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特許7379638放射性医薬品からアセトアルデヒドを除去する方法
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  • 特許-放射性医薬品からアセトアルデヒドを除去する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】放射性医薬品からアセトアルデヒドを除去する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 51/04 20060101AFI20231107BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20231107BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20231107BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20231107BHJP
   A61K 101/02 20060101ALN20231107BHJP
【FI】
A61K51/04 200
A61K9/08
A61K47/42
A61K47/10
A61K101:02
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022168399
(22)【出願日】2022-10-20
(62)【分割の表示】P 2020196848の分割
【原出願日】2015-12-04
(65)【公開番号】P2023017790
(43)【公開日】2023-02-07
【審査請求日】2022-11-14
(31)【優先権主張番号】62/087,371
(32)【優先日】2014-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】305040710
【氏名又は名称】ジーイー・ヘルスケア・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100131990
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 玲恵
(72)【発明者】
【氏名】エンゲル,トルグリム
(72)【発明者】
【氏名】グリッグ,ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】マンツィラス,ディミトリオス
(72)【発明者】
【氏名】エブイエ,ダグ・エム
【審査官】春田 由香
(56)【参考文献】
【文献】特表平06-503790(JP,A)
【文献】国際公開第2004/037293(WO,A1)
【文献】特表2014-500268(JP,A)
【文献】特表2008-500283(JP,A)
【文献】特開2004-073377(JP,A)
【文献】生体試料から糖鎖を自動抽出する装置の実用化に成功,JST(科学技術振興機構)プレスリリース,2011年11月01日,p.2-10,https://www.jst.go.jp/pr/announce/20111101/index.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 51/00-51/12
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
G01N 33/15
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルデヒドスカベンジャーと放射性医薬品と溶媒とを含む組成物であって、
アルデヒドスカベンジャーがアミノ-オキシ末端を有する分子であり、
放射性医薬品が以下の化合物の群から選択される、組成物
【化4-1】

【請求項2】
アルデヒドスカベンジャーが以下の構造を有する、請求項に記載の組成物。
【化3】
【請求項3】
放射性医薬品が陽電子放射断層撮影(PET)トレーサである、請求項1又は請求項に記載の組成物。
【請求項4】
放射性医薬品が18F PETトレーサである、請求項乃至請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
溶媒がアルコールを含む、請求項乃至請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
アルコールがエタノール、イソプロパノール又はバイオアルコールである、請求項に記載の組成物。
【請求項7】
アルコールがエタノールである、請求項に記載の組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルデヒドの形成を除去又は制御するための方法、及びその定量方法に関す
る。特に、本発明は、アセトアルデヒドの形成を除去及び/又は制御及び/又は定量する
ための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アセトアルデヒドは、放射性医薬品の最終製剤に頻繁に見出される。アセトアルデヒド
の形成速度は、放射活性の増加とともに増加する。アセトアルデヒドの形成の供給源はい
くつかあり、エタノールは最も重要な供給源の一つである。アセトアルデヒドは、エタノ
ールの酸化によって形成される可能性が最も高い。この酸化は、放射性環境において増加
する。最悪の場合、アセトアルデヒドの形成は、可能な最大放射化学濃度(RAC)を制
限することがあり、したがって、患者用量の数及び製品貯蔵寿命の両方を制限する可能性
がある。さらに、アセトアルデヒドレベルは、放射性医薬品の貯蔵寿命にわたって経時的
に増加する。したがって、アセトアルデヒドのレベルは、放射性医薬品自体の製造プロセ
スによって制御することができない。
【0003】
したがって、確実にアセトアルデヒドレベルを許容限界内にとどめて、放射性医薬品の
貯蔵寿命を延ばすために、アセトアルデヒドの形成を定量及び/又は除去及び/又は制御
する方法が当該分野で必要とされている。本発明はこのような必要性に応えるものである
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2012/076697号
【発明の概要】
【0005】
本発明は、最終放射性医薬製剤中のアセトアルデヒドのレベルが許容限界内(すなわち
、120μg/10μl;Mullerら、Regulatory Toxicolog
y and Pharmacology、44、(2006)、198-211)にある
ように、定量及び/又は除去及び/又は制御する方法を提供する。特に、本発明は、アル
デヒドスカベンジャーを導入することによって、放射性医薬品の貯蔵寿命の際にアセトア
ルデヒドのレベルを定量及び/又は除去及び/又は制御する方法を提供する。本発明の本
方法はまた、最終放射性医薬製剤中に見出される他の副生成物(例えば、他のアルデヒド
、ケトン)を測定及び除去するために使用することができる。
【0006】
本発明の方法は、ガスクロマトグラフィー(GC)の代替物として、放射性医薬製剤中
の微量のアセトアルデヒドを品質管理(QC)目的で決定するために特に使用することが
できる。GCによる残留アセトアルデヒドの測定は、その比較的大きなピークに起因する
医薬製剤中のエタノールの存在によって複雑であり、本発明の方法はこの問題を克服する
。本発明の方法は、エタノール中のアセトアルデヒドの決定にも使用できる。アミノオキ
シとアルデヒド又はケトンとの反応から得られる誘導体は、感度と分離の両方を増加させ
る分子となるように設計することができる。
【0007】
本発明の方法によってアセトアルデヒドの形成を定量及び/又は除去及び/又は制御す
ることにより、本明細書で定義される医薬製剤中のアセトアルデヒドのレベルは許容可能
な基準限界内にとどまり、したがって放射化学濃度(RAC)の増加が達成され、放射性
医薬製剤の単一バッチからの患者用量の数を最大化することができる。本発明は、様々な
医薬製剤中に見られる微量のアルデヒド及びケトンの決定のための品質管理(QC)方法
の簡素化及び改善を可能にする。
【0008】
本発明のこれら及び他の態様は、図と併せて好ましい実施形態の以下の詳細な説明から
明らかになると思われる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】アルデヒドスカベンジャーAH111695を用いたクエンチによる、フルシクラチド(Fluciclatide)(18F)注射液のRCPに対する効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
特許請求した発明の主題をより明確かつ簡潔に説明し、指摘するために、本明細書及び
特許請求の範囲を通して使用される特定の用語についての定義を以下に提供する。本明細
書における特定の用語の例示は、非限定的な例としてみなされるべきである。
【0011】
「含む」という用語は、本出願を通じてその慣習的な意味を有し、薬剤又は組成物が列
挙された本質的な特徴又は成分を有さなければならないが、他の特徴又は成分が存在して
もよいことを意味する。「含む」という用語は、組成物が他の特徴又は成分が存在するこ
となく列挙された成分を有することを意味する「本質的に~からなる」という好ましいサ
ブセットを含む。
【0012】
本発明は、医薬製剤中のアセトアルデヒドの形成を定量及び/又は除去及び/又は制御
するための方法を提供する。
【0013】
本発明は、アルデヒドスカベンジャーを医薬製剤と組合せるステップを含む方法を提供
する。
【0014】
本発明は、アルデヒドスカベンジャーを、放射性医薬品及び溶媒を含む医薬製剤と組合
せるステップを含む方法を提供する。
【0015】
本発明は、アルデヒドスカベンジャー、放射性医薬品及び溶媒を含む組成物を提供する
【0016】
アルデヒドスカベンジャー
本発明では、アルデヒドスカベンジャーは、アミノ-オキシ末端を有する分子であり得
る。アミノ-オキシ官能基は極めて反応性であることが知られており、例えば、1ppm
の濃度でアセトンを室温においてほぼ完全に変換することができる。
【0017】
本発明では、アルデヒドスカベンジャーは、アセトアルデヒドレベルを定量及び/又は
制御することができ、及び/又はそれによりアセトアルデヒドレベルが許容可能な業界基
準範囲内になるまで、医薬製剤からアセトアルデヒドを除去することができる。本発明で
は、アルデヒドスカベンジャーは、医薬製剤中に見出される他の副生成物(例えば、フル
オロベンズアルデヒド(FBA)などの他のアルデヒド、ケトン)にも等しく適用するこ
とができる。
【0018】
本発明の一実施形態では、アルデヒドスカベンジャーは次式の化合物である(本明細書
では「AH111695」ともいう。分子量1709.92)。
【0019】
【化1】
本発明では、アセトアルデヒドスカベンジャーは、様々な様式で医薬製剤に提供するこ
とができる。例えば、アセトアルデヒドスカベンジャーは、
(i)医薬製剤中の遊離アミノオキシ含有賦形剤、
(ii)医薬製剤を通過させる、結合アミノキシ含有官能基を含有する固相材料、
(iii)個々の用量/QC/マイクロ/保持試料バイアルの初回分配の際に使用される
分配流体経路の一部としてのカートリッジ/濾過ユニットの一部、
(iv)臨床使用の直前の分配に使用される分配流体経路の一部としてのカートリッジ/
濾過ユニットの一部、
(v)放射性トレーサの製造直後に、患者用量投与のためにシリンジを充填するときに医
薬製剤を通過させるカートリッジ/濾過ユニットの一部、及び/又は
(vi)臨床使用の直前に、患者用量投与のためにシリンジを充填するときに医薬製剤を
通過させるカートリッジ/濾過ユニット
として提供することができる。
【0020】
本発明では、アルデヒドスカベンジャーは、あらかじめ製造された製剤バイアル中の賦
形剤として添加することもできる。PETトレーサのような放射性医薬品は、一般に、自
動合成機(例えば、FASTlab(商標))から、充填済み製剤バイアルに移され、製
剤の製造が行われる。本発明のこの態様によれば、アルデヒドスカベンジャーは、賦形剤
としてこの充填済み製剤バイアルの一部であり得る。
【0021】
本発明では、アルデヒドスカベンジャーは、賦形剤として臨床バイアルに添加すること
もできる。本明細書に記載の医薬製剤は、製剤化後に異なるバイアルに分配される。アル
デヒドスカベンジャーが固体粒子である場合、この分配ステップには滅菌濾過が含まれる
ので、アルデヒドスカベンジャーは分配することができない。これに対する解決策は、補
足剤を賦形剤として臨床バイアル(患者バイアル)に提供することである。
【0022】
本発明の定量化実施形態の文脈において、アミノオキシとアルデヒドとの間の反応で形
成されるイミンは、例えば、本明細書に記載のPETトレーサのフルシクラチドでは、U
Vにより0.1ナノモルに等しい0.2μg/ml未満までの低下を検出することができ
る(質量分析による感度はさらに高い)。0.1ナノモルのアセトアルデヒドは0.00
48μg/mlのアセトアルデヒド又は0.0048ppm=4.8ppbのアセトアル
デヒドに相当する。以下は、アセトアルデヒドの定量のためのモデル反応を例示する。
【0023】
【化2】
得られた分子3は、GC又はHPLCのいずれかによって分析することができる。2か
ら3の分離は、極性の大きな違いのために容易であると考えられる。
【0024】
以下に例示するAH111930は、本明細書に記載のアルデヒドスカベンジャーAH
111695とアセトアルデヒドとの生成物である。
【0025】
【化3】
AH111930は、本明細書に記載のフルシクラチドの合成中に形成され、例えば、
工程中に使用するエタノール中のアセトアルデヒド含量に応じて様々な量で粗反応混合物
中に見出される。AH111930は、典型的には、最終精製ステップの終了後に1~2
μg/ml未満に低減される。最終生成物中のAH111930の量は、フルシクラチド
18F)注射液の放出の際にQC HPLC法によって決定する。すべての未反応AH1
11695は精製の際に除去され、したがってアセトアルデヒドが精製後に形成された場
合、未反応のままであると思われる。医薬製剤の保存中に形成されるアセトアルデヒドの
量は、いくらかのAH111695を試料に添加し、10分間加熱することによって決定
できる。次いで、QC HPLC法を用いて試料を分析し、AH111930の含有量を
定量し、放出分析と比較することができる。AH111930は、216nmにおいて標
準として使用されるフルシクラチドよりも低い応答を有するかもしれないが、2つの間の
応答比は決定することができ、AH111585もなお基準として使用される。
【0026】
医薬製剤
本発明では、医薬製剤は最終放射性医薬製剤を指すものとする。一実施形態では、医薬
製剤は、哺乳動物投与に適切な形態であり、無菌で、発熱物質非含有の、毒性及び有害事
象を起こす化合物を含まない、生体適合性のpH(およそpH4.0から10.5)にお
いて製剤化された製剤を意味する。このような製剤は、インビボで塞栓を引き起こし得る
リスクのある微粒子を含まず、生物学的流体(例えば血液)との接触において沈降を起こ
さないように製剤化される。このような製剤はさらに、生物学的に適合性の賦形剤、好ま
しくは等張性の賦形剤だけを含有する。本発明では、医薬製剤は放射性医薬品及び溶媒を
含み、各々は本明細書に記載されている。医薬製剤は、限定するものではないが、自動合
成機(例えば、FASTlab(登録商標))を含む当分野で公知の任意の手段によって
製造することができる。
【0027】
放射性医薬品
本発明では、放射性医薬品は、インビトロ又はインビボイメージングに適切な任意の放
射標識化合物を含むことができる。本発明の一実施形態では、放射標識化合物は、インビ
ボイメージングに適切である。インビボイメージングに適切であるために、放射性医薬品
は哺乳動物投与に適した形態で適切に提供され、哺乳動物対象単独をイメージングするこ
とによって得られる画像よりも、目的の領域又は器官においてより鮮明な画像の提供を支
援する。好ましい実施形態では、放射性医薬品は、陽電子放射断層撮影(PET)トレー
サである。好ましい実施形態では、放射性医薬品は、18F PETトレーサである。適切
18F PETトレーサの非限定的な例としては、以下の[18F]フルシクラチド、[18
F]フルテメタモール、及び[18F]GE180が挙げられるが、これらに限定されない
【0028】
【化4】
18F]フルシクラチドの製造に適切な方法及び[18F]フルシクラチドを含む製剤は
、国際公開第2004080492号、国際公開第2006030291号、国際公開第
2012076697号及び米国特許出願公開第20130209358号に記載されて
いる。本発明の態様の一実施形態では、18F PETトレーサは、[18F]フルシクラチ
ドである。
【0029】
18F]フルタメタモール及び[18F]フルタメタモールを含む製剤の製造に適切な方
法は、国際公開第2007020400号、国際公開第2009027452号及び国際
公開第2011044406号に記載されている。本発明の態様の一実施形態では、18
PETトレーサは、[18F]フルタメタモールである。
【0030】
18F]GE180及び[18F]GE180を含む組成物の製造に適切な方法は、国際
公開第2010109007号、国際公開第2011117421号及び国際公開第20
12080349号に記載されている。本発明の態様の一実施形態では、18F PETト
レーサは[18F]GE180である。
【0031】
溶媒
本発明では、溶媒は、医薬製剤における使用に適切な、当分野において公知の任意の有
機溶媒を含んでよい。好ましい実施形態では、溶媒はアルコールを含む。好ましい実施形
態では、溶媒はエタノール、イソプロパノール又はバイオアルコールである。好ましい実
施形態では、溶媒はエタノールである。
【0032】
本明細書は、最良の様式を含む本発明を開示するため、及びどのような当業者も、任意
の装置又は系の製造及び使用並びに任意の組み込まれた方法の実行を含む本発明の実践を
可能にするために、実施例を使用している。本発明の特許となり得る範囲は特許請求の範
囲により規定され、当業者が思いつく他の実施例を含み得る。このような他の実施例は、
特許請求の範囲の文面と異ならない構造要素を有する場合、又は特許請求の範囲の文面と
非実質的な相違を有する等価の構造要素を含む場合、特許請求の範囲内であることが意図
される。本文に述べられたすべての特許及び特許出願は、それらが個別に組み込まれたか
のように、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0033】
実施例1
HPLCを使用してフルシクラチド(18F)注射液試料中のアセトアルデヒド含有量を
分析する実験において、アセトアルデヒドを、AH111695を用いてUV吸収性フル
シクラチド類似体AH111930に誘導化した(スキーム1)。
【0034】
【化5】
10時間の崩壊後、フルシクラチド(18F)注射液の0.5ml試料を0.5mlの1
.6mM AH111695/77.2mMアニリンHCl水溶液と混合し、60℃で3
0分間加熱した。AH111930のモル含有量をHPLCにより測定し、AH1116
95によりクエンチされたアセトアルデヒドの量は7.6μg/mlであることが判明し
た。対照的に、非クエンチ(すなわち、アルデヒドスカベンジャーAH111695を添
加しなかった)対照試料中のアセトアルデヒドの量を、GC分析によって6.9μgであ
ると後で判定した。HPLCとGCの結果との間の偏差は、GC法よりHPLC法の感度
が高いことに起因する。結果は、アルデヒドスカベンジャーAH111695の添加によ
りアセトアルデヒドの完全なクエンチが達成されたことを示す。
【0035】
フルシクラチド(18F)注射液のクエンチされた試料もまた、放射性不純物4-[18
]フルオロベンズアルデヒド([18F]FBA)の含有量について分析し、結果を非クエ
ンチ試料と比較した。結果は、アルデヒドスカベンジャーAH111695が[18F]F
BAと反応して[18F]フルシクラチドを生成し、生成物から[18F]FBA放射性不純
物を除去することを示した。これは放射化学的純度(RCP)に大きな影響を与えた。9
時間の非クエンチ試料を分析すると、92.5%のRCP(初期RACは1030MBq
/mlである)が得られた。アルデヒドスカベンジャーAH111695の添加後、RC
Pは(シス及びトランス異性体を合わせて)94.5%に増加した。クエンチ前後のラジ
オクロマトグラムのオーバーレイを図1に示す。2つの主要な放射性不純物は、[18F]
FBAがクエンチ試料で検出されなかった場所に示されている。
【0036】
図1は、アルデヒドの形成を制御する方法の有効性を明らかに示している。(1)一番下のトレースは9時間後にアルデヒドスカベンジャーAH111695でクエンチされたフルシクラチド(18F)であり、(2)中間のトレースはブランクであり、(3)一番上のトレースは、非クエンチの、すなわち、9時間後にアルデヒドスカベンジャーAH111695を添加しなかったフルシクラチド(18F)注射液である。

本願発明は、以下の態様を含む。
<1>
アルデヒドスカベンジャーを医薬製剤と組合せるステップを含む、医薬製剤中のアセトアルデヒドの形成を定量、除去又は制御するための方法。
<2>
アルデヒドスカベンジャーがアミノ-オキシ末端を有する分子である、<1>に記載の方法。
<3>
アルデヒドスカベンジャーが以下の構造を有する、<1>に記載の方法。
【化1】


<4>
医薬製剤が放射性医薬品及び溶媒を含む、<1>乃至<3>のいずれかに記載の方法。<5>
放射性医薬品が陽電子放射断層撮影(PET)トレーサである、<4>に記載の方法。<6>
放射性医薬品が 18 F PETトレーサである、<5>に記載の方法。
<7>
放射性医薬品が以下の化合物の群から選択される、<6>に記載の方法。
【化2】

<8>
溶媒がアルコールを含む、<4>乃至<7>のいずれかに記載の方法。
<9>
アルコールが、エタノール、イソプロパノール及びバイオアルコールからなる群から選択される、<8>に記載の方法。
<10>
アルコールがエタノールである、<9>に記載の方法。
<11>
アルデヒドスカベンジャーと放射性医薬品と溶媒とを含む組成物。
<12>
アルデヒドスカベンジャーがアミノ-オキシ末端を有する分子である、<11>に記載の組成物。
<13>
アルデヒドスカベンジャーが以下の構造を有する、<11>に記載の組成物。
【化3】

<14>
放射性医薬品が陽電子放射断層撮影(PET)トレーサである、<11>乃至<13>のいずれかに記載の組成物。
<15>
放射性医薬品が 18 F PETトレーサである、<11>乃至<14>のいずれかに記載の組成物。
<16>
放射性医薬品が以下の化合物の群から選択される、<15>に記載の組成物。
【化4】

<17>
溶媒がアルコールを含む、<11>乃至<16>のいずれかに記載の組成物。
<18>
アルコールがエタノール、イソプロパノール又はバイオアルコールである、<17>に記載の組成物。
<19>
アルコールがエタノールである、<18>に記載の組成物。
図1