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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】システム及び検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01V 3/12 20060101AFI20231107BHJP
【FI】
G01V3/12 A
【請求項の数】 42
(21)【出願番号】P 2022140019
(22)【出願日】2022-09-02
(62)【分割の表示】P 2019112009の分割
【原出願日】2019-06-17
(65)【公開番号】P2022164899
(43)【公開日】2022-10-27
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小畑 晴香
(72)【発明者】
【氏名】朱 旭
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-508949(JP,A)
【文献】特開2009-222580(JP,A)
【文献】特表2017-537399(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0168013(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00-99/00
G01S 7/00-7/42
G01S 13/00-13/95
G08B 23/00-31/00
G01N 22/00-22/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次スクリーニングエリアを持つ第1装置と、
前記1次スクリーニングエリアと異なる2次スクリーニングエリアを持つ第2装置と、
プロセッサと、
を具備し、
前記第1装置は、第1アンテナと第1通信部と、を具備し、
前記第2装置は、第2アンテナと第2通信部と、を具備し、
前記第1アンテナは、前記1次スクリーニングエリア内の検査対象に電波を放出し、前記検査対象からの反射波を受信し、
前記第2アンテナは、前記2次スクリーニングエリア内の検査対象に電波を放出し、前記検査対象からの反射波を受信し、
前記プロセッサは、前記第1アンテナで受信した前記反射波の強度に応じて、前記検査対象が所定物を所持する可能性を決定し、前記可能性に応じて、前記第2装置による検査が必要であることを決定し、
前記第1通信部は、前記第2装置による検査が必要であることを表す第1信号を前記第2装置へ送信し、
前記プロセッサは、前記第2通信部が前記第1信号を受信すると、前記第2アンテナに電波を放出させ、
前記第2アンテナは、第1サブアレイアンテナと、第2サブアレイアンテナと、を具備し、
前記第1サブアレイアンテナのアンテナ間隔は、前記第2サブアレイアンテナのアンテナ間隔と異なり、
前記プロセッサは、
前記第1サブアレイアンテナからの信号に基づき第1画像信号を生成し、
前記第2サブアレイアンテナからの信号に基づき第2画像信号を生成し、
画素毎に前記第1画像信号と前記第2画像信号の中の絶対値の小さい信号を選択することにより、前記第1画像信号と前記第2画像信号を組み合わせて合成画像を生成する、システム。
【請求項2】
1次スクリーニングエリアを持つ第1装置と、
前記1次スクリーニングエリアと異なる2次スクリーニングエリアを持つ第2装置と、
プロセッサと、
前記1次スクリーニングエリアを撮影する第1カメラと、
を具備し、
前記第1装置は、第1アンテナと第1通信部と、を具備し、
前記第2装置は、第2アンテナと第2通信部と、を具備し、
前記第1アンテナは、前記1次スクリーニングエリア内の検査対象に電波を放出し、前記検査対象からの反射波を受信し、
前記第2アンテナは、前記2次スクリーニングエリア内の検査対象に電波を放出し、前記検査対象からの反射波を受信し、
前記プロセッサは、前記第1アンテナで受信した前記反射波の強度に応じて、前記検査対象が所定物を所持する可能性を決定し、前記可能性に応じて、前記第2装置による検査が必要であることを決定し、
前記第1通信部は、前記第2装置による検査が必要であることを表す第1信号を前記第2装置へ送信し、
前記プロセッサは、前記第2通信部が前記第1信号を受信すると、前記第2アンテナに電波を放出させ、
前記第1アンテナは、
1ミリメートルから30ミリメートルの波長の第1電波を第1位置へ放出し、
1ミリメートルから30ミリメートルの波長の第2電波を前記第1位置と異なる第2位置へ放出し、
1ミリメートルから30ミリメートルの波長の第3電波を前記第1位置と前記第2位置と異なる第3位置へ放出し、
前記第1位置と前記第2位置と前記第3位置は、前記検査対象の互いに異なる位置であり、
前記プロセッサは、
前記第1位置での前記第1電波の第1反射強度を求め、
前記第2位置での前記第2電波の第2反射強度を求め、
前記第3位置での前記第3電波の第3反射強度を求め、
前記第1反射強度と第2反射強度との差と、前記第2反射強度と第3反射強度との差に基づいて、前記可能性を決定し、
前記プロセッサは、
前記第1カメラにより撮影された画像において前記第1位置と前記第2位置と前記第3位置を検出し、
前記第1アンテナへ、前記第1位置へ前記第1電波を放出させ、前記第2位置へ前記第2電波を放出させ、前記第3位置へ前記第3電波を放出させる指示を送信する、システム。
【請求項3】
1次スクリーニングエリアを持つ第1装置と、
前記1次スクリーニングエリアと異なる2次スクリーニングエリアを持つ第2装置と、
プロセッサと、
を具備し、
前記第1装置は、第1アンテナと第1通信部と、を具備し、
前記第2装置は、第2アンテナと第2通信部と、を具備し、
前記第1アンテナは、前記1次スクリーニングエリア内の検査対象に電波を放出し、前記検査対象からの反射波を受信し、
前記第2アンテナは、前記2次スクリーニングエリア内の検査対象に電波を放出し、前記検査対象からの反射波を受信し、
前記プロセッサは、前記第1アンテナで受信した前記反射波の強度に応じて、前記検査対象が所定物を所持する第1可能性を決定し、前記第1可能性に応じて、前記第2装置による検査が必要であることを決定し、
前記第1通信部は、前記第2装置による検査が必要であることを表す第1信号を前記第2装置へ送信し、
前記プロセッサは、前記第2通信部が前記第1信号を受信すると、前記第2アンテナに電波を放出させ、
前記プロセッサは、
前記第2アンテナで受信した前記反射波の強度に応じて、前記検査対象が所定物を所持する第2可能性を決定し、
前記第1可能性と、前記第2可能性と、の対を学習する、システム。
【請求項4】
前記2次スクリーニングエリアを撮影する第カメラをさらに具備し、
前記プロセッサは、前記第2装置による検査が必要である検査対象が前記第カメラにより撮影された画像内に居るかを判定し、前記第2装置による検査が必要である前記検査対象が前記画像内に居ると判定した場合、前記第2アンテナに電波を送信させる、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記2次スクリーニングエリアを撮影する第カメラをさらに具備し、
前記プロセッサは、前記第2装置による検査が必要である検査対象が前記2次スクリーニングエリアへ侵入したか否かを、前記第カメラにより撮影された画像に応じて、判定し、前記第2装置による検査が必要である前記検査対象が前記2次スクリーニングエリアへ侵入したと判定した場合、前記第2アンテナに電波を送信させる、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1サブアレイアンテナのアンテナ間隔は、m×dであり、
前記第2サブアレイアンテナのアンテナ間隔は、n×dであり、
dは略半波長であり、
mは2以上の正整数であり、
nは2以上の正整数であり、
mとnは互いに素である、請求項に記載のシステム。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記検査対象の胴体上の前記第1位置と前記第2位置と前記第3位置とを検出する、請求項に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1アンテナを直線状に移動させる、または前記第1電波の放出方向と前記第2電波の放出方向と前記第3電波の放出方向が扇状に変化するように前記第1アンテナを回転させる走査機構をさらに具備する、請求項に記載のシステム。
【請求項9】
前記可能性は、前記検査対象が前記所定物を所持しているか否か、又は前記検査対象が前記所定物を所持している度合いを示す情報である、請求項1、請求項2及び請求項4乃至請求項8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1可能性と前記第2可能性は、前記検査対象が前記所定物を所持しているか否か、又は前記検査対象が前記所定物を所持している度合いを示す情報である、請求項3に記載のシステム。
【請求項11】
前記プロセッサは、機械学習を用いて前記可能性を決定する請求項1、請求項2及び請求項4乃至請求項9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記プロセッサは、機械学習を用いて前記第1可能性と前記第2可能性を決定する請求項3に記載のシステム。
【請求項13】
前記第2アンテナの電波の放射点数は、前記第1アンテナの電波の放射点数より多い、請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1アンテナの電波の放射時間は、前記第2アンテナの電波の放射時間より短い、請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記第1アンテナは、第1アレイアンテナを含み、
前記第2アンテナは、第2アレイアンテナを含み、
前記第2アレイアンテナのアンテナ間隔は、前記第1アレイアンテナのアンテナ間隔より短い、請求項1、請求項6及び請求項8乃至請求項14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記第2装置は、前記第2アンテナで受信した前記反射波の強度を検出し、
前記システムは、前記反射波の強度に基づいた画像を表示する第1表示部をさらに具備する、請求項1乃至請求項15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記第2装置による検査が必要な検査対象に関する情報を表示する第2表示部をさらに具備する、請求項1乃至請求項16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記第1信号は、前記検査対象の画像、前記検査対象の特徴パラメータ、又は前記検査対象の検知時間の中の少なくとも1つを含む、請求項1乃至請求項17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記第2装置は、前記可能性に応じて、検出精度又は検査方法を変更する、請求項1、請求項2、請求項4乃至請求項9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記第2装置は、前記第1可能性に応じて、検出精度又は検査方法を変更する、請求項3に記載のシステム。
【請求項21】
1次スクリーニングエリアを持つ第1装置と、
前記1次スクリーニングエリアと異なる2次スクリーニングエリアを持つ第2装置と、
プロセッサと、
を具備し、
前記第1装置は、第1アンテナと第1通信部と、を具備し、
前記第2装置は、第2アンテナと第2通信部と、を具備し、
前記第2アンテナは、第1サブアレイアンテナと、第2サブアレイアンテナと、を具備し、
前記第1サブアレイアンテナのアンテナ間隔は、前記第2サブアレイアンテナのアンテナ間隔と異なる、システムにおける検査方法であって、
前記第1アンテナは、前記1次スクリーニングエリア内の検査対象に電波を放出し、前記検査対象からの反射波を受信し、
前記第2アンテナは、前記2次スクリーニングエリア内の検査対象に電波を放出し、前記検査対象からの反射波を受信し、
前記プロセッサは、前記第1アンテナで受信した前記反射波の強度に応じて、前記検査対象が所定物を所持する可能性を決定し、前記可能性に応じて、前記第2装置による検査が必要であることを決定し、
前記第1通信部は、前記第2装置による検査が必要であることを表す第1信号を前記第2装置へ送信し、
前記プロセッサは、前記第2通信部が前記第1信号を受信すると、前記第2アンテナに電波を放出させ、
前記プロセッサは、
前記第1サブアレイアンテナからの信号に基づき第1画像信号を生成し、
前記第2サブアレイアンテナからの信号に基づき第2画像信号を生成し、
画素毎に前記第1画像信号と前記第2画像信号の中の絶対値の小さい信号を選択することにより、前記第1画像信号と前記第2画像信号を組み合わせて合成画像を生成する、検査方法。
【請求項22】
1次スクリーニングエリアを持つ第1装置と、
前記1次スクリーニングエリアと異なる2次スクリーニングエリアを持つ第2装置と、
プロセッサと、
前記1次スクリーニングエリアを撮影する第1カメラと、
を具備し、
前記第1装置は、第1アンテナと第1通信部と、を具備し、
前記第2装置は、第2アンテナと第2通信部と、を具備するシステムにおける検査方法であって、
前記第1アンテナは、前記1次スクリーニングエリア内の検査対象に電波を放出し、前記検査対象からの反射波を受信し、
前記第2アンテナは、前記2次スクリーニングエリア内の検査対象に電波を放出し、前記検査対象からの反射波を受信し、
前記プロセッサは、前記第1アンテナで受信した前記反射波の強度に応じて、前記検査対象が所定物を所持する可能性を決定し、前記可能性に応じて、前記第2装置による検査が必要であることを決定し、
前記第1通信部は、前記第2装置による検査が必要であることを表す第1信号を前記第2装置へ送信し、
前記プロセッサは、前記第2通信部が前記第1信号を受信すると、前記第2アンテナに電波を放出させ、
前記第1アンテナは、
1ミリメートルから30ミリメートルの波長の第1電波を第1位置へ放出し、
1ミリメートルから30ミリメートルの波長の第2電波を前記第1位置と異なる第2位置へ放出し、
1ミリメートルから30ミリメートルの波長の第3電波を前記第1位置と前記第2位置と異なる第3位置へ放出し、
前記第1位置と前記第2位置と前記第3位置は、前記検査対象の互いに異なる位置であり、
前記プロセッサは、
前記第1位置での前記第1電波の第1反射強度を求め、
前記第2位置での前記第2電波の第2反射強度を求め、
前記第3位置での前記第3電波の第3反射強度を求め、
前記第1反射強度と第2反射強度との差と、前記第2反射強度と第3反射強度との差に基づいて、前記可能性を決定し、
前記プロセッサは、
前記第1カメラにより撮影された画像において前記第1位置と前記第2位置と前記第3位置を検出し、
前記第1アンテナへ、前記第1位置へ前記第1電波を放出させ、前記第2位置へ前記第2電波を放出させ、前記第3位置へ前記第3電波を放出させる指示を送信する、検査方法。
【請求項23】
1次スクリーニングエリアを持つ第1装置と、
前記1次スクリーニングエリアと異なる2次スクリーニングエリアを持つ第2装置と、
プロセッサと、
を具備し、
前記第1装置は、第1アンテナと第1通信部と、を具備し、
前記第2装置は、第2アンテナと第2通信部と、を具備するシステムにおける検査方法であって、
前記第1アンテナは、前記1次スクリーニングエリア内の検査対象に電波を放出し、前記検査対象からの反射波を受信し、
前記第2アンテナは、前記2次スクリーニングエリア内の検査対象に電波を放出し、前記検査対象からの反射波を受信し、
前記プロセッサは、前記第1アンテナで受信した前記反射波の強度に応じて、前記検査対象が所定物を所持する第1可能性を決定し、前記第1可能性に応じて、前記第2装置による検査が必要であることを決定し、
前記第1通信部は、前記第2装置による検査が必要であることを表す第1信号を前記第2装置へ送信し、
前記プロセッサは、前記第2通信部が前記第1信号を受信すると、前記第2アンテナに電波を放出させ、
前記プロセッサは、
前記第2アンテナで受信した前記反射波の強度に応じて、前記検査対象が所定物を所持する第2可能性を決定し、
前記第1可能性と、前記第2可能性と、の対を学習する、検査方法。
【請求項24】
前記システムは、前記2次スクリーニングエリアを撮影する第2カメラをさらに具備し、
前記プロセッサは、前記第2装置による検査が必要である検査対象が前記第2カメラにより撮影された画像内に居るかを判定し、前記第2装置による検査が必要である前記検査対象が前記画像内に居ると判定した場合、前記第2アンテナに電波を送信させる、請求項21に記載の検査方法。
【請求項25】
前記システムは、前記2次スクリーニングエリアを撮影する第2カメラをさらに具備し、
前記プロセッサは、前記第2装置による検査が必要である検査対象が前記2次スクリーニングエリアへ侵入したか否かを、前記第2カメラにより撮影された画像に応じて、判定し、前記第2装置による検査が必要である前記検査対象が前記2次スクリーニングエリアへ侵入したと判定した場合、前記第2アンテナに電波を送信させる、請求項21に記載の検査方法。
【請求項26】
前記第1サブアレイアンテナのアンテナ間隔は、m×dであり、
前記第2サブアレイアンテナのアンテナ間隔は、n×dであり、
dは略半波長であり、
mは2以上の正整数であり、
nは2以上の正整数であり、
mとnは互いに素である、請求項24に記載の検査方法。
【請求項27】
前記プロセッサは、前記検査対象の胴体を検出する、請求項22に記載の検査方法。
【請求項28】
前記第1アンテナを直線状に移動させる、または前記第1電波の放出方向と前記第2電波の放出方向と前記第3電波の放出方向が扇状に変化するように前記第1アンテナを回転させることをさらに具備する、請求項22に記載の検査方法。
【請求項29】
前記可能性は、前記検査対象が前記所定物を所持しているか否か、又は前記検査対象が前記所定物を所持している度合いを示す情報である、請求項21、請求項22及び請求項24乃至請求項28のいずれか一項に記載の検査方法。
【請求項30】
前記第1可能性と前記第2可能性は、前記検査対象が前記所定物を所持しているか否か、又は前記検査対象が前記所定物を所持している度合いを示す情報である、請求項23に記載の検査方法。
【請求項31】
前記プロセッサは、機械学習を用いて前記可能性を決定する請求項21、請求項22、請求項24乃至請求項29のいずれか一項に記載の検査方法。
【請求項32】
前記プロセッサは、機械学習を用いて前記第1可能性と前記第2可能性を決定する請求項23に記載の検査方法。
【請求項33】
前記第1アンテナの電波の放射時間は、前記第2アンテナの電波の放射時間より短い、請求項21乃至請求項32のいずれか一項に記載の検査方法。
【請求項34】
前記第2装置は、前記第2アンテナで受信した前記反射波の強度を検出し、
前記検査方法は、前記反射波の強度に基づいた画像を表示することをさらに具備する、請求項21乃至請求項33のいずれか一項に検査方法。
【請求項35】
前記第2装置による検査が必要な検査対象に関する情報を表示することをさらに具備する、請求項21乃至請求項34のいずれか一項に記載の検査方法。
【請求項36】
前記第1信号は、前記検査対象の画像、前記検査対象の特徴パラメータ、又は前記検査対象の検知時間の中の少なくとも1つを含む、請求項21乃至請求項35のいずれか一項に記載の検査方法。
【請求項37】
前記可能性に応じて、前記第2装置の検出精度又は検査方法を変更することをさらに具備する、請求項21、請求項22、請求項24乃至請求項29のいずれか一項に記載の検査方法。
【請求項38】
前記第1可能性に応じて、前記第2装置の検出精度又は検査方法を変更することをさらに具備する、請求項23に記載の検査方法。
【請求項39】
第1装置と、
第2装置と、を具備し、
前記第1装置は、第1アンテナと第1プロセッサと第1通信部と、を具備し、
前記第2装置は、第2アンテナと第2プロセッサと第2通信部と、を具備し、
前記第1アンテナは、検査対象に電波を放出し、前記検査対象からの反射波を受信し、
前記第2アンテナは、前記検査対象に電波を放出し、前記検査対象からの反射波を受信し、
前記第1プロセッサは、前記第1アンテナで受信した前記反射波の強度に応じて、前記検査対象が所定物を所持する可能性を機械学習を用いて決定し、
前記第1通信部は、前記可能性に基づいて前記検査対象のさらなる検査が必要であることを表す第1信号を前記第2装置へ送信し、
前記第2プロセッサは、前記第2通信部が前記第1信号を受信すると、前記第2アンテナに電波を放出させ、
前記第2プロセッサは、前記第2アンテナで受信した前記反射波の強度に基づいて、前記検査対象が所定物を所持する可能性を決定し、
前記第1プロセッサは、前記第1プロセッサにより決定された前記可能性と、前記第2プロセッサにより決定された前記可能性と、に基づいて、前記機械学習を実行する、システム。
【請求項40】
前記第2アンテナの電波の放射点数は、前記第1アンテナの電波の放射点数より多い、請求項39に記載のシステム。
【請求項41】
第1装置と、
第2装置と、を具備し、
前記第1装置は、第1アンテナと第1プロセッサと第1通信部と、を具備し、
前記第2装置は、第2アンテナと第2プロセッサと第2通信部と、を具備するシステムにおける検査方法であって、
前記第1アンテナは、検査対象に電波を放出し、前記検査対象からの反射波を受信し、
前記第2アンテナは、前記検査対象に電波を放出し、前記検査対象からの反射波を受信し、
前記第1プロセッサは、前記第1アンテナで受信した前記反射波の強度に応じて、前記検査対象が所定物を所持する可能性を機械学習を用いて決定し、
前記第1通信部は、前記可能性に基づいて前記検査対象のさらなる検査が必要であることを表す第1信号を前記第2装置へ送信し、
前記第2プロセッサは、前記第2通信部が前記第1信号を受信すると、前記第2アンテナに電波を放出させ、
前記第2プロセッサは、前記第2アンテナで受信した前記反射波の強度に基づいて、前記検査対象が所定物を所持する可能性を決定し、
前記第1プロセッサは、前記第1プロセッサにより決定された前記可能性と、前記第2プロセッサにより決定された前記可能性と、に基づいて、前記機械学習を実行する、検査方法。
【請求項42】
前記第2アンテナの電波の放射点数は、前記第1アンテナの電波の放射点数より多い、請求項41に記載の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、システム及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
検査の対象者が危険物を隠し持っているか否かを判定する検査システムが数多く提案されている。この一例として、対象者に多数の電波を放出し、対象者からの反射波を受信し、受信信号の振幅に基づいて危険物の高精細なイメージングを行う検査装置がある。このような高精細なイメージングを行う装置では、対象者の非常に多くの点に電波を放出する必要があるため、検査に多くの時間がかかってしまう。
【0003】
一方、危険物の所持を短時間で判定する手法として、対象者の少なくとも2点に電波を放出し、各放出において衣服からの反射波および人体からの反射波を検出し、検出信号の差に基づいて衣服と人体との間の光学距離を計算する手法も提案されている。この手法では、少なくとも2点の光学距離に差があり、その差が閾値以上であれば、衣服と人体の間に誘電体からなる爆薬を隠し持っていると判定される。
【0004】
しかし、衣服と人体の距離は僅かであるので、光学距離の計算には高い分解能が要求される。また、一般的に、衣服の電波の反射率は低い。特に、セータのようなウール製の衣服は電波を殆ど反射しない。このため、干渉やノイズが多い実環境では、衣服からの反射波はノイズや干渉に埋もれ、検出することが困難である。そのため、この手法では、精度良く光学距離を算出することが困難である。
【0005】
さらに、この手法では、誘電体の存在により光路が伸びることを前提としているので、検出できる危険物は爆薬に限られ、拳銃等の金属性の危険物は検出できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第9282258号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、対象者が危険物を所持している可能性を短時間に判定できるシステム及び検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によるシステムは、1次スクリーニングエリアを持つ第1装置と、1次スクリーニングエリアと異なる2次スクリーニングエリアを持つ第2装置と、プロセッサと、を具備する。第1装置は、第1アンテナと第1通信部と、を具備する。第2装置は、第2アンテナと第2通信部と、を具備する。第1アンテナは、1次スクリーニングエリア内の検査対象に電波を放出し、検査対象からの反射波を受信する。第2アンテナは、2次スクリーニングエリア内の検査対象に電波を放出し、検査対象からの反射波を受信する。プロセッサは、第1アンテナで受信した反射波の強度に応じて、検査対象が所定物を所持する可能性を決定し、可能性に応じて、第2装置による検査が必要であることを決定する。第1通信部は、第2装置による検査が必要であることを表す第1信号を第2装置へ送信する。プロセッサは、第2通信部が第1信号を受信すると、第2アンテナに電波を放出させる。第2アンテナは、第1サブアレイアンテナと、第2サブアレイアンテナと、を具備し、第1サブアレイアンテナのアンテナ間隔は、第2サブアレイアンテナのアンテナ間隔と異なる。プロセッサは、第1サブアレイアンテナからの信号に基づき第1画像信号を生成し、第2サブアレイアンテナからの信号に基づき第2画像信号を生成し、画素毎に第1画像信号と第2画像信号の中の絶対値の小さい信号を選択することにより、第1画像信号と第2画像信号を組み合わせて合成画像を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態によるシステムを含む危険物スクリーニングシステムの一例の概要を示す図である。
図2】一次スクリーニングシステムとして機能する、第1実施形態によるシステムの電気的構成の一例を示すブロック図である。
図3】第1実施形態によるシステムに含まれるレーダの電気的構成の一例を示すブロック図である。
図4】レーダによる走査の第1例を示す図である。
図5】レーダにより送信されるチャープ信号の一例を示す図である。
図6】レーダで行われる高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform:FFT)の一例を示す図である。
図7】第1実施形態による危険物スクリーニングの原理を示す図である。
図8】第1実施形態による危険物スクリーニングの判定結果の一例を示す図である。
図9】第1実施形態によるシステムにおける一次スクリーニングの一例を示すフローチャート図である。
図10】レーダによる走査の第2例を示す図である。
図11】レーダによる走査の第3例を示す図である。
図12】レーダによる走査の第4例を示す図である。
図13】レーダによる走査の第5例を示す図である。
図14】レーダによる走査の第6例を示す図である。
図15】レーダによる走査の第7例を示す図である。
図16】レーダによる走査の他の例を示す図である。
図17】二次スクリーニングシステムとして機能する、第1実施形態によるシステムの電気的構成の一例を示すブロック図である。
図18図17に示すアレイアンテナの一例を示す図である。
図19図18に示すアレイアンテナを構成する第1サブアレイアンテナと第2サブアレイアンテナそれぞれによる第1画像、第2画像の一例を示す図である。
図20図19に示した第1画像、第2画像のプロフィールの一例を示す図である。
図21図17に示すシステムにより得られた対象者の画像の一例を示す図である。
図22図17に示すシステムにおける処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、実施形態を説明する。以下の説明は、実施形態の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、実施形態の技術的思想は、以下に説明する構成要素の構造、形状、配置、材質等に限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各要素のサイズ、厚み、平面寸法又は形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、互いの寸法の関係や比率が異なる要素が含まれることもある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して重複する説明を省略する場合もある。いくつかの要素に複数の呼称を付す場合があるが、これら呼称の例はあくまで例示であり、これらの要素に他の呼称を付すことを否定するものではない。複数の呼称が付されていない要素についても、他の呼称を付すことを否定するものではない。以下の説明において、「接続」は直接的な接続のみならず、他の要素を介して間接的に接続されることも意味する。
【0011】
[第1実施形態]
(スクリーニングシステム)
第1実施形態によるシステムを説明する。第1実施形態によるシステムは、種々の検査装置に応用可能であるが、一例として、空港、駅、ショッピングモール、コンサートホール、展示会場等の不特定多数の人が集まる施設で拳銃、爆薬等の危険物を所持する人を検出する危険物スクリーニングシステムに応用される例を説明する。人は移動するので、検査エリアに長時間滞在しないこともあり、短時間で正確に危険物を検出することが望まれている。そのため、実施形態によるスクリーニングシステムは、一次スクリーニングと二次スクリーニングの2段階で段階的に絞り込んで危険物を検出する。
【0012】
図1を参照して2段階スクリーニングシステムの概略を説明する。図1(a)は一次スクリーニングシステムの概要、図1(b)は二次スクリーニングシステムの概要を示す。スクリーニングには電波を用いるものやエックス線を用いるものがあるが、ここでは電波を用いる例を説明する。実施形態で用いられる電波は、波長が1ミリメートルから30ミリメートルの波を含む。なお、波長が1ミリメートルから10ミリメートルの電波はミリ波、波長が10ミリメートルから100ミリメートルの電波はマイクロ波とも称される。検査の対象者に電波を放出すると、電波の伝搬路上に存在する物体で電波は反射される。ある距離で反射された電波の反射強度を測定することにより、その距離に存在する物体が人体であるか、又は拳銃、爆薬等の危険物であるかを判定できる。
【0013】
図1(a)に示すように、一次スクリーニングでは、空港、駅、ショッピングモール、コンサートホール、展示会場等のコンコース、出入口等の多数の人が集まる、広いエリアが検査エリアとされる。検査エリアの天井、壁又は床にレーダ12とカメラ14が設置される。カメラ14は検査エリアに位置する人物を撮影する。レーダ12は、カメラ14で撮影された検査エリアの画像から認識された人物に電波を放出する。レーダ12は、放出方向を変化しつつ電波の放出を繰り返し、対象者の複数(少なくとも2つ)の点に対して電波を放出することにより、対象者を電波で走査する。対象者上の電波の放出点は電子的に変更してもよいし、機械的に変更してもよい。後者の場合、レーダ12は走査機構を介して天井、壁又は床に設置される。走査機構は、レーダ12の位置を直線状に変える(リニアスキャンとも称する)、又はレーダ12の向きを変える(セクタスキャンとも称する)ものでもよい。複数の人物が認識された場合、レーダ12は、複数の人物に対して順次電波を放出する。
【0014】
カメラ14の撮影エリアは、検査エリア内の人物全員を撮影できるように検査エリアと対応している。ただし、検査エリア内の人物全員を一度に撮影することは必ずしも要求されない。カメラ14を可動機構を介して天井に設置し、撮影エリアを変化しながら検査エリア内の人物全員を数回に分けて撮影してもよい。カメラ14の画像に基づいて、検査エリアに人物が居るか否かが分かるので、検査エリアに人物が入ったことを検出すると、一次スクリーニングを開始してもよい。
【0015】
一次スクリーニングは、広いエリアにおける多数の人物を対象者とし、対象者が危険物を所持している可能性に関する危険度を判定することを目的とする。そのため、一次スクリーニングでは、対象者が危険物を所持しているか否かについて時間をかけて正確に判定する必要はなく、危険物のようなものを所持している可能性がある疑わしい人を検出できればよい。一次スクリーニングには、高精度な検出は要求されない。高精度な検出は二次スクリーニングに要求される。例えば、一次スクリーニングでは、対象者の反射強度が装置により自動的に判定され、危険物のようなものを所持している可能性のある疑わしい人が検出される。このため、レーダ12として、安価な車載用のミリ波レーダを用いることができる。
【0016】
検査の精度は対象者一人当たりの電波の放出点数に比例する。一次スクリーニングでは、対象者一人当たりの電波の放出点は数点から数十点等とされ、いわゆる粗い走査が行われる。従って、多数の対象者についての一次スクリーニングに要する時間は、短時間で済む。
【0017】
図1(b)に示すように、二次スクリーニングの検査場所は一次スクリーニングの検査場所と異なることが多い。また、二次スクリーニングでは、駅の改札口、空港のチェックインカウンタ、空港の手荷物検査エリア、空港、駅、ショッピングモール、コンサートホール、展示会場等のエスカレータ、階段等の一次スクリーニングの検査エリアより狭いエリアが検査エリアとされることが多い。
【0018】
二次スクリーニングの動作(レーダ16からの電波の放出)は、疑わしい人に関する情報が一次スクリーニングシステムから二次スクリーニングシステムに伝えられ、疑わしい人がカメラ18の撮影エリアに入ったことが検出された場合、開始してもよい。そのため、一次スクリーニングの検査エリアと二次スクリーニングの検査エリアは人の移動の流れに沿って、一次スクリーニングエリアから出た人が、その後、二次スクリーニングエリアに入るように配置されてもよい。しかし、これに限らず、警備員が一次スクリーニングシステムの検出結果を見て、疑わしい人を呼び止めて、二次スクリーニング室に連れて行くようにすることもあり、この場合、二次スクリーニングの検査エリアは任意に設定できる。さらに、エレベータ内やコンサートホールの座席等、人が移動しない環境では、一次スクリーニングの検査場所と二次スクリーニングの検査場所が同じでもよい。その場合、二次スクリーニングの検査エリアは一次スクリーニングの検査エリアと同じでもよいし、狭くてもよい。
【0019】
二次スクリーニングの検査エリアの天井、壁又は床にレーダ16とカメラ18が設置される。カメラ18は一次スクリーニングシステムのカメラ14と等価なカメラであり、検査エリア内の人物を撮影する。レーダ16は1つに限らず、検査エリア内のさらに細かいエリア毎に複数のレーダ16を設けてもよい。
【0020】
レーダ16は一次スクリーニングシステムのレーダ12よりも高精度な検出が可能である。すなわち、レーダ16は、対象者が危険物を所持している可能性に関する危険度を判定するのではなく、対象者が具体的に何を所持しているかを判定することが可能である。例えば、レーダ16の放出点の間隔はレーダ12の放出点の間隔より短い。あるいは、レーダ16の放出点の数はレーダ12の放出点の数より多い。また、レーダ16のスキャン方向は一次元ではなく、二次元であることが多い。さらに、レーダ16は、電波反射強度の分布に基づいて高精細なイメージングを行ってもよい。二次スクリーニングでイメージングが行われ、対象者の所持しているものが画像として表示されると、オペレータが画像を見ること又は画像解析により、所持しているものが危険物であるか否かを判定できる。一次スクリーニングでは、大きさが同じであれば、スマートフォン、ファブレット、タブレット端末等は拳銃と間違って検出されることがあるが、二次スクリーニングでは、スマートフォンは拳銃と識別して検出される。二次スクリーニングは図1(b)のような装置により行うことに限らず、警備員等によるボディタッチ、又はハンディスキャナを持った警備員等により行ってもよい。
【0021】
二次スクリーニングで詳細に検査する対象者は一次スクリーニングにより検出された疑わしい人に限られるので、2段階スクリーニング全体に要する時間は、一次スクリーニングの検査対象エリアに居る全ての人を詳細に検査するのに要する時間よりも短くて済む。
【0022】
(一次スクリーニングの装置構成)
図2は一次スクリーニングシステムの電気的構成の一例を示すブロック図である。一次スクリーニングシステムは、図1(a)に模式的に示すレーダ12とカメラ14を含む。一次スクリーニングシステムは、さらに、スクリーニングのためのプログラムを実行することによりスクリーニング全体を制御するコントローラとなるCPU22を含む。CPU22のシステムバス24にカメラ14、スキャン装置32、ストレージ34、メインメモリ36、表示部38、キーボード40及び通信装置42が接続される。図1(a)には示していないが、スキャン装置32が検査エリアの天井、壁又は床に設置される。レーダ12はスキャン装置32により電波の放出方向又は放出点の位置が変化される。これにより、対象者又は対象者が保有している物体が電波で走査される。
【0023】
レーダ12は送受信アンテナ26と信号処理部28からなる。信号処理部28はCPU22のシステムバス24に接続される。送受信アンテナ26は1又は複数の送信アンテナと1又は複数の受信アンテナを含む。複数の送信アンテナと複数の受信アンテナが設けられる場合、電波の放出方向又は放出点の位置は、信号処理部28に設けられた電子的なスキャン回路(図示しない)により電子的に変更することもできる。この場合、機械的なスキャン装置32は省略可能である。さらに、機械的なスキャン装置32と電子的なスキャン回路の両方を備えてもよい。カメラ14が可動機構を介して設置される場合、可動機構もCPU22のシステムバス24に接続される。
【0024】
ストレージ34は、CPU22が実行するプログラムや種々のデータを記憶する不揮発性の記憶装置であり、HDDやSSD等からなる。メインメモリ36は、ストレージ34から読み出したプログラムやデータ又はスクリーニング途中で生成された種々のデータを記憶する不揮発性のメモリである。CPU22は、ストレージ34から読み出され、メインメモリ36に展開されたプログラムを実行する。
【0025】
キーボード40と表示部38は、必要に応じて備えられる。キーボード40は検出精度の設定情報や調整指示等を入力してもよい。表示部38は検出された疑わしい人の画像等の情報を表示してもよい。通信装置42は、一次スクリーニングの結果を二次スクリーニングシステムへ送信する。一次スクリーニングの結果は、疑わしい人を特定する情報、例えば人の画像、特徴パラメータ、検出時刻等である。一次スクリーニングが危険度を二値(危険又は安全)ではなく、多値(かなり危険、やや危険、やや安全、かなり安全等)で出力する場合、通信装置42は危険度も二次スクリーニングシステムに送信することがある。二次スクリーニングシステムは、疑わしい程度に応じて検出精度やスクリーニング方法を変更してもよい。
【0026】
レーダ12、カメラ14、スキャン装置32以外の図2の要素は1つの検査エリア毎に単独の装置として実現されてもよいし、ネットワーク上に配置され、複数の検査エリアのレーダ12、カメラ14、スキャン装置32にネットワークを介して共通に接続されてもよい。レーダ12、カメラ14、スキャン装置32以外の図2の要素は、監視室内のデスクの上にPCとして実装されてもよい。信号処理部28は送受信アンテナ26と別体として構成され、送受信アンテナ26のみが検査エリアの天井、壁又は床に設置され、信号処理部28は上記PC内に含めてもよい。
【0027】
図3は、レーダ12の電気的な構成の一例を示すブロック図である。送受信アンテナ26は、1つ以上の送信アンテナ26Aと1つ以上の受信アンテナ26Bからなる。なお、送信アンテナ26Aと受信アンテナ26Bを別々に設けずに、1つのアンテナで送受信するようにしてもよい。シンセサイザ52で生成された信号がパワーアンプ(Power Amplifier:PA)54で増幅された後、送信アンテナ26Aに供給され、送信アンテナ26Aから電波が検査エリアに放出される。放出された電波は検査エリアに存在する全ての物体で反射され、反射波が受信アンテナ26Bで受信される。受信アンテナ26Bから出力される受信信号が低雑音増幅器(Low Noise Amplifier:LNA)56を介してミキサ58の第1入力端子に入力される。ミキサ58の第2入力端子にはシンセサイザ52の出力信号が入力される。
【0028】
ミキサ58は送信信号と受信信号を組み合わせ、中間周波数(Intermediate Frequency:IF)信号を生成する。中間周波数信号はローパスフィルタ(LPF)60を介してA/D変換器(ADC)62に入力される。A/D変換器62から出力されたディジタル信号は高速フーリエ変換(Fast Fourier Transformation:FFT)回路64で解析され、後述するように物体の電波の反射強度が求められる。
【0029】
(一次スクリーニングの検出原理)
上述したように、一次スクリーニングでは少ない放出点で粗い走査が行われる。少ない放出点でも、電波を反射した物体を判定できるように、一次スクリーニングの走査範囲は、対象者全体ではなく、その中の一部分に絞られている。この絞り込みのために、図1(a)に示すように、カメラ14が検査エリア全体の人物を撮影している。カメラ14の撮影画像の中から人物の存在する領域が抽出され、図4(a)に示すように、複数の人物が一人ずつ対象者とされる。さらに、対象者の画像の中から危険物が隠されていそうな検査部位が抽出される。検査部位の例は胴体部がある。また、対象者自体ではなく、対象者が保有する物体に危険物が隠されている場合もあるので、対象者が保有する物体を検査部位としてもよい。対象物が保有する物体の例は大きな鞄スーツケース、バッグ、リュックサック、紙袋等がある。画像内の人物の抽出は、画像情報から、当該画像に含まれる人物が抽出できればどのような方法であってもよく、例えば、画像内の動きに基づく方法(パターン認識等を含む)や、AI・機械学習等を利用する手法により行われる。対象者内の検査部位の抽出は、機械学習を利用する手法により行われる。説明の便宜上、腹部の皮膚と衣服の間に拳銃等の危険物72を隠していることを想定し、胴体部が検査部位とする。
【0030】
さらに、危険物はある程度のサイズを有するので、検査部位を二次元的に走査しなくても、一次元的に走査するだけでも危険物を検出できる。このため、検査部位を一次元的に走査するライン(走査線)が特定される。例えば、胴体部の幅方向の中心を通る垂直方向の走査線が特定される。この走査線に沿って電波が所定間隔で放出されるように、スキャン装置32が駆動され、レーダ12の放出方向がセクタ状に変化される。
【0031】
スキャン装置32によるレーダ12の放出方向の変化中、放出方向が所定の放出方向に一致する毎に電波が1回又は複数回放出される。所定の放出方向は、この方向で電波が放出されると、検査部位の走査線上で放出点が一定間隔に配置されるような方向である。これにより、図4(b)に示すように、対象者の胴体部の走査線に沿った一定間隔の数点に対して電波が放出される。電波の放出経路上に存在する全ての物体で電波が反射される。受信アンテナ26Bから出力される受信信号は、放出経路上に存在する全ての物体の反射強度を示す。そのため、多数の反射波による受信信号の中から対象者で反射された反射波による受信信号成分を抽出する必要がある。反射波は、放出時刻から物体までの距離に応じた時間だけ遅延した時刻で受信される。そのため、対象者までの距離が分かれば、受信信号の中から対象者で反射された反射波による受信信号成分を受信タイミングに基づいて抽出できる。対象者までの距離は、カメラが1つの場合は、時刻やフォーカスが異なる画像などから計算できる。またカメラを複数台用意することでも計算できる。対象者からの反射波の受信信号が抽出されると、その振幅から電波の反射強度が分かり、危険物72を所持している疑いのある人を検出できる。
【0032】
レーダ12の検出原理を説明する。レーダ12の送受信アンテナの組み合わせは種々ある。例えば、1つの送信アンテナから放出された電波の反射波を複数の受信アンテナで受信するものや、複数の送信アンテナから放出された電波の反射波を1つの受信アンテナで受信するものや、複数の送信アンテナから放出された電波の反射波を複数の受信アンテナで受信するものがあるが、ここでは、1つの送信アンテナから放出された電波の反射波を1つの受信アンテナで受信するものについての反射強度の求め方を説明する。
【0033】
シンセサイザ52は時間の経過に応じて周波数が直線的に増加するFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)信号を生成する。FMCW信号はチャープ信号とも称される。チャープ信号は、振幅Aを時間tの関数として表すと、図5(a)に示すようになり、周波数fを時間tの関数として表すと、図5(b)に示すようになる。チャープ信号は、図5(b)に示すように、中心周波数f、変調帯域幅f、信号時間幅Tにより表される。チャープ信号の傾きは周波数の変化レート(チャープレート)γと称される。
【0034】
送信アンテナ26Aから放射されるFMCW信号の送信波S(t)は、式1で表される。
【0035】
(t)=cos[2π(ft+γt/2)] 式1
チャープレートγは式2で表される。
【0036】
γ=f/T 式2
このとき、送受信アンテナ26から距離Rだけ離れたターゲットからの反射波は、送信タイミングからΔt=2R/cだけ遅れて観測される。cは光速である。受信信号S(t)はターゲットの反射強度をaとすると式3で表される。
【0037】
(t)=a・cos[2πf(t-Δt)+πγ(t-Δt)] 式3
図6は複数、例えば3つの物体が存在する場合の検出原理を示す。図6(a)は送信信号/受信信号と時間との関係を示す。図6(a)に示すように、送信信号は時間とともに周波数が線形的に変化する。受信信号は、送信信号に対してΔtだけ遅延している。物体が複数ある場合、破線で示すように、最も近い物体からの反射波が最も早く受信され、一点鎖線で示すように、最も遠い物体からの反射波が最も遅く受信される。
【0038】
図3に示すように、ミキサ58で受信信号は送信信号と乗算され、LPF60に入力される。LPF60の出力信号はIF信号z(t)と称され、式4で表される。
【0039】
z(t)=a・cos(2πΔtγt) 式4
図6(b)はIF信号の周波数と時間との関係を示す。ノイズ等がない理想的な環境下では、反射波毎に周波数が一定となる。ここでは、破線で示すように、最も近い物体からの反射波の周波数が最も低く、一点鎖線で示すように、最も遠い物体からの反射波の周波数が最も高い。
【0040】
式4に示す時間領域のIF信号z(t)をFFT回路64においてFFTすることにより周波数領域の反射強度が計算できる。したがって、IF信号のFFTの結果である周波数領域の各点での振幅がレーダからの距離毎の反射強度に対応する。周波数とレーダからの距離は式5の関係がある。
【0041】
if=Δtγ=2Rγ/c 式5
時間領域のIF信号をFFTすることで得られる反射強度と周波数の関係を図6(c)に示す。このように、IF信号の周波数領域信号の振幅を求めることにより、レーダからの距離毎の反射強度を求めることができる。
【0042】
例えば、カメラ14が撮影した画像情報により、レーダ12から対象者までの距離が2メートルであることが認識された場合、式5から距離R=2メートルの地点に対応するIF信号の周波数fifが求められる。そのため、図6(c)に示すような多数の受信信号の反射強度の中から周波数fifの反射強度を対象者の反射強度として抽出できる。
【0043】
上述の処理は、走査方向に沿った放出点毎に行われる。
【0044】
ここで、図4に示すように、対象者の胴体部中央における垂直方向の走査線に沿って電波を数点放出した場合を考える。図4(b)に示すように、数点の放出点で対象者の電波の反射強度が求められる。電波の半値幅は10度程度であり、レーダのビーム幅が十分狭いので、走査線上の電波の反射強度の分布は、図7に示すように、電波を反射した物質によって異なる。図7(a)は対象者が何も所持していない場合の電波の反射強度分布を示す。この場合、電波は対象者の皮膚で反射されるので、放出点の位置に関わらず、電波の反射強度は変わらず、反射強度の分布はフラットな分布である。図7(b)は対象者が、胴体部のほぼ中央に拳銃(金属)を所持している場合の電波の反射強度分布を示す。この場合、金属は皮膚に比べて反射強度が高いので、拳銃の位置に対応する放出点の電波の反射強度は他の点の電波の反射強度に比べて高くなる。横軸は反射強度(右が反射強度が高い)であるので、電波の反射強度は右に凸な分布になる。図7(c)は対象者が、胴体部のほぼ中央に爆薬を所持している場合の電波の反射強度分布を示す。爆薬は皮膚に比べて電波を良く吸収するので、爆薬の位置に対応する放出点の反射強度は他の点の反射強度に比べて低くなり、電波の反射強度は左に凸な分布になる。分布は少なくとも2点の反射強度の値の相違により特定できる。
【0045】
本実施形態によれば、物体を所持しているか否かを判定できればよいので、距離方向の分解能としては衣服と人体との差(例えば1cm)の高い分解能は要求されず、数cm程度の分解能で十分である。そのため、現在大量に流通している車載用の安価なミリ波レーダを実施形態のレーダ12として使用できる。
【0046】
このように走査線上の数点(少なくとも2点)で対象者の反射強度が取得されると、CPU22は、電波の反射強度の分布形状の違いに基づいて対象者が危険物を所持している可能性に関する危険度を判定できる。CPU22は、危険度を二値(危険か安全)で求めてもよいし、危険度の程度を示す多値の危険度(例えばかなり危険、やや危険、やや安全、かなり安全等)を求めてもよい。どのような危険度を求めるかは、一次スクリーニングと二次スクリーニングをどのように組み合わせるかに関する運用次第である。CPU22は、人工知能を用いて危険度を判定できる。人工知能の一例として、CPU22は、機械学習を用いて危険度を判定できる。CPU22は、テーブルを用いて危険度を判定してもよい。さらに、CPU22による判定に限らず、オペレータの目視による危険度判定を採用してもよい。例えば、図7に示すような電波の反射強度分布を表示部38で表示させて、オペレータがその形状を目視し、危険度を判定してもよい。危険度の判定方法はその他のどのようなアルゴリズムを利用してもよく、上述した手法に限定されない。
【0047】
機械学習を利用する場合、各点の電波の反射強度から危険度を求めるモデル(ニューラルネットワーク等)を表す演算回路が定義される。モデルは複数の段からなるノードからなる。各ノード間で情報を伝達する結合強度を示すパラメータが定義される。入力段には各点の電波の反射強度が入力され、出力段のノードから危険度が出力される。教師付き学習の場合、各点の電波の反射強度が演算回路に入力され、演算回路から出力された危険度が、スクリーニングシステムの製造者又は学習専門者により与えられる教師データとしての危険度に近づくように上記パラメータが学習される。
【0048】
空港、駅、ショッピングモール、コンサートホール、展示会場等のコンコース、出入口等の一次スクリーニングの検査エリアとなる可能性がある検査エリア、あるいは検査エリアと電波的に等価な種々の場所で、拳銃、爆薬等の種々の種類の危険物を種々の人々に所持させて、それらの人々に関して電波の反射強度分布を求め、上記パラメータの学習が行われる。
【0049】
学習は出荷前に行われ、学習されたパラメータの値がストレージ34に書き込まれた状態で一次スクリーニングシステムが出荷される。出荷後のスクリーニングの際、CPU22は、ストレージ34からパラメータの値を読み出し、読み出した値を演算回路のパラメータの値に設定する。これにより、測定した電波の反射強度が演算回路に入力されると、演算回路から危険度が出力される。
【0050】
一次スクリーニングシステムがオペレータにより操作される場合、出荷後のスクリーニングの際にも学習を行ってもよい。すなわち、図7に示すような電波の反射強度を表示部38で表示させ、オペレータがそれを目視して判定した危険度をキーボード40から入力し、さらに学習を行ってもよい。あるいは、二次スクリーニングシステムから第1スクリーニングシステムに二次スクリーニング結果がフィードバックされる場合も、演算回路が出力した危険度と二次スクリーニング結果とに基づいてさらに学習を行ってもよい。
【0051】
機械学習の際、複数の反射点で得られた複数の電波の反射強度に対して合成開口技術などを適用し、分解能を向上させた反射強度を用いて学習を行ってもよい。また、特願2018-214769号に記載のように、疎なアンテナ素子からなるアレイアンテナを用いて、受信信号を合成することにより、実際のアンテナ素子より多数のアンテナ素子の受信信号を計算により求め、分解能を向上させる技術を用いて、分解能を向上させた反射強度を用いて学習を行ってもよい。
【0052】
上述の説明は、送信アンテナと受信アンテナの本数が1本の場合である。送信アンテナと受信アンテナの本数が複数の場合を次に説明する。N(>1)本の送信アンテナとM(>1)本の受信アンテナがある場合、N本の送信アンテナは時分割で電波を送信し、M本の受信アンテナは常時受信を行う。N本の送信アンテナから時分割で1回ずつ合計N回の電波の放出を行うと、N×Mチャネルの受信データが得られる。複数チャネルの受信データからの電波の反射強度を利用することで、危険度判定の精度を向上させることができる。
【0053】
図8は、実施形態による機械学習を人体ファントムを用いて行った結果を示す。学習は、人体ファントムのみの場合、人体ファントムと銃の場合、人体ファントムと小麦粉(電波の吸収度が爆薬と等価と見なせる)の場合について、人体ファントムまでの距離を様々な距離に設定し、種々の間隔(走査間隔)で電波を放出して行った。人体ファントム上の放出点は、図4に示すように一次元方向に配列される。図8は、放出点の間隔を8mm(放出点数は43点)、16mm(放出点数は22点)、32mm(放出点数は11点)、64mm(放出点数は6点)として場合の正解率を比較して示す。電波の波長は4mmとする。レーダでは放出点の間隔はできるだけ短い方が精度が良く、電波の半波長間隔にするのが一般的である。8mm間隔は半波長の4倍の間隔であり、粗い間隔と言える。半波長の16倍の放出点の間隔(32mm間隔)でも90%以上の正解率であり、32倍(64mm間隔)でも70%の正解率であることが分かる。このため、少ない放出点の反射強度の分布に基づく一次スクリーニングでもある程度の精度で危険度を判定できる。
【0054】
(一次スクリーニングの一例)
図9は、スクリーニングプログラムを実行するCPU22における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0055】
CPU22は、一定周期毎にステップS102を実行し、カメラ14からの画像信号を取り込む。
【0056】
CPU22は、ステップS104で、画像に写っている全ての人物を検出する。
【0057】
CPU22は、ステップS106で、一人の人物を対象者として指定する。
【0058】
CPU22は、ステップS108で、対象者の画像の中から危険物を所持していそうな一部分、例えば胴体部を検査部位として抽出し、検査部位までの距離を求める。一部分を検査対象とするのは、電波の放出範囲を絞り、検査時間を短縮するためである。そのため、状況によっては、バッグ等の所持品を検査部位として抽出してもよい。すなわち、検査エリアの状況、対象者等によって検査部位を変えてもよい。検査部位までの距離は、 カメラが1つの場合は、時刻やフォーカスが異なる画像などから計算する。カメラを複数台用意する場合は、複数の画像の視差に基づいて距離を求めることができる。
【0059】
CPU22は、ステップS112で、図4(b)に示すように、電波の放出方向が検査部位の幅方向のほぼ中央を通る垂直の線に沿って一次元的に変わるようにスキャン装置32を駆動してレーダ12の向きを変え、検査部位を電波で粗く走査する。「粗く」の程度は放出点の間隔が電波の半波長以上である。電波の波長が4mmであるとすると、半波長が2mmであり、粗い走査は、放出点の間隔が4mm(半波長の2倍)以上である。
【0060】
CPU22は、ステップS114で、レーダ12で受信した受信信号の中から検査部位の距離で反射された反射波による受信信号の成分を抽出し、検査部位の電波の反射強度の分布を求める。検査部位の距離の情報はステップS108で求められている。
【0061】
CPU22は、ステップS116で、ストレージ34から学習済みのパラメータの値を読み出し、読み出した値を電波の反射強度から危険度を求めるモデルを表す演算回路のパラメータの値に設定し、測定した反射強度を演算回路に入力する。CPU22は、演算回路から出力される危険度に応じてその対象者についての二次スクリーニングが必要であるか否かを判定する。CPU22は、その対象者が危険物を所持している可能性が高いことを示す危険度が得られた場合、二次スクリーニングが必要であると判定する。
【0062】
CPU22は、二次スクリーニングが必要であると判定した場合、ステップS118で、通信装置42に二次スクリーニングシステム又は二次スクリーニングの担当者にその旨を通知させる。通知の内容は、二次スクリーニングが必要と判定された対象者を特定するための情報、例えば人物の画像、特徴パラメータ、検出時刻等である。一次スクリーニングシステムが危険度の程度を検出する場合、その危険度の程度も二次スクリーニングシステムに通知してもよい。
【0063】
ステップS116でCPU22が二次スクリーニングを必要ないと判定した場合、又はステップS118の実行後に、CPU22はステップS122で、全ての人物の検査が終了したか否かを判定する。
【0064】
CPU22が、全ての人物の検査が終了したと判定すると、図9の処理は終了する。CPU22は、未検査の人物が残っていると判定すると、ステップS124で未検査の人物の中で次に検査する対象者を指定し、ステップS108の処理を再度実行する。
【0065】
これにより、対象者の検査部位の数点の電波の反射強度の値の相違に基づいて、対象者が危険物を所持している可能性が高いことを示す危険度を判定することができる一次スクリーニングシステムが実現される。危険度に基づいて二次スクリーニングの必要性が判定でき、必要と判定された場合、二次スクリーニングシステムへ危険度のある対象者の情報を通知することができるので、疑わしい人のみを詳細に検査することができる。これにより、一次スクリーニングと二次スクリーニングの2段階で段階的に絞り込んで危険物を検出するスクリーニングシステムが実現される。
【0066】
(一次スクリーニングシステムの変形例)
CPU22はスクリーニングの開始ステップであるステップS102を一定周期毎に実行すると説明したが、CPU22はカメラ14が撮影した画像に人物が写っているか否かを常時判定してもよい。CPU22は、人物を検出すると、当該人物を対象者として指定し、その後ステップS108で対象者から検査部位を抽出する処理から処理を開始するようにしてもよい。
【0067】
CPU22は、ステップS108で、レーダ12で検出する反射波のレンジ(レーダから検査部位までの距離)をカメラ14が撮影した画像に基づいて求めたが、これに限らず、レーダ12によるスキャンに基づいて求めてもよい。レーダ12が対象者をスキャンして得られた受信信号をFFTした結果(図6(c))から電波の反射強度が最大となる距離Rをレーダから検査部位tまでの距離としてもよい。さらには、他の手法を用いて反射波のレンジを求めてもよい。
【0068】
上述の説明では、レーダ12は天井に設置され、セクタスキャンが行われた。以下、レーダ12の設置、スキャン装置32による走査に関する変形例を説明する。
【0069】
図10(a)は、レーダ12が対象者の側方から電波を対象者に対して水平方向に放出する例を示す。検査エリアの床に垂直方向に延びるガイドレール32aが設置される。ガイドレール32aは、検査エリアの壁に沿って設置されてもよい。ガイドレール32aに対してスライド可能にスライダ32bが設けられる。レーダ12は電波を水平方向に放出するようにスライダ32bに取り付けられる。スキャン装置32はスライダ32bをガイドレール32aに沿って垂直方向にスライドさせる。
【0070】
これにより、水平方向に電波を放出するレーダ12が垂直方向に上下移動し、対象者の検査部位のリニアスキャンが行われる。この結果、図4の例と同様に、対象者の胴体部の、幅方向の中心を通る垂直方向の走査線に沿った数点に対して電波を放出できる。
【0071】
図4図10(a)では、説明の便宜上、対象者の正面前方から対象者に対して電波が放出されている。しかし、対象者は移動することが多いので、必ずしも対象者の正面前方から対象者に対して電波が放出されるとは限らない。正面から多少ずれた方角から電波が放出されても、危険物72に対して電波が放出され、危険物72からの反射波が受信アンテナで受信されれば、対象者の危険度を判定できる。しかし、対象者はいろいろな方向を向くので、あるタイミングでは、電波が危険物72で反射されない可能性もある。
【0072】
図10(b)は、このような場合でも電波が危険物72で反射され、危険度を判定できるようにするために、レーダ12が水平面内でセクタスキャン可能な構成の一例を示す。図10(b)は、レーダ12とスライダ32bを上から見た図である。レーダ12はガイドレール32aに平行な軸a1を中心として水平面内で回転自在にスライダ32bに取り付けられる。スキャン装置32はスライダ32bを垂直方向にスライドさせるとともに、レーダ12を水平面内で回転させる。対象者がガイドレール32aに向いていない場合でも、スキャン装置32によりレーダ12を水平面内で回転させることにより、対象者に対して正面から電波を放出することができる。
【0073】
図11は、レーダ12が対象者の側方に設置される例を示す。検査エリアの壁にレーダ12の送受信アンテナ26と等価な送受信アンテナ素子76が二次元配列されてなる2次元アレイアンテナ74が設置される。2次元アレイアンテナ74は床に対して垂直となるように検査エリアの床に設置されてもよいし、検査エリアの壁に設置されてもよい。2次元アレイアンテナ74がレーダ12の信号処理部28と等価な信号処理部(図示を省略する)に接続される。
【0074】
二次元アレイアンテナ74を用いると、いずれか1つのアンテナ素子76のみから電波を送信し、当該アンテナ素子76で反射波を受信し、電波を送信するアンテナ素子76を順次変更することができる。これにより、図4の例と同様に、対象者の胴体部の、幅方向の中心を通る垂直方向の走査線に沿った数点に対して電波を放出できる。
【0075】
複数のアンテナ素子76を用い、ビームフォーミングを行うと、電波の放出方向を任意の方向に電気的に変えることができる。
【0076】
図4図10に示すレーダ12又は図11に示す二次元アレイアンテナ74を対象者の複数の方向に設置してもよい。図12は、それらの一例として、図10に示すレーダ12を対象者の前後にそれぞれ配置する例を示す。図4図10図11では、対象者が腹部に危険物を隠している場合を想定し、正面前方から対象者に電波を放出していた。図12では、これ以外の場所に危険物を隠している場合を想定する。対象者はリュックサック78を背負っており、リュックサック78の中に危険物72を隠していることを想定する。この場合、前方から放出された電波は対象者の胸部で反射され、リュックサック78の中の危険物72に対して放出されにくい。しかし、後方から放出された電波はリュックサック78の中の危険物72に放出され、危険物72からの反射波がレーダ12で受信される。
【0077】
そのため、検査エリアの前方の床にガイドレール32a-1が設置され、後方の床にガイドレール32a-2が設置される。ガイドレール32a-1、32a-2は、検査エリアの前後の壁に沿って設置されてもよい。ガイドレール32a-1に対してスライド可能にスライダ32b-1が設けられ、ガイドレール32a-2に対してスライド可能にスライダ32b-2が設けられる。スライダ32b-1にレーダ12-1が取り付けられ、スライダ32b-2にレーダ12-2が取り付けられる。レーダ12-1、12-2は電波を水平方向に検査エリアに放出するようにスライダ32b-1、32b-2に取り付けられる。スキャン装置32はスライダ32b-1、32b-2をガイドレール32a-1、32a-2に沿って垂直方向にスライドさせる。
【0078】
これにより、水平方向に電波を放出するレーダ12-1、12-2が垂直方向に上下移動し、対象者の検査部位のリニアスキャンが行われる。この結果、図4の例と同様に、レーダ12-1、12-2の少なくとも一方から対象者の胴体部の、幅方向の中心を通る垂直方向の走査線に沿った数点に電波を放出できる。対象者がリュックサック78を背負っている等の状態は、カメラ14で撮影した画像から判別可能であるので、対象者の状態に応じて、電波を放出するレーダを選択してもよい。
【0079】
図示は省略するが、図10(b)と同様に、レーダ12-1はガイドレール32a-1に平行な軸を中心として水平面内で回転自在にスライダ32b-1に取り付けられ、レーダ12-2はガイドレール32a-2に平行な軸を中心として水平面内で回転自在にスライダ32b-2に取り付けられている。これにより、レーダ12-1、12-2が水平面内で回転され、水平面内でセクタスキャンが行われる。
【0080】
図13は、図10に示すレーダ12を対象者の左右にそれぞれ配置する例を示す。対象者はバッグ80を手に持っており、バッグ80の中に危険物72を隠しているとすると、前後から放出された電波の危険物72による反射波よりも側方から放出された電波の危険物72による反射波の方が強度は高い。
【0081】
検査エリアの左右の床にガイドレール32a-1、32a-2が設置される。ガイドレール32a-1、32a-2は、検査エリアの左右の壁に沿って設置されてもよい。ガイドレール32a-1,32a-2に対してスライド可能なスライダ32c-1、32c-2がそれぞれ設けられる。スライダ32c-1、32c-2はガイドレール32a-1、32a-2に直交する軸a2を中心にも回転自在である。スライダ32c-1,32c-2にレーダ12-1、12-2がそれぞれ取り付けられる。レーダ12-1、12-2は電波を水平方向に検査エリアに放出するようにスライダ32b-1、32b-2に取り付けられる。スキャン装置32はスライダ32b-1、32b-2をガイドレール32a-1、32a-2に沿って垂直方向にスライドさせる。
【0082】
これにより、水平方向に電波を放出するレーダ12-1、12-2が垂直方向に上下移動し、リニアスキャンが行われる。このため、図12の例と同様に、レーダ12-1、12-2の少なくとも一方から対象者が保有しているバッグ80の前後方向の中心を通る垂直方向の走査線に沿った数点に電波を放出できる。対象者がバッグ80をどちらの手で保有している等の状態は、カメラ14で撮影した画像から判別可能であるので、対象者の状態に応じて、電波を放出するレーダを選択してもよい。
【0083】
スライダ32c-1、32c-2はガイドレール32a-1、32a-2に直交する軸a2を中心にも回転自在であるので、スキャン装置32はスライダ32c-1、32c-2を垂直方向にスライドさせる代わりに、軸a2を中心に回転させてもよい。スライダ32c-1、32c-2が回転されると、対象者が垂直面内でセクタスキャンされる。
【0084】
図示は省略するが、図10(b)と同様に、レーダ12-1、12-2はガイドレール32a-1、32a-2に平行な軸を中心として水平面内で回転自在にスライダ32c-1、32c-2に取り付けられている。これにより、レーダ12-1、12-2が水平面内で回転され、水平面内でもセクタスキャンが行われる。
【0085】
図13に示すように、垂直方向のリニアスキャンと、垂直面内のセクタスキャンと水平面内のセクタスキャンを組み合わせると、対象者がどちらを向いていても危険物で電波が反射される可能性が大きくなる。
【0086】
図13に示す垂直面内のセクタスキャン機構を図10図12に示すスライダに設けてもよい。
【0087】
図10図12図13の例は、1つのスライダには1つのレーダが取り付けられる例であるが、複数のレーダが1つのスライダに纏めて取り付けられる変形例を図14を参照して説明する。図14(a)は図10図12の変形例を示し、図14(b)は図13の変形例を示す。
【0088】
図14(a)の例では、複数の、例えば4つのレーダ12a、12b、12c、12dがスライダ32dに取り付けられる。スライダ32dは図10(a)又は図12に示すスライダ32b又は32b-1,32b-2と同じ構成であり、装着されるレーダ12の数が異なる。スライダ32dはガイドレール32に沿って垂直方向にスライド可能である。しかし、検査部位の長さが小さく、4つの放出点で十分な場合は、スライダ32dの垂直方向のスライドは不要である。スライダ32dをスライドさせる場合、ピッチは4つのレーダの高さに相当する長さである。このように、複数のレーダ12をスライダ32dに取り付けると、一度に複数の点に対して電波を放出できるので、検査部位を短時間にスキャンすることができる。さらに、図10(b)に示すように、レーダ12a、12b、12c、12dはガイドレール32に平行な軸を中心として水平面内で回転自在にスライダ32dに取り付けられてもよい。
【0089】
図14(b)の例では、複数の、例えば4つのレーダ12a、12b、12c、12dがスライダ32eに取り付けられる。スライダ32eは図13に示すスライダ32cと同じ構成であり、装着されるレーダ12の数が異なる。スライダ32eはガイドレール32に沿って垂直方向にスライド可能である。しかし、検査部位の長さが小さく、4つの放出点で十分な場合は、スライダ32eのスライドは不要である。スライダ32eをスライドさせる場合、ピッチは4つのレーダの高さに相当する長さである。スライダ32eは垂直方向にスライドされる代わりに、軸a2を中心に回転されてもよい。スライダ32eの回転により、対象者が垂直面内でセクタスキャンされる。このように、複数のレーダ12をスライダ32eに取り付けると、一度に複数の点に対して電波を放出できるので、検査部位を短時間にスキャンすることができる。さらに、図10(b)に示すように、レーダ12a、12b、12c、12dはガイドレール32に平行な軸を中心として水平面内で回転自在にスライダ32eに取り付けられてもよい。
【0090】
図12図13では、検査エリアの前後又は左右にそれぞれ1本のガイドレール32aを設けたが、検査エリアの前後又は左右に配置するガイドレール32aの本数は2本以上でもよい。図15は検査エリアの前後又は左右にそれぞれ2本のガイドレール32aを配置する例を示す。図15(a)は、検査エリアの前後又は左右にそれぞれ2本のガイドレール32aを設ける例を示す。検査エリアの前、後、左又は右に配置される2本のガイドレール32aはリニアスキャンする範囲が異なってもよい。例えば、第1のガイドレール32aに取り付けられるスライダ32bは床から床上1mまでの範囲をリニアスキャンし、第2のガイドレール32aに取り付けられるスライダ32bは床上90cmから床上2mまでの範囲をリニアスキャンするように構成してもよい。図15(a)のスライダ32bは、図10図12図13図14のいずれのスライダを利用してもよい。
【0091】
図15(b)は、検査エリアの周囲に多数のスライダ32b(ガイドレール32a)を均等に設ける場合の一例を示す平面図である。この例では、検査エリアの前後左右の4方向と、これら4方向の中の隣接する2方向の中間の斜め方向の計8方向にスライダ32b(ガイドレール32a)が配置される。これにより、対象者がどの方向を向いていても、いずれかのレーダ12は危険物からの反射波を受信することができる。図15(b)のスライダ32bも、図10図12図13図14のいずれのスライダを利用してもよい。
【0092】
図15に示すように、複数のレーダ12が検査エリアに配置される場合、複数のレーダ12、スキャン装置32は1つのCPU22に接続され、同期して制御される。このとき、複数のレーダ12は時分割で電波を放出し、常時受信を行う。これにより、複数のチャネルのデータを一度に受信できる。複数のレーダは対象者に対する位置が異なるので、危険物に対して異なる入射角での反射強度が求められ、危険度の判定精度が向上する。
【0093】
図15に示すように、一次スクリーニングの検査エリアに複数の検査装置があれば、複数の対象者を同時に検査することができ、一次スクリーニングの検査時間をさらに短縮することができる。
【0094】
図10図12図15において、ガイドレール32は垂直方向に延びるように配置されたが、ガイドレール32aの延びる方向は垂直方向に限らず、水平方向や斜め方向でもよい。
【0095】
図16は、第1実施形態による走査線の他の変形例を示す。図16は対象者を前方正面から見た図である。
【0096】
図16(a)は1本の斜めの走査線に沿って胴体部をリニアスキャンする例を示す。斜めの方向は胴体部の右下と左上を結ぶ方向でもよいし、胴体部の左下と右上を結ぶ方向でもよい。スキャンの向きは、下から上でも、上から下でもよい。
【0097】
図16(b)は交差する2本の斜めの走査線に沿って胴体部をリニアスキャンする例を示す。斜めの方向は胴体部の右下と左上を結ぶ方向と胴体部の左下と右上を結ぶ方向である。スキャンの向きは、下から上でも、上から下でもよい。
【0098】
図16(c)は2本の垂直方向の走査線に沿って胴体部をリニアスキャンする例を示す。スキャンの向きは、下から上でも、上から下でもよい。
【0099】
図16(d)は1本の水平方向の走査線に沿って胴体部をリニアスキャンする例を示す。スキャンの向きは、右から左でも、左から右でもよい。
【0100】
図16(e)は2本の水平方向の走査線に沿って胴体部をリニアスキャンする例を示す。スキャンの向きは、右から左でも、左から右でもよい。
【0101】
図16(a)~図16(e)のスキャンを実現するためには、図10図12図15に示したガイドレール32aを走査線の方向と同じ方向に設置し、レーダ12をガイドレールに沿ってスライドさせる、又はレーダ12の向きを回転させればよい。あるいは、図11に示す二次元アレイアンテナ74を用いる場合は、送受信に使われるアンテナ素子76を走査線に沿って選べばよい。
【0102】
図16(f)は胴体部内でランダムに選ばれた複数の点に対して電波を放出する例を示す。これを実現するためには、図11に示す二次元アレイアンテナ74を用いて、送受信に使われるアンテナ素子76を放出点の位置に従って選べばよい。
【0103】
図16(g)は胴体部内で一定間隔の複数の点に対して電波を放出する例を示す。これを実現するためには、図11に示す二次元アレイアンテナ74を用いて、送受信に使われるアンテナ素子76を放出点の位置に従って選べばよい。あるいは、図10図12図15に示したガイドレール32aを使う場合は、複数のガイドレール32aを垂直方向又は水平方向に設置すればよい。
【0104】
(二次スクリーニングシステム)
図17は二次スクリーニングシステムの一例の構成を示す。二次スクリーニングシステムは、対象者126に対向して配置されるアレイアンテナ114Aと、アレイアンテナ114Aに接続される検知装置112と、検知装置112に接続される表示装置118からなる。アレイアンテナ114Aが図1(b)に示すレーダ16に含まれる。しかし、図17では、アレイアンテナ114Aは検査エリアの天井ではなく、側面に設置される例を示す。アレイアンテナ114Aは、四角形(ここでは、一例として正方形)の基板上に二次元配列される複数のアンテナ素子116を備える二次元アレイアンテナである。基板はXY平面に位置する。基板のサイズは対象者をカバーするサイズである。アンテナ素子116から電波が基板に直交するZ方向に放射される。
【0105】
検知装置112は、アレイアンテナ114Aから送信される電波の送信方向に位置する3次元空間122内の平面であってアレイアンテナ114Aと平行な平面124内の対象者126の画像を得ることができる。画像が得られる平面124の位置は電波の送信から受信までの時間に応じている。電波の送信から受信までの時間を3次元空間122内の多数の平面124の位置に応じて設定し、多数の異なる位置の平面124の画像を得ることにより、対象者126の3次元画像を得ることができる。アレイアンテナとして、複数のアンテナ素子が一次元のライン(例えばX方向のライン)上に配列される一次元アレイアンテナが用いられる場合、3次元画像を得ることはできず、一次元アレイアンテナを含み電波の放射方向に延びるXZ平面内の対象物の二次元画像を得ることができる。
【0106】
詳細は図18を参照して後述するが、アレイアンテナ114Aは、基板上に混在する異なるアンテナ素子間隔の第1サブアレイアンテナと第2サブアレイアンテナからなる。複数のアンテナ素子116の大半は第1サブアレイアンテナ又は第2サブアレイアンテナの構成要素であるが、いくつかのアンテナ素子116は第1サブアレイアンテナ及び第2サブアレイアンテナに共通の構成要素である。
【0107】
通常のアレイアンテナのアンテナ素子間隔は略半波長である(以下、説明の便宜上、このアレイアンテナを半波長アレイアンテナと称することがある)が、第1サブアレイアンテナのアンテナ素子間隔は略半波長の2以上の正整数倍であり、第2サブアレイアンテナのアンテナ素子間隔は略半波長の2以上の正整数倍である。このように、アレイアンテナ114Aはアンテナ素子間隔が略半波長より広くアンテナ素子がまばらに配置される疎な第1サブアレイアンテナと第2サブアレイアンテナからなる。以下、説明の便宜上、第1サブアレイアンテナと第2サブアレイアンテナはアンテナ素子間隔(正しくは、素子間隔を略半波長で除した数)が互いに素であるアレイアンテナと称することがある。
【0108】
検知装置112は各アンテナ素子116に接続される送信機132と受信機134を含む。送信機132又は受信機134をアンテナ素子116の数だけ用意し、送信機132又は受信機134をアンテナ素子116にそれぞれ接続してもよいし、送信機132又は受信機134をアンテナ素子116の数より少ない数だけ用意し、送信機132又は受信機134をセレクタを介して複数のアンテナ素子116に共通に接続してもよい。
【0109】
アレイアンテナの送受信方法は、送信と受信を同一のアンテナ素子で行うモノスタティック(mono-static)法と、送信と受信を別々のアンテナ素子で行うバイスタティック(bi-static)法あるいはマルチスタティック(multi-static)法がある。1つのアンテナ素子から送信し、他の1つのアンテナ素子で受信するのがバイスタティック法であり、1つのアンテナ素子から送信し、他の複数のアンテナ素子で受信するのがマルチスタティック法である。ここではモノスタティック法を採用するとし、各アンテナ素子116は送受信アンテナ素子である。
【0110】
送信機132と受信機134はCPU等からなるコントローラ140により制御される。送信機132と受信機134は有線あるいは無線によりコントローラ140に接続される。コントローラ140は、送信機132の送信周波数、帯域、サブアレイアンテナ毎とアンテナ素子116毎の送信タイミング等を制御し、サブアレイアンテナ毎とアンテナ素子116毎の受信機134の受信タイミング(送信から受信までの時間)等を制御する。1つのアンテナ素子116の受信信号は対象者126の1つの画素の画像信号に対応する。コントローラ140は、サブアレイアンテナ毎にアンテナ素子116を順次変更(スキャンとも称する)するとともに、受信タイミングを変更する。各アンテナ素子116から送信された電波の対象者126による反射波が電波を送信したアンテナ素子116で受信される。
【0111】
受信機134で受信した受信信号は画像生成回路136に供給され、第1サブアレイアンテナの受信信号による対象者126の3次元画像を示す第1画像信号と、第2サブアレイアンテナの送受信による対象者126の3次元画像を示す第2画像信号が生成される。画像生成回路136の画像再構成アルゴリズムは時間領域法や周波数領域法やその他の任意のアルゴリズムを用いることができる。
【0112】
第1画像信号と第2画像信号が画像生成回路136に供給され、第1画像信号と第2画像信号が結合され、合成画像信号が生成される。画像生成回路136と画像処理回路138もコントローラ140により制御される。画像生成回路136と画像処理回路138は有線あるいは無線により接続される。受信機134と画像生成回路136も有線あるいは無線により接続される。合成画像信号は表示装置118に供給され、合成画像が表示装置118で表示される。オペレータがこの画像を観察することにより、対象者126が危険物(例えば、銃)128を所持していることを検知することができる。画像処理回路138と表示装置118も有線あるいは無線により接続される。
【0113】
検知装置112は、コントローラ140に接続される通信装置141を含む。通信装置141は一次スクリーニングシステムの通信装置42と通信し、通信装置42から送信された二次スクリーニングが必要と判定された対象者を特定するための情報や危険度の程度を受信する。図1(b)に示すカメラ18がコントローラ140に接続される。
【0114】
図18はアレイアンテナ114Aの一例を示す。アレイアンテナ114Aには一定間隔d(ここでは略半波長λ/2)の仮想的な格子が定義され、仮想的な格子の交点にアンテナ素子116(図18ではアンテナ素子は142、144、146として表記する)が配置される。このように電波の放出点の間隔が短く、放出点数が多いので、二次スクリーニングシステムは一次スクリーニングシステムより検出精度が高い。ただし、アレイアンテナ114Aでは、半波長アレイアンテナのように全ての格子交点にアンテナ素子が配置されるのではなく、大半の格子交点(図18の破線で示す円)には実際のアンテナ素子が配置されない。アレイアンテナ114Aのアンテナ素子116は複数の第1アンテナ素子142と、複数の第2アンテナ素子144と、複数の第3アンテナ素子146からなる。複数のアンテナ素子142、144、146は、一部の例外を除いては、格子間隔の数倍の間隔でX、Y方向に二次元的に配列される。すなわち、アレイアンテナ114Aでは、半波長アレイアンテナにおける配置よりまばらにアンテナ素子が配置され、半波長アレイアンテナよりも疎なアレイアンテナであり、隣り合うアンテナ素子間の干渉が生じることがない。
【0115】
第1アンテナ素子142はX方向に略半波長dのm倍の間隔D1=mdで配置され、第2アンテナ素子144はX方向に略半波長dのn倍の間隔D2=ndで配置される。mとnは互いに素である2以上の正の整数であり、例えばm=3、n=4である。mとnの具体的な数値はこれに限定されず、何でもよい。
【0116】
第1アンテナ素子142はY方向に略半波長dのp倍の間隔D3=pdで配置され、第2アンテナ素子144はY方向に略半波長dのq倍の間隔D4=qdで配置される。pとqは互いに素である2以上の正の整数であり、例えばp=3、q=4である。pとqの具体的な数値はこれに限定されず、何でもよい。例えば、mとpが異なり、nとqが異なり、アンテナ素子の間隔はX方向とY方向とで異なっていてもよい。
【0117】
第3アンテナ素子146はアレイアンテナ114Aの4隅に配置される。第1アンテナ素子142と第3アンテナ素子146により素子間隔D1=3dの第1サブアレイアンテナが構成され、第2アンテナ素子144と第3アンテナ素子146により素子間隔D2=4dの第2サブアレイアンテナが構成される。このように、第1サブアレイアンテナと第2サブアレイアンテナはアンテナ素子間隔が互いに素であるアレイアンテナである。第3アンテナ素子146は第1サブアレイアンテナに含まれるとともに、第2サブアレイアンテナにも含まれる。
【0118】
アンテナ素子間隔が互いに素である2つのアレイアンテナを用いて生成される画像の分解能は、アンテナ素子の間隔には無関係であり、アレイの開口(サイズ)とアンテナ素子のビームパターンにより決まる。アレイサイズの大きさは自由に設定でき、対象物の断面積と同じとし、アレイアンテナが対象物を完全にカバーすることができる。任意の位置の送信アンテナ素子が対象物に電波を送信し、任意の位置の受信アンテナ素子が対象物から反射された電波を受信することができるように、ビームパターンは設定される。そのため、アレイアンテナ114Aによる画像の分解能は半波長アレイアンテナによる画像の分解能と一致させることができる。アレイアンテナ114Aのアンテナ素子数は37個である。半波長アレイアンテナでは、全ての格子交点にアンテナ素子が配置されるので、アンテナ素子数は169個であり、アンテナ素子数を削減できる。アンテナ素子数が少ないと、送信/受信時間が短いとともに、受信信号のデータ量も少なく、演算時間も短い。
【0119】
アンテナ素子が略半波長よりも広い間隔で配置されてなるアレイアンテナの特性を説明する。アンテナ素子数をNとし、アンテナ素子間隔をDとし、アンテナ素子間の励振位相差をβとし、対象物内の測定点の方角はアレイアンテナ面に対してθの角度であるとすると、2つのアンテナ素子から送信された電波の伝搬位相差はkDcosθである。kは波数である。
【0120】
トータルの位相シフトψは以下で表される。
【0121】
ψ=kDcosθ+β 式6
送信と受信の往復を考慮すると、波数kは4π/λで表される。したがって、正規化された放射パターンは以下で表される。
【0122】
AF=(1/N)(sin(Nψ/2)/sin(ψ/2)) 式7
式7は、アレイアンテナの放射パターンの一般的な表現である。式7の最大値は以下の場合に得られる。
【0123】
ψ=kDcosθ+β=±2mπ 式8
ここで、m=[0,1,2,…]である。多くの場合、放射はアレイの軸に垂直な方向で最大になることが望ましい。第1の最大値がθ=π/2の方向で得られるためには、以下が必要である。
【0124】
ψ=kDcosθ+β|θ=π/2=β=0 式9
このため、アレイファクタの最大値がアレイアンテナの軸に垂直な方向で最大になるためには、全てのアンテナ素子が同じ励振位相である必要がある。しかしながら、D=λ/2であり、β=0であるので、トータルの位相シフトψは以下で表される。
【0125】
ψ=kDcosθ+β=2πcosθ|θ=0,π=±2π 式10
式10のψを式7に代入すると、アレイファクタの最大値はθ=0,πの場合に得られる。これは、アレイファクタは、3つの点(θ=0,π/2,π)で最大値となることを意味する。2つの追加の最大値はグレーティングローブと称される。さらに、D=2.5λ、β=0であるならば、θ=0の最大値は0<θ<π/2の角度範囲にシフトし、θ=πの最大値はπ/2<θ<πの角度範囲にシフトし、2つの追加的なグレーティングローブが生じることが分かる。もしも、アンテナ素子間隔D=5λに広げられると、メインローブの両側にそれぞれ10本のグレーティングローブが生じる。
【0126】
したがって、アンテナ素子間隔D=nλ/2,n=1,2,3,…の場合、トータルの位相シフトψは以下で表される。
【0127】
ψ=kDcosθ+β=2πncosθ 式11
2πncosθ=2mπ 式12
もし、式12式を満たすθ(m=[0,1,2,…])があれば、θmはアレイファクタが最大値となる角度の集合である。すなわち、θ(m=[0,1,2,…])は以下で表される。
【0128】
θm=cos-1(m/n) 式13
図18の第1サブアレイアンテナのアンテナ素子間隔D1=md(m=3)と第2サブアレイアンテナのアンテナ素子間隔D2=nd(n=4)のmとnは互いに素であるので、同じ角度、すなわちアレイの垂直方向(Z方向)で2つのサブアレイアンテナのアレイファクタが同時に最大値となることを式13式は示す。
【0129】
したがって、2つのサブアレイアンテナのグレーティングローブの位置は異なる。アンテナ素子が略半波長よりも広い間隔で配置されてなるアレイアンテナによる送受信によれば、グレーティングローブの位置に偽像(phantom)が生じる。したがって、アンテナ素子間隔が互いに素である2つのサブアレイアンテナによる送受信によって生じる偽像の位置は異なるので、2つのサブアレイアンテナによる送受信によって生じる2つの画像を画像処理することにより、偽像の影響を取り除くことができる。
【0130】
このようにアンテナ素子間隔が互いに素である第1、第2サブアレイアンテナからなるアレイアンテナ114Aでは、ごく一部のアンテナ素子142,144の間隔はd(=λ/2)であるが、大半のアンテナ素子の間隔は3d、4dであるので、隣り合うアンテナ素子間の干渉が生じないとともに、アンテナ素子が疎であるのでアンテナ素子数が少なく、送信/受信時間が短いとともに、受信信号のデータ量が少なく、演算時間も短い。
【0131】
なお、アレイアンテナ114Aを構成するサブアレイアンテナの数は2つに限らず、3つ以上のサブアレイアンテナによりアレイアンテナ114Aが構成されてもよい。その場合も、いずれか2つのサブアレイアンテナのアンテナ素子間隔D1=mdと第2サブアレイアンテナのアンテナ素子間隔D2=ndにおいて、mとnは互いに素である2以上の正の整数である。
【0132】
図19と、図20と、図21を参照して対象者の画像の一例を説明する。図19(a)は第1サブアレイアンテナを用いて電波を送受信することにより生成される第1画像の一例を示し、図19(b)は第2サブアレイアンテナを用いて電波を送受信することにより生成される第2画像の一例を示す。図20図19(a)に示す第1画像を示す画像信号SのX軸方向のプロフィール(実線)と図19(b)に示す第2画像を示す画像信号SのX軸方向のプロフィール(破線)の一例を示す。図19(a)、(b)に示すように、アンテナ素子間隔が略半波長より広い第1、第2サブアレイアンテナによる第1、第2画像は中央部に対象物の画像を含み、周辺部に対象物の偽像を含む。第1画像と第2画像において偽像の位置は異なる。そのため、各画素において第1画像信号と第2画像信号の絶対値の小さい方を選ぶことにより第1画像と第2画像を結合(合成)すると、図21に示すように偽像の影響のない合成画像を得ることができる。
【0133】
図22は、図18に示すレーダにおけるスクリーニングの一例を示すフローチャートである。二次スクリーニングは、通信装置141が一次スクリーニングシステムの通信装置42から二次スクリーニングが必要と判定された対象者を特定するための情報や危険度の程度を受信すると開始される。例えば、コントローラ140は、カメラ18が撮影した画像に二次クリーニングを要する対象者が写っているか否かを常時判定する。そして、コントローラ140は、対象者が画像内に入ってきた、すなわち二次スクリーニングの検査エリアに入ってきたことを検知すると、図22に示すフローチャートの処理を開始する。
【0134】
コントローラ140は、ステップS252で、複数の第1アンテナ素子142と第3アンテナ素子146からなる第1サブアレイアンテナを用いて電波を送受信する。コントローラ140は、各アンテナ素子142、146から電波を順次送信し、各アンテナ素子142、146で電波を順次受信するように送信機132と受信機134を制御する。画像生成回路136は、ステップS254で、アンテナ素子142、146で受信した信号に基づいて第1画像を生成する。
【0135】
コントローラ140は、ステップS256で、複数の第2アンテナ素子144と第3アンテナ素子146からなる第2サブアレイアンテナを用いて電波を送受信する。コントローラ140は、各アンテナ素子144、146から電波を順次送信し、各アンテナ素子144、146で電波を順次受信してもよいし、第2サブアレイアンテナの全アンテナ素子144、146から電波を同時に送信し、各アンテナ素子144、146で電波を順次受信してもよい。画像生成回路136は、ステップS258で、アンテナ素子144、146で受信した信号に基づいて第2画像を生成する。
【0136】
画像処理回路138は、ステップS260で、各画素において第1画像信号と第2画像信号の絶対値の小さい方を選ぶことにより第1画像と第2画像を結合し、偽像の影響のない合成画像を生成する。表示装置118は、ステップS262で、合成画像を表示する。
【0137】
レーダのオペレータは対象者の合成画像を目視して、対象者が拳銃等の危険物を所持しているか否かを正確に判定することができる。
【0138】
図17に示す二次スクリーニングシステムによれば、アンテナ素子間隔が互いに素である第1、第2サブアレイアンテナを用いてそれぞれ第1、第2画像を生成し、それらの最小値を選択するように第1、第2画像を結合することにより、虚像が生じない対象物の画像を得ることができる。アンテナ素子間隔が互いに素である第1、第2サブアレイアンテナによりそれぞれ電波を送受信しているので、隣り合うアンテナ素子間の干渉が生じないとともに、アンテナ素子数が少ないので、送信/受信時間が短いとともに、受信信号のデータ量が少なく、演算時間も短い利点がある。さらに、二次元アレイアンテナ114Aを用いているので、対象物の3次元画像を得ることもできる。
【0139】
上述の説明は、人物が危険物を所持しているか否かを判定するスクリーニングに関するが、上述のスクリーニングシステムは、人物に限らず、郵便業者や運送業者が集荷した郵便物、小荷物や、工場に搬入された段ボール箱等のシールドされた中身の確認等に応用することもできる。
【0140】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0141】
12,16…レーダ、14,18…カメラ、22…CPU、32…スキャン装置、34…ストレージ、36…メインメモリ、38…表示部、40…キーボード、42…通信装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22