(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】乗り場行先階登録システム、および、乗り場行先階登録方法
(51)【国際特許分類】
B66B 1/18 20060101AFI20231107BHJP
【FI】
B66B1/18 K
(21)【出願番号】P 2022094072
(22)【出願日】2022-06-10
【審査請求日】2022-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】弁理士法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村尾 洋輔
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/176642(WO,A1)
【文献】特開2020-132410(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0066681(US,A1)
【文献】特開2021-138535(JP,A)
【文献】特開2017-013984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの利用者の操作により行先階を示す情報を出力する行先階入力手段と、
前記利用者を撮影するカメラと
前記カメラで撮影した前記利用者の画像の特徴量に基づいて前記利用者を特定する利用者特定部と、特定された前記利用者の操作により前記行先階入力手段が出力した行先階を示す情報と特定された前記利用者とを紐付けた情報と人工知能を用いた解析プログラムに基づいて特定された前記利用者ごとの行先階を推定する行先階推定部と、を備え、前記行先階推定部が推定した行先階に基づいて、前記利用者の行先階を登録する乗り場行先階登録装置と、
前記行先階推定部が推定した行先階を特定された前記利用者に確認する確認手段と、を備え、
前記乗り場行先階登録装置は、前記行先階推定部が推定した行先階を前記確認手段により特定された前記利用者に確認後、特定された前記利用者が前記行先階推定部が推定した前記行先階と異なる行先階を操作した場合、特定された前記利用者が操作した行先階を特定された前記利用者の行先階として登録し、特定された前記利用者が前記行先階推定部が推定した前記行先階と異なる行先階を操作しない場合、前記行先階推定部が推定した行先階を前記利用者の行先階として登録する、
乗り場行先階登録システム。
【請求項2】
前記乗り場行先階登録装置は、前記利用者特定部が前記利用者を特定してから所定の時間経過しても特定された前記利用者が前記行先階入力手段の操作をしない場合、前記行先階推定部が推定した行先階に基づいて、特定された前記利用者の行先階を登録する、
請求項1に記載の乗り場行先階登録システム。
【請求項3】
前記利用者特定部は、前記利用者の画像の情報と前記利用者が操作した行先階を示す情報とを紐付けて教師データとして記憶し、
前記行先階推定部は、前記利用者特定部が同じ利用者の教師データを記憶した回数が所定の回数以上である場合、特定された前記利用者の行先階を推定する、
請求項1または2に記載の乗り場行先階登録システム。
【請求項4】
前記確認手段は、スピーカ、マイク、もしくは表示パネルの少なくともいずれか一つを備える、
請求項
1に記載の乗り場行先階登録システム。
【請求項5】
前記カメラおよび前記確認手段は、乗りかご内、もしくは、エレベータホールの少なくともいずれか一つに設けられている、
請求項
4に記載の乗り場行先階登録システム。
【請求項6】
前記行先階入力手段は、前記カメラで撮影された前記利用者の口の動きに基づいて、行先階を示す情報を出力する画像解析装置である、
請求項1または2に記載の乗り場行先階登録システム。
【請求項7】
前記乗り場行先階登録装置から取得した行先階を示す情報に基づいて、複数の乗りかごの運行スケジュールを作成する群管理装置を備える、
請求項1または2に記載の乗り場行先階登録システム。
【請求項8】
エレベータの利用者の操作により行先階を示す情報が入力される行先階入力工程と、
前記利用者をカメラで撮影する撮影工程と
前記カメラで撮影した前記利用者の画像の特徴量に基づいて前記利用者を特定する利用者特定工程と、
前記行先階入力工程において入力された行先階を示す情報と、特定された前記利用者とを紐付けた情報を蓄積する教師データ蓄積工程と、
前記撮影工程で撮影した前記利用者の画像が蓄積された利用者の画像と一致した場合、前記教師データ蓄積工程で蓄積された教師データに基づいて人工知能を用いた解析プログラムにより特定された前記利用者ごとの行先階を推定する行先階推定工程と、
前記行先階推定工程もしくは前記行先階入力工程において得られた行先階を示す情報に基づいて、利用者の行先階を登録する乗り場行先階登録工程と
前記行先階推定工程で推定した行先階を特定された前記利用者に確認する確認工程と、を含み、
前記確認工程では、前記行先階推定工程で推定した行先階を特定された前記利用者に通知し、
前記乗り場行先階登録工程では、
特定された前記利用者が前記行先階推定工程で推定した行先階と異なる行先階を操作した場合、特定された前記利用者が操作した行先階を特定された前記利用者の行先階として登録し、
特定された前記利用者が前記行先階推定工程で推定した行先階と異なる行先階を操作しない場合、前記行先階推定工程で推定した行先階を特定された前記利用者の行先階として登録する、
乗り場行先階登録方法。
【請求項9】
前記乗り場行先階登録工程では、前記利用者特定工程において前記利用者を特定してから所定の時間経過しても特定された前記利用者が前記行先階入力工程を実行しない場合、前記行先階推定工程において推定した行先階に基づいて、特定された前記利用者の行先階を登録する、
請求項
8に記載の乗り場行先階登録方法。
【請求項10】
前記乗り場行先階登録工程では、前記利用者特定工程において同じ利用者を特定した回数が所定の回数以上である場合、前記行先階推定工程で推定した行先階に基づいて前記利用者の行先階を登録する、
請求項
8または9に記載の乗り場行先階登録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗り場行先階登録システム、および、乗り場行先階登録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
音声を用いてエレベータの乗りかごの呼び登録を行う乗り場行先階登録システムがある。この種の乗り場行先階登録システムでは、利用者が行先階を音声で入力することを誘導するアナウンスが必要とされている。しかし、アナウンスの音声と利用者の音声とが重なると、呼び登録がうまくいかないという問題がある。
【0003】
この問題を解決するために、アナウンスのタイミングを適切に設定する方法が特許登録されている。しかし、行先階を音声で入力する場合、利用者が行先階を音声で入力するまで待ち状態が継続するので、エレベータの運行効率が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6690775公報
【文献】特許第5811266公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述の事情によりなされたもので、エレベータの運行効率を向上することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、実施形態に係る乗り場行先階登録システムは、行先階入力手段とカメラと乗り場行先階登録装置と確認手段とを備える。行先階入力手段は、エレベータの利用者の操作により行先階を示す情報を出力する。カメラは、利用者を撮影する。乗り場行先階登録装置は、利用者特定部と行先階推定部とを備える。利用者特定部は、カメラで撮影した利用者の画像の特徴量に基づいて利用者を特定する。行先階推定部は、特定された利用者の操作により行先階入力手段が出力した行先階を示す情報と特定された利用者とを紐付けた情報と人工知能を用いた解析プログラムに基づいて特定された利用者ごとの行先階を推定する。乗り場行先階登録装置は、行先階推定部が推定した行先階に基づいて、利用者の行先階を登録する。確認手段は、行先階推定部が推定した行先階を特定された利用者に確認する。乗り場行先階登録装置は、行先階推定部が推定した行先階を確認手段により特定された利用者に確認後、特定された利用者が行先階推定部が推定した行先階と異なる行先階を操作した場合、特定された利用者が操作した行先階を特定された利用者の行先階として登録し、特定された利用者が行先階推定部が推定した行先階と異なる行先階を操作しない場合、行先階推定部が推定した行先階を利用者の行先階として登録する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態に係るエレベータ装置の斜視図である。
【
図2】本実施形態に係るエレベータホールを示す平面図である。
【
図3】本実施形態に係る乗り場行先階登録システムのブロック図である。
【
図4】本実施形態に係る利用者特定部のブロック図である。
【
図5】本実施形態に係るエレベータ装置の制御系を示す図である。
【
図6】本実施形態に係る制御ユニットのブロック図である。
【
図7】本実施形態に係る乗り場行先階登録システムによる教師データの蓄積処理について説明するためのフローチャートである。
【
図8】本実施形態に係る乗り場行先階登録システムによる行先階登録処理について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本実施形態を、図面を用いて説明する。説明には、適宜、相互に直交するX軸、Y軸、Z軸からなるXYZ座標系を用いる。
【0009】
図1は、本実施形態に係るエレベータ装置10の斜視図である。エレベータ装置10は、商業施設や居住施設などの建築物に設けられた昇降路100の内部に配置されている。
図1に示されるように、エレベータ装置10は、乗りかご31、カウンタウエイト26、昇降モータ34、ガイドレール21~24、制御装置70を有している。
【0010】
ガイドレール21~24それぞれは、長手方向をZ軸方向とする部材である。ガイドレール21及び22は、乗りかご31を昇降自在にガイドするための一対の部材である。また、ガイドレール23及び24は、カウンタウエイト26を昇降自在にガイドするための一対の部材である。ガイドレール21とガイドレール22は、Y軸方向に離間して配置されている。また、ガイドレール23及び24も、同様にY軸方向に相互に離間して配置されている。
図1では、カウンタウエイト26のガイドレール23及び24が、乗りかご31のガイドレール21及び22に対してX軸方向に離間して配置されている。なお、ガイドレール21~24の配置は、
図1に示される配置に限定されるものではない。
【0011】
乗りかご31は、利用者を収容して昇降路100を昇降するユニットである。乗りかご31は、ガイドレール21及び22の間に配置され、ガイドレール21及び22に対して、上下方向に移動可能に取り付けられている。
【0012】
乗りかご31の+X側の側面には、内部に出入りするための開口部31aが形成されている。開口部31aは、乗りかご31の側面に沿って移動する一対の扉32によって、閉塞或いは開放される。
【0013】
カウンタウエイト26は、ガイドレール23及び24に対して、上下方向に移動可能に取り付けられている。カウンタウエイト26の重量は、乗りかご31の重量に対して所定の割合になるように調整されている。
【0014】
昇降モータ34は、乗りかご31を昇降させるためのモータである。昇降モータ34は、昇降路100の上部に、回転軸がY軸に平行になるように配置されている。昇降モータ34の回転軸にはプーリー35が固定されている。
【0015】
昇降モータ34のプーリー35には、ワイヤ36が巻き回されている。ワイヤ36は、一端が、乗りかご31に固定され、他端が、カウンタウエイト26に固定されている。
【0016】
図2は、実施形態に係るエレベータホール120を示す平面図である。ここでは、A乃至Fで示される6基の乗りかご31が群を形成している場合について説明する。乗りかご31内には、行先階の登録と扉32の開閉を操作するための操作パネル41、および、利用者を撮影するカメラ51が設けられている。また、エレベータホール120の壁には、乗りかご31を呼ぶための呼びパネル43及び利用者を撮影するカメラ52が設けられている。
【0017】
図3は、本実施形態に係る乗り場行先階登録システム1のブロック図である。乗り場行先階登録システム1は、複数の操作パネル41からなる操作パネル群42、複数の呼びパネル43からなる呼びパネル群44、複数のカメラ51とカメラ52、通信装置4、乗り場行先階登録装置3、群管理装置2、制御装置70を含む。
【0018】
操作パネル41(乗りかご内操作パネル)は、乗りかご31内に設けられた行先階の登録および扉32の開閉を操作するためのボタン(凹凸のある物理的なボタン)とマイクとスピーカと表示パネルとを備えるパネルである。マイクは、利用者の音声を入力するための部材である。スピーカは、利用者に行先階の確認等を音声で行うための出力部材である。表示パネルは、利用者に行先階等を表示するための部材である。スピーカ、マイク、および表示パネルは、乗り場行先階登録装置3が推定した利用者の行先階を利用者に確認する際の確認手段としても機能する。ここでは、6基の乗りかご31が群を形成しているので、操作パネル群42は、6個の操作パネル41で構成される。操作パネル41は、利用者の操作により行先階を示す情報等を乗り場行先階登録装置3に出力する。
【0019】
呼びパネル43は、エレベータホール120の壁に設けられている。呼びパネル43は、行先階を登録するボタン(凹凸のある物理的なボタン)とマイクとスピーカと表示パネルとを備えるパネルである。マイクは、利用者の音声を入力するための部材である。スピーカは、利用者に行先階の確認等を音声で行うための部材である。表示パネルは、利用者に行先階等を表示するための部材である。
図2に示されるように1フロアに4個の呼びパネル43が設けられており、例えば10階建てのビルである場合、呼びパネル群44は、40個の呼びパネル43で構成される。呼びパネル43は、利用者の操作により行先階もしくは行先階の方向を示す情報を乗り場行先階登録装置3に出力する。
【0020】
カメラ51は、乗りかご31に乗車した利用者を撮影し、撮影した利用者の画像情報を乗り場行先階登録装置3に出力する。カメラ52は、エレベータホール120で乗りかご31を待つ利用者を撮影し、撮影した利用者の画像情報を乗り場行先階登録装置3に出力する。
【0021】
図3に示す携帯端末65は、利用者の所持するスマートフォン等の携帯端末である。携帯端末65には、乗りかご31の呼び、および、乗りかご31の行先階の登録等が可能なアプリケーションソフトウエアがインストールされている。携帯端末65は、乗りかご31を呼ぶための情報、および、行先階を示す情報を通信装置4に送信する。
【0022】
通信装置4は、利用者の所持するスマートフォン等の携帯端末65から送信された情報を受信して行先階もしくは行先階の方向を示す情報を乗り場行先階登録装置3に出力する装置である。通信装置4は、利用者が所持するスマートフォン等の携帯端末65と通信するためのエレベータ行先階登録用のアプリケーションソフトウエアおよびインターネットブラウザを搭載している。通信装置4は、エレベータホール120および乗りかご31内に設けられている。操作パネル41と呼びパネル43及び通信装置4は、行先階入力手段である。
【0023】
乗り場行先階登録装置3は、操作パネル41及び呼びパネル43、もしくは、通信装置4から取得した情報に基づいて、利用者の行先階を登録する装置である。乗り場行先階登録装置3は、利用者特定部50、行先階推定部60、行先階登録部62を有する。
図4に示すように、利用者特定部50は、カメラ51及び52で撮影した利用者の画像の特徴量に基づいて利用者を特定する画像認識部53を有する。利用者特定部50は、利用者の画像の情報と利用者が操作した行先階を示す情報とを紐付けた情報を教師データとして記憶部(
図3では図示略)に記憶する。
【0024】
行先階推定部60は、特定された利用者の操作により行先階入力手段が出力した行先階を示す情報と特定された利用者とを紐付けた情報(教師データ)と人工知能を用いた解析プログラムに基づいて特定された利用者ごとの行先階を推定する。行先階推定部60は、学習機能を有するAI(Artificial Intelligence)で構成される。行先階推定部60は、利用者特定部50が同じ利用者の教師データを記憶した回数が所定の回数(例えば、100回)以上である場合、特定された利用者の行先階を推定する。
【0025】
行先階登録部62は、操作パネル41及び呼びパネル43、もしくは、携帯端末65から入力された行先階を示す情報と、行先階推定部60が推定した行先階の情報とに基づいて、乗りかご31の行先階を登録する。利用者特定部50が利用者を特定してから所定の時間(例えば、3秒)経過しても特定された利用者が操作パネル41及びパネル43、もしくは、携帯端末65から行先階を入力しない場合、行先階登録部62は、行先階推定部60が推定した行先階を利用者の行先階として登録する。詳細には、行先階登録部62は、行先階推定部60が推定した行先階を利用者にスピーカもしくは表示パネルを用いて確認後、行先階推定部60が推定した行先階と異なる行先階を利用者が操作した場合、利用者が操作した行先階を利用者の行先階として登録する。また、行先階登録部62は、行先階推定部60が推定した行先階と異なる行先階を利用者が操作しない場合、行先階推定部60が推定した行先階を利用者の行先階として登録する。
【0026】
群管理装置2は、6基の乗りかご31の運行状況を管理するとともに、6基の乗りかご31の運行スケジュールを作成する装置である。具体的には、群管理装置2は、乗り場行先階登録装置3から取得した行先階もしくは行先階の方向を示す情報、6基の乗りかご31の位置(何階にいるか)、6基の乗りかご31の移動方向、6基の乗りかご31の戸開閉状態等の情報に基づいて、利用者の待ち時間が短くなるように、また、6基の乗りかご31の合計駆動時間が短くなるように、6基の乗りかご31の運行スケジュールを作成する。また、群管理装置2は、6基の乗りかご31に乗車している利用者の人数、各エレベータホール120にいる利用者の人数、呼びフロアにいる利用者の人数等の情報を含めて運行スケジュールを作成してもよい。乗りかご31に乗車している利用者の人数は、乗りかご31内に設けられたカメラ51の画像に基づいて計測される。また、各エレベータホール120にいる利用者の人数は、エレベータホール120に設けられたカメラ52の画像に基づいて計測される。群管理装置2は、作成した運行スケジュールを制御装置70に通知する。
【0027】
図1に戻り、制御装置70は、昇降路100に配置されている。制御装置70には、昇降モータ34を駆動する駆動ユニット91や、乗りかご31の運行スケジュールに基づいて駆動ユニット91を制御する制御ユニット80が収容されている。
【0028】
図5は、エレベータ装置10の制御系を示すブロック図である。制御系は、乗り場行先階登録装置3、群管理装置2と、制御装置70に収容される制御ユニット80及び駆動ユニット91と、を含んで構成される。
【0029】
制御ユニット80は、乗り場行先階登録装置3から登録された情報に基づいて群管理装置2が作成した運行スケジュールに基づいて、駆動ユニット91を制御する。駆動ユニット91は、昇降モータ34に電力を供給するための電源や、インバータなどを備えている。駆動ユニット91は、制御ユニット80からの指示に基づいて、昇降モータ34を駆動する。本実施形態では、乗りかご31が6基あるので、昇降モータ31は6個ある。また、駆動ユニット91は、制御ユニット80からの指示に基づいて、乗りかご31に設けられた扉32や、各階の乗り場に設けられた扉を開閉する。また、制御ユニット80は、6基の乗りかご31の位置、6基の乗りかご31の移動方向、6基の乗りかご31の戸開閉状態等を示す情報を群管理装置2に送信する。制御ユニット80は、6基の乗りかご31の戸開閉状態を扉32に設けられたセンサー(図示略)から取得する。
【0030】
図6は、制御ユニット80のブロック図である。制御ユニット80は、バス85を介して相互接続されるCPU(Central Processing Unit)81、主記憶部82、補助記憶部83、及びインタフェース部84を有するコンピュータである。
【0031】
CPU81は、補助記憶部83に記憶されているプログラムに従って、後述する処理を実行する。
【0032】
主記憶部82は、RAM(Random Access Memory)等を有している。主記憶部82は、CPU81の作業領域として用いられる。
【0033】
補助記憶部83は、ROM(Read Only Memory)、半導体メモリ等の不揮発性メモリを有している。補助記憶部83は、CPU81が実行するプログラム、及び各種パラメータなどを記憶している。
【0034】
インタフェース部84は、シリアルインタフェース、パラレルインタフェース、無線LANインタフェースなどを有している。群管理装置2及び駆動ユニット91は、インタフェース部84を介して、CPU81に接続される。
【0035】
上述のように構成されるエレベータ装置10では、CPU81が、群管理装置2からの入力に基づいて、駆動ユニット91を制御する。例えば、CPU81が、駆動ユニット91を介して、昇降モータ34を正転させると、乗りかご31が上昇するとともに、カウンタウエイト26が下降する。CPU81が、駆動ユニット91を介して、昇降モータ34を逆転させると、乗りかご31が下降するとともに、カウンタウエイト26が上昇する。
【0036】
次に、
図7に示すフローチャートを参照して、乗り場行先階登録装置3の利用者特定部50による利用者の画像の情報と利用者が操作した行先階を示す情報とを紐付けた情報の蓄積処理について説明する。この情報は、人工知能を用いた解析に教師データとして使用されるので、教師データの蓄積処理と呼ぶこととする。ここでは、行先階を示す情報を携帯端末65から取得していない場合について説明する。
図7に示すフローチャートは、カメラ51もしくはカメラ52が利用者を撮影したことをトリガーとしてスタートする。
【0037】
乗り場行先階登録装置3の利用者特定部50は、カメラ51もしくはカメラ52で撮影した利用者の画像に基づいて、利用者を特定する(ステップS11)。例えば、利用者特定部50は、カメラ51もしくはカメラ52で撮影した利用者の顔の画像に基づいて、利用者を特定する。ステップS11は、利用者特定工程である。具体的には、利用者特定部50は、画像認識部53によりカメラ51及び52で撮影した利用者の画像の特徴量を抽出することで利用者を特定する。利用者特定部50は、撮影した利用者の画像の特徴量と蓄積されている利用者の画像の特徴量とを比較し、両者の相関度が閾値を超えた場合、両者は同じ利用者であると特定する。なお、カメラ51もしくはカメラ52による利用者の撮影は、撮影工程に該当する。
【0038】
利用者特定部50は、特定した利用者が行先階を入力したか否かを判断する(ステップS12)。所定の時間(例えば、3秒)を経過しても特定した利用者が行先階を入力しない場合(ステップS12:No)、教師データの蓄積処理は終了される。
【0039】
一方、利用者が行先階を入力した場合(ステップS12:Yes)、利用者特定部50は、特定した利用者の操作により操作パネル41もしくは呼びパネル43から出力された行先階を示す情報を取得する(ステップS13)。ステップS13は、行先階入力工程である。そして、利用者特定部50は、取得した行先階を示す情報と特定した利用者とを紐付けた情報を教師データとして記憶部に蓄積する(ステップS14)。ステップS14は、教師データ蓄積工程である。利用者特定部50は、同じ利用者については、同じ利用者ごとに教師データを蓄積していく。
【0040】
次に、
図8に示すフローチャートを参照して、乗り場行先階登録装置3による行先階登録処理(乗り場行先階登録方法)について説明する。カメラ51もしくはカメラ52が利用者を検知したことをトリガーとして、
図8に示す行先階登録処理はスタートする。なお、カメラ51もしくはカメラ52による利用者の撮影は、撮影工程に該当する。
【0041】
行先階推定部60は、利用者特定部50が同じ利用者の教師データを記憶した回数が所定の回数以上であるか否かを判断する(ステップS31)。教師データを記憶した回数が例えば100回未満である場合(ステップS31:No)、行先階登録部62は、利用者が行先階を入力するまで待機する(ステップS32:No)。したがって、利用者が行先階を入力するまでの時間が長いほど、エレベータの運行効率が低下する。利用者が行先階を入力すると(ステップ32:Yes)、行先階登録部62は、利用者が入力した行先階を登録する(ステップS33)。
【0042】
一方、同じ利用者の教師データを記憶した回数が例えば100回以上である場合(ステップS31:Yes)、行先階推定部60は、蓄積された教師データに基づいて特定した利用者の行先階を推定する(ステップS34)。行先階推定部60は、例えば、特定した利用者の利用回数が最も多い階を行先階として推定する。ステップS34は、行先階推定工程である。
【0043】
仮に、カメラ51もしくはカメラ52で撮影された利用者が5人であり、そのうちの3人については教師データを記憶した回数が100回以上であり、2人については教師データを記憶した回数が100回未満である場合、行先階推定部60は、教師データを記憶した回数が100回以上である3人それぞれの行先階を推定し、教師データを記憶した回数が100回未満の2人の行先階の推定は行わない。
【0044】
次に、行先階登録部62は、行先階推定部60が推定した行先階を利用者に確認する(ステップS35)。ステップS35は、確認工程である。行先階登録部62は、操作パネル41もしくは呼びパネル43のスピーカや表示パネルを用いて、行先階推定部60が推定した行先階を利用者に知らせる。例えば、行先階推定部60が推定した行先階が5階である場合、操作パネル41もしくは呼びパネル43のスピーカから、「5階でよろしいでしょうか?」とアナウンスを行う。また、利用者が複数である場合は、「登録した行先階を確認してください。」等のアナウンスを行う。
【0045】
行先階登録部62は、利用者が行先階を入力したか否かを監視する(ステップS36)。利用者が所定の時間内に行先階を入力した場合(ステップS36:Yes)、処理はステップS33に移行される。一方、所定の時間内に利用者が行先階を入力しない場合(ステップS36:No)、行先階登録部62は、行先階推定部60が推定した行先階を行先階として登録し(ステップS37)、行先階登録処理を終了する。ステップS33およびステップS37は、乗り場行先階登録工程である。
【0046】
以上説明したように、本実施形態に係る乗り場行先階登録システム1は、利用者特定部50と行先階推定部60とを有する乗り場行先階登録装置3を備える。利用者特定部50は、カメラ51もしくはカメラ52で撮影した利用者の画像の特徴量に基づいて利用者を特定する。そして、利用者特定部50は、取得した行先階を示す情報と特定した利用者とを紐付けた情報を教師データとして記憶部に蓄積する。行先階推定部60は、特定した利用者の操作により行先階入力手段が出力した行先階を示す情報と特定された利用者とを紐付けた情報(教師データ)と人工知能を用いた解析プログラムに基づいて特定された利用者ごとの行先階を推定する。乗り場行先階登録装置3は、利用者特定部50が利用者を特定してから所定の時間経過しても特定した利用者が行先階の操作をしない場合、行先階推定部60が推定した行先階に基づいて、特定された利用者の行先階を登録する。このように、本実施形態に係る乗り場行先階登録システム1は、利用者が行先階を入力するまでの待機時間を排除することができるので、エレベータの運行効率を向上することができる。
【0047】
また、本実施形態に係る乗り場行先階登録システム1では、利用頻度の高い利用者は行先階の入力をしなくても目的とする行先階に移動することができるので、利用者の利便性を向上することができる。
【0048】
また、本実施形態に係る乗り場行先階登録システム1は、利用者特定部50が教師データを記憶した回数が所定の回数以上である場合、行先階推定部60が推定した行先階に基づいて利用者の行先階を登録するので、推定制度を向上することができる。
【0049】
また、実施形態に係る乗り場行先階登録システム1は、行先階推定部60が推定した行先階を特定した利用者に確認後、特定した利用者が推定した行先階と異なる行先階を操作した場合、特定した利用者が操作した行先階を特定した利用者の行先階として登録するので、仮に、行先階の推定に誤りがあっても、利用者に迷惑をかけることがない。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態によって限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、乗り場行先階登録システム1が群管理装置2を含む場合について説明したが、乗りかご31の台数が少ない場合、群管理装置2を備えない場合もある。
【0051】
また、ステップS35の説明では、操作パネル41もしくは呼びパネル43のスピーカから推定した行先階をアナウンスすることで推定した行先階を利用者に確認する場合について説明したが、例えば、表示パネルを用いて行先階を利用者に確認してもよい。
【0052】
また、上記の説明では、利用者が操作パネル41もしくは呼びパネル43から行先階を入力する場合について説明したが、行先階入力手段は凹凸のある物理的なボタンに限定されない。例えば、行先階入力手段はマイクを用いて音声により行先階を登録するものであってもよい。また、行先階入力手段は、カメラで撮影された利用者の口の動きに基づいて、行先階を示す情報を出力する画像解析装置を備えていてもよい。なお、画像解析装置について、利用者の口の動きに基づくとすることで、利用者が発声した場合だけでなく、発声を伴わない場合であっても動作可能となる。
【0053】
また、上記の説明では、乗り場行先階登録装置3と群管理装置2と制御装置70とが別装置である場合について説明したが、これに限定されない。例えば、乗り場行先階登録装置3と群管理装置2とが同じ装置に実装されていてもよいし、乗り場行先階登録装置3と群管理装置2と制御装置70とが同じ装置に実装されていてもよい。
【0054】
上記の説明では、利用者特定部50がカメラ51もしくはカメラ52で撮影した利用者の顔の画像に基づいて、利用者を特定する場合について説明したが、これに限定する必要はない。例えば、利用者特定部50は、顔の画像だけでなく、服装や靴およびかばん等の持ち物などを含めて、利用者を特定してもよい。
【0055】
上記では説明を省略したが、利用者が複数の階を同程度の頻度で利用する場合がある。この場合、ステップS34で説明した推定工程において、複数の階を行先階の候補として推定してもよい。そして、ステップS35の確認工程において、例えば、「5階と8階のいずれの階を選択されますか?」のように確認してもよい。
【0056】
また、上記の説明では、乗りかご31内のカメラ51とエレベータホール120に設けられたカメラ52を有する場合について説明したが、これに限定されない。カメラ51とカメラ52は、いずれか一つでもよい。例えば、エレベータホール120のカメラ52を省略してもよい。
【0057】
また、上記ステップS11の説明では、利用者特定部50がカメラ51もしくはカメラ52で撮影した利用者の画像に基づいて利用者を特定する場合について説明したが、これに限定する必要はない。例えば、利用者特定部50がカメラ51で撮影した利用者の画像のみに基づいて利用者を特定するようにしてもよい。エレベータホール120のカメラ52は、乗りかご31に乗車しない人も撮影する場合もある。したがって、乗りかご31に乗車した人のみを利用者と判断し、
図7に示す教師データの蓄積処理を行ってもよい。
【0058】
(変形例)
ここでは、携帯端末65から行先階を登録する場合について説明する。携帯端末65から行先階を登録する場合、携帯端末65からは行先階を示す情報とともに、例えば、利用者のID番号と利用者の顔写真の情報を、通信装置4を介して乗り場行先階登録装置3に送信する。
【0059】
図7のステップS11の処理において、利用者特定部50は、利用者のID番号により利用者を特定する。ステップS12は省略される。ステップS13において、利用者特定部50は、携帯端末65から送信された行先階を示す情報を取得する。そして、ステップS14において、利用者特定部50は、利用者の顔写真の情報と利用者のID番号と取得した行先階を示す情報とを紐付けた情報を教師データとして記憶部に蓄積する。利用者特定部50は、同じ利用者については、同じ利用者ごとに教師データを蓄積していく。
【0060】
図8のステップS31において、利用者特定部50は、カメラ51もしくはカメラ52で撮影された利用者の顔写真の情報と、携帯端末65から送信された利用者の顔写真の情報とが一致するか否かを判断する。両者が一致しない場合、ステップS32に移行する。両者が一致した場合、行先階推定部60は、利用者特定部50が同じ利用者の教師データを記憶した回数が所定の回数以上であるか否かを判断する(ステップS31)。他の説明は、上記の説明と同じである。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施しうるものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
1 乗り場行先階登録システム
2 群管理装置
3 乗り場行先階登録装置
4 通信装置
10 エレベータ装置
21~24 ガイドレール
26 カウンタウエイト
31 乗りかご
31a 開口部
32 扉
34 昇降モータ
35 プーリー
36 ワイヤ
41 操作パネル
42 操作パネル群
43 呼びパネル
44 呼びパネル群
50 利用者特定部
51、52 カメラ
53 画像認識部
60 行先階推定部
62 行先階登録部
65 携帯端末
70 制御装置
80 制御ユニット
81 CPU
82 主記憶部
83 補助記憶部
84 インタフェース部
85 バス
91 駆動ユニット
100 昇降路
120 エレベータホール
【要約】
【課題】エレベータの運行効率を向上する。
【解決手段】実施形態に係る乗り場行先階登録システムは、行先階入力手段とカメラと乗り場行先階登録装置とを備える。行先階入力手段は、エレベータの利用者の操作により行先階を示す情報を出力する。カメラは、利用者を撮影する。乗り場行先階登録装置は、利用者特定部と行先階推定部とを備える。利用者特定部は、カメラで撮影した利用者の画像の特徴量に基づいて利用者を特定する。行先階推定部は、特定された利用者の操作により行先階入力手段が出力した行先階を示す情報と特定された利用者とを紐付けた情報と人工知能を用いた解析プログラムに基づいて特定された利用者ごとの行先階を推定する。乗り場行先階登録装置は、行先階推定部が推定した行先階に基づいて、利用者の行先階を登録する。
【選択図】
図3