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特許7379554カバー構造体を有する電気コネクタならびに相手側コネクタおよびコネクタアセンブリ
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  • 特許-カバー構造体を有する電気コネクタならびに相手側コネクタおよびコネクタアセンブリ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】カバー構造体を有する電気コネクタならびに相手側コネクタおよびコネクタアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/447 20060101AFI20231107BHJP
【FI】
H01R13/447
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022019175
(22)【出願日】2022-02-10
(65)【公開番号】P2022124476
(43)【公開日】2022-08-25
【審査請求日】2022-03-22
(31)【優先権主張番号】202141006230
(32)【優先日】2021-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】514095099
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ インディア プライベート リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TE CONNECTIVITY INDIA PRIVATE LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】ゴピ ケイ ティー
(72)【発明者】
【氏名】ハリハラン アイアー カールティック
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/203588(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0025787(US,A1)
【文献】特開2011-258414(JP,A)
【文献】特開2014-203774(JP,A)
【文献】特開2012-109118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/447
H01R 13/44
H01R 13/453
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのコンタクト要素(16)と、前記少なくとも1つのコンタクト要素(16)へのアクセスを制限するためのカバー構造体(20)とを備える電気コネクタ(1)であって、前記カバー構造体(20)は、
前記少なくとも1つのコンタクト要素(16)を離隔した状態で少なくとも部分的に取り囲む壁要素(22)であって、前記部分的に取り囲むことにより、前記壁要素(22)と前記少なくとも1つのコンタクト要素(16)との間に受容領域(28)を画定する、壁要素(22)と、
固定位置(32)から後退位置(34)まで後退方向(36)に沿って前記受容領域(28)内を移動可能なカバー要素(30)と
を備え、
前記少なくとも1つのコンタクト要素(16)は、前記固定位置(32)において前記カバー要素(30)により包囲されており、前記壁要素(22)は、前記固定位置(32)において前記カバー要素(30)を固定するための少なくとも1つの屈曲可能ラッチ部材(38)を備え、
前記少なくとも1つのコンタクト要素(16)は、前記後退方向(36)に沿って延び、前記受容領域(28)と隣接する少なくとも1つのコンタクト面(92)を備え、
前記少なくとも1つのコンタクト面(92)は、前記後退方向(36)に垂直な方向において、前記壁要素(22)により、隔離した状態で全体的に覆われている、
電気コネクタ(1)。
【請求項2】
前記カバー構造体(20)は、前記少なくとも1つのコンタクト要素(16)の少なくとも先端部(AP)を覆うキャップ要素(78)を備える、請求項1に記載の電気コネクタ(1)。
【請求項3】
前記カバー要素(30)は、前記少なくとも1つのコンタクト要素(16)を通過させるための孔(94)を備える、請求項1または2に記載の電気コネクタ(1)。
【請求項4】
前記後退方向(36)に延びる少なくとも1つの案内溝(98)が、前記少なくとも1つのラッチ部材(38)に形成されている、請求項1からのいずれか一項に記載の電気コネクタ(1)。
【請求項5】
前記壁要素(22)は、前記少なくとも1つのコンタクト要素(16)に対して互いに反対側に配置されている少なくとも2つのラッチ部材(38)を備える、請求項1からのいずれか一項に記載の電気コネクタ(1)。
【請求項6】
前記壁要素(22)の外縁部(60)は、前記受容領域(28)に通じるアクセス開口部(62)を画定する、請求項1からのいずれか一項に記載の電気コネクタ(1)。
【請求項7】
前記カバー要素(30)は、前記固定位置(32)と前記後退位置(34)との間で移動可能であり、前記アクセス開口部(62)は、前記固定位置(32)における前記カバー要素(30)によって閉じられ、前記受容領域(28)は、前記カバー要素(30)が前記後退位置(34)にあるときに、前記アクセス開口部(62)を通してアクセス可能である、請求項に記載の電気コネクタ(1)。
【請求項8】
前記カバー要素(30)は、前記少なくとも1つのラッチ部材(38)と係合するための少なくとも1つのブロック機構(74)を備える、請求項1からのいずれか一項に記載の電気コネクタ(1)。
【請求項9】
前記カバー要素(30)は、相手側コネクタ(2)のスナップ要素(122)と作用し合うための少なくとも1つのキャッチ部分(120)を備える、請求項1からのいずれか一項に記載の電気コネクタ(1)。
【請求項10】
前記少なくとも1つのキャッチ部分(120)は、前記カバー要素(30)の側壁(126)と、前記後退方向(36)に沿って前記側壁(126)と平行に延びる片持ち梁(128)を含み、前記側壁(126)および/または前記片持ち梁(128)は、前記側壁(126)および/または前記片持ち梁(128)向かって延びるキャッチ突出部(130)を有している、請求項9に記載の電気コネクタ(1)。
【請求項11】
前記カバー要素(30)は、単一の構成要素である、請求項1から10のいずれか一項に記載の電気コネクタ(1)。
【請求項12】
前記電気コネクタ(1)は、前記カバー構造体(20)の前記壁要素(22)が一体に接続されているコネクタハウジング(6)を備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の電気コネクタ(1)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の電気コネクタ(1)との電気的接続を確立するための相手側コネクタ(2)であって、
前記相手側コネクタ(2)は、前記電気コネクタ(1)の前記少なくとも1つのコンタクト要素(16)と電気的に接触するように構成されている少なくとも1つの相手側コンタクト(64)を備え、
前記相手側コネクタ(2)は、前記電気コネクタ(1)の前記少なくとも1つのラッチ部材(38)を屈曲させるための少なくとも1つの屈曲要素(56)をさらに備える、
相手側コネクタ(2)。
【請求項14】
前記電気コネクタ(1)との接続を形成するために、前記後退方向(36)を向く少なくとも1つのスナップ要素(122)をさらに備える、請求項13に記載の相手側コネクタ(2)。
【請求項15】
請求項1から12のいずれか一項に記載の電気コネクタ(1)と、請求項13または14に記載の相手側コネクタ(2)とを備えるコネクタアセンブリ(4)であって、
前記電気コネクタ(1)の前記少なくとも1つのラッチ部材(38)は、前記少なくとも1つの屈曲要素(56)が前記電気コネクタ(1)の前記受容領域(28)に入るときに、前記相手側コネクタ(2)の前記少なくとも1つの屈曲要素(56)によって屈曲させられる、
コネクタアセンブリ(4)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気コネクタに関し、より具体的には、例えば高電圧および高電流の用途における、カバー構造体を有する電気コネクタに関する。さらに、本発明は、電気コネクタのための相手側コネクタ、ならびに電気コネクタおよび相手側コネクタを有するコネクタアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
電気コネクタは、電気エネルギーおよび/または信号を転送する目的を供する電気的接続を確立するために設けられる。特にエネルギー転送の場合、安全性のリスクが生じるため、これに対処する必要がある。例えば、電気的接続を確立する前に、人の指および器具が電気コネクタの通電部(例えばコンタクト要素)と意図せず接触することを防ぐ必要がある。同時に、電気コネクタの機能の大部分は、コンタクト要素と電気的に接触して係合する相手側コネクタの相手側コンタクトに依拠するため、コンタクト要素は、一定のアクセス性を維持する必要がある。
【0003】
既存の解決策には、コンタクト要素のための手指保護手段を利用するものがある。しかしながら、手指保護手段は、相手側コンタクトに対して小さな間隙を空けることになる場合が多く、それらを通して特に小さな指および薄い器具がコンタクト要素に意図せず到達する場合がある。一方、間隙のない手指保護手段は、取り付けおよび/または取り外しの追加の工程を必要とする場合が多い。これにより、装着プロセスが煩雑になる。最後に、装着プロセス中にそのような追加の工程を必要としない手指保護手段は、損傷しやすいカバー要素を利用する場合が多く、これは絶縁能力が低く、そのため高電圧および高電流を伴う用途には適さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、不要な間隙を空けず、高い絶縁能力を呈し、装着プロセス中に追加の工程を必要としない手指保護手段を備えた電気的接続の手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、少なくとも1つのコンタクト要素と、少なくとも1つのコンタクト要素へのアクセスを制限するためのカバー構造体とを備える電気コネクタを提供することにより実現される。カバー構造体は、少なくとも1つのコンタクト要素を離隔した状態で少なくとも部分的に取り囲む壁要素であって、部分的に取り囲むことにより、壁要素と少なくとも1つのコンタクト要素との間に受容領域を画定する壁要素を備える。カバー構造体は、固定位置から後退位置(格納位置,retracted position)まで後退方向(格納方向,retraction direction)に沿って受容領域内を移動可能なカバー要素をさらに備え、少なくとも1つのコンタクト要素は、固定位置においてカバー要素により包囲されており、壁要素は、固定位置においてカバー要素を固定するための少なくとも1つの屈曲可能ラッチ部材を備える。
【0006】
本開示に関して、「屈曲可能」という用語は、少なくとも1つのラッチ部材が壁要素の他の部分よりも高弾性、高可撓性、高弾力性かつ/または高柔軟性である、少なくとも1つのラッチ部材の特性を指すことを理解されたい。換言すると、少なくとも1つのラッチ部材を屈曲させるのに必要な力は、壁要素の任意の他の部分を同等に屈曲させるよりも小さい。任意選択的に、少なくとも1つのラッチ部材は、カバー要素よりも高い弾性、可撓性、弾力性および/または柔軟性を呈してもよい。
【0007】
本解決策によれば、カバー構造体は、特にカバー要素が固定位置にあるときに、少なくとも1つのコンタクト要素のための、間隙のない手指保護手段を形成し得る。しかしながら、カバー要素は、屈曲可能手段、すなわち少なくとも1つの屈曲可能ラッチ部材によって選択的に固定位置に固定されるのみであり、そうでなければ固定位置を脱するように移動可能であるため、少なくとも1つのコンタクト要素へのアクセスの可能性は完全には排除されない。有利なこととして、この結果、少なくとも1つのコンタクト要素へのアクセスが選択的に制限され、それにより、必要に応じて相手側コネクタの相手側コンタクトが少なくとも1つのコンタクト要素にアクセスすることを可能としつつ、指および器具が少なくとも1つのコンタクト要素に到達することが防止される。
【0008】
さらに、カバー要素を移動可能とすることにより、カバー要素を、固定位置から後退位置へと自動的に移動、例えば摺動するように構成することができる。よって、カバー要素が自動的に後退可能となり、装着プロセス中に追加の工程を行う必要がなくなる。さらに、カバー要素を、後退位置から再び固定位置へと自動的に移動するように構成することができ、それにより、取り外しプロセス中における追加の工程がなくなる。
【0009】
最後に、少なくとも1つの屈曲可能ラッチ部材を壁要素に、すなわちカバー構造体の静止部分に設けることにより、移動可能なカバー要素が特に高い弾性を有することを不必要に要求することがない。それにより、広範な材料をカバー要素に選択することが可能である。特に、材料の絶縁能力を重視して材料の選択を行うことができる。よって、少なくとも1つのコンタクト要素を至近で包囲するカバー要素は、少なくとも1つのコンタクト要素から離隔した壁要素よりも高い絶縁能力を備え得る。これにより、本発明の電気コネクタが、高電圧および高電流の用途に適用可能となる。
【0010】
上記の解決策は、以下の任意選択の特徴のうちの1つまたは複数を加えることにより、さらに改善され得る。ここで、以下の任意選択の特徴の各々は、それ自体が有利であるとともに、独立して任意の他の任意選択の特徴と組み合わされてもよい。
【0011】
電気コネクタの1つの可能な実施形態において、少なくとも1つのコンタクト要素は、後退方向に沿って延び、受容領域と隣接する少なくとも1つのコンタクト面を備えてよい。特に、少なくとも1つのコンタクト面は、受容領域の分だけ壁要素から離隔しながら、受容領域および壁要素に面していてよい。特に、壁要素は、後退方向に垂直な方向からのみ、少なくとも1つのコンタクト面を取り囲んでいてよい。よって、少なくとも1つのコンタクト面は、後退方向に沿って受容領域に挿入される相手側コンタクトからアクセス可能である。好ましくは、少なくとも1つのコンタクト面は、カバー要素によって後退方向において覆われ、それにより、相手側コンタクト以外のものが少なくとも1つのコンタクト面にアクセスすることを防止するように保護される。
【0012】
任意選択的に、少なくとも1つのコンタクト要素は、銅および/または他の導電性材料から作製されたタブ状コンタクトである。代替的に、少なくとも1つのコンタクト要素は、ピン状、スリーブ状、フォーク状であってもよく、または電気コンタクト要素に一般的な任意の他の形状を有していてもよい。さらに、少なくとも1つのコンタクト要素は、その両側に2つのコンタクト面を有していてよい。2つのコンタクト面は、外方かつ互いに逆方向に面していてよい。代替的に、2つのコンタクト面は、内方に互いに向かって面していてもよい。
【0013】
別の実施形態によれば、カバー構造体は、少なくとも1つのコンタクト要素の少なくとも先端部を覆うキャップ要素をさらに備えてよい。キャップ要素は、少なくとも1つのコンタクト要素の先端部に機械的に取り付けられ、接着され、オーバーモールドされ、または他の方法で固定されてよい。好ましくは、キャップ要素は、後退方向において少なくとも1つのコンタクト要素の先端部を覆う。換言すると、キャップ要素は、後退方向からのアクセスに対して先端部を保護する。
【0014】
任意選択的に、キャップ要素は、少なくとも1つのコンタクト要素の少なくとも1つの側縁部に沿ってさらに延びていてよい。好ましくは、キャップ要素は、少なくとも1つのコンタクト要素の2つの対向する側縁部に沿って延び、それにより少なくとも1つのコンタクト要素を少なくとも部分的に囲んでいてよい。よって、キャップ要素は、後退方向に垂直に少なくとも1つのコンタクト要素の側縁部を覆っていてよい。
【0015】
別の可能な実施形態によれば、壁要素は、キャップ要素とともに、DIN-EN規格60592に準拠する少なくとも1つのコンタクト要素のための手指保護手段を形成する。換言すると、DIN-EN規格60592において規定される寸法を有するフィンガープローブが少なくとも1つのコンタクト要素に到達することが、壁要素および/またはキャップ要素によって妨げられる。
【0016】
さらに別の可能な実施形態によれば、壁要素、キャップ要素および固定位置におけるカバー要素は、DIN-EN規格60592およびUL規格60950に準拠する少なくとも1つのコンタクト要素のための手指保護手段を共に形成する。換言すると、DIN-EN規格60592に規定される寸法を有するフィンガープローブ、およびUL規格60950に規定される寸法を有するフィンガープローブのいずれも、壁要素、キャップ要素および/または固定位置におけるカバー要素によって妨げられるために、コンタクト要素に到達し得ない。
【0017】
カバー要素の移動を案内し、それにより安定させるために、カバー要素は、少なくとも1つのコンタクト要素および/またはキャップ要素を通過させるための孔を備えてよい。孔は、特に、カバー要素を通して後退方向に延びるスリットであってよい。孔は、上記のフィンガープローブのいずれかの進入を防止するのに十分な薄さであることが好ましい。さらに、孔は、後退方向に垂直なキャップ要素の断面と相補的な形状であってよく、それにより、少なくとも1つのコンタクト要素を囲むキャップ要素の通過を可能としつつ、それらの間の間隙を最小限に保つ。代替的にまたは追加的に、孔は、少なくとも1つのコンタクト要素の少なくとも1つのコンタクト面または2つのコンタクト面との接触が生じないことが確実となるように、少なくとも1つのコンタクト要素との間に一定の空間を有する形状であってもよい。
【0018】
後退方向に延びる少なくとも1つの案内溝を少なくとも1つのラッチ部材に形成することにより、別の案内機能が実現されてもよい。少なくとも1つの案内溝は、下記でさらに詳細に説明するように、カバー要素の一部および/または相手側コネクタの一部を受けるように構成されてよい。
【0019】
安全性および冗長性を高めるために、壁要素は、少なくとも1つのコンタクト要素に対して互いに反対側に配置された少なくとも2つのラッチ部材を備えてよい。各ラッチ部材は、カバー要素を移動させないように固定位置に固定してよい。特に、各ラッチ部材は、後退方向と逆方向を向き、カバー要素に対する当接面として働く少なくとも1つのブロック面を備えてよい。
【0020】
さらに、各ラッチ部材は、後退方向に対して斜めに延びる少なくとも1つの傾斜面を備えてよい。各傾斜面は、相手側コネクタのための引き込み面取り(引き込み面取り部,lead-in chamfer)の目的を果たす。下記でさらに説明するように、相手側コネクタは、電気コネクタおよび相手側コネクタが装着されたときに少なくとも1つの傾斜面と係合するような位置および向きとされた反転面を有する少なくとも1つの屈曲要素を備えてよい。特に、前記係合により、少なくとも1つのラッチ部材が屈曲する。
【0021】
相手側コネクタの相手側コンタクトの挿入のための位置を明確かつ視認可能に示すために、壁要素の外縁部は、受容領域に通じるアクセス開口部を画定してよい。好ましくは、アクセス開口部は、相手側コンタクトがアクセス開口部を通して受容領域に挿入されるように、後退方向に開口していてよい。
【0022】
相手側コネクタ自体の挿入のための位置を明確かつ視認可能に示すために、電気コネクタは、コネクタ面を形成するコネクタハウジングをさらに備えてよい。コネクタ面は、相手側コネクタの相補的に形成された雌コネクタ面に挿入されるように構成された雄コネクタ面であってよい。代替的に、電気コネクタのコネクタ面は、相手側コネクタの雄コネクタ面を受けるように適合された雌コネクタ面であってよい。雄コネクタ面および雌コネクタ面は、装着方向に沿って装着されてよい。装着方向は、後退方向と平行であることが好ましい。
【0023】
電気エネルギー転送の目的において、少なくとも1つのコンタクト要素は、コネクタハウジング内の電気ケーブルの導体にはんだ付けされ、圧着され、溶接され、かつ/または任意の他の従来の成端技法により接続されてよい。さらに、上述の引っ込み領域は、コネクタハウジング内にあってよい。
【0024】
カバー構造体は、コネクタハウジングによって具現されてもよく、または別体としてコネクタハウジングに組み付けられていてもよい。代替的に、カバー構造体の一部、すなわち壁要素などが、コネクタハウジングに一体に接続されていてもよい。カバー構造体の他の部分、すなわちカバー要素などは、別個の構成要素としてコネクタハウジングに組み付けられていてよい。
【0025】
任意選択的に、カバー要素は、後退位置から固定位置へと移動可能である。好ましくは、カバー要素は、固定位置と後退位置との間で往復移動可能であり、アクセス開口部は、固定位置におけるカバー要素によって閉じられ、受容領域は、カバー要素が後退位置にあるときに、アクセス開口部を通してアクセス可能である。それにより、アクセス開口部は、繰り返し開閉されることで、必要に応じて少なくとも1つのコンタクト要素へのアクセスを制限し得る。
【0026】
固定位置において、カバー要素は、受容領域を少なくとも部分的に、好ましくはその大部分を占有していてよい。特に、カバー要素は、カバー要素が固定位置にあるときにアクセス開口部を塞ぐ少なくとも1つのプレート部分を備えてよい。好ましくは、カバー要素が固定位置にあるとき、コンタクト要素は、後退方向においてプレート部分を越えた位置にある。そのため、それぞれのコンタクト要素をアクセス可能とするまでには、カバー要素の一定の移動距離が必要である。これにより、カバー要素が強く押された場合でも、一定レベルの保護がもたらされる。
【0027】
後退位置において、受容領域は、カバー要素によって空けられてよい。換言すると、カバー要素が後退位置に移動されると、コンタクト面などのコンタクト要素の少なくとも一部が、カバー要素によって包囲されなくなり、また覆われなくなる。特に、カバー要素は、後退方向において受容領域と位置合わせされた引っ込み領域へと移動されてよい。好ましくは、引っ込み領域は、受容領域に対してアクセス開口部の反対側に位置する。引っ込み領域は、受容領域よりも小さい空き幅(正幅,内法幅,clear width)を有していてよい。空き幅は、特に後退方向に対して測定される。
【0028】
別の可能な実施形態によれば、カバー要素は、少なくとも1つのラッチ部材と係合するための少なくとも1つのブロック機構を備えてよい。例えば、少なくとも1つのブロック機構は、後退方向に垂直にカバー要素のプレート部分から延びる、ペン先状のブロック突出部であってよい。ブロック突出部は、屈曲していない状態の少なくとも1つのラッチ部材の少なくとも1つのブロック面と位置合わせされてよい。それにより、ブロック突出部は、後退方向において少なくとも1つのラッチ部材と当接してよい。これにより、カバー要素が、製造が容易な機構によって固定位置に維持されることになる。
【0029】
少なくとも1つのラッチ部材または両方のラッチ部材が、例えばカバー要素から離れる方向に屈曲した場合、少なくとも1つのブロック面およびブロック突出部または両方のブロック面および対応するブロック突出部は位置ずれし、よって互いに当接しなくなる。これにより、カバー要素が解放され、後退位置へと移動させることが可能になる。
【0030】
代替的実施形態によれば、少なくとも1つのブロック機構は、後退方向に垂直にプレート部分を通して延びる切り欠きであってよい。その結果、少なくとも1つのブロック面は、例えば、少なくとも1つのラッチ部材から切り欠きへと延びる止め突出部に形成されてよい。他の機能は、上述のものと同様であってよい。
【0031】
好ましくは、カバー要素は、壁要素のラッチ部材ごとに少なくとも1つのブロック機構を備える。各ラッチ部材は、少なくとも2つのブロック面を備えてよい。したがって、カバー要素は、ブロック面ごとに少なくとも1つのブロック機構を備えてよい。この結果として、ブロック機構とブロック面とを当接させている間の安定性が向上する。
【0032】
別の可能な実施形態によれば、カバー要素は、相手側コネクタのスナップ要素と作用し合うための少なくとも1つのキャッチ部分を備えてよい。下記でさらに説明するように、相手側コネクタは、少なくとも1つのキャッチ部分とのスナップ嵌め接続(snap-fit connection)などの接続を形成するための少なくとも1つのスナップ要素を備えてよい。
【0033】
コスト低減のために、カバー要素は、好ましくは樹脂から成形された、単一の構成要素であってよい。代替的に、カバー要素は、付加製造により製造され、かつ/または他の電気絶縁性材料から作製されてもよい。
【0034】
本発明の別の態様は、電気コネクタのカバー構造体のためのカバー要素に関することを理解されたい。カバー要素は、上述の特徴の任意の組み合わせを有してよい。カバー要素は、電気コネクタのカバー構造体に容易に組み付けることができ、そこにおいて上述の機能を果たし、それにより最初の目的を少なくとも部分的に実現するので、有利である。
【0035】
本発明のまた別の態様は、電気コネクタのカバー構造体に関する。カバー構造体は、上述の特徴の任意の組み合わせを有してよい。よって、カバー構造体は、上述の機能を果たし、それにより最初の目的を少なくとも部分的に実現し得るので、有利である。
【0036】
最初の目的はまた、上記の実施形態のいずれかに係る電気コネクタとの電気的接続を確立するための相手側コネクタにより、少なくとも部分的に実現される。相手側コネクタは、電気コネクタの少なくとも1つのコンタクト要素に電気的に接触するための少なくとも1つの相手側コンタクトと、電気コネクタの少なくとも1つのラッチ部材を屈曲させるための少なくとも1つの屈曲要素とを備える。
【0037】
この相手側コネクタは、装着プロセス中のいかなる追加の工程も必要とせずに、電気コネクタのカバー要素が自動的に固定位置から解放されることを可能とするように電気コネクタと協働することができるので、有利である。さらに、相手側コネクタは、電気コネクタのカバー構造体による少なくとも1つのコンタクト要素へのアクセスの制限を選択的に解除するように用いることができる。よって、電気コネクタのカバー構造体は、電気コネクタの機能を制限することなく、電気コネクタの少なくとも1つのコンタクト要素のための間隙のない手指保護手段を形成することができる。
【0038】
相手側コネクタは、上記で既に説明したように、電気コネクタの雄コネクタ面を受けるように構成された雌コネクタ面を有する相手側ハウジングを備えてよい。相手側ハウジングは、電気コネクタのカバー構造体と相補的に形成された対応するカバー構造体を備えてよい。好ましくは、対応するカバー構造体は、不要な間隙が生じることを防止するために、電気コネクタのカバー構造体に精密に嵌合する。特に、相手側ハウジングは、雌コネクタ面内に配置された相手側カバーを備えてよい。相手側カバーは、相手側コンタクトごとに、装着方向に沿って延びる柱状のコンタクトガードを備えてよい。各コンタクトガードは、対応する相手側コンタクトを取り囲んでいてよい。さらに、各コンタクトガードは、電気コネクタの受容領域と相補的に形成されていてよい。各コンタクトガードは、電気コネクタのキャップ要素と相補的な形状のスロットをさらに有していてよい。任意選択的に、スロットの形状は、電気コネクタのカバー要素の孔の形状と合同であってよい。
【0039】
相手側コネクタの1つの可能な実施形態によれば、少なくとも1つの屈曲要素は、相手側コネクタの相手側ハウジングに、特にコンタクトガードの頂面に形成された隆起状または角柱状の膨出部であってよい。前記膨出部は、上述した反転面を呈してよい。コンタクトガードを受容領域に挿入する前および/またはその間に、反転面および各ラッチ部材の傾斜面は、互いに沿って摺動する。これらの面は、装着方向に対して斜めに延びているので、装着方向における相手側コネクタの移動が、装着方向に垂直なラッチ部材の移動に変換される。換言すると、ラッチ部材は、屈曲要素によって側方から押し込まれ、それにより、ラッチ部材がカバー要素から離れるように屈曲する。上記で既に説明したように、そのような屈曲によって、それぞれのブロック面およびブロック機構が位置ずれし、当接しなくなる。したがって、カバー要素が解放される。好ましくは、カバー要素は、相手側コネクタを用いてのみ解放することができる。
【0040】
任意選択的に、少なくとも1つのラッチ部材は、少なくとも1つの屈曲要素が受容領域を出るときにも屈曲する。
【0041】
上記で導入された少なくとも1つの案内溝は、相手側コネクタの少なくとも1つの屈曲要素および/またはカバー要素のブロック機構を受け入れるように構成されてよい。相手側コネクタおよび/またはカバー要素の移動を案内し安定させることに加え、この特徴は、以下の機能をさらに果たす。
【0042】
少なくとも1つのラッチ部材の破断を防止するために、少なくとも1つのラッチ部材は、少なくとも1つの屈曲要素が電気コネクタの対応する受容領域に入るときにのみ屈曲する。換言すると、少なくとも1つのラッチ部材は、少なくとも1つの屈曲要素がアクセス開口部内にあるときにのみ屈曲する。少なくとも1つの屈曲要素がアクセス開口部から引っ込み領域に向かって移動することに伴い、少なくとも1つの屈曲要素は、対応するラッチ部材に形成された案内溝のうちの1つに受け入れられる。特に、少なくとも1つの屈曲要素は、案内溝内に全体が収容され、それにより、対応するラッチ部材と機械的に干渉しなくなる。
【0043】
同様に、各ブロック機構も、カバー要素が固定位置にあるときを除いて対応するラッチ部材と機械的に干渉しないように、案内溝のうちの1つに受け入れられ、全体が収容される。
【0044】
別の可能な実施形態によれば、相手側コネクタは、電気コネクタ、特に電気コネクタの少なくとも1つのキャッチ部分とのスナップ嵌め接続などの接続を形成するために、後退方向を向く少なくとも1つのスナップ要素をさらに備えてよい。前記スナップ嵌め接続により、カバー要素が、後退方向に沿った相手側コネクタの移動に密接に追従することが可能となる。特に、カバー要素は、それ自体の重力によって後退位置に移動しない。換言すると、カバー要素は、相手側コネクタとのスナップ嵌め接続が設けられている限り、引っ込み領域に落下しない。カバー要素は、相手側コネクタによって押されたときにのみ、後退位置へと移動する。
【0045】
したがって、相手側コネクタが例えば取り外しプロセスの間に後退方向と逆方向に移動されたときに、カバー要素は、引っ込み領域から引き抜かれ、スナップ嵌め接続を介して相手側コネクタによって固定位置に戻される。それにより、カバー要素が固定位置から解放された後に相手側コネクタとカバー要素との間に間隙が発生することが、常に防止される。
【0046】
追加的にまたは代替的に、カバー要素を固定位置に向かって後退位置から脱するように付勢するために、コイルスプリングなどの弾力性の位置復元要素を用いることができる。
【0047】
また別の可能な実施形態によれば、少なくとも1つのスナップ要素は、相手側コネクタに形成され、装着方向と逆方向を向くフック状、ノブ状またはリブ状の突起であってよい。特に、少なくとも1つのスナップ要素は、コンタクトガードの頂面に形成されてよい。これは、少なくとも1つのスナップ要素の、製造が容易な実施形態を表す。
【0048】
少なくとも1つのキャッチ部分は、カバー要素の側壁と、後退方向に沿って側壁と平行に延びる可撓性の片持ち梁とによって形成されてよい。側壁および/または片持ち梁は、それぞれ片持ち梁または側壁に向かって延びるキャッチ突出部を有してよい。代替的に、少なくとも1つのキャッチ部分は、互いに平行に延びる2つの可撓性の片持ち梁によって形成されてもよい。
【0049】
よって、少なくとも1つのスナップ要素は、少なくとも1つのキャッチ部分に受けられてよい。少なくとも1つのスナップ要素が少なくとも1つのキャッチ部分に受けられると、スナップ嵌め接続が確立されてよい。
【0050】
カバー要素が固定位置となるまで、スナップ要素がキャッチ部分から脱落しないことを確実にするために、キャッチ部分は、カバー要素が固定位置にあるときよりも、カバー要素が後退位置にあるときにより高い剛性を呈してよい。これは、以下のように実現することができる。
【0051】
カバー要素の後退位置において、片持ち梁は、引っ込み領域内に位置付けられる。特に、上述の引っ込み領域の空き幅は、片持ち梁が壁要素に寄り掛かるような幅である。よって、片持ち梁は、その移動が制限され、またはその可撓性を完全に失う。それにより、少なくとも1つのスナップ要素は、少なくとも1つのキャッチ部分内に堅固に保持される。
【0052】
この場合、「堅固に保持される」という用語は、スナップ要素をキャッチ部分から引き抜くために必要な力が、カバー要素の重量による力、および/または、カバー要素と電気コネクタの他の部分との間に働く摩擦力よりも大きい状態を指す。
【0053】
カバー要素の固定位置において、片持ち梁は、受容領域内に位置付けられる。上述のように受容領域の空き幅は引っ込み領域と比較して大きいため、片持ち梁は、壁要素から離隔し、それによりその可撓性を維持する。その結果、少なくとも1つのスナップ要素は、少なくとも1つのキャッチ部分に対して容易に出入りすることができる。
【0054】
「容易に出入りする」という用語は、スナップ要素をキャッチ部分に挿入するとともに、スナップ要素をキャッチ部分から引き抜くために必要な力が、カバー要素と電気コネクタの他の部分との間に働く抵抗力よりも小さい状態を指すことを理解されたい。前記抵抗力は、例えば、カバー要素に形成され、壁要素とラッチ接続で係合するフック状のアンカーラッチに起因するものであってよい。
【0055】
冗長性および/または安定性のために、相手側コネクタは、複数のスナップ要素を備えてよい。したがって、各カバー要素は、スナップ要素ごとに1つのキャッチ部分を備えてよい。代替的に、スナップ要素およびキャッチ部分の配置は、電気コネクタと相手側コネクタとの間で逆転してもよい。
【0056】
別の可能な実施形態によれば、電気コネクタは、複数のコンタクト要素を備えてよい。この場合、カバー構造体は、コンタクト要素ごとに、壁要素、カバー要素および/またはキャップ要素を備えることが好ましい。安定性の向上のために、壁要素は、互いに一体に接続されていてよい。代替的に、カバー構造体は、全てのコンタクト要素について1つの壁要素を備えてもよい。また、代替的に、カバー構造体は、全てのコンタクト要素について1つのカバー要素を備えてもよい。
【0057】
最初の目的はまた、それぞれ上記で説明した実施形態のいずれか1つに係る電気コネクタおよび相手側コネクタを備えるコネクタアセンブリによって実現される。電気コネクタの少なくとも1つのラッチ部材は、少なくとも1つの屈曲要素が電気コネクタの受容領域に入るときに、相手側コネクタの少なくとも1つの屈曲要素によって屈曲させられる。
【0058】
本発明のコネクタアセンブリは、本発明の電気コネクタおよび相手側コネクタの上記で説明した特徴および利点を用いるため、有利である。特に、カバー要素は、相手側コネクタにより、固定位置から自動的に解放され、後退位置へと押し込まれる。よって、装着プロセス中に追加の工程が必要とされない。
【0059】
任意選択的に、電気コネクタおよび相手側コネクタの一方が、装着プロセスを容易にするためのレバーを備えてよい。さらに、電気コネクタおよび相手側コネクタの一方が、装着状態において電気コネクタと相手側コネクタとの間に介在する封止要素を任意選択的に備えてよい。
【0060】
本開示においてなされる規格に対するあらゆる参照(例えばDIN-EN規格、UL規格等)は、出願時における現行の規格を参照するものとして理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】本開示の1つの可能な実施形態に係る電気コネクタの部分的に分解した模式的斜視図である。
図2図1に示す実施形態に係る電気コネクタの模式的斜視図である。
図3図1に示す実施形態に係る電気コネクタの別の模式的斜視図である。
図4】本開示の1つの可能な実施形態に係る相手側コネクタの模式的断面図である。
図5】本開示の1つ可能な実施形態に係るコネクタアセンブリの詳細断面図である。
図6図5に示す実施形態に係るコネクタアセンブリの模式的断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下、本発明に係る電気コネクタ1の例示的実施形態の構造を、図1から図3を参照して説明する。図4は、本発明に係る相手側コネクタ2の例示的実施形態の構造を説明するために用いられる。さらに、図5および図6は、本発明の例示的実施形態に係るコネクタアセンブリ4の構造および機能を説明するために用いられる。
【0063】
図1図3は、本開示の例示的実施形態に係る電気コネクタ1の斜視図を示す。電気コネクタ1は、コネクタ面8を形成するコネクタハウジング6を備えてよい。図示の例示的実施形態において、コネクタ面8は、相手側コネクタ2(図4参照)の相補的に形成された雌コネクタ面8bに挿入されるように構成された雄コネクタ面8aである。代替的に、電気コネクタ1のコネクタ面8は、相手側コネクタ2の雄コネクタ面を受けるように適合された雌コネクタ面であってもよい。雄コネクタ面8aおよび雌コネクタ面8bは、装着方向14に沿って装着されてよい。
【0064】
電気コネクタ1は、少なくとも1つの導電性コンタクト要素16(図3参照)を備えてよい。少なくとも1つのコンタクト要素16は、例えば、装着方向14を向くタブ状コンタクト18であってよい。代替的に、少なくとも1つのコンタクト要素16は、ピン状、スリーブ状、フォーク状であってもよく、または電気コンタクト要素に一般的な任意の他の形状を有していてもよい。少なくとも1つのコンタクト要素16は、コネクタハウジング6内の電気ケーブル(不図示)の導体(不図示)にはんだ付けされ、圧着され、溶接され、かつ/または任意の他の従来の成端技法により接続されてよい。
【0065】
図示の例示的実施形態において、電気コネクタ1は、2つのコンタクト要素16を備える。特に、電気コネクタ1は、装着方向14に沿って互いと平行に延びる2つのコンタクト要素16を備える。しかしながら、コンタクト要素16の数および/または向きは、電気コネクタ1の用途に従って適合されてよい。
【0066】
見ることができるように、電気コネクタ1は、コンタクト要素16へのアクセスを制限するための、好ましくは絶縁性のカバー構造体20をさらに備える。カバー構造体20は、コネクタハウジング6によって具現されてもよく、または別体としてコネクタハウジング6に組み付けられていてもよい。代替的に、カバー構造体20の一部が、コネクタハウジング6に一体に接続されていてもよい。他の部分は、別個の構成要素としてコネクタハウジング6に組み付けられていてよい。
【0067】
カバー構造体20は、好ましくは静止した壁要素22を備える。壁要素22は、例えば、コネクタハウジング6に一体に接続されていてよい。図示の例示的実施形態において、カバー構造体20は、コンタクト要素16ごとに1つの壁要素22を備える。各壁要素22は、対応するコンタクト要素16を、離隔した状態で少なくとも部分的に取り囲む。特に、各壁要素22は、対応するコンタクト要素16と平行に、かつ対応するコンタクト要素16から離隔して延びる複数の壁部分24を備える。各壁要素22の壁部分24は、対応するコンタクト要素16の周囲に閉じた形状で配置されていてよい。特に、壁部分24は、対応するコンタクト要素16の周囲に、実質的に直方体のボックス状のエンクロージャ(enclosure)26を形成してよい。各壁要素22と対応するコンタクト要素16との間には、受容領域28が画定される(図3参照)。
【0068】
カバー構造体20は、好ましくは後退可能なカバー要素30をさらに備える。カバー要素30は、好ましくは樹脂から成形された、単一の構成要素であってよい。代替的に、カバー要素30は、付加製造により製造され、かつ/または他の電気絶縁性材料から作製されてもよい。コンタクト要素16ごとに、カバー構造体20は1つのカバー要素30を備えることが好ましい。
【0069】
各カバー要素30は、対応する壁要素22とコンタクト要素16との間の受容領域28内で移動可能、好ましくは摺動可能である。各カバー要素30は、図2に示すように、固定位置32へと移動することができる。さらに、各カバー要素30は、図3に示すように、後退位置34へと移動することができる。特に、各カバー要素30は、後退方向36に沿って固定位置32から後退位置34まで移動可能である。後退方向36は、装着方向14と平行であることが好ましい。好ましくは、各カバー要素30は、固定位置32と後退位置34との間で往復移動可能である。
【0070】
それぞれのコンタクト要素16は、固定位置32における対応するカバー要素30によって包囲される。特に、それぞれのコンタクト要素16は、後退方向36において、かつ任意選択的に後退方向36に垂直な方向において、対応するコンタクト要素16によって覆われる。対応するカバー要素30が後退位置34に移動されると、コンタクト要素16の少なくとも一部が、対応するカバー要素30によって包囲されなくなり、また覆われなくなる。
【0071】
カバー要素30を固定位置32に固定するために、対応する壁要素22は、少なくとも1つの屈曲可能ラッチ部材38を備える。特に、少なくとも1つの屈曲可能ラッチ部材38は、下記でさらに詳細に説明するように、カバー要素30が後退位置34に移動することを選択的に妨げる。
【0072】
少なくとも1つの屈曲可能ラッチ部材38は、図5において見ることができるように、壁部分24のうちの1つに一体に接続された支持端42と、後退方向36と逆方向に延びる自由端44とを有する片持ちフラップ40であってよい。代替的に、支持端42は、ヒンジ(不図示)を介して対応する壁部分24に接続されていてもよい。
【0073】
「屈曲可能」という用語は、少なくとも1つのラッチ部材38が壁要素22の他の部分よりも高弾性、高可撓性、高弾力性かつ/または高柔軟性である、少なくとも1つのラッチ部材38の特性を指すことを理解されたい。換言すると、少なくとも1つのラッチ部材38を屈曲させるのに必要な力は、壁要素22の任意の他の部分を同等に屈曲させるよりも小さい。任意選択的に、少なくとも1つのラッチ部材38は、カバー要素30の任意の部分よりも高い弾性、可撓性、弾力性および/または柔軟性を呈してもよい。
【0074】
任意選択的に、壁要素22は、対応するコンタクト要素16に対して互いに反対側に配置された少なくとも2つのラッチ部材38を備えてよい。図1図3の図示の例示的実施形態において、各壁要素22は、一対のそのようなラッチ部材38を有する。各ラッチ部材38は、後退方向36と逆方向を向き、対応するカバー要素30に対する当接面48として働く少なくとも1つのブロック面46を備える。少なくとも1つのブロック面46は、片持ちフラップ40により具現された対応するラッチ部材38の自由端44の縁部50に形成されることが好ましい。
【0075】
各ラッチ部材38は、後退方向36に対して斜めに延びる少なくとも1つの傾斜面52をさらに備えてよい。少なくとも1つの傾斜面52も、好ましくは、片持ちフラップ40により具現された対応するラッチ部材38の自由端44の縁部50に形成されてよい。各傾斜面52は、相手側コネクタ2のための引き込み面取り54として機能する(図6参照)。
【0076】
下記でさらに詳細に図4を参照して説明するように、相手側コネクタ2は、電気コネクタ1および相手側コネクタ2が装着されたときに少なくとも1つの傾斜面52と係合するような位置および向きとされた反転面58を有する少なくとも1つの屈曲要素56を備えてよい。特に、前記係合により、少なくとも1つの傾斜面52が一部をなす対応するラッチ部材38が屈曲する。
【0077】
図3において見ることができるように、各壁要素22の外縁部60は、受容領域28に通じるアクセス開口部62を画定してよい。特に、カバー要素30が後退位置34にあるときに、相手側コネクタ2の相手側コンタクト64を、それぞれのアクセス開口部62を通して対応する受容領域28に挿入することができる。換言すると、アクセス開口部62は、対応するカバー要素30が後退位置34にあるときに、装着方向14に開口する。特に、それぞれの受容領域28、およびその結果として対応するアクセス開口部62は、後退位置34における対応するカバー要素30によって空けられる。後退位置34における各カバー要素30は、後退方向36において受容領域28と位置合わせされた引っ込み領域66へと移動している(図6参照)。引っ込み領域66は、対応する受容領域28に対してアクセス開口部62の反対側に位置する。さらに、引っ込み領域66は、コネクタハウジング6内にあってよい。
【0078】
図6の断面図において見ることができるように、各受容領域28は、対応する引っ込み領域66の空き幅70よりも大きい空き幅68を有していてよい。空き幅68、70は、特に後退方向36に対して測定される。
【0079】
一方、固定位置32におけるそれぞれのカバー要素30は、主に受容領域28を占有する。特に、それぞれのアクセス開口部62は、固定位置32における対応するカバー要素30によって閉じられる。このために、各カバー要素30は、カバー要素30が固定位置32にあるときに対応するアクセス開口部62を塞ぐプレート部分72を備えてよい。
【0080】
各カバー要素30の固定位置32において、対応するコンタクト要素16は、後退方向36においてプレート部分72を越えた位置にある。そのため、それぞれのコンタクト要素16をアクセス可能とするまでには、それぞれのカバー要素30の一定の移動距離が必要である。
【0081】
各カバー要素30が固定位置32にあるカバー構造体20は、UL規格60950およびDIN-EN規格60592に準拠するあらゆるコンタクト要素16のための手指保護手段を提供する。少なくとも1つのカバー要素30が後退位置34にあるカバー構造体20であっても、少なくとも、DIN-EN規格60592に準拠するあらゆるコンタクト要素16のための手指保護手段を提供する。これについて、下記でさらに詳細に説明する。
【0082】
図5の断面図において見ることができるように、各カバー要素30は、対応する壁要素22の少なくとも1つのラッチ部材38と係合するための少なくとも1つのブロック機構74を備えてよい。好ましくは、各カバー要素30は、ラッチ部材38ごとに少なくとも1つのブロック機構74を備える。各ブロック機構74は、後退方向36に垂直にプレート部分72から延びる、ペン先状の突出部76であってよい。さらに、各ブロック機構74は、後退方向36において、対応する屈曲していないラッチ部材38の1つのブロック面46と位置合わせされていてよい。それにより、各ブロック機構74は、後退方向36において対応する屈曲していないラッチ部材38に当接してよい。これにより、カバー要素30が固定位置32に維持されることになる。
【0083】
少なくとも1つのラッチ部材38が、例えば対応するカバー要素30から離れる方向に屈曲した場合、それぞれのブロック面46およびブロック機構74は位置ずれし、よって互いに当接しなくなる。これにより、対応するカバー要素30が解放され、後退位置34へと移動させることが可能になる。
【0084】
不図示の代替的実施形態によれば、少なくとも1つのブロック機構は、後退方向36に垂直にプレート部分72を通して延びる切り欠き(不図示)であってよい。その結果、少なくとも1つのブロック面46は、例えば、対応するラッチ部材38の自由端44から、切り欠きにより具現された少なくとも1つのブロック機構へと延びる止め突出部(不図示)に形成されてよい。他の機能は、上述のものと同様であってよい。
【0085】
図3において見ることができるように、各コンタクト要素16は、後退方向36に沿って延びる少なくとも1つのコンタクト面92を備えてよい。さらに、少なくとも1つのコンタクト面92は、対応する受容領域28と隣接していてよい。加えて、少なくとも1つのコンタクト面92は、後退方向36に垂直な方向において、対応する壁要素22の1つの壁部分24により、離隔した状態で覆われていてよい。少なくとも1つのコンタクト面92はまた、固定位置32における対応するカバー要素30により後退方向36において覆われていてもよい。これにより、下記でさらに詳細に説明するように、相手側コンタクト64以外のものが対応するコンタクト要素16にアクセスすることが防止される。
【0086】
図3の例示的実施形態に示すタブ状コンタクト要素16は、コンタクト要素16に対して外方に面する、コンタクト要素16の両側の2つのコンタクト面92を備える。特に、各コンタクト面92は、受容領域28の分だけ対応する壁要素22から離隔しながら、対応する受容領域28および壁要素22に面する。よって、各コンタクト面92は、受容領域28に挿入される相手側コネクタ2の相手側コンタクト64(図5参照)からアクセス可能である。
【0087】
代替的に、コンタクト要素16は、内方に面するコンタクト面(不図示)を備えてもよい。
【0088】
カバー構造体20は、好ましくはコンタクト要素16ごとに、キャップ要素78をさらに備えてよい。キャップ要素78は、対応するコンタクト要素16の少なくとも先端部80を覆う。特に、キャップ要素78は、対応するコンタクト要素16の先端部80に隣接する頂部82を備える。頂部82は、後退方向36において先端部80を覆う。換言すると、頂部82は、後退方向36からのアクセスに対して先端部80を保護する。このために、頂部82は、先端部80に機械的に取り付けられ、接着され、オーバーモールドされ、または他の方法で固定されてよい。
【0089】
キャップ要素78は、対応するコンタクト要素16の少なくとも1つの側縁部86に沿って延びる少なくとも1つの側部84をさらに備えてよい。図3に示すように、キャップ要素78は、対応するコンタクト要素16の2つの対向する側縁部86に沿って後退方向36にそれぞれ延びる2つの側部84を備えてよい。特に、頂部82および側部84は一体に接続されていてよく、それにより、キャップ要素78が対応するコンタクト要素16を少なくとも部分的に囲むことが可能となる。
【0090】
キャップ要素78の頂部82は、キャップ要素78の側部84の材料幅90よりも小さい材料幅88を呈してよい。材料幅88、90は、後退方向36に垂直な方向に測定される。特に、材料幅88、90は、対応するコンタクト要素16のコンタクト面92に垂直な方向に測定される。よって、後退方向36に垂直な断面において、キャップ要素78は、二重T字状の断面形状(double T-shaped profile)を呈してよい。
【0091】
壁要素22は、キャップ要素78とともに、対応するコンタクト要素16のための手指保護手段を形成する。特に、DIN-EN規格60592に準拠する手指保護手段が、それによって確立される。換言すると、DIN-EN規格60592において規定される寸法を有するフィンガープローブ(不図示)が対応するコンタクト要素16のコンタクト面92に到達することが、壁要素22および/またはキャップ要素78によって妨げられる。
【0092】
加えて、壁要素22、キャップ要素78および固定位置32におけるカバー要素30はまた、対応するコンタクト要素16のための手指保護手段を共に形成する。特に、DIN-EN規格60592およびUL規格60950それぞれに準拠する手指保護手段が、それによって確立される。換言すると、DIN-EN規格60592に規定される寸法を有するフィンガープローブ、およびUL規格60950に規定される寸法を有するフィンガープローブ104のいずれも、壁要素22、キャップ要素78および/または固定位置32におけるカバー要素30によって妨げられるために、対応するコンタクト要素16のコンタクト面92に到達し得ない。このことは図1に例示されており、UL規格60950に準拠する2つのフィンガープローブ104が、それぞれ後退方向36に沿って、また後退方向36に垂直に、受容領域28に入ることが防止されている。
【0093】
各カバー要素30は、対応するコンタクト要素16および/または対応するキャップ要素78を通過させるための孔94を備えてよい。孔94は、特に、後退方向36に延びるスリット96であってよい。スリット96は、上記のフィンガープローブのいずれかの進入を防止するのに十分な薄さであることが好ましい。さらに、スリット96により具現された孔94は、図2に示すように、キャップ要素78の二重T字状の断面形状と相補的な形状であってよい。孔94は、各カバー要素30のプレート部分72を通して延びていてよい。
【0094】
後退方向36に沿って延びる少なくとも1つの案内溝98が、少なくとも1つのラッチ部材38に形成されていてよい。図3に示すように、各ラッチ部材38に複数の案内溝98が形成されていてよい。特に、各案内溝98は、片持ちフラップ40により具現された対応するラッチ部材38の自由端44から支持端42に向かって延びていてよい。任意選択的に、案内溝98は、後退方向36において支持端42を越える位置まで、壁要素22を通して延びていてよい。
【0095】
図3からさらに確認できるように、案内溝98は、カバー要素30のブロック機構74を受け入れるように適合されていてよい。さらに、案内溝98は、相手側コネクタ2の屈曲要素56を受け入れるように適合されていてよい。特に、各ブロック機構74および各屈曲要素56が、案内溝98に受け入れられてよい。
【0096】
安定性の向上のために、壁要素22は、接続壁100(図2参照)によって互いに一体に接続されていてよい。代替的に、カバー構造体20は、全てのコンタクト要素16について1つの壁要素22を備えてもよい。また、代替的に、カバー構造体20は、全てのコンタクト要素16について1つのカバー要素30を備えてもよい。
【0097】
図4は、本開示の例示的実施形態に係る相手側コネクタ2の断面図を示す。相手側コネクタ2は、電気コネクタ1の雄コネクタ面8aを受けるように構成された雌コネクタ面8bを有する相手側ハウジング102を備えてよい。
【0098】
上記で既に説明したように、相手側コネクタ2は、相手側コンタクト64(図5参照)をさらに備えてよい。好ましくは、相手側コネクタ2は、電気コネクタ1のコンタクト要素16ごとに1つの相手側コンタクト64を備える。各相手側コンタクト64は、例えば、電気コネクタ1の対応するタブ状コンタクト18と電気的に接触するように構成されたフォーク状コンタクト106であってよい。各相手側コンタクト64は、相手側ハウジング102内の電気ケーブル(不図示)の導体(不図示)にはんだ付けされ、圧着され、溶接され、かつ/または任意の他の従来の成端技法により接続されてよい。
【0099】
図4においてさらに見ることができるように、相手側コネクタ2は、雌コネクタ面8b内に配置された相手側カバー108を備えてよい。相手側カバー108は、相手側コンタクト64ごとに、装着方向14に沿って延びる柱状のコンタクトガード110を備えてよい。各コンタクトガード110は、対応する相手側コンタクト64を取り囲んでいてよい。さらに、各コンタクトガード110は、電気コネクタ1の受容領域28と相補的に形成されていてよい。図示の例示的実施形態において、各コンタクトガード110は、直方体のボックス状である。
【0100】
頂面112において、各コンタクトガード110は、電気コネクタ1のキャップ要素78と相補的な形状のスロット114を有していてよい。任意選択的に、スロット114の形状は、電気コネクタ1のカバー要素30の孔94の形状と合同であってよい。
【0101】
図5は、電気コネクタ1および相手側コネクタ2を備えるコネクタアセンブリ4の断面図の詳細を示す。電気コネクタ1および相手側コネクタ2が装着方向14に沿って位置合わせされている装着プロセスの状態のコネクタアセンブリ4が示されている。それぞれのコンタクトガード110が対応するアクセス開口部62を通して対応する受容領域28に挿入されると、対応するコンタクト要素16およびキャップ要素78がスロット114を通過することは明らかである。特に、対応するコンタクト要素16のコンタクト面92を、それぞれのコンタクトガード110内で相手側コンタクト64と電気的に接触させることができる。
【0102】
それぞれのコンタクトガード110を対応する受容領域28に挿入可能とするためには、固定位置32において移動しないように固定されているカバー要素30を解放する必要がある。これを実現するべく、相手側コネクタ2は、電気コネクタ1の少なくとも1つのラッチ部材38を屈曲させるための少なくとも1つの屈曲要素56をさらに備えてよい。少なくとも1つの屈曲要素56は、コンタクトガード110に形成された隆起状または角柱状の膨出部118であってよい。前記膨出部118は、上述の反転面58を備えてよい。
【0103】
それぞれのコンタクトガード110を対応する受容領域28に挿入する前および/またはその間に、反転面58および少なくとも1つのラッチ部材38の傾斜面52は、互いに沿って摺動する。これらの面52、58は、装着方向14に対して斜めに延びているので、装着方向14に沿った相手側コネクタ2の移動が、装着方向14に垂直なラッチ部材38の移動に変換される。換言すると、少なくとも1つのラッチ部材38は、対応する屈曲要素56によって側方から押し込まれ、それにより、それぞれのラッチ部材38が対応するカバー要素30から離れるように屈曲する。上記で既に説明したように、そのような屈曲によって、それぞれのブロック面46およびブロック機構74が位置ずれし、当接しなくなる。したがって、対応するカバー要素30が解放される。好ましくは、カバー要素30は、この方法でのみ解放することができる。
【0104】
その後、それぞれのコンタクトガード110は、その頂面112で、対応するカバー要素30のプレート部分72に当接する。それにより、カバー要素30は、装着プロセスの間に固定位置32から後退位置34へと押し動かされる。
【0105】
好ましくは、少なくとも1つのラッチ部材38は、少なくとも1つの屈曲要素56が電気コネクタ1の対応する受容領域28に入るときにのみ屈曲する。換言すると、少なくとも1つのラッチ部材38は、少なくとも1つの屈曲要素56がアクセス開口部62内にあるときにのみ屈曲する。少なくとも1つの屈曲要素56がアクセス開口部62から引っ込み領域66に向かって移動することに伴い、少なくとも1つの屈曲要素56は、対応するラッチ部材38に形成された案内溝98のうちの1つに受けられる。特に、少なくとも1つの屈曲要素56は、案内溝98内に全体が収容され、それにより、対応するラッチ部材38と機械的に干渉しなくなる。
【0106】
同様に、ペン先状の突出部76により具現された各ブロック機構74も、対応するラッチ部材38と機械的に干渉しないように、案内溝98のうちの1つに受けられ、全体が収容される。
【0107】
特に少なくとも1つの屈曲要素56がアクセス開口部62を通して受容領域28から出たときに、電気コネクタ1および相手側コネクタ2が取り外された場合、装着プロセスの間と同様に、屈曲要素56は、それぞれのラッチ部材38を側方から押し込む。
【0108】
さらに、電気コネクタ1および相手側コネクタ2が取り外されると、全てのカバー要素30が、それぞれ後退位置34から固定位置32に戻ることが好ましい。これを実現するべく、各カバー要素30は、相手側コネクタ2のスナップ要素122と作用し合うための少なくとも1つのキャッチ部分120を備えてよい。例えば、少なくとも1つのキャッチ部分120およびスナップ要素122は、図6の断面図において見ることができるように、スナップ嵌め接続などの接続を形成してよい。相手側コネクタ2は、複数のスナップ要素122を備えてよい。したがって、各カバー要素30は、スナップ要素122ごとに1つのキャッチ部分120を備えてよい。
【0109】
スナップ要素122は、相手側コネクタ2に形成され、後退方向36を向くフック状、ノブ状またはリブ状の突起124であってよい。さらに、スナップ要素122は、それぞれのキャッチ部分120に受け入れられてよい。特に、各キャッチ部分120は、カバー要素30の側壁126と、後退方向36に沿って側壁126と平行に延びる可撓性の片持ち梁128とによって形成されてよい。側壁126および/または片持ち梁128は、それぞれ片持ち梁128および側壁126に向かって延びるキャッチ突出部130を有してよい。代替的に、少なくとも1つのキャッチ部分120は、互いに平行に延びる2つの可撓性の片持ち梁(不図示)によって形成されてもよい。さらに、代替的に、スナップ要素122およびキャッチ部分120の配置は、電気コネクタ1と相手側コネクタ2との間で逆転してもよい。
【0110】
それぞれのスナップ要素122が対応するキャッチ部分120に受けられると、スナップ嵌め接続が確立されてよい。前記スナップ嵌め接続により、カバー要素30が、後退方向36に沿った相手側コネクタ2の移動に密接に追従することが可能となる。特に、カバー要素30は、それ自体の重力によって後退位置34に移動しない。換言すると、カバー要素30は、相手側コネクタ2とのスナップ嵌め接続が設けられている限り、引っ込み領域66に落下しない。カバー要素30は、上述のように相手側コネクタ2によって押されたときにのみ、後退位置34へと移動する。
【0111】
したがって、相手側コネクタ2が例えば取り外しプロセスの間に後退方向36と逆方向に移動されたときに、カバー要素30は、引っ込み領域66から引き抜かれ、スナップ嵌め接続を介して相手側コネクタ2によって固定位置32に戻される。それにより、カバー要素30が固定位置32から解放された後に相手側コネクタ2とカバー要素30との間に間隙が発生することが、常に防止される。
【0112】
カバー要素30が固定位置32となるまで、それぞれのスナップ要素122が対応するキャッチ部分120から脱落しないことを確実にするために、各キャッチ部分120は、カバー要素30が固定位置32にあるときよりも、カバー要素30が後退位置34にあるときにより高い剛性を呈してよい。これは、以下のように実現することができる。
【0113】
カバー要素30の後退位置34において、片持ち梁128は、引っ込み領域66内に位置付けられる。特に、上述の引っ込み領域66の空き幅70は、片持ち梁128が壁要素22に寄り掛かるような幅である。よって、片持ち梁128は、その移動が制限され、またはその可撓性を完全に失う。それにより、スナップ要素122は、キャッチ部分120内に堅固に保持される。
【0114】
この場合、「堅固に保持される」という用語は、スナップ要素122を対応するキャッチ部分120から引き抜くために必要な力が、カバー要素30の重量による力、および/または、カバー要素30と電気コネクタ1の他の部分との間に働く摩擦力よりも大きい状態を指す。
【0115】
カバー要素30の固定位置32において、片持ち梁128は、受容領域28内に位置付けられる。上述のように受容領域28の空き幅68は引っ込み領域66と比較して大きいため、片持ち梁128は、壁要素22から離隔し、それによりその可撓性を維持する。その結果、スナップ要素122は、キャッチ部分120に対して容易に出入りすることができる。
【0116】
「容易に出入りする」という用語は、スナップ要素122を対応するキャッチ部分120に挿入するとともに、スナップ要素122を対応するキャッチ部分120から引き抜くために必要な力が、カバー要素30と電気コネクタ1の他の部分との間に働く抵抗力よりも小さい状態を指すことを理解されたい。この抵抗力は、例えばブロック機構74、および/または、カバー要素30に形成され、壁要素22とラッチ接続で係合するフック状のアンカーラッチ132(図1参照)に起因するものであってよい。
【0117】
追加的にまたは代替的に、カバー要素30を固定位置32に向かって後退位置34から脱するように付勢するために、コイルスプリングなどの弾力性の位置復元要素(不図示)を用いることができる。
【0118】
任意選択的に、電気コネクタ1および相手側コネクタ2の一方が、装着プロセスを容易にするためのレバー134を備えてよい(図4参照)。さらに、電気コネクタ1および相手側コネクタ2の一方が、装着状態において電気コネクタ1と相手側コネクタ2との間に介在する封止要素136を任意選択的に備えてよい(図5および図6参照)。
【符号の説明】
【0119】
1 電気コネクタ
2 相手側コネクタ
4 コネクタアセンブリ
6 コネクタハウジング
8、8a、8b コネクタ面
14 装着方向
16 コンタクト要素
18 タブ状コンタクト
20 カバー構造体
22 壁要素
24 壁部分
26 エンクロージャ
28 受容領域
30 カバー要素
32 固定位置
34 後退位置
36 後退方向
38 ラッチ部材
40 片持ちフラップ
42 支持端
44 自由端
46 ブロック面
48 当接面
50 縁部
52 傾斜面
54 引き込み面取り
56 屈曲要素
58 反転面
60 外縁部
62 アクセス開口部
64 相手側コンタクト
66 引っ込み領域
68 空き幅
70 空き幅
72 プレート部分
74 ブロック機構
76 突出部
78 キャップ要素
80 先端部
82 頂部
84 側部
86 側縁部
88 材料幅
90 材料幅
92 コンタクト面
94 孔
96 スリット
98 案内溝
100 接続壁
102 相手側ハウジング
104 フィンガープローブ
106 フォーク状コンタクト
108 相手側カバー
110 コンタクトガード
112 頂面
114 スロット
118 膨出部
120 キャッチ部分
122 スナップ要素
124 突起
126 側壁
128 片持ち梁
130 キャッチ突出部
132 アンカーラッチ
134 レバー
136 封止要素
図1
図2
図3
図4
図5
図6