(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】エレベータシステムおよび広告料金算出方法
(51)【国際特許分類】
B66B 3/00 20060101AFI20231107BHJP
G06Q 30/0273 20230101ALI20231107BHJP
【FI】
B66B3/00 Z
B66B3/00 L
G06Q30/0273
(21)【出願番号】P 2022184978
(22)【出願日】2022-11-18
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】西田 岳人
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-241061(JP,A)
【文献】特開2021-196728(JP,A)
【文献】特開2003-012250(JP,A)
【文献】特開2002-092487(JP,A)
【文献】特開2011-027998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00
G06Q 30/0273
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の階床間を昇降運転される乗りかごと、
前記乗りかごを駆動する駆動部と、
前記乗りかご内に設けられ、乗車中の利用者に広告情報を表示可能な表示部と、
前記利用者の前記乗りかご内への乗車を検知する検知部と、
前記検知部によって、前記利用者の前記乗りかご内への乗車が確認されたか否かに応じて、前記表示部での前記広告情報の表示を管理する管理部と、
前記検知部の検知出力に基づいて、前記乗りかごの定格積載量に対する積載量の変動から、単位時間あたりの前記利用者の平均乗車率を認定する平均乗車率認定部と、
前記平均乗車率認定部によって認定された前記平均乗車率の基本設定値に対する割合に基づいて、前記広告情報の料金単価を算出する算出部と、
を備え、
前記算出部は、
認定された前記平均乗車率が前記基本設定値の設定範囲内の場合には、前記料金単価の変更はせず、
認定された前記平均乗車率が前記基本設定値の設定範囲よりも大きい場合には、前記料金単価を所定の額だけ増額させ、
認定された前記平均乗車率が前記基本設定値の設定範囲よりも小さい場合には、前記料金単価を所定の額だけ減額させることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項2】
複数の階床間を昇降運転される乗りかごと、
前記乗りかごを駆動する駆動部と、
前記乗りかご内に設けられ、乗車中の利用者に広告情報を表示可能な表示部と、
前記利用者の前記乗りかご内への乗車を検知する検知部と、
前記検知部によって、前記利用者の前記乗りかご内への乗車が検知されたか否かに応じて、前記表示部での前記広告情報の表示を管理する管理部と、
前記駆動部により駆動される、前記乗りかごが行先階に着床した際の単位時間あたりの停車数を認定する停車数認定部と、
前記停車数認定部によって認定された前記停車数の基本設定値に対する割合に基づいて、前記広告情報の料金単価を算出する算出部と、
を備え、
前記算出部は、
認定された前記停車数が前記基本設定値の設定範囲内の場合には、前記料金単価の変更はせず、
認定された前記停車数が前記基本設定値の設定範囲よりも大きい場合には、前記料金単価を所定の額だけ増額させ、
認定された前記停車数が前記基本設定値の設定範囲よりも小さい場合には、前記料金単価を所定の額だけ減額させることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項3】
複数の階床間を昇降運転される乗りかごと、
前記乗りかごを駆動する駆動部と、
前記乗りかご内に設けられ、乗車中の利用者に広告情報を表示可能な表示部と、
前記利用者の前記乗りかご内への乗車を検知する検知部と、
前記検知部によって、前記利用者の前記乗りかご内への乗車が検知されたか否かに応じて、前記表示部での前記広告情報の表示を管理する管理部と、
前記駆動部により駆動される、前記乗りかごの運転方向が反転した際の単位時間あたりの反転数を認定する反転数認定部と、
前記反転数認定部によって認定された前記反転数の基本設定値に対する割合に基づいて、前記広告情報の料金単価を算出する算出部と、
を備え、
前記算出部は、
認定された前記反転数が前記基本設定値の設定範囲内の場合には、前記料金単価の変更はせず、
認定された前記反転数が前記基本設定値の設定範囲よりも大きい場合には、前記料金単価を所定の額だけ増額させ、
認定された前記反転数が前記基本設定値の設定範囲よりも小さい場合には、前記料金単価を所定の額だけ減額させることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項4】
前記算出部によって算出された前記料金単価を保存する保存部と、
前記保存部に対し、前記料金単価の保存または読出しのための通信を可能とする通信部と、
を、さらに備え、
前記通信部を介して、前記保存部に保存された前記料金単価の外部からの読出しが可能とされることを特徴とする
請求項1から3のいずれか1項に記載のエレベータシステム。
【請求項5】
複数の階床間を昇降運転される乗りかご内に設けられた表示部により、乗車中の利用者に対して広告情報を表示することが可能なエレベータシステムに適用される、前記広告情報の料金を算出する方法であって、
検知部によって前記利用者の前記乗りかご内への乗車が確認された場合に、前記表示部での前記広告情報の表示が行われるように管理部により管理する工程と、
前記乗りかごの定格積載量に対する積載量の変動から、単位時間あたりの前記利用者の平均乗車率を認定部により認定する工程と、
算出部によって、認定された前記平均乗車率が予め設定される基本設定値の設定範囲内の場合には、前記広告情報の料金を算出するための料金単価の変更はせず、認定された前記平均乗車率が前記基本設定値の設定範囲よりも大きい場合には、前記料金単価を所定の額だけ増額させ、認定された前記平均乗車率が前記基本設定値の設定範囲よりも小さい場合には、前記料金単価を所定の額だけ減額させる工程と、
を備えたことを特徴とするエレベータシステムの広告料金算出方法。
【請求項6】
複数の階床間を昇降運転される乗りかご内に設けられた表示部により、乗車中の利用者に対して広告情報を表示することが可能なエレベータシステムに適用される、前記広告情報の料金を算出する方法であって、
検知部によって前記利用者の前記乗りかご内への乗車が確認された場合に、前記表示部での前記広告情報の表示が行われるように管理部により管理する工程と、
駆動部によって前記乗りかごが行先階に着床した際の、単位時間あたりの停車数を認定部により認定する工程と、
算出部によって、認定された前記停車数が予め設定される基本設定値の設定範囲内の場合には、前記広告情報の料金を算出するための料金単価の変更はせず、認定された前記停車数が前記基本設定値の設定範囲よりも大きい場合には、前記料金単価を所定の額だけ増額させ、認定された前記停車数が前記基本設定値の設定範囲よりも小さい場合には、前記料金単価を所定の額だけ減額させる工程と、
を備えたことを特徴とするエレベータシステムの広告料金算出方法。
【請求項7】
複数の階床間を昇降運転される乗りかご内に設けられた表示部により、乗車中の利用者に対して広告情報を表示することが可能なエレベータシステムに適用される、前記広告情報の料金を算出する方法であって、
検知部によって前記利用者の前記乗りかご内への乗車が確認された場合に、前記表示部での前記広告情報の表示が行われるように管理部により管理する工程と、
駆動部によって前記乗りかごの運転方向が反転した際の、単位時間あたりの反転数を認定部により認定する工程と、
算出部によって、認定された前記反転数が予め設定される基本設定値の設定範囲内の場合には、前記広告情報の料金を算出するための料金単価の変更はせず、認定された前記反転数が前記基本設定値の設定範囲よりも大きい場合には、前記料金単価を所定の額だけ増額させ、認定された前記反転数が前記基本設定値の設定範囲よりも小さい場合には、前記料金単価を所定の額だけ減額させる工程と、
を備えたことを特徴とするエレベータシステムの広告料金算出方法。
【請求項8】
同一建屋内に複数のエレベータ装置が設置されている場合、前記複数のエレベータ装置の前記広告情報の料金単価は、特定のエレベータ装置について算出された前記料金単価によって均一化されることを特徴とする
請求項5から7のいずれか1項に記載のエレベータシステムの広告料金算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータシステムおよび広告料金算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータ装置(EV)の乗りかご内に広告用モニタを設置して、各種の広告をエレベータの利用者に向けて提供する、いわゆるエレベータ広告が知られている。エレベータ広告は、エレベータの利用者に新商品を認知させるきっかけとなるなどの宣伝効果が期待されている。
【0003】
このように、広告主にとっては、エレベータが新商品などを認知させるための新たな広告手段となり得ることから、売り上げの拡大につながるとの期待がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-241061号公報
【文献】特開2002-92487号公報
【文献】特開2004-62419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来は、エレベータの利用者が広告を見ているかどうかもわからないのに、エレベータ広告の広告単価は一律であり、一定額の広告料が支払われるようになっている。
【0006】
しかも、エレベータ広告が実際に新商品などを購入する際のきっかけとなって、売り上げに貢献しているかどうかも定かでなかった。
【0007】
本発明の実施形態は、利用状況に基づいて適正な広告単価を設定でき、広告料金の費用対効果をより明確化することが可能なエレベータシステムおよび広告料金算出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態のエレベータシステムは、複数の階床間を昇降運転される乗りかごと、前記乗りかごを駆動する駆動部と、前記乗りかご内に設けられ、乗車中の利用者に広告情報を表示可能な表示部と、前記利用者の前記乗りかご内への乗車を検知する検知部と、前記検知部によって、前記利用者の前記乗りかご内への乗車が確認されたか否かに応じて、前記表示部での前記広告情報の表示を管理する管理部と、前記検知部の検知出力に基づいて、前記乗りかごの定格積載量に対する積載量の変動から、単位時間あたりの前記利用者の平均乗車率を認定する平均乗車率認定部と、前記平均乗車率認定部によって認定された前記平均乗車率の基本設定値に対する割合に基づいて、前記広告情報の料金単価を算出する算出部と、を備え、前記算出部は、認定された前記平均乗車率が前記基本設定値の設定範囲内の場合には、前記料金単価の変更はせず、認定された前記平均乗車率が前記基本設定値の設定範囲よりも大きい場合には、前記料金単価を所定の額だけ増額させ、認定された前記平均乗車率が前記基本設定値の設定範囲よりも小さい場合には、前記料金単価を所定の額だけ減額させることを特徴とする。
【0010】
本実施形態のエレベータシステムは、複数の階床間を昇降運転される乗りかごと、前記乗りかごを駆動する駆動部と、前記乗りかご内に設けられ、乗車中の利用者に広告情報を表示可能な表示部と、前記利用者の前記乗りかご内への乗車を検知する検知部と、前記検知部によって、前記利用者の前記乗りかご内への乗車が検知されたか否かに応じて、前記表示部での前記広告情報の表示を管理する管理部と、前記駆動部により駆動される、前記乗りかごが行先階に着床した際の単位時間あたりの停車数を認定する停車数認定部と、前記停車数認定部によって認定された前記停車数の基本設定値に対する割合に基づいて、前記広告情報の料金単価を算出する算出部と、を備え、前記算出部は、認定された前記停車数が前記基本設定値の設定範囲内の場合には、前記料金単価の変更はせず、認定された前記停車数が前記基本設定値の設定範囲よりも大きい場合には、前記料金単価を所定の額だけ増額させ、認定された前記停車数が前記基本設定値の設定範囲よりも小さい場合には、前記料金単価を所定の額だけ減額させることを特徴とする。
【0011】
本実施形態のエレベータシステムは、複数の階床間を昇降運転される乗りかごと、前記乗りかごを駆動する駆動部と、前記乗りかご内に設けられ、乗車中の利用者に広告情報を表示可能な表示部と、前記利用者の前記乗りかご内への乗車を検知する検知部と、前記検知部によって、前記利用者の前記乗りかご内への乗車が検知されたか否かに応じて、前記表示部での前記広告情報の表示を管理する管理部と、前記駆動部により駆動される、前記乗りかごの運転方向が反転した際の単位時間あたりの反転数を認定する反転数認定部と、前記反転数認定部によって認定された前記反転数の基本設定値に対する割合に基づいて、前記広告情報の料金単価を算出する算出部と、を備え、前記算出部は、認定された前記反転数が前記基本設定値の設定範囲内の場合には、前記料金単価の変更はせず、認定された前記反転数が前記基本設定値の設定範囲よりも大きい場合には、前記料金単価を所定の額だけ増額させ、認定された前記反転数が前記基本設定値の設定範囲よりも小さい場合には、前記料金単価を所定の額だけ減額させることを特徴とする。
【0012】
本実施形態のエレベータシステムの広告料金算出方法は、複数の階床間を昇降運転される乗りかご内に設けられた表示部により、乗車中の利用者に対して広告情報を表示することが可能なエレベータシステムに適用される、前記広告情報の料金を算出する方法であって、検知部によって前記利用者の前記乗りかご内への乗車が確認された場合に、前記表示部での前記広告情報の表示が行われるように管理部により管理する工程と、前記乗りかごの定格積載量に対する積載量の変動から、単位時間あたりの前記利用者の平均乗車率を認定部により認定する工程と、算出部によって、認定された前記平均乗車率が予め設定される基本設定値の設定範囲内の場合には、前記広告情報の料金を算出するための料金単価の変更はせず、認定された前記平均乗車率が前記基本設定値の設定範囲よりも大きい場合には、前記料金単価を所定の額だけ増額させ、認定された前記平均乗車率が前記基本設定値の設定範囲よりも小さい場合には、前記料金単価を所定の額だけ減額させる工程と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
本実施形態のエレベータシステムの広告料金算出方法は、複数の階床間を昇降運転される乗りかご内に設けられた表示部により、乗車中の利用者に対して広告情報を表示することが可能なエレベータシステムに適用される、前記広告情報の料金を算出する方法であって、検知部によって前記利用者の前記乗りかご内への乗車が確認された場合に、前記表示部での前記広告情報の表示が行われるように管理部により管理する工程と、駆動部によって前記乗りかごが行先階に着床した際の、単位時間あたりの停車数を認定部により認定する工程と、算出部によって、認定された前記停車数が予め設定される基本設定値の設定範囲内の場合には、前記広告情報の料金を算出するための料金単価の変更はせず、認定された前記停車数が前記基本設定値の設定範囲よりも大きい場合には、前記料金単価を所定の額だけ増額させ、認定された前記停車数が前記基本設定値の設定範囲よりも小さい場合には、前記料金単価を所定の額だけ減額させる工程と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
本実施形態のエレベータシステムの広告料金算出方法は、複数の階床間を昇降運転される乗りかご内に設けられた表示部により、乗車中の利用者に対して広告情報を表示することが可能なエレベータシステムに適用される、前記広告情報の料金を算出する方法であって、検知部によって前記利用者の前記乗りかご内への乗車が確認された場合に、前記表示部での前記広告情報の表示が行われるように管理部により管理する工程と、駆動部によって前記乗りかごの運転方向が反転した際の、単位時間あたりの反転数を認定部により認定する工程と、算出部によって、認定された前記反転数が予め設定される基本設定値の設定範囲内の場合には、前記広告情報の料金を算出するための料金単価の変更はせず、認定された前記反転数が前記基本設定値の設定範囲よりも大きい場合には、前記料金単価を所定の額だけ増額させ、認定された前記反転数が前記基本設定値の設定範囲よりも小さい場合には、前記料金単価を所定の額だけ減額させる工程と、を備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態に係るエレベータシステムの構成例を示す概略図。
【
図2】エレベータシステムの広告表示管理部の構成を例示するブロック図。
【
図3】エレベータシステムでの広告単価の算出に用いられるパラメータの基本設定値について説明するために示す図。
【
図4】エレベータシステムでの広告料の算出方法について説明するフローチャート。
【
図5】エレベータシステムでの広告単価の算出例を示す図。
【
図6】第2実施形態に係るエレベータシステムでの広告単価の算出に用いられるパラメータの基本設定値について説明するために示す図。
【
図7】第3実施形態に係るエレベータシステムでの広告単価の算出に用いられるパラメータの基本設定値について説明するために示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施形態に係るエレベータシステムおよび広告料金算出方法について、図面を参照して説明する。
【0017】
第1実施形態
図1は、第1実施形態に係るエレベータシステムの構成例を示すものである。ここでは、例えば
図1に示すように、エレベータ装置(EV)の乗りかご15と、EV制御盤30と、広告会社などの広告サーバ40と、を有して構成されてなる場合を例に説明する。
【0018】
即ち、本実施形態に係るエレベータシステムは、乗りかご15内に広告用モニタとしてのディスプレイ(表示部)23を設置して、乗客であるエレベータ利用者に各種のエレベータ広告(広告情報)を提供可能な構成とされている。
【0019】
図1において、乗りかご15は、例えば、商業用ビルなどの施設の建屋内に設けられ、複数の階床(売り場階)間を昇降運転されるものである。この乗りかご15には、正面にかご扉17が開閉可能に設けられるとともに、かご扉17が設けられた正面に対向する背面側の壁を透過させて示すように、かご扉17の一方の内側壁部分にエレベータ利用者が操作するかご操作盤パネル19が配置されている。
【0020】
かご操作盤パネル19には、例えば、行先階ボタン194 、着床階(到着階)などを音声により案内するアナウンス装置(スピーカ)192 、着床階などを表示する表示モニタ193 、および、図示省略の扉開閉用ボタンや非常通話装置などが設けられている。
【0021】
そして、乗りかご15の天井面(内天井部分)には、天井照明24や監視用のかご内カメラ(検知部)18が設けられるとともに、例えば、正面の内側壁部分のかご扉17の上方に、広告表示用のディスプレイ23が設置されている。このディスプレイ23を介して、乗りかご15内のエレベータ利用者に対するエレベータ広告の提供が可能とされている。
【0022】
また、乗りかご15の、例えば床面の裏側には、乗りかご15の積載量を検知する荷重検知器(検知部)7 が設けられている。
【0023】
これに対し、EV制御盤30は、乗りかご15の昇降動作などを制御するためのものであって、例えば
図1に示すように、制御装置31、記憶部32、EV駆動部33、EV信号部34、広告表示管理部35、および、通信部36などを備えている。また、図示していないが、計時手段としてのタイマや計数手段としてのカウンタなどを備える構成としても良い。
【0024】
制御装置31は、例えば図示省略の遠隔監視装置(監視センタ)からの指示にしたがって各部を制御するもので、乗りかご15の昇降動作として、平常時には通常の昇降運転を行うとともに、地震発生時などの異常時には所定の管制運転を行うようになっている。
【0025】
また、制御装置31は、かご内カメラ18の映像データに基づいて、エレベータ利用者の乗りかご15への乗車を検知する。
【0026】
本実施形態においては、荷重検知器7 の検知データに基づいて、乗りかご15の定格積載量に対する積載量の変動から、エレベータ利用者の乗りかご15への乗車を検知することも可能である。
【0027】
また、制御装置31は、荷重検知器7 の検知データに基づいて、単位時間あたりの平均乗車率(パラメータ/乗りかご15の利用状況)を認定する認定部(平均乗車率認定部)31a を備えている。
【0028】
記憶部32は、昇降動作に必要な各種のデータや乗りかご15の定格積載量、および、認定部31a によって認定された単位時間ごと(毎時)の平均乗車率などを記憶するものである。
【0029】
EV駆動部33は、主に、EVの巻上機やブレーキ、かご扉17の開閉装置(いずれも図示していない)などを制御して、乗りかご15に対し、安定した昇降動作を安全に行わせるためのものである。
【0030】
EV信号部34は、例えば、荷重検知器7 の検知データやかご内カメラ18の映像データを取り込むためのものであって、さらには、非常通話信号などを取り込むものであっても良い。
【0031】
広告表示管理部35は、詳細については後述するが、ディスプレイ23で表示するエレベータ広告などを管理するもので、例えば、提供するエレベータ広告を画面上に予め決められた広告スケジュールに沿って表示するようになっている。
【0032】
通信部36は、例えば、広告会社の広告サーバ40との間での通信を行うものであって、閉店後の、予め決められた所定の時間(例えば、24時)に、その日の1日分の毎時の平均乗車率を広告サーバ40に送信する。また、通信部36は、例えば、広告サーバ40より供給されるエレベータ広告や広告スケジュールなどの取込みを行うようになっている。
【0033】
一方、広告サーバ40は、乗りかご15の毎時の平均乗車率に基づいて単位時間あたりの広告単価(料金単価)などを算出するためのものであって、例えば、広告料(広告料金)算出部(算出部)41と、保存部42と、通信部43と、を備えて構成されている。
【0034】
広告料算出部41は、EV制御盤30から送信される乗りかご15の毎時の平均乗車率に基づいて単位時間あたりの広告単価を算出するとともに、その日の1日分の広告料の総額(日額)を算出する。
【0035】
また、広告料の日額の合計から、例えば広告主に請求する月単位の広告料の総額(月額)を求めることも可能とされている。
【0036】
保存部42は、広告料算出部41にて算出される各日の広告料の総額(日額)や、単位時間あたりの広告単価を算出するための、例えば基準料金に対する乗車率(基本設定値)に応じた割合(所定の額)などを保存しておくためのものである。
【0037】
通信部43は、EV制御盤30との間での通信を行うものであって、例えば、EV制御盤30に対し、ディスプレイ23の画面上に表示させるエレベータ広告やその広告スケジュールなどを送信する。
【0038】
また、通信部43は、広告主との間での通信を行うものであって、例えば広告主からの要求に応じて、月単位の広告料の総額(月額)を請求額として返送することにより、広告主が所有する端末50やPCなどでの請求額の閲覧(ダウンロード)が可能とされている。
【0039】
なお、ディスプレイ23としては、エレベータ広告の音声などを出力可能なものであっても良いし、かご操作盤パネル19のアナウンス装置192 を用いてエレベータ広告の音声などを出力させることも可能である。
【0040】
また、乗りかご15内でのエレベータ利用者の会話や携帯電話での通話などを優先させるために、小音声のエレベータ広告や映像のみをエレベータ広告として提供することも可能である。
【0041】
図2は、本実施形態に係るエレベータシステムの、EV制御盤30に設けられる広告表示管理部35の構成を例示するものである。
【0042】
広告表示管理部35は、例えば
図2に示すように、広告スケジュール管理部351 と、広告データベース部352 と、広告配信部353 と、を有して構成されている。
【0043】
広告スケジュール管理部351 は、ディスプレイ23で表示するエレベータ広告の広告スケジュールを管理するためのもので、例えば、広告スケジュールは広告会社の広告サーバ40から送られるようになっている。
【0044】
広告データベース部352 は、ディスプレイ23で表示するエレベータ広告を格納するためのもので、例えば、エレベータ広告は広告会社の広告サーバ40から送られるようになっている。
【0045】
広告配信部353 は、広告データベース部352 に格納されたエレベータ広告を、広告スケジュール管理部351 で管理される広告スケジュールに沿って、ディスプレイ23の画面上に表示させるものである。
【0046】
図3は、単位時間あたりの平均乗車率(利用状況)をパラメータとした場合の、広告単価の算出に用いられる基本設定値について示すものである。即ち、本実施形態に係るエレベータシステムにおいて、広告料算出部41での広告単価の算出に用いられるパラメータを「単位時間あたりの平均乗車率」とした場合の例である。
【0047】
基本設定値は、広告会社などによって予め設定されるものであって、例えば、1時間あたりの平均乗車率が満員時の45-55%の設定範囲内ならば、その時間帯の広告単価は「基準料金」となるように設定されている。
【0048】
一方、1時間あたりの平均乗車率が満員時の基本設定値の設定範囲以下、例えば、44%以下ならば、その時間帯の広告単価は基準料金の「-10%」となるように設定されている。他方、1時間あたりの平均乗車率が満員時の基本設定値の設定範囲以上、例えば、56%以上ならば、その時間帯の広告単価は基準料金の「+20%」となるように設定されている。
【0049】
このように、エレベータ利用者の1時間あたりの平均乗車率に応じて、ディスプレイ23で表示されるエレベータ広告の広告単価を変動させることによって、より実効的な広告単価の設定が可能とされている。
【0050】
これにより、エレベータ利用者が多ければ広告料の請求額は増加し、逆に、エレベータ利用者が少なければ広告料の請求額は減少する。したがって、乗りかごの利用状況に基づいて適正な広告単価を設定することが可能となり、広告料の費用対効果をより明確化できるようになる。
【0051】
次に、
図4に示すフローチャートを参照して、広告料の算出のための動作について説明する。
【0052】
まずは、EV制御盤30の制御装置31において、かご内カメラ18の映像データや荷重検知器7 の検知データに基づいて、エレベータ利用者の乗りかご15内への乗車が確認される(ステップST01)。
【0053】
乗りかご15へのエレベータ利用者の乗車が確認されない場合(ステップST01のNO)、乗車が確認されるまで待機する。
【0054】
そして、映像データまたは検知データの積載量の変化からエレベータ利用者の乗車が確認されると(ステップST01のYES )、乗りかご15の昇降動作に伴って、広告表示管理部35によりディスプレイ23の画面上にエレベータ広告が表示される(ステップST02)。
【0055】
こうして、映像データまたは検知データの積載量の変化からエレベータ利用者の全員の降車が確認されるまで、上記ステップST02のエレベータ広告の表示が継続される(ステップST03のNO)。
【0056】
なお、映像データまたは検知データの積載量の変化からエレベータ利用者の全員の降車が確認された場合(ステップST03のYES )、広告表示管理部35によるディスプレイ23でのエレベータ広告の表示が停止される(ステップST04)。
【0057】
一方、例えば1時間が経過するごとに(ステップST05のYES )、制御装置31内の認定部31a において、平均乗車率の認定が行われる(ステップST06)。
【0058】
認定された平均乗車率は、単位時間ごとに記憶部32に記憶される。そして、例えば24時になるのを待って(ステップST07のYES )、記憶部32に記憶された、その日の1日分の単位時間あたりの平均乗車率が、通信部36を介して、広告会社の広告サーバ40に送られる(ステップST08)。
【0059】
これにより、例えば
図5に示すように、広告サーバ40の広告料算出部41において、毎時の平均乗車率に基づいて、単位時間あたりの広告単価の算出が行われる(ステップST09-ST13)。
【0060】
ここで、EVが設置された商業ビルの営業時間を、例えば、開店時間が10時で、閉店時間を20時とした場合を例に具体的に説明する。
【0061】
例えば、13-14時および16-17時のように、単位時間あたりの平均乗車率(50%,45%)が基本設定値の設定範囲内であれば(ステップST09のYES )、広告単価として、基準料金(±0)が設定される(ステップST10)。
【0062】
例えば、10-12時、14-15時および17-18時のように、平均乗車率(80%,70%,75%)が基本設定値の設定範囲以上であれば(ステップST09のNO,ST11のYES )、広告単価として、基準料金の+20%が設定される(ステップST12)。
【0063】
例えば、12-13時、15-16時および18-20時のように、平均乗車率(20%,10%,20%,10%)が基本設定値の設定範囲以下であれば(ステップST11のNO)、広告単価として、基準料金の-10%が設定される(ステップST13)。
【0064】
こうして算出された毎時の広告単価は、日ごとに保存部42に保存される。そして、広告料算出部41において、保存部42に保存された毎時の広告単価に基づいて、その日の1日分の広告料(日額)が算出される(ステップST14のYES ,ST15)。
【0065】
また、広告料算出部41においては、1月が経過するのを待って、保存部42に保存された1月分の広告料(日額)に基づいて、例えば、その月の1月分の広告料(月額)の算出が行われる(ステップST16のYES ,ST17)。
【0066】
算出された1月分の広告料は、保存部42に保存されるとともに、例えば、広告主やEV管理者からの要求に応じて保存部42より読出され、通信部43を介して、広告主が所持する端末50やEV管理者に提供される。
【0067】
このようにして、1月分の広告料が広告主に提供されることにより、表示したエレベータ広告についての1月分の請求が行われる。
【0068】
上記したように、本実施形態によれば、乗りかご15の単位時間ごとの平均乗車率に基づいて適正な広告単価を設定でき、広告料の費用対効果をより明確化することが可能となる。
【0069】
即ち、単位時間あたりのエレベータ利用者数から推定される平均乗車率に応じて、エレベータ広告の広告単価を変動させるようにしている。これにより、広告単価を一律として、一定額の広告料を請求する場合よりも、より実効的な広告料の請求が可能となる。したがって、エレベータ利用者の増/減に基づいて広告料を適正化できるなど、エレベータ広告の費用対効果を、より明確化することが容易に可能となるものである。
【0070】
第2実施形態
この第2実施形態は、第1実施形態で示したエレベータシステムにおいて、パラメータを、乗りかご15の「単位時間あたりの着床数(かご停車数)」とし、これを制御装置31の認定部(停車数認定部)31a により認定するようにした場合の例である。
【0071】
なお、本実施形態においては、かご停車数を、例えば、非乗車(空)の乗りかご15が乗場呼びに応じた階床に到着した回数(乗場呼び数)と、かご呼びによって登録された階床に到着した回数(かご呼び数)と、の総和とした。また、乗場呼びの階床とかご呼びの階床とが一致する場合については、かご停車数を「2」とはカウントせず、「1」とカウントする。
【0072】
図6は、第2実施形態に係るエレベータシステムでの広告単価の算出に用いられるパラメータの基本設定値について示すものである。
【0073】
即ち、
図1に示したエレベータシステムにおいて、広告料算出部41での広告単価の算出に用いられるパラメータをかご停車数とする場合、例えば、EV制御盤30内に停車数カウント用のカウンタなどの計数手段が設けられる。または、制御装置31において、ソフト的にカウントする構成としても良い。
【0074】
そして、かご停車数をパラメータとする場合の基本設定値としては、例えば
図6に示すように、単位時間あたりのかご停車数が15-25回の設定範囲内の場合に、その時間帯の広告単価が「基準料金」となるように設定されている。また、この基準料金に対して、かご停車数が14回以下の場合には「-10%」の減額、かご停車数が26回以上の場合には「+20%」の増額となるように設定されている。
【0075】
その他の構成は、第1実施形態で示したエレベータシステムの場合と同様のため、ここでの詳しい説明は省略する。
【0076】
このように、乗りかご15の単位時間あたりの停車数に応じて、ディスプレイ23で表示されるエレベータ広告の広告単価を変動させるようにした場合も、より実効的な広告単価の設定が可能となり、広告料の費用対効果をより明確化できるようになる。
【0077】
第3実施形態
この第3実施形態は、第1実施形態で示したエレベータシステムにおいて、パラメータを、乗りかご15の「昇降方向の単位時間あたりの反転数(かご反転回数)」とし、これを制御装置31の認定部(反転数認定部)31a により認定するようにした場合の例である。
【0078】
なお、本実施形態においては、かご反転回数(1way1回)を、例えば、乗りかご15の進行方向が反転した回数とした。
【0079】
図7は、第3実施形態に係るエレベータシステムでの広告単価の算出に用いられるパラメータの基本設定値について示すものである。
【0080】
即ち、
図1に示したエレベータシステムにおいて、広告料算出部41での広告単価の算出に用いられるパラメータをかご反転回数とする場合、例えば、EV制御盤30内に反転回数カウント用のカウンタなどの計数手段が設けられる。または、制御装置31において、ソフト的に計数する構成としても良い。
【0081】
そして、かご反転回数をパラメータとする場合の基本設定値としては、例えば
図7に示すように、単位時間あたりのかご反転回数が8-12回の設定範囲内の場合に、その時間帯の広告単価が「基準料金」となるように設定されている。また、この基準料金に対して、かご反転回数が7回以下の場合には「-10%」の減額、かご反転回数が13回以上の場合には「+20%」の増額となるように設定されている。
【0082】
その他の構成は、第1実施形態で示したエレベータシステムの場合と同様のため、ここでの詳しい説明は省略する。
【0083】
このように、乗りかご15の単位時間あたりの反転回数に応じて、ディスプレイ23で表示されるエレベータ広告の広告単価を変動させるようにした場合も、より実効的な広告単価の設定が可能となり、広告料の費用対効果をより明確化できるようになる。
【0084】
他の実施形態
上記した第1~第3実施形態においては、単位時間ごとの平均乗車率、かご停車数、または、かご反転回数に応じて、広告単価を変動させるようにした場合を例に説明したが、これに限定されないことは勿論である。
【0085】
また、エレベータ広告の広告単価は、例えば、3時間、6時間、…、1日(24時間)などを単位として変動させることも可能である。
【0086】
また、平均乗車率、かご停車数、または、かご反転回数を、毎24時にEV制御盤30から広告サーバ40に送信する場合に限らず、例えば、1日に複数回送信するようにしても良いし、1週間に1回のペースで送信させることも可能である。
【0087】
また、広告単価や広告料などを広告会社の広告サーバ40内にて算出するようにした場合を例示したが、これに限らず、例えばEV制御盤30内にて算出するようにすることも可能である。
【0088】
特に、乗場呼び数について、短時間(例えば、10秒以内)に同一階床の乗場呼びボタンが複数回操作された際には、カウント数を「1」とするか、「複数」とするかは、任意に設定可能である。
【0089】
また、基準料金を増減する割合や基本設定値の設定範囲、および/または、パラメータの種類については、第1~第3実施形態に例示した場合に限らず、任意に設定可能である。
【0090】
また、いくつかのパラメータを組み合わせた結果に応じて、広告単価の算出を行うこととしても良い。
【0091】
また、複数のエレベータ装置が設置された施設の場合においては、号機ごとに広告単価の算出を行うようにしても良いし、1台のエレベータ装置で算出された広告単価を複数の号機のエレベータ装置で共用(均一化)するようにすることも可能である。
【0092】
また、かご操作盤パネル19の表示モニタ193 を用いて、エレベータ広告を表示させる構成とすることも可能である。
【0093】
さらには、エレベータ広告に限らず、例えば広告表示システムとして、監視カメラの映像から一般の利用者が認定された場合に、ビルなどの建屋(施設)内に設置されたディスプレイに広告を表示させるなど、各種の広告表示システムに適用可能である。
【0094】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、各実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。また、この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0095】
7 …荷重検知器(検知部)、15…乗りかご、18…かご内カメラ(検知部)、23…ディスプレイ(表示部)、30…EV制御盤、31…制御装置、31a …認定部(平均乗車率認定部、停車数認定部、反転数認定部)、32…記憶部、33…EV駆動部、34…EV信号部、35…広告表示管理部、40…広告サーバ、41…広告料算出部、42…保存部、351 …広告スケジュール管理部と、352 …広告データベース部と、353 …広告配信部。
【要約】
【課題】利用状況に基づいて適正な広告単価を設定でき、広告料の費用対効果をより明確化できるようにする。
【解決手段】複数の階床間を昇降運転される乗りかご15と、乗りかご15を駆動するEV駆動部33と、乗りかご15内に設けられ、エレベータ利用者にエレベータ広告を表示可能なディスプレイ23と、エレベータ利用者の乗りかご15内への乗車を検知する荷重検知器7 と、荷重検知器7 によって、エレベータ利用者の乗りかご15内への乗車が確認されたか否かに応じて、ディスプレイ23でのエレベータ広告の表示を管理する広告表示管理部35と、荷重検知器7 の検知出力に基づいて、エレベータ利用者による乗りかご15の単位時間あたりの平均乗車率を認定する制御装置31の認定部31a と、認定部31a によって認定された単位時間あたりの平均乗車率に基づいて、ディスプレイ23で表示されたエレベータ広告の料金単価を算出する広告サーバ40の広告料算出部41と、を備える。
【選択図】
図1