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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】喫煙材の加熱
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/465 20200101AFI20231107BHJP
【FI】
A24F40/465
【請求項の数】 27
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022119531
(22)【出願日】2022-07-27
(62)【分割の表示】P 2020182712の分割
【原出願日】2013-09-11
(65)【公開番号】P2022153546
(43)【公開日】2022-10-12
【審査請求日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】1217067.6
(32)【優先日】2012-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519138265
【氏名又は名称】ニコベンチャーズ トレーディング リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Nicoventures Trading Limited
【住所又は居所原語表記】Globe House, 1 Water Street,WC2R 3LA London,United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ハットリック、デビッド
(72)【発明者】
【氏名】ブレレトン、サイモン
【審査官】中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】特許第3588469(JP,B2)
【文献】特開2008-035742(JP,A)
【文献】特開2011-135901(JP,A)
【文献】特表2009-509523(JP,A)
【文献】特許第3392138(JP,B2)
【文献】特許第3413208(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00-47/00
A61M 15/06
H05B 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引用に喫煙材の成分を揮発させるように構成された使い捨て消耗品であって、前記使い捨て消耗品は長手方向軸を有し、前記使い捨て消耗品は、
前記使い捨て消耗品の前記長手方向軸に沿って延びる喫煙材加熱チェンバーと、
前記喫煙材加熱チェンバー内の喫煙材と、
前記喫煙材加熱チェンバーの内側に位置し、前記長手方向軸上に延び、加熱材を含む又はからなる細長い加熱部材であって、前記加熱材は、変動磁場の存在によって加熱されるように構成され、前記加熱材は、熱エネルギーを前記喫煙材加熱チェンバー内の喫煙材に移行させて前記成分を揮発させるように配置される、細長い加熱部材と、
を備える、使い捨て消耗品。
【請求項2】
実質的に管状の要素を含み、前記加熱材および前記喫煙材加熱チェンバーは前記管状の要素内にある、請求項1に記載の使い捨て消耗品。
【請求項3】
前記実質的に管状の要素は、長尺ハウジングを形成する、請求項2に記載の使い捨て消耗品。
【請求項4】
前記喫煙材加熱チェンバーは、前記加熱部材の長手方向面の周囲に位置する、請求項1~3のいずれか一項に記載の使い捨て消耗品。
【請求項5】
前記加熱部材は、前記喫煙材と直接隣接する、請求項1~4のいずれか一項に記載の使い捨て消耗品。
【請求項6】
前記加熱部材は、前記喫煙材の各端部まで延びている、請求項1~5のいずれか一項に記載の使い捨て消耗品。
【請求項7】
前記加熱部材は、単一構成要素である、請求項1~6のいずれか一項に記載の使い捨て消耗品。
【請求項8】
前記加熱部材は、固体である、請求項1~7のいずれか一項に記載の使い捨て消耗品。
【請求項9】
前記加熱部材は、連続した外面を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の使い捨て消耗品。
【請求項10】
前記加熱部材には開口部がない、請求項1~9のいずれか一項に記載の使い捨て消耗品。
【請求項11】
喫煙材は前記加熱部材の内側にない、請求項1~10のいずれか一項に記載の使い捨て消耗品。
【請求項12】
断熱材を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の使い捨て消耗品。
【請求項13】
前記断熱材は、前記喫煙材を囲む、請求項12に記載の使い捨て消耗品。
【請求項14】
前記加熱部材は、前記加熱材と熱接触する基材を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の使い捨て消耗品。
【請求項15】
前記基材は、前記加熱材から受けた熱エネルギーを保持し、前記熱エネルギーを前記喫煙材加熱チェンバー内の喫煙材に移行させて前記成分を揮発させるように構成されている、請求項14に記載の使い捨て消耗品。
【請求項16】
前記基材は長時間に亘って前記喫煙材に熱エネルギーを移動させて、前記変動磁場によって前記加熱材を同時に加熱することなく、前記長時間に亘って揮発温度に前記喫煙材の温度を上昇させ、維持するように構成されている、請求項14又は15に記載の使い捨て消耗品。
【請求項17】
前記加熱材は、前記基材を含む前記加熱部材に分散させた加熱材からなる複数の片を含む、請求項14~16のいずれか一項に記載の使い捨て消耗品。
【請求項18】
前記喫煙材加熱チェンバーは、前記加熱部材の周囲で同軸に位置している、請求項1~17のいずれか一項に記載の使い捨て消耗品。
【請求項19】
前記加熱材は、導電性材を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の使い捨て消耗品。
【請求項20】
前記加熱材は、材料中の前記変動磁場によって誘導される渦電流の影響を受けやすく、前記渦電流によって前記加熱材が抵抗加熱される、請求項1~19のいずれか一項に記載の使い捨て消耗品。
【請求項21】
前記喫煙材加熱チェンバーと流体連通するマウスピースを含み、前記マウスピースが、フィルター材を含む包装されたプラグを含む、請求項2~4のいずれか一項に記載の使い捨て消耗品。
【請求項22】
前記実質的に管状の要素は、前記包装されたプラグ及び前記喫煙材に亘って延びている、請求項2に従属する請求項21に記載の使い捨て消耗品。
【請求項23】
前記喫煙材加熱チェンバーと流体連通するマウスピースを含み、これにより前記喫煙材の揮発した成分がユーザーによって前記マウスピースを介して引き込まれる、請求項1に記載の使い捨て消耗品。
【請求項24】
前記マウスピースがフィルター材を含む、請求項23に記載の使い捨て消耗品。
【請求項25】
前記加熱材は、前記喫煙材を約50℃~250℃の揮発温度に加熱して前記成分を揮発させるように構成されている、請求項1~24のいずれか一項に記載の使い捨て消耗品。
【請求項26】
変動磁場発生器と、請求項1~25のいずれか一項に記載の使い捨て消耗品とを含むシステムであって、
前記変動磁場発生器は、前記加熱材の加熱中、前記加熱部材を受けるように配置されている、システム。
【請求項27】
吸引のために喫煙材の成分を揮発させるための前記喫煙材を加熱する方法であって、
請求項1~25のいずれか一項に記載の使い捨て消耗品を、変動磁場を発生させるように構成された装置に挿入するステップであって、
前記加熱材は加熱部材内に含まれ、前記加熱部材は前記使い捨て消耗品の長手方向軸に沿って延びている、ステップと、
前記装置内で前記変動磁場を発生させ、これにより前記加熱材中に電流を誘導させることによって前記加熱材を加熱するステップと、
前記加熱材からの熱エネルギーを前記喫煙材に移行させて前記喫煙材を揮発温度に加熱し、これにより前記喫煙材の成分を揮発させるステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は喫煙材を加熱して喫煙材の成分を揮発させることに関する。
【背景技術】
【0002】
紙巻きタバコおよびシガーなどの喫煙品は、使用の際にタバコを燃やし、タバコ煙を発生させる。タバコ煙を発生させずに化合物を放出する製品によってこれら喫煙品の代替え品を提供しようとする試みがなされてきた。そのような製品の例としては、タバコを燃焼させずに加熱によって化合物を放出するいわゆる発熱するが燃焼しない製品が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明では吸引用に喫煙材の成分を揮発させるように構成された装置が提供され、この装置は、
喫煙材加熱チェンバーと
変動磁場の存在によって加熱されるように構成された加熱材とを含み、この加熱材は、熱エネルギーを加熱チェンバー内の喫煙材に移行させて上記成分を揮発させるように配置されている。
【0004】
加熱材は加熱部材に含まれてもよい。
【0005】
加熱部材は加熱材と熱接触する基材を含んでもよく、基材は加熱材から受けた熱エネルギーを保持し、その熱エネルギーを加熱チェンバー内の喫煙材に移行させて上記成分を揮発させるように構成されている。
【0006】
基材は長時間に亘って上記加熱材に熱エネルギーを移動させて、変動磁場によって加熱材を同時に加熱することなく、その長時間に亘って揮発温度に喫煙材の温度を上昇させ、維持するように構成してもよい。
【0007】
加熱材は、基材を含む加熱部材に分散させた加熱材からなる複数の片を含んでもよい。
【0008】
加熱部材は、喫煙材加熱チェンバーに隣接して位置する長尺の部材であってもよい。
【0009】
加熱チェンバーは加熱部材の周囲で同軸に位置してもよい。
【0010】
加熱材は喫煙材を含む喫煙材加熱チェンバーの内側に位置してもよい。
【0011】
加熱材は喫煙材内に分散された複数の加熱材片であってもよい。
【0012】
加熱材は導電性材を含んでもよい。
【0013】
加熱材は材料中の変動磁場によって誘導される渦電流の影響を受けやすくてもよく、渦電流によって加熱材が抵抗加熱される。
【0014】
本発明の装置は、加熱チェンバーおよび加熱材が収まっているハウジングと加熱材を
加熱している間ハウジングを収容するように配された変動磁場発生器とを含んでもよい。
【0015】
磁場発生器は取り外し自在にハウジングと合体し、これにより加熱している間ハウジングを発生器に対して安定した位置に維持する。
【0016】
本発明の装置は、加熱チェンバーと流体連通するマウスピースを含んでもよく、これにより喫煙材の揮発した成分がユーザーによってマウスピースを介して引き込まれる。
【0017】
加熱材は喫煙材を約50℃~250℃の揮発温度に加熱して上記成分を揮発させるように構成してもよい。
【0018】
本発明では喫煙材の成分を揮発させるための喫煙材を加熱する方法が提供され、この方法は、
変動磁場を発生させること、
この変動磁場を使用して加熱材中に電流を誘導し、これにより加熱材を加熱すること、
加熱材からの熱エネルギーを喫煙材に移行させて喫煙材を揮発温度に加熱し、これにより喫煙材の成分を揮発させることを含む。
【0019】
本発明では喫煙材の成分を揮発させるための喫煙材を加熱する方法が提供され、この方法は、
加熱材と喫煙材を含むハウジングを、変動磁場を発生させるように構成された装置に挿入すること、
装置内で変動磁場を発生させ、これにより加熱材中に電流を誘導させることによって加熱材を加熱すること、
加熱材からの熱エネルギーを喫煙材に移行させて喫煙材を揮発温度に加熱し、これにより喫煙材の成分を揮発させることを含む。
【0020】
本発明の方法を行う装置が提供され、この装置は、
喫煙材と加熱材を含むハウジングと、
変動磁場を発生させるように構成された装置とを含む。
【0021】
あくまで例示を目的として、添付図面を参照して本発明の実施態様を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】ユーザーが吸引するための加熱された喫煙材の揮発成分を供する装置を一部切り欠いて示し、電導性加熱材が喫煙材加熱チェンバーに隣接して位置している。
図2】ユーザーが吸引するための加熱された喫煙材の揮発成分を供する装置の斜視図であり、装置のハウジングが加熱材中に渦電流を誘導するための電磁場発生器と合体している。
図3】ユーザーが吸引するための加熱された喫煙材の揮発成分を供する装置の断面図であり、電導性加熱材が加熱チェンバー内に喫煙材と共に位置している。
図4】ユーザーが吸引するための加熱された喫煙材の揮発成分を供する装置の斜視図であり、装置のハウジングが加熱材中に渦電流を誘導するための電磁場発生器と合体している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書中で使用する「喫煙材」なる用語は、加熱した際に揮発成分を供するあらゆる材料を含み、例えば、タバコ、タバコ派生物、膨張タバコ、再生タバコまたはタバコ代替え品の1つ以上を含んでもよい。
【0024】
吸引のために喫煙材2の揮発成分を供するための装置1は、喫煙材加熱チェンバー3と、この加熱チェンバー3と流体連通しているマウスピース4とを含む。マウスピース4は
、包装されたプラグの形体で供されるセルロースアセテートトウなどのフィルター材を含んでもよい。装置1のユーザーは、喫煙材2が加熱チェンバー3の内側で喫煙材成分を揮発させるのに充分な温度に熱せられると、マウスピース4から揮発した成分を吸引することができる。
【0025】
以下により詳しく説明するように喫煙材2は、喫煙材2に隣接して位置する加熱材5からの熱移動によって加熱される。加熱材5自体は、電磁誘導加熱工程中に抵抗加熱される。
【0026】
より具体的には加熱材5は、加熱材5が変動磁場に置かれたとき、誘導された渦電流が加熱材5を抵抗加熱する限定された電気抵抗の導電性材を含む。好適な加熱材5の一例は、鉄であるが、これとは別に他の導電性金属または合金などの他の導電性材を使用することも可能である。加熱材5は、喫煙材2を燃焼させずに電磁誘導の効果によって加熱チェンバー3内でニコチンおよび芳香族化合物などの喫煙材2の成分を揮発させるのに充分な温度に加熱される。
【0027】
加熱材5は、加熱チェンバー3の内側またはこれに極めて近接して位置してもよい。上述したように一例としては、加熱材5は喫煙材2に直接隣接してまたは喫煙材2に直接隣接して位置する加熱部材6内に配置される。加熱材5の位置は、加熱チェンバー3の内側で加熱された加熱材5と喫煙材2の間で効果的な熱移動が生じるような位置であり、これにより喫煙材2はマウスピース4を介した吸引のために喫煙材2の成分を揮発させるのに充分な温度に加熱される。
【0028】
簡単に上記で触れたように加熱材5は、加熱チェンバー3内の喫煙材2に加熱材からの熱エネルギーを移行させるように構成された加熱部材6内に含まれてもよい。加熱材5に加えて加熱部材6は基材7を含んでもよく、この基材は熱保持性であり、比較的長い時間に亘って加熱材5から受けた熱エネルギーを放出するように作用し、これによりその長い時間の間喫煙材2を揮発温度に維持する。例としては以下に説明するように約3~10分
間である。基材7は、加熱材5とは異なり、それ自体は変動磁場に置かれたときに渦電流の影響を受けにくい電気絶縁体であってもよい。
【0029】
基材7は加熱材5と熱接触し、加熱材5が電磁誘導によって加熱されると、加熱材5からの熱エネルギーが基材7に伝わり、基材7が加熱材5の温度にまで温まる。その後基材7に蓄えられた熱は、長時間に亘って加熱チェンバー3内に放散し、その中の喫煙材2を連続的に加熱し、喫煙材2の成分がマウスピース4を介した吸引のために連続的に揮発する。
【0030】
好適な基材7の一例としては、加熱材5より比熱容量の高い材料が挙げられる。一例として、比熱容量は約1000~3500J/kg.Kの範囲内であるが、他の値も好適な場合がある。基材7はポリマーであるが、これとは別に他の基材7も使用することも可能である。好適な基材7の例としてはHDPEまたはポリカーボネートが挙げられる。上記で簡単に説明したように基材7は、加熱材5から受け取った熱エネルギーを蓄え、上記したような長い時間に亘って加熱材5からの熱エネルギーを徐々に放散するように構成され、所望の揮発温度範囲内に喫煙材2を加熱し、その時間が経過するまで所望の揮発温度範囲内に喫煙材2の温度を維持する。タバコなどの喫煙材の成分が揮発する温度範囲の例としては、約50℃~150℃、約50℃~120℃、約50℃~100℃、約50℃~80℃または約60℃~70℃などの約50℃~約250℃の範囲が挙げられる。他の範囲であっても好適な場合がある。上述の長い時間は、従来の紙巻きタバコを喫煙するのに掛かる時間とほぼ同じ長さであってもよい。一例としては約4分~8分の間であり、約7分程度である。
【0031】
加熱材5と基材7(もし使用する場合)は、任意に各パフごとの前に加熱材5を再加熱するためにパフの間に変動磁場に置いてもよい。
【0032】
加熱部材6は装置1の長手方向軸に沿って延びてもよい。また加熱チェンバー3は、装置1の長手方向軸に沿って延びてもよく、かつ、加熱部材6に隣接して位置してもよい。例えば図1に示した加熱部材6は、装置1の中央長手方向軸に沿って実質的に延び、加熱チェンバー3はその長手方向面の周囲に位置する。加熱部材6が図1に示すように実質的に円筒状である場合、加熱チェンバー3が周囲で延びている長手方向に延びた面は加熱部材6の円周面である。この種の構成では加熱チェンバー3は、加熱部材6の周囲に同軸層を含んでもよい。これにより加熱部材6の周囲に環状の空間が設けられ、その中に以下に説明するように喫煙材2を加熱のために挿入することができる。
【0033】
別の構成として、加熱チェンバー3と加熱部材6の位置を逆にしてもよく、加熱チェンバー3が装置1の中央長手方向軸に沿って位置し、加熱部材6がその周囲に同軸層として環状に配置される。
【0034】
図1に例示するように加熱材5は加熱部材6中の基材7全体に配分された複数の個別の加熱材5の片を含んでもよい。基材7に加熱材5が実質的に均等に配分されることによって、加熱材5が加熱されると基材7を均一に加熱し、従って加熱チェンバー3内の喫煙材2も均一に加熱される。しかしながら、当然のことながら複数の個別の加熱材5の片の使用は、本発明の要件ではなく、これとは別の構成でも基材7および/または喫煙材2を均一に加熱することは同じように可能である。
【0035】
さらに別の構成を図3に示し、ここでは加熱材5が上述したような加熱部材6内ではなく、喫煙材2自体にある。図3から判るように加熱材5の複数の片は、実質的に均一に喫煙材2全体に配分され、加熱材5が誘導された電流によって加熱されると、チェンバー3に亘って喫煙材2を均一に加熱する。加熱材5のこれらの個々の片は、基材7に囲まれ、
加熱チェンバー3はチェンバー3全体に配分されたそれぞれ加熱材5および基材7を含む複数の加熱部材6を含んでもよい。例えば加熱部材6は、加熱材5の内方コアおよび基材7からなる外方層内でほぼ球体であってもよい。
【0036】
加熱チェンバー3の深さまたは横方向の寸法は、約2mm~10mmの範囲内であり、約5mmであってもよい。これは上述したように加熱チェンバー内で同軸方向に延びた芯として配される場合、基材7を含んでも、含まなくてもよい。加熱チェンバー3の長さは従来の紙巻きタバコの喫煙材ロッドの長さにほぼ等しくてもよい。好適な長さの例としては約55mm~60mmが挙げられるが、これとは別に他の長さのものであっても使用可能である。
【0037】
ハウジング8は、加熱チェンバー3、マウスピース4、加熱材5および基材7などの装置1の部材を収容してもよい。図1および2ではハウジング8は、その第1端部に位置するマウスピース4およびハウジングの対向した第2端部からハウジング8の内部領域を介してハウジング8の長手方向軸に沿って延びた加熱部材6および加熱チェンバー3を有する長尺のものとして例示されている。ハウジング8は、例えば紙巻きタバコ、シガーまたはシガリロと類似の寸法を有するパイプなどの実質的に管状の形状である。ハウジング8は、吸引および通常の使用時に保持する際に装置1のユーザーにとって快適な好適なポリマー材などのプラスチックで形成してもよい。
【0038】
加熱材5に電流を誘導する変動磁場は、磁場発生器9によって発生させてもよく、その例を図2および4に示す。磁場発生器9は、変動磁場を発生させるために電力を供する好
適な電池またはバッテリーなどの電源10を含んでもよい。これとは別に磁場発生器9は電源電力供給部、パーソナルコンピューターまたは他の外部電力源などの外部の電力供給源から電力を受け取るように構成されてもよい。
【0039】
磁場発生器9は交流電流などの変動電流を流れるようにして変動RF場などの変動電磁場を発生器9の近傍に生じさせる電気コイルを含んでもよい。磁場発生器9によって生じる変動磁束は、加熱材5が発生器9の近傍に位置したときに渦電流を加熱材5に誘導する。上述したようにこれらの渦電流は順に加熱材5に抵抗加熱を生じさせ、従って加熱材5の温度の温度を上昇させる。
【0040】
磁場発生器9は、中に加熱部材6、加熱チェンバー3および喫煙材2が位置しているハウジング8から離れていてもよい。この場合磁場発生器9は、ハウジング8とその中の装置部材が磁界源9に対して安定した構造で保持されるように、加熱材5を加熱している間加熱材ハウジング8と構造的に係合するように構成してもよい。例えば図2および4を参照すると磁場発生器9はハウジング8を挿入することができる凹部11を含んでもよい。凹部11の内部形状は、ハウジング8の端部領域の外部形状と実質的に合致し、これによりハウジング8の端部領域は磁場発生器9と合体し、その内側に物理的に固定される。
【0041】
ハウジング8の磁場発生器9内での合体作用によって発生器9に変動磁場の発生を誘発させ、従って揮発した喫煙材成分を得るための加熱材5を加熱する工程となる。
【0042】
磁場発生器9は、発生器9の使用中、例えばハウジング8が発生器9と合体したとき加熱材5から約5mm~100mmの距離内に位置してもよい。この範囲は、一例であり、この範囲外の他の好適な距離であってもよい。
【0043】
上述したように加熱材5からの熱は加熱チェンバー3の喫煙材2内に放散し、喫煙材2が揮発温度に到達したときに喫煙材2の成分を揮発させる。任意に装置1は、加熱チェンバー3内の加熱材5、基材7および/または喫煙材2が所定の揮発温度に到達したときを
検知するように構成されている例えばサーモカップルなどの温度センサー12を含んでもよい。温度センサー12は、揮発温度に到達し、従って喫煙材2の揮発した成分が吸引できるようになったことをユーザーに警告するように構成されているアラーム、インジケーター・ライトまたはいくつかの他の好適な警告ユニットを含んでもよい、または連通してもよい。
【0044】
さらにまたはこれとは別に装置1は、加熱材5が変動磁場に晒された時間を測定し、揮発温度が加熱チェンバー3内で到達したことに対応すると知られている所定の加熱時間が経過したときをユーザーに警告するように構成されたタイマー13を含んでもよい。タイマー13は、ハウジング8が磁場発生器9に合体したという情報を検出する、または受け取ったときに装置1によって自動的に始動させてもよい。
【0045】
加熱材5が所定の揮発温度に加熱されると、ハウジング8を磁場発生器9から取り除くことができ、加熱材5は最早実質的な抵抗加熱効果を受けなくなる。この段階で磁場発生器9の電源を切ることができる。任意に磁場発生器9は、所定の揮発温度に到達するおよび/または所定の加熱時間が経過したとき、磁場の発生を自動的に停止するように構成してもよい。
【0046】
加熱された加熱材5から放出された熱によって揮発したまたはその後に揮発する喫煙材2の成分は、磁場発生器9が加熱材5の近くになくてもマウスピース4から吸い込むことができる。これにより装置1のユーザーは、ユーザーが紙巻きタバコなどの喫煙品から喫煙材成分を吸引するのと同じような方法でマウスピース4から揮発した成分を吸入するこ
とが可能になる。磁場発生器9は、喫煙材2が加熱され続けているのでマウスピース4から規則的に新しく揮発した喫煙材成分をユーザーが吸入している間、例えば上述の長い時間ユーザーのポケットに入れてもよい。
【0047】
装置1の全ての構成において喫煙材2は、ハウジング8の好適な開口部を介して加熱チェンバー3内に挿入できるまたはそこから取り外すことができる使い捨て喫煙材カートリッジまたは他の喫煙材消耗品の形体で設けられてもよい。従って装置1のユーザーは、ハウジング8、その装置の内部部材および磁場発生器9は再利用しつつ、異なるまたは改善された吸引を体験できるように喫煙材2を交換するという選択肢を有する。例えばカートリッジまたは他の消耗品は、図1に示したもののように長尺の加熱部材6上にスライド式に出し入れ可能な喫煙材からなる中空の管を含んでもよく、または長尺の加熱部材6の中空の中心内にスライド式に出し入れ可能な喫煙材2からなる実質的に中実で長尺の芯を含んでもよい。カートリッジは、例えばプラスチックで形成されたスリーブを含んでもよく、これは喫煙材2を含み、そこから喫煙材の揮発した成分がマウスピース4内に流れる。
【0048】
これとは別にハウジング8および喫煙材2などのその内部部材は、使用後ユーザーによって破棄されることを意図した使い捨ての形体であってもよい。
【0049】
図1および3に示すようにハウジング8および/または喫煙材カートリッジ2に断熱材14を設けて、喫煙材2およびハウジング8の内部部材からハウジング8の周囲の外気への熱損失を減少させてもよい。断熱材14は、例えば加熱チェンバー3とハウジング8の外面との間に真空領域を設けて、これにより伝導および対流によって実質的に熱損失を妨いで装置1を断熱するように構成されている真空断熱であってもよい。さらにまたはこれとは別にハウジング8および/または喫煙材カートリッジ2に喫煙材2とハウジング8の外面との間に位置する赤外線反射層を設けて熱放射による損失を妨げるようにしてもよい。反射層は断熱層14上または内に任意に設けてもよい。
【0050】
さらにまたはこれとは別にハウジング8は加熱材5とハウジング8の外部の間に位置す
る喫煙材2によって断熱されてもよい。
【0051】
この断熱効果によりハウジング8の外面が確実に加熱材5によって実質的に加熱されなくなり、従ってハウジング8の外面は揮発した成分をマウスピース4から吸引している間ユーザーにとってハウジング8を心地良くつかめる温度に維持される。
【0052】
任意に加熱チェンバー3は、喫煙材の揮発した成分がマウスピース4を通って逃げないように密閉封止してもよい。入り口および出口バルブをマウスピース4から加熱チェンバー3を封止し、ユーザーがマウスピース4で吸い込みを行った際に揮発した成分が加熱チェンバー3を出るように構成してもよい。装置1は適当な時期にバルブの開閉を始めるパフセンサーを含んでもよい。これとは別にバルブは、ユーザーがマウスピース4で吸い込みを行った際にユーザーによって生じる吸い込みによる力によって自動的に開くようにしてもよい。機械的なヒンジをバルブに使用してもよい。
【0053】
本発明の装置1は、加熱材5を好適な基材7中に分散させて、得られた物を加熱部材6に成形して製造してもよい。装置1のハウジング8は、装置1の部材を挿入できる実質的に中空の内部領域を設けるためにプラスチック成型技術によって形成してもよい。1つ以上の断熱層14をハウジング8の壁の内方または外方に設けて装置1の使用中の加熱材5からの熱損失を少なくてしてもよい。上述したように加熱部材6を中央軸などのハウジング8の長手方向軸に沿って固定し、喫煙材加熱チェンバー3をそれに隣接したままにしてもよい。インジケーター・ライトまたは他の好適な警告ユニットと共に温度センサー12とタイマー13をハウジング8の適当な位置に固定してもよい。一例として図1に示すよ
うに加熱チェンバー3とマウスピース4の間である。マウスピース4がハウジング8の一端に設けられ、流体通路を加熱チェンバー3とマウスピース4の間に設けて、喫煙材2の揮発した成分を吸引のためにマウスピース4に流れるようにしてもよい。
【0054】
種々の問題の対処と技術の発展のため、本開示全体は種々の実施形態を例示的に示しており、これらの実施形態では特許請求された発明が実践され、優れた装置および方法を提供することができる。本開示の利点および特徴は実施形態の単なる代表的な具体例であり、包括的でも排他的でもない。これらは特許請求された特徴の理解と教示の単なる補助に提供されている。当然だが、本開示の利点、実施形態、具体例、機能、特徴、構造、および/または他の側面は本開示を特許請求の範囲に規定されたとおりに限定するあるいは特許請求の範囲の均等物に限定すると考えるべきではなく、本開示の範囲および/または思想から乖離することなく他の実施形態を利用しても改変してもよいと考えるべきである。種々の実施形態は、開示された構成要素、成分、特徴、部品、工程、手段他の組合せを適切に備えても、これらで構成されても、基本的にこれらで構成されてもよい。また本開示は、現在は特許請求されていないが将来特許請求される可能性がある他の発明を含む。

図1
図2
図3
図4