曲率半径はエシェレット183のそれと異なる。他の実施形態において、曲率半径は高さの代わりに、または高さに加えて繰り返されてもよい。図示されている実施形態において、ゾーンのパターン全体が繰り返される必要はない。それゆえ、回折格子はゾーン1 182、ゾーン2 184、繰返しゾーン1(ゾーン3 186における)、およびゾーン4 188を含む。それゆえ、ゾーン4 188のエシェレット189は、ゾーン2 184のエシェレット186と同じ高さまたは曲率半径を持たない。
【0029】
回折格子180を含むレンズは、レンズ110/150および眼科医療機器100と共通の利益を有する。回折格子180の中心からより遠い1つまたは複数のゾーンのエシェレットの高さを繰り返すことにより、光エネルギーのより多くの量を近方視専用とすることができる。瞳孔の大きさがより大きい個人の場合、瞳孔に到達する、より多くの光エネルギーを近方視専用としてもよい。このような個人にとっての近方視は改善されるかもしれない。そのため、回折格子180を含むレンズの各種の実施形態は、様々な瞳孔の大きさを有する様々な患者に使用されてもよい。
【0030】
図8は、レンズ110および/または150等のレンズのための他の例示的実施形態の回折格子190の側面図を示す。図8は正しい縮尺によらない。図8は、ベースカーブが取り除かれた後の回折格子のためのエシェレットの高さを示す。したがって、図8に示される図は水平軸を有する。しかしながら、回折格子190のある前面および/または後面は典型的には湾曲している。回折格子190は、回折格子120、158、160、170および/または180と同様であり、それゆえ、眼科医療機器100に組み込まれてもよい。レンズは、光軸(ゼロ半径で)、屈折要素191、および回折格子190を形成するゾーン192、194、196、および198を含む。ゾーン192、194、196、および198は、それぞれエシェレット193、195、197、および199を含む。屈折要素191、回折格子190、およびゾーン192、194、196、および198は、図1~7に示される同様の要素と同様である。明瞭を期して付記すれば、4つのゾーン192、194、196、および198のみが示されている。しかしながら、他の数のゾーンがあってもよい。ゾーン192、194、196、および198は複数の焦点距離に対応してもよく、光軸からの異なる距離範囲、異なるエシェレット高さ、および異なるエシェレット曲率半径を有していてもよい。少なくともいくつかの実施形態において、ゾーン1 192は、近方視のための、より短い焦点距離に専用の、より多くの光を有し、ゾーン2 194は、遠方視のための、より長い焦点距離に専用の、より多くの光を有する。
【0031】
各ゾーン192、194、196、および198において、それぞれエシェレット193、195、197、および199の高さは一定である。しかしながら、ゾーン間で、エシェレット193、195、197、および199の高さは光軸からの距離が増大するのに伴い減少する。ゾーン1 192、ゾーン2 194、およびゾーン3 196は、予想される方法で累進する。ゾーン4 198はゾーン1 192の繰返しゾーンである。図示されている実施形態において、高さだけが繰り返されている。それゆえ、エシェレット199の曲率半径はエシェレット193のそれと異なる。他の実施形態において、曲率半径は高さの代わりに、または高さに加えて繰り返されてもよい。図示されている実施形態において、ゾーンのパターン全体が繰り返される必要はない。それゆえ、回折格子はゾーン1 192、ゾーン2 194、ゾーン3 196、および繰返しゾーン1(ゾーン4 198における)を含む。したがって、複数のゾーン(ゾーン194および196)がオリジナルのゾーン1 192とゾーン4 198の繰返しゾーン1との間にある。
【0032】
回折格子190を含むレンズは、レンズ110/150および眼科医療機器100と共通の利益を有する。回折格子190の中心からより遠い1つまたは複数のゾーンのエシェレットの高さを繰り返すことにより、光エネルギーのより多くの量を近方視専用とすることができる。瞳孔の大きさがより大きい個人の場合、瞳孔に到達する、より多くの光エネルギーを近方視専用としてもよい。このような個人にとっての近方視は改善されるかもしれない。そのため、回折格子190を含むレンズの各種の実施形態は、様々な瞳孔の大きさを有する様々な患者に使用されてもよい。
【0033】
各種の特徴を、図1~8に示される実施形態の中で強調した。当業者であれば、本明細書に記載の方法およびシステムと矛盾しない方法でこれらの特徴を組み合わせ、および/または、例えばより多くのゾーンへと拡張してもよいことが容易にわかるであろう。
【0034】
図9は、眼科レンズを提供する方法200の例示的実施形態である。単純にするために、いくつかのステップを省き、差し挟み、および/または組み合わせてもよい。方法200もまた、眼科医療機器100および眼科レンズ110に関して説明される。しかしながら、方法200は、同様の眼科医療機器の眼科レンズ110および150ならびに回折格子120、160、170、180、および/または190の1つまたは複数に使用されてもよい。
【0035】
ステップ202により、眼科レンズ110の前面114および後面112のためのベースカーブを特定する。それゆえ、回折格子120が設けられることになる面の曲率と反対面の曲率(もしあれば)が特定される。
【0036】
ステップ204により、下地のベースカーブの上に回折格子120を設ける。それゆえ、1つまたは複数の繰返しゾーンを有する回折格子120の形状が特定されるかもしれない。この形状はまた、ステップ204の中で、前面および/または後面の一部とされる。このようにして、レンズ110の形状が特定され、作られる。
【0037】
方法200を使用することにより、眼科レンズ110、150および/または眼科レンズが提供されてもよい。それゆえ、回折格子120、150、22を有する眼科レンズ110の1つまたは複数の利益が提供されてもよく、その利益が実現される。
【0038】
図9は、患者の眼科的状態を治療するための方法210の例示的実施形態である。単純にするために、いくつかのステップを省き、差し挟み、および/または組み合わせてもよい。方法210もまた、眼科医療機器100および眼科レンズ110の使用に関して説明される。しかしながら、方法210は、回折格子120、150、160、170、180、および/または190を含む眼科レンズ110および/または150の1つまたは複数に使用されてもよい。
【0039】
ステップ212により、患者の眼内に移植するための眼科医療機器100を選択する。眼科医療機器100は、回折格子120を有する眼科レンズ110を含む。それゆえ、格子120、160、170、180、および/または190を含む眼科医療機器100がステップ212で選択されてもよい。選択プロセスの一部は、患者の瞳孔を測定することと、所望の位置において繰り返される適当な領域を有するレンズを持つことが関わってもよい。
【0040】
ステップ214により、眼科医療機器100を患者の眼内に移植する。ステップ214は、患者自身の水晶体を眼科医療機器100と交換するか、患者の水晶体を眼科医療機器で補助することを含んでいてもよい。そして患者の治療が完了されてもよい。いくつかの実施形態において、患者のもう一方の眼内への他の同様の眼科医療機器の移植が実行されてもよい。
【0041】
方法210を使用することにより、前面および/または後面にある回折格子および/または眼科レンズを有する眼科レンズが使用されてもよい。それゆえ、眼科レンズ110の1つまたは複数の利益が実現されてもよい。
【0042】
回折格子を有する眼科レンズ、そのレンズを含む眼科医療機器を提供するための方法およびシステムおよびその眼科医療機器を使用する方法を説明した。この方法およびシステムは、図示されている例示的実施形態にしたがって説明したが、当業者であれば、実施形態に対する変更がありえ、いずれの変更もその方法およびシステムの主旨と範囲に含まれることが容易にわかるであろう。したがって、付属の特許請求の範囲の主旨と範囲から逸脱することなく、数多くの変更が当業者によって加えられてもよい。
図1
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