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特許7379658光コンピューティングチップ及びシステム、並びにデータ処理技術
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-06
(45)【発行日】2023-11-14
(54)【発明の名称】光コンピューティングチップ及びシステム、並びにデータ処理技術
(51)【国際特許分類】
   G02F 3/00 20060101AFI20231107BHJP
   G06N 3/067 20060101ALI20231107BHJP
   G06E 3/00 20060101ALI20231107BHJP
   G02F 1/01 20060101ALI20231107BHJP
【FI】
G02F3/00 502
G06N3/067
G06E3/00
G02F1/01 B
G02F1/01 D
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2022504691
(86)(22)【出願日】2020-07-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-29
(86)【国際出願番号】 CN2020103810
(87)【国際公開番号】W WO2021013221
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】201910673711.8
(32)【優先日】2019-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910750038.3
(32)【優先日】2019-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Huawei Administration Building, Bantian, Longgang District, Shenzhen, Guangdong 518129, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133569
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 進
(72)【発明者】
【氏名】何 建▲軍▼
(72)【発明者】
【氏名】郭 嘉
(72)【発明者】
【氏名】董 ▲曉▼文
【審査官】林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03578846(US,A)
【文献】特開2018-036486(JP,A)
【文献】F. T. S. YU et al.,“Mirror-array optical interconnected neural network”,Optics Letters,1991年10月15日,Vol. 16,No. 20,pp.1602-1604,DOI: 10.1364/OL.16.001602
【文献】Y. ZUO et al.,“All-optical neural network with nonlinear activation functions”,Optica,2019年08月29日,Vol. 6,No. 9,pp.1132-1137,DOI: 10.1364/OPTICA.6.001132
【文献】J. CHANG et al.,“Hybrid optical-electronic convolutional neural networks with optimized diffractive optics for image classification”,Scientific Reports,2018年08月17日,Vol. 8,No. 1,pp. 1-10,DOI: 10.1038/s41598-018-30619-y
【文献】R. W. COHN,“Fundamental properties of spatial light modulators for the approximate optical computation of Fourier transforms: a review”,Optical Engineering,2001年11月01日,Vol. 40,No. 11,pp.2452-2463,DOI: 10.1117/1.1409336
【文献】E. COTTLE et al.,“Optical Convolutional Neural Networks -- Combining Silicon Photonics and Fourier Optics for Computer Vision”,arXiv,2018年08月16日,pp.1-11,https://arxiv.org/abs/1808.03303
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
G02F 1/21-7/00
G06N 3/067
G06E 3/00
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の凹面鏡と、
前記第1の凹面鏡の対物焦点面上に配置された光源アレイと、
前記第1の凹面鏡の像焦点面上に配置された変調器アレイと
を備える、光コンピューティングチップであって、
前記光源アレイが、第1のデータに基づいて第1の光信号を生成するように構成され、
前記第1の凹面鏡が、前記第1の光信号に基づいて第1の反射光信号を出力するように構成され、
前記変調器アレイが、
前記第1の反射光信号を受信し、
前記第1の反射光信号に基づいて、前記変調器アレイ内の変調器の光透過率として表される第1のスペクトル平面分布データを取得する記録モードを有しかつ
前記第1のスペクトル平面分布データを前記変調器アレイ上へ変調する変調モードを有するように構成される、光コンピューティングチップ。
【請求項2】
前記光源アレイが、第2のデータに基づいて第2の光信号を生成するように更に構成され、
前記第1の凹面鏡が、前記第2の光信号に基づいて第2の反射光信号を出力するように更に構成され、
前記変調器アレイが、前記第1のスペクトル平面分布データ及び前記第2の反射光信号の第2のスペクトル平面分布データに対する乗算演算の結果を表す第3の光信号を取得するように更に構成される、請求項1に記載の光コンピューティングチップ。
【請求項3】
第2の凹面鏡及び検出器アレイを更に備え、
前記変調器アレイが、前記第2の凹面鏡の対物焦点面上に更に配置され、
前記検出器アレイが、前記第2の凹面鏡の像焦点面上に配置され、
前記第2の凹面鏡が、前記第3の光信号を受信し、前記第3の光信号に基づいて第3の反射光信号を出力するように構成され、
前記検出器アレイが、前記第3の反射光信号を検出するように構成され、
前記検出器アレイ上の前記第3の反射光信号の分布が、前記第1のデータと前記第2のデータとの畳み込み結果を示すために使用される、請求項2に記載の光コンピューティングチップ。
【請求項4】
前記変調器アレイが、複数の変調器を備え、前記第1の反射光信号に対する各変調器の透過率が、前記第1のスペクトル平面分布データ内の値を示すために使用される、請求項1に記載の光コンピューティングチップ。
【請求項5】
前記変調器アレイ内の変調器が、以下の構成要素、つまりドープシリコン導波路、電界吸収変調器、及び半導体光増幅器SOAのうちの少なくとも1つによって実装される、請求項1から3のいずれか一項に記載の光コンピューティングチップ。
【請求項6】
前記光源アレイが、複数の発光素子を備え、各発光素子が、インコヒーレント光を生成するように構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の光コンピューティングチップ。
【請求項7】
前記光源アレイ及び前記検出器アレイが、前記光コンピューティングチップの同じ側に配置される、請求項3に記載の光コンピューティングチップ。
【請求項8】
前記第1の凹面鏡及び前記第2の凹面鏡が、放物面凹面鏡である、請求項3に記載の光コンピューティングチップ。
【請求項9】
前記光源アレイが、複数の積層光源サブアレイを備え、前記変調器アレイが、複数の積層変調器サブアレイを備え、前記検出器アレイが、複数の積層検出器サブアレイを備える、請求項3または7に記載の光コンピューティングチップ。
【請求項10】
第1のデータを光コンピューティングチップに入力するように構成されたプロセッサと、
第1の凹面鏡、光源アレイ、及び変調器アレイを備える前記光コンピューティングチップであって、前記光源アレイが、前記第1の凹面鏡の対物焦点面上に配置され、前記変調器アレイが、前記第1の凹面鏡の像焦点面上に配置される、前記光コンピューティングチップと、
を備える光コンピューティングシステムであって、
前記光源アレイが、第1のデータに基づいて第1の光信号を生成するように構成され、
前記第1の凹面鏡が、前記第1の光信号に基づいて第1の反射光信号を出力するように構成され、
前記変調器アレイが、
前記第1の反射光信号を受信し、
前記第1の反射光信号に基づいて、前記変調器アレイ内の変調器の光透過率として表される第1のスペクトル平面分布データを取得する記録モードを有しかつ、
前記第1のスペクトル平面分布データを前記変調器アレイ上へ変調する変調モードを有するように構成される、光コンピューティングシステム。
【請求項11】
前記プロセッサ及び前記光コンピューティングチップの前記光源アレイに接続され、前記第1のデータに基づいて第1の駆動信号を前記光源アレイに印加するように構成された光源アレイ駆動回路と、
前記変調器アレイに接続され、前記第1の反射光信号に基づいて前記光コンピューティングチップによって取得された前記第1のスペクトル平面分布データをサンプリングし、前記第1のスペクトル平面分布データに基づいて第1の変調信号を前記光コンピューティングチップに印加するように構成された変調器アレイ駆動回路と、
を更に備え、
前記光源アレイが、前記第1の駆動信号に基づいて前記第1の光信号を生成するように特に構成され、
前記変調器アレイが、前記第1の変調信号に基づいて前記第1のスペクトル平面分布データを前記変調器アレイ上に変調するように特に構成される、請求項10に記載の光コンピューティングシステム。
【請求項12】
前記プロセッサが、第2のデータを送信するように更に構成され、
前記光源アレイ駆動回路が、前記第2のデータに基づいて第2の駆動信号を生成するように更に構成され、
前記光源アレイが、前記第2の駆動信号に基づいて、前記第2のデータに対応する第2の光信号を生成するように更に構成され、
前記第1の凹面鏡が、前記第2の光信号に基づいて第2の反射光信号を出力するように更に構成され、
前記変調器アレイが、前記第1のスペクトル平面分布データ及び前記第2の反射光信号の第2のスペクトル平面分布データに対する乗算演算の結果を表す第3の光信号を取得するように更に構成される、請求項11に記載の光コンピューティングシステム。
【請求項13】
前記光コンピューティングチップが、第2の凹面鏡及び検出器アレイを更に備え、前記変調器アレイが、前記第2の凹面鏡の対物焦点面上に更に配置され、前記検出器アレイが、前記第2の凹面鏡の像焦点面上に配置され、
前記第2の凹面鏡が、前記第3の光信号を受信し、前記第3の光信号に基づいて第3の反射光信号を出力するように構成され、
前記検出器アレイが、前記第3の反射光信号を検出するように構成され、前記検出器アレイ上の前記第3の反射光信号の分布が、前記第1のデータと前記第2のデータとの畳み込み結果を示すために使用される、請求項12に記載の光コンピューティングシステム。
【請求項14】
前記光コンピューティングチップの前記検出器アレイに接続された検出器アレイ駆動回路であって、
前記検出器アレイによって検出された前記第3の反射光信号を取り込み、
前記第3の反射光信号に対してアナログデジタル変換を実施して、前記第1のデータと前記第2のデータとの前記畳み込み結果を取得するように構成される検出器アレイ駆動回路を更に備える、請求項13に記載の光コンピューティングシステム。
【請求項15】
前記変調器アレイが、複数の変調器を備え、前記第1の反射光信号に対する各変調器の透過率が、前記第1のスペクトル平面分布データにおける値を示すために使用される、請求項10から14のいずれか一項に記載の光コンピューティングシステム。
【請求項16】
前記変調器アレイ内の変調器が、以下の構成要素、つまりドープシリコン導波路、電界吸収変調器、及び半導体光増幅器SOAのうちの少なくとも1つによって実装される、請求項10から15のいずれか一項に記載の光コンピューティングシステム。
【請求項17】
前記光源アレイが、複数の発光素子を備え、各発光素子が、インコヒーレント光を生成するように構成される、請求項10から16のいずれか一項に記載の光コンピューティングシステム。
【請求項18】
前記光源アレイ及び前記検出器アレイが、前記光コンピューティングチップの同じ側に配置される、請求項13または14に記載の光コンピューティングシステム。
【請求項19】
前記第1の凹面鏡及び前記第2の凹面鏡が、放物面凹面鏡である、請求項13に記載の光コンピューティングシステム。
【請求項20】
前記光源アレイが、複数の積層光源サブアレイを備え、前記変調器アレイが、複数の積層変調器サブアレイを備え、前記検出器アレイが、複数の積層検出器サブアレイを備える、請求項13、14、または18に記載の光コンピューティングシステム。
【請求項21】
データ処理方法であって、前記データ処理方法が光コンピューティングチップによって実行され、前記光コンピューティングチップが、第1の凹面鏡、光源アレイ、及び変調器アレイを備え、前記光源アレイが、前記第1の凹面鏡の対物焦点面上に配置され、前記変調器アレイが、前記第1の凹面鏡の像焦点面上に配置され、前記データ処理方法が、
前記光源アレイによって、第1のデータに基づいて第1の光信号を生成するステップと、
前記第1の凹面鏡によって、前記第1の光信号に基づいて第1の反射光信号を出力するステップと、
記録モードにおける前記変調器アレイによって、前記第1の反射光信号に基づいて前記変調器アレイ内の変調器の光透過率として表される第1のスペクトル平面分布データを取得して、かつ、変調モードにおける前記変調器アレイによって、前記第1のスペクトル平面分布データを前記変調器アレイ上に変調するステップと、
を含む、データ処理方法。
【請求項22】
前記光コンピューティングチップが、第2の凹面鏡及び検出器アレイを更に備え、前記変調器アレイが、前記第2の凹面鏡の対物焦点面上に更に配置され、前記検出器アレイが、前記第2の凹面鏡の像焦点面上に配置され、前記データ処理方法が、
前記光源アレイによって、第2のデータに基づいて第2の光信号を生成するステップと、
前記第1の凹面鏡によって、前記第2の光信号に基づいて第2の反射光信号を出力するステップと、
前記変調器アレイによって、前記第1のスペクトル平面分布データ及び前記第2の反射光信号の第2のスペクトル平面分布データに対する乗算演算の結果を表す第3の光信号を取得するステップと、
前記第2の凹面鏡によって、前記第3の光信号に基づいて第3の反射光信号を出力するステップと、
前記検出器アレイによって、前記第3の反射光信号を検出するステップであって、前記検出器アレイ上の前記第3の反射光信号の分布が、前記第1のデータと前記第2のデータとの畳み込み結果を示すために使用される、ステップと、
を更に含む、請求項21に記載のデータ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、コンピュータ技術の分野に関し、特に、光コンピューティングチップ及びシステム、並びにデータ処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットデータの増加及び人工知能(Artificial Intelligence、AI)分野の急速な発展により、ディープラーニング(deep learning、DL)は、画像認識、音声認識、自然言語処理などの分野に広く適用されている。ディープラーニングは、人間の脳を模倣するように構築されたニューラルネットワークであり、従来の浅い学習よりも良好な認識効果を得ることが可能である。ディープ・ラーニング・アルゴリズムは、複雑で、膨大な計算量を有するが、従来の中央処理装置は、大規模な計算を処理するには非効率であるため、AIの高速化のために使用されるハードウェアの研究は、注目の研究トピックに徐々になっている。
【0003】
従来のマイクロ電子チップと比較して、光コンピューティングは、一部の用途において大幅に性能が改善されている。例えば、光コンピューティングは、ニューラルネットワークの畳み込み計算における計算速度を大幅に改善する。アナログ光コンピューティングは、光コンピューティングの一種である。アナログ光コンピューティングは、対応する数学的プロセスを完了するために、光学構成要素の物理的特性を使用する動作である。現在、アナログ光コンピューティングは、古典的な4Fシステムに主に基づいており、対応する計算を完了するために、レンズのフーリエ変換効果に基づいて空間周波数領域で入力データを処理するために、2つの変調器が使用される。既存の4Fシステムで使用される凸レンズは、3次元の構成要素であるため、チップ上に集積され得ない。更に、既存の4Fシステムでは、フーリエ変換に基づいてデータのスペクトルデータを最初に計算し、次に変調器でスペクトルデータを変調するために、追加のコンピューティングデバイスが使用される必要がある。実装プロセスは比較的複雑である。
【発明の概要】
【0004】
本出願は、チップ上で光コンピューティングを実施し、データ計算効率を改善するための光コンピューティングチップ及びシステム、並びにデータ処理技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様によれば、本発明の一実施形態は、第1の凹面鏡と、光源アレイと、変調器アレイと、を含む光コンピューティングチップを提供する。光源アレイは、第1の凹面鏡の対物焦点面上に配置され、変調器アレイは、第1の凹面鏡の像焦点面上に配置される。光源アレイは、第1のデータに基づいて第1の光信号を生成するように構成される。第1の凹面鏡は、第1の光信号に基づいて第1の反射光信号を出力するように構成される。変調器アレイは、第1の反射光信号を受信し、第1の反射光信号に基づいて第1のスペクトル平面分布データを取得し、第1のスペクトル平面分布データを変調器アレイ上に変調するように構成される。
【0006】
本発明のこの実施形態における光コンピューティングチップは凹面鏡を使用し、凹面鏡は1次元の構成要素であるため、凹面鏡をチップ上に製造して一体化することはより容易である。したがって、チップ上で光コンピューティングを実装することが可能である。加えて、光コンピューティングチップ内の変調器は入射光の強度に基づいて光電流を生成することが可能であるので、第1の反射光信号の第1のスペクトル平面分布データは、取得されることが可能であり、スペクトル平面分布データは、光コンピューティングを実装するプロセスにおいて直接取得されることが可能であり、取得されたスペクトル平面分布データは変調器アレイ上で変調される。このように、追加のコンピューティングデバイスが、スペクトル平面分布データの取得を支援するために使用される必要はない。更に、計算効率が光学計算プロセスにおいて改善され、実装は簡単で効率的である。
【0007】
第1の態様を参照すると、別の可能な実装形態では、光源アレイは、第2のデータに基づいて第2の光信号を生成するように更に構成される。第1の凹面鏡は、第2の光信号に基づいて、第2の反射光信号を出力するように更に構成される。変調器アレイは、第2の反射光信号及び第1のスペクトル平面分布データに基づいて、第3の光信号を取得するように更に構成される。
【0008】
更に別の可能な実装形態では、光コンピューティングチップは、第2の凹面鏡及び検出器アレイを更に含む。変調器アレイは、第2の凹面鏡の対物焦点面上に更に配置される。検出器アレイは、第2の凹面鏡の像焦点面上に配置される。第2の凹面鏡は、第3の光信号を受信し、第3の光信号に基づいて第3の反射光信号を出力するように構成される。検出器アレイは、第3の反射光信号を検出するように構成され、検出器アレイ上の第3の反射光信号の分布は、第1のデータと第2のデータとの畳み込み結果を示すために使用される。
【0009】
本発明のこの実施形態における光コンピューティングチップによれば、使用される変調器アレイは、反射光信号に基づいて光スペクトル平面分布データを直接取得することが可能であり、第1のデータを変調器アレイ上に変調することが可能であるので、第1のデータと第2のデータとの畳み込み計算を実施するプロセスにおいて、追加のコンピューティングデバイスが、第1のデータのスペクトル平面分布データの取得を支援するために必要とされない。したがって、計算効率が向上され得る。
【0010】
更に別の可能な実装形態では、変調器アレイは複数の変調器を含み、第1の反射光信号に対する各変調器の透過率は、第1のスペクトル平面分布データ内の値を示すために使用される。
【0011】
更に別の可能な実装形態では、変調器は、以下の構成要素、つまり、ドープシリコン導波路と、電界吸収変調器と、半導体光増幅器SOAとのうちの少なくとも1つによって実装される。
【0012】
更に別の可能な実装形態では、光源アレイは複数の発光素子を含み、各発光素子は、インコヒーレント光を生成するように構成される。本発明のこの実施形態で使用される光源アレイによって放出される光はインコヒーレント光であり、データ変調機能も考慮され得るため、光コンピューティングチップのI/O速度は、既存の空間光コンピューティングシステムのI/O速度と比較して大幅に改善される。
【0013】
更に別の可能な実装形態では、光源アレイ及び検出器アレイは、チップの同じ側に配置される。この実装形態では、光コンピューティングチップの構造がコンパクト化され、チップサイズが、小型化され得る。
【0014】
更に別の可能な実装形態では、第1の凹面鏡及び第2の凹面鏡は放物面凹面鏡である。
【0015】
更に別の可能な実装形態では、光源アレイは、複数の積層光源サブアレイを含み、変調器アレイは、複数の積層変調器サブアレイを含み、検出器アレイは、複数の積層検出器サブアレイを含む。この実装形態では、畳み込み計算は、複数の行及び複数の列のデータに対して同時に実施され得る。
【0016】
第2の態様によれば、本出願は光コンピューティングシステムを提供し、光コンピューティングシステムは、プロセッサと、第1の態様又は第1の態様の任意の可能な実装形態による光コンピューティングチップと、を含む。プロセッサは、第1のデータを光コンピューティングチップに入力するように構成される。
【0017】
可能な実装形態では、光コンピューティングシステムは、光源アレイ駆動回路及び変調器アレイ駆動回路を更に含む。光源アレイ駆動回路は、プロセッサ、及び光コンピューティングチップの光源アレイに接続され、第1のデータに基づいて、第1の駆動信号を光源アレイに印加するように構成される。変調器アレイ駆動回路は、変調器アレイに接続され、変調器アレイ駆動回路は、光コンピューティングチップによって得られた第1のスペクトル平面分布データをサンプリングし、第1のスペクトル平面分布データに基づいて、第1の変調信号を光コンピューティングチップに印加するように構成される。この場合、光源アレイは、第1の駆動信号に基づいて、第1の光信号を生成するように特に構成される。変調器アレイは、具体的には、第1の変調信号に基づいて、第1のスペクトル平面分布データを変調器アレイ上に変調するように構成される。
【0018】
可能な実装形態では、光コンピューティングシステムは、検出器アレイ駆動回路を更に含む。検出器アレイ駆動回路は、光コンピューティングチップの検出器アレイに接続される。検出器アレイ駆動回路は、検出器アレイによって検出された第3の反射光信号を取り込み、第3の反射光信号に対してアナログデジタル変換を実施して、第1のデータと第2のデータとの畳み込み結果を取得するように構成される。
【0019】
第3の態様によれば、本出願は、第1の態様又は第1の態様の任意の実装形態による光コンピューティングチップによって実施されるデータ処理方法を更に提供する。本方法によれば、光コンピューティングチップ内の光源アレイが第1のデータに基づいて第1の光信号を生成した後、光コンピューティングチップ内の第1の凹面鏡は、第1の光信号に基づいて第1の反射光信号を出力し、光コンピューティングチップ内の変調器アレイは、第1の反射光信号に基づいて第1のスペクトル平面分布データを取得し、更に第1のスペクトル平面分布データを変調器アレイ上に変調する。
【0020】
可能な実装形態では、光源アレイは、第2のデータに基づいて第2の光信号を更に生成し得る。第1の凹面鏡が第2の光信号に基づいて第2の反射光信号を出力した後、変調器アレイは、第2の反射光信号及び第1のスペクトル平面分布データに基づいて、第3の光信号を取得する。光コンピューティングチップ内の第2の凹面鏡は、第3の光信号に基づいて、第3の反射光信号を出力する。光コンピューティングチップ内の検出器アレイは、第3の反射光信号を検出することが可能であり、検出器アレイ上の第3の反射光信号の分布は、第1のデータと第2のデータとの畳み込み結果を示すために使用される。
【0021】
第4の態様によれば、本出願は、プログラムコードを含むコンピュータプログラム製品を更に提供し、プログラムコードに含まれる命令は、第3の態様又は第3の態様の任意の可能な実装形態によるデータ処理方法を実施するために、コンピュータによって実行される。
【0022】
第5の態様によれば、本出願はコンピュータ可読記憶媒体を更に提供し、コンピュータ可読記憶媒体は、プログラムコードを記憶するように構成され、プログラムコードに含まれる命令は、第3の態様又は第3の態様の任意の可能な実装形態によるデータ処理方法を実施するために、コンピュータによって実行される。
【0023】
本発明の実施形態における、あるいは従来技術における技術的解決策を更に明確に説明するために、以下、実施形態を説明するために必要とされる添付図面について簡単に記載する。明らかに、以下の説明における添付の図面は、本発明の一部の実施形態を単に示すものにすぎない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態による、4F光コンピューティングシステムを使用することによって実施される畳み込み計算の概略図である。
図2】本発明の一実施形態による、光コンピューティングチップの概略構造図である。
図3】本発明の一実施形態による、光源アレイの概略構造図である。
図4】本発明の一実施形態による、球面凹面鏡の光路の概略図である。
図5】本発明の一実施形態による、光コンピューティングチップを使用することによって、データの畳み込み計算を実施する方法のフローチャートである。
図6】本発明の一実施形態による、別の光コンピューティングチップの概略構造図である。
図7】本発明の一実施形態による、別の光コンピューティングチップの概略構造図である。
図8】本発明の一実施形態による、光コンピューティングシステムの概略構成図である。
図9】本発明の一実施形態による、光源アレイ駆動回路の概略構成図である。
図10】本発明の一実施形態による、変調器アレイ駆動回路の概略構成図である。
図11】本発明の一実施形態による、検出器アレイ駆動回路の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
当業者に本発明の技術的解決策をよりよく理解してもらうために、以下では、本発明の実施形態の添付図面を参照しながら本発明の実施形態の技術的解決策を明確に説明する。説明されている実施形態が本発明の実施形態の一部にすぎず、全部ではないことは明らかである。
【0026】
ニューラルネットワーク(neural network、NN)又はニューラル・ライク・ネットワークと呼ばれる人工ニューラルネットワーク(artificial neural network、ANN)は、機械学習及び認知科学の分野において、生物学的ニューラルネットワーク(動物の中枢神経系、特に脳)の構造及び機能を模倣した数学モデル又は計算モデルであり、機能の推定又は近似を実施するために使用される。人工ニューラルネットワークは、畳み込みニューラルネットワーク(convolutional neural network、CNN)、ディープ・ニューラル・ネットワーク(deep neural network、DNN)、多層パーセプトロン(multilayer perceptron、MLP)などのニューラルネットワークを含み得る。ニューラル・ネットワーク・システムのアルゴリズムは複雑であり、計算量は膨大である。したがって、非常に高い要件が、データ計算効率に対して課される。計算効率を改善するために、対応する数学的演算プロセスを完了するために光学構成要素の物理的特性を使用する光コンピューティングが適用される。
【0027】
以下では、まず、一例として図1に示す4F光コンピューティングシステム100を使用して、光コンピューティングシステムを使用することによって、ニューラル・ネットワーク・システムで畳み込み計算を実施するプロセスを簡単に説明する。説明を容易にするために、本発明の一実施形態では、4F光コンピューティングシステムは、4Fシステムと呼ばれることもある。4Fシステムは、2つの凸レンズと、2つの光変調器と、1つの検出器と、を含むシステムである。図1に示すように、第1の変調器102は、第1の凸レンズ104の物体焦点に配置される。第2の変調器106は、第1の凸レンズ104の像焦点に配置され、第2の凸レンズ108の物体焦点に配置される。第1の凸レンズ104と第2の凸レンズ108との間の間隔は、2つの凸レンズ(104及び108)の焦点距離の和である。検出器110が、第2の凸レンズ108の像焦点に配置され、全システムの長さは焦点距離の4倍である。図1に示す4FシステムがデータA及びデータBに対してニューラル・ネットワーク・システムの畳み込み計算を実施する例を使用することによって、以下では、図1の4Fシステムにおいて光コンピューティングを実現する原理を説明する。
【0028】
図1に示すように、データAとデータBとの間の畳み込み計算を実施するプロセスでは、まず、データAは、第1の変調器102上で変調される必要があり、データBのフーリエスペクトルは、第2の変調器106上で変調される必要がある。レーザ(laser)101によって放出されたレーザビームが第1の変調器102を通過した後、第1の変調器102を通過した光信号は、データAに基づいて生成された光信号である。フーリエ変換が第1の凸レンズ104を通過した光信号に対して実施された後、空間周波数領域像が第2の変調器106に提示され、これにより、データAと、第2の変調器106に予め変調された畳み込みデータBとの間の乗算演算が完了される。逆フーリエ変換が、第2の凸レンズ108を介して第2の変調器106によって出力される信号に実施される。最後に、検出器110は、データAとデータBとの畳み込み結果Cを取得するために、第2の凸レンズ108によって出力された光信号の光強度を検出する。畳み込み計算プロセス全体において、第2の変調器106へのデータBの変調には、余分な時間が必要であり、他の計算プロセスは時間を消費しないことが、図1に示された4Fシステムにおける畳み込み計算を実施するプロセスから理解される。そのため、計算速度が極めて高速である。更に、空間光変調器は2次元の構成要素であるため、システムのI/O同時性が高く、システム全体の構成要素の量は少なく、結果は比較的単純である。
【0029】
しかしながら、図1に示す4Fシステムで使用される凸レンズは、3次元の構成要素であり、2次元平面上に統合され得ない。したがって、図1に示す4Fシステムは、チップ上に統合され得ない。更に、図1に示す4Fシステムが単一の光源を使用し、コヒーレント光を放出するので、2つの変調器が計算プロセスには必要であり、これにより、2つの計算対象データが、計算プロセスにおいて2つの変調器上にそれぞれ変調される。また、既存の4Fシステムの変調器が、光信号に基づいて光電流を生成できず、スペクトル平面分布データを記録する機能を有していないため、2つの変調器が計算処理において必要とされる。加えて、フーリエ変換に基づいてデータBのスペクトルデータを最初に計算し、次いでデータBのスペクトルデータを第2の変調器106上に変調するために、追加の計算デバイスが使用される必要がある。実装プロセスは比較的複雑である。
【0030】
図2は、本発明の一実施形態による光コンピューティングチップの概略構造図である。図2は、オンチップ光コンピューティングシステムを示している。図2に示すように、光コンピューティングチップ200は、光源アレイ202と、変調器アレイ204と、検出器アレイ206と、第1の凹面鏡208と、第2の凹面鏡210と、を含み得る。光源アレイ202は、第1の凹面鏡208の対物焦点面上に配置される。変調器アレイ204は、第1の凹面鏡208の像焦点面上に配置され、変調器アレイ204は、第2の凹面鏡210の対物焦点面上にも配置される。検出器アレイ206は、第2の凹面鏡210の像焦点面上に配置される。
【0031】
光源アレイ202は、データを変調して、送信するように構成され、光コンピューティングチップ200のデータ入力ユニットとして使用される。光源アレイ202は、入力データに基づいて様々な光強度の複数の光信号を生成し得る。第1の凹面鏡208は、光源アレイ202によって送信されたデータの光信号に対して標準フーリエ変換を実施するように構成される。変調器アレイ204は、2つの動作モード、つまり記録モード及び変調モードを有する。記録モードは、光源アレイ202によって送信されたデータの光信号が第1の凹面鏡208を通過した後に提示されるスペクトル平面上の像を取得するために使用される。スペクトル平面上にあり、光源アレイ202によって送信されたデータの光信号の像を、変調器アレイ204上に変調するために、変調モードが使用される。第2の凹面鏡210は、変調器アレイ204を通過する光信号に対して標準逆フーリエ変換を実施するように構成される。検出器アレイ206は、光強度信号を検出するように構成され、光コンピューティングチップ200の結果出力ユニットとして使用される。以下では、光コンピューティングチップ200内の各構成要素の具体的な実装形態について詳細に説明する。
【0032】
実際の用途では、光源アレイ202は、複数の発光素子302を含んでもよく、複数の発光素子は直線に沿って配置されてもよい。各発光素子によって放出される光の強度は変調されてもよい。直線に沿った光源アレイの光度の分布は、光コンピューティングチップに入力される必要があるデータに対応する。図3に示すように、光源アレイ202は、直線に沿って配置された複数の発光素子302を含み得る。発光素子302は、電圧の作用下でインコヒーレント光を生成するように構成される。発光素子302によって放出される光の強度は、電圧の変化に伴って変化し得る。発光素子302によって放出される光は変調されてもよい。場合によっては、光源アレイ202は、半導体発光ダイオード(LED)アレイによって実装されてもよい。この場合、発光素子302は、LEDであってもよい。各LEDは、発散角の大きなインコヒーレント光を放出することが可能であり、その光度は注入電圧の変化に伴って変化し、その結果、変調が実施され得る。LEDが信号入力源として使用される場合、LEDによって放出される光の振幅は、計算対象データを表し得る。計算対象データf(x)のセットについて、k番目のLEDの光振幅は、以下のように設定される。
(x)=f(x
【0033】
LEDは互いに独立しているので、発光光源は複数の光源の重ね合わせと考えられ得る。単一のLEDの場合、LEDによって放出される光の光場は、ほぼガウス関数であり得る。最後に、物体平面上で光源アレイ202によって放出された光の光強度I(x)は、すべてのLED光源の重ね合わせの結果であり、すなわち、
【数1】
、ここで、
xは、データベクトルの計算を示すために使用され、nは、光源アレイ202上のLEDの総数であり、kの値は、1~nの範囲であり、E(x)は、k番目のLEDによって放出される光信号の光振幅を示すために使用される。
【0034】
別の場合には、光源アレイ202は、レーザアレイを使用することによって実装されてもよい。この場合、発光素子302は、レーザであってもよい。発散角を有するレンズが、各レーザの前方に配置され、これにより、各レーザは、大きな発散角の光を放出し得る。また、光強度の変調は、レーザの前方に、可変の透過率の材料を追加することによっても実現され得る。実際の用途では、発光素子としてレーザを使用することは、発光素子としてLEDを使用する効果と同等であり得るが、実装プロセスは比較的複雑であることが理解されよう。
【0035】
図1の単一のレーザ放出コヒーレント光と比較して、本発明のこの実施形態における光源アレイ202は、複数の光源を使用し、インコヒーレント光を放出することに留意されたい。光源アレイ内の各光源の強度が変更され得るため、追加の変調器を使用することなく、様々な光強度の複数の光信号は、データ内の様々な値に基づいて放出されることが可能であり、光信号生成速度はより速いものとなる。
【0036】
変調器アレイ204は、2つの動作モード、つまり、記録モード及び変調モードを有する。記録モードは、光源アレイ202によって送信されたデータの光信号が第1の凹面鏡208を通過した後に得られるスペクトル平面上の像を取得するために使用される。スペクトル平面上にあり、光源アレイ202によって送信されたデータの光信号の像を、変調器アレイ204上に変調するために、変調モードが使用される。変調器アレイ204は、複数の変調器を含み得る。例えば、複数の変調器が変調器アレイ204を得るために、直線に沿って配置されてもよい。本発明のこの実施形態では、変調器アレイ204内の各変調器は、受光した入射光の強度を記録及び変調し得る。入射光強度の記録及び変調を実現するために、変調器は、ドープシリコン導波路、電界吸収変調器、半導体光増幅器(semiconductor optical amplifier、SOA)などの異なる原理に基づいた構造を使用することによって実装されてもよい。
【0037】
例えば、SOAが変調器として使用される場合、SOAの入射光電流の大きさを検出することによって、入射光強度が記録されてもよいまた、SOAを通過する光信号の強度は、光の透過率を変化させることによって、変化されてもよい。実際の用途では、SOAは、半導体量子井戸材料で作られてもよい。SOAの光透過率は様々な電圧によって変化され得るので、SOAの光透過率は、電圧制御により、0と1との間で変化してもよい。具体的には、SOAを通過する電圧が逆バイアス電圧である状態では、光電流が、入射光に基づいてSOAにおいて発生し、これにより、光強度分布は、光電流の大きさを検出することによって求められ得る。本発明では、このように、変調器アレイ上の光強度分布を検出することによって、フーリエ変換が第1の凹面鏡208の物体平面信号上で実施された後のスペクトル分布データは、直接取得され得る。これにより、変調器の記録機能が実現される。注入電圧が変化すると、SOAの入射光透過率も変化する。本発明のこの実施形態では、光空間スペクトル平面データもまた、SOAの入射光透過率の変化を使用することによって、変調され得る。例えば、異なる電圧(変調信号とも呼ばれ得る)が、取得された空間スペクトル平面データ内の値に基づいて、対応する変調器に入力されることが可能であり、変調器アレイ内の1つの変調器の光透過率は、スペクトル平面データ内の値を反映し得る。したがって、このようにして、スペクトル平面データは、変調器アレイ上で変調され、変調器アレイの変調機能を実現し得る。
【0038】
実際の用途では、順方向電圧の作用下のSOAは、光強度を記録する機能を実装し、逆方向バイアス電圧の作用下のSOAは、光強度を変調する機能も実装し得ることが理解されよう。本発明のこの実施形態では、変調器アレイ204が2つの機能、つまり記録及び変調を実施し得る限り、変調器アレイ204の材料及び動作電圧は特に限定されない。言い換えれば、本発明のこの実施形態では、変調器アレイ204は、光強度の記録を実施するために、入射光を受光した後に、光電流を生成する必要があり、これにより、入射光の光強度分布は、光電流の大きさを検出することによって求められる。また、変調器アレイ204は、印加電圧の変化に応じて光透過率を変化させ、光強度を変調し得る。
【0039】
検出器アレイ206は、入射光の光強度を検出するように構成され、光コンピューティングチップ200の結果出力ユニットとして使用される。実際の用途では、検出器アレイ206は、半導体フォトダイオード(photodiode、PD)アレイ、光導電検出器アレイ(例えば、フォトレジストアレイ)などを使用することによって、実装されてもよい。
【0040】
上述したように、第1の凹面鏡208は、光源アレイ202によって送信されたデータの光信号に対して標準フーリエ変換を実施するように構成される。第2の凹面鏡210は、変調器アレイ204を通過する光信号に対して標準逆フーリエ変換を実施するように構成される。当業者は、従来の4Fシステムでは、フーリエ変換が凸レンズを使用することによって実施されることを知っている。本発明のこの実施形態で提供される光コンピューティングチップでは、凹面反射鏡は、フーリエ変換及び逆フーリエ変換を実施するために使用される。以下では、凹面鏡によるフーリエ変換及び逆フーリエ変換を実現する原理について簡単に説明する。
【0041】
図4は、本発明の一実施形態による球面反射凹面鏡の光路の概略図である。反射レンズの場合、入射光が反射された後に生じる位相遅延は、反射鏡の形状によって基本的に引き起こされることを、当業者は知っているであろう。図に示すように、凹面鏡が球面である場合、凹面鏡の反射面の式は以下であり、
【数2】
、ここで、
Rは円の半径である。光軸に垂直な入射光について、光軸に沿って伝播する光との光路差は、以下となる。
【数3】
【0042】
近軸光について、R>>x,yと仮定すると、以下となる。
【数4】
【0043】
球面反射後の点(x、y)で発生する全位相遅延は、以下のように表され得る。
【数5】
【0044】
このように、凹面鏡によって反射後に生じる位相反射機能は、凸レンズの位相透過機能と同じ形態を有し、すなわち、以下となる。
【数6】
【0045】
したがって、凹面反射鏡は、入射光に対してもフーリエ変換を実施することが可能であり、対応する焦点距離はR/2である。
【0046】
実際の用途では、チップのスペースが限られているため、光源アレイ202に対する球面凹面鏡のサイズは近軸光の要件を満たすことができず、比較的大きな誤差がフーリエ変換の結果に生じられる。本発明のこの実施形態では、計算誤差を低減するために、放物面凹面反射鏡は、球面凹面反射鏡を置き換えるために使用され得る。放物面反射面の光路の概略図については、図4に示す球面凹面反射鏡の光路の概略図を参照されたい。ここでは詳細は再び説明されない。
【0047】
放物面凹面反射鏡が使用される場合、y軸は光軸、pは、放物面焦点に関する定数、Zは、放物面頂点の座標である。放物線関数は、以下のように設定される。
【数7】
【0048】
光軸に平行な入射光について、光の位相変化関数は、上記の球面鏡と同じ解析プロセスを実施することによって求められ、位相変化関数は、以下である。
【数8】
【0049】
したがって、放物面凹面反射鏡も凸レンズと同様の機能を有し、入射光のフーリエ変換を実施することが可能であり、放物面凹面反射鏡の対応する焦点距離はp/2である。実際の用途では、放物面凹面反射鏡の放物面のサイズは、凹面鏡のサイズに対する光源のサイズの比に基づいて決定され得る。
【0050】
以上、本発明のこの実施形態において、フーリエ変換を実施するために凹面鏡を使用する原理を簡単に説明した。本発明は、放物面凹面鏡を用いることに限定されないことに留意されたい。場合によっては、光源アレイ202によって放出された光が球面凹面鏡の近軸光に対する要件を満し得る場合、球面凹面鏡もまた使用されてもよい。
【0051】
実際の用途では、チップを製造するプロセスにおいて、第1の凹面鏡208及び第2の凹面鏡210の両方の反射面は、ディープ・エッチング・プロセスを使用することによって空気反射面を形成し得る。損失を低減するために、端面はまた、高反射膜でめっきされてもよい。エッチングによって反射面を形成する別の利点は、任意の面が正確に画定され得ることであり、これにより、前述の放物面凹面鏡は、正確なフーリエ変換効果を達成するために製造され得る。
【0052】
図5を参照して、図2に示す光コンピューティングチップによって実施されるデータ処理手順を以下に詳細に説明する。図5は、本発明の一実施形態による、光コンピューティングチップを使用することによって、データの畳み込み計算を実施する方法のフローチャートである。以下では、コンピューティングチップが畳み込み計算をどのように実施するかを説明するために、第1のデータ及び第2のデータに対して畳み込み計算が実施される例を使用する。第1のデータ及び第2のデータの両方が複数の実数を含み得ることが理解されよう。図5に示すように、本方法は以下のステップを含む。
【0053】
ステップ502において、光源アレイ202は、第1のデータに基づいて、第1の光信号を生成する。上述したように、光源アレイ202内の発光素子302は、電圧の変化に基づいて異なる光強度の光信号を生成し得る。このステップでは、第1のデータ内の値に基づいて、様々な大きさの電圧が、光源アレイ202内の様々な発光素子302に入力され、これにより、光源アレイ202内の発光素子302は、第1の光信号を取得するために、様々な値に基づいて、様々な光強度のインコヒーレント光を放出する。本発明のこの実施形態では、第1の光信号は、光源アレイ202内の様々な発光素子302によって放出されたインコヒーレント光を含む。
【0054】
ステップ504において、第1の凹面鏡208は、第1の光信号に基づいて、第1の反射光信号を出力する。上述したように、本発明のこの実施形態では、光源アレイ202は、第1の凹面鏡208の物体平面上の焦点に配置され、第1の凹面鏡208は、光源アレイ202によって放出された近軸光を受光することができ、第1の光信号が第1の凹面鏡208によって反射された後に、第1の反射光信号が出力される。
【0055】
ステップ506において、変調器アレイ204は、第1の反射光信号に基づいて、第1のスペクトル平面分布データを取得する。このステップでは、変調器アレイ204は記録モードで動作する必要がある。上述したように、変調器アレイ204内の変調器は、入射光を受光すると、変調器が光電流を生成し得る材料で作られる。したがって、変調器アレイ204が第1の反射光信号を受信した後、変調器は、変調器アレイ204に電圧を印加することなく、受信した第1の反射光信号に基づいて光電流を生成する。この場合、変調器において光電流強度を検出することによって、第1の反射光信号は電気的形態で記録されることが可能であり、これにより、第1の反射光信号の光空間スペクトル平面分布データが得られる。本発明のこの実施形態では、第1の反射光信号のスペクトル平面分布データは、第1のスペクトル平面分布データとも呼ばれ得る。
【0056】
ステップ508において、変調器アレイ204は、第1のスペクトル平面分布データを変調器アレイ上に変調する。このステップでは、変調器アレイ204は変調モードで動作する必要がある。具体的には、変調器アレイ204内の変調器によって記録された様々なデータに基づいて、様々な電圧が変調器に印加され、ステップ506で得られた第1の反射光信号のスペクトル平面分布データは、変調器アレイ204内の変調器の透過率として変調され、第1のスペクトル平面分布データが変調器上に表される。変調器アレイ204内の様々な変調器に様々な電圧が印加されるように、様々な電圧が様々なデータに印加されることが理解されよう。
【0057】
ステップ510において、光源アレイ202は、第2のデータに基づいて、第2の光信号を生成する。本発明のこの実施形態では、ステップ502からステップ508を実施することによって、第1のデータが変調器アレイ204上に記録及び変調された後、光源アレイ202は、第2のデータに基づいて、第2の光信号を生成し得る。具体的には、第2のデータ内の値に基づいて、様々な大きさの電圧が、光源アレイ202内の様々な発光素子302に入力されることが可能であり、これにより、光源アレイ202内の発光素子302は、第2の光信号を取得するために、様々な値に基づいて、様々な光強度のインコヒーレント光を放出する。
【0058】
ステップ512において、第1の凹面鏡208は、第2の光信号に基づいて、第2の反射光信号を出力する。ステップ514において、変調器アレイ204は、第2の反射光信号及び記録された第1のスペクトル平面分布データに基づいて、第3の光信号を取得する。上述したように、第1のデータに基づいて取得された第1の反射光信号の第1のスペクトル平面分布データが、変調器アレイ204上に変調されているので、第1のスペクトル平面分布データは、変調器アレイ204内の変調器の光透過率として表される。変調器アレイ204が第2の反射光信号を受信すると、第2の反射光信号が変調器アレイ204内の変調器を通過した後、第3の光信号は、変調器アレイ204上に変調された第1のスペクトル平面分布データと共に、第2の反射光信号に基づいて取得され得る。このようにして、変調器アレイ204は、第2の反射光信号のスペクトル平面分布データ、及び第1の反射光信号のスペクトル平面分布データに対する光空間スペクトル平面乗算演算を完了する。言い換えれば、第3の光信号は、第1の反射光信号及び第2の反射光信号が変調器アレイ204を通過した後に取得された光信号を表し、第3の光信号は、光空間周波数領域における第1のスペクトル平面分布データ、及び第2の反射光信号のスペクトル平面分布データに対する乗算演算の結果を表す。本発明のこの実施形態では、第2の反射光信号のスペクトル平面分布データは、第2のスペクトル平面分布データとも呼ばれ得る。
【0059】
ステップ516において、第2の凹面鏡210は、第3の光信号に基づいて、第3の反射光信号を出力する。上述したように、第1の凹面鏡208及び第2の凹面鏡210は、フーリエ変換及び逆フーリエ変換を実施してもよい。上述したように、第1のデータ及び第2のデータが第1の凹面鏡を通過した後、フーリエ変換が、第1のデータ及び第2のデータの両方に実施される。このステップでは、変調器アレイ204によって出力された第3の光信号を受信した後、第2の凹面鏡210は、第3の反射光信号を出力し、第3の反射光信号は、変調器アレイ204によって出力された畳み込み計算結果に対して逆フーリエ変換を実施することによって得られた結果である。
【0060】
ステップ518において、検出器アレイ206は、第3の反射光信号を検出する。検出器アレイ上の第3の反射光信号の分布は、第1のデータと第2のデータとの畳み込み結果を示すために使用される。上述したように、検出器アレイ206内の検出器は、入射光の強度を検出し得る。したがって、第3の反射光信号の検出光強度に基づいて、逆フーリエ変換により得られた第1のデータ及び第2のデータの畳み込み計算結果が取得され得る。
【0061】
図6は、本発明の一実施形態による、別の光コンピューティングチップの概略構造図である。図2に提供されたオンチップ集積光コンピューティングチップとの違いは、図6に示す光コンピューティングチップでは、光源アレイ202及び検出器アレイ206が、チップの同じ側に配置されることにある。したがって、コンピューティングチップ全体の構造がコンパクト化され、チップサイズは、小型化され得る。図6に示すように、図2に示す光コンピューティングチップと比較して、本発明のこの実施形態における光コンピューティングチップでは、第1の凹面鏡208、第2の凹面鏡210、及び変調器アレイ204の位置は変化しないで維持され、第1の凹面鏡208及び第2の凹面鏡210の焦点に対する光源アレイ202、変調器アレイ204、及び検出器アレイ206の位置も、それぞれ変化しないで維持される。図6に示す各構成要素の実装形態については、図2に示す光コンピューティングチップ内の各構成要素の説明を参照されたい。図6に示すコンピューティングチップがデータの畳み込み計算を実施するプロセスについては、図2及び図5の説明を参照されたい。ここでは詳細は再び説明されない。
【0062】
本発明のこの実施形態で提供される光コンピューティングチップは凹面鏡を使用し、凹面鏡は1次元の構成要素であるため、凹面鏡をチップ上に製造して一体化することはより容易である。したがって、チップ上で光コンピューティングを実装することが可能である。加えて、光コンピューティングチップ内の変調器は入射光の強度に基づいて光電流を生成し得るので、受光した入射光の強度は、記録及び変調され、データは、光コンピューティングを実施するプロセスにおいて、変調器アレイ上に直接記録及び変調され得る。追加のコンピューティングデバイスが、スペクトル面データの取得を支援するために使用される必要はない。したがって、計算効率が改善され、実装は簡単で効率的である。
【0063】
更に、本発明のこの実施形態で使用される光源アレイによって放出される光は、インコヒーレント光であり、データ変調関数も考慮され得る。したがって、光コンピューティングチップのI/O速度は、既存の空間光コンピューティングシステムのI/O速度と比較して大幅に改善される。更に、凹面鏡が、従来の4Fシステムにおいて凸レンズを置き換えるために使用されるので、凹面鏡をチップ上に製造して一体化することはより容易である。すべての構成要素は、チップ上に集積され得るので、既存の4F光コンピューティングシステムと比較して、光コンピューティングチップは、より小さいサイズで、より高い柔軟性を有し、より低い製造コストで済む。また、乗算器加算器としてのみ、畳み込み計算を完了する既存の光コンピューティングシステムと比較して、オンチップ光コンピューティングチップは、フーリエ変換、畳み込み、自己相関などの複雑な光計算を実現し得る。
【0064】
図2及び図6で説明した光コンピューティングチップでは、一例として、1層チップ構造が使用されている。物理的な実装上の制限により、1次元光源アレイ及び1次元検出器アレイのみが、1層チップ上に実装され得ることを理解されよう。したがって、図2及び図6に記載された光コンピューティングチップは、1次元畳み込みコンピューティングシステムであり、1次元データの畳み込み計算を実施し得る。別の可能な実装形態では、本発明の一実施形態は、多次元データ計算を実施し得る光コンピューティングチップを提供する。具体的には、複数の1層光源アレイが、多次元光源アレイ(例えば、2次元光源アレイ)を実装するために積層され、複数の1次元変調器アレイが、多次元変調器アレイを実装するために積層され、複数の1次元検出器アレイが、多次元検出器アレイを実装するために積層され得る。また、凹面鏡の面積を大きくすることによって、多次元畳み込み計算が実現され得る。図7に示すように、図7に示す光コンピューティングチップは、光源アレイ702と、変調器アレイ704と、検出器アレイ706と、第1の凹面鏡708と、第2の凹面鏡710と、を含み得る。前述の構成要素の相対位置は、図2及び図6に示されるであろう。図2及び図6に示す光コンピューティングチップとの違いは、図7に示す光コンピューティングチップでは、光源アレイ702は、複数の積層光源サブアレイ7022を含み、変調器アレイ704は、複数の積層変調器サブアレイ7042を含み、検出器アレイ706は、複数の積層検出器サブアレイ7062を含み得ることである。光源サブアレイ7022、変調器サブアレイ7042、及び検出器サブアレイ7062の構造及び動作原理は、図2の光源アレイ202、変調器アレイ204、及び検出器アレイ206にそれぞれ示されるであろう。
【0065】
実際の用途では、1つの光源サブアレイ7022、1つの変調器サブアレイ7042、及び1つの検出器サブアレイ7062は協働して、第1のデータ内の1つのデータ行、及び第2のデータ内の1つのデータ行を処理して、図2又は図6に示す機能を実施する。例えば、一方の光源サブアレイ7022は、第1のデータ内の第1のデータ行に基づいて、第1の光サブ信号を生成し、第2のデータ内の第1のデータ行に基づいて、第2の光サブ信号を生成するように構成されてもよい。一方の変調器サブアレイ7042は、第1の光サブ信号及び第2の光サブ信号に基づいて、反射光信号を記録及び変調するように構成される。一方の検出器サブアレイ7062は、第1のデータ内の第1のデータ行、及び第2のデータ内の第1のデータ行の計算結果を検出するように構成される。図2に示す光コンピューティングチップと比較して、光源アレイ702及び変調器アレイ704の両方が複数のサブアレイを積層することによって形成されているため、図7に示す光コンピューティングチップでは、第1の凹面鏡708及び第2の凹面鏡710の厚さは、図2の第1の凹面鏡208及び第2の凹面鏡210の厚さに対して増大していることが理解されよう。したがって、光源アレイ702及び変調器アレイ704によって放出された光信号は、反射され得る。図7に示す光コンピューティングチップが、複数の積層光源サブアレイと、複数の積層変調器サブアレイと、複数の積層検出器サブアレイと、を含み得るので、多次元データ(複数の行及び複数列のデータとも呼ばれ得る)の畳み込み計算が実施され得ることが理解されよう。
【0066】
当業者は、実際の用途では、光コンピューティングチップが、光コンピューティングを実施するために、別の補助回路と協働する必要があることを知っているであろう。図8は、本発明の一実施形態による、光コンピューティングシステムの概略構造図である。図8に示すように、光コンピューティングシステム800は、3つの部分、つまり制御プレーン802、光コンピューティングチップ804、及び周辺駆動回路を主に含む。周辺駆動回路は、光源アレイ駆動回路806と、変調器アレイ駆動回路810と、検出器アレイ駆動回路808と、を含み得る。実際の用途では、制御プレーン802は、プロセッサなど、制御及び処理などの機能を実施し得る構成要素を含み得る。例えば、制御プレーン802は、中央処理装置(central processing unit、CPU)、特定用途向け集積回路(application-specific integrated circuit、ASIC)、又はフィールドプログラマブル・ゲート・アレイ(field-programmable gate array、FPGA)などの処理構成要素を含み得る。これは本明細書中では限定されない。光コンピューティングチップ804は、図2図6、又は図7に示されるであろう。例えば、光コンピューティングチップ804は、光源アレイ8042、変調器アレイ8044、検出器アレイ8046、第1の凹面鏡8048、及び第2の凹面鏡8049を含んでもよい。光コンピューティングチップ804の具体的な実装形態については、前述の実施形態の説明を参照されたい。
【0067】
光コンピューティングチップ804内の光源アレイ8042、変調器アレイ8044、及び検出器アレイ8046は、能動構成要素であり、したがって、対応する外部駆動回路によって駆動される必要がある。したがって、光コンピューティングシステム800は、光源アレイ駆動回路806、変調器アレイ駆動回路810、及び検出器アレイ駆動回路808などの周辺回路を更に含んでもよい。以下、第1のデータ及び第2のデータに対して畳み込み計算を実施する前述のプロセスを参照して、光コンピューティングシステムの周辺回路について簡単に説明する。
【0068】
光源アレイ駆動回路806は、制御プレーン802によって送信された計算対象データを受信し、受信したデータを、対応する電圧に変換して、対応する光信号を放出するために、光源アレイ8042を駆動するように構成される。例えば、光源アレイ駆動回路806は、制御プレーン802によって送信された第1のデータ及び第2のデータを受信し、第1のデータ及び第2のデータを、対応する電圧に変換してもよい。実際の用途では、図9に示すように、光源アレイ駆動回路806は、デジタルアナログ変換回路8062及び増幅回路8064を含んでもよい。一例として、第1のデータの受信を用いると、光源アレイ駆動回路806内のデジタルアナログ変換回路8062は、受信した第1のデータをデジタルアナログ変換を実施し、第1のデータを、対応する電圧に変換してもよい。次いで、増幅回路8064は、変換によって得られた電圧を増幅し、対応する増幅された電圧を光源アレイ8042に送り、光源アレイ8042を駆動して、受信した電気信号を、対応する光信号に変換し、それによって第1のデータを第1の光信号に変換する。
【0069】
上述したように、本発明のこの実施形態で提供される変調器アレイは、2つの動作モード、つまり記録及び変調を有する。したがって、光コンピューティングチップ804内の変調器アレイ8044と変調器アレイ駆動回路810との間には双方向のデータ交換プロセスが存在する。具体的には、図10に示すように、変調器アレイ駆動回路810は、第1の増幅回路8102と、アナログデジタル変換回路8104と、デジタルアナログ変換回路8106と、第2の増幅回路8108と、を含み得る。変調器アレイ8044が記録モードで動作するとき、第1の凹面鏡8048からの第1の反射光信号を受信した後、変調器アレイ8044は、対応する光電流を生成する。変調器アレイ駆動回路810は、変調器アレイ8044によって生成された光電流を取り込み得る。受信した第1の反射光信号に基づいて変調器アレイ8044によって生成された光電流は、第1の反射光信号のスペクトル平面分布データを示すために使用される。変調器アレイ駆動回路810内の第1の増幅回路8102が、受電した光電流を増幅した後、アナログデジタル変換回路8104は、増幅した光電流をデータに変換して、第1の反射光信号のスペクトル平面分布データを取得する。言い換えれば、受電した光電流をデジタル信号に変換した後、アナログデジタル変換回路8104は、第1の反射光信号のスペクトル平面分布データを記録してもよい。第1の反射光信号のスペクトル平面分布データを取得した後、変調器アレイ駆動回路810は、第1の反射光信号のスペクトル平面分布データを制御プレーン802に送信し得る。制御プレーン802は、受信した第1の反射光信号のスペクトル平面分布データに対してノイズ除去、正規化、フォーマット変換などの処理を実施し、処理したデータを変調器アレイ駆動回路810に送信する。変調器アレイ駆動回路810内のデジタルアナログ変換回路8106は、制御プレーン802によって送信された処理したデータを受信し、受信したデータを、対応するアナログ信号に変換し得る。第2の増幅回路8108は、変換したアナログ信号に基づいて、対応する電圧(変調信号とも称され得る)を変調器アレイに入力して、変調器アレイ8044を変調モードで動作するように駆動し、対応するデータを変調器アレイ8044上に変調する。実際の用途では、第1の増幅回路8102及び第2の増幅回路8108は、1つの回路を使用することによって実装されてもよく、アナログデジタル変換回路8104及びデジタルアナログ変換回路8106は、集積されてもよい。
【0070】
図11に示すように、検出器アレイ駆動回路808はまた、増幅回路8082及びアナログデジタル変換回路8084を含み得る。検出器アレイ駆動回路808は、検出器アレイ8046によって検出された光強度信号を受信するように構成される。検出器アレイ8046によって検出される光強度信号は、光電流の形態であることが理解されよう。実際の用途では、増幅回路8082が、検出器アレイ8046によって検出された受信した光電流信号を増幅してもよい。次いで、検出器アレイ駆動回路808内のアナログデジタル変換回路8084は、受信したアナログ信号をデジタル信号に変換して、第1のデータ及び第2のデータの計算結果を取得し、計算結果を制御プレーン802に送信し得る。
【0071】
光コンピューティングシステム800の前述の説明から理解されるように、光コンピューティングシステム800全体のデータ入力は、光源アレイ駆動回路806を使用することによって制御プレーン802によって光源アレイ8042を駆動することによって実施されることができ、光コンピューティングチップ804の計算結果は、検出器アレイ駆動回路808によって取り込まれることができ、最後に、取り込まれたデータは、制御プレーン802に返される。
【0072】
記載された装置の実施形態は単なる例であることが理解されよう。例えば、モジュールへの分割は、論理的な機能の分割にすぎず、別の分割方法が、実際の実施では使用されてもよい。例えば、複数のモジュール又は構成要素が、組み合わされ、又は統合されて別のシステムになる場合もあり、いくつかの特徴が無視され、又は実施されない場合もある。更に、前述の実施形態で説明したモジュールは、電気的、機械的、又は他の形態で互いに接続されてもよい。別個の構成要素として記載されたモジュールは、物理的に別個であっても、なくてもよい。モジュールとして表示される構成要素は、物理モジュールであっても、なくてもよい。更に、本出願の実施形態における機能モジュールは、独立して存在してもよく、又は1つの処理モジュールに統合されてもよい。
【0073】
本発明の一実施形態は、プログラムコードを記憶したコンピュータ可読記憶媒体を含む、データ処理のためのコンピュータプログラム製品を更に提供し、プログラムコードに含まれる命令は、前述の方法実施形態のいずれか1つに記載される方法プロセスを実施するために使用される。当業者には理解されるように、前述の記憶媒体は、USBフラッシュドライブ、リムーバブル・ハード・ディスク、磁気ディスク、光ディスク、ランダムアクセスメモリ(random-access memory、RAM)、ソリッドステートドライブ(solid state Disk、SSD)、不揮発性メモリ(non-volatile memory)といった、プログラムコードを記憶し得る任意の非一時的な(non-transitory)機械可読媒体を含んでもよい。
【0074】
本出願で提供される実施形態は単なる例であることに留意すべきである。当業者には明確に知られているように、説明の便宜及び簡潔さのために、前述の実施形態において、実施形態は異なる態様を強調しており、ある実施形態に詳細に記載されていない部分については、別の実施形態の関連する記述を参照されたい。本発明の実施形態、特許請求の範囲、及び添付の図面で開示した特徴は、独立して存在していてもよく、組み合わさって存在していてもよい。本発明の実施形態においてハードウェア形態で記載されている特徴は、ソフトウェアによって実行されてもよく、逆もまた同様である。これは本明細書中では限定されない。
【符号の説明】
【0075】
100 光コンピューティングシステム
102 第1の変調器
104 第1の凸レンズ
106 第2の変調器
108 第2の凸レンズ
110 検出器
200 光コンピューティングチップ
202 光源アレイ
204 変調器アレイ
206 検出器アレイ
208 第1の凹面鏡
210 第2の凹面鏡
302 発光素子
702 光源アレイ
704 変調器アレイ
706 検出器アレイ
708 第1の凹面鏡
710 第2の凹面鏡
800 光コンピューティングシステム
802 制御プレーン
804 光コンピューティングチップ
806 光源アレイ駆動回路
808 検出器アレイ駆動回路
810 変調器アレイ駆動回路
7022 複数の積層された光源サブアレイ
7042 複数の積層された変調器サブアレイ
7062 複数の積層された検出器サブアレイ
8042 光源アレイ
8044 変調器アレイ
8046 検出器アレイ
8048 第1の凹面鏡
8049 第2の凹面鏡
8062 デジタル-アナログ変換回路
8064 増幅回路
8082 増幅回路
8084 アナログデジタル変換回路
8102 第1の増幅回路
8104 アナログデジタル変換回路
8106 デジタルアナログ変換回路
8108 第2の増幅回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11