(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】化学修飾基材
(51)【国際特許分類】
C08J 9/42 20060101AFI20231107BHJP
C08J 7/04 20200101ALI20231107BHJP
H01M 50/449 20210101ALI20231107BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20231107BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20231107BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20231107BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20231107BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20231107BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20231107BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20231107BHJP
【FI】
C08J9/42 CES
C08J7/04 B CES
H01M50/449
B32B27/32
B32B27/30 D
B32B5/18
H01M50/414
H01M50/417
H01M50/426
H01M50/489
(21)【出願番号】P 2022078430
(22)【出願日】2022-05-11
(62)【分割の表示】P 2020155453の分割
【原出願日】2012-07-18
【審査請求日】2022-05-11
(32)【優先日】2011-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2011-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598064680
【氏名又は名称】セルガード エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】ストークス,クリストファー,ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】ハミストン,カール,エフ.
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-201297(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0026239(US,A1)
【文献】特開昭63-041541(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00472936(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 7/00- 7/02
7/12- 7/18
9/00- 9/42
B29C71/04
B32B 1/00-43/00
H01M50/40-50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学修飾基材であって、
表面を有する微多孔性ポリオレフィン基材と、
前記基材の前記表面上に0.05g/m
2~1.0g/m
2の量、コーティングされた化学修飾官能化ポリマー(A-B)であって、官能化ポリマー(成分A)および架橋結合修飾因子(成分B)からなる化学修飾官能化ポリマー(A-B)と、を含み
前記化学修飾官能化ポリマー(A-B)は、前記ポリオレフィン基材に前記成分Bおよび前記ポリオレフィン表面間のニトレン挿入反応から形成される共有結合を介して前記ポリオレフィン基材に繋ぎ止められ、
前記修飾基材が少なくとも48ダイン/cmの表面エネルギーを有し、前記成分Aは、エチレンオキシド、フッ素化ポリマー、フッ素化オリゴマー及びフッ素化コポリマーからなる群より選ばれる化学修飾基材。
【請求項2】
前記微多孔性ポリオレフィン基材は多層膜、単層膜、ポリエチレン膜、ポリプロピレン膜、又はこれらの組合せを含む請求項1に記載の化学修飾基材。
【請求項3】
請求項1に記載の化学修飾基材を備える電池セパレータ。
【請求項4】
アノード、カソード、前記アノードと前記カソードの間に配置される請求項1に記載の化学修飾基材を備える電池セパレータ、及び前記アノードと前記カソードの間を交流する電解質を備える電池。
【請求項5】
リチウムイオン電池である請求項4に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面修飾ポリマー材料、修飾官能化ポリマー、官能性ポリマー、修飾官能化ポリマーを含む化学修飾基材、表面修飾ポリマー材料、修飾官能化ポリマー、官能性ポリマー、および/もしくは修飾官能化ポリマーを含む化学修飾基材に関するものである。また、この基材を使用する方法、基材の表面と化学反応するように官能化ポリマーを修飾する方法および/もしくは修飾官能化ポリマーを使用する方法、ならびに/またはかかる化学修飾基材を使用する方法に関するものである。本発明の少なくともある実施形態は、修飾官能化ポリマー、官能性ポリマー、および、多孔性および/もしくは非多孔性ポリマー基材を化学修飾するために官能化ポリマーを修飾する方法、ならびに/または、かかる修飾基材を使用する方法を対象とする。少なくとも選択された実施形態は、修飾官能化ポリマー、官能性ポリマー、ならびに多孔性および/または微多孔性ポリマー基材を化学修飾するために官能化ポリマーを修飾する方法、ならびにかかる修飾基材を使用する方法を対象とする。少なくとも特定の実施形態は、それらが基材の表面特性に変化をもたらすことができるように、ある官能化ポリマーを修飾することを対象とする。少なくとも選択されたおそらく好ましい実施形態に従って、本発明は、所期の用途のために、基材の表面を化学修飾し、基材の表面特性の変化をもたらすことができる修飾官能化ポリマーを形成するために、カルベン架橋結合修飾因子および/またはニトレン架橋結合修飾因子を使用して、官能化ポリマーを化学修飾することを対象とする。少なくとも選択されたおそらく好ましい実施形態に従って、本発明は、ポリマー表面を官能化ポリマー(成分A)と共有修飾するカルベン架橋結合修飾因子および/またはニトレン架橋結合修飾因子(成分B)を使用することを対象とする。かかる修飾は、ポリマー表面の化学反応性を変化させることができ、所期の最終使用または用途のために、修飾基材が特異的に設計された機能性を有することを可能にする。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2011年7月18日出願の米国仮特許出願第61/508,725号および2011年10月17日出願の米国仮特許出願第61/547,812号のそれぞれへの優先権および利益を主張するものであり、双方ともに、本明細書本明細書に完全に組み込まれる。
【0003】
ポリマー材料の表面の物理的または化学的性質を修飾するための様々な方法が存在する。ポリマー材料の表面のある既知の修飾は、多くの場合、一時的であり、様々な最終使用用途のためにポリマー基材を恒久的に修飾することができない。
【0004】
かかる既知の方法の1つは、例えば、紫外線、プラズマ、またはコロナ処理を用いた、ポリマー基材の表面の処理または前処理である。かかる処理は、特に薄いフィルムおよびあるポリマー分類に対して、強すぎる場合がある。これらの手法の使用は、ポリマー基材の表面への機械的損傷または化学的損傷の危険性を生じ得る。場合によっては、損傷は、その目的とする最終使用用途のための修飾ポリマー基材の性能に支障をきたす場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、ポリマー材料の表面の物理的および/または化学的性質を修飾する改良された方法の必要性が存在する。具体的には、様々な最終使用用途、表面修飾ポリマー材料、修飾官能化ポリマー、官能性ポリマー、そのような材料、および同等物の使用に対するポリマー基材を恒久的に修飾する改良されたか、または新規の方法の必要性が存在する。
【0006】
本発明は、様々な最終使用用途、表面修飾ポリマー材料、修飾官能化ポリマー、官能性ポリマー、そのような材料、および同等物の使用のためにポリマー基材を恒久的に修飾する改良されたか、または新規の方法に、ポリマー材料の表面の物理的および/もしくは化学的性質を修飾するための改良された方法の必要性を提供するか、または少なくとも対処することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の少なくともある実施形態は、上記の必要性に対処することができ、修飾官能化ポリマー、官能性ポリマー、および修飾官能化ポリマーを含む化学修飾基材、基材の表面と化学反応するように官能化ポリマーを修飾する方法、および/もしくは修飾官能化ポリマーを使用する方法、ならびに/またはかかる化学修飾基材を使用する方法を対象とする。
【0008】
より具体的には、少なくともある実施形態は、それらが基材の表面特性に変化をもたらすことができるように、ある官能化ポリマーを修飾することを対象とする。少なくとも選択された好ましい実施形態に従って、本発明は、好ましくはカービン(carbine)、ニトレン、ならびに結合されたカービン架橋結合修飾因子およびニトレン架橋結合修飾因子(成分Bまたは修飾因子成分B)、またはそれらを使用することを対象とし、次いで、ポリマー基材の表面を化学修飾し、所期の用途、製品、プロセス、最終使用のためにポリマー基材の表面特性に変化をもたらすことができる修飾官能化ポリマーA-Bを形成する官能化ポリマー(成分Aまたは官能化成分A)を化学修飾する。カルベン(R-C:)は、二価炭素原子、つまり、関連したイオン電荷なしで他の原子と形成されることができる4つの結合のうち2つのみを利用する炭素原子を含有する、任意の数の高反応分子の等級である。ニトレン(R-N:)は、カルベンの窒素類似物であり、価電子を6つのみ有する。ニトレンおよびカルベンは、官能性成分Aと反応させることができる反応中間体であり、本明細書において「修飾官能化ポリマーA-B」と称されるポリマー基材と反応することが可能な特殊な化学種を形成し、ポリマー基材に特異的な化学官能性の接着をもたらし、所期の最終使用のための特異的なポリマー基材の化学構造または特性を調整する。
【0009】
特異的な化学官能性を有する修飾官能化ポリマーA-Bと基材のポリマー表面との化学反応は、基材のポリマー表面の恒久的な修飾(化学修飾)をもたらし得る。より具体的には、官能化成分Aと修飾因子成分Bとの反応は、接着促進剤/抑制剤(demoter agent)として作用可能な修飾官能化ポリマーA-Bを生成することができる。
【0010】
特異的な化学官能性を有する修飾官能化ポリマーA-Bと基材のポリマー表面との化学反応は、基材のポリマー表面の恒久的な修飾をもたらし得る。より具体的には、官能化成分Aと修飾因子成分Bとの反応は、接着促進剤/抑制剤として作用可能な修飾官能化ポリマーA-Bを生成することができ、それは次いで、ポリマー基材の表面と化学結合し、接着剤またはラミネーション用途での強化した接着性をもたらすようにポリマー基材の表面エネルギーを変化させる。
【0011】
さらにより具体的には、修飾官能化ポリマーA-Bは、官能性成分Aの直接接着を妨げる低いまたは高い表面エネルギーを有するポリマー基材を共有修飾することができる。より具体的には、修飾官能化ポリマーA-Bは、官能性ポリマーAの直接接着を制限および/または阻止する極性を有するポリマー基材を修飾することができる。より具体的には、修飾官能化ポリマーA-Bは、官能性成分Aの直接接着を制限および/または阻止する親水性もしくは疎水性の表面を有するポリマー基材を修飾することができる。さらにより具体的には、修飾官能化ポリマーA-Bは、官能性成分Aの接着を制限および/または阻止する親油性もしくは疎油性の表面を有するポリマー基材を修飾することができる。
【0012】
その上より具体的には、修飾官能化ポリマーA-Bは、その表面エネルギーを変化させることによって、ポリマー基材を修飾することができる。より具体的には、修飾官能化ポリマーA-Bを用いてポリマー基材の有効な表面エネルギーを増加または減少させ、例えば、コーティング膜、材料、隣接する層、または同等物とのその相溶性を改良することができる。
【0013】
より具体的には、修飾官能化ポリマーA-Bは、官能性ポリマーAの直接接着を制限および/もしくは阻止する極性を有するポリマー基材を修飾することができ、官能性成分Aの直接接着を制限および/もしくは阻止する親水性または疎水性の表面を有するポリマー基材を修飾することができ、または官能性成分Aの接着を制限および/または阻止する親油性または疎油性の表面を有するポリマー基材を修飾することができる。
【0014】
本発明の少なくともある選択された実施形態は、前述の必要性に対処し、修飾官能化ポリマー、官能性ポリマー、および修飾官能化ポリマーを含む化学修飾基材、基材の表面と化学反応するように官能化ポリマーを修飾する方法および/もしくは修飾官能化ポリマーを使用する方法、ならびに/またはかかる化学修飾基材を使用する方法を対象とする。少なくともある実施形態は、修飾官能化ポリマー、官能性ポリマー、ならびに多孔性および非多孔性ポリマー基材を化学修飾するために官能化ポリマーを修飾する方法、ならびにかかる修飾基材を使用する方法を対象とする。少なくとも選択された実施形態は、修飾官能化ポリマー、官能性ポリマー、ならびに多孔性および微多孔性ポリマー基材を化学修飾するために官能化ポリマーを修飾する方法、ならびにかかる修飾基材を使用する方法を対象とする。
【0015】
本発明の少なくともある選択された実施形態は、多孔性ポリマー基材の表面を修飾する必要性に対処する。本発明の少なくとも選択された実施形態は、上記必要性に対処し、かつ/あるいは修飾多孔性ポリマー膜基材、修飾ポリマー多孔質膜基材を作製する方法、および/もしくは修飾ポリマー多孔質膜基材を使用する方法、化学修飾ポリオレフィン微細孔膜、化学修飾ポリオレフィン微細孔膜を作製する方法、および/もしくは化学修飾ポリオレフィン微細孔膜を使用する方法、化学修飾ポリオレフィン微多孔性電池セパレータまたは電池セパレータ膜、化学修飾ポリオレフィン微多孔性電池セパレータまたは電池セパレータ膜を作製する方法、および/もしくは化学修飾ポリオレフィン微多孔性電池セパレータまたは電池セパレータ膜を使用する方法、炭素-炭素またはポリオレフィンとの共有結合を形成するカルベン中間体および/もしくはニトレン中間体を含有する修飾官能化ポリマーA-Bとポリオレフィンの炭素‐水素結合との反応によるポリオレフィン微多孔性電池セパレータまたはセパレータ膜の化学修飾、リチウムイオン充電式電池内のポリオレフィン微多孔性電池セパレータまたはセパレータ膜の親水性もしくは湿潤性を改良する方法、および/またはポリオレフィン微多孔性電池セパレータもしくはセパレータ膜の中に架橋結合を導入する方法、ならびに/または同等物を対象とする。
【0016】
本発明の少なくとも選択されたおそらく好ましい実施形態に従って、ポリオレフィン微多孔性セパレータまたは膜の表面の少なくとも一部の化学修飾は、例えば、カルベン中間体および/またはニトレンを含有する官能化ポリマーAと、ポリオレフィンの炭素‐水素結合とによって、達成され得る。カルベン中間体および/またはニトレン中間体を含有する官能化ポリマーA(成分Aまたは官能化成分A)に基づいたこの化学反応または処理は、リチウムイオン充電式電池内のポリオレフィン微多孔性セパレータの湿潤性をより恒久的に改良する方法を提供する。加えて、カルベン中間体および/またはニトレン中間体を含有する官能化ポリマーAとポリオレフィン微多孔性セパレータ膜の少なくとも一表面層のC-C結合およびC-H結合との好ましい反応を使用して、ポリオレフィンに架橋結合機能を導入することができ、これをポリオレフィン微多孔性セパレータまたは膜の高温安定性を改良するために使用してもよい。
【0017】
少なくともある選択された実施形態に従って、本発明は多孔性ポリマー基材の表面を修飾する必要性に対処する。本発明の少なくとも選択された実施形態は、上記必要性に対処し、修飾多孔性ポリマー膜基材、修飾ポリマー多孔質膜基材を作製する方法、および修飾ポリマー多孔質膜基材を使用する方法を対象とする。より具体的には、本発明は、化学修飾ポリオレフィン微細孔膜、化学修飾ポリオレフィン微細孔膜を作製する方法、および化学修飾ポリオレフィン微細孔膜を使用する方法を対象とする。その上より具体的には、本発明は、化学修飾ポリオレフィン微多孔性防水/通気性織物膜、化学修飾ポリオレフィン微多孔性防水/通気性織物膜を作製する方法、および化学修飾ポリオレフィン微多孔性防水/通気性織物膜を使用する方法を対象とする。少なくとも選択された好ましい実施形態に従って、本発明は、カルベン中間体および/またはニトレン中間体を含有する修飾官能化ポリマーA-Bとポリオレフィンの炭素‐水素結合との反応によるポリオレフィン微多孔性防水/通気性織物膜の化学修飾、防水/通気性織物のファウリング抵抗を改良し、かつ/または膜の防水性の耐久性を改良するように、表面エネルギーを減少する、もしくは防水/通気性織物膜に疎油性を与える方法、ならびに/または同等物を対象とする。
【0018】
ある選択された実施形態に従って、本発明は、ポリマー織物繊維の表面を修飾する必要性に対処する。本発明の少なくとも選択された実施形態は、上記必要性に対処し、修飾ポリマー織物繊維、修飾ポリマー織物繊維を作製する方法、および修飾ポリマー織物繊維を使用する方法を対象とする。より具体的には、本発明は、化学修飾ポリオレフィン織物繊維、化学修飾ポリオレフィン織物繊維を作製する方法、および化学修飾ポリオレフィン織物繊維を使用する方法を対象とする。少なくとも選択されたおそらく好ましい実施形態に従って、本発明は、カルベン中間体および/またはニトレン中間体を含有する修飾官能化ポリマーA-Bとポリマー織物繊維の炭素‐水素結合との反応によるポリマー織物繊維の化学修飾、ポリマー織物繊維のファウリング抵抗を改良し、かつ/もしくは織物繊維の防水性の耐久性を改良するように表面エネルギーを減少する、またはポリマー織物繊維に疎油性を与える方法、ならびに/または同等物を対象とする。
【0019】
本発明の少なくともある対象、実施形態、態様、および/または実施例は、表面修飾ポリマー材料、修飾官能化ポリマー、官能性ポリマー、修飾官能化ポリマーを含む化学修飾基材、表面修飾ポリマー材料、修飾官能化ポリマー、官能性ポリマー、および/もしくは修飾官能化ポリマーを含む化学修飾基材を作製する、ならびに/または使用する方法、基材の表面と化学反応するように官能化ポリマーを修飾する方法および/もしくは修飾官能化ポリマーを使用する方法、ならびに/またはかかる化学修飾基材を使用する方法を対象とする。少なくともある実施形態は、修飾官能化ポリマー、官能性ポリマー、および、多孔性および/もしくは非多孔性ポリマー基材を化学修飾するために官能化ポリマーを修飾する方法、ならびに/またはかかる修飾基材を使用する方法を対象とする。少なくとも選択された実施形態は、修飾官能化ポリマー、官能性ポリマー、ならびに多孔性および/または微多孔性ポリマー基材を化学修飾するために官能化ポリマーを修飾する方法、ならびにかかる修飾基材を使用する方法を対象とする。少なくともある実施形態は、それらが基材の表面特性に変化をもたらすことができるように、ある官能化ポリマーを修飾することを対象とする。少なくとも選択されたおそらく好ましい実施形態に従って、本発明は、所期の用途のために、基材の表面を化学修飾し、基材の表面特性に変化をもたらすことができる修飾官能化ポリマーを形成するために、官能化ポリマーを化学修飾するカルベン架橋結合修飾因子および/またはニトレン架橋結合修飾因子を使用することを対象とする。少なくとも選択されたおそらく好ましい実施形態に従って、本発明は、ポリマー表面を官能化ポリマー(成分A)と共有修飾するカルベン架橋結合修飾因子および/またはニトレン架橋結合修飾因子(成分B)を使用することを対象とする。かかる修飾は、ポリマー表面の化学反応性を変化させることができ、所期の最終使用または用途のために、修飾基材が特異的に設計された機能性を有することを可能にする。
【0020】
本発明の少なくともある対象、実施形態、態様、および/または実施例は、様々な最終使用または用途のために、ポリマー基材を恒久的に修飾するための改良された、もしくは新たな方法、表面修飾ポリマー材料、修飾官能化ポリマー、官能性ポリマー、かかる材料の使用、および/または同等物を対象とする。
【0021】
本発明の他の物体、実施形態、態様、または実施例は、図面、発明を実施するための形態、または特許請求の範囲で示されるか、または記載され得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の少なくとも選択されたおそらく好ましい実施形態に従う、ニトレン発生、カービン発生、および挿入機構または反応の定型反応図解である。例えば、
図1は、ポリオレフィン基材の表面といったポリオレフィンの表面特徴を調整するように修飾されるR/R’基を示す化学反応を説明し、例えば、R/R’基は湿潤といった表面特徴を調整するように修飾され得る。
【
図2】本発明の少なくとも選択されたおそらく好ましい実施形態に従う、表面修飾ポリマー材料または修飾官能化ポリマーを含む化学修飾基材の略図である。
【
図3】本発明の少なくとも選択されたおそらく好ましい実施形態に従う、例えば、所望のコーティングまたは処理(ポリマー材料もしくは基材表面の表面エネルギーを上昇させる、または低下させることによって等)を促進する修飾官能化ポリマーによって修飾されるコーティングもしくは処理された表面修飾ポリマー材料、またはコーティングもしくは処理された化学修飾基材の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の少なくともある実施形態は、上記必要性に対処してもよく、かつ/または新たな改良もしくは修飾された表面修飾ポリマー材料、修飾官能化ポリマー、官能性ポリマー、および/または修飾官能化ポリマーを含む化学修飾基材、および/または官能化ポリマーを修飾する方法、および/または基材の表面と化学反応するように、修飾官能化ポリマーを使用する方法、および/またはかかる化学修飾基材を使用する方法を対象とする。
【0024】
より具体的には、ある実施形態は、それらが基材の表面特性に変化をもたらすことができるある官能化ポリマーを修飾することを対象とする。少なくとも選択された好ましい実施形態に従って、本発明は、好ましくは、所期の用途のために修飾官能化ポリマーA-Bを形成するために、次いでポリマー基材の表面を化学修飾し、ポリマー基材の表面特性に変化をもたらすことができる官能化ポリマー(成分Aまたは官能性もしくは官能化成分A)を化学修飾するカルベン架橋結合修飾因子および/またはニトレン架橋結合修飾因子(成分Bまたは修飾因子成分B)を使用することを対象とする。
【0025】
カルベン(R-C:)は、二価炭素原子、つまり、他の原子と形成されることができる4つの結合のうち2つのみを利用する炭素原子を含有する、任意のメンバーの高反応分子の等級である。ニトレン(R-N.)は、カルベンの窒素類似物であり、価電子を6つのみ有する。ニトレンおよびカルベンは、官能性および名目上の非官能性基材の両方に対して固有の反応性を有する反応中間体である。ある官能性ポリマー基材を修飾することが可能な方法があってもよいが、本発明は非官能性、つまり、官能基を含有しないそれらのポリマー基材の修飾によく適した方法を提供する。ほとんどのポリオレフィンは、それらが材料の機械的または化学的安定性に対する著しい影響を伴わずに、容易に修飾を容認しないように、基本的に「非官能性」である。カルベンおよび/またはニトレンに基づく中間体は、多くの従来の表面修飾手法において、通常生じる激しい分解を伴わずに、非官能性ポリオレフィンを修飾する機会を提供する。さらに、本発明のカルベン、ニトレン、または結合されたカルベンおよびニトレンに基づく中間体の使用は、官能基に特異的な化学修飾には関係なく、すべてではないが、ほとんどのポリマー基材に適用され得る機会を提供してもよい。本発明の反応カルベンおよび/またはニトレンに基づく中間体は、ポリオレフィンポリマー基材の炭素-水素化学結合にそれらを挿入することができるという利点を有する。カルベンおよび/またはニトレンに基づく中間体の特殊な化学反応性は、官能性成分A-Bが「非官能性」材料と反応することを可能にし、成分Aがポリマー基材に接着する手段を提供する。
【0026】
本発明の一実施例に従って、複数のカルベン中間体および/またはニトレン中間体、または前駆体を伴う修飾因子成分Bは、1つ以上の所望の官能性成分A’と混合され、「多段反応部位修飾官能化ポリマーA-B」として本明細書に称される特殊な化学種を形成することができる。適切な割合および処方条件から、このコアセルベートは、所期の最終使用のために、事実上ポリオレフィン化され得る所与のポリマー基材、または他の一部の合成もしくは天然由来のポリマー材料とさらなる反応が可能であり、ポリマー基材の化学構造を特異的に調整するポリマー基材に対して、特異的に所望の化学機能性の接着をもたらす。
【0027】
特異的な化学官能性を有する修飾官能化ポリマーA-Bと基材のポリマー表面との化学反応は、成分Aの化学機能性をもつ所望のポリマー表面の恒久的な共有結合修飾をもたらし得る。本発明に従って、一実施例は、ポリ(エチレンオキシド)ポリマーまたはオリゴマー(例示的成分A)で修飾されたポリオレフィン基材である。複数のカルベン生成種および/またはニトレン生成種を有する成分Bは、ポリオレフィン表面とポリ(エチレンオキシド)成分Aとの間の繋ぎ縄(tether)として作用することができる。生じた複合体材料(官能化成分A-Bを伴うポリオレフィン基材)は、ポリオレフィン基材と類似しているが、ポリ(エチレンオキシド)の表面特性をもつバルク特性を有する。例えば、事後修飾されたポリオレフィン表面は、修飾の質と範囲に応じて、通常のポリ(エチレンオキシド)基材表面のものに近似する標準のポリオレフィンよりも相当高い表面エネルギーを有するように見える可能性がある。本発明のかかる官能化成分A-B修飾ポリマー基材の用途は、例えば、電池セパレータ材料の改良された湿潤性、抗ファウリング、および特定のコーティング膜、材料、層、または中でも処理のための接着増進を含む。
【0028】
官能化成分A-B修飾ポリマー基材中の成分Aとして使用され得る他のポリマー材料は、好ましくは、基礎基材よりも異なる表面特性をもつ材料を含み得る。例えば、特定の抗ファウリング用途は、フッ素化官能性成分Aを必要とし得る。フッ素化ポリマーまたはオリゴマーを官能性成分Aとして使用して、バルクフッ素化材料として同じバルク機械的不利益を被らない疎水性または疎油性性質に関連するフッ素化材料と類似の特性を有するポリマー基材表面を得ることができる。
【0029】
本発明の一実施例に従うこの構想は、一般に、敷物または織物で使用されるポリアミド基材といった他の基材に拡大されてもよい。ポリアミド基材のある既知の仕上げは、典型的には、接着を促進する化学機能性をほとんど有しない。他の典型的な共有結合修飾は、材料のバルク特性に有害であることを証明し、ポリアミド基材の劣化した最終使用特性をもたらし得る。本発明のカルベンおよび/またはニトレン繋ぎ縄構想は、これらの種類のポリアミド基材に標準織物仕上げを付加してもよい。
【0030】
本発明の少なくとも選択された実施形態に従って、微多孔性ポリオレフィン膜基材は、アルコール、脂肪族、および芳香族化合物といった種々の材料を排除するように、選択された官能化成分A-Bで修飾され得る。微多孔性ポリオレフィン膜は、それらの孔内の相当量の油を吸収する傾向がある。現在の官能化成分A-B処理または修飾を使用して、アルコール、脂肪族、または芳香族化合物といった材料を排除するように、微多孔性ポリオレフィン膜の表面を修飾することができ、それにより、新型の分離での使用のための、修飾基材を作製する。
【0031】
本発明の少なくとも選択された実施形態に従って、官能化成分A-Bを使用して、微多孔性ポリオレフィン膜の表面エネルギーを低下する用途も存在する。防水上着の快適性は、着用者の身体の湿気が防水上着の素材を通って蒸発することを可能にするように、より通気性のある衣類を製作することにより、大幅に改良され得る。この機能性は、一般に「防水/通気性のある」上着と称される。多くの防水/通気性のある衣類は、通気性の達成を水分子の分子輸送に依存した無孔材料を取り入れる。水蒸気分子が空気中の放散を介して蒸発することを可能にする多孔質膜を忠実に取り入れ、それにより通気性を大幅に改良し、装着者の快適性を強化することによる、改良された通気性を提供する必要性がある。ある微細孔膜の1つの不利益は、それらは天然の身体の油、または他の油によって、詰まることであり、膜の防水性能を悪化させる。この不利益は、例えば、フッ素化化合物で膜表面を疎油性にし、天然の身体の油または他の油によるファウリングへの耐性をもたせるように、微細孔膜の表面を修飾する本発明の使用によって、克服され得る。
【0032】
本発明の少なくとも選択された実施形態に従って、ポリマー織物繊維および/または官能化成分A-Bを使用した素材の表面エネルギーを低下する用途も存在する。ポリマー織物繊維および素材の防水性能ならびに/または汚染抵抗は、恒久的な撥水(「DWR」)コーティングおよび仕上げの適用によって達成されることが多い。これらのDWRコーティングおよび仕上げは、不十分な耐久性を有し、度重なる洗浄および/または使用によって徐々に消える。一部の織物繊維および/または素材、例えば、アクリル製のものは、DWRコーティングでは容易に処理されず、水および/または汚染抵抗が重要である用途では使用されないことが多い。本発明の少なくともある方法または実施形態は、例えば、ポリマー織物繊維および/または素材を恒久的に防水および/または汚染抵抗にするようにフッ素化化合物を使用して、ポリマー織物繊維および/または素材を修飾するために使用されてもよい。
【0033】
さらに、本発明の少なくとも選択された実施形態に従って、官能化成分A-Bを使用して、特定の芳香剤容器デバイスの壁部において使用されるポリオレフィン膜の表面エネルギーを減少してもよい。ある芳香剤容器デバイスは、芳香剤容器デバイスの壁部または複数の壁部を通した芳香剤材料の徐放を介して機能する。芳香剤容器デバイスは、典型的にはポリオレフィンで構成されてもよく、ポリエチレン製であることが多い。しかし、芳香剤容器デバイスのポリオレフィン膜壁を通る芳香剤の放出速度は、ポリオレフィン膜の無孔性によって、制限され得る。したがって、芳香剤容器デバイスは、より大きいサイズで製作されなければならず、かつ/または芳香剤容器デバイス中の芳香剤の濃度は、芳香剤の所望の放出速度を達成するために、上昇されなければならない。
【0034】
所望の芳香剤放出速度を達成すると同時に、かかる芳香剤容器デバイス中のより少ない芳香剤を使用する経済的必要性がある。このため、芳香剤容器デバイスまたは容器の壁部材料としての微多孔性ポリマー膜の使用は、芳香剤容器デバイスの膜壁を通した芳香剤の移動を、より一層急速に促進し得る。しかし、芳香剤容器デバイス用途における微多孔性ポリオレフィン膜の使用は、芳香油の容器の膜壁を通って漏出する傾向により、制限されている。この不利益は、例えば、芳香剤容器デバイスの膜または壁部を疎油性にし、芳香油の漏出への耐性をもたせるように、フッ素化官能化ポリマーA-Bを使用して微細孔膜の表面エネルギーを修飾する本発明の使用によって克服され得る。
【0035】
本発明の少なくとも選択された実施形態に従って、修飾官能化ポリマーA-Bは、官能性成分Aの直接接着を妨げる低いまたは高い表面エネルギーを有するポリマー基材を修飾することができる。より具体的には、修飾官能化ポリマーA-Bは、官能性ポリマーAの直接接着を制限および/または阻止する極性を有するポリマー基材を共有修飾することができる。より具体的には、修飾官能化ポリマーA-Bは、官能性成分Aの直接接着を制限および/または阻止する親水性もしくは疎水性の表面を有するポリマー基材を修飾することができる。その上より具体的には、修飾官能化ポリマーA-Bは、官能性成分Aの接着を制限および/または阻止する親油性もしくは疎油性の表面を有するポリマー基材を修飾することができる。
【0036】
本発明の少なくともある実施形態は、官能化ポリマーAが基材の表面との化学反応への接着促進剤または抑制剤として作用することを可能にするよう修飾ポリマーAの特異的な化学官能性の配置を対象とする。少なくとも選択されたおそらく好ましい実施形態に従って、本発明は、官能化ポリマーAを、架橋結合基を含むカルベン中間体および/またはニトレン中間体で修飾することを対象とする。架橋結合官能基の組み込みは、官能化ポリマー成分Aが、基材の表面を化学修飾することができ、恒久的に、または非一時的に基材の表面を変化させる接着促進剤または抑制ポリマー剤として作用することを可能にする。
【0037】
少なくともある実施形態は、ポリマー基材の表面エネルギーを変化することを目的に、特定の官能化ポリマーを修飾することを対象とする。これは、接着剤またはラミネーション用途、具体的には、他の接着増進技術が基材の機械的または化学的安定性に害を及ぼし得る場合に対して、強化された接着性をもたらすことができる。
【0038】
少なくともある実施形態は、生物学的検出またはアッセイを必要とし得る最終使用用途のために、生体由来ポリマーおよび小分子を含むことを目的に、単独カルベン成分Bおよび/もしくは単独ニトレン成分Bで、または多機能カルベン成分Bおよび/もしくは多機能ニトレン成分Bの混合物で、ある官能化ポリマーを修飾することを対象とする。タンパク質、DNA、RNA、自然発生多糖、または他の生体関連材料は、これらの種類の用途のために使用されてもよい。
【0039】
ポリマー基材の表面の修飾は、その機能性を変化させる目的で行われ得る。例えば、名目上不活性のポリマー基材は、基材の表面に、ポリマー基材を修飾する二次処理後反応に関与するように設計された修飾された官能性成分A-Bにより付加された官能基を授けることによって修飾され得る。かかる変化は、所期の最終使用用途のためにポリマー基材の機能性を変化させる。かかる処理後反応の実施例は、織物基質の表面が修飾された成分A-Bと反応させられている織物の最終使用用途であり、それは実質的に異なる仕上がりを生み出すための標準的な織物染色化学物質および手順を容認し得る。
【0040】
ポリマー基材は、オレフィン、スチレン、シリコーン、ウレタン、アクリレート、エステル、ビニル、セルロース、アミド、アラミド、エーテル、もしくはコポリマーといった任意の合成もしくは天然ポリマーまたはコポリマー、そのようなもののブレンドおよび/または混合物からなり得る。加えて、ポリマー基材はまた、フェノールホルムアルデヒド樹脂といった架橋ネットワーク材料、またはブタジエン、イソプレン、およびネオプレンといったゴム系材料であってもよい。加えて、ポリマー基材は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリ二塩化ビニリデン(PVDC)、およびポリ塩化ビニル(PVC)といったハロゲン含有ポリマーであり得る。
【0041】
官能性ポリマーAの化学構造は、最終使用用途におけるポリマー基材に必要な所望の表面官能基を含有する。官能性ポリマーAは、ポリマー基材として類似のポリマーからなり得る。加えて、官能性ポリマーAは、ポリアミン、ポリオール、ポリアミド、およびそのようなもののブレンド、混合物またはコポリマーからなり得る。
【0042】
少なくとも選択された好ましい実施形態に従って、本発明は、原位置でカルベン種および/またはニトレン種を生成するように調整されたペンダント官能基を有する多機能材料(f>2.0)を成分Bとして使用することを対象とする。成分Aおよび成分Bを、ポリマー基材の表面と反応することができる活性化学種を産生するように化学反応し、修飾ポリマー基材が所期の最終使用用途において有用であることを可能にする。
【0043】
成分Aおよび成分Bの割合は、最終使用用途において最適化性能特性を生むように多様化してもよい。典型的な成分A/成分Bの適用割合は、所望の表面特性、ポリマー基材の所期の最終使用用途、および成分Aと成分Bの反応性に応じて、約1.0~200.0の範囲であってもよい。
【0044】
生物学的検出またはアッセイを必要とし得る用途のための生体由来ポリマーおよび小分子を含むことを目的に、ある官能化ポリマーを修飾することを対象とする。タンパク質、DNA、RNA、自然発生多糖、または他の生体関連材料は、これらの種類の用途のために使用されてもよい。
【0045】
少なくともある実施形態は、所望の成分A官能性合成ポリマー、小分子または生物活性表面修飾剤と反応させられる多機能カルベン前駆体および/または多機能ニトレン前駆体成分Bの混合物でポリマー基材の表面を修飾することを対象とする。
【0046】
ポリマー基材の表面の修飾は、その機能性を変化させる目的で行われてもよい。例えば、名目上不活性のポリマー基材は、官能性成分Aによって、または二次処理後反応において「成分A-修飾ポリマー基材」を修飾することにより間接的に付加された官能基を基材の表面に授けることによって修飾され得る。かかる変化は、所期の最終使用用途のためにポリマー基材の機能性を変化させる。かかる処理後反応の実施例は、織物基質の表面が修飾された成分A-Bと反応させられている織物の最終使用用途であり、それは実質的に異なる仕上がりを生むための標準的な織物染色化学物質および手順を容認し得る。
【0047】
本発明の少なくとも選択された実施形態は、修飾多孔質膜、修飾多孔質膜を作製する方法、および修飾多孔質膜を使用する方法を対象とする。より具体的には、本発明は、化学修飾ポリオレフィン微細孔膜、化学修飾ポリオレフィン微細孔膜を作製する方法、および化学修飾ポリオレフィン微細孔膜を使用する方法を対象とする。その上より具体的には、本発明は、化学修飾ポリオレフィン微多孔性電池セパレータまたは電池セパレータ膜、化学修飾ポリオレフィン微多孔性電池セパレータまたは電池セパレータ膜を作製する方法、および化学修飾ポリオレフィン微多孔性電池セパレータまたは電池セパレータ膜を使用する方法を対象とする。
【0048】
少なくとも選択された好ましい実施形態に従って、本発明は、カルベン中間体および/またはニトレン中間体とポリオレフィンの炭素‐水素結合との化学反応によるポリオレフィン微多孔性電池セパレータもしくはセパレータ膜の化学修飾、リチウムイオン充電式電池内のポリオレフィン微多孔性電池セパレータもしくはセパレータ膜の親水性もしくは湿潤性を改良する方法、ポリオレフィン微多孔性電池セパレータもしくはセパレータ膜に架橋結合を導入する方法、および/または同等物を対象とする。
【0049】
本発明の少なくとも選択された好ましい実施形態に従って、ポリオレフィン微多孔性セパレータまたはセパレータ膜の表面の少なくとも一部の化学修飾は、カルベン中間体および/またはニトレン中間体とポリオレフィンの炭素‐水素結合との化学反応によって、達成され得る。カルベン中間体および/またはニトレン中間体に基づく、この化学反応または処理は、リチウムイオン充電式電池内のポリオレフィン微多孔性セパレータの湿潤性をより恒久的に改良する方法を提供する。加えて、カルベン中間体および/またはニトレン中間体とポリオレフィン微多孔性セパレータ膜の少なくとも1つの表面層におけるC-C結合およびC-H結合との好ましい反応を使用して、ポリオレフィン微多孔性セパレータもしくは膜の高温安定性を改良し得るポリオレフィンに架橋結合を導入してもよい。
【0050】
例示的電池セパレータは、ポリオレフィン多孔質膜またはフィルムの1つ以上の層もしくは重なりから作製された単層、多層、または多重電池セパレータであってもよい。微細孔膜は、対称膜または非対称膜であってもよい。膜は、ポリエチレン(LDPE、LLDPE、およびHDPEを含むPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、前述のいずれかのコポリマー、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない1つ以上のポリオレフィンポリマーまたはブレンドから製作されてもよい。膜は、乾式延伸法(CELGARD法としても既知である)、溶媒プロセス(ゲル押し出し、相分離、抽出、または湿式法としても既知である)、またはネッティング(もしくはアパーチャ)プロセス(フィルムはチルドロール上で成形され(ロールはフィルム上でエンボス加工されるパターンを有する)、続いてエンボス加工されたフィルムは引き伸ばされる(MD/TD)、それによって大きい孔がエンボスパターンに沿って形成される)が挙げられるが、これらに限定されない任意の好適なプロセスによって製作されてもよい。膜は、好ましくは、リチウム電池、より好ましくは充電式リチウムイオン電池、または同等物といった電池内で電池セパレータとして作動するために必要な特徴を有する。本発明の化学修飾膜は、三重遮断セパレータといった三重層膜(例えば、PP/PE/PPまたはPE/PP/PE)、もしくは他の多層膜あるいはセパレータの外層であってもよい。
【0051】
ポリオレフィンは、単純オレフィン由来の熱可塑性ポリマーの分類または群であってもよい。ポリオレフィンは、一般的に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、およびそれらのコポリマーを含む。ポリオレフィン製品は、一般的に、繊維およびフィルムを含み、さらに微多孔性フィルムおよび微多孔性中空繊維も含む。微多孔性は、1ミクロン未満の有効径の複数の孔を有する製品を指す。疎水性ポリオレフィンは、ポリエチレンの表面エネルギーと同等であるか、またはポリエチレンの表面エネルギーを下回る表面エネルギーを有するポリオレフィンを指す。
【0052】
少なくともある実施形態に従って、ポリオレフィン製品は、カルベン中間体および/またはニトレン中間体とポリオレフィンの炭素‐水素結合との化学反応による、微多孔性セパレータまたは膜といったポリオレフィン製品の表面の少なくとも一部の化学修飾によって、より親水性または水和性に作られてもよい。加えて、カルベン中間体および/またはニトレン中間体とポリオレフィン製品の少なくとも一表面層のC-C結合およびC-H結合との好ましい反応を使用して、高温安定性、強度、および/または同等物を改良することができるポリオレフィンに架橋結合を導入してもよい。前述の親水性ポリオレフィン製品は、親水性ポリオレフィンが必要であるか、または望ましい任意の用途、例えば、空気濾過、空気清浄、水濾過、水洗浄、浄水、医療機器、分離装置、半導体製造、電池セルセパレータ、限外濾過装置等で使用されてもよい。
【0053】
電池またはセルセパレータに関して、化学的処理が微多孔性ポリオレフィン膜の片面または好ましくは両面に適用される。この処理されたセパレータは、リチウムイオン二次電池に特に好適である。
【0054】
分離、濾過、洗浄、および浄化機器に関して、特に微多孔性ポリオレフィン中空繊維またはフラットシート膜が使用される場合、修飾される材料の使用により高い流動速度が取得可能である。
【0055】
微細孔膜は、典型的には疎水性のポリオレフィンポリマーである。かかるポリマーは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびそれらのブレンド、混合物、またはコポリマーを含む。膜の製造方法は重要ではなく、例えば、「乾式」延伸(もしくはCelgard)法、または「溶媒」延伸(もしくは位相反転)法を含んでもよい。かかる膜は、約75ミクロン未満の厚さを有してもよい。ある用途に対して、乾式法ポリプロピレン膜が好適であり得る。
【0056】
ポリオレフィンの疎水性質を恒久的に修飾する手段としてのポリオレフィンの炭素-水素結合および他の結合の化学修飾は、利用可能な化学反応の数に限りがあるため、困難であり得る。炭素-水素結合および炭素-炭素結合は、共に非常に安定しており、ポリプロピレンおよびポリエチレンといったポリオレフィンを恒久的に修飾するのは困難である。ポリプロピレンおよびポリエチレンといったポリオレフィンは、一般に、リチウムイオン充電式電池内の微多孔性セパレータ膜において使用される。ポリオレフィン微多孔性セパレータ膜の重要な性能特性は、典型的にはリチウムイオン充電式電池で使用される非水電解質溶媒による、容易な湿潤性である。現在、種々の界面活性剤が、ポリオレフィン微多孔性セパレータ膜の疎水性質を変化させ、非水電解質溶媒によってその湿潤性を向上するコーティングとして、適用されている。ある界面活性剤コーティングは、それらはポリオレフィン微多孔性セパレータ膜の表面に、物理的にのみ吸着するため、一時的な湿潤性のみを提供し得る。
【0057】
本発明に従って、湿潤性を提供するより恒久的な解決法は、表面修飾剤をポリオレフィン微多孔性セパレータ膜に共有結合する化学反応を利用し得る。ポリオレフィン中の炭素-水素(C-H)結合と反応し得る少数の反応のうち1つは、カルベン中間体および/またはニトレン中間体の使用を含む。カルベン中間体およびニトレン中間体は、遷移金属触媒の存在を伴ってまたは伴わないで、ポリオレフィンのC-H結合にそれらを挿入する能力を有する、それぞれ炭素および窒素の、反応中間体である。
図1は、加熱または点火によるカルベン中間体およびニトレン中間体の各構造を描写する。
【0058】
遷移金属触媒は、典型的には高額であり、経済的プロセスを守るよう迅速に回復されるべきである。加熱、点火を介して、または化学反応を介してカルベン中間体を提供し得るいくつかの前駆体が存在する。
【0059】
カルベン中間体は、ジアゾ化合物の加熱分解または光分解を介して形成され得る。α-除去(塩化メチレン、クロロホルム、ブロモホルム等)の傾向がある強塩基と化合物との間の化学反応も、カルベン中間体を産生することができる。ニトレンは、典型的には、アジド(特に重要なアリールアジドおよびスルフォニルアジド)の加熱または光分解を介して、およびイソシアネートの加熱分解を介して形成される。熱分解は、他の生成方法よりも効率的な挿入を有する傾向があり得る。
【0060】
いったん反応中間体が形成されると、その存続期間は典型的に非常に短い。適切な時間枠でポリオレフィンセパレータ膜の表面に導入されるとき、
図1に示されるような挿入反応が生じ得る。C-H結合に挿入される新たな機能性をもつポリオレフィンは、ラジカル抽出および再結合を介して、または協奏反応を介して達成され得る。ポリオレフィンの表面特性は、カルベン中間体および/またはニトレン中間体中のRおよびR’の官能基の選択によって、修飾され得る。
【0061】
例えば、ジアゾ材料が長いポリ(エチレンジコール(ethylene gycol))テイルによって作製される場合、生じる表面修飾は強化された親水性を示し、非常に極性の材料によってポリオレフィンセパレータ膜の強化された湿潤特性がもたらされる。
【0062】
様々な親水性分子を産生することは、エチレングリコールオリゴマーおよびポリマーに限定されない。さらなる修飾には、ヒドロキシエチルアクリラート、メタクリレート、ポリエチレンミン、修飾セルロースまたはキトサンが挙げられる。これらは、オリゴマーまたはポリマー形態であり得る。
【0063】
カルベン表面処理および/またはニトレン表面処理はまた、幅広い種類の小分子官能基で達成され得る。カルボン酸、アルコール、チオール、アミン(第1級、第2級、第3級、および第4級)、グアニジン、エーテル、エステル、および炭酸塩は、ポリオレフィン微多孔性セパレータ膜に対する多少の親水性質を産生することができる官能基である。
【0064】
非常に極性の電解質によるポリプロピレン微多孔性セパレータ膜の湿潤性の著しい上昇は、ポリプロピレン微多孔性セパレータ膜の現在の化学修飾を介して、達成されてもよく、リチウムイオン充電式電池で使用され得る現在および未来の電解質の広範囲を許容する。
【0065】
例えば、基材の湿潤特性は、分子添加物への置換に基づいて大幅に修飾される。パーフルオロ基が超疎水性性質を与えることができ、しかし一方ポリ(エチレングリコール)付加が水湿潤性を上昇し得る。ポリ(ジメチルシロキサン)を使用して、より触り心地の良い基材を作製することにより、材料の感触を高めることができる。さらに、多機能カービン前駆体および/または多機能ニトレン前駆体を伴う、材料の表面またはバルク架橋結合ならびに処理は、強化されたクロスウェブ靱性をもたらす。
【0066】
複数の化学反応を含むカルベン中間体および/またはニトレン中間体を使用しても、ポリオレフィン微多孔性セパレータ膜の架橋結合を誘発するように設計された特異的構造を挿入することができる。ポリオレフィン材料の架橋が、ポリマー分子と共に固定されるため、微多孔性ポリオレフィンセパレータ膜のクロスウェブ靱性の補強を介して、電池の安全性が強化される追加的な利益がえられる。
【0067】
実施例のように、1つより多いカルベン前駆体および/またはニトレン前駆体と結合する分子は、孔が形成された後、多孔性セパレータ膜に適用され得、架橋表面を作製する。ポリオレフィン微多孔性セパレータ膜表面の架橋結合は、温の最終使用用途において重要であり得る。軽く架橋された表面を作製することにより、ポリオレフィン微多孔性セパレータ膜の構造保全を損失する温度は、上昇され、架橋密度に基づいた特定の温度範囲に調整され得る。これは、架橋を有さない溶融バルク材料を保持し得る架橋材料として達成され得る。表面架橋の密度が上昇するにつれて、ポリオレフィン微多孔性セパレータ膜の構造保全を維持する外骨格として作用する能力が向上する。
【0068】
加えて、1つより多いカルベン前駆体および/またはニトレン前駆体と結合する架橋結合分子は、非多孔性前駆体セパレータ膜を形成する押し出しプロセスの間、ポリオレフィンポリマー樹脂に付加され得る。この前駆体は、次いで、微多孔性ポリオレフィン膜の孔を成形するために延伸され、改良された高温での引張強度および溶融保全をもつ微多孔性ポリオレフィン膜をもたらす。
【0069】
少なくとも選択された実施形態において、セパレータは、繊維から作られた不織布のような不織布材料であってもよく、不織布の高温溶融保全を改良し、かつ/または不織布の湿潤性を改良する化学修飾され得る。
【0070】
本発明の少なくとも特定の対象に従って、表面修飾ポリマー材料、修飾官能化ポリマー、官能性ポリマー、修飾官能化ポリマーを含む化学修飾基材、表面修飾ポリマー材料、修飾官能化ポリマー、官能性ポリマー、および/もしくは修飾官能化ポリマーを含む化学修飾基材を作製する、ならびに/または使用する方法、基材の表面と化学反応するように官能化ポリマーを修飾する方法および/もしくは修飾官能化ポリマーを使用する方法、ならびに/またはかかる化学修飾基材を使用する方法が提供される。少なくともある実施形態または対象は、修飾官能化ポリマー、官能性ポリマー、および、多孔性および/もしくは非多孔性ポリマー基材を化学修飾するために官能化ポリマーを修飾する方法、ならびに/またはかかる修飾基材を使用する方法を対象とする。少なくとも選択された実施形態または対象は、修飾官能化ポリマー、官能性ポリマー、ならびに多孔性および/または微多孔性ポリマー基材を化学修飾するために官能化ポリマーを修飾する方法、ならびにかかる修飾基材を使用する方法を対象とする。少なくともある実施形態または対象は、それらが基材の表面特性に変化をもたらすことができるように、ある官能化ポリマーを修飾することを対象とする。少なくとも選択されたおそらく好ましい実施形態に従って、本発明は、所期の用途のために、基材の表面を化学修飾し、基材の表面特性に変化をもたらすことができる修飾官能化ポリマーを形成するために、官能化ポリマーを化学修飾するカルベン架橋結合修飾因子および/またはニトレン架橋結合修飾因子を使用することを対象とする。少なくとも選択されたおそらく好ましい実施形態に従って、本発明は、ポリマー表面を官能化ポリマー(成分A)と共有修飾するカルベン架橋結合修飾因子(成分B)および/またはニトレン架橋結合修飾因子(成分B)を使用することを対象とする。かかる修飾は、ポリマー表面の化学反応性を変化させることができ、所期の最終使用または用途のために修飾基材が特異的に設計された機能性を有することを可能にする。
【0071】
図1を参照すると、本発明の少なくとも選択されたおそらく好ましい実施形態に従う、ニトレン生成、カルベン生成、および挿入機構が示される。R、R’および/またはR/R’基は、ポリオレフィン基材の表面といったポリオレフィンの表面特徴を調整するように修飾され、例えば、R/R’基は湿潤といった表面特徴を調整するように修飾され得る。
【0072】
図2を参照すると、本発明の少なくとも選択されたおそらく好ましい実施形態に従う、表面修飾ポリマー材料、または修飾官能化ポリマーを含む化学修飾基材が示される。
【0073】
図3を参照すると、本発明の少なくとも選択されたおそらく好ましい実施形態に従う、例えば、所望のコーティングまたは処理(ポリマー材料もしくは基材表面の表面エネルギーを上昇させる、または低下させることによって等)を促進する修飾官能化ポリマーによって修飾されるコーティングもしくは処理された表面修飾ポリマー材料、またはコーティングもしくは処理された化学修飾基材が示される。
【0074】
本発明は、改良または修飾された新たなポリマー材料、膜、基材、および同等物、ならびに様々な最終使用または用途のために、ポリマー基材の表面の物理的および/または化学的性質を恒久的に修飾する、改良または修飾された新たな方法に関係する。例えば、1つの改良された方法は、カルベン修飾因子および/またはニトレン修飾因子を使用し、ポリマー基材の表面と化学反応し、その化学反応性を変化させる化学種を形成するように、官能化ポリマーを化学修飾する。かかる方法は、ポリマー基材と、例えば、コーティング膜、材料、隣接する層、および/または同等物との相溶性を改良するために、その表面エネルギー、極性、親水性もしくは疎水性、親油性もしくは疎油性、および/または同等物を増加または減少する、ポリマー基材を修飾する挿入機構を含んでもよい。さらに、本発明を使用して、化学修飾膜、繊維、中空繊維、織物、および同等物を生成することができ、例えば、改良された親水性もしくは湿潤性を有し、高温安定性および/または同等物を改良することができる、ポリオレフィンの少なくとも表面に架橋結合を有するポリオレフィン微多孔性電池セパレータまたは膜を生成することができる。
【0075】
少なくとも選択された疎油性に関連する実施形態に従う:
【0076】
1.ポリマー表面(フィルム、繊維、またはバルク材料)は、多機能カルベン前駆体(成分B)および/またはニトレン前駆体(成分B)、および所望の官能性合成ポリマー(成分A)の混合物で修飾される。
a.ポリマー表面は、以下のポリマー分類からの任意の合成または天然ポリマーまたはコポリマーであってもよい:オレフィン、スチレン、シリコーン、ウレタン、アクリレート、エステル、ビニル、セルロース、アミド、アラミド、エーテル、および同等物。それらはまた、フェノールホルムアルデヒド樹脂またはブタジエン、イソプレン、およびネオプレン等のゴム系材料といった架橋ネットワーク材料であってもよい。加えて、PTFE、PVDF、PVDC、およびPVC等のポリマーを含有する他のハロゲンの修飾が、達成され得る。
b.成分Aは、典型的には、疎水性または疎油性処理用途において見られる材料である。織物加工またはキチン質に基づく材料として大量に使用されるフッ素化アクリルコポリマー系等の材料は、油分に対する好適な抵抗を提供し得る。加えて、成分Aは、抵抗強化のためのナノスケール粗度を生成する追加のナノ粒子を有する複合体材料であってもよい。
c.成分Bは、原位置でカルベン種および/またはニトレン種を生成するように調整されたペンダント官能基を有する多機能材料(f>2.0)である。
2.これらの付着量は、有機溶液または水溶液からもたらされてもよく、加熱処理または紫外線への曝露によって発生する。
a.修飾は、所期の用途に必要とされる表面特性をもたらすのに十分な量で、表面に付加され得る。典型的な適用量は、約0.05g/m2~1.0g/m2以上の範囲であってもよく、いくつかの要因の中でも特に、基材表面領域、溶液粘度、硬化速度に依存する。
b.成分AとBとの割合は、最高の特性を生成するように可変であってもよい。典型的なA/Bの付着量割合は、約0.5~200.0以上の範囲であってもよく、所望の表面特性およびAとBの反応性に依存する。
【0077】
少なくとも選択された対象または実施形態に従って、本発明は、本明細書で示される、または説明される、修飾ポリマー基材、表面修飾ポリマー材料、修飾官能化ポリマー、官能性ポリマー、もしくは修飾官能化ポリマーを含む化学修飾基材を提供する、または対象とする。
【0078】
修飾ポリマー基材が化学修飾ポリマー基材である、前述の発明。
【0079】
修飾ポリマー基材が、多孔性ポリマー基材、非多孔性ポリマー基材、多孔性中空繊維、非多孔性中空繊維、多孔性電池セパレータまたは膜、フィルム、化学修飾ポリマー基材、繊維、織物、ポリオレフィン材料、ポリオレフィンブレンド、ポリプロピレン材料、ポリエチレン材料、ポリマー表層、複合体、それらの組み合わせ等のうちの少なくとも1つである、前述の発明。
【0080】
修飾ポリマー基材が、カルベン中間体およびニトレン中間体のうちの少なくとも1つとポリマー基材の炭素‐水素結合との化学反応によって化学修飾され、少なくとも1つの修飾官能化ポリマーをそこへ共有結合する、前述の発明。
【0081】
本明細書に示される、または記載される、修飾ポリマー基材表面修飾ポリマー材料、修飾官能化ポリマー、官能性ポリマー、または修飾官能化ポリマー、フィルム、中空繊維、繊維,織物、複合体、層、表面、化学修飾ポリオレフィン微細孔膜、化学修飾ポリオレフィン微多孔性電池セパレータもしくは電池セパレータ膜、微多孔性電池セパレータもしくは電池セパレータ膜、リブ材料、それらの組み合わせ、を含む化学修飾基材、リチウムイオン充電式電池内の前記ポリオレフィン微多孔性電池セパレータの湿潤性を改良する方法、前記ポリオレフィン微多孔性セパレータ内に架橋結合を導入する方法、および/または同等物を作製する方法、または使用する方法。
【0082】
カルベン中間体およびニトレン中間体のうちの少なくとも1つとポリオレフィンの炭素‐水素結合の化学反応によって、ポリオレフィン微多孔性電池セパレータ膜を化学修飾するステップ、リチウムイオン充電式電池での使用に適合されたポリオレフィン微多孔性電池セパレータの前記湿潤性を改良するステップ、ポリオレフィン微多孔性電池セパレータ内に架橋結合を導入するステップ、および/または同等のステップのうちの少なくとも1つのステップを含む、前述の方法。
【0083】
電池セパレータにおける、少なくとも1つの化学修飾された表面の少なくとも一部分を有するポリオレフィン微細孔膜を含む、改良。
【0084】
該化学修飾ポリオレフィンが、ポリエチレンの表面エネルギーと同等であるか、またはそれを上回る表面エネルギーを有する、前述のセパレータ。
【0085】
該化学修飾が、ポリオレフィンの前記表面エネルギーを少なくとも約48ダイン/cmに上昇させる、前述のセパレータ。
【0086】
ポリオレフィン微細孔膜が、該膜の前記表面エネルギーを上昇させるように化学修飾される、前述のセパレータ。
【0087】
該ポリオレフィンが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ブレンド、混合物、およびそれらのコポリマーからなる群から選択される、前述のセパレータ。
【0088】
アノード、カソード、電解質、およびセパレータを備える電池において、前述のセパレータを含む、改良。
【0089】
ポリオレフィン微細孔膜を備える織物において、少なくとも1つの化学修飾された表面の少なくとも一部分を有する該ポリオレフィン微細孔膜を含む、改良。
【0090】
該化学修飾ポリオレフィン膜が、染色または他の仕上げステップといった二次標準織物加工の目的で、セルロース系材料を含む表面修飾を有する、前述の織物。
【0091】
該化学修飾ポリオレフィン膜が、ポリテトラフルオロエチレンの表面エネルギーと同等であるか、またはそれを下回る表面エネルギーを有する、前述の織物。
【0092】
該化学修飾が、ポリオレフィン膜の表面エネルギーを最大約20ダイン/cmに低下させる、前述の織物。
【0093】
前述のポリオレフィン膜と結合される少なくとも1つの合成または天然素材を含有する、織物ラミネート。
【0094】
該膜の表面エネルギーを低下させるように化学修飾されたポリオレフィン微細孔膜を含む、疎油的に修飾されたポリオレフィン織物膜であって、該ポリオレフィンが、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびそれらのコポリマーからなる群から選択され、該化学修飾ポリオレフィンが、疎油性ポリマーもしくはポリマーの組み合わせ、および/または同等物からなる表面修飾を有する、ポリオレフィン織物膜。
【0095】
カルベン中間体およびニトレン中間体のうちの少なくとも1つの化学反応によって化学修飾され、少なくとも1つの修飾官能化ポリマーをそこへ共有結合する少なくとも1つの表面または部分を有する微多孔性ポリマー膜であって、改良した湿潤性、低下した湿潤性、親水性、疎水性、疎油性、生物材料によるファウリングへの耐性、有機溶剤による湿潤への耐性、メタノール、エタノール、1-プロパノール、アセトン、および他の極性溶媒による湿潤への耐性、脂肪族および芳香族性溶媒による湿潤への耐性のうちの少なくとも1つを提供する、恒久的な化学修飾を提供する、微多孔性ポリマー膜。
【0096】
潜在的に好ましい多孔質膜(多孔性ポリマー基材)は、2007年8月23日に公開の米国公開特許出願第2007/0196638A1号および2011年9月15日に公開の第2011/0223486A1号に開示されており、双方ともに、参照により本明細書に組み込まれる。カービン前駆体といった潜在的に好ましい成分B材料は、2010年9月10日に公開のWO公開特許出願第2010/100410A1号、および2010年9月10日に公開の第2010/100413A2号に開示されており、双方ともに、参照により本明細書に組み込まれる。フルオロコポリマーといった潜在的に好ましい成分A材料は、2012年3月22日に公開の米国公開特許出願第2012/0070648A1号に開示され、参照により本明細書に組み込まれる。
【0097】
本明細書における教示の観点から、本発明の多くの他の改良および変更が、当技術分野の実践者にとって可能である。したがって、特許請求の範囲内において、本発明が、本明細書に具体的に説明されたもの以外に実施されてもよいことが理解される。